(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】生分解性包装材料、生分解性包装材料を製造する方法、モバイル機器のセキュリティパック及びセキュリティ方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/46 20060101AFI20240801BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240801BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B65D65/46
B32B27/00 H
B32B27/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503584
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 KR2022011043
(87)【国際公開番号】W WO2023008905
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0100819
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512088051
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CheilJedang Corporation
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center, 330, Dongho-ro, Jung-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ムン, サン グォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ジン ス
(72)【発明者】
【氏名】シン, スー アン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジュン イル
(72)【発明者】
【氏名】ユン, キ チュル
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AC07
3E086AC12
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4F100AB24D
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(57)【要約】
本発明による包装材料は、生分解性及び熱接着性に優れたポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を内層に備えており、また、背面側に遮光層を貼り合わされているため、セキュリティ機能をもたらすことができる。したがって、本発明による生分解性包装材料は、カメラ付きモバイル機器用セキュリティパックとして製造され、様々な展示物、実験装置、書類などが外部に流出しないようにセキュリティを維持する必要がある施設又は組織によって利用され得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面フィルムと背面フィルムとを備える生分解性包装材料であって、前記前面フィルムが第1の熱接着層を備え、
前記背面フィルムが第2の熱接着層と遮光層とを備え、
前記第1の熱接着層の端部と前記第2の熱接着層の端部の少なくとも一部が互いに接着されており、
前記第2の熱接着層がポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む、生分解性包装材料。
【請求項2】
前記第1の熱接着層が、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂、ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、及びポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(PBAT)樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1に記載の生分解性包装材料。
【請求項3】
前記第1の熱接着層が、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂とポリ乳酸(PLA)樹脂とを10:90~90:10の重量比で含む、請求項1に記載の生分解性包装材料。
【請求項4】
前記第1の熱接着層に含有される前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂が、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、
前記共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂が、前記共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量に対して0.1~60重量%の量の前記4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む、請求項2に記載の生分解性包装材料。
【請求項5】
前記第2の熱接着層に含有される前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂が、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、
前記共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂が、前記共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量に対して0.1~60重量%の量の前記4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む、請求項1に記載の生分解性包装材料。
【請求項6】
前記前面フィルムが、その外面側に印刷層をさらに備え、前記印刷層が、ポリ乳酸(PLA)樹脂とポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂とを10:90~90:10の重量比で含む、請求項1に記載の生分解性包装材料。
【請求項7】
前記遮光層の平均可視光線透過率が15%未満である、請求項1に記載の生分解性包装材料。
【請求項8】
前記遮光層が紙を含む、請求項1に記載の生分解性包装材料。
【請求項9】
前記遮光層が、銀線、銀箔、金箔、印刷部、又は凹凸模様を含む、請求項1に記載の生分解性包装材料。
【請求項10】
第1の熱接着層を備える前面フィルムを作製するステップと、
第2の熱接着層と遮光層とを貼り合わせて背面フィルムを作製するステップと、
前記前面フィルムの端部及び前記背面フィルムの端部の少なくとも一部に熱を加えて互いに接着させるステップと
を含み、
前記第2の熱接着層がポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む、生分解性包装材料を作製する方法。
【請求項11】
前記第1の熱接着層が、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂とポリ乳酸(PLA)樹脂とを10:90~90:10の重量比で含む、請求項10に記載の生分解性包装材料を作製する方法。
【請求項12】
前記第1の熱接着性フィルム及び前記第2の熱接着性フィルムが、それぞれ無延伸フィルムとして作製される、請求項10に記載の生分解性包装材料を作製する方法。
【請求項13】
前記前面フィルムが、前記第1の熱接着性フィルムを貼り合わせた印刷層をさらに備え、前記印刷層が二軸延伸フィルムとして作製される、請求項10に記載の生分解性包装材料を作製する方法。
【請求項14】
前記第2の熱接着層と前記遮光層との貼り合わせが、乾式貼り合わせにより行われる、請求項10に記載の生分解性包装材料を作製する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の生分解性包装材料を含むモバイル機器用セキュリティパックであって、前記生分解性包装材料が、前記第1の熱接着層の端部及び前記第2の熱接着層の端部が互いに接着された接着部と、前記第1の熱接着層の端部及び前記第2の熱接着層の端部が互いに接着されていない開口部とを備え、
前記遮光層の可視光線透過率が15%未満である、モバイル機器用セキュリティパック。
【請求項16】
前記生分解性包装材料の印刷層が、その表面に着色印刷部を備え、前記着色印刷部の平均可視光線透過率が15%未満である、請求項15に記載のモバイル機器用セキュリティパック。
【請求項17】
請求項15に記載のモバイル機器用セキュリティパックを作製するステップと、
前記セキュリティパックの前記開口部から背面カメラを有するモバイル機器を挿入するステップと、
前記開口部に熱を加えて接着して、モバイル機器用セキュリティパックをシールするステップと
を含む、モバイル機器のセキュリティ方法。
【請求項18】
モバイル機器用セキュリティパックがシールされた後、前記モバイル機器用セキュリティパックの前記遮光層に署名、捺印、又は印刷するステップをさらに含み、前記モバイル機器用セキュリティパックの前記遮光層が紙を含む、請求項17に記載のモバイル機器のセキュリティ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性包装材料、生分解性包装材料を作製する方法、並びにモバイル機器用セキュリティパック及びセキュリティ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどのモバイル機器の使用の普及、及び搭載されるカメラの高機能化に伴い、簡単な操作で高解像度の写真又は動画を撮影することが可能となった。その結果、様々な展示物、実験装置、書類などが外界に流出しないようにセキュリティを維持する必要がある施設又は組織では、携帯電話のセキュリティが重要になってきている。
【0003】
セキュリティを目的とした手段の1つとして、モバイル機器のカメラに貼り付けて機能を制限し、剥がすと痕跡が残ることでセキュリティを維持するセキュリティステッカーが開発されている(韓国特許第1377663号)。しかし、近年、カメラレンズの数、形状、位置、操作方法などが多様化しているため、セキュリティステッカーを使用するセキュリティ方法は難しくなっており、製造コストも高い。さらに、モバイル機器の前面には、通常、保護フィルムが貼り合わされている。前面カメラを覆うようにセキュリティステッカーを貼り付けた場合、ステッカーを剥がす際に保護フィルムも剥がれ得るという問題が生じることがある。加えて、一般にステッカーの粘着剤は熱に弱いため、夏には意図せず、貼り付けたセキュリティステッカーが剥がれ得るケースもある。
【0004】
別の方法として、熱接着性透明フィルムの上部以外の端部をヒートシールし、カメラに対応する位置を濃く印刷したセキュリティパックが開発されている。後に、このセキュリティパックにモバイル機器を入れ、上部をヒートシールしてシールすると、カメラ以外のモバイル機器の様々な機能を支障なく使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許第1377663号[発明の開示]
【0006】
[技術的課題]
従来のセキュリティパックの製造に使用される材料は、生分解性でないか、又はわずかに生分解性である。加えて、カメラレンズを覆うための従来の方法によるカラー印刷は、様々な構造を有する最近のモバイル機器に適用するには限界がある。
【0007】
本発明者らが行った研究の結果、内層にポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を使用し、端部をヒートシールし、背面側に遮光層を貼り合わせることにより、生分解性及びセキュリティに優れた包装材料を提供することができることが判明した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、生分解性、熱接着性、セキュリティに優れた包装材料、該包装材料を作製する方法、及び該包装材料の使用を提供することである。
【0009】
[課題の解決手段]
本発明によれば、前面フィルムと背面フィルムとを備える生分解性包装材料であって、前面フィルムが第1の熱接着層を備え、背面フィルムが第2の熱接着層と遮光層とを備え、第1の熱接着層の端部と第2の熱接着層の端部の少なくとも一部が互いに接着されており、第2の熱接着層がポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む、生分解性包装材料が提供される。
【0010】
加えて、本発明によれば、第1の熱接着層を備える前面フィルムを作製するステップと、第2の熱接着層及び遮光層を貼り合わせて背面フィルムを作製するステップと、前面フィルムの端部及び背面フィルムの端部の少なくとも一部に熱を加えて互いに接着させるステップとを含み、第2の熱接着層がポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む、生分解性包装材料を作製する方法が提供される。
【0011】
加えて、本発明によれば、生分解性包装材料を含むモバイル機器用セキュリティパックであって、生分解性包装材料が、第1の熱接着層の端部及び第2の熱接着層の端部が互いに接着された接着部と、第1の熱接着層の端部及び第2の熱接着層の端部が互いに接着されていない開口部とを備え、遮光層の可視光線透過率が15%未満である、モバイル機器用セキュリティパックが提供される。
【0012】
加えて、本発明によれば、モバイル機器用セキュリティパックを作製するステップと、セキュリティパックの開口部から背面カメラを有するモバイル機器を挿入するステップと、開口部に熱を加えて接着して、モバイル機器用セキュリティパックをシールするステップとを含む、モバイル機器のセキュリティ方法が提供される。
【0013】
[発明の有利な効果]
本発明による包装材料は、生分解性及び熱接着性に優れたポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を内層に備え、背面側に遮光層を貼り合わせたものであり、これによってセキュリティ機能をもたらすことができる。したがって、本発明による生分解性包装材料は、カメラ付きモバイル機器用セキュリティパックとして作製することができ、様々な展示物、実験装置、書類などが外部に流出しないようにセキュリティを維持する必要がある施設又は組織によって使用され得る。
【0014】
加えて、好ましい実施形態によれば、非結晶化度を向上させ、それにより熱接着性、及び生分解性をさらに高めるために、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂として、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)樹脂に4-ヒドロキシブチレート(4HB)を一定レベル共重合させた樹脂を使用する。さらに、より好ましい実施形態によれば、遮光層として紙を使用するため、特別な印刷を施すことなくセキュリティを実現しつつ、生分解性を達成することができ、その場で紙に直接署名や捺印をすることができ、容易にミシン目形成を行うことができ、シャカシャカ音(rustling)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による生分解性包装材料を示す斜視図である。
【
図2】
図1の生分解性包装材料における線A-A’に沿った断面図の一部を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるセキュリティパックと、セキュリティパックに挿入されたモバイル機器とを正面図(a)及び背面図(b)で示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるセキュリティパックシール後の、セキュリティパック前面への署名(a)又は捺印(b)の構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるセキュリティパックの前面に形成された穴を通して充電ケーブルを接続する構成を示す図である。
【0016】
[参照番号の説明]
10:セキュリティパック、10’:シールしたセキュリティパック、15:開口部、20:モバイル機器、21:前面カメラ、22:背面カメラ、30:充電ケーブル、100:前面フィルム、110:第1の熱接着層、111:着色印刷部、112:署名部、113:捺印部、115:ミシン目形成部、120:印刷層、150:端部接着部、151:上部接着部、200:背面フィルム、210:第2の熱接着層、220:遮光層、A-A’:断面
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の様々な実施形態及び例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本発明の説明において、関連する公知の構成又は機能の詳細な説明が本発明の主題を不明瞭にする可能性があると判断される場合、その詳細な説明は省略する。加えて、図面中における個々の要素の大きさは、説明のために誇張して描いたり省略したりすることがあり、実際の大きさとは異なる場合がある。
【0019】
本明細書において、ある構成要素が別の構成要素の上/下に形成されている、又は互いに接続若しくは連結されていると記載されている場合、これらの構成要素が別の構成要素に直接又は間接的に形成、接続、連結されているケースを包含する。加えて、各構成要素の上や下という用語の基準は、物体を観察する方向によって異なる場合があることを理解されたい。
【0020】
本明細書において、それぞれの構成要素に言及する用語は、構成要素を互いに区別するために使用するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。加えて、本明細書において、文脈上別段の指定がない限り、単数形の表現は複数形も包含するものと解釈する。
【0021】
本明細書において、「備える(含む)(comprising)」という用語は、特定の特性、領域、ステップ、方法、要素、及び/又は構成要素を指定することを意図している。該用語は、特に明記しない限り、任意の他の特性、領域、ステップ、方法、要素、及び/又は構成要素の存在又は追加を除外するものではない。
【0022】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を記載するために使用される。しかし、該用語によって構成要素が限定されるべきではない。該用語は、ある要素を別の要素から区別する目的で使用される。
【0023】
生分解性包装材料
図1は、本発明の一実施形態による生分解性包装材料を示す斜視図である。
図2は、
図1の生分解性包装材料における線A-A’に沿った断面図の一部を示す。
【0024】
図1及び
図2を参照すると、本発明による生分解性包装材料(10)は、前面フィルム(100)及び背面フィルム(200)を備え、前面フィルム(100)は第1の熱接着層(110)を備え、背面フィルム(200)は第2の熱接着層(210)と遮光層(220)とを備え、第1の熱接着層(110)の端部と第2の熱接着層(210)の端部の少なくとも一部は互いに接着されており(端部接着部(150))、第2の熱接着層(210)はポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む。
【0025】
加えて、前面フィルム(100)は、外面側に印刷層(120)をさらに備えてもよく、印刷層(120)は、表面に印刷部を備えてもよい。生分解性包装材料(10)において、印刷層(120)及び遮光層(220)が外層(表面層)を形成し、第1の熱接着層(110)及び第2の熱接着層(210)が内層を形成する。
【0026】
第1の熱接着層(110)は、1層で構成されてもよく、2層以上の樹脂層で構成されてもよい。第2の熱接着層(210)は、1層で構成されてもよく、2層以上の樹脂層で構成されてもよい。
【0027】
加えて、前面フィルム(100)及び背面フィルム(200)は、それぞれ追加の機能層をさらに備えてもよい。
【0028】
この層構成により、前面フィルム(100)は1層、2層以上、又は3層以上で構成されてもよく、背面フィルム(200)は2層以上、又は3層以上で構成されてもよい。
【0029】
一実施形態による生分解性包装材料は、生分解性及び熱接着性に優れたポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を内層に備え、背面側に遮光層を貼り合わせたものであり、これによってセキュリティなどの追加の機能をもたらすことができる。加えて、印刷層の印刷部を除いた前面フィルムの全ての領域は基本的に透明であるため、モバイル機器を生分解性包装材料に収納した際に、モバイル機器の画面に表示される情報を確認するのに不都合が生じない場合がある。
【0030】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂
ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAという)樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)などの従来の石油由来合成ポリマーの物性と同様の物性を有しながら、完全な生分解性を示し、生体適合性に優れている。
【0031】
特に、PHA樹脂は微生物細胞内に蓄積する天然の熱可塑性ポリエステルポリマーである。PHA樹脂は生分解性材料であるため、有害廃棄物を発生させることなく、堆肥化され、最終的に二酸化炭素、水、有機廃棄物に分解され得る。特に、PHA樹脂は土壌や海中で生分解性である。したがって、生分解性樹脂組成物がPHA樹脂を含む場合、生分解性樹脂組成物は、土壌及び海などの任意の環境条件下で生分解性であり、環境に優しい特性を有する。したがって、PHA樹脂を含む生分解性樹脂組成物を使用して形成された生分解性成形物品は、環境に優しい物品として様々な分野で使用することができる。
【0032】
PHA樹脂は、1種又は複数のモノマー繰り返し単位を生細胞内において酵素触媒重合することによって形成することができる。
【0033】
PHA樹脂は、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(以下、PHAコポリマーという)であってもよく、特に、2種以上の異なる繰り返し単位を含み、異なる繰り返し単位がポリマー鎖中にランダムに分布しているコポリマーであってもよい。
【0034】
PHAに含有され得る繰り返し単位の例としては、2-ヒドロキシブチレート、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシブチレート(以下、3-HBという)、3-ヒドロキシプロピオネート(以下、3-HPという)、3-ヒドロキシバレレート(以下、3-HVという)、3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3-HHという)、3-ヒドロキシヘプタノエート(以下、3-HHepという)、3-ヒドロキシオクタノエート(以下、3-HOという)、3-ヒドロキシノナノエート(以下、3-HNという)、3-ヒドロキシデカノエート(以下、3-HDという)、3-ヒドロキシドデカノエート(以下、3-HDdという)、4-ヒドロキシブチレート(以下、4-HBという)、4-ヒドロキシバレレート(以下、4-HVという)、5-ヒドロキシバレレート(以下、5-HVという)、及び6-ヒドロキシヘキサノエート(以下、6-HHという)が挙げられる。PHAは、上記から選択される1種又は複数の繰り返し単位を含んでもよい。
【0035】
特に、PHAは、3-HB、4-HB、3-HP、3-HH、3-HV、4-HV、5-HV及び6-HHからなる群から選択される1種又は複数の繰り返し単位を含んでもよい。
【0036】
より詳細には、PHAは4-HB繰り返し単位を含んでもよい。すなわち、PHAは、4-HB繰り返し単位を含有するPHAコポリマーであってもよい。
【0037】
加えて、PHAは異性体を含んでもよい。例えば、PHAは、構造異性体、エナンチオマー、又は幾何異性体を含んでもよい。特に、PHA樹脂は構造異性体を含んでもよい。
【0038】
加えて、PHAは、4-HB繰り返し単位を含み、4-HB繰り返し単位とは異なる1つの繰り返し単位、又は互いに異なる2、3、4、5、6若しくはそれ以上の繰り返し単位をさらに含むPHAコポリマーであってもよい。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、PHA樹脂は、3-HB、3-HP、3-HH、3-HV、4-HV、5-HV、及び6-HHからなる群から選択される少なくとも1つの繰り返し単位と、4-HB繰り返し単位とを含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂を含んでもよい。
【0040】
特に、PHAコポリマーは、4-HB繰り返し単位を含んでもよく、3-HB繰り返し単位、3-HP繰り返し単位、3-HH繰り返し単位、3-HV繰り返し単位、4-HV繰り返し単位、5-HV繰り返し単位、及び6-HH繰り返し単位からなる群から選択される1つ又は複数の繰り返し単位をさらに含んでもよい。より詳細には、PHA樹脂は、3-HB繰り返し単位と4-HB繰り返し単位とを含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であってもよい。
【0041】
例えば、PHA樹脂は、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート(以下、3HB-co-4HBという)であってもよい。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、PHAコポリマー中の4-HB繰り返し単位の含量を調整することが重要である。
【0043】
すなわち、本発明において所望される物性を達成する、特に土壌及び海中での生分解性を向上させ、より高い光学特性、熱特性、及び機械的特性などの優れた物性を達成するためには、PHAコポリマー中の4-HB繰り返し単位の含量が重要である場合がある。
【0044】
より詳細には、PHAコポリマーは、PHAコポリマーの総重量に対して0.1重量%~60重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。例えば、4-HB繰り返し単位の含量は、PHAコポリマーの総重量に対して、0.1重量%~55重量%、0.5重量%~60重量%、0.5重量%~55重量%、1重量%~60重量%、1重量%~55重量%、1重量%~50重量%、2重量%~55重量%、3重量%~55重量%、3重量%~50重量%、5重量%~55重量%、5重量%~50重量%、10重量%~55重量%、10重量%~50重量%、1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~29重量%、1重量%~25重量%、1重量%~24重量%、2重量%~20重量%、2重量%~23重量%、3重量%~20重量%、3重量%~15重量%、4重量%~18重量%、5重量%~15重量%、8重量%~12重量%、9重量%~12重量%、15重量%~55重量%、15重量%~50重量%、20重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~55重量%、25重量%~50重量%、35重量%~60重量%、40重量%~55重量%、又は45重量%~55重量%であってもよい。
【0045】
4-HB繰り返し単位の含量が上記範囲を満たす場合、土壌及び海中での生分解性を向上させ、優れた光学特性を維持し、材料の熱的特性を改善し、柔軟性や強度などの機械的特性をさらに高めることができる。
【0046】
加えて、PHA樹脂は、4-HB繰り返し単位を少なくとも1つ又は複数含み、4-HB繰り返し単位の含量を制御することにより、PHA樹脂の結晶化度を調整することができる。すなわち、PHA樹脂は、結晶化度が制御されたPHAコポリマーであってもよい。
【0047】
結晶化度が調整されたPHA樹脂は、分子構造の不規則性が大きくなるように、結晶化度及び非晶性が調整されたものであってもよい。特に、モノマーの種類及び比率、又は異性体の種類及び/若しくは含量を調整することができる。
【0048】
PHA樹脂は、結晶性の異なる2種以上のPHA樹脂の組合せを含んでもよい。すなわち、結晶性の異なる2種以上のPHA樹脂を混合することにより、4-HB繰り返し単位の含量が特定範囲となるようにPHA樹脂を調整することができる。
【0049】
例えば、PHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含量が異なる第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂の混合樹脂を含み、PHA樹脂の総重量に対して、4-HB繰り返し単位の含量が0.1~60重量%となるようにPHA樹脂を調整することができる。以下に、第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂の詳細な特性について説明する。
【0050】
一方、PHAコポリマーは、PHAコポリマーの総重量に対して、3-HB繰り返し単位を20重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、又は75重量%以上、及び99重量%以下、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下、95重量%以下、93重量%以下、91重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は55重量%以下の量で含んでもよい。
【0051】
一方、PHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、-45℃~80℃、-35℃~80℃、-30℃~80℃、-25℃~75℃、-20℃~70℃、-35℃~5℃、-25℃~5℃、-35℃~0℃、-25℃~0℃、-30℃~-10℃、-35℃~-15℃、-35℃~-20℃、-20℃~0℃、-15℃~0℃又は-15℃~-5℃であってもよい。
【0052】
PHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、例えば、測定されなくてもよく、又は、例えば、70℃~120℃、75℃~120℃、75℃~115℃、75℃~110℃、若しくは90℃~110℃であってもよい。
【0053】
PHA樹脂の融解温度(Tm)は、例えば、測定されなくてもよく、又は、例えば、100~170℃、例えば、110~150℃、例えば、120~140℃であってもよい。
【0054】
PHA樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、10,000g/モル~1,200,000g/モルであってもよい。例えば、PHA樹脂の重量平均分子量は、50,000g/モル~1,200,000g/モル、100,000g/モル~1,200,000g/モル、50,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~1,200,000g/モル、250,000g/モル~1,150,000g/モル、300,000g/モル~1,100,000g/モル、350,000g/モル~1,000,000g/モル、350,000g/モル~950,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、200,000g/モル~700,000g/モル、250,000g/モル~650,000g/モル、200,000g/モル~400,000g/モル、300,000g/モル~800,000g/モル、300,000g/モル~600,000g/モル、400,000g/モル~800,000g/モル、500,000g/モル~1,200,000g/モル、500,000g/モル~1,000,000g/mole550,000g/モル~1,050,000g/モル、550,000g/モル~900,000g/モル、又は600,000g/モル~900,000g/モルであってもよい。
【0055】
PHA樹脂は、第1のPHA樹脂、第2のPHA樹脂、又は第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂との混合樹脂を含んでもよい。
【0056】
第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、及び融解温度(Tm)の点で区別することができる。
【0057】
特に、第1のPHAは、例えば、15重量%~60重量%、15重量%~55重量%、20重量%~55重量%、25重量%~55重量%、30重量%~55重量%、35重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~50重量%、30重量%~50重量%、35重量%~50重量%、又は20重量%~40重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0058】
第1のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、-45℃~-10℃、-35℃~-10℃、-35℃~-15℃、-35℃~-20℃、又は-30℃~-20℃であってもよい。
【0059】
第1のPHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、例えば、測定されなくてもよく、又は、例えば、60℃~120℃、60℃~110℃、70℃~120℃、若しくは75℃~115℃であってもよい。
【0060】
第1のPHA樹脂の融解温度(Tm)は、例えば、測定されなくてもよく、又は、例えば、100℃~170℃、100℃~160℃、110℃~160℃、又は120℃~150℃であってもよい。
【0061】
第1のPHA樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、10,000g/モル~1,200,000g/モル、10,000g/モル~1,000,000g/モル、50,000g/モル~1,000,000g/モル、200,000g/モル~1,200,000g/モル、300,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、500,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、又は200,000g/モル~400,000g/モルであってもよい。
【0062】
一方、第2のPHA樹脂は、0.1重量%~30重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。例えば、第2のPHAは、例えば0.1重量%~30重量%、0.5重量%~30重量%、1重量%~30重量%、3重量%~30重量%、1重量%~28重量%、1重量%~25重量%、1重量%~24重量%、1重量%~20重量%、1重量%~15重量%、2重量%~25重量%、3重量%~25重量%、3重量%~24重量%、5重量%~24重量%、5重量%~20重量%、5重量%超~20重量%未満、7重量%~20重量%、10重量%~20重量%、15重量%~25重量%、又は15重量%~24重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0063】
第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含量の点で互いに異なっていてもよい。
【0064】
第2のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、-30℃~80℃、例えば、-30℃~10℃、例えば、-25℃~5℃、例えば、-25℃~0℃、例えば、-20℃~0℃、例えば、-15℃~0℃であってもよい。
【0065】
第1のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)及び第2のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、互いに異なっていてもよい。
【0066】
第2のPHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、例えば70~120℃、例えば75~115℃であってもよく、例えば測定されなくてもよい。
【0067】
第2のPHA樹脂の融解温度(Tm)は、例えば100℃~170℃、例えば105℃~165℃、例えば110℃~160℃、例えば100℃~150℃、例えば115℃~155℃、又は例えば120℃~150℃であってもよい。
【0068】
第2のPHA樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000g/モル~1,200,000g/モル、50,000g/モル~1,100,000g/モル、100,000g/モル~1,000,000g/モル、300,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、200,000g/モル~600,000g/モル、200,000g/モル~400,000g/モル、又は400,000g/モル~700,000g/モルであってもよい。
【0069】
特に、第1のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は-35℃~-15℃であり、第2のPHA樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-15℃~0℃である、結晶化温度(Tc)が80℃~110℃である、融解温度(Tm)が120℃~160℃であるから選択される少なくとも1つの特性を満たし、第1のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)と第2のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は互いに異なっていてもよい。加えて、第1のPHA樹脂の結晶化温度(Tc)及び融解温度(Tm)は測定されなくてもよい。
【0070】
第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂が、それぞれ、上記範囲の4-HB繰り返し単位の含量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)及び融解温度(Tm)のうちの少なくとも1つを満たすと、本発明において所望される効果を達成するためにより有利な場合がある。
【0071】
加えて、第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂は、それぞれ結晶化度が調整されたPHA樹脂であってもよい。
【0072】
例えば、第1のPHA樹脂は、非晶性PHA樹脂(以下、aPHA樹脂という)を含んでもよく、第2のPHA樹脂は、半結晶性PHA樹脂(以下、scPHA樹脂という)を含んでもよい。
【0073】
aPHA樹脂及びscPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、融解温度(Tm)などの点で区別することができる。
【0074】
aPHA樹脂は、PHA樹脂の総重量に対して、例えば25~50重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0075】
aPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば-35~-20℃であってもよい。
【0076】
aPHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、測定されなくてもよい。
【0077】
aPHA樹脂の融解温度(Tm)は、測定されなくてもよい。
【0078】
scPHA樹脂は、PHA樹脂の総重量に対して、例えば1~25重量%未満の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0079】
scPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-20~0℃であってもよい。
【0080】
scPHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、75~115℃であってもよい。
【0081】
scPHA樹脂の融解温度(Tm)は、110~160℃であってもよい。
【0082】
一方、本発明の一実施形態による効果を達成するためには、生分解性樹脂組成物に含有されるPHA樹脂の含量が重要である。
【0083】
生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂組成物の総重量に対して40~99重量%の量のPHA樹脂を含んでもよい。例えば、PHA樹脂は、50重量%~95重量%、40重量%~80重量%、40重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上、及び99重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、又は80重量%以下の量で用いることができる。
【0084】
一方、PHA樹脂が第1のPHA樹脂を含む場合、例えば、1重量%~95重量%を構成してもよい。第1のPHA樹脂を単独で使用する場合、第1のPHA樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に対して、例えば、5~80重量%の量で用いることができる。特に、第1のPHA樹脂は、10重量%以上、及び40重量%以下の量で用いることができる。
【0085】
別の例として、第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂とを混合して使用する場合、第1のPHA樹脂は、例えば1~50重量%、例えば10~40重量%、又は例えば20~40重量%の量で用いることができる。
【0086】
PHA樹脂が第2のPHA樹脂を含む場合、例えば、1重量%~95重量%を構成してもよい。第2のPHA樹脂を単独で使用する場合、第2のPHA樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に対して、例えば、50~95重量%の量で用いることができる。特に、第2のPHA樹脂は、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上、及び95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、又は80重量%以下の量で用いることができる。
【0087】
別の例として、第2のPHA樹脂と第1のPHA樹脂とを混合して使用する場合、第2のPHA樹脂は、例えば20~80重量%、例えば30~70重量%の量で用いることができる。
【0088】
例えば、生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂組成物の総重量に対して、第1のPHA樹脂を1重量%~50重量%、第2のPHA樹脂を20重量%~80重量%、及びポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂を1重量%~50重量%含んでもよい。
【0089】
本発明の別の実施形態によれば、PHA樹脂が第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂との混合樹脂を含む場合、第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂との重量比は、例えば、1:0.05~5、例えば、1:0.5~4、又は例えば、1:1.2~4であってもよい。
【0090】
PHA樹脂の含量、又は第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂の各含量、及びそれらの含有比が、それぞれ上記範囲を満たすと、光学特性、熱的特性、及び機械的特性をさらに高めることができ、生分解性成形物品を製造する際の成形性、加工性、及び生産性も高めることができる。
【0091】
一方、PHA樹脂を含む層は、スリップ剤、酸化防止剤、架橋剤、核剤、充填剤、安定剤、及び相溶化剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含んでもよい。例えば、添加剤は、PHA樹脂を含む層の総重量に対して0.5~30重量%の量で用いることができる。
【0092】
第1の熱接着層(110)
第1の熱接着層は、前面フィルムの成分層であり、背面フィルムの第2の熱接着層と端部で対向して接着される。
【0093】
第1の熱接着層は、生分解性ポリマー樹脂を含んでもよい。特に、第1の熱接着層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂、ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、及びポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(PBAT)樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含んでもよい。
【0094】
一例として、第1の熱接着層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含んでもよい。特に、第1の熱接着層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂で構成されるPHAフィルムであってもよい。
【0095】
別の例として、第1の熱接着層は、ポリ乳酸(PLA)樹脂を含んでもよい。特に、第1の熱接着層は、ポリ乳酸(PLA)樹脂で構成されるPLAフィルムであってもよい。
【0096】
別の例として、第1の熱接着層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂とポリ乳酸(PLA)樹脂とのブレンド樹脂を含んでもよい。具体例として、第1の熱接着層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂とポリ乳酸(PLA)樹脂とを10:90~90:10の重量比で含んでもよい。より詳細には、第1の熱接着層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂とポリ乳酸(PLA)樹脂とを15:85~90:10、15:85~85:15、20:80~85:15、20:80~80:20、又は30:70~70:30の重量比で含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0097】
第1の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、3-ヒドロキシブチレート(3-HB)繰り返し単位を含んでもよい。加えて、第1の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含んでもよい。
【0098】
第1の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、ホモポリマー樹脂であってもよく、又はコポリマー樹脂であってもよい。例えば、第1の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であってもよい。より詳細には、第1の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、3-ヒドロキシブチレート(3-HB)繰り返し単位と4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位とを含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂であってもよい。
【0099】
特に、第1の熱接着層に含有される共重合ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量に対して0.1~60重量%の量の4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含んでもよい。例えば、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂中の4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位の含量は、PHAコポリマー樹脂の総重量に対して、0.1重量%~55重量%、0.5重量%~60重量%、0.5重量%~55重量%、1重量%~60重量%、1重量%~55重量%、1重量%~50重量%、2重量%~55重量%、3重量%~55重量%、3重量%~50重量%、5重量%~55重量%、5重量%~50重量%、10重量%~55重量%、10重量%~50重量%、1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~29重量%、1重量%~25重量%、1重量%~24重量%、2重量%~20重量%、2重量%~23重量%、3重量%~20重量%、3重量%~15重量%、4重量%~18重量%、5重量%~15重量%、8重量%~12重量%、9重量%~12重量%、15重量%~55重量%、15重量%~50重量%、20重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~55重量%、25重量%~50重量%、35重量%~60重量%、40重量%~55重量%、又は45重量%~55重量%であってもよい。特に、共重合ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量に対して25~50重量%の量の4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含んでもよい。上記の好ましい含量の範囲内では、共重合ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂の非晶性が制御され、これは適切な熱接着特性を有するために有利である。
【0100】
第1の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、2種以上のPHA樹脂を含んでもよく、例えば、第1のPHAと第2のPHA樹脂とが混合された樹脂であってもよい。加えて、第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂は、結晶化度の点で互いに異なっていてもよい。例えば、第1のPHA樹脂は、非晶性PHA樹脂(以下、aPHA樹脂という)を含んでもよく、第2のPHA樹脂は、aPHA樹脂又は半結晶性PHA樹脂(以下、scPHA樹脂という)を含んでもよい。
【0101】
aPHA樹脂及びscPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、融解温度(Tm)などの点で区別することができる。
【0102】
例えば、aPHA樹脂は、aPHA樹脂の総重量に対して、15重量%~60重量%、15重量%~55重量%、20重量%~55重量%、25重量%~55重量%、30重量%~55重量%、35重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~50重量%、30重量%~50重量%、35重量%~50重量%、又は20重量%~40重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。加えて、aPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、-45℃~-10℃、-35℃~-10℃、-35℃~-15℃、-35℃~-20℃、又は-30℃~-20℃であってもよい。加えて、aPHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、測定されなくてもよく、又は、例えば、60℃~120℃、60℃~110℃、70℃~120℃、若しくは75℃~115℃であってもよい。加えて、aPHA樹脂の融解温度(Tm)、測定されなくてもよく、又は、例えば、100℃~170℃、100℃~160℃、110℃~160℃、又は120℃~150℃であってもよい。
【0103】
他方、scPHA樹脂は、scPHA樹脂の総重量に対して、例えば、0.1重量%~30重量%、0.5重量%~30重量%、1重量%~30重量%、3重量%~30重量%、1重量%~28重量%、1重量%~25重量%、1重量%~25重量%未満、1重量%~24重量%、1重量%~20重量%、1重量%~15重量%、2重量%~25重量%、3重量%~25重量%、3重量%~24重量%、5重量%~24重量%、5重量%~20重量%、5重量%超~20重量%未満、7重量%~20重量%、10重量%~20重量%、15重量%~25重量%、又は15重量%~24重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。加えて、scPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、-30℃~80℃、-30℃~10℃、-25℃~5℃、-25℃~0℃、-20℃~0℃、又は-15℃~0℃であってもよい。aPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)及びscPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、互いに異なっていてもよい。加えて、scPHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、例えば、70℃~125℃、70℃~120℃、70℃~115℃、又は75℃~115℃であってもよい。加えて、scPHA樹脂の融解温度(Tm)は、例えば100℃~170℃、105℃~165℃、110℃~160℃、100℃~150℃、115℃~155℃、又は120℃~150℃であってもよい。
【0104】
第1の熱接着層は、単層であってもよく、2層以上の生分解性樹脂を含んでもよい。例えば、第1の熱接着層が2種以上の生分解性樹脂層を含む場合、一方の層がポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含み、他方の層がポリ乳酸(PLA)樹脂を含む場合があるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
加えて、第1の熱接着層は透明であってもよく、例えば、平均可視光線透過率が80%以上であってもよい。
【0106】
第2の熱接着層(210)
第2の熱接着層は、背面フィルムの成分層であり、前面フィルムの第1の熱接着層と端部で対向して接着される。
【0107】
第2の熱接着層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む。
【0108】
特に、第2の熱接着層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂で構成されてもよく、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂に加えて、ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、及びポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(PBAT)樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂をさらに含んでもよい。
【0109】
第2の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、3-ヒドロキシブチレート(3-HB)繰り返し単位を含んでもよい。加えて、第2の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含んでもよい。
【0110】
第2の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、ホモポリマー樹脂であってもよく、コポリマー樹脂であってもよい。例えば、第2の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であってもよい。より詳細には、第2の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、3-ヒドロキシブチレート(3-HB)繰り返し単位と4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位とを含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であってもよい。
【0111】
特に、第2の熱接着層に含有される共重合ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量に対して、0.1~60重量%、又は10~50重量%の量の4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含んでもよい。例えば、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂中の4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位の含量は、PHAコポリマー樹脂の総重量に対して、0.1重量%~55重量%、0.5重量%~60重量%、0.5重量%~55重量%、1重量%~60重量%、1重量%~55重量%、1重量%~50重量%、2重量%~55重量%、3重量%~55重量%、3重量%~50重量%、5重量%~55重量%、5重量%~50重量%、10重量%~55重量%、10重量%~50重量%、1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~29重量%、1重量%~25重量%、1重量%~24重量%、2重量%~20重量%、2重量%~23重量%、3重量%~20重量%、3重量%~15重量%、4重量%~18重量%、5重量%~15重量%、8重量%~12重量%、9重量%~12重量%、15重量%~55重量%、15重量%~50重量%、20重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~55重量%、25重量%~50重量%、35重量%~60重量%、40重量%~55重量%、又は45重量%~55重量%であってもよい。特に、共重合ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量に対して25~50重量%の量の4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含んでもよい。上記の好ましい含量の範囲内では、共重合ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂の非晶性が制御され、これは適切な熱接着特性を有するために有利である。
【0112】
第2の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、2種以上のPHA樹脂を含んでもよく、例えば、第1のPHAと第2のPHA樹脂とが混合された樹脂であってもよい。加えて、第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂は、結晶化度の点で互いに異なっていてもよい。例えば、第1のPHA樹脂は、非晶性PHA樹脂(以下、aPHA樹脂という)を含んでもよく、第2のPHA樹脂は、aPHA樹脂又は半結晶性PHA樹脂(以下、scPHA樹脂という)を含んでもよい。
【0113】
aPHA樹脂及びscPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、融解温度(Tm)などの点で区別することができる。詳細な特徴は上記の通りである。
【0114】
第2の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、第1の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と同じであってもよい。
【0115】
或いは、第2の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、第1の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と異なっていてもよい。特に、第1の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂に含有される4-HB繰り返し単位の含量は、第2の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂に含有される4-HB繰り返し単位の含量よりも多くてもよい。或いは、第1の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂に含有される4-HB繰り返し単位の含量は、第2の熱接着層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂に含有される4-HB繰り返し単位の含量よりも少なくてもよい。
【0116】
第2の熱接着層は、単層であってもよく、2層以上の生分解性樹脂を含んでもよい。例えば、第2の熱接着層が2種以上の生分解性樹脂層を含む場合、一方の層がポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含み、他方の層がポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂及びポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(PBAT)樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む場合があるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
加えて、第2の熱接着層は透明であってもよく、例えば、平均可視光線透過率が80%以上であってもよい。
【0118】
遮光層(220)
遮光層は、背面フィルムの外面側に配置され、生分解性包装材料に挿入された物体の背面側を覆うか、又は光から保護することができる。
【0119】
例えば、遮光層は、背面フィルムに全面的に遮光性をもたらすことにより、物体の背面側全体にセキュリティ機能をもたらすことができる。例えば、モバイル機器を生分解性包装材料に挿入したとき、遮光層がモバイル機器の背面カメラレンズの機能を制限することができる。このために、遮光層の平均可視光線透過率は15%未満、特に10%未満、より詳細には、5%未満であってもよい。
【0120】
一実施形態によれば、遮光層は紙を含んでもよい。特に、遮光層は紙で構成されてもよい。
【0121】
従来の生分解性包装材料は、食品包装材料に一般的に使用されている形状及び材料を使用して誰でも簡単に作ることができたため、セキュリティが要求される分野での使用には適していなかった。従来の生分解性包装材料をセキュリティ目的で使用するためには、一般人が偽造品を作製することが困難になるように、秘密のタグを印刷するか、又は別途製造した装置を使用して熱接着して特殊なマークを付けるなどの方法を考えることができる。しかし、これもまた、当業者であれば簡単に利用可能な技術であり、したがって、完璧なセキュリティ性能を備えていない。さらに、一般に印刷機能を備えると考えられるプラスチックフィルム材料は、通常リサイクル可能ではなく、多くの廃棄物を生じさせる可能性がある。加えて、薄いプラスチックフィルムはシャカシャカ音がしやすく、それによって、通話品質が低下し、携帯電話の収納に使用する際に不都合が生じることがある。
【0122】
遮光層に含有される紙は、リサイクル可能な任意の一般的な紙材料であってもよく、特定の種類に特に限定されるものではない。例示的な紙の種類としては、アート紙、クラフト紙、天然パルプ紙、及びざら紙が挙げられる。
【0123】
別の実施形態によれば、遮光層は着色フィルムを含んでもよい。着色フィルムは、染料又は顔料を含有するポリマーフィルムであってもよく、又はカラー印刷されたポリマーフィルムであってもよい。ポリマーフィルムは、例えば、生分解性ポリマー樹脂を含んでもよい。例えば、ポリマーフィルムは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂、ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、及びポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(PBAT)樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含んでもよい。
【0124】
加えて、遮光層は、銀線、銀箔、金箔、印刷部、又は凹凸模様を含んでもよい。
【0125】
印刷層(120)
加えて、前面フィルム(100)は、外面側に印刷層(120)をさらに備えてもよい。印刷層は、前面フィルムの外面側に配置され、生分解性包装材料の前面側への印刷を可能にする。
【0126】
印刷層は、生分解性ポリマー樹脂を含んでもよい。例えば、印刷層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂、ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、及びポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(PBAT)樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含んでもよい。
【0127】
一例として、印刷層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含んでもよい。特に、印刷層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂で構成されるPHAフィルムであってもよい。
【0128】
別の例として、印刷層は、ポリ乳酸(PLA)樹脂を含んでもよい。特に、印刷層は、ポリ乳酸(PLA)樹脂で構成されるPLAフィルムであってもよい。
【0129】
別の例として、印刷層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂とポリ乳酸(PLA)樹脂とのブレンド樹脂を含んでもよい。具体例として、印刷層は、ポリ乳酸(PLA)樹脂とポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂とを10:90~90:10の重量比で含んでもよい。より詳細には、印刷層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂とポリ乳酸(PLA)樹脂とを、15:85~90:10、15:85~85:15、20:80~85:15、20:80~80:20、又は30:70~70:30の重量比で含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0130】
印刷層に含有されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、ホモポリマー樹脂であってもよく、又はコポリマー樹脂であってもよい。その詳細な組成は、第1の熱接着層又は第2の熱接着層で先に説明したポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂の様々な組成で例示することができる。
【0131】
印刷層は、表面に着色印刷部を備えてもよい。着色印刷部の平均可視光線透過率は15%未満、特に10%未満、より詳細には、5%未満であってもよい。
【0132】
一方、印刷層の着色印刷部以外の領域は透明であってもよい。例えば、該領域の平均可視光線透過率が80%以上であってもよい。その結果、モバイル機器を生分解性包装材料に収納した際に、モバイル機器の画面に表示される情報を確認するのに不都合が生じない場合がある。
【0133】
着色印刷部を形成する方法は、グラビア印刷(又は凹版印刷)、フレキソ印刷(又は凸版印刷)、シルク印刷(平版印刷)、又はロールフィルムの大量印刷で一般的に使用されるオフセット印刷であってもよい。
【0134】
生分解性包装材料を作製する方法
本発明の一実施形態による生分解性包装材料を作製する方法は、第1の熱接着層を備える前面フィルムを作製するステップと、第2の熱接着層及び遮光層を貼り合わせて背面フィルムを作製するステップと、前面フィルムの端部及び背面フィルムの端部の少なくとも一部に熱を加えて互いに接着させるステップとを含み、第2の熱接着層がポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む。
【0135】
一例として、第1の熱接着層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂とポリ乳酸(PLA)樹脂とを10:90~90:10の重量比で含んでもよい。
【0136】
以下、作製方法の各ステップについて詳細に説明する。
【0137】
前面フィルムを作製するステップは、従来のフィルム作製方法を含んでもよい。例えば、該ステップは、ポリマー樹脂を溶融混練し、次いで、フィルム状に押出成形して第1の熱接着性フィルムを得るプロセスを含む。第1の熱接着性フィルムを作製するために、生分解性ポリマー樹脂を使用することができる。樹脂の詳細な種類は上記に例示した通りである。特に、第1の熱接着性フィルムを作製する方法は、一軸延伸、二軸延伸、キャスティング、及び共押出などのプロセスを含んでもよい。
【0138】
加えて、前面フィルムは、第1の熱接着性フィルムを貼り合わせた印刷層をさらに備えてもよい。例えば、第1の熱接着性フィルムと印刷フィルムとを別々に作製し、次いで、それらを貼り合わせて前面フィルムを作製してもよい。貼り合わせは、これらのフィルムに接着剤を塗布して貼り合わせた後に乾燥させることを含む乾式貼り合わせ、又は溶融したポリマー樹脂をフィルム間に流し込んで接着させる押出貼り合わせなど、当該分野で一般的に使用されている様々な貼り合わせ法によって行うことができる。
【0139】
背面フィルムを作製するステップは、第2の熱接着性フィルムを作製すること、遮光フィルムを作製すること、及び第2の熱接着性フィルムと遮光フィルムとを貼り合わせることによって実施することができる。第2の熱接着性フィルムの作製するために、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を使用することができる。樹脂の詳細な組成は上記に例示した通りである。加えて、遮光フィルムの作製に紙を使用することができる。第2の熱接着層と遮光層との貼り合わせは、乾式貼り合わせで行ってもよい。乾式貼り合わせ法では、少量の接着剤を溶剤に溶解させ、フィルムに塗布して接着するため、非生物分解性のプラスチック材料を多量に使用する押出貼り合わせ法と比較して、生分解性を高めることができる。加えて、遮光フィルムとして紙を使用する場合、乾式貼り合わせを使用することで、フィルムと、一般に表面に凹凸のある紙との接着性を最大限に高めることができる。
【0140】
第1の熱接着性フィルム(第1の熱接着層(110))の厚さは、例えば、20μm~200μm、20μm~170μm、20μm~150μm、20μm~120μm、より詳細には、40μm~120μmであってもよい。加えて、第2の熱接着性フィルム(第2の熱接着層(210))の厚さは、例えば、20μm~200μm、20μm~170μm、20μm~150μm、20μm~120μm、より詳細には、40μm~120μmであってもよい。
【0141】
加えて、印刷フィルム(印刷層(120))の厚さは、例えば、5μm~40μm、7μm~40μm、7μm~30μm、10μm~30μm、より詳細には、12μm~20μmであってもよい。加えて、遮光フィルム(遮光層(220))の厚さは、例えば、20μm~200μm、20μm~170μm、20μm~150μm、20μm~120μm、より詳細には、40μm~120μmであってもよい。
【0142】
第1の熱接着性フィルム及び第2の熱接着性フィルムは、それぞれ無延伸フィルムとして作製することができる。したがって、第1の熱接着性フィルム及び第2の熱接着性フィルムの作製方法における結晶化度の上昇を抑制することができ、それによって、熱接着性を高めることができる。
【0143】
一方、前面フィルムに加えられ得る印刷層は、二軸延伸フィルムとして作製することができる。したがって、前面フィルムの機械的特性及び表面印刷性をさらに向上させることができる。
【0144】
その後、前面フィルムの端部と背面フィルムの端部との少なくとも一部に熱を加えて互いに接着させるステップを行う。この際、前面フィルムの第1の熱接着層と背面フィルムの第2の熱接着層とを対向させ、端部に熱を加えて、第1の熱接着層と第2の熱接着層とを接着(融着)させる。
【0145】
熱接着のために適用される温度は、例えば110℃以上、特に120℃~220℃、120℃~200℃、120℃~195℃、より詳細には、140℃~180℃であってもよい。
【0146】
生分解性包装材料を、上部に開口部を有するパック状に作製する場合は、一般的な製袋技術を使用することができる。
【0147】
モバイル機器用セキュリティパック
上記の生分解性包装材料は、カメラ付きモバイル機器用セキュリティパックとして作製することができ、様々な展示物、実験装置、書類などが外部に流出しないようにセキュリティを維持する必要がある施設又は組織において使用することができる。
【0148】
本発明の一実施形態によるモバイル機器用セキュリティパックは、上記の生分解性包装材料を含み、生分解性包装材料が、第1の熱接着層の端部及び第2の熱接着層の端部が互いに接着された接着部と、第1の熱接着層の端部及び第2の熱接着層の端部が互いに接着されていない開口部とを備える。
【0149】
例えば、セキュリティパックの形状が正方形の場合、4つの辺(上辺、下辺、左辺、右辺)のうちの3つの辺が接着され、残りの1つの端部(上辺)は接着されずに開口部が形成される。したがって、セキュリティパックにモバイル機器を挿入した後、その場で一般的なヒートシール装置を使用して開口部(上部接着部(151))を容易にシールすることができる。
【0150】
モバイル機器用セキュリティパックにおいて、遮光層の可視光線透過率は15%未満である。
【0151】
遮光層は紙を含んでもよい。このようなケースにおいて、管理者は、その場でボールペンやフェルトペンで紙面に署名をするか、若しくは捺印をする、又はその場で普通のオフィスプリンターを使用して乱数を印刷することで、偽造及び変造を容易に防止することができる。紙が不透明であることで、背面カメラレンズの位置及び数に関係なく、カメラ機能を抑制することが可能である。
【0152】
偽造及び変造防止機能は、製造プロセスの性質上、普通のフィルムの材料に組み込むことはできない。しかし、遮光層が紙製である場合、銀線を入れること、紙に凹凸を付けるプレス技術、又は紙幣、商品券、宝くじなどに使われる銀箔や金箔を入れることなど、紙の製造及び加工技術を使用することが可能である。その結果、紙素材(paper fabric)自体に偽造及び変造防止機能が付与されるため、あらかじめ同様のセキュリティパックを製造しておき、それを持ち込んで現場で交換を試みるなどの、一般人による偽造及び変造の試みを無力化できる高レベルのセキュリティ能力を提供することが可能となる。
【0153】
上述したように、遮光層は、銀線、銀箔、金箔、印刷部、又は凹凸模様を含んでもよい。その結果、該セキュリティパックは、国家安全保障上の重要施設や企業の重要研究施設など、高レベルのセキュリティが要求される場所でも使用することができる。
【0154】
前面フィルムの成分層、すなわち第1の熱接着層及び印刷層は、導電性を有することが好ましい。近年、モバイル機器は前面にタッチスクリーンを搭載しているため、セキュリティパックの前面フィルムが導電性を有していれば、モバイル機器のタッチ機能を支障なく使用することができる。加えて、前面フィルムは透明であるため、モバイル機器の画面から情報を取得するのに不都合が生じない場合がある。
【0155】
一方、前面フィルムの印刷層は、表面に着色印刷部を備えてもよい。着色印刷部は、必要な文字や図形を印刷して形成することにより、意匠的効果又は情報伝達機能をもたらすことができる。加えて、着色印刷部は遮光性を有するため、物体の前面における特定の位置に対するセキュリティ機能をもたらすことができる。例えば、モバイル機器を生分解性包装材料に挿入したとき、モバイル機器の前面カメラレンズに対応する位置(主に上部)に着色印刷部を形成することで、前面カメラの機能を制限することができる。このために、着色印刷部の平均可視光線透過率は15%未満、特に10%未満、より詳細には、5%未満であってもよい。
【0156】
モバイル機器のセキュリティ方法
本発明によるモバイル機器のセキュリティ方法は、モバイル機器用セキュリティパックを作製するステップと、セキュリティパックの開口部から背面カメラを有するモバイル機器を挿入するステップと、開口部に熱を加えて接着し、モバイル機器用セキュリティパックをシールするステップとを含む。
【0157】
図3は、本発明の一実施形態によるセキュリティパックと、セキュリティパックに挿入されたモバイル機器とを正面図(a)及び背面図(b)で示す。
図4は、本発明の実施形態によるセキュリティパックシール後の、セキュリティパック前面への署名(a)又は捺印(b)の構成を示す。
【0158】
図3を参照すると、セキュリティパックの開口部(15)からモバイル機器(20)を挿入し、接着のために熱を加えて開口部(15)をシールすることができる。モバイル機器(20)の前面カメラ(21)は、前面フィルム(100)の着色印刷部(111)によって機能が制限され、背面カメラ(22)は、遮光層を有する背面フィルム(200)によって機能が制限される。
【0159】
加えて、背面フィルムの遮光層が紙製である場合、さらなるセキュリティ技術を適用することができる。
図4を参照すると、シールしたセキュリティパック(10’)の背面フィルム(200)の表面に、セキュリティ施設の管理者がその場で直接ペンを用いて署名(112)するか、又は捺印(113)して偽造されにくいマークを付けることで、偽造及び変造の可能性を防ぐことができる。
【0160】
上述したように、本方法は、モバイル機器用セキュリティパックがシールされた後、モバイル機器用セキュリティパックの遮光層に署名、捺印、又は印刷するステップをさらに含んでもよく、モバイル機器用セキュリティパックの遮光層は紙を含んでもよい。
【0161】
加えて、背面フィルムの遮光層が紙製である場合、一般的なプラスチックフィルムでは困難なミシン目形成加工を容易に行うことができる。
図5を参照すると、シールしたセキュリティパック(10’)に収納されたモバイル機器(20)の末端と、充電ケーブル(30)又はイヤホンとの間に有線接続が必要な場合、その場で一般的なミシン目形成パンチを使用して容易に穴を形成し、不都合を最小限に抑えてミシン目形成部(115)を形成することができる。
【0162】
[発明の態様]
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明の説明のためにのみ提供されるものであり、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【実施例】
【0163】
生分解性包装材料の作製
ステップ(1)前面フィルムの作製
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂(CJ、韓国)から無延伸キャスト法により第1の熱接着性フィルムを作製し、ポリ乳酸(PLA)樹脂とPHA樹脂とをブレンドして押し出し、次いで両方向(MD及びTD)に延伸することによって、印刷フィルムを作製した。これらのフィルムを貼り合わせて前面フィルムを作製した。
【0164】
ステップ(2)背面フィルムの作製
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂(CJ、韓国)から無延伸キャスト法により第2の熱接着性フィルムを作製し、該フィルムを紙と貼り合わせて背面フィルムを作製した。
【0165】
ステップ(3)前面フィルムの端部と背面フィルムの端部との熱接着
ヒートシールバーを備えたシール機を使用して、前面フィルムの端部と背面フィルムの端部とをラインシールした。
【0166】
試験例:生分解性包装材料の評価
(1)生分解性
海中での生分解性を評価するため、製品を直接ケースに入れて海中に浸漬し、一定時間後の試料の変化を測定した。その結果、6か月以内に、セルロースに対して90%が生分解されたことが確認された。
【0167】
(2)熱接着性
試料のヒートシール部を幅15mmに切断し、インストロンの万能試験機を使用して剥離し、熱接合強度を測定した。その結果、熱接合強度は200gf以上であることが確認された。
【0168】
(3)遮光(セキュリティ)性
遮光ボックスの一面を除去し、その中に光を検出できる測定器を入れ、除去した面を試料でシールした。この遮光ボックスを照度調整可能な場所に設置し、ボックス内の光を検出できる測定器を使用して透過光量を確認した。その結果、試料の可視光線透過率は15%未満であることが確認された。
【0169】
(4)機能性(タッチ操作性)
SamsungのGalaxy S20モデルに試料を付着させ、画面を指でタッチし、スムーズに動作するかどうかを確認した。その結果、全ての機能がスムーズに動作した。
【0170】
(5)ミシン目加工性
韓国Peace製の事務用パンチを使用して試料に穴を開け、ミシン目加工性を肉眼で確認した。その結果、ミシン目形成はスムーズであった。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明による生分解性包装材料は、カメラ付きモバイル機器用セキュリティパックとして作製することができ、様々な展示物、実験装置、書類などが外部に流出しないようにセキュリティを維持する必要がある施設又は組織において使用することができる。しかし、本発明の生分解性包装材料は、上記に限定されるものではなく、様々な外部汚染物質から遮断することによって製品を保護することを目的とした食品パッケージ及び電子製品パッケージなど、様々な用途に適用することができる。
【国際調査報告】