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特表2024-529727治療適用のためのd-リゼルグ酸ジエチルアミドの凍結乾燥された口腔内崩壊錠製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】治療適用のためのd-リゼルグ酸ジエチルアミドの凍結乾燥された口腔内崩壊錠製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/48 20060101AFI20240801BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240801BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240801BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A61K31/48
A61K9/20
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/20
A61P25/22
A61P25/24
A61P29/00
A61P25/30
A61P25/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509301
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 US2022040636
(87)【国際公開番号】W WO2023023182
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/234,773
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520039043
【氏名又は名称】マインド メディシン, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Mind Medicine, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マック,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】トレンクトログ,ティム
(72)【発明者】
【氏名】メルトン,ダスティン
(72)【発明者】
【氏名】ドティー,ベサニー アンバー
(72)【発明者】
【氏名】シュローダー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ガレット,リサ マリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD23
4C076DD24
4C076DD26
4C076DD26Z
4C076DD28
4C076DD38
4C076DD41Z
4C076DD43Z
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE38
4C076EE42
4C076FF01
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF61
4C076GG06
4C086AA01
4C086CB20
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA10
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZC39
(57)【要約】
LSDの固形経口即時放出製剤であって、ここで組成物は、口内崩壊錠を形成するため、予め形成された型内の原料の凍結乾燥によって生成される、固形経口即時放出製剤に関する。予め形成された型内の、LSDの急速凍結保存液及び非ゲル化マトリックス形成剤、充填剤、結合剤、及び緩衝剤を含む賦形剤を凍結乾燥し、口内崩壊錠を形成することにより、LSDの固形経口即時放出製剤を作製する方法に関する。LSDの固形経口即時放出製剤を投与し、個体を治療することによって、個体を治療する方法であって、ここで組成物は、口内崩壊錠を形成するため、予め形成された型内の原料の凍結乾燥によって生成される、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LSDの固形経口即時放出製剤の組成物であって、口内崩壊錠の即時放出剤形内に含有されるLSDを含み、ここで前記組成物は、前記口内崩壊錠を形成するため、予め形成された型内の原料の凍結乾燥によって生成される、組成物。
【請求項2】
非ゲル化ゼラチン、マルトデキストリン、修飾デンプン、デンプンエーテル、低分子量デキストラン、及び低~中分子量セルロースガムからなる群から選択される非ゲル化マトリックス形成剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ラクトース、マンニトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、デンプン、セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、及びスクロースからなる群から選択される充填剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
アカシアガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、トラガント、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びデンプンからなる群から選択される結合剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
クエン酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩からなる群から選択される緩衝剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、及びブチルヒドロキシルトルエン(BHT)からなる群から選択される抗酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
光安定化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
スルホキシド、アゾン、ピロリドン、アルコール、アルカノール、グリコール、界面活性剤、及びテルペンからなる群から選択される透過促進剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
着色剤、甘味剤、及び香味剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
LSDの固形経口即時放出製剤を作製する方法であって、
予め形成された型内のLSDの急速凍結保存液並びに非ゲル化マトリックス形成剤、充填剤、結合剤、及び緩衝剤の賦形剤を凍結乾燥するステップと;
口内崩壊錠を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記非ゲル化マトリックス形成剤は、非ゲル化ゼラチン、マルトデキストリン、修飾デンプン、デンプンエーテル、低分子量デキストラン、及び低~中分子量セルロースガムからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記充填剤は、ラクトース、マンニトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、デンプン、セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、及びスクロースからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記結合剤は、アカシアガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、トラガント、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びデンプンからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記緩衝剤は、クエン酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記LSDは、遊離塩基及び塩から選択される形態である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記LSDは、塩形態であり、且つ前記塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、及びシュウ酸塩からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
個体を治療する方法であって、
口内崩壊錠のLSDの固形経口即時放出製剤を投与するステップと;
個体を治療するステップと、
を含み、ここで前記組成物は、前記口内崩壊錠を形成するため、予め形成された型内の原料の凍結乾燥によって生成される、方法。
【請求項18】
前記個体は、嚥下異常を有し、高齢者であり、又は認知症を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記治療ステップは、不安症、抑うつ、頭痛障害、強迫性障害(OCD)、パーソナリティ障害、ストレス障害、薬物障害、ギャンブル障害、摂食障害、身体醜形障害、疼痛、神経変性障害、自閉症スペクトラム症、摂食障害、及び神経障害からなる群から選択される病態又は疾患を治療することとさらに定義される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記LSDは、遊離塩基及び塩から選択される形態である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記LSDは、塩形態であり、且つ前記塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、及びシュウ酸塩からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記投与ステップは、0.01~1mgのLSDを投与することとさらに定義される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.技術分野
本発明は、薬剤の製剤化に関する。より具体的に、本発明は、d-リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)の医薬製剤のための即時放出製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術
経口溶液製剤は、少数の部位における限られた数の患者での試験、主に初期開発試験に便利であるが、多施設で広範な地理的領域を通じて実施される後期開発試験に適さないばかりか、製品安定性及びサプライチェーンにおける課題、例えばコールドチェーン貯蔵における潜在的要件が理由で商業化に向かない可能性がある。
【0003】
錠剤又はカプセル剤としての固形経口製剤は、生産、サプライチェーン、及び患者利便性における利点が理由で、後期臨床開発において、そして商業的により一般的である。固形経口製剤は、即時放出、口若しくは胃における瞬時溶解性、又は薬物放出が経時的に延長される持続放出であり得る。
【0004】
口内崩壊錠(ODT)は、医薬品の溶解速度を増加させ、胃前吸収を促進することを目的として製剤化される別の固形剤形である。迅速な崩壊速度を達成するため、ODT製剤は、高空隙率、低密度、及び低硬度を提供しなければならない(Berthoumieu et al.,2010;Bandari et al.,2008)。この剤形は、吸収を改良するため、又は嚥下困難を有する患者集団のため、選択することができ(Lindgren et al.,1993)、老人及び小児患者、又は嚥下障害などの病態を患う患者における使用にも適する(Sastry et al.,2000)。
【0005】
コスト及び単純性の観点から、直接圧縮は、ODTを調製するための一般的方法である。しかし、こうした方法で作製されたODTの崩壊能は、得られた錠剤の大きさ及び硬度により制限される。ODTを調製するための代替的方法は、凍結乾燥である。例えば、Zydis(登録商標)ODT(経口溶解錠)急速溶解製剤は、水を必要とせずに口内でほぼ瞬時に分散する、凍結乾燥された経口固形剤形である。
【0006】
LSDは、そのドイツ語名称LysergSaeureDiethylamidに由来する(リゼルグ酸ジエチルアミド)。リゼルギドは、ブシロシン(プシロシビンの活性部分)及びN,N-ジメチルトリプタミン(DMT)などの多数の置換トリプタミンを含む、インドールアルキルアミンのファミリーに属する。LSDのIUPAC名は、9,10-ジデヒドロ-N,N-ジエチル-6-メチルエルゴリン-8β-カルボキサミドである。
【0007】
LSDを使用し、不安、抑うつ、嗜癖、パーソナリティ障害、及びその他を含む多くの適応症に対する精神療法を補助することができ、またLSDを使用し、群発頭痛、片頭痛、及びその他などの他の障害を治療することができる(Passie et al.,2008;Hintzen et al.,2010;Nichols,2016;Liechti,2017)。LSDの効果は、変化した思考、感情、周囲の認識、散大瞳孔、血圧上昇、及び体温上昇を含み得る。LSDの治療用途は、様々な神経及び行動障害を治療するための有望な結果を示している。しかし、その効力により、LSDの固形経口製剤の開発及び製造において、含量均一性及び化学的安定性に対する薬学的に許容可能な制限を満たすという課題があり得る。
【0008】
LSDを用いる臨床試験では、経口溶液製剤形態が注目されている。LSDの製剤開発研究は、皆無かそれに近かった。歴史的には経口溶液が使用され、ほぼ全ての古い試験及び事前データは、経口溶液又は含浸紙/カートンを伴う。
【0009】
幅広い患者集団にとって商業的に魅力があり、規制/品質の適合性及び頑強性についての期待を満たす、LSD剤形及び製剤が求められている。遊離塩基として又は塩形態でのd-リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)の商業的に実行可能な固形経口即時放出医薬製剤は、市販製品として現存しない、又は文献中で報告されている。10の位~100の位のμgであると予想されるLSDの治療量の場合、許容される薬物の含量均一性及び化学的安定性を達成するという課題が存在する。さらに、以前の試験では、経口溶液中のLSDが室温で安定でないことが示されている(Holze et al 2019)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
均一且つ安定な即時放出製剤を達成することに加えて、最終製剤は、広範囲の患者集団、例えば限定はされないが、高齢者、小児、及び彼らの嚥下能力を制限し得る病態を有する患者に容易に投与される形態である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、口内崩壊錠の剤形が意図されたLSD製剤を含むLSDの固形経口即時放出製剤であって、ここで組成物は、口内崩壊錠を形成するため、予め形成された型内の原料の凍結乾燥によって生成される、固形経口即時放出製剤を提供する。
【0012】
本発明は、予め形成された型内の、LSDの急速凍結保存液及び非ゲル化マトリックス形成剤、充填剤、結合剤、及び緩衝剤の賦形剤、並びに抗酸化剤、光安定化剤、透過促進剤及び香味剤などの追加賦形剤を凍結乾燥し、口内崩壊錠を形成することにより、LSDの固形経口即時放出製剤を作製する方法をさらに提供する。
【0013】
本発明はまた、LSDの固形経口即時放出製剤を投与し、個体を治療することによって個体を治療する方法であって、ここで組成物は、口内崩壊錠を形成するため、予め形成された型内の原料の凍結乾燥によって生成される、方法を提供する。
【0014】
図面の説明
本発明の他の利点は、次の添付の図面と関連させて考察されるとき、それらが以下の詳細な説明の参照によってより十分に理解されるように、容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、D-LSD D-酒石酸塩の表示である。
図2図2は、LSDを含有するZydis ODTの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、口内崩壊錠などの迅速又は即時放出剤形のLSDの製剤を提供する。「迅速放出錠剤」という用語は、その投与後の遅延(遅延放出投薬)又は延長期間(持続放出(ER、XR、XL)投薬)又は身体内の特定標的(標的化放出投薬)と異なる、薬剤を即時に送達する(即時放出投薬と類似する)機構である。好ましくは、それは、経口投与製剤における最小の時間依存性放出を指す。本発明は、一旦経口摂取されると比較的迅速に溶解する組成物であって、好ましくはLSDをその有効成分(active)、又はその有効成分の1つとして含む組成物を提供する。これは、施すことが容易であるが、有効且つ効果的であることが予測される治療効果を提供する。
【0017】
LSDは、結晶性又は非結晶性固体として、遊離塩基形態又は塩形態であり得る。塩は、限定はされないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩(D-酒石酸塩及びメソ酒石酸塩を含む)、クエン酸塩、リン酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、キシナホ酸塩、1,5-ナフタレンジスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、及びナフタレン-2-スルホン酸塩であり得る。LSDの用量は、好ましくは、0.01~1mg(10~1000μg)であり得る。しかし、投与は、所与の患者における適応症、年齢、体重、及び薬理学、生理学、及び薬物/薬物相互作用に影響するその他の要素に応じて調節することができる。
【0018】
好ましい固形経口製剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,192,580B2号に記載されている、例えばZYDIS(登録商標)(Catalent,Inc.)技術を使用するなどの口内崩壊錠(ODT)である。これは、実施例1でさらに示される。典型的なZYDIS(登録商標)ODT製剤は、非ゲル化マトリックス形成剤、充填剤、結合剤、及びpH修飾剤(すなわち、緩衝剤)を含む。さらに、抗酸化剤、光安定化剤、透過促進剤、着色剤、及び甘味剤/香味剤を、ZYDIS(登録商標)ODT製剤に含めることできる。
【0019】
使用される非ゲル化マトリックス形成剤の例としては、限定はされないが、非ゲル化ゼラチン(魚ゼラチンを含む)、マルトデキストリン、修飾デンプン、デンプンエーテル、低分子量デキストラン、及び低~中分子量セルロースガム(米国特許第号10,548,839B2号)が挙げられる。
【0020】
使用される充填剤の例としては、ラクトース(無水物を含む)、マンニトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、デンプン(デンプンは、本明細書で使用する場合、乾燥又は予備ゲル化デンプンを含み得る)、セルロース(微結晶セルロースを含む)、カオリン、塩化ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、スクロースなどが挙げられる。
【0021】
結合剤の例は、アカシアガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、トラガント、ポリビニルピロリドン(PVP)、デンプンなどを含む。
【0022】
製剤の特定pHへの標的化に、緩衝剤が添加される。現在、クエン酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩の3種の緩衝剤が、FDAによって承認された非経口医薬品において使用される緩衝剤の大半を占めるが、あまり先例のない賦形剤が、市販剤形の使用にとって特に利用可能である。製剤のpHは、代替的に非緩衝化酸(すなわち、塩酸)又は非緩衝化塩基(すなわち、水酸化ナトリウム)によって調節することができる。
【0023】
酸化ストレスによる分解を最小化するため、抗酸化剤を製剤に添加することができる。酸化という用語は、酸素の薬剤の構造への組み込み、又はある化学物質をより少数の電子を有する別の誘導体に変換する過程と定義することができる。こうした抗酸化剤の例が、アスコルビン酸、クエン酸、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、及びブチルヒドロキシルトルエン(BHT)である。
【0024】
多くの薬剤が光に感受性があり、それ故、それらの製剤は、製造、貯蔵、及び投与の間に分解し得る。原体の光安定性は、物理的又は化学的変化を引き起こす固体、半固体、又は液体状態における太陽光、UV、及び可視光への曝露に対する薬剤又は製剤の応答と定義することができる。光曝露を元に戻すことは、効力低下、有効性変化、及び逆生物学的効果をもたらし得る。光曝露によるあらゆる分解を最小化するため(すなわち、光安定化剤)、様々な添加剤又はカプセル封入方法及び組成物を用いて、活性生成物を光から保護することができる。
【0025】
光分解はまた、酸素曝露と組み合わせて生じ、光酸化分解をもたらし得る。光酸化に対して保護するために一般に使用される抗酸化剤の一部が、アスコルビン酸、αトコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、L-ヒスチジン、没食子酸プロピル、及び硫黄化合物である。アスコルビン酸、αトコフェロール、βカロチン、及びBHTは、フリーラジカルスカベンジャー及び一重項酸素クエンチャーとして作用し、それ故、光増感反応を阻害する。原体が光増感剤として作用し、製剤における連鎖反応を開始させる場合、賦形剤の一部が酸化され得る一方で、薬剤は光分解から保護され得る。
【0026】
製剤は、吸収の範囲及び/又は速度を増加させるため、透過促進剤も含有することができる。こうした促進剤の例が、スルホキシド(ジメチルスルホキシド、DMSOなど)、アゾン(例えば、ラウロカプラム)、ピロリドン(例えば、2-ピロリドン、2P)、アルコール及びアルカノール(エタノール、又はデカノール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール、PG、局所適用剤形における一般的賦形剤)、界面活性剤(剤形においても一般的)及びテルペンである。
【0027】
患者の認識及び認容性を改善するため、着色剤、甘味剤、及び香味剤を固形経口製剤に添加することもできる。
【0028】
本発明の化合物は、個別患者の臨床状態、投与の部位及び方法、投与のスケジュール、患者年齢、性別、体重及び医師に認知されたその他の要素を考慮して、投与及び服用される。それ故、本明細書における目的としての薬学的「有効量」は、当該技術分野で公知であるような検討事項によって決定される。その量は、限定はされないが、改善された生存率若しくはより迅速な回復、又は症状の改善若しくは除去及び当業者によって適切な尺度として選択されるようなその他の指標を含む改善を達成するように有効でなければならない。
【0029】
本発明の方法において、本発明の化合物は、様々な方法で投与することができる。それは、化合物として投与することができ、また単独で又は薬学的に許容される担体、希釈剤、補助剤、及び媒体と組み合わせた有効成分として投与することができることに注目すべきである。治療中の患者は、温血動物、特にヒトを含む哺乳類である。薬学的に許容される担体、希釈剤、補助剤、及び媒体は、一般に、本発明の有効成分と反応しない、不活性で非毒性の固体若しくは液体充填剤、希釈剤又はカプセル化材料を指す。
【0030】
投与は、数日間にわたる単回投与又は複数回投与であり得る。治療は、一般に、疾患過程及び薬物有効性の期間に見合う期間及び治療される患者種を有する。
【0031】
実薬の吸収は、標的化可能である。薬物吸収は、薬物の物理化学的特性、製剤化、及び投与経路によって判定される。薬物+他の成分からなる剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、溶液)は、様々な経路(例えば、経口、頬側、舌下、直腸、非経口、局所、吸入)によって投与されるべく製剤化される。投与経路と無関係に、薬物は、吸収されるべく溶液中に存在しなければならない。したがって、固体形態(例えば、錠剤、カプセル剤)は、崩壊及び脱凝集が可能でなければならない。固形経口錠剤及びカプセル製剤は、典型的に胃吸収を有する一方で、ODT製剤は、生物学的利用率をさらに増強し得る胃前又は頬側吸収を標的にするべく製剤化され得る。
【0032】
本発明は、口内崩壊錠を形成するため、予め形成された型内の薬剤及び賦形剤の急速凍結保存液を凍結乾燥することにより、遊離塩基として又は塩形態でのLSDの固形経口即時放出製剤を作製する方法を提供する。この手法では、低用量の製品を製剤化する一方で、LSDの含量均一性及び化学的完全性を維持することに伴う課題が検討される。
【0033】
本発明は、LSDの固形経口即時放出製剤を投与し、個体を治療することによって、個体を治療する方法であって、ここで組成物は、口内崩壊錠を形成するため、予め形成された型内の原料の凍結乾燥によって生成される、方法を提供する。
【0034】
治療中の病態又は疾患は、限定はされないが、不安症(進行期疾病、例えばがんにおける不安、及び全身性不安症を含む)、抑うつ(分娩後抑うつ、大うつ病性障害及び治療抵抗性抑うつを含む)、頭痛障害(群発頭痛及び片頭痛を含む)、強迫性障害(OCD)、パーソナリティ障害(行為障害を含む)、ストレス障害(適応障害及び外傷後ストレス障害を含む)、薬物障害(アルコール依存又は離脱、ニコチン依存又は離脱、オピオイド依存又は離脱、コカイン依存又は離脱、メタンフェタミン依存又は離脱を含む)、その他の嗜癖(ギャンブル障害、摂食障害、及び身体醜形障害を含む)、疼痛、神経変性障害(認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病など)、自閉症スペクトラム症、摂食障害、又は神経障害(脳卒中など)を含み得る。
【0035】
本発明は、以下の実験実施例の参照によって、さらに詳細に説明される。これらの実施例は、あくまで例示を目的として提供され、特に指示されない限り、限定することが意図されない。したがって、本発明は、決して以下の実施例に限定されるように解釈されるべきでなく、むしろ本明細書に提供される教示の結果として明白となるありとあらゆるバリエーションを包含するように解釈されるべきである。
【実施例
【0036】
実施例1:口内崩壊錠を製剤化するためのd-LSD D-酒石酸塩保存液の凍結乾燥
急速分散性の口内崩壊錠(ODT)中のd-LSD D-酒石酸塩の固形経口製剤を、以下の方法を用いて作製した:A)水に完全に溶解した、d-LSD D-酒石酸塩、非ゲル化マトリックス形成賦形剤、充填賦形剤、及び結合剤を含有する調合原液を作製すること;B)予め形成された型内の保存液を投与すること;並びにC)投与製剤を凍結乾燥し、昇華によって水を除去すること。製剤組成物を表1に提示する。製剤1の画像を図2に示す。60秒未満に崩壊した全ての製剤は、即時放出を示す。
【0037】
【表1】
【0038】
これらの製剤を水分移入から保護し、40℃で安定状態に設定し、1か月後、化学分解について試験した。総化学的不純物を表2に提示する。これらの結果は、加速条件で貯蔵した1か月後の総不純物の小さい変化を示し、凍結乾燥したd-LSD D-酒石酸塩のODT製剤の適合性が実証される。
【0039】
【表2】
【0040】
本願全体を通じて、米国特許を含む様々な出版物は、筆者及び年によって、そして特許は番号によって参照する。出版物の完全な引用について、以下に列記する。本発明が関係する最先端技術をより十分に説明するため、これらの出版物及び特許のそれら全体の開示は、ここで参照により本願に組み込む。
【0041】
本発明は、例示的な様式で説明しており、使用される用語が、限定を意図するのでなく、説明用語の本質の中に存在することを意図することは理解されるべきである。
【0042】
明らかに、本発明の多くの修飾及びバリエーションは、上記教示を考慮することで可能である。したがって、本発明が、詳細に説明される場合以外に、添付の特許請求の範囲の範囲内で実施可能であることは理解されるべきである。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LSDの固形経口即時放出製剤の組成物であって、口内崩壊錠の即時放出剤形内に含有されるLSDを含み、ここで前記組成物は、前記口内崩壊錠を形成するため、予め形成された型内の原料の凍結乾燥によって生成される、組成物。
【請求項2】
非ゲル化ゼラチン、マルトデキストリン、修飾デンプン、デンプンエーテル、低分子量デキストラン、及び低~中分子量セルロースガムからなる群から選択される非ゲル化マトリックス形成剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ラクトース、マンニトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、デンプン、セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、及びスクロースからなる群から選択される充填剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
アカシアガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、トラガント、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びデンプンからなる群から選択される結合剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
クエン酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩からなる群から選択される緩衝剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、及びブチルヒドロキシトルエン(BHT)からなる群から選択される抗酸化剤、光安定化剤、並びにスルホキシド、アゾン、ピロリドン、アルコール、アルカノール、グリコール、界面活性剤、及びテルペンからなる群から選択される透過促進剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
着色剤、甘味剤、及び香味剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
LSDの固形経口即時放出製剤を作製する方法であって、
予め形成された型内のLSDの急速凍結保存液並びに非ゲル化マトリックス形成剤、充填剤、結合剤、及び緩衝剤の賦形剤を凍結乾燥するステップと;
口内崩壊錠を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
前記非ゲル化マトリックス形成剤は、非ゲル化ゼラチン、マルトデキストリン、修飾デンプン、デンプンエーテル、低分子量デキストラン、及び低~中分子量セルロースガムからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記充填剤は、ラクトース、マンニトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、デンプン、セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、及びスクロースからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記結合剤は、アカシアガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、トラガント、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びデンプンからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記緩衝剤は、クエン酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記LSDは、遊離塩基及び塩から選択される形態である、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記LSDは、塩形態であり、且つ前記塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、及びシュウ酸塩からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項15】
個体を治療する方法であって、
口内崩壊錠のLSDの固形経口即時放出製剤を投与するステップと;
個体を治療するステップと、
を含み、ここで前記組成物は、前記口内崩壊錠を形成するため、予め形成された型内の原料の凍結乾燥によって生成される、方法。
【請求項16】
前記個体は、嚥下異常を有し、高齢者であり、又は認知症を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記治療ステップは、不安症、抑うつ、頭痛障害、強迫性障害(OCD)、パーソナリティ障害、ストレス障害、薬物障害、ギャンブル障害、摂食障害、身体醜形障害、疼痛、神経変性障害、自閉症スペクトラム症、摂食障害、及び神経障害からなる群から選択される病態又は疾患を治療することとさらに定義される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記LSDは、遊離塩基及び塩から選択される形態である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記LSDは、塩形態であり、且つ前記塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、及びシュウ酸塩からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記投与ステップは、0.01~1mgのLSDを投与することとさらに定義される、請求項15に記載の方法。
【国際調査報告】