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特表2024-529767光ファイバを介したSDM通信システムのためのI/Qコーディング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】光ファイバを介したSDM通信システムのためのI/Qコーディング方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2507 20130101AFI20240801BHJP
   H04J 14/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H04B10/2507
H04J14/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510664
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 FR2022051590
(87)【国際公開番号】W WO2023021261
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】2108805
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524065941
【氏名又は名称】ミモプト・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ガヤ・レカヤ
(72)【発明者】
【氏名】アクラム・アブセイフ
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AD15
5K102KA12
5K102KA39
(57)【要約】
本発明は、光ファイバを介した二重偏波WDM伝送のための方法に関する。この伝送方法は、PDLの影響に対抗するために特定のI/Qコーディングを使用する。N個の波長の2N個の偏波状態で送信される変調シンボルは、実数値と虚数値に分解される(220)。このようにして取得された実数値のベクトルには第1の直交線形変換(230-1)が適用され、このようにして取得された虚数値のベクトルには第1の直交線形変換とは別の第2の直交線形変換(230-2)が適用される。
における
の既約多項式を解く複素スカラーは、空間基本チャネルの異なる偏波状態を変調するための送信シンボルのベクトルを提供するために、2つの変換ベクトルが合計される(240)前に、第1または第2の変換ベクトルと乗算される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法であって、1つのチャネル使用中に、複素平面における変調コンステレーションに属する2N個のシンボルを送信することを目的とし、N>1が送信に使用される空間基本チャネル数であり、
これらのシンボルの実数部からなる第1のベクトル、およびこれらの同じシンボルの虚数部からなる第2のベクトルを提供するために、前記シンボルが、前記実数部と前記虚数部(220~520)に分離され、
第1の変換ベクトルを提供するために、第1の直交線形変換(230-1、...、430-1)が前記第1のベクトルに適用され、
第2の変換ベクトルを提供するために、前記第1の直交線形変換とは異なる第2の直交線形変換(230-2、...、530-2)が前記第2のベクトルに適用され、
2N個の複素放射シンボルからなるベクトルを提供するために、前記2つの変換ベクトルが合計される前に、
【数1】
における
【数2】
からの既約多項式の解である複素スカラーが、前記第1または前記第2の変換ベクトルに乗算され、各複素送信シンボルが空間基本チャネルの第1の状態および第2の偏波状態を変調する
ことを特徴とする、偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項2】
前記第1の線形変換が、
【数3】
における第1の回転と第1の非自明な順列および/または第1の非自明な反射との合成であり、前記第2の線形変換が、
【数4】
における第2の回転と第2の非自明な順列および/または第2の非自明な反射との合成であることを特徴とする、請求項1に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項3】
前記第1の順列が偶数の複数の転置によって構成され、前記第2の順列が奇数の複数の転置によって構成されるか、またはその逆であることを特徴とする、請求項2に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項4】
前記第1の回転と前記第2の回転が同一であることを特徴とする、請求項3に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項5】
前記第1の直交線形変換が恒等行列であることを特徴とする、請求項2に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項6】
前記複素スカラーαが、α2Nが正の実数でないように選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項7】
前記複素スカラーがjに等しく、j2=-1であることを特徴とする、請求項5に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項8】
数値Nが奇数であり、N≧3であることを特徴とする、請求項7に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項9】
前記空間基本チャネルが前記光ファイバ内の伝搬モードであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項10】
前記光ファイバがマルチコアタイプであり、基本空間チャネルが前記ファイバの異なるコアであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信の分野に関し、より詳細には、空間多重通信またはSDM(空間分割多重)通信に関する。
【背景技術】
【0002】
シングルモード光ファイバの減衰を低減する近年の進歩により、シングルモード光ファイバは理論的な伝送容量にほぼ達することが可能になった。マルチモードおよび/またはマルチコアの光ファイバ(さらには、利得の厚みが減少し、その後マルチコア光ファイバに同化されたシングルモードファイバの束)に基づく空間多重(SDM)光通信システムでは、光ファイバの異なるモード間および/または異なるコア間の空間多重を利用することによって、この限界を克服することが可能になる。
【0003】
高い変調次数の使用および直交偏波での多重化によって、これらのSDM通信システムの容量をさらに増やすことが可能になったが、この進歩は現在、様々な限界に直面している。
【0004】
まず、モード/コアの数が増加すると、異なるモード/コアに関連付けられた基本チャネル間干渉レベルが増加する。
【0005】
次いで、モード分散またはMDL(Mode Dispersion Loss)、偏波分散またはPMD(Polarization Mode Dispersion)、および偏波依存減衰またはPDL(Polarization Dependent Loss)など異なる分散現象により、異なるチャネルにおけるエラーレート(BER)が増加する。しかしながら、受信時にMDL、CDL、およびPMDに起因する影響をデジタル的に補償することができる場合、PDLに起因する影響は、その非ユニタリ性のために補償することができず、ビットレート、したがって伝送容量に応じてBERの面でWDM伝送システムの性能が低下する。
【0006】
CDLによる伝送容量の低下に対抗するために時空間コーディング技術を使用することがAkram Abouseif's thesis entitled 「Emerging DSP techniques for multi-core fiber transmission systems」、 published in 2015に提案されている。しかしながら、これらのコーディング技術は、送信される情報シンボルのブロックが、いくつかの連続する伝送間隔またはTTI(Time Transmission Intervals)にわたってコード化され、より一般には、複数のチャネル使用またはCU(Channel Uses)にわたってコード化されるので、送信機および受信機を複雑にする。
【0007】
同様に、MDLによる伝送容量の低下に対抗するために時空間コーディング技術を使用することがEl Mehdi Amhoud et al. entitled 「Coding Techniques for Spatial Multiplexing on Fiber Optic Systems」、 2018の論文に提案されている。
【0008】
PDLによる容量の減少に対抗するための直交偏波でのプリコーディング方法は、C. Zhu et al. entitled 「Improved polarization dependent loss tolerance for polarization multiplexed coherent optical systems by polarization pairwise coding」、published in J. Lightwave Technology、vol. 34 no. 8、1746-1753頁、2016の論文に記載されている。
【0009】
直交偏波でのプリコーディングのこの方法が、図1に概略的に示されている。
【0010】
送信される情報シンボル(バイナリワード)は、q元シンボル変調器110-1および110-2において変調コンステレーションのシンボルに変換される。次いで、取得された変調シンボルx1、x2は、それぞれの回転モジュール120-1および120-2を使用して複素平面において角度θの回転にかけられ、回転シンボル、
【数1】
が取得される。第1の回転シンボルの実数部と第2の回転シンボルの実数部が130-1で結合されて、第1の偏波成分(たとえば、第1の水平偏波状態)によって搬送される第1の放射シンボル
【数2】
を提供する。同様に、第1の回転シンボルの虚数部と第2の回転シンボルの虚数部が130-2で結合されて、第1の偏波成分と直交する偏波の第2の偏波成分(たとえば、垂直偏波状態)によって搬送される第2の放射シンボル
【数3】
を提供する。
【0011】
直交偏波成分が放射シンボルX1、X2によってそれぞれ変調された光信号は、光ファイバを介して送信される。
【0012】
しかしながら、この論文で説明するプリコーディング方法は、モノモード/モノコア光ファイバを介した伝送システムにのみ適用され、SDM光通信システムには適用されない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Akram Abouseif's thesis entitled、 「Emerging DSP techniques for multi-core fiber transmission systems」、 published in 2015
【非特許文献2】El Mehdi Amhoud et al. entitled 「Coding Techniques for Spatial Multiplexing on Fiber Optic Systems」、 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、情報シンボルのブロックを送信するために送信チャネルを1度使用するだけで、PDLおよび空間基本チャネル間の干渉(様々なモードおよび/または様々なコア間の干渉)にもかかわらず、高い伝送容量を達成することを可能にする光ファイバ(マルチモードおよび/またはマルチコア)を介したSDM伝送方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法によって定義され、1つのチャネル使用中に、複素平面における変調コンステレーションに属するシンボルを送信することを目的とし、送信に使用される空間基本チャネル数であり、この方法は、
これらのシンボルの実数部からなる第1のベクトル、およびこれらの同じシンボルの虚数部からなる第2のベクトルを提供するために、これらのシンボルが実数部と虚数部に分離され、
第1の変換ベクトルを提供するために、第1の直交線形変換が第1のベクトルに適用され、
第2の変換ベクトルを提供するために、第1の直交線形変換とは異なる第2の直交線形変換が第2のベクトルに適用され、
複素放射シンボルからなるベクトルを提供するために、2つの変換ベクトルが合計される前に、
【数4】
から
【数5】
への既約多項式の解である複素スカラーが、第1または第2の変換ベクトルに乗算され、各複素送信シンボルが空間基本チャネルの第1の状態および第2の偏波状態を変調する
点でオリジナルである。
【0016】
好ましい実施形態によれば、第1の線形変換は、
【数6】
における第1の回転と第1の非自明な順列および/または第1の非自明な反射との合成であり、第2の線形変換は、
【数7】
における第2の回転と第2の非自明な順列および/または第2の非自明な反射との合成である。
【0017】
第1の順列は偶数の複数の転置で構成され得、第2の順列は次いで奇数の複数の転置で構成され、またはその逆も可能である。
【0018】
たとえば、第1の回転と第2の回転は同一である。
【0019】
一実施形態によれば、第1の直交線形変換は恒等行列である。
【0020】
どの実施形態であっても、複素スカラーαは、α2Nが正の実数でない。
【0021】
たとえば、複素スカラーは、jと等しく、ここでj2=-1である。この場合、数値Nは、N≧3の奇数が選択され得る。
【0022】
基本空間チャネルは、光ファイバ内の伝搬モードとすることができる。
【0023】
光ファイバがマルチコアタイプであるとき、空間基本チャネルは、このファイバの異なるコアで構成することができる。
【0024】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して説明する本発明の好ましい実施形態を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】すでに説明したように、2つの直交偏波においてプリコーディングを使用する光ファイバ伝送デバイスを概略的に表す図である。
図2】本発明の一般的な実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したSDM伝送デバイスを概略的に表す図である。
図3】本発明の好ましい実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したSDM伝送デバイスを概略的に表す図である。
図4】本発明の第1の実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したSDM伝送デバイスを概略的に表す図である。
図5】本発明の第2の実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したSDM伝送デバイスを概略的に表す図である。
図6】本発明によるSDM伝送デバイスによって提供される利得の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、光ファイバを介した空間ダイバーシティ(SDM)を備えた伝送システムについて検討する。空間ダイバーシティは、ファイバ内の複数のモードおよび/またはコアに起因する可能性がある。古典的なマルチモードファイバの場合、コアの直径は、考慮される波長で複数のモードの伝搬を可能にするのに十分な大きさである。マルチコアファイバの場合、伝搬はファイバの複数の基本コア内で行われる。以下では、クラッド厚を薄くしたシングルモードファイバの束の場合を、マルチコアファイバと比較する。
【0027】
以下に検討するSDM伝送システムは、一方および/または他方のタイプであり得、その場合、空間基本チャネルは、光ファイバの伝搬モードおよび/またはコアであることが理解される。
【0028】
さらに、光ファイバは、古典的にPDL減衰の影響を受ける、言い換えれば、ファイバにおける異なる偏波状態が同じ減衰を受けないと仮定する。PDL減衰は一般に、ファイバセクション間の光学素子、特に、エネルギー損失、および光信号対雑音比またはOSNR(Optical Signal to Noise Ratio)の変動を生じさせるドープファイバ光増幅器(EDFA)によって導入されることが想起される。しかしながら、偏波分散(PMD)は、受信機のDSP内のチャネル等化によって効果的に補正することができるので、抽象化される。
【0029】
空間基本チャネルについてのPDL減衰の効果は、2つの偏波状態に適用されるHPDL行列によって表すことができる。
【0030】
【数8】
【0031】
式中、
【数9】
は利得行列、
【数10】
は偏波回転行列、
【数11】
は複屈折行列であり、γ∈[0,1]はPDLの値、ΓdB=log10(Γ)を定義し、
【数12】
および
【数13】
である。
【0032】
SDM伝送システムは、複数のN個の空間基本チャネルを使用し、各空間基本チャネルは2つの偏波状態に関連付けられる。したがって、各伝送瞬間、言い換えれば、チャネルの各使用時に、伝送システムは2N個の変調シンボルを送信することができ、偏波状態ごとおよび空間基本チャネルごとに1つのシンボルが送信される。Nは一般的に、数十、場合によってより程度の高い値が選択される。いずれにせよ、N>1、好ましくはN>2である。
【0033】
本発明の根底にある考え方は、異なる変調シンボルの実数部と虚数部を分離し、それらを別個の直交線形変換にかけた後、複素平面において再結合し、次いで、様々な空間基本チャネル/偏波で光信号を変調することである。したがって、異なる偏波状態および異なる空間基本チャネルにわたるPDL減衰の平均化を実行する。
【0034】
図2は、本発明の一般的な実施形態による、光ファイバを介したSDM伝送デバイスを概略的に表す。
【0035】
各伝送間隔で送信されるデータは、2N個の情報シンボル、たとえば、q≦log2Qの2N個のq元ワードの形であり、Qは変調アルファベットの基数である。変調アルファベットは、特にQ~QAMアルファベットであり得る。
【0036】
情報シンボルは、それ自体既知の方法で、ソースコーディングおよび/またはチャネルコーディングから得られるものであり得る。
【0037】
いずれの場合も、2N個の情報シンボルは、q元シンボル変調器210-1、...、210-2Nにおいて、それぞれ2N個の変調シンボルに変換される。これらのシンボルの奇数インデックスは第1の偏波状態に対応し、偶数インデックスは第1の偏波状態に直交する第2の偏波状態に対応する。これらの各変調シンボルは、次のx1、…、x2Nで示され、次いで、分離モジュールI/Q220で実数部と虚数部に分解される。
【0038】
これらの変調シンボルのそれぞれの実数部
【数14】
は、
【数15】
のベクトルXRを形成し、第1の線形結合モジュール230-1に供給される。この第1のモジュールは、行列
【数16】
によって表される第1の直交線形変換Fによって、これらの実数部を結合して、
【数17】
の第1の変換ベクトル
【数18】
を提供する。
【0039】
同様に、変調シンボルの虚数部は、
【数19】
のベクトルXIを形成し、第2の線形結合モジュール230-2に供給される。この第2のモジュールは、行列
【数20】
によって表される第2の直交線形変換Gによって、これらの虚数部を結合して、
【数21】
の第2の変換ベクトル
【数22】
を提供する。
【0040】
直交線形変換FおよびGは、別個に選択されることが有利である。たとえば、それらのうちの一方は直接直交線形変換、言い換えれば、対応する行列は特殊直交群
【数23】
の要素、他方は間接的な直交線形変換である。
【0041】
次いで、第2の変換ベクトルは、
【数24】
における既約可能な多項式
【数25】
の解である、複素スカラー値αによって、240で乗算される。好ましくは、αは複素平面における要素のノルムにならないように選択され、言い換えれば、α2Nは正の実数でないものとする。
【0042】
このようにして乗算された第1の変換ベクトルと第2の変換ベクトルは、最終的に加算器250で合計され、
【数26】
のベクトル
【数27】
を提供し、その複素要素
【数28】
はそれぞれ、N個の空間基本チャネルの2N個の偏波状態を変調するために使用される送信シンボルである。より正確には、インデックスnの空間基本チャネルの第1の偏波状態(たとえば水平偏波成分)の成分は、
【数29】
によって与えられ、この空間基本チャネルの第2の偏波状態のもの(たとえば垂直偏波成分)は、
【数30】
によって与えられ、またはその逆である。
【0043】
したがって、ベクトル
【数31】
は、乗法係数まで、次の形式で表すことができる。
【0044】
【数32】
【0045】
図示されていない変形例によれば、第1の変換ベクトルは、第2の変換ベクトルの代わりに複素スカラー値αで乗算され、このようにして乗算された第1の変換ベクトルは、次いで第2の変換ベクトルと合計されてベクトル
【数33】
を提供する。
【0046】
図3は、本発明の好ましい実施形態による、光ファイバを介したSDM伝送デバイスを概略的に表している。
【0047】
モジュール310-1、...、310-2N、320、330-1、および330-2はそれぞれ、図2のモジュール210-1、...、210-2N、220、230-1、および230-2と同じ機能を果たす。
【0048】
図2に示された実施形態とは異なり、第1の変換ベクトルおよび第2の変換ベクトルは、I/Q結合モジュール340によって結合され、
【数34】
の複素ベクトル
【数35】
を形成する。言い換えれば、この実施形態は、α=jの一般的な実施形態から特別なケースとして推論され、ここでのI/Q結合モジュールは、乗算器240および加算器250に取って代わる。
【0049】
有利なことに、複素スカラーαはノルムではなく、言い換えれば、Nは、N≧3の奇数が選択され得る。
【0050】
ベクトル
【数36】
の複素要素
【数37】
はそれぞれ、N個の空間基本チャネルの2N個の偏波状態を変調するために使用される。
【0051】
図4は、本発明の第1の実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したSDM伝送デバイスを概略的に表している。
【0052】
モジュール410-1、...、410-2N、420、430-1、430-2、440はそれぞれ、図3のモジュール310-1、...、310-2N、320、330-1、330-2、および340と同じ機能を果たす。
【0053】
この実施形態は、第1の線形変換が直接的、すなわち、
【数38】
の空間内の回転Rであるという点で、図3の好ましい実施形態の特殊なケースである。
【0054】
第2の線形変換は、この回転Rと、
【数39】
の非自明な順列P、および/または
【数40】
の非自明な反射Sの合成によって得られる。非自明な順列とは、恒等行列
【数41】
とは異なる順列を意味する。非自明な反射とは、
【数42】
とは異なる反射を意味する。
【0055】
順列は偶数の転置で構成することもでき、その場合、第2の線形変換は依然として回転であり、または奇数のそのような転置で構成することもできる。
【0056】
順列は巡回であり得、この場合、第2の線形変換が行列PRによって表され、ここで、P∈{Φ,Φ2,...,Φ2N-1}は可能な順列の集合(自明な順列を除く)であり、Φは巡回順列行列であり、次式で定義される。
【0057】
【数43】
【0058】
一般的な場合と同様に、第1と第2の線形変換の役割は入れ替えることができる。言い換えれば、回転Rを虚数部XIのベクトルに適用することができ、回転と順列および/または反射の合成(S)PR/S(P)Rを実数部XRのベクトルに適用することができる。
【0059】
図5は、本発明の第2の実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したSDM伝送デバイスを概略的に表す。
【0060】
モジュール510-1、...、510-2N、520、530、540はそれぞれ、図3のモジュール310-1、...、310-2N、320、530-2、および540と同じ機能を果たす。
【0061】
この例示的な実施形態は、第1の線形変換が自明であり、恒等行列
【数44】
に等しいこと、および第2の線形変換が、この回転Rと、
【数45】
の自明または非自明の順列Pとの合成から生じるという点で、図3の好ましい実施形態の特殊なケースである。
【0062】
ここで、第1のベクトルおよび第2の変換ベクトルは、上記のように2N個の偏波状態を変調するためのシンボルの複素ベクトル
【数46】
を形成するために結合される。
【0063】
すべての場合において、受信された光信号は、空間的に(伝搬モードおよび/またはコアごとに)、また偏波状態ごとに分離される。2N×2NのMIMOチャネルは、たとえばパイロットシンボルからLS(最小二乗法)アルゴリズムを使用して推定され得る。次いで、伝送デバイスによって送信されたシンボルは、MIMOデコーダを使用して、受信した信号をチャネル行列の擬似逆行列、すなわち、
【数47】
で乗算することを目的としたML(最尤)推定、またはより簡単なZF(Zero Forcing)推定を使用して推定することができ、ここで、2N×2Nのサイズの
【数48】
は、MIMOチャネルの推定行列である。
【0064】
【数49】
の各成分の実数部と虚数部を分離し、2N個の実数部からなる第1のベクトル
【数50】
および2N個の虚数部からなる第2のベクトル
【数51】
を形成した後、第1の逆直交変換F-1が第1のベクトル
【数52】
に適用され、第2の逆直交変換G-1が第2のベクトルに適用され、α-1で乗算され、
【数53】
となる。次いで、このようにして取得されたベクトルの同じランクの成分から、変調シンボルの実数部および虚数部を推定することができる。
【0065】
図6は、N=4の空間基本チャネル、ここではマルチコアファイバ(MCF)の基本コアについて、本発明によるSDM伝送デバイスによって提供される利得を一例で示す。
【0066】
PDLの値、ΓdBはすべての空間基本チャネルで同じであり、4.5dBに等しいと仮定し、偏波回転φはπ/2に等しいとした。
【0067】
光ファイバは各々100kmの10セクションで構成されており、連続するセクション間には様々なモードに対して一定の利得を持つ光増幅器が設けられている。シンボルレートは12Gbaudであり、変調コンステレーションは16-QAMであった。
【0068】
選択された実施形態は、図5のP=Id2Nのものであった。
【0069】
受信時の推定は、ML推定器を使用して行われた。
【0070】
図6は、マルチコアファイバにおける光信号対雑音比(OSNR)の関数としてのビットエラーレート(BER)を示している。この場合、α2N=1であるが、それでも非IQコード化SDMシステムと比較して1dB超の利得(OSNR)が観測される。
【符号の説明】
【0071】
110-1 q元シンボル変調器
110-2 q元シンボル変調器
120-1 回転モジュール
120-2 回転モジュール
210 q元シンボル変調器
220 分離モジュールI/Q
230-1 第1の線形結合モジュール
230-2 第2の線形結合モジュール
240 乗算器
250 加算器
340 I/Q結合モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-04-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明は、偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法によって定義され、1つのチャネル使用中に、複素平面における変調コンステレーションに属する2N個のシンボルを送信することを目的とし、Nが送信に使用される空間基本チャネル数であり、この方法は、
これらのシンボルの実数部からなる第1のベクトル、およびこれらの同じシンボルの虚数部からなる第2のベクトルを提供するために、これらのシンボルが実数部と虚数部に分離され、
第1の変換ベクトルを提供するために、第1の直交線形変換が第1のベクトルに適用され、
第2の変換ベクトルを提供するために、第1の直交線形変換とは異なる第2の直交線形変換が第2のベクトルに適用され、
2N個の複素放射シンボルからなるベクトルを提供するために、2つの変換ベクトルが合計される前に、
【数4】
から
【数5】
への既約多項式の解である複素スカラーが、第1または第2の変換ベクトルに乗算され、各複素送信シンボルが空間基本チャネルの第1の状態および第2の偏波状態を変調する
点でオリジナルである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法であって、1つのチャネル使用中に、複素平面における変調コンステレーションに属する2N個のシンボルを送信することを目的とし、N>1が送信に使用される空間基本チャネル数であり、
これらのシンボルの実数部からなる第1のベクトル、およびこれらの同じシンボルの虚数部からなる第2のベクトルを提供するために、前記シンボルが、前記実数部と前記虚数部(220~520)に分離され、
第1の変換ベクトルを提供するために、第1の直交線形変換(230-1、...、430-1)が前記第1のベクトルに適用され、
第2の変換ベクトルを提供するために、前記第1の直交線形変換とは異なる第2の直交線形変換(230-2、...、530-2)が前記第2のベクトルに適用され、
2N個の複素放射シンボルからなるベクトルを提供するために、前記2つの変換ベクトルが合計される前に、
【数1】
における
【数2】
からの既約多項式の解である複素スカラーが、前記第1または前記第2の変換ベクトルに乗算され、各複素送信シンボルが空間基本チャネルの第1の状態および第2の偏波状態を変調する
ことを特徴とする、偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項2】
前記第1の線形変換が、
【数3】
における第1の回転と第1の非自明な順列および/または第1の非自明な反射との合成であり、前記第2の線形変換が、
【数4】
における第2の回転と第2の非自明な順列および/または第2の非自明な反射との合成であることを特徴とする、請求項1に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項3】
前記第1の順列が偶数の複数の転置によって構成され、前記第2の順列が奇数の複数の転置によって構成されるか、またはその逆であることを特徴とする、請求項2に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項4】
前記第1の回転と前記第2の回転が同一であることを特徴とする、請求項3に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項5】
前記第1の直交線形変換が恒等行列であることを特徴とする、請求項2に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項6】
前記複素スカラーαが、α2Nが正の実数でないように選択されることを特徴とする、請求項1に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項7】
前記複素スカラーがjに等しく、j2=-1であることを特徴とする、請求項5に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項8】
数値Nが奇数であり、N≧3であることを特徴とする、請求項7に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項9】
前記空間基本チャネルが前記光ファイバ内の伝搬モードであることを特徴とする、請求項1に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【請求項10】
前記光ファイバがマルチコアタイプであり、基本空間チャネルが前記ファイバの異なるコアであることを特徴とする、請求項1に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したSDM伝送方法。
【国際調査報告】