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特表2024-529663光干渉断層撮影に基づく流量定量化のための動的前方散乱信号の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】光干渉断層撮影に基づく流量定量化のための動的前方散乱信号の使用
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240801BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/12 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507863
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 US2022074653
(87)【国際公開番号】W WO2023019099
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/230,791
(32)【優先日】2021-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ヴァコック ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ナム アーヒョン ステファニー
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA10
4C316AB04
4C316AB11
4C316FZ03
(57)【要約】
血管内の血流パラメータを測定するための装置であって、コントローラに接続された光源とセンサとを備える干渉データ収集装置を備え、前記コントローラは、
前記光源を血管の近位側に向け、前記近位側とは反対側の前記血管の遠位側に隣接しその外側にある組織から干渉データを取得し、前記干渉データに基づいて信号変調率を決定し、前記信号変調率に基づいて前記血管内の血流パラメータを推定するように構成されることを特徴とする装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内の血流パラメータを測定するための装置であって、
コントローラに接続された光源とセンサとを備える干渉データ収集装置を備え、
前記コントローラは、
前記光源を血管の近位側に向け、
前記近位側とは反対側の前記血管の遠位側に隣接しその外側にある組織から干渉データを取得し、
前記干渉データに基づいて信号変調率を決定し、
前記信号変調率に基づいて前記血管内の血流パラメータを推定する
ように構成されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記信号変調率は、非相関率を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光源は、前記血管の中心軸に対して実質的に直交する方向に向けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記干渉データ収集装置は、光干渉断層撮影(OCT)装置を備え、
前記コントローラは、前記干渉データを取得するときに、更に、前記近位側とは反対側の前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある前記組織からOCTデータを取得するように構成され、
前記コントローラは、前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定するときに、更に、前記OCTデータに基づいて前記信号変調率を決定するように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記OCTデータは、前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある前記組織に流入する血液による前記光源からの光の前方散乱に基づく
ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記血管内の前記血流パラメータを推定するときに、更に、前記血管全体にわたる積算流量に基づく、前記血管内の前記血流パラメータを推定するように構成される
ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記血管及び前記組織は被験者の網膜に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記組織は、前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある強膜組織又は網膜色素上皮組織のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記血流パラメータは、流速、速度、又はフラックスのうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記近位側とは反対側の前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある前記組織から前記干渉データを取得する場合、更に、前記血管の内部からの後方散乱干渉データを取得するように構成され、
前記コントローラは、前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定するときに、更に、前記後方散乱干渉データに基づいて後方散乱信号変調率を決定するように構成され、
前記コントローラは、前記信号変調率に基づいて前記血管内の血流パラメータを推定するとき、更に、前記後方散乱信号変調率に基づいて前記血管内の前記血流パラメータを推定するように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
血管内の血流パラメータを測定するための方法であって、
コントローラに接続された光源とセンサとを備える干渉データ収集装置を提供し、
前記コントローラを使用して、前記光源を血管の近位側に向けさせ、
前記コントローラを使用して、前記近位側とは反対側の前記血管の遠位側に隣接する組織から干渉データを取得し、
前記コントローラを使用して、前記干渉データに基づいて信号変調率を決定し、
前記コントローラを使用して、前記信号変調率に基づいて前記血管内の血流パラメータを推定する
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記信号変調率を決定することは、更に、前記干渉データに基づいて非相関率を決定することを含み、
前記血管内の血流パラメータを推定することは、更に、前記非相関率に基づいて前記血管内の前記血流パラメータを推定することを含む
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記光源を前記血管の近位側に向けることは、更に、前記光源を前記血管の中心軸に実質的に直交する向きで前記血管の近位側に向けることを含む
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記干渉データ収集装置は、光干渉断層撮影(OCT)装置を備え、
前記干渉データを取得することは、更に、前記近位側とは反対側の前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある前記組織からOCTデータを取得することを含み、
前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定することは、更に、前記OCTデータに基づいて前記信号変調率を決定することを含む
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記OCTデータは、前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある前記組織に流入する血液による前記光源からの光の前方散乱に基づく
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記血管内の前記血流パラメータを推定することは、更に、前記血管全体にわたる積算流量に基づく、前記血管内の前記血流パラメータを推定することを含む
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記血管及び前記組織は被験者の網膜に位置する
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記組織は、前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある強膜組織又は網膜色素上皮組織のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記血流パラメータは、流速、速度、又はフラックスのうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記近位側とは反対側の前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある前記組織から前記干渉データを取得することは、更に、前記血管の内部からの後方散乱干渉データを取得することを含み、
前記干渉データに基づいて信号変調率を決定することは、更に、前記後方散乱干渉データに基づいて後方散乱信号変調率を決定することを含み、
前記信号変調率に基づいて前記血管内の血流パラメータを推定することは、更に、前記後方散乱信号変調率に基づいて前記血管内の前記血流パラメータを推定することを含む
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項21】
ベッセル(vessel)内のフローパラメータを測定するための装置であって、
コントローラに接続された光源とセンサとを備える干渉データ収集装置を備え、
前記コントローラは、
前記光源をベッセルの近位側に向け、
前記近位側とは反対側の前記ベッセルの遠位側に隣接しその外側にあるサンプルから干渉データを取得し、
前記干渉データに基づいて信号変調率を決定し、
前記信号変調率に基づいて前記ベッセル内のフローパラメータを推定する
ように構成されることを特徴とする装置。
【請求項22】
前記信号変調率は、非相関率を含む
ことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記光源は、前記ベッセルの中心軸に対して実質的に直交する方向に向けられる
ことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記干渉データ収集装置は、光干渉断層撮影(OCT)装置を備え、
前記コントローラは、前記干渉データを取得するときに、更に、前記近位側とは反対側の前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にある前記サンプルからOCTデータを取得するように構成され、
前記コントローラは、前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定するときに、更に、前記OCTデータに基づいて前記信号変調率を決定するように構成される
ことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項25】
前記OCTデータは、前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にある前記サンプルに流入する物質(material)による前記光源からの光の前方散乱に基づく
ことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記コントローラは、前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定するときに、更に、前記ベッセル全体にわたる積算流量に基づく、前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定するように構成される
ことを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記ベッセル及び前記サンプルは、インビトロの生物組織、エクスビボの生物組織、流体チャネル、フローファントム、又はマイクロ流体プラットフォームを含む設計されたファントム内に配置される
ことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項28】
前記フローパラメータは、流速、速度、又はフラックスのうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項29】
前記コントローラは、前記近位側とは反対側の前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にあるサンプルから前記干渉データを取得する場合、更に、前記ベッセルの内部からの後方散乱干渉データを取得するように構成され、
前記コントローラは、前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定するときに、更に、前記後方散乱干渉データに基づいて後方散乱信号変調率を決定するように構成され、
前記コントローラは、前記信号変調率に基づいて前記ベッセル内のフローパラメータを推定するとき、更に、前記後方散乱信号変調率に基づいて前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定するように構成される
ことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項30】
ベッセル(vessel)内のフローパラメータを測定するための方法であって、
コントローラに接続された光源とセンサとを備える干渉データ収集装置を提供し、
前記コントローラを使用して、前記光源をベッセルの近位側に向けさせ、
前記コントローラを使用して、前記近位側とは反対側の前記ベッセルの遠位側に隣接するサンプルから干渉データを取得し、
前記コントローラを使用して、前記干渉データに基づいて信号変調率を決定し、
前記コントローラを使用して、前記信号変調率に基づいて前記ベッセル内のフローパラメータを推定する
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
前記信号変調率を決定することは、更に、前記干渉データに基づいて非相関率を決定することを含み、
前記ベッセル内のフローパラメータを推定することは、更に、前記非相関率に基づいて前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定することを含む
ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記光源を前記ベッセルの近位側に向けることは、更に、前記光源を前記ベッセルの中心軸に実質的に直交する向きで前記ベッセルの近位側に向けることを含む
ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記干渉データ収集装置は、光干渉断層撮影(OCT)装置を備え、
前記干渉データを取得することは、更に、前記近位側とは反対側の前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にある前記サンプルからOCTデータを取得することを含み、
前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定することは、更に、前記OCTデータに基づいて前記信号変調率を決定することを含む
ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記OCTデータは、前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にある前記サンプルに流入する物質(material)による前記光源からの光の前方散乱に基づく
ことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定することは、更に、前記ベッセル全体にわたる積算流量に基づく、前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定することを含む
ことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ベッセル及び前記サンプルは、インビトロの生物組織、エクスビボの生物組織、流体チャネル、フローファントム、又はマイクロ流体プラットフォームを含む設計されたファントム内に配置される
ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記フローパラメータは、流速、速度、又はフラックスのうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記近位側とは反対側の前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にある前記サンプルから前記干渉データを取得することは、更に、前記ベッセルの内部からの後方散乱干渉データを取得することを含み、
前記干渉データに基づいて信号変調率を決定することは、更に、前記後方散乱干渉データに基づいて後方散乱信号変調率を決定することを含み、
前記信号変調率に基づいて前記ベッセル内のフローパラメータを推定することは、更に、前記後方散乱信号変調率に基づいて前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定することを含む
ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2021年8月8日に出願された米国仮出願第63/230,791号の優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記載
本発明は、国立衛生研究所/国立生物医学画像生物工学研究所(National Institutes of Health/National Institute of Biomedical Imaging and Bioengineering)によって与えられた助成金番号P41EB015903の下で政府の支援を受けてなされた。政府は発明に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
光干渉断層撮影(Optical coherence tomography(OCT))を使用すると、個々の血管内の血流を定量化できる。多くのアプローチが説明されており、それらは一般に共通の原理に基づいており、つまり、それは、散乱体(赤血球(red blood cells(RBC))など)の動きはOCT信号の変調を誘発し、その変調の速度は散乱体の流速に比例することである。従って、OCT流量測定システム(OCT flowmetry systems)は、最初に信号変調率を(何らかの測定基準によって)測定し、次にこの率をフローパラメータ(速度や体積流量など)に関連付けるように設計されている。しかしながら、これらの各ステップには、堅牢なOCTベースの流量測定を実現するために克服しなければならない課題がある。
【発明の概要】
【0004】
従って、フローパラメータを測定するための新しいシステム、方法、及び媒体が望まれている。
【0005】
血管及び血行力学の異常は、多くの眼疾患の病因及び進行と密接に関連している。その結果、血管構造を定性的に視覚化し、灌流(perfusion)の代替尺度として「血管密度」(vascular density)を使用する多数の方法が提案されてきた。しかし、既存の技術では血管系を通る血流を確実に測定することはできない。
【0006】
我々は、血管の下にある静的な組織におけるOCT時系列測定(OCT time-series measurements)には、分析可能な動的特性があり、実際の血流に関連付けられることを観察した。このアプローチは、我々が注目する光信号が血管内の赤血球から前方散乱される光子によって変調されるため、「動的前方散乱」(dynamic forward scattering(DFS))と呼ばれている。様々な実験と開発を通じて、単一の後方散乱を介して血管内部から来る信号の直接分析を妨げるアーチファクトがなく、これらの信号により血流の堅牢な測定が可能であることを確認するデータを取得した。
【0007】
我々は、DFSアプローチが脈絡膜内の流れ評価に独特の利点を持っていることに注目する。脈絡膜は、OCTでプローブすると信号が非常に弱いという特徴がある。脈絡膜の下の層である強膜は、散乱性が高く、均質で、ほぼ無血管であるため、開示された手順はこの組織での使用に特によく適している。強膜からの信号は脈絡膜血管内腔よりも明るく、画像透過率は数百ミクロンになる場合がある。これは、我々が強膜のOCT信号を分析して脈絡膜の血流を計算するときに次の2つの結果をもたらす。(i)分析された強膜ボクセルは、脈絡膜血液ボクセルよりも高い信号対雑音比(SNR)を持つ可能性がある。(ii)解析に利用できるボクセルが更に多くなる可能性がある。
【0008】
本明細書に開示されるアプローチは、前方散乱光によって捕捉された信号のダイナミクスに焦点を当てることによって、OCTに基づく血流測定を可能にする。対照的に、我々の知る限り、既存の全てのOCT流量測定法は、血管内の単一の後方散乱のOCT測定に焦点を当てている。我々は、血流の確実な推定を提供するために、血流に関する情報を含む血管内腔の内側と外側(特に血管の下)の両方からの利用可能な全ての測定値を利用するコンセプトとフレームワークを開発した。
【0009】
開示された手順の実施形態は、任意の光干渉断層撮影システムを使用して後眼部の血流を評価するためのプロトコルの一部として使用されてもよい。この手順の実施形態は、クリニックで使用されるような従来のOCTシステム上で実装することができる。(ソフトウェア内の)取得プロトコルは、定量的な血流評価に必要なデータを取得するように変更でき、後処理で様々な分析を実行できる。
【0010】
従って、様々な実施形態において、本開示は、血管内の血流パラメータを測定するための装置を提供する。コントローラに接続された光源とセンサとを備える干渉データ収集装置を備えてもよい。前記コントローラは、前記光源を血管の近位側に向け、前記近位側とは反対側の前記血管の遠位側に隣接しその外側にある組織から干渉データを取得し、前記干渉データに基づいて信号変調率を決定し、前記信号変調率に基づいて前記血管内の血流パラメータを推定するように構成されてもよい。
【0011】
幾つかの実施形態においては、前記信号変調率は、非相関率を含んでもよい。他の実施形態においては、信号変調率は、信号の時間的相互相関又は時間的共分散の測定値を含むか、又はそれらの測定値に基づいてもよい。ある実施形態においては、前記光源は、前記血管の中心軸に対して実質的に直交する方向に向けられてもよい。血管の中心軸は、血管内の物質(例えば、血液)が流れる軸にほぼ平行である。
【0012】
ある実施形態においては、前記干渉データ収集装置は、光干渉断層撮影装置を備えてもよい。従って、前記コントローラは、前記干渉データを取得するときに、更に、前記近位側とは反対側の前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある組織からOCTデータを取得するように構成されてもよく、前記コントローラは、前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定するときに、更に、前記OCTデータに基づいて前記信号変調率を決定するように構成されてもよい。
【0013】
様々な実施形態においては、前記OCTデータは、前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある前記組織に流入する血液による前記光源からの光の前方散乱に基づいてもよい。従って、前記コントローラは、前記血管内の前記血流パラメータを推定するときに、更に、前記血管全体にわたる積算流量に基づく、前記血管内の前記血流パラメータを推定するように構成されてもよく、つまり、前記血流パラメータは、前記血管内の、深さに基づいて分解された流れを測定しなくてもよい。
【0014】
幾つかの実施形態においては、前記血管及び前記組織は被験者の網膜に位置してもよい。ある実施形態においては、前記組織は、前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある強膜組織(scleral tissue)又は網膜色素上皮(retinal pigment epithelium(RPE))組織のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0015】
特定の実施形態においては、前記血流パラメータは、流速(flow speed)(例えば、mm/秒で)、速度(velocity)(例えば、関連する空間方向とともに、mm/秒で)、又はフラックス(flux)(例えば、mL/秒で、又は1秒あたりのイメージングビームを通過するRBCの数で)のうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
様々な実施形態においては、前記コントローラは、前記近位側とは反対側の前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある組織から前記干渉データを取得する場合、更に、前記血管の内部からの後方散乱干渉データを取得するように構成されてもよく、前記コントローラは、前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定するときに、更に、前記後方散乱干渉データに基づいて後方散乱信号変調率を決定するように構成されてもよく、前記コントローラは、前記信号変調率に基づいて前記血管内の血流パラメータを推定するとき、更に、前記後方散乱信号変調率に基づいて前記血管内の前記血流パラメータを推定するように構成されてもよい。従って、そのような実施形態では、例えば、前方散乱干渉データとともに、後方散乱干渉データを使用して、血流パラメータを推定してもよい。
【0017】
幾つかの実施形態においては、血管内の血流パラメータを測定するための方法であって、コントローラに接続された光源とセンサとを備える干渉データ収集装置を提供し、前記コントローラを使用して、前記光源を血管の近位側に向けさせ、前記コントローラを使用して、前記近位側とは反対側の前記血管の遠位側に隣接する組織から干渉データを取得し、前記コントローラを使用して、前記干渉データに基づいて信号変調率を決定し、前記コントローラを使用して、前記信号変調率に基づいて前記血管内の血流パラメータを推定することを含むことを特徴とする方法を本開示は提供する。
【0018】
ある実施形態においては、前記信号変調率を決定することは、更に、前記干渉データに基づいて非相関率を決定することを含んでもよく、前記血管内の血流パラメータを推定することは、更に、前記非相関率に基づいて前記血管内の前記血流パラメータを推定することを含んでもよい。
【0019】
様々な実施形態においては、前記光源を前記血管の近位側に向けることは、更に、前記光源を前記血管の中心軸に実質的に直交する向きで前記血管の近位側に向けることを含んでもよい。
【0020】
特定の実施形態においては、前記干渉データ収集装置は、光干渉断層撮影装置を備えてもよく、前記干渉データを取得することは、更に、前記近位側とは反対側の前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある組織からOCTデータを取得することを含んでもよく、前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定することは、更に、前記OCTデータに基づいて前記信号変調率を決定することを含んでもよい。幾つかの実施形態においては、前記OCTデータは、前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある前記組織に流入する血液による前記光源からの光の前方散乱に基づいてもよい。ある実施形態においては、前記血管内の前記血流パラメータを推定することは、更に、前記血管全体にわたる積算流量に基づく、前記血管内の前記血流パラメータを推定することを含んでもよい。
【0021】
様々な実施形態においては、前記血管及び前記組織は被験者の網膜に位置してもよい。幾つかの実施形態においては、前記組織は、前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある強膜組織(scleral tissue)又は網膜色素上皮(retinal pigment epithelium(RPE))組織のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0022】
幾つかの実施形態においては、前記血流パラメータは、流速(例えば、mm/秒で)、速度(velocity)(例えば、関連する空間方向とともに、mm/秒で)、又はフラックス(例えば、mL/秒で又は1秒あたりのイメージングビームを通過するRBCの数で)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0023】
ある実施形態においては、前記近位側とは反対側の前記血管の前記遠位側に隣接しその外側にある組織から前記干渉データを取得することは、更に、前記血管の内部からの後方散乱干渉データを取得することを含んでもよく、前記干渉データに基づいて信号変調率を決定することは、更に、前記後方散乱干渉データに基づいて後方散乱信号変調率を決定することを含んでもよく、前記信号変調率に基づいて前記血管内の血流パラメータを推定することは、更に、前記後方散乱信号変調率に基づいて前記血管内の前記血流パラメータを推定することを含んでもよい。
【0024】
様々な実施形態においては、ベッセル(vessel)内のフローパラメータを測定するための装置であって、コントローラに接続された光源とセンサとを備える干渉データ収集装置を備え、前記コントローラは、前記光源をベッセルの近位側に向け、前記近位側とは反対側の前記ベッセルの遠位側に隣接しその外側にあるサンプルから干渉データを取得し、前記干渉データに基づいて信号変調率を決定し、前記信号変調率に基づいて前記ベッセル内のフローパラメータを推定するように構成されることを特徴とする装置を本開示は提供する。
【0025】
幾つかの実施形態においては、前記信号変調率は、非相関率を含んでもよい。ある実施形態においては、前記光源は、前記ベッセルの中心軸に対して実質的に直交する方向に向けられてもよい。
【0026】
特定の実施形態においては、前記干渉データ収集装置は、光干渉断層撮影装置を備えてもよく、前記コントローラは、前記干渉データを取得するときに、更に、前記近位側とは反対側の前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にあるサンプルからOCTデータを取得するように構成されてもよく、前記コントローラは、前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定するときに、更に、前記OCTデータに基づいて前記信号変調率を決定するように構成されてもよい。幾つかの実施形態においては、前記OCTデータは、前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にある前記サンプルに流入する物質(material)による前記光源からの光の前方散乱に基づいてもよい。ある実施形態においては、前記コントローラは、前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定するときに、更に、前記ベッセル全体にわたる積算流量に基づく、前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定するように構成されてもよい。
【0027】
幾つかの実施形態においては、前記ベッセル及び前記サンプルは、生物組織に配置されてもよい。他の実施形態においては、前記ベッセル及び前記サンプルは、潰瘍スフェロイド(tumor spheroid)などの、エクスビボ又はインビトロで準備された生物組織内に配置されてもよい。他の実施形態においては、前記ベッセル及び前記サンプルは、フローファントム又はマイクロ流体プラットフォームなどのエンジニアリング構造(engineering construct)内に配置されてもよい。
【0028】
様々な実施形態においては、前記フローパラメータは、流速(例えば、mm/秒で)、速度(velocity)(例えば、関連する空間方向とともに、mm/秒で)、又はフラックス(例えば、mL/秒で又は1秒あたりのイメージングビームを通過するRBCの数で)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0029】
特定の実施形態においては、前記コントローラは、前記近位側とは反対側の前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にあるサンプルから前記干渉データを取得する場合、更に、前記ベッセルの内部からの後方散乱干渉データを取得するように構成されてもよく、前記コントローラは、前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定するときに、更に、前記後方散乱干渉データに基づいて後方散乱信号変調率を決定するように構成されてもよく、前記コントローラは、前記信号変調率に基づいて前記ベッセル内のフローパラメータを推定するとき、更に、前記後方散乱信号変調率に基づいて前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定するように構成されてもよい。
【0030】
様々な実施形態においては、ベッセル(vessel)内のフローパラメータを測定するための方法であって、コントローラに接続された光源とセンサとを備える干渉データ収集装置を提供し、前記コントローラを使用して、前記光源をベッセルの近位側に向けさせ、前記コントローラを使用して、前記近位側とは反対側の前記ベッセルの遠位側に隣接するサンプルから干渉データを取得し、前記コントローラを使用して、前記干渉データに基づいて信号変調率を決定し、前記コントローラを使用して、前記信号変調率に基づいて前記ベッセル内のフローパラメータを推定することを含むことを特徴とする方法を本開示は提供してもよい。
【0031】
幾つかの実施形態においては、前記信号変調率を決定することは、更に、前記干渉データに基づいて非相関率を決定することを含んでもよく、前記ベッセル内のフローパラメータを推定することは、更に、前記非相関率に基づいて前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定することを含んでもよい。
【0032】
ある実施形態においては、前記光源を前記ベッセルの近位側に向けることは、更に、前記光源を前記ベッセルの中心軸に実質的に直交する向きで前記ベッセルの近位側に向けることを含んでもよい。
【0033】
特定の実施形態においては、前記干渉データ収集装置は、光干渉断層撮影装置を備えてもよく、前記干渉データを取得することは、更に、前記近位側とは反対側の前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にあるサンプルからOCTデータを取得することを含んでもよく、前記干渉データに基づいて前記信号変調率を決定することは、更に、前記OCTデータに基づいて前記信号変調率を決定することを含んでもよい。ある実施形態においては、前記OCTデータは、前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にある前記サンプルに流入する物質(material)による前記光源からの光の前方散乱に基づいてもよい。様々な実施形態においては、前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定することは、更に、前記ベッセル全体にわたる積算流量に基づく、前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定することを含んでもよい。
【0034】
幾つかの実施形態においては、前記ベッセル及び前記サンプルは、生物組織に配置されてもよい。他の実施形態においては、前記ベッセル及び前記サンプルは、潰瘍スフェロイド(tumor spheroid)などの、エクスビボ又はインビトロで準備された生物組織内に配置されてもよい。他の実施形態においては、前記ベッセル及び前記サンプルは、フローファントム又はマイクロ流体プラットフォームなどのエンジニアリング構造(engineering construct)内に配置されてもよい。
【0035】
特定の実施形態においては、前記フローパラメータは、流速(例えば、mm/秒で)、速度(velocity)(例えば、関連する空間方向とともに、mm/秒で)、又はフラックス(例えば、mL/秒で又は1秒あたりのイメージングビームを通過するRBCの数で)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0036】
ある実施形態においては、前記近位側とは反対側の前記ベッセルの前記遠位側に隣接しその外側にある前記サンプルから前記干渉データを取得することは、更に、前記ベッセルの内部からの後方散乱干渉データを取得することを含んでもよく、前記干渉データに基づいて信号変調率を決定することは、更に、前記後方散乱干渉データに基づいて後方散乱信号変調率を決定することを含んでもよく、前記信号変調率に基づいて前記ベッセル内のフローパラメータを推定することは、更に、前記後方散乱信号変調率に基づいて前記ベッセル内の前記フローパラメータを推定することを含んでもよい。
【0037】
開示される主題の様々な目的、特徴、及び利点は、同様の参照番号が同様の要素を識別する以下の図面と関連して考慮される場合、開示される主題の以下の詳細な説明を参照することにより、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1のパネル(a)は、ベッセルからの動的後方散乱(dynamically back-scattered(DBS))信号と動的前方散乱(dynamically forward-scattered(DFS))信号の形状を示す。パネル(b)は、フローファントムの図を示し、ポリスチレン製フローチューブの内径は125μmで、テフロン(登録商標)製の静的散乱体がチューブの下に配置される。パネル(c)は、チューブファントムのOCT構造画像を示し、マークされた領域は、軸方向の勾配効果(二重の丸の線)と多重散乱(四角い線)によって引き起こされるアーチファクトが発生しやすいDBSボクセルを示す。パネル(d)は、推定非相関率(ρ^(正しくはρの上にハット。以下同じ。))(暗い点が最低値、明るい点が最高値であり、viridisスケールの色で表される)を示し、DBS及びDFS領域内の各ボクセルが構造画像にオーバーレイされる。これらのデータでは、ポンプ流量は50μL/分に設定され、流れ角度はα=96.83°である。
図2図2のパネル(a)は、2つのドップラ角度に対するDBSとDFSの非相関推定値(ρ^)の視覚化を示す。パネル(b)は、パネル(a)の白い線でマークされた位置の横方向ρ^プロファイルを示す。パネル(c)は、平均非相関率のROIを示す。パネル(d)は、2つのDBS ROI(全内腔、及びチューブの上半分の内径66%、上のプロット)内における平均ρ^(ρ^に正規化、ドップラ角90°での値)、及びDFS ROI(下のプロット)を示す。
図3図3のパネル(a)は、チューブ内のドップラから導出された流量に対してプロットされる、DFS非相関率(ρ^、DFS ROIの平均)を示す。パネル(b)は、60%のヘマトクリットレベルに正規化されたρ^を示す。
図4図4のパネル(a)は、網膜血管の下(画像上部、短い太線で示される)と複数の脈絡膜血管にわたる(画像下部、長い両矢印の線で示される)のDFS信号測定に使用される、走査位置を示す網膜の走査型レーザ検眼鏡画像を示す。スケールバー=1mm。パネル(b)は、構造(上)と非相関率パラメータ(ρ^)(下)のフィルムストリップを示す。パネル(c)は、DBS(上)とDFS(下)ROIにわたる横方向の流れプロファイルを示す。パネル(d)は、DFS ROI内のρ^の平均値を示し、これは、時間の経過とともにプロットされ、心臓の拍動性を示す。縦線は、4つの時点を含む期間(縦線の間の点で示される)を示し、その流れの断面がパネル(b)に示される。
図5図5のパネル(a)は、図4に示される画像化された線の断面構造画像を示し、パネル(a)(画像下部のマゼンタの線)では、RPEと絨毛膜強膜の境界は点線で示される。パネル(b)は、(図1と同様に虹色スケールを使用して)非相関率(ρ^)画像を示し、パネル(a)のように、4つの脈絡膜血管の位置が選択され、色付きの三角形でマークされている。パネル(c)は、選択した血管における流れのダイナミクスを示し、強膜上の深さの平均ρ^によって計算される。パネル(d)は、深さ(強膜上)と時間平均ρ^によって計算された非相関率プロファイルを示す。アスタリスク(*)は、網膜の太い血管により信号の非相関が存在する側方領域を示す。
図6図6は、チューブ内部の線形位相(ドップラ)プロファイルを示しており、異なる流れ角度における横方向の流れプロファイルを示す。パネル(a)は、軸流速度を示す線形ドップラ位相を示し、ドップラ位相はチューブの端での速度勾配効果の影響を受けない。パネル(b)は、チューブ内(上)とDFS内(下)の非相関率を示す。最初の2つの列は、図1のパネル(b)に示されているのと同じプロットを示している。
図7図7は、様々な流れ角度における流量の線形傾向を示し、(図2のパネル(c)のDFS ROI全体にわたって平均された)DFS非相関率は、α=90°からの偏差3°の範囲外の全ての流れ角度に対する。横軸はドップラから導出された流量である。
図8図8は、本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用され得る干渉分光システムの図を提供し、パネル(A)は、自由空間光学系を使用して実装できるマッハツェンダー型干渉計を示し、パネル(B)は、ファイバの配置を示す。
図9図9は、開示された主題の幾つかの実施形態によるフローパラメータを測定するためのシステムの一例を示す。
図10図10は、開示された主題の幾つかの実施形態によるコンピューティングデバイス及びサーバを実装するために使用できるハードウェアの例を示す。
図11図11は、開示された主題の幾つかの実施形態によるフローパラメータを測定するプロセスの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
開示された主題の幾つかの実施形態によれば、フローパラメータを測定するための機構(システム、方法、及び媒体を含むことができる)が提供される。
【0040】
発明者らの知る限りでは、血流を定量化するための既存の光コヒーレンストモグラフィーのアプローチは全て(ドップラベースか非相関ベースかにかかわらず)、移動する赤血球(red blood cells(RBC))などの物質によって後方散乱された光を分析する。本出願は、代わりに、RBCによって前方散乱された光に基づいて、つまり、血管の下(つまり遠位側)から後方散乱した信号を観察することによって、これらの測定を行うことの利点を開示する。我々は、本明細書において、前方散乱に基づく流量測定が、撮像ビームに対してほぼ直交する血管の向きに影響されないことを実験的に示す。更に、我々は、ヒトの網膜血管及び脈絡膜血管における動的前方散乱(dynamic forward-scattering(DFS))流量測定の原理実証デモも提供する。それにもかかわらず、ここで提供される例の多くは後眼内の血管から得られたデータに基づいているものの、開示された手順は、皮膚、脳、胃腸組織、神経、前癌性病変、及び癌性病変を含む、多種多様な組織及び物質に対して実行することができる。
【0041】
光干渉断層撮影を使用すると、個々の血管内の血流を定量化できる。多くのアプローチが説明されているが、全ては一般に共通の原理に基づいており、つまり、それは、散乱体(赤血球(red blood cells(RBC))など)の動きはOCT信号の変調を誘発し、その変調の速度は散乱体の流速に比例することである。従って、OCT流量測定システム(OCT flowmetry systems)は、最初に信号変調率を(何らかの測定基準によって)測定し、次にこの率をフローパラメータ(速度や体積流量など)に関連付けるように設計されている。これらの各ステップには、堅牢なOCTベースの流量測定を実現するために克服しなければならない課題がある。
【0042】
この研究では、我々は、2番目のステップ、つまり測定された信号変調率からの流量の計算、における中心的な課題を克服する戦略を開示する。OCTビームに対してほぼ直角に配向されている血管(ドップラ角α=約90°)では、流れの計算は信頼できない可能性があることが確立されており、これは、大部分がOCTビームに直交する網膜内の血管の測定において特に問題となる。この信頼性の低さの根本原因は、軸方向及び横方向の動きに対する後方散乱の高度に異方性の位相応答(highly anisotropic phase response)である。光の波長の半分のスケールでの軸方向の動きは、完全な2π位相変調を引き起こし、一方、同様の予想される位相応答を達成するには、横方向の動きはイメージング解像度(通常は10~20μm)程度である必要がある。もちろん、これが、定義上信号位相に作用するドップラベースの方法が軸方向の動きを測定する理由である。これが、OCT強度信号に作用する非相関ベースの方法を含む、非相関ベースの方法にどのような影響を与えるかは、あまり明らかではない。ここでは、軸運動のボクセル内勾配から生じる位相応答の変化が、OCT信号の急速な非相関化につながることが示されている。これは、複素数値信号と強度信号のどちらを操作するかに関係なく当てはまる。開示された例は非相関率(decorrelation rate)の決定を対象としているが、様々な実施形態において、パワースペクトル分析やモデルに基づく統計的推論など、他のタイプの分析を流れ関連のDFS信号に対して実行できる。他の実施形態においては、信号変調率は、信号の時間的相互相関又は時間的共分散の測定値を含むか、又はそれらに基づいてもよい。
【0043】
既知の軸方向に偏った方法をドップラ角が90°に近い血管に適用すると、信号変調率は、速度の比較的小さな軸方向成分を不釣り合いに測定し、信号変調率からの流量計算が信頼できなくなる。これは、信号変調は速度の比較的小さな軸方向成分に大きく依存するためである。これらの軸方向に偏った方法を使用して総流量を計算するには、幾何学的な要因を使用して測定値をスケールアップする必要がある。αについての正確な知識がなければ、結果として計算される合計流量は信頼できない。様々な実施形態においては、開示された手順は、流速(例えば、mm/秒で)、速度(velocity)(例えば、関連する空間方向とともに、mm/秒で)、又はフラックス(例えば、mL/秒で又は1秒あたりのイメージングビームを通過するRBCの数で)を含む、様々なフローパラメータ(例えば、血流パラメータ)を測定するために使用することができる。
【0044】
我々は、散乱体の動きに対する応答を等方性にするか、異方性を横方向の動きに反転させることができれば、ドップラ角が90°に近い血管について総流量の計算はより安定する。移動する散乱体によって前方散乱された光は後者の性質を持っていることがわかる。これは、図1(a)に示される、動的後方散乱(dynamically back-scattered(DBS))光と動的前方散乱(dynamically forward-scattered(DFS))光の光子経路の概念図で見ることができる。もちろん、OCTは反射イメージング技術であるため(reflective imaging technique)、我々は、DFS光を直接測定することはできない。ただし、我々は、血管の下から後方散乱され、必然的に血管を2回通過した信号を観察することによって、DFSを間接的に測定できる。従って、光源が血管の近位側に向けられている限り、干渉データは、近位側とは反対側の血管の遠位側に隣接する(及びその外側の)領域内の組織又は他の物質(material)から取得される。
【0045】
DFSの特性と、上層の血管の流れの尺度としてのその忠実度を特徴付けるには、我々は、図1(b)~図1(c)に示すような血流ファントムを構築した(この研究における全ての測定は、例示的な流動媒体として血液を使用する)。我々は、フローチューブの下のボクセルにおける信号の非相関率を特徴付けた(図1(d))。非相関率を定量化するために、我々は、DFS信号の自己相関/自己共分散を次のようにモデル化した。
【数1】
【0046】
ただし、τは測定間の遅延である。関数g(1)(τ)は複素自己相関関数である。我々は、複素数値のOCTデータを使用してρの値を推定した。簡単に言うと、我々は、最尤法に基づく(maximum-likelihood-based)統計フレームワークを使用した。代わりに複素自己相関関数を測定値の計算された自己相関係数に適合させる方法も使用できる、つまり、DFSアプローチは特定の分析フレームワークに関連付けられていない。
【0047】
測定された時間信号の自己共分散を計算し、これらの自己共分散データを式(1)にフィッティングし、最適な適合をもたらすρの値を見つけることにより、非相関率は測定できる。このフィッティングを実行するには、最適化などの数値的手法を使用できる。式(1)によって提供されるモデルは、非相関率パラメータρに関する異なる関数形式、又は遅延τに関する異なる関数形式を有するように変更できる。測定データは複素数値をとることができ、この場合、自己共分散は複素数値の出力になる。或いは、測定データの振幅又は振幅の二乗(両方とも実数値)を使用して、実数値の自己共分散測定を計算することもできる。従って、式(1)で使用されるような非相関モデル又は信号変調モデルは、実数値又は複素数値の測定値に対して記述することができ、適切なモデルをフィッティングに使用できる。
【0048】
流れ特性を推定するために、血管の外部で取得された時系列測定値から追加の指標を計算できる。これらには、パワースペクトル分析が含まれ、このパワースペクトル分析では、より低いRF周波数に局在するパワーはより遅いフローと関連付けられ、一方、RF周波数全体にわたってより広範囲に広がるパワーはより速いフローと関連付けられる。時系列OCT測定の動的特性を測定し、当業者に知られている他の技術及び方法を更に使用することができる。
【0049】
更に、本出願における非相関分析は、単一の変動の速さの一般化された測定を指しており、非相関又は非相関率の特定の方法論及び定義に限定されないことを我々は注記する。
【0050】
式(1)がDFS信号の仮定された統計モデル(assumed statistical model)であることを強調することが重要である。DBS信号の統計モデルを定義するために多くの取り組みが行われたが、DFS信号についてはそのような一連の研究は存在しない。従って、DFS信号は、式(1)の関数依存性とは異なるτに対する関数依存性に従う可能性がある。更に、我々は式(1)をDFS 信号の正しい統計モデルであると仮定したとしても、ρが上層の血管の流れ特性にどのように関係するかは不明である。例えば、ρはピーク速度に比例する可能性があるが、代わりにRBCフラックスに関連する可能性がある。これらは、DFSベースの流量定量化戦略の広範な開発において回答が必要な重要な質問であり、多大な労力が必要になる可能性がある。ここでは、我々は、DFS非相関率がα=90°付近でαの影響を受けないというアプローチの背後にある動機原理を確認しようとした。
この目標には、仮定されるモデルで十分である。
【0051】
イメージングは、MモードBスキャンプロトコルを使用して実行され、300μmにわたる100の位置のそれぞれで128本のAラインが記録された(フレームごとに100(x)x128(t)のAライン)。各位置で10個の繰り返しBスキャンフレームが取得された。撮像は19の異なる位置で実行され、それぞれが80°~100°の異なるドップラ角度を提供した。我々は、DBS領域(チューブ内)及びDFS領域(チューブの下)内の各ボクセルについて、ρ^で示されるρの推定値を計算した。この研究の全てのデータは、掃引光源OCTシステム(中心波長1060nm、100kHzAライン率)を使用して取得された。OCTシステム、フローファントム、ビームスキャンプロトコル、及びバルクモーションの校正及び除去を開発及び使用するための装置及び手順は、当業者には既知である。
【0052】
DFSの非相関率はドップラ角度の影響を受けない
【0053】
図2(a)は、強度フレームにオーバーレイされたDBS領域とDFS領域の両方及びドップラ角80.8°及び89.2°について、推定された非相関率係数ρ^のフレーム例を示す。両方の測定の流量は60μl/分であった。80.8°でのDBS信号の非相関率に対する速度勾配の寄与に注目されたい。内腔の下部領域における非相関の増加は、多重散乱(実質的にはDFS)によって引き起こされると推定される。これについては以下で更に説明する。図2(a)から、ドップラ角はDBS領域ではρ^に影響を与えるが、DFS領域ではあまり影響を与えないことが明らかである。
【0054】
ドップラ角度がDBS信号とDFS信号にどのような影響を与えるかをより明確に視覚化するには、80.8°(左列)及び89.2°(右列)の測定について、DBS(上の行)及びDFS(下の行)領域の示された行について、ρ^の横方向プロファイルを図2(b)に示す。DFS信号の場合、ρ^の横方向プロファイルは少なくともほぼ放物線状であり、2つのドップラ角度間で変化しない。参考のために、これらの測定のドップラ線形位相シフトを図6に示す。
【0055】
19の流れ角度にわたる非相関特性を定量化するには、我々は、60μl/minの固定流量の場合について図2(c)で定義されたROI内の平均ρ^を計算した。DBS領域には2つのROIが定義され、1つは全ルーメンに等しく、1つは、(i)速度勾配が最も高いエッジ、及び(ii)多重散乱が顕著な管下部領域を除外する。DFS ROIは、チューブの下の広い領域をカバーする(紫色)。図2(d)は、90°のドップラ角で得られた測定値に正規化されたこれらの測定値を示す。全ルーメンDBS ROIのドップラ角度に対する非相関の強い二次依存性と、チューブROIが減少した場合についてのドップラ角度への減少した二次依存性と、に注目されたい。DFS信号は、ドップラ角度に対する二次依存性の証拠を示さない。ドップラ角度に対する最小限の線形依存性が見られるが、これは真の応答というよりも測定アーチファクトである可能性が高くなる。我々は、ドップラ角90°付近で非対称性を生み出すメカニズムが不明であり、DBS測定でも同様の線形傾向が観察されるため、このように結論付ける。
【0056】
流速に線形に比例するDFS非相関率
【0057】
次に、我々は、フローファントムを使用して、DFS領域の非相関率が流速の変化に応じて線形に変化し、他の全ての特性(チューブの形状など)が一定に保たれていることを確認した。83.5°のドップラ角を使用し、様々なポンプ流量設定に対するDFS ROIの平均ρ^を計算した。これらの測定値を図3(a)に、DBS信号のドップラ解析(FDoppler)によって導出される流量の関数として、プロットする。予想通り、傾向は非常に直線的である。小さなY軸オフセットもある。90°から3°を超える全てのドップラ角度に対してこの分析を繰り返し(DBS信号で確実なドップラ測定を保証するため)、ほぼ同一の傾きとオフセットを有する同じ傾向が観察された(図7)。y軸切片がゼロでない原因は不明である。考えられる原因には、ブラウン運動や測定ノイズが含まれる。
【0058】
DFS非相関率は、RBCフラックスよりも流速とより強く関連している
【0059】
前述したように、DFS信号の統計(自己相関又は自己共分散)モデルは説明されていない。従って、我々は、非相関率を上層の血管の流れ特性にどのように関連付けるかは分からない。例えば、DBS信号とは異なり、DFS信号は、前方散乱赤血球の動きと光が相互作用した赤血球の数の両方に依存する可能性がある。後者は、DFS信号が部分的にRBCフラックスを測定していることを意味する。我々は、これをテストするために、ヘマトクリット(hematocrit)レベルが20%から60%になるように血液を様々に希釈した場合のρ^を比較した(図1~3は60%のヘマトクリットを使用した)。DFS非相関率がRBCフラックスに大きく影響される場合、我々は、ヘマトクリット値が低くなるとρ^が劇的に減少することが分かる。この解析では、我々は、ρ^をドップラ由来の流れ(FDoppler)に対して正規化することで、ポンプ変動の影響を除去した。各ヘマトクリットレベルで、我々は、90°から3°を超える全てのドップラ角度にわたる測定値を平均した。
【0060】
図3(b)は結果を示す。ヘマトクリット60%に対する正規化された非相関率(ρ^/FDoppler)は、ヘマトクリット20、30、40、50%では、それぞれ1.126、1.1、1.154、1.04である。ヘマトクリットが低いほど、ρ^が低くなるという観察可能な傾向はない。二次的な要因(DFS信号のSNRに対するヘマトクリットの影響など)によって説明できるかもしれないが、実際、ヘマトクリット値が低いほど僅かな増加が観察された。これらの結果は、DFS非相関率内のRBCフラックス依存性を除外するものではないが、そのような依存性は流速の依存性よりもはるかに小さい可能性が高いことを示す。
【0061】
網膜血管及び脈絡膜血管への適用
【0062】
最後に、我々は、DFSベースの技術がヒト被験者のより大きな網膜血管及び脈絡膜血管に適用できることを実証する。まず、図4(a)に示すように、網膜血管の下のDFS信号に関連する非相関率を測定した(画像上部の短い太線で示されている場所)。網膜色素上皮(retinal pigment epithelium(RPE))は無血管で散乱性が高いため、我々はこの組織をDFSシグナルの静的レポーター(static reporter)として使用した。データは、拍動性を捕捉するためにBスキャンを約10秒間繰り返した点を除き、フローファントムイメージングに使用したものと同じMモードBスキャンプロトコルを使用して取得した。4つの時点における構造及び非相関率(ρ^)画像を、DFS ROIとともに、図4(b)に示す。
【0063】
図4(c)では、我々は、DFS信号についてはROI深さ全体でρ^を平均して、DBS信号については指定された位置で3本の深さ線にわたってρ^を平均することにより、DFS信号とDBS信号のρ^の横方向プロファイルをプロットする。フローファントムで観察されたように、DFSからの横方向非相関プロファイルは、DBSに関連付けられたプロファイルよりも放物線状になっている。DFSプロファイルではノイズが少なくなるが、これは、より広範な平均化の結果である可能性がある(DFS ROIでは深度ポイントが13個であるのに対し、DBSでは深度ポイントが3個)。ROI全体にわたるρ^の平均値が時間の関数として図4(d)にプロットされており、予想される拍動性を示す。確認として、心周期全体にわたる最大値と最小値のρ^の比は2.7であり、以前の報告と一致した。
【0064】
次に、我々は、この技術を脈絡膜に適用した。複雑で密な血管構造、散乱性の高いRPEによる信号品質の低下、及び低いSNRなどの要因の組み合わせにより、脈絡膜内の血流の定量化は非常に困難になる。我々は、拡張MモードBスキャンプロトコルを使用して、位置当たり256本のAライン及び100個の位置(30μm間隔)を用いて3mmラインを撮像した(図5(a))。脈絡膜血管については、強膜内のDFS信号を分析した。脈絡膜と強膜との間の境界は図5(a)に示されている。図5(b)は、画像全体にわたる非相関率を示し、推定された脈絡膜血管の下の明瞭な信号を示している。推定される脈絡膜血管に一致する4つの位置(図5(a)及び5(b)の画像の下に色付きの三角形で示されている)を選択し、強膜全体にわたるρ^の平均を時間の関数としてプロットした(図5(c))。これらの測定の時間分解能は限られている(約0.25秒)が、我々は、これらの血管の心臓の拍動を観察した。強膜の深さにわたって経時的にρ^を平均することによって計算された、3mmの走査長にわたる時間平均された流れプロファイルが、図5(d)に示されている。これらのデータは予備的なものではあるが、脈絡膜血管内の流れを定量化する手段の提供が期待できることを示唆しているが、これは既存の解決策が非常に限られている課題である。
【0065】
この研究は、OCT血管造影で血管の下に現れると報告されている「影」(shadows)又は「尾」(tails)の原因として知られているDFS信号が、特に90°に近いドップラ角度を持つ血管について、信頼できる流量情報のソースとして考慮されるべきであることを明らかにしている。ドップラ角に対する鈍感さがこの研究の最初の動機であったが、DFSアプローチには、議論に値する追加の利点が幾つかある。まず、我々は、他で説明したように、DBS信号は多重散乱の影響を受けることが図2(a)において明確に分かる。我々は、これらの信号をDBSと呼んだが、より正確にはDBS+DFSと呼ばれる。それらを分析する際には、2つのプロセスの混合によって変調される信号に対処する必要がある。対照的に、血管の下で測定された信号(静的散乱体から)は純粋なDFS信号であるため、モデル化と解釈が容易になる可能性がある。第2に、一部のアプリケーションでは、DFSアプローチには、DBSアプローチよりも独立した信号ダイナミクス測定が提供されるという利点がある場合がある。例えば、脈絡膜血管の下の強膜内のより大きなDFSボクセルのセットと比較して、脈絡膜血管の内側に位置する限られたDBSボクセルのセットを考える。第3に、我々のデータは、DFS信号が内腔の中心からのDBS信号の約2倍の速度で非相関であることを示唆している。これを使用すると、より短い期間の時系列測定が可能になり、フローイメージングを高速化できる。最後に、DFSアプローチはDBSアプローチと同時に導入できることに我々は注記する。違いは信号分析にある。従って、このアプローチは、干渉光源の方向にほぼ又は実質的に直交する血管に対しては主であり、それ以外の場合には副次的な既存の方法の付属物であると考えることができる。
【0066】
DFSアプローチの制限は、血管内の深さ分解された流れを測定しないことである。各DFSボクセルは、ボクセル上の積算流量を報告する単一のメトリックを提供する。これにより、複数の血管がビームの経路を横切るときに曖昧さが生じる可能性がある。これがこのアプローチの有用性をどの程度制限するかは、アプリケーションに依存する可能性がある。例えば、脈絡膜では、強膜のDFS特性を単一の脈絡膜血管に常に明確に関連付けることは困難である。ただし、この制限は、脈絡膜内の流れを定量化するための実行可能なアプローチが現在欠如していることを考慮して検討する必要がある。網膜血管構造は比較的まばらであるため、RPE内のDFS信号を関連する血管にマッピングすることはそれほど難しくない可能性がある。DFSアプローチの更なる制限は、DFS信号が限られているため、キャピラリーには適用できない可能性があることである。DFSを使用できる血管直径の範囲を調査するには、追跡調査が必要である。
【0067】
この作業で使用される方法には幾つかの制限があることも、我々は注記する。ドップラ角度は、様々な場所でチューブを撮像することによって変更されており、これにより、測定を混乱させる二次的な変化(ビーム解像度/収差)が引き起こされた可能性がある。これは、例えば、図2(d)で観察されたドップラ角に対するρ^の小さな線形依存性を引き起こした可能性がある。フローファントム研究では単一のチューブ直径が使用され、この直径は網膜及び脈絡膜血管の関連範囲の上限に近かった。我々は、DBS信号の角度依存性は、流れの勾配が大きいため、小さい血管ではより深刻になると予想するが、これとDFS信号に対する血管直径の影響については更に研究する必要がある。最後に、前述したように、この研究はDFS信号の想定された統計モデルを使用して動作した。様々な実施形態においては、他のモデルは、実験的、数値的、又は分析的方法によって開発され、開示された手順を使用して収集されたデータに適用される場合がある。
【0068】
図8は、本明細書に開示される様々な実施形態と併せて使用され得る干渉分光システムの図を提供する。図8は、自由空間光学系を使用して実装できるマッハツェンダー型干渉計(図8A)又はファイバの配置(図8B)を示す。他の種類の干渉計(マイケルソンなど)も適用できる。図8A又は8Bのいずれの光源LSも、波長掃引レーザ源、波長掃引光源、時間ステップ型光周波数コム源(time-stepped optical frequency comb source)、又は時間ステップ型離散光周波数源(time-stepped discrete optical frequency source)であってもよい。LSから放射されたビームB9は干渉計入力に導かれ、そこでビームスプリッター(BS3)を使用してほぼ同じ長さの2つの経路に分割される。B10はサンプルS(例えば、被験者の目の網膜)に向けられる。対象物体からの光は干渉計出力(B11)に向けられる。参照アームでは、ビームB12はオプションとして位相変調器(phase modulator(PM))に向けられ、位相変調器(PM)は、電気光学位相変調器又は音響光学周波数シフターとすることができる。PMの後のビーム(つまりビームB13)は、BS4によって結合された後、干渉計出力に導かれてビームB11と干渉する。次いで、出力ビームB14は、検出器D(例えば、フォトダイオード)によって検出される。或いは、図8Bに示すファイバベースの干渉計は、出力ビームB14とB15の間のπの位相シフトにより平衡検出を容易に可能にする。検出された信号は、データ収集及び処理システム(データ収集ボード又はリアルタイムオシロスコープ(DAQ)を含む場合がある)を使用してサンプリングレートfでデジタル化される。幾つかの波長掃引(A1、A2、...、An)を取得して、2次元又は3次元の画像を形成することができる。様々な実施形態においては、干渉計のサンプルアームSは、患者/被験者インターフェース(例えば、レンズ又はプローブ)と統合されてもよく、これは、患者又は被験者の組織への直接光の照射及び組織から、例えば網膜からの光の受光を容易にする。この干渉計システムによって提供される波長分解測定値は、コンピュータシステム内で離散フーリエ変換を使用して処理され、サンプルの反射率の深さ分解測定値を生成できる。
【0069】
本発明の様々な実施形態と併せて使用され得る代替の干渉計システムは、図8のマッハツェンダーシステムに基づくものであってよいが、検出器とDAQシステムは分光計に置き換えられる。分光計には光学格子とラインスキャンカメラを含めることができる。光源LSは、スーパールミネセントダイオード、LED光源、スーパーコンティニューム光源、又は広帯域光出力を提供する別の光源などの広帯域光源であってよい。この干渉計システムによって提供される波長分解測定値は、コンピュータシステム内で離散フーリエ変換を使用して処理され、サンプルの反射率の深さ分解測定値を生成できる。
【0070】
本発明のさまざまな実施形態と併せて使用できるさらなる干渉計システムは、図8のマッハツェンダーシステムに基づくものであってよいが、光源LSは、スーパールミネセントダイオード、LED光源、スーパーコンティニューム光源、又は広帯域光出力を提供する別の光源などの広帯域光源であってよい。検出器とDAQは、既知の時間領域OCT方法に従って、低コヒーレンス干渉縞を測定し、単一の深度点での反射率を測定する。基準経路B12は、この深さ分解測定の位置を走査するための可変光学遅延を含むことができる。位相変調器PMは、位相変調器に提供される信号によって決定される特定の搬送波周波数でエンコードされた推論信号を生成するために使用できる。或いは、位相変調器は、周波数FaoのRF信号によって提供される音響光学周波数シフトであってもよく、干渉信号をRF周波数Faoに位置させる。
【0071】
図8に示され、更なる干渉計システムの実施形態で使用されるマッハツェンダー干渉計構成は、少なくともサンプル経路と基準経路に光を提供する代替アーキテクチャに置き換えることができる。これらには、サンプル又は参照経路の少なくとも1つが双方向の部分を含むマイケルソン干渉計システムとマッハツェンダーシステムが含まれる。
【0072】
コンピュータと光学システム
【0073】
図9に戻り、フローパラメータを測定するためのシステム(例えば、データ収集及び処理システム)の例900が、開示された主題の幾つかの実施形態により示されている。幾つかの実施形態においては、コンピューティングデバイス910は、フローパラメータ904を測定するためのシステムの少なくとも一部を実行し、干渉データ収集装置902に制御信号を提供することができる。追加的に又は代替え的に、幾つかの実施形態では、コンピューティングデバイス910は、通信ネットワーク906を介してサーバ920との間で制御信号に関する情報を通信することができ、サーバ920は、フローパラメータ904を測定するためのシステムの少なくとも一部を実行することができる。幾つかのそのような実施形態では、サーバ920は、フローパラメータ904を測定するためのシステムの制御信号に関連する情報をコンピューティングデバイス910(及び/又は任意の他の適切なコンピューティングデバイス)に返すことができる。この情報は、ユーザ(例えば、研究者、オペレータ、臨床医など)に送信及び/又は提示されてもよく、及び/又は(例えば、研究データベース又は被験者に関連する医療記録の一部として)保存されてもよい。
【0074】
幾つかの実施形態においては、幾つかの実施形態において、コンピューティングデバイス910及び/又はサーバ920は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、サーバコンピュータ、物理的なコンピューティングデバイスによって実行される仮想マシンなどの、任意の適切なコンピューティングデバイス又はデバイスの組み合わせでありうる。本明細書に記載されるように、フローパラメータ904を測定するためのシステムは、制御信号に関する情報をユーザ(例えば、研究者及び/又は医師)に提示することができる。
【0075】
幾つかの実施形態において、通信ネットワーク906は、任意の適切な通信ネットワーク又は通信ネットワークの組み合わせでありうる。例えば、通信ネットワーク906は、Wi-Fiネットワーク(1つ又は複数の無線ルータ、1つ又は複数のスイッチなどを含みうる)、ピアツーピアネットワーク(例えば、Bluetooth(登録商標)ネットワーク)、セルラーネットワーク(例えば、CDMA、GSM、LTE、LTE Advanced、WiMAX(登録商標)などの任意の適切な規格に準拠する3Gネットワーク、4Gネットワーク、5Gネットワークなど)、有線ネットワークなどを含みうる。幾つかの実施形態において、通信ネットワーク906は、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、公衆ネットワーク(例えば、インターネット)、プライベート又はセミプライベートネットワーク(例えば、企業又は大学のイントラネット)、任意の他の適切なタイプのネットワーク、又はネットワークの任意の適切な組み合わせでありうる。図9に示される通信リンクはそれぞれ、有線リンク、光ファイバリンク、Wi-Fiリンク、Bluetooth(登録商標)リンク、セルラーリンクなどの任意の適切な通信リンク又は通信リンクの組み合わせでありうる。
【0076】
図10は、開示される主題の幾つかの実施形態に従ってコンピューティングデバイス910及びサーバ920を実装するために使用できるハードウェアの例1000を示す。図10に示されるように、幾つかの実施形態では、コンピューティングデバイス910は、プロセッサ1002、ディスプレイ1004、1つ又は複数の入力1006、1つ又は複数の通信システム1008、及び/又はメモリ1010を含みうる。幾つかの実施形態においては、幾つかの実施形態において、プロセッサ1002は、中央処理装置、グラフィックス処理装置などの任意の適切なハードウェアプロセッサ又はプロセッサの組み合わせでありうる。幾つかの実施形態においては、幾つかの実施形態において、ディスプレイ1004は、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、テレビなどの任意の適切な表示装置を含むことができる。幾つかの実施形態においては、入力1006は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクなどの、ユーザ入力を受信するために使用できる任意の適切な入力デバイス及び/又はセンサを含むことができる。
【0077】
幾つかの実施形態においては、通信システム1008は、通信ネットワーク906及び/又は他の任意の適切な通信ネットワークを介して情報を通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを含むことができる。例えば、通信システム1008は、1つ又は複数のトランシーバ、1つ又は複数の通信チップ及び/又はチップセットなどを含むことができる。より具体的な例では、通信システム1008は、Wi-Fi接続、Bluetooth(登録商標)接続、セルラー接続、イーサネット(登録商標)接続などを確立するために使用できるハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを含むことができる。
【0078】
幾つかの実施形態においては、メモリ1010は、例えばプロセッサ1002がディスプレイ1004を用いてコンテンツを提示したり、通信システム1008を介してサーバ920と通信したりするために使用できる命令、値などを格納するために使用できる任意の適切な記憶装置を含むことができる。メモリ1010は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ストレージ、又はそれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ1010は、RAM、ROM、EEPROM、1つ又は複数のフラッシュドライブ、1つ又は複数のハードディスク、1つ又は複数のソリッドステートドライブ、1つ又は複数の光ドライブなどを含むことができる。幾つかの実施形態においては、メモリ1010には、コンピューティングデバイス910の動作を制御するためのコンピュータプログラムがエンコードされることができる。このような実施形態では、プロセッサ1002は、コンピュータプログラムの少なくとも一部を実行して、コンテンツ(例えば、画像、ユーザインターフェース、グラフィックス、テーブルなど)を提示し、サーバ920からコンテンツを受信し、サーバ920に情報を送信するなどすることができる。
【0079】
幾つかの実施形態において、サーバ920は、プロセッサ1012、ディスプレイ1014、1つ又は複数の入力1016、1つ又は複数の通信システム1018、及び/又はメモリ1020を含むことができる。幾つかの実施形態においては、プロセッサ1012は、中央処理装置、グラフィックス処理装置などの任意の適切なハードウェアプロセッサ又はプロセッサの組み合わせでありうる。幾つかの実施形態においては、ディスプレイ1014は、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、テレビなどの任意の適切な表示装置を含むことができる。幾つかの実施形態においては、入力1016は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクなどの、ユーザ入力を受信するために使用できる任意の適切な入力デバイス及び/又はセンサを含むことができる。
【0080】
幾つかの実施形態においては、通信システム1018は、通信ネットワーク906及び/又は他の任意の適切な通信ネットワークを介して情報を通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを含むことができる。例えば、通信システム1018は、1つ又は複数のトランシーバ、1つ又は複数の通信チップ及び/又はチップセットなどを含むことができる。より具体的な例では、通信システム1018は、Wi-Fi接続、Bluetooth(登録商標)接続、セルラー接続、イーサネット(登録商標)接続などを確立するために使用できるハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを含むことができる。
【0081】
幾つかの実施形態においては、メモリ1020は、例えばプロセッサ1012がディスプレイ1014を用いてコンテンツを提示したり、1つ又は複数のコンピューティングデバイス910と通信したりするために使用できる命令、値などを格納するために使用できる任意の適切な記憶装置を含むことができる。メモリ1020は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ストレージ、又はそれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ1020は、RAM、ROM、EEPROM、1つ又は複数のフラッシュドライブ、1つ又は複数のハードディスク、1つ又は複数のソリッドステートドライブ、1つ又は複数の光ドライブなどを含むことができる。幾つかの実施形態においては、メモリ1020には、サーバ920の動作を制御するためのサーバプログラムがエンコードされることができる。このような実施形態では、プロセッサ1012は、サーバプログラムの少なくとも一部を実行して、情報及び/又はコンテンツ(例えば、組織の識別及び/又は分類の結果、ユーザインターフェースなど)を1つ又は複数のコンピューティングデバイス910に送信し、1つ又は複数のコンピューティングデバイス910から情報及び/又はコンテンツを受信し、1つ又は複数のデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォンなど)から命令を受信する。
【0082】
幾つかの実施形態においては、本明細書で説明される機能及び/又はプロセスを実行するための命令を格納するために、任意の適切なコンピュータ可読媒体を使用することができる。例えば、幾つかの実施形態では、コンピュータ可読媒体は一時的又は非一時的でありうる。例えば、非一時的なコンピュータ可読メディアは、磁気メディア(ハードディスク、フロッピーディスクなど)、光学メディア(コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、ブルーレイディスクなど)、半導体メディア(RAM、フラッシュメモリ、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)など)、送信中に一時的ではない又は永続性の欠如がない適切な媒体、及び/又は任意の適切な有形媒体を含むことができる。別の例として、一時的なコンピュータ可読媒体は、電線、導体、光ファイバ、回路、又は送信中に一時的又は永続性が欠如している適切な媒体、及び/又は任意の適切な無形媒体における、ネットワーク上の信号を含むことができる。
【0083】
本明細書で使用される場合、機構という用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の適切な組み合わせを包含することができることに留意されたい。
【0084】
図11は、開示された主題の幾つかの実施形態による血管における血流パラメータを測定するプロセスの例1100を示す。図11に示されるように、1102において、プロセス1100は、コントローラに結合された光源及びセンサーを含む干渉データ収集装置を提供することができる。1104において、プロセス1100は、コントローラを使用して、光源を血管の近位側に向けることができる。1106で、プロセス1100は、コントローラを使用して、近位側とは反対側の血管の遠位側に隣接しその外側にある組織から干渉データを取得することができる。1108で、プロセス1100は、コントローラを使用して、干渉データに基づいて信号変調率を決定することができる。最後に、1110で、プロセス1100は、コントローラを使用して、信号変調率に基づいて血管内の血流パラメータを推定することができる。
【0085】
図11のプロセスの上記のステップは、図に示し説明した順序及びシーケンスに限定されず、任意の順序又はシーケンスで実行又は行われることができることを理解されたい。また、図11のプロセスの上記のステップの幾つかは、待ち時間及び処理時間を短縮するために、必要に応じて実質的に同時に又は並行して実行又は行われることができる。
【0086】
従って、本発明を特定の実施形態及び実施例に関連して説明してきたが、本発明は必ずしもそのように限定されるものではなく、他の多くの実施形態、実施例、使用法、変形例、及び実施形態、実施例、及び使用法からの逸脱も本明細書に添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
【国際調査報告】