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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】乳製品様組成物および関連方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/20 20060101AFI20240801BHJP
   A23C 20/00 20060101ALI20240801BHJP
   A23C 11/10 20210101ALI20240801BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20240801BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
A23J3/20
A23C20/00
A23C11/10
A23C9/123
C07K14/47 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509043
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 US2022040658
(87)【国際公開番号】W WO2023023195
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/234,193
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/829,951
(32)【優先日】2022-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521478278
【氏名又は名称】ニュー カルチャー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラッドマン, インジャ
(72)【発明者】
【氏名】パンフェアー, ディルラージコール
(72)【発明者】
【氏名】チェン, メン ユアン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA01
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA01
(57)【要約】
乳製品様類似物組成物、および例えばアルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントを含むカゼインタンパク質の組換え単一バリアントを使用してそれを作製する方法が本明細書に提供される。上記組成物は、消費可能な組成物であり得、組換え単一バリアントは、接着性、伸張性、食感、口当たり、融解、褐変、硬度、クリーミーさ、食味、匂いおよび柔軟性からなる群から選択される少なくとも1種の乳製品様特性を消費可能な組成物に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントを含む消費可能な組成物であって、前記単一バリアントが、接着性、伸張性、食感、口当たり、融解、褐変、硬度、クリーミーさ、食味、匂いおよび柔軟性からなる群から選択される少なくとも1種の乳製品様特性を前記消費可能な組成物に提供し、前記組換え単一バリアントが、動物由来のカゼインではなく、カゼインミセルから物理的に解離しておらず、前記乳製品様特性が、前記組換え単一バリアントカゼインタンパク質から実質的に提供され、前記消費可能な組成物が、前記乳製品様特性のうち少なくとも1種において乳製品由来の消費可能な組成物に匹敵する、消費可能な組成物。
【請求項2】
接着性、伸張性、堅固さ、粘稠性、粘着性、噛み応え、回復力、弾力性、口当たり、融解、硬度、クリーミーさおよび柔軟性からなる群から選択される1種または複数の乳製品様特性を含む、請求項1に記載の消費可能な組成物。
【請求項3】
前記消費可能な組成物のカゼイン含有量が、前記アルファカゼインタンパク質の前記組換え単一バリアントを実質的に含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の消費可能な組成物。
【請求項4】
前記消費可能な組成物のカゼイン含有量が、前記アルファカゼインタンパク質の前記組換え単一バリアントのみを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の消費可能な組成物。
【請求項5】
前記アルファカゼインタンパク質の前記組換え単一バリアントが、前記消費可能な組成物中のカゼイン含有量の少なくとも95%または少なくとも97%を構成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の消費可能な組成物。
【請求項6】
前記アルファカゼインタンパク質の前記組換え単一バリアントが、前記消費可能な組成物中のカゼイン含有量の少なくとも99%を構成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の消費可能な組成物。
【請求項7】
前記アルファカゼインタンパク質の前記組換え単一バリアント以外のいかなる追加のカゼインも欠如する、請求項1~6のいずれか一項に記載の消費可能な組成物。
【請求項8】
前記アルファカゼインタンパク質の前記単一バリアントが、カゼイン塩に由来しない、請求項1~7のいずれか一項に記載の消費可能な組成物。
【請求項9】
いかなる動物に生産されたタンパク質も含まない、請求項1~8のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【請求項10】
いかなる他の動物由来の乳製品タンパク質も欠如する、請求項1~9のいずれか一項に記載の消費可能な組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の乳製品様特性が、ミルク由来の消費可能な組成物に匹敵するかまたはそれと比較して改善され、前記ミルク由来の消費可能な組成物が、前記アルファカゼインタンパク質の前記組換え単一バリアントの代わりにまたはそれに加えて、ミルク、1種または複数のミルク由来のタンパク質またはミルク由来の成分を含むことを除いて、前記ミルク由来の消費可能な組成物が、全成分において前記消費可能な組成物と同一である、請求項1~10のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の乳製品様特性が、ミセルカゼイン組成物に匹敵するかまたはそれと比較して改善され、前記ミセルカゼイン組成物が、前記アルファカゼインタンパク質の前記組換え単一バリアントの代わりにまたはそれに加えて、ミルクから単離されたミセルカゼインを含むことを除いて、前記ミセルカゼイン組成物が、全成分において前記消費可能な組成物と同一である、請求項1~11のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【請求項13】
前記組換え単一バリアントが、少なくとも1個の非ネイティブ翻訳後修飾を含むアルファカゼインタンパク質である、請求項1~12のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【請求項14】
前記アルファカゼインタンパク質の前記組換え単一バリアントが、少なくとも1個のネイティブ翻訳後修飾をさらに含む、請求項13に記載の消費可能な組成物。
【請求項15】
前記組換え単一バリアントが、ネイティブアルファカゼインタンパク質の1個または複数の翻訳後修飾を欠如するアルファカゼインタンパク質である、請求項1~14のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【請求項16】
前記アルファカゼインタンパク質の前記単一バリアントが、少なくとも1個の非ネイティブ翻訳後修飾をさらに含む、請求項15に記載の消費可能な組成物。
【請求項17】
前記アルファカゼインタンパク質の前記単一バリアントが、翻訳後修飾されていない、請求項16に記載の消費可能な組成物。
【請求項18】
前記アルファカゼインタンパク質の前記単一バリアントが、リン酸化されていない、請求項17に記載の消費可能な組成物。
【請求項19】
前記アルファカゼインタンパク質の前記単一バリアントが、アルファ-s1カゼインタンパク質である、請求項1~18のいずれか一項に記載の消費可能な組成物。
【請求項20】
前記アルファカゼインタンパク質の前記単一バリアントが、アルファ-s2カゼインタンパク質である、請求項1~19のいずれか一項に記載の消費可能な組成物。
【請求項21】
全長アルファカゼインタンパク質を含む、請求項1~20のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【請求項22】
前記アルファカゼインタンパク質の前記単一バリアントが、配列番号2、3、14、15、26、27、29、30、32、33、35、36、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55または56のうちいずれか1種を含む、請求項1~21のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【請求項23】
前記アルファカゼインタンパク質の前記単一バリアントが、ウシ、ヤギもしくはヒツジアルファカゼインタンパク質のアミノ酸配列、または配列番号2、3、14、15、26、27、29、30、32、33、35、36、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55もしくは56のうちいずれか1種、または配列番号2、3、14、15、26、27、29、30、32、33、35、36、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55もしくは56のうちいずれか1種に対して少なくとも70%、80%、85%もしくは90%同一性を有する配列を含む、請求項1~22のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【請求項24】
前記アルファカゼインタンパク質の前記単一バリアントが、N末端に1個または複数の非ネイティブアミノ酸を含む、請求項1~23のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【請求項25】
前記アルファカゼインタンパク質の前記単一バリアントが、N末端位置に非ネイティブメチオニンを含む、請求項24に記載の消費可能な組成物。
【請求項26】
前記アルファカゼインタンパク質の前記単一バリアントが、カゼインミセルに由来しない、請求項1~25のいずれか一項に記載の消費可能な組成物。
【請求項27】
請求項1~26に記載の消費可能な組成物のいずれかを含む乳業製品類似物であって、チーズ類似物、ヨーグルト類似物、クリーム類似物およびアイスクリーム類似物からなる群から選択される乳業製品類似物。
【請求項28】
前記消費可能な組成物が、前記組換え単一バリアントアルファカゼインを含む、請求項27に記載の乳業製品類似物。
【請求項29】
非動物性供給源由来の脂肪または油をさらに含む、請求項27または28に記載の乳業製品類似物。
【請求項30】
いかなる動物由来の乳製品タンパク質も欠如する、請求項27~29のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項31】
いかなる他のカゼインタンパク質も欠如する、請求項27~30のいずれかに記載の乳業製品類似物。
【請求項32】
前記アルファカゼインタンパク質の前記組換え単一バリアントが、前記乳業製品類似物内にミセル形態で含まれていない、請求項27~31のいずれかに記載の乳業製品類似物。
【請求項33】
(a)植物由来の油、(b)植物由来のデンプン、(c)糖および(d)塩のうち1種または複数をさらに含む、請求項27~32のいずれかに記載の乳業製品類似物。
【請求項34】
チーズ類似物である、請求項27~33のいずれかに記載の乳業製品類似物。
【請求項35】
前記チーズ類似物が、モッツァレラ類似物、チェダー類似物またはパルメザン類似物である、請求項34に記載の乳業製品類似物。
【請求項36】
前記チーズ類似物が、低水分チーズ類似物である、請求項34または請求項35に記載の乳業製品類似物。
【請求項37】
前記チーズ類似物が、ソフトチーズ類似物である、請求項34または請求項35に記載の乳業製品類似物。
【請求項38】
前記チーズ類似物が、ハードチーズ類似物である、請求項34または請求項35に記載の乳業製品類似物。
【請求項39】
前記チーズ類似物が、モッツァレラ類似物であり、前記カゼインタンパク質の前記単一バリアントが、アルファカゼインである、請求項34~38のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項40】
前記アルファカゼインが、アルファS1カゼインである、請求項34~39のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項41】
前記アルファS1カゼインが、ウシアルファS1カゼインである、請求項40に記載の乳業製品類似物。
【請求項42】
前記アルファS1カゼインが、全長カゼインである、請求項40または41に記載の乳業製品類似物。
【請求項43】
前記アルファカゼインが、アルファS2カゼインである、請求項34~39のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項44】
前記アルファS2カゼインが、ウシアルファS2カゼインである、請求項43に記載の乳業製品類似物。
【請求項45】
前記アルファS2カゼインが、全長カゼインである、請求項44に記載の乳業製品類似物。
【請求項46】
前記チーズ類似物の伸張性が、乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物の伸張性に匹敵するかまたはそれと比べて改善されている、請求項34~45のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項47】
前記チーズ類似物が、乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物の融解面積/時間と比較して、匹敵するまたはより大きい融解面積/時間を有する、請求項34~46のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項48】
前記チーズ類似物の伸展性が、乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物の伸展性に匹敵するかまたはそれと比べて改善されている、請求項34~47のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項49】
前記チーズ類似物の食感が、乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物の食感に匹敵するかまたはそれと比べて改善されている、請求項34~48のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項50】
前記チーズ類似物の接着性が、乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物の接着性と比べて低減されている、請求項34~49のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項51】
前記乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物が、ミセルカゼインを含む、請求項34~50のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項52】
前記チーズ類似物の伸張性が、植物由来のチーズ類似物の伸張性と比べて改善されている、請求項34~51のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項53】
前記チーズ類似物の融解が、植物由来のチーズ類似物の融解と比べて改善されている、請求項34~52のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項54】
前記チーズ類似物の食感が、植物由来のチーズ類似物の食感と比べて改善されている、請求項34~53のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項55】
前記チーズ類似物の接着性が、植物由来のチーズ類似物の接着性と比べて低減されている、請求項34~54のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項56】
前記チーズ類似物が、少なくとも5%の前記カゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含む、請求項34~55のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項57】
前記チーズ類似物が、約5%~約30%の前記カゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含む、請求項34~56のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項58】
前記チーズ類似物が、約10%~約25%の前記カゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含む、請求項34~57のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項59】
前記チーズ類似物が、約15%~約25%の前記カゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含む、請求項34~58のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項60】
前記チーズ類似物が、カゼイン1グラム当たり多くても25mgのカルシウムを含む、請求項34~59のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項61】
前記チーズ類似物が、カゼイン1グラム当たり0mg~25mgのカルシウムを含む、請求項34~60のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項62】
前記チーズ類似物が、カゼイン1グラム当たり0mg~20mgのカルシウムを含む、請求項34~61のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項63】
前記チーズ類似物が、カゼイン1グラム当たり0mg~10mgのカルシウムを含む、請求項34~62のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項64】
前記チーズ類似物が、カゼイン1グラム当たり5mg~15mgのカルシウムを含む、請求項34~62のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項65】
前記チーズ類似物が、カゼイン1グラム当たり約0mgのカルシウムを含む、請求項34~64のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項66】
前記チーズ類似物が、カゼイン1グラム当たり約10mgのカルシウムを含む、請求項34~64のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項67】
前記チーズ類似物が、約15%~約30%の脂肪w/wを含む、請求項34~66のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項68】
前記チーズ類似物が、約18%~約28%の脂肪w/wを含む、請求項34~67のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項69】
前記チーズ類似物が、約20%~約25%の脂肪w/wを含む、請求項34~68のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項70】
前記チーズ類似物が、約0.5%~約4%のデンプンw/wを含む、請求項34~69のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項71】
前記チーズ類似物が、約1%~約3%のデンプンw/wを含む、請求項34~70のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項72】
前記チーズ類似物が、約2%~約3%のデンプンw/wを含む、請求項34~71のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項73】
前記チーズ類似物が、多くても10%のデンプンw/wを含む、請求項34~72のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項74】
前記チーズ類似物が、多くても5%のデンプンw/wを含む、請求項34~73のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項75】
前記組換え単一バリアントアルファカゼインの乳化塩に対する比が、12:1~6:1である、請求項34~74のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項76】
前記チーズ類似物が、前記乳化塩以外の乳化剤を含まない、請求項34~75のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項77】
ヨーグルト類似物である、請求項27~33のいずれかに記載の乳業製品類似物。
【請求項78】
前記カゼインタンパク質の前記単一バリアントが、アルファカゼインである、請求項77に記載の乳業製品類似物。
【請求項79】
前記アルファカゼインが、アルファS1カゼインである、請求項78に記載の乳業製品類似物。
【請求項80】
前記アルファS1カゼインが、ウシアルファS1カゼインである、請求項79に記載の乳業製品類似物。
【請求項81】
前記アルファS1カゼインが、全長カゼインである、請求項77~80のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項82】
前記アルファカゼインが、アルファS2カゼインである、請求項78に記載の乳業製品類似物。
【請求項83】
前記アルファS2カゼインが、ウシアルファS2カゼインである、請求項82に記載の乳業製品類似物。
【請求項84】
前記アルファS2カゼインが、全長カゼインである、請求項82~83のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項85】
前記ヨーグルト類似物の乳化が、乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物の乳化に匹敵するかまたはそれと比べて改善されている、請求項77~84のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項86】
前記ヨーグルト類似物の堅固さ、粘着性または粘稠性が、乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物に匹敵するかまたはそれと比べて改善されている、請求項77~85のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項87】
前記ヨーグルト類似物の接着性が、乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物と比べて低減されている、請求項77~86のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項88】
前記乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物が、ミセルカゼインを含む、請求項85~87のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項89】
前記乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物が、前記アルファカゼインタンパク質の前記組換え単一バリアントの代わりにミセルカゼインを含むことを除いて、前記乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物が、全成分において前記乳業製品類似物と同一である、請求項85~87のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項90】
前記ヨーグルト類似物の乳化が、植物由来のヨーグルト類似物の乳化に匹敵するかまたはそれと比べて改善されている、請求項77~89のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項91】
前記ヨーグルト類似物の堅固さ、粘着性または粘稠性が、植物由来のヨーグルト類似物に匹敵するかまたはそれと比べて改善されている、請求項77~90のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項92】
前記ヨーグルト類似物の接着性が、植物由来のヨーグルト類似物と比べて低減されている、請求項77~91のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項93】
前記植物由来のヨーグルト類似物が、いかなる乳製品タンパク質も欠如する、請求項90~92のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項94】
前記ヨーグルト類似物が、約1%~約4%の前記カゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含む、請求項77~93のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項95】
前記ヨーグルト類似物が、約2%~約4%の前記カゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含む、請求項77~94のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項96】
前記ヨーグルト類似物が、約2%~約6%の脂肪w/wを含む、請求項77~95のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項97】
前記ヨーグルト類似物が、約4%~約8%の炭水化物w/wを含む、請求項77~96のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項98】
飲料である、請求項27~33のいずれかに記載の乳業製品類似物。
【請求項99】
前記カゼインタンパク質の前記単一バリアントが、アルファカゼインである、請求項98に記載の乳業製品類似物。
【請求項100】
前記飲料の滑らかさが、乳製品由来の飲料の滑らかさに匹敵するかまたはそれと比べて改善されている、請求項98~99のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項101】
前記飲料の食感が、乳製品由来の飲料の食感に匹敵するかまたはそれと比べて改善されている、請求項98~100のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項102】
前記飲料の乳化が、乳製品由来の飲料に匹敵するかまたはそれと比べて改善されている、請求項98~101のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項103】
前記飲料が、約0.5%~約10%の前記カゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含む、請求項98~102のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【請求項104】
前記飲料が、約0.1%~約6%の脂肪w/wを含む、請求項98~104のいずれか一項に記載の乳業製品類似物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年8月17日に出願された米国特許仮出願第63/234,193号、および2022年6月1日に出願された米国実用特許出願第17/829,951号の利益を主張するものであり、これらの出願は両者共に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
クリーンフード業界は、植物ベースの食物および細胞ベースの食物の両方で構成される。細胞ベースの食物とは、屠殺してできた食肉に取って代わる筋肉および脂肪細胞を培養すること、ならびに他の動物性製品、例えば、乳製品および卵に取って代わる組換え動物タンパク質を発現する生物工学生物を培養することを含む広く包括的な用語である。動物タンパク質の代替供給源を見出す必要は、現在の動物性食物生産の非効率性および持続不可能性から生じる。
【0003】
チーズは、世界的に持続不可能な動物性製品の第3位であり(製品1kg当たりの温室効果ガス排出を測定した場合)、乳製品チーズの消費は、ここ10年間で市場に導入された植物ベースの代替物によって減速されていない。反対に、モッツァレラチーズ消費は、米国および発展途上市場において前年比で増えている。現在のチーズ代替物は、そのカゼインタンパク質欠如が原因で、乳製品チーズの機能性、栄養および食味に敵わない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
当技術分野の当業者であれば、本開示の追加の態様および利点は、本開示の説明的な実施形態のみが示され記載されている次の詳細な説明から容易に明らかとなるであろう。理解できる通り、本開示は、他のおよび異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、様々な明らかな観点における修正が可能であり、これらは全て、本開示から逸脱しない。したがって、図面および記載は、制限的ではなく説明的な性質として考慮されるべきである。
【0005】
一部の態様では、消費可能な組成物が本明細書に提供される。一部の実施形態では、消費可能な組成物は、アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントを含むことができる。一部の実施形態では、単一バリアントは、接着性、伸張性、食感、口当たり、融解、褐変、硬度、クリーミーさ、食味、匂いおよび柔軟性からなる群から選択される少なくとも1種の乳製品様特性を消費可能な組成物に提供する。一部の実施形態では、組換え単一バリアントは、動物由来のカゼインでなくてよく、カゼインミセルから物理的に解離していない。一部の実施形態では、乳製品様特性は、組換え単一バリアントカゼインタンパク質から実質的に提供され得;消費可能な組成物は、乳製品様特性のうち少なくとも1種において乳製品由来の消費可能な組成物に匹敵し得る。
【0006】
一部の実施形態では、消費可能な組成物は、接着性、伸張性、堅固さ、粘稠性、粘着性、噛み応え、回復力、弾力性、口当たり、融解、硬度、クリーミーさおよび柔軟性からなる群から選択される1種または複数の乳製品様特性を含むことができる。
【0007】
一部の実施形態では、消費可能な組成物のカゼイン含有量は、アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントを実質的に含むことができる。
【0008】
一部の実施形態では、消費可能な組成物のカゼイン含有量は、アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントのみを含むことができる。
【0009】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントは、消費可能な組成物中のカゼイン含有量の少なくとも95%または少なくとも97%を構成することができる。
【0010】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントは、消費可能な組成物中のカゼイン含有量の少なくとも99%を構成することができる。
【0011】
一部の実施形態では、消費可能な組成物は、アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアント以外のいかなる追加のカゼインも欠如する。
【0012】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、カゼイン塩(caseinate)に由来しなくてよい。
【0013】
一部の実施形態では、組成物は、いかなる動物に生産されたタンパク質も含まなくてよい。
【0014】
一部の実施形態では、組成物は、いかなる他の動物由来の乳製品タンパク質も欠如する。
【0015】
一部の実施形態では、乳製品様特性は、ミルク由来の消費可能な組成物に匹敵し得るかまたはそれと比較して改善され得;ミルク由来の消費可能な組成物が、アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントの代わりにまたはそれに加えて、ミルク、1種または複数のミルク由来のタンパク質またはミルク由来の成分を含むことができることを除いて、ミルク由来の消費可能な組成物は、全成分において消費可能な組成物と同一であり得る。
【0016】
一部の実施形態では、乳製品様特性は、ミセルカゼイン組成物に匹敵し得るかまたはそれと比較して改善され得、ミセルカゼイン組成物が、アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントの代わりにまたはそれに加えて、ミルクから単離されたミセルカゼインを含むことができることを除いて、ミセルカゼイン組成物は、全成分において消費可能な組成物と同一であり得る。
【0017】
一部の実施形態では、組換え単一バリアントは、少なくとも1個の非ネイティブ翻訳後修飾を含むことができるアルファカゼインタンパク質であり得る。
【0018】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントは、少なくとも1個のネイティブ翻訳後修飾をさらに含むことができる。
【0019】
一部の実施形態では、組換え単一バリアントは、ネイティブアルファカゼインタンパク質の1個または複数の翻訳後修飾を欠如するアルファカゼインタンパク質であり得る。
【0020】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、少なくとも1個の非ネイティブ翻訳後修飾をさらに含むことができる。
【0021】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、翻訳後修飾されていなくてよい。
【0022】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、リン酸化されていなくてよい。
【0023】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、アルファ-s1カゼインタンパク質であり得る。一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、アルファ-s2カゼインタンパク質であり得る。一部の実施形態では、組成物は、全長アルファカゼインタンパク質を含むことができる。
【0024】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、配列番号2、3、14、15、26、27、29、30、32、33、35、36、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55または56のうちいずれか1種を含むことができる。
【0025】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、ウシ、ヤギもしくはヒツジアルファカゼインタンパク質のアミノ酸配列、または配列番号2、3、14、15、26、27、29、30、32、33、35、36、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55もしくは56のうちいずれか1種、または配列番号2、3、14、15、26、27、29、30、32、33、35、36、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55もしくは56のうちいずれか1種に対して少なくとも70%、80%、85%もしくは90%同一性を有する配列を含むことができる。
【0026】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、N末端に1個または複数の非ネイティブアミノ酸を含むことができる。
【0027】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、N末端位置に非ネイティブメチオニンを含むことができる。
【0028】
一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、カゼインミセルに由来しなくてよい。
【0029】
一部の態様では、本明細書に記載されているものは、乳業製品類似物であり得る。乳業製品類似物は、本明細書に提供される消費可能な組成物のいずれかを含むことができ、類似物は、チーズ類似物、ヨーグルト類似物、クリーム類似物およびアイスクリーム類似物からなる群から選択され得る。
【0030】
一部の実施形態では、乳業製品類似物は、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むことができる。
【0031】
一部の実施形態では、乳業製品類似物は、非動物性供給源由来の脂肪または油をさらに含むことができる。一部の実施形態では、乳業製品類似物は、いかなる動物由来の乳製品タンパク質も欠如する。一部の実施形態では、乳業製品類似物は、いかなる他のカゼインタンパク質も欠如する。一部の実施形態では、アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントは、乳業製品類似物内にミセル形態で含まれていなくてよい。
【0032】
一部の実施形態では、乳業製品類似物は、(a)植物由来の油;(b)植物由来のデンプン;(c)糖;および(d)塩のうち1種または複数を含むことができる。
【0033】
一部の実施形態では、乳業製品類似物は、チーズ類似物であり得る。一部の実施形態では、チーズ類似物は、モッツァレラ類似物、チェダー類似物またはパルメザン類似物であり得る。一部の実施形態では、チーズ類似物は、低水分チーズ類似物であり得る。一部の実施形態では、チーズ類似物は、ソフトチーズ類似物であり得る。一部の実施形態では、チーズ類似物は、ハードチーズ類似物であり得る。
【0034】
一部の実施形態では、チーズ類似物は、モッツァレラ類似物であり得、カゼインタンパク質の単一バリアントは、アルファカゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファカゼインは、アルファS1カゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファS1カゼインは、ウシアルファS1カゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファS1カゼインは、全長カゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファカゼインは、アルファS2カゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファS2カゼインは、ウシアルファS2カゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファS2カゼインは、全長カゼインであり得る。
【0035】
一部の実施形態では、チーズ類似物の伸張性は、乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物の伸張性に匹敵し得るかまたはそれと比べて改善され得る。
【0036】
一部の実施形態では、チーズ類似物は、乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物の融解面積/時間と比較して、匹敵するまたはより大きい融解面積/時間を有する。
【0037】
一部の実施形態では、チーズ類似物の伸展性は、乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物の伸展性に匹敵し得るかまたはそれと比べて改善され得る。一部の実施形態では、チーズ類似物の食感は、乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物の食感に匹敵し得るかまたはそれと比べて改善され得る。一部の実施形態では、チーズ類似物の接着性は、乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物の接着性と比べて低減され得る。
【0038】
一部の実施形態では、乳製品由来のチーズまたは乳製品由来のチーズ類似物は、ミセルカゼインを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物の伸張性は、植物由来のチーズ類似物の伸張性と比べて改善され得る。一部の実施形態では、チーズ類似物の融解は、植物由来のチーズ類似物の融解と比べて改善され得る。一部の実施形態では、チーズ類似物の食感は、植物由来のチーズ類似物の食感と比べて改善され得る。一部の実施形態では、チーズ類似物の接着性は、植物由来のチーズ類似物の接着性と比べて低減され得る。
【0039】
一部の実施形態では、チーズ類似物は、少なくとも5%のカゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、約5%~約30%のカゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、約10%~約25%のカゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、約15%~約25%のカゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含むことができる。
【0040】
一部の実施形態では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり多くても25mgのカルシウムを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり0mg~25mgのカルシウムを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり0mg~20mgのカルシウムを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり0mg~10mgのカルシウムを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり5mg~15mgのカルシウムを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり約0mgのカルシウムを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり約10mgのカルシウムを含むことができる。
【0041】
一部の実施形態では、チーズ類似物は、約15%~約30%の脂肪w/wを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、約18%~約28%の脂肪w/wを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、約20%~約25%の脂肪w/wを含むことができる。
【0042】
一部の実施形態では、チーズ類似物は、約0.5%~約4%のデンプンw/wを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、約1%~約3%のデンプンw/wを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、約2%~約3%のデンプンw/wを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、多くても10%のデンプンw/wを含むことができる。一部の実施形態では、チーズ類似物は、多くても5%のデンプンw/wを含むことができる。
【0043】
一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインの乳化塩に対する比は、12:1~6:1であり得る。一部の実施形態では、チーズ類似物は、乳化塩以外の乳化剤を含まない。
【0044】
一部の実施形態では、乳業製品類似物は、ヨーグルト類似物であり得る。一部の実施形態では、カゼインタンパク質の単一バリアントは、アルファカゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファカゼインは、アルファS1カゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファS1カゼインは、ウシアルファS1カゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファS1カゼインは、全長カゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファカゼインは、アルファS2カゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファS2カゼインは、ウシアルファS2カゼインであり得る。一部の実施形態では、アルファS2カゼインは、全長カゼインであり得る。
【0045】
一部の実施形態では、ヨーグルト類似物の乳化は、乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物の乳化に匹敵し得るかまたはそれと比べて改善され得る。一部の実施形態では、ヨーグルト類似物の堅固さ、粘着性または粘稠性は、乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物に匹敵し得るかまたはそれと比べて改善され得る。一部の実施形態では、ヨーグルト類似物の接着性は、乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物と比べて低減され得る。一部の実施形態では、乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物は、ミセルカゼインを含むことができる。
【0046】
一部の実施形態では、乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物が、アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントの代わりにミセルカゼインを含むことができることを除いて、乳製品由来のヨーグルトまたは乳製品由来のヨーグルト類似物は、全成分において乳業製品類似物と同一であり得る。一部の実施形態では、ヨーグルト類似物の乳化は、植物由来のヨーグルト類似物の乳化に匹敵し得るかまたはそれと比べて改善され得る。一部の実施形態では、ヨーグルト類似物の堅固さ、粘着性または粘稠性は、植物由来のヨーグルト類似物に匹敵し得るかまたはそれと比べて改善され得る。一部の実施形態では、ヨーグルト類似物の接着性は、植物由来のヨーグルト類似物と比べて低減され得る。
【0047】
一部の実施形態では、植物由来のヨーグルト類似物は、いかなる乳製品タンパク質も欠如する。
【0048】
一部の実施形態では、ヨーグルト類似物は、約1%~約4%のカゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含むことができる。一部の実施形態では、ヨーグルト類似物は、約2%~約4%のカゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含むことができる。一部の実施形態では、ヨーグルト類似物は、約2%~約6%の脂肪w/wを含むことができる。一部の実施形態では、ヨーグルト類似物は、約4%~約8%の炭水化物w/wを含むことができる。
【0049】
一部の実施形態では、乳業製品類似物は、飲料であり得る。一部の実施形態では、カゼインタンパク質の単一バリアントは、アルファカゼインであり得る。一部の実施形態では、飲料の滑らかさは、乳製品由来の飲料の滑らかさに匹敵し得るかまたはそれと比べて改善され得る。一部の実施形態では、飲料の食感は、乳製品由来の飲料の食感に匹敵し得るかまたはそれと比べて改善され得る。一部の実施形態では、飲料の乳化は、乳製品由来の飲料に匹敵し得るかまたはそれと比べて改善され得る。一部の実施形態では、飲料は、約0.5%~約10%のカゼインタンパク質の単一バリアントw/wを含むことができる。一部の実施形態では、飲料は、約0.1%~約6%の脂肪w/wを含むことができる。
参照による組込み
【0050】
本明細書で言及されているあらゆる刊行物、特許および特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許または特許出願のそれぞれが、参照により組み込まれていると具体的にかつ個々に指し示されているのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
本発明の新規特色は、添付の特許請求の範囲において詳細に示される。本発明の特色および利点のより深い理解は、本発明の原理が利用されている説明的な実施形態を示す次の詳細な説明、および添付の図面の参照により得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、組換えにより生産された全長アルファS1カゼインタンパク質、および2種の発生するトランケート形態のアルファS1カゼインを説明する。
【0053】
図2図2は、本明細書に記載されている方法を使用して作製された類似物チーズと、いくつかの市販のチーズおよびチーズ類似物との間の伸張能力(伸展性)の比較を説明する。
【0054】
図3図3は、本明細書に記載されている方法を使用して作製された類似物チーズと、いくつかの市販のチーズおよびチーズ類似物との間の食感(対数目盛で)の比較を説明する。
【0055】
図4図4は、本明細書に記載されている方法を使用して作製された類似物チーズと、いくつかの市販のチーズおよびチーズ類似物との間の融解プロファイルの比較を説明する。
【0056】
図5図5は、本明細書に記載されている方法を使用して作製された類似物チーズと、いくつかの市販のチーズおよびチーズ類似物との間の伸張能力(伸展性)の比較を説明する。
【0057】
図6図6は、本明細書に記載されている方法を使用して作製された類似物チーズと、いくつかの市販のチーズおよびチーズ類似物との間の融解の比較を説明する。
【0058】
図7図7は、本明細書に記載されている方法を使用して作製された類似物チーズと、いくつかの市販のチーズおよびチーズ類似物との間の伸張能力(伸展性)の比較を説明する。
【0059】
図8図8は、本明細書に記載されている方法を使用して作製された類似物チーズと、いくつかの市販のチーズおよびチーズ類似物との間の食感(対数目盛で)の比較を説明する。
【0060】
図9図9は、本明細書に記載されている方法を使用して作製された類似物チーズと、いくつかの市販のチーズおよびチーズ類似物との間の融解プロファイルの比較を説明する。
【0061】
図10図10は、本明細書に記載されている方法を使用して作製された類似物チーズと、いくつかの市販のチーズおよびチーズ類似物との間の伸張能力(伸展性)の比較を説明する。
【0062】
図11図11は、本明細書に記載されている方法を使用して作製された類似物チーズと、いくつかの市販のチーズおよびチーズ類似物との間の融解プロファイルの比較を説明する。
【0063】
図12図12は、本明細書に記載されている方法を使用して作製された類似物チーズと、いくつかの市販のチーズおよびチーズ類似物との間の伸展性プロファイルの比較を説明する。
【0064】
図13図13は、本明細書に記載されている方法を使用して作製されたヨーグルト、およびミルク由来のヨーグルトを説明する。
【0065】
図14図14は、本明細書に記載されている方法を使用して作製されたヨーグルト飲料、およびミルク由来のヨーグルト飲料を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0066】
発明の詳細な説明
本発明の様々な実施形態が本明細書に示され記載されてきたが、当業者には、そのような実施形態が、単なる一例として提供されていることが明らかとなるであろう。当業者であれば、多数の変種、変化および置換を、本発明から逸脱することなく思い付くことができる。本明細書に記載されている本発明の実施形態の様々な代替物を用いることができることを理解されたい。
【0067】
乳業は、3300億ドルの価値があるが、組換え乳製品タンパク質を使用したクリーンな乳製品の解決策のための研究が行われる必要がある。乳製品チーズは、1グラム当たりに必要とされる資源の観点から非効率的な乳業製品であると共に、植物ベースの成分のみから正確に再現することが最も困難な乳業製品であるため、組換えタンパク質を使用して作製される乳製品様製品の方法および組成物が本明細書に提示される。
【0068】
乳製品チーズにその特有の特徴を与える構成成分は、カゼインタンパク質である。ミルクまたはミルク由来の成分が乳業製品において使用されるときに、カゼインは、ミセルにおいて見出される。ミセルは、タンパク質コロイドであり、典型的には牛乳中にあり、ミセルは、コロイド中心において不溶性リン酸カルシウムと相互作用する4種のカゼインタンパク質(アルファS1カゼイン、アルファS2カゼイン、ベータカゼインおよびカッパーカゼイン)で構成される。キモシンがミルクに添加されると、ミルク中のミセルは互いに引きつけ合う。これによりカードが形成され、次いでカードは、全チーズの99%を作製するために使用される。ヨーグルトの場合、液体コロイドを含むミセルの酸性化は、ヨーグルト生産で公知の細菌のスターター培養物を使用して行うことができる。本開示は、カゼインの組換えの天然に存在しない単一バリアントを使用して、他のカゼインの存在なしでかつミセルの形成なしで、乳製品または乳製品様製品を生成することができるという発見に基づく。当業者は、乳製品様製品を生産するためにミルクまたはミルクミセルから異なるカゼインタンパク質を単離することを試みたが、本出願の発明者らは、組換え形態の、特に一部の実施形態では、ネイティブカゼインとは異なる翻訳後修飾(PTM)を欠如するまたは有する単一バリアントカゼインが、ミセル形態で存在することなく、かつ他のカゼインまたは他の乳製品タンパク質との会合もその存在もなしで、乳製品様特色を提供することができることを初めて発見した。
【0069】
当業者は、ミセルが、複数のタンパク質による複合構造であることを知っており、したがって、単一のカゼインタンパク質を使用して乳製品様製品、例えば、チーズ、チーズ類似物、ヨーグルトおよび他の乳業製品を形成することができるとは予想しないであろう。本開示は、単一の組換えにより生産されたカゼインタンパク質、カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントが、ミセルを形成することもミセルに取り込まれることもなく消費物を形成することができるという、本発明者らによって為された驚くべき発見に基づく。本開示はまた、組換えにより作製された乳業製品、例えば、チーズ類似物および他の乳製品類似物製品、ならびに本明細書に記載されている方法によって形成された組成物を使用した粉末について記載する。
【0070】
当業者は、ミセルが、複数の翻訳後修飾を有する複数のタンパク質による複合構造であることを知っており、したがって、単一の組換えカゼインタンパク質を使用して、匹敵するまたは改善された乳製品様特性を有する乳製品様製品、例えば、チーズ、チーズ類似物、ヨーグルトおよび他の乳業製品を形成することができるとは予想しないであろう。本開示は、単一の組換えカゼインタンパク質、カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントが、翻訳後修飾の差にもかかわらず、かつミセルに取り込まれていないにもかかわらず、匹敵するまたは改善された乳製品様特性を有する消費物を形成することができるという、本発明者らによって為された驚くべき発見に基づく。
【0071】
本開示はまた、アルファカゼインタンパク質の組換えにより作製された単一バリアントのトランケート形態を取り込む消費可能な組成物について記載する。本明細書に記載されている組成物は、カゼインタンパク質の異なるトランケート形態を含むことができる。
【0072】
本明細書に記載されている消費可能な組成物は、組換え単一カゼインバリアント、例えば、アルファカゼインバリアントから形成される。組換えカゼインタンパク質は、微生物体、例えば、細菌、例えば、グラム陽性細菌Lactococcus lactisおよびBacillus subtilisならびにグラム陰性モデル生物E.coliならびに他の宿主生物、例えば、酵母、真菌および植物において発現させることができる。これらの組換えカゼインタンパク質を他の構成成分(例えば、ミネラル、脂肪、糖およびビタミン)と組み合わせて、乳製品様製品、例えば、動物由来の乳製品チーズのように挙動し、匂いがし、味がし、見え、感じるチーズを作製することができる。そのような乳製品様製品は、i)ラクトース、ii)コレステロール、iii)動物由来の飽和脂肪、iv)ミルク由来のホエータンパク質;および/またはv)ミルク由来のカゼインタンパク質を有しなくてよい。
【0073】
一部の実施形態では、方法は、細菌宿主細胞においてカゼインタンパク質の単一バリアントを、そのようなタンパク質が細胞から周囲の培地へと分泌されるように生産するステップを含む。一部の例では、方法は、細菌宿主細胞においてアルファカゼインタンパク質の単一バリアントを、そのようなタンパク質が細胞から周囲の培地へと分泌されるように生産するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、細菌宿主細胞において組換えタンパク質を、そのようなタンパク質が細胞内にあるように生産するステップを含む。次いで、組換えタンパク質を単離、精製または部分的に精製し、ミルク、チーズ、ヨーグルトまたは他の乳製品様類似物製品を形成するために乳製品成分として使用され得るまたは植物ベースの脂肪および他の栄養素と共に乳化され得る組成物を作製するための方法において使用することができる。
【0074】
一部の実施形態では、方法は、種々の異なる種由来の単一のカゼインを使用して組成物を生産するステップを含む。一部の例では、方法は、種々の異なる種由来の単一のアルファカゼインバリアントを使用して組成物を生産するステップを含む。カゼインは、ヒト、Bovinae(牛、バイソン、バッファロー)、Caprinae(羊および山羊)、Equine(馬、シマウマ)およびCamelus(ラクダ)に由来することができる。単一のカゼインバリアントは、ネイティブアルファカゼインと比較して修飾され得る、例えば、ネイティブカゼインのトランケート形態であり得る。本明細書に記載されている組成物は、一部の例では、ベータカゼインもカッパーカゼインも用いずに生産することができる。
【0075】
一部の実施形態では、組換えカゼインは、遺伝子改変された微生物またはその培養ブロスから単離、精製または部分的に精製することができる。
【0076】
用語「約」は、本明細書で使用される場合、1または2標準偏差以内を意味することができる。あるいは、「約」は、所与の値の最大10%、最大5%または最大1%の範囲を意味することができる。例えば、約は、所与の値の最大±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%または±1%を意味することができる。
【0077】
用語「乳製品タンパク質」は、本明細書で使用される場合、ミルクに見出されるタンパク質(そのバリアントを含む)に由来するアミノ酸配列を有するタンパク質を意味する。
【0078】
用語「動物由来の乳製品タンパク質」は、本明細書で使用される場合、乳牛、羊、山羊、ヒト、バイソン、バッファロー、ラクダおよび馬を含むがこれらに限定されないミルクを生産する生物のミルクから得られるおよび/または単離されるタンパク質等、ミルクに由来するタンパク質を意味する。「動物由来のカゼインタンパク質」は、ミルクを生産する生物のミルクから得られるおよび/または単離されるカゼインタンパク質を意味する。
【0079】
用語「組換え乳製品タンパク質」は、本明細書で使用される場合、ミルクに見出されるタンパク質(そのバリアントを含む)に由来するアミノ酸配列を有する異種または組換え生物において発現されたタンパク質を意味する。「組換えカゼインタンパク質」は、組換え生物によってまたは異種宿主細胞において生産されたカゼインを意味する。
【0080】
用語「カゼインの単一バリアント」(「カゼインタンパク質の単一バリアント」とも称される)は、本明細書で使用される場合、カゼインタンパク質アミノ酸配列の1種のバリアントを含むかまたはそれから創出された組成物を表すことができる。例えば、カゼインの単一バリアントを含む組成物は、アルファカゼインのみを含む。一部の場合では、用語「カゼインタンパク質の単一バリアント」は、単一のカゼインタンパク質が、他のカゼインの存在とは無関係に1種または複数の乳製品様特性を組成物に提供する、組成物を表すことができる。
【0081】
カゼインの単一バリアントを含む組成物は、たった1種のカゼインタンパク質アミノ酸配列から創出することができるが、タンパク質の全長バージョンの代わりにまたはそれに加えて、タンパク質配列のトランケート形態を含むことができる。
【0082】
用語「アルファカゼインの単一バリアント」(「単一バリアントアルファカゼインタンパク質」とも称される)は、本明細書で使用される場合、アルファカゼインタンパク質アミノ酸配列の1種のバリアントを含むかまたはそれから創出された組成物を表すことができる。例えば、アルファカゼインの単一バリアントを含む組成物は、アルファS1またはアルファS2カゼインのうち1種のみを含む。アルファカゼインの単一バリアントを含む組成物は、たった1種のアルファカゼインタンパク質アミノ酸配列から創出することができるが、タンパク質の全長バージョンの代わりにまたはそれに加えて、タンパク質配列のトランケート形態を含むことができる。例えば、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントを含む組成物は、全長アルファS1カゼインタンパク質およびそのトランケート形態の混合物を含むことができる。アルファカゼインの単一バリアントを含む組成物は、全長アルファS1カゼインタンパク質のみ、またはアルファS1カゼインタンパク質のトランケート形態のみ、またはアルファS1タンパク質のトランケート形態の混合物のみを含むことができる。
【0083】
「配列同一性」のパーセンテージは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド(アミノ酸)配列の文脈において本明細書で使用される場合、配列が最大の一致のために整列されたときに同じである、2種の配列における残基のパーセンテージを指す。ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列同一性を測定するために使用することができる、当技術分野で公知のいくつかの異なるアルゴリズムが存在する。例えば、配列は、FASTA(例えば、Wisconsin Packageバージョン10.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WIにおいて提供されるそのデフォルトパラメーターを使用して)、Gap(例えば、Wisconsin Packageバージョン10.0、GCG、Madison、WIにおいて提供されるそのデフォルトパラメーターを使用して)、Bestfit、ClustalW(例えば、バージョン1.83のデフォルトパラメーターを使用して)またはBLAST(例えば、レシプロカル(reciprocal)BLAST、PSI-BLAST、BLASTP、BLASTNを使用して)(例えば、Pearson. 1990. Methods Enzymol. 183:63;Altschul et al. 1990. J. Mol. Biol. 215:403を参照)を使用して比較することができる。
カゼインを含む組成物
A.カゼインタンパク質
【0084】
伝統的に、チーズは、動物由来のミルクから始まる。動物由来のチーズ生産のプロセスは、ミルクからミセル形態を沈殿させるステップを含み、ミセル形態は、ほとんどの場合、複合タンパク質混合物(アルファ、ベータおよびカッパータンパク質等、複数の型のカゼインタンパク質を含む)である。ミルクが酸性化され、ミセルが僅かに縮小および解離し、次いでミルクがレンネット処理され、カードとなり、カードがチーズとなる。チーズ類似物は、次の方法のうち1種を使用して、先ずカゼインミセルをミルクから沈殿させることにより、動物性ミルクから創出することができる:1)カゼイン酸ナトリウムを作製するためのナトリウム塩、2)酸カゼインを作製するための酸、3)レンネットカゼインを作製するためのレンネットを用いた酵素による凝固。このようにしてミルクから沈殿されたカゼインは次いで、脂肪を用いてさらに処理して、チーズ類似物を創出する。
【0085】
ミセル形態ではなく、かつミルクに由来もせずミルクカゼインに由来もしない、組換えにより生産されたカゼインの単一バリアントを有する消費可能な組成物が本明細書に提供される。一部の態様では、本開示の消費可能な組成物は、カゼインの単一バリアントから作製されるのみならず、ミセル構造でもなくミセル構造を有する出発材料に由来もしない食物および飲料製品に乳製品様特性を提供することもできる。一部の態様では、本開示の消費可能な組成物は、カゼインの単一バリアントを使用して作製されるのみならず、カゼインの単一バリアントは、他のカゼインの存在なしでかつミルクに由来するカゼイン構造の複雑さなしで、所望のまたは改善された乳製品様特性を提供することもできる。一部の態様では、本開示の消費可能な組成物は、アルファカゼインの単一バリアントを含む。一部の代替例では、本開示の消費可能な組成物は、ベータまたはカッパーカゼインの単一バリアントを含む。
【0086】
一部の実施形態では、本明細書における組成物(およびそれから作製された製品)は、カゼインタンパク質の単一バリアント以外のいかなる乳製品タンパク質も含まない。一部の場合では、カゼインタンパク質の単一バリアントは、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントである。一部の場合では、本明細書における組成物(およびそれから作製された製品)は、いかなるホエータンパク質もいかなるミルク由来のホエータンパク質も含まない。一部の実施形態では、本明細書における組成物(およびそれから作製された製品)は、いかなる動物由来の乳製品タンパク質も含まない。本明細書における組成物は、いずれの動物由来の製品またはミセルから単離されたいかなるカゼインタンパク質も含まない。
【0087】
本明細書に記載されている組成物は、組換え生産により作製されたカゼインの単一バリアントを含む。一部の場合では、消費可能な組成物における単一バリアントカゼインは、ネイティブカゼインタンパク質と比べて修飾されたカゼインタンパク質であり得る。カゼインタンパク質の単一バリアントにおける修飾は、野生型またはネイティブカゼインタンパク質と比べて1個または複数のアミノ酸挿入、欠失または置換を含むことができる。一部の場合では、単一バリアントカゼインタンパク質は、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントである。一部の例では、カゼインタンパク質は、ベータまたはカッパーまたはガンマカゼインタンパク質であり得る。
【0088】
アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、野生型またはネイティブアルファカゼインタンパク質と比べてトランケートされたアルファカゼインタンパク質である組換えタンパク質であり得る。トランケーションは、自然界に見出されるトランケーションに似ている場合がある(例えば、共通の数のアミノ酸を有する)。トランケーションは、アルファカゼインタンパク質の天然に存在しないトランケーションであり得る。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、野生型またはネイティブアルファカゼインタンパク質と比べてN末端トランケーションを有することができる。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、野生型またはネイティブアルファカゼインタンパク質と比べてC末端トランケーションを有することができる。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、野生型またはネイティブアルファカゼインタンパク質と比べてN末端トランケーションおよびC末端トランケーションを有することができる。
【0089】
一部の実施形態では、消費可能な組成物におけるアルファカゼインの単一バリアントは、アルファS1カゼインである。そのような組成物において、アルファS1カゼインは、翻訳後修飾型(リン酸化、グリコシル化、そのような修飾の位置またはそのような修飾の含量)で修飾される等、修飾されたアルファS1カゼインを含むことができる。一部の場合では、アルファS1カゼインは、全長アルファS1カゼインであり得る。一部の場合では、アルファS1カゼインタンパク質を含む組成物は、いかなる動物由来のタンパク質も欠如する。
【0090】
一部の実施形態では、消費可能な組成物におけるアルファカゼインの単一バリアントは、アルファS2カゼインである。そのような組成物において、アルファS2カゼインは、翻訳後修飾型(リン酸化、グリコシル化、そのような修飾の位置またはそのような修飾の含量)で修飾される等、修飾されたアルファS2カゼインを含むことができる。一部の場合では、アルファS2カゼインは、全長アルファS2カゼインであり得る。一部の場合では、アルファS2カゼインタンパク質を含む組成物は、いかなる動物由来のタンパク質も欠如する。
【0091】
アルファカゼインタンパク質の単一バリアントを含む本明細書における組成物は、組換えタンパク質であり、カゼインミセルから単離されたアルファカゼインタンパク質も、いずれの天然に存在するミセル形態から単離されたアルファカゼインタンパク質も、ミセルまたはミセル形態を含む製品も含まない。
【0092】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている消費可能な組成物は、アルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントを含む。一部の場合では、消費可能な組成物のカゼイン含有量は、カゼインタンパク質の単一バリアントを実質的に含む。一部の場合では、消費可能な組成物のカゼイン含有量は、カゼインタンパク質の単一バリアントのみを含む。一部の場合では、カゼインタンパク質の単一バリアントは、消費可能な組成物中のカゼイン含有量の少なくとも95%または少なくとも97%を構成する。一部の場合では、カゼインタンパク質の単一バリアントは、消費可能な組成物中のカゼイン含有量の少なくとも99%を構成する。一部の場合では、消費可能な組成物は、カゼインタンパク質の単一バリアント以外のいかなる追加のカゼインも欠如する。好まれる実施形態では、カゼインの単一バリアントは、アルファカゼインタンパク質である。
【0093】
アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、反芻動物種に由来することができる。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、ウシアルファカゼインタンパク質であり得る。アルファカゼインの単一バリアントは、ヤギアルファカゼインタンパク質であり得る。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、ヒツジアルファカゼインタンパク質であり得る。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、ウマアルファカゼインタンパク質であり得る。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、ラクダまたはラクダ類アルファカゼインタンパク質であり得る。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、ヒトアルファカゼインタンパク質であり得る。
【0094】
アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、アルファカゼインの成熟形態(配列番号2、3、14、15、26、27、29、30、32、33、35、36、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55または56に例証される等、シグナル配列を欠如する)またはそのトランケート形態(配列番号4~12、16~24として例証される)であり得る。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、ウシアルファカゼインタンパク質、例えば、配列番号1~3、28~30、39~41もしくは48~50に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有するカゼインタンパク質、またはそのトランケート形態であり得る。アルファカゼインの単一バリアントは、ヒツジアルファカゼインタンパク質、例えば、配列番号13~15もしくは42~44に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有するカゼインタンパク質、またはそのトランケート形態であり得る。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、ヤギアルファカゼインタンパク質、例えば、配列番号25~27もしくは45~47に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有するカゼインタンパク質、またはそのトランケート形態であり得る。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、ウマアルファカゼインタンパク質、例えば、配列番号31~33もしくは51~53に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有するカゼインタンパク質、またはそのトランケート形態であり得る。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、ラクダアルファカゼインタンパク質、例えば、配列番号34~36もしくは54~56に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有するカゼインタンパク質、またはそのトランケート形態であり得る。アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、ヒトアルファカゼインタンパク質、例えば、配列番号37~38に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有するカゼインタンパク質、またはそのトランケート形態であり得る。
【0095】
消費可能な組成物におけるアルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、アルファS1カゼインタンパク質であり得る。アルファS1カゼインタンパク質は、全長アルファS1カゼインタンパク質であり得る。一部の場合では、アルファS1タンパク質は、野生型またはネイティブアルファS1カゼインタンパク質と比べてトランケートされたアルファS1タンパク質である。一部の場合では、アルファS1カゼインタンパク質は、野生型またはネイティブアルファS1カゼインタンパク質と比べてN末端トランケーションを有する。一部の場合では、アルファS1カゼインタンパク質は、野生型またはネイティブアルファS1カゼインタンパク質と比べてC末端トランケーションを有する。一部の場合では、アルファS1カゼインは、野生型またはネイティブアルファS1カゼインと比べてN末端トランケーションおよびC末端トランケーションを有することができる。一部の場合では、アルファS1タンパク質は、1~59個の間のN末端アミノ酸を欠如する。一部の場合では、アルファS1タンパク質は、1~5、1~10、1~20、1~30、1~50、1~59個の間のN末端アミノ酸を欠如する。一部の場合では、配列番号2を有するウシアルファS1タンパク質は、1~59個の間のN末端アミノ酸を欠如する。一部の場合では、配列番号2を有するウシアルファS1タンパク質は、22、23、24または25個のN末端アミノ酸を欠如する(配列番号4~12等の例を参照)。一部の場合では、配列番号14を有するヒツジアルファS1タンパク質は、1~59個の間のN末端アミノ酸を欠如する(配列番号16~24等の例を参照)。一部の場合では、配列番号14を有するヒツジアルファS1タンパク質は、22、23、24または25個のN末端アミノ酸を欠如する。
【0096】
一部の場合では、アルファS1カゼインは、全長アルファS1カゼインおよびアルファS1カゼインタンパク質の1種または複数のトランケート形態、例えば、本明細書に記載されているトランケート形態のうちいずれか1種または複数の混合物である。
【0097】
一部の場合では、アルファカゼインの単一バリアントから作製された本明細書における組成物は、アルファカゼインタンパク質の全長形態および1種または複数のトランケート形態の混合物を含み、そのような組成物において、総アルファカゼインは、最大20%wt/wtのアルファS1カゼインの1種または複数のトランケート形態で構成され得る。トランケート形態は、全長単一バリアントアルファS1カゼインタンパク質の任意のトランケート形態であり得、その例は、本明細書の他の箇所に提供されている。一部の場合では、アルファカゼインの単一バリアントから作製された本明細書における組成物は、アルファS1カゼインタンパク質のトランケート形態のみを含む。
【0098】
一部の場合では、組成物(チーズ類似物等)におけるアルファカゼインの単一バリアントは、0%を超えるトランケート形態を含み、例えば、アルファカゼインの単一バリアントの0.1%、0.2%、0.5%、0.8%wt/wtが、アルファS1タンパク質のトランケート形態(複数可)である。一部の実施形態では、アルファS1カゼインの単一バリアントは、少なくとも1%wt/wtのアルファS1カゼインの1種または複数のトランケート形態を含む。一部の場合では、アルファS1カゼインの単一バリアントは、多くても20%wt/wtのアルファS1カゼインの1種または複数のトランケート形態を含む。一部の場合では、アルファS1カゼインの単一バリアントは、1%~3%、1%~5%、1%~7%、1%~10%、1%~12%、1%~15%、1%~20%、3%~5%、3%~7%、3%~10%、3%~12%、3%~15%、3%~20%、5%~7%、5%~10%、5%~12%、5%~15%、5%~20%、7%~10%、7%~12%、7%~15%、7%~20%、10%~12%、10%~15%、10%~20%、12%~15%、12%~20%または15%~20%wt/wtのアルファS1カゼインの1種または複数のトランケート形態を含む。一部の場合では、アルファS1カゼインの単一バリアントは、約1%、3%、5%、7%、10%、12%、15%または20%wt/wtのアルファS1カゼインの1種または複数のトランケート形態を含む。一部の場合では、アルファS1カゼインの単一バリアントは、少なくとも1%、3%、5%、7%、10%、12%または15%wt/wtのアルファS1カゼインの1種または複数のトランケート形態を含む。一部の場合では、アルファS1カゼインの単一バリアントは、多くても3%、5%、7%、10%、12%、15%または20%wt/wtのアルファS1カゼインの1種または複数のトランケート形態を含む。そのような組成物において、アルファカゼインの単一バリアントにおけるアルファS1カゼインの残りのパーセンテージは、アルファS1カゼインの全長形態である。
B.翻訳後修飾
【0099】
カゼインを発現させるために使用される宿主生物に応じて、アルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントは、動物由来のカゼインタンパク質とは異なるグリコシル化またはリン酸化パターン(翻訳後修飾)を有することができる。一部の場合では、アルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントは、翻訳後修飾(PTM)を含まない。一部の場合では、アルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントは、実質的に低減されたPTMを含む。本明細書で使用される場合、実質的に低減されたPTMは、動物由来のカゼインタンパク質におけるPTMの量と比較した、1種または複数の型のPTMの少なくとも50%低減を意味する。例えば、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、動物由来のアルファカゼインと比較して、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%少なく翻訳後修飾され得る。一部の場合では、翻訳後修飾されたカゼインは、動物由来のカゼインタンパク質に見出される翻訳後修飾の1個または複数の部位を欠如していてよい。
【0100】
一部の場合では、アルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントは、動物由来のカゼインタンパク質とは異なる1種または複数のPTM、例えば、動物由来のアルファカゼインタンパク質において修飾されていないアルファカゼインタンパク質の単一バリアント内のアミノ酸における修飾、または異なるリン酸化構造等、動物由来のアルファカゼインタンパク質と比較して化学構造が異なる修飾を含む。
【0101】
あるいは、アルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントは、動物由来のカゼインPTMに匹敵するPTMを含むことができる。一部の場合では、アルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントは、実質的に増加したPTMを含む。本明細書で使用される場合、実質的に増加したPTMは、動物由来のカゼインタンパク質におけるPTMの量と比較した、1種または複数の型のPTMの少なくとも5%増加を意味する。例えば、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、動物由来のアルファカゼインと比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%多く翻訳後修飾され得る。
【0102】
アルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質におけるPTMは、化学的にまたは酵素的に修飾されていてよい。一部の場合では、アルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントは、化学的または酵素的処置なしでは、実質的に低減されたPTMを含むかまたはPTMを含まない。組成物は、低減されたPTMを有するかまたはPTMがないアルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントを使用して生成することができ、PTMの欠如は、組換えタンパク質がPTMを欠如する場合の組換え生産によるアルファカゼインタンパク質の単一バリアントを生産すること等、タンパク質の化学的または酵素的処置が原因ではない。
【0103】
アルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントにおけるリン酸化は、化学的にまたは酵素的に修飾されていてよい。一部の場合では、カゼインタンパク質の単一バリアントは、化学的または酵素的処置なしでは、実質的に低減されたリン酸化を含むかまたはリン酸化を含まない。例えば、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントは、動物由来のアルファカゼインと比較して、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、99%少なくリン酸化され得る。組成物は、低減されたリン酸化を有するかまたはリン酸化がないアルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントを使用して生成することができ、リン酸化の欠如は、組換え生産が、低減されたリン酸化を有するかまたはリン酸化がないカゼインタンパク質の単一バリアントを提供する場合等、化学的または酵素的処置が原因ではない。
【0104】
組成物は、異なるPTMを有するカゼインの混合物であるアルファカゼインタンパク質等のカゼインの単一バリアントを使用して生成することができる。例えば、組成物は、PTMがない、低減されたPTMを有する、自然に匹敵する(またはネイティブ様)PTMを有するおよび/または増加したPTMを有するアルファカゼインのミックスを含むことができるアルファカゼインの単一バリアントを含むことができる。一部の場合では、組成物は、ネイティブ(自然に匹敵するまたは動物由来の)PTMを有するアルファカゼインタンパク質、1種もしくは複数の型のPTMを欠如するおよび/またはPTMがないカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントを含むことができる。あるいは、組成物は、均一なPTMを有するアルファカゼインタンパク質等のカゼインタンパク質の単一バリアントを含むことができる。このような場合のPTM構造は、低減されたPTM、1種または複数の型のPTMを欠如するPTMを含むことができる。例えば、消費可能な組成物は、低減されたリン酸化を有するアルファカゼインの単一バリアントのみを含むことができる。
消費可能な組成物
A.チーズおよびチーズ様類似物
【0105】
本出願に記載されている単一バリアントカゼインの組成物を使用して、チーズ類似物を創出することができる。チーズ類似物は、カゼインタンパク質の組換えにより生産された単一バリアントに加えて成分を含むことができる。チーズ類似物は、アルファカゼインタンパク質の組換えにより生産された単一バリアントに加えて成分を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、溶媒、例えば、水、脂肪、塩、デンプン、糖、香料、酸、pH安定剤、炭水化物等を含むことができる。チーズ類似物は、カゼインの単一バリアント以外のタンパク質を含むことができる。例えば、他のタンパク質は、動物由来の乳業製品に見出されるタンパク質(カゼイン以外の)を含むことができる。あるいは、チーズ類似物は、動物由来の乳業製品に見出されないタンパク質を含むことができ、そのような例は、植物および/または微生物タンパク質を含むことができるがこれらに限定されない。
【0106】
本明細書に記載されているチーズ類似物は、5%w/w~約30%w/wのカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、少なくとも5%w/wのカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、多くても30%w/wのカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、5%~7%、5%~10%、5%~15%、5%~20%、5%~25%、5%~30%、7%~10%、7%~15%、7%~20%、7%~25%、7%~30%、10%~15%、10%~20%、10%~25%、10%~30%、15%~20%、15%~25%、15%~30%、20%~25%、20%~30%または25%~30%w/wのカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約5%、7%、10%、15%、20%、25%または30%w/wのカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。
【0107】
本明細書に記載されているチーズ類似物は、5%w/w~約30%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、少なくとも5%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているアルファカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、多くても30%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、5%~7%、5%~10%、5%~15%、5%~20%、5%~25%、5%~30%、7%~10%、7%~15%、7%~20%、7%~25%、7%~30%、10%~15%、10%~20%、10%~25%、10%~30%、15%~20%、15%~25%、15%~30%、20%~25%、20%~30%または25%~30%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約5%、7%、10%、15%、20%、25%または30%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。一部の好まれる場合では、チーズ類似物は、10%~25%、15%~25%、18%~25%、20~25%、10%~20%、15%~20%、18%~20%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。
【0108】
一部の場合では、チーズ類似物は、5%w/w~40%w/wの脂肪を含むことができる。チーズ類似物に添加することができる脂肪の例は、ココナツ、キャノーラ、高オレイン酸のヒマワリ、パーム油を含む。他の例は、本明細書の他の箇所に提供されている。一部の場合では、チーズ類似物は、少なくとも5%w/wの脂肪を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、多くても40%w/wの脂肪を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、5%w/w~10%w/w、5%w/w~15%w/w、5%w/w~20%w/w、5%w/w~25%w/w、5%w/w~30%w/w、5%w/w~40%w/w、10%w/w~15%w/w、10%w/w~20%w/w、10%w/w~25%w/w、10%w/w~30%w/w、10%w/w~40%w/w、15%w/w~20%w/w、15%w/w~25%w/w、15%w/w~30%w/w、15%w/w~40%w/w、20%w/w~25%w/w、20%w/w~30%w/w、20%w/w~40%w/w、25%w/w~30%w/w、25%w/w~40%w/wまたは30%w/w~40%w/wの脂肪を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約5%w/w、10%w/w、15%w/w、20%w/w、25%w/w、30%w/wまたは40%w/wの脂肪を含むことができる。
【0109】
一部の場合では、チーズ類似物は、0%w/w~50%w/wのデンプンを含むことができる。チーズ類似物に添加することができるデンプンの例は、加工ジャガイモ、トウモロコシを含む。他の例は、本明細書の他の箇所に提供されている。一部の場合では、チーズ類似物は、少なくとも0%w/wのデンプンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、多くても50%w/wのデンプンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0%w/w~10%w/w、0%w/w~20%w/w、0%w/w~30%w/w、0%w/w~40%w/w、0%w/w~50%w/w、10%w/w~20%w/w、10%w/w~30%w/w、10%w/w~40%w/w、10%w/w~50%w/w、20%w/w~30%w/w、20%w/w~40%w/w、20%w/w~50%w/w、30%w/w~40%w/w、30%w/w~50%w/wまたは40%w/w~50%w/wのデンプンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約0%w/w、10%w/w、20%w/w、30%w/w、40%w/wまたは50%w/wのデンプンを含むことができる。一部の好まれる場合では、チーズ類似物は、0.5%~1%、0.5%~2%、0.5%~3%、0.5%~4%、1%~2%、1%~3%、1%~4%、2%~3%、2%~4%、3%~4%w/wのデンプンを含むことができる。
【0110】
優先的に、チーズ類似物は、多くても30%w/wのデンプンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0%w/w~30%w/wのデンプンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、少なくとも0%w/wのデンプンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0%w/w~5%w/w、0%w/w~10%w/w、0%w/w~15%w/w、0%w/w~20%w/w、0%w/w~25%w/w、0%w/w~30%w/w、5%w/w~10%w/w、5%w/w~15%w/w、5%w/w~20%w/w、5%w/w~25%w/w、5%w/w~30%w/w、10%w/w~15%w/w、10%w/w~20%w/w、10%w/w~25%w/w、10%w/w~30%w/w、15%w/w~20%w/w、15%w/w~25%w/w、15%w/w~30%w/w、20%w/w~25%w/w、20%w/w~30%w/wまたは25%w/w~30%w/wのデンプンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0%w/w、5%w/w、10%w/w、15%w/w、20%w/w、25%w/wまたは30%w/wのデンプンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、多くても1%w/w、5%w/w、10%w/w、15%w/w、20%w/w、25%w/wまたは30%w/wのデンプンを含むことができる。
【0111】
一部の場合では、チーズ類似物は、0%w/w~16%w/wの塩、例えば、カルシウム塩、乳化塩、食卓塩等を含むことができる。そのような塩の例はまた、本明細書の他の箇所に提供されている。
【0112】
一部の場合では、チーズ類似物は、カルシウム塩、例えば、塩化カルシウムを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%~6%w/wのカルシウム塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、少なくとも0.1%w/wのカルシウム塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、多くても6%w/wのカルシウム塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%~1%、0.1%~2%、0.1%~3%、0.1%~4%、0.1%~5%、0.1%~6%、1%~2%、1%~3%、1%~4%、1%~5%、1%~6%、2%~3%、2%~4%、2%~5%、2%~6%、3%~4%、3%~5%、3%~6%、4%~5%、4%~6%または5%~6%w/wのカルシウム塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約0.1%、1%、2%、3%、4%、5%または6%w/wのカルシウム塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%または6%w/w未満のカルシウム塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%、1%、2%、3%、4%または5%w/w超のカルシウム塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、カルシウムイオンを含むことができる。カルシウムイオンは、カルシウムベースの塩、例えば、塩化カルシウムの形態でチーズ類似物に添加することができる。
【0113】
一部の場合では、チーズ類似物は、0%~0.6%w/wのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、少なくとも0%w/wのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、多くても0.6%w/wのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0%~0.1%、0%~0.2%、0%~0.3%、0%~0.4%、0%~0.5%、0%~0.6%、0.1%~0.2%、0.1%~0.3%、0.1%~0.4%、0.1%~0.5%、0.1%~0.6%、0.2%~0.3%、0.2%~0.4%、0.2%~0.5%、0.2%~0.6%、0.3%~0.4%、0.3%~0.5%、0.3%~0.6%、0.4%~0.5%、0.4%~0.6%または0.5%~0.6%w/wのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%または0.6%w/wのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%または0.6%w/wのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、多くても0.1%、0.2%、0.3%、0.4%または0.5%w/wのカルシウムイオンを含むことができる。
【0114】
一部の場合では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり0mg~30mgのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり少なくとも0mgのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり多くても30mgのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり0mg~5mg、0mg~10mg、0mg~15mg、0mg~20mg、0mg~25mg、0mg~30mg、5mg~10mg、5mg~15mg、5mg~20mg、5mg~25mg、5mg~30mg、10mg~15mg、10mg~20mg、10mg~25mg、10mg~30mg、15mg~20mg、15mg~25mg、15mg~30mg、20mg~25mg、20mg~30mgまたは25mg~30mgのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり0mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mgまたは30mgのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり少なくとも1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mgまたは30mgのカルシウムイオンを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、カゼイン1グラム当たり多くても1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mgまたは30mgのカルシウムイオンを含むことができる。
【0115】
一部の場合では、チーズ類似物は、乳化塩、例えば、リン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムまたは他の乳化塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%~6%w/wの乳化塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、少なくとも0.1%w/wの乳化塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、多くても6%w/wの乳化塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%~1%、0.1%~2%、0.1%~3%、0.1%~4%、0.1%~5%、0.1%~6%、1%~2%、1%~3%、1%~4%、1%~5%、1%~6%、2%~3%、2%~4%、2%~5%、2%~6%、3%~4%、3%~5%、3%~6%、4%~5%、4%~6%または5%~6%w/wの乳化塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約0.1%、1%、2%、3%、4%、5%または6%w/wの乳化塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%または6%w/w未満の乳化塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%、1%、2%、3%、4%または5%w/w超の乳化塩を含むことができる。あるいは、一部の場合では、チーズ類似物は、いかなる乳化塩も含まない。一部の場合では、チーズ類似物は、乳化塩以外のいかなる乳化剤も含まない。
【0116】
一部の実施形態では、チーズ類似物は、カゼイン(例えば、組換え単一バリアントカゼイン)の乳化塩に対する比を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1または12:1のカゼイン(例えば、組換え単一バリアントカゼイン)の乳化塩に対する比(重量/重量)を有することができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1または9:1のカゼイン(例えば、組換え単一バリアントカゼイン)の乳化塩に対する比(重量/重量)を有することができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1または20:1のカゼイン(例えば、組換え単一バリアントカゼイン)の乳化塩に対する比(重量/重量)を有することができる。
【0117】
一部の場合では、チーズ類似物は、約3:1~6:1の間のカゼイン(例えば、組換え単一バリアントカゼイン)の乳化塩に対する比(重量/重量)を有することができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約6:1~9:1の間のカゼイン(例えば、組換え単一バリアントカゼイン)の乳化塩に対する比(重量/重量)を有することができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約8:1~10:1の間のカゼイン(例えば、組換え単一バリアントカゼイン)の乳化塩に対する比(重量/重量)を有することができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約8:1~12:1の間のカゼイン(例えば、組換え単一バリアントカゼイン)の乳化塩に対する比(重量/重量)を有することができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約8:1~15:1の間のカゼイン(例えば、組換え単一バリアントカゼイン)の乳化塩に対する比(重量/重量)を有することができる。
【0118】
一部の場合では、チーズ類似物は、食卓塩、例えば、塩化ナトリウム塩を含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%~4%w/wの塩化ナトリウムを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、少なくとも0.1%w/wの塩化ナトリウムを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、多くても4%w/wの塩化ナトリウムを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%~1%、0.1%~2%、0.1%~3%、0.1%~4%、1%~2%、1%~3%、1%~4%、2%~3%、2%~4%または3%~4%w/wの塩化ナトリウムを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、約0.1%、1%、2%、3%または4%w/wの塩化ナトリウムを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%、1%、2%、3%または4%w/w未満の塩化ナトリウムを含むことができる。一部の場合では、チーズ類似物は、0.1%、1%、2%または3%w/w超の塩化ナトリウムを含むことができる。
【0119】
一部の例では、組換えにより生産されたカゼイン、例えば、アルファカゼインタンパク質の単一バリアント(チーズ類似物の5~30%w/w)(例示的な最適範囲10~20%w/w)は、水(30~65%w/w)(例示的な最適範囲45~55%w/w)、脂肪(5~40%w/w)(例示的な最適範囲20~25%w/w)、塩化ナトリウム(塩)(0~4%w/w)(例示的な最適範囲0~1.5%w/w)、塩化カルシウム(0~6%w/w)(例示的な最適範囲0~1.5%w/w)、乳化塩(リン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム)(0~6%w/w)(例示的な最適範囲0~3%w/w)、デンプン(0~50%w/w)(例示的な最適範囲0~8%w/w)、天然ビーガン香料(0~5%w/w)(例示的な最適範囲0.5~1%w/w)および酸(0~5%w/w)(例示的な最適範囲0~1%w/w)と組み合わせることができる。必要に応じた成分、例えば、植物ベースのまたは他の動物質を含まないタンパク質(0~30%)(例示的な最適範囲0~8%w/w)、親水コロイド(0~5%)(例示的な最適範囲0~2%)、糖、例えば、単糖、二糖およびオリゴ糖(0~5%w/w)(例示的な最適範囲0~2%w/w)、乳化薬剤、例えば、モノグリセリドおよびジグリセリド(0~2%w/w)(例示的な最適範囲0~0.5%w/w)、天然香料マスカー、着色添加物(0~5%w/w)、保存料(0~1%w/w)、アンチケーキング剤(0~2%w/w)ならびに微量栄養素、例えば、ビタミン(0~1%)を同様に、チーズ類似物に取り込むことができる。
【0120】
一部の実施形態では、次の成分は、予め混合されている:アルファカゼインの組換えにより生産された単一バリアント、脂肪(複数可)、水、デンプン、塩(複数可)、例えば、塩化ナトリウム。一部の実施形態では、pH調整剤、例えば、水酸化ナトリウム(苛性アルカリ溶液)を使用して、このステージでpH調整を行って、組成物を中性pH、6.8~7.2にする。必要に応じた成分、例えば、植物ベースのまたは他の動物質を含まないタンパク質、糖、親水コロイドおよび乳化薬剤は、このステップでまたはさらに後のステージで添加することができる。予めの混合は、外界または上昇した温度(15~50℃)で行うことができる。一部の場合では、取込みに先立ち、脂肪は予め融解され[30~70℃](例示的な最適範囲40~50℃)、その融解温度で保持される。塩化カルシウムおよび乳化塩は、予めの混合ステージでまたはさらに後のステージで添加することができる。あるいは、塩化カルシウムおよび乳化塩は、任意の順序で連続して添加することができる:塩化カルシウムは、乳化塩の前または後に添加することができる。例えば、塩化カルシウムおよび乳化塩は、外界または上昇した温度にて2分間~30分間(例示的な最適範囲5~10分間)のインキュベーション間隔で、4分間~1時間(例示的な最適範囲10~20分間)の経過にわたり2つのステージで添加することができる。あるいは、チーズ類似物は、塩化カルシウムも乳化塩も用いずに生産することができる。塩化カルシウムは、酸添加の前または後に、チーズ類似物作製プロセスの終わりに添加することもできる。
【0121】
混合物は、機械的に混合されつつ、1~30分間(例示的な最適範囲1~5分間)の勾配期間にわたり、予めの混合の温度(外界または上昇した)から50~95℃(例示的な最適範囲75~90℃)への温度勾配にわたり加熱することができる。次いで、成分が機械的に取り込まれてエマルションを形成する際に、加熱された混合物は、最終勾配温度で0~20分間(例示的な最適範囲2~5分間)保持することができる。機械的取込み(混合)は、種々のミキサー、例えば、垂直カッターミキサーまたはツインスクリューミキサーを使用して達成することができる。
【0122】
混合物の酸性度は、酸、例えば、乳酸またはクエン酸を取り込み、約5~6.5(例示的な最適範囲5.7~6.2)の最終pHとなるまで短時間混合し続けることにより調節することができる。酸性度は、混合プロセスにおいて初期にグルコノ-デルタ-ラクトンを使用することにより調節することもできる。次いで、その結果生じる混合物を、型、他の成形容器または真空シールパッケージングに収めることができる。その結果生じる製品を型への分割の直後に4℃に冷却して、チーズ類似物を創出することができる。次に、そのようなチーズ類似物を、食品、トッピングとして使用し、他の食品に取り込むことができる。
【0123】
一部の実施形態では、チーズにおける塩またはミネラルの量を変更して、好都合な品質を生成することができる。例えば、一例では、カルシウムの量を変更して、融解、食感、伸張性等を改善することができる。一例では、チーズ類似物におけるカルシウムの量を低減させて、チーズ類似物の融解を改善することができる。別の例では、チーズ類似物におけるカルシウムの量を増加させて、チーズ類似物の食感または伸張性を改善することができる。
【0124】
一部の実施形態では、チーズ類似物は、単一バリアントカゼインを含み、単一バリアントカゼイン、例えば、アルファカゼインは、チーズまたはチーズ類似物の1種または複数の特性を組成物に提供する。
【0125】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えばアルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたチーズ類似物の食感は、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のチーズ、例えば、動物性ミルクから作製されたチーズの食感に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物の食感は、カゼインのミセル形態を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物の食感に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物の食感は、カゼインのミセル形態を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物の食感と比較した場合、あるいは乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)と比較した場合、改善されている/より望ましい可能性がある。チーズ類似物の食感は、訓練されたヒト対象集団を使用して、または食感分析計等の機械を使用して検査することができる。
【0126】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたチーズ類似物の食味は、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のチーズ、例えば、動物性ミルクから作製されたチーズの食味に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物の食味は、カゼインのミセル形態を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物の食味に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物の食味は、乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物の食味と比較した場合、改善され得る。チーズの食味は、訓練されたヒト対象集団を使用して検査することができる。
【0127】
カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されているチーズ類似物組成物は、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のチーズ、例えば、動物性ミルクから作製されたチーズに匹敵する褐変能力を有することができる。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されているチーズ類似物組成物は、カゼインのミセル形態を使用して作製された同様の型のチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物に匹敵する褐変能力を有することができる。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されているチーズ類似物組成物は、乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)を使用して作製された同様の型のチーズまたはチーズ類似物と比較した場合、改善された褐変能力を有することができる。チーズ類似物の褐変能力は、オーブンおよびコンピュータイメージングを使用して検査することができる。
【0128】
カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されているチーズ類似物組成物は、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のチーズ、例えば、動物性ミルクから作製されたチーズに匹敵する融解能力を有することができる。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されているチーズ類似物組成物は、カゼインのミセル形態を使用して作製された同様の型のチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物に匹敵する融解能力を有することができる。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されているチーズ類似物組成物は、乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)を使用して作製された同様の型のチーズまたはチーズ類似物と比較した場合、改善された融解能力を有することができる。チーズ類似物の融解能力は、修正Schreiber融解検査およびコンピュータイメージングを使用して検査することができる。この融解特性を測定する例示的なアッセイは、実施例セクションに提供されている。
【0129】
一部の実施形態では、チーズまたはチーズ類似物は、ホットプレート上での95℃で15分間の加熱等、加熱により融解特徴について分析され、融解は、融解された面積の融解されていない面積に対する比によって評価され、ここで、融解することは、1を超えるまたはそれに等しい比として定義される。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、1のまたは1を超える融解値を有する。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、1を超える、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6のまたは2.6を超える融解値を有する。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、1を超える、例えば、1.0~1.3、1.3~1.5、1.5~1.7、1.7~1.9、1.9~2.1、2.1~2.3または2.3~2.5の間の融解値を有する。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、1を超える融解値を有し、融解された面積は、不透明な外観を保つ。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、植物ベースのチーズ類似物の融解値を超える融解値を有し、例えば、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物の融解値は、植物ベースのチーズ類似物の融解値の1.5×、2×、2.5×であるかまたは2.5×を超える。
【0130】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたチーズ類似物の伸張能力は、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のチーズ、例えば、動物性ミルクから作製されたチーズの伸張能力に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズの伸張能力は、カゼインのミセル形態を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物の伸張能力に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズの伸張能力は、カゼインのミセル形態を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物の伸張能力と比較した場合、あるいは乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)と比較した場合、改善されている/より望ましい可能性がある。チーズの伸張能力は、訓練されたヒト対象集団を使用して、または食感分析計等の機械を使用して検査することができる。本明細書に記載されている方法を使用して作製されたチーズ類似物の伸張性は、調理後に食感分析計で測定されたときに2.5cmを超えることができる。この伸張性特性を測定する例示的なアッセイは、実施例セクションに提供されている。
【0131】
一部の実施形態では、チーズまたはチーズ類似物は、伸展性装備において90℃のオーブンで10分間チーズを加熱し、破損までの距離(すなわち、チーズのひもが全て切れる距離)として食感分析計で伸展性を測定すること等により、食感分析計を使用して伸張性について分析される。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、約200mm(20cm)の伸張性値を有する。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、少なくとも40mm、少なくとも50mm、少なくとも60mm、少なくとも80mm、少なくとも100mm、少なくとも120mm、少なくとも140mm、少なくとも160mm、少なくとも180mm、少なくとも190mm、少なくとも200mm、少なくとも210mm、少なくとも220mm、少なくとも230mm、少なくとも240mm、少なくとも250mmのまたは250mmを超える伸張性を有する。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、40~70mm、70~100mm、100~125mm、125~150mm、150~180mm、180~200mm、200~225mm、225~250mmまたは250~300mmの間の伸張性を有する。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、植物ベースのチーズ類似物の伸張性を超える伸張性を有し、例えば、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物の伸張性は、植物ベースのチーズ類似物の伸張性の少なくとも2×、少なくとも3×、少なくとも4×、少なくとも5×、少なくとも7×、少なくとも10×である。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、低水分ミルク由来のチーズ(低水分モッツァレラ等)またはカゼイン塩含有チーズ、例えば、模造モッツァレラチーズの伸張性に匹敵する伸張性を有する。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、低水分ミルク由来のチーズ(低水分モッツァレラ等)またはカゼイン塩含有チーズ、例えば、模造モッツァレラチーズの伸張性の10~20%、15~25%、20~40%または10~150%以内の伸張性を有する。
【0132】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたチーズ類似物の硬度は、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のチーズ、例えば、動物性ミルクから作製されたチーズの硬度に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物の硬度は、カゼインのミセル形態を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物の硬度に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物の硬度は、乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物の硬度と比較した場合、改善され得る。チーズ類似物の硬度は、訓練されたヒト対象集団を使用して、または食感分析計等の機械を使用して検査することができる。
【0133】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたチーズ類似物の接着性は、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のチーズ、例えば、動物性ミルクから作製されたチーズの接着性に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物の接着性は、カゼインのミセル形態を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物の接着性に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている方法によって作製されたチーズ類似物の接着性は、カゼインのミセル形態を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物の接着性と比較した場合、低減され得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている方法によって作製されたチーズ類似物の接着性は、乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物の接着性(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)と比較した場合、低減され得る。チーズ類似物の接着性は、訓練されたヒト対象集団を使用して、または食感分析計等の機械を使用して検査することができる。本明細書に記載されている方法を使用して作製されたチーズ類似物の接着性は、食感分析計検査において2(g*秒)未満であり得る。この接着性特性を測定する例示的なアッセイは、実施例セクションに提供されている。
【0134】
チーズ類似物の接着性は、食感分析計、例えば、TA-18 1/2”ボールプローブを備えたTA.XT Plus食感分析計を使用して検査することができ、例えばここで、接着性は、プローブからチーズを除去するのに要求される力を表す。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、0.1~3.0g*秒の間の接着性を有する。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、3.0g*秒未満、2.5g*秒未満、2.0g*秒未満、1.5g*秒未満、1.0g*秒未満または0.5g*秒未満の接着性を有する。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、0.1~2.5g*秒、0.1~2.0g*秒、0.1~1.5g*秒、0.1~1.0g*秒、0.1~0.5g*秒、0.5~2.5g*秒、0.5~2.0g*秒、0.5~1.5g*秒、0.5~1.0g*秒または0.5~1.5g*秒の間等の接着性を有する。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、低水分ミルク由来のチーズ(低水分モッツァレラ等)またはカゼイン塩含有チーズ、例えば、模造モッツァレラチーズと比較して低減された接着性を有する。一部の実施形態では、低水分ミルク由来のチーズ(低水分モッツァレラ等)またはカゼイン塩含有チーズ(模造モッツァレラチーズ等)の接着性と比較した場合、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物の接着性は、2分の1以下、3分の1以下、5分の1以下、10分の1以下、20分の1以下に低減されている、または20分の1未満に低減されている。一部の実施形態では、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物は、植物ベースのチーズ類似物と比較して低減された接着性を有する。一部の実施形態では、植物ベースのチーズ類似物の接着性と比較した場合、組換え単一バリアントアルファカゼインを含むチーズ類似物の接着性は、2分の1以下、3分の1以下、5分の1以下、10分の1以下、15分の1以下、20分の1以下に低減されている、または20分の1未満に低減されている。
【0135】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたチーズ類似物のクリーミーさは、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のチーズ、例えば、動物性ミルクから作製されたチーズのクリーミーさに匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物のクリーミーさは、カゼインのミセル形態を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物のクリーミーさに匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物のクリーミーさは、乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物のクリーミーさと比較した場合、改善され得る。
【0136】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたチーズ類似物の口当たりは、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のチーズ、例えば、動物性ミルクから作製されたチーズの口当たりに匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物の口当たりは、カゼインのミセル形態を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物の口当たりに匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物の口当たりは、乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物の口当たりと比較した場合、改善され得る。
【0137】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたチーズ類似物の不透明度は、加熱された(例えば、融解された)ときに、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のチーズ、例えば、動物性ミルクから作製されたチーズの不透明度に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物の不透明度は、加熱されたときに、カゼインのミセル形態を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物、例えば、ミルクから作製されたチーズまたはカゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたチーズ類似物の不透明度に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたチーズ類似物の不透明度は、加熱されたときに、乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)を使用して作製されたチーズまたはチーズ類似物の不透明度と比較して改善され得る。
【0138】
本明細書に記載されているチーズ類似物または同様の組成物は、低水分チーズ類似物であり得る。例えば、低水分チーズ類似物は、45~52%w/wの水分を含むことができる。低水分チーズ類似物は、52%w/w未満の水分を含むことができる。
B.ヨーグルトまたはヨーグルト類似物
【0139】
本明細書に記載されているアルファカゼインを含む組成物等の単一バリアントカゼイン組成物を使用して、ヨーグルト類似物またはヨーグルト様組成物等の消費可能な組成物を生成することができる。例えば、単一バリアントアルファカゼイン組成物を使用して、ヨーグルト類似物製品を形成することができる。ヨーグルト類似物製品は、ミセルまたはミセル様組成物の形成なしで形成することができる。本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたヨーグルト類似物製品は、カゼインのミセル形態を使用して作製された動物由来の乳製品ヨーグルトまたは乳製品ヨーグルト類似物、例えば、カゼイン塩、レンネットカゼインまたはミセルカゼインから作製されたものと同様のまたは同等な特色(食感、クリーミーさ、堅固さ、粘着性、接着性、粘稠性、匂いおよび食味等)を、提供することができる。本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたヨーグルト類似物製品は、いかなる乳製品タンパク質も欠如する植物由来のヨーグルト類似物(すなわち、タンパク質を使用せずに、または植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一のタンパク質源として使用して作製されたヨーグルト様製品(いかなるカゼインも含有しないことを意味する))と比較した場合、1種または複数の特色(食感、クリーミーさ、堅固さ、粘着性、接着性、粘稠性、匂いおよび食味等)の改善を提供することができる。
【0140】
本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、1%w/w~約20%w/wのカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。一部の場合では、ヨーグルト類似物は、少なくとも1%w/wのカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、ヨーグルト類似物は、多くても20%w/wのカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、ヨーグルト類似物は、1%~2%、1%~4%、1%~6%、1%~8%、1%~10%、1%~15%、1%~20%、2%~4%、2%~6%、2%~8%、2%~10%、2%~15%、2%~20%、4%~6%、4%~8%、4%~10%、4%~15%、4%~20%、6%~8%、6%~10%、6%~15%、6%~20%、8%~10%、8%~15%、8%~20%、10%~15%、10%~20%または15%~20%w/wのカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、ヨーグルト類似物は、1%、2%、4%、6%、8%、10%、15%または20%w/wのカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の好まれる実施形態では、ヨーグルト類似物は、2%~5%w/wのカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。
【0141】
本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、1%w/w~約20%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。一部の場合では、ヨーグルト類似物は、少なくとも1%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているアルファカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、ヨーグルト類似物は、多くても20%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているアルファカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、ヨーグルト類似物は、1%~2%、1%~4%、1%~6%、1%~8%、1%~10%、1%~15%、1%~20%、2%~4%、2%~6%、2%~8%、2%~10%、2%~15%、2%~20%、4%~6%、4%~8%、4%~10%、4%~15%、4%~20%、6%~8%、6%~10%、6%~15%、6%~20%、8%~10%、8%~15%、8%~20%、10%~15%、10%~20%または15%~20%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているアルファカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、ヨーグルト類似物は、1%、2%、4%、6%、8%、10%、15%または20%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているアルファカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の好まれる実施形態では、ヨーグルト類似物は、2%~5%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。
【0142】
本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、0.5%~20%w/wの脂肪を含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、少なくとも0.5%w/wの脂肪を含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、多くても20%w/wの脂肪を含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、0.5%~1%、0.5%~4%、0.5%~6%、0.5%~8%、0.5%~10%、0.5%~12%、0.5%~15%、0.5%~18%、0.5%~20%、1%~4%、1%~6%、1%~8%、1%~10%、1%~12%、1%~15%、1%~18%、1%~20%、4%~6%、4%~8%、4%~10%、4%~12%、4%~15%、4%~18%、4%~20%、6%~8%、6%~10%、6%~12%、6%~15%、6%~18%、6%~20%、8%~10%、8%~12%、8%~15%、8%~18%、8%~20%、10%~12%、10%~15%、10%~18%、10%~20%、12%~15%、12%~18%、12%~20%、15%~18%、15%~20%または18%~20%w/wの脂肪を含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、0.5%、1%、4%、6%、8%、10%、12%、15%、18%または20%w/wの脂肪を含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、多くても0.5%、1%、4%、6%、8%、10%、12%、15%または18%w/wの脂肪を含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、少なくとも0.5%、1%、4%、6%、8%、10%、12%、15%または18%w/wの脂肪を含むことができる。あるいは、ヨーグルト類似物は、いかなる脂肪も含まなくてよい。
【0143】
本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、0%~10%w/wのデンプンを含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、少なくとも0.5%w/wのデンプンを含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、多くても10%w/wのデンプンを含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、0.5%~1%、0.5%~2%、0.5%~4%、0.5%~6%、0.5%~8%、0.5%~10%、1%~2%、1%~4%、1%~6%、1%~8%、1%~10%、2%~4%、2%~6%、2%~8%、2%~10%、4%~6%、4%~8%、4%~10%、6%~8%、6%~10%または8%~10%w/wのデンプンを含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、0.5%、1%、2%、4%、6%、8%または10%w/wのデンプンを含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、多くても0.5%、1%、2%、4%、6%、8%または10%w/wのデンプンを含むことができる。本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、少なくとも0.5%、1%、2%、4%、6%、8%または10%w/wのデンプンを含むことができる。
【0144】
本明細書に記載されているヨーグルト類似物は、カゼインの単一バリアント以外のタンパク質を含むことができる。例えば、他のタンパク質は、動物由来の乳業製品に見出されるタンパク質(カゼイン以外の)を含むことができる。あるいは、ヨーグルト類似物は、動物由来の乳業製品に見出されないタンパク質を含むことができ、そのような例は、植物および/または微生物タンパク質を含むことができるがこれらに限定されない。
【0145】
一部の実施形態では、ヨーグルト類似物は、単一バリアントカゼインを含み、単一バリアントカゼイン、例えば、アルファカゼインは、ヨーグルト類似物の1種または複数の特性を組成物に提供する。
【0146】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えばアルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたヨーグルト類似物の食感は、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のヨーグルト、例えば、動物性ミルクから作製されたヨーグルトの食感に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたヨーグルト類似物の食感は、カゼインのミセル形態を使用して作製されたヨーグルトまたはヨーグルト類似物、例えば、ミルクから作製されたヨーグルトまたはカゼイン塩、ミセルカゼインもしくはレンネットカゼインから作製されたヨーグルト類似物の食感に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたヨーグルト類似物の食感は、ミセルを使用して作製されたヨーグルトまたはヨーグルト類似物、例えば、ミルクから作製されたヨーグルトまたはカゼイン塩、ミセルカゼインもしくはレンネットカゼインから作製されたヨーグルト類似物の食感と比較した場合、あるいは乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)と比較した場合、改善されている/より望ましい可能性がある。ヨーグルト類似物の食感は、訓練されたヒト対象集団を使用して、または食感分析計等の機械を使用して検査することができる。食感特性は、例えば、ヨーグルトまたはヨーグルト類似物の堅固さ、粘着性、接着性および粘稠性のうち1種または複数を含むことができる。
【0147】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えばアルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたヨーグルト類似物の滑らかさまたはクリーミーさは、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のヨーグルト、例えば、動物性ミルクから作製されたヨーグルトの滑らかさに匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたヨーグルト類似物の滑らかさは、カゼインのミセル形態を使用して作製されたヨーグルトまたはヨーグルト類似物、例えば、ミルクから作製されたヨーグルトまたはカゼイン塩、ミセルカゼインもしくはレンネットカゼインから作製されたヨーグルト類似物の滑らかさに匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたヨーグルト類似物の滑らかさは、カゼイン(caseun)のミセル形態を使用して作製されたヨーグルトまたはヨーグルト類似物、例えば、ミルクから作製されたヨーグルトまたはカゼイン塩、ミセルカゼインもしくはレンネットカゼインから作製されたヨーグルト類似物の滑らかさと比較した場合、あるいは乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)と比較した場合、改善されている/より望ましい可能性がある。
【0148】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えばアルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたヨーグルト類似物の匂いは、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のヨーグルト、例えば、動物性ミルクから作製されたヨーグルトの匂いに匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたヨーグルト類似物の匂いは、カゼインのミセル形態を使用して作製されたヨーグルトまたはヨーグルト類似物、例えば、ミルクから作製されたヨーグルトまたはカゼイン塩、ミセルカゼインもしくはレンネットカゼインから作製されたヨーグルト類似物の匂いに匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたヨーグルト類似物の匂いは、カゼインのミセル形態を使用して作製されたヨーグルトまたはヨーグルト類似物、例えば、ミルクから作製されたヨーグルトまたはカゼイン塩、ミセルカゼインもしくはレンネットカゼインから作製されたヨーグルト類似物の匂いと比較した場合、あるいは乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)と比較した場合、改善されている/より望ましい可能性がある。
【0149】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えばアルファカゼインの単一バリアントを用いて作製されたヨーグルト類似物の食味は、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型のヨーグルト、例えば、動物性ミルクから作製されたヨーグルトの食味に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたヨーグルト類似物の食味は、カゼインのミセル形態を使用して作製されたヨーグルトまたはヨーグルト類似物、例えば、ミルクから作製されたヨーグルトまたはカゼイン塩、ミセルカゼインもしくはレンネットカゼインから作製されたヨーグルト類似物の食味に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたヨーグルト類似物の食味は、カゼインのミセル形態を使用して作製されたヨーグルトまたはヨーグルト類似物、例えば、ミルクから作製されたヨーグルトまたはカゼイン塩、ミセルカゼインもしくはレンネットカゼインから作製されたヨーグルト類似物の食味と比較した場合、あるいは乳製品タンパク質を欠如する植物由来のチーズ類似物(すなわち、植物由来のタンパク質、例えば、エンドウマメ、ヒヨコマメ、木の実および/もしくは他の植物性タンパク質を唯一の/主要なタンパク質源として用いて、またはタンパク質を用いずに(主にデンプンを用いて作製されたチーズ様製品等)作製されたチーズ様製品)と比較した場合、改善されている/より望ましい可能性がある。ヨーグルト類似物の食味は、訓練されたヒト対象集団を使用して検査することができる。
C.飲料
【0150】
本明細書に記載されているアルファカゼインを含む組成物等の単一バリアントカゼイン組成物を使用して、飲料等の消費可能な組成物を生成することができる。例えば、単一バリアントアルファカゼイン組成物を使用して、ミルク様またはヨーグルト様ドリンクを形成することができる。飲料製品は、ミセルまたはミセル様組成物の形成なしで形成することができる。本明細書に記載されている組成物を使用して作製された飲料製品は、動物由来の乳製品飲料またはカゼインのミセル形態を使用して作製された乳製品飲料、例えば、カゼイン塩もしくはミセルカゼインから作製されたものと同様のまたは同等な特色(食感、クリーミーさおよび食味等)を、提供することができる。本明細書に記載されている組成物を使用して作製された飲料製品は、植物由来のタンパク質を用いて作製された飲料と比較した場合、1種または複数の特色(食感、クリーミーさおよび食味等)の改善を提供することができる。
【0151】
一部の場合では、飲料は、ジュース製品、ブロス、スープ、ソーダ、ソフトドリンク、栄養ドリンク、エナジードリンク、スポーツドリンク、回復ドリンク、加熱したドリンク、コーヒーベースのドリンク、お茶ベースのドリンク、ミルクベースのドリンク、ヨーグルト様ドリンク、シェイク、非乳製品、植物ベースのマイルドなドリンク、乳児用調製粉乳ドリンク、食事代用ドリンクからなる群から選択され得る。一部の実施形態では、飲料は、炭酸(carbonation)を含む。
【0152】
本明細書に記載されている組成物を使用して、飲料組成物、例えば、ミルクまたはミルク様組成物を生成することができる。例えば、アルファカゼインの単一バリアントを使用して、ミセルまたはミセル様組成物の形成なしでミルク様類似物製品を形成することができる。本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたミルク様類似物製品は、動物性ミルクまたはミセルを使用して作製されたミルク様類似物製品、例えば、カゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたものと比較して、同様のまたは同等な特色(食感、クリーミーさおよび食味等)を提供することができる。本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたミルク様類似物製品は、植物由来のミルク類似物と比較して、1種または複数の特色(食感、クリーミーさおよび食味等)の改善を提供することができる。
【0153】
本明細書に記載されている飲料は、0.5%w/w~約10%w/wのカゼイン、例えば、アルファカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。一部の場合では、飲料は、少なくとも0.5%w/wのカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、飲料は、多くても10%w/wのカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているカゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、本明細書に記載されている飲料は、0.5%~1%、0.5%~2%、0.5%~4%、0.5%~6%、0.5%~8%、0.5%~10%、1%~2%、1%~4%、1%~6%、1%~8%、1%~10%、2%~4%、2%~6%、2%~8%、2%~10%、4%~6%、4%~8%、4%~10%、6%~8%、6%~10%または8%~10%w/wのカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。本明細書に記載されている飲料は、0.5%、1%、2%、4%、6%、8%または10%w/wのカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の好まれる実施形態では、飲料は、0.5%~5%w/wのカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。
【0154】
本明細書に記載されている飲料は、0.5%w/w~約10%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。一部の場合では、飲料は、少なくとも0.5%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているアルファカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、飲料は、多くても10%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているアルファカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、飲料は、0.5%~1%、0.5%~2%、0.5%~4%、0.5%~6%、0.5%~8%、0.5%~10%、1%~2%、1%~4%、1%~6%、1%~8%、1%~10%、2%~4%、2%~6%、2%~8%、2%~10%、4%~6%、4%~8%、4%~10%、6%~8%、6%~10%または8%~10%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているアルファカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の場合では、飲料は、0.5%、1%、2%、4%、6%、8%または10%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアント、例えば、本明細書に記載されているアルファカゼインの単一バリアントのいずれかを含むことができる。一部の好まれる実施形態では、飲料は、0.5%~5%w/wのアルファカゼインの組換え単一バリアントを含むことができる。
【0155】
一部の実施形態では、飲料は、単一バリアントカゼインを含み、単一バリアントカゼイン、例えば、アルファカゼインは、飲料の1種または複数の特性を組成物に提供する。
【0156】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えばアルファカゼインの単一バリアントを用いて作製された飲料の食感は、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型の飲料、例えば、動物性ミルクから作製されたヨーグルトドリンクの食感に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製された飲料の食感は、カゼインのミセル形態を使用して作製された飲料、例えば、ミルク、ヨーグルト、またはカゼイン塩もしくはミセルカゼインから作製された飲料の食感に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製された飲料の食感は、カゼインのミセル形態を使用して作製された飲料、例えば、ミルク、ヨーグルト、またはカゼイン塩、ミセルカゼインから作製された飲料の食感と比較した場合、あるいは植物由来のタンパク質を用いて作製された飲料と比較した場合、改善されている/より望ましい可能性がある。飲料の食感は、訓練されたヒト対象集団を使用して、および機械、例えば、粘稠性測定のための粘度計を使用して検査することができる。食感特色は、例えば、粘稠性、滑らかさ、口当たり、粒状性およびクリーミーさを含むことができる。
【0157】
本明細書に記載されている方法等によってカゼイン、例えばアルファカゼインの単一バリアントを用いて作製された飲料の食味は、動物由来の乳製品タンパク質を使用して作製された同様の型の飲料、例えば、動物性ミルクから作製されたヨーグルトドリンクの食味に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製された飲料の食味は、カゼインのミセル形態を使用して作製された飲料、例えば、ミルク、ヨーグルト、またはカゼイン塩、ミセルカゼインもしくはレンネットカゼインから作製された飲料の食味に匹敵し得る。カゼイン、例えば、アルファカゼインの単一バリアントを有する本明細書に記載されている組成物を使用して作製された飲料の食味は、カゼインのミセル形態を使用して作製された飲料、例えば、ミルク、ヨーグルト、またはカゼイン塩、ミセルカゼイン、レンネットカゼインから作製された飲料の食味と比較した場合、あるいは植物由来のタンパク質を用いて作製された飲料と比較した場合、改善されている/より望ましい可能性がある。飲料の食味は、訓練されたヒト対象集団を使用して検査することができる。
D.他の消費可能な組成物
【0158】
一部の実施形態では、食物、乳製品または乳製品様製品の類似物は、本明細書に記載されているアルファカゼインタンパク質の単一バリアントを含む組成物を使用して生産することができる。本明細書に記載されている組成物を使用して作製することができる乳製品または乳製品様類似物製品は、ミルク、クリーム、ミルクシェイク、クリーマー(液体および粉末形態)、アイスクリーム、コンデンスミルク、ヨーグルトまたはチーズの類似物を含むことができる。本物のカードから作られていないまたは液体コロイドの凝固により作製されていないチーズ類似物またはチーズ様製品は、本明細書に記載されているアルファカゼインの全長単一バリアントおよび必要に応じてそのトランケート形態を含むアルファカゼインタンパク質の単一バリアントを含む組成物を使用して作製することもできる。
【0159】
本明細書に記載されている単一バリアントアルファカゼイン組成物を使用して、消費可能な組成物、例えば、乳製品クリーム類似物またはクリーム様組成物を生成することができる。例えば、単一バリアントアルファカゼイン組成物を使用して、乳製品クリーム類似物製品を形成することができる。乳製品クリーム類似物製品は、ミセルまたはミセル様組成物の形成なしで形成することができる。本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたクリーム類似物製品は、動物由来の乳製品クリーム、またはミセルを使用して作製された乳製品クリーム類似物、例えば、カゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたものと同様のまたは同等な特色(食感、クリーミーさおよび食味等)を、提供することができる。本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたクリーム類似物製品は、植物由来のクリーム類似物と比較した場合、1種または複数の特色(食感、クリーミーさおよび食味等)の改善を提供することができる。
【0160】
本明細書に記載されている組成物を使用して、アイスクリーム類似物組成物等の消費可能な組成物を生成することができる。例えば、単一バリアントアルファカゼイン組成物を使用して、アイスクリーム類似物製品を形成することができる。アイスクリーム類似物製品は、ミセルまたはミセル様組成物の形成なしで形成することができる。本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたアイスクリーム類似物製品は、動物由来の乳製品アイスクリーム類似物、またはミセルを使用して作製されたアイスクリーム類似物、例えば、カゼイン塩もしくはレンネットカゼインから作製されたものと同様のまたは同等なものを、提供することができる。本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたアイスクリーム類似物製品は、植物由来のアイスクリーム類似物と比較した場合、1種または複数の特色(食感、クリーミーさおよび食味等)の改善を提供することができる。
【0161】
本明細書に記載されている組成物を使用して、飲料(例えば、栄養ドリンク、乳製品関連のドリンク等)、サラダドレッシング、ベーキング用成分、調理用成分等を含むがこれらに限定されない様々な消費可能な組成物を生成することができる。例えば、本明細書に記載されている単一バリアントアルファカゼイン組成物を使用して、ヨーグルト飲料、ランチドレッシング等を生成することができる。追加の例として、本明細書に記載されている単一バリアントアルファカゼイン組成物を使用して、ベーキングおよび調理のために使用される成分を生成することができる。
E.他の構成成分
【0162】
本明細書に記載されている組成物は、食品等の消費可能な組成物を生成することにおける成分として使用することができる。食品は、本明細書の他の箇所に記載されているチーズ類似物、ヨーグルト類似物製品および他の食品を含むことができる。そのような消費可能な組成物は、単一バリアントカゼインタンパク質に加えて1種または複数の成分を含むことができる。成分は、溶媒、塩、糖、脂肪、香味料、着色料等を含むことができるがこれらに限定されない。
【0163】
単一バリアントカゼインタンパク質を含む消費可能な組成物は、塩、例えば、カルシウム、亜リン酸、クエン酸、カリウム、ナトリウムおよび/または塩化物塩を含むことができる。カルシウム塩は、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、酢酸カルシウム、その同等物および/またはそれらの組合せから選択することができる。リン酸塩は、オルトリン酸塩、例えば、リン酸(二水素)一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸(二水素)一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム;ピロリン酸塩、例えば、ピロリン酸二ナトリウムまたは二カリウム、ピロリン酸三ナトリウムまたは三カリウム、ピロリン酸四ナトリウムまたは四カリウム;ポリリン酸塩、例えば、トリポリリン酸ペントナトリウムまたはカリウム、テトラポリリン酸ナトリウムまたはカリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムまたはカリウムから選択することができる。クエン酸塩は、クエン酸カルシウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウムまたはその同等物から選択することができる。消費可能な組成物は、塩の組合せを含むことができる。一部の実施形態では、消費可能な組成物は、カルシウム、リン酸およびクエン酸塩を含む。一部の実施形態では、消費可能な組成物は、カルシウムおよびリン酸塩を含む。一部の実施形態では、消費可能な組成物は、カルシウムおよびクエン酸塩を含む。一部の実施形態では、消費可能な組成物は、リン酸およびクエン酸塩を含む。
【0164】
一部の実施形態では、消費可能な組成物に脂肪が添加される。一部の場合では、脂肪は、動物由来の脂肪を本質的に含まなくてよい。本明細書で使用されている脂肪は、植物ベースの脂肪、例えば、キャノーラ油、ヒマワリ油、ココナツ油、パーム油またはそれらの組合せを含むことができる。本明細書で使用されている脂肪は、微生物により作製された組換えの動物または植物脂肪を含むことができる。本明細書で使用されている脂肪は、哺乳動物細胞で培養された組換えの動物または植物脂肪を含むことができる。
【0165】
本明細書に記載されている消費可能な組成物は、糖をさらに含むことができる。本明細書で使用されている糖は、植物ベースの単糖、二糖および/またはオリゴ糖を含むことができる。糖の例は、スクロース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、マンノース、アルロース、タガトース、キシロースおよびアラビノースを含む。
【0166】
本明細書に記載されている単一バリアントカゼインタンパク質から作製された消費可能な食物組成物およびそのような組成物を作製する方法は、1種または複数の成分を添加するかまたはそれと混合するステップを含むことができる。例えば、食物添加物を、組成物に添加するかまたはそれと混合することができる。食物添加物は、組成物に体積および/または質量を加えることができる。食物添加物は、機能的な性能および/または物理的な特徴を改善することができる。例えば、食物添加物は、凍結融解サイクルにおけるリポタンパク質の脂質部分によるゲル化または粘稠性増加を防止することができる。アンチケーキング剤(セルロース、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、デンプンブレンド)を添加して、フリーフロー組成物を作製することができる。炭水化物を添加して、熱損傷に対する抵抗性を増加させる、例えば、乾燥の際のタンパク質変性を少なくし、乾燥された組成物の安定性および流動性を改善することができる。食物添加物は、デンプン(例えば、ジャガイモ、加工ジャガイモ、トウモロコシ、米)、食物着色剤、pH調整剤(例えば、グルコノ-デルタ-ラクトン、水酸化ナトリウム)、天然香味料(例えば、モッツァレラ、パルメザン、バター、クリーム、コルビー、プロヴォローネ、アジアーゴ等)、人工香味料、香料エンハンサー、香りマスカー、バッチマーカー、食物の酸(例えば、乳酸、クエン酸)、フィラー、アンチケーキング剤(例えば、ケイアルミン酸ナトリウム)、アンチグリーニング剤(antigreening agent)(例えば、クエン酸)、食物安定剤、泡安定剤または結合剤、抗酸化剤、酸性度調節、増量剤、色の定着剤、泡立て剤(例えば、エステル型泡立て剤、クエン酸トリエチル、ラウリル硫酸ナトリウム)、乳化剤(例えば、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド)、保水剤、増粘剤、医薬品賦形剤、固体希釈剤、栄養素、甘味料、艶出し剤、保存料(例えば、ソルビン酸、ナイシン)、ビタミン(例えば、ビタミンB、ビタミンD、ビタミンA)、食事性エレメント、炭水化物、ポリオール、ガム、デンプン、小麦粉、油およびふすまを含むがこれらに限定されない。一部の場合では、香味料は、モッツァレラ香味料、チェダー香味料、パルメザン香味料または他の同様のチーズ香味料を含むことができる。
【0167】
食物着色剤は、FD&C黄色5号、FD&C黄色6号、FD&C赤色40号、FD&C赤色3号、FD&C青色1号、FD&C青色2号、FD&C緑色3号、カロテノイド(例えば、サフラン、β-カロテン)、アナトー、ベタニン、チョウマメ、カラメル着色剤、クロロフィリン、エルダーベリージュース、リコペン、カーミン、パンダン、パプリカ、ターメリック、クルクミノイド、キノリンイエロー、カルモイシン、ポンソー4R、パテントブルーVおよびグリーンSを含むがこれらに限定されない。
【0168】
pH調整のための成分は、トリス緩衝剤、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび塩酸を含むがこれらに限定されない。
F.エンドユーザー製品
【0169】
本明細書に記載されている単一バリアントカゼインタンパク質の消費可能な組成物は、エンドユーザーのための最終製品を作製するための成分として使用することができる。例えば、本明細書に記載されているチーズ製品またはチーズ類似物は、例えば、ピザ、イタリア料理トッピング、メキシコ料理トッピング、冷凍食品、良い風味のベーキングされた物品のためのトッピング、スープ、マカロニチーズ、チーズスティック等、最終製品を作製するためにエンドユーザーによって使用され得る。一部の例では、ヨーグルト類似物を使用して、ヨーグルト様製品または成分としてヨーグルトを含有する製品を作製することができる。一部の例では、消費可能な組成物を使用して、ミルク様製品またはミルク類似物または他の飲料を作製することができる。
組換え発現
【0170】
チーズ組成物の形成において使用される1種または複数のタンパク質は、組換えにより生産され得る。一部の場合では、単一バリアントカゼインタンパク質(例えば、アルファS1の単一バリアントまたはアルファS2の単一バリアント)は、組換えにより生産される。単一バリアントカゼインタンパク質、例えば、単一バリアントアルファS1カゼインタンパク質または単一バリアントアルファS2カゼインタンパク質は、任意の種由来のアミノ酸配列を有することができる。例えば、組換えアルファカゼインタンパク質は、乳牛、羊、山羊、バッファロー、馬、ヒト、シカまたはラクダアルファカゼインのアミノ酸配列を有することができる。カゼインタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、生産効率増加のためにコドン最適化することができる。例示的なアルファカゼインタンパク質配列は、単一バリアントカゼインタンパク質の組換え生産における使用のために、下の表1に提供されている。組換え単一バリアントカゼインタンパク質は、カゼインの天然に存在しないバリアントであり得る。そのようなバリアントは、ネイティブカゼイン配列と比べて1個または複数のアミノ酸挿入、欠失または置換を含むことができる。
【0171】
そのようなバリアントは、配列番号1~56に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有することができる。一部の場合では、バリアントは、配列番号4~12、16~24に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するもの等、アルファS1カゼインタンパク質のトランケート形態であり得る。
【0172】
組換え単一バリアントカゼインタンパク質、例えば、単一バリアントアルファS1カゼインタンパク質は、宿主細胞において組換えにより発現される。本明細書で使用される場合、「宿主」または「宿主細胞」は、所望の産物を生産するように選択または遺伝子改変された任意のタンパク質生産宿主を表す。例示的な宿主は、細菌、酵母、真菌、植物、昆虫および哺乳動物細胞を含む。一部の場合では、細菌宿主細胞、例えば、Lactococcus lactis、Bacillus subtilisまたはEscherichia coliを使用して、アルファカゼインタンパク質および/またはそのトランケート形態を生産することができる。他の宿主細胞は、Lactococci sp.、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus licheniformisおよびBacillus megaterium、Brevibacillus choshinensis、Mycobacterium smegmatis、Rhodococcus erythropolisおよびCorynebacterium glutamicum、Lactobacilli sp.、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarumならびにSynechocystis sp.6803等が挙げられるがこれらに限定されない細菌宿主を含む。
【0173】
一部の実施形態では、全長単一バリアントアルファカゼインタンパク質および/またはそのトランケート形態は、宿主細胞において組換えにより生産される。例えば、全長およびトランケートされた単一バリアントアルファS1カゼインタンパク質は、同じ宿主細胞において生産され得、そのような生産は、同じオープンリーディングフレーム(すなわち、同じ発現カセット)から始まることができ、トランケート形態は、例えば、翻訳後タンパク質分解性切断によって生成されるか、または全長アルファカゼインバリアントをコードする発現カセットおよびアルファカゼインバリアントのトランケート形態のためのトランケートされたオープンリーディングフレームをコードする1種もしくは複数の発現カセットを用いる等、別々のオープンリーディングフレームから生産される。あるいは、全長およびトランケートされた単一バリアントアルファS1カゼインタンパク質は、異なる宿主細胞において生産され得る。標的タンパク質の発現は、発現ベクター、プラスミド、宿主ゲノムに組み込まれた核酸、または他の手段によって提供され得る。例えば、発現のためのベクターは、(a)プロモーターエレメント、(b)シグナルペプチド、(c)異種カゼイン配列および(d)ターミネーターエレメントを含むことができる。
【0174】
カゼインの発現に使用することができる発現ベクターは、エレメント(a)、(b)、(c)および(d)を有する発現カセットを含有する発現ベクターを含む。一部の実施形態では、シグナルペプチド(b)および/またはターミネーターエレメント(d)は、必ずしもベクターに含まれなくてよい。一部の場合では、シグナルペプチドは、カゼインタンパク質のネイティブシグナル配列の一部であり得、例えば、タンパク質は、配列番号1、13、25、28、31、34、37、39、42、45、48、51または54において太字で示されるネイティブシグナル配列を含むことができる。一部の場合では、ベクターは、異種シグナル配列と共に、配列番号2、3、4~12、14、15、16~24、26、27、29、30、32、33、35、36、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55または56において例証される成熟タンパク質配列を含むことができる。一部の場合では、タンパク質は、シグナル配列を含まなくてよいが、代わりに、配列番号3、5、7、9、11、12、15、17、19、21、23、24、27、30、33、36、41、44、47、50、53または56において例証されるイニシエーターメチオニンを含むことができる。一般に、発現カセットは、同族宿主微生物のゲノムへと組み込まれた場合、または宿主細胞において維持されるプラスミドもしくは他の複製ベクター上に存在する場合、導入遺伝子の転写を媒介するように設計される。
【0175】
宿主微生物への形質転換に先立つベクターの増幅に役立つように、複製起点(e)がベクターに含有されてよい。発現ベクターで安定に形質転換された微生物の選択に役立つように、ベクターは、選択マーカー(f)を含むこともできる。発現ベクターは、宿主ゲノムへの発現ベクターの安定した組込みを容易にするために、宿主微生物への形質転換に先立つ発現ベクターの線状化を可能にする制限酵素部位(g)を含有することもできる。一部の実施形態では、発現ベクターは、エレメント(b)、(e)、(f)および(g)のいずれも含まない場合も含め、エレメント(b)、(e)、(f)および(g)のいずれかのサブセットを含有することができる。当業者にとって公知の他の発現エレメントおよびベクターエレメントは、本明細書に記載されているエレメントと組み合わせてまたはその代わりに使用することができる。
【0176】
グラム陽性細菌(Lactococcus lactisおよびBacillus subtilis等)を使用して、標的タンパク質を培地へと分泌させることができ、グラム陰性細菌(Escherichia coli等)を使用して、標的タンパク質を周辺質または培地へと分泌させることができる。一部の実施形態では、発現された細菌により発現されたタンパク質は、いかなる翻訳後修飾(PTM)も有しなくてよく、これは、グリコシル化されていないおよび/またはリン酸化されていなくてよいことを意味する。グラム陽性およびグラム陰性細菌の両方を使用して、タンパク質を細胞内で生産することができる。そのような例では、細胞を溶解して、タンパク質を回収することができる。
【0177】
単一バリアントカゼインタンパク質は、ナイシン誘導性発現系(PnisAプロモーターによって調節)、乳酸塩誘導性発現系(P170プロモーターによって調節)の両方または他の同様の誘導性の系において、ならびに構成的に発現される系(P secAプロモーターによって調節)においてL.lactisにおいて発現および生産させることができ、これらは両者共に、ベクターpNZ8149(lacF遺伝子補充/レスキュー原理)を使用したNZ3900等の食品グレード選択株において為される。機能的なタンパク質の分泌は、L.lactisによって分泌される主要Sec依存性タンパク質であるUsp45(SP(usp45))のシグナルペプチドによって可能にすることができる。例えば、アルファS1カゼインおよびそのトランケートは、合成オペロンを使用してL.lactisにおいて同時発現または個々に発現され得る。
【0178】
B.subtilisは、タンパク質発現に干渉し得る複数の細胞内および細胞外プロテアーゼを有する。一部の実施形態では、B.subtilis株は、細胞内および/または細胞外プロテアーゼの種類および量を低減させるように修飾されており、例えば、それぞれ7(KO7)および8(WB800N)のプロテアーゼが欠失された株を使用することができる。
【0179】
組換えタンパク質分泌を駆動するために、Clostridium thermocellumのアルファ-アミラーゼであるamyQのシグナルペプチドを使用することができる、または当技術分野で公知の別の細菌シグナルペプチドを使用することができる。その上、ネイティブカゼインシグナルペプチド配列を、B.subtilisにおいて異種発現させることができる。各カゼインタンパク質は、それ自体のシグナルペプチド配列を有しており、それを系で使用することができる。シグナルタンパク質は、カゼインタンパク質と相互に組み合わせる(cross-combine)ことができる。pHT01ベクターは、B.subtilisにおける誘導性タンパク質発現のために形質転換および発現シャトルとして使用することができる。ベクターは、B.subtilisのgroES-groELoperonに先行する強いσ依存性プロモーターに基づき、これは、lacオペレーターの付加により効率的に制御可能な(IPTG誘導性)プロモーターに変換された。pHT01は、アンピシリン抵抗性をE.coliに、クロラムフェニコール抵抗性をB.subtilisに提供する、E.coli/B.subtilisシャトルベクターである。
【0180】
単一バリアントカゼインタンパク質は、安全な研究室株、例えば、E.coli BL21(例示的な株BL21(DE3)またはBL21 AI)もしくはその派生体、またはK12株(例示的な株MG1655またはW3110)のような野生型もしくはその派生体を使用してE.coliにおいて生産させることができる。誘導性(IPTG誘導性、ラクトース誘導性、アラビノース誘導性、ラムノース誘導性等)、自己誘導性(リン酸塩枯渇ベース等)および構成的プロモーターを使用して、カゼイン発現を駆動することができる。単一バリアントカゼインタンパク質は、細胞内で生産させることができる、または周辺質および/もしくは上清へと分泌させることができる。組換えタンパク質分泌を駆動するために、Sec依存性分泌経路(OmpA、OmpC、OmpT、pelB、LamB等)、SRP分泌経路(TolA、DsbA、DsbC、TorT等)およびTAT分泌経路(TorA、SufI等)の細菌シグナルペプチドを使用することができる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0181】
実施形態
[実施形態1]:アルファカゼインタンパク質の組換え単一バリアントを含む消費可能な組成物であって、単一バリアントが、接着性、伸張性、食感、口当たり、融解、褐変、硬度、クリーミーさ、食味、匂いおよび柔軟性からなる群から選択される少なくとも1種の乳製品様特性を提供し、単一バリアントが、動物由来のカゼインではなく、カゼインミセルから物理的に解離しておらず、組成物が、いかなる追加のカゼインも欠如する、消費可能な組成物。
【0182】
[実施形態2]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、カゼイン塩に由来しない、実施形態1に記載の消費可能な組成物。
【0183】
[実施形態3]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、アルファS1カゼインタンパク質である、実施形態1または実施形態2に記載の消費可能な組成物。
【0184】
[実施形態4]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、アルファS2カゼインタンパク質である、実施形態1または実施形態2に記載の消費可能な組成物。
【0185】
[実施形態5]:いかなる動物に生産されたタンパク質も含まない、実施形態1~3のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0186】
[実施形態6]:いかなる他の動物由来の乳製品タンパク質も欠如する、実施形態4に記載の消費可能な組成物。
【0187】
[実施形態7]:少なくとも1種の乳製品様特性が、ミルク由来のチーズ類似物と比較して改善されている、実施形態1~5のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0188】
[実施形態8]:少なくとも1種の乳製品様特性が、カゼイン塩由来のチーズ類似物と比較して改善されているか、またはレンネットカゼイン由来のチーズ類似物と比較して改善されている、実施形態1~5のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0189】
[実施形態9]:少なくとも1種の乳製品様特性が、植物由来のチーズ類似物と比較して改善されている、実施形態1~5のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0190】
[実施形態10]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、少なくとも1個の非ネイティブ翻訳後修飾を含む、実施形態1~9のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0191】
[実施形態11]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、少なくとも1個のネイティブ翻訳後修飾をさらに含む、実施形態10に記載の消費可能な組成物。
【0192】
[実施形態12]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、ネイティブアルファカゼインタンパク質の1個または複数の翻訳後修飾を欠如する、実施形態1~11のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0193】
[実施形態13]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、少なくとも1個の非ネイティブ翻訳後修飾をさらに含む、実施形態12に記載の消費可能な組成物。
【0194】
[実施形態14]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、翻訳後修飾されていない、実施形態13に記載の消費可能な組成物。
【0195】
[実施形態15]:全長アルファカゼインタンパク質を含む、実施形態1~14のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0196】
[実施形態16]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、配列番号2、3、14、15、26、27、29、30、32、33、35、36、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55または56のうちいずれか1種を含む、実施形態1~14のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0197】
[実施形態17]:1種または複数のトランケートされたアルファカゼインタンパク質をさらに含む、実施形態16に記載の消費可能な組成物。
【0198】
[実施形態18]:トランケートされたアルファカゼインタンパク質が、成熟ネイティブアルファカゼインタンパク質の1個または複数のN末端アミノ酸を欠如する、実施形態17に記載の消費可能な組成物。
【0199】
[実施形態19]:トランケートされたアルファカゼインタンパク質が、ネイティブアルファカゼインタンパク質の1~23個の間のN末端アミノ酸を欠如するアルファカゼインもしくはネイティブアルファカゼインタンパク質の1~59個の間のN末端アミノ酸を欠如するアルファカゼイン、またはそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態18に記載の消費可能な組成物。
【0200】
[実施形態20]:トランケートされたアルファカゼインタンパク質が、配列番号4~12、16~24のうちいずれか1種を含む、実施形態19に記載の消費可能な組成物。
【0201】
[実施形態21]:トランケートされたアルファカゼインタンパク質が、ネイティブアルファカゼインタンパク質の1個または複数のC末端アミノ酸を欠如する、実施形態17~20のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0202】
[実施形態22]:組成物の総組換えアルファカゼインタンパク質の0%~20%wt/wtの間が、アルファカゼインタンパク質の1種または複数のトランケート形態である、実施形態17に記載の消費可能な組成物。
【0203】
[実施形態23]:アルファカゼインタンパク質の1種または複数のトランケート形態が、組成物の総組換えアルファカゼインタンパク質の1%~20%wt/wtの間を構成する、実施形態22に記載の消費可能な組成物。
【0204】
[実施形態24]:組換えアルファカゼインタンパク質が、ウシ、ヤギもしくはヒツジアルファカゼインタンパク質のアミノ酸配列、または配列番号2、3、14、15、26、27、29、30、32、33、35、36、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55もしくは56のうちいずれか1種、または配列番号2、3、14、15、26、27、29、30、32、33、35、36、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55もしくは56のうちいずれか1種に対して少なくとも70%、80%、85%もしくは90%同一性を有する配列を含む、実施形態1~23のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0205】
[実施形態25]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、N末端に1個または複数の非ネイティブアミノ酸を含む、実施形態1~24のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0206】
[実施形態26]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、N末端位置に非ネイティブメチオニンを含む、実施形態25に記載の消費可能な組成物。
【0207】
[実施形態27]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、カゼインミセルに由来しない、実施形態1~26のいずれかに記載の消費可能な組成物。
【0208】
[実施形態28]:実施形態1~27に記載の消費可能な組成物のいずれかを含む乳業製品類似物であって、チーズ類似物、ヨーグルト類似物、クリーム類似物およびアイスクリーム類似物からなる群から選択される乳業製品類似物。
【0209】
[実施形態29]:非動物性供給源由来の脂肪または油をさらに含む、実施形態28に記載の乳業製品類似物。
【0210】
[実施形態30]:いかなる動物由来の乳製品タンパク質も欠如する、実施形態28または実施形態29に記載の乳業製品類似物。
【0211】
[実施形態31]:いかなる他のカゼインタンパク質も欠如する、実施形態28~30のいずれかに記載の乳業製品類似物。
【0212】
[実施形態32]:アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、乳業製品類似物内にミセル形態で含まれていない、実施形態28~31のいずれかに記載の乳業製品類似物。
【0213】
[実施形態33]:チーズ類似物である、実施形態28~32のいずれかに記載の乳業製品類似物。
【0214】
[実施形態34]:チーズ類似物が、モッツァレラ類似物、チェダー類似物またはパルメザン類似物である、実施形態33に記載の乳業製品類似物。
【0215】
[実施形態35]:チーズ類似物が、モッツァレラ類似物であり、アルファカゼインタンパク質の単一バリアントが、アルファS1カゼインである、実施形態33に記載の乳業製品類似物。
【0216】
[実施形態36]:アルファS1カゼインが、ウシアルファS1カゼインであり、組成物におけるアルファS1カゼインが、0~20%の間のアルファカゼインの1種または複数のトランケート形態を含む、実施形態35に記載の乳業製品類似物。
【0217】
[実施形態37]:組成物におけるアルファS1カゼインが、1~20%の間のアルファS1カゼインの1種または複数のトランケート形態を含む、実施形態35に記載の乳業製品類似物。
【0218】
[実施形態38]:アルファS1カゼインのN末端トランケート形態を含む、実施形態36または実施形態37に記載の乳業製品類似物。
【0219】
[実施形態39]:N末端トランケート形態が、配列番号4~12、16~24またはそれらの組合せのうちいずれか1種から選択される、実施形態38に記載の乳業製品類似物。
【0220】
[実施形態40]:(a)植物由来の油;(b)植物由来のデンプン;(c)糖;および(d)塩のうち1種または複数をさらに含む、実施形態28~39のいずれかに記載の乳業製品類似物。
【実施例
【0221】
次の説明目的の実施例は、本明細書に記載されている組成物および方法の実施形態の代表であり、決して限定を意味するものではない。
(実施例1)
ナイシン誘導性の系(NICE)によるLactococcus lactisにおけるカゼインタンパク質の発現
構築物設計、クローニングおよび形質転換
ウシアルファS1カゼイン(バリアントC)タンパク質コード配列(ネイティブシグナルペプチドなし)を、Lactococcus lactisにおける発現のためにコドン最適化し、合成オペロンを、ナイシン誘導性プロモーター下での2種のタンパク質の同時発現および分泌のために構築した。ネイティブで分泌しているラクトコッカスタンパク質Usp45由来のシグナルペプチド配列を使用して、タンパク質分泌を駆動した。次いで、合成オペロンを、制限酵素消化適合性部位を経てE.coliカスタムベクターへとクローニングし、サンガー配列決定により確認し、そこから、制限酵素消化およびライゲーションによりナイシン誘導性pNZ8149ベクターへとサブクローニングした。
【0222】
ベクターを、電気穿孔により適合性L.lactis株NZ3900へと形質転換し、ラクトースを補充した完全限定培地(CDM)を選択のために使用した。陽性クローンをコロニーPCRにより確認し、3個の陽性クローンをタンパク質発現誘導および分析に供した。
タンパク質発現および分析
【0223】
液体培養において30℃で個々のコロニーを育成し、2.5時間にわたりナイシンによりタンパク質生産を誘導した(対照試料は誘導せずに置いた)。次に、細胞を遠心分離によって収集し、TCA沈殿された上清および溶解された細胞ペレットを、クーマシーゲル染色(SDS-PAGE)およびケミルミネッセンス(アルファS1カゼイン、LSBio一次抗体に対するウエスタンブロット)によって分析した。
(実施例2)
pH誘導性の系によるL.lactisにおける発現
【0224】
上述の構築物と同様に、ナイシンプロモーターをL.lactisのためのpH/乳酸塩誘導性プロモーターであるP170プロモーターに置き換えてアルファカゼインタンパク質構築物を創出した。これらの構築物のそれぞれが、分泌シグナルペプチドを含有した。
【0225】
アルファS1カゼインおよびそのトランケート形態は、ウエスタンブロットにおいて分泌によりL.lactisにおいて検出された。プロセシングされていないタンパク質産物は細胞内に蓄積したが、成熟タンパク質およびそのトランケート形態の分泌が検出された。
(実施例3)
B.subtilisにおける発現
構築物設計、クローニングおよび形質転換
【0226】
C末端にHisタグが付けられたウシアルファS1カゼイン(バリアントC)タンパク質コード配列(ネイティブシグナルペプチドなし)を、Bacillus subtilisにおける発現のためにコドン最適化した。組換えタンパク質の効率的な分泌について報告されたアルファ-アミラーゼBacillus amyloliquefaciensであるamyQのコドン最適化されたシグナルペプチドありおよびなしで、構築物を創出した。形質転換および発現IPTG誘導性ベクターpHT01へのGibsonクローニングによりE.coliにより構築物をクローニングし、サンガー配列決定により確認した。pHT01は、アンピシリン抵抗性をE.coliに、クロラムフェニコール抵抗性をB.subtilisに提供するE.coli/B.subtilisシャトルベクターである。陽性クローンを、化学的にコンピテントなB.subtilis WB800Nへとさらに形質転換した。陽性クローンをコロニーPCRにより確認し、3個の陽性クローンをタンパク質発現誘導および分析に供した。
タンパク質発現および分析
【0227】
液体培養において37℃で個々のコロニーを育成し、1時間、2時間および6時間にわたりIPTGによりタンパク質生産を誘導した(対照試料は誘導せずに置いた)。次いで、細胞を遠心分離によって収集し、TCA沈殿された上清および溶解された細胞ペレットを、クーマシーゲル染色(SDS-PAGE)およびケミルミネッセンス(HisタグおよびアルファS1カゼインに対するウエスタンブロット)によって分析した。
【0228】
ウエスタンブロッティングは、B.subtilisにおけるアルファS1カゼインの発現を示した。
(実施例4)
E.coliにおける発現
構築物設計、クローニングおよび形質転換
【0229】
Escherichia coliのためにコドン最適化されたウシアルファS1カゼイン(バリアントC)またはヒツジアルファS1カゼインタンパク質コード配列(ネイティブシグナルペプチドなし)を、IPTG誘導性の市販のpETベクターへとクローニングした。タンパク質コード配列のみがオープンリーディングフレーム内に残されるような仕方で、DNA断片およびベクターのGibson反応によりクローニングを行った。Gibson反応物をコンピテント細胞へと形質転換し、サンガー配列決定によって確認した。次いで、ベクターを、化学的にコンピテントなE.coli BL21(DE3)細胞もしくはその派生体またはK12株のような野生型もしくはその派生体へと形質転換し、いくつかの単一コロニーを発現についてスクリーニングした。
タンパク質発現、分析および精製
【0230】
液体培養において37Cで個々のコロニーを育成し、4時間にわたりIPTGによりタンパク質生産を誘導した。次いで、細胞を遠心分離によって収集し、溶解された細胞ペレットを、クーマシーゲル染色(SDS-PAGE)およびケミルミネッセンス(アルファS1カゼインに対するウエスタンブロット)によって分析した。相分離を使用してタンパク質を精製した。精製された産物を、上の説明と同様にクーマシー染色されたゲルにおいて分析した。アルファS1カゼインは、E.coliにおいて細胞内に発現され、クーマシー染色されたタンパク質ゲルにおける検出に成功し、精製された。アルファカゼインの例示的な生産は、図1に説明されており、図中、アルファS1カゼインおよび2種のバリアント:N末端トランケートされたF24-199ウシアルファS1カゼインおよびN末端トランケートされたM60-199ウシアルファS1カゼインも見出された。
(実施例5)
組換え単一バリアントアルファカゼインタンパク質由来のモッツァレラチーズ類似物およびその特性
【0231】
組換え非リン酸化ウシアルファS1カゼインを使用して、NCモッツァレラチーズと命名された非ミセルモッツァレラチーズ類似物を作製した。カゼイン、予め温めたココナツ油、クエン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩およびグルコースを、表2に指定された濃度でビーカーに添加した。これに、水、CaClおよび加工ジャガイモデンプンのミックスを、表2に指定された濃度で添加した。ビーカーを、85℃の温度に予め設定されたウォーターバスに移動させ、9分間にわたり300rpmのスピードで混合用プロペラを使用して内容物を混合した。乳酸を添加し、さらに1分間混合した。その結果生じる混合物は、均質な非ミセル塊になり、これを標準の型に移し、冷蔵庫内に16~24時間静置した。インキュベーション後に、NCモッツァレラチーズ類似物を秤量して、収量推定を得た。
【表2-1】
【表2-2】
【0232】
NC1モッツァレラチーズ類似物試料を、定性的および定量的パラメーター、例えば、pH、伸張性および食感プロファイルについて分析した。これらのパラメーターを、市販の低水分モッツァレラチーズ、市販の模造モッツァレラチーズおよび市販の植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズと比較した。低水分モッツァレラチーズは、ミルクから作製されており、この場合、カゼインは、ミセルであり、バリアントのその天然の高度な複雑さ(アルファS1、アルファS2、ベータ、カッパー;リン酸化およびグリコシル化)を生じる。模造モッツァレラチーズは、植物ベースの脂肪とのミルクカゼインブレンドから作製されており、この場合、ミルク由来のミセルカゼインは、レンネット処理および乾燥されて、ミルクタンパク質濃縮物となる。植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズは、カゼインタンパク質を有しない。
【0233】
焼きたてのピザの中心にフォークを挿入し、チーズひもが全て切断されるまで持ち上げることにより、ピザフォーク伸張性検査を行って、チーズ伸展性を定量化した。これを行うために、6gのチーズを細片に刻んで、4gのトマトソースでトッピングされた4”インチトルティーヤの上に置いた。試料を600°Fで90秒間ベーキングした。定規を使用して伸張性を測定し、検査は、オーブンからピザを取り出した直後に行った。
【0234】
食感プロファイルは、TA-55穿刺用プローブを備えるTA-XT plus食感分析計において分析した。1.5~1.9gのチーズ試料を1.5cm l×1.5cm w×1cm hの寸法にカットした。検査は、4℃および外界温度で少なくとも30分間貯蔵された試料において行った。
【0235】
チーズにおける唯一のタンパク質成分としての組換え非リン酸化アルファS1カゼインおよびそのトランケート形態から作製されたNC1モッツァレラチーズ類似物は、行った検査において動物由来の乳製品様の融解、乳製品様の伸張性および乳製品様の食感特性を示した。固化したチーズのpHは、5.9であった。
【0236】
ピザフォーク伸張性検査は、NC1モッツァレラチーズ類似物が、>12インチ伸張したことを示した(表3、図2)。比較すると、低水分モッツァレラは、>18インチ伸張したが、模造モッツァレラは、<10インチしか伸張しなかった。植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズは、伸張性を示さず、これは<1インチ伸張した。
【0237】
食感プロファイル分析は、表3に示される通りの硬度、接着性、回復力、凝集性、弾力性および噛み応えを示した(表3、図3)。NC1モッツァレラチーズ類似物は、本物の乳製品低水分モッツァレラと比較した場合、ほとんど同じ凝集性および弾力性(<10%偏差)、非常に同様の硬度および噛み応えプロファイル(<30%偏差)を示した。これは、低水分モッツァレラと模造モッツァレラチーズの両方と比較して、一貫して僅かにより硬く、より回復力があり、より凝集性があり、より噛み応えがあった。比較すると、植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズは、乳製品挙動から逸脱しており、極めて硬く(ほぼ4.6×より硬い)、噛み応えがあり(ほぼ3.9×より噛み応えがある)、接着性がある(ほぼ19.6×より接着性がある)。
【0238】
興味深いことに、本物の乳製品低水分モッツァレラと比較した場合、NC1モッツァレラチーズ類似物は、接着性および弾力性に関して模造モッツァレラとは異なる傾向を示す。模造モッツァレラは、本物の乳製品モッツァレラよりも接着性があり弾力性があるが、NC1モッツァレラチーズ類似物は、本物の乳製品モッツァレラよりも接着性が低く弾力性が低い。接着性は、プローブからチーズを除去する(すなわち、歯に固着しているそれを除去する)のに要求される力を表すため、低減した接着性は、有利なチーズ特性である。
【表3-1】
【表3-2】
(実施例6)
塩化カルシウムを欠如する変更された製剤による組換え単一バリアントアルファカゼインタンパク質由来のモッツァレラチーズ類似物の特性
【0239】
組換え非リン酸化アルファS1カゼインを使用して、ニューカルチャー(New Culture)(NC2)モッツァレラチーズと命名された非ミセルモッツァレラチーズ類似物を作製した。カゼイン、予め温めたココナツ油、クエン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウムおよびグルコースを、表4に指定された濃度でビーカーに添加した。これに、水および加工ジャガイモデンプンのミックスを、表4に指定された濃度で添加した。ビーカーを、85℃の温度に予め設定されたウォーターバスに移動させ、9分間にわたり300rpmのスピードで混合用プロペラを使用して内容物を混合した。乳酸を添加し、さらに1分間混合した。その結果生じる混合物は、均質な非ミセル塊になり、これを標準の型に移し、冷蔵庫内に3日間静置した。冷蔵庫貯蔵後に、NCモッツァレラチーズ類似物を秤量して、収量推定を得た。
【表4】
【0240】
NC2モッツァレラチーズ類似物試料を、定性的および定量的パラメーター、例えば、pH、水分、融解、伸張性および食感プロファイルについて分析した。これらのパラメーターを、市販の低水分モッツァレラチーズ、市販の模造モッツァレラチーズおよび市販の植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズと比較した(これらのチーズに関するさらなる説明については実施例5を参照)。
【0241】
チーズ融解は、黒色の磁気温床の上に搭載された特注のイメージングステーションを使用した修正Schreiber融解検査によって数量化した。0.5gのチーズを、磁気温床の上にて95℃で15分間融解した。融解のタイムラプスを記録して、ピクセルを測定することにより融解面積の増加を測定した。融解値は、融解前の融解されていない面積で融解された面積を割ることにより計算した。1を超える融解値は、融解することを指し示す。
【0242】
オーブン内で10分間90℃で融解された伸展性装備内に置かれた人の手で切ったチーズ細片の6g試料に六つ又フックを挿入し、チーズひもが全て切断されるまで持ち上げることにより、伸展性検査を食感分析計において行って、チーズ伸展性を定量化した。チーズ伸張性の程度を表す破損までの距離(全てのひもの切断)、およびチーズを伸張するのに必要とされる引っ張り強さを表す伸展させるための仕事を数量化した。検査は、冷蔵庫から出され、次いで少なくとも30分間外界温度で維持された試料において行った。
【表5】
【0243】
カルシウムを欠如する製剤により組換え非リン酸化アルファS1カゼインから作製されたNC2モッツァレラチーズ類似物は、乳製品様の融解、乳製品様の伸張性および乳製品様の伸展性特性を示した。固化したNC2モッツァレラチーズ類似物の水分およびpHは、それぞれ45.7%および5.7であった。
【0244】
驚くべきことに、本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたNC2モッツァレラチーズ類似物は、実施例5および7における製剤よりも優れた融解を示し、2.1×の融解値に達した(表5、図4)。比較すると、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラは、それぞれ2.5×および2.0×の融解値に達した。植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズは、0.8×の融解値に達し、融解の欠如(およびさらには縮小)を示唆した。
【0245】
NC2モッツァレラチーズ類似物は、修正Schreiber融解検査中、低水分モッツァレラよりも遅い速度で融解し、若干より後にそのピーク融解に達した。模造モッツァレラおよび低水分モッツァレラは、最大融解のためにほぼ4~6分間を必要とした一方、NC2モッツァレラチーズ類似物は、ほぼ6.5分間で完全に融解した(図4)。
【0246】
NC2モッツァレラチーズ類似物は、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラとほぼ同一の伸展性を示した一方で、植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズは、全く伸張することができなかった(表5、図5)。NC2モッツァレラチーズ類似物を伸張するのに必要とされる引っ張り強さ(伸展させるための仕事値によって指し示される、表5)は、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラを伸張するのに必要とされる範囲の間であった。表5における破損までの距離値によって指し示される通り、NC2チーズ類似物は、低水分モッツァレラに匹敵するほどに伸張し、模造モッツァレラよりも大幅に優れていた。NC2モッツァレラチーズ類似物は、ほぼ228mmの長さまで伸張した。比較すると、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラは、それぞれほぼ224mmおよびほぼ189mmの長さまで伸張した(表5)。
(実施例7)
異なる脂肪組成による組換え単一バリアントアルファカゼインタンパク質由来のモッツァレラチーズ類似物の特性
【0247】
組換え非リン酸化アルファS1カゼインを使用して、ニューカルチャー(NC3)モッツァレラチーズと命名された非ミセルモッツァレラチーズ類似物を作製した。カゼイン、水、パームステアリン、キャノーラ油、クエン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、加工ジャガイモデンプンおよび塩化ナトリウムを、表6に指定された濃度でビーカーに添加した。これに、CaClを表6に指定された濃度で添加した。ビーカーを、85℃に予め設定されたウォーターバスに移動させ、9分間にわたり300rpmのスピードで混合用プロペラを使用して内容物を混合した。天然香料および乳酸を添加し、成分をさらに1分間混合した。その結果生じる混合物は、均質な非ミセル塊になり、これを標準の型に移し、冷蔵庫内に7日間静置した。インキュベーション後に、NC3モッツァレラチーズ類似物を秤量して、収量推定を得た。
【表6-1】
【表6-2】
【0248】
NC3モッツァレラチーズ類似物試料を、実施例6に示される通りに、定性的および定量的パラメーター、例えば、pH、水分、融解、伸張性および食感プロファイルについて分析した。これらのパラメーターを、低水分モッツァレラチーズ、模造モッツァレラチーズおよび植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズと比較した(さらなる説明については実施例5を参照)。
【0249】
チーズ融解は、実施例6に記載されている通りに修正Schreiber融解検査によって数量化した。伸展性検査を、実施例6に記載されている通りにTA.XTPlus食感分析計において行って、チーズ伸展性を定量化した。検査は、4℃で貯蔵された試料において行った。
【表7】
【0250】
食感プロファイルは、TA-55穿刺用プローブを備えるTA-XT plus食感分析計において分析した。1.5~1.9gのチーズ試料を1.5cm l×1.5cm w×1cm hの寸法にカットした。検査は、4℃で貯蔵された試料において行った。
【表8】
【0251】
異なる脂肪組成により組換え非リン酸化アルファS1カゼインから作製されたNC3モッツァレラチーズ類似物は、乳製品様の融解、乳製品様の伸張性および乳製品様の伸展性特性を示した。固化したNC3モッツァレラチーズ類似物の水分およびpHは、それぞれ44.8%および5.7であった。
【0252】
本明細書に記載されている組成物を使用して作製されたNC3モッツァレラチーズ類似物は、1.6×の融解値に達した(表7、図6)。比較すると、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラは、それぞれ2.5×および2×の融解値に達した。植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズは、0.8×の融解値に達し、融解の欠如(およびさらには縮小)を示唆した。
【0253】
驚くべきことに、NC3モッツァレラチーズ類似物は、修正Schreiber融解検査中、低水分モッツァレラよりも速い速度で融解し、より早くそのピーク融解に達する。模造モッツァレラおよび低水分モッツァレラは、最大融解のためにほぼ4~6分間を必要とした一方、NC3モッツァレラチーズ類似物は、ほぼ2分間で完全に融解した(図6)。
【0254】
これは、パームステアリンおよびキャノーラ油の組合せによるココナツ油の置き換えが原因である可能性が高い。
【0255】
NC3モッツァレラチーズ類似物は、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラとほぼ同一の伸展性を示した一方で、植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズは、全く伸張することができなかった(表7、図7)。NC1モッツァレラチーズ類似物を伸張するのに必要とされる引っ張り強さ(伸展させるための仕事値によって指し示される、表7)は、低水分モッツァレラを伸張するのに必要とされる引っ張り強さと同様であったが、一方、模造モッツァレラは、大幅により低い引っ張り強さを必要とした。NC3チーズ類似物は、表7における破損までの距離値によって指し示される通り、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラと同じ程度まで伸張した。NC3モッツァレラチーズ類似物は、ほぼ230mmの長さまで伸張した。比較すると、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラは、それぞれほぼ228mmおよびほぼ225mmの長さまで伸張した(表7)。
【0256】
食感プロファイル分析は、硬度、接着性、回復力、凝集性、弾力性および噛み応えを示した(表8、図8に示される通り)。NC3モッツァレラチーズ類似物は、模造モッツァレラと比較した場合、ほとんど同じ噛み応え(<10%偏差)を示した。比較すると、植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズは、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラと比較して、より高い噛み応え(>1.5×)を有する。NC3モッツァレラチーズは、他の商業チーズと比較して、同様の回復力(<10%偏差)、より高い硬度、弾力性ならびにより低い接着性および凝集性を示す。
【0257】
興味深いことに、動物由来の乳製品低水分モッツァレラと比較した場合、NC3モッツァレラチーズ類似物は、接着性に関して模造モッツァレラとは異なる傾向を示す。模造モッツァレラは、本物の乳製品モッツァレラよりも接着性があるが、NC3モッツァレラチーズ類似物は、接着性が低い。接着性は、消費者の口内の固着性(すなわち、噛んだときに歯に固着すること)に対応するプローブからチーズを除去するのに要求される力を表すため、低減した接着性は、好都合なチーズ特性である。
(実施例8)
変更された製剤および変更された処理パラメーターによる組換え単一バリアントアルファカゼインタンパク質由来のモッツァレラチーズ類似物の特性
【0258】
組換え非リン酸化アルファS1カゼインを使用して、ニューカルチャー(NC4)モッツァレラチーズと命名された非ミセルモッツァレラチーズ類似物を作製した。カゼイン、水、パームステアリン、キャノーラ油、加工ジャガイモデンプン、塩化ナトリウムおよびCaClを、表9に指定された濃度でビーカーに添加した。これに、クエン酸三ナトリウムおよびリン酸二カリウムを表9に指定された濃度で添加した。ビーカーを、85℃に予め設定されたウォーターバスに移動させ、4分間にわたり500rpmのスピードで、続いて1分間300rpmで混合用プロペラを使用して内容物を混合し、この時点で、天然香料も添加した。乳酸を添加し、成分を300rpmでさらに1分間混合した。その結果生じる混合物は、均質な非ミセル塊になり、これを標準の型に移し、冷蔵庫内に7日間静置した。インキュベーション後に、NC4モッツァレラチーズ類似物を秤量して、収量推定を得た。
【表9-1】
【表9-2】
【0259】
NC4モッツァレラチーズ類似物試料を、定性的および定量的パラメーター、例えば、pH、水分、融解、伸張性および食感プロファイルについて分析した。これらのパラメーターを、低水分モッツァレラチーズ、模造モッツァレラチーズおよび植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズと比較した(さらなる説明については実施例5を参照)。
【0260】
チーズ融解は、実施例6に記載されている通りに修正Schreiber融解検査によって数量化した。伸展性検査を、実施例6に記載されている通りにTA.XTPlus食感分析計において行って、チーズ伸展性を定量化した。検査は、4℃で貯蔵された試料において行った。
【表10】
【0261】
実施例5、6および7と比較して異なる製剤および異なる処理パラメーターを使用して、チーズにおける唯一のタンパク質成分としての組換え非リン酸化アルファS1カゼインおよびそのトランケート形態から作製されたNC4モッツァレラチーズ類似物もまた、乳製品様の融解、乳製品様の伸張性および乳製品様の伸展性特性を示した。固化したNC4モッツァレラチーズ類似物の水分およびpHは、それぞれ48.1%および5.7であった。
【0262】
本明細書に記載されている組成物を使用したNC4モッツァレラチーズ類似物は、1.5×の融解値に達した(表10、図9)。比較すると、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラは、それぞれ2.5×および2×の融解値に達した。植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズは、0.8×の融解値に達し、融解の欠如(およびさらには縮小)を示唆した。
【0263】
より注目すべきことに、NC4モッツァレラチーズ類似物は、修正Schreiber融解検査中、低水分モッツァレラよりも速い速度で融解し、より早くそのピーク融解に達した。模造モッツァレラおよび低水分モッツァレラは、最大融解のためにほぼ4~6分間を必要とした一方、NC4モッツァレラチーズ類似物は、ほぼ2分間で完全に融解した(図9)。
【0264】
NC4モッツァレラチーズ類似物は、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラと同様の伸展性を示した一方で、植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズは、全く伸張することができなかった(表10、図10)。NC4モッツァレラチーズ類似物を伸張するのに必要とされる引っ張り強さ(伸展させるための仕事値によって指し示される、表10)は、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラの引っ張り強さの範囲内であった。NC4チーズ類似物は、表10における破損までの距離値によって指し示される通り、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラよりも良く伸張した。NC4モッツァレラチーズ類似物は、ほぼ241mmの長さまで伸張した。比較すると、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラは、それぞれほぼ228mmおよびほぼ225mmの長さまで伸張した(表10、図10)。
(実施例9)
異なる種由来の組換え単一バリアントアルファカゼインタンパク質由来のモッツァレラチーズ類似物の特性
【0265】
組換え非リン酸化ヒツジアルファS1カゼインを使用して、ニューカルチャー(NC5)モッツァレラチーズと命名された非ミセルモッツァレラチーズ類似物を作製した。カゼイン、水、パームステアリン、キャノーラ油、クエン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、加工ジャガイモデンプンおよび塩化ナトリウムを、表11に指定された濃度でビーカーに添加した。ビーカーを、85℃に予め設定されたウォーターバスに移動させ、9分間にわたり300rpmのスピードで混合用プロペラを使用して内容物を混合した。天然香料を添加し、成分をさらに1分間混合した。その結果生じる混合物は、均質な非ミセル塊になり、これを標準の型に移し、冷蔵庫内に5日間静置した。インキュベーション後に、NC5モッツァレラチーズ類似物を収量推定のために秤量した。
【表11】
【0266】
NC5モッツァレラチーズ類似物試料を、実施例7に記載されている通りに定性的および定量的パラメーター、例えば、pH、水分、融解、伸張性および食感プロファイルについて分析した。これらのパラメーターを、低水分モッツァレラ、模造モッツァレラおよび植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズと比較した(さらなる説明については実施例7を参照)。
【表12】
【0267】
チーズにおける唯一のタンパク質成分としての組換え非リン酸化ヒツジアルファS1カゼインから作製されたNC5モッツァレラチーズ類似物は、モッツァレラチーズの乳製品様の融解、乳製品様の伸張性および乳製品様の伸展性特性を示した。NC5モッツァレラチーズ類似物の水分およびpHは、それぞれ45.6%および6.85であった。
【0268】
NC5モッツァレラチーズ類似物は、融解の欠如(およびさらには縮小)を提示した植物ベースのモッツァレラチーズよりも高い融解値を有した(表12、図11)。NC5モッツァレラチーズ類似物の融解速度は、修正Schreiber融解検査中、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラの融解と比較して僅かにより高速であり、より早くそのピーク融解に達した。模造モッツァレラおよび低水分モッツァレラは、最大融解のために>10分間を必要とした一方、NC5モッツァレラチーズ類似物は、ほぼ7分間で完全に融解した(図11)。
【0269】
NC5モッツァレラチーズ類似物は、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラと同様の伸展性を示した(それぞれ22.4および22.2cmと比較して19.1cm)一方で、植物ベースのモッツァレラは、全く伸張することができなかった(<2.5cm)(表12、図12)。NC5チーズ類似物の伸張性および融解は、NC1、2および4チーズ類似物の伸張性および融解よりも劣っていた。
【0270】
硬度、接着性、回復力、凝集性、弾力性および噛み応えに関する食感プロファイル分析結果は、表13に示されている。NC5モッツァレラチーズ類似物は、低水分モッツァレラおよび模造モッツァレラの範囲内の硬度および噛み応えを示した。比較すると、植物ベースのモッツァレラチーズは、乳製品挙動から逸脱し、低水分モッツァレラと比較した場合、より多い噛み応え(ほぼ1.6×)およびより高い接着性(ほぼ1.5×)を提示した。
【0271】
興味深いことに、NC5モッツァレラチーズ類似物は、模造モッツァレラでは見出されなかった、接着性の改善を示した。模造モッツァレラは、低水分モッツァレラよりも接着性があるが、NC5モッツァレラチーズ類似物は、接着性が低い。低減された接着性は、好都合なチーズ特性である。接着性は、プローブからチーズを除去するのに要求される力を表し、チーズが、食べたときに歯に接着性があるか否かについての代理として使用することができる。
【表13-1】
【表13-2】
(実施例10)
組換え単一バリアントアルファカゼインから作製されたヨーグルトおよびヨーグルトドリンクの特性
【0272】
組換え非リン酸化ウシアルファS1カゼイン、ネイティブアルファカゼイン(牛乳から精製されたネイティブリン酸化を有するアルファS1およびアルファS2のミックス)および市販のミセルカゼインを使用して、ヨーグルト類似物およびヨーグルトドリンク類似物を作製した。比較のため、ヨーグルトおよびヨーグルトドリンクは、市販のホモジナイズしたミルクからも作製した。タンパク質、クエン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩化カルシウムおよび炭水化物(糖)を、表14に指定された濃度で水に混合した。この溶液に、レシチンおよび予め温めた脂肪を表14に収載されている濃度で添加した。4分間にわたり90%パワーで16mmプローブを備える超音波ソニケーターを使用して混合物をホモジナイズした。ウォーターバスにおいて90℃で10分間混合物を低温殺菌し、次いで40Cまで冷やした。0.1gの標準乳酸細菌培養物(Lactobacillus bulgaricusおよびStreptococcus thermophilus)を添加した。ミルク様コロイドを14時間発酵させた。全乳のためのヨーグルト作製プロセスは、上に記載されている低温殺菌および発酵ステップのみからなった。
【表14】
【0273】
ヨーグルトおよびヨーグルト類似物を、定性的および定量的パラメーター、例えば、pH、匂い、外観、相対的粘稠性および食感について分析した。
【0274】
組換えアルファS1カゼインヨーグルト類似物は、ミルクヨーグルト様の匂いおよび外観を有しており、よく発酵し、表15に示される通りにミルクヨーグルト様食感の特性を示した。ミルクおよびミルク様溶液の出発pHは、6.8~7.4の範囲内であり、これは、14時間の発酵の後に4~4.8に下落した(表15)。タンパク質なしのものを除いた全てのヨーグルト類似物は、ミルクから作製された発酵したヨーグルトの典型的な匂いを有した。
【0275】
組換えアルファS1カゼイン、ミセルカゼインおよびネイティブアルファカゼインから作製されたヨーグルト類似物は、発酵後に安定したエマルションを有するゲル様コロイドになった(図13)。比較すると、タンパク質なしミルク様溶液は、発酵後に相分離をもたらし、液体形態のままであった(図13)。ヨーグルト類似物製剤は、いかなる添加された増粘剤も含まないが、代わりに、ヨーグルト様製品を形成するためにタンパク質に頼る。全てのヨーグルト類似物は、ある程度のレベルのシネレシスを示した。
【0276】
TA-18 1/2”ボールプローブを備えたTA.XT Plus食感分析計における繰り返し検査を使用してヨーグルト構造を分析した。この方法は、経時的な変形の程度に関する洞察をもたらす一連の10回連続した試料挿入によりヨーグルト構造を崩壊させる。堅固さ(g)は、粘着性(g)および接着性(g*秒)と共に、プローブが試料を貫通する際に数量化される。この検査は、各サイクル(試料に対するプローブの挿入および除去)を行うのに要求される仕事により相対的粘稠性を推測することも可能にする。各サイクルを完了するのに要求される仕事が大きいほど、ヨーグルトの粘稠性および頑強性が大きくなることが仮定され得る。固化されており、撹乱されておらず、冷やされた(4℃)ヨーグルトまたはヨーグルト類似物において検査を行った。タンパク質なし試料は液体のままであったため、当該試料において食感分析を行うことができなかった。
【0277】
組換えアルファS1ヨーグルト類似物は、ミルクヨーグルトとほとんど同一の相対的粘稠性を有した(表15)。組換えアルファS1カゼインは、ミルクヨーグルトよりも15%だけ固着性が少なかった。比較すると、ネイティブアルファカゼインおよびミセルカゼインヨーグルト類似物は、ミルクヨーグルトよりも26%および75%固着性が少なかった(表15)。
【表15-1】
【表15-2】
【0278】
ネイティブアルファカゼインヨーグルト類似物の粘着性は、ミルク由来のヨーグルトよりも12%高かった。比較すると、ミセルカゼインおよび組換えアルファS1カゼインヨーグルト類似物は、ミルク由来のヨーグルトよりも粘着性が少なく、それぞれ36%および68%少ない粘着性であった。ミセルカゼインヨーグルト類似物は、堅固さが少なかったが、ネイティブアルファカゼインおよび組換えアルファS1カゼインヨーグルト類似物は、ミルクヨーグルトと比較してより堅固であった(表15)。
【0279】
携帯型ホモジナイザーを15秒間使用してヨーグルトまたはヨーグルト類似物を混合することにより、ヨーグルトドリンク類似物を作製した。ドリンク類似物を、ミルクから作製されたヨーグルトドリンクと比較して、滑らかさ、食感、外観および匂いについて分析した。組換えアルファS1カゼインおよびネイティブアルファカゼインヨーグルトドリンクは、滑らかさ、食感、外観および匂い(芳香)が、ミルクヨーグルトドリンクおよびミセルカゼインヨーグルトドリンク類似物と同様であった(図14)。
(実施例11)
製剤における変動するリン酸化レベルおよび変動するカルシウムによりアルファカゼインから作製されたモッツァレラチーズ類似物の特性
【0280】
組換え非リン酸化ウシアルファS1カゼイン、ネイティブアルファカゼイン(牛乳から精製されたネイティブリン酸化を有するアルファS1およびアルファS2のミックス)および70%脱リン酸化アルファカゼイン(Sigma Aldrichから供給される、ミルクから精製された後に酵素により70%脱リン酸化されたアルファS1およびアルファS2カゼインのミックス)を使用して、表16に概説されている変動する量のCaCl2を有するNC6~8と命名された非ミセルモッツァレラチーズ類似物を作製した。カゼイン、水、パームステアリン、キャノーラ油、クエン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、CaCl2、デンプンおよび塩化ナトリウムを、表17に指定された濃度でビーカーに添加した。表17における製剤は、添加される塩化カルシウムの量によって変動する。ビーカーを、85℃に予め設定されたウォーターバスに移動させ、9分間にわたり300rpmのスピードで混合用プロペラを使用して内容物を混合した。天然香料を添加し、成分をさらに1分間混合した。その結果生じる混合物は、均質な非ミセル塊になり、これを標準の型に移し、冷蔵庫内に5日間静置した。インキュベーション後に、NC6~8モッツァレラチーズ類似物を収量推定のために秤量した。
【表16】
【表17】
【0281】
NC6~8モッツァレラチーズ類似物試料を、実施例7に記載されている通りに定性的および定量的パラメーター、例えば、pH、水分、融解、伸張性および食感プロファイルについて分析した。追加の定性的特性、例えば、融解後のチーズ/チーズ類似物の外観およびチーズ/チーズ類似物のひもの品質は、表18に示される通りに記述されている。これらのパラメーターを、検査されるチーズ類似物、動物由来の低水分モッツァレラ、動物由来の模造モッツァレラおよび植物ベースのビーガンモッツァレラスタイルチーズの間で比較した。
【表18】
【0282】
NC6~8モッツァレラチーズ類似物の水分およびpHは、それぞれ47.2~49.4%および5.7~6.7であった。
【0283】
ネイティブアルファカゼインから作製されたチーズ類似物は、変動する量の添加されたカルシウムに対する融解応答を示し、チーズ類似物は、低減された量のカルシウムにより、より良く融解され、より延展する;しかし、低減されたカルシウムによるチーズ類似物は、融解の際に、透明/半透明の液体になり、チーズ様エマルションの排除を示唆した。驚くべきことに、組換え非リン酸化アルファS1カゼインから作製されたチーズ類似物は、より低いカルシウム条件でチーズ様エマルション特性を保存しつつ、低減されたカルシウム量に対する融解および延展応答性の同様の傾向を示した(表18)。比較すると、70%脱リン酸化アルファカゼインから作製されたチーズ類似物は、変動されたカルシウム量に対する融解応答を示さず、融解の際に、低減されたカルシウム試料も半透明な縁を形成し、チーズ様エマルションの不安定性を指し示した。
【0284】
検査されたチーズ類似物は全て、伸張の長さの観点から乳製品様チーズに匹敵して伸張した。表18は、0~5の定性的に割り当てられた伸張性品質測定基準を示し0は最も乏しい品質を指し示し、5は最も高い品質伸張性を指し示す。これらの値は、TA.XT食感分析計を使用してチーズ類似物を伸張する間に観察されるひもの頑強性および厚さに基づく。70%脱リン酸化アルファカゼインおよびネイティブアルファカゼインから作製されたチーズ類似物は、カルシウム添加により伸張性品質の軽度の改善を示した。驚くべきことに、組換え非リン酸化アルファS1カゼインから作製されたチーズ類似物は、高カルシウム条件により伸張性品質の大幅な改善を示し、動物由来のモッツァレラに匹敵する伸張性品質を生じ、さらに低/中カルシウム条件により、ミルク由来のミセル模造モッツァレラに匹敵する伸張性品質を生じた。カルシウム量に対するこの強い用量応答は、組換え非リン酸化アルファS1カゼインから作製されたチーズ類似物において特有に観察された。
【0285】
チーズ類似物の食感の特性は、表18に概説されている。組換えアルファS1カゼインから作製されたチーズ類似物は、接着性の大幅な低減を示した。比較すると、ネイティブおよび70%脱リン酸化アルファカゼインから作製されたチーズ類似物は、僅かに低減された接着性のみを有した。類似物チーズの接着性はまた、製剤におけるカルシウム量の増加により減少した。
【0286】
ネイティブアルファカゼインから作製されたチーズ類似物は、いかなるカルシウム投薬量であろうとも、ミルク由来の低水分モッツァレラと同様に硬かった/堅固であった(ほぼ5%より柔らかい)。驚くべきことに、組換え非リン酸化アルファS1カゼインチーズ類似物はまた、カルシウムなしおよび低/中カルシウム条件について、同様に硬かった(低水分モッツァレラと比較してほぼ5%より柔らかい)。比較すると、70%脱リン酸化アルファカゼインによる類似物は、さらに低/中カルシウム条件について増加した硬度を示した(低水分モッツァレラと比較して>5%より硬く、ネイティブアルファカゼインまたは組換え非リン酸化アルファS1カゼインから作製されたチーズ類似物と比較して>10%より硬い)。増加した硬度は、植物ベースのチーズ類似物について典型的に記述される通り、チーズ類似物の望ましくない特性である。
【0287】
噛み応え、凝集性、弾力性および回復力のような他の食感の特性も測定したところ、これらは、検査された条件の間で著しい差を示さなかった。
【0288】
本発明の好まれる実施形態が本明細書に示され記載されているが、当業者には、そのような実施形態が単なる一例として提供されていることが明らかとなるであろう。そこで、当業者であれば、多数の変種、変化および置換を、本発明から逸脱することなく思い付くであろう。本明細書に記載されている本発明の実施形態の様々な代替物を本発明の実施において用いることができることを理解されたい。次の特許請求の範囲が、本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲の範囲内の方法および構造ならびにそれらの同等物が、それにより網羅されることが意図される。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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【国際調査報告】