IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルコン インコーポレイティドの特許一覧

特表2024-529644硝子体切除プローブのためのエアタービン駆動式ロータリ弁
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】硝子体切除プローブのためのエアタービン駆動式ロータリ弁
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A61F9/007 130F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506500
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 IB2022056648
(87)【国際公開番号】W WO2023021343
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/234,765
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ティー.チャールズ
(57)【要約】
特定の実施形態は、ハウジングと、ハウジングの内部に配置されたアクチュエータと、アクチュエータに結合され、且つハウジングから延びるカッタと、ハウジングの内部に配置されたエアタービンとを含む硝子体切除プローブを提供する。エアタービンは、ロータと、ロータに結合された複数のタービンブレードとを含む。硝子体切除プローブは、ロータとインターフェースする弁体を含む。エアタービンの回転中、空気は、弁体に対するロータの回転位置に従い、アクチュエータに及びアクチュエータから選択的に導かれ、それによりカッタを往復運動させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置されたアクチュエータと、
前記アクチュエータに結合され、且つ前記ハウジングから延びるカッタと、
前記ハウジングの内部に配置されたエアタービンであって、
ロータと、
前記ロータに結合された複数のタービンブレードと、
を含むエアタービンと、
前記ロータとインターフェースする弁体と、
を含む硝子体切除プローブであって、
前記エアタービンの回転中、空気は、前記弁体に対する前記ロータの回転位置に従い、前記アクチュエータに及び前記アクチュエータから選択的に導かれ、それにより前記カッタを往復運動させる、硝子体切除プローブ。
【請求項2】
前記カッタの作動速度は、前記エアタービンの入口に加えられる空気圧に基づいて調整される、請求項1に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項3】
前記ロータは、
前記ハウジングで密閉された外面と、
前記外面から前記ロータの遠位端までの前記ロータ内の第1の流路であって、前記アクチュエータに空気を供給するように構成される第1の流路と、
を含む、請求項1に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項4】
前記ロータの前記遠位端における前記第1の流路の開口部は、約60度~約120度の角度を有する円弧状のセグメントを含む、請求項3に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項5】
前記弁体は、前記ハウジングに結合されるか又は前記ハウジングと一体であり、且つ前記ロータの前記第1の流路から前記アクチュエータの対応するチャンバに空気を供給するように構成される、請求項3に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項6】
前記弁体は、
前記ロータの前記遠位端と気密的に接触する近位端と、
前記アクチュエータの第1のチャンバと流体連通する、前記弁体の前記近位端における第1のアパーチャと、
前記アクチュエータの第2のチャンバと流体連通する、前記弁体の前記近位端における第2のアパーチャと、
を含む、請求項5に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項7】
前記弁体の前記第1のアパーチャ及び第2のアパーチャは、前記弁体の前記近位端の半径方向反対側に位置する円弧状のセグメントを含む、請求項6に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項8】
前記弁体の前記第1のアパーチャ及び第2のアパーチャの前記円弧状のセグメントは、約60度~約120度の角度をそれぞれ有する、請求項7に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項9】
前記ロータが第1の回転位置にあるとき、前記ロータの前記第1の流路は、前記弁体の前記第1のアパーチャと流体連通し、それにより前記アクチュエータの前記第1のチャンバに空気を供給して前記カッタを第1の方向に移動させ、及び、
前記ロータが第2の回転位置にあるとき、前記ロータの前記第1の流路は、前記弁体の前記第2のアパーチャと流体連通し、それにより前記アクチュエータの前記第2のチャンバに空気を供給して、前記カッタを、前記第1の方向とは反対の第2の方向に移動させる、請求項6に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項10】
前記ロータが前記第1の回転位置にあるとき、前記ロータの第2の流路は、前記弁体の前記第2のアパーチャと流体連通し、それにより前記アクチュエータの前記第2のチャンバから空気を排出し、及び、
前記ロータが前記第2の回転位置にあるとき、前記ロータの前記第2の流路は、前記弁体の前記第1のアパーチャと流体連通し、それにより前記アクチュエータの前記第1のチャンバから空気を排出する、請求項9に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項11】
前記ロータは、前記ロータ内における第2の流路を更に含み、前記第2の流路は、前記遠位端から前記外面まで延び、前記第2の流路は、前記ハウジングの出口と流体連通する、請求項6に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項12】
前記ロータは、前記ロータの前記遠位端に第2の流路を更に含み、
前記弁体は、前記弁体の前記近位端に第3のアパーチャを更に含み、
前記第3のアパーチャは、ロータの半径方向中央に位置する前記第2の流路の一部分と軸方向に整列され、及び、
前記第3のアパーチャは、前記ハウジングの出口と流体連通する、請求項6に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項13】
前記ハウジングは、
前記エアタービン及び前記アクチュエータと流体連通する入口であって、前記エアタービンの回転は、前記入口から前記アクチュエータへの空気流によって駆動される、入口と、
前記アクチュエータから空気を排出するための出口と、
を含む、請求項1に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項14】
前記ハウジングは、
第1の入口と、
前記第1の入口と流体連通する第1の出口であって、前記エアタービンの回転は、前記第1の入口から前記第1の出口への空気流によって駆動される、第1の出口と、
前記第1の入口及び前記第1の出口から流体的に隔離されている、前記アクチュエータに空気を供給するための第2の入口と、
前記アクチュエータから空気を排出するための第2の出口と、
を含む、請求項1に記載の硝子体切除プローブ。
【請求項15】
前記ロータの外面は、前記第1の入口及び前記第1の出口から前記第2の入口を隔離するために前記ハウジングで密閉される、請求項14に記載の硝子体切除プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、発明者がSteven T.Charlesである、2021年8月19日に出願された「AIR TURBINE DRIVEN ROTARY VALVE FOR VITRECTOMY PROBE」という名称の米国仮特許出願第63/234,765号明細書の優先権の利益を主張するものであり、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
特定の眼科手術処置は、眼の後区を満たす透明なゲル状物質である硝子体液の一部の切断及び除去を必要とする。硝子体液又は硝子体は、網膜に付着し得る多数の微細線維から構成される。したがって、硝子体の切断及び除去は、網膜の牽引、網膜色素上皮及び脈絡膜からの網膜の剥離、網膜裂孔又は最悪の場合には網膜自体の切断及び除去を回避するために、細心の注意を払って行わなければならない。特に、可動組織管理(例えば、網膜の剥離部分又は網膜裂孔の近傍での硝子体の切断及び除去)、硝子体基底部切開並びに膜の切断及び除去などの繊細な操作は、特に困難である。
【0003】
従来の硝子体切除プローブは、2つのタイプ:軸方向、すなわち「ギロチン式」プローブ及び回転式プローブに分けることができる。軸方向、すなわちギロチン式プローブは、その長手方向軸に沿って並進的に往復運動する内側切除部材(「カッタ」とも呼ばれる)を有する。内側切除部材は、その遠位端にポートを含む外側切除部材内に配置される。硝子体及び/又は膜は、外側切除部材の開放ポートに吸引される。硝子体及び/又は膜は、内側切除部材が往復運動する際に剪断される。その後、切除された組織は、眼から吸引される。内側切除部材は、1秒間に数十回~数百回の速度で往復運動し得る。
【0004】
回転式又はロータリプローブは、その長手方向軸の周りを高速で回転する内側切除部材を有する。概して、回転式プローブは、内側切除部材の連続回転又は往復回転(例えば、角回転を制限する限定回転動作駆動機構を使用する)のいずれかを使用する。連続回転の使用により、線維の望ましくない巻き付き及び/又は断裂(切断とは対照的)が起こる可能性がある。
【0005】
上記のようなカッタの軸方向又は回転方向の往復動中、外側切除部材の遠位端のポートを通して望ましくないポンプ作用又はパルス流が生じることがある。パルス流は、内側切除部材がポートに向けて移動する際に流体をポートから押し出し、内側切除部材がポートから離れる際に追加の流体をポートに引き込む。特定の場合、パルス流は、特に網膜周辺部に付着した膠原細線維を引っ張ると、網膜、水晶体嚢又は虹彩を損傷する可能性がある。
【0006】
両方のタイプの硝子体切除プローブにおいて、カッタは、1つ以上の高速空気圧式電磁弁(「駆動弁」とも呼ばれる)を含む空気圧式硝子体切除機械(「外科用コンソール」とも呼ばれる)によって動力を供給される。カッタは、電磁弁の作用によって外科用コンソールの2つの出力ポートに交互に導かれる加圧空気によって動力を供給され得る。空気圧パルスは、カッタの往復運動を駆動するアクチュエータの対応するチャンバに加えられる前に、外科用コンソールの出力ポートから複数フィートのエラストマーチューブを通して運ばれる。残念ながら、電磁弁は、外科用コンソールのコスト及び騒音を増加させ、チューブの振動は、追加の騒音及び熱を生じさせる。更に、空気圧パルスがアクチュエータに到達するまでに、上述のような眼内のパルス流に関連する問題を更に悪化させるかなりのパルスの広がりが発生している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上記の欠点の少なくともいくつかに対処する改良された硝子体切除プローブが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、全般的に、硝子体切除プローブに関する。
【0009】
本明細書中に記載される特定の実施形態は、ハウジングと、ハウジングの内部に配置されたアクチュエータと、アクチュエータに結合され、且つハウジングから延びるカッタと、ハウジングの内部に配置されたエアタービンとを含む硝子体切除プローブを提供する。硝子体切除プローブは、ロータとインターフェースする弁体を含む。エアタービンは、ロータと、ロータに結合された複数のタービンブレードとを含む。エアタービンの回転中、空気は、弁体に対するロータの回転位置に従い、アクチュエータに及びアクチュエータから選択的に導かれ、それによりカッタを往復運動させる。
【0010】
以下の説明及び関連する図面は、1つ以上の実施形態の特定の例示的な特徴を詳述する。
【0011】
添付の図面は、1つ以上の実施形態の特定の態様を示すものであり、したがって本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】特定の実施形態による硝子体切除プローブの断面図を示す。
図1B】特定の実施形態による、図1Aの硝子体切除プローブの部分切欠等角図を示す。
図1C】特定の実施形態による、図1Aの硝子体切除プローブの一部分の拡大断面図を示す。
図1D】特定の実施形態による、図1Cの断面線1D-1Dに沿って取られた断面図を示す。
図1E】特定の実施形態による、図1Cの断面線1E-1Eに沿って取られた断面図を示す。
図1F】特定の実施形態による、図1Cの断面線1F-1Fに沿って取られた断面図を示す。
図2A】特定の実施形態による別の硝子体切除プローブの断面図を示す。
図2B】特定の実施形態による、図2Aの硝子体切除プローブの部分切欠等角図を示す。
図2C】特定の実施形態による、図2Aの硝子体切除プローブの一部分の拡大断面図を示す。
図2D】特定の実施形態による、図2Cの断面線2D-2Dに沿って取られた断面図を示す。
図2E】特定の実施形態による、図2Cの断面線2E-2Eに沿って取られた断面図を示す。
図2F】特定の実施形態による、図2Cの断面線2F-2Fに沿って取られた断面図を示す。
図3】特定の実施形態による更に別の硝子体切除プローブの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
理解を容易にするために、図面間で共通の同一要素を示すために、可能な場合、同一の参照符号が使用される。更なる説明を伴わずに、1つの実施形態の要素及び特徴を他の実施形態に有益に組み込むことができるように企図される。
【0014】
上述のように、従来の硝子体切除プローブは、外科用コンソールにおける弁調節に依存して、空気圧パルスを、2つの対応する長さのチューブを通して交互に導く。これは、外科用コンソールのコスト及び騒音を増加させ、チューブ内に更なる騒音及び熱を発生させ、かなりの空気圧パルスの広がりをもたらし、眼内のパルス流に関連する問題を更に悪化させる。本開示に記載される特定の実施形態は、外科用コンソール内の空気弁に取って代わるエアタービン駆動式ロータリ弁を備える硝子体切除プローブを提供することにより、これらの欠点を克服しようとするものである。特定の実施形態では、弁調節を外科用コンソールから硝子体切除プローブに移転することで、エラストマーチューブ内で通常発生する空気圧パルスの広がりを低減又は防止する。更に、空気圧パルスによるエラストマーチューブの振動も低減又は防止される。特定の実施形態では、切除速度が高くなるほど、カッタによって剪断される前に線維が引っ張られる距離が減少することにより、パルス流に起因する損傷を軽減することができる。
【0015】
図1Aは、特定の実施形態による硝子体切除プローブ100の断面図を示す。図1Bは、特定の実施形態による、図1Aの硝子体切除プローブ100の部分切欠等角図を示す。したがって、明確にするために、図1A図1Bを本明細書では一緒に説明する。
【0016】
硝子体切除プローブ100は、概して、ハウジング102と、ハウジング102の内部に配置されたエアタービン110と、ハウジング102の内部に配置された弁体130と、ハウジング102の内部に配置されたアクチュエータ150と、アクチュエータ150に結合され、且つハウジング102から延びるカッタ160とを含む。図1Aに示すように、ハウジング102、エアタービン110、弁体130、アクチュエータ150及びカッタ160は、中心軸101に平行に軸方向に整列される。硝子体切除プローブ100は、エラストマーチューブなどのある長さのチューブ176を介して空気供給源170に結合される。チューブ176を通る空気の流れは、コントローラ174を使用して作動される空気供給弁172によって調整される。特定の実施形態では、空気供給弁172は、出力流量を調整するための空気圧式流量制御弁である。特定の実施形態では、空気供給源170、空気供給弁172及びコントローラ174は、外科用コンソール内に配置されるか又は外科用コンソールに結合される。
【0017】
図1Aに示すように、ハウジング102は、単一の入口104及び単一の出口106を含む。入口104は、エアタービン110、弁体130及びアクチュエータ150と流体連通する。概して、以下で更に詳細に説明するように、エアタービン110の回転は、入口104からアクチュエータ150への空気流によって駆動される。実際には、カッタ160の作動速度は、入口104に加えられる空気圧に基づいて調整される。出口106は、アクチュエータ150から空気を排出するために、アクチュエータ150と流体連通する。
【0018】
エアタービン110は、概して、ロータ112と、ロータ112に結合された複数のタービンブレード114とを含む。ロータ112及び弁体130は、カッタ160を往復運動させるためのアクチュエータ150への空気流を調整するインターフェースを有する弁機構(「ロータリ弁」とも呼ばれる)を集合的に形成する。弁機構の可動部は、ロータ112と一体である。したがって、エアタービン110の回転中、空気は、弁体130に対するロータ112の回転位置に従い、アクチュエータ150に及びアクチュエータ150から選択的に導かれる。換言すれば、弁体130に対するロータ112の回転位置により、弁機構のインターフェースを通る空気流を制御する。弁機構の動作について、以下でより詳細に説明する。入口104と出口106との間の流体連通を阻止するために、ロータ112の外面116は、ハウジング102で密閉される。図示の実施形態では、密閉は、Oリングシール118によって提供される。しかしながら、他の密閉機構も企図される。
【0019】
弁体130は、ロータ112の遠位端からアクチュエータ150の対応するチャンバに空気を導くように構成された複数のアパーチャを有する。図示の実施形態では、弁体130は、ハウジング102に結合される。代替的に、弁体130は、ハウジング102と一体であり得る。弁体130について、図1Cに関して以下で更に詳細に説明する。
【0020】
アクチュエータ150は、概して、カッタ160に結合されたダイアフラム152と、ダイアフラム152の第1の側に位置する第1のチャンバ154aと、ダイアフラム152の第2の反対側に位置する第2のチャンバ154bとを含む。第1のチャンバ154aは、第1のフローライン156aを介して弁体130の対応するアパーチャと流体連通する。同様に、第2のチャンバ154bは、第2のフローライン156bを介して弁体130の対応するアパーチャと流体連通する。したがって、以下で更に詳細に説明するように、弁体130に対してロータ112の回転位置を制御することにより、入口104からの空気は、アクチュエータ150の第1のチャンバ154a又は第2のチャンバ154bのいずれかに選択的に供給され、反対のチャンバ内の空気は、同時に出口106に排出される。
【0021】
カッタ160の近位端は、アクチュエータ150に結合される。カッタ160の遠位端は、ハウジング102から延びる。カッタ160の遠位端は、ハウジング102の遠位端から延びる外側切除部材162の内部に配置される。以下で更に詳細に説明するように、カッタ160は、アクチュエータ150の第1のチャンバ154a及び第2のチャンバ154bに空気圧差が適用されると、中心軸101に平行な方向に往復運動する。ポート164は、外側切除部材162の半径方向壁に配置される。硝子体及び/又は膜は、切除中にポート164に吸引される。硝子体及び/又は膜は、カッタ160が外側切除部材162の内部で往復運動すると剪断される。その後、切除された組織は、眼から吸引される。硝子体切除プローブ100は、アクチュエータ150及びカッタ160が中心軸101に平行な方向に往復運動する軸方向、すなわち「ギロチン式」プローブを含む。本開示の実施形態は、中心軸101の周りを周方向に往復運動するアクチュエータ及びカッタを有するロータリプローブと一緒にも使用され得る。
【0022】
図1Cは、特定の実施形態による、図1Aの硝子体切除プローブ100の一部分の拡大断面図を示す。図1Cに示すように、第1の流路120は、ロータ112内に配置される。第1の流路120は、外面116の第1の半径方向開口部120aからロータ112の遠位端122の第1の遠位開口部120bまで延びる。第1の流路120は、図1Dに更に図示されている。第1の半径方向開口部120aは、Oリングシール118に対して近位方向に位置する。本明細書に記載されるように、構成要素の近位端又は近位部分は、その使用中に患者の身体からより遠い距離にある端部又は部分を指すことに留意されたい。他方で、構成要素の遠位端又は遠位部分は、患者の身体により近い端部又は部分を指す。第1の流路120は、第1の環状部124を介して入口104と流体連通する。第1の環状部124は、ロータ112の可能な各回転位置における入口104と第1の流路120との間の継続的な流体結合を維持するために、ロータ112の外面116とハウジング102との間に半径方向に配置される。
【0023】
第2の流路126は、ロータ112内に配置される。第1の流路120と同様に、第2の流路126は、外面116の第2の半径方向開口部126aからロータ112の遠位端122の第2の遠位開口部126bまで延びる。第2の半径方向開口部126aは、Oリングシール118に対して遠位方向に位置する。図1Cに示すように、第1の半径方向開口部120a及び第2の半径方向開口部126aは、ロータ112上で180°離れて位置する。他のいくつかの実施形態では、半径方向開口部は、ロータ112の中心軸101に平行に整列される。第2の流路126は、第2の環状部128を介して出口106と流体連通する。第2の流路126は、入口104から流体的に隔離される。第1の環状部124と同様に、第2の環状部128は、ロータ112の可能な各回転位置における第2の流路126と出口106との間の継続的な流体結合を維持するために、ロータ112の外面116とハウジング102との間に半径方向に配置される。
【0024】
弁体130の近位端132は、ロータ112の遠位端122と気密的に接触する。弁体130の近位端132の第1のアパーチャ134は、第1のフローライン156aと流体連通する。弁体130の近位端132の第2のアパーチャ136は、第2のフローライン156bと流体連通する。
【0025】
図1Eは、特定の実施形態による、図1Cの断面線1E-1Eに沿って取られた断面図を示す。図1Eに示すように、第1のアパーチャ134及び第2のアパーチャ136は、弁体130の近位端132の半径方向反対側に位置する円弧状のセグメントをそれぞれ含む。第1のアパーチャ134及び第2のアパーチャ136は、約60度~約120度の角度をそれぞれ有する。
【0026】
図1Fは、特定の実施形態による、図1Cの断面線1F-1Fに沿って取られた断面図を示す。図1Fに示すように、ロータ112の第1の遠位開口部120b及び第2の遠位開口部126bは、約60度~約120度の角度を有する円弧状のセグメントをそれぞれ含む。第1の遠位開口部120b及び第2の遠位開口部126bは、遠位端122上で半径方向反対側に、すなわち180°離れて位置する。
【0027】
図1A図1Fをまとめて参照して、硝子体切除プローブ100の動作を以下で説明する。ロータ112が図示の位置にあるとき、ロータ112の第1の流路120は、弁体130の第1のアパーチャ134と流体連通し、それによりアクチュエータ150の第1のチャンバ154aに空気を供給して、カッタ160をハウジング102に対して近位方向に移動させる。ロータ112が図示の位置にあるとき、ハウジング102の出口106は、アクチュエータ150の第2のチャンバ154bと流体連通する。この位置において、第2のチャンバ154b内の空気は、弁体130の第2のアパーチャ136を通り、ロータ112の第2の流路126を通り、その後、ハウジング102の出口106を通して排出される。
【0028】
ロータ112を図示の位置から180°回転させるとき、ロータ112の第1の流路120は、弁体130の第2のアパーチャ136と流体連通し、それによりアクチュエータ150の第2のチャンバ154bに空気を供給して、カッタ160をハウジング102に対して遠位方向に移動させる。ロータ112を図示の位置から180°回転させるとき、ハウジング102の出口106は、アクチュエータ150の第1のチャンバ154aと流体連通する。この位置において、第1のチャンバ154a内の空気は、弁体130の第1のアパーチャ134を通り、ロータ112の第2の流路126を通り、その後、ハウジング102の出口106を通して排出される。
【0029】
図2Aは、特定の実施形態による別の硝子体切除プローブ200の断面図を示す。図2Bは、特定の実施形態による、図2Aの硝子体切除プローブ200の部分切欠等角図を示す。したがって、明確にするために、図2A図2Bを本明細書では一緒に説明する。
【0030】
硝子体切除プローブ200は、エアタービン210及びアクチュエータ250を独立して駆動するための別個の流路を有する。これは、エアタービン110及びアクチュエータ150の両方が、入口104から到来する同じ空気流によって駆動される上述の硝子体切除プローブ100とは対照的である。図2Aに示すように、硝子体切除プローブ200は、第2の長さのチューブ276を介して空気供給源170に結合される。チューブ276を通る空気の流れは、コントローラ174を使用して作動される第2の空気供給弁272によって調整される。特定の実施形態では、第2の空気供給弁272は、空気供給弁172と同様の、出力流量を調整するための空気圧式流量制御弁である。特定の実施形態では、空気供給弁272は、外科用コンソール内に配置されるか又は外科用コンソールに結合される。図2Aに示すように、ハウジング202は、第1の入口204と、第1の入口204と流体連通する第1の出口206とを含む。第1の入口204及び第1の出口206は、エアタービン210のブレード114と流体連通する。概して、エアタービン210の回転は、第1の入口204から第1の環状部224を通して第1の出口206に向かう空気流によって駆動される。第1の環状部224は、ロータ212の外面216とハウジング202との間に半径方向に配置される。実際には、カッタ160の作動速度は、第1の入口204に加えられる空気圧に基づいて調整される。
【0031】
ハウジング202は、第1の入口204及び第1の出口206から流体的に隔離された第2の入口205を含む。第2の入口205と、第1の入口204又は第1の出口206のいずれかとの間の流体連通を阻止するために、ロータ212の外面216は、ハウジング202で密閉される。第2の入口205は、アクチュエータ150に空気を供給するように設けられる。ハウジング202は、アクチュエータ150から空気を排出するための第2の出口207を更に含む。硝子体切除プローブ200を図2Aに示されるように見た場合、ハウジング202の第2の出口207は、図2Eにより明確に示されるように、ページの平面内に方向付けられることに留意されたい。
【0032】
図2Cは、特定の実施形態による、図2Aの硝子体切除プローブ200の一部分の拡大断面図を示す。図2Cに示すように、ロータ212内に配置された第1の流路220は、第2の入口205と流体連通し、これは、硝子体切除プローブ100(図1Cに示す)の設計とは対照的である。第1の流路220は、外面216の第1の半径方向開口部220aからロータ212の遠位端222の第1の遠位開口部220bまで延びる。第1の流路220は、図2Dに更に図示されている。第1の半径方向開口部220aは、Oリングシール118に対して遠位方向に位置する。第1の流路220は、第2の環状部228を介して第2の入口205と流体連通する。第2の環状部228は、ロータ212のそれぞれの可能な回転位置における第2の入口205と第1の流路220との間の継続的な流体結合を維持するために、ロータ212の外面216とハウジング202との間に半径方向に配置される。
【0033】
第2の流路226は、ロータ212の遠位端222に配置される。第2の流路226は、第2の入口205から流体的に隔離される。硝子体切除プローブ100(図1Cに示す)とは対照的に、第2の流路226は、外面216まで延びない。代わりに、第2の流路226は、第1の部分226aと、第1の部分226aの半径方向内側に位置する第2の部分226bとを有する単一の遠位開口部からなる。第2の部分226bは、ロータ212の半径方向中央に位置する。弁体230は、近位端232に形成された第3のアパーチャ235を有し、第3のアパーチャ235は、第2の流路226の第2の部分226bと軸方向に整列される。第3のアパーチャ235は、ハウジング202の第2の出口207と流体連通する。第2の部分226b及び第3のアパーチャ235は、それぞれ中心軸101上に位置するため、ロータ212のそれぞれの可能な回転位置における第2の部分226bと第3のアパーチャ235との間の流体連通が維持され、それにより第2の出口207を通して空気が連続的に排出されることを可能にする。
【0034】
図2Eは、特定の実施形態による、図2Cの断面線2E-2Eに沿って取られた断面図を示す。図2Eに示すように、第1のアパーチャ234及び第2のアパーチャ236は、弁体230の近位端232の半径方向反対側に位置する円弧状のセグメントをそれぞれ含む。第1のアパーチャ234及び第2のアパーチャ236は、約60度~約120度の角度をそれぞれ有する。図示の実施形態では、第3のアパーチャ235は、円形である。
【0035】
図2Fは、特定の実施形態による、図2Cの断面線2F-2Fに沿って取られた断面図を示す。図2Fに示すように、第1の遠位開口部220b及び第2の流路226の第1の部分226aは、約60度~約120度の角度をそれぞれ有する円弧状のセグメントを含む。第1の遠位開口部220b及び第1の部分226aは、遠位端222上で半径方向反対側に、すなわち180°離れて位置する。図示の実施形態では、第2の流路226の第2の部分226bは、弁体230の第3のアパーチャ235の円形形状に対応する円形形状を有する。
【0036】
図2A図2Fをまとめて参照して、硝子体切除プローブ200の動作を以下で説明する。ロータ212が図示の位置にあるとき、ロータ212の第1の流路220は、弁体230の第1のアパーチャ234と流体連通し、それによりアクチュエータ150の第1のチャンバ154aに空気を供給して、カッタ160をハウジング202に対して近位方向に移動させる。ロータ212が図示の位置にあるとき、ハウジング202の第2の出口207は、アクチュエータ150の第2のチャンバ154bと流体連通する。この位置において、第2のチャンバ154b内の空気は、弁体230の第2のアパーチャ236を通り、ロータ212の第2の流路226を通り、その後、弁体230の第3のアパーチャ235を通して排出される。
【0037】
ロータ212を図示の位置から180°回転させるとき、ロータ212の第1の流路220は、弁体230の第2のアパーチャ236と流体連通し、それによりアクチュエータ150の第2のチャンバ154bに空気を供給して、カッタ160をハウジング202に対して遠位方向に移動させる。ロータ212を図示の位置から180°回転させるとき、ハウジング202の第2の出口207は、アクチュエータ150の第1のチャンバ154aと流体連通する。この位置において、第1のチャンバ154a内の空気は、弁体230の第1のアパーチャ234を通り、ロータ212の第2の流路226を通り、その後、弁体230の第3のアパーチャ235を通して排出される。
【0038】
図3は、特定の実施形態による更に別の硝子体切除プローブ300の断面図を示す。硝子体切除プローブ300は、上述の特定の実施形態の要素を併せ持つ。特に、硝子体切除プローブ300は、硝子体切除プローブ200のように、エアタービン310及びアクチュエータ150を独立して駆動するための別個の流路を有する。しかしながら、空気をアクチュエータ150からロータ312に排出し、弁体330を通して戻す代わりに、空気は、硝子体切除プローブ100と同様に、ロータ312の外面316を通して排出される。より具体的には、硝子体切除プローブ300は、第2の流路326が外面316の第2の半径方向開口部326aからロータ312の遠位端322の第2の遠位開口部326bまで延びる点で硝子体切除プローブ200と異なる。第2の流路326は、第3の環状部329を介して第2の出口307と流体連通する。第2の流路326は、Oリングシール309によって第2の入口205から流体的に隔離される。第2の環状部228と同様に、第3の環状部329は、ロータ312の可能な各回転位置における第2の流路326と第2の出口307との間の継続的な流体結合を維持するために、ロータ312の外面316とハウジング302との間に半径方向に配置される。
【0039】
以下では、硝子体切除プローブ300の動作を説明する。ロータ312が図示の位置にあるとき、ロータ312の第1の流路320は、弁体330の第1のアパーチャ334と流体連通し、それによりアクチュエータ150の第1のチャンバ154aに空気を供給して、カッタ160をハウジング302に対して近位方向に移動させる。ロータ312が図示の位置にあるとき、ハウジング302の第2の出口307は、アクチュエータ150の第2のチャンバ154bと流体連通する。この位置において、第2のチャンバ154b内の空気は、弁体330の第2のアパーチャ336を通り、ロータ312の第2の流路326を通り、その後、ハウジング302の第2の出口307を通して排出される。
【0040】
ロータ312を図示の位置から180°回転させるとき、ロータ312の第1の流路320は、弁体330の第2のアパーチャ336と流体連通し、それによりアクチュエータ150の第2のチャンバ154bに空気を供給して、カッタ160をハウジング202に対して遠位方向に移動させる。ロータ312を図示の位置から180°回転させるとき、ハウジング302の第2の出口307は、アクチュエータ150の第1のチャンバ154aと流体連通する。この位置において、第1のチャンバ154a内の空気は、弁体330の第1のアパーチャ334を通り、ロータ312の第2の流路326を通り、その後、ハウジング302の第2の出口307を通して排出される。
【0041】
前述の説明は、当業者が本明細書に記載の様々な実施形態を実践できるようにするために提供されている。これらの実施形態に対する様々な修正形態は、当業者に自明であり、本明細書で定義する一般的な原理は、他の実施形態に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示す実施形態に限定されることを意図されるものではなく、特許請求の範囲の文言と整合する全範囲が認められるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
【国際調査報告】