IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラミネーテッド フィルム エルエルシーの特許一覧

特表2024-529636低い反射率の取り外し可能なレンズ積層体
<>
  • 特表-低い反射率の取り外し可能なレンズ積層体 図1
  • 特表-低い反射率の取り外し可能なレンズ積層体 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】低い反射率の取り外し可能なレンズ積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20240801BHJP
   A61F 9/02 20060101ALI20240801BHJP
   G02B 1/118 20150101ALI20240801BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20240801BHJP
【FI】
G02B3/00 Z
A61F9/02 305
A61F9/02 352
G02B1/118
G02B1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505233
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022025996
(87)【国際公開番号】W WO2023009190
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】17/386,304
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524036088
【氏名又は名称】ラミネーテッド フィルム エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】LAMINATED FILM LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、スティーブン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、バート イー.
【テーマコード(参考)】
2K009
【Fターム(参考)】
2K009AA01
2K009BB24
2K009DD17
2K009EE05
2K009FF02
(57)【要約】
取り外し可能なレンズ積層体が、ベース層と、1つ以上の取り外し可能なレンズ層とを備えてよい。前記ベース層は、第1の面と前記第1の面の反対側の第2の面とを有する基材を備え、前記基材の前記第1の面にモスアイコーティングをさらに備えてよい。各取り外し可能なレンズ層は、第1の面及び前記第1の面の反対側の第2の面を有する基材と、前記基材の前記第1の面におけるモスアイコーティングと、前記基材の前記第2の面におけるフルオロポリマーコーティングとを備える。前記取り外し可能なレンズ層は、各取り外し可能なレンズ層の前記基材の前記第2の面が直前のベース層又は直前の取り外し可能なレンズ層の前記基材の前記第1の面に面するように、前記ベース層の上部に積層されていてよい。各フルオロポリマーコーティングは、前記直前の層の前記モスアイコーティングに適合するように成形されていてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り外し可能なレンズ積層体であって、
第1の面と前記第1の面の反対側の第2の面とを有する基材を備えるベース層であって、前記基材の前記第1の面にモスアイコーティングをさらに備える、ベース層と、
1つ以上の取り外し可能なレンズ層であって、各取り外し可能なレンズ層は、第1の面及び該第1の面の反対側の第2の面を有する基材と、該基材の該第1の面におけるモスアイコーティングと、該基材の該第2の面におけるフルオロポリマーコーティングとを備え、前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層は、各取り外し可能なレンズ層の該基材の該第2の面が前記ベース層と前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層との中の直前の層の前記基材の前記第1の面に面するように、前記ベース層の上部に積層されており、各フルオロポリマーコーティングは、前記直前の層の前記モスアイコーティングに適合するように成形されている、1つ以上の取り外し可能なレンズ層と、を備える取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項2】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記モスアイコーティングはポリマーを含む、請求項1に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項3】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記モスアイコーティングは、半波長ピッチを有する複数の突起からなるパターンを形成する、請求項1に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項4】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記モスアイコーティングは、半波長高さを有する複数の突起からなるパターンを形成する、請求項1に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項5】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記モスアイコーティングは複数の円錐からなるパターンを形成する、請求項1に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項6】
前記ベース層は、前記基材の前記第2の面にモスアイコーティングをさらに備える、請求項1に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項7】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む、請求項1に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項8】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記基材と前記モスアイコーティングとの間に接着処理部をさらに備える、請求項1に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項9】
前記接着処理部は、感圧接着剤を含む、請求項8に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項10】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々において、前記基材と前記フルオロポリマーコーティングとの間に接着処理部をさらに備える、請求項1に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項11】
前記接着処理部は、感圧接着剤を含む、請求項10に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項12】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々の剥離強度が、約0.386N/cm(100グラム/インチ)未満である、請求項1に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項13】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々の剥離強度が、約0.058N/cm(15グラム/インチ)と約0.193N/cm(50グラム/インチ)との間である、請求項12に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項14】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々の剥離強度が、約0.058N/cm(15グラム/インチ)と約0.116N/cm(30グラム/インチ)との間である、請求項13に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項15】
前記取り外し可能なレンズ積層体の可視光透過率(VLT)が95%より大きい、請求項1に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項16】
前記取り外し可能なレンズ積層体の前記VLTが98%より大きい、請求項15に記載の取り外し可能なレンズ積層体。
【請求項17】
取り外し可能なレンズ積層体を製造する方法であって、
第1の面と前記第1の面の反対側の第2の面とを有する基材を備えるベース層を提供する工程であって、前記ベース層は、前記基材の前記第1の面にモスアイコーティングをさらに備える、工程と、
前記ベース層の上部に1つ以上の取り外し可能なレンズ層を積層する工程であって、各取り外し可能なレンズ層は、第1の面及び該第1の面の反対側の第2の面を有する基材と、該基材の該第1の面におけるモスアイコーティングと、該基材の該第2の面におけるフルオロポリマーコーティングとを備え、前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層は、各取り外し可能なレンズ層の該基材の該第2の面が前記ベース層と前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層との中の直前の層の前記基材の前記第1の面に面するように、前記ベース層の上部に積層される、工程と、
積層されている前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層を前記ベース層にラミネートする工程であって、各フルオロポリマーコーティングは前記直前の層の前記モスアイコーティングに適合するように成形される、ラミネート工程と、を備える方法。
【請求項18】
前記ラミネート工程は、積層されている前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層を前記ベース層に40℃未満の温度において加圧下でラミネートする工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々において、前記基材と前記モスアイコーティングとの間にコロナ処理を適用する工程をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々において、前記基材と前記フルオロポリマーコーティングとの間にコロナ処理を適用する工程をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い反射率の取り外し可能なレンズ積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴーグル、バイザー、及びフェイスシールドなどの保護アイウェアを使用する様々な環境では、デブリがアイウェア上に蓄積する際に視界を維持することが重要である。例えば、モトクロスレースのようなオフロードスポーツの参加者は、泥、虫、及び他のデブリがゴーグル又はヘルメットバイザー上に蓄積するので、コースの可視性を維持する必要がある。同様に、手術室環境において、飛散によって、処置中に外科医又は他の施術者の視界が損なわれることがある。これらの必要性に応じて、引き剥がしフィルムが、個々に又はラミネートされた積層体(スタック)のいずれかにおいて一般的に使用され、ゴーグルレンズ、バイザー、又はフェイスシールドに適用される。デブリが最も外側の引き剥がしフィルム上に蓄積するか、最も外側の引き剥がしフィルムが損傷すると、着用者は単にそれを引き剥がして、下にある次の真新しいフィルムを露出させる。
【0003】
そうした積層レンズを通して視力を確保するために、内部反射を最小限に抑えることが望ましい。反射を低減するための1つの有望な技術は、いわゆるモスアイ(ME)コーティングであり、これは、レンズと空気との間の屈折率界面を効果的に排除する複数の微小突起(バンプ)からなるパターンを形成することによって、蛾の眼の反射防止特性を模倣する。残念ながら、複数のレンズからなる積層体の場合、層間に使用される接着剤は、MEコーティングの突起の周りを埋める傾向を有しており、各層の剥離強度を大幅に増加させ(例えば、約2.50~4.13N/cm(650~1,070グラム/インチ)にする)、層を容易に引き剥がすことができず、層を取り外すための力がレンズ材料の引張強度より大きくなる場合があるので、積層体を使用不可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、関連技術に付随する欠点を克服するための様々な装置及び方法を想定する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態の一態様は、取り外し可能なレンズ積層体である。前記取り外し可能なレンズ積層体は、第1の面と前記第1の面の反対側の第2の面とを有する基材を備えるベース層を備えてよく、前記ベース層は、前記基材の前記第1の面にモスアイコーティングをさらに備える。前記取り外し可能なレンズ積層体は、1つ以上の取り外し可能なレンズ層をさらに備えてよく、各取り外し可能なレンズ層は、第1の面と前記第1の面の反対側の第2の面とを有する基材と、前記基材の前記第1の面におけるモスアイコーティングと、前記基材の前記第2の面におけるフルオロポリマーコーティングとを備える。前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層は、各取り外し可能なレンズ層の前記基材の前記第2の面が前記ベース層と前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層との中の直前の層の前記基材の前記第1の面に面するように、前記ベース層の上部に積層されていてよい。前記フルオロポリマーコーティングの各々は、前記直前の層の前記モスアイコーティングに適合するように成形されていてよい。
【0006】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記モスアイコーティングはポリマーを含んでよい。
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記モスアイコーティングは、半波長ピッチを有する複数の突起からなるパターンを形成してよい。
【0007】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記モスアイコーティングは、半波長高さを有する複数の突起からなるパターンを形成してよい。
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記モスアイコーティングは、複数の円錐からなるパターンを形成してよい。
【0008】
前記ベース層は、前記基材の前記第2の面にモスアイコーティングをさらに備えてよい。
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含んでよい。
【0009】
前記取り外し可能なレンズ積層体は、前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層及び前記ベース層の各々において、前記基材と前記モスアイコーティングとの間に接着処理部をさらに備えてよい。前記接着処理部は、感圧接着剤を含んでよい。
【0010】
前記取り外し可能なレンズ積層体は、前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々において、前記基材と前記フルオロポリマーコーティングとの間に接着処理部をさらに備えてよい。前記接着処理部は、感圧接着剤を含んでよい。
【0011】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々の剥離強度が、約0.386N/cm(100グラム/インチ)未満であってよい。前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々の剥離強度が、約0.058N/cm(15グラム/インチ)と約0.193N/cm(50グラム/インチ)との間であってよく、より詳細には、約0.058N/cm(15グラム/インチ)と約0.116N/cm(30グラム/インチ)との間であってよい。
【0012】
前記取り外し可能なレンズ積層体の可視光透過率(VLT)が95%より大きくてよく、より詳細には、98%より大きくてよい。
本開示の実施形態の別態様は、取り外し可能なレンズ積層体を製造する方法である。該方法は、第1の面と前記第1の面の反対側の第2の面とを有する基材を備えるベース層を提供する工程であって、前記ベース層は、前記基材の前記第1の面にモスアイコーティングをさらに備える、工程を備えてよい。該方法は、前記ベース層の上部に1つ以上の取り外し可能なレンズ層を積層する工程であって、各取り外し可能なレンズ層は、第1の面と前記第1の面の反対側の第2の面とを有する基材と、前記基材の前記第1の面におけるモスアイコーティングと、前記基材の前記第2の面におけるフルオロポリマーコーティングとを備える、工程をさらに備えてよい。前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層は、各取り外し可能なレンズ層の前記基材の前記第2の面が前記ベース層と前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層との中の直前の層の前記基材の前記第1の面に面するように、前記ベース層の上部に積層されてよい。該方法は、積層されている前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層を前記ベース層にラミネートする工程であって、前記フルオロポリマーコーティングの各々が前記直前の層の前記モスアイコーティングに適合するように成形される、ラミネート工程をさらに備えてよい。
【0013】
前記ラミネート工程は、積層されている前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層を前記ベース層に40℃未満の温度において加圧下でラミネートする工程を含んでよい。
該方法は、前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々において、前記基材と前記モスアイコーティングとの間にコロナ処理を適用する工程をさらに備えてよい。
【0014】
該方法は、前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々において、前記基材と前記フルオロポリマーコーティングとの間にコロナ処理を適用する工程をさらに備えてよい。
本明細書に開示される様々な実施形態のこれら及び他の特徴及び利点は、以下の説明及び図面に関してより良く理解され得る。説明及び図面において、同様の番号は、全体を通して同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態による取り外し可能なレンズ積層体における1つのベース層及び2つの取り外し可能なレンズ層の断面図。
図2】取り外し可能なレンズ積層体の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、取り外し可能なレンズ積層体及びその製造方法の様々な実施形態を包含する。添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、現在想定されるいくつかの実施形態の説明として意図され、開示される発明が展開又は利用され得る唯一の形態を表すようには意図されていない。本説明は、図示された実施形態に関連して機能及び特徴を記載する。しかしながら、同じ又は同等な機能が、本開示の範囲内に包含されるように意図もされる様々な実施形態によって達成され得ることが理解されてよい。第1及び第2などの関係語の使用は、1つのエンティティを別のエンティティから区別するためだけに使用され、そうしたエンティティ間の任意の実際のそうした関係又は順序を必ずしも要求又は意味することなく使用されることがさらに理解される。
【0017】
図1は、ベース層100及び2つの取り外し可能なレンズ層200の断面図であり、これらは一体に積層されて、図2の断面図に示すような取り外し可能なレンズ積層体10を形成してよい。取り外し可能なレンズ積層体10のベース層100は、例えば、ゴーグルレンズもしくはバイザー、又は手術用ヘルメット、フード、もしくはガウンの透明な窓などの表面に付けられてよいか、あるいは、取り外し可能なレンズ積層体10自体がレンズ、バイザー、フェイスシールドなどとして機能するように、その周縁においてフレームに取り付けられてよい(すなわち、表面に付けられることなく)。図1及び図2の例では、2つの取り外し可能なレンズ層200が示されており、これらはベース層100に積層されて、取り外し可能なレンズ積層体10を形成する。しかしながら、2つより多い取り外し可能なレンズ層200が存在するか、1つの取り外し可能なレンズ層200のみが存在してもよいことが想定される。示されるように、取り外し可能なレンズ層200の各々は、基材210と、その第1の面212におけるモスアイコーティング220とを備えてよい。ベース層100は、同様に、基材110と、その第1の面112におけるモスアイコーティング120aと、第1の面112の反対側の第2の面114における随意のモスアイコーティング120bとを備えてよい。モスアイコーティング120a,120b,220により、取り外し可能なレンズ積層体10は、非常に低い反射率を有することが可能であり、したがって、95%より大きく、又は場合によっては98%より大きな(例えば、99%より大きく、反射率は1%未満である)可視光透過率(VLT)を示すことが可能である。
【0018】
従来の取り外し可能なレンズとは異なり、各取り外し可能なレンズ層200は、第1の面212の反対側の基材210の第2の面214においてフルオロポリマーコーティング230をさらに備えてよい。したがって、各基材210の第2の面214が直前の基材110,210(場合によっては、直前の取り外し可能なレンズ層200の基材210又はベース層100の基材110であってもよい)の第1の面112,212に面する状態で、取り外し可能なレンズ層200がベース層100の上部に積層されるとき、フルオロポリマーコーティング230は、モスアイコーティング120a,220に当接してよい。したがって、積層された取り外し可能なレンズ層200をベース層100にラミネートすると、各フルオロポリマーコーティング230は、直前の層100,200のモスアイコーティング120a,220に適合するように成形されてよい。モスアイコーティング120a,220に対応し、隣接するフルオロポリマーコーティング230において形成されている成形された雌型パターンとのモスアイコーティング120a,220の得られた機械的連結は、隣接する層を一体に固定するジッパーと同様に機能してよい。この機械的連結のおかげで、モスアイコーティング120a,220におけるアクリル系接着剤又は他の粘着性接着剤の使用を完全に回避することが可能であり、モスアイコーティング120a,220の突起の周りにたまるそうした従来の接着剤に関連する剥離強度の増加を防止する。したがって、取り外し可能なレンズ層200は、有利には、はるかに低い剥離強度を有することが可能であり、剥離強度は、約0.386N/cm(100グラム/インチ)未満であってもよく、例えば、約0.058N/cm(15グラム/インチ)と約0.193N/cm(50グラム/インチ)との間であってもよく、より具体的には約0.058N/cm(15グラム/インチ)と約0.116N/cm(30グラム/インチ)との間(例えば、約0.097N/cm(25グラム/インチ))であってもよく、これにより、着用者は、妥当な量の引張力で各層200を所望の通りに取り外すことが可能になる。(なお、ベース層100は取り外し可能である必要がなく、したがって、随意のモスアイコーティング120bの突起の周りの接着剤の蓄積によって引き起こされる剥離強度の増加は許容可能である場合、ベース層100を表面に付けるために粘着性接着剤を使用することによって問題が生じない場合がある。)
各層100,200の基材110,210は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの透明ポリマーを含んでよく、各取り外し可能なレンズ層200の基材210について厚さ約0.025mm(1ミル)~約0.254mm(10ミル)、例えば厚さおよそ0.051mm(2ミル)であってよく、ベース層100の基材110は同じ厚さであるか、典型的にはより厚い(例えば約0.18mm(7ミル))。取り外し可能なレンズ層200の各々のモスアイコーティング220、及びベース層100のモスアイコーティング120a,120bは、ポリマーを含んでよく、典型的には、例えば、モース硬度7を有するガラス状炭素などの硬質ポリマー製であってよい。モスアイコーティング120a,120b,220は、基材110,210の表面に、光(例えば、可視光)の波長程度の寸法(半波長のピッチ及び/又は半波長の高さなど)を有するナノサイズの複数の微小突出すなわち突起(例えば、透明円錐)からなるパターンを形成して、反射防止効果を生じさせることが可能である。例えば、突起のピッチ及び/又は高さは、200nm-375nmであってよい。モスアイコーティング120a,120b,220の突起には、例えば円錐の代わりに、丸みを帯びた突起面又は長方形の突起面を含む様々な形状が考えられる。
【0019】
モスアイコーティング120a,120b,220は、取り外し可能なレンズ積層体10全体が一貫した屈折率(例えば、0.2以内)を有し得るように、基材110,210と、フルオロポリマーコーティング230と、使用され得る任意の接着剤(後述)と、屈折率が一致してよい(例えば、0.2以内)。しかしながら、空気と取り外し可能なレンズ積層体10との間の屈折率界面は、最も外側のモスアイコーティング220によって効果的に排除され得るので(界面は、入射光の観点から材料の突然の変化ではなく勾配のように見えるので)、取り外し可能なレンズ積層体10の屈折率を空気(n=1)に一致させる必要はない。したがって、基材110,210及び取り外し可能なレンズ積層体10の他の構成要素のために、多種多様な材料が使用されてよいことが想定される。
【0020】
一般に、従来の取り外し可能なレンズ積層体を構築するとき、取り外し可能な結合材料は、隣接する表面の各対を一体に濡らすために使用される。この文脈における「濡れている」という用語は、接触によって2つの表面間における空気の全てが追い出され得るように、2つの表面が互いに密着し、それによって良好な結合が可能になるときを表してよい。1つのレンズを別のレンズの上部に単に置くだけでは、レンズ間に閉じ込められている空気を分散させないが、アクリル系の取り外し可能な接着剤を使用して、表面を一体に濡らし、結合を促進することが可能である。接着剤の屈折率をレンズの屈折率と一致させる(例えば、0.2以内)ことによって、可視光は、界面において一定の速度に留まることが可能であり、それによって反射が最小限に抑えられる。そうしたシステムの一例は、「Adhesive Mountable Stack of Removable Layers」と題された米国特許第9,295,297号に見出されてよく、その全内容を参照により本明細書に明示的に援用する。しかしながら、接着剤は触れると粘着するため、一方又は両方の表面がモスアイコーティングを有している2つの表面を一体に結合するときに問題が生じる。特に、上述したように、接着剤は、モスアイコーティングの微小突出の周りを塞ぎ、剥離強度を、取り外し可能なレンズ積層体に機能的に適した程度を超えて劇的に増加させる。
【0021】
したがって、基材110,210の表面を一体に濡らすとともに、開示されている取り外し可能なレンズ積層体10において好ましい剥離強度を達成するために、フルオロポリマーコーティング230は、各基材210の第2の面214に提供されてよい。フルオロポリマーコーティング230は、屈折率が一致した(例えば0.2以内)軟らかいフルオロポリマー(フッ素化エチレン-プロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、又はテトラフルオロエチレンパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(MFA)など)であってもよく、これは触れても粘着しないが、ラミネート圧力下において成形可能であり、当接するモスアイコーティング120a,220の突起に対応するデボス加工された(雌型)パターンを生成する。
【0022】
場合によっては、接着処理部140a,240が、ベース層100の基材110とモスアイコーティング120aとの間、及び/又は各取り外し可能なレンズ層200の基材210とモスアイコーティング220との間に提供されてよい。同様に、ベース層100の基材110がその第2の面114にモスアイコーティング120bをさらに備える場合、接着処理部140bが基材110とモスアイコーティング120bとの間に提供されてよい。各取り外し可能なレンズ層200において、接着処理部250が、同様に、基材210とフルオロポリマーコーティング230との間に提供されてよい。粘着処理部140a,140b,240,250は、シリコーン接着剤(例えば、ダウ・ケミカル(Dow Chemical Company)によってDOWSIL(登録商標)7655接着剤又はDOWSIL(登録商標)7656接着剤の名称で販売されている接着剤などの、トルエン/イソプロピルアルコール中に分散されたポリジメチル/メチルビニルシロキサンポリマー及び樹脂)などの感圧接着剤を含んでよい。接着剤は、上述したように、基材110,210及び取り外し可能なレンズ積層体10の他の要素と屈折率が一致していてよい(例えば、0.2以内)。
【0023】
ベース層100及び1つ以上の取り外し可能なレンズ層200は、各基材110,210をモスアイコーティング120a,120b,220及びフルオロポリマーコーティング230によって被覆することによって製造されてよく、場合によっては、モスアイコーティング120a,120b,220及びフルオロポリマーコーティング230は、上述のように接着処理部140a,140b,240,250によって基材110,210に接着されてよい。接着性を改善するために、基材110,210とモスアイコーティング120a,120b,220との間、及び/又は基材210とフルオロポリマーコーティング220との間にコロナ処理を適用してよいことが想定されもする。これによって、例えば、最も外側の取り外し可能なレンズ層200が取り外し可能なレンズ積層体10から外されるときに、フルオロポリマーコーティング220が最も外側の取り外し可能なレンズ層200と共にあることが確実となり得る。コロナ処理を、上述の接着処理部140a,140b,240,250の代わりに、又はそれに加えて適用してよい。次いで、取り外し可能なレンズ層200は、各取り外し可能なレンズ層200の基材210の第2の面214がベース層100と、1つ以上の取り外し可能なレンズ層200(場合によって)と、の中の直前の層の基材110,210の第1の面112,212に面するように、ベース層100の上部に積層されてよい。図1及び図2に示されている図示された例では、第1の取り外し可能なレンズ層200(各図の中央に示される)がベース層100に積層され、第2の取り外し可能なレンズ層200(各図の左側に示される)が第1の取り外し可能なレンズ層200に積層されている。追加の取り外し可能なレンズ層200が同様に提供され、積層体に追加されてよい。
【0024】
次いで、取り外し可能なレンズ層200は、熱の有無にかかわらず加圧下で(例えば、40℃未満の温度において加圧下で)ベース層100に積層されてよい。なお、ベース層100及び取り外し可能なレンズ層200は、単一のラミネーションプロセス又は複数のラミネーションプロセスにおいて一体にラミネートされてよく、例えば、各取り外し可能なレンズ層200は、別個のラミネーションプロセスにおいて積層体に追加される(又は複数の取り外し可能なレンズ層200は、ベース層100にラミネートされる前に一体にラミネートされる)。ラミネーションの結果、各フルオロポリマーコーティング230は、直前の層のモスアイコーティング120a,220に適合するように成形されてよい。特に、モスアイコーティング120a,220の硬い突起は、軟らかいフルオロポリマーコーティング230に押し込まれて、対応するデボス加工された(雌型)パターンをフルオロポリマーコーティング230において生成してよい。このようにして、層100,200間の上述した機械的連結が達成されて、層100,200間において粘着性接着剤を使用することなく、所望の剥離強度(例えば、約0.097N/cm(25グラム/インチ))を生成することが可能であり、もしそうでなければ、粘着性接着剤は、突起間を埋めて剥離強度を過度に増加させる可能性がある。同時に、層100,200間の空気は、ラミネートプロセス中に排出されてよく、それにより、対向する層100,200を湿らせること(及び結果としてわずかに接着させること)が可能になり、一方、屈折率界面は、モスアイコーティング120a,220のアーキテクチャによって生成される屈折率勾配に起因して、効果的に排除されてよい。得られる取り外し可能なレンズ積層体10の可視光透過率(VLT)は、被覆されていないレンズにおいて見出され得る8%の反射を伴う92%とは対照的に、95%より大きくてよい(例えば、4%の反射を伴う96%)。場合によっては、特に、モスアイコーティング120bが、モスアイコーティング120a,120b,220が積層体10の両側に存在するように提供されている場合、VLTは98%より大きくてよい(例えば、99%より大きい)。
【0025】
取り外し可能なレンズ積層体10がアイウェアに組み込まれており、着用されているとき、着用者は、最も外側の取り外し可能なレンズ層200を容易に剥がして、下にある汚れのない取り外し可能なレンズ層200(又はベース層100)を露出させることが可能である。複数の取り外し可能なレンズ層200を有する取り外し可能なレンズ積層体10の場合、最も外側の取り外し可能なレンズ層200を取り外すために使用される引張力は、一般に、着用者が最も外側の取り外し可能なレンズ層200を積層体10の片側から持ち上げて(例えば、積層体10の片側における容易にアクセス可能なタブを把持することによって)、最も外側の取り外し可能なレンズ層200を他の取り外し可能なレンズ層200から分離するときの最初の外向きの力(積層体10に垂直)と、それに続く着用者が最も外側の取り外し可能なレンズ層200を剥がすときの連続的な横向きの力(積層体10に平行な成分を有する)とを含んでよい。取り外し可能なレンズ層200の分離の大部分の原因である連続的な横向きの力は、下にある続く層200を分離するよりも、最も外側の取り外し可能なレンズ層200を持ち上げる傾向がよりあり得ることが想定される。したがって、着用者は、取り外し可能なレンズ積層体10の追加の層200を誤って引き剥がすことなく、一度に1つの層200を容易に剥がすことが可能である。
【0026】
上記の説明は、限定ではなく例として与えられている。上記の開示を前提として、当業者は、本明細書に開示される本発明の範囲及び趣旨内にある変形形態を考案することが可能である。さらに、本明細書に開示される実施形態の様々な特徴は、単独で、又は互いに組み合わせを変化させて使用されることが可能であり、本明細書に記載される特定の組み合わせに限定されることを意図しない。したがって、特許請求の範囲は、示されている実施形態によって限定されるべきではない。
図1
図2
【国際調査報告】