(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】植物ベースのチーズ製品
(51)【国際特許分類】
A23C 20/02 20210101AFI20240801BHJP
A23C 19/04 20060101ALI20240801BHJP
A23C 19/055 20060101ALI20240801BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20240801BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20240801BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20240801BHJP
A23L 29/25 20160101ALI20240801BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20240801BHJP
【FI】
A23C20/02
A23C19/04
A23C19/055
A23L29/269
A23L29/256
A23L29/244
A23L29/25
A23L29/238
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509387
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 IB2022057687
(87)【国際公開番号】W WO2023021428
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523214982
【氏名又は名称】マッセイ・ベンチャーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,デバスリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イーラン
(72)【発明者】
【氏名】ナグ,アラップ
(72)【発明者】
【氏名】アセヴェド・ファニ,アレハンドラ
(72)【発明者】
【氏名】デーヴ,アナン
(72)【発明者】
【氏名】シング,ハーレンドラ
(57)【要約】
約5重量%~約40重量%のタンパク質を含む植物ベースのチーズ製品、および前記チーズ製品の製造方法に関する。本発明の植物ベースのチーズ製品は、デイリーチーズに類似した食感および官能的特性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約5重量%~約40重量%のタンパク質を含む植物ベースのチーズ製品の製造方法であって、
(a)植物性タンパク質源と、前記植物性タンパク質源に対して最大約10重量%の脂質とを含む組成物を提供するステップであって、
前記植物性タンパク質源は、
(i)エンドウタンパク質および/または大豆タンパク質の少なくとも約5重量%と、
(ii)少なくとも約40重量%の総タンパク質と、を含む、ステップと、
(b)前記組成物を高水分押出に供して、半固体のテキスチャー化塊を形成するステップと、
(c)押し出されたテキスチャー化半固体塊を細断して、粒状材料を提供するステップと、
(d)前記粒状材料を前記脂質と混合し、前記粒状材料を1種以上のプロテアーゼまたはタンパク質架橋酵素と共にインキュベートするステップと、
(e)ステップ(d)で形成された前記混合物を処理して、酵素を不活性化するステップと、
(f)ステップ(e)で形成された前記混合物を冷却して、植物ベースのチーズ製品を提供するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記植物性タンパク質源は、少なくとも約6、7、8、9または10重量%のエンドウタンパク質および/または大豆タンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物性タンパク質源は、少なくとも約42、44、46、68、または50重量%のタンパク質を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記植物性タンパク質は、エンドウタンパク質、ソラマメタンパク質、大豆タンパク質、緑豆タンパク質、グルテンタンパク質、カシュータンパク質、カボチャシードタンパク質、ジャガイモタンパク質、ひよこ豆タンパク質、レンズ豆タンパク質、米タンパク質、トウモロコシタンパク質、ヒマワリ種タンパク質、トマト種子タンパク質、ポンガミアタンパク質、キャノーラタンパク質、ピーナッツタンパク質、アーモンドタンパク質、キノコタンパク質、キノアタンパク質、ルピナスタンパク質,オーツ麦タンパク質、アマランスタンパク質、亜麻仁タンパク質、チアシードタンパク質、綿実タンパク質、そばタンパク質、ソルガムタンパク質、大麦タンパク質、クレソンタンパク質、ペニークレスタンパク質、ヘンプシードタンパク質、アワプタンパク質、テフタンパク質、スペルト小麦タンパク質、アルファルファタンパク質、ヘーゼルナッツタンパク質、ソラマメタンパク質、小豆タンパク質、カネリーニタンパク質、草タンパク質、黒豆タンパク質、ブラックグラムタンパク質、およびこれらの混合物、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記植物性タンパク質源は、植物性タンパク質単離物、植物性タンパク質濃縮物、または植物性タンパク質粉末の1種以上を含む植物性タンパク質粉末またはそれらの混合物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記植物性タンパク質源は、エンドウタンパク質濃縮物または単離物、ソラマメタンパク質濃縮物または単離物、大豆タンパク質濃縮物または単離物、緑豆タンパク質濃縮物または単離物、ヘンプタンパク質濃縮物、グルテンタンパク質濃縮物または単離物、またはそれらの混合物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記植物性タンパク質源は、エンドウタンパク質濃縮物、ソラマメタンパク質濃縮物、大豆タンパク質濃縮物、またはそれらの混合物を含み、好ましくは、エンドウタンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質の比率が約50:40:10である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(A)の組成物は、乾燥基準で、タンパク質混合物100gあたり約0.1重量%~約10重量%の脂質、好ましくは、キャノーラ油またはヒマワリ種子油などの植物油、または植物油混合物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(c)で製造された前記粒状材料は、最終製品の重量に対して約5、7.5、10、12.5、15、20、または30~約40重量%の脂質と混合される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記脂質は、キャノーラ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、大豆油、アボガド油、オリーブ油、コーン油、亜麻仁油、アーモンド油、ココナッツ油、マーガリ、トゥクマフルーツバター、硬化油、非硬化硬質油、ピーナッツ油、ピーカン油、綿実油、藻類油、ヤシ油、パームオレイン、パーム核油、米ぬか油、小麦胚芽油、月見草油、胡麻油、バタ油、ココアバター、ブドウ種子油、菜種油、マスタード油、ヘーゼルナッツ油、ブラジルナッツ油、アマニ油、アサイーパーム油、パッションフルーツ油、クルミ油、シア脂、シアステリン、シアオレイン、パーム核ステアリン、パーム核オレイン 、およびこれらの混合物から選択され、好ましくは、キャノーラ油、米ぬか油、ココナッツ油、ヤシ油、マーガリ、またはヒマワリ油である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粒状材料を微生物プロテアーゼ(好ましくは、バチルス種の発酵生成物、またはアスペルギルス属プロテアーゼ)、またはタンパク質架橋酵素(好ましくは、トランスグルタミナーゼ、またはチロシナーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ、リシルオキシダーゼ/アミンオキシダーゼまたはゲニピンなどのオキシドレダクターゼ)と共にインキュベートする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記インキュベート混合物を約80℃~約100℃で5分間(好ましくは約95℃で5分間)加熱して酵素を不活性化するか、または前記インキュベート混合物のpHを下げて酵素を不活性化する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記押し出されたテキスチャー化半固体塊を高水分押出に供して、細断した後、1種以上の増粘剤および/またはゲル化剤を粒状材料に添加する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記増粘剤および/またはゲル化剤は、デンプン、微生物ガムおよび植物ガム(好ましくは、アルギニン、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラギーナンガム、タラガム、アラビアガム、こんにゃく、キサンタンガム、およびこれらの混合物)から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(d)において、酵素インキュベート後、酵素の不活性化前に、前記粒状材料に乳酸を添加する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
約5重量%~約40重量%、好ましくは約7、8、9、10、11、12重量%~約35重量%のタンパク質を含む、植物ベースのチーズ製品。
【請求項17】
加熱溶融可能なチーズ製品である、請求項16に記載の植物ベースのチーズ製品。
【請求項18】
シュライバーテストを用いて測定された約10~約40%、好ましくは約15~約30%、より好ましくは約20~30%の加熱溶融性を有する、請求項16に記載の植物ベースのチーズ製品。
【請求項19】
約15~約33重量%のタンパク質を含む、請求項16~18のいずれか1項に記載の植物ベースのチーズ製品。
【請求項20】
非加熱溶融可能なチーズ製品である、請求項16に記載の植物ベースのチーズ製品。
【請求項21】
約18~約25重量%のタンパク質を含む、請求項16に記載の植物ベースのチーズ製品。
【請求項22】
エンドウタンパク質濃縮物、ソラマメタンパク質濃縮物および大豆タンパク質濃縮物を含み、好ましくは、エンドウタンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質の比率が約50:40:10である、請求項16~21のいずれか1項に記載の植物ベースのチーズ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、植物ベースのチーズ製品および前記チーズ製品を製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
チーズは人気のある食品であり、その栄養価、調理の多様性、味から多くの文化で愛されている。しかし、牛乳中の飽和脂肪やホルモン、動物福祉の問題、酪農による環境への悪影響などの消費者の懸念により、植物ベースの代替品に対する世界的な需要が高まっている。
【0003】
残念ながら、乳製品を含まないチーズ代替品は、乳製品ベースのチーズの味、テキスチャー、栄養価を再現するのが難しく、多くの状況において不十分な代替品しか提供できない。
【0004】
チーズ製品の機能性は、そのミクロ構造およびマクロ構造による影響を受け、さらにチーズ製品の組成や製造時の加工条件にも影響を受ける。チーズ製品には、塗りやすさ、砕けやすさ、スライスしやすさ、細断しやすさなどの機能的特性が求められる場合がある。チーズ製品は、加熱または調理すると、加熱溶融性、流動性、褐変性、脱油性および/または伸縮性を示すことがある(Masotti et. al.,2018)。
【0005】
残念ながら、カゼインを植物性タンパク質に置き換えると、テキスチャーや機能性が損なわれたチーズ製品が得られる傾向がある(Fox et al., 2017)。一般的に、カゼインを20%超の植物性タンパク質に置換すると、弾力性の欠如、硬さの低下、加熱溶融性の低下、伸縮性の低下などのテキスチャーの問題が生じる(Chavan & Jana, 2007; Guinee, 2016; Masotti et. al.,2018)。
【0006】
乳製品ベースのチーズの機能性は、テキスチャー、風味、硬さ、加熱溶融性、伸縮性などの点で乳タンパク質の機能性を模倣するためにデンプン、ガムおよび/またはゲル化剤を含めることによって、植物ベースのチーズ製品にある程度一致させることができる。
【0007】
しかし、得られた製品はタンパク質含有量が非常に低いため、通常約15~30重量%のタンパク質含有量を有する乳製品ベースのチーズよりも栄養的に劣る。さらに、タンパク質の機能を模倣した賦形剤にもかかわらず、植物ベースのチーズは一般に、本物のデイリーチーズに慣れている消費者が期待する食感および/または感覚特性を満たすには遠く及ばない。
【0008】
そのため、各メーカーは、標準的な乳製品ベースのチーズと同等のタンパク質含有量に加え、必要とされるチーズのような機能性を備えた植物ベースのチーズ製品の製造に取り組んでいる。
【0009】
そのため、本発明の目的は、本技術分野における少なくともいくつかの欠点を克服する、および/または公衆のために有用な選択肢を提供する、高タンパク質植物ベースのチーズ製品を製造するプロセスを提供することである。
【0010】
本明細書では、通常、発明の特徴を説明するための背景を提供するために、特許明細書およびその他の書類を含む外部情報源が参照されている。別段の記載がない限り、いかなる国・地域においても、そのような情報源への引用は、そのような情報源が技術水準またはその分野の公知技術の一部を構成することを認めるものと解釈してはならない。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、乳製品ベースのチーズと同様の特性を有する高タンパク質植物ベースのチーズ製品の製造方法を開発した。
【0012】
一態様において、本発明は、約5重量%~約40重量%のタンパク質を含む植物ベースのチーズ製品の製造方法であって、
(a)植物性タンパク質源と、前記植物性タンパク質源に対して最大約10重量%の脂質とを含む組成物を提供するステップであって、
前記植物性タンパク質源は、
(i)少なくとも約5重量%のエンドウタンパク質および/または大豆タンパク質と、
(ii)少なくとも約40重量%の総タンパク質と、を含む、ステップと、
(b)前記組成物を高水分押出に供して、半固体のテキスチャー化塊を形成するステップと、
(c)押し出されたテキスチャー化半固体塊を細断して、粒状材料を提供するステップと、
(d)前記粒状材料を前記脂質と混合し、前記粒状材料を1種以上のプロテアーゼまたはタンパク質架橋酵素と共にインキュベートするステップと、
(e)ステップ(d)で形成された混合物を処理して、酵素を不活性化するステップと、
(f)ステップ(e)で形成された混合物を冷却して、植物ベースのチーズ製品を提供するステップと、を含む、方法を提供する。
【0013】
一実施形態では、前記植物性タンパク質源は、少なくとも約6、7、8、9または10重量%のエンドウタンパク質および/または大豆タンパク質を含む。一実施形態では、前記植物性タンパク質源は、少なくとも約42、44、46、68、または50重量%のタンパク質を含む。一実施形態では、本発明は、約6、7、8、9または10重量%~約40重量%のタンパク質を含む植物ベースのチーズ製品の製造方法を提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は、本発明の方法により製造された植物ベースのチーズ製品を提供する。別の態様において、本発明は、約5、6、7、8、9または10重量%~約40重量%のタンパク質を含む植物ベースのチーズ製品を提供する。別の態様において、本発明は、約10~40重量%のタンパク質を含む植物ベースのチーズ製品を提供する。
【0015】
上述した本発明の異なる態様の様々な実施形態も、以下の発明を実施するための形態に記載されているが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0016】
本発明の他の態様は、例としてのみ与えられる以下の説明から明らかにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】Riddetチーズ製品(実施例7)および対照チーズ製品(実施例8)を加熱したときの温度による貯蔵弾性率G’(Pa)の変化を示すグラフである。
【
図2】Riddetチーズ製品(実施例7)および一連の市販チーズ製品を加熱したときの温度による貯蔵弾性率G’(Pa)の変化を示すグラフである。
【
図3】A:Riddetチーズ製品(実施例7)、B:市販乳製品プロセスチーズスライス、C:ビーガンプロセスチーズスライス(低タンパク質または無タンパク質)を示す一連の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
5.1定義と略語
本明細書で使用されるように、用語「含む」とは、「少なくとも部分的に含む」を意味する。本明細書および各請求項における各「包含」という用語を解釈するときに、その項またはその項目の前面にあるもの以外の特徴も存在することがある。「含む(comprise)」と「含む(comprises)」などの関連用語は、同じ解釈で解釈される。
【0019】
本明細書で使用される用語「約」とは、最終的な結果に有意な変化がないように修正された用語の合理的な偏りの量を意味する。例えば、ある値に適用する場合、この用語は、その値の+/-10%の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0020】
本明細書で使用する「加熱溶融可能なチーズ」という用語は、加熱すると融解するタイプのチーズを指す。レンネット凝固チーズには、熱によって分解されるゲル状のタンパク質マトリックスが含まれている。タンパク質の結合が十分に切断されると、チーズは固体から粘稠な液体に変わる。柔らかく水分の多いチーズは通常約55℃(131°F)で融解するが、パルメザンチーズなどのハードで水分の少ないチーズは、約82℃(180°F)に達するまで固形のままであることがよくある。加熱溶融可能なチーズの例としては、チェダー(Cheddar)、グリュイエール(Gruyere)、プロヴォローネ(Provolone)、モッツァレラ(Mozzarella)、パルメザン(Parmesan)、フォンティーナ(Fontina)、アジアーゴ(Asiago)、タレッジョ(Taleggio)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本明細書で使用される「非加熱溶融可能なチーズ」という用語は、加熱しても融解しないチーズのことである。ハルーミ、パニール、一部のホエイチーズ、および多くの種類の新鮮な哺乳動物の乳(ヤギ、羊、バッファロー、ヤクなど)チーズを含む酸固定チーズは、高温でも無傷のまま残るタンパク質構造を持っている。これらのチーズは調理すると水分が蒸発して硬くなる。非加熱溶融可能なチーズの例としては、パニール、フェタ、マスカルポーネ、クオーク、リコッタ、カッテージチーズ、ハルーミ、一部のホエイチーズ、および多くの種類の新鮮な哺乳動物の乳チーズが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
植物ベースのチーズ製品に関して本明細書で使用される「テキスチャー化された」という用語は、異なる供給源からのタンパク質の混合物の球状非晶質粒子を、架橋結合および架橋融合タンパク質分子を含む濃縮された塊に変化させるように製品が処理されていることを意味する。
【0023】
本明細書で開示されている数値範囲(例えば、1~10)の参照は、この範囲内のすべての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9および10)およびこの範囲内の任意の有理数範囲(例えば、2~8、1.5~5.5および3.1~4.7)をも含むので、本明細書で明示的に開示されているすべての範囲のすべてのサブ範囲は、本明細書で明示的に開示されている。これらは特定の意図の一例にすぎず、列挙された最低値と最高値との間の可能なすべての数値の組み合わせは、同様の方法で本明細書に明示的に記載されているものとみなされるべきである。
【0024】
範囲、例えば、温度範囲、時間範囲、または成分範囲が本明細書で与えられているときはいつでも、すべての中間範囲およびサブ範囲、ならびに与えられた範囲に含まれるすべての単一値は、本開示に含まれることが意図されている。本開示および特許請求の範囲において、「および/または」は、追加的または代替的なものを表す。また、単数形での用語の使用には複数形も含まれる。
【0025】
4.2本発明のプロセス
一態様において、本発明は、約5重量%~約40重量%のタンパク質を含む植物ベースのチーズ製品の製造方法であって、
(a)植物性タンパク質源と、前記植物性タンパク質源に対して最大約10重量%の脂質とを含む組成物を提供するステップであって、
植物性タンパク質源は、
(i)少なくとも約5重量%のエンドウタンパク質および/または大豆タンパク質と、
(ii)少なくとも約40重量%の総タンパク質と、を含む、ステップと、
(b)前記組成物を高水分押出に供して、半固体のテキスチャー化塊を形成するステップと、
(c)押し出されたテキスチャー化半固体塊を細断して、粒状材料を提供するステップと、
(d)前記粒状材料を前記脂質と混合し、前記粒状材料を1種以上のプロテアーゼまたはタンパク質架橋酵素と共にインキュベートするステップと、
(e)ステップ(d)で形成された混合物を処理して、酵素を不活性化するステップと、
(f)ステップ(e)で形成された混合物を冷却して、植物ベースのチーズ製品を提供するステップと、を含む、方法を提供する。
【0026】
本発明のプロセスは、まず、高水分押出成形を使用して、植物性タンパク質源と任意の脂質とを組み合わせる。
【0027】
本発明のプロセスでは、植物性タンパク質源の少なくとも約5重量%(乾燥基準)はエンドウタンパクおよび/または大豆タンパク質を含む。一実施形態では、植物性タンパク質源は、少なくとも約6、7、8、9または10重量%のエンドウタンパク質および/または大豆タンパク質を含む。植物性タンパク質源には、通常、他の植物性タンパク質も含まれる。植物性タンパク質源は、炭水化物および/または脂質を含むこともできるが、(乾燥基準)合計少なくとも約40重量%のタンパク質を含まなければならない。したがって、植物性タンパク質源がエンドウタンパク質10重量%および大豆タンパク質5重量%を含む場合、総タンパク質含有量が乾燥基準で40重量%を超え、好ましくは50重量%を超えるように、他の植物性タンパク質も含まなければならない。
【0028】
一実施形態では、植物性タンパク質は、エンドウタンパク質、ソラマメタンパク質、大豆タンパク質、緑豆タンパク質、グルテンタンパク質、カシュータンパク質、カボチャシードタンパク質、ジャガイモタンパク質、ひよこ豆タンパク質、レンズ豆タンパク質、米タンパク質、トウモロコシタンパク質、ヒマワリ種タンパク質、トマト種子タンパク質、ポンガミアタンパク質、キャノーラタンパク質、ピーナッツタンパク質、アーモンドタンパク質、キノコタンパク質、キノアタンパク質、ルピナスタンパク質,オーツ麦タンパク質、アマランスタンパク質、亜麻仁タンパク質、チアシードタンパク質、綿実タンパク質、そばタンパク質、ソルガムタンパク質、大麦タンパク質、クレソンタンパク質、ペニークレスタンパク質、ヘンプシードタンパク質、アワプタンパク質、テフタンパク質、スペルト小麦タンパク質、アルファルファタンパク質、ヘーゼルナッツタンパク質、ソラマメタンパク質、小豆タンパク質、カネリーニタンパク質、草タンパク質、黒豆タンパク質、ブラックグラムタンパク質、およびこれらの混合物から選択される。
【0029】
一実施形態では、植物性タンパク質源(植物性タンパク質ソースとも呼ばれる)は、植物性タンパク質粉末またはその混合物を含む。植物タンパク質粉末には、植物タンパク質分離物、植物タンパク質濃縮物、および植物タンパク質粉末が含まれる。植物性タンパク質単離物は通常約80%のタンパク質を含むが、植物性タンパク質濃縮物はタンパク質濃度が低い(50~80%)。穀物、豆類、レンズ豆の粉末はタンパク質濃度が低く、炭水化物や油を含んでいる場合もある。
【0030】
植物性タンパク質源は、植物性タンパク質源のタンパク質含有量が少なくとも約40重量%、好ましくは約50重量%である限り、タンパク質単離物および/または濃縮物と低濃度の植物性タンパク質粉末との混合物を含んでもよい。
【0031】
また、未乾燥タンパク質抽出物および濃縮物、植物材料スラリー、または元のタンパク質源など、非粉末タンパク質源、例えばインゲン豆を含むこともできる。植物性タンパク質源のタンパク質含有量は、常に乾燥基準で計算される。
【0032】
一実施形態では、植物性タンパク質源は、エンドウタンパク質濃縮物または単離物、ソラマメタンパク質濃縮物または単離物、大豆タンパク質濃縮物または単離物、緑豆タンパク質濃縮物または単離物、ヘンプタンパク質濃縮物、グルテンタンパク質濃縮物または単離物、またはそれらの混合物の1種または複数種を含む。
【0033】
一実施形態では、植物性タンパク質源は、カシューナッツ、カボチャの種子、ジャガイモ、ひよこ豆、レンズ豆、ヒマワリ種子、ピーナッツ、アーモンドおよびヘーゼルナッツのタンパク質粉末の1種または複数種を含む。
【0034】
一実施形態では、植物性タンパク質源は、エンドウタンパク質濃縮物、ソラマメタンパク質濃縮物、大豆タンパク質濃縮物、緑豆タンパク質濃縮物、グルテンタンパク質濃縮物、またはそれらの混合物を含む。
【0035】
一実施形態では、植物性タンパク質源は、約2、5、7、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または97.5~約100重量%の大豆タンパク質粉末を含む。一実施形態では、植物性タンパク質は、約2、5、7、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または97.5~約100重量%のエンドウタンパク質粉末含む。
【0036】
一実施形態では、植物性タンパク質源は、エンドウタンパク質濃縮物、ソラマメタンパク質濃縮物、大豆タンパク質濃縮物、またはそれらの混合物を含むか、または実質的に含む。
【0037】
一実施形態では、植物性タンパク質源は、約50:40:10エンドウタンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質を含むか、または実質的に含む。
【0038】
一実施形態では、植物性タンパク質源は、約50重量%のエンドウマメタンパク質濃縮物、約40重量%のソラマメタンパク質濃縮物、および約10重量%の大豆タンパク質濃縮物を含むか、または実質的に含む。
【0039】
植物性タンパク質源を含む組成物は、さらに最大約10重量%の脂質も含み得る。一実施形態では、脂質は、植物油または植物油の混合物である。
【0040】
脂質はまた、使用前に溶解されることを条件として、ココナッツ油、シアバター、カカオバターおよび硬化油などの1つまたは複数の脂肪を含んでもよい。
【0041】
適切な脂質の例としては、キャノーラ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、大豆油、アボガド油、オリーブ油、コーン油、亜麻仁油、アーモンド油、ココナッツ油、ピーナッツ油、ピーカン油、綿実油、藻類油、ヤシ油、パームオレイン、パーム核油、ツクマ果実油、米ぬか油、小麦胚芽油、月見草油、胡麻油、バタ油、ココアバター、ブドウ種子油、菜種油、マスタード油、ヘーゼルナッツ油、ブラジルナッツ油、アマニ油、アサイーパーム油、パッションフルーツ油、クルミ油、シア脂、シアステリン、シアオレイン、パーム核ステアリン、パーム核オレイン、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
一実施形態では、脂質はキャノーラ油またはヒマワリ油である。
【0043】
脂質は植物性タンパク質源を潤滑し、押出プロセスに寄与する。
【0044】
一実施形態では、ステップ(b)において、最大約10重量%、好ましくは約1~約8重量%、より好ましくは約3~約7重量%、最も好ましくは最大約5重量%の脂質を、植物性タンパク質源と共に押し出す。脂質5重量%とは、乾燥基準でタンパク質混合物100gあたり5gを指す。
【0045】
一実施形態では、ステップ(a)において、塩も押出混合物に添加される。必要な塩量は好みによって決まる。一実施形態では、塩は約0.1~約6重量%、好ましくは約4重量%添加される。
【0046】
ステップ(b)では、植物性タンパク質源および任意の脂質を含む組成物を高水分押出に供して半固体のテキスチャー化塊を形成する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「高水分押出」という用語および「押出」などの関連用語は、乾燥した食品成分を混合し、水和し、加熱し、せん断し、圧力をかけ、調理して、食品成分の混合物とは異なる食感特性を有する食品を製造する連続的な熱機械的プロセスを意味する。
【0048】
本プロセスの高水分押出ステップは、乳製品ベースのチーズの製造における凝固ステップを置き換える。後者は一般的に、ラクターゼを用いることによって達成される。レンネット凝固ステップでは、乳製品タンパク質(主にカゼイン)の連続的な架橋塊が生成されるが、これは植物タンパク質を使用して達成することは不可能である。
【0049】
しかし、本プロセスでは、押出ステップで植物性タンパク質を混合して融合させ、異なる由来のタンパク質の球状の非晶質粒子からなるテキスチャー化塊を形成し、架橋融合したタンパク質分子を含む濃縮物質に混合する。
【0050】
押出は高水分押出機で行われる。高水分押出機は、通常、固定されたバレル内にしっかりと取り付けられた大型の回転スクリュー(または複数のスクリュー)である。プロセスの開始時に蒸気が噴射され、スクリューの回転によって生じる力により、さらなる摩擦と熱が発生する。回転スクリューによって加えられるせん断力は、植物性タンパク質源と任意の脂質とをブレンドして融合させ、半固体のテキスチャー化塊を提供する。
【0051】
最適なフィード水分(押出機に加えらえっる水の相対比率)は、タンパク質源の性質によって異なる。フィードの水分が低すぎると、押し出された植物性タンパク質材料が硬すぎて、押出機のバレルを詰まらせる可能性がある。フィードの水分が高すぎると、押し出された植物性タンパク質の塊は必要な物理的構造を持たず、ペースト状の塊になる。当業者であれば、押し出される組成物に応じて供給水分をどのように変化させるかを知ることができる。
【0052】
一実施形態では、ステップ(b)におけるフィード水分は、タンパク質源に対して約40~80重量%、好ましくは約50~70重量%、より好ましくは約54~62重量%である。
【0053】
一実施形態では、押出機は二軸押出機である。一実施形態では、スクリュー速度は約300~500rpmである。
【0054】
ステップ(c)では、押し出された半固体のテキスチャー化塊を細断して粒状材料を提供する。植物ベースのチーズ製品の均一なテキスチャーを実現するためには、細断が不可欠である。また、ステップ(d)でインキュベートされた酵素がすべての材料と接触することも確保される。
【0055】
押し出された半固体のテキスチャー化塊は、半固体材料を取り扱うことができる任意の適切なサイズ縮小装置を用いて細断することができる。適切な装置の例としては、湿式粉砕機、フードプロセッサー、および高速チョッピングブレードを使用する他の装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
一実施形態では、粒状材料の平均粒径は、直径が約100m~約6mm、好ましくは直径が約100m~約3mm、より好ましくは直径が約1.5mmである。平均粒径は、スクリーンサイズの異なる複数のふるいを用いて測定することができる。
ステップ(d)では、粒状材料を脂質と混合し、1種以上のプロテアーゼまたはタンパク質架橋酵素をインキュベートする。
【0057】
一実施形態では、粒状材料を脂質と混合し、次に1種以上のプロテアーゼまたはタンパク質架橋酵素とともにインキュベートする。別の実施形態では、粒状材料は、1種以上のプロテアーゼまたはタンパク質架橋酵素とともにインキュベートされた後、脂質と混合される。
【0058】
一実施形態では、最終生成物の重量に対して約5、7.5、10、12.5、15、20、または30~約40重量%の脂質が添加される。
【0059】
一実施形態では、脂質は、約10~約30重量%添加される。
【0060】
脂質は、純粋な形態および乳化された形態を含む任意の適切な形態であってもよい。一実施形態では、粒状材料は乳化脂質と混合される。乳化脂質は、レシチン、モノグリセリドおよびジグリセリド、ポリソルベート、アラビアガム、および植物性タンパク質を含むがこれらに限定されない任意の食用乳化剤、ならびにクエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、オルトリン酸二ナトリウム塩などの乳化塩を含むことができ、一実施形態では、乳化脂質は、脂質、植物性タンパク質および水を含む。
【0061】
適切な脂質の例としては、キャノーラ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、大豆油、アボガド油、オリーブ油、コーン油、亜麻仁油、アーモンド油、ココナッツ油、マーガリ、トゥクマフルーツバター、硬化油、非硬化硬質油、乳脂肪代替品、ピーナッツ油、ピーカン油、綿実油、藻類油、ヤシ油、パームオレイン、パーム核油、米ぬか油、小麦胚芽油、月見草油、胡麻油、バタ油、ココアバター、ブドウ種子油、菜種油、マスタード油、ヘーゼルナッツ油、ブラジルナッツ油、アマニ油、アサイーパーム油、パッションフルーツ油、クルミ油、シア脂、シアステリン、シアオレイン、パーム核ステアリン、パーム核オレイン、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
一実施形態では、脂質は、キャノーラ油、米ぬか油、ココナッツ油、大豆油、またはヒマワリ油などの植物油である。
【0063】
適切な脂質の選択は、必要とされる植物ベースのチーズ製品の種類によって異なる。ココナッツ油などの飽和脂肪酸を豊富に含む脂質は、製品に固さを与え、構造の構築に役立つ。このような脂質は、ハードまたはセミハードチーズ製品の製造に好ましい。ヒマワリ油やキャノーラ油などの多価不飽和脂肪酸を多く含む脂質は、クリームチーズに似たソフトチーズ製品に適している。
【0064】
一実施形態では、脂質は、ココナッツ油、シアバター、パーム油、硬化油、マーガリン、非硬化硬油、および室温で固体である他の脂質から選択される。一実施形態では、脂質は、ココナッツ油および/またはパーム油である。
【0065】
一実施形態では、脂質は、ヒマワリ油およびキャノーラ油から選択される。
【0066】
植物性タンパク質ベースのテキスチャー化粒状塊は、非動物由来の乳タンパク質(例えば、組み換え技術および遺伝子工学により植物、微生物および酵母から産生されるカゼインおよびホエータンパク質)と混合することもでき、動物ベースの乳製品カゼインを使用して得られる共通の機能を有する、より本物のデイリーチーズに近い植物ベースのチーズ製品を製造することができる。非動物由来の乳タンパク質は、押出成形の前に、代替的にまたは追加的に植物性タンパク質由来のタンパク質と混合されてもよい。
【0067】
ステップ(d)で使用される酵素の種類は、製造される植物ベースのチーズ製品の種類によって異なる。
【0068】
加熱溶融性および展延性のような特定の食感特性を得るために、粒状材料を1種以上のプロテアーゼと共にインキュベートする。
【0069】
植物ベースまたは微生物ベースの任意のプロテアーゼを使用できる。本発明のプロセスに適したプロテアーゼには、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、ジンギバイン、キモシン、トリプシンおよびキモトリプシンが含まれるが、これらに限定されない。当業者であれば、植物ベースのチーズ製品に望まれる特性に応じて、適切なプロテアーゼを選択することができる。
【0070】
プロテアーゼが異なれば、使用量や最適温度も異なる。一般に、最適な条件を得るにはメーカーの指示に従う。
【0071】
一実施形態では、酵素は、最終生成物100g当たり0.1g~2g、約20~約70℃の温度でインキュベートされた微生物プロテアーゼである。
【0072】
必要に応じて、粒状材料と酵素とのインキュベート混合物を、例えば生地ブレンダー中でさらに混合することができる。
【0073】
一実施形態では、微生物プロテアーゼ約1gのタンパク質100gを含む粒状材料を20℃で添加し、混合物を約50℃で約30分間、ブレンダー中で断続的に混合した後、約2℃で約1.5時間放置する。
【0074】
一実施形態では、酵素は植物ベースのプロテアーゼである。一実施形態では、酵素は、微生物プロテアーゼであり、好ましくはバチルス属の発酵物、またはアスペルギルス属のプロテアーゼである。
【0075】
植物ベースの非加熱溶融可能なチーズ製品(ハルーミやパニールに類似)の場合、顆粒材料は1つ以上のタンパク質架橋酵素、たとえば、トランスグルタミナーゼ、またはチロシナーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ、リシルオキシダーゼ/アミンオキシダーゼまたはゲニピンなどの酸化還元酵素とともにインキュベートされる。
トランスグルタミナーゼなどのタンパク質架橋酵素は、粒状ペーストにゴム状の構造を与える。一実施形態では、約0.5~約3gの微生物トランスグルタミナーゼを、約4~60℃、好ましくは40℃で、タンパク質100gを含む粒状材料に約1~5時間添加する。
【0076】
インキュベート混合物に追加の水を加えて、特に架橋酵素を使用する場合に、製品に所望のテキスチャーを得ることができる。
【0077】
ステップ(d)でのインキュベートに続いて、混合物は、ステップ(e)で酵素を不活化するように処理される。一実施形態では、インキュベート混合物を約80℃~約100℃で5分間(好ましくは約95℃で5分間)加熱して酵素を不活性化する。別の実施形態では、インキュベート混合物のpHを下げて酵素を不活性化する。
【0078】
得られた材料を冷却して、約5重量%~約40重量%のタンパク質を含む植物ベースのチーズ製品を提供する。一実施形態では、本発明の植物ベースのチーズ製品は、約10重量%~約40重量%のタンパク質を含む。
【0079】
一実施形態では、植物ベースのチーズ製品は、例えば、熱いまたは温かい酵素不活化混合物を型に注ぎ、型の形状で冷却させることによって、所望の形状に成形される。
【0080】
上述したように、本発明のプロセスは、一連の植物ベースのチーズ製品を製造するために使用することができる。酵素(プロテアーゼまたはタンパク質架橋)の選択により、製品の融解特性が決まる。ステップ(d)で添加される脂質の選択と量は、製品の硬さと脂肪含有量に影響する。
【0081】
増粘剤および/またはゲル化剤を任意に添加すると、製品の構造特性が変化するだけでなく、脂肪やタンパク質の含有量が低下する可能性がある。
【0082】
ゲル化剤は、高度な物理的架橋を有する三次元構造ネットワークを提供する。増粘剤は、液体の粘度を増加させ、また、他の成分の懸濁を改善したり、エマルジョンを安定化させたりすることができる。多くの増粘剤は、高濃度ではゲル化剤としても機能する。
【0083】
増粘剤および/またはゲル化剤は、典型的には親水コロイドおよび/またはタンパク質を含む。これらは通常、液相(通常は水)に溶解する粉末として、または予め溶解された液体の形態で提供される。
【0084】
本発明のプロセスに適した増粘剤および/またはゲル化剤の例としては、例えば、アルギニン、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラギーナン、タラガム、アラビアガム、コンニャク、キサンタンガム、小麦粉、デンプン(ジャガイモ、タピオカ、小麦、トウモロコシおよび米を含むがこれらに限定されない)、変性デンプン(化学的および酵素的に変性されたデンプンを含む)、マルトデキストリン、デキストリンおよびそれらの混合物などの微生物ガムおよび植物ガムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
ゲル化剤は、通常、乳製品ベースのプロセスチーズに似たスライス可能な製品を提供するために、溶融タイプの植物ベースのチーズ製品の製造時に添加される。増粘剤は通常、植物ベースのスプレッドチーズ製品の製造時に添加されまる。
【0086】
増粘剤および/またはゲル化剤は、高水分押出および押出されたテキスチャー化半固体塊の細断後のプロセスの任意の適切な段階で添加することができる。当業者であれば、特定の薬剤を添加すべき最良の時期および方法を理解するであろう。一実施形態では、本発明のプロセスは、1種以上の増粘剤および/またはゲル化剤を粒状材料に添加する。
【0087】
一実施形態では、最終製品に対して約0.1~3重量%の増粘剤および/またはゲル化剤が添加される。一実施形態では、約0.8~約1.3重量%の増粘剤および/またはゲル化剤(セミハード植物ベースのチーズ製品の場合)が添加される。一実施形態では、約1.3~約2.5重量%の増粘剤および/またはゲル化剤(プロセスチーズに類似したスライス可能な植物ベースのチーズ製品の場合)が添加される。
【0088】
一実施形態では、増粘剤および/またはゲル化剤は、ハイドロコロイド、好ましくは多糖類である。一実施形態では、増粘剤および/またはゲル化剤はカラギーナンである。一実施形態では、増粘剤および/またはゲル化剤は、デンプン(最終製品の1~25%の範囲)、好ましくは10~22重量%である。
【0089】
一実施形態では、増粘剤および/またはゲル化剤は、酵素インキュベートの前に添加される。一実施形態では、増粘剤および/またはゲル化剤は、酵素の不活性化前に酵素のインキュベート後に添加される。一実施形態では、増粘剤および/またはゲル化剤は、酵素を不活性化した後に添加される。
【0090】
保存剤、抗酸化剤、栄養剤、着色剤(アナトー、食用色素、ニンジンまたはカボチャの濃縮ジュース、カロテン、クルクミン、βカロテンおよび天然色素を含むがこれに限定されない)、乳化剤(クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、オルトリン酸二ナトリウム塩およびレシチンのような乳化塩、植物性タンパク質を含むがこれに限定されない)、および香味料は、ステップ(b)で最初の植物性タンパク質源および任意の脂質と混合すること、ステップ(d)で脂質を添加すること、または酵素インキュベート混合物に添加することを含む、本プロセスの任意の適切なステップにおいて添加されてもよい。熱に弱い成分は、酵素失活ステップ(e)の後に添加する必要がある。
【0091】
添加し得る栄養素としては、ビタミン類(例えば、ビタミンA、C、E、K、D、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、ビタミンB6、葉酸(ビタミンB9)および/またはビタミンB12およびこれらの混合物)、ミネラル類(例えば、カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩素、鉄、亜鉛、ヨウ素、セレン、銅およびこれらの混合物)、合成アミノ酸の各種形態(リジン、メチオニンおよびこれらの混合物を含むがこれらに限定されない)、食物繊維(イヌリン等の可溶性繊維を含むがこれらに限定されない)、食用塩(塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム等を含むがこれらに限定されない)が挙げられる。
【0092】
本発明のプロセスに適した香味料の例としては、塩、砂糖、スパイス、ハーブ、酵母エキス、味噌、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。また、ペプチド、アミノ酸、酪酸、ラウリン酸、カプリン酸等の遊離脂肪酸を含むチーズフレーバー剤(非乳製品)を添加してもよい。フレーバーマスキング剤は、植物ベースの豆のフレーバーをマスクするために使用することもできる。
【0093】
さまざまな食用酸を添加して、酸味を与え、チーズ製品のpHを下げることができる。食用酸の例としては、乳酸、クエン酸、ソルビン酸、酢、アスコルビン酸、レモン汁、濃縮リンゴ汁、乳酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
一実施形態では、乳酸は、本発明の植物ベースのチーズ製品の製造中に添加される。乳酸は、通常、水溶液の形態で提供される。一実施形態では、乳酸溶液は、最終生成物中の乳酸濃度が約0.2~約2.0重量%となるように添加される。一実施形態では、乳酸は、酵素インキュベートの後、酵素が不活性化される前に添加される。
【0095】
本発明のプロセスにより製造された植物ベースのチーズ製品は、乳製品系チーズの熟成と同様に(例えば、乳製品以外のスターターを添加することにより)熟成および/または微生物熟成することができる。熟成時間は、チーズ製品の種類と求められる風味プロファイルに応じて、数週間から数年まで異なる。
【0096】
4.3本発明の植物ベースのチーズ製品
一態様において、本発明は、約5重量%~約40重量%のタンパク質、好ましくは約7、8、10、12、15、18、20、22または25~約35重量%のタンパク質を含む植物ベースのチーズ製品を提供する。
【0097】
一実施形態では、植物ベースのチーズ製品は、加熱溶融可能なチーズ製品である。一実施形態では、植物ベースの加熱溶融可能なチーズ製品は、約15~約33重量%のタンパク質を含む。
【0098】
実施例1、2、3、5、6および7は、本発明の植物ベースの加熱溶融可能なチーズ製品を製造するプロセスを説明する。
【0099】
一実施形態では、植物ベースの加熱溶融可能なチーズ製品の加熱溶融性(シュライバーテストを使用して測定された)は、約10~約40%、好ましくは約15~約30%、より好ましくは約20~30%である。
【0100】
別の態様において、本発明は、約25~約35重量%のタンパク質粉末と、約15~約25重量%の脂質と、約40~約45重量%の水と、約0.5~約2.0重量%の乳酸とを含み、成分の総重量%が100以下である植物ベースのチーズ製品を提供する。
【0101】
一実施形態では、植物ベースのチーズ製品はソフト/セミソフト製品である。一実施形態では、植物ベースのチーズ製品は、加熱溶融可能なチーズ製品である。
【0102】
別の態様において、本発明は、約22~約33重量%のタンパク質粉末と、約13~約22重量%の脂質と、約45~約50重量%の水と、約0.5~約2.0重量%の乳酸とを含み、成分の総重量%が100以下である植物ベースのチーズ製品を提供する。
【0103】
一実施形態では、植物ベースのチーズ製品はセミハード製品である。一実施形態では、植物ベースのセミハードチーズ製品は、加熱溶融可能なチーズ製品である。
【0104】
別の態様において、本発明は、約14~約24重量%のタンパク質粉末と、約8~約16重量%の脂質と、約55~約70重量%の水と、約0.5~約2.0重量%の乳酸とを含み、成分の総重量%が100以下である植物ベースのチーズ製品を提供する。
【0105】
一実施形態では、植物ベースのチーズ製品はスライス可能な製品である。一実施形態では、植物ベースのスライス可能なチーズ製品は、加熱溶融可能なチーズ製品である。
【0106】
別の態様において、本発明は、約18~約30重量%のタンパク質粉末と、約10~約18重量%の脂質と、約55~約70重量%の水と、約0.5~約2.0重量%の乳酸とを含み、成分の総重量%が100以下である植物ベースのチーズ製品を提供する。
【0107】
一実施形態では、植物ベースのチーズ製品は、非動物源由来の乳タンパク質を含む。
【0108】
一実施形態では、植物ベースのチーズ製品は、非加熱溶融可能なチーズ製品である。
【0109】
一実施形態では、植物ベースの非加熱溶融可能なチーズ製品は、約18~約25重量%のタンパク質を含む。
【0110】
上記の態様において、一実施形態では、タンパク質粉末は、エンドウマメタンパク質濃縮物、ソラマメタンパク質濃縮物および大豆タンパク質濃縮物を含むか、または実質的に含む。一実施形態では、植物性タンパク質源は、約50:40:10のエンドウタンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質を含むか、または実質的に含む。
【0111】
実施例9は、本発明の植物ベースのとろけるチーズ製品を、同じ成分を用いて、しかし押出成形および酵素加水分解ステップを行わずに製造された同等のチーズ製品と比較する。その結果、本発明のプロセスは、優れた食感および物性を有するチーズ製品を製造することができる。理論に束縛されるものではないが、これらの特性は、製品のミクロ構造、すなわち、チーズの機能性(口当たり、加熱溶融性、テキスチャーなど)に重要なタンパク質マトリックス中の脂質の分布や形状、「チーズ」ネットワーク中のタンパク質の集合体やクラスター(同質または非同質)の分布を変化させるプロセスの特定のステップに起因すると考えられている。
【0112】
ミクロ構造分析により、本発明の植物ベースのチーズ製品が市販の植物ベースのチーズ製品とは構造的に異なることを実証している。後者では、脂質はデンプンとハイドロコロイドのマトリックス中に分布しており、そのタンパク質含有量が低いため、必要な機能を果たす。
【0113】
実施例10、および11では、本発明の植物ベースのチーズ製品は、選択された他の植物ベースのチーズ製品(ビーガンチーズ)および比較可能なデイリーチーズ(すなわち、ハード、セミソフト、非融解などなどの同じ基本タイプのチーズ)と比較される。その結果、本発明の植物ベースのチーズ製品は、同等の乳製品ベースのチーズと同様のスライス性、展延性、テキスチャー、風味、硬さ、加熱溶融性、伸縮性を有し、本発明の植物ベースのチーズ製品の「乳製品様」の機能的特性は、乳製品ベースのチーズと同等の官能的特性をもたらすことが明らかになった。
したがって、本発明のプロセスは、類似の植物ベースの製品に関連する欠点を有さず、タンパク質含有量、食感および官能的特性においてデイリーチーズに類似した植物ベースのチーズ製品を製造するために使用することができる。
【実施例】
【0114】
4.実施例
実施例1:ソフト/セミソフト植物ベースの加熱溶融可能なチーズ製品
次の表1の原材料を用いて、ソフト/セミソフトの植物ベースのチーズ製品を調製した。
【0115】
押出前に、タンパク質粉末とキャノーラ油と塩を混ぜ合わせた。
【0116】
すべての押出実験は、パイロットスケールの共回転噛み合い二軸押出機(Clextral BC-21、Firminy Cedex、フランス)を使用して実施された。動作パラメータは次のように設定された。スクリュー直径-25mm、スクリューの全長-700mm、スクリューのアスペクト比-28:1、バレル直径-26mm。押出機の先端に直径10/355mmの長い円筒形の冷却ダイが取り付けられている。スクリュープロファイルには(供給口から出口まで)は以下のものからなる。長さ50mm、ピッチ20mmの順方向スクリュー(100mm)2本;長さ50mm、ピッチ15mmの順方向スクリュー(150mm)3本;長さ50mm、ピッチ10mmの順方向スクリュー(100mm)2本;長さ50mm、ピッチ15mmの順方向スクリュー(50mm)1本;長さ25mm、ピッチ7mmの逆方向スクリュー(25mm)4本;長さ50mm、ピッチ15mmの順方向スクリュー(50mm)1本;長さ25mm、ピッチ7mmの順方向スクリュー(25mm)1本;長さ50mm、ピッチ7mmの順方向スクリュー(200mm)4本。バレルは、供給ゾーン(T1)と6つの温度制御ゾーン(T2~T7)とに分割されており、蒸気により加熱され、流水パイプ(-25℃)により冷却される。
【0117】
重量フィーダー(K-ML-D5-KT20およびLWF・D5、Coperion K-Tron、スイス)を使用して2.4~3.0kg/hの速度で押出機に乾燥原材料を供給した
【0118】
水を入口ポートを通して押出機に3.0kg/hの一定流量で注入し、最終製品の水分含有量を約50~55%w/w(湿潤基準)にした。
【0119】
スクリュー速度を400rpmとし、型に供給する7つのゾーンのうち、バレル温度を20℃、50℃、80℃、110℃、150℃、150℃と設定した。押し出された半固体のテキスチャー化塊を、高速チョッピングブレードで細断し、粒状材料にした。
【0120】
ココナッツ油(約60℃に加熱)と微生物プロテアーゼ(オークランド、エイボンデールのZYMUS International LtdからのZymPro Neutral)を粒状材料と混合し、室温で2時間インキュベートした。
乳酸とチーズ香料を加えて混合し、95℃で熱処理した。5分間加熱した後、得られた生成物を冷却し、成形して、本発明の植物ベースのチーズ製品を得た。
【0121】
【0122】
植物ベースのチーズ製品は、タンパク質含有量が27.6重量%であり、エンドウ豆タンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質の比率は約50:40:10であった。
【0123】
実施例2:セミハード植物ベースの加熱溶融可能なチーズ製品
下記表2の成分を使用して、セミハード植物ベースのチーズ製品を調製した。
押出前に、タンパク質粉末とキャノーラ油と塩を混ぜ合わせた。押出プロセスは、実施例1で説明したように行われた。押し出された半固体のテキスチャー化塊を、高速切断ブレードで細断して粒状材料にした。
【0124】
ココナッツ油(約60℃に加熱)と微生物プロテアーゼを粒状材料と混合し、室温で2時間インキュベートした。水に溶解した乳酸とカラギーナンを加え、生成物を混合し、95℃で熱処理した。5分間加熱した後、チーズフレーバーを添加し、生成物を加熱成形して、本発明の植物ベースのチーズ製品を得た。
【0125】
【0126】
植物ベースのチーズ製品は、タンパク質含有量が23.6重量%であり、エンドウ豆タンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質の比率は約50:40:10であった。
【0127】
実施例3:スライス可能な植物ベースの加熱溶融可能なチーズ製品
次の表3の成分を使用して、スライス可能な植物ベースのチーズ製品を調製した。
【0128】
押出前に、タンパク質粉末とキャノーラ油と塩を混ぜ合わせた。押出プロセスは、実施例1で説明したように行われた。押し出されたテキスチャー化半固体塊を、高速チョッピングブレードで細断し、粒状材料にした。
【0129】
ココナッツ油(約60℃に加熱)と微生物プロテアーゼ(オークランド、エイボンデールのZYMUS International LtdからのZymPro Neutral)を粒状材料と混合し、室温で2時間インキュベートした。水に溶解した乳酸およびカラギーナンガムを加え、生成物を混合し、95℃で熱処理した。5分間加熱した後、チーズフレーバーを添加し、生成物を加熱成形して、本発明の植物ベースのチーズ製品を得た。
【0130】
【0131】
植物ベースのチーズ製品は、タンパク質含有量が16.5重量%であり、エンドウ豆タンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質の比率は約50:40:10であった。
【0132】
実施例4:植物ベースの非加熱溶融可能なチーズ製品
次の表4の成分を使用して、植物ベースの非加熱溶融可能なチーズ製品を調製した。
【0133】
押出前に、タンパク質粉末とキャノーラ油と塩を混ぜ合わせた。押出プロセスは、実施例1で説明したように行われた。
【0134】
押し出されたテキスチャー化半固体塊を、高速チョッピングブレードで細断し、粒状材料にした。
【0135】
溶解したココナッツ油、微生物トランスグルタミナーゼ(C&P Group GmbH、Rosshaupten、Germany の Saprona Best (300))、追加の水、およびチーズフレーバーを粒状物質と混合し、室温で4時間、冷却前にインキュベートすることにより、本発明の植物ベースチーズ製品を製造した。
【0136】
【0137】
この製品のタンパク質含有量は19.7重量%であり、エンドウタンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質の比率は約50:40:10であった。
【0138】
実施例5:ココナッツ油エマルジョンを配合した植物ベースの加熱溶融可能なチーズ製品
次の表5の成分を使用して、植物ベースのチーズ製品を調製した。
【0139】
押出前に、タンパク質粉末とキャノーラ油と塩を混ぜ合わせた。押出プロセスは、実施例1で説明したように行われた。
【0140】
押し出されたテキスチャー化半固体塊を、高速チョッピングブレードで細断し、粒状材料にした。
【0141】
ココナッツ油エマルション、微生物プロテアーゼ、香料、着色料、ガム等を混合し、沸点まで加熱した後、混合物を加熱成形して、本発明の植物ベースのチーズ製品を提供した。
【0142】
【0143】
植物ベースのチーズ製品のタンパク質含有量は22.3重量%であり、エンドウ豆タンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質の比率は50:40:10であった。
【0144】
実施例6:乳タンパク質を配合した植物ベースの加熱溶融可能なチーズ
次の表6の成分を使用して、植物ベースのチーズ製品を調製した。
【0145】
押出前に、タンパク質粉末と乳タンパク質濃縮物とキャノーラ油と塩とを混ぜ合わせた。押出プロセスは、実施例1で説明したように行われた。
【0146】
押し出されたテキスチャー化半固体塊を、高速チョッピングブレードで細断し、粒状材料にした。
【0147】
ココナッツ油と微生物プロテアーゼを加え、室温で3時間放置した。乳酸、ガム、追加の水、香味料、着色料、ガム等を混合し、沸点まで加熱した後、混合物を加熱成形して、本発明の植物ベースのチーズ製品を提供した。
【0148】
【0149】
植物ベースのチーズ製品は、タンパク質含有量が21.3重量%であり、乳タンパク質濃縮物:エンドウタンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質の比率は50:25:20:5であった。
【0150】
実施例7:分析用植物性チーズ製品(Riddetチーズ製品)
次の表7の成分を使用して、植物ベースの加熱溶融可能なチーズ製品を調製した。
【0151】
押出前に、タンパク質粉末とキャノーラ油と塩を混ぜ合わせた。押出プロセスは、実施例1で説明したように行われた。
【0152】
押し出されたテキスチャー化半固体塊を、高速チョッピングブレードで細断し、粒状材料にした。
【0153】
ココナッツ油と微生物プロテアーゼを混合し、50℃に加熱し、断続的に混合しながら3時間放置した。残りの成分を加え、95℃に加熱して5分間放置した後、加熱成形した後、冷蔵することにより、植物ベースのチーズ製品を提供した。
【0154】
【0155】
植物ベースのチーズ製品は、タンパク質含有量が18.5重量%であり、エンドウタンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質の比率が50:40:10である。
【0156】
実施例8:分析用植物ベースのチーズ製品(対照チーズ製品)
次の表8の成分を使用して、植物ベースのチーズ製品(対照チーズ製品)を調製する。
【0157】
全成分を高速ブレンダーで5分間混合した後、3時間間欠的に混合し、95℃まで5分間加熱し、再度混合して熱成形した。この混合物を保冷して成形プロセスを終了した。
【0158】
【0159】
対照チーズ製品は、タンパク質含有量が18.5重量%であり、エンドウタンパク質:ソラマメタンパク質:大豆タンパク質比が50:40:10であった。
【0160】
実施例9:対照チーズ製品と比較したRiddetチーズ製品のテキスチャー分析、レオロジー、溶融性および官能分析
実施例7および実施例8で製造された植物ベースのチーズ製品を比較した。
【0161】
方法:
Riddet植物ベースのチーズ製品または対照チーズ製品のタンパク質含有量を、AOAC公式分析方法に従って分析した。社内で製造されたすべての植物ベースのチーズ製品の総タンパク質含有量の計算には、係数6.25が使用された。テストした市販の乳製品および市販のビーガンチーズ製品のタンパク質含有量を、製造業者によってパックに印刷されたそれぞれの栄養ラベルから取得した。
【0162】
植物ベースのチーズ製品のテキスチャーを、食感プロファイル分析(TPA)によって確認された。TPAは、二重咬合変形に対するチーズ製品の反応を測定し、大臼歯間の製品の数回の圧縮をシミュレートして、消費者の咀嚼中に関連する重要なパラメータを評価した。製品の硬さ、弾力性、凝集性、粘着性、噛み応えを二重圧縮テストに従って計算した。「硬さ」とは、製品を所定の距離まで変形させるのに必要な力、すなわち、臼歯間で圧縮する力、切歯で噛み切る力、舌と口蓋の間で圧縮する力のことである。「弾力性」とは、舌と口蓋または歯との間の部分的な圧縮(故障なし)の後に、製品が元の大きさ/形状に回復する程度をいう。「凝集性」とは、サンプルを臼歯で噛んだときに破裂する前にサンプルが変形する程度をいう。粘着性は、半固体の食品を飲み込める状態にまで崩壊させるのに必要なエネルギーであり、噛み応えは、サンプルを飲み込むのに適した粘稠度まで咀嚼するのに必要な咀嚼の数である。
【0163】
チーズ製品の均質スラリーのpHをpH計を用いて測定した。
【0164】
水分量の分析は、製品の性能と挙動を判断する重要な方法の1つである。チーズ製品の水分含有量は、エアオーブン法によって測定された。この方法では、約1.0~1.5gの材料を正確に計量して各水分皿に入れ、エアオーブンで108°Cで4時間乾燥させた。この方法により、チーズ製品の水分損失および乾燥物変化を算出した。そこで、サンプルの含水率(%)を測定した。
【0165】
チーズ製品(一部)の水分活性(aw)を水分活性計により20℃で測定した。製品の水分活性は、保存期間を決定する上で重要である。製品の水分活性は、塩やその他の防腐作用を有する成分の濃度や分布によって影響を受ける。
【0166】
シュライバーテストを用いて、植物ベースのチーズ製品の加熱溶融性を評価し、若干の修正を加えた。高さ5mm、直径30mmのサンプルを蓋付きシャーレに置き、232℃のオーブンで加熱(5分間強制空気オーブン)し、冷却した。試料の膨張を測定した。3つの読みの平均値を用いて加熱溶融性を計算し、試料の膨張率(%)として表現した。このテストの結果は、加熱時のチーズ製品の加熱溶融性と広がりの程度を表し、加熱溶融性の低いチーズと高い加熱溶融性を示す。
【0167】
チーズ製品にレオメーターを使用して動的低振幅振動せん断レオロジーを行い、温度上昇手順(1Hzの一定周波数で力を加えることにより、温度が16℃から85℃まで5℃/分の上昇速度で変化する)に従った。考慮されるパラメータは、貯蔵弾性率(G’)である。このテストは、温度によるチーズ製品の粘弾性挙動の変化(つまり、応力の結果としての固体様および液体様の特性)に関する指標を提供した。
【0168】
結果:
食感分析の結果を表9に示す。対照チーズ製品の硬さ、粘着性、噛み応えは、Riddetチーズ製品よりもはるかに高かった。
【0169】
【0170】
これらの結果は、Riddetチーズ製品は、口の中でよりもろくてもろくなることが予想される対照チーズ製品と比較して、口当たりと口中での加熱溶融性が優れていることを示している。
【0171】
レオロジーの結果(
図1参照)は、表9のテキスチャー分析の結果をさらに支持している。16~85℃に加熱すると、Riddetチーズ製品の強度(間接的な硬さ)は、対照チーズ製品と比較してはるかに速い速度で減少した。このデータは、温度が上昇すると、Riddetチーズ製品がよりよく溶け、広がり、または柔らかくなることも示している。
【0172】
表10に示すように、2つの植物ベースのチーズ製品の加熱溶融性とその他の特性を比較した。
【0173】
【0174】
両方のチーズ製品のpH、水分、および水分活性は非常に似ているが、対照チーズ製品の加熱溶融性はRiddetチーズ製品よりもはるかに低かった。
【0175】
2つの植物ベースチーズ製品の官能的特性を、1組のテスター(8名)によって評価した。結果を表11に示す。
【0176】
【0177】
Riddetチーズ製品は最高のテキスチャーと口当たりを有していた。これは、タンパク質成分を水和、凝固、テキスチャー化するために使用される押出ステップにより、より良いテキスチャーと口当たりが得られることを示唆している。
【0178】
実施例10:市販のビーガンおよびデイリーチーズスライスと比較したRiddetチーズ製品(融解可能、セミハード、スライス)のテキスチャー分析、レオロジー、加熱溶融性および官能分析
【0179】
方法:
本発明の植物ベースのチーズ製品を実施例7に従って調製し、以下の市販のチーズと比較した。
1.Vegan-Veeseyチーズスライス(タンパク質1%未満)
2.Vegan-Green Vie(登録商標)チーズスライス(0.3%タンパク質)
3.Vegan-Savour(登録商標)カシューナッツチーズ(タンパク質14%)
4.Dairy-Anchor(登録商標)チェダーチーズスライス(18%タンパク質)
5.Dairy-Anchor(登録商標)ティスティープロセスチーズスライス(18%タンパク質)
Dairy-Amul(登録商標)プロセスチーズ(タンパク質20%)
テキスチャー分析、レオロジー、加熱溶融性、官能分析は、実施例9に規定された手順に従って行われた。
【0180】
結果:
結果を表12に示す。
【0181】
【0182】
テキスチャーの特徴の点では、Riddetチーズ製品は両方のAnchor(登録商標)デイリーチーズと同様の硬さ、粘着性、噛み応えを持ち、全体的にデイリーチーズに近いテキスチャーであった。ビーガンチーズ(Savour(登録商標)ナッツベースの高タンパク質カシューチーズを除く)は、デイリーチーズやRiddetチーズ製品よりも著しく高い硬さを持っていた。テストされたビーガンチーズは、デイリーチーズに似た弾力性と凝集性を持った。
【0183】
本発明の植物ベースのチーズ製品は、テストした市販のビーガンチーズよりも硬度、粘着性、噛みごたえが低かった。これは、本発明のプロセスが、テストしたビーガンチーズと比較してデイリーチーズ(スライス)に近いテキスチャーを有する植物ベースのチーズ製品を生成することを示している。
【0184】
本発明のプロセスは、実施例9で観察された発見と類似しており、本発明の方法は、押出または酵素を使用した制御方法を含まない製品と比較して、より低い硬さ、粘性性、および噛み応えを有する植物ベースのチーズ製品を生成した。テストされた市販ビーガンチーズ製品は、使用された対照プロセスと同様のプロセスで製造された。
【0185】
Savour(登録商標)セミソフトカシューナッツチーズは、分析されたチーズ製品の中で最も軟らかいものであった。弾力性、凝集性、粘着性、噛みごたえが最も低く、構造のないチーズに似ていた。
【0186】
レオロジーの結果(
図2参照)は、テキスチャー分析の結果をさらに支持している。16℃から85℃で加熱したときの強度低下(G’の低下、硬さの低下)はデイリーチーズと同様であったが、Riddetチーズ製品のG’の初期低下はデイリーチーズよりも高かった。ビーガンチーズ(タンパク質含有量が低いか、タンパク質を含まないチーズ)は、デイリーチーズ(タンパク質含有量が18~20%)とは非常に異なった。カシューナッツベースの高タンパク質ナッツベースのチーズは、加熱してもG’に差が見られず、加熱による柔らかさ/加熱溶融性/構造に変化がないという点で、より溶けないチーズに近い挙動を示した。一般的に、リッドデットチーズ製品は、レオロジー特性において、他の植物ベースのチーズ製品よりもデイリーチーズに近かった。
【0187】
表13に示すように、各チーズ製品の加熱溶融性等の特性を比較した。
【0188】
【0189】
一般に、ビーガンチーズは、Riddetチーズ製品やデイリーチーズの両方よりも低いpHと低い加熱溶融性を有することが判明した。水分活性はすべてのチーズで同様のままであった。デイリーチーズはより高い加熱溶融性を持ち、Riddetチーズ製品は、他の植物ベースのビーガンチーズ製品よりもデイリーチーズの1つに近い加熱溶融性を持っていた。Savour(登録商標)高タンパク質のカシューベースチーズは、加熱溶融性がゼロであった。なお、世界中で多くの種類のチーズが入手可能であり、発明者らは分析時にニュージーランド市場で入手可能なプロセスチーズを使用した。
【0190】
様々なチーズ製品の官能的特性を1組のテスター(8名)で評価した。結果を表14に示す。
【0191】
【0192】
デイリーチーズは、乳白色でクリーミーで、本格的なチェダーの風味があるため、感覚的には誰からも好まれている。しかし、リッドデットチーズ製品は、よりクリーミーでなめらかで、より溶けやすく、砂利感のないテキスチャーで、他の植物ベースのチーズ製品よりも人気が高い。また、リッドデットチーズ製品はデイリーチーズスライスに近いテキスチャーを持っていることもわかった。対照的に、ビーガン食の高タンパク質カシューナッツチーズは、生地がより酸味があり、柔らかく、しっとりしており、強靭であると考えられている。
図3は、Anchor(登録商標)乳製品ティスティーチーズスライス(
図3B)およびVeesey(登録商標)ビーガンチーズスライス(
図3C)と比較した、Riddetチーズ製品(
図3A)のテキスチャーを示したものである。
【0193】
Riddetチーズ製品スライス(3A)は、デイリーチーズスライス(3B)と同様に、折りたたむことができ、柔軟性があり、弾力のあるテキスチャーである。対照的に、市販のビーガンチーズスライス(3C)は、テキスチャーが脆く、柔軟性がなく、壊れやすい。
【0194】
実施例11:Riddetチーズ製品(非加熱溶融性)のテキスチャー分析、レオロジー分析、加熱溶融性分析、官能分析と市販のビーガンおよび乳製品の非加熱溶融性チーズとの比較
【0195】
方法:
本発明の植物ベースのチーズ製品を実施例4に従って調製した。
Riddetチーズ製品を以下の市販チーズと比較した。
1.Vegan-Green Vie(登録商標)ビーガンハルーミ,1.2%タンパク質
2.Dairy-Waimata Cheese Co(登録商標)ハルーミ、タンパク質19%
Dairy-Gopala(登録商標)デイリーパニール、25.3%タンパク質
テキスチャー分析、レオロジー、加熱溶融性、官能分析は、実施例9に規定された手順に従って行われた。
【0196】
結果:
結果を表15に示す。
【0197】
【0198】
テキスチャーの特徴に関して、非加熱溶融性Riddetチーズ製品は、ビーガンハルーミ、乳製品ハルーミ、およびパニールタイプの非加熱溶融性チーズと比較して、硬度が低く、粘着性が低く、噛み応えがある。しかし、そのテキスチャーの特徴(硬さ)は、テキスチャーが硬すぎるビーガンのハルーミよりも乳製品のパニールやハルーミに近かった。
【0199】
なお、インドでは、非常に柔らかいものから硬いものまで、さまざまな種類の非加熱溶融性パニールチーズがたくさんある。非加熱溶融性Riddetチーズ製品のテキスチャーは、乳製品のパニールチーズの柔らかいバージョンに近いと予想されるが、テスト時点ではニュージーランド市場では市販されていなかった。
【0200】
【0201】
非加熱溶融性Riddetチーズ製品は、市場にある他の非加熱溶融性チーズと比較して、より高いpH(乳製品の非非加熱溶融性チーズの1つに近い)とより高い水分含有量を持っていた。ただし、他の加熱溶融性チーズと比較して、同じように水分活性が低いことを指摘しておかなければならない。水分活性が低いことが、保存安定性の向上に寄与する可能性がある。
【0202】
非加熱溶融可能なチーズの官能的特性を1組のテスター(8名)で評価した。結果を表17に示す。
【0203】
【0204】
全体として、非加熱溶融性Riddetチーズ製品のテキスチャーは、他の非加熱溶融性チーズよりも乳製品パニールに近かった。
6.参考資料
Chavan,R.S.& Jana,A.(2007).チーズの代替品:ナチュラルチーズの代替品-レビュー.食品科学、技術、栄養の国際ジャーナル、2,25-39.
Fox,P.F.,Guinee,T.P.,Cogan,T.M.,& McSweeney,P.L.H.(2017a).チーズ科学の基礎(第2版). ニューヨーク、スプリンガー589-628ページ(第17章).
Guinee,T.P.(2016).チーズとチーズ製品に含まれるタンパク質:構造と機能の関係.P.L.H.McSweeneyとJ.A.O’Mahony(編著).高度な乳製品化学. 巻1B:タンパク質:適用面(p.347-416)。ニューヨーク:スプリンガー.
Masotti,F.,Cattaneo,S.,Stuknyte,M.,& De Noni,I.(2018).アナログチーズの配合と機能性の現状と発展.食品科学技術の動向,74,158-169。
【国際調査報告】