(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】雲母を含む脱落の低いアラミド紙
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20240801BHJP
D21H 13/26 20060101ALI20240801BHJP
D21H 13/44 20060101ALI20240801BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B32B27/34
D21H13/26
D21H13/44
D21H27/30 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506833
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 US2022073140
(87)【国際公開番号】W WO2023015069
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100228005
【氏名又は名称】澤田 英之
(72)【発明者】
【氏名】デムブロスキー クリス
(72)【発明者】
【氏名】ウィックス ロジャー カーティス
【テーマコード(参考)】
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
4F100AC05B
4F100AK47A
4F100AK47B
4F100AK47C
4F100BA03
4F100DG10
4F100GB41
4F100JG04
4F100JK03
4F100JK09
4L055AF35
4L055AG25
4L055EA08
4L055EA32
4L055FA13
4L055GA02
(57)【要約】
第1の外層及び第2の外層であって、そのそれぞれは、70~30重量パーセントのアラミドフロックと、30~70重量パーセントのアラミドフィブリドとを含み、そのそれぞれは、雲母を含まず、第1の面と第2の面を有する、第1の外層及び第2の外層と、50~70重量パーセントのアラミド材料と、30~50重量パーセントの雲母とを含み、第1の面と第2の面を有する内層と、を含む電気絶縁体としての使用に適したアラミド紙であって、第1の外層の第1の面は、アラミド紙の第1の外面であり、第1の外層の第2の面は、第1の外層及び内層において、内層の第1の面と同一の広がりを有し、フィブリドのみによって内層の第1の面と向かい合って結合しており、第2の外層の第1の面は、第2の外層及び内層において、内層の第2の面と同一の広がりを有し、フィブリドのみによって内層の第2の面と向かい合って結合しており、第2の外層の第2の面は、アラミド紙の第2の外面であり、アラミド紙は、合計25~40重量パーセントの雲母を有する、アラミド紙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁体としての使用に適したアラミド紙であって、
a)70~30重量パーセントのアラミドフロックと、30~70重量パーセントのアラミドフィブリドとを含む第1の外層であって、雲母を含まず、第1の面と第2の面を有する第1の外層と、
b)50~70重量パーセントのアラミド材料と、30~50重量パーセントの雲母とを含む内層であって、第1の面と第2の面を有する内層と、
c)70~30重量パーセントのアラミドフロックと、30~70重量パーセントのアラミドフィブリドとを含む第2の外層であって、雲母を含まず、第1の面と第2の面を有する第2の外層と、
を含み、
前記第1の外層の前記第1の面は、前記アラミド紙の第1の外面であり、前記第1の外層の前記第2の面は、前記第1の外層及び前記内層において、前記内層の前記第1の面と同一の広がりを有し、フィブリドのみによって前記内層の前記第1の面と向かい合って結合しており、
前記第2の外層の前記第1の面は、前記第2の外層及び前記内層において、前記内層の前記第2の面と同一の広がりを有し、フィブリドのみによって前記内層の前記第2の面と向かい合って結合しており、前記第2の外層の前記第2の面は、前記アラミド紙の第2の外面であり、
前記アラミド紙は、合計25~40重量パーセントの雲母を有する、アラミド紙。
【請求項2】
前記内層の前記アラミド材料は、50重量パーセント未満のアラミドフロックと50重量パーセント超のアラミドフィブリドとの組み合わせである、請求項1に記載のアラミド紙。
【請求項3】
15~45重量パーセントのフロックと55~85重量パーセントのフィブリドを有する、請求項2に記載のアラミド紙。
【請求項4】
前記第1及び前記第2の外層のそれぞれは、0.001~0.003インチの厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のアラミド紙。
【請求項5】
前記第1及び前記第2の外層のそれぞれは、0.0015~0.002インチの厚さを有する、請求項4に記載のアラミド紙。
【請求項6】
前記内層は、0.002~0.010インチの厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のアラミド紙。
【請求項7】
前記内層のそれぞれは、0.004~0.006インチの厚さを有する、請求項6に記載のアラミド紙。
【請求項8】
0.004~0.016インチの総厚さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のアラミド紙。
【請求項9】
0.007~0.012インチの総厚さを有する、請求項8に記載のアラミド紙。
【請求項10】
0.008~0.010インチの総厚さを有する、請求項9に記載のアラミド紙。
【請求項11】
0.004~0.007インチの総厚さを有する、請求項8に記載のアラミド紙。
【請求項12】
前記アラミド紙は、前記アームのそれぞれに1000gの重りを使用した125サイクル後にテーバー摩耗測定に供したとき、同様に試験した同じ厚さの雲母を含まないアラミド紙の重量損失以下であるグラム単位での重量損失を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のアラミド紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター、発電機、変圧器、及びインバーターなどの物品における電気絶縁材として、特に限定なく使用するのに適したアラミド紙に関する。
【背景技術】
【0002】
Turpinらの米国特許第9,437,348号明細書は、不織布層を用いて片面又は両面が直接融着された不織紙層を開示しており、この場合、不織紙及び不織布の一方又は両方は、電気絶縁性であり、不織布は、主として長い繊維、即ち、長さ1インチ以上の繊維から構成されるシート材料である。
【0003】
様々な特許出版物が、アラミド紙における雲母の使用を開示している。このような出版物には、Levitらの米国特許第6,991,845号明細書、米国特許第7,399,379号明細書、及び米国特許第9,073,290号明細書、Forstenらの米国特許第6,312,561号明細書、Kangらの米国特許第10,336,039号明細書及び米国特許第10,186,353号明細書及び米国特許出願公開第20130196161号明細書、Kangの米国特許第9,972,419号明細書、及びDuartらの米国特許第9,844,928号明細書が含まれる。
【0004】
絶縁体として優れた電気特性、高い絶縁破壊を有し、500℃(932°F)まで熱的に安定しており、コロナ放電に耐性があり、小さい粒子であってもその電気的特性を維持する材料を、雲母の結晶構造が提供する。
【0005】
しかしながら、雲母が存在すると、紙は、紙の機械的強度及び凝集性が低下する可能性がある。しかしながら、機械的性能を向上させるために雲母紙を、不織布、フィルム、又はガラススクリム支持体と組み合わせることは、追加の工程及び様々な接着剤などが必要となるため、望ましくなく、紙の厚さが増す、電気的性能が低下する、又はモーター冷却液との化学的適合性などの他の問題が発生する可能性がある。更に、業界は、改良された紙が、現在使用されている非常に薄い電気絶縁紙の暫定的な代替品となることを望んでいる。
【0006】
加えて、現在では、モーター部品と電気絶縁体の間の磨耗により、電気絶縁体が座屈する(buckle)又はバラバラになる可能性があるスロット及びその他のモーター領域に電気絶縁体を迅速且つ自動的に挿入する機械を使用する、モーター及び関連する装置の製造が、一般に自動化されている。このようなプロセスでは、この磨耗により、雲母を含む紙に対して、紙から雲母粒子を脱落させ、発塵の問題を引き起こす可能性があることがわかっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、十分な強度を有し、且つ又粒子の脱落に対する良好な耐性を有する雲母を含むアラミド紙が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電気絶縁体としての使用に適したアラミド紙に関し、アラミド紙は、
a)70~30重量パーセントのアラミドフロックと、30~70重量パーセントのアラミドフィブリドとを含む第1の外層であって、雲母を含まず、第1の面と第2の面を有する第1の外層と、
b)50~70重量パーセントのアラミド材料と、30~50重量パーセントの雲母とを含む内層であって、第1の面と第2の面を有する内層と、
c)70~30重量パーセントのアラミドフロックと、30~70重量パーセントのアラミドフィブリドとを含む第2の外層であって、雲母を含まず、第1の面と第2の面を有する第2の外層と、
を含み、
第1の外層の第1の面は、アラミド紙の第1の外面であり、第1の外層の第2の面は、第1の外層及び内層において、内層の第1の面と同一の広がりを有し、フィブリドのみによって内層の第1の面と向かい合って結合しており、第2の外層の第1の面は、第2の外層及び内層において、内層の第2の面と同一の広がりを有し、フィブリドのみによって内層の第2の面と向かい合って結合しており、第2の外層の第2の面は、アラミド紙の第2の外面であり、アラミド紙は、合計25~40重量パーセントの雲母を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、第1の外層及び第2の外層であって、そのそれぞれは、70~30重量パーセントのアラミドフロックと、30~70重量パーセントのアラミドフィブリドとを含み、そのそれぞれは更に、雲母を含まず(雲母を含まない)、第1の面と第2の面を有する、第1の外層及び第2の外層と、第1の外層と第2の外層の間に挟まれ、50~70重量パーセントのアラミド材料と、30~50重量パーセントの雲母とを含み、並びに又第1の面と第2の面を有する内層と、を含む電気絶縁体としての使用に適したアラミド紙に関する。第1の外層の第1の面は、アラミド紙の第1の外面であり、第1の外層の第2の面は、第1の外層及び内層において、内層の第1の面と同一の広がりを有し、フィブリドのみによって内層の第1の面と向かい合って結合している。 同様に、第2の外層の第1の面は、第2の外層及び内層において、内層の第2の面と同一の広がりを有し、フィブリドのみによって内層の第2の面と向かい合って結合しており、第2の外層の第2の面は、アラミド紙の第2の外面である。(雲母を含まない外層/雲母を含む内層/雲母を含まない外層)の3層構造から形成されたアラミド紙は、更に合計25~40重量パーセントの雲母を有する。
【0010】
雲母を含まない外層、雲母を含む内層、及び雲母を含まない外層は、各層の面に存在するアラミドフィブリドによってのみ相互に結合されている。フィブリドは、各層に均一に分布しており、フィブリドの一部は、各層の表面に存在する、即ち、フィブリドは、各層の両面に存在する。従って、フィブリドは、各層の表面で利用可能であり、層の間に緊密な接触を形成し、層が高温及び高圧下でまとめて圧縮されるときに、2つの層の面を結合又は融合する。この圧縮又は圧密(consolidation)は、フィブリドのガラス転移温度以上の温度でシートを圧縮又は圧密できるプロセスにおいて、静的加熱プレス又はニップを形成する一組のカレンダーロールにおいて達成されることができる。層をまとめて結合するために様々な層でフィブリドを使用することで、適用するのに別の工程が必要なだけでなく、電気絶縁体が使用中に露出する場合があるモーター冷却及びその他の流体と化学的に適合しない可能性がある、追加の接着剤又はその他の結合剤の必要性がなくなる。
【0011】
本明細書で使用される場合、アラミド紙とは、製紙プロセスによって製造されるアラミド材料のプライ又は層から作られた平面シートを意味する。プライ又は層を製造するために使用できる代表的な装置及び機械には、例えば、これらに限定されないが、フールドリニア抄紙機又は傾斜ワイヤー機械などの連続処理装置、或いは、形成スクリーンを含むハンドシートの鋳型における、手作業で紙を製造する処理装置などのバッチ処理装置が含まれる。具体的には、アラミド紙は、第1及び第2の対向平面を有する雲母を含むアラミド層を含む平面シートであり、第1及び第2の対向平面のそれぞれには、雲母を含まないアラミド層が取り付けられている。従って、アラミド紙は、雲母を含まないアラミド外層、雲母を含むアラミド内層、及び雲母を含まないアラミド外層がこの順序で貼り合わされてなり得る。
【0012】
雲母を含まないアラミド層、雲母を含むアラミド層、及び雲母を含まないアラミド層がこの順序で貼り合わされてなるアラミド紙は、アラミド紙の総重量における雲母の総重量に基づいて、合計25~40重量パーセントの雲母を含む。アラミド紙中の雲母の量が25重量パーセント未満である場合、アラミド紙の測定された部分放電開始電圧は、多くの用途に対して低すぎると考えられる。紙の部分放電開始電圧(PDIV)は、紙の局所的な絶縁破壊が始まる印加電圧のレベルである。従って、部分放電開始電圧(PDIV)及び単位厚さ当たりの部分放電開始電圧(PDIV/ミル)は、重要な特性であり、その理由は、より高い値が望ましくあり、より低い値は、絶縁寿命の低下及び/又は絶縁不良の原因となり得る、使用中の絶縁材料の急速な劣化が起こる可能性があることを意味するためである。同様に、アラミド紙中の雲母の量が40重量パーセントを超えると、紙の機械的特性が、アラミド材料が多くの所望の使用に適さなくなる所まで低下し得る。
【0013】
いくつかの他の実施形態では、雲母を含まないアラミド層、雲母を含むアラミド層、及び雲母を含まないアラミド層がこの順序で貼り合わされてなるアラミド紙は、アラミド紙の総重量における雲母の総重量に基づいて、合計30~40重量パーセントの雲母を有する。いくつかの更に他の実施形態では、雲母を含まないアラミド層、雲母を含むアラミド層、及び雲母を含まないアラミド層がこの順序で貼り合わされてなるアラミド紙は、アラミド紙の総重量における雲母の総重量に基づいて、合計35~40重量パーセントの雲母を有する。
【0014】
アラミド材料は、アラミドフロックを含むことができる。本明細書で使用される場合、「フロック」という用語は、紙の製造に通常使用される、短い長さに切断された繊維を意味する。典型的には、フロックは、約3~約20ミリメートルの長さを有する。好ましい長さは、約3~約7ミリメートルである。フロックは、通常、当技術分野で公知の方法を使用して必要とされる長さに連続繊維を切断することによって製造される。
【0015】
本明細書で使用される場合、「アラミド」という用語は、アミド(-CONH-)結合の少なくとも85%が直接2つの芳香族環に結合している芳香族ポリアミドを意味する。任意に、添加剤が、アラミドと共に使用され得、ポリマー構造全体に渡り分散されていてもよい。最高約10重量パーセントもの他のポリマー材料をアラミドとブレンドできることが見出された。アラミドのジアミンを置換する約10パーセントもの他のジアミン、又はアラミドの二酸塩化物を置換する約10パーセントもの他の二酸塩化物を有するコポリマーを使用できることも見出された。
【0016】
好ましいアラミドは、メタ-アラミドである。アラミドポリマーは、2つの環又はラジカルが分子鎖に沿って互いに対してメタ位に方向付けられるときにメタ-アラミドであると見なされる。好ましいメタ-アラミドは、ポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)である。米国特許第3,063,966号明細書、米国特許第3,227,793号明細書、米国特許第3,287,324号明細書、米国特許第3,414,645号明細書及び米国特許第5,667,743号明細書は、アラミドフロックを製造するために使用され得るアラミド繊維を製造するための有用な方法を説明している。
【0017】
アラミド材料は、アラミドフィブリドを含むことができる。本明細書で使用される場合、「フィブリド」という用語は、それらの3つの寸法のうちの少なくとも1つが最大の寸法に比べて規模が小さい非常に小さい非粒状、繊維状又はフィルム状の粒子を意味する。これらの粒子は、高剪断下で非溶媒を用いてポリマー材料の溶液を沈殿させることによって製造される。アラミドフィブリドは、320℃を超える融点又は分解点を有する芳香族ポリアミドの非粒状フィルム状粒子である。好ましいアラミドフィブリドは、メタ-アラミドフィブリドであり、特に好ましいのは、メタ-アラミドポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)から製造されるフィブリドである。
【0018】
フィブリドは、一般的に、約5:1~約10:1の長さ対幅のアスペクト比で約0.1mm~約1mmの範囲内の最大寸法長さを有する。厚み寸法は、数分の一ミクロン、例えば約0.1ミクロン~約1.0ミクロンのオーダーである。必須ではないが、アラミドフィブリドが未乾燥状態である間に、アラミドフィブリドを層中に混入することが好ましい。
【0019】
アラミド紙は、70~30重量パーセントのアラミドフロックと、30~70重量パーセントのアラミドフィブリドとを含む第1の外層又はプライを有し、第1の外層は、雲母を含まず、第1の面と第2の面を有する。同様に、アラミド紙は、70~30重量パーセントのアラミドフロックと、30~70重量パーセントのアラミドフィブリドとを含む第2の外層又はプライを有し、第2の外層は、雲母を含まず、第1の面と第2の面を有する。これらの重量範囲により、最終的なアラミド紙に最良の機械的特性が与えられると考えられる。電気モーターのスロットライナーなどの装置に自動挿入する間に、アラミド紙が座屈する又はバラバラになることがないように、機械的強度が必要である。加えて、使用中に紙に望ましい耐摩耗性を与えるには、これらの重量範囲が必要であると考えられる。第1及び第2の外層は、アラミド紙内で相乗的に作用し、雲母を含む層又はプライを覆うことによって雲母の脱落をなくすだけでなく、雲母粒子が放出される、使用中の紙の損傷を避けるための機械的安定性も有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、アラミド紙の第1の外層及び第2の外層はそれぞれ、60~40重量パーセントのアラミドフロックと、40~60重量パーセントのアラミドフィブリドとを含む。いくつかの好ましい実施形態では、アラミド紙の第1の外層及び第2の外層はそれぞれ、50~40重量パーセントのアラミドフロックと、50~60重量パーセントのアラミドフィブリドとを含む。いくつかの実施形態では、アラミド紙の第1の外層と第2の外層は、同じ組成を有する。更に他の実施形態では、アラミド紙の第1の外層及び第2の外層は、アラミドフロックとアラミドフィブリドの混合物のみからなる。
【0021】
「層」という用語は、好ましくは、形成されたウェブの形態で抄紙機にて製造される薄い平面材料を指す。ほとんどの製紙では、所望の紙組成物を含む水性分散液は、スクリーンに供給され、そこで、分散液中の固体材料が、湿式ウェブ、又はウォーターリーフ(waterleaf)として知られることがあるものを形成し、水が、重力、真空、及び/又はプレスによって除去される。湿式ウェブは、乾燥すると、本明細書で使用される「形成されたウェブ」となる。当技術分野では、この形成されたウェブは、「プライ」又は乾燥したウォーターリーフとも呼ばれることがある。従って、本明細書で使用される場合、「層」という用語は、好ましくは、形成されたウェブ、プライ、又は乾燥したウォーターリーフを指し、これらの用語は互換的に使用される。また、本明細書で使用される場合、「面」という用語は、層の2つの主面(即ち、層の一方の側又は他方の側)のいずれかを指す。
【0022】
一実施形態では、第1及び第2の外層のそれぞれは、0.001~0.003インチ(1~3ミル)の厚さを有し、好ましい実施形態では、第1及び第2の外層のそれぞれは、0.0015~0.002インチ(1.5~2ミル)の厚さを有する。
【0023】
アラミド紙はまた、50~70重量パーセントのアラミド材料と、30~50重量パーセントの雲母とを含む内層又はプライを有し、内層は、第1の面と第2の面を有する。いくつかの実施形態では、内層のアラミド材料は、50重量パーセント未満のアラミドフロックと50重量パーセント超のアラミドフィブリドとの組み合わせである。いくつかの特定の実施形態では、内層のアラミド材料は、15~45重量パーセントのフロックと55~85重量パーセントのフィブリドとの組み合わせである。
【0024】
雲母は、通常、フレークの形態で使用され、白雲母又は金雲母、又はそれらのブレンドなど、様々な種類であり得、しかしながら、白雲母の種類の雲母が好ましい。
【0025】
雲母を含む内層が50重量パーセント超の雲母を有する場合、最終的な積層構造の特性が悪影響を受けると考えられる。第1に、一定の重量に基づいて、層内の雲母の量が増加するにつれて、その層の引張強度は減少する。第2に、雲母を含む内層中の雲母が50重量パーセント以下であると、層内での雲母の架橋が妨げられ、これにより、雲母が層に渡り分散することが促進されると考えられる。更に、雲母を含む内層が30重量パーセント未満の雲母を有する場合、その層中には所望の電気特性を提供するのに十分な雲母が存在しないと考えられる。
【0026】
一実施形態では、雲母を含む内層は、0.002~0.010インチ(2~10ミル)の厚さを有し、好ましい実施形態では、雲母を含む内層は、0.004~0.006インチ(4~6ミル)の厚さを有する。
【0027】
第1の外層の第1の面は、アラミド紙の第1の外面であり、第1の外層の第2の面は、第1の外層及び内層において、内層の第1の面と同一の広がりを有し、フィブリドのみによって内層の第1の面と向かい合って結合している。同様に、第2の外層の第1の面は、第2の外層及び内層において、内層の第2の面と同一の広がりを有し、フィブリドのみによって内層の第2の面と向かい合って結合しており、第2の外層の第2の面は、アラミド紙の第2の外面である。
【0028】
「~と同一の広がりを有し、向かい合って結合している」という句は、好ましくは、各外層と内層が、同じ平面境界を有し、外層と内層の端部は、同じであり、どちらの外層も内層の端部を超えて伸びていない状態、又はその逆の状態であることを意味する。
【0029】
「向かい合って結合している」という句は、好ましくは、内層の各対向面が各外層の一方の面に結合していることを意味する。いくつかの実施形態では、面は、均一に結合されており、これは、内層の各面の各外層の面への付着が平面全体に渡って実質的に均一であることを意味する。実質的に均一とは、層が、付着部に視覚的な隙間又は非付着部の視覚的に検出可能な不連続領域なしに結合されていることを意味する。いくつかの実施形態では、面は、連続的に結合されており、これは、内層の各面の表面全体が、外層の面のうちの1つの表面全体に付着されていることを意味する。
【0030】
アラミド紙は、英国特許第1,129,097号明細書、米国特許出願公開第2010/0122769号明細書、及び米国特許第4,481,060号明細書に記載されているような製造技術及び条件を使用して、いくつかの工程を含むバッチ方式で製造することができ、より好ましくは、2つの雲母を含まない外層(又はプライ)を雲母を含む内層(又はプライ)と組み合わせることによって連続的又は半連続的に製造することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、雲母を含まないアラミド層、雲母を含むアラミド層、及び雲母を含まないアラミド層がこの順序で貼り合わされてなるアラミド紙は、0.004~0.016インチ(4~16ミル)の総厚さを有する。いくつかの実施形態では、多くの高電圧(600~800ボルト)での使用に特に適したアラミド紙は、0.007~0.012インチ(7~12ミル)の総厚さを有し、好ましくは0.008~0.010インチ(8~10ミル)の総厚さを有する。いくつかの他の実施形態では、例えば、電圧要件がより低くあり得る用途の場合、アラミド紙は、0.004~0.007インチ(4~7ミル)の総厚さを有する。
【0032】
加えて、第1の雲母を含まないアラミド外層、雲母を含むアラミド内層、及び第2の雲母を含まないアラミド外層をこの順に貼り合わされてなるアラミド紙は、0.004~0.016インチ(4~16ミル)の総厚さを有し、雲母を含む内層は、0.002~0.010インチ(2~10ミル)の厚さを有する限り、雲母を含むアラミド内層は、2つ以上の雲母を含むアラミド副プライ(sub-ply)又は副層(sub-layer)から形成されることができ、好ましくは2つ以上の同一の雲母を含むアラミド副プライ又は副層から形成されることができる。同様に、第1の雲母を含まないアラミド外層、雲母を含むアラミド内層、及び第2の雲母を含まないアラミド外層をこの順に貼り合わされてなるアラミド紙は、0.004~0.016インチ(4~16ミル)の総厚さを有し、第1及び第2の雲母を含まないアラミド外層のそれぞれは、0.001~0.003インチ(1~3ミル)の厚さを有する限り、雲母を含まないアラミド外層のそれぞれは、2つ以上の雲母を含まないアラミド副プライ又は副層から形成されることができ、好ましくは2つ以上の同一の雲母を含まないアラミド副プライ又は副層から形成されることができる。好ましくは、アラミド紙は、全ての個々の層、及び/又は任意の副プライ又は副層(存在する場合)を組み合わせ、次いで全ての層を一度にまとめて圧密することによって作製される。
【0033】
雲母を含まないアラミド層、雲母を含むアラミド層、及び雲母を含まないアラミド層をこの順で貼り合わされてなるアラミド紙は、耐久性のある雲母を含まない外層を使用することで、比較的弱い雲母を含む内層を効果的にシールドする構造体をもたらし、内層への損傷及びアラミド紙を使用する様々な装置にアラミド紙を取り付ける際のそれに伴う雲母の脱落を防止する。アラミド紙の脱落は、自動装置による使用時の表面の摩耗を模倣して、紙の表面を多数のサイクルに渡って連続的に処理するテーバー研磨機を使用してシミュレートできる。雲母を含まない外層は、雲母を含む内層を非常によく保護するため、いくつかの実施形態では、アームのそれぞれに1000gの重りを使用した(Taber Industries,Tonawanda,NYのTaber 5150 Abraser(Abrader)及びH018 wheelsを使用して)125サイクル後にアラミド紙をテーバー摩耗測定にかける場合、アラミド紙のグラム単位での重量損失は、同様に試験した同じ厚さの雲母を含まないアラミド紙の重量損失以下である。従って、雲母をかなりの量(25~40重量パーセント)で含むアラミド紙は、予想外にも雲母を含まないシートのものと同様の脱落性能を有する。
【0034】
試験方法
厚さは、ASTM-D374(2010)を使用して測定した。
【0035】
部分放電開始電圧(PDIV)は、ASTM-D1868(2020)によって測定した。
【0036】
厚さ当たりの部分放電開始電圧(PDIV/ミル)は、部分放電開始電圧(PDIV)を特定の実施例の厚さ(ミル)で割ることによって計算した。
【0037】
引張強度は、ASTM-D828(2010)によって測定した。
【0038】
テーバー摩耗は、その使用説明書(https://www.taberindustries.com/taber-rotary-abraser)に従って、Taber 5150 Abraserにて測定した。紙測定の設定では、H-18摩耗ホイールとアームのそれぞれに1000gの重りを使用し、各試料で125サイクル実行した。試験の前と後の両方で、試料の重量(遊離の表面粒子は含まない)を使用して、試料の重量損失を計算した。
【実施例】
【0039】
実施例1
単一の雲母を含む内側ウェブ層を有する2つの雲母を含まない外側ウェブ層からなるアラミド紙を、以下の通り作製した。
【0040】
雲母を含まない層又はプライを作製するために、55重量パーセントのポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)フィブリドと45重量パーセントの結晶化MPD-Iフロックの混合物を、水中で作製して、製紙用の供給物(furnish)として適切な水性分散液を形成した。MPD-Iフィブリドは、米国特許第3,756,908号明細書に一般的に記載されているように作製し、MPD-Iフロックは、線密度0.22テックス及び長さ0.64cmを有した。この分散液は、フールドリニア抄紙機のヘッドボックスに供給され、湿式ウェブ又はウォーターリーフが形成された。次いで、湿式ウェブを乾燥させて、厚さ2ミル(0.002インチ)を有する圧密されていない雲母を含まないアラミド形成されたウェブ又は層を形成した。次いで、抄紙機の速度を遅くして、厚さ3ミル(0.003インチ)を有する同様の形成されたウェブ又は層を作製した。
【0041】
雲母を含む層又はプライを作製するために、48重量パーセントの白雲母型雲母、37重量パーセントの(MPD-I)フィブリド、及び15重量パーセントの結晶化MPD-Iフロックの混合物を水中で作製し、製紙用の供給物として適した雲母を含む水性分散液を形成した。MPD-Iフィブリド及びMPD-Iフロックは、雲母を含まない層で使用したものと同じであった。雲母を含む分散液をフールドリニア抄紙機のヘッドボックスに供給し、湿式ウェブを形成した。次いで、湿式ウェブを乾燥させて、厚さ3ミル(0.002インチ)を有する圧密されていない雲母を含むアラミド形成されたウェブ又は層を形成した。次いで、抄紙機の速度を遅くして、厚さ4ミル(0.004インチ)、6ミル(0.006インチ)、8ミル(0.008インチ)、及び9ミル(0.009インチ)を有する同様の雲母を含む形成されたウェブ又は層を作製した。
【0042】
脱落の可能性を例証するために、それら2つの外層の間に挟まれた単一の雲母を含む内側ウェブ層を有する2つの雲母を含まない外側ウェブ層からなるアラミド紙の試料を作製した。具体的には、アラミド紙は、様々な層を手作業で積層し、表面温度280℃で動作する加熱された静的プレスで3つの層をまとめて圧密し、500psiの圧力で層をまとめてプレスすることによって作製した。
【0043】
得られた3層アラミド紙の特性を、表1の項目1にまとめる。3つの比較試料A、B、及びCも表1に示す。試料Aは、3ミルの雲母を含まないウェブ層を2つのみ有し、雲母を含むウェブ層を有さない2層紙であった。試料Bは、3ミルの雲母を含まないウェブ層を3つ有し、雲母を含むウェブ層を有さない3層紙であった。試料Cは、厚い雲母を含む形成されたウェブ又は層を1つのみ使用して作製された紙であり、雲母を含まない層は存在しなかった。
【0044】
試料は、起こり得る脱落量を決定するためにテーバー摩耗試験に供された。125サイクル後、試料を振盪していかなる遊離の表面粒子をも除去した。次いで、試料を秤量し、試験前の試料重量と比較して、125サイクル中に紙から失われた材料のグラムを決定した。
【0045】
示されるように、雲母を有さない比較のアラミド紙試料A及びBは、脱落が非常に少なく、それぞれ0.19グラム及び0.09グラムの粒子状物質を有し、雲母が存在しないため、明らかに、これは、アラミド繊維状材料であった。品目1の本発明のアラミド紙試料は、0.15の同様のレベルの粒子状物質を有し、この紙から本質的に雲母が脱落しないことを示した。比較のアラミド紙試料C及びDは、外側保護層を有さない雲母を含む紙から高いレベルの粒子が脱落したことを示している。
【0046】
【0047】
実施例2
実施例1の雲母を含まない層と雲母を含む層を使用して、アラミド紙の様々な試料を作製した。実施例1と同様に、アラミド紙は、それら2つの外層の間に挟まれた単一の雲母を含む内層を有する2つの雲母を含まない外層とからなった。アラミド紙の試料は、実施例1と同様に、様々な層を手作業で積層し、表面温度280℃で動作する加熱された静的プレスで3つの層をまとめて圧密し、層を500psiの圧力でまとめてプレスすることによって作製した。特定の試料及び得られた3層紙の特性を表1にまとめる。また、表2に、例証のために、厚い雲母を含む層1つのみで作製され、雲母を含まない層を有さない紙である、実施例1からの試料Cのデータが示されている。
【0048】
【0049】
実施例3
それら2つの外層の間に挟まれた単一の雲母を含む内層を有する2つの雲母を含まない外層からなる、表2の項目3の組成を有するアラミド紙の試料は、前述のように作製され、しかしながら、個々の層は、個々のロールから供給され、結合され、次いで、表面温度280℃で動作し、直線インチ当たり1300ポンドの圧力で層をまとめてプレスして3つの層を約0.0102インチ(10.2ミル)の厚さに圧密する加熱カレンダーロール間のニップでの連続プロセスでまとめて圧密される。アラミド紙のPDIVは、1327ボルトであり、これは、ミル当たり130ボルトのPDIV/ミルに相当し、引張強度は、98.6ポンドであった。
【0050】
参照例
この例は、雲母の添加がアラミドシートの機械的特性に及ぼし得る悪影響を示している。雲母の添加がシート特性に及ぼす影響を例証するために、単層の雲母を含まないアラミドハンドシート及び雲母を含むアラミドハンドシートを作製した。実施例1に記載したように水性分散液を作製し、次いでハンドシートの鋳型を使用して個々のハンドシートの試料を作製した。各水性分散液を、8リットルの水と共に21×21cmのハンドシートの鋳型に注ぎ、5つの湿式紙R-0、R-20、R-30、R-40、及びR-50を形成し、項目R-0は、雲母を含まなかった。次いで、ハンドシートを2片の吸い取り紙の間に個別に置き、麺棒を用いて手で横たわらせ、ハンドシート乾燥機にて150℃で10分間乾燥させた。ハンドシートの最終的な組成物は、表3に示すように、雲母0~50重量パーセント、MPD-Iフィブリド37~65重量パーセント、及びアラミドフロック13~35重量パーセントの範囲であった。静的プレスにてプレスする前の全てのハンドシートの初期の圧密されていない厚さは、公称0.005インチ(5ミル)であった。
【0051】
表3に示すように、雲母の添加は、ハンドシートの部分放電開始電圧を向上させる一方で、シートの機械的特性、中でも注目すべきは、従来の雲母を含むアラミドハンドシートの引張強度に多大な悪影響を及ぼす。
【0052】
【国際調査報告】