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特表2024-529662二重管腔ピグテールカテーテル及びHOCM勾配カテーテル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】二重管腔ピグテールカテーテル及びHOCM勾配カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A61B5/0215 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507852
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 US2022074566
(87)【国際公開番号】W WO2023015272
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/229,693
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524047811
【氏名又は名称】ペダーセン ウェスリー ロバート
(71)【出願人】
【識別番号】510219383
【氏名又は名称】ドラスラー ウィリアム ジョセフ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】ペダーセン ウェスリー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ドラスラー ウィリアム ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB04
4C017AC01
4C017EE01
4C017FF08
(57)【要約】
【課題】身体ナローイングにわたる圧力勾配を測定するためのピグテールカテーテルを提供する。
【解決手段】ピグテールカテーテルは、近位シャフトセグメント(102)及び遠位シャフトセグメント(104)を備えることができる。近位シャフトセグメントは、近位圧力管腔と非同軸遠位圧力管腔とを定める二重管腔管系を含むことができる。一例では、遠位圧力管腔は、ほぼ円形の断面形状を有し、近位圧力管腔は、遠位圧力管腔の周りを部分的に包み込むほぼ三日月形又は腎臓形の断面形状を有する。遠位シャフトセグメントは、身体ナローイングに対して遠位に位置決め可能な少なくとも1つの遠位オリフィス(124)と、身体ナローイングに対して近位に位置決め可能な少なくとも1つの近位オリフィス(122)とを含むことができる。各オリフィスは、例えば少なくとも約0.46mmの直径を有することができる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナローイングに対して近位及び遠位の圧力を測定するように構成されたピグテールカテーテルであって、
近位圧力管腔と非同軸遠位圧力管腔とを定める二重管腔管系を含む近位シャフトセグメントと、
前記ナローイングにわたって部分的に位置決めされるように構成された遠位シャフトセグメントであって、前記遠位圧力管腔を含むが前記近位圧力管腔を含まない部分を有する前記遠位シャフトセグメントと、
を備え、
前記遠位シャフトセグメントは、前記ナローイングに対して遠位に位置決め可能で少なくとも約0.018インチの直径を有する少なくとも1つの遠位オリフィスと、前記ナローイングに対して近位に位置決め可能で少なくとも約0.018インチの直径を有する少なくとも1つの近位オリフィスとを含む、
ピグテールカテーテル。
【請求項2】
前記遠位圧力管腔は、ほぼ円形の断面形状を有し、
前記近位圧力管腔は、前記遠位圧力管腔の周りを部分的に包み込むほぼ三日月形又は腎臓形の断面形状を有する、
請求項1に記載のピグテールカテーテル。
【請求項3】
前記近位シャフトセグメントの近位端に結合されたマニホルドを更に備え、
前記マニホルドは、前記近位圧力管腔と流体連通する近位圧力ポートと、前記遠位圧力管腔と流体連通する遠位圧力ポートとを含む、
請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のピグテールカテーテル。
【請求項4】
前記マニホルドは、前記ナローイングにわたる圧力勾配の決定のために近位圧力信号及び遠位圧力信号を変換器まで送出するように構成される請求項3に記載のピグテールカテーテル。
【請求項5】
前記近位シャフトセグメントは、前記二重管腔管系の外壁内に閉じ込められた編組構造を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のピグテールカテーテル。
【請求項6】
前記編組構造は、少なくとも約0.020インチの間隔を有する金属繊維又はポリマー繊維を備え、それらの間の近位オリフィスの配置を可能にする請求項5に記載のピグテールカテーテル。
【請求項7】
前記編組構造は、前記遠位シャフトセグメントの一部分まで延びる請求項5に記載のピグテールカテーテル。
【請求項8】
前記二重管腔管系の外壁が、前記近位圧力管腔に隣接する第1の壁繊維を備え、前記第1の壁繊維は、軸線方向に延び、かつ非伸張特性を有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のピグテールカテーテル。
【請求項9】
前記二重管腔管系の前記外壁は、前記遠位圧力管腔に隣接する第2の壁繊維を備え、前記第2の壁繊維は、軸線方向に延び、かつ非伸張特性を有する請求項8に記載のピグテールカテーテル。
【請求項10】
前記二重管腔管系の外面が、シャフト長軸とシャフト短軸とを定める長円形断面形状を有し、
前記遠位圧力管腔の中心及び前記近位圧力管腔の中心が、前記シャフト長軸上に位置付けられる、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のピグテールカテーテル。
【請求項11】
前記外面は、シャフト長径より少なくとも10パーセント(10%)小さいシャフト短径を有する請求項10に記載のピグテールカテーテル。
【請求項12】
前記近位圧力管腔の遠位部分内に位置決めされ、かつ前記遠位シャフトセグメントへの取り付け具を形成する弾性部材を更に備える請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のピグテールカテーテル。
【請求項13】
前記弾性部材は、前記遠位シャフトセグメントの端部にピグテールコイルを含む前記遠位シャフトセグメントの長さに沿って延びる請求項12に記載のピグテールカテーテル。
【請求項14】
前記遠位シャフトセグメントは、前記少なくとも1つの近位オリフィスに対して遠位にシャフト曲げ部を含む請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のピグテールカテーテル。
【請求項15】
前記シャフト曲げ部は、包含的に約145度から約165度の範囲のシャフト曲げ角度を形成する請求項14に記載のピグテールカテーテル。
【請求項16】
前記遠位シャフトセグメントは、約1.5cm以下の直径を有するピグテールコイルを含む請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のピグテールカテーテル。
【請求項17】
前記ピグテールコイルの平面が、前記少なくとも1つの近位オリフィスに対して遠位に前記遠位シャフトセグメントに位置付けられたシャフト曲げ部の平面と同一平面上ではない請求項16に記載のピグテールカテーテル。
【請求項18】
前記ピグテールコイルの前記平面は、前記シャフト曲げ部の前記平面に対して包含的に約5度から約45度の角度を成す請求項17に記載のピグテールカテーテル。
【請求項19】
前記ピグテールコイルは、最遠位コイル部分にコイル頂点を含み、前記最遠位コイル部分は、前記ピグテールコイルの残りの部分の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する請求項16に記載のピグテールカテーテル。
【請求項20】
前記ピグテールコイルは、最遠位コイル部分にコイル頂点を含み、
放射線不透過マーカーが、前記コイル頂点に位置決めされる、
請求項16に記載のピグテールカテーテル。
【請求項21】
前記近位圧力管腔及び前記遠位圧力管腔のうちの一方又は両方が、少なくとも約0.018インチの水力直径を有する請求項1から請求項20のいずれか1項に記載のピグテールカテーテル。
【請求項22】
ピグテールカテーテルを心臓の中に前記カテーテルの遠位シャフトセグメントが左心室に部分的に位置決めされるように挿入する段階であって、前記カテーテルの近位シャフトセグメントが、ほぼ円形の断面形状を有する遠位圧力管腔と前記遠位圧力管腔の周りを部分的に包み込むほぼ三日月形又は腎臓形の断面形状を有する近位圧力管腔とを定める二重管腔管系を含み、前記遠位シャフトセグメントが、前記遠位圧力管腔を含むが前記近位圧力管腔を含まない一部分と、大動脈弁に対して近位に位置決めされた少なくとも1つの近位オリフィスと、前記大動脈弁に対して遠位に位置決めされた少なくとも1つの遠位オリフィスと、を含む前記挿入する段階と、
前記ピグテールカテーテルのマニホルドに圧力変換器を結合する段階を含む前記大動脈弁にわたる圧力勾配を決定する段階であって、前記マニホルドが、前記近位圧力管腔と連通する近位圧力ポート及び前記遠位圧力管腔と連通する遠位圧力ポートを含む前記決定する段階と、
を備える方法。
【請求項23】
前記ピグテールカテーテルを前記心臓の中に挿入する段階は、前記遠位圧力管腔を使用して心臓診断カテーテルの上で前記ピグテールカテーテルを挿入する段階を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記遠位圧力管腔から前記心臓診断カテーテルを取り出す段階を更に備える請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記近位圧力管腔及び前記遠位圧力管腔のうちの一方又は両方が、少なくとも約0.018インチの水力直径を含む請求項22から請求項24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔優先権の主張〕
これにより、引用によってその全体が本明細書に組み込まれている「二重管腔ピグテールカテーテル及びHOCM勾配カテーテル」という名称の2021年8月5日出願のPedersen他の米国仮特許出願第63/229、693号に対する優先権の利益を主張するものである。
【0002】
この特許文書は、医療デバイスに関する。より詳細には、限定するものではないが、本特許文書は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
デュアル(又は二重)管腔ピグテールカテーテルは、心臓の生来の弁又は生体人工弁にわたる、身体の生来の血管腔内の狭窄にわたる、又は身体の非血管空洞又は管状メンバ内に見出される他のナローイングにわたる圧力勾配を測定するための介入手順に使用することができる。狭窄又はナローイングにわたる圧力勾配測定を可能にするために、遠位圧力を測定するようになったピグテールカテーテルの遠位領域は、狭窄又はナローイングに対して遠位に置くことができ、近位圧力を測定するようになったピグテールカテーテルの近位領域は、狭窄又はナローイングに対して近位に置くことができる。大動脈弁にわたる圧力勾配測定は、例えば、ピグテールカテーテルの遠位領域を左心室(LV)に位置決めしてLV圧力を測定し、かつピグテールカテーテルのより近位領域を上行心室の中に置いて大動脈圧を測定することによって達成することができる。大動脈弁にわたる高い圧力勾配は、大動脈弁狭窄を示しており、これは、弁形成術、経カテーテル大動脈弁置換術、外科的弁置換術、薬物療法、又は他の治療方法を通じて治療することができる。他の狭窄は、身体の生来の動脈、又は人工導管、又は他の非血管器官導管に見出される狭窄を広げるために、例えば、ステントの配置を通じて治療することができる。
【0004】
現在使用されている二重管腔ピグテールカテーテルは、同軸管腔を含むカテーテルシャフトを用いて形成され、かつ欠点に関連付けられている。そのようなカテーテルは、例えば、上行大動脈又は左心室からピグテールカテーテルの近位端に接続された圧力変換器への信頼性の低い圧力信号を記録しやすい。多くの場合に、カテーテルシャフトのピグテール部分又は隣接遠位領域は、キンクを起こしやすい可能性があり、これは、伝達管腔がより小さいことと相まって、信号伝達の減衰をもたらし、信頼性の低い圧力勾配に至る可能性がある。遠位位置決めのためのカテーテルシャフトのトルク機能も不足している。
【0005】
本発明者は、必要とされるのは、狭窄又はナローイングに対する近位及び遠位の両方の領域からカテーテルの近位端まで圧力信号を正確に伝達することになる扁平二重管腔ピグテールカテーテルであると認識している。例えば、狭窄大動脈弁にわたる圧力勾配測定にそのようなピグテールカテーテルを使用する時に、ピグテールカテーテルは、LV及び上行大動脈からカテーテルの近位端まで高精度で減衰しない周波数応答性の圧力信号を同時に伝達することができなければならない。カテーテルのピグテール部分は、キンクに抵抗し、遠位カテーテルシャフトへの優れたトルク伝達を有し、付勢された遠位カテーテルシャフトの曲げ及び/又は最適LVピグテール信号伝達を有するべきである。一部の事例では、ピグテールカテーテルは、例えば、狭窄大動脈弁にわたってより安全で外傷の少ないアクセスを提供するのに使用することができる扁平心臓診断カテーテルの上でLVまで送出することができなければならない。
【0006】
閉塞性肥大型心筋症(HOCM)のような狭窄LV空洞内セグメントにわたる圧力勾配を測定することは、近位及び遠位圧力を正確に局在化して測定することが困難である可能性がある。心筋の肥大領域は、例えば、LVの近位中隔壁から突出して僧帽弁前尖に隣接する左心室流出路(LVOT)の中に延びる可能性がある。この突出部は、LVOTを通る血流を通常よりも高速にし、それによって僧帽弁前尖を突出部に向けて引くことができる局所的な低圧領域を生成し、突出部のみによって引き起こされるよりも血流に対する更に大きい制限をもたらす可能性がある。この結果は、LVOTナローイングにわたる動的圧力降下である。
【0007】
典型的には、心筋の肥大セグメントは、外科的に治療するか又は経カテーテルアルコール焼灼術によって焼灼することができる。LV内圧力は、動的閉塞部に対して近位及び遠位のセグメント内で個別に局在化する必要がある。これは、近位圧力測定のために局在化される必要がある大動脈弁と中隔肥大の近位セグメントとの間の短い距離によって多くの場合に困難にされる。圧力をLVOT勾配に対して近位に局在化することは、HOCMと大動脈弁狭窄症とを併発している患者では特に関連性がある。2つの異なる収縮期勾配が存在する臨床シナリオでは、それらは、HOCM中隔焼灼術、TAVR、又はその両方のような適切な治療戦略を決定するために別々に定量化する必要がある。これに加えて、HOCMを有する患者は、多くの場合に、遠位オリフィスに作用して正確な圧力測定を阻害する可能性がある遠位空洞末端の収縮期虚脱をもたらす可能性がある亢進性LV収縮機能を有する。
【0008】
本発明者は、必要とされるのは、閉塞部に対して遠位に位置付けられた遠位オリフィス又は遠位開口部を備えたコイルを有する勾配カテーテルであることを認識しており、コイルは、小さな直径を有し、かつ遠位オリフィス又は遠位開口部の衝突を防ぐように成形することができる。閉塞部に対して近位に位置付けられた近位オリフィスは、近位LVOTにかつ大動脈弁に対して遠位に正確に位置決めされなければならない。近位及び遠位圧力は、動的狭窄を定量化するために同時に測定することができる。ベースライン勾配は、閉塞の重症度を決定することになる。圧力勾配は、LV内の場所からLVOT内の大動脈弁の直下又はそれに隣接する場所まで測定することができる。カテーテルは、大動脈内の狭窄大動脈弁尖に対して近位に近位オリフィスを置くことができなければならず、一方でオリフィスを遮ることなくコイルをLVOT内の動的閉塞性セグメントに対して近位に維持し、それによって狭窄大動脈弁にわたる別の収縮末期勾配を測定する能力を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば、同軸管腔を持たない二重管腔押出から形成されたピグテールカテーテルを含む。二重管腔管系は、互いに平行に延びるが同軸ではない別々の軸線を有する2つの管腔を提供することができる。この二重管腔配置は、同軸管腔を有する二重管腔カテーテルと比較して、2つの管腔の各々に対してより大きい水力直径を提供することができ、それによって遠位シャフトセグメントからピグテールカテーテルの近位端に位置付けられたマニホルドまでの圧力信号伝達の改善を提供すると考えられている。
【0010】
二重管腔シャフト管系を含む近位シャフトセグメントは、編組されてカテーテルの遠位シャフトセグメントへのトルク伝達特性を与えることができる。カテーテルシャフトは、LVの軸線方向にシャフトの曲げを有することができ、それによってカテーテルが、圧力勾配と左心室収縮期機能との両方の信頼性の低い評価を与えると考えられる不整脈異常をもたらす可能性があると考えられる中隔セグメントに突き当たることなく、LV内部に及び最も注目すべきことにLVの中に延びることを可能にする。ピグテールコイルに隣接するカテーテルの遠位シャフトセグメントは、キンクに抵抗して遠位シャフトセグメントへのトルク伝達を提供する編組又は弾性部材のいずれかによって支持することができ、一方でコイルに対する可撓性を保存して副僧帽弁構造への外傷を防ぎ、かつワイヤ交換に対するより少ない抵抗を有する。
【0011】
カテーテル実施形態のピグテールコイルは、シャフト曲げ部の近位及び遠位にカテーテルシャフトによって形成される曲げ平面と同一平面上にあるコイル平面を形成することができ、コイル平面は、LVのコントラスト混濁化を最適化するためにカテーテルの近位部分に反時計回りのトルクを印加することによって左心室前外側に向けることができる。別の実施形態では、ピグテールカテーテルは、曲げ平面と同一平面上にないコイル平面を形成することができる。コイル平面は、ピグテールを位置決めするためにシャフト曲げ平面に対して角度を付けることができる。実施形態では、遠位圧力管腔は、直線先端式又は他のガイドワイヤの送出を補助し、それに大動脈から狭窄大動脈弁にわたってLVまで診断カテーテルが続いていくのに使用される場合がある扁平心臓診断カテーテルの通過を可能にすることになる直径を有するようなサイズを有し、かつそのように成形することができる。そのような心臓診断カテーテルは、Amplatz Left(AL)、多目的カテーテル、right Judkinsカテーテル、及び他のカテーテル構成を含む場合があり、以下で心臓診断カテーテルと呼ぶことになる。最初に直線先端式交差ワイヤを診断カテーテル内に引き戻した後で心臓診断カテーテルの上でピグテールカテーテルを前進させることによって外傷性の少ない方法を提供することができ、これにより、ピグテールカテーテルは、直線先端式ガイドワイヤをLV尖部に自由に露出させることなく、ピグテールカテーテルを送出するためのレールとして診断カテーテルを使用する。
【0012】
ピグテールカテーテルは、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)において近位LV中隔の肥大セグメントに対して副次的なLVOTに存在するLV空洞内の動的閉塞を正確に測定するカテーテルを提供するために一部の特定の修正を受ける可能性がある。HOCMピグテールカテーテルは、トルク機能を高めて耐キンク特性を提供するための様々なシャフト領域に対する編組シャフト、二重管腔内に適切な水力直径を備えた2つの管腔を通じた圧力信号伝達を強化するための二重管腔シャフト、ピグテールカテーテルの遠位端に位置付けられた可撓性コイル、シャフトの一部に沿って又はコイル内に位置付けられたオリフィス、ガイドワイヤ上の通過を許容し、身体チャンバからシャフト管腔への圧力信号伝達用開口部を提供するために適切な直径を有するコイル内の遠位開口部、身体チャンバからシャフト管腔への圧力信号伝達を可能にするオリフィス直径、及び/又は動的なLVOT閉塞を偽りにする心筋層からの異所性信号を誘発することなく、コイルをLV内に位置決めするシャフト曲げ角度を含む心臓ピグテールカテーテルのいずれかの実施形態に関して説明した特徴のいずれかを有することができる。
【0013】
本発明のHOCMピグテールカテーテルは、心臓の収縮期収縮中にオリフィス又は遠位開口部への心筋組織の衝突から保護されるオリフィス及び遠位開口部を有することができる。そのような収縮期収縮は、心筋組織にオリフィス又は遠位開口部を部分的に遮断させ、その結果、心室からシャフト管腔への圧力信号伝達が減衰し、圧力勾配測定に誤差をもたらす可能性がある。オリフィスを円形又は長円形状コイルの最内縁に置くことにより、オリフィスを保護することができる。開口部の面積を増大させ、心筋組織が信号伝達を遮断しにくくするために、オリフィスは長円形状を有することができる。コイルの端部での遠位開口部を近位隣接カテーテルシャフトの近くに置く又は近位隣接カテーテルシャフトに当接させることにより、遠位開口部を保護することができ、このカテーテルシャフトは、心筋組織を遠位開口部から遠ざけるのを補助することができる。肥大した心筋から大動脈弁までの距離は約5mm(2~10mmの範囲)と短いので、近位オリフィス領域を大動脈弁輪よりも下でかつ肥大した中隔セグメントに対して近位に正確に配置できるように、近位オリフィス領域は、約1つ又は2つのオリフィスだけを含有することができる。放射線不透過マーカーは、オペレータが蛍光透視下で近位オリフィス領域の場所を可視化できるように、例えば、近位開口部領域に対して近位の約1mmに位置付けることができる。
【0014】
HOCMピグテールカテーテルのコイル直径は、直径5mm(例えば、3~10mmの範囲)と更に小さくすることができる。コイル直径が小さいほど、HOCM患者に一般的に見られる亢進した収縮期収縮中により遠位のLV空洞内でLVOT閉塞の遠位の圧力をより良く局在化することができる。収縮期中の心筋組織による遠位オリフィスの閉鎖をより十分に回避するために、ピグテールカテーテルの曲げ後領域は、コイルをLV尖部から約2~3cmに維持するために例えば約4cmの長さを有することができる。コイルの遠位開口部に位置付けられた放射線不透過マーカーは、閉塞セグメントに対して遠位の遠位圧力を測定するためにカテーテルセグメントを正確に固定することを補助することができる。更に、放射線不透過マーカーは、LVOT内の大動脈弁に隣接して位置決めされる近位オリフィスの近くに位置付けることができる。
【0015】
本発明の二重管腔シャフトは、これに代えて、その外壁内に編組を含まずに形成することができる。代替実施形態では、押出成形工程中に又は他の加工方法を通じて繊維又はリボンをシャフト外壁内に例えば長円形近位圧力管腔中心に近い場所に置くことができる。そのような繊維又はリボンの存在により、長円形近位圧力管腔の短径が減少しないように二重管腔シャフトが受けるあらゆる曲げを可能にし、かつ誘導することができる。従って、カテーテルシャフトが曲げられている時でも、近位圧力管腔によって送出される圧力信号の忠実度を維持することができる。
【0016】
別の実施形態では、二重管腔シャフトの外面は、長円形状を備えて形成することができる。外側長軸は、遠位圧力管腔中心及び近位圧力管腔中心を通って延びる線に沿って向けることができる。そのような長円形外面形状により、二重管腔シャフトの近位圧力管腔は、同じ周囲長の丸形二重管腔シャフトで達成できるものよりも大きい短径を有することができ、それによって二重管腔外面の周囲長が最低限に維持される。長円形二重管腔シャフトは、近位圧力管腔に関して同じ短径を有する丸形二重管腔シャフトよりも小さい導入カテーテルを通り抜けることができる。その結果、二重管腔シャフトをより小さなプロファイルの導入シースに通しながらも、圧力信号の忠実度を向上させることができる。
【0017】
マニホルドに又はその近くに位置付けられた圧力変換器に送り返される圧力信号の忠実度には、いくつかの要因が影響を与える可能性がある。例えば、小径の近位圧力管腔を通って移動する流体の粘性によって生じる流体抵抗により、圧力変換器に伝達される圧力信号の大きさが減少する可能性がある。従って、近位圧力管腔の水力直径は、忠実な信号伝達性能を確保するために少なくとも約0.018インチの寸法に維持されなければならない。管系が長いと、カテーテルシャフトを通って移動する流体の慣性に影響を及ぼし、圧力変換器に送り返される圧力信号の位相遅延が生じる可能性がある。管系コンプライアンスは、圧力信号を減衰させ、圧力変換器に到達する際に位相が遅延する可能性がある。そのような変数は、数学的に検討され、かつ本発明の二重管腔カテーテルの近位オリフィスから近位圧力管腔に、更にマニホルドに位置付けられた圧力変換器に伝達される信号の忠実度を最適化するように選択することができる。
【0018】
本発明のカテーテル及び関連の方法のこれら及び他の実施例、特徴、及び知見を以下の「発明を実施するための形態」に少なくとも部分的に列挙する。この「発明の概要」は、本発明の教示の非限定的な例を提供することを意図しており、排他的又は網羅的な説明を提供することを意図していない。以下の「発明を実施するための形態」は、本発明のカテーテル及び関連の方法に関する更に別の情報を提供するために含めるものである。
【0019】
図面は、この特許文書で議論する様々な実施形態を限定ではなく例示として一般的に示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】二重管腔ピグテールカテーテルの平面図である。
図1B】編組曲げ前領域の断面図である。
図1C】二重管腔ピグテールカテーテルの遠位シャフトセグメントの平面図である。
図1D】編組曲げ前領域の断面図である。
図1E】心臓の左心室の中に延びるピグテールカテーテルの平面図である。
図1F】コイル頂点が大動脈弁尖最下点の中に延びたピグテールカテーテルの平面図である。
図2】二重管腔シャフトの断面図である。
図3】単一管腔シャフトの断面図である。
図4】ピグテールコイル平面を示す遠位シャフトセグメントの平面図である。
図5】シャフト曲げ平面及びコイル平面を示す左心室の中に延びるピグテールカテーテルの平面図である。
図6】遠位シャフトセグメントの平面図である。
図7】単一管腔シャフトを通した断面図である。
図8】遠位シャフトセグメントの実施形態の平面図である。
図9】潰れた長円形外壁を備えた二重管腔シャフトの断面図である。
図10】潰れた長円形管腔をリフローすることによって形成された単一管腔シャフトの断面図である。
図11A】圧力勾配測定に使用される直線線形カテーテルの平面図である。
図11B】シャフト湾曲部を示す遠位シャフトセグメントの平面図である。
図11C】二重管腔シャフトの断面図である。
図12】大動脈内を延びる心臓診断カテーテルの平面図である。
図13】大動脈内を心臓診断カテーテルの上で延びる二重管腔ピグテールカテーテルの平面図である。
図14】大動脈弁を横切って左心室の中に前進した心臓診断カテーテル及びピグテールカテーテルの半透視図である。
図15】心臓診断カテーテルを引き出した後の左心室内のピグテールカテーテルの半透視図である。
図16】左心室内を治療ガイドワイヤの上で延びるピグテールカテーテルの半透視図である。
図17A】肥大した心筋に起因した狭窄にわたる圧力勾配を測定するために左心室内を延びるピグテールカテーテルの半透視図である。
図17B】遠位端を内面の近くに位置決めしたコイルの平面図である。
図17C】コイルの内面に沿ってオリフィスを位置付けたコイルの平面図である。
図17D】遠位開口部を対向壁に密着させたコイルの平面図である。
図17E】内面上に長円形オリフィスを有するコイルの平面図である。
図18】遠位開口部が左心室にあり、かつ近位オリフィスが大動脈内に位置決めされた状態で位置決めされた二重管腔ピグテールカテーテルの半透視図である。
図19】外壁に壁繊維を位置付けた二重管腔シャフトの断面図である。
図20】長円形外面を有する二重管腔シャフトの断面図である。
図21】心臓からの圧力信号P(t)、ピグテールカテーテルシステム内の流体の慣性Lp、ピグテールカテーテルの管腔内の流体移動に関する抵抗Rp、及び全システムコンプライアンスCtを示す要素モデルの平面図である。
【0021】
図面は、必ずしも縮尺通りではない。ある一定の特徴及び構成要素は、縮尺を誇張して又は模式的な形態に示す場合があり、一部の詳細は、明瞭さ及び簡潔さのために示さない場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のピグテールカテーテルは、身体の管状メンバ又はチャンバ内のナローイングにわたる圧力勾配を測定するのに使用することができるが、以下の説明の大部分は、狭窄大動脈弁にわたる圧力勾配を測定するように構成された心臓ピグテールカテーテルに焦点を当てることになる。
【0023】
図1A~1F、2、3、及び5は、本発明のピグテールカテーテルの実施形態を示している。近位シャフトセグメントは、断面がほぼ円形とすることのできる円形遠位圧力管腔とより長円形の近位圧力管腔とを通じて遠位カテーテルセグメントから近位カテーテルセグメントに圧力信号を伝達する2つの管腔を含有することができる。近位シャフトセグメントは、使用中に身体外に位置付けられたマニホルドから身体の血管系の中に延び、カテーテルが身体内に入るアクセス部位から数センチメートル(例えば、5~140cmの範囲)に位置付けられた身体の管状メンバ又は心血管系メンバ内のナローイングに到達することができる。遠位カテーテルセグメントは、ナローイングに対して遠位に位置付けられた体液と直接的かつ即座に流体連通する遠位オリフィス及び遠位開口部を含有することができる。遠位カテーテルセグメントはまた、ナローイングに対して近位にある体液と直接的かつ即座に流体連通する近位オリフィスを含有することもできる。遠位オリフィスは、遠位圧力管腔と直接流体連通しており、遠位圧力(ナローイング(例えば、狭窄大動脈弁又は他の身体メンバなど)に対して遠位の場所からの)をカテーテルの近位端にあるマニホルド上に位置付けられた遠位圧力ポートに伝達する。近位オリフィスは、近位圧力管腔と直接流体連通しており、近位圧力管腔は、断面形状を長円形とすることができ、近位圧力信号(身体メンバのナローイングに対して近位の場所からの)をカテーテルの近位端にあるマニホルド上に位置付けられた近位圧力ポートに伝達する。マニホルドの近位圧力ポート及び遠位圧力ポートは、身体の管状メンバのナローイングにわたる圧力勾配を測定して記録するための圧力変換器に接続することができる。
【0024】
更に、カテーテルマニホルド上の圧力ポートは、血管内造影剤注入のために交互に使用することができ、すなわち、内腔、チャンバ、又は弁の構造及び機能を定めるための混濁化を提供することができる。造影剤を近位圧力ポートに注入し、近位圧力管腔を通じて送出して近位オリフィスから出てナローイングの近位の血管腔又はチャンバ内に入るようにすることができる。これに代えて、造影剤を遠位圧力ポートに注入し、遠位圧力管腔を通じて送出して遠位オリフィス又は遠位開口部を通じて出てナローイングの近位の血管腔又はチャンバ内に入るようにすることができる。近位圧力ポート又は遠位圧力ポートを通じて造影剤を送出する時に、特定のチャンバを不透明にする適切な造影剤の流れを作り出すために、シリンジ又は他の圧力発生デバイス(圧力下で造影剤を送出するための)を通じて生成される背圧が必要とされることに留意されたい。圧力管腔直径又はオリフィス直径が十分な直径又は水力直径でない場合に、背圧によって圧力ポートが圧力発生デバイスから外れることがある。圧力管腔の水力直径は、多くの例において、造影剤の送出によって過度の背圧が確実に発生しないように約0.020インチ(例えば、0.018~0.038インチの範囲)でなければならない。
【0025】
例えば、狭窄大動脈弁にわたる圧力勾配測定を意図した実施形態では、遠位シャフトセグメントは、多数の動脈及び静脈の進入部位、例えば、大腿動脈アクセス部位内への進入を可能にし、大動脈及びLV内に常駐して遠位シャフトセグメントが身体の管状又はチャンバ状のメンバに見出されるナローイング又は狭窄にわたって延びるように構成される。遠位シャフトセグメントは、概念的にいくつかの領域、すなわち、近位オリフィス領域、編組曲げ前領域、シャフト曲げ部、編組曲げ後領域、直線セグメント、及びコイル領域に分けることができる。コイル及び隣接する可撓性直線領域は、単一の遠位圧力管腔だけを含有し、この管腔は、ナローイングよりも遠位の身体内腔からカテーテルマニホルド上に位置付けられた遠位圧力ポートへ遠位圧力信号を伝達することができる。曲げ後領域は、シャフト曲げ部からピグテールカテーテルの遠位端まで延びる。近位シャフトセグメントに見出される近位圧力管腔は、遠位シャフトセグメントから容易に取り出すか、又は遠位シャフトセグメント内に含められないようにすることができることに注意されたい、近位圧力管腔の長円形横壁は、削り取る、熱的に除去する、又は他に遠位シャフトセグメントのコイル又は可撓性直線領域から正確な近位圧力信号を伝達することができないようにすることができる。
【0026】
図1A及び1Bに示すように、編組曲げ後領域及び編組曲げ前領域は、単一遠位圧力管腔を含有することができる。これに代えて、図1C及び1Dに示すように、編組曲げ後領域及び編組曲げ前領域は、遠位圧力管腔と近位圧力管腔の両方を含有することができる、近位圧力管腔は必ずしも近位オリフィス領域に対して遠位にある必要はないが、図1Cに示すように、二重管腔シャフトを曲げ後領域に対して遠位に位置付けられたシャフト接合部(シャフト接合部は、二重管腔シャフトから単一管腔シャフトへの変更を規定する)まで延ばすことにより、製造容易性に関して利点を提供することができる。図1Eに示すように、遠位シャフトセグメントでの約155度ネジ山角度(例えば、145~160度の範囲)のシャフト曲げ部により、遠位シャフト部分は、ほぼ細長いLV空洞軸線の中に延びることができ、この軸線は、近位大動脈中心軸線に対して角度を成す又は曲げられ、電気的不整脈又は正常な連続的収縮の攪乱に対する結果的可能性を伴う壁セグメント(主にLVの下方基部セグメント)との積極的な接触を最小限に抑えるが、正常な連続的収縮は、正確な圧力波形と最適なコントラスト混濁化とを得てLV収縮機能を評価するために必要である。145度を超えるシャフト曲げ部により、遠位シャフトセグメントの軸線は、大動脈中心軸線とより厳密に一致することができ、図1Fに示すように、コイルの最遠位曲げ部上に位置付けられたコイル頂点を大動脈弁無冠尖の最下点の中に置いて蛍光透視又は超音波を通じて弁尖の最下点を最も好適に観察することができる。放射線不透過マーカー又は他のマーカーは、可視化の目的でコイル頂点に置くことができ、例えば、大動脈弁輪及び生来弁尖の正確な場所、並びにTAVRデバイスを置く可能性のある場所をオペレータに提供することができる。コイルは、約3mm(例えば2~4mmの範囲)の曲率半径を有してコイル頂点を備えた非対称形状を有することができ、この曲率半径は、約5mmの曲率半径を備えたコイルの残りの部分に対する曲率半径よりも小さい。この非対称コイルは、コイル頂点を大動脈弁尖の最下点までより完全に延ばすことができ、これにより、例えば、大動脈弁輪をより正確に局在化し、TAVRデバイスをより正確に適切に置くことができる。
【0027】
シャフト曲げ角度は、このナローイング(例えば、大動脈弁にわたるLVと狭窄大動脈の間)を除く血管系内又は身体の管状メンバ内のナローイングにわたる圧力勾配を測定するのに使用されるピグテールカテーテルなどの本発明の他の実施形態では必要とされない場合がある。シャフト曲げ部は、シャフト曲げ部のそれぞれの側に編組曲げ前領域と編組曲げ後領域とを備えたシャフト曲げ部平面を形成する。カテーテルシャフトの編組構造は、シャフト曲げ部に対して遠位に2.0cm(例えば、0.5~4cmの範囲)延びて編組構造の遠位端に到達し、近位シャフトセグメントから遠位シャフトセグメントへの適切なトルク伝達能力を提供することができる。起こり得る心室性期外収縮(PVC)を回避するために、シャフト曲げ部に対して遠位のカテーテルシャフト長さは、LV空洞の尖部の中に延びない場合がある。
【0028】
近位シャフトセグメントは、二重管腔管系の横壁に適用される編組構造を有することができ、編組構造は、例えば、直径約0.004インチの金属ワイヤ又はポリマー繊維を有することができる。編組構造は、遠位シャフトセグメントの様々な領域の中に延び、オペレータが身体外に外在化させたカテーテルマニホルド及び近位シャフトセグメントにトルクを印加し、シャフト曲げ部に対して遠位に位置付けられた領域を含む遠位シャフトセグメントにトルクを伝達することを可能にすることができる。編組可能な遠位シャフトセグメントの領域は、図1A及び1Cに示すように、近位オリフィス領域、編組曲げ前領域、シャフト曲げ部、編組曲げ後領域、及び遠位オリフィス領域を含むことができ、一部の実施例では、編組構造がコイルに存在せず、コイルのすぐ近位4~10mmにある。編組構造は、遠位シャフトセグメントの長さ全体にわたって延びることができるが、編組構造がコイルに又はコイル近くの可撓性直線領域に存在する時に、その領域の編組構造は、心臓、血管、又は非血管構造内でピグテールカテーテルを除去又は再位置決めしている間にコイルと絡み合い、例えば、腱索の破損が生じないように、非常に薄くて容易に曲がる繊維から形成されなければならない。多くの実施例において、編組構造は、編組繊維の交差によりカテーテルシャフトに極端なプロファイルを作り出す恐れがあるために、直径約0.010インチの繊維直径を超えるべきではなく、編組繊維又はワイヤは、好ましくは直径が約0.005インチ未満であるべきであり、寸法及び圧力伝達能力と矛盾しない近位カテーテルシャフトのプロファイルは、6フレンチ(F)程度以下の低い外部プロファイルを有する可能性があるが、例えば、一部のTAVR手順を含む治療カテーテルを送出するために大きいプロファイルの導入シースが必要とされる特定の治療手順は、7F~10Fの範囲にあるより大きいプロファイルの二重管腔ピグテールカテーテルも許容することができる。
【0029】
シャフト曲げ部の近位約3cm(例えば、2~8cmの範囲)では、大動脈の大動脈起始部の移行部よりも上に位置付けられた1又は2以上の近位オリフィスは、大動脈から長円形近位圧力管腔への流体連通及び大動脈圧伝達、更に、例えばマニホルド上に位置付けられた近位圧力ポートへの信号伝達を提供する。近位オリフィスを大動脈起始部の移行部よりも上でシャフト曲げ部に対して近位に位置決めすることにより、狭窄にわたる圧力勾配の不正確な測定を回避することができ、そのような不正確な測定は、狭窄弁尖を流れる血流と関係する縮流部ジェットに近位オリフィスの配置が近すぎるので狭窄の下流での圧力回復の不足から生じる可能性がある。マニホルドの近位圧力ポート及び遠位圧力ポートに接続された圧力変換器は、近位圧力ポートと遠位圧力ポートの圧力差を同時に測定することができ、それにより、例えば大動脈弁のナローイング又は心室又は他の血管腔、非血管腔、又は身体チャンバに見出されるナローイングにわたる圧力勾配を測定する。
【0030】
近位オリフィス孔は、編組構造の開口部間に位置付けることができ、これにより、(編組構造の繊維間に)離間した個別的な編組繊維を設け、約4本(例えば、約1~8本の範囲)の直径0.020インチ(例えば、0.018~0.028インチの範囲)の近位オリフィスを近位シャフト部分に置くことが可能となる。近位オリフィス孔は、長径が約0.035インチ、短径が約0.016インチである楕円形近位圧力管腔と流体連通することができ、この長円形又は楕円形の近位圧力管腔の水力直径は、大動脈からの圧力信号の完全に正確な伝達と大動脈弁にわたる圧力勾配の正確な決定とを確実にするために約0.020インチ(例えば、0.018~0.025インチの範囲)とすることができる。長円形の近位圧力管腔の水力直径は、次の式から決定される:DH=(4BC(64-16E2))/((B-C)(64-3E4))、ここで、2Bは長径、2Cは短径、DHは水力直径であり、E=(B-C)/(B+C)である。
【0031】
二重管腔シャフトは、例えば、ポリウレタン、ペバックス(硬質ポリアミドブロックと軟質ポリエーテルブロックから構成されたブロックコポリマーであり、Arkema社が販売する)、ポリエチレン、又は押出成形可能、熱的に再形成可能である医療カテーテルデバイスに見られる他のポリマーから形成することができ、このポリマーは、弾力性があり、好ましくは、二重管腔シャフトと単一管腔シャフトとの両方に関して単一管腔シャフト押出成形から二重管腔シャフト及び単一管腔シャフトの特性が得られる(但し、必ずしも得られる必要はない)ように十分に軟らかい必要があり、可能であれば、押出成形後の熱段階で単一管腔シャフトを形成する。二重管腔シャフトは、必要があれば、二重管腔シャフトを単一管腔シャフトに合体させるために少なくとも熱工程又は他の合体工程を施せるようにすべきである。
【0032】
二重管腔シャフトは、図1A、1C、及び3に示すようにシャフト接合部まで延び、このシャフト接合部に対して遠位に単一管腔シャフトが延び、遠位管腔の適切な圧力伝達を提供できる単一の遠位圧力管腔(適切な圧力伝達能力を提供できる唯一の管腔)を収容し、この遠位圧力管腔は、カテーテルマニホルド上に位置付けられた遠位ポートに遠位管腔圧力の適切な圧力伝達を提供することができる。遠位シャフトセグメントは、約4cm(例えば、2~6cmの範囲)延びる可撓性直線領域を含むことができ、遠位シャフト部分のピグテールコイルまでは編組構造を含まないとすることができる。可撓性直線領域は、例えば、特定のLV壁セグメントとの相互作用による電気的外乱を引き起こすことなく、LVの中に延びることのできる編組曲げ後領域とコイル領域との間に中間トルク伝達特性及び中間曲げ剛性を備えたシャフト領域を提供することができる。コイルに対して近位に隣接して位置付けられた遠位オリフィスにより、近位オリフィスを通じてナローイングの近位圧力を測定すると同時にナローイングの遠位圧力を測定することができ、そのような近位圧力と遠位圧力との同時測定は、ナローイングにわたる高速ジェットの存在とその結果として生じるジェット付近の局所的な圧力示度の低下とに起因する可能性のある誤差の恐れなく、ナローイングにわたる絶対圧力勾配を示す。コイルは、約1cmのコイル直径(例えば、7mm~15mmの範囲)を有することができ、例えば、0.035インチのガイドワイヤなどのガイドワイヤのための通路を提供すると共に、LVからカテーテルマニホルドに位置付けられた遠位圧力ポートまで遠位圧力信号を伝達するために遠位圧力管腔との流体連通を提供する遠位開口部を有することができる。遠位開口部の直径は、遠位圧力管腔の直径と共に、例えば、より小さな直径のガイドワイヤに適応するように、約0.025~0.032インチというより小さな直径を備えて形成することができ、これにより、本発明は、支持力の低いガイドワイヤに適応できる用途に関して5F~6F程度の扁平度を有することが可能となる。ガイドワイヤは、遠位圧力ポート(又はガイドワイヤポート)を通ってそこから近位に、かつ遠位圧力管腔全体を通って、並びにピグテールカテーテルの遠位開口部を通ってそこから遠位に延びることができる。
【0033】
可撓性直線領域はまた、柔らかくてより可撓性のあるピグテールコイルのすぐ近位に位置付けられて単一管腔シャフト上に位置付けることのできる遠位シャフトオリフィスを有することができ、この遠位オリフィスは、単一管腔シャフトの軸線方向に約1cm(例えば、5~20mmの範囲)の長さにわたって広がる。1又は2以上の遠位オリフィス(約4個のオリフィス、例えば、約1~6個の範囲)が、コイル内で広がり、コイルに隣接してそこに対して近位に約2cm(例えば、1~4cmの範囲)まで広がることができ、かつコイル内に位置付けることができ、遠位オリフィスの向きは、コイルの近位とコイル内との両方でカテーテルシャフトの周方向でなければならない。遠位オリフィスは、LVからマニホルド上に位置付けられた遠位圧力ポートへの圧力信号の適切な伝達を提供するために約0.020インチ(例えば、0.018~0.028インチの範囲)の直径を有する。単一管腔シャフトは、ポリウレタン、ペバックス、ポリエチレン、又は押し出してコイル形状に形成され、その形状を弾性的に保持できる他のポリマーから形成することができる。
【0034】
遠位コイルは、ガイドワイヤの上を通過する時にピグテールコイル及び遠位シャフトセグメントを真っ直ぐにするほどに軟質である必要があり、ガイドワイヤを取り出した状態でコイル状に戻ることができなければならない。コイルは、例えば、コイルに捕捉された時に腱索が引き伸ばされたり引き裂かれたりしないように、約25グラム以下の力で展開する軟質ポリマー材料から形成することができる。コイルは、図1A及び1Cに示すように、丸い形状を有することができ、又は長円形状、楕円形状、その他の幾何形状を有することができ、又は一部の事例では、カテーテル構成からコイルを省くことができ、コイルが存在するのではなく、単に真っ直ぐな遠位シャフトセグメントを使用することができる。図1Eに示す長円形状コイルは、長円形状の湾曲コイルの最遠位部分に見られるコイル頂点の曲率半径が小さく(つまり、コイルの残りの部分よりも小さい)、最も好適には、コイル頂点が生来弁尖の最下点に位置付けられることを可能にする。ピグテールカテーテルが、例えば、遠位圧力管腔内に閉じ込められたガイドワイヤの上をLV内に送出された状態で、遠位圧力管腔を通じてLV圧力を測定する前に、ガイドワイヤは、取り出されるように意図されている。遠位圧力管腔は、例えば0.035インチのガイドワイヤを送出できる直径を有し、従って、水力直径(水力直径は円形管腔の直径に等しい)が少なくとも0.035インチであり、好ましくは、ガイドワイヤの移動を容易にするためにガイドワイヤよりも直径が0.002~0.004インチだけ大きい。
【0035】
図1C、2、3、及び4に示すように、二重管腔シャフトの編組構造は、単一管腔シャフトとの接合部又は接合部付近で終端することができる。単一管腔シャフトは、近位圧力管腔の長円形横壁を削り取る、切り取る、又は熱的に除去され、それにより、遠位シャフト部分の遠位管腔を作り出す共通壁と横円形壁とに閉じ込められた遠位圧力管腔が残されることで形成することができる。同じく長円形横壁を熱溶融するか又は他に共通壁に取り付けて単一管腔シャフトを形成することもできる、マンドレルを遠位圧力管腔内の中に置き、そのような熱的再形成工程中に遠位圧力管腔の形状及び寸法を保持することができる。単一管腔シャフトの壁を貫いて遠位オリフィスを形成し、コイル平面に沿って周方向に広がったピグテールコイル平面に位置付けられた内側曲面、外側曲面、及び面内表面(図4参照)の上にある遠位オリフィス領域に開口部を位置付けることができ、遠位オリフィス領域でのキンクの恐れを最小限に抑え、開いた遠位オリフィスと直接接触する体液の妨げられない出入りを実現し、例えば体液内の圧力を正確に代表するようにされる。
【0036】
本発明のピグテールカテーテルを用いて例えば図5に示すように大動脈弁にわたる圧力勾配を測定する時に、コイルは、遠位圧力オリフィスと共にLV内に位置決めすることができ、近位圧力オリフィスは、上行大動脈内に位置決めすることができる。コイル平面には、シャフト曲げ部平面に対して第2の平面で更に角度を付け、前額面から前方に見た場合に心室中隔の左側にあるコイル平面角を形成することができる、角形成はLVの前外側自由壁に向けられる。このコイル平面角形成により、コイルは、LVの下壁又は中隔壁セグメントに突き当たることなく、LV内に常駐することができ、異所性心室興奮を最小限に抑え、左心室尖部ではなく僧帽弁流入部に造影剤を注入することよって左心室造影中のLV混濁化を最適化し、この僧帽弁流入場所により、少ない造影剤でLVがより均一に混濁化され、この強化撮像によってLV収縮機能がより最適に評価される。コイル平面の角形成は、コイル平面の角度とシャフト曲げ部平面との角度分離を表し、コイル平面の角形成は、約30度(例えば、5~45度の範囲)とすることができる。
【0037】
これに代えて、図6及び7に示すように、二重管腔シャフト内に見られる編組構造は、例えばピグテールコイルの場所まで単一管腔シャフトの一部分の中に拡張することができる。単一管腔シャフトにそのような編組が存在することにより、単一管腔シャフトは、キンクに抵抗し、露出した近位シャフトセグメント及びマニホルドでオペレータがカテーテルシャフトにトルクを印加してコイルにトルクを伝達することが更に確実に可能となる。コイルは、例えば腱索が引き裂ける又は断裂しないように約25グラム未満の力で解ける必要がある。
【0038】
そのようなカテーテルシャフトを形成するために、二重管腔シャフトと単一管腔シャフトとの両方の上に編組を置く前に、長円形の近位圧力管腔の長円形横壁を削り取ることができる。単一管腔シャフトの編組構造を軸線方向に拡張することにより、編組構造が単一管腔シャフトの壁と密着することになる。続いて、熱と編組構造の上に内向きの力を印加する外側収縮包装とを適用することにより、更に近位圧力管腔及び遠位圧力管腔を例えばテフロン(登録商標)(Chemours社製のテトラフルオロエチレンの合成フッ素ポリマー)マンドレルのような成形マンドレル(管腔の形状に適合するもの)で保護することにより、編組材料をカテーテルシャフトの外壁内に熱リフローさせることによって編組カテーテルシャフトを形成することができる。ポリマーシャフト材料のリフローにより、編組は、二重管腔シャフトの円形横壁及び長円形横壁に入り込むことができ、図7に示すように、二重管腔シャフトの円形横壁及び共通壁内への貫通が可能になる。カテーテル製造業界で公知のリフロー技術を用いて、編組の近位及び遠位シャフト部分を形成する別の方法が考えられる。
【0039】
更にこれに代えて、図8~10に示すように、シャフト接合部からすぐ近位の場所で弾性部材を潰れた近位圧力管腔内に挿入することができ、これは、シャフト接合部に対して遠位の熱リフロー可能な潰れた長円形管腔内を延びて可撓性直線領域内をコイルまで延びることができる。弾性部材は、例えばニチノールの平形リボンとすることができ、それを内部に置くシャフトの形状に形成される。弾性部材は、厚さが約0.003インチ(例えば、0.002~0.007インチの範囲)であり、幅が約0.5mm(例えば、0.1~2mmの範囲)の平形リボンとすることができる。弾性部材は、接合部でのキンクを防ぐのに役立つことができる。コイルは、腱索を破損から保護するために25グラム未満の力でコイルを解くことができるように、弾性部材が存在しない軟質ポリマープラスチックで形成することが好ましい。
【0040】
この遠位シャフト部分を形成するために、図1C及び9に示すように、二重管腔シャフト内にだけ編組を位置付けることができる。弾性部材は、遠位長円形開口部に滑り込ませ、二重管腔シャフトの編組領域の中に及び単一管腔シャフトのリフロー可能な長円形管腔の中に約10mm(例えば、約5~25mmの範囲)だけシャフト接合部と重なるように置くことができる。次に、シャフト接合部に対して遠位に(又は代わりに、同じく編組曲げ後領域のシャフト接合部に対して近位に)二重管腔シャフトの一部分を熱的にリフローして長円形近位圧力管腔を潰し、弾性部材を封じ込めて、図10に示すように、弾性部材、共通壁、及び潰れた長円形横壁の間に取り付け具を形成し、二重管腔シャフトは、そこで、シャフト接合部に対して遠位の単一管腔シャフトに転換されている。長円形横壁は、熱溶融して共通壁と接触し、弾性部材に対して遠位の単一管腔シャフトを形成することができる。これに代えて、長円形横壁を削り取って、弾性部材に対して遠位の単一管腔シャフトを形成することもできる。遠位開口部は、弾性部材の存在と干渉しない又はそれに遮断されない場所で中央管腔内に形成することができる。
【0041】
図11A及び11Bは、身体の線形管状メンバ、チャンバ、又は空洞内のナローイングにわたる圧力勾配、並びに身体の心血管系又は非心血管系の解剖学的構造内のナローイングにわたる圧力勾配測定を対象にした本発明の別の実施形態を示している。この実施形態では、図11Aに示すように、ナローイングにわたって配置される遠位シャフトセグメントは真っ直ぐな構成を有することができ、これに代えて、図11Bに示すように、遠位シャフトセグメントは、遠位端近くに位置付けられたシャフト曲げ部を有することができる。シャフト曲げ部は、曲がりくねった又は湾曲した経路にわたる場合又は管状メンバの側枝に入る場合に助けとなることができる。近位カテーテルシャフトを編組してマニホルドから遠位シャフトセグメントへのトルク伝達を促進し、例えば血管系の横断を助け、可撓性にそれほど影響を及ぼすことなくシャフトに押込特性を与えることができる。カテーテルは、0.025インチ(例えば0.018~0.038インチの範囲)の遠位圧力管腔を有することができ、これは、ガイドワイヤに通路を提供し、減衰しない圧力信号の伝達を実現することができ、より小さい0.018インチの遠位圧力管腔は、正確で減衰しない圧力信号をマニホルドに位置付けられた遠位圧力ポートに送り返すことができる。遠位オリフィスは、約0.020インチ(例えば、0.018~0.028インチの範囲)の直径を有することができる。図11Cに示すように、近位圧力管腔は、少なくとも0.018インチの水力直径を提供するように約0.028インチの長径と0.016インチの短径とを有することができ、十分な精度で圧力信号をマニホルド上の近位圧力ポートに送り返すことができる。近位圧力オリフィスは、約0.020インチ(例えば、0.018~0.028インチの範囲)の直径を有することができる。先の実施形態で説明した二重管腔構造から形成されたこのカテーテルは、遠位シャフトセグメントからマニホルド上に位置付けられた圧力ポートまで最長140cmのカテーテルに沿って、同心円管から形成された現行の二重管腔カテーテルよりも改善された圧力伝達信号を可能にする。この実施形態のカテーテルのプロファイルは、4.5F~6F程度まで小さくすることができる。
【0042】
狭窄大動脈弁にわたって直線先端式ガイドワイヤ及び心臓診断カテーテルを前進させるための標準的な手順をその制限と共に説明する。例えば狭窄大動脈弁にわたって大動脈からLVまで直線先端式ガイドワイヤを送出するために現在使用されている心臓診断カテーテルの1つは、例えば、図12に示すような単一管腔Amplatz Left(AL)カテーテルであり、そのようなカテーテルのプロファイルは、例えば4F~8Fの範囲にあるとすることができ、直径が0.025インチ~0.038インチの範囲にあるガイドワイヤの上で送出することができる。心臓診断カテーテルの遠位部分は、大動脈基部内に位置決めすることができ、一方で蛍光透視案内の下で直線先端式ガイドワイヤを貫通管腔内で前進させ、狭窄大動脈弁輪にわたってLVの中に進める。次に、心臓診断カテーテルを直線先端式ガイドワイヤの上で前進させてLV内に位置決めすることができる。直線先端式ガイドワイヤを取り出すと、心臓診断カテーテルは、LV穿孔を防ぐために遠位LVに位置決めされたコイル状の形状を有する支持的な特殊なガイドワイヤを送出するための通路を設けるのに用いることができる。
【0043】
心臓診断カテーテルは、ほぼLV尖部に先端を向けた遠位端構成を有することができることに留意されたい。この構成により、心臓診断カテーテルをLVの中に前進する際に、誤って直線先端式ワイヤがLV尖部内に勢いよく進められる結果となり、穿孔をもたらす可能性がある。本発明のピグテール実施形態の円形管腔は、扁平の心臓診断カテーテルを閉じ込めることができ、これを用いてピグテールカテーテルを交換し、直線先端式ガイドワイヤの上だけでカテーテルを交換する危険性を軽減することができる。
【0044】
図13~15に示すように、本発明の二重管腔ピグテールカテーテルは、心臓診断カテーテルのシャフトがピグテールカテーテルの遠位管腔に常駐する状態で、心臓診断カテーテルの外面にわたって前方装填することができる。心臓診断カテーテルの遠位部分は、心臓診断カテーテルの遠位部分の形状がピグテールカテーテルの遠位開口部の形状に大きく影響されないように、ピグテールカテーテルの遠位開口部を超えて遠位に10cm(例えば、8~15cmの範囲)だけ延びることができ、図13に示すように、狭窄大動脈弁尖を通って直線先端式ガイドワイヤを効果的に導くことができる。心臓診断カテーテルは、固定されたガイドワイヤの上を前進させることができ、その後、図14に示すように、心臓診断カテーテル内に部分的に後退させる。ガイドワイヤを完全に引き出すと、心臓診断カテーテルは、ピグテールカテーテルをその上に通し、かつLV内に通すための外傷性の低いレールを提供することができる。心臓診断カテーテルを取り出すと、図15示すように、ピグテールカテーテルは、LV空洞内に位置付けることができる。
【0045】
ピグテールカテーテルは、例えば、4F心臓診断カテーテル(例えば、3.5F~4.5Fの範囲)の通路に適応するように0.052インチ(0.045~0.060インチの範囲)の遠位管腔直径を有することができ、ピグテールカテーテルは、近位管腔及び遠位管腔の水力直径を0.018インチ以上に維持し、高精度の圧力信号伝達を提供しながら8Fの全体的なプロファイルを備えて形成することができる。これに代えて、ピグテールカテーテルは、例えば0.032インチのガイドワイヤの上を追従できる5Fの心臓診断カテーテル(例えば、4.5F~5.5Fの範囲)の通路に適応するように例えば0.069インチ(0.065~0.075インチの範囲)の遠位管腔直径を有することができ、ピグテールカテーテルは、近位管腔及び遠位管腔の水力直径を0.018インチよりも大きく維持し、高精度の圧力信号伝達を提供しながら9~10Fの全体的なプロファイルを備えて形成することができる。更にこれに代えて、本発明のピグテールカテーテルは、7F~8Fのピグテールカテーテルのプロファイルと高精度の圧力信号伝達とを備え、0.035インチのガイドワイヤの上を直接辿ることができる。
【0046】
J字先端式ガイドワイヤは、血管アクセスシースを通じて心臓診断カテーテルを導きながら前進させて大動脈基部内に進めることができる。次に、直線先端式ガイドワイヤをJ字先端式ガイドワイヤと交換して狭窄大動脈弁を横切り、LV内に進める。
【0047】
図17Aは、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)患者のLV内に配置された本発明の二重管腔ピグテールカテーテルの遠位シャフトセグメントを示している。HOCMピグテールカテーテルは、遠位シャフトセグメントのトルク制御を実現し、カテーテルシャフトのキンクを防止するために、曲げ角度付近に及び近位シャフトセグメントの他の部分に編組されたシャフトを有することができる。コイルと曲げ後領域の可撓性直線領域は、一般的に、LV内の腱索に損傷をもたらす可能性のないより可撓性の高いカテーテルシャフトを提供するために編組されない場合がある。155度の曲げ角度(例えば、145~165度の範囲)により、LVの下方基部壁と強く接触する(これは異所性興奮に至る可能性がある)ことなく、カテーテルをLV内に送出することができる。同じく155度の曲げ角度により、遠位カテーテルシャフトと上行大動脈とがより真っ直ぐに位置合わせし、コイル頂点とコイル頂点に位置付けられた放射線不透過マーカーとが大動脈弁尖の最下点により完全に着座するようになり、例えばTAVRデバイスを正確に置くために大動脈弁尖と大動脈弁輪の場所とをより正確に可視化することができる。コイルにはその遠位開口部に放射線不透過マーカーを設置して、遠位圧力測定の場所を正確に識別することができるようにする。
【0048】
このコイルは、約5cm(例えば、3~8cmの範囲)のコイル直径を有することができ、これは、本発明の他の心臓ピグテールカテーテルコイルのコイル直径よりも小さい。より小さな5mmというコイル直径は、収縮期収縮中にLV尖部付近でLV対向壁の直接接触を受けることの多いHOCM患者では、LVの収縮期収縮を妨げないためにより好適である。収縮期のLV収縮中に、コイルに沿って位置付けられたオリフィス又はコイル端部に見られる遠位開口部は、心筋組織によって遮断される可能性がある。通常、そのような遠位開口部は、ガイドワイヤの通過を可能にし、かつピグテールカテーテルの遠位管腔への圧力信号伝達を可能にするように0.038インチ(例えば、0.025~0.040インチの範囲)の直径を有することができる。そのようなオリフィス又は遠位開口部の遮断は、通常はオリフィス又は遠位開口部を通ってピグテールカテーテルシャフトの遠位管腔に伝達される圧力信号の減少をもたらす可能性がある。この減少した圧力信号により、LV内の圧力が不正確に測定される結果となる場合がある。図17Aに示すように、遠位開口部は、曲げ後シャフト領域の可撓性直線領域のカテーテルシャフト付近に(例えば、1mm以内)又はそれと直接接触して位置決めすることができる。カテーテルシャフトの近くに遠位開口部が近接することにより、心臓の収縮期収縮中に心筋組織が遠位開口部に進入するのを防ぐことができる。放射線不透過マーカーをコイルの最遠位面に位置決めして、LV内のコイル位置を可視化することができ、コイルは、LV尖部から約2~3cmに維持することができ、LV尖部では、通常、対向壁による心筋の圧迫が大きくなり、HOCMピグテールカテーテルのコイルの場所としては、コイルをLV尖部から一定の距離に維持することが好ましい可能性がある。
【0049】
オリフィスはまた、図17B~17Eに示すように、HOCMピグテールカテーテルのコイルに沿った他の場所に置くこともできる。図17Bに示すように、オリフィスは、遠位開口部又はその近傍(1mm以内)の場所でコイルの内面に沿って位置付けることができる。コイルの内面に沿って位置付けられたオリフィスは、LV内の加圧された血液からの圧力信号がHOCMピグテールカテーテルの遠位管腔に伝達される際に減衰しないようにするように0.020インチ(例えば、0.018~0.028インチの範囲)のオリフィス直径を有することができる。これに代えて、一連のオリフィス(例えば、2~5個範囲のオリフィス)は、平面(つまり、コイルのコイル状長さ全体に沿って接する平面によって形成されるコイルの面)上に又はコイルの外面上にオリフィスを設置せずに、図17Cに示すように、コイル中心に最も近いコイルの内面に沿って位置付けることもできる。平面又は外面にオリフィスが存在すると、心筋組織がそのようなオリフィスに入り込んで遠位管腔を遮るのを許し、不正確な圧力信号が遠位管腔に伝達される結果となる可能性がある。図17Dに示すように、コイルは内側に折り畳まれて180度を超える湾曲のコイルを形成することができる。これにより、遠位開口部は、コイルの対向壁と直接接触する又はほぼ接触することによって保護されることに加えて、コイルの隣接領域の内面によって保護することができ、心筋組織が遠位開口部に突き当たるのを防ぐ上で助けとなることができる。更に、オリフィスの断面形状は、図17Dに示すように、コイル壁にある長円形開口部とすることができ、長円形オリフィスは、コイルの内面周囲長に沿った約0.030インチ(例えば、0.020~0.035インチの範囲)の長軸と、長軸に垂直な約0.020インチ(例えば、0.018~0.025インチの範囲)の短軸とを有し、コイル壁にわたる正確な圧力信号の伝達を提供することができる。
【0050】
0.035ガイドワイヤを辿り、(近位及び遠位圧力管腔を通して正確な圧力信号伝達を提供するために)少なくとも0.018インチの水力直径を備えた近位及び遠位圧力管腔を提供することのできる遠位管腔を有するそのようなHOCMピグテールカテーテルのプロファイルは、約6F~7Fである。
【0051】
約1つ又は2つの近位オリフィスが、遠位シャフトセグメントに沿ってシャフト曲げ部に配置された放射線不透過マーカーの場所に又はその約1mm下の場所に配置される。近位オリフィスは、大動脈弁輪(又は狭窄大動脈弁尖)と肥大した心筋との間の僅か5mm(例えば、3~8mmの範囲)だけ離間した場所の圧力を測定することを目的とする。この場所に位置決めされた1つ又は2つのオリフィスは、狭窄生来の弁尖を過ぎて下流にも、かつ肥大した近位筋から上流にも延びることもできないので、この近位オリフィス領域は2mmを超えて延びることができない。
【0052】
肥大した近位筋にわたる圧力勾配をLVから測定中に、近位オリフィス領域は、大動脈弁と肥大した心筋との間に位置決めすることができ、コイルは、LV尖部からLV空洞内へ約2~3cmの場所に位置決めすることができ、この位置決めにより、LV尖部付近の収縮期圧縮によるHOCMピグテールコイルの過剰な圧迫が回避される。HOCMピグテールカテーテルは、図18に示すように、上行大動脈で狭窄している恐れのある大動脈弁尖の下流に近位オリフィス領域が位置付けられるように再位置決めすることもできる。コイルは、圧力勾配がLV空洞から大動脈までの全体的な圧力勾配を反映するように、肥大した中隔筋に対して遠位に位置付けることができる。全体的な圧力勾配と肥大した心筋にわたる圧力勾配との差により、狭窄大動脈弁にわたる圧力勾配を決定することができる。主要血流抵抗の知識に基づいて、例えば弁置換術による狭窄大動脈弁の治療、又は例えばアルコール焼灼術による肥大した中隔筋の治療を行うことができる。
【0053】
第2のシャフト曲げ部をピグテールカテーテルシャフト内に配置し、それにより、図18に示すように、近位曲げ角度を備えた近位シャフト曲げ部と、遠位曲げ角度を備えた遠位シャフト曲げ部とを提供することができる。近位及び遠位の曲げ角度は、共に約165度とすることができ、近位オリフィス領域は、放射線不透過マーカーが位置付けられた近位オリフィス曲げ部のすぐ遠位に位置付けることができる。全体的な圧力勾配測定中に、図18に示すように、近位オリフィス領域を上行大動脈内に後退させることができ、遠位シャフト曲げ部により、コイルはLVの下方基部壁から離れるように配置される。肥大した心筋全体にわたる圧力勾配測定中に、近位オリフィス領域は、大動脈弁輪の下に位置付けることができ、近位及び遠位のシャフト曲げ部両方の組み合わせは、コイルをLVの下方基部壁から離れるように置く助けとなる。
【0054】
図19は、外壁内に編組構造が含有されない本発明の二重管腔シャフトを示している。この実施形態の外壁は、遠位圧力管腔中心及び近位圧力管腔中心と1列に並んで長円形横壁に位置付けられた長円形横壁繊維を含有する。長円形横壁繊維は、二重管腔シャフトの外壁の軸線方向に沿って延びることができる。長円形横壁繊維は、比較的高い引張強度に起因して容易に曲げ可能であるが伸びたり広がったりしない材料で形成されたリボン、棒、又は繊維とすることができ、そのような材料は、ポリエチレンテレフタレート、ダクロン、ケブラー(登録商標)、及び他の高張力ポリマーのようなポリマー繊維を含み、長円形横壁繊維材料は、医療デバイスに使用される高張力繊維に成形可能なステンレス鋼、ニチノール、及び他の金属のような金属繊維も含む。押出成形中に又は熱ベース又は接着剤ベースの後処理段階中に、長円形横壁繊維を二重管腔シャフトのポリマー横壁に成形することができるように、長円形横壁繊維は、シャフト外壁内で半径方向に約0.002インチ(例えば、0.0005~0.005インチの範囲)の小さな厚さ又は半径方向寸法を有する必要がある。長円形横壁繊維は、軸線方向の伸びを防止する強度を提供するが、依然として遠位圧力管腔中心から近位圧力管腔中心まで延びる線に垂直な平面内での二重管腔シャフトの曲げを許容するように断面が丸い又は外壁の周方向幅が約0.003~0.010インチ(例えば、0.002~0.030インチの範囲)のリボンの長方形断面形状を有することができる。ガイドワイヤが遠位圧力管腔内に位置決めされているので、二重管腔シャフトは、遠位管腔中心から近位管腔中心に延びる線に垂直な平面に沿って曲がることができる。この曲げ方向により、曲げ中に近位圧力管腔の短径の寸法が減少することはなく、曲げ中に近位圧力管腔の短径は、増大又は拡大する傾向となる。近位圧力管腔の水力半径は、シャフト曲げ部に起因して減少することはなく、少なくとも0.018インチの水力直径に維持される。これにより、二重管腔シャフトの曲げは、近位オリフィスから近位圧力管腔を通り、マニホルド又はその近くに位置付けられた圧力変換器までの圧力信号伝達の忠実度を損なうことはない。
【0055】
代替実施形態では、長円形横壁繊維に加えて、円形横壁繊維を円形横壁内に置くことができる。円形横壁繊維は、円形横壁内で遠位圧力管腔中心及び近位圧力管腔中心と1列に並ぶ場所に置くことができる。円形横壁繊維は、押出成形工程中に円形横壁内に形成することができ、又は代替後処理方法によって形成することができる。円形横壁繊維は、長円形横壁繊維と同じ材料及び寸法特性を有することができる。円形横壁繊維と長円形横壁繊維両方の存在により、二重管腔シャフトは、円形横壁繊維を長円形横壁繊維と結ぶ線に垂直な平面に沿って曲がることが保証される。
【0056】
長円形横壁繊維又は円形横壁繊維のいずれかを置く他の方法が検討され、長円形横壁繊維は、例えば近位圧力管腔内に挿入し、接着剤、熱接合法、又は他の取付方法により、近位圧力管腔の管腔面に沿った所望の場所に取り付けることができる。これに代えて、長円形横壁繊維は、外壁の外側に沿って取り付けられ、二重管腔シャフトに同様の曲げ特性を与えることができる。
【0057】
図20は、長円形二重管腔シャフトを備えた二重管腔シャフト構造に関する別の実施形態を示している。この実施形態では、長円形二重管腔シャフトは、シャフト短径よりも20%(例えば、10~30%の範囲)大きいシャフト長径を有するように長円形外面を備えて形成することができる。シャフト短径は、シャフト長径よりも少なくとも10%小さくすることができる。シャフト短径を20~25%縮小することにより、周囲長が円形二重管腔シャフトよりも10~15%小さく、従って、プロファイルが約10~15%小さい導入カテーテル内に収容可能な長円形二重管腔シャフトを提供することができる。これに代えて、長円形二重管腔シャフトは、より忠実な信号伝達を備えたより大きい直径の近位圧力管腔を可能にし、丸形二重管腔シャフトが許容するよりも小さな導入カテーテルのプロファイル内に収まることができる。
【0058】
長円形二重管腔シャフトは、長軸に垂直な平面内で曲がる傾向がある。二重管腔シャフトは、身体内の経路に沿って延びる際に曲げを受けることが多く、二重管腔シャフトの曲げにより、近位圧力管腔は、近位管腔短軸に沿った方向に拡大することになる。従って、近位圧力管腔は、カテーテルシャフトの長軸と1列に並んで延びる近位管腔の短軸よりも近位管腔の長軸が大きい長円形を備えて形成することができる。その場合に、二重管腔シャフトシャフトの曲げにより、近位管腔の短軸が拡大する結果となり、近位圧力管腔がより丸くなり、より大きい水力直径をもたらすので、伝達信号の忠実度が向上する結果となる。二重管腔シャフトがシャフト長軸に垂直な平面内で曲がる傾向を強化するために、丸形二重管腔シャフトに関して説明したような場所で長円形横壁繊維又は円形横壁繊維の存在を長円形二重管腔シャフトに適用することができる。
【0059】
図21は、近位圧力管腔を通して伝達される圧力信号を有するシステムの簡略化された要素モデルを示しており、例えば、圧力信号の伝達は、複数のシステム特性に影響される。このモデルは、心圧パルス信号によって発生した圧力を表す圧力信号を含む。圧力管腔内に閉じ込められる流体又は血液の慣性はLpで象徴され、近位圧力管腔内の流体に関して単位面積当たりの質量を表している。流体流れに対する抵抗はRpで象徴され、ポアズイユの法則、すなわち、Rp=8uL/Pi×R4で記述される粘性損失を表しており、ここで、uは粘度、Lは管系又は例えば二重管腔シャフトの長さ、Rは、例えば二重管腔シャフトの近位管腔の水力半径(すなわち、水力直径の1/2)である。全コンプライアンスはCtで象徴され、近位圧力管腔内の気泡の存在によるコンプライアンス、圧力変換器ダイアフラムのコンプライアンス、近位圧力管腔内に閉じ込められた血液のような流体によるコンプライアンス、及び二重管腔シャフト材料のコンプライアンスの和を表す。二重管腔シャフトは、ポリエチレン、ナイロン、ペバックス、又は身体内で圧力信号を伝達するためのカテーテル構造で一般的に使用される他の材料から構成することができ、そのような材料のコンプライアンスは、近位圧力管腔などの圧力管腔内の圧力変化当たりの圧力管腔の半径変化を記述する。より大きい弾性率を有する材料で構成された二重管腔シャフトは、より小さなコンプライアンスを有することになる。
【0060】
近位圧力管腔内の流れを時間の関数として記述する方程式は、固有成分と、心臓によって発生する圧力信号の性質に依存する強制成分という2つの成分を有する。固有成分は、二重管腔シャフト、シャフトのコンプライアンス、シャフトの長さ、及び近位管腔の水力直径を含むシステムの固有振動数を表す。システムの固有振動数foは、次式で記述される:
fo=(l/2Pi)(R2-(4L/C))1/2
本発明の二重管腔シャフトを構成する際に、foが約40Hzよりも大きいことが望ましい。R2>4L/Cの場合に、システムは過減衰となり、マニホルドに送出される伝達信号の振幅が実際の信号よりも小さくなり、心臓によって発生する高周波信号が見逃される可能性がある。R2<4LCの場合に、システムは不足減衰となり、伝達信号に「リンギング」が生じ、その結果、心臓によって発生するのではなく、システムの固有振動数に関連付けられた信号が伝達される可能性がある。本発明の二重管腔シャフトは、R2=4L/Cに設定することにより、近位圧力管腔に沿って臨界減衰した信号を送出するように設計される。水力直径(すなわち、Rの2倍)は、マニホルドに位置付けられた圧力変換器に対して正確かつ忠実に信号を伝達するという本発明の二重管腔シャフトの能力を決定する最も実証的な因子の1つである。近位圧力管腔の水力半径は、(4L/C)1/2に等しい。
【0061】
本発明のカテーテル設計は、既存の設計に対する利点を提供する。例えば、安全面では、単回押出成形品内に閉じ込められた2つの管腔は、高圧注入力によって分離することはできない。本発明の設計は、要素塞栓のリスクを排除する機会を提供する。同じく安全面では、単回押出成形設計により、カテーテルの近位シャフトセグメント内の死空間を削減又は排除することができるので、洗浄の段取りが簡素化され、空気塞栓のリスクが低減される。有効性の面では、独立した非同軸管腔を閉じ込める比較的剛性のある単回押出成形品により、一方のカテーテル構成要素が他方のカテーテル構成要素内で相対的に移動することに起因してどちらかの管腔が塞がれる恐れを克服することができる。非同軸管腔設計はまた、信号の忠実度と注入流量との両方に影響を与える同軸設計に固有の高い剪断力も克服することができる。
【0062】
要素番号参照ガイド
図面では、いくつかの図を通して同様の特徴及び構成要素を説明するために同様の数字を使用する可能性がある。
【0063】
(表)




【0064】
上記の「発明を実施するための形態」は、「発明を実施するための形態」の一部を成す添付図面への参照を含む。「発明を実施するための形態」は、図面を参照しながら読む必要がある。図面は、本発明のカテーテル及び関連の方法を実施することのできる特定の実施形態を例示として示している。これらの実施形態を本明細書では「実施例」とも呼ぶ。本明細書での「するように適応された」、「するように構成された」、又は同様の語句の使用は、付加的な機能を実行するように適応された又は構成されたデバイス又は構成要素を排除しない開放的で包括的な語句を目的とする。本明細書での「近位」及び「遠位」の使用は、細長い低侵襲性デバイスのユーザに対する相対的な位置に言及するものであり、「近位」は、相対的にユーザに向かうことを意味し、「遠位」は、ユーザから相対的に離れることを意味する。本明細書に含まれる表題、リスト、及び付番は、説明を容易にするためだけのものであり、限定することを意図していない。全ての数値は、明示的に示されているか否かに関わらず、「約」という用語で修飾されているものと仮定される。「約」という用語は、一般的に列挙された値と同等である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と当業者が見なすであろう数の範囲を指す。多くの事例では、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸めた数を含むことができる。端点による数値範囲の記載は、その範囲内にある及びその範囲を区切る全ての数と部分範囲とを含む(例えば、1から4は、1、1.5、1.75、2、2.3、2.6、2.9など、及び1から1.5、1から2、1から3、2から3.5、2から4、3から4などを含む)。
【0065】
「発明を実施するための形態」は、例示を目的とするものであり、限定ではない。例えば、上述の実施例(又はその1又は2以上の特徴又は構成要素)は、互いに組み合わせて使用することができる。上記の「発明を実施するための形態」を精査すれば、当業者などが他の実施形態を使用することもできる。同じく様々な特徴又は構成要素は、本発明の開示を合理化するために組み合わされている又は組み合わせることができる。これは、請求しない開示特徴がいずれかの請求項に必須であることを意図するものと解釈すべきではない。むしろ、発明的主題は、開示する特定の実施形態の特徴全てに存在する訳ではない。すなわち、次に述べる特許請求の範囲の実施例は、これにより「発明を実施するための形態」に組み込まれ、各実施例は、別々の実施形態として独立している。
【0066】
実施例1では、ナローイングに対して近位及び遠位の圧力を測定するように構成されたピグテールカテーテルは、近位シャフトセグメントと遠位シャフトセグメントとを備えることができる。近位シャフトセグメントは、近位圧力管腔と非同軸遠位圧力管腔とを定める二重管腔管系を含むことができる。遠位シャフトセグメントは、ナローイングにわたって部分的に位置決めされるように構成することができ、遠位圧力管腔を含むが近位圧力管腔を含まない部分を有する。遠位シャフトセグメントは、ナローイングに対して遠位に位置決め可能で少なくとも約0.018インチの直径を有する少なくとも1つの遠位オリフィスと、ナローイングに対して近位に位置決め可能で少なくとも約0.018インチの直径を有する少なくとも1つの近位オリフィスとを含むことができる。
【0067】
実施例2では、実施例1のピグテールカテーテルは、遠位圧力管腔がほぼ円形の断面形状を有し、近位圧力管腔が遠位圧力管腔の周りを部分的に包み込むほぼ三日月形又は腎臓形の断面形状を有するように任意的に構成することができる。
【0068】
実施例3では、実施例1又は2のいずれか一方のピグテールカテーテルは、任意的に、近位シャフトセグメントの近位端に結合されたマニホルドを更に備えることができる。マニホルドは、近位圧力管腔と流体連通する近位圧力ポートと、遠位圧力管腔と流体連通する遠位圧力ポートとを含むことができる。
【0069】
実施例4では、実施例3のピグテールカテーテルは、任意的に、ナローイングにわたる圧力勾配を決定するために近位圧力信号及び遠位圧力信号を変換器に送出するようにマニホルドが構成されるように構成することができる。
【0070】
実施例5では、実施例1~5のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせのピグテールカテーテルは、任意的に、二重管腔管系の外壁内に閉じ込められた編組構造を近位シャフトセグメントが含むように構成される。
【0071】
実施例6では、実施例5のピグテールカテーテルは、任意的に、少なくとも約0.020インチの間隔を有する金属繊維又はポリマー繊維を編組構造が備え、その間に近位オリフィスを配置できるように構成される。
【0072】
実施例7では、実施例5又は6のいずれか一方のピグテールカテーテルは、任意的に、編組構造が遠位シャフトセグメントの一部分まで延びるように構成される。
【0073】
実施例8では、実施例1~7のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせのピグテールカテーテルは、任意的に、二重管腔管系の外壁が近位圧力管腔に隣接する第1の壁繊維を備えるように構成される。第1の壁繊維は、軸線方向に延びて非伸張特性を有することができる。
【0074】
実施例9では、実施例8ピグテールカテーテルは、任意的に、二重管腔管系の外壁が遠位圧力管腔に隣接する第2の壁繊維を備えるように構成される。第2の壁繊維は、軸線方向に延びて非伸張特性を有することができる。
【0075】
実施例10では、実施例1~10のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせのピグテールカテーテルは、任意的に、二重管腔管系の外面がシャフト長軸及びシャフト短軸を定める長円形の断面形状を有し、遠位圧力管腔中心と近位圧力管腔中心は、シャフト長軸上に位置付けられたように構成することができる。
【0076】
実施例11では、実施例10のピグテールカテーテルは、任意的に、シャフト長径より少なくとも10パーセント(10%)小さいシャフト短径を外面が有するように構成することができる。
【0077】
実施例12では、実施例1~11のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせのピグテールカテーテルは、任意的に、近位圧力管腔の遠位部分内に位置決めされ、かつ遠位シャフトセグメントへの取り付け具を形成する弾性部材を更に備える。
【0078】
実施例13では、実施例12のピグテールカテーテルは、任意的に、端部にピグテールコイルを含む遠位シャフトセグメントの長さに沿って弾性部材が延びるように構成される。
【0079】
実施例14では、実施例1~13のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせのピグテールカテーテルは、任意的に、遠位シャフトセグメントが少なくとも1つの近位オリフィスに対して遠位のシャフト曲げ部を含むように構成される。
【0080】
実施例15では、実施例14のピグテールカテーテルは、シャフト曲げ部が約145度~約165度の範囲のシャフト曲げ角度を形成するように構成される。
【0081】
実施例16では、実施例1~15のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせのピグテールカテーテルは、約1.5cm以下の直径を有するピグテールコイルを遠位シャフトセグメントが含むように構成される。
【0082】
実施例17では、実施例16のピグテールカテーテルは、任意的に、ピグテールコイルの平面が、少なくとも1つの近位オリフィスに対して遠位の遠位シャフトセグメントに位置付けられたシャフト曲げ部の平面と非同一平面であるように構成される。
【0083】
実施例18では、実施例17のピグテールカテーテルは、任意的に、ピグテールコイルの平面がシャフト曲げ部の平面に対して約5度~約45度(端点含む)の角度を成すように構成される。
【0084】
実施例19では、実施例16~18のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせのピグテールカテーテルは、任意的に、ピグテールコイルが最遠位コイル部分にコイル頂点を含むように構成される。最遠位コイル部分は、ピグテールコイルの残りの部分の曲率半径よりも小さい曲率半径を有することができる。
【0085】
実施例20では、実施例16~19のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせのピグテールカテーテルは、任意的に、ピグテールコイルが最遠位コイル部分にコイル頂点を含むように構成される。放射線不透過マーカーは、コイル頂点に位置決めすることができる。
【0086】
実施例21では、実施例1~20のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせのピグテールカテーテルは、任意的に、近位圧力管腔及び遠位圧力管腔の一方又は両方が少なくとも約0.018インチの水力直径を有するように構成される。
【0087】
実施例22では、方法は、カテーテルの遠位シャフトセグメントが左心室内に部分的に位置決めされるようにピグテールカテーテルを心臓に挿入する段階と、大動脈弁にわたる圧力勾配を決定する段階とを備えることができる。カテーテルの近位シャフトセグメントは、ほぼ円形の断面形状を有する遠位圧力管腔と、遠位圧力管腔の周りを部分的に包み込むほぼ三日月形又は腎臓形の断面形状を有する近位圧力管腔とを定める二重管腔管系を含むことができる。遠位シャフトセグメントは、遠位圧力管腔を含むが近位圧力管腔を含まない部分と、大動脈弁に対して近位に位置決めされた少なくとも1つの近位オリフィスと、大動脈弁に対して遠位に位置決めされた少なくとも1つの遠位オリフィスとを含むことができる。大動脈弁にわたる圧力勾配を決定する段階は、圧力変換器をピグテールカテーテルのマニホルドに結合する段階を含むことができる。マニホルドは、近位圧力管腔と流体連通する近位圧力ポートと、遠位圧力管腔と流体連通する遠位圧力ポートとを含むことができる。
【0088】
実施例23では、実施例22の方法は、任意的に、ピグテールカテーテルを心臓に挿入する段階が、遠位圧力管腔を用いてピグテールカテーテルを心臓診断カテーテル上に挿入する段階を含むように構成することができる。
【0089】
実施例24では、実施例23の方法は、任意的に、心臓診断カテーテルを遠位圧力管腔から取り出す段階を更に備えることができる。
【0090】
実施例25では、実施例22~24のいずれか1つの方法は、任意的に、近位圧力管腔及び遠位圧力管腔の一方又は両方が少なくとも約0.018インチの水力直径を含むように構成することができる。
【0091】
本発明のカテーテル及び関連の方法の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照してそのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に決定すべきである。添付の特許請求の範囲では、用語「including」及び「in which」は、それぞれの用語「comprisong」及び「wherein」の平易な英語の均等物として使用される。同じく次に続く特許請求の範囲では、用語「including」及び「comprising」は非限定的であり、すなわち、請求項でそのような用語の後に列挙されるものに加えて、特徴、構成要素、又は段階を含むカテーテル又は方法は、依然としてその請求項の範囲内に入るものと見なされる。更に、以下の特許請求の範囲での「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、単にラベルとして使用され、そのような用語は、その対象に数値的要件を課すように意図したものではない。
【0092】
「要約」は、読者が技術的開示の本質を迅速に確認できるようにするために提供する。これは、特許請求の範囲又は意味を解釈する又は限定するのに使用されないことを理解した上で提示するものである。
【符号の説明】
【0093】
100 二重管腔ピグテールカテーテル
102 二重管腔シャフト
104 単一管腔シャフト
114 マニホルド
128 編組構造
134 シャフト曲げ部
図1A
図1B
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【国際調査報告】