(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】全固体電池のためのアノード中間層および全固体電池製造法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240801BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240801BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240801BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240801BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/134
H01M4/139
H01M4/66 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509046
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 US2022074953
(87)【国際公開番号】W WO2023023476
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511257078
【氏名又は名称】ニッサン ノース アメリカ,インク
(71)【出願人】
【識別番号】510149563
【氏名又は名称】ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ・アズ・リプレゼンテッド・バイ・ジ・アドミニストレーター・オブ・ザ・ナショナル・エアロノーティクス・アンド・スペース・アドミニストレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】小松 秀行
(72)【発明者】
【氏名】桑田 茂昌
(72)【発明者】
【氏名】ガダグントラ ラドハクリシュナン、 バラチャンドラン
(72)【発明者】
【氏名】シールハイス、 マールテン
(72)【発明者】
【氏名】上田 直毅
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和幸
(72)【発明者】
【氏名】ローソン、 ジョン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS10
5H017EE04
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL02
5H029AL04
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ24
5H029DJ07
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ18
5H029HJ20
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB04
5H050CB12
5H050DA06
5H050GA24
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA17
5H050HA19
(57)【要約】
全固体電池セル製造法は、アノード集電体上に中間層を直接沈着させる工程と;該アノード集電体とは反対側の該中間層上に固体電解質を沈着させる工程と;該中間層とは反対側の該固体電解質上にカソードを形成する工程であって、該カソードが1つ以上のリチウム含有化合物を含有する、前記工程と;圧を適用して層間の均一な接触を達成する工程とを含む。製造される全固体電池セルは、充電前にアノードフリーである。該中間層は、充電の際にリチウム金属が該中間層と該アノード集電体との間に沈着され、該中間層が該リチウム金属と該固体電解質との間の接触を防止し、該中間層が該固体電解質の密度よりも大きな密度を有するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池セルであって:
アノード集電体と;
固体電解質と;
該アノード集電体と該固体電解質との間の中間層であって、該中間層が:
充電の際にリチウム金属が該中間層と該アノード集電体との間に沈着され;
該中間層が、該リチウム金属と該固体電解質との間の接触を防止し;
該中間層が、該固体電解質の密度よりも大きな密度を有する
ように構成される、前記中間層と
を含む、前記全固体電池セル。
【請求項2】
該中間層のリチウムイオン伝導率が、該中間層の電子伝導率よりも大きい、請求項1に記載の全固体電池セル。
【請求項3】
該中間層が、リチウムに対して0V~2.0Vの安定電位窓を持つ材料である、請求項1に記載の全固体電池セル。
【請求項4】
該中間層が少なくとも100 nmの厚さを有する、請求項1に記載の全固体電池セル。
【請求項5】
該中間層が、LiCl、LiBr、Li
2O、Li
2Se、LiF、Li
2S、LiI、Li
2IBr、Sr
4Li(BN
2)
3、LiYO
2、LiNbO
2、LiLaO
2、LiGdO
2、Li
8HfO
6、LiErO
2、CsLi
2Cl
3、Cs
3Li
2I
5、LiHoO
2、LiTmO
2、LiDyO
2、Li
7La
3Hf
2O
12、およびLi
7VN
4からなる群より選択される、請求項1に記載の全固体電池セル。
【請求項6】
該中間層がLiClである、請求項1に記載の全固体電池セル。
【請求項7】
カソードおよびカソード集電体をさらに含む、請求項1に記載の全固体電池セル。
【請求項8】
全固体電池セルを製造する方法であって:
アノード集電体上に中間層を直接沈着させる工程と;
該アノード集電体とは反対側の該中間層上に固体電解質を沈着させる工程と;
該中間層とは反対側の該固体電解質上にカソードを形成する工程であって、該カソードが1つ以上のリチウム含有化合物を含有する、前記工程と;
圧を適用して層間の均一な接触を達成する工程と
を含み、
該製造される全固体電池セルが、充電前にアノードフリーであり;
該中間層が、充電の際にリチウム金属が該中間層と該アノード集電体との間に沈着され、該中間層が該リチウム金属と該固体電解質との間の接触を防止し、該中間層が該固体電解質の密度よりも大きな密度を有するように構成される、前記方法。
【請求項9】
該中間層の沈着が、電子ビーム蒸着を用いて実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該中間層のリチウムイオン伝導率が、該中間層の電子伝導率よりも大きい、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
該中間層が、リチウムに対して0V~2.0Vの安定電位窓を持つ材料である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
該中間層が少なくとも100 nmの厚さを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
該中間層が、LiCl、LiBr、Li
2O、Li
2Se、LiF、Li
2S、LiI、Li
2IBr、Sr
4Li(BN
2)
3、LiYO
2、LiNbO
2、LiLaO
2、LiGdO
2、Li
8HfO
6、LiErO
2、CsLi
2Cl
3、Cs
3Li
2I
5、LiHoO
2、LiTmO
2、LiDyO
2、Li
7La
3Hf
2O
12、およびLi
7VN
4からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
該中間層がLiClである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
該アノード集電体がステンレススチールである、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池の固体電解質とアノード集電体との間に提供される中間層および全固体電池製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム金属電池およびリチウムイオン電池の両方を含む、高エネルギー密度電池に向け、進歩が遂げられてきた。しかし、これらの進歩は、根底にある材料および電気化学の選択によって制限される。伝統的なリチウムイオン電池は、活性材料とよくない反応をする傾向があり潜在的に可燃性である有機液体電解質、または粘性が増加しイオン伝導率がより低いイオン性液体電解質のいずれかを使用する。全固体電池は、これらの問題のいくつかまたはすべてに取り組むことができると同時に、より高いエネルギー密度を生じることができる。しかし、電解質/電極界面での大きな界面抵抗と、リチウム反応性による界面安定性および適合性が、電池の電気化学性能に影響を及ぼす。不均一なリチウムプレーティング、リチウムデンドライトの形成およびリチウム金属と固体電解質との間の副反応が、性能低下の一因となる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示されるのは、アノード中間層を有する全固体電池セル、多数の電池セルを含む全固体電池、およびアノードフリー全固体電池セル作製法の実施である。
【0004】
本明細書に開示されるように、全固体電池セルは、アノード集電体、固体電解質、およびアノード集電体と固体電解質との間の中間層を含みうる。中間層は、充電の際にリチウム金属が中間層とアノード集電体との間に沈着され、中間層がリチウム金属と固体電解質との間の接触を防止し、中間層が固体電解質の密度よりも大きな密度を有するように構成される。
【0005】
全固体電池セル製造法には、アノード集電体上に中間層を直接沈着(depositing)させる工程と;アノード集電体とは反対側の中間層上に固体電解質を沈着させる工程と;中間層とは反対側の固体電解質上にカソードを形成する工程であって、該カソードが1つ以上のリチウム含有化合物を含有する、前記工程と;圧を適用して、層間の均一な接触を達成する工程とが含まれる。製造される全固体電池セルは、充電前にはアノードフリーである。中間層は、充電の際にリチウム金属が中間層とアノード集電体との間に沈着され、中間層がリチウム金属と固体電解質との間の接触を防止し、中間層が固体電解質の密度よりも大きな密度を有するように構成される。
【0006】
本明細書に開示される、方法および装置のこれらおよび他の態様、特徴、要素、実施、および実施形態は、これ以降にさらに詳細に記載される。
【0007】
本開示は、付随する図と組み合わせて読んだ際、以下の詳細な説明から最適に理解される。一般的な慣習にしたがい、図面の多様な特徴は縮尺通りではないことが強調される。それとは逆に、多様な特徴の寸法は、明確にするために恣意的に拡大または縮小されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本明細書に開示されるようなアノードフリーASSBの横断面模式図である。
【0009】
【
図2】
図2は、1回の充電サイクル後の
図1のアノードフリーASSBの横断面模式図である。
【0010】
【
図3】
図3は、アノードフリーASSB製造法のフロー図である。
【0011】
【
図4】
図4は、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された、1回の充電サイクル後の、開示される中間層を含まないASSBセルの横断面である。
【0012】
【
図5】
図5は、SEMで撮影された、1回の充電サイクル後の、開示される中間層を含むASSBセルの横断面であり、拡大された中間層を示す。
【0013】
【
図6】
図6は、電流密度対電位のグラフであり、中間層が、リチウム金属反応性によって引き起こされる分解から固体電解質をいかに保護するかを例示する。
【0014】
【
図7】
図7は、
図6中と同じASSBセルに関する、電位(voltage)対面積比容量(area specific capacity)のグラフであり、中間層がASSBの容量をいかに改善するかを例示する。
【0015】
【
図8】
図8Aおよび8Bは、1mV/sおよび10mV/sでの充電を比較することにより、2つの異なるASSBセルのエネルギー密度を比較する。
図8Aでは、ASSBセルは、10μm厚のAg-Cの中間層を伴って形成されている。
図8Bでは、ASSBセルは、本明細書開示の中間層を伴って形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
全固体電池(ASSB)は、慣用的なリチウムイオン電池よりも高い体積および重量エネルギー密度を提供する。リチウム金属アノードは、黒鉛に基づくアノードよりもおよそ10倍高い理論的重量容量を有する。しかし、リチウムの電着が不均一であり、これがデンドライトを生じることから、リチウム金属電池は広い利用が控えられている。電池運用中、リチウムは、充電/放電サイクルに応じて、連続して沈着するかまたは除去される。リチウムが沈着する際に、均一には沈着せず、小さく堅い枝状構造で針状突起であるデンドライトが形成される可能性がある。デンドライトの形成は、不均一なリチウム表面を生じ、これはさらに、不均一リチウム沈着を悪化させる。デンドライトがこの不均一沈着から成長するにつれて、電池の劣化が起こりうる。リチウムと固体電解質との間にギャップが形成されて、固体電解質とリチウム金属との間の接触が失われる可能性がある。低密度のリチウムデンドライト沈着と層間の接触の喪失はどちらも、充電中のセル膨張を増大させる。リチウムデンドライトが他方の電極にも到達すると、電池の短絡が起こりうる。また、リチウム金属と固体電解質との間の副反応は、さらに性能低下の一因となりうる。
【0017】
本明細書に開示されるのは、ASSBのアノード集電体と固体電解質との間にアノード中間層中間層を有する全固体電池セルである。中間層は、アノード集電体上に直接形成され、固体電解質が該中間層上に沈着する。中間層は、充電の際に、中間層とアノード集電体との間に、均一にかつ密に、リチウムを分布させる。中間層は、固体電解質との均一な接触を維持する。密なリチウムプレーティングおよび層間の接触の維持は、充電中のセル膨張を抑制し、体積エネルギー密度を改善する。
【0018】
開示されるようなASSBセル100は、
図1において、横断面で模式的に例示される。
図1のASSBセル100は、活性層として、活性カソード材料層を有するカソード102と、固体電解質104と、アノード集電体106とを含む、層状電池セルとして構成される。本明細書に開示されるような中間層108が、アノード集電体106と固体電解質104との間で、アノード集電体106上に形成される。さらに、
図1のASSBセル100には、活性層がアノード集電体106とカソード集電体110との間に挿入されるように構成された、カソード集電体110が含まれうる。ASSBは、複数のASSBセル100で構成されてもよい。
【0019】
アノード集電体106は、限定されない例として、シートまたはフォイルであってもよく、非腐食性ステンレススチール、例えばSUS 304製である。
【0020】
固体電解質104は、限定されない例として、硫化物化合物(例えば硫銀ゲルマニウム鉱、LGPS、LPS等)、ガーネット構造酸化物(例えば多様なドーパントを伴うLLZO)、NASICON型リン酸ガラスセラミクス(LAGP)、酸窒化物(例えばリン酸リチウムオキシナイトライド(lithium phosphorus oxynitride)またはLIPON)、およびポリマー(PEO)であってもよい。
【0021】
カソード集電体110は、限定されない例として、アルミニウムシートまたはフォイル、カーボンペーパーまたはグラフェンペーパーであってもよい。
【0022】
カソード活性材料層102は、結合剤および任意選択で導電性充填剤、例えばカーボンブラックを用いて共に結合されうる、1つ以上のリチウム遷移金属酸化物およびリチウム遷移金属リン酸化物が含まれうるカソード活性材料を有する。リチウム遷移金属酸化物およびリチウム遷移金属リン酸化物には、限定されるわけではないが、LiCoO2、LiNiO2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiMnO2、Li(Ni0.5Mn0.5)O2、LiNixCoyMnzO2、スピネルLi2Mn2O4、LiFePO4および他のポリアニオン化合物、ならびにLiMnPO4、LiCoPO4、LiNi0.5Co0.5PO4、およびLiMn0.33Fe0.33Co0.33PO4を含む他のオリビン構造が含まれうる。カソード活性材料層102は、イオウに基づく活性材料であってもよく、限定されない例として、LiSO2、LiSO2Cl2、LiSOCl2、およびLiFeS2が含まれうる。
【0023】
図1は、充電前の、製造された状態での本明細書開示のアノードフリーASSBセル100を例示する。
図2は、少なくとも1回充電した後のASSBセル100を例示し、ここで、カソード102のリチウム含有カソード材料由来のリチウムが、充電の際に、中間層108とアノード集電体106との間に沈着され、リチウム金属アノード112を形成する。中間層材料のある程度、1.0%未満が、充電中にアノード集電体上に留まりうることが言及される。
【0024】
中間層108は、固体電解質104の密度よりも大きな密度を有する。この高密度中間層108は、リチウムイオンを均一に分布させ、
図2に示すように、アノード112で密にパッキングされたリチウム層を形成する。中間層108のリチウムイオン伝導率は、中間層108の電子伝導率よりも大きい。イオン伝導率対電子伝導率のこの比により、電子が中間層108を通して浸透することが防止され、リチウムイオンが、アノード112で、中間層108とアノード集電体106との間にプレーティングされることが可能になる。電子が中間層108を浸透して固体電解質104に到達することができる場合、リチウムは、中間層108と固体電解質104との界面にプレーティングされ、リチウム/固体電解質104界面で副反応を生じる。
【0025】
中間層108は、厚さ約100 nm以上であってもよい。セルの厚さを最小限に維持することが好適であるため、中間層108の厚さは、性能に必要な効果を提供しつつ、可能な限り薄くし得る。
【0026】
固体電解質104とアノード集電体106との間の中間層108は、リチウムに対して0V~2.0Vの安定電位窓を持つ、1つ以上のイオン伝導性材料を含む。リチウム金属に対する安定性は、リチウムに対して材料が不活性であることを示す。材料は、0Vでリチウムと自発的な反応を経ないならば、安定であると言われる。リチウムに対して安定である材料は、0Vでまたはその近傍で(リチウムに対する)還元電位を有する。本明細書のイオン伝導材料は、リチウムに対して安定であるかまたはほぼ安定である。
【0027】
イオン伝導率は、固体におけるイオン移動を研究するために最もよく用いられる特性である。固体のイオン伝導率は、結晶格子の欠陥を通じてどのくらい容易にイオンが一方の側から反対側に移動できるかを測定する。イオン伝導率は、結晶構造に明らかに依存するが、固体のプロセシングから生じる微小構造によっても影響を受ける。プロセシング条件から独立である材料特性を扱うため、リチウムイオン移動エネルギー、すなわちリチウムイオン移動バリアを、リチウム化合物のイオン移動の測定値として用いる。本明細書のイオン伝導材料は、低い移動バリアを有し、0.5eV以下の概算移動バリアまたは概算リチウムイオン移動エネルギーを有する。中間層108は、LiCl、LiBr、Li
2O、Li
2Se、LiF、Li
2S、LiI、Li
2IBr、Sr
4Li(BN
2)
3、LiYO
2、LiNbO
2、LiLaO
2、LiGdO
2、Li
8HfO
6、LiErO
2、CsLi
2Cl
3、Cs
3Li
2I
5、LiHoO
2、LiTmO
2、LiDyO
2、Li
7La
3Hf
2O
12、およびLi
7VN
4からなる群より選択される。中間層108材料およびその関連概算移動バリアを以下の表1中に示す。
【表1】
【0028】
本明細書開示の中間層108は、充電の際にリチウム金属が中間層108とアノード集電体112との間に沈着され、中間層108がリチウム金属と固体電解質104との間の接触を防止するように構成される。
【0029】
本明細書にやはり開示されるのは、ASSBセル100を作製する方法である。ASSBセルを製造する方法は、
図3のフロー図に示され、アノード集電体106上に中間層108を直接沈着させる工程を含む。沈着法は、例えば、電子ビーム蒸着であってもよい。アノード集電体106上に中間層108を直接沈着させることで、薄く均一で密な層が可能になる。中間層108が充電前のリチウム金属アノード上に沈着されると、リチウムは反応性が高すぎ、中間層は均一にはならないであろう。中間層108が固体電解質104上に沈着されると、固体電解質の空気感受性により、密で均一な中間層が妨げられる。
【0030】
中間層108が沈着された後、固体電解質104が、アノード集電体106とは反対側で中間層108上に沈着される。カソード102は、中間層108とは反対側で固体電解質104上に形成される。カソード集電体110を使用する場合、これを適用してもよい。中間層がアノード集電体上に沈着される限り、層沈着の順序は改変されてもよい。スタック(stack)に圧を適用して、層間の均一な接触を達成する。製造される全固体電池セルは、充電前にはアノードフリーである。中間層は、充電中にリチウム金属が中間層とアノード集電体との間に沈着され、中間層がリチウム金属と固体電解質との間の接触を防止し、中間層が固体電解質の密度よりも大きな密度を有するように構成される。該アノードフリーASSBセルは、作製が容易であり、大量生産可能である。
【0031】
図4は、1回の充電サイクル後の、開示される中間層を含まないASSBセルの横断面の拡大写真である。示されるように、リチウム金属200は、均一に沈着されず、密にも沈着されない。リチウム金属200と固体電解質204との間の大きなギャップ202が明らかである。
図5は、開示される中間層、ここではLiClで形成される中間層を含むASSBセルの横断面の拡大写真である。拡大部分は、1回の充電サイクル後、密で均一にプレーティングされたリチウム金属210の間に、スムースで密な中間層208を明らかに示す。中間層208と固体電解質212との間にはギャップはない。
【0032】
中間層を含まないASSBセルおよび中間層を含むASSBセルを製造した。中間層材料はLiClであった。ASSBセルを200回サイクル処理した。中間層を含むASSBセルにおいて、有意な耐久性の改善が見られた。
図6は、電流密度対電位のグラフであり、中間層が、リチウム金属反応性によって引き起こされる分解から、固体電解質をいかに保護するかを例示する。
図7は、同じASSBセルに関する電位対面積比容量のグラフであり、中間層がASSBの容量をいかに改善するかを例示する。
【0033】
図8Aおよび8Bは、1mV/sおよび10mV/sでの充電を比較することにより、2つの異なるASSBセルのエネルギー密度を比較する。
図8Aでは、ASSBセルは、10μm厚のAg-Cの中間層、NMCカソードおよび硫銀ゲルマニウム鉱(LPSCI)電解質を伴って形成されている。
図8Bでは、本明細書に開示されるようなASSBセルが、1μm厚のLiClの中間層、NMCカソードおよび硫銀ゲルマニウム鉱(LPSCI)電解質を伴って形成されている。
図8AのASSBセルは、10mV/s速度で有意な遅延を示し、迅速充電における遅延を示している。
図8BのASSBセルは、2つのスキャン速度間で相違を示さず、迅速充電能および高エネルギー密度を示す。
【0034】
本明細書で用いられる際、用語「実施例」、「実施形態」、「実施」、「態様」、「特徴」、または「要素」は、例、一例、または例示として働くことを示す。明らかに示されない限り、いかなる実施例、実施形態、実施、態様、特徴、または要素も、各々他の実施例、実施形態、実施、態様、特徴、または要素から独立であり、任意の他の実施例、実施形態、実施、態様、特徴、または要素と組み合わせて用いられてもよい。
【0035】
本開示は、特定の実施形態と関連して記載されてきているが、本開示は、開示される実施形態に限定されるものではなく、それとは逆に、付随する請求項の範囲内に含まれる多様な改変および同等のアレンジを含むと意図され、その範囲は、法の下に許可されるようなすべてのこうした改変および同等の構造のすべてを含むように、最も広い解釈と一致するものである。
【国際調査報告】