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特表2024-529736トランスハロシクロブタンの立体選択的調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】トランスハロシクロブタンの立体選択的調製
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/02 20060101AFI20240801BHJP
   C07C 61/15 20060101ALI20240801BHJP
   C07C 23/06 20060101ALI20240801BHJP
   C07C 17/18 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C07C51/02
C07C61/15
C07C23/06
C07C17/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509384
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 US2022040666
(87)【国際公開番号】W WO2023023202
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/234,935
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルナチャラムピライ,アティームーラム
(72)【発明者】
【氏名】オルティス,アドリアン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC22
4H006AC46
4H006BB12
4H006BB31
4H006BE57
(57)【要約】
本発明は、式(2)及び(1)
(式中、Xは、本明細書で定義される)
を有する化合物を調製するための立体選択的プロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2):
【化1】
(式中、Xは、ハロである)
を有する化合物を調製するための立体選択的方法であって、
a.式(3):
【化2】
(式中、Xは、化合物(2)において上記で定義された通りであり、COORは、エステル基である)
の化合物を溶媒中でエステル加水分解剤と接触させて、前記化合物(2)を形成し、続いて、任意選択的に、
(a1)前記化合物(2)を溶媒中で塩基と接触させて、化合物(2)の塩を形成するステップと、
(a2)化合物(2)の前記塩を低温において溶媒中で酸と接触させて、化合物(2)の精製された形態を形成するステップと、
により、前記化合物(2)を精製するプロセスを行うステップ
を含む立体選択的方法。
【請求項2】
(b)式(4):
【化3】
(式中、前記Rは、化合物(3)において上記で定義された通りである)
の化合物を有機溶媒中において、任意選択的に低温で、脱酸素ハロゲン化剤と接触させて、前記化合物(3)を形成するステップ
を含む、前記化合物(3)を調製するステップをさらに含む、請求項エラー!リファレンスソースが見つかりませんに記載の方法。
【請求項3】
式(5):
【化4】
(式中、前記Rは、化合物(4)において上記で定義された通りである)
の化合物を、
(c1)低温の有機溶媒中の金属触媒、又は
(c2)有機溶媒中且つ緩衝溶液の存在下の生体触媒剤
と接触させて、前記化合物(4)を形成するステップを含む、前記化合物(4)を調製するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(d)式(6):
【化5】
の化合物を塩基の存在下において有機溶媒中でR剤(式中、Rは、化合物(5)において上記で定義された通りである)と接触させて、前記化合物(5)を形成するステップ
を含む、化合物(5)を調製するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物(2)を有機溶媒中でトリフルオロメチル化剤と接触させて、式(1):
【化6】
(式中、前記Xは、化合物(2)において上記で定義された通りである)
の化合物を形成するステップを含む、前記式(1)の化合物を調製するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Xは、ブロモ又はヨードである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
Xはブロモである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
は、(C~C)アルキル、フェニル又はベンジルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
はベンジルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(a)において、前記エステル加水分解剤は、アルカリ金属水酸化物又はリパーゼ酵素である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(a)において、前記エステル加水分解剤は、アルカリ金属水酸化物であり、前記溶媒は、メチル-THFと水との混合物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(a)において、前記エステル加水分解剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化リチウムである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(a)において、前記エステル加水分解剤は、水酸化リチウム又は水酸化ナトリウムである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(a)において、前記エステル加水分解剤はリパーゼ酵素であり、前記溶媒は、アセトン又は(C~C)アルコールである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(a1)において、前記塩基は、第一級、第二級、又は第三級アミン塩基である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(a1)において、前記塩基はtert-ブチルアミンであり、化合物(2)の前記塩は、式:
【化7】
(2-tert-ブチルアミン塩)
を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(a1)において、前記溶媒は、n-ヘプタンとMTBEとの混合物である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
(a2)において、前記酸は、硫酸、リン酸、又はHCl若しくはHBrから選択される酸ハロゲン化物である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(a2)において、前記溶媒は水である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(b)において、前記脱酸素ハロゲン化剤は、NBSの存在下の亜リン酸トリフェニル、又はNBSの存在下のトリフェニルホスフィンである、請求項2~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
(b)において、前記有機溶媒は、DMF、アセトニトリル、トルエン、又はジクロロメタンである、請求項2~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
(c1)において、前記金属触媒は金属水素化物である、請求項3~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
(c1)において、前記溶媒は、THF、アセトニトリル、トルエン、ジクロロメタン、(C~C)アルコール、又はそれらのいずれかの混合物である、請求項3~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
(c2)において、前記生体触媒剤は、ケトレダクターゼ酵素である、請求項3~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
(c2)において、前記溶媒は、(C~C)アルコール、又は水と(C~C)アルコールとの混合物である、請求項3~21又は24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
(c2)において、前記緩衝液は、リン酸塩、トリエタノールアミン、PIPES、BICINE、TES、TRIS、HEPES、TRICINE、CHES、又はCAPSから選択される、請求項3~21又は24~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
(c2)において、前記緩衝液はトリエタノールアミンである、請求項3~21又は24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
(d)において、前記R剤は、ハロゲン化(C~C)アルキル、ハロゲン化フェニル、又はハロゲン化ベンジルである、請求項4~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
(d)は、塩基の存在下で行われ、前記塩基は、重炭酸塩、炭酸塩、又はトリ(C~C)アルキルアミン塩基である、請求項4~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
(d)において、前記溶媒は、ジクロロメタン、DMF、THF、又はアセトニトリルである、請求項4~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記トリフルオロメチル化剤は、フッ化水素(HF)の存在下の四フッ化硫黄(SF)であり、任意選択的に溶媒の存在下にある、請求項5に記載の方法。
【請求項32】
前記トリフルオロメチル化剤は、フッ化水素(HF)の存在下の四フッ化硫黄(SF)であり、前記方法は、ジクロロメタンの存在下で行われる、請求項5又は31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いエナンチオマー比を有するトランス-ハロ-カルボキシシクロブチル及びトランス-ハロ-CFシクロブチル化合物を調製するための新規な立体選択的プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、式(1):
【化1】
(式中、Xは、以下で定義される通りである)
のハロシクロブチル化合物又はその薬学的に許容される塩を調製するための新規な立体選択的プロセスに関する。好ましくは、化合物は、トランス-ハロ-CF同素環式化合物、より好ましくはトランス-ハロ-CFシクロブタン、トランス-ハロ-CFシクロペンタン又はトランス-ハロ-CFシクロヘキサンである。最も好ましい化合物は、トランス-Br-CFシクロブタン(化合物1a):
【化2】
である。
【0003】
公知の経路では、化合物(1a)は、出発物質の化合物であるケトエステル
【化3】
から調製され、これは、2+2付加環化反応:
【化4】
によって調製されると考えられる。
【0004】
ケトエステルである出発物質は、ラセミ体のBr-COOHシクロブタンに変換され、これは、その後、カラムクロマトグラフィーにより、トランス-Br-COOHシクロブテン異性体とシス-Br-COOHシクロブテン異性体とに分離された。
【化5】
【0005】
カラム分離後、目的のトランス-Br-COOHシクロブタン異性体を単離し、以下:
【化6】
の通りにトランス-Br-CF3シクロブタンに変換した。Bugera,M.et.al.;Deoxofluorination of Aliphatic Carboxylic Acids:A Route to Trifluoromethyl-Substituted Derivative.J.Org.Chem.2019,84,16105-16115を参照されたい。
【0006】
化合物(1a)の製造の上記の公知の調製は、選択性がなく、その結果、後の段階の中間体におけるシス/トランス異性体のクロマトグラフィー分離が低収率になる。-COH部位を-CF部位に変換するには、必要とされる非常に危険な試薬を安全に取り扱うための独自の設備及び訓練を受けたオペレータが必要であり、これは、極端な価格及び製造のためのリードタイムをもたらす。化合物(1a)が、長いリードタイムを要する特注のビルディングブロック化合物であるCAS番号2306248-65-5としてのみ入手可能であることは、驚くべきことではない。利用可能な供給業者は、限られており、例えば、Enamine Ltd,Ukraineは、化合物(1a)を1kgあたり約US$80,000で販売している。
【0007】
そのため、よりコスト効率が高く効率的な方法で化合物(1a)を調製するという満たされていない必要性が存在する。
【0008】
本発明者らは、以下のように化合物(1)を調製するための新しい立体特異的な大規模合成技術を開発した。
【化7】
【0009】
具体的には、本発明者らは、上記プロセスを使用することによって化合物(1a)を合成するプロセスを発明し、これによりタイムラインを制御し、化合物(1a)の供給源を製造することを可能にした。本発明のプロセスの各工程において、生成物の立体化学は、慎重に制御される。例えば、ケトン還元プロセスでは、ケトエステルのシクロブチル(5)である出発物質は、95:5のジアステレオマー比において、シスヒドロキシエステルのシクロブチル(4)である生成物に変換され、次いで、これは、後続の完全に立体特異的な脱酸素ハロゲン化プロセスにおいて、非常に高いジアステレオマー比でトランスハロエステルであるシクロブチル(3)生成物に変換される。本発明のこの95:5のジアステレオマー比のケトン還元工程は、公知のプロセスの3:1のジアステレオマー比のケトン還元工程を上回る利点を提供する。トランス化合物(3)は、その後、高いジアステレオマー比において、本発明の残りのプロセス、すなわちトランス化合物(2)を形成するためのエステル加水分解プロセス及び化合物(1)を形成するためのCF形成プロセスを通してトランス配置を保持する。当然のことながら、本発明のこのような高度に立体特異的なプロセスは、目的の立体化学の生成物をより高い収率で提供するため、当技術分野において望ましい。
【0010】
本発明者らは、エステルケトンであるシクロブタン化合物のケトレダクターゼ酵素(KRED)を介した生体触媒的還元の開発により、目的のシスヒドロキシ-エステルであるシクロブチル(4)生成物の99.8:0.2のジアステレオマー比を実現するために、ケトン還元プロセスの立体選択性を95:5のジアステレオマー比からさらに改善するための解決手段をさらにもたらした。そのような立体特異的酵素プロセスがその後の完全に立体特異的な脱酸素臭素化プロセスと組み合わされることで、クロマトグラフィーが不要になり、その結果、化合物(1)、具体的には化合物(1a)を調製するためのより高い収率及びより迅速なスループットが得られる。
【0011】
全体として、本発明者らは、式(1)及び(2)の化合物の製造のための新規なプロセスを発明した。このプロセスは、以下の観点:(a)高度に立体選択的な反応、(b)キラルクロマトグラフィーを使用する後続の精製が除かれること、(c)向上した全体の収率、(d)より効率的であり、より環境に優しく、より低コストの全体の反応、及び(e)スケーラブルな反応において、当技術分野で公知のプロセスと比較して多くの関連する利点を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Bugera,M.et.al.;Deoxofluorination of Aliphatic Carboxylic Acids:A Route to Trifluoromethyl-Substituted Derivative.J.Org.Chem.2019,84,16105-16115
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、式(2):
【化8】
(式中、Xは、ハロである)
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を調製するための、立体選択的な、改良された、より安全な、コスト効率が高い、スケーラブルなプロセスを提供する。
【0014】
実施形態1では、本発明は、式(2):
【化9】
(式中、Xは、ハロである)
を有する化合物を調製するための立体選択的プロセスであって、
(a)式(3):
【化10】
(式中、Xは、化合物(2)において上記で定義された通りであり、及びCOORは、エステル基である)
の化合物を溶媒中でエステル加水分解剤と接触させて、前記化合物(2)を形成し、且つ任意選択的に、それに続いて、前記化合物(2)を、
(a1)前記化合物(2)を溶媒中で塩基と接触させて、化合物(2)の塩を形成することと、
(a2)前記化合物(2)の塩を低温において溶媒中で酸と接触させて、化合物(2)の精製された形態を形成することと
により、精製するプロセスを行うこと
を含む立体選択的プロセスを提供する。好ましくは、前記化合物(2)を精製するプロセスが実行される。
【0015】
実施形態1aでは、本発明は、
(b)式(4):
【化11】
(式中、前記Rは、化合物(3)において上記で定義された通りである)
の化合物を有機溶媒中において任意選択的に低温で脱酸素ハロゲン化剤と接触させて、前記化合物(3)を形成すること
を含む、前記化合物(3)の調製をさらに含む、実施形態1によるプロセスを提供する。
【0016】
実施形態1bでは、本発明は、式(5):
【化12】
(式中、前記Rは、化合物(4)において上記で定義された通りである)
の化合物を、
(c1)低温の有機溶媒中の金属触媒、又は
(c2)有機溶媒中且つ緩衝溶液の存在下の生体触媒剤
と接触させて、前記化合物(4)を形成することを含む、前記化合物(4)の調製をさらに含む、実施形態1及び1aによるプロセスを提供する。
【0017】
好ましくは、プロセス(c1)は、化合物(4)である生成物のシス配置について、90%を超える立体選択性、より好ましくは95%を超える立体選択性を提供する。
【0018】
好ましくは、プロセス(c2)は、化合物(4)である生成物のシス配置について、95%を超える立体選択性、より好ましくは99%を超える立体選択性を提供する。
【0019】
実施形態1cでは、本発明は、
(d)式(6):
【化13】
の化合物を塩基の存在下において有機溶媒中でR剤(式中、Rは、化合物(5)において上記で定義された通りである)と接触させて、前記化合物(5)を形成すること
を含む、化合物(5)の調製をさらに含む、実施形態1、1a及び1bによるプロセスを提供する。
【0020】
本発明の別の態様は、前記式(2)の化合物から、式(1)を有する化合物を調製するための、立体選択的な、改良された、より安全な、コスト効率が高い、スケーラブルなプロセスを提供する。
【0021】
本発明のこの態様では、実施形態2において、本発明は、前記化合物(2)を有機溶媒中でトリフルオロメチル化剤と接触させて、式(1):
【化14】
(式中、前記Xは、化合物(2)において上記で定義された通りである)
の化合物を形成することを含む、前記式(1)の化合物の調製をさらに含む、下位概念の実施形態1a~1cのいずれかを含む、実施形態1によるプロセスを提供する。
【0022】
実施形態3では、本発明は、Xがブロモ又はヨードである、実施形態1、1a~1c又は2によるプロセスを提供する。好ましくは、Xは、ブロモである。
【0023】
実施形態4では、本発明は、Rが(C~C)アルキル、フェニル又はベンジルである、実施形態1、1a~1c、2又は3によるプロセスを提供する。好ましくは、Rは、ベンジルである。
【0024】
実施形態5では、本発明は、(a)において、前記溶媒がメチル-THFと水との混合物である、実施形態1、1a~1c、2、3又は4によるプロセスを提供する。
【0025】
実施形態5aでは、(a)において、前記エステル加水分解剤は、アルカリ金属水酸化物又はリパーゼ酵素である。
【0026】
実施形態5bでは、(a)において、前記エステル加水分解剤は、アルカリ金属水酸化物であり、及び前記溶媒は、メチル-THFと水との混合物である。この実施形態では、好ましくは、エステル加水分解剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムである。この実施形態では、より好ましくは、前記エステル加水分解剤は、水酸化リチウム又は水酸化ナトリウムである。
【0027】
実施形態5cでは、(a)において、前記エステル加水分解剤は、リパーゼ酵素であり、及び前記溶媒は、アセトン又はイソプロピルアルコールである。この実施形態では、好ましくは、前記エステル加水分解剤は、アマノリパーゼ酵素である。
【0028】
実施形態6では、本発明は、(a1)において、前記塩基が第一級、第二級又は第三級アミン塩基である、実施形態1、1a~1c、2、3、4又は5によるプロセスを提供する。好ましくは、前記塩基は、tert-ブチルアミンであり、及び前記化合物(2)の塩は、式:
【化15】
(2-tert-ブチルアミン塩)
を有する。この実施形態では、前記化合物(2)の塩は、非吸湿性の塩である。
【0029】
実施形態6aでは、(a1)において、前記溶媒は、n-ヘプタンとMTBEとの混合物である。
【0030】
実施形態7では、本発明は、(a2)において、前記酸が、硫酸、リン酸又はHCl若しくはHBrから選択されるハロゲン化酸である、1、1a~1c、2、3、4、5、5a、5b、5c、6又は6aによるプロセスを提供する。この実施形態では、好ましくは、前記酸は、HCl又はHBrから選択されるハロゲン化酸である。
【0031】
実施形態7aでは、(a2)において、前記溶媒は、水である。
【0032】
実施形態7bでは、(a2)において、前記低温は、0℃~-5℃又は0℃である。
【0033】
実施形態8では、本発明は、(b)において、前記脱酸素ハロゲン化剤がNBSの存在下の亜リン酸トリフェニル又はNBSの存在下のトリフェニルホスフィンである、実施形態1、1a~1c、2、3、4、5、5a、5b、5c、6、6a、7、7a又は7bによるプロセスを提供する。好ましくは、脱酸素ハロゲン化剤は、NBSの存在下の亜リン酸トリフェニルである。
【0034】
実施形態8aでは、(b)において、前記有機溶媒は、DMF、アセトニトリル、トルエン又はジクロロメタンである。
【0035】
実施形態8bでは、(b)において、前記低温は、0℃未満又は-10℃~-5℃である。
【0036】
実施形態9では、本発明は、(c1)において、前記金属触媒が金属水素化物である、実施形態1、1a~1c、2、3、4、5、5a、5b、5c、6、6a、7、7a、8、8a又は8bによるプロセスを提供する。
【0037】
実施形態9aでは、(c1)において、前記金属水素化物は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、LiAl(OtBu)又は水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)である。好ましくは、前記金属水素化物は、LiAl(OtBu)である。
【0038】
実施形態9bでは、(c1)において、前記溶媒は、THF、アセトニトリル、トルエン、ジクロロメタン又はメタノール、エタノール若しくはイソプロピルアルコールから選択される(C~C)アルコール又はそれらの任意の混合物である。
【0039】
実施形態9cでは、(c1)において、前記低温は、-78℃~-5℃若しくは-10℃~-5℃又は0℃である。好ましくは、前記低温は、0℃である。
【0040】
実施形態9dでは、(c1)において、金属水素化物は、DIBAL-Hであり、及び前記低温は、-78℃である。
【0041】
実施形態9eでは、(c1)において、金属水素化物は、LiAl(OtBu)であり、及び前記低温は、-10℃~-5℃又は0℃である。
【0042】
実施形態10では、本発明は、(c2)において、前記生体触媒剤がケトレダクターゼ酵素である、実施形態1、1a~1c、2、3、4、5、5a、5b、5c、6、6a、7、7a、8、8a、8b、9、9a、9b、9c、9d又は9eによるプロセスを提供する。
【0043】
実施形態10aでは、(c2)において、前記ケトレダクターゼ酵素は、NADPを含む補因子の存在下のKRED、例えばKRED-P3-G09である。
【0044】
実施形態10bでは、(c2)において、前記溶媒は、(C~C)アルコール又は水と(C~C)アルコールとの混合物である。好ましくは、前記溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はそれらの任意の混合物である。
【0045】
実施形態10cでは、(c2)において、前記緩衝液は、トリエタノールアミン緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液、硫酸二水素カリウム緩衝液、硫酸カリウム緩衝液、テトラエチルホウ酸ナトリウム緩衝液又は四ホウ酸ナトリウム緩衝液である。好ましくは、前記緩衝液は、トリエタノールアミン緩衝液である。
【0046】
実施形態11では、本発明は、(d)において、前記R剤がハロゲン化(C~C)アルキル、ハロゲン化フェニル又はハロゲン化ベンジルである、実施形態1、1a~1c、2、3、4、5、5a、5b、5c、6、6a、7、7a、8、8a、8b、9、9a、9b、9c、9d、9e、10、10a、10b及び10cによるプロセスを提供する。
【0047】
実施形態11aでは、(d)において、前記R剤は、臭化ベンジルである。
【0048】
実施形態11bでは、(d)は、塩基の存在下で行われ、前記塩基は、重炭酸塩、炭酸塩又はトリ(C~C)アルキルアミン塩基である。好ましくは、塩基は、重炭酸塩又は炭酸塩である塩基である。
【0049】
実施形態11cでは、(d)において、前記溶媒は、ジクロロメタン、DMF、THF又はアセトニトリルである。好ましくは、前記溶媒は、DMFである。
【0050】
実施形態11dでは、(d)は、室温で行われる。
【0051】
実施形態12では、本発明は、前記トリフルオロメチル化剤がフッ化水素(HF)の存在下及び任意選択的に溶媒の存在下の四フッ化硫黄(SF)である、実施形態2によるプロセスを提供する。
【0052】
実施形態12aでは、本発明は、前記トリフルオロメチル化剤がフッ化水素(HF)の存在下の四フッ化硫黄(SF)であり、及び前記プロセスがジクロロメタンの存在下で行われる、実施形態2によるプロセスを提供する。
【0053】
実施形態12bでは、本発明は、-78℃~30℃の温度で行われる、実施形態2によるプロセスを提供する。好ましくは、温度は、30℃未満に維持される。
【発明を実施するための形態】
【0054】
別段の記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される以下の用語は、本出願の目的のために定義され、以下の意味を有する。
【0055】
「アルカリ金属」は、周期表の1族の化学元素、すなわちリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びフランシウム(Fr)を指す。アルカリ金属の具体的な例は、Li、Na及びK、最も具体的にはNaである。
【0056】
「(Cα~Cβ)アルキル」は、1~6つの炭素原子の直鎖飽和一価炭化水素ラジカル又は3~6つの炭素原子の分岐飽和一価炭化水素ラジカルを意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、2-プロピル、ブチル(全ての異性体を含む)、ペンチル(全ての異性体を含む)などである。
【0057】
「アミノ」又は「アミン」は、-NHを意味する。
【0058】
「第一級、第二級又は第三級アミン」は、その水素原子の1、2又は3つが(Cα~Cβ)アルキル基で置換されているNH基を意味する。
【0059】
「緩衝液」は、化学的調製プロセスのpHを安定化させる添加剤を意味する。適切な緩衝液は、当技術分野で周知であり、文献に見出すことができる。特に薬学的に許容される緩衝液には、ヒスチジン緩衝液、アルギニン緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酢酸緩衝液及びリン酸緩衝液が含まれる。使用される緩衝液とは別に、pHは、当技術分野で公知の酸又は塩基、例えば塩酸、酢酸、リン酸、硫酸、クエン酸、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムで調整することができる。
【0060】
「トリ(C~C))アルキルアミン」は、1~6つの炭素原子の直鎖一価炭化水素ラジカル又は3~6つの炭素の一価炭化水素ラジカルで置換されたアミノ基を意味する。例としては、トリメチルアミン及びトリエチルアミンなどが挙げられる。
【0061】
「(Cα~Cβ)シクロアルキル」は、1又は2つの炭素原子がオキソ基で置換され得る3~10個の炭素原子の環状飽和一価炭化水素ラジカルを意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルなどである。
【0062】
「シクロアルキルアルキル」は、-(アルキレン)-Rラジカル(Rは、上記で定義されたシクロアルキルである)を意味し、例えばシクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルエチル又はシクロヘキシルメチルなどである。
【0063】
「カルボキシ」は、-COOH又はCOOを意味し、Mは金属カチオンを意味する。
【0064】
「キラル中心」は、4つの同一でない置換基に結合している炭素原子を意味する。「キラル」という用語は、鏡像と重ね合わせることができない能力を表す一方、「アキラル」という用語は、鏡像と重ね合わせることができる実施形態を指す。キラル分子は、光学的に活性である。すなわち、キラル分子を含む化合物は平面偏光の面を回転させる能力を有する。
【0065】
「ジアステレオマー」は、2つ以上のキラリティーの中心を有し、分子が互いに鏡像ではない立体異性体を意味する。ジアステレオマーは、異なる物理的特性、例えば融点、沸点、スペクトル特性及び反応性を有する。
【0066】
「ジアステレオマー比」(dr)は、混合物中の一方のジアステレオマーのパーセント割合に対する他方のジアステレオマーのパーセント割合の比であるジアステレオマー純度を表す。ジアステレオマー比は、例えばNMRスペクトルから計算することができる。
【0067】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード、好ましくはフルオロ又はクロロを意味する。
【0068】
「ハロ(Cα~Cβ)アルキル」は、1つ以上のハロゲン原子、好ましくは1~5つのハロゲン原子、好ましくはフッ素又は塩素で置換されている、上記で定義されたアルキルラジカルを意味し、異なるハロゲンで置換されたものも含まれ、例えば-CHCl、-CF、-CHF、-CHCF、-CFCF、-CF(CHなどである。アルキルがフルオロのみで置換されている場合、それは、本出願ではフルオロアルキルと呼ばれる。
【0069】
「ヒドロキシ(Cα~Cβ)アルキル」は、1又は2つのヒドロキシ基で置換された、1~6つの炭素原子の直鎖一価炭化水素ラジカル又は1又は2つのヒドロキシ基で置換された3~6つの炭素原子の分岐一価炭化水素ラジカルを意味する。ただし、2つのヒドロキシ基が存在する場合、それらが両方とも同じ炭素原子上に存在することはない。代表例としては、限定するものではないが、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシブチル、3,4-ジヒドロキシブチル及び2-(ヒドロキシメチル)-3-ヒドロキシプロピルが挙げられ、好ましくは2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシプロピル及び1-(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチルである。
【0070】
本発明は、式(2)又は式(1)の化合物の保護された誘導体も含む。例えば、式(1)の化合物がヒドロキシ、カルボキシ、チオール又は任意の窒素原子含有基などの基を含む場合、それらの基は、適切な保護基で保護することができる。適切な保護基の包括的なリストは、T.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley&Sons,Inc.(1999)に見出すことができ、この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。式(1)の化合物の保護された誘導体は、当技術分野で周知の方法によって調製することができる。
【0071】
化合物の「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容され、且つ親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。そのような塩としては、以下のものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸を用いて形成される酸付加塩若しくはギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸を用いて形成される酸付加塩又は親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン若しくはアルミニウムイオンで置換される場合又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位する場合に形成される塩。薬学的に許容される塩は、無毒であることが理解される。適切な薬学的に許容される塩に関する追加の情報は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1985に見出すことができ、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
「オキソ」、「ケト」又は「カルボニル」は、=(O)基を意味する。
【0073】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」は、続いて記載される事象又は状況が発生し得るが、必ずしも発生する必要はないことと、その記載には、その事象又は状況が発生する場合と発生しない場合とが含まれることとを意味する。例えば、「アルキル基で任意選択的に置換されたヘテロシクリル基」は、アルキルが存在し得るが、存在する必要はないことと、その記載には、ヘテロシクリル基がアルキル基で置換されている状況と、ヘテロシクリル基がアルキルで置換されていない状況とが含まれることとを意味する。
【0074】
「立体異性体」は、同一の分子結合性及び結合多重度を有するが、空間におけるその原子の配置が異なる化合物を意味する。
【0075】
基本実験手順:
式(1)及び(2)の化合物(式中、R及びXは、発明の概要で定義された通りである)は、以下に図示及び記載する通りに調製することができる。
【0076】
工程1:エステル形成
【化16】
式(6)の化合物をR剤(式中、Rは、発明の概要で定義された通りである)で処理すると、Rが発明の概要で定義された通りである式(5)の化合物が得られる。反応は、ジクロロメタン、DMF、THF又はアセトニトリルなどの適切な有機溶媒中、塩基、例えば重炭酸カリウムなどの重炭酸塩若しくは炭酸カリウムなどの炭酸塩又はトリエチルアミン及びトリメチルアミン塩基などのトリ(C~C)アルキルアミン塩の存在下において25℃~30℃の温度で行われる。反応は、12時間~24時間、好ましくは16時間要する。適切なエステル化のR剤としては、ハロゲン化(C~C)アルキル、ハロゲン化フェニル若しくはハロゲン化ベンジル又は酢酸塩、ギ酸塩、ベンジル酸塩などの有機エステルを形成する試薬が挙げられる。エステル化のR剤の例としては、臭化ベンジル又は塩化ベンジルが挙げられる。式(6)の化合物及びR剤は、市販されているか、又は当技術分野で周知の方法によって容易に調製することができる。
【0077】
工程2:ケトンの還元
【化17】
式(5)の化合物(式中、Rは、発明の概要で定義された通りである)をケトン還元剤で処理すると、式(4)の化合物(式中、Rは、発明の概要で定義された通りである)が得られる。この反応は、以下で説明する金属触媒(方法A)又は生体触媒剤(方法B)を使用して実行することができる。
【0078】
方法A:金属触媒による還元
式(5)の化合物をTHF、アセトニトリル、トルエン、ジクロロメタン、(C~C)アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又はそれらの混合物などの適切な有機溶媒中において、金属触媒であるケトン還元剤と反応させることで、式(4)の化合物を得ることができる。反応は、-5℃~10℃、好ましくは-5~5℃、最も好ましくは約0℃の温度で行うことができる。反応は、3時間~5時間、好ましくは約4時間要する。適切な金属触媒であるケトン還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、LiAl(OtBu)(系内でLiAlHとtBuOHとから形成)又は水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)などの金属水素化物が挙げられる。好ましくは、金属水素化物は、LiAl(OtBu)であり、その際の反応温度は、極低温ではない温度に制御することができる。さらに、LiAl(OtBu)は、エステル部位を還元せずにケトン部位をヒドロキシに還元する最も優れた選択性プロファイルを与えるため、副生成物が最小限に抑えられる。代わりに、適切な金属触媒であるケトン還元剤には、DIBAL-Hが含まれ、その際の反応温度は、-78℃に制御される。
【0079】
方法B:生体触媒による還元
式(5)の化合物をアルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリルなどの適切な有機溶媒中でケトレダクターゼ酵素(KRED)などの生体触媒系ケトン還元剤と反応させることで、式(4)の化合物を得ることができる。反応は、窒素雰囲気下、緩衝液と、NADP又はNADPHなどの共触媒又は補因子との存在下において25℃~30℃の温度で行われる。反応は、12時間~24時間、好ましくは18時間要する。適切なケトレダクターゼとしては、KRED、好ましくはKRED-P3-G09が挙げられる。本発明の生体触媒還元の反応機構は、一般に以下のように示される。
【化18】
【0080】
様々なKRED酵素を、Rがベンジルである化合物(5)(すなわち化合物(5a))について試験した。化合物(4a)の立体異性体過剰の結果が下の表にまとめられている。KRED酵素は、CODEXIS,Inc.USAから購入した。LCAPは、液体クロマトグラフィー装置により測定した。
【0081】
【表1】
【0082】
一実施形態では、式(4)の化合物は、少なくとも74%のLCAPを有する化合物シス-4についての立体選択性で形成することができる。この実施形態の一態様では、立体選択性は、少なくとも75%のLCAPを有することができる。この実施形態のより具体的な態様では、立体選択性は、少なくとも93%のLCAPを有することができる。この実施形態のより具体的な態様では、立体選択性は、少なくとも99%のLCAPを有することができる。
【0083】
本発明のプロセスは、ヒドリド源の存在を必要とする。「ヒドリド源」という用語は、ヒドリドアニオン又はヒドリドアニオンの合成均等物を提供することができる化合物又は混合物を指す。ヒドリド源は、触媒量又は化学量論量で使用することができる。酵素(KRED)が使用される場合、触媒量の追加の補因子が必要とされる。したがって、補因子とKRED酵素とのこの組み合わせは、イソプロピルアルコールからヒドリドを再生し、基質の還元を可能にするために協働する。
【0084】
本発明のこのプロセスにおいてケトレダクターゼ酵素と共に使用される補因子は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸水素(NADPH)から選択される。補因子の選択は、補因子再生システムの有無に基づき得る。ヒドリド源が補因子再生系を含まない実施形態では、補因子は、化学量論量であり、したがってヒドリド源のためのNADH及びNADPHから選択される還元型補因子である。NADH又はNADPHが所定のケトレダクターゼに適切な補因子であるかどうかは、当技術分野で周知であるか、又は具体的なケトレダクターゼの商業的供給業者から情報を入手可能である。例えば、https://www.codexis.com/wp-content/uploads/KRED-Product-Information.pdf.を参照されたい。この実施形態では、還元型補因子は、化合物(5)と比較して化学量論量で存在する。
【0085】
別の実施形態では、ヒドリド源はさらに補因子再生系を含む。補因子は高コストであるため、化学量論に基づいて補因子を使用することは現実的ではない。低コストの補因子再生系は、補因子の還元型を継続的に生成及び再生するため、存在する必要がある補因子は触媒量のみである。さらに、補酵素再生系を使用すると、還元型補酵素を使用する必要がなくなる。補酵素再生系は、必要な還元型補酵素を系内で生成する。したがって、選択されたケトレダクターゼに適合する任意の補因子又は補因子の組み合わせを補因子再生系と共に使用することができる。したがって、この実施形態では、NADは、NADHと交換可能であり、NADPは、NADPHと交換可能である。同様に、「-NAD」、及び「-NADH」、及び「-NADP」、及び「-NADPH」という表記は、それぞれ補因子としてNADH及びNADPHを使用する酵素と併せて本明細書で互換的に使用される。
【0086】
適切な緩衝液としては、リン酸塩、トリエタノールアミン、PIPES、BICINE、TES、TRIS、HEPES、TRICINE、CHES又はCAPSが挙げられる。好ましくは、緩衝液は、トリエタノールアミンである。
【化19】
【0087】
工程3:脱酸素ハロゲン化
【化20】
式(4)の化合物(式中、Rは、発明の概要で定義された通りである)を脱オキシハロゲン化剤で処理すると、Xがハロであり、Rが発明の概要で定義された通りである式(3)の化合物が得られる。反応は、DMF、アセトニトリル、トルエン又はジクロロメタンなどの適切な有機溶媒中で行われ、添加中に-10℃~-5℃又は-10℃~0℃、好ましくは0℃未満の温度で行われ、その後25℃~30℃の温度まで温められる。反応は、1時間~2時間、好ましくは1時間要する。適切な脱酸素ハロゲン化剤としては、NBSの存在下の亜リン酸トリフェニル(好ましい)又はNBSの存在下のトリフェニルホスフィンが挙げられる。
【0088】
エステル加水分解/塩形成
【化21】
Xがハロである式(3)の化合物をエステル加水分解剤で処理すると、式(2)の化合物が得られる。エステル加水分解剤との反応は、メチルTHF/水又はアセトンなどの適切な溶媒中において25℃~30℃の温度で行われる。適切なエステル加水分解剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が挙げられる。好ましくは、アルカリ金属水酸化物は水酸化リチウム又は水酸化ナトリウムである。アルカリ金属水酸化物が使用される場合、適切な溶媒はメチル-THFと水との混合物などの極性溶媒である。
【0089】
代わりに、前記エステル加水分解剤は、リパーゼ酵素である。適切なリパーゼ酵素としては、例えば、カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)及びカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)などのカンジダ属の微生物、クロモバクテリウム・ショコラタム(Chromobacterium chocolatum)の微生物、ブタ肝臓及び好熱性微生物に由来する酵素が挙げられる。好ましくは、リパーゼ酵素は、バークホルデリア・セパシアン(Burkholderia cepacian)由来のリパーゼPSアマノSD酵素(AMANO ENZYME Inc.,Nagoya,Japan)、CAS♯:9001-62-1、ロット♯:LPS1050808SDであり、リン酸緩衝液などの緩衝液の存在下において25℃~30℃の温度で24時間行われる。リパーゼ酵素が使用される場合、適切な溶媒は、アセトン又は(C~C)アルコール、例えばプロパノール又はイソプロピルアルコールである。
【0090】
異性体混合物の酵素による分割は、例えば、式(3)の化合物又はXがブロモでRがベンジルの化合物(3)である式(3a)の化合物のエステル部位を選択的に加水分解するために、異性体混合物を適切なリパーゼ酵素と接触させることを含む、当技術分野で一般に知られている技術を使用して行うことができる。リパーゼ酵素で利用される中性のpH条件のため、本発明者らは、ジフェニルリン酸などの副生成物を観察していない。このような副生成物の物理的特性はカルボン酸生成物である化合物(2)と類似しているため、リパーゼ酵素を使用せずに除去することは、困難であり、面倒である。
【0091】
好ましくは、化合物(2)を形成するための上記エステル加水分解工程、それに続く化合物(2)を生成するプロセスに続いて、化合物(2)の生成物の精製が行われる。精製プロセスは2段階反応で行われる。最初の工程は、溶媒中で化合物(2)を塩基と反応させて化合物(2)の塩を形成することであり、次いで、第2の工程において、溶媒中で化合物(2)の塩を酸と低温で反応させることで、精製された状態の化合物(2)が形成される。
【0092】
第1の工程において、適切な塩基としては、第一級、第二級又は第三級アミン塩基などのアミン塩基が挙げられる。好ましい塩基はtert-ブチルアミンである。ナトリウム塩又はカルシウム塩などの金属塩も化合物(2)を精製するために製造することができるが、金属塩は吸湿性であることが分かっているため、金属塩と比較してアミニウム塩が好ましい。塩形成工程における適切な溶媒としては、n-ヘプタン/MTBEなどが挙げられる。それぞれの反応は、12時間~24時間、好ましくは16時間要する。
【0093】
第2の工程では、第1の工程で得られた化合物(2)の塩を酸と反応させることで、精製された化合物(2)が形成される。適切な酸としては、硫酸、リン酸又はHCl若しくはHBrから選択されるハロゲン化酸が挙げられる。好ましくは、酸は、HClである。適切な溶媒としては、水、低級アルコール又はそれらの混合物が挙げられる。反応は、-5℃~10℃、好ましくは0℃~5℃、最も好ましくは0℃の温度で行われる。反応は、1時間~2時間、好ましくは1時間要する。
【0094】
トリフルオロメチル化
【化22】
Xがハロである式(2)の化合物をトリフルオロメチル化剤で処理すると、式(1)の化合物が得られる。この反応は、ジクロロメタン、DMF、DMSOなどの適切な有機溶媒中において-78℃~30℃の温度で行われる。高い温度では、Xがブロモである化合物(1)である化合物(1a)の収率が低下することが判明したため、反応温度が30℃を超えないように維持することが重要である。反応は、12時間~24時間、好ましくは12時間要する。適切なトリフルオロメチル化としては、SF/HF試薬が挙げられる。当業者であれば、本発明の上記プロセスは様々な順序で行うことができ、上記基本手順に記載されている順序に限定されないことを理解するであろう。本発明者らは、本発明の反応の順序を変更できると考えている。例えば、以下の通りである。
【0095】
ここで、以下の具体的な実施例を参照して本発明を説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、例示的な役割を果たすに過ぎない。
【0096】
以下の略語は、本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して使用され、以下の意味を有する:
「DCM」は、ジクロロメタンを意味する。
「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを意味する。
「EtOAc」は、酢酸エチルを意味する。
「h」は、時間を意味する。
「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィーを意味する。
「IPA」は、イソプロピルアルコールを意味する。
「LCAP」は、液体クロマトグラフィーの面積パーセントを意味する。
「LCMS」は、液体クロマトグラフィー質量分析法を意味する。
「LiCl」は、塩化リチウムを意味する。
「min」は、分を意味する。
「MTBE」は、メチルtert-ブチルエーテルを意味する。
「rt」又は「RT」は、室温を意味する。
「temp」は、温度を意味する。
「t-bu」は、tert-ブチルを意味する。
【0097】
本明細書で詳述する合成経路で使用される化学薬品には、例えば、溶媒、試薬及び触媒が含まれる。上述した方法は、最終的に化合物の合成を可能にするために、本明細書に具体的に記載されている工程前又は後のいずれかにおいて、適切な保護基を付加又は除去する工程もさらに含み得る。さらに、目的の化合物を得るために、様々な合成を別の順番又は順序で行うことができる。適用可能な化合物の合成で有用な合成化学的変換及び保護基の方法論(保護及び脱保護)は、当技術分野で公知であり、例えばR.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley and Sons(1999);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);及びL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)並びにそれ以降の版に記載されているものを挙げることができる。
【0098】
全ての試薬、出発物質及び溶媒(実験室グレード又は無水グレード)は、受け取ったままの状態で使用した。純度は、逆相HPLCを使用して決定した。プロトン及び炭素の化学シフト(δ)は、テトラメチルシラン(δ=0.00、δ=0.00)又はNMR溶媒中の残留プロトン若しくは炭素(CDCl:δ=7.26ppm、δ=77.2ppm)を基準としてパーツパーミリオン(ppm)で報告される。
【実施例
【0099】
実施例:実験手順
実施例1:ベンジル3-オキソシクロブタン-1-カルボキシレート(5a)の合成
【化23】
ガラス反応器内のDMF(9.8L、7L/kg)中のSigma-Aldrichから入手可能な3-オキソシクロブタンカルボン酸(6)(1.12kg、9.82mol、1.2当量)の溶液に窒素雰囲気下において25~30℃で重炭酸カリウム(2.05kg、20.46mol、2.5当量)及び臭化ベンジル(1.4kg、8.19mol、1.0当量)を添加した。反応混合物を25℃~30℃で16時間撹拌した。HPLCにより反応が完了したと判断された後、反応混合物を5℃~10℃まで冷却し、水(14.0L、10L/kg)を添加してクエンチし、MTBE(14.0L、10L/kg)で希釈した。内容物を25℃~30℃まで温め、相を分離した。水相をMTBE(7.0L、5L/kg)で抽出し、合わせた有機相を20重量%のLiCl水溶液(7.0L、5L/kg)で2回洗浄した。有機相を35℃~40℃で約2Lまで真空下で蒸留した。得られた濃縮物を真空下40℃~45℃でイソプロパノール(3.5L、2.5L/kg)と2回、約1.5Lまで交換して、ベンジル(1S,3S)-3-ヒドロキシシクロブタン-1-カルボキシレート(5a)(1677g、HPLC面積%純度95.8、HPLCによる分析値90.6%)を淡褐色液体として94%の収率で生成した。サンプルを取り出し、減圧下(<10mbar)、45℃~50℃で乾燥するまで蒸留し、得られた液体をNMR及びLCMSで分析した。
H NMR(400MHz,CDCl):7.33-7.43(m,5H),5.21(s,2H),3.39-3.48(m,2H),3.28-3.34(m,3H).13C NMR(75MHz,CDCl):203.6,173.9,135.5,128.7(2C),128.5,128.3(2C),67.1,51.6(2C),27.4.MS:m/z 222.1(M+HO)
【0100】
実施例2:ベンジル(1S,3S)-3-ヒドロキシシクロブタン-1-カルボキシレート(4a)の合成
方法A:金属水素化物触媒によるケト還元
【化24】
30Lのガラス反応器中の予め冷却(-5℃~5℃)した化合物(5a)(1.33kg(HPLCによる分析値75.3%)、4.90mol、1.0当量)のTHF(10.0L、10L)溶液に窒素雰囲気下においてTHF中の水素化トリ-tert-ブトキシアルミニウムリチウムの1Mの溶液(5.4L、5.39mol、1.1当量)を、カニューレを使用して2.5時間かけて滴下した。試薬の添加が完了した後、反応混合物を-5℃~5℃でさらに1時間撹拌した。反応が完了したと判断された後(HPLCにより)、1.5Nの塩酸水溶液(16.0L、16L/kg)を添加することによって反応混合物を慎重にクエンチし、内容物をEtOAc(10.0L、10L/kg)で希釈した。内容物を20℃~30℃まで徐々に温め、20℃~30℃で20分間撹拌した。水相を分離し、EtOAc(5.0L、5L/kg)で抽出した。合わせた有機相を30重量%のNaCl水溶液(5.0L、5L/kg)で洗浄し、40℃~45℃で約2Lまで真空下で蒸留した。得られた濃縮物を真空下40℃~45℃でトルエン(2.5L、2.5L/kg)と2回、約1.5Lまで交換して、化合物(4a)(1370g、HPLC面積%純度84.7、HPLCによる分析値65.9%)を淡褐色液体として89%の収率で得た。
【0101】
方法B:酵素によるケト還元
【化25】
トリエタノールアミン緩衝液は、188gのトリエタノールアミン及び1.68gのMgSOを13.0Lの脱塩水に添加することによって調製した。溶液のpHは10.0であると判明し、1.5NのHCl水溶液約0.8Lを添加することによって7.0に調整した。
【0102】
ガラス反応器中のイソプロパノール(13.0L、10L/kg)中のベンジル(1R,3R)-3-ブロモシクロブタン-1-カルボキシレート(3a)(1.43kg(HPLCによる分析値90.6%)、4.89mol、1.0当量)の溶液に窒素雰囲気下においてKRED-P3-G09(104g、8重量%)及びNAD(26g、2重量%)を25℃~30℃で入れた。トリエタノールアミン緩衝液(pH7.0、13.0L、10L/kg)を添加し、得られた内容物を25℃~30℃で18時間撹拌した。HPLCで反応が完了したと判断された後、反応混合物をCELITE(登録商標)の短い床を通して吸引濾過し、床をEtOAc(13.0L、10L/kg)で洗浄した。濾液を40℃~45℃において真空下で蒸留して有機溶媒の大部分を除去し、得られた溶液をEtOAc(13.0L、10L/kg)で希釈した。水相を分離し、EtOAc(13.0L、10L/kg)で2回抽出した。合わせた有機相を30重量%のNaCl水溶液(6.5L、5L/kg)で洗浄し、40℃~45℃で約2Lまで真空下で蒸留した。得られた濃縮物を真空下40℃~45℃でトルエン(3.3L、2.5L/kg)と2回、約1.5Lまで交換して、化合物(4a)(1592g、HPLC面積%純度97.1、HPLCによる分析値78.4%)を褐色液体として95%の収率で得た。
【0103】
サンプルを取り出し、減圧下(<10mbar)、45℃~50℃で乾燥するまで蒸留し、得られた液体をNMR及びLCMSで分析した。H NMR(400MHz,CDCl):7.31-7.42(m,5H),5.15(s,2H),4.18(p,J=7.0Hz,1H),3.21(bs,1H),2.57-2.71(m,3H),2.22-2.27(m,2H).13C NMR(75MHz,CDCl):174.9,135.9,128.6(2C),128.3,128.2(2C),66.5,63.1,37.02,36.96,28.9.MS:m/z=207.1[M+H]
【0104】
実施例3:ベンジル(1R,3R)-3-ブロモシクロブタン-1-カルボキシレート(3a)の合成:
【化26】
ガラス反応器中の予め冷却(-5℃~-10℃)した亜リン酸トリフェニル(226g、0.73mol、1.5当量)のCHCN(0.3L、3L/kg)溶液に窒素雰囲気下においてCHCN(1.0L、10L/kg)中のNBS(131g、0.73mol、1.5当量)の溶液を、添加フラスコを使用して滴下した。添加の間、反応混合物の温度が確実に0℃未満になるようにした。得られた溶液に、CHCN(0.2L、2L/kg)中の化合物(4a)(128g(HPLCによる分析値78.4%)、0.49mol、1.0当量)の溶液を、反応混合物の温度が確実に0℃未満になるようにしながら、添加フラスコを使用して滴下した。反応を25℃~30℃に温め、1時間撹拌した。反応が完了したと判断された後(HPLCにより)、反応混合物を25℃~30℃において真空下で蒸留して、揮発性物質の大部分を除去した。得られた残渣をMTBE(1.0L、10L/kg)で希釈し、CELITEの短い床を通して濾過し、床をMTBE(1.0L、10L/kg)で洗浄した。濾液を2重量%のNa(1.0L、10L/kg)の水溶液で2回洗浄し、40℃~45℃で約0.4Lまで真空下で蒸留して、粗製化合物(3a)(414g、HPLC面積%純度33.7、HPLCによる分析値25.5%)を暗褐色液体として81%の収率で得た。3.6gの(1R,3R)-3-ブロモシクロブタン-1-カルボン酸(2a)粗生成物も副生成物として4%の収率で形成された。
【0105】
精製された化合物(3a)の分析データ:H NMR(400MHz,CDCl):7.36-7.40(m,5H),5.17(s,2H),4.68(p,J=7.0Hz,1H),3.46(七重線,J=5.0Hz,1H),2.93-3.00(m,2H),2.69-2.77(m,2H).13C NMR(75MHz,CDCl):174.3,135.7,128.6(2C),128.3,128.2(2C),66.6,40.7,37.6(2C),36.0.
【0106】
注:本発明者らは、反応混合物の蒸留を30℃未満の温度で制御しなければならないことを見出した。温度が高いほど、酸(粗製2a酸)の形成が増加することが見出された。
【0107】
実施例4a及び4b:2-メチルプロパン-2-アミニウム(1R,3R)-3-ブロモシクロブタン-1-カルボン酸(2a)及びtert-ブチルアミン塩(2aのt-BuNH塩)の合成
塩基性エステル加水分解及び酸の精製
実施例4a-1:2-メチルプロパン-2-アミニウム(1R,3R)-3-ブロモシクロブタン-1-カルボン酸(2a)の合成:
【化27】
2-メチル-THF(0.48L、5L/kg)中の粗製化合物(3a)(372g(HPLCによる分析値25.5%)、0.35mol、1.0当量)の溶液に、25℃~30℃で水(0.48L、5L/kg)中のLiOH・HO(59g、1.41mol、4.0当量)の溶液を添加した。反応混合物を25℃~30℃で16時間撹拌した。反応が完了したと判断された後(GCにより)、1.5NのHClを添加することによって反応混合物のpHを8.0~8.5に調整し、MTBE(0.48L、5L/kg)で希釈した。相を分離し、水相をMTBE(0.48L、5L/kg)で洗浄した。1.5NのHClを添加することによって水相のpHを3.0~3.5に調整し、得られた水相をMTBE(0.48L、5L/kg)で2回抽出した。合わせた有機抽出物を30重量%のNaCl水溶液(6.5L、5L/kg)で洗浄し、40℃~45℃で約0.2Lまで真空下で蒸留した。得られた濃縮物を真空下において40℃~45℃でn-ヘプタン(3.3L、2.5L/kg)と2回交換して、粗製化合物(2a)(330g、GC面積%純度42.6、GCによる分析値27.7%)を褐色固体として95%の収率で得た。
【0108】
実施例4a-2:(1R,3R)-3-ブロモシクロブタン-1-カルボキシレート2-メチルプロパン-2-アミニウムの合成:
【化28】
次に、実施例4aの生成物である粗製化合物(2a)に、n-ヘプタン(0.9L、10.0L/kg)及びCELITE(0.33kg、100重量%)を添加し、得られたスラリーを45℃~50℃で2時間撹拌した。高温のスラリーを吸引濾過し、ケーキを熱n-ヘプタン(0.9L、10.0L/kg)で洗浄した。濾液を45℃~50℃まで冷却し、MTBE(0.2L、2L/kg)で希釈し、次いで窒素雰囲気下において25℃~30℃でn-ヘプタン(0.2L、2L/kg)中のtert-ブチルアミン(59mL、0.56mol、1.1当量)の溶液を添加し、16時間撹拌した。固体を吸引濾過し、n-ヘプタン(0.2L、2L/kg)で洗浄し、40℃~45℃で真空乾燥して、(1R,3R)-3-ブロモシクロブタン-1-カルボキシレート2-メチルプロパン-2-アミニウム(化合物2aのt-BuNH塩)(103g)をオフホワイトの固体として96%の収率で得た。
H NMR(400MHz,CDCl):6.95(bs,3H),4.68(p,J=7.0Hz,1H),3.16(七重線,J=4.8Hz,1H),2.81-2.88(m,2H),2.61-2.69(m,2H),1.33(s,9H).13C NMR(75MHz,CDCl):181.0,50.6,42.5,39.0,38.9(2C),27.8(3C).
【0109】
実施例4a-3:化合物(2a)への塩加水分解:
【化29】
予め冷却した(0℃~5℃)上記化合物2aのt-BuNH塩(12.6g、50mmol、1.0eq.)の水溶液(50mL、4L/kg)に、反応混合物のpHが約1~2になるまで11.2NのHCl水溶液(5mL、0.4L/kg)を滴下した。得られた固体を0℃~5℃で1時間撹拌した。次いで、固体を吸引濾過し、冷水(50mL、4L/kg)で洗浄し、25℃~30℃で真空乾燥して、精製された化合物(2a)(7.4g)をオフホワイトの固体として82%の収率で得た。H NMR(400MHz,CDCl):9.33(bs,3H),4.68(p,J=7.0Hz,1H),3.43(七重線,J=5.0Hz,1H),2.93-3.00(m,2H),2.71-2.78(m,2H).13C NMR(75MHz,CDCl):
【0110】
酵素によるエステル加水分解
実施例4b-1:(1R,3R)-3-ブロモシクロブタン-1-カルボン酸(粗生成物2a)の合成:
【化30】
ガラス反応器内のIPA:リン酸緩衝液(pH7)(1:1)(3L、10L/kg)中の粗製化合物(3a)300g(HPLCによる分析値25%)、0.27mol、1.0当量)の溶液に、25℃~30℃でリパーゼPSアマノSD(18.75g、0.25w/w)を添加した。反応混合物を25℃~30℃で10分間撹拌した。飽和KPO水溶液を使用して反応混合物のpHを6.54~7.0に調整した。反応混合物を25℃~30℃で24時間撹拌した。反応が完了したと判断された後(GCにより)、内容物を、CELITEを通して濾過し、CELITE床をHO(3L、10L/kg)で洗浄した。濾液を35℃で真空蒸留して、揮発性物質の大部分を除去した。次に、濃HClを使用して残渣のpHを6.76~3.0に調整した。内容物をMTBE(6L、20L/kg)で抽出し、有機相を真空下で完全に濃縮して、粗製化合物(2a)(266.86g、71.4GC面積%純度、GCによる分析値18.0%)を褐色固体として93.8%の収率で得た。
【0111】
実施例4b-2:2-メチルプロパン-2-アミニウム(1R,3R)-3-ブロモシクロブタン-1-カルボキシレート(3)の合成
【化31】
ガラス反応器内のn-ヘプタン:MTBE(9:1)(940mL、20L/kg)中の粗製化合物(2a)252.6g(46.88g、HPLCにより補正した分析値)、0.17mol、1.0当量)の溶液に、n-ヘプタン(200mL、4.3L/kg)中のtert-ブチルアミン(21mL、0.187mol、1.1当量)の溶液を25℃~30℃でシリンジを使用して滴下した。反応混合物を窒素雰囲気下において25℃~30℃で16時間撹拌したところ、反応混合物中に固体が観察された。次に、反応混合物にアセトン(700mL、15L/kg)を添加して均一なスラリーを得た。固体を吸引濾過し、n-ヘプタン(230mL、5L/kg)で洗浄し、40℃~45℃で真空乾燥して、化合物(2aのt-BuNH塩)(37g)をオフホワイトの固体として56%の収率で得た。
H NMR(400MHz,CDCl):6.89(bs,4H),4.65(q,J=0.8Hz,1H),3.14(七重線,J=4.8Hz,1H),2.79-2.85(m,2H),2.58-2.65(m,2H),1.31(s,9H).
【0112】
実施例4b-3:(1R,3R)-3-ブロモシクロブタン-1-カルボン酸(2a)の合成:
【化32】
水(140mL、4L/kg)中の化合物(2aのt-BuNH塩)(35g、0.13mol、1.0当量)の溶液に、11.2NのHCl(19.3mL、0.21mol)水溶液を25℃~30℃で反応混合物のpHが1~2になるまで滴下した。反応混合物を40~45℃まで温め、内容物を40℃~45℃で1時間撹拌した。次に、内容物を25~30℃まで冷却し、25~30℃で1時間撹拌した。さらに内容物を0℃~5℃まで冷却し、0℃~5℃で1時間撹拌した。固体を吸引濾過し、冷水(50mL、1.5L/kg)で洗浄し、真空下25℃~30℃で乾燥して、精製された化合物(2a)(12g)をオフホワイトの固体として50%の収率で得た。
H NMR(400MHz,CDCl):9.33(bs,3H),4.66-4.70(m,1H),4.69(p,J=7.0Hz,1H),3.43(七重線,J=5.0Hz,1H),2.95-3.01(m,2H),2.72-2.79(m,2H).13C NMR(75MHz,CDCl):13C NMR(75MHz,CDCl):181.1,40.3,37.5,36.0.
【0113】
実施例5:(1R,3R)-1-ブロモ-3-(トリフルオロメチル)シクロブテン(5a)の合成
【化33】
撹拌されているジクロロメタン(DCM)(4.0体積)溶媒に、トランス-1-ブロモ-3-シクロブタンカルボン酸(1.0当量)及び無水フッ化水素(0.13体積)を入れた。溶液を静的真空下で適切なサイズのオートクレーブに移した。四フッ化硫黄(3.0当量)を20Barの圧力下でオートクレーブに入れた。反応を30℃で16時間加熱し、その後室温まで放冷した。反応混合物を氷(69.4当量)上でクエンチし、DCM(13.3体積)で洗浄した。合わせた氷/DCM反応混合物を、25%炭酸水素カリウム溶液(13.3体積)の添加によって塩基性にした。層を分離し、さらにDCM(3×6.7体積)で抽出した。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。生成物を蒸留(沸点112℃~114℃)により単離し、典型的な収率が70%~80%の化合物(1a)を得た。収率は1000グラムスケールで67%であった。無色の液体である生成物の品質と純度を確保するために、2回目の蒸留を行った(94%の回収率)。GC分析(DCMを除く)から、目的のトランス異性体生成物(1a)が97.4%であり、シス異性体が1.1%であることが示された。GC純度:96.82%。
HNMR(400MHz,CDCl)ppm:4.60(quin,J=7.20Hz,1H),3.16-3.30(m,1H),2.84-2.93(m,2H),2.74-2.67(m,2H).19FNMR(376.46MHz,CDCl):2.60(s).
【0114】
前述の本発明は、明確化及び理解を目的として、例示及び実施例によってある程度詳細に記載されている。当業者は、添付の特許請求の範囲の範囲内で変更形態及び修正形態が行われ得ることを理解している。したがって、上の記述は、例示であることが意図され、限定的なものではないことを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、上記の記載を参照して決定されるべきではなく、代わりに、以下の添付の特許請求の範囲を、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に参照して決定されるべきである。
【0115】
本明細書に引用された全ての特許、特許出願及び刊行物は、それぞれの個々の特許、特許出願又は刊行物がそのように個別に示されているのと同じ程度にあらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】