(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】加齢関連疾患および神経変性疾患の予防および処置におけるiPSC由来免疫細胞
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240801BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240801BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20240801BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240801BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240801BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240801BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240801BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240801BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P25/00
A61K35/545
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/02
A61P25/18
C12N5/071
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509308
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 US2022040921
(87)【国際公開番号】W WO2023023346
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514135801
【氏名又は名称】シーダーズ-サイナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】モーザー バネッサ アレキサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンセン クリーブ ニールス
(72)【発明者】
【氏名】グッドリッジ ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ラパール アレキサンダー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BB19
4B065BB40
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA16
4C087ZA94
(57)【要約】
哺乳動物において、認知機能を改善する、神経の健康状態を改善する、および/または神経変性障害を緩和もしくは処置するために使用するために、人工多能性幹細胞から生成された単球、および任意で人工多能性幹細胞から生成されたマクロファージをさらに含む、iMPとして示される人工多能性幹細胞由来単核食細胞が提供される。様々な態様では、iMPは、移植後に、もしくはインビトロで刺激された後にマクロファージを生成する、および/またはマクロファージマーカーを発現する。本発明者らは、iMPは、投与の際に、老化、アルツハイマー病、および筋萎縮性側索硬化症のげっ歯類モデルにおいて、認知および神経の健康を改善することを示した。神経変性障害の処置または予防を必要としている患者において自己幹細胞から、または自己細胞から得られた人工多能性幹細胞から生成された単核食細胞を使用する処置方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の認知機能を改善する、または神経変性障害を有する対象を処置するための方法であって、
人工多能性幹細胞(iPSC)から生成された単核食細胞を含む治療有効量の組成物を該対象に投与し、それによって、該対象の認知機能を改善する、または神経変性障害を有する該対象を処置する工程
を含み、
該単核食細胞が、骨髄分化を誘導する条件下で細胞培養培地中でiPSCを培養し単核食細胞の生成をもたらすことを含むプロセスにおいて、iPSCから生成され、
該培養が、インターロイキン34(IL-34)を含むかまたはIL-34および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む小膠細胞分化培地中で、該生成された単核食細胞を接触させることを含まず、かつ該培養が、インターロイキン4(IL-4)を含むかまたはIL-4およびGM-CSFを含む樹状細胞分化培地中で、該生成された単核食細胞を接触させることを含まない、
前記方法。
【請求項2】
前記単核食細胞が単球を含み;
任意で、前記投与の後に、前記対象において前記単核食細胞がマクロファージを生成する、または任意で、前記単核食細胞が、マクロファージ分化を誘導する条件下で、細胞培養培地中でさらに培養される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記培養が、前記iPSCを、骨形成タンパク質(BMP-4)を含む第1の組成物と接触させることを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記培養が、
前記第1の組成物の存在下での前記iPSCの培養後に、細胞培養培地を第2の組成物と接触させることであって、該第2の組成物が、bFGF、血管内皮増殖因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の因子含む、該接触させること
をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記培養が、
前記細胞培養培地を、SCF、インターロイキン3(IL-3)、トロンボポエチン(TPO)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、Fms様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3リガンド)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む第3の組成物と接触させること
をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記培養が、
前記細胞培養培地を、M-CSF、GM-CSF、およびFLT3リガンド、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む第4の組成物と接触させること
をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記細胞培養培地を前記第1の組成物とおよそ4日間接触させる工程、前記細胞培養培地を前記第2の組成物とおよそ2日間接触させる工程、前記細胞培養培地を前記第3の組成物とおよそ6~8日間接触させる工程、および/または前記細胞培養培地を前記第4の組成物とおよそ3~90日間接触させる工程を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
BMP-4を含む前記第1の組成物が、bFGF、TGFβ、GABA、ピペコリン酸、および塩化リチウムのうちの1つまたは複数を含むmTeSR1培地中にあり;前記第1の組成物が無血清であり、前記第2の組成物、前記第3の組成物、および/または前記第4の組成物が独立に、任意でStemPro-34無血清培地である無血清造血細胞培地中にある、請求項3~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記単核食細胞が、CD11b、CD14、CD16、CD64、CD11c、CD71、またはこれらの組み合わせを含むマーカーを発現する、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記プロセスが、少なくとも1×10
6、5×10
6、または1×10
7個の前記単核食細胞を得るためにバイオリアクター中で培養することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記iPSCが末梢血単核球(PBMC)または線維芽細胞に由来し;任意で該PBMCおよび該線維芽細胞が前記対象から得られる、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記対象が50歳以上のヒトである、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、レット症候群、スフェロイド形成をともなうびまん性白質脳症、軸索スフェロイド形成をともなう遺伝性びまん性白質脳症、前頭側頭葉変性症(FTLD)、家族性FTLD、統合失調症、および自閉症スペクトラム障害からなる群より選択される神経変性障害を有する対象である、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記投与の後の前記対象において、対照対象と比較した、または前記投与の前の前記対象のそれぞれのレベルと比較した、前記対象の空間作業記憶の改善、短期記憶の改善、シナプストランスポーターレベルの増加、小膠細胞の分枝の長さの増加のうちの1つまたは複数を測定する工程をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
単核食細胞を生成するための方法であって、
骨髄分化を誘導する条件下で細胞培養培地中で人工多能性幹細胞を培養し単核食細胞の生成をもたらす工程であって、該培養が、該人工多能性幹細胞を骨形成タンパク質(BMP-4)を含む第1の組成物と接触させることを含む、工程、
該第1の組成物の存在下での該人工多能性幹細胞の培養後に、該細胞培養培地を、bFGF、血管内皮増殖因子(VEGF)、および幹細胞因子(SCF)、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む第2の組成物と接触させる工程、
該第2の組成物の存在下での培養後に、該細胞培養培地を、SCF、インターロイキン3(IL-3)、トロンボポエチン(TPO)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、およびFms様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3リガンド)、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む第3の組成物と接触させる工程、ならびに
該第3の組成物の存在下での培養後に、該細胞培養培地を、M-CSF、GM-CSF、およびFLT3リガンド、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む第4の組成物と接触させ、それによって、該単核食細胞を生成する工程
を含み、
該培養が、インターロイキン34(IL-34)を含むかまたはIL-34および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む小膠細胞分化培地中で、該生成された単核食細胞を接触させることを含まず、かつ該培養が、インターロイキン4(IL-4)を含むかまたはIL-4およびGM-CSFを含む樹状細胞分化培地中で、該生成された単核食細胞を接触させることを含まない、
前記方法。
【請求項16】
前記第1、第2、第3、および第4の組成物が、無血清培地中にあり、任意で、前記第1の組成物がmTeSR1培地中にあり、前記第2、第3、および第4の組成物がStemPro-34培地中にある、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記細胞培養培地を前記第1の組成物とおよそ4日間接触させる工程、前記細胞培養培地を前記第2の組成物とおよそ2日間接触させる工程、前記細胞培養培地を前記第3の組成物とおよそ6~8日間接触させる工程、および/または前記細胞培養培地を前記第4の組成物とおよそ3~90日間接触させる工程を含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記培養が、少なくとも1×10
6、5×10
6、または1×10
7個の前記単核食細胞の集団を得るためにバイオリアクター中で培養することを含み、任意で、該バイオリアクターがスターラータンクバイオリアクターである、請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
(1)骨形成タンパク質4(BMP-4)を含む第1の細胞培養培地中で、接着培養で多能性幹細胞を培養する工程;
(2)塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、および幹細胞因子(SCF)を含む第2の細胞培養培地中で、工程(1)によって得られた細胞を接着培養で培養する工程;
(3)SCF、インターロイキン3(IL-3)、トロンボポエチン、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、およびFLT3リガンドを含む第3の細胞培養培地中で、工程(2)によって得られた細胞を接着培養で培養する工程;ならびに
(4)M-CSF、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびFLT3リガンドを含む第4の細胞培養培地中で、工程(3)によって得られた細胞を懸濁培養で培養する工程であって、マクロファージおよび/または単球が生成される、工程
を含む方法を使用して生成された単核食細胞であって、
該方法が、インターロイキン34(IL-34)を含むかまたはIL-34およびGM-CSF含む小膠細胞分化培地中で、該生成された単核食細胞を接触させることを含まず、かつ該培養が、インターロイキン4(IL-4)を含むかまたはIL-4およびGM-CSFを含む樹状細胞分化培地中で、該生成された単核食細胞を接触させることを含まない、
前記単核食細胞。
【請求項20】
前記多能性幹細胞がヒト人工多能性幹細胞である前記方法によって生成された、請求項19記載の単核食細胞。
【請求項21】
前記第1、第2、第3、および第4の細胞培養培地のそれぞれが血清を含まず;任意で、前記第1の組成物が、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)、アミノ酪酸(GABA)、ピペコリン酸、および塩化リチウムのうちの1つもしくは複数またはすべてを含むmTeSR1培地中にあり、任意で、前記第2、第3、および第4の組成物が、StemPro-34培地中にある前記方法によって生成された、請求項18記載の単核食細胞。
【請求項22】
CD11b、CD14、CD16、CD64、CD11c、CD71、またはこれらの組み合わせに対して陽性である、請求項19~21のいずれか一項記載の単核食細胞。
【請求項23】
工程(4)、(3)、(2)、および(1)のいずれか1つまたは複数における前記培養がバイオリアクター中で培養することを含む前記方法によって生成された、請求項19~22のいずれか一項記載の単核食細胞。
【請求項24】
マクロファージの欠損または欠乏と関連する疾患または障害を有する対象を処置するための方法であって、請求項19~23のいずれか一項記載の単核食細胞を含む治療有効量の組成物を該対象に投与する工程を含み、該対象への該投与の後に、該単核食細胞がマクロファージを生成する、前記方法。
【請求項25】
単核食細胞を生成し、かつ神経変性障害を有する対象または認知機能の改善を必要としている対象を処置するための方法であって、
骨髄分化を誘導する条件下で細胞培養培地中で人工多能性幹細胞を培養し単核食細胞の生成をもたらす工程であって、該培養が、該人工多能性幹細胞を骨形成タンパク質(BMP-4)を含む第1の組成物と接触させることを含む、工程、
該第1の組成物の存在下での該人工多能性幹細胞の培養後に、該細胞培養培地を、bFGF、血管内皮増殖因子(VEGF)、および幹細胞因子(SCF)、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む第2の組成物と接触させる工程、
該第2の組成物の存在下での培養後に、該細胞培養培地を、SCF、インターロイキン3(IL-3)、トロンボポエチン(TPO)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、およびFms様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3リガンド、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む第3の組成物と接触させる工程、ならびに
該第3の組成物の存在下での培養後に、該細胞培養培地を、M-CSF、GM-CSF、およびFLT3リガンド、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の因子を含む第4の組成物と接触させ、それによって、該単核食細胞を生成する工程、
ここで、該培養が、インターロイキン34(IL-34)を含むかまたはIL-34および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む小膠細胞分化培地中で、該生成された単核食細胞を接触させることを含まず、かつ該培養が、インターロイキン4(IL-4)を含むかまたはIL-4およびGM-CSFを含む樹状細胞分化培地中で、該生成された単核食細胞を接触させることを含まない;ならびに
該生成された単核食細胞を含む治療有効量の組成物を該対象に投与し、それによって、該神経変性障害を有する該対象を処置する、または該対象の認知機能を改善する工程
を含む、前記方法。
【請求項26】
前記培養が、M-CSFならびにインターフェロンガンマ(IFN-γ)およびIL-4の一方または両方を含むマクロファージ分化培地中で、前記生成された単核食細胞を接触させることを含まない、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記培養が、マクロファージ分化培地中で、前記生成された単核食細胞を接触させることをさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記マクロファージ分化培地がM-CSFおよびIL-4を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記マクロファージ分化培地がM-CSFおよびインターフェロンガンマ(IFN-γ)を含む、請求項27記載の方法。
【請求項30】
生成された単核食細胞の集団を前記対象に投与するために、前記培養が、少なくとも1×10
6、5×10
6、または1×10
7個の前記単核食細胞の集団を生成するためにバイオリアクター中で培養することを含む、請求項25~29のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2021年8月19日に出願された米国特許仮出願第63/234,984号に対する、35U.S.C.§119(e)の下での優先権の主張を含む。
【0002】
技術分野
本発明は、神経変性疾患および老化のための多能性幹細胞由来の療法、および多能性幹細胞由来の単球および/またはマクロファージを生成するための改善されたプロトコールに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
本明細書中のすべての刊行物は、個々の刊行物または特許出願のそれぞれが参照により組み入れられることが具体的にかつ個々に示される場合と同じ程度に、参照により組み入れられる。以下の説明は、本発明の理解に有用であり得る情報を含む。これは、本明細書で提供される情報のいずれも先行技術であるか、もしくは本明細書で主張される発明に関連すること、または具体的にもしくは暗黙的に参照される任意の刊行物が先行技術であることを承認するものではない。
【0004】
神経変性疾患は、脳または末梢神経系の神経細胞に影響を及ぼし、これらは、経時的に機能を失うと考えられる。一例を挙げると、アルツハイマー病(AD)は、認知および機能に影響を及ぼし、患者が、生命の複数の局面、例えば、認知機能、行動、気分、および心理的状態に影響を及ぼす症状を経験する、進行性の神経変性疾患である。しかし、公知の疾患修飾療法はなく、これにより、創薬は未だ対処されていない医学の分野になる。別の例として、ルー・ゲーリッグ病としても公知である筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、一般的、壊滅的、および常に致死的な成人神経変性疾患である。上部および下位運動ニューロンの喪失に加えて、ALSは、今では、免疫の異常調節をともなう障害と見なされており、これは、疾患負荷および疾患進行の速度を増強する、炎症細胞の変化/活性化を特徴とする。残念ながら、ALSを有する患者においてこれらの容赦ない炎症反応を阻止するまたは実質的に遅延させるために現在利用可能な処置はない。
【0005】
若い血漿および骨髄を使用した以前の研究によって、老化してきている成人または神経変性を有するものにおいて、認識能力および神経の健康状態の何らかの改善が示された。しかし、若い血漿および骨髄の投与と関連する危険性によって、若い血漿および骨髄の投与は不適当な治療法になった。例えば、血漿注入は、アレルギーおよび輸血関連循環過負荷などの危険性をともない、結果として肺水腫(膨張)および呼吸困難が生じる可能性がある。
【0006】
したがって、神経変性障害の処置または緩和のための新しい療法を提供することが本発明の一目的である。
【発明の概要】
【0007】
以下の態様およびそれらの局面は、範囲を限定することなく、例示的および例証的であることが意図される組成物および方法と併せて、記載および例証される。
【0008】
様々な態様では、多能性幹細胞から生成された治療有効量の単核食細胞を対象に投与する工程を含む、神経変性障害を有する、認知機能障害を経験する、または認知機能の改善を必要としている対象を処置するまたは該対象に予防を提供するための方法が提供される。単核食細胞としては、単球、マクロファージ、または単球とマクロファージの混合物を挙げることができる。ヒト対象のための治療有効量の単核食細胞は、1回または複数回用量で与えられる、1×106、1×107、または1×108個程度であり得る。したがって、本明細書における本発明の多能性幹細胞から生成された、特に、人工多能性幹細胞(iPSC)から生成された単核食細胞は、天然に存在する対応物より優れた大量の供給を提供する。なぜならば、後者は、不可能ではないにしても、インビトロで増殖させるのが困難であるからである。
【0009】
様々な態様では、本明細書において開示される処置で使用するための単核食細胞は、骨髄分化を誘導する条件下で細胞培養培地中で多能性幹細胞を培養し単核食細胞の生成をもたらすことを含むプロセスにおいて、多能性幹細胞から、好ましくは、iPSCから生成される。様々な態様では、単核食細胞を生成するために骨髄分化を誘導するプロセスは、細胞を小膠細胞または樹状細胞に至らせることを含まない。いくつかの付加的な態様では、単核食細胞を生成するために骨髄分化を誘導するプロセスは、インビトロで細胞をマクロファージに至らせる工程を含まず;一方で、他の付加的な態様では、単核食細胞を生成するために骨髄分化を誘導するプロセスは、インビトロで細胞をマクロファージに至らせる工程を含む。
【0010】
いくつかの態様では、単核食細胞を生成するために骨髄分化を誘導するプロセスは、以下の最初の1つ、2つ、3つまたは4つすべての工程を含む:培地中で、iPSCを、骨形成タンパク質(BMP-4)を含む第1の組成物と接触させる工程;第1の組成物の存在下でのiPSCの培養後に、細胞培養培地をbFGF、VEGF、およびSCFのうちの1つまたは複数を含む第2の組成物と接触させる工程;第2の組成物の存在下でのiPSCの培養後に、細胞培養培地をSCF、IL-3、トロンボポエチン(TPO)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、およびFms様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3リガンド)のうちの1つまたは複数を含む第3の組成物と接触させる工程;ならびに第3の組成物の存在下でのiPSCの培養後に、細胞培養培地を1つまたは複数のM-CSF、GM-CSF、およびFLT3リガンドを含む第4の組成物と接触させる工程。
【0011】
好ましい態様では、BMP-4を含む第1の組成物は、bFGFおよびTGFβを含む、任意でさらにアミノ酪酸(GABA)、ピペコリン酸、および塩化リチウムを含む培地中にある。好ましくは、第1の組成物はmTeSR1培地中にある。付加的な態様では、第2の組成物、第3の組成物、および/または第4の組成物は、造血細胞培地、例えば、StemPro-34培地中にある。好ましくは、培地は無血清培地、例えば、無血清mTeSR1培地またはStemPro-34無血清培地である。
【0012】
付加的な態様は、本明細書において開示される処置で使用するための単核食細胞が、血液細胞、例えば、末梢血単核球から、または線維芽細胞もしくは別の体細胞源から再プログラムされた、iPSCから生成されること提供する。いくつかの態様では、本明細書において開示される処置で使用するための単核食細胞は自己由来であり、すなわち、自己体細胞から再プログラムされたiPSCから生成される。いくつかの態様では、本明細書において開示される、対象の処置で使用するための単核食細胞は、対象から得られた自己体細胞から再プログラムされたiPSCから生成される。
【0013】
様々な態様では、生成された単核食細胞は、老化してきている哺乳動物対象において、または神経変性障害、例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、統合失調症、および自閉症スペクトラム障害を有する対象において、または神経変性障害と関連している炎症を低減させることを必要としている対象において、使用するためのものである。様々な態様では、本明細書において開示されるように生成される単核食細は、1つまたは複数の行動評価において、シナプストランスポーター、VGLUT1のレベルにおいて、小膠細胞の分枝の長さまたは別の分子解析において、対象の認知機能の改善を提供する。いくつかの局面では、改善は、単核食細胞の投与を受けるより前の対象のベースライン状態と比較される。いくつかの局面では、改善は、若いかまたは神経変性障害がない健康な対象に匹敵するかまたは類似するレベルをもたらす。
【0014】
多能性幹細胞から生成された単核食細胞も提供され、これは1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む組成物中に存在してもよい。好ましくは、血液細胞または線維芽細胞から再プログラムされたiPSCから生成された単核食細胞が提供される。
【0015】
付加的な態様は、限定されないが、ハイスループットスクリーニング方法を含めて、本明細書において生成された単核食細胞を使用する薬物スクリーニングのための方法を提供する。いくつかの態様では、単球および/もしくはマクロファージの欠損もしくは欠乏と関連する疾患または障害、または神経変性疾患もしくは障害の処置または防止に有用な化合物を特定するための方法が提供され、該方法は、本明細書において開示される方法によって生成された単核食細胞を候補化合物と接触させる工程、および候補化合物が、単球もしくはマクロファージの欠損もしくは欠乏、または神経変性疾患もしくは障害をそれぞれ改善するかどうかを決定する工程を含む。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の態様の様々な特色を例として図示する添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
例示的な態様が参照図に図示される。本明細書において開示される態様および図は、限定ではなく例示であると見なされるべきであることが意図される。
【
図1】
図1は、iPSC由来の単核食細胞を3日ごとに投与し、いくつかの認知課題に関して行動試験を行うマウスモデルの概略図である。「83iGFP」は、iMPを生成するために使用されるiPSC株を表す。「SAB」は自発的交替行動試験を表す。「FC」は、恐怖条件づけを表す。「NOP」は新規物体配置試験を表す。「NOR」は新規物体認識試験を表す。「EPM」は高架式十字迷路を表す。若いマウスは3~4か月齢であり、一方で老化したマウスは11~13か月齢である。
【
図2】
図2は、空間作業記憶が良いマウスはアームA→B→Cに回ると考えられ、一方で、記憶が悪いマウスは、出てきたばかりのアームの間をより頻繁に行ったり来たりする(例えば、アームAとBの間を移動し、Aに戻る)と考えられる空間作業記憶を試験する、自発的交替行動(SAB)課題を描写する概略図である。
【
図3】
図3Aは、iMPを含まないビヒクルで処置した老化した動物(「老化Veh」として示される;緑色の点)は、自発的交替行動課題で行動が悪かったが、iMPで処置した老化したマウス(「老化iMP」として示される;赤色の点)は、若い動物(「若い」として示される;青色のドット)と比較して行動が悪くなかったことを示す。
図3Bは、両方の老化群は若い動物よりアーム進入が有意に低いことを示し、これにより、
図3AのiMPの効果は認知的なものであり、歩行運動の変化によるものではないことが示される。
【
図4A】
図4Aは、マウスを、以前に遭遇したことがない2つの新規物体に曝露し、30分間の記憶保持遅延(retention delay)後に、次いで、1つの新しい物体にマウスを曝露し、マウスが以前の物体を前に見たことを覚えている場合、マウスは新規な物体により時間を費やすと考えられる、「新規物体認識」(NOR)研究を描写する。新規物体認識アッセイにおいて年齢の影響も処理の影響もなく、本結果は、若いマウス群とビヒクルで処置した老化したマウス群とiMPで処置した老化したマウス群の間で統計的に差異はない。
【
図4B】
図4Bは、2つの物体のうちの1つが動かされ、動物が、以前の物体が設置されていた場所を覚えている場合、新規位置に位置する物体でより時間を費やすと考えられる、「新規物体位置/配置」(NOP)研究を描写する。結果は、老化したマウスは、位置を動かした物体の認識が有意に損なわれていること、およびiMP処置(「老化iMP」群)は、この課題において、老化したマウスの行動を有意に改善したことを示す。
【
図5】
図5Aは、Neun+細胞の数が、アンモン角領域1および3(CA1、CA3)において年齢でも処置でも変化しないことを描写する。Neunはニューロン核のマーカーであり、したがって、ニューロンの数を示す。
図5Bは、若い動物と比較して、VGLUT1は老化した動物で減少しているが、iMPで処置したものでは減少していないことを描写する。VGLUT1は、シナプスに位置するグルタミン酸トランスポーターであり、正常なシナプス機能に必須であり、アルツハイマー病で減少することが示されている。
【
図6】
図6Aは、CA3において、小膠細胞の分枝の長さは老化してきている動物で低減しているが、iMPで処置した老化してきている動物では低減していないことを描写する。iMPで処置した老化してきている動物は「老化iMP」群として示される。
図6Bは、CA1において、分枝の長さは、老化してきている動物で再び減少しているが、iMPで処置した老化してきている動物では有意に増加していることを描写する。小膠細胞は脳の主要な免疫細胞であり、その機能が、損傷または傷害について周囲の状況を調査することであることを考えれば、小膠細胞は長い分枝突起を通常有する。しかし、活性化されると、小膠細胞はこれらの突起を退縮させ、細胞あたりの分枝の長さがより短くなると考えられる。これは、老化およびアルツハイマー病の両方とともに起こることが公知である。さらに、両方のケースで、全体的な小膠細胞数の増加がある。
【
図7】
図7は、LAMP1が両方の老化群でCA1で増加していることを描写する。LAMP1は、老化およびアルツハイマー病とともに増加することが示されているリソソームマーカーである。
【
図8】
図8は、星状細胞の数は老化してきている動物で増加しているが、iMPで処置した老化してきている動物では増加していないことを描写する。GFAPは、老化とともに、および疾患において、数および細胞体サイズが通常は増加する、星状細胞のマーカーである。
【
図9A】
図9Aは、最初に病態を発生するときである3か月齢の5×FADマウスで始める、アルツハイマー病のマウスモデルに投与されるiMPの研究のタイムラインを描写する(アミロイド&小膠細胞の活性化をともなうADマウスモデルは、約2か月で始まる)。シクロスポリンAを、最初の細胞より3日前に腹腔内注射によって投与し、次いで、飲料水を介して投与する。図に示すように、83iGFP単核細胞を8回の注射にわたって500,000細胞/注射で注射する。本発明者らは、大規模な病態を既に有する7か月齢の動物でこれを繰り返すであろう。
【
図9B】
図9Bは、3か月目でiMPで処置した5×FADマウス(「iMP」)は、ビヒクルで処置した5×FADマウスと比較して、空間作業記憶および短期記憶の課題に関して変化を示さないことを描写する。
【
図9C】
図9Cは、iMP処置動物が「新規物体認識」研究において改善を示すことを描写する。
【
図10A】
図10Aは、iPSC(番号1として示され、3系列は1A、1B、および1Cとして示される)、ウェルプレート中で増殖したiMP(実施例2に記載されているとおり;番号3として示され、3系列は3A、3B、3Cとして示される)、ウェルプレートの培養から収集された凍結保存iMP(番号2として示され、3系列は2A、2B、2Cとして示される)、ならびに初期(15日目;番号4として示され、3系列は4A、4B、4Cとして示される)および後期(55日目;番号5として示され、3系列は5A、5B、5Cとして示される)にバイオリアクター中で産生されたiMPを比較する、バルクRNAシークエンシングデータの階層クラスタリングである。分化したiMP(群2~5)のすべては、互いに非常に類似している。
【
図10B】
図10Bは、
図10Aに描写されるアッセイ全体にわたる2000個の最も可変性の遺伝子を描写する主成分分析プロットである。
図10Aのクラスタリングと同様に、近接は類似性を示し、したがって、群2~5のiMPは、互いに類似していることが示された。
【
図11】
図11は、
図10Aに描写される細胞の群2~5における、いくつかの重要な単球/マクロファージマーカー(CD14、CD16、CD64、CD11b、CD11c、およびCD71)の発現(キロベースミリオンあたりの転写産物(transcripts per kilobase million)、TPM)のRNA-seqの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の説明
本明細書で引用されるすべての参考文献は、完全に記載されるかのように、参照によりその全体が組み入れられる。別段規定されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0019】
当業者は、本明細書において記載されるものと同様または均等である多くの方法および材料を認識すると考えられ、これらは本発明の実施で使用することができる。実際に、本発明は、記載される方法および材料に決して限定されるものではない。本発明において、次の用語を以下に定義する。
【0020】
「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は脊椎動物、例えば、霊長類、げっ歯類、家畜、または狩猟動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えばアカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターが挙げられる。家畜および狩猟動物としては、雌ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科の種、例えばイエネコ、およびイヌ科の種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミが挙げられる。用語「患者」、「個体」、および「対象」は、本明細書において互換的に使用される。一態様では、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、または雌ウシであり得るが、これらの例に限定されない。一態様では、対象はヒトである。さらなる態様では、対象は、神経変性の症状または疾患の徴候を示す、例えば、記憶(短期記憶、作業記憶など)の喪失の徴候、時間または場所の混乱の徴候、振戦の徴候を示すヒトである。
【0021】
「神経障害」は、脳ならびに体および脊髄の全体にわたって見られる神経に影響を及ぼす障害を指し、神経障害としては、限定されないが、てんかん、学習障害、神経筋障害、自閉症、注意欠陥障害、脳腫瘍、および脳性麻痺が挙げられる。
【0022】
「神経変性疾患または障害」は、一般に、脳または末梢神経系の神経細胞が経時的に機能を失い、最終的に死ぬ病態を説明する。神経変性疾患の影響を受ける危険性は年齢とともに劇的に増加する。アルツハイマー病およびパーキンソン病は一般的な神経変性疾患である。神経変性疾患の例としては、アルツハイマー病および他の認知症、パーキンソン病およびその関連障害、ハンチントン病、プリオン病、運動ニューロン疾患、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症、および筋萎縮性側索硬化症が挙げられる。
【0023】
「空間作業記憶」は、空間情報を作業記憶中に短期間にわたって能動的に保つ能力を必要とする。
【0024】
一次記憶または能動記憶(active memory)としても公知である「短期記憶」は、少量の情報を脳裏に保存し、短期間の間それをすぐに利用可能な状態に保つ能力である。通常、短期記憶は非常に短時間である。短期記憶がリハーサルされないか、または能動的に保たれない場合、これは、ほんの数秒しか続くことができない。
【0025】
用語「処置する」または「処置」または「処置すること」は、診断された病的な疾患もしくは障害を治癒させる、該疾患もしくは障害を鈍化させる、該疾患もしくは障害の症状を軽減する、および/または該疾患もしくは障害の進行を止める治療的措置を指す。したがって、処置を必要としているものには、既に障害を有する者が含まれる。ある特定の態様では、対象が、例えば、疾患または障害と関連する任意の症状の全体的、部分的、永続的、または一過的な緩和または排除を示す場合、対象は、疾患または障害について首尾よく「処置されている」。
【0026】
用語「約」または「およそ」は、言及される数値的表示(パーセンテージ)に関連して使用される場合は、本明細書において他に特に規定されない限り、その言及される数値的表示(パーセンテージ)の言及される数値的表示(パーセンテージ)プラスまたはマイナス5%までを意味する。例えば、術語「約50%」は45%~55%の範囲をカバーする。様々な態様では、用語「約」は、言及される数値的表示に関連して使用される場合は、特許請求の範囲において特に規定される場合、その言及される数値的表示の言及される数値的表示プラスまたはマイナス4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.25%までを意味することができる。他の態様では、「約「または「およそ」は、少なくとも日(例えば、日、週、または月)の単位の期間の言及される数値的表示に関連して使用される場合は、言及される数値的表示プラスまたはマイナス少なくとも1日、または示される期間の10%が1日を超える場合、少なくとも1日および示される期間の10%までを意味する。例えば、術語「およそ」4日は3日~5日の範囲をカバーし;術語「およそ」60日または「およそ」2か月は54日~66日の範囲をカバーする。
【0027】
用語「多能性幹細胞」または「PSC」は、内胚葉、外胚葉、および中胚葉細胞のいずれかに発達する能力、ならびに増殖能力を有する自己複製細胞を指す。多能性幹細胞の例としては、限定されないが、胚性幹(ES)細胞、核移植によって得られたクローン化された胚に由来する胚性幹細胞(ntES細胞)、生殖系列幹細胞(「GS細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、および人工多能性幹細胞(「iPS細胞」または「iPSC」)が挙げられる。いくつかの態様では、PSCはヒトPSCである。PSCの好ましい例としては、ES細胞およびiPS細胞が挙げられる。
【0028】
ES細胞は、ヒトまたはマウスなどの哺乳動物の初期胚(例えば、ブラストシスト)の内部細胞塊から樹立された幹細胞あり、ES細胞は、多能性および自己複製による増殖能力を有する。ES細胞は、対象動物の受精卵のブラストシストから内部細胞塊を取り出し、続いて、フィーダーとしての線維芽細胞上で内部細胞塊を培養することによって、樹立することができる。該細胞は、白血病抑制因子(LIF)および/または塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)などの物質が補充された培地を使用して継代培養することによって、維持することができる。ヒトおよびサルのES細胞の樹立および維持の方法は、例えば、US 5,843,780 B; Thomson JA, et al. (1995), Proc Natl. Acad. Sci. U S A. 92:7844-7848; Thomson JA, et al. (1998), Science. 282:1 145-1147; H. Suemori et al. (2006), Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932; M. Ueno et al. (2006), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:9554-9559; H. Suemori et al. (2001), Dev. Dyn., 222:273-279; H. Kawasaki et al. (2002), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:1580-1585;およびKlimanskaya I, et al. (2006), Nature. 444:481-485に記載されている。
【0029】
人工多能性幹(iPS)細胞は、特定の再プログラム因子を体細胞に導入することによって調製することができ、再プログラム因子はDNAまたはタンパク質の形態である。iPS細胞は、ES細胞のものとほとんど同等の特性、例えば、分化の多能性および自己複製による増殖能力を有する、体細胞由来の人工幹細胞である。再プログラム因子は、ES細胞で特異的に発現している遺伝子もしくはその遺伝子産物、またはノンコーディングRNA;あるいはES細胞の未分化状態の維持で重要な役割を果たす、遺伝子もしくはその遺伝子産物、ノンコーディングRNA、または低分子量化合物によって構成され得る。再プログラム因子の遺伝子の例としては、Oct3/4、Sox2、Soxl、Sox3、Soxl5、Soxl7、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbxl5、ERas、ECAT15-2、Tell、ベータカテニン、Lin28b、Salll、Sall4、Esrrb、Nr5a2、およびTbx3が挙げられ、これらの再プログラム因子は、単独かまたは組み合わせてかのいずれかで使用することができる。
【0030】
用語「血清」は、ヒト血清、サル血清、ウシ胎仔血清、ウシ血清、ブタ血清、ウマ血清、ロバ血清、ニワトリ血清、ウズラ血清、ヒツジ血清、ヤギ血清、イヌ血清、ネコ血清、ウサギ血清、ラット血清、モルモット血清、マウス血清などを指す。血清を含まない培地の例としては、ITSが補充されている、最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イソコブ改変ダルベッコ培地(Iscove’s modification of Dulbecco's medium)(IMDM)、StemPro-34SFM(Invitrogen)、Stemline II(Sigma-Aldrich)など;血清代替物が前もって加えられている霊長類ES細胞を培養するための培地(霊長類ES/iPS細胞のための培地、ReproCELL);および無血清培地(mTeSR、Stemcell Technology)が挙げられる。血清を含まない培地または「無血清」は、より好ましくは、mTeSR1培地またはStemPro-34無血清培地である。
【0031】
「造血因子」は、血液細胞の分化および増殖を促進する因子を指す。それらの例としては、幹細胞因子(SCF)、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン、およびFlt3リガンドが挙げられる。インターロイキンは白血球から分泌されるタンパク質であり、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、およびIL-9などの様々なタイプに分けることができる。
【0032】
句「実質的に純粋」は、少なくとも95%の細胞が記載される表現型または発現マーカープロファイルを有する細胞の集団を指す。「実質的に純粋」な細胞集団に言及するすべての態様において、細胞集団がより低いまたはより高いレベルの純度を有する代替の態様も企図される。例えば、いくつかの態様では、所与の細胞集団が「実質的に純粋」である代わりに、細胞集団は、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の細胞、または100%の細胞が記載される表現型または遺伝子発現プロファイルを有するものであってもよい。
【0033】
様々な態様は、対象において、対象の認知機能を改善する、または神経変性障害を有する対象を処置する、または神経変性障害を緩和する、神経変性障害を処置する、もしくは神経変性障害の発症を遅延させる、または神経変性障害を有する対象の炎症を低減させるための方法であって、多能性幹細胞から生成された単核食細胞の集団を含む治療有効量の組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの局面では、単核食細胞の集団は人工多能性幹細胞(iPSC)から分化させられる。他の局面では、単核食細胞の集団は自己iPSCから分化させられる。さらに別の局面では、単核食細胞の集団は胚性幹細胞から分化させられる。様々な態様では、多能性幹細胞から生成された単核食細胞は、多能性幹細胞から生成された単球を含む。様々な態様では、多能性幹細胞から生成された単核食細胞は、多能性幹細胞から生成された単球である。いくつかの態様では、多能性幹細胞から生成された単核食細胞は、マクロファージをさらに含み;マクロファージは、多能性幹細胞から生成された単球を移植した後に、または多能性幹細胞から生成された単球のインビトロまたはエクスビボでの刺激によって、産生される。さらなる態様では、単核食細胞の集団は、本明細書において開示される1つまたは複数の分化方法によってiPSCから生成された骨髄系列細胞である。付加的な態様では、本明細書における本発明の単核食細胞は単球を含み、マクロファージをさらに含むことできるが、好中球を除外する。
【0034】
いくつかの態様では、対象において、対象の認知機能を改善する、または神経変性障害を有する対象を処置する、または神経変性障害を緩和する、神経変性障害を処置する、もしくは神経変性障害の発症を遅延させる、または神経変性障害を有する対象の炎症を低減させる方法であって、本明細書において開示される1つまたは複数の分化方法によってiPSCから生成された単球を含む治療有効量の組成物を対象に投与する工程を含む方法が提供される。いくつかの態様では、対象において、対象の認知機能を改善する、または神経変性障害を有する対象を処置する、または神経変性障害を緩和する、神経変性障害を処置する、もしくは神経変性障害の発症を遅延させる、または神経変性障害を有する対象の炎症を低減させるための方法は、本明細書において開示される分化方法によってiPSCから生成された単球からなる細胞を含む治療有効量の組成物を対象に投与する工程を含み、分化方法は、インビトロで、生成された単球をマクロファージに分化させる工程を含まず、例えば、分化方法は、M-CSFおよびIFN-ガンマまたはIL-4の一方または両方の存在下で、生成された単球を培養する工程を含まない。他の態様では、対象において、対象の認知機能を改善する、または神経変性障害を有する対象を処置する、または神経変性障害を緩和する、神経変性障害を処置する、もしくは神経変性障害の発症を遅延させる、または神経変性障害を有する対象の炎症を低減させるための方法は、iPSCから生成された単核食細胞を含む治療有効量の組成物を対象に投与する工程を含み、単核食細胞は、(1)分化方法が、インビトロでマクロファージ分化にさらに至らせる場合、iPSCから生成された単球とiPSCから生成されたマクロファージの混合物であってもよく、または(2)分化方法が、インビトロでマクロファージ分化にさらに至らせ、さらなる選別/精製が行われて、iPSCから生成されたマクロファージのみを得る場合、iPSCから生成された実質的に純粋なマクロファージであってもよく、または(3)分化方法が、iPSCから生成された単球の分化に至らせない場合、iPSCから生成された実質的に純粋な単球であってもよい。
【0035】
様々な態様では、本明細書において開示されるプロセスにおいて、特に、バイオリアクター中で培養することによって、臨床的に意義のある量の単核食細胞(または骨髄単球細胞)が多能性幹細胞(例えば、人工多能性幹細胞)から生成される。患者から単核食細胞(または単球)を単離してそれを使用しなければならないこととは対照的に、多能性幹細胞から、特にiPSCから生成された臨床的に意義のある量の単核食細胞は、かなりの量での患者への投与に使用するために保存する(例えば、凍結する)または培養で維持することができる。多能性幹細胞、特に人工多能性幹細胞から始めると、本明細書において記載される生成された単核食細胞は、処置を必要としている患者または対象から得た自己の単球またはマクロファージと比較して、遺伝子突然変異の傾向が少ない可能性があり、疾患突然変異が少ない可能性がある。
【0036】
いくつかの態様では、対象、特に、老化してきている対象(例えば、40~50歳の、50~60歳の、60~70歳の、70~80歳の、80~90歳の、90~100歳の、または100歳を越える年齢のヒト)の認知機能を改善するための方法は、対象の自己iPSCから生成された単核食細胞を含む治療有効量の組成物を対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、神経変性障害を有する対象を処置するための方法は、対象の自己iPSCから分化した単核食細胞を含む治療有効量の組成物を対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、対象において神経変性障害を緩和する、神経変性障害を処置する、または神経変性障害の発症を遅延させるための方法は、対象の自己iPSCから分化した単核食細胞を含む治療有効量の組成物を対象に投与する工程を含む。さらなる態様では、処置または防止のための方法は、単核食細胞の欠損または欠乏と関連する疾患または障害を有する、有する疑いがある、または発生する危険性がある対象に自己iPSCから生成された単核食細胞を投与する工程を含む。いくつかの態様では、処置または防止のための方法は、マクロファージの欠損または欠乏と関連する疾患または障害を有する、有する疑いがある、または発生する危険性がある対象に自己iPSCから生成された単核食細胞を投与する工程を含み、対象へ投与した後に、投与された単核食細胞はマクロファージを生成する。さらに付加的な態様では、炎症を低減させるための方法は、炎症と関連する疾患または障害を有する、有する疑いがある、または発生する危険性がある対象に自己iPSCから生成された単核食細胞を投与する工程を含み;任意で、対象へ投与した後に、投与された単核食細胞は、マクロファージを生成する。炎症と関連する疾患または障害は、神経変性疾患または障害であり得る。
【0037】
他の態様では、対象、特に、老化してきている対象(例えば、40~50歳の、50~60歳の、60~70歳の、70~80歳の、80~90歳の、90~100歳の、または100歳を越える年齢のヒト)の認知機能を改善するための方法は、対象の自己iPSCから生成された骨髄単球細胞または単球を含む治療有効量の組成物を対象に投与する工程を含み、骨髄単球細胞または単球は、対象に投与するより前に、小膠細胞、樹状細胞、またはマクロファージに分化するように刺激されることはない。いくつかの態様では、神経変性障害を有する対象を処置するための方法は、対象の自己iPSCから生成された骨髄単球細胞または単球を含む治療有効量の組成物を対象に投与する工程を含み、骨髄単球細胞または単球は、対象に投与するより前に、小膠細胞、樹状細胞、またはマクロファージに分化するように刺激されることはない。いくつかの態様では、対象において神経変性障害を緩和する、神経変性障害を処置する、または神経変性障害の発症を遅延させるための方法は、対象の自己iPSCから生成された骨髄単球細胞または単球を含む治療有効量の組成物を対象に投与する工程を含み、骨髄単球細胞または単球は、対象に投与するより前に、小膠細胞、樹状細胞、またはマクロファージに分化するように刺激されることはない。さらなる態様では、処置または防止のための方法は、単球または単核食細胞の欠損または欠乏と関連する疾患または障害を有する、有する疑いがある、または発生する危険性がある対象に対象の自己iPSCから生成された骨髄単球細胞または単球を投与する工程を含み、骨髄単球細胞または単球は、対象に投与するより前に、小膠細胞、樹状細胞、またはマクロファージに分化するように刺激されることはない。いくつかの態様では、処置または防止のための方法は、マクロファージの欠損または欠乏と関連する疾患または障害を有する、有する疑いがある、または発生する危険性がある対象に対象の自己iPSCから生成された骨髄単球細胞または単球を投与する工程を含み、対象へ投与した後に、投与された骨髄単球細胞または単球はマクロファージを生成する。さらに付加的な態様では、炎症を低減させるための方法は、炎症と関連する疾患または障害を有する、有する疑いがある、または発生する危険性がある対象に投与する工程を含み、骨髄単球細胞または単球は、対象に投与するより前に、小膠細胞、樹状細胞、またはマクロファージに分化するように刺激されることはない。炎症と関連する疾患または障害は神経変性疾患または障害であり得る。代替の態様では、処置または防止のための、または炎症を低減させるための方法は、対象の自己iPSC由来の骨髄単球細胞を対象に投与する工程を含み、投与された骨髄単球細胞は、対象へ投与するより前に、マクロファージにさらに分化させられる。
【0038】
様々な実施では、多能性幹細胞、好ましくは、iPSCから分化した単核食細胞を投与する工程を含む方法は、対象に血漿を投与することも骨髄を投与することも含まず;またはこれらの方法における対象は、血漿移植も骨髄移植も受けない。代替の実施では、多能性幹細胞、好ましくは、iPSCから分化した単核食細胞を投与する工程を含む方法は、対象のための血漿または骨髄移植療法に加えられる。別の実施では、多能性幹細胞から分化した単核食細胞を投与する工程を含む方法は、血漿注入または骨髄移植療法への応答が無効であるかまたは病的状態の合併症をともなう対象のためのものである。
【0039】
方法の様々な態様では、単核食細胞は、骨髄系列細胞(好ましくは、単球)を生成するために、骨髄分化を誘導する条件下で細胞培養培地中で多能性幹細胞を培養する工程を含むプロセスにおいて多能性幹細胞から生成され、該プロセスは、生成された細胞を小膠細胞分化培地または樹状細胞分化培地に接触させることも、これらの培地中で培養することも含まない。例えば、多能性幹細胞から単核食細胞(または骨髄系列細胞)を生成するプロセスは、生成された細胞を、(a)IL-34、(b)IL-34およびGM-CSF、(c)IL-4、または(d)IL-4およびGM-CSFの存在下で培養することも接触させることも含まない。したがって、本明細書において開示される1つまたは複数の方法で使用するための多能性幹細胞から生成された単核食細胞(好ましくは、単球)は、小膠細胞でも樹状細胞でもない。それによって、対象の認知機能を改善する、または神経変性障害を有する対象を処置する、または対象において神経変性障害を緩和する、神経変性障害を処置する、もしくは神経変性障害の発症を遅延させる、またはマクロファージもしくは単球の欠損もしくは欠乏と関連する疾患もしくは障害を有する、有する疑いがある、もしくは発生する危険性がある対象の処置または防止のための、本明細書において開示される方法は、多能性幹細胞から生成された小膠細胞を投与することも樹状細胞を投与することも含まない。付加的な態様では、プロセスは、生成された細胞を、マクロファージ分化培地中で、またはマクロファージ分化刺激剤の存在下で接触させることも培養することもさらに除外する。例えば、これらの付加的な例では、多能性幹細胞から単核食細胞(または骨髄系列細胞)を生成するプロセスは、生成された細胞を、(a)IL-34、(b)IL-34およびGM-CSF、(c)IL-4、(d)IL-4およびGM-CSF、または(e)M-CSFならびにIFN-ガンマおよびIL-4のいずれか一方もしくは両方の存在下で培養することも接触させることも含まない。すなわち、単核食細胞を生成するプロセスは、生成された細胞を、(a)IL-34、(b)IL-34とGM-CSFの組み合わせ、(c)IL-4、(d)IL-4とGM-CSFの組み合わせ、(e)M-CSFおよびIFN-ガンマの組み合わせ、および(f)M-CSFとIL-4の組み合わせ、のいずれかとともに培養することを含まない。「組み合わせ」中の複数の試薬は、培地に同時に、または順次加えることができる。代わりに、プロセスは、生成された細胞を、マクロファージ分化培地中で、またはマクロファージ分化刺激剤の存在下で接触させるかまたは培養することをさらに含むことができる。例えば、多能性幹細胞から単核食細胞(または骨髄系列細胞)を生成するプロセスは、生成された細胞を、(a)IL-34、(b)IL-34およびGM-CSF、(c)IL-4、または(d)IL-4およびGM-CSFの存在下で培養することも接触させることも含まないが、生成された細胞を、M-CSFならびにIFN-ガンマおよびIL-4のいずれか一方もしくは両方とともに培養するか、またはM-CSFならびにIFN-ガンマおよびIL-4のいずれか一方もしくは両方と接触させることを含む。
【0040】
特に、いくつかの例では、多能性幹細胞から単核食細胞を生成するためのプロセスは、骨髄分化を誘導する条件下で、細胞培養培地中で多能性幹細胞を培養する工程を含み、培養は、bFGFを含む、bFGFおよびTGFβを含むか、またはbFGF、TGFβ、アミノ酪酸、ピペコリン酸、および塩化リチウムを含む無血清培地中で、BMP-4を含む第1の組成物と多能性幹細胞を接触させることを含む。様々な局面では、培養は、bFGF、TGFβ、アミノ酪酸、ピペコリン酸、および塩化リチウムのすべてを含むか、またはそれらのうちの1つ、2つ、3つ、もしくは4つを含むmTeSR1培地中で、BMP-4を含む第1の組成物と多能性幹細胞を接触させることを含む。
【0041】
骨髄分化を誘導する条件下で、細胞培養培地中で多能性幹細胞を培養する工程は、第1の組成物をともなう工程から得られた細胞を、bFGF、VEGF、SCF、またはこれらの組み合わせを含めた1つもしくは複数またはすべての因子を含む第2の組成物と接触させることをさらに含むことができる。様々な局面では、細胞を第2の組成物と接触させることは、細胞培養培地を第2の組成物を含むものと変えること、または細胞培養培地を第2の組成物と接触させることを指す。様々な局面では、第2の組成物は、bFGF、VEGF、もしくはSCF、またはbFGFとVEGFとSCFの組み合わせからなる造血因子を含み;好ましくは、無血清培地中にある。
【0042】
骨髄分化を誘導する条件下で、細胞培養培地中で多能性幹細胞を培養する工程は、第2の組成物をともなう工程から得られた細胞を、SCF、IL-3、トロンボポエチン、M-CSF、FLT3リガンド、またはこれらの組み合わせを含めた1つもしくは複数またはすべての因子を含む第3の組成物と接触させることをさらに含むことができる。様々な局面では、細胞を第3の組成物と接触させることは、細胞培養培地を第3の組成物を含むものと変える工程、または細胞培養培地を第3の組成物と接触させることを指す。様々な局面では、第3の組成物は、SCF、IL-3、トロンボポエチン、M-CSF、もしくはFLT3リガンド、またはSCFとIL-3とトロンボポエチンとM-CSFとFLT3リガンドの組み合わせからなる造血因子を含み;好ましくは、無血清培地中にある。
【0043】
骨髄分化を誘導する条件下で、細胞培養培地中で多能性幹細胞を培養する工程は、第3の組成物をともなう工程から得られた細胞を、M-CSF、GM-CSF、FLT3リガンド、またはこれらの組み合わせを含めた1つもしくは複数またはすべての因子を含む第4の組成物と接触させることをさらに含むことができる。様々な局面では、細胞を第4の組成物と接触させることは、細胞培養培地を第4の組成物を含むものと変える工程、または細胞培養培地を第4の組成物と接触させることを指す。様々な局面では、第4の組成物は、M-CSF、GM-CSF、もしくはFLT3リガンド、またはM-CSFとGM-CSFとFLT3リガンドの組み合わせからなる造血因子を含む。
【0044】
一態様では、多能性幹細胞から単核食細胞を生成するためのプロセスは、(a)BMP-4を含むが血清を含まない第1の組成物とともに接着培養で多能性幹細胞を培養する工程;(b)bFGF、VEGF、およびSCFを含むが血清を含まない第2の組成物とともに、工程(a)によって得られた細胞を接着培養で培養する工程;(c)SCF、IL-3、トロンボポエチン、M-CSF、およびFLT3リガンドを含むが血清を含まない第3の組成物とともに、工程(b)によって得られた細胞を接着培養で培養する工程;ならびに(d)M-CSF、GM-CSF、およびFLT3リガンドを含む第4の組成物とともに、工程(c)によって得られた細胞を接着培養で培養する工程であって、マクロファージおよび/または単球が産生/収集される工程を含む。代わりに、多能性幹細胞から単核食細胞を生成するためのプロセスは、懸濁培養で行うことができる。例えば、工程(d)は、例えば、M-CSF、GM-CSF、およびFLT3リガンドを含む第4の組成物を含むバイオリアクター中などの懸濁培養で行うことができる。表1は、バイオリアクター中の懸濁培養で培養される細胞が生きていることを示す。懸濁培養で培養する工程は、細胞培養培地が交換されるときに、培養の上清に存在する細胞を収集する工程、および収集した細胞を細胞培養に戻す工程を含む。
【0045】
いくつかの態様では、多能性幹細胞から単核食細胞を生成するためのプロセスは、以下の4工程のうちの1つまたは複数を行うことを含む:第1に、培養培地中で、細胞培養物をBMP4を含む第1の組成物と接触させる工程であって、細胞培養物が第1の組成物と最初に接触させられる場合に、細胞培養物が多能性幹細胞を含む、工程、第2に、造血細胞培地中で、細胞培養物をbFGF、SCF、およびVEGF-Aのうちの1つまたは複数(例えば、bFGF、SCF、およびVEGF-Aのそれぞれ)を含む第2の組成物と接触させる工程;第3に、造血細胞培地中で、細胞培養物をSCF、IL-3、TPO、M-CSF、およびFLT3リガンドのうちの1つまたは複数(例えば、SCF、IL-3、TPO、M-CSF、およびFLT3リガンドのそれぞれ)を含む第3の組成物と接触させる工程;ならびに第4に、造血細胞培地中で、細胞培養物をM-CSF、FLT3リガンド、およびGM-CSFのうちの1つまたは複数(例えば、M-CSF、FLT3リガンド、およびGM-CSFのそれぞれ)を含む第4の組成物と接触させ、それによって、単核食細胞を生成する工程。いくつかの態様では、上記の4工程のすべてが順番通りに行われる。様々な態様では、生成された単核食細胞を、小膠細胞にも樹状細胞にもさらに分化させず、刺激もしない。付加的な態様では、生成された単核食細胞は、さらに分化させず、刺激もせず、マクロファージでもなく;一方で代わりに、生成された単核食細胞を分化させて、少なくともある程度のマクロファージを得ることができる。一部のそのような態様では、これら4工程のいずれかのために使用される培地は無血清培地である。一部のそのような態様では、これら4工程のいずれかのために使用される培地は合成培地(chemically-defined medium)である。一部のそのような態様では、上記の4工程のすべてまたはいずれかは、細胞外基質がコーティングされたディッシュまたはウェルプレート中で行われる。いくつかの局面では、該細胞外基質は、エンゲルブレス-ホルム-スウォーム(Engelbreth-Holm-Swarm)マウス肉腫細胞から抽出された、再構成された基底膜調製物である。
【0046】
一態様では、多能性幹細胞から単核食細胞を生成するためのプロセスは、骨形成タンパク質4(BMP-4)が補充された第1の培地中で多能性幹細胞をインキュベートし、それによって、第1の培地で処理した細胞を形成する工程;塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、および幹細胞因子(SCF)が補充された第2の培地中で、第1の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第2の培地で処理した細胞を形成する工程;SCF、インターロイキン3(IL-3)、トロンボポエチン(TPO)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、およびFLT3リガンドが補充された第3の培地中で、第2の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第3の培地で処理した細胞を形成する工程;ならびにM-CSF、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびFLT3リガンドが補充された第4の培地中で、第3の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第4の培地で処理した細胞を形成する工程であって、この細胞が多能性幹細胞から分化した単核食細胞である工程を含む。
【0047】
一態様では、多能性幹細胞から単球を生成するためのプロセスは、BMP-4が補充された第1の培地中でiPSCをインキュベートし、それによって、第1の培地で処理した細胞を形成する工程;bFGF、VEGF、およびSCFが補充された第2の培地中で、第1の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第2の培地で処理した細胞を形成する工程;SCF、IL-3、TPO、M-CSF、およびFLT3リガンドが補充された第3の培地中で、第2の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第3の培地で処理した細胞を形成する工程;ならびにM-CSF、GM-CSF、およびFLT3リガンドが補充された第4の培地中で、第3の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第4の培地で処理した細胞を形成する工程であって、この細胞が多能性幹細胞から分化した単球である工程を含む。iPSCから生成された、得られた単球は、移植、移入での使用に適し、または他の方法でそれを必要とする患者へ投与される。
【0048】
いくつかの局面は、第1の培地はフィーダーフリー培養培地、mTeSRであり、BMP-4が補充されることを規定する。BMP-4は、10~200ng/mL、または40~160ng/mL、または60~120ng/mL、または約80ng/mLの終濃度となるように第1の培地に加えることができる。いくつかの局面では、BMP-4の濃度は5ng/mL~150ng/mLである。いくつかの局面では、BMP-4の濃度は10ng/mL~100ng/mLである。いくつかの局面では、BMP-4の濃度は20ng/mL~80ng/mLである。さらなる局面では、第1の培地は、mTeSRカスタム培地ではなく標準的なmTeSR培地であり、したがって、第1の培地は、bFGF、TGFβ、GABA、ピペコリン酸、および塩化リチウムを含むmTeSRである。補充物を含むこの第1の培地は、1または複数の新たな量で使用して、約3日間、または1日目~4日目まで幹細胞を培養することができる。いくつかの局面では、幹細胞の維持に適した組織培養培地が第1の培地として使用される。他の局面では、幹細胞の分化に適した組織培養培地が第1の培地として使用される。
【0049】
「TeSR」は、hPSCの導出および長期のフィーダー非依存性培養を支持することが示されている、無血清で、ゼノフリーの培地であり、Tenneille Ludwigおよび共同研究者によって開発された(Ludwig TE et al., Nat Biotechnol. 24: 185-7, 2006)。「TeSR」の配合物は、TGF、GABA、ピペコリン酸、および塩化リチウムとともに高レベルのbFGFを含む。Ludwigらによるこの原著刊行物は、4種のヒト成分(コラーゲンIV、フィブロネクチン、ラミニン、およびビトロネクチン)からなる細胞支持マトリックスの使用を記載している。Ludwigおよび共同研究者は、培地の改変型(「mTeSR1」)をさらに開発し、これは、動物が供給源のいくつかのタンパク質を含むにもかかわらず、完全に合成され(fully-defined)、かつ無血清であるという利点を保持し、フィーダー細胞を必要とせずにhPSCの自己複製を支持する(Ludwig TE, et al., Nat Methods 3: 637-46, 2006)。Ludwig TE, et al., Nat Methods 3: 637-46, 2006によるmTeSR1培地は、DMEM/F12、Stock B(溶解されたウシ血清アルブミン、チアミン、還元型グルタチオン、L-アスコルビン酸2-リン酸マグネシウム塩、セレン、微量元素B、微量元素C、インスリン、ホロ-トランスフェリンを含む)、ゼブラフィッシュbFGF、TGFβ1、ピペコリン酸、GABA、塩化リチウム、脂質、L-グルタミン-βメルカプトエタノール、MEM NEAA、およびNaHCO3を含み、これは、混合の際に、NaOHを使用してpHが7.4になるように、かつ結晶性NaClを使用してモル浸透圧濃度が340~350mOsMolになるように調整され、好ましくは、使用前に濾過滅菌される。
【0050】
いくつかの局面は、第2の培地は無血清培地、例えば、StemPro-34であり、(1)5~100ng/mL、または10~50ng/mL、または20ng/mL~35ng/mL、または約25ng/mLの終濃度のbFGF;(2)約10~200ng/mL、約40~120ng/mL、約60~100ng/mL、または約80ng/mLの終濃度のVEGF;および(3)約10~500ng/mL、または30~300ng/mL、または50~150ng/mL、または80~120ng/mL、または約100ng/mLの終濃度のSCFが補充されることを規定する。補充物を含むこの第2の培地は、1または複数の新たな量で使用して、約2日間、4日目~6日日目まで細胞を培養することができる。
【0051】
いくつかの局面は、第3の培地は、無血清培地、例えば、StemPro-34であり、(1)5~100ng/mL、または25~75ng/mL、または40~60ng/mL、または約50ng/mLの終濃度のSCF;(2)5~100ng/mL、または25~75ng/mL、または40~60ng/mL、または約50ng/mLの終濃度のIL-3;(3)0.5~20ng/mL、1~10ng/mL、または3~7ng/mL、または約5ng/mLの終濃度のTPO;(4)5~100ng/mL、または25~75ng/mL、または40~60ng/mL、または約50ng/mLの終濃度のM-CSF;および(5)5~100ng/mL、または25~75ng/mL、または40~60ng/mL、または約50ng/mLの終濃度のFLT3(またはFLT3リガンド)が補充されることを規定する。補充物を含むこの第3の培地は、1または複数の新たな量で使用して、約6または7日間、例えば、6日目~12日目または13日目まで細胞を培養することができる。
【0052】
いくつかの局面は、第4の培地は、無血清培地、例えば、StemPro-34であり、(1)5~100ng/mL、または25~75ng/mL、または40~60ng/mL、または約50ng/mLの終濃度のM-CSF;(2)約5~50ng/mL、または10~40ng/mL、または20~30ng/mL、または約25ng/mLの終濃度のGM-CSF;および(3)5~100ng/mL、または25~75ng/mL、または40~60ng/mL、または約50ng/mLの終濃度のFLT3(またはFLT3リガンド)が補充されることを規定する。
【0053】
さらなる局面は、ステージ2~4において、任意の適切な造血細胞培地を第2、第3、および第4の培地として使用することができることを規定する。一態様では、造血細胞培地は「StemPro-34」である。StemPro-34培地の組成は当技術分野において公知であり、例えば「Hematopoietic Cell Culture Nutrient Supplement」と題する、EP0891419(またはUS20040072349、US20100297090)およびWO1997033978(またはUS20040072349、US20100297090)に記載されており、それらの内容は、参照により本明細書に組み入れられる。しかし、造血細胞を培養するために使用するための適合性の点からStemPro-34培地と同等であるいくつかの他のタイプの培地が存在し、それらのいずれも使用することができるであろうことを当業者は認識すると考えられる。
【0054】
様々な例では、各工程で使用される、造血因子を含めたサイトカインなどの濃度は、その濃度で関心対象の細胞を得ることができる限り、制限されない。いくつかの局面では、各工程における細胞培養培地中のbFGFの濃度は10ng/mL~100ng/mLである。いくつかの局面では、各工程における細胞培養培地中のbFGFの濃度は20ng/mL~50ng/mLである。いくつかの局面では、各工程における細胞培養培地中のbFGFの濃度は約25ng/mLである。いくつかの局面では、各工程における細胞培養培地中のVEGFの濃度は20ng/mL~100ng/mLである。いくつかの局面では、各工程における細胞培養培地中のVEGFの濃度は30ng/mL~70ng/mLである。いくつかの局面では、各工程における細胞培養培地中のVEGFの濃度は約50ng/mLである。いくつかの局面では、各工程における細胞培養培地中のSCFの濃度は20ng/mL~100ng/mLである。いくつかの局面では、各工程における細胞培養培地中のSCFの濃度は30ng/mL~70ng/mLである。いくつかの局面では、各工程における細胞培養培地中のSCFの濃度は約50ng/mLである。IL-3の場合には、濃度は、いくつかの例では、5ng/mL~100ng/mLである。IL-3の濃度は、いくつかの局面では、30ng/ml~70ng/mlであり得る。他の局面では、IL-3の濃度は約50ng/mlであり得る。TPOの場合には、濃度は1ng/mL~25ng/mLである。いくつかの局面では、TPOの濃度は、好ましくは1ng/mL~10ng/mLである。いくつかの局面では、TPOの濃度は約5ng/mLである。Flt3-リガンド(FLT3L)の場合には、濃度は、様々な局面において、10ng/ml~100ng/mlである。いくつかの局面では、FLT3Lの濃度は30ng/ml~70ng/mlである。いくつかの局面では、FLT3Lの濃度は約50ng/mLである。GM-CSFの場合には、濃度は、様々な局面において、5ng/ml~100ng/mlである。いくつかの局面では、GM-CSFの濃度は、好ましくは10ng/ml~50ng/mlである。いくつかの局面では、GM-CSFの濃度は約25ng/mLである。M-CSFの場合には、濃度は、様々な局面において、5ng/ml~100ng/mlである。いくつかの局面では、M-CSFの濃度は、好ましくは30ng/ml~70ng/ml、またはより好ましくは50ng/mlである。
【0055】
様々な局面では、多能性幹細胞から(好ましくは、iPSCから)単核食細胞を生成するプロセスは、それぞれの因子を以下の組み合わせで使用する工程を含む:
第1の細胞培養培地において、BMP-4は60ng/mL~100ng/mLである;
第2の細胞培養培地において、bFGFは15ng/mL~30ng/mLであり、VEGFは60ng/mL~100ng/mLであり、SCFは80ng/mL~120ng/mLである;
第3の細胞培養培地において、SCFは40ng/mL~60ng/mLであり、IL-3は40ng/mL~60ng/mLであり、TPOは4ng/mL~6ng/mLであり、M-CSFは40ng/mL~60ng/mLであり、FLT3Lは40ng/mL~60ng/mLである;および
第4の細胞培養培地において、M-CSFは40ng/mL~60ng/mLであり、GM-CSFは15ng/mL~30ng/mLであり、FLT3Lは40ng/mL~60ng/mLである。
【0056】
様々な態様は、各工程の期間の点から、上記の工程(a)(または「ステージ1」)は、2日以上にわたって、好ましくは、2日以上6日以下にわたって、より好ましくは、4日にわたって、行われることも規定する。上記の工程(b)(または「ステージ2」)は、1日以上にわたって、好ましくは、1日以上5日以下にわたって、より好ましくは、2日にわたって、行われる。上記の工程(c)(または「ステージ3」)は、5日以上にわたって、好ましくは、6日以上14日以下にわたって、より好ましくは、9日にわたって、行われる。上記の工程(d)(または「ステージ4」)は、3日以上にわたって、好ましくは、3日以上90日以下にわたって、行われる。いくつかの態様では、工程(d)(または「ステージ4」)は、少なくとも55日または60日にわたって、最大で約90日まで行われる。
【0057】
いくつかの態様では、生成された単核食細胞は、少なくとも1×106個の細胞程度の臨床的に適切な数まで増殖するように、バイオリアクター中でさらに培養される。いくつかの態様では、多能性幹細胞から単核食細胞を生成するプロセスは、工程(a)(「ステージ1」)、工程(b)(「ステージ2」)、工程(c)(「ステージ3」)、または工程(d)(「ステージ4」)のいずれか1つから始めて、バイオリアクター中で行われる。実施例3で示されるように、多能性幹細胞から生成され、(1~10日、11~20日、21~30日、31~40日、41~50日、50~60日またはそれ以上の様々な日数にわたって)バイオリアクター中で増殖させられた単核食細胞は、ウェルプレート中で生成されたものと同様の遺伝子発現プロファイルおよび単球/マクロファージマーカーの発現レベルを示す。
【0058】
当技術分野において公知であるバイオリアクターは、一般に、投与のための臨床的に適切な数を得るためにiMPを増殖させるのに適する。例示的なバイオリアクターとしては、インペラによる混合が細胞を懸濁状態に維持し、流体の移動が栄養素および老廃物の大量輸送に役立つ、スターラータンクバイオリアクターとも呼ばれる撹拌フラスコが挙げられる。撹拌フラスコに加えて、本発明者らは、iMPのスケールアップ生成のためにロッカーバッグシステムおよび/またはG-REX(登録商標)システムを使用することも着想する。例えば、ロッカーバッグシステムは、ロッカー(基部を含み、トレーの形状のようなプラットフォームを提供し、任意で加熱器および/または熱電対をさらに含む)ならびに1つまたは複数の細胞培養ロッカーバッグ(細胞培養物を封入するためのものであり、プラットフォームの配置に適する)を含む。ロッカーは、穏やかで効率的な混合および気体移動をもたらす、滑らかに揺れる波動を提供する。細胞培養ロッカーバッグは、通常、バッグの中に流体および/または気体を入れる、ならびにバッグの外に流体および/または気体を出すためのポートを含む。G-REX(登録商標)は、気体透過性急速拡大(gas permeable rapid expansion)を指す。G-REXバイオリアクターは、無制限かつ妨害されることなく栄養素および酸素に細胞をアクセスさせて、大量の細胞を産生し、統合システムで必要とされる培地交換および複雑なハードウェアを不要にする。
【0059】
様々な態様では、本明細書において開示されるプロセスにおいて多能性幹細胞(例えば、iPSC)から生成された骨髄単球性細胞または単核食細胞は、CD14、CD16、CD64、CD11b、CD11c、CD71などの単球/マクロファージマーカーに対して陽性であるので、iMP(iPSCから生成された単核食細胞)と呼ばれ、または様々な例では、iPSCから生成された単球および/もしくはiPSCから生成されたマクロファージ(優先権出願US63/234,984においてiMACと呼ばれる)を含み、造血幹細胞マーカーCD34の発現がもはやないか、またはほとんどない。様々な態様では、幹細胞から(例えば、iPSCから)生成された単核食細胞は、分化の方法が、いずれの生成された細胞を小膠細胞培地中で培養することも含まないので、小膠細胞ではない。分化した単核食細胞は、採取するまで、新たな量の4種の培地(補充物を含む)中で培養することができる。様々な態様では、分化の方法は、それぞれのステージで新たな量の培地を補充し、任意で細胞を継代することによって細胞を増幅する工程をさらに含むか、または該工程をともなう。いくつかの実施では、採取された細胞は、任意で何らかの希釈または濃度で、対象に直接投与される。様々な態様では、第4の培地で処理した細胞から採取された細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、または90%は単球である。好ましくは、第4の培地の後に採取された細胞の少なくとも50%は単球である。より好ましくは、第4の培地の後に採取された細胞の少なくとも70%または約70%は単球である。単球/マクロファージマーカーを発現する細胞のパーセンテージを決定するために、CD34、CD11b、CD11c、CD14、およびCD16などの抗原を標的化する抗体を使用して細胞を解析することができる。
【0060】
他の実施では、幹細胞に由来する採取された単核食細胞は、保存および配送工程の間に生成物の安定性を維持するために凍結保存される。いくつかの局面では、本プロセスから生成された、採取された単核食細胞は、例えば、CD14のマーカーによって、精製される。CD14陽性細胞の精製は、当業者に周知の方法によって行うことができ、方法は限定されない。例えば、CD14ミクロビーズまたはフローサイトメーターを使用して細胞を精製することができる。いくつかの局面では、単核食細胞は、1つまたは複数のマーカーによるさらなる選別なしで、特に、マーカーC3CR1によって選別されずに、採取される。
【0061】
様々な態様では、多能性幹細胞から生成されたかなりの量の単核食細胞をバイオリアクター中で培養し、例えば、少なくとも1×106、1×107、または1×108個程度(2回以上の用量を含む療法における用量あたり、または療法あたり)の臨床的に意義のある量を達成することができ、好ましくは、バイオリアクター中で培養される単核食細胞は、少なくとも5日、10日、2週、3週、4週、またはそれ以上の期間にわたって、遺伝子プロファイル(例えば、マクロファージマーカーまたは単球/マクロファージマーカーの発現量)を維持することができる。いくつかの態様では、特に、バイオリアクター中で培養することによって臨床的に意義のある量で、多能性幹細胞から生成された単核食細胞は、バイオリアクター培養または凍結保存において一定期間(例えば、1週、2週、3週、1か月、2か月、3か月齢またはそれ以上)の後に、多能性幹細胞から新たに生成された単核食細胞(これは、「ステージ4」分化の7日以内に収集され得る)と比較して、少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、または50%のレベルで、遺伝子プロファイル(例えば、単球/マクロファージマーカーの発現量)を維持する。
【0062】
特に、様々な態様では、生成されたiMPは、天然に存在する単球または天然に存在するマクロファージまたは天然に存在する単核食細胞と比較して、差次的遺伝子発現を有する。生成されたiMPは、天然に存在する対応物と同様のマーカーに対して陽性であり、特にインビボの機能試験で該対応物と同様に挙動し、それによって、実施例で示されるように治療効果を有し得る。iPSCも天然に存在するマクロファージ/単球も増殖性ではないが、実施例2および3で詳しく述べるように、本発明は、iPSCから分化したシストを提供し、その結果、iMPは、芽体となってシストから分離し、それによって、治療量(または臨床的に意味のある量)まで生成が拡大され得る。
【0063】
方法の様々な態様では、単核食細胞の集団を含む組成物は、対象への2回以上の曝露で投与される。一態様では、単核食細胞の集団を含む組成物は、少なくとも3回用量にわたって対象に少なくとも投与される。一態様では、iPSCから生成された単核食細胞の集団を含む組成物は、4~10回用量にわたって対象に投与される。一態様では、iPSCから生成された単核食細胞の集団を含む組成物は、6~12回用量にわたって対象に投与される。いくつかの実施では、組成物は、毎週、隔週、隔月、もしくは毎月投与されるか、または対象の必要に応じて投与される。いくつかの実施では、対象への各暴露の組成物は、少なくとも106細胞、107細胞、108細胞、109細胞、1010細胞、または1011細胞を含むことができる。様々な実施では、細胞の治療有効量は、患者の要求、年齢、生理状態、および健康状態、ならびに到達すべき組織サイズおよび治療目標、埋植部位、病態の程度(ニューロンレベルの悪化)、選択された移動様式および治療方針に依存する。いくつかの実施では、低用量の細胞が繰り返し移植される。これらの細胞は、急性もしくは慢性の神経損傷の処置、ならびに/または神経変性疾患およびニューロン疾患の発症の遅延、該疾患の緩和、もしくは該疾患の処置に使用することができる。
【0064】
処置方法の様々な態様は、老化してきている哺乳動物、例えば、少なくとも50歳、少なくとも60歳、少なくとも70歳、少なくとも80歳、または少なくとも90歳の年齢ヒトのためのものである。
【0065】
他の態様では、本明細書において開示される方法は、アルツハイマー病などの神経変性疾患を発生しているかまたは該疾患と診断されている対象のためのものである。さらなる態様では、本明細書において開示される方法は、アミロイドおよび小膠細胞活性化が検出される場合など、アルツハイマー病の病態を最初に示す対象のためのものである。さらに他の態様では、本明細書において開示される方法は、アルツハイマー病を著しく患っているか、または少なくとも6か月、1年、2年、またはそれ以上の間アルツハイマー病と診断されている対象のためのものであり、本方法は、病態を緩和するかまたは逆転させる。ある特定の態様では、本方法の神経変性疾患またはニューロン疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、レット症候群、スフェロイド形成をともなうびまん性白質脳症、軸索スフェロイド形成をともなう遺伝性びまん性白質脳症、前頭側頭葉変性症(FTLD)、家族性FTLD、統合失調症、自閉症スペクトラム障害、ハンチントン舞踏病、レビー小体型認知症、小脳性運動失調症、スタイン・レヴェンタール症候群、脊椎損傷、てんかん、卒中が局所的虚血群をともなうようになる群より選択される。
【0066】
付加的な態様では、本明細書において開示される方法は、アルツハイマー病を有する(例えば、アルツハイマー病の徴候もしくは症状を示すか、またはアルツハイマー病と診断された)対象のためのものであるが、対象は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を有さない。
【0067】
付加的な態様では、本明細書において開示される方法は、マクロファージの欠乏またはマクロファージの欠損もしくは欠乏と関連する疾患もしくは障害を有する対象のためのものであり、したがって、iPSCから生成された単核食細胞の投与によって、投与後に対象においてマクロファージが産生される可能性がある。
【0068】
様々な態様は、本明細書において開示される方法が、多能性幹細胞から生成された単核食細胞の投与を受けるための神経変性疾患を有する、該疾患の徴候を示す、または該疾患を発生する危険性がある対象を選択する工程をさらに含むことを規定する。様々な態様は、本明細書において開示される方法が、神経変性疾患を有する、該疾患の徴候を示す、または該疾患を発生する危険性がある対象から自己体細胞(例えば、線維芽細胞、血液細胞)を得て、次いで、対象への投与のために、iPS細胞から生成された単核食細胞を得るために、当技術分野において公知である再プログラムプロセスによって、自己体細胞からiPS細胞を生成する工程をさらに含むことを規定する。付加的な態様は、本明細書において開示される方法が、生成された単核食細胞をバイオリアクター中で増殖させて、少なくとも1×106または1×107個の細胞を得る工程をさらに含むことを規定する。
【0069】
付加的な態様は、単核食細胞(または骨髄単球細胞もしくは骨髄系列細胞)を多能性幹細胞から生成するための方法を提供し、該方法は、以下の工程:
骨形成タンパク質4(BMP-4)が補充された第1の培地中で幹細胞をインキュベートし、それによって、第1の培地で処理した細胞を形成する工程;
塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、および幹細胞因子(SCF)が補充された第2の培地中で、第1の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第2の培地で処理した細胞を形成する工程;
SCF、インターロイキン3(IL-3)、トロンボポエチン、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、およびFLT3リガンドが補充された第3の培地中で、第2の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第3の培地で処理した細胞を形成する工程;ならびに
M-CSF、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびFLT3リガンドが補充された第4の培地中で、第3の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第4の培地で処理した細胞を形成する工程であって、この細胞が幹細胞から分化したマクロファージまたは単球である工程
を含み、
該方法は、IL-34、またはIL-34とGM-CSFの組み合わせ、またはIL-4、またはIL-4とGM-CSFの組み合わせ、またはM-CSFとIFN-ガンマの組み合わせ、またはM-CSFとIL-4の組み合わせの存在下で培養する工程を含まない。
【0070】
分化のための方法のいくつかの局面では、方法は、小膠細胞分化培地または樹状細胞分化培地中で、第4の培地で処理した細胞をインキュベートする工程を含まない。いくつかの局面では、第4の培地で処理した細胞の少なくとも50%は単球であり;または工程(d)(もしくは「ステージ4」)から得られた細胞は、実質的に純粋な単核食細胞(単球およびマクロファージを含む)であり、マーカーCD14、CD16、CD64、CD11b、CD11c、およびCD71の発現について特徴づけされている。分化のための方法のいくつかの局面では、生成された単核食細胞は、小膠細胞ではなく、樹状細胞ではなく、かつ、生成された単核食細胞は、CD11b、CD11c、CD14、およびCD16のうちの1つまたは複数のマーカーに対して陽性である。
【0071】
いくつかの局面では、単核食細胞は、対象から、例えば、健康なヒト対象、若いヒト(例えば、5~11、12~16、17~18、19~21、22~34、もしくは35~49歳の年齢群内の年齢のヒト)、または若い健康なヒト対象からの血液細胞、好ましくは、末梢血単核球(PBMC)を再プログラムすることによって調製されたiPSCから分化させられる。さらなる態様では、単核食細胞は、対象から得られた線維芽細胞を再プログラムすることによって調製されたiPSCから分化させられる。
【0072】
いくつかの態様では、血液細胞をiPSCに再プログラムするための方法は、WO2017219000、米国特許第10,221,395号、および米国特許第10,745,671号に開示されており、これらは、参照に本明細書により組み入れられる。例えば、血液細胞由来のiPSCを生成する方法は、ある量のEBNA1ならびにOct-4、Sox-2、Klf-4、1-Myc、Lin-28、SV40ラージT抗原(「SV40LT」)、およびp53を標的化する低分子ヘアピン型RNA(「shRNA-p53」)を含む再プログラム因子をある量の血液細胞中に送達する工程;ならびに再プログラム培地中で血液細胞を少なくとも4日間培養する工程を含み、EBNA1および再プログラム因子の送達ならびに再プログラム培地中での培養が血液細胞由来の人工多能性幹細胞を生成し、再プログラム因子は、Oct4、Sox2、SV40LT、およびKlf4をコードする第1のベクター、Oct4およびshRNA-p53をコードする第2のベクター、Sox2およびKlf4をコードする第3のベクター、ならびに1-MycおよびLin-28をコードする第4のベクターを含む4種のoriP/EBNA1由来ベクターにコードされ;第5のoriP/EBNA1由来ベクターはEBNA1をコードする。
【0073】
いくつかの局面では、単核食細胞は、ある1つの種由来の幹細胞または人工多能性幹細胞から分化させられ、同じ種の対象の処置で使用される。いくつかの局面では、単核食細胞は、若い年齢のある1つの種由来の幹細胞または人工多能性幹細胞から分化させられ、例えば、該幹細胞は、種の平均寿命の前半より若い年齢のある1つの種の対象から得られた体細胞から得られるか、または再プログラムされる。いくつかの局面では、単核食細胞は、4か月齢未満、例えば、3~4か月齢、2~3か月齢、1~2か月齢のマウスから得られたマウス幹細胞から分化させられる。いくつかの局面では、単核食細胞は、10代前半、20代、または30代、または40代の年齢のヒトの体細胞から再プログラムされたiPSCから生成され、ヒトが老化または神経変性疾患もしくは障害を示す場合に使用される。別の局面では、単核食細胞は、認知機能障害もしくは神経変性疾患/障害を有するヒト対象から、または老化したヒト対象(例えば、少なくとも40歳、少なくとも50歳、少なくとも60歳、少なくとも70歳、もしくは少なくとも80歳)から分化させられる。別の局面では、単核食細胞は、老化したマウス、例えば、約11~13か月齢から分化させられる。
【0074】
様々な態様では、本発明は薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、幹細胞に由来し、例えば、人工多能性幹細胞から分化させられた単核食細胞の集団を含む。いくつかの態様では、単核食細胞を導出するために、患者自身の(自己)細胞が使用される。他の態様では、単核食細胞を導出するために、提供された(同種異系)細胞が使用される。幹細胞から分化した単核食細胞は、投与まで液体懸濁液または製剤中で維持することができる。
【0075】
開示される方法は、認知機能および/または神経の健康状態を改善することができる。例えば、処置された対象は、処置前の対象の状態と比較して、空間作業記憶の改善および/または短期記憶の改善があり得る。処置された対象は、対照と比較して、シナプストランスポーターのレベルの増加、小膠細胞レベルの増加、および/または星状細胞レベルの増加もあり得る。いくつかの局面では、対照は、本明細書において開示される細胞療法で処置されていない、神経変性障害を有する対象であってもよい。他の局面では、対照は、処置前の対象のベースラインレベルであってもよい。代わりに、処置された対象は、若いおよび/または健康な対象と匹敵する認知機能または神経の健康状態を示し得る。
【0076】
本明細書において開示される分化方法によって幹細胞から分化した単核食細胞も提供される。様々な局面では、本明細書において開示されるプロセスによってiPSCから生成された単球が提供される。様々な実施では、人工多能性幹細胞から分化した単核食細胞が、1種または複数種の賦形剤とともに、組成物または薬学的組成物中に提供される。
【0077】
好ましくは、単核食細胞は、生成された単核食細胞が多くの場合拡大後に投与される対象の、自己幹細胞から分化させられる。例えば、哺乳動物由来の血液細胞または線維芽細胞または別の体細胞は、本明細書において開示される分化方法によって、人工多能性幹細胞に再プログラムされ、次いで、これは単核食細胞に分化させられ;得られた単核食細胞は、認知機能の改善を必要としているか、または神経変性障害を患っている該哺乳動物に注入/移植されるか、または注射される。他の例では、健康なまたは若い哺乳動物の体細胞が人工多能性幹細胞に再プログラムされ;得られた単核食細胞は、認知機能の改善を必要としているか、または神経変性障害を患っている哺乳動物に注入され、移植され、または他の方法では注射される。一態様では、多分化能幹細胞は、マウス、ブタ、サル、ヒツジ、またはヒトの胚性幹細胞である。別の態様では、実験者は患者、より好ましくは、ヒト患者であり、多分化能幹細胞は、ヒト患者自身の組織細胞から再プログラムされる。体細胞を人工多能性幹細胞(または多分化能幹細胞)に再プログラムするための付加的な手順は、例えば、Zhao et al., iScience 23, 101192, 2020、ならびに米国特許第9,534,205号、第9,394,524号、第9,540615号、および第9,771,563号に記載されているように公知であり、これらは、参照により本明細書に組み入れられる。
【0078】
いくつかの態様は、対象の炎症を低減させる、または炎症関連疾患を有する対象を処置するための方法であって、iPSCから生成された単核食細胞を含む治療有効量の薬学的組成物を対象に投与する工程を含み、単核食細胞が、以下の工程を含むかまたは以下の工程から本質的になるプロセスによってiPSCから生成される、前記方法を提供する:
骨形成タンパク質4(BMP-4)が補充された第1の培地中でiPSCをインキュベートし、それによって、第1の培地で処理した細胞を形成する工程;
塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、および幹細胞因子(SCF)が補充された第2の培地中で、第1の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第2の培地で処理した細胞を形成する工程;
SCF、インターロイキン3(IL-3)、トロンボポエチン、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、およびFLT3リガンドが補充された第3の培地中で、第2の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第3の培地で処理した細胞を形成する工程;ならびに
M-CSF、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびFLT3リガンドが補充された第4の培地中で、第3の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第4の培地で処理した細胞を形成する工程であって、この細胞がiPSCから分化した単核食細胞である工程。
【0079】
いくつかの態様は、対象の認知機能を改善する、または神経変性障害を有する対象を処置する、または対象において神経変性障害を緩和する、神経変性障害を処置する、もしくは神経変性障害の発症を遅延させるための方法であって、iPSCから生成された単核食細胞を含む治療有効量の薬学的組成物を対象に投与する工程を含み、単核食細胞が、以下の工程を含むかまたは以下の工程から本質的になるプロセスによってiPSCから分化させられる、前記方法を提供する:
骨形成タンパク質4(BMP-4)が補充された第1の培地中でiPSCをインキュベートし、それによって、第1の培地で処理した細胞を形成する工程;
塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、および幹細胞因子(SCF)が補充された第2の培地中で、第1の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第2の培地で処理した細胞を形成する工程;
SCF、インターロイキン3(IL-3)、トロンボポエチン、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、およびFLT3リガンドが補充された第3の培地中で、第2の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第3の培地で処理した細胞を形成する工程;ならびに
M-CSF、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびFLT3リガンドが補充された第4の培地中で、第3の培地で処理した細胞をインキュベートし、それによって、第4の培地で処理した細胞を形成する工程であって、この細胞がiPSCから分化した単核食細胞である工程。
【0080】
いくつかの態様では、対象は老化したヒトである。いくつかの態様では、対象はアルツハイマー病および/または筋萎縮性側索硬化症を有する。いくつかの態様では、iMPを含む薬学的組成物が静脈内投与される。いくつかの態様では、iMPを含む薬学的組成物は腹腔内注射によって投与される。いくつかの態様では、方法は、行動アッセイ(学習および記憶研究)、神経の健康状態の検査、ならびに炎症レベルの測定のうちの1つまたは複数をさらに行う工程を含む。いくつかの態様では、幹細胞から分化した単核食細胞を含む薬学的組成物の投与の後、対象は、1つもしくは複数の行動研究によってアッセイした場合に、神経の健康性、認知機能の改善を示し、および/または処置より前の対象のベースラインと比較して、炎症レベルの低減を示す。
【0081】
様々な局面では、本明細書において開示される1つまたは複数の方法は、神経変性障害を有しているが、マクロファージでも単球でも処置を受けていない対照対象と比較して、認知機能の改善(例えば、1つもしくは複数の行動試験で特徴づけられる)またはシナプス輸送(例えば、VGLUT1)のレベルの改善をもたらす。
【0082】
他の局面では、本明細書において開示される1つまたは複数の方法は、多能性幹細胞から生成されたマクロファージおよび/または単球による処置を受ける前の対象のベースラインレベルである対照レベルと比較して、認知機能の改善(例えば、1つもしくは複数の行動試験で特徴づけられる)またはシナプス輸送(例えば、VGLUT1)のレベルの改善をもたらす。
【0083】
薬学的組成物は、細胞を安定化するために、または生理的浸透圧を提供するために加えられる、薬学的に許容される賦形剤または担体、例えば、緩衝液、塩、ポリマー、タンパク質、および防腐剤を含むことができる。「薬学的に許容される賦形剤」は、一般に、安全、無毒、かつ望ましい薬学的組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、獣医学使用ならびにヒトの薬学的使用に許容される賦形剤を含む。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体であり得る。製剤化および患者の使用より前の細胞の最終的な採取物には、残存量の細胞培養補充物も保持される可能性がある。したがって、本明細書において開示される組成物は、製剤化で使用される成分、および最終生成物中に残存する可能性がある補助的な材料(例えば、細胞培養補充物)を指す賦形剤を含むことができる。賦形剤の例としては、限定されないが、ヒト血清アルブミン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、水、デキストラン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。「薬学的に許容される担体」は、ある組織、器官、または体の一部分から別の組織、器官、または体の一部分への関心対象の化合物の運搬または輸送に関与する、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを指す。例えば、担体は、液体のフィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒、もしくはカプセル化材、またはこれらの組み合わせであり得る。担体は、接触する可能性がある任意の組織または器官と接触して使用するのに適しており、すなわち、担体は、その治療的利益を過度に上回る、毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または任意の他の合併症の危険性をともなうべきではない。
【0084】
様々な態様では、本発明による薬学的組成物は、任意の投与経路を介した送達のために製剤化することができる。「非経口」は、眼窩内、注入、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、被膜下、皮下、経粘膜、または経気管を含めて、一般に注射と関連する投与経路を指す。非経口経路経由では、組成物は、注入または注射のための溶液または懸濁液の形態であってもよい。典型的には、組成物は注射によって投与される。これらの投与のための方法は当業者に公知である。
【0085】
さらなる態様では、開示される処置および/または予防方法は、アルツハイマー病などの神経変性疾患を有する対象に対して、1種もしくは複数種の薬物または標準的な療法を対象に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施では、本発明の薬学的組成物は、1種もしくは複数種の薬物または標準的な療法と同時に投与される。いくつかの実施では、本発明の薬学的組成物は、1種もしくは複数種の薬物または標準的な(現在承認されている)療法とは別に投与される。適切な薬物または現在承認されている療法としては、ガランタミン、リバスチグミン、ドネペジル、メマンチン、アデュカヌマブ(アミロイド-βの凝集形態を標的化するヒト抗体)が挙げられる。
【0086】
付加的な態様は、本明細書において記載されるように生成される、または本明細書において記載される方法を使用して産生されるような単核食細胞を使用する薬物スクリーニングの方法、例えば、限定されないが、ハイスループットスクリーニング方法を提供する。例えば、一態様では、本発明は、以下の工程を含む、単球および/またはマクロファージの欠損または欠乏と関連する疾患または障害の処置または防止に有用な化合物を特定する方法を提供する:本明細書において開示される方法によって生成された単核食細胞を候補化合物と接触させる工程、および候補化合物が、単球またはマクロファージの欠損または欠乏を改善するかどうかを決定する工程。いくつかの態様では、化合物を特定するための方法は、ハイスループット方法である。いくつかの態様では、特定された化合物は、ヒトまたは哺乳動物における疾患または障害の処置または防止に有用である。いくつかの態様では、単核食細胞は、自己由来であるか、または自己体細胞から再プログラムされたiPSCを含めた自己細胞から生成される。いくつかの態様では、単核食細胞は、同種異系であるか、または同種異系細胞から再プログラムされたiPSCを含めた同種異系細胞から生成される。いくつかの態様では、マクロファージおよび/または単球の欠損または欠乏と関連する疾患または障害はアルツハイマー病である。いくつかの態様では、マクロファージおよび/または単球の欠損または欠乏と関連する疾患または障害はパーキンソン病である。
【実施例】
【0087】
以下の実施例は、主張する発明をより良く例示するために提供され、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。特定の材料が言及される限り、これは、単に例示の目的であり、本発明を限定することを意図するものではない。当業者なら、発明の能力を働かせることなく、かつ本発明の範囲から逸脱することなく、同等の手段または反応物を開発することができる。
【0088】
実施例1
老化した対象において認知機能を回復させるために若い対象由来の血液、血漿、または骨髄を使用することには、その潜在的な治療価値を制限する重大な実際的欠点がある。人工多能性幹細胞(iPSC)は、自己療法をもたらす能力を提供する。
【0089】
本明細書では、本発明者らは、若い血漿および骨髄を使用した研究で観察される有益効果に関与する細胞型を特定しようと努め、iPSCから単核食細胞を生成し(iMP)、これは、低レベルの造血幹細胞マーカーCD34ならびに高レベルの単球/マクロファージマーカーCD11b、CD14、およびCD16を発現し;これを、遺伝的に免疫無防備状態の老化したNOD-scid-ガンマ(NSG)マウスに尾静脈注射を介して投与した(若いマウスは3~4か月齢であり;老化したマウスは11~13か月齢である)。マウスを22日にわたって3日ごとに処置し(
図1)、いくつかの行動アッセイについて試験した。自発的交替試験における空間作業記憶(
図3A、3B)および新規物体配置アッセイにおける海馬依存的短期記憶(
図4B)の有意な改善が見出された。さらに、iMPによる処置には、シナプストランスポーター、VGLUT1を含めて、いくつかの重要なニューロン健康状態指標に対して有意な効果があり(
図5B)、該指標は老化したマウスで低下しているが、処置によって回復し;かつ小膠細胞および星状細胞の数および形態に対して有意な効果があった(
図6A、6B、および8)。老化した動物で見られた星状細胞および小膠細胞の数の増加ならびに小膠細胞の分枝の長さの減少は、iMPによる処置によってすべて逆転させられる。これらの発見は、免疫細胞、特に、単球およびマクロファージが、以前に若い血漿の移入または骨髄移植後に観察された再生効果に関与する可能性があることを示す。重要なことに、本発明者らは、iMPは老化において有意な再生潜在能力を有することを見出す。
【0090】
さらに、本発明者らは、アルツハイマー病のマウスモデルである5×FADマウスにおいて、iMPのこの潜在能力の試験を開始し(
図9A)、これらのマウスが病態を最初に発生していた3か月齢であっても、新規物体認識試験において改善を見出した(
図9C)。本発明者らは、著しい病態を有する8か月齢の5×FADマウスでも試験する考えであり、iMP処置は、これらの高齢の5×FADマウスにおいて、行動および神経の健康状態/炎症の転帰により著しく影響を及ぼすであろうと予測する。
【0091】
これらの研究は、老化および神経変性における認知および神経の健康状態の改善についてのiMPの潜在的利益を実証する。iPSC由来の単核食細胞は、若い血漿および骨髄移植の効果を模倣することができ、老化およびアルツハイマー病の治療剤として、認知機能を回復させるために対象で使用することができる。
【0092】
実施例2
以下の分化プロトコールを使用して、iPSCからiMPを分化させる。
EZ継代ツールを使用してiPSCを低密度で継代する;各ウェル中に120コロニーを目標とする。
EZ継代ツールを使用して、iPSCウェルの中央のみを切り刻む。
培地を吸引する。
3mlの新たな培地を使用して、プレートからコロニーを吹き払う。こするのは避けること!
コロニー懸濁液を取り出し、新しい15mlコニカルチューブに移す。コロニー懸濁液を約120コロニー/ml(目分量(eyeball))に希釈する。注:コロニー懸濁液を大いに希釈する(さらに最大10mlの培地を懸濁液に加える)必要があると考えられる。
注:必要であれば、細胞株ごとにコロニー懸濁液の濃度を調整する(すなわち、付着が不十分な株については濃度を高め、付着が強い株については下げる)。
マトリゲルをプレートから吸引し、1mlの培地/ウェルと交換する。
1mlのコロニー懸濁液を各ウェルに加え、インキュベーターに移し、水平および垂直(z&X軸)に各方向4回振盪する。
コロニーを一晩付着させる。
【0093】
コロニーの日々の維持
以下の条件のいずれかを満たす任意の分化している細胞およびコロニーを全部除く:
・大多数のコロニーよりもはるかに小さいかまたは大きい
・その隣に任意の分化している細胞がある
・他のコロニーに近すぎる(すなわち、時間とともに互いの中に入り込んで増殖すると考えられる)
・ウェルが15個を超えるコロニーを有する(理想的なウェルは10~12個のコロニーを有する)
・任意の奇異な形のコロニー(すなわち、三日月形/円形に全く近くない)
【0094】
直径が均一であるコロニーの均一な分布を有することが重要である。
【0095】
各分化ステージを代表する明視野培養画像(5×)では、分化が正しく行われる場合、同様のコロニー形態が見られるべきである。また、分化の進行につれて、コロニーが、あるべき姿である非常に「乱雑な状態」になることに注意されたい。
【0096】
分化開始
すべてのコロニーが最小0.7mmの直径であり、大多数が1.0mmの直径(evos 4×で7センチメートルの直径)である場合に、ステージ1培地(mTeSR* + 80ng/mLのBMP4)を開始する。これは、D0(0日目)である。*Stem Cell Reports, vol.8, 1516-1524, 2017に記載されているようにmTeSRカスタム培地を使用したDouvarasらと異なり、本発明者らは、標準的なmTeSR(例えば、STEMCELL Technology、カタログ番号85850、少なくともbFGFおよびTGFβを含む)を使用する。Douvarasらは、Stem Cell Reports, vol.8, 1516-1524, 2017(Supplemental)で、彼のmTeSRカスタム培地は、塩化リチウム、GABA、ピペコリン酸、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、およびトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ1)を含まないmTeSR1培地(Stem Cell Technologies)であることを記載した。
【0097】
ステージ1:
ステージ1の開始はD0である。
1ml/ウェルのステージ1培地を4日目まで毎日供給する。すなわち、上清を毎日吸引し、1mLの新たな培地を4日目まで毎日加える。
ステージ2の直前、ステージ1の終わりに、完全に培地をステージ2培地に変更する。
【0098】
ステージ2:
4日目に、細胞をステージ2培地(StemPro-34 SFM + 25ng/mLの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、80ng/mLの血管内皮増殖因子(VEGF)、100ng/mLの幹細胞因子(SCF))、2ml/ウェルに切り換える。
ステージ3の直前、ステージ2の終わりに、完全に培地を変更する。
【0099】
ステージ3:
6日目に、細胞をステージ3(StemPro-34 SFM + 50ng/mLのSCF、50ng/mLのIL-3、5ng/mLのトロンボポエチン(TPO)、50ng/mLのマクロファージCSF(M-CSF)、50ng/mLのFLT3-リガンド(FLT3L))、2ml/ウェルに切り換える。
10日目に完全に培地を変更する。
D10に培地を変更し、2ml/ウェルのステージ3培地を細胞に再び供給した(上清を吸引し、新たに供給した)。
ステージ4の直前、ステージ3の終わりに、完全に培地を変更する。
注:シスト形成が起こり始める(良い徴候)
【0100】
ステージ4(収集フェーズ):
D12またはD13またはD14に、細胞をステージ4培地(StemPro-34 SFM + 50ng/mLのM-CSF、25ng/mLのGM-CSF、50ng/mLのFLT3L)2ml/ウェルに切り替える(完全に上清を吸引し、次いで、ステージ4培地を加える)。
ウェルプレートにシストが緩く付着しているので、その後はそれ以上吸引せず、懸濁液中に浮遊している細胞を収集し、週2回(すなわち、毎週月曜日または火曜日および金曜日)で2ml/ウェルのステージ4を細胞に供給した。吸引なし。
注:細胞に週2回供給し、1回の供給は収集後である。シストはプレートに緩く付着しており、単球または単核食細胞は芽体となってシストから分離し、懸濁液中に浮遊していた。そのため、週1回、浮遊細胞を含む培地を血清ピペットにより収集し、スピンダウンし、細胞ペレットを残し、次いでこれを投与に使用することができた。供給は、3または4日の間隔を開けなければならず;浮遊細胞を収集し、スピンダウンし、次いで、古い培地を吸引し、細胞ペレットを新たな培地に再懸濁し、プレートに戻した。プロトコールのこの時点で、Douvaras et al.(Stem Cell Reports, vol. 8, pp:1516-1524, June 6, 2017)は、毎週選別を行って、CD14+/CX3CR1+細胞のみを収集し、次いで、これらの細胞をGM-CSFおよびIL34に2週間曝露することによって、小膠細胞にさら分化させ続けた。逆に、本発明者らは、これらの細胞を選別せず、代わりに、老化および神経変性の本発明者らの動物モデルの処置で使用するために、このより未成熟な細胞型を収集した。本発明者らは、小膠細胞培地(2mM GlutaMAX-I、10ng/mL GM-CSF、および100ng/mL IL-34を含むRPMI-1640)中で細胞を培養しなかった。
【0101】
実施例3.臨床的に適切な数のiMPを産生するための、バイオリアクターにおけるスケールアッププロセスおよび特徴づけ
いったんステージ4に到達すると(実施例2の約D14)、細胞は、プレートに緩く付着しているシストを形成していた。iMPは芽体となってこれらのシストから分離し、次いで、懸濁液中に浮遊した。iMPシストを、例えばセルスクレーパーを使用して持ち上げ、低速の磁気撹拌プレート(例えば、DURA-MAG(商標))上の撹拌フラスコバイオリアクター(例えば、CORNING(登録商標))に移した。持ち上げたシストを懸濁培養に24時間適応させ、その後、撹拌プレートを作動させ、30回転/分に設定した。バイオリアクター中では、シストは浮遊し、iMPは芽体となってシストから分離し続け、さらなる解析または手順のために、得られたiMPを収集した。
【0102】
本発明者らは、開始密度、すなわち単層播種密度を約100,000細胞/cm2となるように微調整も行った。ポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンプを使用して、細胞が付着するためのタンパク質(例えば、細胞外マトリックスタンパク質またはマトリゲル)の小さな「島」をプレーティングし、すなわち、培養装置の表面の一面ではなく、分化プロセスの間にシストが離れて間隔が置かれるように、別々の/分離した島に「播種」した。
【0103】
本発明者らは、RNAシークエンシング技法を使用して、バイオリアクター中で15日間培養されたiMP、バイオリアクター中で55日間培養されたiMP、実施例2に示すようにウェルプレート中で培養されたiMP、および実施例2に示すようにウェルプレートからの培養された細胞の凍結バイアルから回収されたiMP、ならびに対照としてのiPSCの、遺伝子発現の比較も行った。
図10Aおよび10Bは、これらの4条件のiMPは、階層クラスタリング分析および主成分分析の点から互い類似していたことを示す。
図11は、4群のそれぞれにおけるそれぞれの遺伝子の相対的発現比率を示す。
【0104】
バイオリアクター培養から異なる日に収集された細胞(生細胞および死細胞を含む)の総数を数え、少なくとも48日にわたって、65%を超える一貫して高い細胞生存率が示された(表1)。
【0105】
(表1)バイオリアクターからの所与の各収集日に対する、生細胞の数 対 死細胞の数および生存率(生存率=生細胞の数÷(生細胞の数+死細胞の数))の計算パーセンテージ
【0106】
本発明者らは、125mLフラスコまたは500mLフラスコのいずれかをこれまで使用してきたが、プロセスは、必要に応じて、これらの容量を超えてスケール変更することができる。
【0107】
RNA-Seq解析に加えて、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング、および食作用アッセイ(ビーズの取り込み)も行った。
【0108】
本発明の様々な態様は、詳細な説明において上に記載される。これらの説明は上記の態様を直接説明するが、本明細書において示され、記載される特定の態様に対する修正および/または変形を当業者は着想することができることが理解されよう。この説明の範囲に入るいかなるそのような修正または変形も同様にその中に含まれることが意図される。特に記載されない限り、本明細書および特許請求の範囲の単語および句は、適用可能な技術分野の当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられることが本発明者らの意図である。
【0109】
本出願の出願時点で出願人に既知である本発明の様々な態様についての前述の説明が提示され、これは、例示および説明を目的とすることが意図される。本明細書は、網羅的であることも、開示された正確な形態に本発明を限定することも意図されず、上記の教示に照らして、多くの修正および変形が可能である。記載される態様は、本発明の原理およびその実際的な適用を説明すること、および他の当業者が、様々な態様において、企図される特定の使用に適する様々な修正を用いて、本発明を利用することを可能にすることに役立つ。したがって、本発明は、本発明を実施するために開示された特定の態様に限定されないことが意図される。
【0110】
本発明の特定の態様が示され、説明されるが、本明細書における教示に基づいて、本発明およびそのより広範な局面から逸脱することなく変更および修正を行うことができることは当業者に明白であり、したがって、添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような変更および修正を、本発明の真の趣旨および範囲内にあるとして、その範囲内に包含する。一般に、本明細書で使用される用語は、一般に、「オープン」用語として意図される(例えば、用語「を含めて(including)」は、「限定されないが、を含めて(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「限定されないが、を含む(includes but is not limited to)と」解釈されるべきであるなど)ことが、当業者によって理解されるであろう。
【0111】
含む(including)、含む(containing)、または有するなどの用語の同意語としてのオープンエンド用語「含む(comprising)」は、本発明を説明し、主張するために本明細書で使用されるが、本発明またはその態様は、代わりに、代替用語、例えば、「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」を使用して説明することができる。
【国際調査報告】