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特表2024-529639オキサシクロヘキサンまたはオキサシクロペンタン誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】オキサシクロヘキサンまたはオキサシクロペンタン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/92 20060101AFI20240801BHJP
   C07C 35/36 20060101ALI20240801BHJP
   B01J 29/08 20060101ALI20240801BHJP
   B01J 29/18 20060101ALI20240801BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20240801BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
C07D307/92
C07C35/36
B01J29/08 Z
B01J29/18 Z
B01J29/70 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505464
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2022071261
(87)【国際公開番号】W WO2023006908
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21188879.7
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-イヴ ダプサン
(72)【発明者】
【氏名】レア ヴィルコック
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC02B
4G169BC03B
4G169BC16B
4G169BD01B
4G169BD02B
4G169BD05B
4G169BD06B
4G169CB38
4G169CB65
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169FC07
4G169ZA03A
4G169ZA04B
4G169ZA06A
4G169ZA06B
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4H006AA02
4H006AB84
4H006FC32
4H006FE12
4H039CA40
4H039CH10
(57)【要約】
本発明は、有機合成の分野に関し、より詳細には、不均一系酸性触媒の存在下で行われる式(I)の1,4-ジオールまたは1,5-ジオールの脱水環化を含む、式(II)のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式
【化1】
[式中、mは、1または2であり;
各RおよびRは、別々に、互いに独立して、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~18アルキル基を表し;各RおよびRは、別々に、互いに独立して、水素原子、またはエーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~18アルキル基を表すか;各RおよびRは、一緒になって、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC4~11アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C2~18アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C4~9アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C2~9アルカンジイル基を表し;
は、水素原子またはC1~3アルキル基を表す]のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体を、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形で製造する方法であって、以下の式
【化2】
[式中、m、R、R、R、RおよびRは、式(II)のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体について定義されるのと同じ意味を有する]の1,4-ジオールまたは1,5-ジオールを、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形で脱水環化することを含み、
ここで、脱水環化は、不均一系酸性触媒の存在下で行われるが、ただし、
a)不均一系酸性触媒が粘土ではなく、
b)不均一系酸性触媒がアルミノケイ酸塩触媒である場合、ケイ素:アルミニウムの比が3:1以上であり、かつ
c)プロセスが超臨界条件下で実施されない
ことを条件とする、方法。
【請求項2】
前記不均一系酸性触媒が、結晶質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記不均一系酸性触媒が、ケイ素と、アルミニウム、ホウ素、鉄、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される第2の金属と、を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記不均一系酸性触媒が、カルシウム、カリウム、ナトリウムおよび/またはランタンを含まない、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記不均一系酸性触媒が、アルミノシリケート触媒である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記アルミノシリケート触媒が、ゼオライトである、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ゼオライトが、大細孔ゼオライトである、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ゼオライトが、FAU、BEAまたはMORトポロジーを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ケイ素:アルミニウム比が、3:1~300:1の間の範囲、好ましくは5:1~300:1の間の範囲に含まれる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
FAUトポロジーを有するゼオライトが、脱アルミニウムされた超安定Y型(USY)ゼオライトである、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ゼオライトが、そのプロトン型で使用される、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
mが1である、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記1,4-ジオールが、以下の式
【化3】
[式中、nは、0または1であり;
各R、R、R、R10は、別々に、互いに独立して、水素原子、またはエーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表し;Rは、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表すか;
およびRは、一緒になって、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC3~9直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C1~2直鎖状アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C3~10直鎖状または分岐状アルカンジイルを表し、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C1~3直鎖状または分岐状アルカンジイルを表し;かつ
11は、水素原子またはC1~3直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表す]の、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形の化合物である、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記オキサシクロペンタン誘導体が、以下の式
【化4】
[式中、nは、0または1であり;
各R、R、R、R10は、別々に、互いに独立して、水素原子、またはエーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表し;Rは、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表すか;
およびRは、一緒になって、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC3~9直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C1~2直鎖状アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C3~10直鎖状または分岐状アルカンジイルを表し、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C1~3直鎖状または分岐状アルカンジイルを表し;かつ
11は、水素原子またはC1~3直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表す]の、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形の化合物である、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記1,4-ジオールが、以下の式
【化5】
[式中、各RおよびR11は、請求項13に規定されるのと同じ意味を有し、かつ各R12およびR13は、互いに独立して、C1~3直鎖状または分岐状アルキル基を表す]の、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形の化合物である、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は有機合成の分野に関し、より詳細には、不均一系酸性触媒の存在下で行われる式(I)の1,4-ジオールまたは1,5-ジオールの脱水環化を含む、式(II)のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
背景
オキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体は、非常に望ましい骨格を表し、そのままで使用され得るか、または特に香料、化粧品、医薬品または農薬などの異なる分野でより複雑な化合物を製造するのに有用な主要な中間体として使用され得る。香料産業における関連するオキサシクロペンタン誘導体は、例えば、Cetalox(登録商標)(3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン;製造元:フィルメニッヒSA、ジュネーブ、スイス)またはAmbrox(登録商標)((3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン;製造元:フィルメニッヒSA、ジュネーブ、スイス)であり、天然のアンバーグリスの主要な成分である。これらの付香成分は、香料産業において最も求められている成分の一部を表す。Cetalox(登録商標)またはAmbrox(登録商標)を製造するためのいくつかの代替的な方法が開発されており、特に、最後の工程として1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールの脱水環化反応を介する方法が開発されている。
【0003】
一方、今日では、例えば不均一系触媒などのリサイクル可能な触媒を使用する、持続可能なプロセスを促進する必要がある。不均一系触媒の存在下での脱水環化反応、特に対応するジオールからCetalox(登録商標)またはAmbrox(登録商標)を製造するための脱水環化反応は、主に触媒として粘土を用いており、例えば米国特許第5670670号明細書または国際公開第2013007832号においてすでに報告されている。しかしながら、上記反応は、多量の粘土でしか例示されていない。加えて、粘土は、堆積および起源に依存する特性を有する天然材料であり、容易に複製することができず、有限資源であり、例えば、米国特許第5670670号明細書または国際公開第2013007832号に報告されているいくつかの粘土触媒は、もはや市販されていない。予測可能かつ安定な特性を有する、すなわち粘土とは異なる合成不均一系触媒の存在下での脱水環化反応の唯一の例が、米国特許出願公開第20100248316号明細書に開示されており、その際、多量の塩基性ゼオライトが必要とされている。
【0004】
したがって、高い転化率および選択性を維持しつつ、少量の不均一な信頼性の高い触媒の存在下で持続可能な脱水環化プロセスを開発する必要が依然としてある。
【0005】
本発明は、オキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体を製造するために不均一系酸性触媒を用いることによって上記の問題を解決することを可能にする。本発明者らの知る限り、本発明の条件は、従来技術では報告されていない。
【0006】
発明の概要
本発明は、従来技術では報告も示唆もされていない少量の不均一系酸性触媒の存在下で1,4-ジオールまたは1,5-ジオールを脱水環化することによるオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体の製造を可能にする新規な方法に関する。
【0007】
したがって、本発明の第1の対象は、以下の式
【化1】
[式中、mは、1または2であり、
各RおよびRは、別々に、互いに独立して、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~18アルキル基を表し;各RおよびRは、別々に、互いに独立して、水素原子、またはエーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~18アルキル基を表すか;各RおよびRは、一緒になって、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC4~11アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C2~18アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C4~9アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C2~9アルカンジイル基を表し;
は、水素原子またはC1~3アルキル基を表す]のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体を、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形で製造する方法であって、以下の式
【化2】
[式中、m、R、R、R、RおよびRは、式(II)のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体について定義されるのと同じ意味を有する]の1,4-ジオールまたは1,5-ジオールを、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形で脱水環化することを含み、
ここで、脱水環化は、不均一系酸性触媒の存在下で行われるが、ただし、
a)不均一系酸性触媒が粘土ではなく、
b)不均一系酸性触媒がアルミノケイ酸塩触媒である場合、ケイ素:アルミニウムの比が3:1以上であり、かつ
c)プロセスが超臨界条件下で実施されない
ことを条件とする、方法である。
【0008】
発明の説明
驚くべきことに、ここで1,4-ジオールまたは1,5-ジオールの脱水環化が、少量の不均一系酸性触媒の存在下で、選択性および転化率を損なうことなく粘土とは異なる触媒を選択することによって行われ得ることが発見された。
【0009】
したがって、本発明の第1の対象は、以下の式
【化3】
[式中、mは、1または2であり、
各RおよびRは、別々に、互いに独立して、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~18アルキル基を表し;各RおよびRは、別々に、互いに独立して、水素原子、またはエーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~18アルキル基を表すか;
各RおよびRは、一緒になって、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC4~11アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C2~18アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C4~9アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C2~9アルカンジイル基を表し;
は、水素原子またはC1~3アルキル基を表す]のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体を、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形で製造する方法であって、以下の式
【化4】
[式中、m、R、R、R、RおよびRは、式(II)のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体について定義されるのと同じ意味を有する]の1,4-ジオールまたは1,5-ジオールの、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形での脱水環化を含み、
ここで、脱水環化は、不均一系酸性触媒の存在下で行われるが、ただし、
a)不均一系酸性触媒が粘土ではなく、
b)不均一系酸性触媒がアルミノケイ酸塩触媒である場合、ケイ素:アルミニウムの比が3:1以上であり、かつ
c)プロセスが超臨界条件下で実施されない
ことを条件とする、方法である。
【0010】
明確にするために、「不均一系酸性触媒」という用語は、不均一系触媒が、触媒CBV100またはCBV320などの塩基性ではないことを意味する。換言すれば、不均一系酸性触媒は、CBV100またはCBV320ではない。
【0011】
明確にするために、「オキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン」または同様の用語は、当業者によって理解される通常の意味、すなわち、オキサシクロペンタン誘導体がテトラヒドロフラン誘導体であり、オキサシクロヘキサン誘導体がテトラヒドロピラン誘導体であることを意味する。
【0012】
明確にするために、「1,4-ジオールまたは1,5-ジオール」または同様の用語は、当業者によって理解される通常の意味、すなわち、4個または5個の炭素原子によって隔てられている少なくとも2つのアルコール官能基を有する化合物、例えば(OH)-CH-CH-CH-CH-(OH)または(OH)-CH-CH-CH-CH-CH-(OH)を意味する。当業者は、本発明の方法による1,4-ジオールの脱水環化によってオキサシクロペンタン誘導体が提供され、かつ本発明の方法による1,5-ジオールの脱水環化によってオキサシクロヘキサン誘導体が提供されることを熟知している。
【0013】
明確にするために、「その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物」という表現、または同様の表現は、当業者によって理解される通常の意味、すなわち、本発明で引用される化合物が純粋なエナンチオマーまたはエナンチオマーの混合物であり得ることを意味する。換言すれば、本発明で引用される化合物は、2つの異なる立体化学(例えば、RまたはS)を有し得る少なくとも1つの立体中心を有し得、例えば、R基は、少なくとも1つの立体中心を含み得る。上記化合物は、純粋なエナンチオマーの形であってもよく、またはエナンチオマーの混合物の形であってもよい。本発明で引用される化合物は、純粋なジアステレオ異性体の形であってもよく、または上記化合物が2つ以上の立体中心を有する場合にはジアステレオ異性体の混合物の形でさえあってもよい。上記化合物は、ラセミの形またはスケールミックの形であり得る。したがって、上記化合物は、1つの立体異性体であり得るか、または様々な立体異性体を含むか、またはそれらからなる組成物の形であり得る。
【0014】
「任意に」という用語は、基が特定の官能基によって置換され得るか、置換され得ないか、または特定の官能基を含むと理解される。
【0015】
「・・・任意に、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を含む」という用語は、これらの基が、アルキル基の水素原子を置換して上記アルキル基に横方向に結合され得るか、またはアルキル基の炭素原子を置換して(化学的に可能な場合)アルキル鎖に挿入され得ることを意味すると理解される。例えば、-CH-CH-CHOH-CH-基は、アルコール基を含むCアルキル基(水素原子の置換)を表し、-CH-CH-COO-CH-CH-OCO-CH-CH-基は、2つのエステル基を含むCアルキル基(炭素原子の置換/アルキル鎖への挿入)を表し、同様に、-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-基は、2つのエーテル基を含むCアルキル基を表す。
【0016】
「・・・RおよびRは、一緒になって、・・・C4~11直鎖状、分岐状または環状アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C2~18アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって・・・かつ/またはRおよびRは、一緒になって、・・・を表す」または同様の表現によって、上記基は(ポリ)環状アルキル基を形成し得ると理解される。換言すれば、化合物(I)は、非環式、単環式、二環式または三環式であってもよい。例えば、RおよびR、ならびにRおよびRが、一緒になる場合、式(I)の化合物は、デカリンなどの二環式部分を含む。例えば、R、RおよびRは、一緒になると、アルカントリイルを表す。
【0017】
「アルキル」および「アルカンジイル」という用語は、直鎖状、分岐状、環状または脂環式のアルキルおよびアルカンジイル基を含むと理解される。
【0018】
本発明の任意の実施形態によれば、不均一系酸性触媒は、粘土ではない。
【0019】
本発明の任意の実施形態によれば、不均一系酸性触媒は、非晶質または結晶質、特に結晶質であってよい。不均一系酸性触媒は、ケイ素と、アルミニウム、ホウ素、鉄、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される第2の金属とを含む。特に、不均一系酸性触媒は、アルミノシリケート触媒である。特に、アルミノシリケート触媒は、ゼオライトである。
【0020】
本発明の任意の実施形態によれば、不均一系酸性触媒は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属またはランタニドを含まない。さらにより具体的には、不均一系酸性触媒は、カルシウム、ナトリウム、カリウムおよび/またはランタンを含まない。「~を含まない」という用語は、触媒が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属またはランタニドを1ppm未満、さらには0.5ppm未満、さらには100ppb未満、さらには10ppb未満、さらには1ppb未満含み、さらには触媒が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属またはランタニドを含まないものとして理解される。
【0021】
本発明の特定の実施形態によれば、不均一系酸性触媒は、親水性表面を有する。
【0022】
本発明の任意の実施形態によれば、ゼオライトは、大細孔ゼオライトである。
【0023】
「大細孔ゼオライト」という用語は、当該技術分野における通常の意味、すなわち、6.0オングストローム~8オングストロームの間の範囲、特に6.0オングストローム~7.5オングストロームの間の範囲に含まれる細孔サイズを有する12員環ゼオライトを意味する。
【0024】
本発明の任意の実施形態によれば、ゼオライトは、FAU、BEAまたはMORトポロジーを有する。特に、ゼオライトは、FAUトポロジーを有する。特に、ゼオライトは、MFIトポロジーを有していない。
【0025】
本発明のいずれかの実施形態によると、不均一酸性触媒は、脱アルミニウム化ゼオライトである。脱アルミニウムは、従来、ゼオライト構造からアルミニウム原子を除去したものとして理解されている。脱アルミニウムによって、ゼオライトのケイ素:アルミニウム比が増加する。当該技術分野で知られている脱アルミニウムの適切な方法の非限定的な例は、水熱処理、酸性処理、ガス状ハロゲン化物もしくはハロゲンによる処理、またはキレート剤による錯化、または上述の処理の組み合わせである。当業者は、これらの方法およびそれらを実施する方法を認識している。
【0026】
本発明の任意の実施形態によれば、FAUトポロジーを有するゼオライトは、脱アルミニウムされた超安定Y型(USY)ゼオライトである。USYゼオライトは、典型的には、Y型ゼオライトから製造されて、その安定性を高め、骨格内アルミニウムを、イオン交換、スチーミング、酸浸出および焼成を含む処理の組み合わせで除去することによって、それらの触媒活性を改善する。このような処理は、例えば、米国特許第5601798号明細書および米国特許第4477336号明細書に記載されており、当業者に周知である。
【0027】
本発明の任意の実施形態によれば、ケイ素:アルミニウム比は、2.5:1以上、さらに3:1以上、5:1以上、さらにより8:1以上である。
【0028】
本発明の任意の実施形態によれば、ケイ素:アルミニウム比は、2.5:1~300:1の間の範囲に含まれる。特に、ケイ素:アルミニウム比は、3:1~300:1の間の範囲に含まれる。特に、ケイ素:アルミニウム比は、5:1~300:1の間の範囲に含まれる。特に、ケイ素:アルミニウム比は、5:1~150:1の間の範囲に含まれる。特に、ケイ素:アルミニウム比は、10:1~150:1の間の範囲に含まれる。さらにより具体的には、ケイ素:アルミニウム比は、10:1~70:1の間の範囲に含まれる。
【0029】
本発明の任意の実施形態によれば、ゼオライトは、そのプロトン型で使用される。後者は、製造業者によって直接提供され、そのまま使用することができるか、または必要に応じてアンモニウム交換体を焼成することによって得ることができる。理想的には、全てのサンプルを反応前に予備活性化させるべきである。予備活性化は、ゼオライトを300℃~600℃の間に含まれる温度で少なくとも1時間加熱することによって実施され得る。
【0030】
不均一系酸性触媒を本発明の方法の反応媒体中に添加して、式(II)のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体を広範囲の濃度で形成することができる。非限定的な例として、不均一系酸性触媒濃度値として、1,4-ジオールまたは1,5-ジオールの総量に対して0.5重量%~20重量%の範囲の値を挙げることができる。特に、不均一系酸性触媒濃度は、1重量%~15重量%の間に含まれ得る。さらにより具体的には、不均一系酸性触媒濃度は、3重量%~10重量%の間に含まれ得る。この方法は、より多くの触媒を用いても機能することは言うまでもない。しかしながら、不均一系酸性触媒の最適濃度は、当業者が知っているように、後者の性質、基質の性質、温度および所望の反応時間に依存することになる。
【0031】
不均一系酸性触媒は、市販の化合物であるか、または米国特許出願公開第20040141911号明細書、米国特許第6054113号明細書、および米国特許第4840930号明細書に報告されているような、いくつかの方法によって製造され得る。
【0032】
適切な不均一系酸性触媒の非限定的な例としては、CBV720(供給元Zeolyst)、CBV760(供給元Zeolyst)、CBV780(供給元Zeolyst)、HSZ-385HUA(供給元Zeolyst)、CBV21A(供給元Zeolyst)、HSZ-640HOA(供給元Tosoh)、CP814E(供給元Zeolyst)、CP814C(供給元Zeolyst)またはCP811C-300(供給元Zeolyst)が挙げられ得る。
【0033】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、式(II)のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体を製造するための本発明の方法は、超臨界条件下、すなわち、超臨界流体、例えば、超臨界水または超臨界COを使用して実施されない。
【0034】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、式(II)のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体を製造するための本発明の方法は、0℃~150℃の間に含まれる温度で実施される。特に、温度は、30℃~70℃の間の範囲にある。当然ながら、当業者は、出発物質および最終生成物の融点および沸点ならびに所望の反応時間、転化率または選択率に応じて好ましい温度を選択することもできる。
【0035】
式(II)のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体を製造する本発明の方法は、溶媒の存在下または非存在下で実施され得る。溶媒が実用上の理由で必要とされるか、または使用される場合、このような反応タイプの現行のあらゆる溶媒が、本発明の目的のために使用され得る。非限定的な例としては、C6~12芳香族溶媒、例えば、キシレン、トルエン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、クメンプソイドクメン、アニソールまたはクロロベンゼンまたはそれらの混合物、炭化水素溶媒、例えば、シクロヘキサン、ヘプタンまたはそれらの混合物、ニトリル溶媒、例えば、アセトニトリル、エステル溶媒、例えば、酢酸エチルまたはエーテル溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルテトラヒドロフランまたはそれらの混合物が挙げられる。溶媒の選択は、基質および/または触媒の性質に依存し、当業者は、反応を最適化するためにそれぞれの場合に最も適した溶媒をうまく選択することができる。
【0036】
式(II)のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体を製造する本発明の方法は、バッチ条件下または連続条件下で実施される。
【0037】
水は、本発明の方法の間に形成される。上記水は、例えば共沸蒸留によって、またはわずかな減圧下で本発明の方法を実施することによって、反応混合物から除去され得る。
【0038】
式(II)のオキサシクロペンタンまたはオキサシクロヘキサン誘導体を製造するための本発明の方法は、大気圧下またはわずかな減圧下で行われ得る。
【0039】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、1,4-ジオールまたは1,5-ジオールは、第一級アルコール基および第三級アルコール基を含む。
【0040】
本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、上記式(I)の1,4-ジオールまたは1,5-ジオールは、C9~20化合物である。
【0041】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、mは1であってもよい。換言すれば、式(I)の化合物は、1,4-ジオールであり、式(II)の化合物は、オキサシクロペンタン誘導体である。
【0042】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、RおよびRは、一緒になって、C3~18アルカンジイル基を表してもよい。特に、RおよびRは、一緒になって、C3~18の直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表してもよい。
【0043】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、1,4-ジオールは、以下の式
【化5】
[式中、nは、0または1であり、
各R、R、R、R10は、別々に、互いに独立して、水素原子、またはエーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表し;Rは、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表すか;
およびRは、一緒になって、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC3~9直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C1~2直鎖状アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C3~10直鎖状または分岐状アルカンジイルを表し、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C1~3直鎖状または分岐状アルカンジイルを表し;かつ
11は、水素原子またはC1~3直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表す]の、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形の化合物である。
【0044】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、オキサシクロペンタン誘導体は、以下の式
【化6】
[式中、nは、0または1であり、
各R、R、R、R10は、別々に、互いに独立して、水素原子、またはエーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表し;Rは、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表すか;
およびRは、一緒になって、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC3~9直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C1~2直鎖状アルカンジイル基を表し、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C3~10直鎖状または分岐状アルカンジイルを表し、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C1~3直鎖状または分岐状アルカンジイルを表し;かつ
11は、水素原子またはC1~3直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表す]の、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形の化合物である。
【0045】
特定の実施形態によれば、式(III)の化合物は、単環式、二環式または三環式化合物であってよく、式(IV)の化合物は、二環式または三環式化合物であってよい。好ましくは、式(III)の化合物は、単環式または二環式化合物であってよく、式(IV)の化合物は、二環式または三環式化合物であってよい。さらにより好ましくは、式(III)の化合物は、二環式化合物であってよく、式(IV)の化合物は、三環式化合物であってよい。式(III)の上記化合物は、合成または天然であり得る。
【0046】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、R、R、R、R10は、別々に、互いに独立して、水素原子またはエーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表してもよく;Rは、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表し得てもよく;または、RおよびRは、一緒になって、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC3~9直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表してもよく、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C1~2直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表してもよく、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C3~9直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表してもよく、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C1~3直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表してもよい。特に、R、R、R、R10は、別々に、互いに独立して、水素原子またはエーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~6アルキル基を表してもよく;Rは、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表してもよく;または、RおよびRは、一緒になって、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC3~8直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表してもよく、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C1~2直鎖状アルカンジイル基を表してもよく、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C3~8直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表してもよく、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C1~3直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表してもよい。特に、R、R、R、R10は、別々に、互いに独立して、水素原子またはエーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~4アルキル基を表してもよく;Rは、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~9アルキル基を表してもよく;または、RおよびRは、一緒になって、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドもしくはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC3~8直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表してもよく、かつ/またはRおよびRは、一緒になって、C1~2直鎖状アルカンジイル基を表してもよく、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C3~8直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表してもよく、かつ/またはRおよびR10は、一緒になって、C1~3直鎖状または分岐状アルカンジイル基を表してもよい。
【0047】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、上記R基は、水素原子またはC1~3アルキル基を表してもよい。特に、R基は、水素原子またはメチル基を表してもよい。さらにより具体的には、R基は、水素原子を表してもよい。
【0048】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、上記R基は、水素原子またはC1~3アルキル基を表してもよい。特に、R基は、水素原子またはメチル基を表してもよい。さらにより具体的には、R基は、水素原子を表してもよい。
【0049】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、上記R基は、水素原子またはC1~3アルキル基を表してもよい。特に、R基は、水素原子またはメチル基を表してもよい。さらにより具体的には、R基は、水素原子を表してもよい。
【0050】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、上記R10基は、水素原子またはC1~3アルキル基を表してもよい。特に、R10基は、水素原子またはメチル基を表してもよい。さらにより具体的には、R10基は、水素原子を表してもよい。
【0051】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、上記RおよびRは、一緒になって、C3~6直鎖状もしくは分岐状アルカンジイル基、またはさらに好ましくはC分岐状アルカンジイル基を表してもよい。
【0052】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、上記RおよびRは、一緒になって、C1~2直鎖状アルカンジイル基またはさらに好ましくはC直鎖状アルカンジイル基を表してもよい。
【0053】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、上記RおよびR10は、一緒になって、C3~6直鎖状もしくは分岐状アルカンジイル基、またはさらに好ましくはC分岐状アルカンジイル基を表してもよい。
【0054】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、上記RおよびR10は、一緒になって、C分岐状アルカンジイル基を表してもよい。
【0055】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、nは、1であってもよい。
【0056】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、1,4-ジオールは、以下の式
【化7】
[式中、各RおよびR11は、上記で定義されるのと同じ意味を有し、かつR12およびR13は、互いに独立して、C1~3直鎖状または分岐状アルキル基を表す]の、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形の化合物であってもよい。
【0057】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、オキサシクロペンタン誘導体は、以下の式
【化8】
[式中、各R、R11、R12およびR13は、上記で定義されるのと同じ意味を有する]の、その立体異性体のいずれか1つまたはそれらの混合物の形の化合物である。
【0058】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、Rは、エーテル、エステル、カルボニル、アミン、アミドまたはアルコール基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~6アルキル基であってもよい。特に、Rは、エーテル、エステルおよびカルボニル基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~4アルキル基であってもよい。特に、Rは、エーテル、エステルおよびカルボニル基の中から選択される1つまたは2つの官能基を任意に含むC1~3直鎖状または分岐状アルキル基であってもよい。特に、Rは、メチル、エチルまたはn-プロピル基であってもよい。さらにより具体的には、Rは、メチル基であってもよい。
【0059】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、R11は、C1~3直鎖状アルキル基であってもよい。特に、R11は、メチル基またはエチル基であってもよい。さらにより具体的には、R11は、メチル基であってもよい。
【0060】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、R12は、メチル基またはエチル基であってもよい。さらにより具体的には、R12は、メチル基であってもよい。
【0061】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、R13は、メチル基またはエチル基であってもよい。さらにより具体的には、R13は、メチル基であってもよい。
【0062】
本発明の特定の実施形態によれば、1,4-ジオールは、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールであってもよく、対応するオキサシクロペンタン誘導体は、4つの立体中心を有し、RもしくはSの配置、またはそれらの混合物である3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フランであってもよい。換言すれば、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールは、実質的に純粋な立体異性体の形または立体異性体の混合物の形であってもよい。本発明の特定の実施形態によれば、化合物(I)、(III)または(V)は、両方の立体異性体(1RS,2RS,4aSR,8aSR)-1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールおよび(1RS,2SR,4aSR,8aSR)-1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールの少なくとも80%を含有する、立体異性体の混合物の形の1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールであってもよい。特に、化合物(I)、(III)または(V)は、(1RS,2RS,4aSR,8aSR)-1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールの少なくとも50%を含有する立体異性体の混合物の形の1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールであってもよい。さらにより具体的には、化合物(I)、(III)または(V)は、(1RS,2RS,4aSR,8aSR)-1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールの少なくとも75%を含有する立体異性体の混合物の形の1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールであってもよい。本発明の特定の実施形態によれば、化合物(I)、(III)または(V)は、(1RS,2RS,4aSR,8aSR)-1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールであってもよい。明確にするために、「1RS,2RS,4aSR,8aSR」という表現は、1R,2R,4aS,8aSと1S,2S,4aR,8aRとの等モル混合物を意味し、「1RS,2SR,4aSR,8aSR」という表現は、1R,2S,4aS,8aSと1S,2R,4aR,8aSRとの等モル混合物を意味する。本発明の特定の実施形態によれば、化合物(I)、(III)または(V)は、(1R,2R,4aS,8aS)-1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールであってもよい。
【0063】
本発明の任意の実施形態によれば、本発明の方法は、立体選択的である。換言すれば、1,4-ジオール(1R,2R,4aS,8aS)-1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールの脱水環化によって、(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フランが提供される。
【0064】
式(I)、(III)(V)の化合物は、当該技術分野で公知のいくつかの方法によって、例えば、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オールの場合に製造することができ、上記化合物は、国際公開第2019175158号で報告されているように、スクラレオリドの水素化によって得ることができる。
【0065】
本発明の方法を実施するための典型的な方法は、本明細書において以下の実施例で報告される。
【実施例
【0066】
本発明は、ここで以下の実施例によってさらに詳細に説明されることになるが、略語は、当該技術分野における通常の意味を有し、温度は、摂氏(℃)で示される。HP5カラム(30m×0.25mmID、0.25μmフィルム)を備えたAgilent 7890 Aシリーズでガスクロマトグラフィーの準備を行い、内部標準としてテトラデカンを使用した。
【0067】
[実施例1]
(ゼオライト触媒の予備活性化のための典型的な実験手順)
a)静空気中
表Iに報告されているような、そのままの状態のゼオライト10gを、マッフル炉(静空気)内に置き、10℃min-1で550℃まで3時間加熱した。
【0068】
b)流動ガス下
表Iに報告されているようなそのままの状態のゼオライト30kg、特にCBV780を、管状オーブン内に置き、窒素または空気(50mL/分)を流しながら5℃min-1で550℃まで3時間加熱した。
【0069】
[実施例2]
(1,4-ジオールから出発してオキサシクロペンタンを製造するための一般的な脱水環化の手順)
(1S,2R,4aS,8aS)-1-(ヒドロキシメチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オール(1,4-ジオール、80g、0.317モル)を、500mlの反応器に装入し、20重量%でトルエン(320g、3.47モル)を用いて希釈し、次いで50℃に加熱した。所望の温度に達したら、表Iからの予備活性化されたゼオライト(6.42g-予備活性化を実施例1で報告したように実施した)を添加し、この反応物を6時間撹拌することにより、93.5%の所望の(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン生成物(オキサシクロペンタン)が得られた。様々なゼオライトのトポロジーおよび構造を使用した際の脱水環化の結果を、表Iに報告し、ゼオライトの酸性度およびトポロジーの重要な役割を証明する。
【表1-1】
【表1-2】
【0070】
[実施例3]
(異なる溶媒を使用して1,4-ジオールから出発してオキサシクロペンタンを製造するための脱水環化)
予備活性化されたCBV780を使用し、表IIに包含されるように様々な溶媒中で反応を実施して、実施例2を繰り返した。
【表2】
【0071】
[実施例4]
(減圧下で1,4-ジオールから出発してオキサシクロペンタンを製造するための脱水環化)
4gのCBV780(5重量%)を使用し、in-situで形成された水を徐々に除去するために減圧下で12時間にわたり反応を実施して、実施例2を繰り返した。濾過および蒸留による分離後、99.9GC%で(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン90.0モル%の単離収率が得られた。
【0072】
[実施例5]
(予備活性化されていないCBV780を使用して1,4-ジオールから出発してオキサシクロペンタンを製造するための脱水環化)
5重量%の予備活性化されていないCBV780(そのままの状態)を使用し、70℃で4時間にわたり反応を実施して、実施例2を繰り返した。これらの条件下で、88%の所望の(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フランが得られた。この反応は、50℃で24時間行うこともでき、90GC%の所望のオキサシクロペンタンが得られる。
【0073】
[実施例6]
(乾燥状態で強酸性イオン交換樹脂を使用して1,4-ジオールから出発してオキサシクロペンタンを製造するための脱水環化)
(1S,2R,4aS,8aS)-1-(ヒドロキシメチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オール(1,4-ジオール、80g、0.317モル)を、500mlの反応器に装入し、20重量%でトルエン(320g、3.47モル)を用いて希釈し、次いで50℃に加熱した。所望の温度に達したら、Amberlyst A-15乾物(4g)を添加し、この反応物を6時間撹拌することにより、69.7%の所望の(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン生成物(オキサシクロペンタン)が得られた。同様の結果は、Amberlyst A-35乾物を使用した際に得られる。
【国際調査報告】