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特表2024-529774有機充填剤を含有する過酸化物架橋性ゴム組成物
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  • 特表-有機充填剤を含有する過酸化物架橋性ゴム組成物 図1
  • 特表-有機充填剤を含有する過酸化物架橋性ゴム組成物 図2
  • 特表-有機充填剤を含有する過酸化物架橋性ゴム組成物 図3
  • 特表-有機充填剤を含有する過酸化物架橋性ゴム組成物 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】有機充填剤を含有する過酸化物架橋性ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240801BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240801BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/14
C08L97/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512161
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2022073490
(87)【国際公開番号】W WO2023025808
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】21192648.0
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21199589.9
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244562
【氏名又は名称】サンコール・インダストリーズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・シュトゥッカー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルト・シュマウクス
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ヴィットマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・ポドシュン
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・シュヴァイガー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC111
4J002AH002
4J002BB061
4J002BB071
4J002BB151
4J002BB241
4J002BB271
4J002BD121
4J002BG043
4J002BG053
4J002BH023
4J002CP031
4J002DA036
4J002DE076
4J002DE236
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ046
4J002EK007
4J002EK037
4J002EK047
4J002EK057
4J002FD012
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD147
4J002FD153
4J002GJ02
4J002GM00
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の過酸化物を含む加硫系VSと、VSの少なくとも1種の過酸化物によって架橋可能な少なくとも1種のゴムを含有するゴム成分Kと、0.20~0.45Bq/g炭素の範囲内の14C含有量及び<25.0μmのd99値を有する少なくとも1種の有機充填剤を含有する充填剤成分Fとを含む加硫性ゴム組成物に関する。本発明はまた、(A)部として上述の成分K及びFを含有するゴム組成物と、(B)部として少なくとも1種の過酸化物を少なくとも含む加硫系VSとを含むキットオブパーツ;そこから得ることができる加硫済みゴム組成物;工業用ゴム物品、好ましくは封止機能を有するものの製造における使用のための上述の製品の1種の使用;対応する工業用ゴム物品それ自体、好ましくは封止機能を有するもの;及び加硫済みゴム組成物において破断時伸びを増加させると同時に圧縮永久ひずみを減少させるための有機充填剤の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分Kと、充填剤成分Fと、加硫系VSとを含む加硫性ゴム組成物であって、
前記加硫系VSが、少なくとも1種の過酸化物を含み、
前記ゴム成分Kが、前記加硫系VSの少なくとも1種の過酸化物によって架橋可能である少なくとも1種のゴムを含有し、
前記充填剤成分Fが、0.20~0.45Bq/g炭素の範囲内の14C含有量及び<25.0μmのd99値を有する少なくとも1種の有機充填剤を含有する、
ゴム組成物。
【請求項2】
前記有機充填剤が、好ましくはISO 13320:2009に従うレーザー回折によってそれぞれ決定される、<20.0μm、好ましくは<15.0μm、特に好ましくは<10μm、より特に好ましくは<9.0μm、より好ましくは<8.0μm、より好ましくは<7.0μm、最も好ましくは<6.0μmのd99値を有することを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記有機充填剤が、好ましくはISO 13320:2009に従うレーザー回折によってそれぞれ決定される、<7.0μm、好ましくは<6.0μm、特に好ましくは<5.0μmのd90値、及び/又は<3.0μm、好ましくは<2.0μm、特に好ましくは<1.0μmのd25値を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記有機充填剤が、10~150m2/gの範囲内、特に好ましくは20~120m2/gの範囲内、更により好ましくは30~110m2/gの範囲内、特に40~100m2/gの範囲内、最も好ましくは40~<100m2/gの範囲内のBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項以上に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記有機充填剤が、無灰及び無水充填剤それぞれに対して、>8質量%~<30質量%、好ましくは>10質量%~<30質量%、特に好ましくは>15質量%~<30質量%、より特に好ましくは>20質量%~<30質量%の範囲内の酸素含有量を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項以上に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記有機充填剤が、無灰及び無水充填剤それぞれに対して、>60質量%~<90質量%、好ましくは>60質量%~<85質量%、特に好ましくは>60質量%~<82質量%、より特に好ましくは>60質量%~<80質量%の範囲内の炭素含有量を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項以上に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の有機充填剤を、10~150、特に好ましくは15~130、より特に好ましくは20~120phr、更により好ましくは30~100phr、最も好ましくは40~80phrの範囲内にある分量で含有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項以上に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記有機充填剤がリグニン系充填剤であり、好ましくは少なくともリグニン、更により好ましくは有機充填剤それ自体が、水熱処理によって得られ得る形態で少なくとも部分的に存在し、特に好ましくは水熱処理によって得られ得、前記水熱処理が、好ましくは>100℃~<300℃、特に好ましくは>150℃~<250℃の範囲内の温度で実施されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項以上に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記加硫系VSの前記少なくとも1種の過酸化物が、少なくとも1種の有機過酸化物、好ましくは、ジアルキル過酸化物、アルキルアリール過酸化物、ジアリール過酸化物、アルキル過酸エステル、アリール過酸エステル、ジアシル過酸化物、多価過酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択される有機過酸化物、特に好ましくは、過酸化ジ-tert.-ブチル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert.-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、過酸化ジクミル、過酸化tert.-ブチルクミル、tert.-ブチルペルオキシベンゾエート、過酸化ジベンゾイル、1,1-ジ(tert.-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、及びビス-(tert.-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、並びにそれらの混合物からなる群から選択される有機過酸化物を含み、特にそれらを示すことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項以上に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記ゴム成分Kの前記少なくとも1種のゴムが、その主鎖に炭素-炭素二重結合を持たないゴム、好ましくはその構造全体中にいずれの炭素-炭素二重結合も持たないゴムからなる群から選択され、特に好ましくは、HNBR(水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、アクリレート-エチレンゴム(AEM)、エチレン-酢酸ビニルゴム(EVM)、塩素化ゴム、特に、塩素化ポリエチレン(CM)、シリコーンゴム(Q)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、フッ素ゴムエラストマー(FPM)、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項以上に記載のゴム組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の少なくとも一価不飽和の、好ましくは多価不飽和の有機化合物を含み、該有機化合物が、好ましくは前期ゴム組成物の前記加硫系VSの一部であり、該有機化合物が、好ましくは、ジ-(メタ)アクリレート、ジマレインイミド、トリアリル化合物、及び不飽和ポリマー、例えば、1,2-ポリブタジエン及びtrans-ポリオクテナマーであって、好ましくは、それぞれ、<10,000g/mol、特に好ましくは<5,000g/mol、より特に好ましくは<2,500g/mol、一層より好ましくは<1,500g/mol、特に<1,000g/mol、最も好ましくは<500g/molの数平均分子量(Mn)を有するもの、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、特に好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(EDMA)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TRIM)、N,N'-m-フェニレンビスマレイミド(MPBM)、ジアリルテレフタレート(DATP)、トリアリルシアヌレート(TAC)、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項以上に記載のゴム組成物。
【請求項12】
(A)部として、請求項1から11のいずれか一項以上にそれぞれ規定の上述のゴム成分K、及び少なくとも充填剤成分Fを少なくとも含むゴム組成物であって、しかし、(A)部が、請求項1から11のいずれか一項以上に規定の加硫系VSの少なくとも1種の過酸化物を含まない、ゴム組成物と
(B)部として、少なくとも1種の過酸化物を含む、請求項1から11のいずれか一項以上に規定の加硫系VSと
を空間的に分離された形態で含む、キットオブパーツ。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項以上に記載の加硫性ゴム組成物の加硫によって、又は請求項12に記載のキットオブパーツの(A)部と(B)部との両方を合わせ、混合することによって得ることができる加硫性ゴム組成物の加硫によって得ることができる、加硫済みゴム組成物。
【請求項14】
工業用ゴム物品の製造、好ましくは封止機能を有する工業用ゴム物品、特に、シール、異形材、ダンパー、リング、及びホースの製造における利用のための、請求項1から11のいずれか一項以上に記載の加硫性ゴム組成物、請求項12に記載のキットオブパーツ、又は請求項13に記載の加硫済みゴム組成物の使用。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項以上に記載の加硫性ゴム組成物、請求項12に記載のキットオブパーツ、又は請求項13に記載の加硫済みゴム組成物を使用することによって製造された、工業用ゴム物品、好ましくは封止機能を有するもの、特にシール、異形材、ダンパー、リング、又はホース。
【請求項16】
少なくとも1種の過酸化物による加硫によって得ることができる加硫済みゴム組成物において破断時伸びを増加させると同時に圧縮永久ひずみを減少させるための、請求項1から6及び請求項8のいずれか一項以上に規定の有機充填剤の使用であって、この目的のために利用される前記加硫性ゴム組成物が、前記少なくとも1種の過酸化物及び前記有機充填剤に加えて、該少なくとも1種の過酸化物によって架橋可能な少なくとも1種のゴムを含有する、有機充填剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の過酸化物を含む加硫系VSと、VSの少なくとも1種の過酸化物によって架橋可能な少なくとも1種のゴムを含むゴム成分Kと、0.20~0.45Bq/g炭素の範囲内の14C含有量及び<25.0μmのd99値を有する少なくとも1種の有機充填剤を含有する充填剤成分Fとを含む加硫性ゴム組成物、(A)部として上述の成分K及びFを含有するゴム組成物と、(B)部として少なくとも1種の過酸化物を少なくとも含む加硫系VSとを含むキットオブパーツ、そこからそれぞれ得ることができる加硫済みゴム組成物、工業用ゴム物品(technical rubber articles)、好ましくは封止機能を有するものの製造における利用のための上述の製品の1種の使用、対応する工業用ゴム物品それ自体、好ましくは封止機能を有するもの、並びに加硫済みゴム組成物において破断時伸びを増加させると同時に圧縮永久ひずみを減少させるための有機充填剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物における補強性充填剤の使用は、先行技術において公知である。特に、この目的のために使用されるファーネスカーボンブラック等の産業用カーボンブラックについてここで言及しておかなければならない。産業用カーボンブラックは、補強性充填剤の最大量を占め続けている。産業用カーボンブラックは、高度に芳香族性の石油化学油をベースに、不完全燃焼又は炭化水素の熱分解によって製造される。しかし、環境的観点から、充填剤の製造に化石エネルギー源を使用することを避けるか、又はそれを最小限に低減させることが望ましい。カーボンブラックの比表面積にもよるが、製造プロセスにおいて1トンの産業用カーボンブラックを製造するために約1トンのCO2が放出されることにここで留意すると特に深刻である。加えて、産業用カーボンブラックは、色が理由で特定の用途には使用できないことが多い場合がある。
【0003】
補強性充填剤を含有するゴム組成物には、種々の異なる応用分野がある。それは、例えば、タイヤ産業だけでなく、工業用ゴム物品の分野、ここでは例えば、良好な封止機能を有する該当物品、例えばエラストマーシールを提供するための分野に用いることができる。エラストマーシールは、通常、異なる操作条件下で、そして変化する操作条件であっても、例えば、高温及び/又は高圧でも、長期間にわたって封止機能を保証しなければならない。
【0004】
ゴム産業において最も重要な架橋方法は、硫黄加硫である。しかし、硫黄によって架橋されたエラストマーは、多くの場合、十分な耐熱性を有しておらず、変形永久ひずみ(deformation set)が大き過ぎ、そのために、この架橋方法は、意図される良好な封止機能を有する上述の工業用ゴム物品を製造するための、例えばエラストマーシールを製造するためのゴム組成物の加硫の分野には不利であることが多く、したがって選択される架橋方法にはならない。過酸化物による架橋は、硫黄による加硫に次ぐ、二番目に重要なゴムの架橋方法である。過酸化物による架橋は、とりわけEPDM等の主鎖に二重結合を持たないゴムにとって、技術的に非常に重要である。硫黄によって架橋されたエラストマーと比較して、過酸化物によって架橋されたエラストマーは、通常、良好な耐熱性(安定なC-C結合)及び低い変形永久ひずみを有する。
【0005】
シールの製造に使用されるゴム組成物の耐荷力についての予測を得るために、例えば、いわゆる圧縮永久ひずみ(DVR、ドイツ語ではDruckverformungsrest)が、使用条件下で、又はより厳しい条件下、例えば、より高い温度で測定されることが多い。圧縮永久ひずみは、負荷を除去した後に残る試料体の変形の量を示す。圧縮永久ひずみ試験は、圧縮による長期の静的変形下でのエラストマーの粘弾性挙動を評価するために使用される。比較試験方法として、機械工学用の封止エレメント、制動エレメント(他にも多数ある)としてエラストマーを利用するために評価する役割を果たす。したがって、圧縮永久ひずみによって、初期変形に対する、長期の一定の圧力負荷及びその後の緩和の後にエラストマーに残る変形のパーセンテージを決定することが可能である。それは、圧力及び/又は応力等の変形後のエラストマーの回復に関する、その機械的老化を表現する重要な因子である。この老化は、化学的老化過程、例えば、熱酸化の老化にも影響を与える。シールの製造に使用されるゴム組成物の耐荷力についての予測を得るために、圧縮永久ひずみに加えて、例えば、引張伸び挙動も、例えば、室温で、及び熱空気老化後に試験される。通常、室温での高い破断時伸び及び低い圧縮永久ひずみの両方が目標とされる。上述の過酸化物架橋の場合、両方の特性は一般に、過酸化物架橋の架橋密度に依存し、過酸化物の投与量によって制御されることが多く、更に使用される特定の架橋助剤によって制御されることもある。しかし、架橋密度が高いほど、通常、破断時伸びと圧縮永久ひずみの両方が低くなるが、上述のように、破断時伸びが低いと不利であり、特に上述のように老化に関して不利であるだけでなく、亀裂性に関しても不利である。これらの2つの特性、破断時伸び及び架橋密度は、通常、従来の補強性充填剤、例えば、カーボンブラック及び無機充填剤、例えばケイ酸を使用するときには、互いに独立に最適化することができない。
【0006】
したがって、過酸化物によって架橋可能であり、上文に述べた欠点を呈することのない、新たなゴム組成物に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2017/085278 A1
【特許文献2】WO 2017/194346 A1
【特許文献3】EP 3 470 457 A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Determination of surface-accessible acidic hydroxyls and surface area of lignin by cation dye adsorption」(Bioresource Technology 169 (2014) 80~87)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、工業用ゴム物品及び/又はこれらの物品の成分を提供することを可能にするのに適した、過酸化物によって加硫可能なゴム組成物、特に優れた封止機能を有するものを提供することであり、そこから得ることができる過酸化物によって加硫されるゴム組成物は、高い耐熱性を示さなければならないだけでなく、高い破断時伸びと同時に低い圧縮永久ひずみの両方によって特徴付けられるべきである。特に、過酸化物によって加硫可能な新たなゴム組成物は、これらの2つのパラメータを最適に調整し、それらのバランスを取ることを可能にし、それによって、中でも老化及び亀裂性に関して利点を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本特許請求で請求される主題、並びに以下の明細書に記載のこれらの主題の好ましい実施形態によって達成される。
【0011】
本発明の第1の主題は、ゴム成分Kと、充填剤成分Fと、加硫系VSとを含む加硫性ゴム組成物であって、
加硫系VSが、少なくとも1種の過酸化物を含み、
ゴム成分Kが、加硫系VSの少なくとも1種の過酸化物によって架橋可能である少なくとも1種のゴムを含有し、
充填剤成分Fが、0.20~0.45Bq/g炭素の範囲内の14C含有量及び<25.0μmのd99値を有する少なくとも1種の有機充填剤を含有する、
ゴム組成物である。
【0012】
本発明の別の主題は、
(A)部として、本発明によって用いられる上述のゴム成分K、及び少なくとも本発明によって用いられる充填剤成分Fを少なくとも含有するゴム組成物であって、キットオブパーツの(A)部が、しかし、本発明によって用いられる加硫系VSの少なくとも1種の過酸化物を含まない、ゴム組成物と
(B)部として、少なくとも1種の過酸化物を含む本発明によって用いられる加硫系VSと
を空間的に分離された形態で含む、キットオブパーツである。
【0013】
本発明の別の主題は、本発明による加硫性ゴム組成物の加硫によって、又は本発明によるキットオブパーツの(A)部と(B)部との2つを合わせ、混合することによって得ることができる加硫性ゴム組成物の加硫によって得ることができる、加硫済みゴム組成物である。
【0014】
本発明の別の主題は、工業用ゴム物品の製造、好ましくは封止機能を有する工業用ゴム物品、特に、シール、異形材、ダンパー、リング、及びホースの製造における使用のための、本発明による加硫性ゴム組成物、本発明によるキットオブパーツ、又は本発明による加硫済みゴム組成物の使用である。
【0015】
本発明の別の主題は、本発明による加硫性ゴム組成物、本発明によるキットオブパーツ、又は本発明による加硫済みゴム組成物を利用することによって製造された、工業用ゴム物品、好ましくは封止機能を有するもの、特にシール、異形材、ダンパー、リング、又はホースである。
【0016】
本発明の別の主題は、少なくとも1種の過酸化物による加硫によって得ることができる加硫済みゴム組成物において破断時伸びを増加させると同時に圧縮永久ひずみを減少させるための、本発明によって利用される有機充填剤の使用であって、この目的のために使用される加硫性ゴム組成物が、少なくとも1種の過酸化物及び有機充填剤に加えて、該少なくとも1種の過酸化物によって架橋可能な少なくとも1種のゴムを含有する、有機充填剤の使用である。
【0017】
本発明によって用いられる有機充填剤は、既知の、特に、過酸化物によって架橋されるゴム用途のための無機充填剤とカーボンブラックの両方に対する、環境に優しい代替物であることが見出された。更に、本発明によって用いられる有機充填剤は、ゴム組成物、特に、工業用ゴム物品、好ましくは封止機能を有するもの、例えば、異形材、シール、ダンパー、リング、及び/又はホースを製造するためのゴム組成物に組み込むものとして、丁度適していることが見出された。
【0018】
加えて、本発明によるゴム組成物は、過酸化物による加硫の後に、高い破断時伸びと低い圧縮永久ひずみに過ぎないことの両方によって特徴付けられることが見出された。更にまた、調整するべきこれらの2つのパラメータの最適なバランスを、本発明による加硫性ゴム組成物によって達成することができることが示された。この状況において、これらの有利な効果が、本発明によって用いられる有機充填剤をゴム組成物に使用したことに起因することが見出された。特に、驚くべきことに、本発明によって用いられる有機充填剤は、過酸化物による加硫に与えられる温度及び時間枠内でポリマーの架橋に化学的に組み入れられることが見出された。補強性充填剤のこの結合を用いて、特に本発明によって用いられる有機充填剤の特定の界面化学を使うことによって、ゴムのポリマー鎖の一部がその可動性を制限され、それによって動的変形の際の貯蔵弾性係数の増加及び損失弾性係数の低下がもたらされる。したがって、本発明によって用いられる有機充填剤のこの有利で特殊な特徴によって、ポリマー-ポリマー架橋を低減させること、それでも低い圧縮永久ひずみ及び高い破断時伸びを達成することが可能になる。
【0019】
本発明によるゴム組成物は、加硫後に高い耐熱性を呈するだけでなく、改善された、すなわち、低減した圧縮永久ひずみを呈することが見出されており、これは特に、得られた製品が工業用ゴム物品の分野、例えば、シール、ダンパー、ホース、及びリング、例えばOリングに使用されるときに関連する。特に、驚くべきことに、過酸化物によって架橋されるゴム配合物において産業用カーボンブラックを本発明によって用いられる有機充填剤で少なくとも部分的に置きかえると、圧縮永久ひずみが改善され、すなわち減少し、そしてこれは特に、産業用カーボンブラックを含有し、過酸化物によって架橋されたゴム配合物と比較して既に有意に低い架橋密度で改善されることが見出された。これによって、高い破断時伸びを設定することが可能になり、特に、それによって標的とするゴム特性調整のための操作の領域を広げることができるようになる。
【0020】
更に、驚くべきことに、本発明によるゴム組成物は、特に加硫後に、封止機能を有するエラストマー部品及び動態特性又は低い永久ひずみ挙動を有するエラストマー部品に使用することができることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例に記載のTable 3.3に示された結果について、決定された引張伸び挙動の概要を示す。
図2】実施例に記載のTable 3.3に示された結果について、100、200、及び300%の伸びで決定された応力値の概要を示す。
図3】実施例に記載のTable 3.3に示された結果について、引張強さ、破断時伸び、及びショアA硬さについて決定された値の概要を示す。
図4】実施例に記載のTable 3.3に示された結果について、異なる温度での圧縮永久ひずみについて決定された値の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
「含む(comprising)」という用語は、例えば、本発明による加硫性ゴム組成物及び本明細書に記載される方法の文脈における方法工程又は段階に関係して本発明において使用される場合、好ましくは、「~からなる」という意味を有する。この文脈において、例えば、本発明による加硫性ゴム組成物に関して、その中に必然的に存在する構成物質に加えて、後述する任意選択で含有される更なる構成物質の1つ以上もその中に含有され得る。全ての構成物質は、後述するそれらの好ましい実施形態の各々に存在し得る。本発明による方法及び本明細書に記載される方法に関して、これらは、更なる任意選択の方法工程及び段階を、必須の工程及び/又は段階に加えて有し得る。
【0023】
本明細書に記載される組成物、例えば、本発明による加硫性ゴム組成物に含有される全ての構成物質(各場合において、全ての必須な構成物質、及びそれに加えて全ての任意選択の構成物質を含む)の量は、合計するとそれぞれ100質量%になる。
【0024】
加硫性ゴム組成物
本発明による加硫性ゴム組成物は、ゴム成分Kと、充填剤成分Fと、加硫系VSとを含む。
【0025】
好ましくは、加硫系VSは、いかなる遊離硫黄も含有せず、特に、本発明による加硫性ゴム組成物それ自体は、いかなる遊離硫黄も含有しない。言い換えれば、本発明による加硫性ゴム組成物は、好ましくは、過酸化物架橋の前、後、又は同時におそらく起こり得ると思われる硫黄加硫によって加硫可能ではない。好ましくは、本発明による加硫性ゴム組成物は、このように過酸化物によって排他的に架橋される。
【0026】
充填剤成分F
本発明による加硫性ゴム組成物の充填剤成分Fは、少なくとも1種の有機充填剤を含む。
【0027】
本発明によって用いられる充填剤は有機性であるため、沈降ケイ酸等の無機充填剤はこの範疇に入らない。
【0028】
充填剤、特に有機充填剤という用語は、当業者に公知である。好ましくは、本発明によって用いられる有機充填剤は、補強性充填剤、すなわち活性充填剤である。補強性又は活性充填剤は、非活性(非補強性)充填剤とは対照的に、ゴム組成物中のゴムと相互作用することによって、ゴムの粘弾性を変えることができる。例えば、それらは、ゴムの粘度に影響を与えることができ、例えば、引裂強さ、引裂伝播抵抗、及び摩耗に関して加硫物の破壊挙動を改善することができる。一方、不活性充填剤はゴムマトリックスを希釈するものである。
【0029】
本発明によって用いられる有機充填剤は、0.20~0.45Bq/g炭素、好ましくは0.23~0.42Bq/g炭素の範囲内の14C含有量を有する。上で言及された必要とされる14C含有量は、バイオマスから得られる有機充填剤によって、それを更に処理又は反応させることによって、好ましくは分別することによって達成され、分別は、熱的、化学的、及び/又は生物学的に実施することができ、好ましくは熱的及び化学的に実施される。よって、特に化石燃料等の化石材料から得られる充填剤は、相当する14C含有量を有していないために、本発明によって用いるべき本発明による充填剤の定義内には入らない。
【0030】
本明細書では、バイオマスは、原則として任意のバイオマスとして定義され、本明細書において「バイオマス」という用語は、いわゆる、ファイトマス、すなわち植物に由来するバイオマス、ズーマス、すなわち動物に由来するバイオマス、及び微生物バイオマス、すなわち真菌を含めた微生物に由来するバイオマスを含み、バイオマスは、乾燥バイオマス又は新鮮バイオマスであり、死んだ又は生きた生物に由来する。本明細書において充填剤の製造に特に好ましいバイオマスは、ファイトマスであり、好ましくは死んだファイトマスである。死んだファイトマスは、中でも、枯れた、拒絶された、又は切り離された植物及びそれらの部分を含む。これらには、例えば、折れ葉及び切れ葉、穀物の茎、脇芽、小枝及び枝、落ち葉、伐採又は剪定木、並びに種子及び果実並びにそれらに由来する部分だけでなく、おが屑、かんな屑/木屑、及び木材加工に由来する他の生成物も含まれる。
【0031】
好ましくは、有機充填剤は、無灰及び無水充填剤それぞれに対して、>60質量%~<90質量%、特に好ましくは>60質量%~<85質量%、より特に好ましくは>60質量%~<82質量%、より好ましくは>60質量%~<80質量%の範囲内の炭素含有量を有する。炭素含有量を決定するための一方法は、以降の方法セクションで言及する。この点において、有機充填剤は、化石原料で作製された産業用カーボンブラック等のカーボンブラックと、再生する原料で作製されたカーボンブラックのいずれとも異なる。何故なら、カーボンブラックは、相当する炭素含有量が少なくとも95質量%であるからである。
【0032】
好ましくは、有機充填剤は、無灰及び無水充填剤それぞれに対して、>8質量%~<30質量%、特に好ましくは>10質量%~<30質量%、より特に好ましくは>15質量%~<30質量%、更により特に好ましくは>20質量%~<30質量%の範囲内の酸素含有量を有する。酸素含有量は、例えば、EuroVector S.p.A.社のEuroEA3000 CHNS-O Analyzerを使用する高温熱分解によって決定することができる。
【0033】
好ましくは、有機充填剤は、>10~<150m2/gの範囲内、特に好ましくは20~120m2/gの範囲内、より好ましくは30~110m2/gの範囲内、特に40~100m2/gの範囲内、最も好ましくは40~<100m2/gの範囲内のBET比表面積(Brunauer、Emmett、及びTellerに従う全比表面積)を有する。
【0034】
好ましくは、有機充填剤は、10~<200m2/gの範囲内のSTSA表面積を有する。STSA表面積(統計的厚さ比表面積)を決定するための方法は、以降の方法セクションで言及する。好ましくは、有機充填剤は、10~150m2/gの範囲内、特に20~120m2/gの範囲内、より特に好ましくは30~110m2/gの範囲内、特に40~100m2/gの範囲内、最も好ましくは40~<100m2/gの範囲内のSTSA表面積を有する。
【0035】
好ましくは、有機充填剤は、フェノール性OH基、フェノレート基、脂肪族OH基、カルボン酸基、カルボキシレート基、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の官能基を有する。
【0036】
好ましくは、本発明によって用いられる有機充填剤は、バイオマス及び/又はバイオマス成分から製造されるリグニン系有機充填剤である。例えば、リグニン系有機充填剤を製造するためのリグニンは、バイオマスから単離し、抽出し、及び/又は溶解させることができる。バイオマスからリグニン系有機充填剤を製造するためのリグニンを得るための適切な方法は、例えば、加水分解法又はパルプ化法、例えば硫酸塩パルプ化法である。「リグニン系」という用語は、本発明で使用する場合、好ましくは、本発明によって用いられる有機充填中に1つ以上のリグニン単位及び/又は1つ以上のリグニン足場が存在することを意味する。リグニンは、植物の細胞壁に組み込まれた固体生体高分子であり、それによって植物細胞の木化をもたらす。そういうものとして、リグニンは、バイオマス、特に生物学的に再生する原料に存在し、したがって、特に水熱処理された形態で、環境に優しい充填剤代替物になる。
【0037】
好ましくは、リグニン、及び好ましくは本発明によって用いられる有機充填剤それ自体(それがリグニン系充填剤である場合)は、水熱処理された形態で少なくとも部分的に存在し、各場合において水熱処理によって得ることができることが特に好ましい。特に好ましくは、本発明によって用いられる有機充填剤は、水熱処理によって得られ得るリグニンをベースとする。水熱処理、特にリグニン及びリグニン含有有機充填剤の水熱処理の適切な方法は、例えば、WO 2017/085278 A1及びWO 2017/194346 A1、並びにEP 3 470 457 A1に記載されている。好ましくは、水熱処理は、液体の水の存在下で、>100℃~<300℃、特に好ましくは>150℃~<250℃の温度で実施される。好ましくは、有機充填剤はリグニン系充填剤であり、好ましくは少なくともリグニン、更により好ましくは有機充填剤それ自体は、水熱処理によって得られ得る形態で少なくとも部分的に存在し、特に好ましくは水熱処理によって得られ得、水熱処理は、好ましくは>100℃~<300℃、特に好ましくは>150℃~<250℃の範囲内の温度で実施されたものである。任意選択で、この目的のために使用される出発物質、例えばリグニン含有原料、特にリグニンは、水熱処理が実施される前に既に少なくとも1種の架橋剤と反応させることができる。架橋剤は、好ましくは、リグニンの架橋性基と反応することができる少なくとも1種の官能基を有する。架橋剤は、好ましくは、アルデヒド、カルボン酸無水物、エポキシド、ヒドロキシル、及びイソシアネート基、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の官能基を有する。好ましくは、架橋剤は、アルデヒド、エポキシド、酸無水物、ポリイソシアネート、及び/又はポリオールから、特にアルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、フルフラール、及び/又は糖アルデヒドから選択される。そのプロセスにおいて、架橋剤は、リグニンのフェノール環の遊離オルト及びパラ位と、芳香族及び脂肪族OH基と、並びに/又はカルボキシル基と反応することができる。
【0038】
好ましくは、有機充填剤は、7~9の範囲内、特に好ましくは>7~<9の範囲内、より特に好ましくは>7.5~<8.5の範囲内のpH値を有する。
【0039】
本発明によって用いられる有機充填剤は、<25.0μmのd99値を有する。d99値を決定するための方法は、以降の方法セクションに記載されており、ISO 13320:2009に従うレーザー回折によって実施される。下文で言及するd90及びd25値は、同様に決定される。当業者であれば、本発明によって用いられる有機充填剤が粒子の形態で存在すること、そしてこれらの粒子の平均粒径(平均粒度)が上述のd99値によって、並びにやはり上述のd90及びd25値によって記載されることを認識するであろう。
【0040】
好ましくは、有機充填剤は、好ましくはISO 13320:2009に従うレーザー回折によってそれぞれ決定される、<20.0μm、より好ましくは<15.0μm、特に好ましくは<10μm、より特に好ましくは<9.0μm、より好ましくは<8.0μm、より好ましくは<7.0μm、最も好ましくは<6.0μmのd99値を有する。
【0041】
好ましくは、有機充填剤は、好ましくはISO 13320:2009に従うレーザー回折によってそれぞれ決定される、<7.0μm、特に好ましくは<6.0μm、より特に好ましくは<5.0μmのd90値、及び/又は好ましくは<3.0μm、特に好ましくは<2.0μm、より特に好ましくは<1.0μmのd25値を有する。
【0042】
好ましくは、ゴム組成物は、少なくとも1種の有機充填剤を、10~150、特に好ましくは15~130、より特に好ましくは20~120、更により好ましくは30~100phr、最も好ましくは40~80phrの範囲内にある分量で含有する。
【0043】
本明細書で使用されるphr(ゴム100部当たりの質量部)という規定は、配合物の処方に関してゴム産業で一般に使用される分量の規定である。個々の構成物質の質量部の投与量は常に、配合物中に存在する全てのゴムの総質量である100質量部に対するものである。
【0044】
本発明によって用いられる少なくとも1種の有機充填剤に加えて、充填剤成分Fは、本発明によって用いられる有機充填剤とは異なる1種以上の他の充填剤を含有してもよい。好ましくは、ゴム組成物中の本発明によって用いられる少なくとも1種の有機充填剤のphrでの割合は、1種以上の更なる充填剤の相当する割合より高い。
【0045】
本発明による有機充填剤が一般的な産業用カーボンブラックの部分的な置きかえとしての役割のみを果たす場合、本発明によるゴム組成物は、産業用カーボンブラック、特にファーネスカーボンブラック(例えば、ASTM Code N550の下で汎用カーボンブラックとして分類されるもの)も含有してもよい。これは特に、ASTM Code N550の下に属することができ、8~150m2/gの範囲内のSTSA表面積を有するような産業用カーボンブラックに当てはまる。代替的に、又は加えて、本発明によるゴム組成物は、上述のASTMコードの下に属さないカーボンブラック、特に20~60m2/gの範囲内のSTSA表面積を有するものも含有してもよい。
【0046】
加えて、又は代替として、本発明によるゴム組成物は、無機充填剤、特に、例えば、異なる粒径、粒子表面、及び加硫挙動に影響を与える異なる可能性を有する化学的性質を有するものを含有してもよい。更なる充填剤が含まれる場合、これらは、好ましくは、本発明によるゴム組成物中に用いられる本発明による有機充填剤と、とりわけpH値に関して、可能な限り類似した特性を有するべきである。
【0047】
他の充填剤が用いられるならば、それらは、好ましくは、粘土鉱物等のフィロケイ酸塩、例えばタルク;炭酸カルシウム等の炭酸塩;例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、及びケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩;並びに、例えば、酸化マグネシウム及びシリカ又はケイ酸等の酸化物である。
【0048】
特に、本発明によって用いられる有機充填剤が一般的なケイ酸又はシリカの部分的な置きかえとしての役割のみを果たす場合、本発明によるゴム組成物は、シリカ又はケイ酸等のそのような無機充填剤も含有してもよい。
【0049】
しかし、本発明の状況において、酸化亜鉛は、加硫を促進する添加剤の役割を担っているために、無機充填剤には入らない。しかし、追加の充填剤は、注意して選択しなければならない。何故なら、シリカは、その表面に有機分子を結合させ、よってそれらの作用を阻害しやすいからである。
【0050】
無機充填剤、中でも、好ましくはシリカ及び表面にSi-OH基を有する他の充填剤は、表面処理(表面修飾)されてもよい。特に、オルガノシラン、例えば、アルキルアルコキシシラン、又はアミノアルキルアルコキシシラン、又はメルカプトアルキルアルコキシシラン等でのシラン化が有利であり得る。アルコキシシラン基は、例えば、加水分解縮合によってケイ酸塩又はシリカの表面に、又は他の適切な基に結合することができる。
【0051】
本発明による有機充填剤とは異なる充填剤は、個々に使用されても、互いに組み合わせて使用されてもよい。他の充填剤が使用される場合、それらの割合は、好ましくは40phr未満、特に好ましくは20~40phr、特に好ましくは25~35phrである。
【0052】
ゴム成分K
本発明による加硫性ゴム組成物のゴム成分Kは、加硫系VSの少なくとも1種の過酸化物によって架橋可能な少なくとも1種のゴムを含む。
【0053】
いかなる種類のゴムであっても、少なくとも1種の過酸化物によって架橋することができる限り、本発明によるゴム組成物の製造に適している。適切なゴムは、天然ゴム(NR)と合成ゴムのいずれも、当業者に公知である。過酸化物によって架橋することができないゴムは、例えば、塩素化イソブテン-イソプレンゴム(CIIR;クロロ-イソブテン-イソプレンゴム)、イソブテン-イソプレンゴム(IIR)、エピクロロヒドリンゴム(ECO/CO/ETER)、及びプロピレンオキシドゴム(GPO)である。
【0054】
好ましくは、ゴム成分Kの少なくとも1種のゴムは、その主鎖に炭素-炭素二重結合を持たないゴム、好ましくはその構造全体中にいずれの炭素-炭素二重結合も持たないゴムからなる群から選択され、特に好ましくは、HNBR(水素化(hydrated)アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、アクリレート-エチレンゴム(AEM)、エチレン-酢酸ビニルゴム(EVM)、塩素化ゴム、特に、塩素化ポリエチレン(CM)、シリコーンゴム(Q)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、フッ素ゴムエラストマー(FPM)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0055】
加硫系VS
本発明による加硫性ゴム組成物の加硫系VSは、少なくとも1種の過酸化物を含む。過酸化物は、加硫剤として機能する。
【0056】
本発明による加硫性ゴム組成物は、加硫系VS及びその中に含有される過酸化物の存在によって加硫することができる。
【0057】
加硫反応は、過酸化物の熱分解によって開始され、それによって2つのラジカルが形成される。ラジカルのゴムへの移動は、水素原子の置換又はポリマーの二重結合への付加(それが存在する場合)のいずれかによって行われる。架橋の効率は、ラジカル移動物質、いわゆる架橋助剤を使用することによって有意に改善することができる。ゴムポリマーのラジカルは、その構造及び存在する架橋助剤に応じて、異なる様式で反応し得る。
【0058】
加硫系VSの少なくとも1種の過酸化物は、好ましくは、少なくとも1種の有機過酸化物、特に好ましくは、ジアルキル過酸化物、アルキルアリール過酸化物、ジアリール過酸化物、アルキル過酸エステル、アリール過酸エステル、ジアシル過酸化物、多価過酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択される有機過酸化物、より特に好ましくは、過酸化ジ-tert.-ブチル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert.-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、過酸化ジクミル、過酸化tert.-ブチルクミル、tert.-ブチルペルオキシベンゾエート、過酸化ジベンゾイル、1,1-ジ(tert.-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、及びビス-(tert.-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、並びにそれらの混合物からなる群から選択される有機過酸化物を含み、特にそれらを示す。
【0059】
本発明によるゴム組成物中の過酸化物の割合は、好ましくは0.5~10phr、特に好ましくは1.0~8phr、特に好ましくは1.5~6phrである。
【0060】
好ましくは、ゴム組成物、特に好ましくはゴム組成物の加硫系VSは、少なくとも1種の少なくとも一価不飽和の、好ましくは多価不飽和の有機化合物を含み、該有機化合物は、好ましくは、ジ-(メタ)アクリレート、ジマレインイミド(dimaleinimide)、トリアリル化合物、及び不飽和ポリマー、例えば、1,2-ポリブタジエン及びtrans-ポリオクテナマー(polyoctenamere)であって、好ましくは、それぞれ、<10,000g/mol、特に好ましくは<5,000g/mol、より特に好ましくは<2,500g/mol、より好ましくは<1,500g/mol、特に<1,000g/mol、最も好ましくは<500g/molの数平均分子量(Mn)を有するもの、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、特に好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(EDMA)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TRIM)、N,N'-m-フェニレンビスマレイミド(MPBM)、ジアリルテレフタレート(DATP)、トリアリルシアヌレート(TAC)、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。少なくとも1種の少なくとも一価不飽和の、好ましくは多価不飽和の有機化合物は、好ましくは、架橋収率を増加させ、それによって圧縮永久ひずみについてのより良好な結果を達成するために、上述の架橋助剤として機能する。架橋助剤は、立体効果の橋渡しを行い、架橋に関して不活性な反応を抑制する。
【0061】
本発明によるゴム組成物中の架橋助剤の割合は、好ましくは0.5~10phr、特に好ましくは1.0~8phr、特に好ましくは1.5~6phrである。
【0062】
本発明による加硫性ゴム組成物の加硫系VSは、過酸化物以外の1種以上の他の加硫剤、並びに/又は加硫を促進する添加剤、例えば、酸化亜鉛及び/若しくは脂肪酸、例えばステアリン酸を含有してもよい。
【0063】
本発明による加硫性ゴム組成物の加硫系VSは、加硫を促進するが、それ自体では加硫を開始することができない、1種以上の添加剤を含有してもよい。そのような添加剤として、例えば、加硫促進剤、例えば、12~24個、好ましくは14~20個、特に好ましくは16~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、例えば、ステアリン酸、及び上述の脂肪酸の亜鉛塩等が挙げられる。チアゾール類も、これらの添加剤に属し得る。
【0064】
加硫促進添加剤、特に上述の脂肪酸及び/又はそれらの亜鉛塩、好ましくはステアリン酸及び/又はステアリン酸亜鉛が本発明によるゴム組成物中に使用されるならば、それらの割合は、0~10phr、特に好ましくは1~8phr、特に好ましくは2~6phrである。
【0065】
本発明による加硫性ゴム組成物の加硫系VSは、過酸化物とは異なる1種以上の更なる加硫剤、例えば好ましくは酸化亜鉛を更にまた含有してもよい。加硫系VSのそのような加硫剤を、過酸化物に加えて使用することが特に好ましい。
【0066】
酸化亜鉛等の更なる加硫剤が本発明によるゴム組成物中に使用されるならば、それらの割合は、好ましくは0~10phr、より好ましくは1~8phr、特に好ましくは2~6phrである。
【0067】
少なくとも1種の過酸化物に加えて、遊離硫黄を更なる加硫剤としてVS加硫系に添加することも可能である。しかし、既に上文に述べたように、これは好ましくない。
【0068】
本発明のゴム組成物の加硫は、好ましくは、少なくとも1種の過酸化物、例えば、特に少なくとも1種の有機過酸化物を、酸化亜鉛、及び/又は、好ましくは及び少なくとも1種の脂肪酸と組み合わせて使用して実施される。
【0069】
加硫性ゴム組成物のその他の構成物質
本発明によるゴム組成物は、更なる任意選択の構成物質、例えば、可塑剤/軟化剤、及び/又は劣化防止剤、及び/又は樹脂、特に接着を増大させる樹脂を含有してもよい。
【0070】
軟化剤を使用することで、未加硫のゴム組成物の特性、例えば、特に加工性に影響を与えることが可能であるだけでなく、加硫済みゴム組成物の特性、例えばその柔軟性、とりわけ低温での柔軟性にも影響を与えることが可能である。本発明の状況において特に適切な軟化剤は、パラフィン系オイル(実質的に飽和した鎖状炭化水素)及びナフテン系オイル(実質的に飽和した環状炭化水素)の群からのミネラルオイルである。アロマ系炭化水素オイルを用いることも可能であり、更に好ましい。しかし、例えばカーカス等のタイヤ中の他のゴム含有成分への本ゴム組成物の接着に関して、パラフィン系及び/又はナフテン系オイルの混合物も軟化剤として有利であり得ると思われる。他の可能な軟化剤は、例えば、脂肪族ジカルボン酸のエステル、例えば、アジピン酸又はセバシン酸、パラフィンワックス、及びポリエチレンワックス等である。軟化剤の中で、パラフィン系オイル及びナフテン系オイルが本発明の状況において特に適切である。しかし最も好ましいのは、アロマ系オイル、特にアロマ系ミネラルオイルである。
【0071】
好ましくは、軟化剤、中でも特に好ましいパラフィン系及び/又はナフテン系、特にアロマ系のプロセスオイルは、0~100phr、好ましくは10~70phr、特に好ましくは20~60phr、特に20~50phrの分量で用いられる。
【0072】
劣化防止剤の例は、キノリン類、例えば、TMQ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、及びジアミン類、例えば、6-PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン)である。
【0073】
本発明の加硫済みゴム配合物の他の隣接するゴム成分への接着を改善するために、いわゆる接着強化樹脂を使用することができる。特に適切な樹脂は、フェノールをベースにするものであり、好ましくは、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及びフェノール-アセチレン樹脂からなる群からのものである。フェノール系樹脂に加えて、ExxonMobil社製のEscorez(商標)1102 RM等の脂肪族炭化水素樹脂、並びに芳香族炭化水素樹脂も使用されてもよい。脂肪族炭化水素樹脂は、タイヤの他のゴム成分への接着を特に改善する。それらは一般に、フェノール系樹脂よりも接着が弱く、単独で、又はフェノール系樹脂との混合物として使用されてもよい。
【0074】
接着強化樹脂が仮に使用されるならば、好ましくはそれらは、フェノール系樹脂、芳香族炭化水素樹脂、及び脂肪族炭化水素樹脂からなる群から選択される。好ましくは、それらの割合は、0~15phr又は1~15phr、特に好ましくは2~10phr、より特に好ましくは3~8phrである。
【0075】
キットオブパーツ
本発明の別の主題は、
(A)部として、本発明によって用いられる上述のゴム成分K、及び少なくとも本発明によって用いられる充填剤成分Fを少なくとも含有するゴム組成物であって、キットオブパーツの(A)部が、しかし、本発明によって用いられる加硫系VSの少なくとも1種の過酸化物を含まない、ゴム組成物と
(B)部として、少なくとも1種の過酸化物を含む本発明によって用いられる加硫系VSと
を空間的に分離された形態で含む、又は好ましくはそれらからなる、キットオブパーツである。
【0076】
よって、(A)部は、それ自体では過酸化物によって加硫可能ではなく、よってこの時点では過酸化物によって加硫可能ではないゴム組成物となっている。過酸化物による加硫は、(A)部と(B)部との混合後にのみ可能である。
【0077】
好ましくは、一方の本発明によるゴム組成物の成分K及びFと他方の加硫系VSは、キットオブパーツ中で互いに空間的に分離されており、そのように保管することができる。キットオブパーツは、加硫性ゴム組成物を調製する役割を果たす。例えば、キットオブパーツの1部を構成し、成分K及びF、並びに場合により過酸化物以外の加硫剤、例えば酸化亜鉛及び/又は少なくとも1種の脂肪酸を含めた他の構成物質を含む本発明によるゴム組成物を、加硫可能なゴム配合物を調整するための下文に記載される方法の段階1において(A)部として使用してもよく、キットオブパーツの第2部、すなわち加硫系VSを、前記方法の段階2において、少なくとも過酸化物を含む(B)部として使用してもよい。
【0078】
好ましくは均質な混合物中に、本発明によるゴム組成物の構成物質K及びF、並びに少なくとも1種の過酸化物を含む関連する加硫系VSを含有して加硫性ゴム組成物を直接加硫することができるような加硫性ゴム組成物とは対照的に、成分K及びFを含むゴム組成物と、少なくとも1種の過酸化物を含む加硫系VSは、キットオブパーツ中でこのように互いに空間的に分離されている。
【0079】
本発明による加硫性ゴム組成物に関連して上文に記載される全ての好ましい実施形態は、本発明によるキットオブパーツに関しても好ましい実施形態である。
【0080】
好ましくは、本発明によるキットオブパーツは、
(A)部として、少なくとも成分K及びFを含むゴム組成物と、
(B)部として、少なくとも1種の過酸化物及び更にまた酸化亜鉛を含む加硫系VSと
を含み、酸化亜鉛は、代替的に(A)部中に存在してもよい。
【0081】
特に好ましくは、本発明によるキットオブパーツは、
(A)部として、少なくとも成分K及びFを含むゴム組成物と、
(B)部として、少なくとも1種の過酸化物、酸化亜鉛、及び少なくとも1種の飽和脂肪酸、例えばステアリン酸、並びに/又は任意選択でステアリン酸亜鉛を含む加硫系と
を含み、少なくとも酸化亜鉛及び/又は脂肪酸は、代替的に(A)部中に存在してもよい。
【0082】
加硫性ゴム組成物を調製するための方法
本発明の別の主題は、本発明による加硫性ゴム組成物を調製するための方法である。
【0083】
本発明による加硫性ゴム組成物及び本発明によるキットオブパーツに関連して上文に記載される全ての好ましい実施形態は、本発明による方法に関しても好ましい実施形態である。
【0084】
本発明による加硫性ゴム組成物の製造は、好ましくは二段階で、下文でより詳細に記載される段階1及び2で実施される。しかし、以降で更に説明するように、単一段階のプロセス制御も代替として可能である。
【0085】
二段法
第1段階(段階1)において、本発明による加硫性ゴム組成物を調製するために用いられる全ての構成物質を互いに混合するが、少なくとも1種の過酸化物とは混合しないことによって、ベース混合物としてのゴム組成物(マスターバッチ)を最初に調製する。第2段階(段階2)において、少なくとも過酸化物、及び任意選択で加硫系VSの追加の構成物質を、段階1の後に得られたゴム組成物に混和する。
【0086】
段階1
好ましくは、本発明によるゴム組成物Kのゴム成分に含有される少なくとも1種のゴム、並びに任意選択で用いることができるそれとは異なる樹脂、好ましくは接着を改善するものを用意する。しかし、後者は代替的に、その後更なる添加剤と共に添加することもできる。好ましくは、ゴムは、少なくとも室温(23℃)を有するか、又は好ましくは、最大50℃、好ましくは最大45℃、特に好ましくは最大40℃の温度に予熱した後に用いられる。特に好ましくは、ゴムは、他の構成物質が添加される前に、短時間前素練りされる。酸化マグネシウム等の抑制剤がその後の加硫制御に使用されるならば、それらも好ましくはこの時点で添加される。
【0087】
次いで、本発明によって用いられる少なくとも1種の有機充填剤、及び任意選択で更なる充填剤が、好ましくは酸化亜鉛を除いて添加される。何故ならこれは、上文で述べたように、本発明によるゴム組成物における加硫系の構成物質として使用され、したがって本明細書では充填剤としてみなされないからである。好ましくは、少なくとも1種の有機充填剤及び任意選択での他の充填剤の添加は、段階的に実施される。
【0088】
有利には、必須ではないが、軟化剤及び他の構成物質、例えば、過酸化物以外の加硫剤、例えば、ステアリン酸及び/又はステアリン酸亜鉛及び/又は酸化亜鉛は、少なくとも1種の有機充填剤又は他の充填剤(使用される場合)の添加の後のみに添加される。これによって、少なくとも1種の有機充填剤、及び存在するならば他の充填剤の組み込みが容易になる。しかし、有機充填剤又は存在するならば他の充填剤の一部を、軟化剤及び任意選択で使用される任意の他の構成物質と共に組み込むことが有利なこともある。
【0089】
第1段階におけるゴム組成物の調製中に得られる最高温度(「ダンプ温度」)は、170℃を越えるべきではない。何故なら、これらの温度を上回ると反応性ゴム及び/又は有機充填剤が部分的に分解する可能性があるからである。特に用いられるゴムに応じて、>170℃、例えば最大<200℃の温度が可能であることもある。好ましくは、第1段階のゴムの調製における最高温度は、80℃~<200℃の間、特に好ましくは90℃~190℃、最も好ましくは95℃~170℃の間である。
【0090】
ゴム組成物の構成物質の混合は、通常、接線式又は噛合式(meshing)(すなわち、噛合式(intermeshing))ローターを備えた密閉式混錬機によって実施される。通常、後者の方が良好な温度制御が可能になる。接線式ローターを有する混錬機は、接線式混錬機とも呼ばれる。しかし、混合は、例えば、二重ロール混錬機を使用して実施することもできる。用いられるゴムに応じて、混合プロセスは、従来法で、ポリマーの添加から開始して実施することも、又は逆にして、すなわち、混合物の全ての他の構成物質の添加後に最後に実施することもできる。逆にする手法は、大概の場合、EPM及びEPDMゴムで使用される。
【0091】
ゴム組成物の調製後、それは好ましくは第2段階を実施する前に冷却される。この種のプロセスは、熟成とも呼ばれる。典型的な熟成期間は、6~24時間、好ましくは12~24時間である。
【0092】
段階2
第2段階において、少なくとも過酸化物、しかし好ましくは加硫系VSの追加の構成物質が第1段階のゴム組成物に組み込まれ、それによって本発明による加硫性ゴム組成物が得られる。好ましくは、架橋助剤が存在する/使用されるならば、段階2でも組み込まれる。
【0093】
酸化亜鉛及びそれに加えて任意選択で少なくとも1種の飽和脂肪酸、例えばステアリン酸が加硫系として過酸化物に加えて用いられるならば、全てのこれらの構成物質の添加は段階2で行われてもよい。しかし、過酸化物以外であれば、これらの構成物質を段階1でゴム組成物に既に組み入れておくことも可能である。
【0094】
第2段階におけるゴム組成物への加硫系の混和物の調製中に得られる最高温度(「ダンプ温度」)は、過酸化物の開裂が開始する温度を下回ったままでなければならず、好ましくは130℃を越えるべきではなく、特に好ましくは125℃を超えるべきではない。好ましい温度範囲は、70℃~125℃、特に好ましくは80℃~120℃の間である。架橋系の最高温度である105℃~120℃を上回る温度では、早期加硫が起こる可能性があると思われる。
【0095】
段階2において加硫系を混和した後、組成物は好ましくは冷却される。
【0096】
上述の二段法において、ゴム組成物がこのようにまず第1段階で得られ、これを第2段階に補って加硫性ゴム組成物が形成される。
【0097】
一段法
一段法の場合、本発明による加硫性ゴム組成物を製造するために使用される全ての構成物質は、加硫系を含めて1段階で一緒に混合される。好ましくは、加硫系の過酸化物が、好ましくは架橋助剤と共にゴム配合物に添加されるのは、用いられるゴムの総量及び用いられる充填剤の総量並びに任意の追加の構成物質が添加された後だけである。好ましくは、用いられる充填剤の添加は、充填剤が異なる時間に少なくとも2回に分けて添加されるように実施され、用いられるゴムの全量は、好ましくは最初の添加の時点で既に提供されている。具体的には、一段法の場合、加硫系の構成物質の添加の前に冷却/休止が存在しない。
【0098】
本発明による加硫性ゴム組成物を更に加工するためのプロセス
加硫の前に、このように調製された加硫性ゴム組成物は、好ましくは最終物品にカスタマイズされた又は合わせた変形プロセスを経る。ゴム組成物は、好ましくは押出し又はカレンダー操作によって、加硫プロセスの必要に応じて適切な形状に形成される。このプロセスにおいて、加硫は、加硫金型内で圧力及び温度によって実施されてもよく、又は加硫は、空気若しくは液体材料が熱伝達をもたらす温度制御されたチャネル内で圧力をかけずに実施される。
【0099】
加硫済みゴム組成物
本発明の別の主題は、本発明による加硫性ゴム組成物の加硫によって、又は本発明によるキットオブパーツの(A)部と(B)部との2つを合わせ、混合することによって得ることができる加硫性ゴム組成物の加硫によって得ることができる、加硫済みゴム組成物である。
【0100】
本発明による加硫性ゴム組成物及び本発明によるキットオブパーツ並びに本発明による方法に関連して上文に記載される全ての好ましい実施形態は、本発明による加硫済みゴム組成物に関しても好ましい実施形態である。
【0101】
典型的には、加硫は、圧力下及び/又は加熱下で実施される。適切な加硫温度は、好ましくは140℃~200℃、特に好ましくは150℃~180℃である。任意選択で、加硫は、50~175barの範囲内の圧力で実施される。しかし、例えば異形材の場合、加硫を0.1~1barの範囲内の圧力で実施することも可能である。
【0102】
本発明による加硫性ゴム組成物から得られる加硫済みゴム組成物は、好ましくは、40超~80未満、特に好ましくは45~75、最も好ましくは50~70の範囲内のショアA硬さ、及び/又は8MPa超、特に好ましくは8.5MPa超、より特に好ましくは9MPa超の範囲内の引張強さ、及び/又は>300%、好ましくは>350%、特に好ましくは>400%の破断時伸び、及び/又は最大13.0%、好ましくは<13.0%の圧縮永久ひずみ(70℃で22時間後)、及び/又は最大20.0%、好ましくは<20.0%、特に好ましくは<19.5%の圧縮永久ひずみ(100℃で22時間後)を有する。ショアA硬さ、引張強さ、破断時伸び、及び圧縮永久ひずみを決定するための方法は、下文の方法の説明に示される。
【0103】
使用
本発明の別の主題は、工業用ゴム物品の製造、好ましくは封止機能を有する工業用ゴム物品の製造における使用のための、本発明による加硫性ゴム組成物、本発明によるキットオブパーツ、又は本発明による加硫済みゴム組成物の使用である。
【0104】
本発明による加硫性ゴム組成物、本発明によるキットオブパーツ、本発明による方法、及び本発明による加硫済みゴム組成物に関連して上文に記載される全ての好ましい実施形態は、上述の本発明による使用に関しても好ましい実施形態である。
【0105】
「工業用ゴム物品」という用語は(工業用ゴム製品(mechanical rubber goods)、MRGという用語でも)、当業者に公知である。工業用ゴム物品の例は、異形材、シール、ダンパー、及び/又はホースである。
【0106】
工業用ゴム物品
本発明の別の主題は、本発明による加硫性ゴム組成物、本発明によるキットオブパーツ、又は本発明による加硫済みゴム組成物を用いて製造された、工業用ゴム物品、好ましくは封止機能を有するものである。
【0107】
本発明による加硫性ゴム組成物、本発明によるキットオブパーツ、本発明による方法、及び本発明による加硫済みゴム組成物、並びに本発明による使用に関連して上文に記載される全ての好ましい実施形態は、上述の本発明による工業用ゴム物品に関しても好ましい実施形態である。
【0108】
本発明によって用いられる有機充填剤の使用
本発明の別の主題は、少なくとも1種の過酸化物による加硫によって得ることができる加硫済みゴム組成物において破断時伸びを増加させると同時に圧縮永久ひずみを減少させるための、本発明によって利用される有機充填剤の使用であって、この目的のために使用される加硫性ゴム組成物が、少なくとも1種の過酸化物及び有機充填剤に加えて、該少なくとも1種の過酸化物によって架橋可能な少なくとも1種のゴムを含有する、本発明によって用いられる有機充填剤の使用である。
【0109】
本発明による加硫性ゴム組成物、本発明によるキットオブパーツ、本発明による方法、及び本発明による加硫済みゴム組成物、上述の本発明による工業用ゴム物品、並びに本発明による使用に関連して上文に記載される全ての好ましい実施形態は、本発明によって用いられる有機充填剤の本発明による使用に関しても好ましい実施形態である。破断時伸び及び圧縮永久ひずみは、下文の「方法」セクションに記載されるように決定される。
【0110】
決定方法
1. 14C含有量の決定
14C含有量(生物学に基づいた炭素の含有量)の決定は、DIN EN 16640:2017-08に従う放射性炭素法によって実施される。
【0111】
2. 粒径分布の決定
粒径分布は、ISO 13320:2009に従って、水中に分散させた材料(水中1質量%)のレーザー回折によって決定することができる。その際、測定前に12,000Wsの超音波処理を行う。体積分率は、例えば、μmでのd99(試料の体積の99%の粒子の直径がこの値を下回る)として規定される。
【0112】
3. 炭素含有量の決定
炭素含有量は、DIN 51732: 2014-7に従う元素分析によって決定される。
【0113】
4. 酸素含有量の決定
酸素含有量は、EuroVector S.p.A.社のEuroEA3000 CHNS-O分析器を使用する高温熱分解によって決定される。ここでは、CHNS含有量が上述の分析装置によって決定され、酸素含有量は、その後差(100-CHNS)として算出される。
【0114】
5. 用いられる有機充填剤の乾物含有量の決定
試料の乾物含有量は、DIN 51718:2002-06に沿って以下のように決定される。この目的のために、Sartorius社製のMA100水分計を105℃の乾燥温度に加熱した。乾燥試料は、まだ粉末状でなければ、すり潰すか、又は粉砕して粉末にした。測定しようとする試料およそ2gを水分計内の適切なアルミニウム皿上で秤量し、次いで測定を開始した。試料の質量が30秒間で1mgより多く変化しなくなったらすぐに、この質量を一定とみなし、測定を終わらせた。このとき、乾物含有量は、表示された質量%での試料の含有量に相当する。各試料について少なくとも1回の二重反復測定を行った。秤量した平均値を報告した。
【0115】
6. 用いた有機充填剤のpH値の決定
pHは、ASTM D 1512規格に従って以下のように決定した。乾燥試料は、まだ粉末状でなければ、すり潰すか、又は粉砕して粉末にした。いずれの場合でも、5gの試料及び50gの完全脱イオン水を秤量してガラス製ビーカーに入れた。この懸濁液を、加熱機能及び撹拌バー(stirring flea)を有するマグネチックスターラーを使用して絶えず撹拌しながら60℃の温度に加熱し、温度を30分間60℃に維持した。その後、混合物を撹拌しながら冷却することができるように、スターラーの加熱機能を停止した。冷却後、完全脱イオン水を再び添加することによって蒸発した水を補充し、再び5分間撹拌した。懸濁液のpH値は、目盛り付きの測定機器で決定した。懸濁液の温度は23℃(±0.5℃)とするべきである。各試料について二重反復測定を行い、平均値を報告した。
【0116】
7. 有機充填剤の灰分の決定
試料の無水灰分を、DIN 51719規格に従う熱重量分析によって以下のように決定した。秤量前に、試料をすり潰すか、又は粉砕した。灰分定量の前に、秤量した材料の乾燥物質含有量を決定する。試料材料を、るつぼ内で0.1mgの単位まで秤量した。試料を含む炉を、9°K/分の加熱速度で815℃の標的温度に加熱し、次いでこの温度で2時間保持した。次いで炉を300℃に冷却し、その後試料を取り出した。デシケーター中で試料を室温まで冷却し、再び秤量した。残存する灰を初期質量に相関させ、それによって灰の質量百分率を決定した。各試料について三重反復測定を行い、平均値を報告した。
【0117】
8. 有機充填剤のBET及びSTSA表面積の決定
調査しようとする充填剤の比表面積は、産業用カーボンブラックについて提供されるASTM D 6556(2019-01-01)規格に従う窒素吸着によって決定した。この規格に従って、BET比表面積(Brunauer、Emmett、及びTellerに従う全比表面積)及び外部表面積(STSA表面積;統計的厚さ比表面積)を以下のように決定した。
【0118】
分析しようとする試料を、測定前に105℃で乾物含有量≧97.5質量%まで乾燥させた。加えて、試料を秤量する前に測定用セルを105℃の乾燥炉中で数時間乾燥させた。次いで漏斗を使用して試料を測定用セル中に充填した。充填中に測定用セル上部のシャフトが汚れた場合、適切なブラシ又は管掃除器を使用して清浄にした。強く飛散する(静電)材料の場合、グラスウールを秤量して試料に添加した。グラスウールは、ベークアウトプロセス中に舞い上がり、器具を汚すおそれのあるいずれの材料も保持しておくために使用した。
【0119】
分析しようとする試料を150℃で2時間ベークアウトし、Al2O3標準は350℃で1時間ベークアウトした。圧力範囲に応じて、以下のN2投与量を使用して決定した:
p/p0=0~0.01: N2投与量:5ml/g
p/p0=0.01~0.5: N2投与量:4ml/g。
【0120】
BETを決定するために、p/p0=0.05~0.3の範囲内で、少なくとも6つの測定点で外挿を行った。STSAを決定するために、吸着されたN2の層厚t=0.4~0.63nm(p/p0=0.2~0.5に相当する)の範囲内で、少なくとも7つの測定点で外挿を行った。
【0121】
9. 硬さの決定
加硫済みゴム組成物のショアA硬さの決定は、ISO 48-4:2021-02に従って、23℃で、Sauter GmbH社製のデジタルショア硬さ計を使用して実施した。試験体の厚さが、規格によって要求される少なくとも6mmに達するように、試験体を3層以下で構成した。この目的のために、ISO 37:2011に従う引張試験を行うために打抜いた3つのS2バーを互いの上に積み重ねた。各試料の積み重ねについて、積み重ね上の異なる箇所で5回の測定を行った。得られた結果は、これらの5回の測定の平均値を表す。加硫と試験の間に、試料は実験室中で少なくとも16時間室温で保管した。
【0122】
10. 架橋密度/反応速度の決定
ゴム組成物の架橋密度及び反応速度は、DIN 53529-3:1983-06に従って175℃で決定したが、3°の撓みで決定した。測定時間は15分であった。このプロセスにおいて、最小及び最大トルク(ML、MH)を決定した。これらから、差Δ(MH-ML)を算出した(最大トルクから最小トルクを引いた)。更にまた、トルクが最小トルクMLである時間から開始して、最大トルクMHの10%、50%、及び90%にそれぞれ達する期間を決定した。それらの期間をT10、T50、及びT90と指定した。
【0123】
11. 引張伸びの決定
引張強さ及び破断時伸びを含めた引張伸びを、加硫済みゴム組成物についてISO 37:2011に従って決定した。
【0124】
12. 圧縮による変形の決定
圧縮による変形を、加硫済みゴム組成物についてDIN ISO 815-1:2016-09に従って決定した。試料当たり3つの試験体を試験した。加硫の直前に、混合物をローラー上で可塑化して、流動挙動を改善した。素手で触れたときに混合物が確実に温かいことに注意した。強度に影響を与える長い流路とならないように、金型の空隙の幅に相当する細片をおよそ7mm厚のロールシートから切り抜いた。加硫プレスの圧力は200barであった。予めプログラムされたプレスサイクルを使用して、以下の表に従って試験体を加硫した:
【0125】
【表1】
【0126】
加硫時間は、架橋密度/反応速度の決定の一部として決定されるT90値に、試験試料の厚さ1ミリメートル当たり1分を加えたもの(すなわち、DIN ISO 815-1タイプBに従って加硫金型を使用するときは6を加えたもの)に相当する。加硫された試験体は、制御されない更なる架橋を回避するために加硫金型から直ちに取り出した。取り出す際に試験体が損傷しないように注意した。試験試料を取り外すための道具の使用は、試験試料への損傷が完全に除外できる場合のみ許容した。試験体を冷却台に置いて冷却した。冷却後、突出した端部を除去した。加硫と試験の間に、試料を少なくとも16時間室温で保管した。温蔵庫は試験温度に予熱した。負荷曝露時間は22時間であり、圧縮変形ユニットを温蔵庫に入れた瞬間から測定した。試験温度は70℃又は100℃であった。印加された圧縮応力は、試験体の初期厚さの25%となった。温蔵庫内部が試験温度に達したらすぐに、圧縮応力を印加した後の試験体を含有する圧縮変形ユニットを温蔵庫の中央部に直ちに装填した。必要とされる試験期間が経過した後、手順Aに沿って圧縮変形ユニットを温蔵庫から取り出し、試験体をいずれの負荷からも解放し、速やかに冷却台上に置いた。それを30分間そこに放置して回復させ、次いでその厚さについて測定した。
【0127】
13. 加硫済みゴム組成物の密度の決定
加硫済み配合物の密度は、ISO 2781:2018方法Aに従って決定した。エタノール(96%)を浸漬媒体として使用した。得られた結果は3回の測定の平均値を表す。加硫と試験の間に、試料を少なくとも16時間室温で保管した。
【0128】
14. 利用された充填剤の材料密度
充填剤の材料密度は、ISO 21687に従ってヘリウム比重計によって決定した。
【0129】
15. 表面上で利用可能なOH基(OH基密度)の決定
フェノール性OH基及びフェノレート基を含めた、表面上で利用可能な酸性ヒドロキシル基の決定は、Sipponenに従って定性的及び定量的な比色測定で実施した。Sipponenに従う方法は、充填剤表面で利用可能な酸性ヒドロキシル基へのアルカリ性染料アズールBの吸着に基づいており、論文「Determination of surface-accessible acidic hydroxyls and surface area of lignin by cation dye adsorption」(Bioresource Technology 169 (2014) 80~87)に詳細に記載されている。表面上で利用可能な酸性ヒドロキシル基の量は、mmol/g充填剤で示される。
【実施例
【0130】
実施例及び比較例
以下の実施例及び比較例は、本発明を説明する役割を果たすものであるが、いかなる場合においても限定的なものと解釈されるべきではない。
【0131】
1. 本発明によって用いられる有機充填剤の調製
1.1 本発明による有機充填剤として、水熱処理によって得ることができるリグニンL1を使用した。
【0132】
水熱処理によって得ることができるリグニンL1は、WO 2017/085278 A1に記載される、水熱処理によって得ることができるリグニンを製造するための方法によって調製した。
【0133】
この目的のために、リグニンを含有する液体を用意した。最初に、水とリグニンとを混合し、それによって有機乾燥質量の含有量が15%であるリグニン含有液を調製する。その後、リグニン含有液中でリグニンをほとんど溶解させる。この目的のために、NaOHを添加することによってpH値を調整する。溶液の調製を80℃で3時間激しく混合することによって促進する。リグニン含有液を水熱処理に供し、それによって固形物を得る。このプロセスでは、調製された溶液を2K/分で220℃の反応温度に加熱し、次いでこれを8時間の反応時間にわたって保持する。その後、冷却を行う。結果として、固形物の水性懸濁液が得られる。ろ過及び洗浄によって、固形物をほとんど脱水し、洗浄する。その後、乾燥及び熱処理を流動床中、窒素下で実施し、乾燥のために温度を1.5K/分で50℃にし、2.5時間保持し、続いて熱処理のために温度を1.5K/分で190℃にし、15分間保持し、次いで再び冷却した。乾燥させた固形物は、窒素でのカウンタージェットミルでd99値<10μm(上文に記載の決定方法に従って決定される)まで解凝集させる。
【0134】
水熱処理によって得ることができるリグニンL1を、上文で言及した方法によって、以下のTable 1.1(表2)に示すように特徴付けた。
【0135】
【表2】
【0136】
1.2 1.1に記載されるプロセスを使用して同様に、水熱処理によって得ることができる第2のリグニンL2を調製し、上文で言及した方法によって、以下のTable 1.2(表3)に示すように特徴付けた。
【0137】
【表3】
【0138】
1.3 1.1に記載されるプロセスを使用して同様に、水熱処理によって得ることができる第3のリグニンL3を調製し、上文で言及した方法によって、以下のTable 1.3(表4)に示すように特徴付けた。しかし、1.1に記載されるプロセスから逸脱して、水熱処理は、調製されたリグニン含有液を1.5K/分で230℃の反応温度に加熱し、次いでこれを1時間の反応時間にわたって保持するようにして実施した。加えて、水熱処理を実施する前にホルムアルデヒドを使用して、リグニン含有液を改質した。最後に、最終粉砕をスチームジェットミルで実施した。
【0139】
【表4】
【0140】
2. 加硫性ゴム組成物の調製
2.1 二段法によって加硫性ゴム組成物を調製した。
【0141】
第1段階では、ゴム組成物K及び充填剤成分Fからなる本発明によるゴム組成物の構成物質を配合することによって、ベース混合物(マスターバッチ)としてのゴム組成物を調製した。第2段階では、架橋系(加硫系VS)の構成物質を混和した。
【0142】
段階1
EPDMをゴムとして用いた。EPDMベースのゴム組成物の調製は、350mlのチャンバー容積を有するHaake社製の実験室用ミキサー中で実施した。最初にゴムを添加し、50rpmで1分間混錬した。カーボンブラックを単独の充填剤として使用する場合(比較例KV1)、これの50%を(用いるプロセスオイルの50%と共に)1分後に添加し、50%を(用いるプロセスオイルのもう一方の50%と共に)3分後に添加した。産業用カーボンブラックを本発明によって用いられる充填剤で部分的に置きかえた場合(本発明による実施例KL1及びKL2)、本発明によって用いられる有機充填剤の100%を(使用するプロセスオイルの50%と共に)1分後に添加し、産業用カーボンブラックの100%を(用いるプロセスオイルのもう一方の50%と共に)3分後に添加した。いずれの場合も、ベース混合物の残りの構成物質(酸化亜鉛及びステアリン酸、以下のTable 2.1(表5)参照)を3分後に添加した。その後、混合物の構成物質を、10分後に混合プロセスを停止するまで分散的且つ分配的に混合し、ゴム組成物を実験室用ミキサーから取り出した。これらの混合条件下で、ゴム組成物は125℃~135℃の最終温度となった。ゴム組成物の調製後、第2段階を実施する前にそれを冷却した(熟成/保管)。
【0143】
上述の段階1によって、本発明によって用いられる2つのゴム組成物が得られ(KL1及びKL1)、これらは両方ともEPDMをゴム成分Kのゴムとして、水熱処理によって得られたリグニンL1を充填剤成分の有機充填剤として含有していた。加えて、このようにして比較用ゴム組成物が得られ(KV1)、これは、EPDMをゴム成分Kのゴムとして、市販のカーボンブラックのみを充填剤成分の有機充填剤として含有していた(リグニンL1は含有せず)。ゴム組成物の正確な組成は、以下のTable 2.1(表5)に見ることができる。
【0144】
段階2
第2段階において、架橋系の構成物質を第1段階のゴム組成物中に組み込み、それによって加硫性ゴム組成物を得た。ここでは、第1段階からの混合物KL1、KL2、及びKV1をそれぞれ、最初に0~2分再度分散的に混合した。次いで加硫系(VS)の添加を2~2.5分間にわたって実施した。この目的のために、有機過酸化物及び架橋助剤として使用される多価不飽和有機化合物をVSとして用いた。添加後、混合物を更に2.5~5分間混合した。ここでは、最終温度は90℃~100℃の間であった。
【0145】
上述の段階2によって、2つの本発明による加硫性ゴム組成物(VKL1及びVKL1)が加硫系VSの添加後に得られ、これらは次いで段階2の完了後に加硫することができる。加えて、このようにして加硫性比較用ゴム組成物が得られ(VKV1)、これも段階2の完了後に加硫することができる。加硫性ゴム組成物の正確な組成は、以下のTable 2.1(表5)に見ることができる。
【0146】
【表5】
【0147】
Arlanxeo Deutschland GmbH社製の市販製品Keltan(登録商標)4465をEPDM(ゴム成分Kのゴム)として使用した。Bruggemann社製の市販製品ZINKOXID Weisssiegelを酸化亜鉛として使用した。Avokal(登録商標)GmbH社製の市販製品Palmera B 1805をステアリン酸として使用した。産業用カーボンブラック(充填剤成分Fの充填剤)として、Lehmann & Voss & Co社製の市販製品LUVOMAXX BC N-550を使用した。有機充填剤L1は上文に既に記載されている。Hansen und Rosenthal KG社製の市販製品Tudalen(登録商標)1927をプロセスオイルとして用いた。Ashland社製の市販製品Di-Cup(登録商標)40を過酸化物として用いた。トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TRIM)を架橋助剤として用いた。
【0148】
2.2 2.1に記載されるプロセスと同様に、更なる加硫性ゴム組成物VKL3、VKL4、及びVKL5(全て本発明によるもの)並びにVKV2(比較例)を一段手法で調製した。
【0149】
EPDMをゴムとして用いた。EPDMベースのゴム組成物の調製は、350mlのチャンバー容積を有するHaake社製の実験室用ミキサー中で実施した。最初にゴムを供給し、50rpmで1分間混錬した。カーボンブラックを単独の充填剤として使用する場合又は本発明によって用いられる充填剤を単独の充填剤として使用する場合、それぞれこれの50%を(用いるプロセスオイルの50%、用いる酸化カルシウムの100%、用いるチョークの100%、用いるPEGの100%、及び用いるステアリン酸の100%と共に)1分後に添加し、50%を(使用するプロセスオイルのもう一方の50%と共に)4分後に添加した。産業用カーボンブラックを本発明によって用いられる充填剤で部分的に置きかえた場合、本発明によって用いられる有機充填剤の100%を(用いるプロセスオイルの50%、用いる酸化カルシウムの100%、用いるチョークの100%、用いるPEGの100%、及び用いるステアリン酸の100%共に)1分後に添加し、産業用カーボンブラックの100%を(用いるプロセスオイルのもう一方の50%と共に)4分後に添加した。6分後に、次いで加硫系(VS)を添加した。この目的のために、有機過酸化物及び架橋助剤として使用される多価不飽和有機化合物をVSとして用いた。その後、混合物の構成物質を、10分後に混合プロセスを停止するまで分散的且つ分配的に混合し、ゴム組成物を実験室用ミキサーから取り出した。これらの混合条件下で、ゴム組成物は110℃~115℃の最終温度となった。
【0150】
これらの加硫性ゴム組成物の正確な組成は、以下のTable 2.2(表6)に見ることができる。
【0151】
【表6】
【0152】
Arlanxeo Deutschland GmbH社製の市販製品Keltan(登録商標)5470CをEPDM(ゴム成分Kのゴム)として使用した。Heinrich Heller GmbH社製の市販製品の炭酸カルシウムMicrocarb(登録商標)LB10 Tをチョークとして用いた。Avokal(登録商標)GmbH社製の市販製品Palmera B 1805をステアリン酸として使用した。産業用カーボンブラック(充填剤成分Fの充填剤)として、Lehmann & Voss & Co社製の市販製品LUVOMAXX BC N-55を使用した。有機充填剤L2は上文に既に記載されている。Hansen und Rosenthal KG社製の市販製品Tudalen(登録商標)1927をプロセスオイルとして用いた。Ashland社製の市販製品Di-Cup(登録商標)40を過酸化物として用いた。トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TRIM)を架橋助剤として用いた。ポリエチレングリコール4000をPEGとして使用した。Kettliz GmbH社製の市販製品Kezadol(登録商標)GR 80を酸化カルシウムとして使用した。
【0153】
2.3 2.1に記載されるプロセスと同様に、更なる加硫性ゴム組成物VKL6及びVKL7(全て本発明によるもの)並びにVKV3(比較例)を一段混合手法で調製した。しかし、VKV3の場合は、過酸化物(及び架橋助剤)の代わりに異なる加硫系(VS)、すなわち、硫黄(並びに3つの異なる促進剤B1、B2、及びB3)を使用した。
【0154】
EPDMをゴムとして用いた。EPDMベースのゴム組成物の調製は、350mlのチャンバー容積を有するHaake社製の実験室用ミキサー中で実施した。最初にゴムを供給し、50rpmで1分間混錬した。過酸化物をVSとして使用する場合(VKL6及びVKL7)、これに50%の本発明によって用いられる充填剤を(使用するプロセスオイルの50%、使用する酸化亜鉛の100%、及び使用するステアリン酸の100%と共に)1分後に添加し、次いで得られた混合物に充填剤の残りの50%を4分後に添加した(使用するプロセスオイルのもう一方の50%と共に;表2.3参照)。6分後に、次いで加硫系(VS)を添加した。この目的のために、有機過酸化物及び架橋助剤として使用される多価不飽和有機化合物をVSとして用いた。その後、混合物の構成物質を、10分後に混合プロセスを停止するまで分散的且つ分配的に混合し、ゴム組成物を実験室用ミキサーから取り出した。これらの混合条件下で、ゴム組成物は110℃~115℃の最終温度となった。VKV3(比較例)を同様に製造した。この場合、硫黄並びに3つの異なる促進剤B1、B2、及びB3を過酸化物(及び架橋助剤)の代わりの用量で6分後に添加した。その後、混合物の構成物質を、10分後に混合プロセスを停止するまで分散的且つ分配的に混合し、ゴム組成物を実験室用ミキサーから取り出した。これらの混合条件下で、ゴム組成物は108℃の最終温度となった。
【0155】
これらの加硫性ゴム組成物の正確な組成は、以下のTable 2.3(表7)に見ることができる。
【0156】
【表7】
【0157】
Arlanxeo Deutschland GmbH社製の市販製品Keltan(登録商標)5470CをEPDM(ゴム成分Kのゴム)として使用した。Avokal(登録商標)GmbH社製の市販製品Palmera B 1805をステアリン酸として使用した。有機充填剤L3は上文に既に記載されている。Hansen und Rosenthal KG社製の市販製品Tudalen(登録商標)1927をプロセスオイルとして用いた。Ashland社製の市販製品Di-Cup(登録商標)40を過酸化物として用いた。トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TRIM)を架橋助剤として用いた。Bruggemann社製の市販製品ZINKOXID Weisssiegelを酸化亜鉛として使用した。Schill + Seilbacher社製のStruktol(登録商標)SU95を硫黄(架橋剤)として使用した。Vibiplast S.r.l.社製の製品MBTS 80 GE F GREEN(B1)、RheinChemie Additive社製のRhenogran(登録商標)ZBEC-70(B2)、及びRheinChemie Additive社製のRhenogran(登録商標)TP-50(B3)を促進剤として使用した。
【0158】
3. 加硫性ゴム組成物及びそれから得ることができる加硫済みゴム組成物の検討及び試験
3.1 架橋密度及び反応速度
第2段階後に得られたゴム組成物を、それらの原料混合物の特性に関して検討した。ここでは、反応速度及び架橋密度を上文に記載される方法に従って測定した。
【0159】
Table 3.1(表8)及びTable 3.2(表9)に、最小及び最大トルク(ML、MH)、差Δ(MH-ML)及び期間T10、T50、及びT90に関して得られた結果を要約する。
【0160】
【表8】
【0161】
VKV1と比較して、本発明によるゴム組成物VKL1及びVKL2は同等な反応速度(T10、T50、T90)を示す。架橋密度には僅かな偏差が存在する。架橋密度は、最大トルクと最小トルクの差Δ(MH-ML)をdNmで表したものである。
【0162】
【表9】
【0163】
VKV2と比較して、本発明によるゴム組成物VKL3、VKL4、及びVKL5は、T10及びT50に関して同等の反応速度を示し、同等の架橋密度も示す。架橋密度は、最大トルクと最小トルクの差Δ(MH-ML)をdNmで表したものである。T90に関しては偏差が生じる。
【0164】
3.2 引張強さ、破断時伸び、及びショアA硬さ、並びに圧縮永久ひずみ
2段階後に得られたゴム組成物は、175℃で6分間、等温的に加硫した(VKV1、VKL1、及びVKL2)。1段階後に得られたゴム組成物は、170℃で、11分間(VKV2)、14分間(VKL3及びVKL4)、又は15分間(VKL5)、それぞれ加硫した。次いで引張強さ、破断時伸び、モジュラス100~300、及びショアA硬さ、並びに圧縮永久ひずみを上文に記載される方法に従って決定した。
【0165】
Table 3.3(表10)及びTable 3.4(表11)に、得られた結果を要約する。
【0166】
【表10】
【0167】
引張伸び挙動から、VKV1と比較して、本発明によるゴム組成物VKL1及びVKL2の引張強さは低いが、破断時伸びが有意に増加することが示される。過酸化物架橋の場合、破断時伸びは架橋密度に依存し、したがって架橋構成物質の投与量に依存する。比較的低い架橋密度をTable 3.1(表8)に見ることができる。架橋密度を調整すれば、VKV1と比較したときにVKL2は低い伸びで高いモジュラス値を達成することに注目すると興味深い。ゴム物品に重要なのは、特に低い伸びの範囲である。何故なら、使用中にこれらの伸びが生じるからである。しかし、この工業用ゴムデータについて特殊であるのは、有機充填剤L1を含有するゴム配合物VKL1及びVKL2では架橋密度が比較的低いにもかかわらず、圧縮永久ひずみの値が、より高い架橋密度を有する組成物VKV1と比較して、70℃と100℃の両方で低いことである。
【0168】
過酸化物及び架橋助剤の投与量が同じである場合(VKV1対VKL1)、L1を使用すると圧縮永久ひずみが改善され(低くなり)、同時に同じ硬さ(ショアA)で破断時伸びが有意に高くなる。過酸化物の投与量を僅かに増加させても(VKL2)、破断時伸びはVKV1より依然として有意に高いにもかかわらず、圧縮永久ひずみの更なる改善が示される。L1を含有するゴム組成物の場合、引張伸びの値及び圧縮永久ひずみを柔軟に調整することができる。ゴム組成物VKL1及びVKL2の別の利点は、低い伸びで応力値を200%あたりまで高く設定することができ、これは、VKV1の場合より高い破断時伸びで設定することができる(VKL2のモジュラス(module)100参照)。これにより封止機能が改善される。
【0169】
Table 3.3(表10)に示す結果を、図1図2図3、及び図4にグラフとして示す。図1は、決定された引張伸び挙動の概要を示す。図2は、100、200、及び300%の伸びで決定された応力値の概要を示す。図3は、引張強さ、破断時伸び、及びショアA硬さについて決定された値の概要を示す。図4は、異なる温度での圧縮永久ひずみについて決定された値の概要を示す。
【0170】
【表11】
【0171】
引張伸び挙動から、VKV2と比較して、本発明によるゴム組成物VKL3、VKL4、及びVKL5の引張強さは幾分低いが、破断時伸びは有利なことに有意に増加することもここで示される。データから、特に、有機充填剤L2を含有するゴム配合物VKL4及びVKL5では、70℃での圧縮永久ひずみの値が、有利なことに組成物VKV2と比較して低いことも示される。
【0172】
3.3 過酸化物架橋を硫黄架橋と比較したときの圧縮永久ひずみ(VKL6及びVKL7対VKV3)
1段階後に得られたゴム組成物VKL6及びVKL7並びにVKV3を、170℃で8.5分間(VKL6及びVKL7)、及び13分間(VKV3)、それぞれ等温的に加硫した。次いでそれぞれの圧縮永久ひずみを、70℃で22時間と100℃で22時間の両方について、上文に記載される方法に従って決定した。結果をTable 3.5(表12)に示す。
【0173】
【表12】
【0174】
データの比較から、特に、過酸化物によって架橋され、有機充填剤L3を含有するゴム配合物VKL6及びVKL7についての70℃及び100℃での圧縮永久ひずみ値が、有利なことに硫黄によって架橋された比較用配合物VKV3の場合より低いことが示される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】