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特表2024-529782長期持続型組換えヒトインターロイキン2融合タンパク質及びその調製方法並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】長期持続型組換えヒトインターロイキン2融合タンパク質及びその調製方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240801BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240801BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240801BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240801BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240801BHJP
   C12N 15/26 20060101ALN20240801BHJP
   C07K 14/55 20060101ALN20240801BHJP
   C07K 14/765 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C07K19/00
A61P35/00
A61P1/16
A61P11/00
A61P37/02
A61K47/64
A61K38/20
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/26
C07K14/55
C07K14/765
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513117
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 CN2021121808
(87)【国際公開番号】W WO2023024215
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110982310.8
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518416300
【氏名又は名称】ベイジン ブイディージェイバイオ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】リー, ズージィアン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン, シンシォン
(72)【発明者】
【氏名】チォン, ジェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】マー, ロン
(72)【発明者】
【氏名】ジァン, イェンジン
(72)【発明者】
【氏名】スン, イーピン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, シャオルイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, ティンティン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ジュン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076BB11
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA41
4C084CA18
4C084DA14
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA12
4C084ZA59
4C084ZA75
4C084ZB07
4C084ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA04
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、インターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質を開示し、インターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合遺伝子を有するプラスミドをCHO細胞にエレクトロポレーショントランスフェクションすることにより、ヒト化組換えタンパク質を安定的、効率的に発現するCHOモノクローナル細胞株が得られる。本発明のモノクローナル細胞株は、ヒトインターロイキン2の血漿中半減期を延長し、ヒトインターロイキン2類の薬物の調製や、腫瘍、免疫不全性疾患等の多様な疾患を治療するための薬物の調製に用いられる、インターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質を分泌、発現することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質を発現させる発現系であって、
前記融合タンパク質は、
SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列において1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加され且つ同等の機能を有するアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むヒトインターロイキン2又はその変異体と、
SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列において1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加され且つ同等の機能を有するアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むヒト血清アルブミン又はその変異体とを含むことを特徴とする発現系。
【請求項2】
前記発現系は、CHO細胞であり、好ましくは、前記発現系は、CHO-K1細胞であることを特徴とする請求項1に記載の発現系。
【請求項3】
前記ヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の発現系。
【請求項4】
前記融合タンパク質において、SEQ ID NO:1の125番目のアミノ酸は、システインではなく、好ましくは、前記125番目のアミノ酸は、セリン又はアラニンに置換されていることを特徴とする請求項3に記載の発現系。
【請求項5】
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に直接に連結されているか、又は連結ペプチドを介して連結されており、
好ましくは、前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、n、mはそれぞれ1~10の整数であり、より好ましくは、nは1~4の整数であり、mは0~3の整数であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の発現系。
【請求項6】
前記融合タンパク質のN末端は、シグナルペプチドを保有し、
好ましくは、前記シグナルペプチドは、分泌シグナルペプチドCD33であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の発現系。
【請求項7】
前記シグナルペプチドは、SEQ ID NO:5に示される配列を有することを特徴とする請求項6に記載の発現系。
【請求項8】
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3に示されるヌクレオチド配列によってコードされることを特徴とする請求項1に記載の発現系。
【請求項9】
前記ヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載の発現系。
【請求項10】
腫瘍、肝炎、肺炎又は免疫不全疾患を治療するための薬物の調製における請求項1~9のいずれか一項に記載の発現系の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物製薬分野に関し、具体的にはヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質及びそのコード遺伝子並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン2(IL-2)は、T細胞及びNK細胞によって産生される15.5kD糖タンパク質であり、生体の免疫応答において重要な役割を果たす。(ヒト)インターロイキン2((h)IL-2)は、133個のアミノ酸残基からなり(SEQ ID NO:1)、1つの鎖内ジスルフィド結合と成熟タンパク質の125番目のアミノ酸残基に位置する1つのシステインを有し、このシステインは、他の2つのシステインとミスマッチジスルフィド結合を形成しやすいが、ジスルフィド結合が異常にペアリングしたIL-2は活性がない。そのシステインをセリン又はアラニンに変異させることにより、IL-2の活性を変化させることなく、この問題を回避することができる。IL-2は、主にT細胞、大顆粒リンパ球、単球、B細胞を含む免疫細胞に作用し、細胞増殖とサイトカイン分泌を促進する。インビボにおいて、IL-2は、抗腫瘍、抗微生物感染及び免疫調節等などの作用を奏する。単独で又はIFN-α、モノクローナル抗体、LAK細胞等などと併用して臨床に用いることにより、腎細胞癌、転移性黒色腫及びリンパ腫等などに対して一定の治療作用を有し、結腸癌に対しても治療効果を有し、腫瘍患者の放射線治療、化学治療に対する耐性を向上させることもできる。現在、臨床では、腫瘍、ウイルス性肝炎等などの治療に幅広く使用され、治療効果が顕著である。しかし、上記疾患は、一般的に病程が長いため、IL-2を長期間使用する必要があるが、IL-2の血漿中半減期は、わずか2時間程度であり、薬効を維持するために大用量で頻繁に注射する必要があり、治療コストを大幅に上昇させるだけでなく、患者の苦痛を増加させ、副反応を増加させる。
【0003】
融合タンパク質を構築して薬物分子量を増加させる方法により薬物の半減期を延長することが行われている。血清アルブミンは、血漿の重要な成分であり、多くの内因性因子及び外因性薬物の担体でもあり、通常は糸球体を透過しにくい。ヒト血清アルブミン(HSA)は、585個のアミノ酸残基からなるタンパク質(SEQ ID NO:2)であり、その分子量は約66.5KDであり、血漿中半減期は2週間以上と長い。
【0004】
特許出願CN104789594Aには、密度が4.0×10細胞/mLである80mLの種子液を基に、3日目の細胞密度が6.4×10細胞/mLに達し、3日目以降の降温による細胞密度の変化が大きくなく、最終タンパク質濃度が118mg/Lである、安定細胞株の3L振盪フラスコでの流加培養が開示されている。細胞株での高発現量は、近年の抗体等の生体高分子の生産における基本的な要求である。
【0005】
そのため、より発現量が高く、より長期持続型のあるヒトインターロイキン2と血清アルブミンとの融合タンパク質が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヒトインターロイキン2の血漿中半減期を延長することができるヒトインターロイキン2と血清アルブミンとの融合タンパク質及びそのコード遺伝子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために、本発明は、哺乳動物真核発現系を利用してヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質を発現し、両者を直接に連結するか、又は連結ペプチドを介して連結した長期持続型の組換えヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質及びその調製方法を提供する。
【0008】
第1の態様では、本発明は、ヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質を発現させる発現系を提供し、
前記融合タンパク質は、
SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列において1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加され且つ同等の機能を有するアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むヒトインターロイキン2又はその変異体と、
SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列において1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加され且つ同等の機能を有するアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むヒト血清アルブミン又はその変異体とを含む発現系を提供する。
【0009】
本発明において、前記発現系は、CHO細胞であり、好ましくは、前記発現系は、CHO-K1細胞である。
【0010】
本発明は、意外にも、CHO細胞を用いる場合、特にCHO-K1細胞株を用いる場合、細胞発現量が非常に高く、4g/Lに達することができ、且つ発現された融合タンパク質が高活性を有し、インビトロで特定の細胞、例えばNK細胞及び/又はT細胞に対して強く増殖を促進する作用を有することを見出した。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記ヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列は、133個のアミノ酸残基からなるヒトインターロイキン2であり、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列は、585個のアミノ酸残基からなるヒト血清アルブミンである。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質において、SEQ ID NO:1の125番目のアミノ酸は、システインではなく、好ましくは、前記125番目のアミノ酸は、セリン又はアラニンに置換されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に直接に連結されているか、又は前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、連結ペプチドを介して前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に連結されている。
【0015】
本発明の前記融合タンパク質において、前記融合タンパク質に含まれる2つの部分の間に大きな間隔を持たせ、ヒトインターロイキン2の部分を最大限にインターロイキン2の受容体と結合させるために、ヒトインターロイキン2又はその変異体と前記ヒト血清アルブミン又はその変異体との間に連結ペプチドが設けられており、好ましくは、前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、n、mはそれぞれ1~10の整数であり、より好ましくは、nは1~4の整数であり、mは0~3の整数である。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質のN末端は、シグナルペプチドを保有し、
好ましくは、前記シグナルペプチドは、分泌シグナルペプチドCD33であり、より好ましくは、前記シグナルペプチド配列は、SEQ ID NO:5に示されるMPLLLLLPLLWAGALAである。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0018】
本発明においては、NCBIに開示されているヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンの遺伝子配列に基づいて、哺乳動物におけるコドンバイアスに従って遺伝子配列の最適化を行い、最適化された融合タンパク質の遺伝子配列を発現ベクターに構築し、宿主細胞にトランスフェクションし、宿主細胞で発現させ、目的タンパク質を単離、精製する。
【0019】
本発明の最適化された融合タンパク質遺伝子配列について、そのN末端にシグナルペプチドを付加して、好ましくは分泌シグナルペプチドCD33配列を付加して、発現ベクターに構築し、得られたベクターを宿主細胞にトランスフェクションし、宿主細胞で発現させ、目的タンパク質を単離、精製する。
【0020】
本発明において、最適化された、N末端にシグナルペプチドを保有し、発現ベクターに構築された遺伝子配列がSEQ ID NO:3に示される。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記ヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を有する。
【0022】
ここで、SEQ ID NO:4は、728個のアミノ酸残基配列からなるタンパク質であり、そのうち、アミノ末端の1番目から133番目までは、ヒトインターロイキン2のコード配列であり、アミノ末端の134番目から143番目までは、連結ペプチドのコード配列Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Serであり、アミノ末端の144番目から728番目までは、ヒト血清アルブミンのコード配列である。
【0023】
第2の態様では、本発明は、腫瘍、肝炎、肺炎又は免疫不全疾患を治療するための薬物の調製における前記発現系の使用を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、インターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質を発現させる発現系を開示し、インターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合遺伝子を有するプラスミドをCHO細胞にエレクトロポレーショントランスフェクションすることにより、ヒト化組換えタンパク質を安定的、効率的に発現するCHOモノクローナル細胞株が得られる。本発明のモノクローナル細胞株は、ヒトインターロイキン2の血漿中半減期を延長し、ヒトインターロイキン2類の薬物の調製や、腫瘍、免疫不全性疾患等の多様な疾患を治療するための薬物の調製に用いられる、インターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質を分泌、発現することができる。
【0025】
本発明は、クローンスクリーニングにより高い発現量を実現するだけでなく、細胞構築において、最適化された融合タンパク質遺伝子配列のN末端にシグナルペプチドを付加することも発現量が高い原因の一つである。
【0026】
本発明の細胞株は、発現量が高く、4g/Lに達することができるだけでなく、発現された融合タンパク質が高活性を有し、NK細胞及び/又はT細胞に対して強く増殖を促進する作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、IL-2-HSA/CHOK1クローンスクリーニングにおけるウェルプレート培養上清の還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、20μLでローディングした。
図2図2は、IL-2-HSA/CHOK1クローンスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、5μLでローディングした。
図3図3は、IL-2-HSA/CHOK1クローン#9のモノクローナルスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、3μLでローディングした。
図4図4は、IL-2-HSA/CHOK1クローン#9-6のモノクローナルスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、2μLでローディングした。
図5図5は、IL-2-HSA/CHOK1細胞の培養動態曲線を示す。125mLの振盪フラスコで流加培養し、初期細胞密度は、0.3×10細胞/mLであり、初期培養体積は、25mLであり、最大生細胞密度は、19.3×10細胞/mLになった。
図6図6は、IL-2-HSA/CHOK1細胞の低密度接種培養プロセスによって得られた上清D7-D13におけるタンパク質発現量の動態曲線を示す。
図7図7は、IL-2-HSA/CHOK1細胞の発現上清の非還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、1μLでローディングした。
図8図8は、IL-2-HSA/CHOK1細胞の培養動態曲線を示す。1Lの振盪フラスコで流加培養し、初期細胞密度は、2×10細胞/mLであり、初期培養体積は、300mLであり、最大生細胞密度は、16×10細胞/mLになった。
図9図9は、IL-2-HSA/CHOK1細胞の高密度接種培養プロセスにより得られた上清D0-D10におけるタンパク質発現量の動態曲線を示す。
図10図10は、IL-2-HSA/CHOK1細胞の発現上清の非還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、5μLでローディングした。
図11図11は、IL-2-HSAがNK-92の増殖を刺激した曲線を示す。
図12図12は、IL-2-HSAがCTLL-2の増殖を刺激した曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明の実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の思想を前提として本発明を簡単に改良したものは、いずれも本発明の保護範囲に属することが理解されるだろう。
【0029】
実施例1 安定化細胞株の構築
トランスフェクションの前日に、CHO-K1細胞の密度を0.5×10細胞/mLに調整した。トランスフェクションの当日、線形化処理された、高濃度のエンドトキシンフリーのプラスミドを用意し、CHO-K1細胞密度及び生存率を測定し、細胞生存率が97%を超えていることを確保した。CHO-K1細胞をCD CHO培地で2回洗浄した後、700μLの細胞懸濁液+40μgのプラスミドのエレクトロポレーショントランスフェクション反応系を配置し、均一に混合した後、4mm電極カップに移した。電極カップをエレクトロポレーショントランスフェクション装置に入れ、電気ショックパラメータを300V、1000μFに設定し、電気ショックを1回行い、電気ショック後の細胞懸濁液を予熱された新鮮なCD CHO培地に移し、37℃で20minインキュベートした。インキュベートした細胞懸濁液を96ウェルプレートに均一に接種し、24hトランスフェクションした後、加圧し、最終選択圧が25~50μM MSXとなるようにメチオニンスルホキシミン(MSX)を含有するCD CHO培地を加え、5%CO、37℃で静置培養した。
【0030】
実施例2 高発現モノクローナル細胞株のスクリーニング
96ウェルプレートにおけるモノクローンが適切な大きさに成長した後、モノクローンの選別を開始し、すべてのクローンを新しい96ウェルプレートに移し、5%CO、37℃で静置培養した。ウェル内の細胞が満杯になった後、ウェルプレートにおける上清を取って還元電気泳動を行い、融合タンパク質の発現状況を検出し、発現量が最も高い9個のクローン株(図1参照)を選出し、振盪フラスコ培養まで徐々に拡大した。9個のクローンを25mL体積の振盪フラスコで流加培養し、培養上清を回収した後、非還元電気泳動同定(図2参照)を行った。発現状況が最も良い細胞株#9を選定した。細胞株#9に対して限界希釈法によりモノクローナル細胞株のスクリーニングを行い、0.3細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種し、スクリーニングして11個の高発現細胞株を得て、25mL体積の振盪フラスコで流加培養を行い、上清に対して非還元電気泳動同定(図3を参照)を行った。発現状況が最も良い細胞株#9-6を選定し、細胞株#9-6に対して限界希釈法により再びモノクローナル細胞株のスクリーニングを行い、スクリーニングして7個の高発現細胞株を得て、25mL体積の振盪フラスコで流加培養を行い、上清に対して非還元電気泳動同定(図4を参照)を行った。安定性がよく、発現量が高い細胞株#9-6-7を選定し、安定高発現細胞株IL-2-HSA/CHOK1とした。
【0031】
実施例3 安定細胞株の125mL振盪フラスコでの流加培養
IL-2-HSA/CHOK1細胞の培養発現を開始した当日、0.3×10細胞/mLで25~50μM MSXを含む基礎培地25mLを125mLの振盪フラスコに接種し、この時、D0と記し、5%CO、37℃、135rpmのシェーカーで培養した。接種後D4からサンプリング計数を開始し、細胞密度が10×10細胞/mLになると、培養温度を33℃に下げた。D5にサプリメント培地の流加を開始し、グルコース濃度を3~4g/Lに制御した。D13まで培養すると、培養を終了し、細胞培養液上清を収集し、融合タンパク質の発現量を測定したところ、4.36mg/mLであった。
【0032】
IL-2-HSA/CHOK1細胞の培養動態曲線を図5に示す。図5から分かるように、培養前期において、細胞は対数増殖期にあり、密度増加が速いが、培養後期において、細胞はタンパク質生産段階に入り、細胞密度が安定となる傾向にある。最大生細胞密度は、19.3×10細胞/mLに達している。
【0033】
IL-2-HSA/CHOK1細胞の上清発現量の動態曲線を図6に示す。図6から分かるように、D7-D13において、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は、増加傾向を示す。D13の発現量は、4.36mg/mLである。
【0034】
IL-2-HSA/CHOK1細胞の発現上清の非還元電気泳動分析を図7に示す。図7から分かるように、D7-D13において、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は、増加傾向を示す。目標タンパク質のバンドは単一であり、不純物のバンドはない。
【0035】
実施例4 安定細胞株の1L振盪フラスコでの流加培養
IL-2-HSA/CHOK1細胞を2×10細胞/mLの密度で振盪フラスコに50mL接種し、5%CO、37℃、135rpmのシェーカーで培養した。毎日サンプリングして計数し、細胞状態を観察し、25~50μM MSXを含む基礎培地を追加し、細胞密度が2×10細胞/mLになるように毎日調整し、細胞培養液の体積が300mLになると、基礎培地の追加を停止し、培養を継続し、このとき、D0とした。毎日サンプリングして計数するとともに、培養上清を1mL残した。細胞密度が6×10~7×10細胞/mLになると、培養温度を33℃に下げた。D2からサプリメント培地の流加培養を開始し、グルコース濃度を3g/Lに制御した。D10まで培養すると、培養を終了し、細胞培養液上清を回収し、D0~D10の上清タンパク質の発現量を測定した。D10に回収した上清から測定した融合タンパク質の発現量は、3.12mg/mLであった。
【0036】
IL-2-HSA/CHOK1細胞の培養動態曲線を図8に示す。図8から分かるように、培養前期において、細胞は対数増殖期にあり、密度増加が速いが、培養後期において、細胞はタンパク質生産段階に入り、細胞密度が安定となる傾向にある。最大生細胞密度は、16×10細胞/mLに達している。
【0037】
IL-2-HSA/CHOK1細胞の上清の発現量の動態曲線を図9に示す。図9から分かるように、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は、増加傾向を示す。
【0038】
IL-2-HSA/CHOK1細胞の発現上清の非還元電気泳動分析を図10に示す。図10から分かるように、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は、増加傾向を示す。目標タンパク質のバンドは単一であり、不純物のバンドはない。
【0039】
従来技術における振盪フラスコ流加培養と比較して、本発明は、細胞密度、細胞生存率が高く、図8に示すように、6-10日目に細胞密度が14×10~16×10細胞/mLに達し、また、本発明の細胞タンパク質の発現量も高く、図9に示すように、10日目の発現量が3.12mg/mLである。本願において、細胞密度が14×10~16×10細胞/mLである場合でも発現量は高く、このような細胞密度では細胞活性が依然として良好であることを示す。
【0040】
実施例5 融合タンパク質の活性実験1:NK-92細胞に対するIL-2-HSAの増殖作用の検出
本実施例では、NK-92細胞(ATCC(R) CRL-2407TM、50歳男性の悪性非ホジキンリンパ腫患者の末梢血単核球から誘導されたIL-2依存性NK細胞株)を用いて、IL-2-HSAの生物学的活性を評価した。
【0041】
(1)液体窒素タンクから凍結保存したNK-92細胞を1本取り出し、対数増殖期まで蘇生培養した。
(2)遠心分離して十分量の細胞を収集し、IL-2を含まない完全培地で再懸濁し、24時間飢餓培養した。
(3)飢餓培養したNK-92細胞を遠心分離し、IL-2を含まない完全培地で再懸濁し、計数し、細胞密度を5×10個/mLに調整し、1ウェルあたり90μLの体積で96ウェルプレートに加えた。
(4)サンプル溶液の調製:培地でIL-2-HSAサンプルとrhIL-2(R&D、商品番号:202-IL)を50.67nMに予備希釈し、4倍勾配で9つの濃度に希釈した。10μL/wellで96ウェルプレートの対応するウェルに加え、各濃度は3重複にして、陰性対照群は、10μL/wellの培地を加え、均一に混合した。
(5)37℃、5%COの条件で72時間培養した後、溶融して均一に混合したMTS検出試薬を20μL/wellで上記の96ウェルプレートに加え、振とう器で振とうして均一に混合した後、37℃、5%COの細胞インキュベーターに置いて1~4時間インキュベートを継続した。
(6)インキュベーション終了後、振とうして均一に混合し、マイクロプレートリーダーで490nm波長における吸光度を測定した。
(7)データは、GraphPad Prism 8ソフトウェアで分析し、薬物濃度Xの対数値を横軸とし、OD490を縦軸とし、4パラメータロジスティックフィット分析で薬物効果曲線をフィッティングした。得られたEC50値を表1に、増殖曲線を図11に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
図11から分かるように、IL-2-HSAは、用量依存的にNK-92細胞の増殖を誘導する。この実験条件では、IL-2-HSAは、等モルのrhIL-2よりもNK-92の増殖を刺激する活性が優れている(約4倍程度)。
【0044】
実施例6 融合タンパク質の活性実験2:CTLL-2細胞に対するIL-2-HSAの増殖作用の検出
本実施例では、CTLL-2細胞(ATCC(R) TIB-214TM、マウス細胞傷害性Tリンパ球細胞株、IL-2依存型)を用いて、IL-2-HSAの生物学的活性を評価した。
【0045】
中国薬局方におけるヒトインターロイキン2の生物学的活性測定法(CTLL-2細胞/MTT比色法)を参照し、CTLL-2細胞を30000個/ウェルで96ウェルプレートに接種し、連続段階希釈された国家標準品及びIL-2-HSAを加え、37℃、5%COの条件下で18~24時間培養した後、MTS検出試薬を加え、1~4時間インキュベートし続け、振とうして均一に混合し、マイクロプレートリーダーで波長490nmにおける吸光度を測定した。データは、GraphPad Prism 8ソフトウェアで分析し、希釈度Xの対数を横軸とし、OD490を縦軸とし、4パラメータロジスティックフィット分析で薬物効果曲線をフィッティングし、得られたEC50値を表2に示し、増殖曲線を図12に示す。
【0046】
IL-2-HSAの生物学的活性は、以下の式で計算される。
【数1】
【0047】
計算により、IL-2-HSAの比活性は、8.38×10IU/mgであり、薬局方に規定のIL-2の比活性(1×10IU/mg以上)に相当するが、両者の分子量の差は5倍程度であるため、IL-2-HSAの比活性がより高い。
【0048】
【表2】
【0049】
本発明に挙げられた実施例は、本発明の好ましい技術案に過ぎず、本発明の保護範囲は、上記実施例に限定されず、例えば、本発明の原理条件下でいかなる改造及び変形を行っても、本発明の保護範囲に属すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2024529782000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質を発現させる発現系であって、
前記融合タンパク質は、
SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列において1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加され且つ同等の機能を有するアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むヒトインターロイキン2又はその変異体と、
SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列において1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加され且つ同等の機能を有するアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むヒト血清アルブミン又はその変異体とを含むことを特徴とする発現系。
【請求項2】
前記発現系は、CHO細胞であり、好ましくは、前記発現系は、CHO-K1細胞であることを特徴とする請求項1に記載の発現系。
【請求項3】
前記ヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の発現系。
【請求項4】
前記融合タンパク質において、SEQ ID NO:1の125番目のアミノ酸は、システインではなく、好ましくは、前記125番目のアミノ酸は、セリン又はアラニンに置換されていることを特徴とする請求項3に記載の発現系。
【請求項5】
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に直接に連結されているか、又は連結ペプチドを介して連結されており、
好ましくは、前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、n、mはそれぞれ1~10の整数であり、より好ましくは、nは1~4の整数であり、mは0~3の整数であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の発現系。
【請求項6】
前記融合タンパク質のN末端は、シグナルペプチドを保有し、
好ましくは、前記シグナルペプチドは、分泌シグナルペプチドCD33であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の発現系。
【請求項7】
前記シグナルペプチドは、SEQ ID NO:5に示される配列を有することを特徴とする請求項6に記載の発現系。
【請求項8】
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3に示されるヌクレオチド配列によってコードされることを特徴とする請求項1に記載の発現系。
【請求項9】
前記ヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載の発現系。
【請求項10】
腫瘍、肝炎、肺炎又は免疫不全疾患を治療するための薬物の調製における請求項1に記載の発現系の使用。
【請求項11】
請求項1に記載の発現系によって得られた、ヒトインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質。
【請求項12】
腫瘍、肝炎、肺炎又は免疫不全疾患を治療するための薬物の調製における請求項11に記載の融合タンパク質の使用。
【国際調査報告】