(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】商用車用のディスクブレーキならびにディスクブレーキ用のブレーキパッド
(51)【国際特許分類】
F16D 65/097 20060101AFI20240801BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20240801BHJP
F16D 65/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F16D65/097 E
F16D65/092 D
F16D65/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510303
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022072264
(87)【国際公開番号】W WO2023020879
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】102021121683.4
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ステファン フーバー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ シュロップ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン プラインティンガー
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー ロート
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー コーラー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュタインフーバー
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA77
3J058AA78
3J058AA83
3J058AA87
3J058BA16
3J058BA46
3J058CA65
3J058CC03
3J058CC15
3J058CC22
3J058CC77
3J058CC78
3J058FA06
(57)【要約】
商用車用のディスクブレーキが、ブレーキディスク(2)に跨がった、スライドキャリパとして形成されたブレーキキャリパ(10)と、該ブレーキキャリパ(10)に配置された、ブレーキディスク(2)の方向に互いに逆向きに移動可能な、それぞれ1つのパッドキャリヤプレート(4)と該パッドキャリヤプレート(4)に取り付けられた摩擦パッド(5)とを有する2つのブレーキパッド(3)であって、それぞれ車両側のブレーキキャリヤ(6)に設けられた、ブレーキディスク(2)の回転方向でブレーキキャリヤ角状突起(7)によって画定されたパッド取付けスペース内に配置されている2つのブレーキパッド(3)と、少なくとも1つの戻し装置であって、該戻し装置によって、ブレーキパッド(3)は、制動に起因した移動およびブレーキの解除の後に戻し可能である戻し装置と、を含み、戻し装置は、1つのブレーキパッド(3)に取り付けられた少なくとも1つの戻し要素を有し、該戻し要素は、ブレーキパッド(3)と、定位置固定の構成部分との間に配置されていて、各ブレーキパッド(3)に戻し力を加え、少なくとも1つの戻し要素は、パッドキャリヤプレート(4)の、摩擦パッド(5)とは反対の側の裏側に取り付けられた板ばね(15,15’)として形成されており、該板ばね(15,15’)は、ばね腕(16,16’)を備えており、該ばね腕(16,16’)は、ブレーキディスクの周方向に延びていて、定位置固定の構成部分であるブレーキキャリヤ(6)に支持されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用車用のディスクブレーキであって、
ブレーキディスク(2)に跨がった、スライドキャリパとして形成されたブレーキキャリパ(10)と、
前記ブレーキキャリパ(10)に配置された、前記ブレーキディスク(2)の方向に互いに逆向きに移動可能な、それぞれ1つのパッドキャリヤプレート(4)と該パッドキャリヤプレート(4)に取り付けられた摩擦パッド(5)とを有する2つのブレーキパッド(3)であって、それぞれ車両側のブレーキキャリヤ(6)に設けられた、前記ブレーキディスク(2)の回転方向でブレーキキャリヤ角状突起(7)によって画定されたパッド取付けスペース内に配置されている2つのブレーキパッド(3)と、
少なくとも1つの戻し装置であって、該戻し装置によって、前記ブレーキパッド(3)は、制動に起因した移動およびブレーキの解除の後に戻し可能である戻し装置と、
を備え、
前記戻し装置は、1つのブレーキパッド(3)に取り付けられた少なくとも1つの戻し要素を有し、該戻し要素は、前記ブレーキパッド(3)と、定位置固定の構成部分との間に配置されていて、前記各ブレーキパッド(3)に戻し力を加える、
商用車用のディスクブレーキにおいて、
前記少なくとも1つの戻し要素は、前記パッドキャリヤプレート(4)の、前記摩擦パッド(5)とは反対の側の裏側に取り付けられた板ばね(15,15’)として形成されており、該板ばね(15,15’)は、ばね腕(16,16’)を備えており、該ばね腕(16,16’)は、前記ブレーキディスクの周方向に延びていて、定位置固定の構成部分である前記ブレーキキャリヤ(6)に支持されていることを特徴とする、商用車用のディスクブレーキ。
【請求項2】
前記各ブレーキキャリヤ角状突起(7)に1つのばね腕(16,16’)が接触していることを特徴とする、請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記ばね腕(16,16’)は、前記ブレーキキャリヤ角状突起(7)のベース領域またはヘッド領域に接触していることを特徴とする、請求項1または2記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記板ばね(15,15’)は、相対回動防止されて前記パッドキャリヤプレート(4)に保持されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
前記板ばね(15,15’)の輪郭は、ほぼZ字形に形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記ばね腕(16,16’)は、前記ブレーキキャリヤ角状突起(7)に設けられた凹部(19)内に半径方向で形状接続式に嵌め込まれていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項7】
前記ブレーキキャリヤ角状突起(7)は、前記ブレーキパッド(3)の押込み方向に上昇するように斜めに形成されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項8】
前記板ばね(15,15’)は、プリロードをかけられて前記ブレーキキャリヤ角状突起(7)に接触していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項9】
互いに間隔を置いて配置された前記板ばね(15,15’)は、そのばね特性に関して互いに異なっていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項10】
前記凹部(19)は、前記ブレーキキャリヤ角状突起(7)のベース領域またはヘッド領域に設けられていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項11】
商用車のディスクブレーキ用のブレーキパッドであって、
パッドキャリヤプレート(4)と、該パッドキャリヤプレート(4)に保持された摩擦パッド(5)とを備え、前記パッドキャリヤプレート(4)の輪郭は、互いに対向して位置する2つの長辺と、互いに対向して位置する2つの短辺とを有する、
ブレーキパッドにおいて、
前記パッドキャリヤプレート(4)の、前記摩擦パッド(5)とは反対の側に、各短辺に対応して板ばね(15,15’)が取り付けられており、該板ばね(15,15’)は、ばね腕(16,16’)を備えており、該ばね腕(16,16’)は、対応する前記短辺を越えて突出していることを特徴とする、商用車のディスクブレーキ用のブレーキパッド。
【請求項12】
前記板ばね(15,15’)は、相対回動防止されて前記パッドキャリヤプレート(4)に保持されていることを特徴とする、請求項11記載のブレーキパッド。
【請求項13】
1つの長辺にパッド保持ばね(8)が保持されており、前記板ばね(15,15’)は、前記パッドキャリヤプレート(4)の、前記パッド保持ばね(8)寄りの領域または前記パッド保持ばね(8)から遠い方の領域に配置されていることを特徴とする、請求項11記載のブレーキパッド。
【請求項14】
前記板ばね(15,15’)の輪郭は、Z字形に形成されていることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項記載のブレーキパッド。
【請求項15】
互いに反対の側に位置する前記板ばね(15,15’)は、前記ブレーキパッドの面重心に対して対称的に取り付けられていることを特徴とする、請求項11から14までのいずれか1項記載のブレーキパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の商用車用のディスクブレーキならびにディスクブレーキ用のブレーキパッドに関する。
【0002】
スライドキャリパ式のブレーキとしても知られている、この種のディスクブレーキでは、ニューマチック式または電気モータ式に操作可能である作動装置によって制動が行われる場合に、作用側のブレーキパッドが車両側のブレーキディスクに押し付けられる。
【0003】
引き続き制動過程が継続されると、ブレーキキャリパはブレーキディスクに対して、作用側のブレーキパッドの締付け方向とは反対の方向にスライドさせられるとともに、反対の側に位置する反作用側のブレーキパッドを連行して、ブレーキディスクの他方の側に押し付ける。
【0004】
ブレーキが解除された後に、ブレーキキャリパはこの位置に留まる。この位置において、両ブレーキパッドのうち、少なくとも反作用側のブレーキパッドは、たしかに押付け圧を受けていないが、しかしブレーキディスクに接触しているので引きずりを生ぜしめる。これにより走行運転時にはブレーキパッドの残留引きずりトルクが発生し、この残留引きずりトルクは、燃料消費量の増加を招くと同時に、ブレーキディスクおよびブレーキパッドの耐用年数の低下をも招くという点で不都合に作用する。
【0005】
たしかに、走行運転中に、たとえばブレーキディスクの回転振れならびに振動およびカーブ走行時における横方向加速に基づいてブレーキパッドが少しだけ解離されることがあるが、しかしこれらの効果は、上に挙げた残留引きずりトルクを有効に阻止するためには不十分である。
【0006】
この問題に対処するために、独国特許第102007001213号明細書には、戻し装置を備えたディスクブレーキが開示されている。この戻し装置は、ブレーキキャリパをブレーキキャリヤにスライド式に保持している複数のガイドビームのうちの1つに配置されている。戻し装置は、ばね弾性的な戻し要素を有し、この戻し要素によってブレーキキャリパは初期位置へスライドさせられる。
【0007】
このような構成は原理的には有利であることが判っているが、しかしこの公知の戻し装置が、重量のある商用車の圧縮空気作動式のディスクブレーキにおいて使用される場合には、問題が生じるおそれがある。なぜならば、その場合、構成部品誤差および構成部品変形による可変の影響因子が広範に作用し、このような影響因子に基づき、この戻し装置の確実な機能が必ずしも保証されなくなるからである。
【0008】
同様の問題は、独国特許出願公開第102012006111号明細書に記載されているようなディスクブレーキにおいても生ぜしめられる。この場合、作動装置とは反対の側に位置する、反作用側のブレーキパッドに面した側に戻し装置が配置されており、これにより、ブレーキキャリパの有効な、特に自動的な戻しが達成されると同時に、システム剛性に対する干渉が最小限に抑えられる。
【0009】
いずれの場合でも、戻し装置はブレーキキャリパに作用し、この場合、ブレーキキャリヤは受けとして機能する。
【0010】
請求項1の前提部に記載の構成を形成する独国特許出願公開第102016117777号明細書に基づき公知のディスクブレーキでは、戻し装置が、ブレーキパッドに取り付けられた少なくとも1つの戻し要素を有する。この戻し要素はこのブレーキパッドと、定位置固定の構成部品、たとえばブレーキキャリヤとの間に配置されていて、このブレーキパッドに戻し力を加える。
【0011】
構成スペース事情に基づいて、キャリパ剛性を犠牲にしない限り、戻し装置を作用側のブレーキキャリヤ角状突起に対応させることが不可能であるように構成されているディスクブレーキの使用が増えている。反作用側のブレーキパッドに対応したブレーキキャリヤ角状突起に戻し装置を結合することも同じく不可能である。なぜならば、ブレーキキャリヤ角状突起に沿ってパッド保持ばねが滑動するからである。したがって、このようなディスクブレーキでは、公知の戻し装置を使用することが不可能である。
【0012】
本発明の根底を成す課題は、この種の形式のディスクブレーキを改良して、構造的に単純な手段を用いて耐用年数、特にブレーキパッドおよびブレーキディスクの耐用年数が高められて、運転コストが全体的に低減されるようなディスクブレーキを提供することである。
【0013】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有するディスクブレーキにより解決される。
【0014】
従来技術によるディスクブレーキに比べて、本発明の構成には著しい利点がある。これらの利点は、とりわけ本発明が極めて簡単に実現されることにより得られる。なぜならば、板ばねとして形成された戻し要素は、単純なばね金属薄板から、たとえば打抜き加工および/または曲げ加工によって製造され得るからである。この場合、パッドキャリヤプレートの、ブレーキパッドの摩擦パッドとは反対の側の裏側に板ばねを取り付けることは、適当な手段によって行われ得る。このためには、たとえばリベット締結、ねじ締結、溶接、揺動かしめ、プレス締結またはこれに類するものが挙げられる。
【0015】
好適には、ブレーキパッドの両側に板ばねが設けられており、この板ばねは、それぞれ対応するブレーキキャリヤ角状突起に支持されており、この場合、各板ばねは、ブレーキパッドの両短辺を越えて突出している。
【0016】
板ばねの、それぞれ突出した端部は、ブレーキキャリヤに対して軸方向に応力をかけられているので、このときに生じるばね力は、各ブレーキパッドに戻し力を加える。
【0017】
好適には両ブレーキパッドに取り付けられている板ばねを、定位置固定のブレーキキャリヤに支持することにより、ブレーキパッドだけがブレーキディスクに対して位置決めされるのではなく、軸方向にスライド可能なブレーキキャリパも位置決めされる。ブレーキパッドとブレーキキャリパとをブレーキディスクに対してセンタリングすることにより、残留引きずりトルクの理想的な低減が達成され得る。
【0018】
本発明により、有利には、引抜き防止が得られ、この引抜き防止はディスクブレーキの機能安全性のために全般的に寄与する。パッドキャリヤプレートの裏側に取り付けられた板ばねは、ブレーキパッドの構成部品紛失を有効に阻止する、いわば邪魔輪郭を形成している。
【0019】
板ばねを、定位置固定のブレーキキャリヤに支持することにより、ブレーキパッドだけがブレーキディスクに対して位置決めされるのではなく、軸方向に移動可能な作動装置も位置決めされ、この場合、ブレーキディスクに対するブレーキパッドおよび作動ユニットのセンタリングにより、残留引きずりトルクの著しい低減が達成される。
【0020】
ブレーキキャリヤに対する板ばねのインタフェースは、ブレーキパッドの組付け時に板ばねへの自動的なプリロード付与が得られるように形成されている。これによって、既にブレーキの新しい状態において、各ブレーキパッドに戻し力が加えられており、この場合、このプリロード付与は、ブレーキキャリヤ角状突起に、ブレーキパッドの押込み方向に上昇する斜面が一体成形されていることにより達成され得る。このことは、標準的にこのような輪郭が、鋳鉄から成るブレーキキャリヤの成形斜面として既に存在していることが多いことを考えると特に有利である。
【0021】
補足的または択一的に、ブレーキキャリヤ角状突起には凹部が設けられていてもよい。この凹部内には、ブレーキキャリヤ内へのブレーキパッドの押込み時に板ばねのばね腕の自由端部がスナップイン式に係止され、これによって付加的な半径方向の保持力がブレーキパッドに作用し、ブレーキ操作時におけるブレーキパッドの回転離脱が阻止される。その結果、このことは摩耗低減をもたらす。さらに、凹部内への板ばねのスナップイン式の係止は、音によっても、触った感覚によっても確認可能であり、このことはブレーキパッドの正しい組付けを信号報知する。
【0022】
本発明の構成の決定的な利点は、ブレーキパッドの戻しの他に、互いに反対の側に位置する板ばねがブレーキパッドの面重心に対称的に取り付けられ、これによりブレーキパッドに付加的な傾動モーメントが加えられない点に与えられている。
【0023】
ブレーキパッドの互いに対向して位置する短辺に取り付けられている2つの板ばねが配置される場合、これらの板ばねは、それぞれ異なるばね率を有するように設計されていてもよい。得られた不均一なばね力に基づき、ブレーキパッドの接線方向の斜め摩耗が防止される。このことは、とりわけ中央の1つのブレーキピストンしか有しないディスクブレーキにおいて顕著に生じる。
【0024】
さらに、ブレーキパッドが板ばねによって軸方向にプリロードをかけられることにより、全体的に走行運転時におけるディスクブレーキの騒音発生および振動発生が低減される。
【0025】
本発明の別の有利な構成は、従属項形式の各請求項に記載されている。
【0026】
以下に、添付図面につき、従来技術によるディスクブレーキおよび本発明の1実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】従来技術によるディスクブレーキの平面図である。
【
図4】本発明のさらに別の実施例を示す斜視図である。
【
図5】本発明のさらに別の実施例を示す斜視図である。
【0028】
図1には、従来技術によるディスクブレーキ1が図示されており、このディスクブレーキ1はニューマチック式に、ハイドロリック式に、電気式に、またはこれらの組合せの形で操作可能であってもよい。
【0029】
ディスクブレーキ1は、車両側のブレーキディスク2を有し、このブレーキディスク2には、制動時に両側でブレーキパッド3が押し付けられる。これらのブレーキパッド3は、定位置固定のブレーキキャリヤ6に軸方向にスライド可能に保持されている。ブレーキディスク2にはブレーキキャリパ10が跨がっており、この場合、ブレーキキャリパ10はブレーキキャリヤ6に同じくスライド可能に取り付けられている。ブレーキキャリパ10はさらに組付け開口9を有し、この組付け開口9を通じてブレーキパッド3はブレーキキャリヤ6内に挿入可能である。
【0030】
ブレーキキャリパ10のキャリパ背部12とは反対の側に位置するように、収容室内には、ブレーキを作動させるための作動装置(図示しない)が配置されている。この作動装置を用いて、接続されたブレーキピストン11を介して、対応する作動装置側のブレーキパッド3がブレーキディスク2に押付け可能となる。
【0031】
各ブレーキパッド3は、鋳鉄、好ましくは球状黒鉛から成るパッドキャリヤプレート4を有し、このパッドキャリヤプレート4には、ブレーキディスク2に面した側で摩擦パッド5が取り付けられている。この場合、パッドキャリヤプレート4の輪郭は、特に
図2から良く判るように、互いに対向して位置する2つの長辺と、互いに対向して位置する2つの短辺とを有する。作動装置側のパッドキャリヤプレート4には、制動時にブレーキピストン11の押圧部材が接触する。
【0032】
キャリパ背部12は、組付け開口9を側方で画定する抗張ステー13を介して、作動装置のための収容室を収容するキャリパヘッドに結合されている。
【0033】
ブレーキパッド3は、それぞれブレーキキャリヤ6に設けられた2つのブレーキキャリヤ角状突起7の間に形成されたパッド取付けスペース内に位置決めされている。
【0034】
ブレーキパッド3を固定するためには、パッドキャリヤプレート4の、組付け開口9寄りの側にパッド保持ばね8が取り付けられており、これらのパッド保持ばね8には、U字形パッド保持部材14が支持されている。これにより、ブレーキパッド3はプリロード(予荷重)をかけられてブレーキキャリヤ6に保持されている。さらに、公知のディスクブレーキには戻し装置が配置されており、この戻し装置によってブレーキパッド3は、ブレーキの解除後に引戻し可能である。この戻し装置は図示されていないが、独国特許出願公開第102016117777号明細書から看取され得る。
【0035】
ブレーキパッド3を非作動位置で示す
図2には、ディスクブレーキの一部において、パッドキャリヤプレート4の、ブレーキディスク2とは反対の裏側が図示されている。この裏側には、それぞれ1つのばね腕16,16’を備えた2つの板ばね15,15’が取り付けられている。
【0036】
この場合、ばね腕16,16’はブレーキディスク2の周方向でパッドキャリヤプレート4の対応する短辺を越えて突出していて、ブレーキキャリヤ6の対応するブレーキキャリヤ角状突起7に支持されている。
【0037】
取付け要素17、たとえばリベットにより、板ばね15,15’はパッドキャリヤプレート4の、摩擦パッド5とは反対の側に、相対回動防止されて取り付けられている。
【0038】
図3には、ブレーキパッド3が作動させられている位置、つまり制動機能においてブレーキディスク(図示されていない)に向かってスライドさせられているブレーキパッド3の位置が図示されている。図面から良く判るように、板ばね15,15’もしくはばね腕16,16’は、受けとして用いられるブレーキキャリヤ角状突起7に当て付けられて応力をかけられており、この場合、ブレーキが解除されると、ブレーキパッド3は初期位置へ引き戻される。
【0039】
板ばね15,15’にプリロード(予荷重)をかけるためには、ブレーキキャリヤ角状突起7がそれぞれ1つの斜面18を有し、この斜面18はブレーキパッド3の押込み位置から終端位置へ向かって上昇している。
【0040】
図2および
図3に図示した例では、輪郭がZ字形の板ばね15,15’が、パッドキャリヤプレート4の、パッド保持ばね8から遠い方の領域に取り付けられていて、板ばね15,15’のばね腕16,16’が、対応するブレーキキャリヤ角状突起7のほぼベース領域に接触しているのに対して、
図4に図示した例では、板ばね15,15’が、パッドキャリヤプレート4の、パッド保持ばね8寄りの側の領域に配置されている。
【0041】
この場合、ばね腕16,16’はそれぞれ凹部19内に嵌め込まれており、この凹部19は、ほぼ各ブレーキキャリヤ角状突起7のヘッド領域に形成されているので、ブレーキパッド3は、半径方向で位置固定された状態でブレーキキャリヤ6に保持されている。さらに、
図4に示した例では、ブレーキパッド3が、
図3に図示した位置と同じ、ブレーキディスクの方向にスライドさせられた位置をとっている。
【0042】
図5に示した例は、同じく、ブレーキキャリヤ角状突起7が凹部19を備えていて、これらの凹部19内に板ばね15,15’のそれぞれ対応するばね腕16,16’が半径方向で形状接続式に嵌め込まれている変化実施例を示す。しかし、
図5に示した例では、これらの凹部19が、ほぼ各ブレーキキャリヤ角状突起7のベース領域に設けられている。
【符号の説明】
【0043】
1 ディスクブレーキ
2 ブレーキディスク
3 ブレーキパッド
4 パッドキャリヤプレート
5 摩擦パッド
6 ブレーキキャリヤ
7 ブレーキキャリヤ角状突起
8 パッド保持ばね
9 組付け開口
10 ブレーキキャリパ
11 ブレーキピストン
12 キャリパ背部
13 抗張ステー
14 U字形パッド保持部材
15,15’ 板ばね
16,16’ ばね腕
17 取付け要素
18 斜面
19 凹部
【手続補正書】
【提出日】2024-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用車用のディスクブレーキであって、
ブレーキディスク(2)に跨がった、スライドキャリパとして形成されたブレーキキャリパ(10)と、
前記ブレーキキャリパ(10)に配置された、前記ブレーキディスク(2)の方向に互いに逆向きに移動可能な、それぞれ1つのパッドキャリヤプレート(4)と該パッドキャリヤプレート(4)に取り付けられた摩擦パッド(5)とを有する2つのブレーキパッド(3)であって、それぞれ車両側のブレーキキャリヤ(6)に設けられた、前記ブレーキディスク(2)の回転方向でブレーキキャリヤ角状突起(7)によって画定されたパッド取付けスペース内に配置されている2つのブレーキパッド(3)と、
少なくとも1つの戻し装置であって、該戻し装置によって、前記ブレーキパッド(3)は、制動に起因した移動およびブレーキの解除の後に戻し可能である戻し装置と、
を備え、
前記戻し装置は、1つのブレーキパッド(3)に取り付けられた少なくとも1つの戻し要素を有し、該戻し要素は、前記ブレーキパッド(3)と、定位置固定の構成部分との間に配置されていて、前記各ブレーキパッド(3)に戻し力を加える、
商用車用のディスクブレーキにおいて、
前記少なくとも1つの戻し要素は、前記パッドキャリヤプレート(4)の、前記摩擦パッド(5)とは反対の側の裏側に取り付けられた板ばね(15,15’)として形成されており、該板ばね(15,15’)は、ばね腕(16,16’)を備えており、該ばね腕(16,16’)は、前記ブレーキディスクの周方向に延びていて、定位置固定の構成部分である前記ブレーキキャリヤ(6)に支持されていることを特徴とする、商用車用のディスクブレーキ。
【請求項2】
前記各ブレーキキャリヤ角状突起(7)に1つのばね腕(16,16’)が接触していることを特徴とする、請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記ばね腕(16,16’)は、前記ブレーキキャリヤ角状突起(7)のベース領域またはヘッド領域に接触していることを特徴とする、請求項1または2記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記板ばね(15,15’)は、相対回動防止されて前記パッドキャリヤプレート(4)に保持されていることを特徴とする、請求項1
または2記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
前記板ばね(15,15’)の輪郭は、ほぼZ字形に形成されていることを特徴とする、請求項1
または2記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記ばね腕(16,16’)は、前記ブレーキキャリヤ角状突起(7)に設けられた凹部(19)内に半径方向で形状接続式に嵌め込まれていることを特徴とする、請求項1
または2記載のディスクブレーキ。
【請求項7】
前記ブレーキキャリヤ角状突起(7)は、前記ブレーキパッド(3)の押込み方向に上昇するように斜めに形成されていることを特徴とする、請求項1
または2記載のディスクブレーキ。
【請求項8】
前記板ばね(15,15’)は、プリロードをかけられて前記ブレーキキャリヤ角状突起(7)に接触していることを特徴とする、請求項1
または2記載のディスクブレーキ。
【請求項9】
互いに間隔を置いて配置された前記板ばね(15,15’)は、そのばね特性に関して互いに異なっていることを特徴とする、請求項1
または2記載のディスクブレーキ。
【請求項10】
前記凹部(19)は、前記ブレーキキャリヤ角状突起(7)のベース領域またはヘッド領域に設けられていることを特徴とする、請求項
6記載のディスクブレーキ。
【請求項11】
商用車のディスクブレーキ用のブレーキパッドであって、
パッドキャリヤプレート(4)と、該パッドキャリヤプレート(4)に保持された摩擦パッド(5)とを備え、前記パッドキャリヤプレート(4)の輪郭は、互いに対向して位置する2つの長辺と、互いに対向して位置する2つの短辺とを有する、
ブレーキパッドにおいて、
前記パッドキャリヤプレート(4)の、前記摩擦パッド(5)とは反対の側に、各短辺に対応して板ばね(15,15’)が取り付けられており、該板ばね(15,15’)は、ばね腕(16,16’)を備えており、該ばね腕(16,16’)は、対応する前記短辺を越えて突出していることを特徴とする、商用車のディスクブレーキ用のブレーキパッド。
【請求項12】
前記板ばね(15,15’)は、相対回動防止されて前記パッドキャリヤプレート(4)に保持されていることを特徴とする、請求項11記載のブレーキパッド。
【請求項13】
1つの長辺にパッド保持ばね(8)が保持されており、前記板ばね(15,15’)は、前記パッドキャリヤプレート(4)の、前記パッド保持ばね(8)寄りの領域または前記パッド保持ばね(8)から遠い方の領域に配置されていることを特徴とする、請求項11記載のブレーキパッド。
【請求項14】
前記板ばね(15,15’)の輪郭は、Z字形に形成されていることを特徴とする、請求項11
または12記載のブレーキパッド。
【請求項15】
互いに反対の側に位置する前記板ばね(15,15’)は、前記ブレーキパッドの面重心に対して対称的に取り付けられていることを特徴とする、請求項11
または12記載のブレーキパッド。
【国際調査報告】