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特表2024-529734網膜および黄斑修復のための光受容細胞
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  • 特表-網膜および黄斑修復のための光受容細胞 図1
  • 特表-網膜および黄斑修復のための光受容細胞 図2
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  • 特表-網膜および黄斑修復のための光受容細胞 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】網膜および黄斑修復のための光受容細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20240801BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20240801BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240801BHJP
   C12N 5/22 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
C12N5/071
A61K35/30
A61P27/02
C12N5/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509370
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 US2022040853
(87)【国際公開番号】W WO2023023305
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/235,380
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シン, マンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エルドレッド, キアラ
(72)【発明者】
【氏名】ハッセー, カタジナ
(72)【発明者】
【氏名】ハディニアク, サラ
(72)【発明者】
【氏名】マクナーニー, クリスティーナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC09
4B065BA01
4B065BB04
4B065BB19
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB56
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA58
4C087NA14
4C087ZA33
(57)【要約】
変性性黄斑疾患は、不治の失明の主要原因である。本開示は、短波長(S)、中波長(M)および長波長(L)感受性錐体光受容体が含まれる規定された網膜細胞サブタイプを含む、網膜および黄斑修復のための細胞ベースの治療薬、かかる細胞ベースの5治療薬の製造のための方法、ならびにかかる治療薬を使用する方法に関する。ある特定の実施形態では、本開示は、L錐体およびM錐体の集団を含む細胞性組成物であって、L錐体のM錐体に対する比(L:M)が、所定の範囲内に入る、細胞性組成物を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
L錐体およびM錐体の集団を含む細胞性組成物であって、L錐体のM錐体に対する比(L:M)が、所定の範囲内に入る、細胞性組成物。
【請求項2】
所定の前記L:M範囲が、約1.3:1~約2.8:1である、請求項1に記載の細胞性組成物。
【請求項3】
所定の前記L:M比が約2:1である、請求項1に記載の細胞性組成物。
【請求項4】
錐体の前記集団が、総錐体のパーセンテージとして、最大で約2%のS錐体を含む、請求項1に記載の細胞性組成物。
【請求項5】
錐体の前記集団が、総錐体のパーセンテージとして、最大で約5%のS錐体を含む、請求項1に記載の細胞性組成物。
【請求項6】
S錐体、M錐体およびL錐体の集団の比(S:M:L)が、所定の範囲内に入る、請求項1に記載の細胞性組成物。
【請求項7】
前記S:M:Lが約1:33:66である、請求項6に記載の細胞性組成物。
【請求項8】
前記S:M:Lが約3:33:64である、請求項6に記載の細胞性組成物。
【請求項9】
所定の前記S:M:L比が、特定の網膜偏心度において、正常な色覚を有する三色識別患者において天然に存在する比である、請求項6に記載の細胞性組成物。
【請求項10】
前記特定の網膜偏心度が、中心窩小窩またはその周囲にある、請求項9に記載の細胞性組成物。
【請求項11】
前記特定の網膜偏心度の内側境界が、約0mmの線形偏心度にあり、外側境界が、約0.1mmの線形偏心度にある、請求項10に記載の細胞性組成物。
【請求項12】
前記特定の網膜偏心度が、中心窩中央またはその周囲にある、請求項9に記載の細胞性組成物。
【請求項13】
前記特定の網膜偏心度の内側境界が、約0.1mmの線形偏心度にあり、外側境界が、約0.175mmの線形偏心度にある、請求項12に記載の細胞性組成物。
【請求項14】
前記組成物が、杆体(「R」)を含み、S:M:L:R比が、所定の範囲内に入る、請求項1に記載の細胞性組成物。
【請求項15】
所定の前記S:M:L:R比が、特定の網膜偏心度において、正常な色覚を有する三色識別患者において天然に存在する比である、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項16】
前記特定の網膜偏心度が、中心窩中央またはその周囲にある、請求項15に記載の細胞性組成物。
【請求項17】
前記特定の網膜偏心度の内側境界が、約0.175mmの線形偏心度にあり、外側境界が、約0.750mmの線形偏心度にある、請求項16に記載の細胞性組成物。
【請求項18】
錐体の前記集団が、総錐体のパーセンテージとして、約10%~約20%のS錐体を含む、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項19】
杆体の集団が、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約55%~約80%の杆体を含む、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項20】
前記S:M:L:Rの比が約6:11:23:60である、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項21】
前記特定の網膜偏心度が、傍中心窩またはその周囲にある、請求項15に記載の細胞性組成物。
【請求項22】
前記特定の網膜偏心度の内側境界が、約0.750mmの線形偏心度にあり、外側境界が、約1.50mmの線形偏心度にある、請求項21に記載の細胞性組成物。
【請求項23】
錐体の前記集団が、総錐体のパーセンテージとして、約7%~約10%のS錐体を含む、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項24】
杆体の集団が、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約60%~約95%の杆体を含む、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項25】
前記S:M:L:Rの比が約2:6:12:80である、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項26】
前記特定の網膜偏心度が、周中心窩またはその周囲にある、請求項15に記載の細胞性組成物。
【請求項27】
前記特定の網膜偏心度の内側境界が、約1.50mmの線形偏心度にあり、外側境界が、約3.0mmの線形偏心度にある、請求項26に記載の細胞性組成物。
【請求項28】
錐体の前記集団が、総錐体のパーセンテージとして、約6%~約9%のS錐体を含む、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項29】
杆体の集団が、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約75%~約95%の杆体を含む、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項30】
前記S:M:L:Rの比が約1:3:7:90である、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項31】
前記特定の網膜偏心度が、周辺部黄斑またはその周囲にある、請求項15に記載の細胞性組成物。
【請求項32】
前記特定の網膜偏心度の内側境界が、約3.0mmの線形偏心度にあり、外側境界が、約4.5mmの線形偏心度にある、請求項31に記載の細胞性組成物。
【請求項33】
杆体の集団が、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約55%~約85%の杆体を含む、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項34】
前記S:M:L:Rの比が約2:9:19:70である、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項35】
前記特定の網膜偏心度が、中心周囲網膜またはその周囲にある、請求項15に記載の細胞性組成物。
【請求項36】
前記特定の網膜偏心度の内側境界が、約4.50mmの線形偏心度にあり、外側境界が、約6.0mmの線形偏心度にある、請求項35に記載の細胞性組成物。
【請求項37】
杆体の集団が、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約50%~約80%の杆体を含む、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項38】
前記S:M:L:Rの比が約2:11:22:65である、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項39】
前記特定の網膜偏心度が、周辺部網膜またはその周囲にある、請求項15に記載の細胞性組成物。
【請求項40】
前記特定の網膜偏心度の内側境界が、約6.0mmの線形偏心度にあり、外側境界が、約7.5mmの線形偏心度にある、請求項39に記載の細胞性組成物。
【請求項41】
前記S:M:L:Rの比が約3:10:22:65である、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項42】
前記特定の網膜偏心度が、遠周辺部網膜またはその周囲にある、請求項41に記載の細胞性組成物。
【請求項43】
前記特定の網膜偏心度の内側境界が、約7.50mmの線形偏心度にあり、外側境界が、約7.50mmの線形偏心度よりも大きい、請求項21に記載の細胞性組成物。
【請求項45】
杆体の集団が、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約60%~約90%の杆体を含む、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項46】
前記S:M:L:Rの比が約2:7:14:75である、請求項14に記載の細胞性組成物。
【請求項47】
前記組成物が、2つの領域を含み、各領域が、異なるM:L比を含む、請求項1に記載の細胞性組成物。
【請求項48】
前記組成物が、2つの領域を含み、各領域が、異なるS:M:L比を含む、請求項47に記載の細胞性組成物。
【請求項49】
前記組成物が、2つの領域を含み、各領域が、異なるS:M:L:R比を含む、請求項48に記載の細胞性組成物。
【請求項50】
錐体の集団を含む細胞性組成物であって、前記錐体の外節のうちの1つまたは複数が、キャパシタンスを示し、前記組成物が、500~2500pAの範囲内の膜電流によって特徴付けられる、細胞性組成物。
【請求項51】
S錐体、M錐体およびL錐体の所定の集団を含む細胞性組成物を調製するための方法であって、オルガノイドが所望のS錐体とM錐体とL錐体との比を達成するように、前記オルガノイドを培養するステップを含む、方法。
【請求項52】
S錐体、M錐体およびL錐体の所定の集団を含む細胞性組成物を調製するための方法であって、
a)2つまたはそれよりも多くの独立したオルガノイドを培養するステップ;
b)前記2つまたはそれよりも多くの独立したオルガノイドから得られた細胞を合わせて、所望のS錐体とM錐体とL錐体との比を達成するステップ
を含む、方法。
【請求項53】
請求項1から50のいずれか一項に記載の細胞性組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む、加齢黄斑変性症を処置する方法。
【請求項54】
請求項1から50のいずれか一項に記載の細胞性組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む、網膜変性症を処置する方法。
【請求項55】
前記網膜変性症が、加齢黄斑変性症、シュタルガルト病、錐体ジストロフィー、色覚異常、ベスト病、ミトコンドリア黄斑変性症、パターンジストロフィーまたはRDS関連黄斑変性症に起因する、請求項53に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2021年8月20日出願の米国仮特許出願第63/235,380号に対する優先権を主張し、その内容は、参照によってその全体が組み込まれ、それに対して優先権が主張される。
【0002】
連邦支援の研究に関する陳述
本発明は、National Institute of Healthによって付与された助成金EY030872の下で政府の支援によりなされた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0003】
1.発明の分野
本開示は、杆体光受容体、短波長(S)、中波長(M)および長波長(L)感受性錐体光受容体、ならびに関連する網膜介在ニューロンが含まれる規定された網膜細胞サブタイプを含む、網膜および黄斑修復のための細胞ベースの治療薬、かかる細胞ベースの治療薬の製造のための方法、ならびにかかる治療薬を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
2.背景
変性性黄斑疾患は、不治の失明の主要原因である。例には、加齢黄斑変性症(AMD)、シュタルガルト病、錐体ジストロフィー、色覚異常、ベスト病、ミトコンドリア黄斑変性症(mitochondrial macular degeneration)、パターンジストロフィー(pattern dystrophy)、RDS関連黄斑変性症および他の形態の遺伝性黄斑ジストロフィーが含まれる。黄斑は、その高密度の錐体光受容体に起因して、高視力の視覚を可能にする。さらに、正常な黄斑における杆体、S錐体、M錐体およびL錐体の比は、正常な高視力の視覚の重要な決定因子である。変性性黄斑疾患における病的状態の主要な細胞性の原因は、ヒト黄斑における錐体光受容細胞の変性であり、これは、顔認識および読書のために要求される高い視力、中心視および明所視の減退を生じる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
現在、変性性黄斑疾患と診断された患者のための選択肢は限定されている。さらに、かかる選択肢は、典型的には、罹患組織の実際の修復への道を提供するのではなく、変性の速度を低減させる。したがって、変性性黄斑疾患に対処するためのさらなる治療薬、特に、罹患組織の修復を提供することができる治療薬が、当該分野でなおも必要とされている。
【0006】
3.概要
ある特定の実施形態では、本開示は、杆体光受容体、短波長(S)、中波長(M)および長波長(L)感受性錐体光受容体、ならびに関連する網膜介在ニューロンが含まれる規定された網膜細胞サブタイプを含む、網膜および黄斑修復のための細胞ベースの治療薬、例えば、細胞性組成物、かかる細胞ベースの治療薬の製造のための方法、ならびにかかる治療薬を使用する方法を対象とする。
【0007】
ある特定の実施形態では、本開示は、L錐体およびM錐体の集団を含む細胞性組成物であって、L錐体のM錐体に対する比(L:M)が、所定の範囲内に入る、細胞性組成物を対象とする。ある特定の実施形態では、所定のL:M範囲は、約1.3:1~約2.8:1である。ある特定の実施形態では、所定のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、錐体の集団は、総錐体のパーセンテージとして、最大で約2%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、錐体の集団は、総錐体のパーセンテージとして、最大で約5%のS錐体を含む。
【0008】
ある特定の実施形態では、S錐体、M錐体およびL錐体の集団の比(S:M:L)は、所定の範囲内に入る。ある特定の実施形態では、S:M:Lは、約1:33:66である。ある特定の実施形態では、S:M:Lは、約3:33:64である。ある特定の実施形態では、所定のS:M:L比は、特定の網膜偏心度(retinal eccentricity)において、正常な色覚を有する三色識別患者において天然に存在する比である。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度は、中心窩小窩(foveal umbo)またはその周囲にある。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度の内側境界は、約0mmの線形偏心度(linear eccentricity)にあり、外側境界は、約0.1mmの線形偏心度にある。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度は、中心窩中央(foveal center)またはその周囲にある。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度の内側境界は、約0.1mmの線形偏心度にあり、外側境界は、約0.175mmの線形偏心度にある。
【0009】
ある特定の実施形態では、組成物は、杆体(「R」)を含み、S:M:L:R比は、所定の範囲内に入る。ある特定の実施形態では、所定のS:M:L:R比は、特定の網膜偏心度において、正常な色覚を有する三色識別患者において天然に存在する比である。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度は、中心窩中央またはその周囲にある。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度の内側境界は、約0.175mmの線形偏心度にあり、外側境界は、約0.750mmの線形偏心度にある。ある特定の実施形態では、錐体の集団は、総錐体のパーセンテージとして、約10%~約20%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、杆体の集団は、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約55%~約80%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、S:M:L:Rの比は、約6:11:23:60である。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度は、傍中心窩またはその周囲にある。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度の内側境界は、約0.750mmの線形偏心度にあり、外側境界は、約1.50mmの線形偏心度にある。ある特定の実施形態では、錐体の集団は、総錐体のパーセンテージとして、約7%~約10%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、杆体の集団は、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約60%~約95%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、S:M:L:Rの比は、約2:6:12:80である。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度は、周中心窩またはその周囲にある。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度の内側境界は、約1.50mmの線形偏心度にあり、外側境界は、約3.0mmの線形偏心度にある。ある特定の実施形態では、錐体の集団は、総錐体のパーセンテージとして、約6%~約9%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、杆体の集団は、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約75%~約95%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、S:M:L:Rの比は、約1:3:7:90である。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度は、周辺部黄斑またはその周囲にある。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度の内側境界は、約3.0mmの線形偏心度にあり、外側境界は、約4.5mmの線形偏心度にある。ある特定の実施形態では、杆体の集団は、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約55%~約85%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、S:M:L:Rの比は、約2:9:19:70である。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度は、中心周囲網膜(pericentric retina)またはその周囲にある。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度の内側境界は、約4.50mmの線形偏心度にあり、外側境界は、約6.0mmの線形偏心度にある。ある特定の実施形態では、杆体の集団は、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約50%~約80%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、S:M:L:Rの比は、約2:11:22:65である。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度は、周辺部網膜またはその周囲にある。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度の内側境界は、約6.0mmの線形偏心度にあり、外側境界は、約7.5mmの線形偏心度にある。ある特定の実施形態では、S:M:L:Rの比は、約3:10:22:65である。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度は、遠周辺部網膜(far peripheral retina)またはその周囲にある。ある特定の実施形態では、特定の網膜偏心度の内側境界は、約7.50mmの線形偏心度にあり、外側境界は、約7.50mmの線形偏心度よりも大きい。ある特定の実施形態では、杆体の集団は、合わせた総錐体および杆体のパーセンテージとして、約60%~約90%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、S:M:L:Rの比は、約2:7:14:75である。
【0010】
ある特定の実施形態では、本開示は、2つの領域を含む組成物であって、各領域が異なるM:L比を含む、組成物を対象とする。ある特定の実施形態では、組成物は、2つの領域を含み、各領域は、異なるS:M:L比を含む。ある特定の実施形態では、組成物は、2つの領域を含み、各領域は、異なるS:M:L:R比を含む。
【0011】
ある特定の実施形態では、本開示は、錐体の集団を含む細胞性組成物であって、錐体の外節のうちの1つまたは複数が、キャパシタンスを示し、組成物が、500~2500pAの範囲内の膜電流によって特徴付けられる、細胞性組成物を対象とする。
【0012】
ある特定の実施形態では、本開示は、S錐体、M錐体およびL錐体の所定の集団を含む細胞性組成物を調製するための方法であって、オルガノイドが所望のS錐体とM錐体とL錐体との比を達成するように、オルガノイドを培養するステップを含む、方法を対象とする。
【0013】
ある特定の実施形態では、本開示は、S錐体、M錐体およびL錐体の所定の集団を含む細胞性組成物を調製するための方法であって、a)2つまたはそれよりも多くの独立したオルガノイドを培養するステップ;およびb)2つまたはそれよりも多くの独立したオルガノイドから得られた細胞を合わせて、所望のS錐体とM錐体とL錐体との比を達成するステップ、を含む、方法を対象とする。
【0014】
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される細胞性組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む、加齢黄斑変性症を処置する方法を対象とする。
【0015】
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される細胞性組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む、網膜変性症を処置する方法を対象とする。
【0016】
ある特定の実施形態では、本開示の方法によって処置される網膜変性症は、加齢黄斑変性症、シュタルガルト病、錐体ジストロフィー、色覚異常、ベスト病、ミトコンドリア黄斑変性症、パターンジストロフィーまたはRDS関連黄斑変性症に起因する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
4.図面の簡単な説明
図1図1は、黄斑および網膜の異なる解剖学的ゾーンを示し、これは、正常な(三色識別)対象においてゾーンにおいて見出される近似細胞性組成を再生させるための黄斑修復細胞設計を伝えるために使用され得る。
【0018】
図2図2は、特定の黄斑ゾーンおよび網膜ゾーンのための黄斑修復細胞設計を提供する。
【0019】
図3図3は、特定の黄斑修復細胞設計のための特定(specification)範囲を提供する。
【0020】
図4図4は、レチノイン酸(RA)を欠如する例示的な培養物中の光受容体正体の比における時間的バリエーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
5.詳細な説明
本開示は、杆体ならびに短波長(S)、中波長(M)および長波長(L)感受性錐体光受容体が含まれる規定された網膜細胞サブタイプを含む、網膜および黄斑修復のための細胞ベースの治療薬、かかる細胞ベースの治療薬の製造のための方法、ならびにかかる治療薬の使用の方法に関する。本開示の細胞ベースの治療薬は、本明細書で黄斑修復細胞(MARC)と呼ばれる。
【0022】
一態様では、本開示の主題は、MARC治療的組成物を対象とする。例えば、限定ではないが、本開示は、錐体細胞の集団を含むMARC組成物であって、S(「青色」)錐体、M(「緑色」)錐体およびL(「赤色」)錐体の比が、特定の範囲内に入る、MARC組成物を対象とする。図1に示されるように、網膜内の異なる前後偏心度における変性位置を標的化するように再生基材が設計され得るように、MARCにおける設計バリエーションが創出される。各標的位置を標的化するMARCバリエーションは、その偏心度において、正常な色覚を有する三色識別患者において天然に存在する短波長(S)、中波長(M)、長波長(L)感受性錐体光受容体ならびに杆体(R)光受容体比(S:M:L:R比)を模倣するように設計される。
【0023】
別の態様では、本開示は、MARC治療薬の製造のための方法を対象とする。ある特定の実施形態では、MARC治療薬は、ヒト網膜オルガノイド培養を介して生成され得る。例えば、限定ではないが、MARC治療薬は、S錐体、M錐体および/またはL錐体について特異的に富化する独自の幹細胞ベースのヒト網膜オルガノイドプロトコールを使用して生成され得る。S錐体、M錐体および/またはL錐体の特定の比について富化することによって、本明細書に記載される製造の方法は、正常な三色識別対象において特定のゾーンにおいて(または特定のゾーンにわたって)見出される近似細胞性組成を再生させるように設計されたMARC治療薬を産生することができる。
【0024】
別の態様では、本開示の主題は、網膜変性疾患を有する人において機能的欠損を好転させるための処置としての、MARC移植による黄斑再生治療を対象とする。例えば、限定ではないが、本開示のMARC組成物の投与によって好転され得る網膜変性疾患には、加齢黄斑変性症、シュタルガルト病、錐体ジストロフィー、色覚異常、ベスト病、ミトコンドリア黄斑変性症、パターンジストロフィー、RDS関連黄斑変性症および他の形態の遺伝性黄斑ジストロフィーが含まれる。本明細書に記載される場合、MARC治療薬は、黄斑中に移植され得、かかる移植は、錐体光受容細胞の再生をもたらし得る。MARC移植が、黄斑疾患に罹患した人において視力を保存および/または改善することができるだけではなく、MARC送達が、本明細書で詳細に記載されるように、MARC治療薬の、黄斑への最適な成熟化および統合を確実にするために実施される。
【0025】
明確さのために、限定としてではなく、本開示の主題の詳細な説明は、以下のサブセクションに分割される:
5.1 定義
5.2 黄斑修復細胞組成物における設計バリエーション
5.3 黄斑修復細胞組成物を産生する方法
5.4 黄斑修復細胞組成物を使用する処置の方法
【0026】
5.1.定義
本明細書で使用される用語は一般に、本開示の文脈の範囲内の、各用語が使用される具体的な文脈における、当該分野のそれらの通常の意味を有する。ある特定の用語は、本開示の組成物および方法ならびにそれらをどのように作製および使用するかを記載する際のさらなるガイダンスを実務者に提供するために、以下、または本明細書の他の場所で議論される。
【0027】
本明細書で使用される場合、単語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む」と併せて使用される場合、「1つ(one)」を意味し得るが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つよりも多く」の意味とも一致する。
【0028】
用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「し得る/できる(can)」、「含有する(contain(s))」およびそれらの異形は、本明細書で使用される場合、さらなる行為または構造の可能性を排除しない、オープンエンドの移行的な語句、用語または単語であることを意図している。本開示は、明示的に示されていてもいなくても、本明細書で示される実施形態または要素を「含む」、それ「からなる」およびそれ「から本質的になる」他の実施形態もまた企図する。
【0029】
用語「約」または「およそ」は、値がどのように測定または決定されるか、即ち、測定システムの制限に一部依存する、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味する。例えば、「約」は、当該分野の実務に従って、3標準偏差以内または3標準偏差を超えることを意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の最大で20%、好ましくは最大で10%、より好ましくは最大で5%、より好ましくはなおも最大で1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に、生物学的システムまたはプロセスに関して、用語は、ある値の一桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内であることを意味し得る。
【0030】
5.2.黄斑修復細胞組成物における設計バリエーション
一態様では、本開示の主題は、MARC治療的組成物を対象とする。例えば、限定ではないが、本開示は、錐体細胞の集団を含むMARC組成物であって、S錐体、M錐体およびL錐体の比が、特定の範囲内に入る、MARC組成物を対象とする。図1に示されるように、網膜内の異なる前後偏心度における変性位置を標的化するように再生基材が設計され得るように、MARCにおける設計バリエーションが創出される。各標的位置を標的化するMARCバリエーションは、その偏心度において、正常な色覚を有する三色識別患者において天然に存在するS:M:L:R比を模倣するように設計される。
【0031】
ある特定の実施形態では、本開示のMARC組成物は、「MARC1」組成物である。MARC1組成物は、約0mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約0.1mmの線形偏心度にある外側境界における中心窩小窩またはその周囲における中心窩中央再生のために設計される。ある特定のMARC1組成物では、L:M比は、約1.3:1~約2.8:1の範囲である。ある特定の実施形態では、MARC1のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、MARC1組成物は、(総錐体のパーセンテージとして)最大で約2%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、MARC1組成物は、杆体を含有しない。ある特定の実施形態では、MARC1組成物は、約1:33:66:0であるS:M:L:R比を有する。
【0032】
ある特定の実施形態では、本開示のMARC組成物は、「MARC2」組成物である。MARC2組成物は、約0.1mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約0.175mmの線形偏心度にある外側境界における小窩(foveola)またはその周囲における中心窩中央再生のために設計される。ある特定のMARC2組成物では、L:M比は、約1.3:1~約2.8:1の範囲である。ある特定の実施形態では、MARC2のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、MARC2組成物は、(総錐体のパーセンテージとして)最大で約5%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、MARC2組成物は、杆体を含有しない。ある特定の実施形態では、MARC2組成物は、約3:33:64:0であるS:M:L:R比を有する。
【0033】
ある特定の実施形態では、本開示のMARC組成物は、「MARC3」組成物である。MARC3組成物は、約0.175mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約0.750mmの線形偏心度にある外側境界における中心窩またはその周囲における中心窩中央再生のために設計される。ある特定のMARC3組成物では、L:M比は、約1.3:1~約2.8:1の範囲である。ある特定の実施形態では、MARC3のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、MARC3組成物は、(総錐体のパーセンテージとして)約10%~約20%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、MARC3組成物は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約55%~約80%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、MARC3組成物は、約6:11:23:60であるS:M:L:R比を有する。
【0034】
ある特定の実施形態では、本開示のMARC組成物は、「MARC4」組成物である。MARC4組成物は、約0.750mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約1.5mmの線形偏心度にある外側境界における傍中心窩またはその周囲における再生のために設計される。ある特定のMARC4組成物では、L:M比は、約1.3:1~約2.8:1の範囲である。ある特定の実施形態では、MARC4のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、MARC4組成物は、(総錐体のパーセンテージとして)約7%~約10%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、MARC4組成物は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約60%~約95%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、MARC4組成物は、約2:6:12:80であるS:M:L:R比を有する。
【0035】
ある特定の実施形態では、本開示のMARC組成物は、「MARC5」組成物である。MARC5組成物は、約1.5mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約3.0mmの線形偏心度にある外側境界における周中心窩またはその周囲における再生のために設計される。ある特定のMARC5組成物では、L:M比は、約1.3:1~約2.8:1の範囲である。ある特定の実施形態では、MARC5のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、MARC5組成物は、(総錐体のパーセンテージとして)約6%~約9%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、MARC5組成物は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約75%~約95%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、MARC5組成物は、約1:3:7:90であるS:M:L:R比を有する。
【0036】
ある特定の実施形態では、本開示のMARC組成物は、「MARC6」組成物である。MARC6組成物は、約3.0mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約4.5mmの線形偏心度にある外側境界における周辺部黄斑またはその周囲における再生のために設計される。ある特定のMARC6組成物では、L:M比は、約1.3:1~約2.8:1の範囲である。ある特定の実施形態では、MARC6のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、MARC6組成物は、(総錐体のパーセンテージとして)約6%~約9%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、MARC6組成物は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約55%~約85%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、MARC6組成物は、約2:9:19:70であるS:M:L:R比を有する。
【0037】
ある特定の実施形態では、本開示のMARC組成物は、「MARC7」組成物である。MARC7組成物は、約4.5mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約6.0mmの線形偏心度にある外側境界における中心周囲網膜またはその周囲における再生のために設計される。ある特定のMARC7組成物では、L:M比は、約1.3:1~約2.8:1の範囲である。ある特定の実施形態では、MARC7のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、MARC7組成物は、(総錐体のパーセンテージとして)約6%~約9%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、MARC7組成物は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約50%~約80%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、MARC7組成物は、約2:11:22:65であるS:M:L:R比を有する。
【0038】
ある特定の実施形態では、本開示のMARC組成物は、「MARC8」組成物である。MARC8組成物は、約6.0mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約7.5mmの線形偏心度にある外側境界における周辺部網膜またはその周囲における再生のために設計される。ある特定のMARC8組成物では、L:M比は、約1.3:1~約2.8:1の範囲である。ある特定の実施形態では、MARC8のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、MARC8組成物は、(総錐体のパーセンテージとして)約7%~約10%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、MARC8組成物は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約50%~約80%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、MARC8組成物は、約3:10:22:65であるS:M:L:R比を有する。
【0039】
ある特定の実施形態では、本開示のMARC組成物は、「MARC9」組成物である。MARC9組成物は、約7.5mmまたはそれよりも高い線形偏心度にある遠周辺部網膜またはその周囲における再生のために設計される。ある特定のMARC9組成物では、L:M比は、約1.3:1~約2.8:1の範囲である。ある特定の実施形態では、MARC9のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、MARC9組成物は、(総錐体のパーセンテージとして)約7%~約10%のS錐体を含む。ある特定の実施形態では、MARC9組成物は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約60%~約90%の杆体を含む。ある特定の実施形態では、MARC9組成物は、約2:7:14:75であるS:M:L:R比を有する。
【0040】
ある特定の実施形態では、MARC設計は、1つまたは複数の隣接ゾーンまたは非隣接ゾーンに跨がって位置するように組み合わされる。例えば、限定ではないが、本開示は、錐体細胞の集団を含むMARC組成物であって、S錐体、M錐体およびL錐体の比が、組成物の1つの領域では、特定の範囲内に入り、S錐体、M錐体およびL錐体の比が、組成物の別の領域では、別の特定の範囲内に入る、MARC組成物を対象とする。1つまたは複数の隣接または非隣接の前後偏心度に跨がって位置する変性位置を標的化するように再生基材が設計され得るように、MARCにおけるかかる設計バリエーションが創出され得る。各標的位置を標的化するMARCバリエーションは、標的化された偏心度において、正常な色覚を有する三色識別患者において天然に存在するS:M:L:R比を模倣するように設計され得る。
【0041】
ある特定の実施形態では、本開示のMARC組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8または9つの異なる領域を含み得、各領域は、標的化された偏心度において、正常な色覚を有する三色識別患者において天然に存在するS:M:L:R比を模倣するように設計され得る。例えば、限定ではないが、MARC組成物は、MARC1組成物を含む領域およびMARC2組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC2組成物を含む領域およびMARC3組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC3組成物を含む領域およびMARC4組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC4組成物を含む領域およびMARC5組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC5組成物を含む領域およびMARC6組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC6組成物を含む領域およびMARC7組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC7組成物を含む領域およびMARC8組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC8組成物を含む領域およびMARC9組成物を含む領域を含み得る。
【0042】
ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域、MARC5組成物を含む領域、MARC6組成物を含む領域、MARC7組成物を含む領域、MARC8組成物を含む領域および/またはMARC9組成物を含む領域を含み得る。例えば、限定としてではなく、MARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域および/またはMARC3組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域および/またはMARC4組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域および/またはMARC5組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC1組成物、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域、MARC5組成物を含む領域および/またはMARC6組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域、MARC5を含む領域、MARC6組成物を含む領域および/またはMARC7組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC1組成物を含む領域を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域、MARC5を含む領域、MARC6を含む領域、MARC7組成物を含む領域および/またはMARC8組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、MARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域、MARC5を含む領域、MARC6を含む領域、MARC7を含む領域、MARC8組成物を含む領域および/またはMARC9組成物を含む領域を含み得る。
【0043】
ある特定の実施形態では、MARCは、不連続な領域、例えば、MARC1組成物を含む領域およびMARC3組成物を含む領域を含み得る。不連続な領域を含むかかるMARCのさらなる非限定的な例には、以下が含まれる:MARC1組成物を含む領域およびMARC3、MARC4、MARC5、MARC6、MARC7、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC2組成物を含む領域およびMARC4、MARC5、MARC6、MARC7、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC3組成物を含む領域およびMARC1、MARC5、MARC6、MARC7、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC4組成物を含む領域およびMARC1、MARC2、MARC6、MARC7、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC5組成物を含む領域およびMARC1、MARC2、MARC3、MARC7、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC6組成物を含む領域およびMARC1、MARC2、MARC3、MARC4、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC7組成物を含む領域およびMARC1、MARC2、MARC3、MARC4、MARC5またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC8組成物を含む領域およびMARC1、MARC1、MARC2、MARC3、MARC4、MARC5またはMARC6組成物を含む領域を含むMARC;ならびにMARC9組成物を含む領域およびMARC1、MARC2、MARC3、MARC4、MARC5、MARC6またはMARC7組成物を含む領域を含むMARC。
【0044】
ある特定の実施形態では、本開示のMARC組成物は、錐体細胞の集団を含み得、錐体の外節のうちの1つまたは複数は、大きいキャパシタンスを示す。本明細書で使用される場合、錐体の外節のうちの1つまたは複数が大きいキャパシタンスを示すMARC組成物は、500~2500pAの範囲内の膜電流によって特徴付けられるMARC組成物を指す。
5.3 黄斑修復細胞組成物を産生する方法
【0045】
一態様では、本開示は、MARC治療薬の製造に関する。ある特定の実施形態では、MARCは、ヒト網膜オルガノイド培養を介して生成され得る。例えば、限定ではないが、MARCは、S錐体、M錐体および/またはL錐体について特異的に富化する独自の幹細胞ベースのヒト網膜オルガノイドプロトコールを使用して生成され得る。S錐体、M錐体および/またはL錐体の特定の比について富化することによって、本明細書に記載される製造の方法は、正常な三色識別対象において特定のゾーンにおいて(または特定のゾーンにわたって)見出される近似細胞性組成を再生させるように設計されたMARCを産生することができる。
【0046】
例えば、限定ではないが、本開示は、黄斑修復細胞の集団への細胞の分化を指向させることが可能な条件下で、細胞を1つまたは複数のシグナル伝達分子と接触させることによって、黄斑修復細胞の集団への細胞の指向性の分化を誘導するための方法を対象とする。ある特定の実施形態では、黄斑修復細胞の集団へと分化するように誘導される細胞は、胚性幹細胞、誘導非胚性多能性細胞または操作された多能性細胞である。ある特定の実施形態では、黄斑修復細胞の集団へと分化するように誘導される細胞に接触させるために使用されるシグナル伝達分子は、甲状腺ホルモン、レチノイン酸、ならびにそれらの組合せである。
【0047】
ある特定の実施形態では、黄斑修復細胞の集団は、オルガノイドから調製される。例えば、限定としてではなく、黄斑修復細胞の集団の調製において使用されるオルガノイドは、以下の「一般的オルガノイド分化プロトコール」に従って調製され得る。オルガノイドの調製および分化のための基礎として、当業者は、適切な胚性幹細胞(ESC)または誘導多能性幹細胞(iPSC)、例えば、限定としてではなく、H7 WA07、H7iCas9 ESCまたはEP1.1 iPSCを選択することができる。凝集させるために、次いで、細胞は、完全な解離を確実にするために、例えば、37℃で約12分間、Accutase(SCR005、Sigma)中で継代され得る。次いで、細胞は、50μLのmTeSR1中3,000細胞/ウェルで、96ウェル超低接着丸底Lipidureコーティングプレート(51011610、NOF)または超低付着マイクロプレート(7007、Corning)中に播種され得るが、代替的な密度および容器が、本プロトコールの範囲内とみなされる。次いで、細胞は、生存を増強するために、低酸素条件(例えば、約10%COおよび約5%O)中に約24時間置かれ得る。細胞は、24時間かけて重力によって自然に凝集する。
【0048】
約1日目に、細胞は、正常酸素圧条件(例えば、約5%CO)に移動され得る。1~3日目または約1~3日目に、約3μMのWnt阻害剤(IWR1e:681669、EMD Millipore)および約1%(v/v)のMatrigelを含有するBE6.2培地または他の適切な培地約50μLが、各ウェルに添加され得る。4~9日目または約4~9日目に、約100μLの培地が各ウェルから除去され得、約100μLの培地が添加され得る。4~5日目または約4~5日目に、約3μMのWnt阻害剤および約1%のMatrigelを含有するBE6.2培地または他の適切な培地が添加され得る。6~7日目または約6~7日目に、約1%のMatrigel(354230、BD Biosciences)を含有するBE6.2培地または他の適切な培地が添加され得る。8~9日目または約8~9日目に、約1%のMatrigelおよび約100nMのSmoothenedアゴニスト(SAG:566660、EMD Millipore)を含有するBE6.2培地または他の適切な培地が添加され得る。
【0049】
10日目または約10日目に、凝集物は、15mLチューブ(または他の許容可能な容器)に移され得、約5mLのDMEM(11885084、Gibco)または他の適切な培地中で約3回すすがれ、未処置の10cmポリスチレンペトリ皿または他の適切な容器中で約100nMのSAGを含むBE6.2または他の適切な培地中に再懸濁され得る。この時点から、培地は、約1日おきに交換され得る。凝集物は、モニタリングされ、一緒にまたはプレートの底にくっついた場合、手動で分離され得る。
【0050】
13~16日目または約13~16日目に、約100nMのSAGを含むLTR培地または他の適切な培地が添加され得る。16日目または約16日目に、網膜小胞(retinal vesicle)は、例えば、鋭利なタングステン針を使用して、手動で切り出され得る。切り出し後、細胞は、15mLチューブまたは他の許容可能な容器中に移され、約5mLのDMEMまたは他の許容可能な培地で約2回洗浄され得る。16~20日目または約16~20日目に、細胞は、LTRまたは他の許容可能な培地中で維持され、約5mLのDMEMまたは他の許容可能な培地で約2回洗浄された後、死細胞を洗浄して除くために、新たなプレートまたは他の許容可能な容器に移され得る。生存および分化を増加させるために、約1.04μMのオール-トランスレチノイン酸(ATRA;R2625;Sigma)が、約20~43日目に、LTR培地または他の許容可能な培地に添加され得る。以下で注目するように、約1.04μMのオール-トランスレチノイン酸への曝露のさらなる時間ウインドウが、所望のL錐体またはM錐体の細胞組成に依存して追加され得る。約10μMのガンマ-セクレターゼ阻害剤(DAPT、565770、EMD Millipore)が、約28~42日目に、LTRまたは他の許容可能な培地に添加され得る。ある特定の実施形態では、オルガノイドは、凝集を低減させるために、低い密度(10cmの皿1つ当たり約10~約20)で成長され得る。定期的に、オルガノイドは、適切な網膜オルガノイド成長を示す透明な薄層構造の非存在に基づいて、プレートから間引かれ得る。
【0051】
ある特定の実施形態では、黄斑修復細胞の集団は、S(青色)錐体について富化される。例えば、限定としてではなく、S(青色)錐体について富化された黄斑修復細胞の集団は、上記一般的オルガノイド分化プロトコールによって産生され得、オルガノイドを生成するために用いられるESCまたはiPSCは、Thrβ(Thrβ1およびThrβ2)ノックアウトを含む。例えば、限定としてではなく、CRISPR/Cas9が、Eldredらに詳細に記載されるように、ThrβのDNA結合ドメインの一部をコードする共有のエクソンを欠失させるために、例えば、ヒトESCにおいて使用され得る。しかし、種々の他の戦略が、Thrβ発現をノックアウトするために使用され得、本開示の主題の範囲内と考えられる。
【0052】
ある特定の実施形態では、黄斑修復細胞の集団は、M(緑色)錐体について富化される。例えば、限定としてではなく、M(緑色)錐体について富化された黄斑修復細胞の集団は、上記一般的オルガノイド分化プロトコールによって産生され得るが、オルガノイドは、約43~約130日目にRAにさらに曝露され、これが、M(緑色)錐体が富化された細胞の集団を、約200日目までに生じる。
【0053】
ある特定の実施形態では、黄斑修復細胞の集団は、L(赤色)錐体について富化される。例えば、限定としてではなく、L(赤色)錐体について富化された黄斑修復細胞の集団は、上記一般的オルガノイド分化プロトコールによって産生され得るが、オルガノイドは、約130日目~約200日目にRAにさらに曝露され、L錐体が富化された細胞の集団を、200日目に生じた。
【0054】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される黄斑修復細胞の集団は、所望のS:M:L:R比を達成するために適切な数の杆体細胞とさらに組み合わされる、本明細書に記載されるように調製され、所望のS錐体とM錐体とL錐体との比を達成するために組み合わされた適切な数の錐体細胞の混合物を介して、正常な三色識別対象において特定のゾーンにおいて(または特定のゾーンにわたって)見出される近似細胞性組成を再生させる。
【0055】
ある特定の実施形態では、黄斑修復細胞の集団は、例えば、独立したオルガノイドで産生され、次いで、所望のS:M:L:R比を達成するために適切な数の杆体細胞とさらに組み合わされる、所望のS錐体とM錐体とL錐体との比を達成するために混合され得る。例えば、限定としてではなく、表1は、本明細書に記載されるMARC1~MARC9組成物を産生するための、細胞組成物の例示的な組合せ(それらの産生において使用される甲状腺ホルモンT3濃度およびレチノイン酸濃度条件ならびに培養の持続時間が含まれる)を提供する。
表1.
【表1】
【0056】
例えば、1つまたは複数の隣接ゾーンまたは非隣接ゾーンに跨がって位置する組成物を産生するためのさらなる組合せは、第1のゾーンの特色を有する細胞組成物を産生し、それを、第2の(または引き続く)ゾーンの特色を有する細胞と対にすることによって、類似の様式で産生され得る。
【0057】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される黄斑修復細胞の集団からは、非神経網膜細胞が枯渇される。例えば、限定としてではなく、黄斑修復細胞のかかる集団からは、前脳様細胞、前脳前駆体細胞および/または網膜色素上皮細胞が枯渇され得る。枯渇を検証するために使用され得る前脳様細胞および/または前脳前駆体細胞のマーカーには、NKX2.2、RGCC、NEUROD1、BTG2、GADD45AおよびGADD45Gのうちの1つまたは複数が含まれるがこれらに限定されない。枯渇を検証するために使用され得る網膜色素上皮細胞のマーカーには、BEST1、TIMP3、GRAMD3およびPITPNAのうちの1つまたは複数が含まれるがこれらに限定されない。
【0058】
5.4.黄斑修復細胞組成物を使用する処置の方法
別の態様では、本開示の主題は、網膜変性疾患を有する人において機能的欠損を好転させるための処置としての、MARC移植による黄斑再生治療を対象とする。例えば、限定ではないが、本開示のMARC組成物の投与によって好転され得る網膜変性疾患には、加齢黄斑変性症、シュタルガルト病、錐体ジストロフィー、色覚異常、ベスト病、ミトコンドリア黄斑変性症、パターンジストロフィー、RDS関連黄斑変性症および他の形態の遺伝性黄斑ジストロフィーが含まれる。本明細書に記載される場合、MARC治療薬は、黄斑中に移植され得、かかる移植は、錐体光受容細胞の再生をもたらし得る。MARC移植が、黄斑疾患に罹患した人において視力を保存および/または改善することができるだけではなく、MARC送達が、本明細書で詳細に記載されるように、MARC治療薬の、黄斑への最適な成熟化および統合を確実にするために実施される。
【0059】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、錐体細胞の集団を含む黄斑修復細胞組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む、加齢黄斑変性症、シュタルガルト病、錐体ジストロフィー、色覚異常、ベスト病、ミトコンドリア黄斑変性症、パターンジストロフィー、RDS関連黄斑変性症および他の形態の遺伝性黄斑ジストロフィーを処置することであって、S錐体、M錐体およびL錐体の比が、各標的化された位置に対応する比の範囲内に入り、それにより、標的化された偏心度において、正常な色覚を有する三色識別患者において天然に存在するS:M:L:R比を模倣する、処置することを対象とする。
【0060】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、MARC1組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約0mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約0.1mmの線形偏心度にある外側境界における中心窩小窩またはその周囲における中心窩中央再生のために設計されたMARC1組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、L:M比が約1.3:1~約2.8:1の範囲であるMARC1組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、MARC1のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体のパーセンテージとして)最大で約2%のS錐体を含むMARC1組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、杆体を含有しないMARC1組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約1:33:66:0であるS:M:L:R比を有するMARC1組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。
【0061】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、MARC2組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約0.1mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約0.175mmの線形偏心度にある外側境界における小窩またはその周囲における中心窩中央再生のために設計されたMARC2組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、L:M比が約1.3:1~約2.8:1の範囲であるMARC2組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、MARC2のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体のパーセンテージとして)最大で約5%のS錐体を含むMARC2組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、杆体を含有しないMARC2組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約3:33:64:0であるS:M:L:R比を有するMARC2組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。
【0062】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、MARC3組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約0.175mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約0.750mmの線形偏心度にある外側境界における中心窩またはその周囲における中心窩中央再生のために設計されたMARC3組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、L:M比が約1.3:1~約2.8:1の範囲であるMARC3組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、MARC3のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体のパーセンテージとして)約10%~約20%のS錐体を含むMARC3組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約55%~約80%の杆体を含むMARC3組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約6:11:23:60であるS:M:L:R比を有するMARC3組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。
【0063】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、MARC4組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約0.750mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約1.5mmの線形偏心度にある外側境界における傍中心窩またはその周囲における再生のために設計されたMARC4組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、L:M比が約1.3:1~約2.8:1の範囲であるMARC4組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、MARC4のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体のパーセンテージとして)約7%~約10%のS錐体を含むMARC4組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約60%~約95%の杆体を含むMARC4組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約2:6:12:80であるS:M:L:R比を有するMARC4組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。
【0064】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、MARC5組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約1.5mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約3.0mmの線形偏心度にある外側境界における周中心窩またはその周囲における再生のために設計されたMARC5組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、L:M比が約1.3:1~約2.8:1の範囲であるMARC5組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、MARC5のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体のパーセンテージとして)約6%~約9%のS錐体を含むMARC5組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約75%~約95%の杆体を含むMARC5組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約1:3:7:90であるS:M:L:R比を有するMARC5組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。
【0065】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、MARC6組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約3.0mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約4.5mmの線形偏心度にある外側境界における周辺部黄斑またはその周囲における再生のために設計されたMARC6組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、L:M比が約1.3:1~約2.8:1の範囲であるMARC6組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、MARC6のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体のパーセンテージとして)約6%~約9%のS錐体を含むMARC6組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約55%~約85%の杆体を含むMARC6組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約2:9:19:70であるS:M:L:R比を有するMARC6組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。
【0066】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、MARC7組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約4.5mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約6.0mmの線形偏心度にある外側境界における中心周囲網膜またはその周囲における再生のために設計されたMARC7組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、L:M比が約1.3:1~約2.8:1の範囲であるMARC7組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、MARC7のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体のパーセンテージとして)約6%~約9%のS錐体を含むMARC7組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約50%~約80%の杆体を含むMARC7組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約2:11:22:65であるS:M:L:R比を有するMARC7組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。
【0067】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、MARC8組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約6.0mmの線形偏心度にある内側境界および最大で約7.5mmの線形偏心度にある外側境界における周辺部網膜またはその周囲における再生のために設計されたMARC8組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、L:M比が約1.3:1~約2.8:1の範囲であるMARC8組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、MARC8のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体のパーセンテージとして)約7%~約10%のS錐体を含むMARC8組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約50%~約80%の杆体を含むMARC8組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約3:10:22:65であるS:M:L:R比を有するMARC8組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。
【0068】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、MARC9組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約7.5mmまたはそれよりも高い線形偏心度にある遠周辺部網膜またはその周囲における再生のために設計されたMARC9組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、L:M比が約1.3:1~約2.8:1の範囲であるMARC9組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、MARC9のL:M比は、約2:1である。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体のパーセンテージとして)約7%~約10%のS錐体を含むMARC9組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、(総錐体+杆体のパーセンテージとして)約60%~約90%の杆体を含むMARC9組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。ある特定の実施形態では、方法は、約2:7:14:75であるS:M:L:R比を有するMARC9組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。
【0069】
ある特定の実施形態では、方法は、1つまたは複数の隣接ゾーンまたは非隣接ゾーンに跨がって位置するように設計されたMARCの、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む。例えば、限定ではないが、本開示は、錐体細胞の集団を含むMARC組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含む方法であって、S錐体、M錐体およびL錐体の比が、組成物の1つの領域では、特定の範囲内に入り、S錐体、M錐体およびL錐体の比が、組成物の別の領域では、別の特定の範囲内に入る、方法を対象とする。1つまたは複数の隣接または非隣接の前後偏心度に跨がって位置する変性位置を標的化するように再生基材が設計され得るように、MARCにおけるかかる設計バリエーションが創出され得る。各標的位置を標的化するMARCバリエーションは、標的化された偏心度において、正常な色覚を有する三色識別患者において天然に存在するS:M:L:R比を模倣するように設計され得る。
【0070】
ある特定の実施形態では、方法は、1、2、3、4、5、6、7、8または9つの異なる領域を含むMARC組成物の、それを必要とする患者の黄斑中への生着を含み、各領域は、標的化された偏心度において、正常な色覚を有する三色識別患者において天然に存在するS:M:L:R比を模倣するように設計され得る。例えば、限定ではないが、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC1組成物を含む領域およびMARC2組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC2組成物を含む領域およびMARC3組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC3組成物を含む領域およびMARC4組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC4組成物を含む領域およびMARC5組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC5組成物を含む領域およびMARC6組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC6組成物を含む領域およびMARC7組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC7組成物を含む領域およびMARC8組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC8組成物を含む領域およびMARC9組成物を含む領域を含み得る。
【0071】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域、MARC5組成物を含む領域、MARC6組成物を含む領域、MARC7組成物を含む領域、MARC8組成物を含む領域および/またはMARC9組成物を含む領域を含み得る。例えば、限定としてではなく、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域および/またはMARC3組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域および/またはMARC4組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域および/またはMARC5組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC1組成物、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域、MARC5組成物を含む領域および/またはMARC6組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域、MARC5を含む領域、MARC6組成物を含む領域および/またはMARC7組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC1組成物を含む領域を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域、MARC5を含む領域、MARC6を含む領域、MARC7組成物を含む領域および/またはMARC8組成物を含む領域を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、MARC1組成物を含む領域、MARC2組成物を含む領域、MARC3組成物を含む領域、MARC4組成物を含む領域、MARC5を含む領域、MARC6を含む領域、MARC7を含む領域、MARC8組成物を含む領域および/またはMARC9組成物を含む領域を含み得る。
【0072】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のためのMARC組成物は、不連続な領域、例えば、MARC1組成物を含む領域およびMARC3組成物を含む領域を含み得る。不連続な領域を含む、本明細書に記載される方法における使用のためのかかるMARC組成物のさらなる非限定的な例には、以下が含まれる:MARC1組成物を含む領域およびMARC3、MARC4、MARC5、MARC6、MARC7、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC2組成物を含む領域およびMARC4、MARC5、MARC6、MARC7、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC3組成物を含む領域およびMARC1、MARC5、MARC6、MARC7、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC4組成物を含む領域およびMARC1、MARC2、MARC6、MARC7、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC5組成物を含む領域およびMARC1、MARC2、MARC3、MARC7、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC6組成物を含む領域およびMARC1、MARC2、MARC3、MARC4、MARC8またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC7組成物を含む領域およびMARC1、MARC2、MARC3、MARC4、MARC5またはMARC9組成物を含む領域を含むMARC;MARC8組成物を含む領域およびMARC1、MARC1、MARC2、MARC3、MARC4、MARC5またはMARC6組成物を含む領域を含むMARC;ならびにMARC9組成物を含む領域およびMARC1、MARC2、MARC3、MARC4、MARC5、MARC6またはMARC7組成物を含む領域を含むMARC。
【0073】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法に関連するMARC送達は、網膜下空間への細胞または他の材料のアクセスおよび送達のためのデバイスを使用して実施される。例えば、限定ではないが、本明細書に記載される方法に関連するMARC送達のためのデバイスは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるPCT出願PCT/US2019/045074(WO2020028892)に記載されるデバイスであり得る。
【0074】
簡潔に述べると、PCT出願PCT/US2019/045074(WO2020028892)に記載されるデバイスなどの、本明細書に記載される方法に関連するMARC送達のためのデバイスは、経強膜側を介して網膜下空間にアクセスすることができる。これは、ab extemoアプローチである。ある特定の実施形態では、細胞送達デバイスは、例えば、PCT出願PCT/US2019/045074(WO2020028892)の図1~8に示されるように、可撓性外側表面によって取り囲まれた2つの積み重なった層を含み得る。ある特定の実施形態では、デバイスは、それが網膜下空間に前進させられる際に眼の天然の曲率に合うように、可撓性であるように構成され得る。ある特定の実施形態では、デバイスを適所に置いた後、可撓性外側表面は、網膜および網膜色素上皮および脈絡膜のデリケートな組織を保護するように構成されるが、2つの積み重なった層間には、送達される材料または細胞の通りやすい通路もまた存在する。
【0075】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法に関連する使用のためのデバイスは、網膜下空間を開くプロセスの間の網膜下空間の可視化を可能にするために、ガイド針に直接組み込まれた光干渉断層撮影センサーを含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法に関連する使用のためのデバイスは、伝播トンネルを安全にナビゲートするために、可撓性カニューレおよび注入器システムを含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法に関連する使用のためのデバイスは、それを損傷するリスクが低減または除外された、MARC組成物に対して力を発揮するプランジャーシステムを含み得る。
【実施例
【0076】
以下の実施例は、本開示の主題の例示に過ぎず、決して限定と解釈すべきではない。
【0077】
(実施例1)
S錐体に対してL/M錐体が富化されたオルガノイドの調製
参照によってその全体が本明細書に組み込まれるEldred et al.,Science 2018, 362:6411 (2018):eaau6348,(Eldredら)に詳細に記載されるように、ヒトオルガノイドは、S錐体とその後のL錐体およびM錐体の時間的生成が含まれる、ヒト網膜において観察される錐体サブタイプの特定を再現することができる。さらに、この調節は、甲状腺ホルモンシグナル伝達によって制御され、これは、核ホルモン受容体である甲状腺ホルモン受容体β(Thrβ)を介して錐体サブタイプ運命を制御するために必要かつ十分である。Eldredらに記載され、以下に概説されるように、本実施例は、S錐体に対してL/M錐体が富化されたオルガノイドを調製するための例示的な方法を提供する。
【0078】
オルガノイド中の錐体細胞の特定がヒト網膜における発生を再現するかどうかを決定するために、Eldredらは、ヒトオルガノイド中の錐体サブタイプの特色を、成人網膜組織のものと比較した。成人ヒト網膜および分化の200日目のオルガノイドは、S-オプシンまたはL/M-オプシンの発現によって示されるように、S錐体のL/M錐体に対する類似の比を示した(成人、S=13%、L/M=87%;オルガノイド、S=29%、L/M=71%)(Eldredらの図1、BおよびC、ならびに図S1A)。Eldredらは、比における差異が、最終分化した成人網膜と比較した、約6か月の時点でのオルガノイドの未熟さに起因する可能性が高いことを示している。Eldredらはまた、それらの極端に高い類似性に起因して、L-オプシンタンパク質およびM-オプシンタンパク質の両方を認識する抗体を用いて、L/M錐体を試験した。S錐体およびL/M錐体は共に、光受容体分化のために重要な転写因子である錐体-杆体-ホメオボックス転写因子(CRX)を発現し(Eldredらの図2、AおよびE)、これは、オルガノイドにおける適切な運命特定を示している。さらに、Eldredらは、オルガノイドおよび網膜中の錐体が、S錐体のものよりも長い外節および広い内節を有するL/M錐体を伴って、類似の形態学を示したことを示した(Eldredらの図2、B~DおよびF~H)。錐体の外節は、成人網膜中よりも、オルガノイド中で短いこともまた示されており、これは、出生後の成熟化と一致している(Eldredらの図2、DおよびH)。したがって、Eldredらは、ヒト網膜オルガノイド中の錐体サブタイプが、ヒト網膜の錐体のものと類似の分布、遺伝子発現パターンおよび形態学を示したことに注目した。
【0079】
Eldredらは、オルガノイド中の錐体サブタイプ特定の発生的動態もまた試験した。ヒト網膜では、S錐体は、胎生11~34週(77~238日)の間に生成されるが、L/M錐体は、胎生14~37週(98~259日)の間に、より遅くに特定される。Eldredらは、360日間の分化にわたって、抗体染色によって、オルガノイド中のS錐体およびL/M錐体の比および密度を追跡した。S-オプシンを発現する錐体が、150日目に最初に観察された(Eldredらの図2、I、LおよびM)。S錐体の密度は、L/M-オプシンを発現する錐体が観察され始めた(Eldredらの図2、J~M)時点である170日目に頭打ちになった(Eldredらの図2M)。L/M錐体の集団は、定常状態密度に達する300日目まで劇的に増加した(Eldredらの図2、K~M)。網膜オルガノイドにおけるS-オプシンの発現開始とL/M-オプシンの発現開始との間の20日間の差異は、胎児網膜におけるS錐体およびL/M錐体の出現において観察された20日間の差異と類似している。これらの観察は、網膜発生の間のS錐体特定からL/M錐体特定への時間的切り換えを示している。
【0080】
Eldredらは次に、誘導多能性幹細胞(iPSC)由来オルガノイドの発生の250日間を通じて、RNA配列決定(RNA-seq)を実施した。Eldredらは、S-オプシンRNAが、111日目に最初に発現され、160日目に頭打ちになったが、L/M-オプシンRNAは、160日目に発現され、180日目の後に一定のままであったことを見出し、これは、オルガノイドおよび胎児網膜における光受容体成熟化のタイムラインと一致している(Eldredらの図2Nおよび図S1B)。さらに、CRX RNAおよびCRXタンパク質が、オルガノイドにおいてオプシンの前に発現され、これは、ヒト発生と類似している(Eldredらの図2Nおよび図S1、B~G)。したがって、ヒトオルガノイドは、ヒト網膜において観察される錐体サブタイプ特定の発生タイムラインの多くの局面を再現し、これらの発生的変化の機構を発見するためのモデルシステムを提供する。
【0081】
ヒト錐体サブタイプ特定におけるThrβ2の役割を直接試験するために、Eldredらは、ヒト胚性幹細胞(ESC)においてCRISPR/Cas9を使用して、Thrβ2の第1エクソンにおける早期の転写終結を生じるホモ接合性変異を生成した(Eldredらの図S2A)。驚くべきことに、これらの変異体幹細胞に由来をするオルガノイドは、遺伝子型的に野生型のオルガノイドと、錐体サブタイプ比における差異を示さなかった[野生型、S=62%、L/M=38%;Thrβ2ノックアウト(KO)、S=59%、L/M=41%;P=0.83]。SのL/Mに対する比は、オルガノイド分化における可変性におそらくは起因して、野生型対照およびThrβ2 KOオルガノイドの両方について高い。したがって、他の種に基づく以前の示唆とは異なり、Eldredらは、Thrβ2を、ヒトにおける錐体サブタイプ特定にとって不可欠なものではないと考えている(Eldredらの図3、A~C)。
【0082】
Thrβ2単独がヒト錐体サブタイプ特定のために要求されるわけではないので、Eldredらは、Thrβ1およびThrβ2が共に、ヒトにおける錐体サブタイプ特定のために要求されるかどうかを調べた。Thrβ機能(Thrβ1およびThrβ2)を完全に除去するために、Eldredらは、ヒトESCにおいてCRISPR/Cas9を使用して、ThrβのDNA結合ドメインの一部をコードする共有のエクソンを欠失させた(Eldredらの図S2A)。Thrβヌル変異体網膜オルガノイドは、全ての錐体の、Sサブタイプへの完全な変換を示した(野生型、S=27%、L/M=73%;Thrβ KO、S=100%、L/M=0%;P<0.0001)(Eldredらの図3、D~EおよびH)。これらの変異体では、全ての錐体がS-オプシンを発現し、S錐体の形態学を有した(Eldredらの図3、IおよびJ)。したがって、Thrβは、ヒト網膜においてL/Mを活性化するため、およびS錐体運命を抑制するために要求される。
【0083】
Eldredらにおいて注目されたように、Thrβは、甲状腺ホルモンのより活性な形態であるトリヨードチロニン(T3)に高い親和性で結合して、遺伝子発現を調節する。さらに、T3の枯渇または添加は、げっ歯類においてS錐体のM錐体に対する比を変更する。L/M錐体はS錐体の後に分化するので、Eldredらは、T3が、網膜発生において後期にThrβを介して作用して、L/M錐体運命を誘導し、S錐体運命を抑制すると仮説を立てた。この仮説の1つの予測は、発生における早期のT3の添加が、L/M運命を誘導し、S運命を抑制するというものである。このモデルを試験するために、Eldredらは、20日目から開始して50日目まで、ESC由来オルガノイドおよびiPSC由来オルガノイドに20nMのT3を添加し、分化の200日目まで継続させた。Eldredらは、錐体細胞の、L/M運命への劇的な変換を観察した(野生型、S=27%、L/M=73%;野生型+T3、S=4%、L/M=96%;P<0.01)(Eldredらの図3、FおよびH、ならびに図S2B)。したがって、T3の早期添加が、L/M運命を誘導し、S運命を抑制するのに十分である。
【0084】
T3がThrβを介して錐体サブタイプ特定を制御するように特異的に作用するかどうかを試験するために、Eldredらは、早期T3添加によってThrβ変異体オルガノイドを分化させた。Thrβ変異は、T3の効果を完全に抑制し、S錐体のみを有するオルガノイドを生成した(野生型+T3、S=4%、L/M=96%;Thrβ KO+T3、S=100%、L/M=0%;P<0.0001)(Eldredらの図3、F~H)。これらの結果に基づいて、Eldredらは、T3がThrβを介してL/M錐体運命を促進し、S錐体運命を抑制するように作用すると結論付けた。
【0085】
Eldredらはまた、T3で処置した場合にL/M-オプシンを発現する網膜芽細胞腫細胞系において、甲状腺ホルモンシグナル伝達を介したL/M-オプシン発現の調節を確認した(Eldredらの図S2、CおよびD)。L/M-オプシン発現の、T3で誘導される活性化は、ThrβのRNA干渉ノックダウンの際に抑制され(Eldredらの図S2、EおよびF)、これは、ヒトオルガノイドにおいて観察される抑制と類似している。
【0086】
Eldredらは、オルガノイドにおいて、早期T3添加が、錐体細胞をL/M運命に変換しただけでなく、錐体密度を劇的に増加させたこともまた実証した(Eldredらの図3、FおよびK)。さらに、T3は、Thrβを介して、錐体密度を制御するように特異的に作用する(Eldredらの図3、GおよびK)。早期T3添加は、L/M錐体生成の時間的ウインドウを進行させ延長させることによって、錐体密度を増加させ得る。
【0087】
合わせると、これらの結果は、T3が、発生中のヒト網膜組織において、Thrβを介して、L/M錐体運命を促進し、S錐体運命を抑制するようにシグナル伝達することを実証している。
【0088】
Eldredらによって記載された材料および方法
【0089】
細胞系。H7 ESC(WA07、WiCell)およびエピソーム由来EP1.1 iPSC系を分化に使用したが、セクション5.3に上記したように、他の適切な細胞系が、当該分野で公知である。WERI-Rb1網膜芽細胞腫細胞は、ATCCから得た。細胞維持およびオルガノイド分化のプロトコールは、Eldredらの補足的材料に記載されている。
【0090】
CRISPR変異。全ての変異を、H7 ESCにおいて生成した。細胞を、誘導性Cas9エレメントを発現するように改変した。ガイドRNA(gRNA)トランスフェクションのためのプラスミドを、T2AをP2A配列で置き換えることによってpX459_V2.0プラスミド(62988、Addgene)から改変されたpSpCas9(BB)-P2A-Puroプラスミドを使用することによって、生成した。変異を、ポリメラーゼ連鎖反応配列決定を用いて確認した。欠失の遺伝子略図は、Eldredらの図S2Aに示される。詳細なトランスフェクション手順、gRNA配列および相同性アーム配列は、Eldredらの補足的材料中に含まれている。
【0091】
免疫組織化学。一次抗体を、以下の希釈で、Eldredらにおいて使用した:ヤギ抗SW-オプシン(オルガノイドについては1:200、ヒト網膜については1:500)(Santa Cruz Biotechnology)、ウサギ抗LW/MW-オプシン(オルガノイドについては1:200、ヒト網膜については1:500)(Millipore)、マウス抗CRX(1:500)(Abnova)およびマウス抗ロドプシン(1:500)(GeneTex)。全ての二次抗体は、Alexa Fluorコンジュゲート化し(1:400)、ロバにおいて作製した(Molecular Probes)。オルガノイド、網膜およびWERI-Rb1細胞の固定、顕微鏡および画像処理のための詳細な方法は、Eldredらの補足的材料中に含まれている。
【0092】
オルガノイド齢。オプシン発現時間経過。時間経過実験のためのEP1 iPSC由来オルガノイドを、Eldredらにおいて、分析のために10日増分へとビニングした。オルガノイドを、130日目[実際は129日目(n=3オルガノイド)]、150日目[実際は152日目(n=4オルガノイド)]、170日目[実際は173日目(n=2オルガノイド)]、200日目[実際は194~199日目(n=7オルガノイド)]、290日目[実際は291日目(n=3オルガノイド)]および360日目[実際は361日目(n=3オルガノイド)]へとビニングした。外節の長さおよび内節の幅の定量化を、361日目のオルガノイドにおいて測定した(n=3オルガノイド)。
【0093】
異なる条件におけるオプシン発現。Thrb2 KOおよび対照のためのiCas9 H7 ESC由来オルガノイドを、Eldredらにおいて、200日目に分析した。Thrb KO、対照および野生型+T3のためのオルガノイドを、Eldredらにおいて、2つの時点で分析した:2つのオルガノイドを、各群について199日目に取得し、1つのオルガノイドを、各群について277日目に取得した。T3で処置したオルガノイドを、異なる分化について、195日目と200日目との間の時点で取得した。各処置群および遺伝子型について、オルガノイドを、並行して成長させた対照オルガノイドと比較した。
【0094】
RNA-seq時間経過。EP1 iPSC由来オルガノイドを、Eldredらにおいて、分化の10日目~250日目の範囲の時点で分析した。Eldredらは、10日目(n=3オルガノイド)、20日目(n=2オルガノイド)、35日目(n=3オルガノイド)、69日目(n=3オルガノイド)、111日目(n=3オルガノイド)、128日目(n=3オルガノイド)、158日目(n=2オルガノイド)、173日目(n=3オルガノイド)、181日目(n=3オルガノイド)、200日目(n=3オルガノイド)および250日目(n=3オルガノイド)に、試料を取得した。個々のオルガノイドからのRNAを、Zymo Direct-zol RNA Microprep Kit(Zymo Research)を製造業者の指示に従って使用することによって抽出した。ライブラリーを、Eldredらにおいて、Illumina TruSeq stranded mRNAキットを使用して調製し、単一200塩基対読み取りを用いてIllumina NextSeq 500で配列決定した。
【0095】
RNA-seq時間経過分析。発現レベルを、Eldredらにおいて、以下のパラメーター:「-b 100 -1 200 -s 10 -t 20-単一」と共にKallisto(バージョン0.34.1)を使用して定量化した。Gencode release 28包括的アノテーションを、参照トランスクリプトームとして使用した。次いで、転写物パーミリオン(transcripts per million)(TPM)値(Eldredらの表S1)を使用して、Prismにおいてグラフを生成し、ggplot2を使用してRにおいてヒートマップを生成した。最良の低いTPMカットオフを同定するために、転写物の分布をプロットした(Eldredらの図S5A)。閾値は、0.7log(TPM+1) - 5TPM - であると決定され、この値を、ヒートマップのための変曲点として使用した。Eldredらの図S3、A~Cについてのヒートマップは、Hoshino et al., Dev. Cell 43, 763-779.e4 (2017)からのCPM値を使用することによって、同様に作製した。
【0096】
測定および定量化。Eldredらにおける網膜面積および細胞形態学の測定は、ImageJソフトウェアを使用することによって行った。Eldredらにおける定量化および統計学(RNA-seqデータを除く)は、0.01の有意性カットオフを用いて、GraphPad Prismで行った。統計的検定は、Eldredらの図の説明文に列挙され、全てのエラーバーは、SEMを表す。
【0097】
(実施例2)
L錐体に対してM錐体が富化されたオルガノイドの調製
参照によってその全体が本明細書に組み込まれるHadyniak et al.,bioRxiv, 2021.03.30.437763 (2021)(Hadyniakら)に詳細に記載されるように、ヒトオルガノイドは、L錐体およびM錐体の時間的生成が含まれる、ヒト網膜において観察される錐体サブタイプの特定を再現することができる。さらに、この調節は、レチノイン酸(RA)シグナル伝達によって制御される。Hadyniakらに記載され、以下に概説されるように、本実施例は、L錐体に対してM錐体が富化されたオルガノイドを調製するための例示的な方法を提供する。
【0098】
Hadyniakらに記載されるように、RAシグナル伝達は、ヒト網膜オルガノイドにおいて、M錐体運命を早期に促進し、L錐体運命を抑制する。ヒト網膜オルガノイドの分化には、早期網膜パターン形成を促進するための、20~43日目のオール-トランスRA(本明細書で以後RAと呼ばれる)の添加が伴う(Hadyniakらの図S5)。RAは、原始的網膜分化の最後および細胞運命特定の完全な持続時間を含む時間枠である、43日目~200日目には添加しなかった(「RAなし」)。
【0099】
Hadyniakらは、ヒト網膜オルガノイド発生の間のM錐体およびL錐体生成のタイミングを試験するために、in situハイブリダイゼーションアプローチを最初に使用した。120日目に、Hadyniakらは、M錐体およびL錐体をほとんど観察しなかった(Hadyniakらの図4A、S6A)。Hadyniakらは、140日目に、顕著な数のM錐体およびL錐体を最初に観察した(Hadyniakらの図4A、S6A)。140日目から200日目まで、オルガノイドは、L錐体について富化された(Hadyniakらの図4A~B、S6A)。これらの観察は、このプロトコールを用いて分化させたヒト網膜オルガノイドが、ヒト胎児発生におけるようなL錐体の前にM錐体の大きい集団を生成させるための発生的合図を欠いていることを示唆した。
【0100】
RAの添加が網膜オルガノイドにおいてM錐体生成を誘導したかどうかを試験するために、Hadyniakらは、異なる時間枠にわたって1.0μMのRAを添加し、200日目にM錐体およびL錐体を評価した(Hadyniakらの図4C)。発生全体を通じて追加のRA中で成長させたオルガノイドは、分化することができず、最小限のM錐体またはL錐体を生じた(N=6)。43~130日目の、発生における早期のRAの添加は、200日目に、ほぼ排他的にM錐体のオルガノイドを生じた(98.35%のM、1.65%のL、0%の共発現;Hadyniakらの図4D~E;「早期RA」)。この観察を補強するために、Hadyniakらは、「早期RA」条件で成長させたESC由来オルガノイドに対してRNA-seqを実施し、高いM-オプシンおよび最小限のL-オプシン発現を観察した(Hadyniakらの図S1C)。Hadyniakらは、「早期RA」条件で成長させたiPSC由来オルガノイドについての以前に公開されたRNA-seqデータもまた分析し、M-オプシンのほぼ排他的な発現を観察した(Hadyniakらの図S1D)。130~200日目の、発生における後期のRAの添加は、200日目に、さらなるRAなしで成長させたオルガノイドと類似の、L錐体が富化されたオルガノイドを生じた(6.35%のM、92.56%のL、1.10%の共発現;Hadyniakらの図4D~E;「後期RA」)。Hadyniakらは、実験条件にわたって、200日目に、全体的なM/L錐体密度における有意な差異を観察しなかった(Hadyniakらの図S6B)。合わせると、これらのデータは、網膜オルガノイド発生の早期に、M錐体を誘導し、L錐体を抑制するのに、RAが十分であることを示している。
【0101】
Hadyniakらによって記載された材料および方法
【0102】
細胞系維持。H7 ESC(WA07、WiCell)およびエピソーム由来EP1.1 iPSCを、網膜オルガノイド分化のために、Hadyniakらにおいて使用した。幹細胞を、Hadyniakらにおいて、1%(v/v)のMatrigel-GFR(商標)(354230、BD Biosciences)コーティング皿上でmTeSR(商標)(85857、Stem Cell Technologies)中で維持し、HERAcell 150iまたは160i 10%COおよび5%Oインキュベーター(Thermo Fisher Scientific)中で37℃で成長させた。細胞を、Hadyniakらにおいて、Wahlin et al., Sci Rep 7, 766 (2017)と同様に、コンフルエンスに従って4~5日毎に継代し、細胞を、Accutase(SCR005、Sigma)を7~12分間用いて継代して、単一細胞へと解離させた。Accutase中の細胞を、1:2でmTeSR(商標)1プラス5μMのブレビスタチン(Bleb、B0560、Sigma)に添加し、150gで5分間ペレット化し、mTeSR(商標)1プラスBleb中に懸濁し、1ウェル当たり5,000~15,000細胞で、6ウェルプレート中にプレートした。継代の48時間後、および再度の継代まで24時間毎に細胞にmTeSR(商標)を供給した。細胞のストレスを最小化するため、抗生物質は使用しなかった。
【0103】
Weri-Rb-1網膜芽細胞腫細胞は、ATCCから得、Hadyniakらにおいて、RPMI 1640培地(11875135、Gibco)+10%胎仔ウシ血清(16140071、Gibco)+1×ペニシリン-ストレプトマイシン(30-002-CI、Corning)中で、HERAcell 150iまたは160i 5%COインキュベーター(Thermo Fisher Scientific)中で37℃で維持した。細胞を、150gで5分間ペレット化し、新たな培地中に再懸濁することによって、約1×10~2×10細胞/mLで、コーティングされていないフラスコ中に4日毎に継代した。
【0104】
細胞系を、MycoAlert(LT07、Lonza)を使用して、マイコプラズマについて毎月試験した。
【0105】
細胞培養培地。幹細胞培地mTeSR1(85857、StemCell Technologies)。E6サプリメント:970μg/mLのインスリン(11376497001、Roche)、535μg/mLのホロ-トランスフェリン(T0665、Sigma)、3.20mg/mLのL-アスコルビン酸(A8960、Sigma)、0.7μg/mLの亜セレン酸ナトリウム(S5261、Sigma)。早期網膜分化のためのBE6.2培地:DMEM(11885084、Gibco)中2.5%のE6サプリメント(上記)、2%のB27サプリメント(50×)マイナスビタミンA(12587010、Gibco)、1%のGlutamax(35050061、Gibco)、1%のNEAA(11140050、Gibco)、1mMのピルベート(11360070、Gibco)および0.87mg/mLのNaCl。LTR(長期網膜)培地:DMEM(11885084、Gibco)中2%のB27のサプリメント(50×)(17504044、Gibco)、10%の熱不活化FBS(16140071、Gibco)、1mMのピルビン酸ナトリウム、1%のNEAA、1%のGlutamaxおよび1mMのタウリン(T-8691、Sigma)を含む25%のF12(11765062、Gibco)。RPMI+補充培地:RPMI培地1640(11875135、Gibco)中10%の熱不活化FBS(16140071、Gibco)、2.5%のペニシリン(30-002-CI、Corning)。
【0106】
レチノイン酸処置:オルガノイドについて、LTR中1.04μMのオール-トランスレチノイン酸(ATRA;R2625;Sigma)。
【0107】
甲状腺ホルモン処置:Weri-Rb1細胞について、RPMI+補充培地中100nMのT3(T6397、Sigma)。
【0108】
オルガノイド分化。オルガノイドを、軽微なバリエーションを伴って、Eldred etal. 2018に記載されるように、H7 WA07、H7iCas9 ESCまたはEP1.1 iPSCから分化させた(Hadyniakらの図S5)。多能性幹細胞は良好に維持された。最小限の自発的分化を有する~自発的分化を有さない培養物を、凝集に使用した。凝集させるために、細胞を、完全な解離を確実にするために、37℃で12分間、Accutase(SCR005、Sigma)中で継代した。細胞を、50μLのmTeSR1中3,000細胞/ウェルで、96ウェル超低接着丸底Lipidureコーティングプレート(51011610、NOF)または超低付着マイクロプレート(7007、Corning)中に播種した。細胞を、生存を増強するために、低酸素条件(10%COおよび5%O)中に24時間置いた。細胞は、24時間かけて重力によって自然に凝集した。
【0109】
1日目に、細胞を正常酸素圧条件(5%CO)に移動させた。1~3日目に、3μMのWnt阻害剤(IWR1e:681669、EMD Millipore)および1%(v/v)のMatrigelを含有するBE6.2培地50μLを、各ウェルに添加した。4~9日目に、100μLの培地を各ウェルから除去し、100μLの培地を添加した。4~5日目に、3μMのWnt阻害剤および1%のMatrigelを含有するBE6.2培地を添加した。6~7日目に、1%のMatrigel(354230、BD Biosciences)を含有するBE6.2培地を添加した。8~9日目に、1%のMatrigelおよび100nMのSmoothenedアゴニスト(SAG:566660、EMD Millipore)を含有するBE6.2培地を添加した。
【0110】
10日目に、凝集物を、15mLチューブに移し、5mLのDMEM(11885084、Gibco)中で3回すすぎ、未処置の10cmポリスチレンペトリ皿中で100nMのSAGを含むBE6.2中に再懸濁した。この時点から、培地を1日おきに交換した。凝集物をモニタリングし、一緒にまたはプレートの底にくっついた場合、手動で分離した。
【0111】
13~16日目に、100nMのSAGを含むLTR培地を添加した。16日目に、網膜小胞を、鋭利なタングステン針を使用して、手動で切り出した。切り出し後、細胞を15mLチューブ中に移し、5mLのDMEMで2回洗浄した。16~20日目に、細胞をLTR中で維持し、5mLのDMEMで2回洗浄した後、新たなプレートに移して、死細胞を洗浄して除いた。生存および分化を増加させるために、1.04μMのオール-トランスレチノイン酸(ATRA;R2625;Sigma)を、20~43日目に、LTR培地に添加した。1.04μMのさらなる時間ウインドウを、実験条件に依存して追加した。10μMのガンマ-セクレターゼ阻害剤(DAPT、565770、EMD Millipore)を、28~42日目に、LTRに添加した。オルガノイドを低い密度(10cmの皿1つ当たり10~20)で成長させて、凝集を低減させた。定期的に、オルガノイドを、適切な網膜オルガノイド成長を示す透明な薄層構造の非存在に基づいて、プレートから間引いた。
【0112】
RNA-Seq実験。EP1 iPSC由来オルガノイドを、前もって成長させ、Eldredらについて、分化の10日目~250日目の範囲の時点で分析した。試料を、10日目(N=3)、20日目(N=2)、35日目(N=3)、69日目(N=3)、111日目(N=3)、128日目(N=3)、158日目(N=2)、173日目(N=3)、181日目(N=3)、200日目(N=3)および250日目(N=3)に取得した。
【0113】
H7 ESC由来オルガノイドを、329日目に取得した(N=3)。
【0114】
Weri-Rb-1試料を、対照RPMI+補充培地またはT3で処置したRPMI+補充培地中で、4日間成長させた(N=1)。
【0115】
個々の試料からのRNAを、Zymo Direct-zol RNA Microprep Kit(R2062、Zymo Research)を製造業者の指示に従って使用して抽出した。ライブラリーを、Illumina TruSeq stranded mRNAキットを使用して調製し、単一75bp読み取りを用いてIllumina NextSeq 500で配列決定した。
【0116】
ヒト網膜およびオルガノイドの調製および凍結切片化。ヒト網膜。ドナー試料を、死後10.9時間の時点でドライアイス上で瞬間凍結させ、-80℃で貯蔵した。ヒト眼を、1×PBS中で室温にし、網膜を眼から切り出した。網膜を、10%中性緩衝ホルマリン(HT501128、Sigma)中で45分間固定し、1×PBS中で洗浄した。網膜の小切片を、Tissue-Tek O.C.T.コンパウンド(4583、Sakura)中にマウントし、ドライアイス上に置いて凍結させ、-80℃で貯蔵した。網膜を、10μm切片で切片化した。スライドを、10%中性緩衝ホルマリン(HT501128、Sigma)中で15分間の固定後ステップを伴って、6時間~一晩風乾し、1×PBS中で洗浄した。スライドを乾燥させ、使用前に3か月未満にわたって-80℃で貯蔵した。
【0117】
オルガノイド。オルガノイドを、10%中性緩衝ホルマリン(HT501128、Sigma)中で45分間固定し、1×PBS中で洗浄した。オルガノイドを、0.1Mのリン酸緩衝溶液中25%のスクロース中に一晩置き、次いで、Tissue-Tek O.C.T.コンパウンド(4583、Sakura)中にマウントし、ドライアイス上に置いて凍結させ、-80℃で貯蔵した。オルガノイドを、10μm切片で切片化した。スライドを、10%中性緩衝ホルマリン(HT501128、Sigma)中で15分間の固定後ステップを伴って、6時間~一晩風乾し、1×PBS中で洗浄した。スライドを乾燥させ、使用前に3か月未満にわたって-80℃で貯蔵した。
【0118】
Hadyniakらにおいて用いたオルガノイド細胞系:RAなし:H7 ESC(N=3);早期RA:H7 ESC(N=1)、H7 iCas9 ESC(N=2);および後期RA:H7iCas9 ESC(N=5)。
【0119】
RNA in situハイブリダイゼーション。BaseScope RNA in situハイブリダイゼーションを、製造業者の指示に従って、いくつかの変更で改変して、実施した。プローブ配列は、ヒトゲノムhg38由来のOPN1MWおよびOPN1LW mRNA配列NM_000513.2 NM_020061.5に基づいて、ACD Biotechneが設計した。
【0120】
切片を、-80℃での貯蔵から室温にし、1×PBS中で再湿潤化した。試料を、製造業者の指示に従って事前処置した:10分間のRNAscope過酸化水素と、その後の、dHO中で1回の洗浄、次いで、1×PBS中で2回の洗浄。
【0121】
RNAscopeプロテアーゼIIIを、HEK293細胞について、1×PBS中1:15希釈で、湿潤チャンバー中で15分間適用した。RNAscopeプロテアーゼIVを、オルガノイドおよびヒト眼試料について、湿潤チャンバー中で20分間適用した。試料を、1×PBSで2回洗浄した。
【0122】
プローブを、製造業者が示唆した濃度で、蓋およびインサート付きのHybEZ湿度制御ラック中で試料に添加し、HybEZオーブン中に40℃で2時間入れた。試料を、1×RNAscope洗浄緩衝液中で2分間で2回洗浄した。
【0123】
増幅および発色洗浄を、Hadyniakらにおいて、推奨濃度に対する変更なしに、製造業者の試薬を用いて行った。全ての洗浄を、室温(RT)で、またはHybEZオーブン中で40℃で、蓋およびインサート付きのHybEZ湿度制御ラック中で行った。
【0124】
1×RNAScope緩衝液中で2分間の洗浄2回を、各試薬洗浄の間に実施した。最終洗浄は、水道水中であった。スライドを、HybEZオーブン中で、65℃で最低30分間ベークした。試料を、VectaMount(Vector Laboratories、H-5000)封入剤および密封カバースリップを用いて保存した。
【0125】
オルガノイドのイメージング。全ての連続切片化したオルガノイドをイメージングし、手動で計数した。150個未満の錐体(n≦150)を有したオルガノイドは、Hadyniakらでは、分析から除去した。統計的検定は、Hadyniakらの図の説明文中に列挙され、全てのエラーバーは、SEMを表す。
【0126】
(実施例3)
レチノイン酸(RA)を欠如する培養条件における光受容体正体の比における時間的バリエーション
網膜オルガノイドを、43日目(早期網膜発生の最後)の後に、外因性RAの添加を欠如する培地中で、実施例1および2に概して記載されたように、成長させた。オルガノイドを、発生にわたる種々の時点において、S-オプシンおよびM/L-オプシンについて染色した。このデータから、錐体サブタイプの密度を、経時的に定量化した。図4に示されるように、本プロトコールの遂行は、錐体細胞の100%を構成する、最初に特定されるS錐体を生じる。M/L錐体特定が開始すると、錐体のサブ集団は、SオプシンおよびM/Lオプシンを共発現する。この共発現は、後に解消され、経時的に、M/L錐体が、錐体サブタイプの大部分を構成する。130日目には、50%よりも多くの錐体が、M/L正体のものであり、この近似比は、研究したさらなる時点において持続する。
【0127】
本出願を通じて引用された全ての図、ならびに全ての参考文献、特許および公開された特許出願および受託番号の内容は、参照によって明示的に本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】