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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】電解槽フレーム設計
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20240801BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240801BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20240801BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240801BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20240801BHJP
   C25B 11/031 20210101ALI20240801BHJP
   C25B 9/73 20210101ALI20240801BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/77
C25B15/08 302
C25B9/23
C25B11/031
C25B9/73
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024506956
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2022071986
(87)【国際公開番号】W WO2023012288
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】21189863.0
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507128654
【氏名又は名称】インドゥストリエ・デ・ノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヌッツォ, ダニエーレ
(72)【発明者】
【氏名】リウッツォ, ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ペレーゴ, ミケーレ
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA10
4K011AA17
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021CA08
4K021CA09
4K021DB04
4K021DB16
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC03
(57)【要約】
本発明は、電解装置、及び当該電解装置の製造方法に関する。電解装置は2つの電解槽セルを備え、これらのそれぞれには、アノードフレームとカソードフレームが設けられており、当該フレームには、迷走電流を低減するとともに、セルの組み立てを容易にする供給チャネル及び排出チャネルが備えられている。当該電解槽は、高圧アルカリ水電解装置(AWE)のために、有利に用いることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの電解セルを含む電解装置であって、当該電解セルはそれぞれ、アノードを備えるアノードハーフセル、カソードを備えるカソードハーフセル、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータを含むものであり、
前記カソードハーフセル及び前記アノードハーフセルはそれぞれ、アノードフレーム(100)及びカソードフレーム(200)を備え、各フレームは、内部表面及び外部表面を有し、前記アノードフレームの前記内部表面(101)は、前記カソードフレームの前記内部表面(201)と向き合っており、
前記アノードフレーム及び前記カソードフレームはそれぞれ、電解質をアノード区画及びカソード区画のそれぞれに供給するための供給入口(111,211)及び供給出口(112,212)を備え、前記供給入口及び前記供給出口は、供給チャネル(110,210)を介して接続されており、
前記アノードフレーム及び前記カソードフレームはそれぞれ、前記電解質を前記アノード区画から、及び前記カソード区画からそれぞれ排出するための、排出入口(121,221)及び排出出口(122,222)を備え、前記排出入口及び排出出口は、排出チャネル(120,220)を介して接続されている、電解装置において、
前記アノードの前記供給チャネル及び前記排出チャネル(110,120)が、前記アノードフレームの前記内部表面(101)にわたって形成されており、
前記カソードの前記供給チャネル及び前記排出チャネル(210,220)が、前記カソードフレーム(200)の前記内部表面(201)にわたって形成されており、
前記アノードの前記供給出口(112)及び前記アノードの前記排出入口(121)が、前記アノードフレーム(100)の前記外部表面(102)に当接し、
前記カソードの前記供給出口(212)及び前記カソードの前記排出入口(221)が、前記カソードフレーム(200)の前記外部表面(202)に当接する、
ことを特徴とする、電解装置。
【請求項2】
前記アノード及び前記カソードの前記供給チャネル及び前記排出チャネルはそれぞれ、前記アノードフレーム及び前記カソードフレームの前記内部表面に沿って少なくとも1回方向が変わっている、請求項1に記載の電解装置。
【請求項3】
前記アノード及び前記カソードの前記供給チャネル及び前記排出チャネルは、全長が内部マニホールドと電極区画との間の距離LM-Cの少なくとも2倍であり、好ましくは、全長がLM-Cの2~50倍である、請求項1又は2に記載の電解装置。
【請求項4】
前記セパレータが、隔膜又は膜である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項5】
前記電解セルのそれぞれが、ゼロギャップ構成で配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項6】
前記アノード及び/又は前記カソードが、有孔構造であるか、又は導電性材料のスラブである、請求項1から5のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項7】
前記アノード区画及び前記カソード区画の前記供給出口がそれぞれ、コレクタ(500,501,550,551)に、及び前記アノードフレーム及び前記カソードフレームの前記外部表面にわたり形成されている分配チャネル(401,402,403)のアレイに接続されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つの電解セルが、内部マニホールドを通じて液圧的に接続されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項9】
前記アノード又は前記カソードの前記供給チャネル又は前記排出チャネルのうち少なくとも1つが、マニホールド開口部(351,352,355,356)に接続されており、前記アノード又は前記カソードの前記供給チャネル又は前記排出チャネルのうち少なくとも1つが、前記マニホールド開口部に、接続点における接線の垂線に対して角度αで接し、αはゼロではなく、-90°と+90°との間に含まれる、請求項8に記載の電解装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電解装置の、アルカリ水電解を行うための、又はアニオン交換膜水電解用途のための、使用。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電解装置を製造する方法であって、前記アノードフレーム及び前記カソードフレームが、シートのフライス加工若しくは機械加工によって、又は成型、3Dプリント、又はこれらの組み合わせによって製造される、方法。
【請求項12】
前記アノード及び前記カソードの前記供給チャネル及び前記排出チャネルが、以下の方法:彫り込み、フライス加工、成型、3Dプリント、機械加工、又はこれらの任意の組み合わせのいずれかによって得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
チャネル(120)を備える電解セルのための電極フレーム(101)であって、前記チャネルは、接続点(122)でマニホールド開口部(351)に接続されており、前記接続点で前記チャネルの方向は、当該接続点における前記マニホールド開口部の接線の垂線に対して角度αを形成し、αはゼロではなく、-90°と+90°との間に含まれる、電極フレーム(101)。
【請求項14】
αがゼロではなく、-80°と-20°との間、及び+20°と+80°との間に、好ましくは-70°と-30°との間、及び+30°と+70°との間に含まれる、請求項13に記載の電極フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれアノードフレーム及びカソードフレームを備える少なくとも2つの電解セルを含む電解槽に関し、これらのフレームには、迷走電流を低減するとともに、セルの組み立てを容易にする供給/排出チャネル設計が備えられている。当該電解槽は、アルカリ性水電解(AWE)のために有利に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
電気化学的な工業用途ではしばしば、電気的及び液圧的に相互に接続された複数の電気化学セルを備える電解装置が必要とされ、当該セルにはそれぞれ、互いに向かい合うとともに、導電性液体媒体(電解質)に浸された、反対の電極が備えられている。相互に接続された導電性素子のこの基本的な構成は、迷走電流が制御されない可能性がある複雑な電気ネットワークを示す。迷走電流は、電力損失、電解装置の劣化につながることがあり、及び/又は操作者に危険をもたらし得る。
【0003】
多くの工業的電解装置では、個々の電極が支持フレーム内に収容され、電解質が電極に供給され、その後、1若しくは複数のチャネル又はマニホールドを介して排出され、これらはいくつかの場合、各フレームを横切ることがある。
【0004】
多くの用途(例えば、内部マニホールドを備える工業化された加圧AWE電解装置)では、供給チャネル及び排出チャネルが主に、セルフレーム内の円筒形チャネルを穿孔することによって、又は可動部品を使用してフレームを成型することによって製造され、これにより、マニホールドと電極の活性領域との間に直接的でまっすぐな液圧接続がもたらされる。
【0005】
例えば、英国特許第1145751号(GB 1 145 751)には、少なくとも2つの開口部18,21と、リングの内部表面から開口部のうち1つへと延在する少なくとも1つのポートとを有するリングから構成される電解装置セルが記載されている。独国特許第869941号(DE 869 941 C)には、電解装置用のセルフレームが記載されており、ここでは各セルフレームが2つのハーフフレームに分割され、当該ハーフフレームの側面形状は、舌状部及び溝がインターロックする配置構成になっている。米国特許第4758322号(US 4 758 322 A)には、溶液を電気分解するための電気分解装置が記載されている。この装置は、絶縁フレームにより周辺が取り囲まれた導電性プレートから形成されたバイポーラ素子を含むものであり、当該絶縁フレームは、フレームの周辺領域に沿って円形に延びる供給チャネル及び排出チャネルを備える。欧州特許出願公開第3696298号(EP 3 696 298 A1)には、電解装置セル用のセルフレームであって、膜を収容するための開口部と、セルフレームを通じて媒体を供給及び排出するためのコレクタダクト開口部と、供給コレクタダクト開口部のそれぞれから、セルの関連ハーフスペースへと媒体を供給するように構成された分配ダクト構造と、セルフレームを封止するための封止構造とを備えるものが記載されており、ここで分配ダクト構造は、セルフレームの第1の主側面にのみ形成された溝ダクト構造と、当該溝ダクト構造と関連ハーフスペースとの間に延在する複数の貫通孔とから形成されている。米国特許第4107023号(US 4 107 023 A)には、フィルタプレスハレートセル(filter press halate cell)が記載されており、ここでは複数の電極ユニットが配置されて、セルを形成している。各ユニットは、アノード及びカソードを互いに間隔を空けて収容する合成有機ポリマー電解セルを備え、当該電解セルは、入口を通じて供給物を導入するとともに、出口を通じて電解質を引き出すための手段を備える。
【0006】
上記モデルでは、直線から逸脱した幾何学形状のチャネルを製造することは、極めて困難である。前述の技術を用いた場合、実際には直線的なチャネルが、フレームチャネルを大量製造するための唯一の実行可能な選択肢である。この場合、フレーム内に形成された供給/排出チャネルの全長が、マニホールドと電極区画との間の距離を超えることはない。
【0007】
このようにして供給チャネル及び排出チャネルの長さが制限されることにより、電解装置の性能に対して否定的な影響がもたらされる。
【0008】
第一に、セルが液圧的な並列構成にある場合、マニホールドの圧力損失により、第1のセルにおける電解質流が、最後の電解質流よりも高いと判定され得る。これにより、過熱やセル内でのガス蓄積などの有害な影響が生じ得る。
【0009】
第2に、チャネルが短いことによって、電解質回路全体にわたり、高い迷走電流にとって有利になり得る。実際に電解質回路の電気抵抗は、少なくとも当初は、その長さにほぼ比例すると考えられるため、回路が短いほど、その分だけ電気抵抗が低くなるだろう。電解質回路は、セルのスタックと電気的に並列であるため、その抵抗が減ると、系全体に流れる迷走電流が増加することになり、その一方でセル全体を実際に流れる電流は減少する。その結果、迷走電流は、電解装置性能全体に否定的な影響をもたらすことになる。
【0010】
従来技術のチャネルによる別の負の作用は、内部マニホールドに沿って循環する二相流体のフローレジームが予測できないことである。これは、短いチャネルが通常、マニホールドの半径方向に沿って、(多くの場合は円形に)穿孔されていることの結果であり、フローレジームは、流体の速度、流体の組成、マニホールド、及び当該マニホールドに取り付けられた配管の形状及び寸法全体、及び作業圧力条件により影響を受け得る。
【0011】
本発明の目的は、電解質回路における迷走電流を低減させること、及び電解装置全体にわたり、また存在する場合にはその内部マニホールド内部で、改善された電解質流を保証することであり、これによって、既知の技術による電解装置の欠点が克服される。
【0012】
発明の詳細な説明
1つの態様において、本発明は、少なくとも2つの電解セルを有する電解装置に関し、当該電解セルはそれぞれ、アノードを備えるアノードハーフセルと、カソードを備えるカソードハーフセルと、アノードとカソードとの間に配置されたセパレータとを有する。カソードハーフセル及びアノードハーフセルにはそれぞれ、カソード及びアノードを収容するカソードフレーム及びアノードフレームが設けられている。
【0013】
各フレームは、内部表面及び外部表面を備える。これらのフレームは、アノードフレームの内部表面がカソードフレームの外部表面に向かい合うように、互いに対して相互に配置されている。
【0014】
アノードフレーム及びカソードフレームはそれぞれ、アノードマニホールド及びカソードマニホールドからそれぞれアノード区画及びカソード区画(つまり、セパレータ及びフレームによって電極周囲に形成されるとともに電解質で満たされた、囲い込み部)へと電解質を供給するための供給チャネルを介して接続された供給入口及び供給出口を備える。
【0015】
アノードフレーム及びカソードフレームはそれぞれ、電解質をそれぞれアノード区画及びカソード区画からマニホールドへと排出するための排出入口及び排出出口を備え、排出入口及び排出出口は、排出チャネルを介して接続されている。
【0016】
本発明によれば、アノード及びカソードの供給チャネル及び排出チャネルがすべて、アノードフレームの内部表面にわたり形成されている。さらに、アノードの供給出口及びアノードの排出入口が、アノードフレームの外部表面に当接し、カソードの供給出口及びカソードの排出入口が、カソードフレームの外部表面に当接する。すなわち、供給出口及び排出入口はそれぞれ、各外部表面に対して開いている。
【0017】
「チャネル」という用語は、その長さに沿って閉じているか開いているかにかかわらず、後退した又は隆起した形状を意味する。チャネルが電解質の流れ方向に沿って開いている場合、開いた側を閉鎖する表面又はその他の要素にチャネルが固定又は押し付けられると、チャネルは液体を流すのに適するようになる。
【0018】
供給チャネル及び排出チャネルそれぞれの入口及び出口は、チャネルの流入口(entrance)及び流出口(exit)に対応してそれぞれ配置されるチャネルの周辺部と一致すると理解されるべきであり、ここで「流入口」及び「流出口」という用語は、電解装置が稼働しているときの電解質の流れに関する。
【0019】
特許請求した発明の範囲を何ら損うものではないが、フレームは、対応する供給チャネルにより接続された複数の供給入口及び供給出口、及び/又は対応する排出チャネルにより接続された複数の排出入口及び排出出口を備え得る。
【0020】
アノードフレーム及びカソードフレームは、電解質の特性及び電解装置の稼働条件に従って当業者により選択される、適切な絶縁材料で作られ得る。エンジニアリングプラスチックのような材料、特にPTFE、PSU、PPS、PEEK及びPPAは、AWE及びアニオン交換膜水電解(AEM-WE)用途において特に良好に作用することが、本発明者らによって見出されている。
【0021】
あるいは、アノードフレーム及びカソードフレームは複合材料製であり得る。当該複合材料は、より大きな機械的強度を保証するために、絶縁材料で被覆された導電性コアを含み得る。
【0022】
アノードフレーム及びカソードフレームは、適切な技術、例えばシートのフライス加工若しくは機械加工によって、又は成型、3Dプリント、又はこれらの組み合わせによって、得ることができる。アノード及びカソードの供給チャネル及び排出チャネルは、対応するフレームの表面に対して後退又は隆起している、直線から逸脱した形状を形成するための適切な技術によって得られる。利用可能性及び柔軟性のため、有利な技術には、彫り込み、フライス加工、成型、3Dプリント、機械加工、又はこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0023】
各チャネルの封止は、チャネルの輪郭に沿ってガスケットを適切に配置することにより、達成され得る。ガスケットは、チャネルの同じ表面に、その形状に沿って配置されてよく、又は当該チャネルと向かい合う反対側のフレーム上に、その形状を写し取って配置され得る。
【0024】
上述のチャネル製造技術に代えて、チャネル形状は、フレームの表面にわたり適切な形状のリッジを付与、成型又は印刷することによって作成され得る。いくつかの場合、これらのリッジは、電解質流の搬送に加えて、チャネルの適切な封止を保証するために、ガスケットの機能も担うことができる。
【0025】
本発明による電解装置のチャネル設計により、より容易で合理化された電解装置の組み立てが促進されることが判明した。実際、既存のチャネルでは、チャネル入口が常に、チャネル出口の反対側の表面にあるので、これらのチャネルを封止するガスケットは、存在する場合にはセルの他の要素(例えばセパレータ、集電体及び/又はバイポーラプレート)を封止する他のガスケットと交差しない。さらに、ここに記載した技術及びチャネル設計によって、はるかに長いかつ/又は薄いチャネルを得ることができ、より複雑な形状によって、フレームの自由表面が最大限に活用され、従来技術で知られているような直線的で短いチャネルの欠点が克服される。
【0026】
電解セルは、電気的に直列で接続されていてよく、かつ/又は電解質を循環させる内部マニホールドを介して、並列で液圧的に接続されていてよい。
【0027】
アノード区画内を循環する導電性液状媒体組成物、すなわちアノード液は、カソード区画内を循環する導電性液状媒体組成物、すなわちカソード液とは異なり得ると理解されるべきである。本願においてこれらの組成物は一般的に、集合的又は個別的に電解質と呼ばれる。
【0028】
一般的に、アノード及びカソードの供給入口及び排出出口は、内部又は外部の各マニホールドに液圧的に接続されている。
【0029】
内部マニホールドは、大気圧電解装置の外部マニホールド設計(通常は、各セルについて非常に短い供給チャネル及び排出チャネルと関連している)とは異なり、例えば加圧AWE、すなわち5bar以上の圧力で稼働する電解質装置においてうまく用いることができる。
【0030】
1つの実施形態では、本発明による電解装置のアノード/カソードの供給チャネル及び排出チャネルにより、アノード及びカソードのフレームそれぞれの内部表面に沿って少なくとも1回、方向が変わる。好ましくは、方向が変わる回数が、2又はそれより大きく、さらにより好ましくは、2~50の範囲にある。
【0031】
方向の変化は、直線的な三次元形状からの逸脱を意味し、これにより、より長いチャネル設計が可能になるとともに、フレームの自由表面の利点が得られ、こうして迷走電流と、電解装置性能への負の影響が減少し、また電解装置にわたる電解質の流れが改善される。
【0032】
好ましくは、本発明による電解装置は、アノード及びカソードの供給チャネル及び排出チャネルの全長が、マニホールドとアノード/カソード区画との距離LM-Cの少なくとも2倍であることにより特徴づけられる。好ましくは、カソードの供給チャネル及び排出チャネルの全長が、LM-Cの2~50倍である。「マニホールドとアノード/カソード区画との間の距離」という用語は、マニホールドの内部表面と、アノード/カソード区画の内部表面を、直線で結んだ最短距離を表す。
【0033】
回路の抵抗は、チャネルの断面積によっても影響を受けることが知られている。特許請求した発明により、当業者は、関連パラメータ(例えばチャネルの長さ、セルの数、電解質抵抗、及び電流負荷)を考慮することにより、チャネルの断面積を適切に減少させることができる。
【0034】
さらなる実施形態では、本発明による電解装置におけるセパレータが、隔膜又は膜であり、かつ/又は電解セルはそれぞれ、任意選択的に、ゼロギャップ構成で配置され得る。
【0035】
さらなる実施形態では、本発明による電解装置のアノード及び/又はカソードは、導電性材料の有孔構造又は連続シートであり、好ましくはチタン、ニッケル、鉄又はこれらの合金製であり、任意選択的に、1又は複数の触媒層及び/又は保護層によりコーティングされていてよい。
【0036】
有孔構造とは、貫通孔又は止まり穴を備える硬質又は可撓性の導電性要素を意味し、これは例えばエキスパンデッドメッシュ、織メッシュ、パンチシート、穴あきシート、ルーバー、及び電極として動作するのに適したその他のスポンジ状、多孔質、穿孔された導電性構造であるが、これらに限られない。
【0037】
1つの実施形態では、本発明による電解装置において、アノード区画及びカソード区画の供給出口及び排出入口が、任意選択的に互いに液圧的に並列な構成で、分配チャネルのアレイに接続され、当該アレイは、アノードフレーム及びカソードフレームそれぞれの外部表面にわたり、形成されている。
【0038】
先に記載したアノードフレーム及びカソードフレームを製造するために使用される有利な技術(例えば、彫り込み、フライス加工、成型、3Dプリント、機械加工、又はこれらの組み合わせ)、並びに供給チャネル及び排出チャネルの製造のために記載した技術によってさらに、これらのチャネルについてその接続点(入口又は出口)で内部マニホールド開口部に対して傾斜した設計を実装することが可能になる。この設計は、以下で明らかに説明するように、二相流体(すなわち液体成分及び気体成分を含むもの)、又は密度が大きく異なる2つの異なる液体若しくは2つの気体から構成される単相流体を、チャネルへと/チャネルから、マニホールドから/マニホールドへと循環させる場合に、特に有利なことが実証されている。
【0039】
一例として、電気化学反応後に排出される流体はしばしば、液状電解質と、電極で発生したガスとを含む二相流体であることに留意されたい。
【0040】
傾斜した設計とは、チャネルが、接続点における接線の垂線に対して角度αで当該マニホールド開口部に接することを意味し、ここでαは、ゼロではなく、-90°から+90°の間に含まれる。
【0041】
一般に、配管/マニホールドにおける二相流体は、稼働条件(圧力、温度、質量流量)に応じて、配管/マニホールドの形状及び寸法に応じて、また流体自体(その相及び物理特性)に応じて、異なるフローレジームを有する。
【0042】
その結果生じるフローレジームは、気体及び液体が重力により互いにほぼ完全に分離している層流(stratified flow)から、液体流に小さな気泡が含まれている気泡流(bubbly flow)、流体内に比較的大きな気泡が散在している栓流(plug-flow)まで様々であり得る。
【0043】
各フローレジームには、機械的観点及び/又はプロセス的観点の双方から、異なる問題点があり、そのうちいくつかを例示する:
・層流は、水平の配管ではうまく働くが、方向が変わる場合、例えば水平の配管が垂直の配管に接続されている場合には、プロセスにとって非常に不利になる。気体(比較的軽い)は、上方に追いやられて、垂直な配管の大部分を占めることになり、液体の速度を著しく増加させる。
・気泡流は、機器(例えば、配管に挿入されたプローブ若しくは流量計、又はその内容物のプローブ)の精度を低下させることがあり、最終的にはこれらを損傷し得る。
・栓流は、配管への機械的応力を著しく増大させ、機械的な疲労を加速させる。比較的大きくまばらな気泡が液体中に存在することが、その原因である。
【0044】
配管/マニホールドの設計でこれらの問題に対処することは可能だが、そのためには、どのフローレジームが存在することになるのかを事前に知っておく必要があり、これにより、利用可能な設計の選択肢が制限されたり、かつ/又は製造コスト及び維持コストが増大したりすることがある。
【0045】
本解決策の目的は、異なる動作条件下であっても、マニホールドにおいて所定のフローレジームが、マニホールド自体の方向、及び存在する場合には、当該マニホールドに取り付けられたさらなる管/配管の方向が曲がったり変化したりする場合でも、良好に識別される挙動で存在することを保証することである。
【0046】
従来技術の設計において、チャネルは通常、穿孔されるが、これらは接触点の接線に対して垂直な方向でマニホールド開口部に接続される(これはおそらく、この技術では、短くてまっすぐなチャネル形状が要求されるためである)。この設計では、フローレジームを制御又は予測できないため、流体輸送効率に不利な影響がないことを保証することはできない。
【0047】
一方、本発明の設計により、マニホールドに入る流体に、チャネルとマニホールドとが接するマニホールド面に接する速度成分がもたらされる。
【0048】
二相流体(又は、密度が非常に異なる2つの異なる液体若しくは2つの気体から構成される単相流体)の場合、この接線成分は、マニホールドにおける流体動力学に影響をもたらす。流体動力学シミュレーションにより、流体の速度に接線成分がもたらされ、これが螺旋流(helicoidal flow)で進むことが判明している。接線方向の速度パターンは、マニホールドの表面に近い領域ではより高く表れ、マニホールドの中心部ではより低く現れる。この速度パターンにより、密度に応じて2つの相(又は2つの異なる単相成分)が大まかに分離され、個々の流れの動力学に影響がもたらされる。比較的軽い要素は、マニホールドの中心部に沿って集中して流れる傾向があるのに対して、より密度の高い要素は、表面に向かって集中する傾向にある。これらはいずれも螺旋流で進む。
【0049】
この予測可能で制御された動力学は、流体の経路が曲がる場合、特に水平方向から垂直方向に曲がる場合、特に有利であり、これによって、マニホールド及び当該マニホールドに取り付けられた配管にかかる機械的応力、及び流体をプローブするあらゆる機器の精度を制御することができ、こうして、上記種類の多相流を特徴づける問題が解決される。
【0050】
傾斜した設計は、先に記載した電解装置において実装され得る。しかしながら当該設計は、より一般的には、二相流体が電気化学反応の結果として生成され、かつ/又はシステムに供給される電解セルで使用され得る。
【0051】
よってさらなる態様では、本発明は、チャネルを備える電解セルのための電極フレームに関し、当該チャネルは、接続点でマニホールド開口部に接続されており、接続点における当該チャネルの方向は、当該接続点におけるマニホールド開口部の接線の垂線に対して角度αを形成し、ここでαは、ゼロではなく、-90°~+90の範囲に含まれる。
【0052】
典型的には上記チャネルが、入口と出口とを相互に接続することになり、これによって、電解セル内を流れる流体が、マニホールド開口部内へと供給又は排出される。チャネルとマニホールド開口部との間の接触点は、フレーム設計及びセル組み立てに応じて、入口又は出口となるべきであろう。
【0053】
好ましくはαが、-80と-20との間、+20°と+80°との間にあり、さらにより好ましくはαが、-70°と-30°との間、+30°と+70°との間に含まれる。後者の実施形態は、重量パーセントで25~35%の水酸化カリウム水溶液の液相と、水素又は酸素を含有する気相とを含む二相流体で、特に良好に作用すると判明している。
【0054】
これがアノードフレーム又はカソードフレームの排出チャネルのための傾斜した設計を使用するために特に有利な一方で、これらのチャネルは、二相流体、例えば液体電解質と、特定の速度でマニホールド内に排出される気体との混合物を運ぶため、例えば、供給マニホールドがある程度の(ただし少量の)割合のガスを液体電解質内に含む場合、供給チャネルにおいても有利に実装可能なことは、排除されない。
【0055】
さらなる態様において、本発明は、AWE用途のための、さらにより有利には高圧AWE用途(すなわち、電解装置が5bar以上の圧力で稼働する用途)のための、前述の電解装置の使用に関する。
【0056】
さらなる態様において、本発明は、AEM-WE用途のための、前述の電解装置の使用に関する。
【0057】
本発明の複数の実施形態について以下で例示的に、添付図面を参照して説明するが、当該説明の目的は、本発明の特定の実施形態に関する様々な要素の相互配置を説明することに過ぎない。図面は概略図であり、縮尺どおりに示されてはいない。しかしながら同じ番号は、同じ機能的要素に実質的に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】内部表面(101,201)と、外部表面(102,202)とを有するアノードフレーム(100)及びカソードフレーム(200)を示す。
図2図1に示したアノードフレーム(100)及びカソードフレーム(200)の代替図を示す。
図3図1のアノードの供給チャネル及び排出チャネル(110,120)の拡大図を示す。
図4】本発明の特定の実施形態の拡大図を示す。
図5図5は、本発明による傾斜したチャネル設計の概略図を示す。
【0059】
図1は、内部表面(101,201)と、外部表面(102,202)とを有するアノードフレーム(100)及びカソードフレーム(200)を示し、ここでアノードフレーム(100)の内部表面(101)は、カソードフレーム(200)の内部表面(201)と向き合っている。各フレームにより、各電極(図示せず)を収容するためのハウジングがもたらされ、これは、フレーム中央の空きスペース(190,290)に対応して配置される。セパレータ(図示せず)は、2つの反対の電極の間に配置され得る。スペース(190,290)は、セパレータと、電極周囲(すなわち電極区画)のフレームとによって形成された囲い込み部(enclosure)をおおまかに決定することができ、この囲い込み部は、動作中に循環する電解質によって満たされている。アノードフレーム(100)は、電解質をマニホールド開口部(301)(図では重なっていて見えない)から供給出口へと供給チャネル(110)を介して供給する供給入口を備え、当該供給入口は最終的に、アノード区画に到達する。
【0060】
アノードフレーム(100)はまた、電解質をアノード区画からマニホールド開口部(351)内へと、排出入口及び排出出口を介して排出するための排出チャネル(120)を備え、これらの排出入口及び排出出口はそれぞれ、排出チャネルの電解質流入部及び流出部に配置されている。
【0061】
カソードの供給チャネル及び排出チャネル(図示せず)は、カソードフレームの内部表面(201)にあり、それぞれマニホールド開口部(305)及び(355)に接続されている。
【0062】
図示した実施形態では、アノードの供給チャネル及び排出チャネル(110,120)、並びにカソードの供給チャネル及び排出チャネル(210,220)が、溝、すなわち、後退した開口部であり、当該溝は、各フレーム(100,200)の内部表面にトレースされており、このため長手方向に開いている。
【0063】
アノードの供給チャネル及び排出チャネル(110,120)はそれぞれ、ガスケット(181,182)とともに輪郭を形成しており、当該ガスケットは、適切な封止を保証するためにその形状に沿って配置されている。
【0064】
図示したこの実施形態では、セルの組み立てを有利に迅速化するために、カソードの供給チャネル及び排出チャネルのガスケット(185,186)が、アノードフレームの内部表面(101)に配置されている。ガスケット(185,186)はまた、アノードフレーム(100)のマニホールド開口部(302,352)の輪郭を形成し、これらは、カソードフレーム(200)の反対側の内部表面をトレースしたカソードの供給チャネル及び排出チャネルの形状を写し取るように形成されている。2つのフレーム(100)及び(200)をともにプレスすると、ガスケット(181,182,185,186)が内部表面(101)及び(201)の双方に付着し、これによって、全てのアノード/カソードの供給/排出チャネルが閉鎖され、当該チャネルの封止について漏出のないことが保証される。
【0065】
図2は、図1に示したアノードフレーム(100)及びカソードフレーム(200)の代替図を示し、フレームの内部表面(101,201)及び外部表面(102,202)の両方が、マルチビューモードで見えるようになっている。
【0066】
フレーム(100,200)は、貫通孔(301,302,305,306,351,351,355,356)を備えている。これらの開口部(適切なガスケットを備えている)は、電解装置の隣接セルの全フレームが互いに押し付けられると、内部マニホールドを構成する。これらのマニホールドは、電解質の循環を保証し、これらのガスケットにより流出が防止され、加圧下であっても、漏出のない封止がもたらされる。
【0067】
アノードの供給及び排出チャネル(110,120)は、アノードフレーム(100)の内部表面(101)に見られ、カソードの供給及び排出チャネル(210,220)は、カソードフレーム(200)の内部表面(201)に見られる。
【0068】
アノードの供給チャネル(110)は、電解質をマニホールド開口部(301)からアノード区画へと運ぶことに貢献する。電解質は、アノードフレームの外部表面(102)に当接するアノードの供給出口(112)を通って、供給チャネルを出る。そこから電解質は、スペース(190)に応じて、直接、又は適切に設計された1つ若しくは複数の経路を介して、アノード区画に到達する。例えば、スペース(190)に到達するチャネルのアレイ(図示せず)と液圧的に連通して配置されたコレクタ(500)が使用可能であり、これは図4でさらに詳述する設計と類似している。
【0069】
カソードの供給チャネル(210)は、マニホールド(305)からカソード区画へと電解質を運ぶことに貢献する。電解質は、カソードフレームの外部表面(202)に当接するカソードの供給出口(212)を通じて、供給チャネルを出る。そこから電解質は、スペース(290)に応じて、直接、又は適切に設計された1つ若しくは複数の経路を介して、カソード区画に到達する。例えば、カソード区画に到達するチャネルのアレイ(図示せず)と液圧的に連通して配置されたコレクタ(550)が使用可能であり、これは図4でさらに詳述する設計と類似している。
【0070】
アノード/カソードの排出チャネル(120)/(220)は、電解質をアノード/カソード区画からマニホールド開口部(351)/(355)へと運ぶことに貢献する。電解質は、アノード/カソード内部表面(101)/(201)に配置されたアノード/カソードの排出チャネル(120)/220へと、アノード/カソードのフレームの外部表面(102)/(202)から、アノード/カソードの排出入口(121)/(221)を通じて入る。囲い込み部(190)/(290)から、直接、又は適切に設計された1若しくは複数の経理を通じて、電解質を排出入口(121)/(221)に向かって集めることができる。例えば、スペース(190)/(290)に応じて位置している区画に、これらに当接しているチャネルのアレイを介して接続されたコレクタ(501)/(551)を使用することが可能であり、これは図4でさらに詳述する設計と類似している。
【0071】
図3は、図1のアノードの供給チャネル及び排出チャネル(110,120)の拡大図を示す。アノードの供給入口(111)及びアノードの排出出口(122)は、アノードフレームの内部表面にある。すなわちこれらの部分は、フレーム(100)の内部表面(101)内に、少なくとも部分的に包含されているか、又は当該内部表面と境界を接している。アノードの供給チャネル及び排出チャネル(110,120)は、内部表面(101)をトレースした溝であり、これらは長手方向に開いており、内部表面(101)に対して後退している。アノードの供給出口(112)及びアノードの排出入口(121)は、アノードフレームの外部表面(図示せず)に当接している。
【0072】
カソードの供給入口(211)及びカソードの排出出口(222)は、カソードフレームの内部表面にあり、ここでチャネルの流入部は、内部表面(201)に含まれる。カソードの供給チャネル及び排出チャネル(210,220)は、内部表面(201)をトレースした溝であり、これらの溝は、長手方向に閉鎖されておらず、カソードの内部表面(201)に対して後退している。カソードの供給出口(212)及びカソードの排出入口(221)は、カソードフレームの外部表面(図示せず)に当接している。
【0073】
灰色の矢印は、カソードの供給チャネル(210)の方向が5回変わっていることを示し、カソードの排出チャネル(210)の方向が2回変わっていることを示す。
【0074】
図4は、本発明の特定の実施形態の拡大図を示し、ここで、アノードの活性領域(図示せず)は、チャネルのアレイ(401.402,403,・・・)を介して、排出入口(121)と液圧連通して配置されており、当該チャネルは、電解質をアノード区画から、コレクタ(501)へと、また排出入口(121)へと運ぶ。そこから電解質が、先の図面に示したように、排出チャネルへと流れ込む。
【0075】
図5は、本発明による傾斜したチャネル設計の概略図を示し、この場合、電極フレーム(101)の排出チャネルに適用される。排出チャネル(120)は、排出出口(122)を介して、排出入口(121)をマニホールド開口部(351)へと接続し、方向cに沿って当該マニホールド開口部に到達する。排出チャネルは、当該点において接線tに対して垂直なrに対して、およそ50℃の角度αを形成する。
【0076】
実施例1
AWE用途のための電解装置を、30barの圧力で稼働させるために設計した。この電解装置は、電気的に直列に接続された100個の電解セルを含む。これらの電解セルは、電解液を循環させるために4つの内部マニホールドを介して並列に、液圧的に接続されている。当該電解液は、導電性が80℃でおよそ140S/mである、KOHの30%水溶液から成る。
【0077】
電解装置は、10kA/mの電流密度で動くように設計されている。
【0078】
各電解セルは、活性化されたニッケルエキスパンデッドメッシュからなるアノードを備えるアノードハーフセルと、カソードとしての、活性化されたニッケル織メッシュを備えるカソードハーフセルとを有する。
【0079】
各電極は、直径が全体で1.5m、厚さが10mmの円形フレーム(1mのセル活性領域が露出)内に収容されている。
【0080】
隔膜は、ゼロギャップ構成で双方の電極の間に配置されている。
【0081】
漏出は、これらの素子の間に、またこれらの素子に適切なガスケットを配置することによって防止される。
【0082】
各電極は、集電体を介して各バイポーラプレートに電気的に接続されている。
【0083】
これらのフレームはPPS製であり、プラスチックシートのフライス加工により製造される。
【0084】
アノード/カソードの供給チャネルもまた、フライス加工技術により製造され、アノード/カソードの内部表面にわたり、長さが500mm、幅が10mm、深さが4mmの後退した経路を形成する。これらのチャネルでは、図3に示した設計と同様に、方向が5回変わり、電解質をフレームの内部表面にある供給入口から、当該フレームの外部表面にある供給出口へと運ぶ。図4に示したように、供給出口から電解質は、コレクタ及びチャネルのアレイを通じて、電極区画に到達する。
【0085】
アノード/カソードの排出チャネルもまた、フライス加工技術で製造され、アノード/カソードの内部表面にわたり、長さが500mm、幅が20mm、深さが4mmの後退した経路を形成する。これらのチャネルでは、図3に示したように方向が2回変わり、外部表面にある排出入口から、各フレームの内部表面にあるマニホールドに接続された排出出口へと、電解質を運ぶ。電極区画からの電解質は、図4に示した設計と同様に、コレクタ及びチャネルのアレイを通じて、排出入口に到達する。
【0086】
アノード/カソードの供給/排出チャネルからの漏出を防止するガスケットは、図1及び2に示したように配置されている。
【0087】
表1には、この電解装置設計について異なる電流密度(CD)で算出した迷走電流が、利用可能な電流負荷全体に対するパーセンテージとして示されている。
【0088】
この電解装置設計について設計電流密度で算出した迷走電流は、利用可能な電流負荷全体の0.5%である。
【0089】
【0090】
対比例1
実施例1に従って電解装置を設計するのだが、以下の点が異なる。
【0091】
アノード/カソードのフレーム(PPS製)を、プラスチックシートのフライス加工により製造する。
【0092】
アノード/カソードの供給/排出チャネルは、マニホールドをアノード/カソードの区画に接続するフレーム内に、まっすぐな貫通孔を穿孔することにより製造する。
【0093】
アノード/カソードの供給チャネルの長さは、50mmである。
【0094】
この電解装置は、実施例1と同じ条件で稼働させる。
【0095】
表2には、この電解装置設計について異なる電流密度で算出した迷走電流が、利用可能な電流負荷全体に対するパーセンテージとして示されている。
【0096】
この電解装置設計について設計電流密度で算出した迷走電流は、利用可能な電流負荷全体の1.4%である。
【0097】
【0098】
前述の説明(実施例含む)は、本発明を限定することを意図したものではなく、本発明の一般原則から逸脱しない限りにおいて様々な実施形態に従って使用可能であり、本願発明の範囲は、添付特許請求の範囲のみによって規定される。
【0099】
本願の明細書及び請求項において、「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「包含する(containing)」という用語は、他の付加的な要素、部材、又はプロセス工程の存在を排除することを意図したものではない。
【0100】
文書、項目、材料、装置、物品などの議論は、本発明の背景を提供することのみを目的として、本明細書に含まれている。これらのトピックの一部又はすべてが、本願の各請求項の優先日以前に先行技術の一部を形成したこと、又は本発明に関連する分野に共通する一般知識を形成したことは、示唆も提示もされていない。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの電解セルを含む電解装置であって、当該電解セルはそれぞれ、アノードを備えるアノードハーフセル、カソードを備えるカソードハーフセル、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータを含むものであり、前記少なくとも2つの電解セルは、内部マニホールドを通じて液圧的に接続されており、
前記カソードハーフセル及び前記アノードハーフセルはそれぞれ、アノードフレーム(100)及びカソードフレーム(200)を備え、各フレームは、内部表面及び外部表面を有し、前記アノードフレームの前記内部表面(101)は、前記カソードフレームの前記内部表面(201)と向き合っており、
前記アノードフレーム及び前記カソードフレームはそれぞれ、電解質をアノード区画及びカソード区画のそれぞれに供給するための供給入口(111,211)及び供給出口(112,212)を備え、前記供給入口及び前記供給出口は、供給チャネル(110,210)を介して接続されており、
前記アノードフレーム及び前記カソードフレームはそれぞれ、前記電解質を前記アノード区画から、及び前記カソード区画からそれぞれ排出するための、排出入口(121,221)及び排出出口(122,222)を備え、前記排出入口及び排出出口は、排出チャネル(120,220)を介して接続されている、電解装置であって、
前記アノードの前記供給チャネル及び前記排出チャネル(110,120)が、前記アノードフレームの前記内部表面(101)にわたって形成されており、前記アノードフレームの前記内部表面に沿って少なくとも1回、方向が変わっており、
前記カソードの前記供給チャネル及び前記排出チャネル(210,220)が、前記カソードフレーム(200)の前記内部表面(201)にわたって形成されており、前記カソードフレームの前記内部表面に沿って少なくとも1回、方向が変わっており、
前記アノード及び前記カソードの前記供給チャネル及び前記排出チャネルは、全長が前記内部マニホールドと電極区画との間の距離LM-Cの少なくとも2倍であり、
前記アノードの前記供給出口(112)及び前記アノードの前記排出入口(121)が、前記アノードフレーム(100)の前記外部表面(102)に当接し、
前記カソードの前記供給出口(212)及び前記カソードの前記排出入口(221)が、前記カソードフレーム(200)の前記外部表面(202)に当接する、
電解装置。
【請求項2】
前記アノード及び前記カソードの前記供給チャネル及び前記排出チャネルは、全長がLM-Cの2~50倍である、請求項1に記載の電解装置。
【請求項3】
前記セパレータが、隔膜又は膜である、請求項1又は2に記載の電解装置。
【請求項4】
前記電解セルのそれぞれが、ゼロギャップ構成で配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項5】
前記アノード及び/又は前記カソードが、有孔構造であるか、又は導電性材料のスラブである、請求項1から4のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項6】
前記アノード区画及び前記カソード区画の前記供給出口がそれぞれ、コレクタ(500,501,550,551)に、及び前記アノードフレーム及び前記カソードフレームの前記外部表面にわたり形成されている分配チャネル(401,402,403)のアレイに接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項7】
前記アノード又は前記カソードの前記供給チャネル又は前記排出チャネルのうち少なくとも1つが、マニホールド開口部(351,352,355,356)に接続されており、前記アノード又は前記カソードの前記供給チャネル又は前記排出チャネルのうち少なくとも1つが、前記マニホールド開口部に、接続点における接線の垂線に対して角度αで接し、αはゼロではなく、-90°と+90°との間に含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電解装置の、アルカリ水電解を行うための、又はアニオン交換膜水電解用途のための、使用。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電解装置を製造する方法であって、前記アノードフレーム及び前記カソードフレームが、シートのフライス加工若しくは機械加工によって、又は成型、3Dプリント、又はこれらの組み合わせによって製造される、方法。
【請求項10】
前記アノード及び前記カソードの前記供給チャネル及び前記排出チャネルが、以下の方法:彫り込み、フライス加工、成型、3Dプリント、機械加工、又はこれらの任意の組み合わせのいずれかによって得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
カソードフレーム又はアノードフレームの内部表面にわたり形成されるとともに、当該フレームの内部表面に沿って少なくとも1回方向が変わっているチャネル(120)を備える、電解セルのための電極フレーム(101)であって、前記チャネルは、接続点(122)でマニホールド開口部(351)に接続されており、前記接続点で前記チャネルの方向は、当該接続点における前記マニホールド開口部の接線の垂線に対して角度αを形成し、αはゼロではなく、-90°と+90°との間に含まれる、電極フレーム(101)。
【請求項12】
αがゼロではなく、-80°と-20°との間、及び+20°と+80°との間に、好ましくは-70°と-30°との間、及び+30°と+70°との間に含まれる、請求項11に記載の電極フレーム。
【国際調査報告】