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特表2024-529706毛髪片の直接針吸引による植え込み装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】毛髪片の直接針吸引による植え込み装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/10 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A61F2/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508798
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022039613
(87)【国際公開番号】W WO2023018624
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】17/398,344
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524055643
【氏名又は名称】ブジェマ-ラスマン パートナーシップ
(71)【出願人】
【識別番号】521129200
【氏名又は名称】ブジェマ パスカル
(71)【出願人】
【識別番号】524054532
【氏名又は名称】ラスマン ウィリアム アール.
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブジェマ パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ラスマン ウィリアム アール.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA22
4C097BB04
4C097DD15
(57)【要約】
患者の頭皮に毛髪片を植え込むための装置および方法。この装置では、植え込み針に乗っているロッドの断面形状は、針に対して、針の前方のチャンバ内の真空を針の内部に連通させるように構成され、それにより、毛髪片の直接針吸引による装置への毛髪片の装填を促進する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸に沿って延びるハンドピースであって、その前方端部に取り付けられたシースと、真空源が接続可能なチャネルとを有する、ハンドピースと、
前記ハンドピース内に摺動可能に取り付けられ、休止位置と動作位置との間で移動可能なピストンであって、前記ピストンが前記休止位置に付勢され、前記休止位置において、前記ピストンが前記ハンドピース内および前記ピストンの前方にチャンバを画定し、前記ハンドピースが、前記チャンバを前記ハンドピースの外側と通気するオリフィスを有する、ピストンと、
前記ピストンの前方端部に固定され、前記シースの中へと延びる中空針と、
前記ハンドピースに固定され、前記中空針の中へと延びる中央ロッドであって、前記ロッドの断面が、前記針に対して、前記チャンバ内の真空を前記針の内部に連通させるように構成される、中央ロッドと
を備え、
前記後部位置では、前記中空針は前記シースに収まっており、前記オリフィスの閉鎖が、前記チャンバ内に真空を形成して、前記ピストンが前記シースを越えて前記針を前方に延ばす動作位置に前記ピストンを移動させ、それにより前記チャンバ内の前記真空は、前記ロッドの前記断面形状を介して連通されて前記毛髪片を前記針内に吸引する、毛髪片を植え込むための装置。
【請求項2】
前記吸引された移植片は、前記オリフィスが閉じられている間に前記針によって頭皮切開部に挿入され、前記ピストンは前記シースを越えて前記針を前方に延ばし、前記移植片の挿入に続いて、前記オリフィスが開放され、前記ピストンおよび前記針を前記休止位置に後退させ、前記ロッドは植え込まれた前記移植片を前記切開部内のその挿入位置に保持する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記針は、前記毛髪片の植え込みのために頭皮に前記切開部を形成するように構成された鋭いベベル形状の先端を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記針は、前記オリフィスに対する前記ベベルの回転を可能にするように、前記ハンドピースに対する回転運動のために取り付けられている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記中央ロッドは、毛髪片の植え込みの深さを調整するように、その長手方向に沿って前記ハンドピースに調整可能に固定される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記中央ロッドは円形断面を有し、前記間隙は前記中央ロッドの前記円周の周りの環状の間隙である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記中央ロッドは、十字形、多角形、星形および中空である断面のうちの少なくとも1つからなる断面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
毛髪片を植え込むための方法であって、中空針の中へと延びる中央ロッドを含む植え込み装置の中空針の中に毛髪片を直接吸引するステップを含み、前記ロッドの断面は、真空を介して前記針内に前記毛髪片を直接吸引するように、前記針に対して、前記真空を前記針の内部に連通させるように構成される、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本開示の分野は、一般に、患者の頭皮に毛髪片を植え込むための外科的植え込み装置および外科的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
患者の頭皮への毛髪片の植え込みに備えて、植え込み部位内で生きている毛髪片が確実に成長するように、生きている移植片の損傷または外傷を防ぐために多大な注意を払わなければならない。植毛の技術の分野は、個々の毛包単位で構成された移植片の植え込みへと進歩しているので、毛包単位のサイズが非常に小さく、その結果、損傷に対する感受性が増加したことを考えれば、損傷はさらに大きな懸念となってきている。
【0003】
毛髪片の採取および個々の毛包単位への分離から、移植片の植え込み装置への装填、毛髪片の実際の植え込み、およびその後の植え込み針の移植片部位からの引き抜きまで、植え込みの成功を達成するためには多くのステップが必要である。
【0004】
特に、移植片を植え込み装置に装填する間に生じる可能性のある損傷に関して、米国特許第7,144,406号「植え込み装置」は、針の側部開口によって針に導入された真空を使用して、植え込み装置の針に直接毛髪片を吸引することを記載している。しかしながら、このような装置では、移植片の一部が低圧側ポートに押し出されることによって移植片が損傷する可能性があり、その結果、装填された移植片の一部が側部ポートに詰まって、植え込み中に針を引き抜くことによって横方向に損傷する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,144,406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、特に荷重ステップ中に移植片が損傷する可能性を低減する植え込み装置を記載することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の一実施形態によれば、毛髪片を植え込むための装置は、長手方向軸に沿って延びるハンドピースを含み、ハンドピースは、その前方端部に取り付けられたシースと、真空源が接続可能なチャネルとを有する。ピストンが、ハンドピース内に摺動可能に取り付けられ、休止位置と動作位置との間で移動可能であり、ピストンは休止位置に付勢され、休止位置において、ピストンはハンドピース内およびピストンの前方にチャンバを画定し、ハンドピースは、チャンバをハンドピースの外側に通気するオリフィスを有する。中空針が、ピストンの前方端部に固定され、シースの中へと延びている。中央ロッドが、ハンドピースに固定され、中空針の中へと延びており、ロッドの断面は、針に対して、チャンバ内の真空を針の内部に連通させるように構成される。後部位置では、中空針はシースに収まっており、オリフィスの閉鎖がチャンバ内に真空を形成して、ピストンがシースを越えて針を前方に延ばす動作位置にピストンを移動させることで、チャンバ内の真空は、ロッドの断面形状を介して連通されて毛髪片を針内に吸引する。
【0008】
本明細書に記載の特定の態様によれば、吸引された移植片は、オリフィスが閉じられ、ピストンがシースを越えて針を前方に延ばしている間に、針によって頭皮の切開部に挿入される。移植片の挿入に続いて、オリフィスが開放され、ピストンおよび針が休止位置に後退し、ロッドが植え込まれた移植片を切開部の挿入位置に保持する。針は、毛髪片の植え込みのために頭皮に切開部を形成するように構成された鋭いベベル形状の先端を備えてよい。針は、オリフィスに対するベベルの回転を可能にするように、ハンドピースに対する回転運動のために設置されてもよい。
【0009】
本明細書に記載の特定の態様によれば、中央ロッドは、毛髪片の植え込みの深さを調整するように、その長手方向に沿ってハンドピースに調整可能に固定される。
【0010】
本明細書に記載の特定の態様によれば、中央ロッドは円形断面を有することができ、その間隙は中央ロッドの円周の周りの環状の間隙である。中央ロッドは、十字形、多角形、星形および中空の断面、またはそのような断面の組み合わせのうちの少なくとも1つからなる断面を有してよい。
【0011】
さらなる目的および利点は、説明、図面、および実施例の考察から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】針が器具の本体の内部に引き込まれた休止位置にある、本明細書の説明に係る装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
【0013】
図2図1の器具の縦断面図である。
【0014】
図3図2の部分Aの詳細図である。
【0015】
図4図2の部分Bの詳細図である。
【0016】
図5図3の拡大断面図E-Eである。
【0017】
図6A】針が器具の前部に延在する状態で動作中の図1の装置の斜視図である。
【0018】
図6B図6Aの器具の縦断面図である。
【0019】
図7図6Bの部分Aの拡大詳細図である。
【0020】
図8図6Bの部分Kの拡大詳細図である。
【0021】
図9図1の器具の異なる部分を示す器具の分解組み立て図である。
【0022】
図10A】本明細書の説明による装置のロッドの形状の斜視図および正面図である。
図10B】本明細書の説明による装置のロッドの形状の斜視図および正面図である。
図10C】本明細書の説明による装置のロッドの形状の斜視図および正面図である。
図10D】本明細書の説明による装置のロッドの形状の斜視図および正面図である。
【0023】
図10E】本明細書の説明による装置のピストンへの針の固定の第2の代替形態を示す斜視図である。
【0024】
図11】針の軸方向の回転を目的とする押しボタンを含む、休止位置における本明細書の説明に係る装置の第2の実施形態を示す斜視図である。
【0025】
図12図11の器具の縦断面図である。
【0026】
図13】押しボタンと針との機械的関係を示す、図12の拡大断面図B-Bである。
【0027】
図14図12の器具に適合された針の斜視図である。
【0028】
図15図12のピストンに固定された押しボタンと針との機械的関係を示す斜視図である。
【0029】
図16】吸引による針への移植片の装填のための位置において針が器具の前部に延在する状態で動作中の図11の装置の斜視図である。
【0030】
図17図16の器具の縦断面図である。
【0031】
図18図17の拡大断面図B-Bである。
【0032】
図19】皮膚への移植片の挿入のための位置において針が器具の前部に延在する状態で動作中の図11の装置の斜視図である。
【0033】
図20図19の器具の縦断面図である。
【0034】
図21図20の拡大断面図B-Bである。
【0035】
図22】先行技術または従来技術における針の内側に装填された移植片の部分的な詳細な拡大縦断面図である。
【0036】
図23】本明細書の記載による装置の針の内側に装填された移植片の部分的な詳細な拡大縦断面図である。
【0037】
図24A図1図8に記載された本明細書の記載による装置の、移植片を針の内部に装填し、移植片を皮膚内に配置するステップを示す詳細な断面図である。
図24B図1図8に記載された本明細書の記載による装置の、移植片を針の内部に装填し、移植片を皮膚内に配置するステップを示す詳細な断面図である。
図24C図1図8に記載された本明細書の記載による装置の、移植片を針の内部に装填し、移植片を皮膚内に配置するステップを示す詳細な断面図である。
図24D図1図8に記載された本明細書の記載による装置の、移植片を針の内部に装填し、移植片を皮膚内に配置するステップを示す詳細な断面図である。
図24E図1図8に記載された本明細書の記載による装置の、移植片を針の内部に装填し、移植片を皮膚内に配置するステップを示す詳細な断面図である。
図24F図1図8に記載された本明細書の記載による装置の、移植片を針の内部に装填し、移植片を皮膚内に配置するステップを示す詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
第1の実施形態
図1図3は、本明細書の記載による移植片植え込み装置1の、器具の前方に位置するシース内で植え込み針が後退位置にある休止位置における図である。
【0039】
図1図5で説明したように、植え込み装置は、円筒形の管状形状2の器具またはハンドピース1で構成され、その内部でピストン17が2つの位置、すなわち休止位置または後部位置と、前方動作位置または前部位置との間で動かされる。ハンドピースは、その後端がプラグ5によって閉じられ、その前端が円筒形から円錐形になるプラグ4によって閉じられる。ピストン17、シリンダ2の壁7、およびプラグ4の間の空間は、チャンバ18を画定する。後部プラグ5には、偏心排気孔6と、ハンドピース1の全長にわたって軸方向に延在する非常に小さな直径の円筒形状の真っ直ぐな中央ロッド110によって前方に延ばされた調整ねじ112を確実に保持するのに適したねじ山付きの軸方向の中央孔6’とが全長にわたって穿孔されている。ピストン17には、中央ロッド110を密封式に自由に摺動させるのに適した中央孔177が貫通して穿孔されている。ピストン17は、後部キャップ5と接触する後部位置と止め具17’に当接する前部位置との間でシリンダ2の内部で動かすことができる。
【0040】
ピストン17は、円筒形のより小さい外径の延長部171によって前方に延ばされ、その端部には、中空円筒形の直線針13を圧締めするための心棒またはチャック175のタイプの軸方向固定装置が配置される。ピストンの延長部171は、後述するように、中央ロッド110が完全に自由に、かつ接触することなく通過することができるように、チャンバ18内に開放された空間または凹部183を有する。同様に、中空針13は、その全長にわたって、ロッド110の直径よりも大きい一定の内径を有し、それにより、前記ロッドは、以下に記載されるように、接触することなく完全に自由に通過することができる。
【0041】
圧縮戻しばね20が、ピストン17の延長部171の周りに配置されている。ばね20は、環状の固定された肩部152に載置され、器具が静止しているときにピストン17をプラグ5と接触する後部休止位置に保つ。
【0042】
ハンドピース1は、外部の周囲空気をチャンバ18と連通させることを可能にする排気オリフィス8によって、プラグ4の近くのハンドピース1の壁7の前部および上部が穿刺される。ハンドピースはまた、その下部および中間部に剛性の管またはノズル9を有し、チャンバ8の内部に含まれる空気を可撓性管(図示せず)によって外部真空源に連通させることを可能にする。
【0043】
オリフィス8は、ハンドピースの内側に空気の減圧部を形成し、図6Bで後述するようにチャンバ18の内側でピストン17を前方に移動させるために、操作者の手の人差し指(図示せず)によって塞がれるようになっている。
【0044】
円錐形プラグ4は、外側に部分的にねじ込まれた管状シース12を適合させるのに適した部分的にねじ山付きの孔10を用いて、その全長にわたってその中心で軸方向に穿孔される。シース12は、その中心に、針13の外径と同じ直径の孔で貫通して穿孔されることで、前記針は、その中で密封式に摺動することができる。シース12は、後述するように皮膚に当接するように意図された自由端121を有する。
【0045】
図3および図4は、器具1の後退位置または休止位置における中空針13の前端および後端のそれぞれの位置決めを示す、図2の詳細図AおよびBである。
【0046】
図3において、面取り成形された針13の前端131が、前記シースの自由端121から後退したシース12の内側に配置される。長さ50ミリメートルにわたって外径が約1ミリメートルおよび内径が0.8ミリメートルであり得る直線および円筒形状の中空針13は、シース12と気密式に接触して軸方向に自由に移動するように構成される。この休止位置では、針13の端部131もまた、中央ロッド110の自由端部111に対して後退されている。
【0047】
図3のE-Eに沿った拡大断面図である図5では、ロッド110が環状の空き空間184によって針13の内壁から隔てられていることが分かる。ロッド110と針13との間に位置し、針13の全長にわたって延在するこの空き空間184は、器具の内部に含まれる空気がチャンバ18内で針13の前端131まで自由に連通することを可能にする。
【0048】
図4に例示されるように、針13の後部132は、圧締め心棒175によって、中央の軸方向チャネル173内のピストン17の延長部171にその周囲でしっかりと固定され、必要に応じて手術中に容易かつ迅速に針13を交換することを可能にする。ロッド110は、針13の内側に配置され、上記で指摘したように空間184によって針から隔てられていることが分かる。
【0049】
図6A図6B図7および図8は、ピストン17が器具内の前方位置にあり、針13がシース12の外側から突出している動作位置にある、本明細書の説明による植え込み装置の図である。
【0050】
植え込み装置は、可撓性パイプによってチャネル9を介して連続的に動作する真空源(例えば、約800mバールの負圧(図示せず))に接続されており、「操作者(図示せず)」の人差し指によるオリフィス8の閉塞は、チャンバ18内の突然の減圧を引き起こし、器具内で、止め具17’に対するピストン17の前方に向かうほぼ瞬間的な移動を引き起こし、その結果、同等の距離(例えば、約10ミリメートル)にわたるシース12に対する針13の前方に向かう移動を引き起こす。
【0051】
この動作位置では、図7に例示されるように、中空針13は、距離「l1」にわたってシース12の端部121を超えて器具1前方で部分的に外部に突出しており、それにより、針13の面取りされた開口端133とロッド110の端部111との間の距離「l2」にわたって移植片(図示せず)を完全に収容することが可能な円筒形の空間185が針の内側に形成される。距離「l1」は、皮膚に導入される針の長さに対応することに留意されたい。この長さ「l1」は、上述したように、円筒形から円錐形になるプラグ4に対してシース12をねじ込む、またはねじを緩めることによって、動作中の皮膚の可変の厚さに応じて調整可能である。また、長さ「l2」は、ロッド110の端部111がシース12の端部121に対してわずかに引っ込めることができるように、または同じレベルで、もしくはシース12の端部121に対してさらにわずかに前方にあり得るように、調整ねじ112を後部プラグ5にねじ込む、またはねじを緩めることによって手術中に調整することができ、その結果、シース12内の針13の引き抜き時に、操作者が所望するように、移植片が皮膚(図示せず)のより深く、またはより浅く配置されることに留意されたい。
【0052】
この動作位置では、針13の開口端133から円筒形空間185内、環状空間184内、チャネル173内、空間183内、およびチャンバ18内をそれぞれ、真空源(図示せず)に接続された剛性チューブ9まで循環させることによって、器具1内に外気の連続的な流れが生成されることに留意されたい。したがって、この動作位置では、「吸引する」状態になっている針13は、皮膚に植え込むために例えば湿ったガーゼまたは手の甲(図示せず)の上に予め配置された移植片を空間185の内側に吸い込み、完全に装填する準備ができている。
【0053】
医療行為は、例えば、直径が約0.6ミリメートルのロッド110と、内径が約0.8ミリメートルで長さが50ミリメートルの針13との間の環状の間隙空間184が、空間185内に十分に大きな吸引力を伝達するのに十分な大きさであり、それにより、面取りされた端部133を直径が約0.8から1ミリメートルの移植片(図示せず)と接触させることが、ロッド110の端部111の接触時に空間185内移植片を容易に吸い込み、収容することができることを示している。端部111と接触している移植片の部分は、移植片に及ぼされる円形の、均質で均一な同心の吸引力に起因して、空間184内でいかなる変形も非対称の陥入も受けないことに留意することも興味深い。したがって、この機構は、移植片がロッド110と針13との間でくっついたり損傷したりすることを防止する。
【0054】
図8は、本明細書の説明の一実施形態による植え込み器具のシリンダ2に対するピストン17の軸方向の回転を防止する手段を詳述する図6Bの詳細Kの拡大図である。円筒形状のピストンの延長部171は、その上部に、相補的な輪郭開口部を有する、器具の中間部に配置された環状の固定された肩部152と接触するようになる平坦部または平坦な表面174を有することで、延長部171は、回転する可能性なしに、器具の内部で軸方向の並進で自由に移動することができる。したがって、ピストンを回転からロックすることにより、針13の軸方向の回転が防止され、その結果、そのベベル133は、植え込み器具に対して常に同じ所定の平面内に配置され得る。実際に、医療行為は、針13がそのベベルが依然として皮膚に面した状態で皮膚表面に対して斜めに皮膚に導入されたときに、移植片が皮膚の中により良好に安定化されたことを示している。これにより、操作者は、皮膚に面するベベルを位置決めするために器具を頻繁に回転させる必要があり、これは時間の浪費であることが回避される。環状の固定された肩部152は、ばね20の前方支持点としても機能する。
【0055】
図8はまた、圧締め心棒175によってピストンの延長部171に針13を固定する第1の方法を示す。実際、このタイプの固定は、適切なキー(図示せず)を使用して延長部171のねじ付き端部172において心棒175をねじ込む、およびねじを緩めることによって、中央チャネル173に配置された植え込み針13の介入中の迅速な交換を可能にする。
【0056】
図9は、上述した本発明の一実施形態による植え込み装置の様々な構成要素、より詳細には、ねじ山付き端部172における圧締め心棒175を利用して針13をピストン17に固定するための手段を示す分解組み立て図である。
【0057】
図10Aは、ロッドと針との間の自由空間を維持する目的で、針の内径よりも小さい直径を有する、図1図9に記載の針の内側に適合された円筒形ロッドの形状を示す。図10Bは、ロッドの前部で真空力を増加させるために中央孔を追加することができる円筒形ロッド110bの変形形状を示す。図10Cは、外形が十字形のロッド110cを示す。図10Dは、外形が多角形であるロッドを示す。ロッドによって針の内側に閉じ込められた移植片に及ぼされる吸引力が均質かつ対称的である限り、本明細書の説明の範囲から逸脱することなく、ロッドの他の形状を想像することができる。
【0058】
図10Eは、本明細書の説明の別の実施形態によるピストン17への植え込み針の迅速な取り付けの第2のモードを示す斜視図であり、そこでは、中空の円筒形針213は、その後部に、弾性変形を伴う、ピストン17の延長部171の円筒形端部200に配置された同じ寸法の2つの爪201に軸方向相互にロックする、またはスナップ締結によって嵌合するのに適した2つの対向する長手方向溝203を有する円筒形、または冠状の締め具202の手段を有する。一旦、爪201の中に導入され、その中に固定された溝203は、前述のように皮膚表面に面する同じ平面内に前記針の面取りされた端部を位置決めするように、ピストン17に対する針213の軸方向回転をロックすることを可能にする。そのような締結装置は、強制的な引き抜き、およびピストンのチャネル173に強制的に再導入された新しい針によるその交換によって、動作中にピストンから針を迅速に取り外すことができるという利点を有する。
【0059】
他の実施形態
図11図20は、操作者の指によって作動される押しボタンとしての機械的手段をさらに備え、移植片を吸引する準備ができた動作位置にあるときに、植え込み針の制御された軸方向の回転を可能にすることを特徴とする、本明細書の記載による植え込み装置の第2の実施形態を示す。実際、医療行為は、針のベベルが操作者に面して配向されているとき、針内で、例えば手の甲またはガーゼ上に、既に一列に整列されている、または配置されている移植片を迅速に吸引することがより容易であることを示している。
【0060】
移植片が針内にひとたび装填されると、そのような装置のおかげで、操作者は、以下に説明するように手術手順の繰り返しを考慮に入れて、筋疲労の原因となり得る手首の回転運動を実行する必要なく、皮膚に面する針のベベルをより容易に、かつより迅速に再配置することができる。
【0061】
図11図13は、本明細書の記載による移植片植え込み装置301の、植え込み針が、器具の前方に位置するシース12内への後退位置にある休止位置における図である。
【0062】
これらの図において、移植片植え込み装置301は、図1で説明したように、オリフィス8の代わりに器具の前方部に配置された押しボタン302を追加することにより、上述した植え込み装置1の全ての機械的特性および機能的特性を有することが分かる。押しボタン302は、植え込み器具301に対してそれぞれ外側および内側の2つの部分から構成される。外側部分は円筒形の管状であり、ある種の中空ピストン303は、外気を器具301の内部に含まれる空気と連通させる排気口308によって貫通するように穿孔されている。中空ピストン303は、植え込み装置301の壁307に形成された円筒形の穴304内の2つの高位置と低位置との間で気密式に移動するように構成される。
【0063】
押しボタンの内側部分は、壁307の内部曲率に適合するのに適した正方形および湾曲形状の拡大部またはフランジ305を有する。フランジ305は、ピストン17の軸内に配置された中空針313の軸方向ギアまたはピニオン314に適合し、垂直に噛み合うようになるのに適したラックタイプ315の横方向延長部を有する。中空の円筒形針313は、その後部に、ピストン17の端部200にわずかな隙間を伴って嵌合することによって嵌合するようになるように適合された円筒形状またはクラウン317の迅速結合手段を有し、これに対して2つの弾性爪201によって保持される。そのような締結手段は、ピストン17に対するその軸の周りの自由な回転の可能性を保持しながら、針313が植え込み装置301内でピストン17と並進移動することを可能にする。押しボタンのオリフィス308は、先に記載したように器具の前方に針313を動かずために操作者の人差し指(図示せず)によって塞がれるように意図されており、これについては後により詳細に説明する。
【0064】
図14および図15において、面取りされた前端部333を有する中空の円筒形針313は、その中間部に、針が前記押しボタンに対して軸方向に並進移動で動かされたとき、噛み合いに適した距離にわたって延在し、押しボタン302のラック315と接触したままである小円鋸歯状部分またはピニオン314を有することが分かる。針313は、その後部に、ピストン17の端部200とわずかな隙間で相互にロックすることによって嵌合するのに適したクラウン317を有し、ピストンに対して、2つの弾性爪201によって保持されている。
【0065】
ラック315に対する針313のこのような位置決め構成は、操作者の右手に保持された器具の位置に対して、特に押しボタン302の軸に対して、所定の初期開始面において右利きの操作者(図示せず)に面するベベル333を容易に配向することを可能にする。
【0066】
図16図20は、ピストン17が器具内の前部位置にあり、シース12の外側に針313が突出している動作位置にある、本明細書の記載による移植片植え込み装置301の図である。
【0067】
図16図17図18は、この動作位置の最初のステップを例示する。器具301は、そのチャネル9によって真空源(図示せず)に接続されており、操作者の人差し指(図示せず)によるオリフィス308の閉塞は、チャンバ18内での突然の押下を引き起こし、器具内でピストン17のほぼ瞬間的な前方への変位を引き起こし、結果として同等の距離(例えば、約10ミリメートル)にわたるシース12に対する針313の前方への変位を引き起こす。この中間動作位置では、ベベル333が依然として操作者の方に配向されるように、針313は、針313のピニオン314に係合した上方位置に配置されたラック315によって回転をロックされたままである。さらに、この位置では、吸引モードにあるベベル333は、針313の内部に直ちに吸い込まれる操作者の例えば左手の後ろに配置された移植片(図示せず)と接触してより容易に配置される。
【0068】
図19図20、および図21は、押しボタン302に対する操作者の指のより強い圧力が、器具の内部で例えば2ミリメートルだけその変位を引き起こし、その結果、下方位置でのラック315の変位、ならびにベベル333を皮膚に直接向けることができるように針313のピニオン314の軸方向の回転を引き起こす動作位置の第2のステップを示す。この位置では、次に針が皮膚(図示せず)に導入され、押しボタン302上の操作者の指を離すことにより、ボタンは、ばね306によって押された高い位置に戻り、また、オリフィス308の開放に続いて真空を中断することによって器具の内部で針313を急速に引き抜き、図6Bで上述した同じ原理に従って皮膚内に完全に位置決めされた移植片(図示せず)を配置したままにする。
【0069】
次いで、休止位置にある器具は、同じステップおよび同じ原理などに従って次の移植片を吸引する準備が整う。
【0070】
針の制御された軸方向の角度付きの回転の機械的手段を備えるそのような移植片植え込み装置は、特にそれが単一の手術セッションで数千回再現される繰り返し動作の問題であるため、大幅な時間節約を可能にするだけでなく、操作者の手首の筋肉軽減も可能にする。
【0071】
図11図20では、最初に対面し、次いで下方に配向された針のベベルを提示するために、90°の時計回りの回転で4分の1回転の針の角度付き回転を有する右利きの操作者について、移植片植え込み装置301の動作原理が説明されている。
【0072】
ラック315が反対側でピニオン314に係合することができ、最初にベベル333を操作者に向け、次いで下に向けるために針を反時計回りに回転させることができるように、器具に対する押しボタンの位置を反転させることによって、左利きの操作者が移植片植え込み装置を使用することも考えられている。
【0073】
針のベベルの位置を頭部の受け入れ皮膚領域の可変曲率に適合させるために、押しボタンをより大きい、またはより小さいレベルまで押すことによって、針の回転の程度を低減または増加させることも可能である。
【0074】
前述の米国特許第7,144,406号明細書の先行技術を説明する図22では、移植片400は、真空源に接続された吸引空間184’と連通する針の壁内に位置する横方向オリフィス62を介して針13の内部に吸い込まれることが分かる。移植片400は、ロッド110によって針の内部に閉じ込められたままである。そのような構成は、一方では移植片を傷つけ、他方ではロッド110に対する針13の引き抜きに対する機械的障害を構成する可能性のある、オリフィス62を介した移植片401の一部の横方向の吸い込みを引き起こすという欠点を有する。
【0075】
対照的に、図23では、本明細書の説明によれば、移植片400は、針13の内部に吸い込まれ、ロッド110と針13との間に位置する吸引空間184によってロッド110と接触した状態で閉じ込められたままであることが分かる。そのような構成が移植片400の変形401を引き起こし得る場合、この変形は、一方では無視することができ、ロッド110と接触した状態で完全に対称的であり、他方ではロッド110に対する針13の引き抜きに対する機械的障害を形成しない。
【0076】
操作
図24A図24Fは、図1図8に記載された本明細書の記載による装置の針の内部に移植片を装填する異なる詳細なステップおよび皮膚内への移植片配置を示す。
【0077】
本明細書の記載による装置1は、可撓性配管によって真空源、例えば800mバールの十分な真空力の連続運転電動ポンプに接続される。器具は、操作者によってペンのように保持される。休止位置では、器具の前部のオリフィス8は開いたままであり、植え込み針13はシース12内の後退位置に留まっている。操作者の人差し指によってオリフィス8を塞ぐと、チャンバ18の内部に急激な空気の真空が誘発され、器具の内部のピストン17と、器具の前部のシース12の先端121の外側に延在する針13の両方の瞬間的が前方への変位を引き起こす。
【0078】
図24A図24Bに示すように、吸引性になる針の面取りされた開口先端133は、例えば左手の甲または湿ったガーゼの上に並べられた、予め採集された移植片400の表皮部分と接触させられ、したがって、針13の空間185内部の移植片を完全に瞬間的に装填する効果を有する。オリフィス8は依然として人差し指によって塞がれたままであるため、器具は皮膚500の受け入れ領域まで移動され、図24C図24Dに示すように、シース12の先端121が皮膚表面に接触するまで針13が皮膚に完全に挿入される。その位置では、人差し指を持ち上げることによってオリフィス8を開放することで、器具の内部の真空を中断し、休止位置でのピストン17の後方への変位のために、移植片400が針13から同時に解放され、シース12の内部で針13が瞬間的に後退し、したがって、図24Eに示すように、移植片400を、ロッド111の先端によって依然として保持された状態を維持して皮膚内に完璧に位置決めされたままにする。次いで、図24Fに示すように、器具を皮膚表面から取り出し、次の移植片を同じように取り上げて配置する準備をする。
【0079】
本明細書の記載によるこのような装置の利点の中でも、わずかな練習で、1時間未満で2000本を超える優れた品質の移植片を皮膚に直接植え込むことが可能になることは容易に理解される。
【0080】
本明細書で例示および説明される実施形態は、当業者に本明細書の開示を作成および使用する方法を教示することのみを意図している。本明細書の開示の実施形態を説明する際に、明確にするために特定の用語が使用される。しかしながら、本明細書の開示は、そのように選択された特定の専門用語に限定されることは意図されていない。本明細書の開示の上述の実施形態は、上記の教示に照らして当業者によって理解されるように、本明細書の開示から逸脱することなく修正または変更することができる。したがって、特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内で、本明細書の開示は、具体的に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図24C
図24D
図24E
図24F
【国際調査報告】