(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】グラファイト材料の精製方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/196 20170101AFI20240801BHJP
【FI】
C01B32/196
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508306
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 CA2022051223
(87)【国際公開番号】W WO2023015392
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524051933
【氏名又は名称】ヌーボー モンド グラファイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボワヴェール、レネ
(72)【発明者】
【氏名】ブーランジェ、パトリース
(72)【発明者】
【氏名】ブラサード、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】デソルニエーズ、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ノーヴァル、グレアム
(72)【発明者】
【氏名】リエックマン、フィリペ
(72)【発明者】
【氏名】タン、アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB01
4G146BA21
4G146BA34
4G146CA05
4G146CA10
4G146CA17
(57)【要約】
金属硫化物不純物を含むグラファイト材料の精製方法が提供される。方法は、グラファイト材料を酸素の存在下で酸化条件に付して、金属硫化物不純物を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させ、それによって金属硫化物の少ないグラファイト材料を得ることと、金属硫化物の少ないグラファイト材料が、塩素ガスの存在下で炭素塩素化を受けることで、金属酸化物を金属塩化物に変化させ、金属塩化物に富むグラファイト材料を得ることと、金属塩化物に富むグラファイト材料から金属塩化物をパージし、それによって精製グラファイト材料を得ることとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属硫化物不純物を含むグラファイト材料の精製方法であって、
前記グラファイト材料を酸素の存在下で酸化条件に付して、前記金属硫化物不純物を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させ、それによって金属硫化物の少ないグラファイト材料を得ることと、
前記金属硫化物の少ないグラファイト材料が、塩素ガスの存在下で炭素塩素化を受けることで、前記金属酸化物を金属塩化物に変化させ、金属塩化物に富むグラファイト材料を得ることと、
前記金属塩化物に富むグラファイト材料から前記金属塩化物をパージし、それによって精製グラファイト材料を得ることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記グラファイト材料を酸化条件に付すことが、
前記金属硫化物不純物の分解温度よりも低い第1の温度で、前記金属硫化物不純物を金属硫酸塩に変化させ、前処理済みグラファイト材料を得るために実施される第1の酸化工程と、
前記前処理済みグラファイト材料に対して、前記第1の温度よりも高い第2の温度で、前記金属硫酸塩を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させ、前記金属硫化物の少ないグラファイト材料を得るために実施される第2の酸化工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の酸化工程が第1の反応器内で実施され、前記金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受け、前記金属塩化物をパージする前記第2の酸化工程が、第2の反応器内で実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の温度が300℃以下である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の温度が約25℃~約300℃である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の温度が最大約1400℃である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の温度が約300℃~約1000℃である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の温度が約500℃~約700℃である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に、前記金属硫化物の少ない材料から前記二酸化硫黄をパージすることをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属硫化物の少ない材料から前記二酸化硫黄をパージすることが、前記二酸化硫黄を第1の不活性ガスでパージすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の酸化工程が、前記金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に実施される、請求項態1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受けることが、前記金属硫化物の少ないグラファイト材料を前記第2の温度以上の第3の温度に加熱することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第3の温度が少なくとも約1400℃である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第3の温度が約3000℃以下である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記第3の温度が約2500℃以下である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
前記第3の温度が約1400℃~約2200℃である、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記金属塩化物に富むグラファイト材料から前記金属塩化物をパージすることが、
第2の不活性ガスでパージすることと、
前記金属塩化物がガス状態にある温度で前記金属塩化物に富むグラファイト材料を維持することと、
前記金属塩化物を含む出口ガスを回収することと
を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
オフガス中の塩素ガス濃度を監視することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記金属塩化物を含む前記出口ガスを空気で希釈し、それによって前記出口ガスを冷却し、前記金属塩化物を凝縮することをさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記前処理済みグラファイト材料をるつぼに入れること、および前記るつぼを前記第2の反応器に入れること、または前記前処理済みグラファイト材料を前記第2の反応器に設けられたるつぼに入れることをさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記るつぼ間の空き空間に、焼成石油コークス、冶金コークス、メソフェーズ炭素およびそれらの混合物からなる群から選択される充填剤を提供することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記グラファイト材料が、天然グラファイト、人造グラファイト、剥離グラファイト、グラフェン材料およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記グラファイト材料が、天然グラファイトフレークであるか、または天然グラファイトフレークから得られる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記グラファイト材料が、再生グラファイト材料である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記グラファイト材料が球形化されたグラファイト材料であり、前記精製されたグラファイト材料が球形化され精製されたグラファイト材料である、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記グラファイト材料が角柱状のグラファイト材料であり、前記精製されたグラファイト材料が角柱状の精製されたグラファイト材料である、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記金属硫化物不純物が、硫化鉄、硫化銅、硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫化ニッケル、硫化マンガンおよびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の反応器が、キルン、流動床反応器、固定床反応器および回転床反応器からなる群から選択される、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の反応器が、アチソン炉、直接通電黒鉛化炉(LWG)、黒鉛炉、流動床反応器、電熱反応器、および誘導炉からなる群から選択される、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、一般にグラファイトの精製に関し、より詳細には、酸化および炭素塩素化を使用した金属硫化物不純物を含有するグラファイトの精製に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池に使用するための高純度グラファイトに対する世界的な需要が高まっている。これは、少なくとも部分的には、携帯用電子デバイスの使用および利用可能性の増加、ならびに新興の電気自動車市場によるものである。
【0003】
高純度グラファイトを製造するためのいくつかの技術が知られている。例えば、1つの技術は、HFまたはH2SO4などの、環境問題を引き起こす可能性がある大量の有毒な排出物を生成し、重い処理プロセスならびに高価な作業空間の安全処置および機器を必要とする強酸を使用する。別の既知の技術は熱処理であり、精製されるグラファイトを約2500℃~約2800℃の温度に加熱する。しかし、熱処理は、設置および動作に費用がかかる可能性があり、いくつかの不純物の除去は困難な場合がある。炭素塩素化プロセスも開発されているが、大規模な商業的応用はまだ見出されていない。
【0004】
グラファイト精製の分野には多くの課題が依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
本明細書の一態様では、金属硫化物不純物を含むグラファイト材料の精製方法が提供される。方法は、グラファイト材料を酸素の存在下で酸化条件に付して、金属硫化物不純物を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させ、それによって金属硫化物の少ないグラファイト材料を得ることと、金属硫化物の少ないグラファイト材料が、塩素ガスの存在下で炭素塩素化を受けることで、金属酸化物を金属塩化物に変化させ、金属塩化物に富むグラファイト材料を得ることと、金属塩化物に富むグラファイト材料から金属塩化物をパージし、それによって精製グラファイト材料を得ることとを含む。
【0006】
本明細書の別の態様では、金属硫化物不純物を含むグラファイト材料の精製方法が提供される。方法は、炉内にグラファイト材料を供給することと、グラファイト材料を酸素の存在下で酸化条件に付して、金属硫化物不純物を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させ、それによって金属硫化物の少ないグラファイト材料を得ることと、金属硫化物の少ないグラファイト材料が、塩素ガスの存在下で炭素塩素化を受けることで、金属酸化物を金属塩化物に変化させることと、金属塩化物を炉から移動させ、それによって精製グラファイト材料を得ることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】グラファイト精製動作を含む、本明細書の一実施形態によるグラファイト処理動作のプロセスフロー図である。
【0008】
【
図2】本明細書の一実施形態によるグラファイト材料の処理のためのシステムを表す図であり、より具体的には、精製炉内のグラファイト材料の前処理工程精製を示す図である。
【0009】
【
図3】本明細書の一実施形態によるグラファイト材料の処理のためのシステムを表す図であり、より具体的には、精製炉内のグラファイト材料の精製ならびにオフガスおよびオフリキッドの後処理を示す図である。
【0010】
【
図4】本明細書の一実施形態による、グラファイト精製動作のプロセスフロー図である。
【0011】
【
図5】本明細書の別の実施形態によるグラファイト材料の処理のためのシステムを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に記載の様々な技術により、様々なタイプのグラファイト材料の処理が可能となり、より具体的には、金属硫化物不純物を含むグラファイト材料の精製が可能となる。
【0013】
本明細書で使用される「グラファイト材料」という用語は、一般に、精製されるべき様々な処理段階の粒子状グラファイトを指すことと理解される。精製される粒子状グラファイトは、典型的には、低い純度(例えば、約99.95%未満のグラファイト)のものである。「グラファイト材料」という用語は、人工または天然グラファイトのいずれかを指し、再生グラファイトも含むことができる。グラファイト材料の非限定的な例としては、グラファイトフレーク、微粉化されたグラファイト、球形化されたグラファイトおよび角柱状のグラファイトが挙げられる。いくつかの実施形態では、グラファイト材料は、天然グラファイト、人造グラファイト、剥離グラファイト、グラフェン材料およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。グラファイト材料は、あらゆるサイズのものであってもよい。例えば、グラファイト粒子のサイズは、直径5μm未満~1000μm超、または直径約50μm~約800μmであってもよい。例えば、グラファイト粒子は、約1μm~約150μmの厚さを有することができる。
【0014】
「金属硫化物」という用語は、少なくとも1つの金属原子/イオンおよび少なくとも1つの硫黄原子または硫化物イオンを含む化合物を指すと理解される。「金属硫化物」という用語は、「混合金属硫化物」を含み、金属硫化物は、異なる元素の少なくとも2つの金属原子/イオンおよび少なくとも1つの硫黄原子または硫化物イオンを含む。限定するものではないが、金属硫化物は、硫化鉄、硫化アルミニウム、硫化銅、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫化ニッケル、硫化マンガンおよびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、硫化鉄は、硫化鉄(II)、グレイジャイト、磁硫鉄鉱、トロイライト、マッキノー鉱、白鉄鉱、黄鉄鉱およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、硫化銅は、ビラマニン鉱、銅藍、ヤロー鉱、スピオコープ鉱、ゲール鉱、阿仁鉱、方輝銅鉱、ロキシバイト(roxybyite)、デュルレ鉱、黄銅鉱およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
Liイオン電池を初めて充電すると、電解質が分解して、固体電解質界面(SEI)と呼ばれるパッシベーション膜が生成される。このSEIはイオン伝導体であるが、電子伝導体ではない。SEIは、サイクルおよびカレンダ寿命に関して電池の性能にとって重要な要素である。不純物と電解質との間の副反応を回避するために、99.95%以上の純度までの高純度のグラファイトの精製が通常好ましい。本明細書の精製されるグラファイト材料は、金属硫化物不純物を含む。「不純物」という用語は、グラファイト材料の総重量のごく一部を指す。例えば、限定するものではないが、グラファイト材料は、少なくとも90重量%のグラファイトおよび10重量%の不純物、または少なくとも95重量%のグラファイトおよび5重量%の不純物、または少なくとも98重量%のグラファイトおよび2重量%の不純物、または少なくとも99.90重量%のグラファイトおよび0.10重量%の不純物を含むことができる。金属硫化物不純物は、典型的には、グラファイト材料中に存在する全不純物の一部を形成する。例えば、グラファイト材料は、金属酸化物、金属硫化物、水、および/または他の不純物などの不純物を含むことができる。本明細書のグラファイト材料の精製方法は、グラファイト材料中の不純物の総重量%を減少させることを目的とする。電池に使用するための精製されたグラファイト材料は、典型的には、少なくとも99.95%の純度を有し、すなわち、不純物はグラファイト材料の総重量の多くても0.05重量%(すなわち、多くても500ppm)を補う。
【0016】
ここで
図1を参照すると、本明細書の一態様では、球形化され精製されたグラファイト102を製造するためのプロセス100が提供される。いくつかの実施形態では、例えば濃縮グラファイトフレークとして得られた金属硫化物不純物を含む天然グラファイト鉱石104を粉砕機106にかけて、粉砕されたグラファイト108を得る。いくつかのシナリオでは、粉砕されたグラファイト108の粒子は、約1μm~約100μm、または約5μm~約50μm、または約10μm~約30μmの平均粒径d
50を有することができる。次いで、粉砕されたグラファイト108は、球形化工程110にかけられて、丸めることによって粉砕されたグラファイト108の粒子の形状を変更する。球形化工程110は、粉砕されたグラファイト108を球形化されたグラファイト112に変換する。微粉グラファイト粒子、または球形化されたグラファイト112よりも小さい平均粒径d
50を有する微粉化されたグラファイト114も回収することができる。
【0017】
さらに
図1を参照すると、球形化されたグラファイト112は精製プロセス114にかけられる。図示の実施形態では、精製プロセス114は、球形化されたグラファイト材料112に対して実施される。しかし、精製プロセス114は、グラファイト鉱石104に対して、粉砕されたグラファイト108に対して、球形化されたグラファイト112に対して、または天然グラファイトおよび/もしくは人造グラファイトを含み、使用済み電池からの再生グラファイト材料を含む、任意の他のグレードのグラファイト材料に対して直接実施することができることを理解されたい。
【0018】
いくつかの実施形態では、精製プロセス114は、球形化されたグラファイト材料112を酸素の存在下で酸化工程116にかけて、金属硫化物不純物を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させ、それによって金属硫化物の少ないグラファイト材料118を得ることを含む。精製プロセス114は、金属硫化物の少ないグラファイト材料118が、塩素ガスの存在下で、炭素塩素化120を受けることで、金属酸化物を金属塩化物に変化させることをさらに含む。次いで、金属塩化物を除去/排出して、球形化され精製されたグラファイト材料102などの精製されたグラファイト材料を得ることができる。次いで、球形化され精製されたグラファイト材料102を、オプションでさらに処理することができる。例えば、球形化され精製されたグラファイト材料102を、オプションでコーティング(例えば、ピッチもしくは他の種類の材料または他の表面処理でコーティング)して、コーティングされ、球形化され精製されたグラファイト材料を得ることができる。精製プロセスの実施形態および関連するシステムの実施形態を、本明細書でより詳細に説明する。
【0019】
ここで
図2を参照すると、本明細書の一実施形態による、グラファイト材料の処理のためのシステムが提供されている。グラファイト鉱山から得られた天然グラファイトであってもよい濃縮グラファイト204が粉砕ユニット206に供給されて、粉砕されたグラファイト208を得ることができる。粉砕されたグラファイト208は、直列および/または並列に設けられた球形化ユニット210または複数の球形化ユニットに供給されて、微粉部分211aおよび粗粉部分211bが得られる。微粉部分211aは、ディスクコレクタ212に送られてダストを除去することができ、微粉化されたグラファイト214を回収することができる。粗粉部分211bは、サイクロン216に送られて、二次微粉部分219から球形化されたグラファイト218を分離することができる。二次微粉部分219は、微粉部分211aに送り返されて、集塵器212を通過することができる。球形化されたグラファイト218は、さらなる処理および精製のために直接使用することができ、または後の使用または後の精製のために球形化されたグラファイトの貯蔵庫220に貯蔵することができる。
【0020】
本明細書に記載の粗粉部分211bおよび微粉部分211aの処理は異なり得ることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、サイクロンの代わりに他のタイプの分離機を使用することができる。他の実施形態では、粗粉部分211bは、さらに処理することなく、精製のために直接送ることができる。他の実施形態では、微粉部分211aは廃棄するか、またはさらなる処理にかけられなくてもよい。
【0021】
次いで、球形化されたグラファイト218をるつぼ224内に配置することができ、るつぼ間の空間226を充填するために充填剤222を提供することができる。いくつかの実施形態では、充填剤は、焼成石油コークス、冶金コークス、メソフェーズ炭素およびそれらの混合物からなる群から選択される。次いで、球形化されたグラファイトが充填されたるつぼおよび充填剤222の配置物228を精製炉230に入れて、球形化されたグラファイト材料を精製することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、精製炉230は、酸素含有ガス入口232(例えば、空気入口)、不活性ガス入口234(例えば、アルゴン入口)および塩素ガス入口236を有する。いくつかの実施形態では、精製炉230は、不活性ガス入口234および塩素ガス入口236を有するが、酸素含有ガス入口232を有さず、そのような場合、酸化工程は、精製されるグラファイト材料を直接取り囲む酸素中に存在する酸素使って行うことができる。いくつかの実施形態では、精製炉230は塩素ガス入口236を有するが、不活性ガス入口234を有さず、および/または酸素含有ガス入口232を有さない。いくつかの実施形態では、精製炉230は、最初に酸素含有ガスの影響下で球形化されたグラファイトを酸化工程にかけ、次いで塩素ガスの影響下で球形化されたグラファイトは炭素塩素化を受け、球形化され精製されたグラファイト材料238を得るように構成される。精製され球形化されたグラファイト材料238は、そのまま使用または市販することができ、あるいはさらに処理されて(例えば、コーティングされて)コーティングされ球形化され精製されたグラファイト材料を得ることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、オフガス240を精製炉230から回収し、例えば環境基準を満たすようにさらに処理することができる。球形化されたグラファイトが精製された後、再生充填剤242も回収され、再利用のために充填剤貯蔵庫222に戻すことができる。いくつかの実施形態では、精製炉230は、アチソン炉、直接通電黒鉛化炉(LWG)、黒鉛炉および誘導炉からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、精製炉230はアチソン炉である。
【0024】
ここで
図3を参照すると、オフガス240およびオフリキッドの後処理に焦点を合わせた、本明細書の一実施形態によるグラファイト材料の精製のためのシステムが示されている。オフガス240は、精製炉230の出口で収集される。いくつかの実施形態では、オフガス240中に存在するガス状金属塩化物が凝縮されるように、オフガス240を冷却するために空気302で希釈することができる。オフガス240を熱交換器に供給するなど、オフガス240を冷却するための他の技術を使用できることを理解されたい。オフガス240は、湿式スクラバー304に送ることができる。湿式スクラバー304は、水を使用して金属塩化物と反応し、金属塩化物を水に溶解することができる金属酸化物に変化させ、それによって金属酸化物に富むオフリキッド306および洗浄済みガス308を得る。金属酸化物に富むオフリキッド306は、バッファリザーバ310に貯蔵され、さらに処理することができる。洗浄済みガス308は、苛性スクラバー312に送られて、残留塩素が除去される。苛性スクラバー312から回収されたオフガス314は、次いで熱酸化装置316に供給されて、一酸化炭素を二酸化炭素に変化させる。空気318および天然ガス320が熱酸化装置316に供給されることで燃焼を生じさせることができ、燃焼生成物322を大気中またはCO
2スクラバーを通して放出することができる。次亜塩素酸塩に富むオフリキッド324は、苛性スクラバー312から回収され、バッファリザーバ326に貯蔵されてさらに処理することができる。
【0025】
次亜塩素酸塩に富むオフリキッド324を過酸化水素などの還元剤330と接触させて塩化ナトリウムに富む溶液332を生成することによって、次亜塩素酸塩処理ユニット内で次亜塩素酸塩を中和するよう次亜塩素酸塩に富むオフリキッド324を処理することができる。次いで、塩化ナトリウムに富む溶液332および金属酸化物に富むオフリキッド306は、水処理ユニット334に供給され、カルシウム塩溶液336(CaCl2および/またはCa(OH)2溶液など)の添加によってさらに処理される。処理された廃液338は、水処理ユニット334から回収され、クラリファイア340に送られ得る。スラッジ342および廃液344は、クラリファイア340から得られる。スラッジ342は、スラッジフィルタ346に送られて、クラリファイア340内に戻され再生され得るスラッジ濾液348および固形廃棄物350を得ることができる。廃液344を廃液リザーバ352に貯蔵し、強酸354(例えば、H2SO4)で処理して中和廃液356を得ることができる。
【0026】
本明細書に記載のオフガスおよびオフリキッド処理と同様に、粉砕、球形化および他のすべての前処理工程の工程は、精製炉で実施される精製工程に関して任意であることを理解されたい。
【0027】
ここで
図4を参照すると、いくつかの実施形態では、グラファイトが充填されたるつぼが402で精製炉に配置される。るつぼの間の空所に焼成石油コークスを提供することができる。いくつかの実施形態では、金属硫化物を酸化して硫酸塩、金属酸化物および二酸化硫黄にするために、404おいて、例えば25℃~300℃で空気が注入される。いくつかの実施形態では、硫酸塩の分解および金属酸化物の形成から得られた二酸化硫黄を除去するために、例えば300℃~1400℃のアルゴンを使用して、不活性ガスパージを406で実施する。次いで、408において、塩素ガスを、例えば1400℃~2000℃、または最大2500℃で精製炉に注入する。塩素ガスはグラファイト材料中に分散され、グラファイト材料を99.95%より高い純度に精製することができる。精製炉では、グラファイト材料を収容し、塩素ガスの拡散を助けるために、るつぼが使用される。精製炉は、電気的に加熱することができる。塩素ガスがグラファイト材料中に拡散すると、塩素ガスは金属酸化物と反応して金属酸化物を金属塩化物に変換する。金属塩化物は、対応する金属酸化物よりも低い気化温度を有する。塩素ガス検出器を設けてオフガス中の塩素含有量を測定することができ、オフガス中で塩素ガスが支配的になると精製がなされたとき(すなわち、不純物が使い果たされ、塩素ガスがもはや不純物と反応することができなくなったとき)を決定することができる。いくつかの実施形態では、410でさらなる不活性ガスパージを実施して、1400℃~2500℃の温度で典型的にはガス状の金属塩化物を除去する。412では、得られた球形化され精製されたグラファイトならびに焼成石油コークスは、精製炉から取り出し、さらに処理、貯蔵、またはそのまま使用することができる。次いで、新しいグラファイトが充填されたるつぼを精製炉に入れて次の精製サイクルを再開することができる。
【0028】
ここで
図5を参照すると、いくつかの実施形態では、球形化されたグラファイト218が第1の反応器530に導入され、そこで酸化工程が酸素の存在下で実行される。いくつかの実施形態では、第1の反応器530で実行される酸化工程は、金属硫化物不純物を金属硫酸塩に変化させるための部分酸化工程であり得る。他の実施形態では、第1の反応器530内で実行される酸化工程は、金属硫化物不純物を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させるための完全酸化工程であり得る。第1の反応器530から得られる材料は、前処理済みグラファイト材料518である。次いで、前処理済みグラファイト材料518は、るつぼ224に導入され、充填剤材料222が、るつぼ224の間の空間226を充填するために提供される。前処理済みグラファイト材料で充填されたるつぼおよび充填剤222の配置物528を精製炉230に配置して前処理済みグラファイト材料518をさらに精製することができ、または配置物528は、前処理済みグラファイト材料518がるつぼ224に装填されるときに精製炉230に既に配置されている。そのような場合、塩素ガス入口236および任意の不活性ガス入口234(例えば、アルゴン入口)を設けて、炉230に塩素ガスおよび不活性ガスをそれぞれ供給することができる。いくつかの実施形態では、第1の反応器530は、キルン、流動床反応器、固定床反応器または回転床反応器であり得る。いくつかの実施形態では、第1の反応器530に酸素含有ガス入口を任意に設けることができる。他の実施形態では、第1の反応器530内および酸化されるグラファイト材料内に本質的に含まれる空気は、金属硫化物不純物の除去を可能にするのに十分である。いくつかの実施形態では、第1の反応器530内の酸化工程は、300℃以下、例えば25℃~300℃の温度で実施される。そのような場合、第1の反応器530で実行される酸化工程は、一般に部分酸化工程であり、前処理済みグラファイト材料518は金属硫酸塩を含む。前処理済みグラファイト材料518は、次に、前処理済みグラファイト材料が炭素塩素化工程のために加熱されるとき、炉230内でさらに酸化される。他の実施形態では、第1の反応器530における予備精製工程は、金属硫化物の完全な酸化を可能にし、金属硫化物を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させるために、300℃を超える温度で実施される。この場合、炉230内に導入された材料をそのまま炭素塩素化工程にかけることができる。
【0029】
球形化工程、予備酸化工程および炭素塩素化工程の順序は様々であってもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、グラファイト材料(例えば、天然グラファイトフレークまたは天然グラファイトフレークからの粉砕されたグラファイト)を最初に球形化工程にかけ、次いで酸化工程にかけて金属硫化物不純物を酸化物に変換し、次いで炭素塩素化工程にかけて金属酸化物不純物を塩化物に変換してもよい。他の実施形態では、グラファイト材料(例えば、天然グラファイトフレークまたは天然グラファイトフレークからの粉砕されたグラファイト)を、最初に酸化工程にかけて金属硫化物不純物を酸化物に変換し、次いで球形化工程にかけ、次いで炭素塩素化工程にかけて金属酸化物不純物を塩化物に変換してもよい。さらに他の実施形態では、グラファイト材料(例えば、天然グラファイトフレークまたは天然グラファイトフレークからの粉砕されたグラファイト)を、最初に酸化工程にかけて金属硫化物不純物を酸化物に変換し、次いで炭素塩素化工程にかけて金属酸化物不純物を塩化物に変換し、次いで、球形化工程にかけてもよい。
【0030】
本明細書に記載のグラファイト精製プロセスは、金属硫化物不純物を含むグラファイト材料に対して実施される。金属硫化物は、金属酸化物に直接酸化することができる。一般式MSの金属硫化物の場合、金属酸化物の直接形成は、一般に以下のように表すことができる。
2MS(s)+3O2(g)→2MO(s)+2SO2(g)
限定するものではないが、Mは、例えば、鉄、銅、モリブデン、亜鉛、ニッケル、マンガンおよびそれらの組み合わせであり得る。
【0031】
金属硫化物はまた、硫酸塩の形成を通じて酸化することができ、次いで、硫酸塩は、分解して酸化物を形成することができる。これらの反応は、一般に以下のように表すことができる。
MS(s)+2O2(g)→MSO4(s)
2MSO4(s)→MOx・MSO4(s)+SOy(g)
MOx・MSO4(s)→2MOx(s)+SOy(g)
【0032】
精製炉への空気の注入は、金属硫化物の金属酸化物への直接および/または間接酸化を可能にするように適切な条件下で実施されることを理解されたい。また、各特定の金属硫化物は、それ自体の酸化経路を有することができることも理解される。
【0033】
非限定的な例では、金属硫化物不純物の1つは、黄鉄鉱FeS
2であり得る。黄鉄鉱の場合、いくつかの化学反応経路が、場合によっては同時に起こって、酸化鉄(III)を得ることができる。以下の反応スキームは、例えば、J.G.DunnによるThermochimica Acta、第300巻、1997年、127~139頁(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)で説明された黄鉄鉱の酸化に見ることができる。
【化1】
【0034】
金属硫化物が金属酸化物に変化させられた後、金属酸化物は、炭素塩素化工程において塩素ガスに曝露され得る。炭素塩素化反応は、以下のように表すことができ、一般に1400℃以上の温度で起こり得る。
MxOy(s)+yC(s)+Cl2(g)→MxCl2(g)+yCO(g)
【0035】
いくつかの実施形態では、金属硫化物不純物を含むグラファイト材料の精製方法が提供される。方法は、
炉内にグラファイト材料を供給することと、
グラファイト材料を酸素の存在下で酸化条件に付して、金属硫化物不純物を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させ、それによって金属硫化物の少ないグラファイト材料を得ることと、
金属硫化物の少ないグラファイト材料が、塩素ガスの存在下で炭素塩素化を受けることで、金属酸化物を金属塩化物に変化させることと、
金属塩化物を炉から移動させ、それによって精製グラファイト材料を得ることと
を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、グラファイト材料を酸化条件に付すことは、酸素含有ガスを炉内に注入することと、炉を、金属硫化物不純物の分解温度よりも低い第1の温度に加熱することとを含む。いくつかの実施形態では、酸素含有ガスを注入することは、空気を注入することを含む。いくつかの実施形態では、酸素含有ガスは空気である。炉を第1の温度に加熱する前に、酸素含有ガスを炉に注入することができる。あるいは、炉が第1の温度に加熱されると、酸素含有ガスを炉に注入することができる。第1の温度は、金属硫化物不純物の分解温度よりも低くなるように選択される。いくつかの実施形態では、第1の温度は最大約300℃である。いくつかの実施形態では、グラファイトの分解を回避するために、第1の温度は約700℃未満である。いくつかの実施形態では、炉内に酸素含有ガスを注入することは、金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に停止される。
【0037】
いくつかの実施形態では、方法は、金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に、炉内に第1の不活性ガスを注入して炉から二酸化硫黄をパージすることをさらに含む。第1の不活性ガスは、例えば、アルゴンおよび窒素のうちの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの実施形態では、方法は、金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に、炉を第1の温度よりも高い第2の温度に加熱することをさらに含む。例えば、第2の温度は最大約1400℃であり得る。いくつかの実施形態では、炉が第2の温度まで加熱されると、第1の不活性ガスが炉に注入される。
【0038】
いくつかの実施形態では、金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受けることは、塩素ガスを炉内に注入することと、炉を第2の温度以上の第3の温度に加熱することとを含む。いくつかのシナリオでは、第3の温度は少なくとも約1400℃であり得る。いくつかのシナリオでは、第3の温度は、約3000℃以下、または約2500℃以下である。いくつかの実施形態では、第3の温度は約1400℃~約2200℃である。炭素塩素化反応により、第3の温度でガス状態の金属塩化物が生成される。
【0039】
いくつかの実施形態では、炉から金属塩化物を移動させることは、第2の不活性ガスを炉内に注入して金属塩化物をパージすることと、炉を、金属塩化物がガス状態にある温度に維持することと、炉から金属塩化物を含むオフガスを回収することとを含む。いくつかの実施形態では、方法は、炉のオフガス中の塩素ガスの濃度を監視することをさらに含む。いくつかの実施形態では、オフガスを空気で希釈してオフガスを冷却し、金属塩化物を凝縮することができる。
【0040】
以下の実施形態は、本明細書で提供される実施形態に含まれている。
1.金属硫化物不純物を含むグラファイト材料の精製方法であって、
炉内にグラファイト材料を供給することと、
グラファイト材料を酸素の存在下で酸化条件に付して、金属硫化物不純物を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させ、それによって金属硫化物の少ないグラファイト材料を得ることと、
金属硫化物の少ないグラファイト材料が、塩素ガスの存在下で炭素塩素化を受けることで、金属酸化物を金属塩化物に変化させることと、
金属塩化物を炉から移動させ、それによって精製グラファイト材料を得ることと
を含む方法。
2.グラファイト材料を酸化条件に付すことが、
酸素含有ガスを炉内に注入することと、
炉を、金属硫化物不純物の分解温度よりも低い第1の温度に加熱することと、
を含む実施形態1に記載の方法。
3.酸素含有ガスを炉内に注入することが、空気を炉内に注入することを含む、実施形態2に記載の方法。
4.酸素含有ガスを炉内に注入することが、炉が第1の温度に加熱される前および/または加熱されるときに実施される、実施形態2または3に記載の方法。
5.第1の温度が700℃以下である、実施形態2から4のいずれか1つに記載の方法。
6.第1の温度が300℃以下である、実施形態2から5のいずれか1つに記載の方法。
7.炉内に酸素含有ガスを注入することが、金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に停止される、実施形態2から6のいずれか1つに記載の方法。
8.金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に、第1の不活性ガスを炉内に注入して炉から二酸化硫黄をパージすることをさらに含む、実施形態1から7のいずれか1つに記載の方法。
9.金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に、炉を第1の温度よりも高い第2の温度に加熱することをさらに含む、実施形態1から8のいずれか1つに記載の方法。
10.第2の温度が最大約1400℃である、実施形態9に記載の方法。
11.金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受けることが、
炉内に塩素ガスを注入することと、
炉を第2の温度以上の第3の温度に加熱することと
を含む実施形態1から10のいずれかに1つに記載の方法。
12.第3の温度が少なくとも約1400℃である、実施形態11に記載の方法。
13.第3の温度が約3000℃以下である、実施形態11または12に記載の方法。
14.第3の温度が約2500℃以下である、実施形態11または12に記載の方法。
15.第3の温度が約1400℃~約2200℃である、実施形態11から14のいずれか1つに記載の方法。
16.炉から金属塩化物を移動させることが、
炉内に第2の不活性ガスを注入して金属塩化物をパージすることと、
炉を、金属塩化物がガス状態にある温度に維持することと、
炉から金属塩化物を含む出口ガスを回収することと
を含む実施形態1から15のいずれか1つに記載の方法。
17.炉からのオフガス中の塩素ガス濃度を監視することをさらに含む、実施形態16に記載の方法。
18.金属塩化物を含む出口ガスを空気で希釈し、それによって出口ガスを冷却し、金属塩化物を凝縮することをさらに含む、実施形態16または17に記載の方法。
19.炉内にグラファイト材料を供給することが、るつぼ内にグラファイト材料を供給することと、るつぼを炉内に配置することとを含む、実施形態1から18のいずれか1つに記載の方法。
20.るつぼ間の空き空間に、焼成石油コークス、冶金コークス、メソフェーズ炭素およびそれらの混合物からなる群から選択される充填剤を提供することをさらに含む、実施形態19に記載の方法。
21.グラファイト材料が、天然グラファイト、人造グラファイト、剥離グラファイト、グラフェン材料およびそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1から20のいずれか1つに記載の方法。
22.グラファイト材料が、再生グラファイト材料である、実施形態21に記載の方法。
23.グラファイト材料が球形化されたグラファイト材料であり、精製されたグラファイト材料が球形化され精製されたグラファイト材料である、実施形態1から22のいずれか1つに記載の方法。
24.グラファイト材料が角柱状のグラファイト材料であり、精製されたグラファイト材料が角柱状の精製されたグラファイト材料である、実施形態1から22のいずれか1つに記載の方法。
25.金属硫化物不純物が、硫化鉄、硫化銅、硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫化ニッケル、硫化マンガンおよびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1から24のいずれか1つに記載の方法。
26.炉が、アチソン炉、直接通電黒鉛化炉(LWG)、黒鉛炉および誘導炉からなる群から選択される、実施形態1から25のいずれか1つに記載の方法。
27.金属硫化物不純物を含むグラファイト材料の精製方法であって、
グラファイト材料を酸素の存在下で酸化条件に付して、金属硫化物不純物を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させ、それによって金属硫化物の少ないグラファイト材料を得ることと、
金属硫化物の少ないグラファイト材料が、塩素ガスの存在下で炭素塩素化を受けることで、金属酸化物を金属塩化物に変化させ、金属塩化物に富むグラファイト材料を得ることと、
金属塩化物に富むグラファイト材料から金属塩化物をパージし、それによって精製グラファイト材料を得ることと
を含む、方法。
28.グラファイト材料を酸化条件に付すことが、金属硫化物不純物の分解温度よりも低い第1の温度で実施される、実施形態27に記載の方法。
29.第1の温度が700℃以下である、実施形態28に記載の方法。
30.第1の温度が500℃以下である、実施形態28または29に記載の方法。
31.第1の温度が300℃以下である、実施形態28から30のいずれか1つに記載の方法。
32.金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に、金属硫化物の少ない材料から二酸化硫黄をパージすることをさらに含む、実施形態27から31のいずれか1つに記載の方法。
33.金属硫化物の少ない材料から二酸化硫黄をパージすることが、二酸化硫黄を第1の不活性ガスでパージすることを含む、実施形態32に記載の方法。
34.金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に、金属硫化物の少ないグラファイト材料を第1の温度以上の第2の温度に加熱することをさらに含む、実施形態27から33のいずれか1つに記載の方法。
35.第2の温度が最大約1400℃である、実施形態34に記載の方法。
36.第2の温度が約300℃~約1000℃である、実施形態34に記載の方法。
37.第2の温度が約500℃~約700℃である、実施形態34に記載の方法。
38.金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受けることが、金属硫化物の少ないグラファイト材料を第2の温度以上の第3の温度に加熱することを含む、実施形態27から37のいずれか1つに記載の方法。
39.第3の温度が少なくとも約1400℃である、実施形態38に記載の方法。
40.第3の温度が約3000℃以下である、実施形態38または39に記載の方法。
41.第3の温度が約2500℃以下である、実施形態38または39に記載の方法。
42.第3の温度が約1400℃~約2200℃である、実施形態38から41のいずれか1つに記載の方法。
43.金属塩化物に富むグラファイト材料から金属塩化物をパージすることが、
第2の不活性ガスでパージすることと、
金属塩化物がガス状態にある温度で金属塩化物に富むグラファイト材料を維持することと、
金属塩化物を含む出口ガスを回収することと
を含む、実施形態27から42のいずれか1つに記載の方法。
44.オフガス中の塩素ガス濃度を監視することをさらに含む、実施形態43に記載の方法。
45.金属塩化物を含む出口ガスを空気で希釈し、それによって出口ガスを冷却し、金属塩化物を凝縮することをさらに含む、実施形態43または44に記載の方法。
46.グラファイト材料を酸化条件に付すことと金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受けることが、単一の反応器内で実施される、実施形態27から45のいずれか1つに記載の方法。
47.グラファイト材料を酸化条件に付すことが第1の反応器内で実施され、金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受けることが第2の反応器内で実施される、実施形態27から46のいずれか1つに記載の方法。
48.金属硫化物の少ないグラファイト材料をるつぼに入れることと、るつぼを第2の反応器に入れることとをさらに含む、実施形態47に記載の方法。
49.るつぼ間の空き空間に、焼成石油コークス、冶金コークス、メソフェーズ炭素およびそれらの混合物からなる群から選択される充填剤を提供することをさらに含む、実施形態48に記載の方法。
50.グラファイト材料が、天然グラファイト、人造グラファイト、剥離グラファイト、グラフェン材料およびそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態27から49のいずれか1つに記載の方法。
51.グラファイト材料が、再生グラファイト材料である、実施形態50に記載の方法。
52.グラファイト材料が球形化されたグラファイト材料であり、精製されたグラファイト材料が球形化され精製されたグラファイト材料である、実施形態27から51のいずれか1つに記載の方法。
53.グラファイト材料が角柱状のグラファイト材料であり、精製されたグラファイト材料が角柱状の精製されたグラファイト材料である、実施形態27から51のいずれか1つに記載の方法。
54.金属硫化物不純物が、硫化鉄、硫化銅、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫化ニッケル、硫化マンガンおよびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、実施形態27から53のいずれか1つに記載の方法。
55.第1の反応器が、キルン、流動床反応器、固定床反応器および回転床反応器からなる群から選択される、実施形態27から54のいずれか1つに記載の方法。
56.第2の反応器が、アチソン炉、直接通電黒鉛化炉(LWG)、黒鉛炉および誘導炉からなる群から選択される、実施形態27から55のいずれか1つに記載の方法。
57.金属硫化物不純物を含むグラファイト材料の精製方法であって、
グラファイト材料を酸素の存在下で酸化条件に付して、金属硫化物不純物を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させ、それによって金属硫化物の少ないグラファイト材料を得ることと、
金属硫化物の少ないグラファイト材料が、塩素ガスの存在下で炭素塩素化を受けることで、金属酸化物を金属塩化物に変化させ、金属塩化物に富むグラファイト材料を得ることと、
金属塩化物に富むグラファイト材料から金属塩化物をパージし、それによって精製グラファイト材料を得ることと
を含む、方法。
58.グラファイト材料を酸化条件に付すことが、
金属硫化物不純物の分解温度よりも低い第1の温度で、金属硫化物不純物を金属硫酸塩に変化させ、前処理済みグラファイト材料を得るために実施される第1の酸化工程と、
前処理済みグラファイト材料に対して、第1の温度よりも高い第2の温度で、金属硫酸塩を金属酸化物および二酸化硫黄に変化させ、金属硫化物の少ないグラファイト材料を得るために実施される第2の酸化工程と
を含む、実施形態57に記載の方法。
59.第1の酸化工程が第1の反応器内で実施され、金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受け、金属塩化物をパージする第2の酸化工程が、第2の反応器内で実施される、実施形態58に記載の方法。
60.第1の温度が300℃以下である、実施形態58または59に記載の方法。
61.第1の温度が約25℃~約300℃である、実施形態58または59に記載の方法。
62.第2の温度が最大約1400℃である、実施形態58から61のいずれか1つに記載の方法。
63.第2の温度が約300℃~約1000℃である、実施形態58から61のいずれか1つに記載の方法。
64.第2の温度が約500℃~約700℃である、実施形態58から61のいずれか1つに記載の方法。
65.金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に、金属硫化物の少ない材料から二酸化硫黄をパージすることをさらに含む、実施形態57から64のいずれか1つに記載の方法。
66.金属硫化物の少ない材料から二酸化硫黄をパージすることが、二酸化硫黄を第1の不活性ガスでパージすることを含む、実施形態65に記載の方法。
67.第2の酸化工程が、金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受ける前に実施される、実施形態57から66のいずれか1つに記載の方法。
68.金属硫化物の少ないグラファイト材料が炭素塩素化を受けることが、金属硫化物の少ないグラファイト材料を第2の温度以上の第3の温度に加熱することを含む、実施形態57から67のいずれか1つに記載の方法。
69.第3の温度が少なくとも約1400℃である、実施形態68に記載の方法。
70.第3の温度が約3000℃以下である、実施形態68または69に記載の方法。
71.第3の温度が約2500℃以下である、実施形態68または69に記載の方法。
72.第3の温度が約1400℃~約2200℃である、実施形態68から71のいずれか1つに記載の方法。
73.金属塩化物に富むグラファイト材料から金属塩化物をパージすることが、
第2の不活性ガスでパージすることと、
金属塩化物がガス状態にある温度で金属塩化物に富むグラファイト材料を維持することと、
金属塩化物を含む出口ガスを回収することと
を含む、実施形態57から72のいずれか1つに記載の方法。
74.オフガス中の塩素ガス濃度を監視することをさらに含む、実施形態73に記載の方法。
75.金属塩化物を含む出口ガスを空気で希釈し、それによって出口ガスを冷却し、金属塩化物を凝縮することをさらに含む、実施形態73または74に記載の方法。
76.前処理済みグラファイト材料をるつぼに入れること、およびるつぼを第2の反応器に入れること、または前処理済みグラファイト材料を第2の反応器に設けられたるつぼに入れることをさらに含む、実施形態57から75のいずれか1つに記載の方法。
77.るつぼ間の空き空間に、焼成石油コークス、冶金コークス、メソフェーズ炭素およびそれらの混合物からなる群から選択される充填剤を提供することをさらに含む、実施形態76に記載の方法。
78.グラファイト材料が、天然グラファイト、人造グラファイト、剥離グラファイト、グラフェン材料およびそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態57から77のいずれか1つに記載の方法。
79.グラファイト材料が、天然グラファイトフレークであるか、または天然グラファイトフレークから得られる、実施形態78に記載の方法。
80.グラファイト材料が、再生グラファイト材料である、実施形態78に記載の方法。
81.グラファイト材料が球形化されたグラファイト材料であり、精製されたグラファイト材料が球形化され精製されたグラファイト材料である、実施形態57から80のいずれか1つに記載の方法。
82.グラファイト材料が角柱状のグラファイト材料であり、精製されたグラファイト材料が角柱状の精製されたグラファイト材料である、実施形態57から80のいずれか1つに記載の方法。
83.金属硫化物不純物が、硫化鉄、硫化銅、硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫化ニッケル、硫化マンガンおよびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、実施形態57から82のいずれか1つに記載の方法。
84.第1の反応器が、キルン、流動床反応器、固定床反応器および回転床反応器からなる群から選択される、実施形態57から83のいずれか1つに記載の方法。
85.第2の反応器が、アチソン炉、直接通電黒鉛化炉(LWG)、黒鉛炉、流動床反応器、電熱反応器、および誘導炉からなる群から選択される、実施形態57から84のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
本明細書に記載の技術は、金属硫化物不純物を含むグラファイト材料を精製するために使用することができることに留意されたい。精製は、天然もしくは人造グラファイト材料などのグラファイト材料のいくつかの種類、または使用済み電池からの再生グラファイト材料に使用することができる。いくつかの代替的な実施形態および例を本明細書で説明および例示した。本明細書に記載の実施形態は、例示のみを意図している。当業者は、個々の実施形態の特徴、ならびに構成要素の可能な組み合わせおよび変形を理解するであろう。当業者は、実施形態のいずれかが、本明細書に開示される他の実施形態と任意の組み合わせで提供され得ることをさらに理解するであろう。したがって、本例および実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、特定の実施形態を図示および説明してきたが、多くの修正が思い浮かぶ。
【国際調査報告】