(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】モルタル組成物および建設におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C04B 28/00 20060101AFI20240801BHJP
C04B 18/10 20060101ALI20240801BHJP
C04B 18/24 20060101ALI20240801BHJP
C04B 24/24 20060101ALI20240801BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20240801BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20240801BHJP
C04B 16/06 20060101ALI20240801BHJP
C04B 14/48 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C04B28/00
C04B18/10 Z
C04B18/24 Z
C04B24/24 Z
C04B22/06 Z
C04B22/10
C04B16/06 Z
C04B14/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531738
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 ES2022070526
(87)【国際公開番号】W WO2023012397
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524049310
【氏名又は名称】トリスタンチョ テリョ,マリア デル カルメン
(71)【出願人】
【識別番号】524049321
【氏名又は名称】ロドリゲス ララ,ロレナ ローラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】トリスタンチョ テリョ,マリア デル カルメン
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ララ,ロレナ ローラ
(72)【発明者】
【氏名】テジャド ラモス,フアン ホセ
(72)【発明者】
【氏名】カルモナ カルモナ,マリサ
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MB06
4G112MC00
4G112PA15
4G112PA19
4G112PA24
4G112PA26
4G112PA33
4G112PB03
4G112PB08
4G112PB26
(57)【要約】
モルタル組成物および建設におけるその使用。本発明は、建設用モルタル組成物に関する。前記建設用モルタル組成物は、農林業廃棄物由来のバイオマス灰、アーモンド殻またはコルクから選択される農産工業廃棄物、樹脂、酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムから選択される結合材、および水を含む。かかる組成物は、通常モルタルに使用されるセメントおよび砂の完全な代替物として、種々の起源を有する廃棄物を用いることによって、環境上の利点を提供する。本発明に係るモルタル組成物は、従来の建設と3Dプリンタによる建設との両方において、特に石工およびコーティングのために使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設用のモルタル組成物であって、農林業廃棄物由来のバイオマス灰、アーモンド殻またはコルクから選択される農産工業廃棄物、樹脂、酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムから選択される結合材、および水を特徴とする、モルタル組成物。
【請求項2】
前記農産工業廃棄物は、粉末形態で前記組成物に添加されることを特徴とする、請求項1に記載のモルタル組成物。
【請求項3】
農林業廃棄物の前記バイオマス灰は、稲藁灰であることを特徴とする、請求項1または2に記載のモルタル組成物。
【請求項4】
前記組成物は、合成繊維をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のモルタル組成物。
【請求項5】
前記組成物は、植物、動物または鉱物を起源とする天然繊維をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のモルタル組成物。
【請求項6】
前記組成物は、金属繊維をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のモルタル組成物。
【請求項7】
前記組成物は、可塑剤もしくは流動化剤、保水剤、増粘剤、殺生物剤、分散剤、撥水剤、顔料、促進剤および/もしくは遅延剤、またはそれらの混合物を含む群から選択される添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のモルタル組成物。
【請求項8】
建設モルタルとしての、請求項1~7のいずれか一項に記載のモルタル組成物の使用。
【請求項9】
コーティングモルタルとしての、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
メーソンリーモルタルとしての、請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、建築材料の技術分野に属し、より具体的には、農林業廃棄物由来のバイオマス灰およびアーモンド殻またはコルク等の農産工業廃棄物を含むモルタル組成物、ならびに建設におけるその使用に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
欧州連合の循環経済行動計画の大きな課題は、材料および資源の価値を可能な限り長く最大化し、変換またはリサイクルを通じてそれらをライフサイクルに戻し、これにより、廃棄物の発生を最小限に抑えることである。
【0003】
循環経済は、持続可能性との密接な結びつきを有し、その建設への応用は最重要である。なぜなら、この部門は、資源を最も多く消費する部門のうちの1つであり、また、廃棄物を最も多く生み出す部門のうちの1つであるからである。
【0004】
持続可能な建設を達成するためには、材料の入手から、使用される建設方法まで、建設の全ての工程で発生する環境的影響を考慮する必要がある。持続可能な開発は、原料および再生可能エネルギーを使用し、天然資源の採取に使用される物質およびエネルギーの量を削減し、廃棄物の適切な管理、破壊またはリサイクルを行うことによって、達成することができる。
【0005】
一例として、農業廃棄物がある。農業廃棄物は通常、藁(葉および茎)および果皮から構成される。一部の農業廃棄物にはさらに、バガス、穂軸、種子、莢および殻が含まれる。これらの多量の廃棄物が利用可能であり、それらを正確に選別して適切に処理することによって、付加価値の高い建築材料を決定および提供できるであろうといえる[1]。
【0006】
従来技術において、アーモンド殻[2]、粉状コルク[3]または籾殻[4]等の農産工業由来の有機廃棄物を、コンクリート、モルタル、および建設に使用されるその他の従来の材料を製造するための添加剤、または一部の成分に対する部分的な代替物として用いる可能性について研究した種々の文献が存在する。
【0007】
建設に使用するための農業廃棄物において最も研究されたものの1つに、籾殻、より具体的には、籾殻灰がある。籾殻の堆肥化による分解は遅く、この廃棄物を除去する方法のうちの1つは、燃焼によるものである。燃焼では、焼却された籾殻の重量を基準として、約13%~約29%の籾殻灰が発生する。この廃棄物における最も際立った特徴の1つは、その高いシリカ含量である。そのため、多数の調査において示されているように、それはセメント質系での使用に適している[5]~[8]。
【0008】
一方、研究[9]は、建設部門における稲藁の使用に関するものである。稲藁は、茎、葉および根の集合体である。稲藁は、金銭的価値のない農業廃棄物であるため、適切に管理されていない。稲藁は通常、野外で焼却され、これによって、微粒子汚染に加えて、大気中にガスが排出される。稲藁灰として知られる廃棄物が残るため、稲藁を焼却しても、この廃棄物の存在の課題全体の解決とはならない。
【0009】
実施された調査[9]では、ポルトランドセメント混合物における添加剤として使用されるポゾラン材料としての稲藁灰の可能性の分析に、焦点が当てられている。しかしながら、セメントを全て稲藁灰で置き換えることは実現されていない(10~30%の代替が評価されている)ため、いくつかの環境課題が解決されるものの、セメント製造に際してのCO2排出等のその他の課題は未解決のままである。
【0010】
砂の代わりにアーモンド殻[2]を含ませることについて報告された試験では、10%の代替において、間接牽引(indirect traction)に対する抵抗が最小となるように改善されること、および、30%の代替において、熱伝導率が改善されることを除いて、この置き換えによって材料の特性が悪化することが観察された。加えて、アーモンド殻の気孔率によって材料の吸水能が増大し、その耐久性に影響が及ぼされる。
【0011】
言い換えれば、建築材料の適切な性質および/または最適な性質を実現するためには、砂をアーモンド殻(10~30%のアーモンド殻)で部分的に置き換える必要がある。すなわち、大量の砂(この場合、70~90%の砂)が使用され続けることになる。このことは不利である。近年、砂の不足に関する懸念が増大しており、この原料の使用を制御することが必要となり始めているからである。
【0012】
したがって、農業または林業における活動の廃棄物に由来する原料および農食品産業等のその他の産業に由来する副産物をその組成中に含む、砂またはセメント等の成分を完全に置き換える新たな建築材料が必要とされている。これによって、より効率的で持続可能で高品質の建設のための、はるかにエコロジカルな材料が得られる。
【0013】
〔発明の説明〕
本発明は、従来は混合される砂およびセメントが混合されていないモルタル組成物であって、これらの成分を完全に置き換えるものとして、農林業廃棄物のバイオマス灰、およびアーモンド殻またはコルク等の農産工業廃棄物が使用されるモルタル組成物を提供することによって、従来技術に存在する課題を解決するものである。この置き換えは、全体的なものであり、従来技術に記載されているような部分的なものではない。
【0014】
この新たなモルタル組成物によって、砂資源の過剰利用の課題、およびセメント製造に際してのCO2排出に関連する環境的課題が解決される。
【0015】
さらに、農林業バイオマス付随物由来の汚染廃棄物(灰)の課題は、その再利用によって解決される。これは、新たな環境的要請に適合するものである。
【0016】
本発明に係るモルタル組成物は、必要とされる形態を可能な限り短時間で取るため、3Dプリンタによる建設等の新たな建設条件および趨勢に適合するものである。結果として、より良好な建設効率およびより小さな建設コストが実現される。さらに、その結果、それが使用される建造物(製作物)のカーボンフットプリントが低減される。
【0017】
第1の態様では、本発明は、農林業廃棄物由来のバイオマス灰、アーモンド殻またはコルクから選択される農産工業廃棄物、樹脂、酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムから選択される結合材、および水を含むモルタル組成物に関する。
【0018】
本発明の別の態様では、前記モルタル組成物の前記農産工業廃棄物は、粉末形態で添加される。
【0019】
本発明の別の態様では、本発明に係るモルタル組成物中の農林業廃棄物由来の前記バイオマス灰は、稲藁灰である。
【0020】
使用される樹脂は、その最終用途に適合する任意の種類の樹脂であり得る。
【0021】
本発明の別の態様では、前記モルタル組成物は、合成繊維をさらに含む。かかる繊維の一部の例として、ポリビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、またはポリウレタン繊維、炭素繊維、またはカーボンナノチューブもしくはグラフェンを含む繊維がある。
【0022】
本発明の別の態様では、前記モルタル組成物は、植物、動物または鉱物を起源とする天然繊維をさらに含む。この群には、種々の作物(例えば、トウモロコシ、コメまたはコムギ)由来の藁繊維、竹繊維、種子(例えば、綿およびココヤシ)または木材由来の繊維等の、植物を起源とする全ての繊維が含まれる。動物を起源とする繊維に関しては、これらはウール、毛、絹およびその他のフィラメントから抽出される。一方、鉱物繊維には、ガラス繊維および貴金属繊維(例えば、金および銀)が含まれる。
【0023】
本発明の別の態様では、前記モルタル組成物は、金属繊維をさらに含む。
【0024】
前記繊維(合成繊維、天然繊維および金属繊維)は、前記組成物の最終的な用途に基づいて選択される。
【0025】
本発明の別の態様では、前記モルタル組成物は、可塑剤もしくは流動化剤、保水剤、増粘剤、殺生物剤、分散剤、撥水剤、顔料、促進剤および/もしくは遅延剤、またはそれらの混合物を含む群から選択される添加剤をさらに含む。これらの添加剤は、任意の適合的な形態(例えば、粉末、ゲルまたは液体の形態)で、本発明に係る前記組成物に混合される。
【0026】
別の態様では、本発明は、建築材料としての、上述したモルタル組成物の使用に関する。
【0027】
別の態様では、前記組成物は、コーティングモルタルとして使用できる。前記組成物は、新たな建造物において、改築において、または再建(修復)において、外装と内装とのいずれについても、あらゆる種類の壁および側壁のためのコーティングおよび装飾として使用できる。
【0028】
最終的な態様では、前記組成物は、メーソンリーモルタル(masonry mortar)として使用できる。言い換えれば、前記組成物は、壁、柱および仕切り上の組積片(masonry pieces)をグラウチングおよび固定するために使用できる。
【0029】
〔実施形態の説明〕
本発明をこれまで説明してきたが、以下に実施例を用いてさらに説明する。以下に記載される実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0030】
(実施例1)
本発明に係るモルタル組成物に関して、試料を調製した。より具体的には、以下の組成を有する試料である:農林業廃棄物由来のバイオマス灰275g、粉末形態のアーモンド殻200g、CaO150g、樹脂200gおよび水250g。
【0031】
その後、この試料に対して、メーソンリーモルタル試験に関するUNE-EN-1015規格に従って、種々の試験を行った。
【0032】
より具体的には、硬化モルタルの乾燥見掛け密度(規格UNE-EN-1015-10)、硬化モルタルの曲げおよび圧縮に対する抵抗(規格UNE-EN-1015-11)、ならびに硬化モルタルの毛管現象による吸水度(規格UNE-EN-1015-18)を決定する試験を行った。得られた値を表1に示す。
【0033】
【0034】
得られた値を考慮して、UNE-EN 998-1規格に従ってモルタルの分類を実施した。UNE-EN 998-1規格では、圧縮強度および毛管現象による吸水度に従って、この材料が分類される。分類および値を表2に示す。
【0035】
【0036】
本発明に係るモルタル組成物の毛管現象による吸水度の値(カテゴリW1)は、濾過に対して中程度の抵抗を有するコーティングとして使用できることを示している。
【0037】
得られた圧縮強度の値(表1または表2参照)、および、メーソンリーモルタル仕様に関するUNE-EN 998-2規格の分類を考慮すると、本発明に係るモルタル組成物は、M-5として分類されるだろう。この分類は、このモルタルが一般的なメーソンリーモルタルとして使用できることを示している。
【0038】
要約すれば、得られた結果は、本発明に係るモルタル組成物が、建設における使用に適した物理的性質および化学的性質を有することを実証している。
【0039】
〔参考文献〕
[1]J. Rosello´(´は上付きアクセント記号。以下、参考文献欄において同じ), L. Soriano, M. P. Santamarina, J. L. Akasaki, J. Monzo´, and J. Paya´, “Rice straw ash A potential pozzolanic supplementary material for cementing systems,” Ind. Crops Prod., vol. 103, pages 39-50, 2017.
[2]Molina Salinas, Javier Eduardo; Eguez, Hugo. “Adicio´n de ceniza de cascarilla de arroz en hormigo´n compactado con rodillo”. 2002. 学士論文.
[3]Gonza´lez, B., et al. “Ensayos de hormigones fabricados con polvo de corcho”. Building Materials, 2007, vol. 57, no 286, page 83-90.
[4]Bustos, Arturo. “Aprovechamiento de residuos orga´nicos (ca´scara de almendra) para sustitucio´n de a´rido grueso en la elaboracio´n de hormigo´n convencional”. Building Annals, 2016, vol. 2, no 3, page 1-8.
[5]R. Khan, A. Jabbar, I. Ahmad, W. Khan, A. N. Khan, and J. Mirza, “Reduction in environmental problems using rice-husk ash in concrete,” Constr. Build. Mater., vol. 30, pages 360-365, 2012.
[6]G. Rodri´guez De Sensale, “Effect of rice-husk ash on durability of cementitious materials,” Cem. concr. Compos., vol. 32, no. 9, pages 718-725, 2010.
[7]B. H. Abu Bakar, M. J. Megat Azmi, and P. J. Ramadhansyah, “Effect of rice husk ash fineness on the chemical and physical properties of concrete,” Mag. concr. Res., Vol. 63, no. 5, pp. 313-320, 2011.
[8]F. Baeza, J. Paya´, O. Galao, J. M. Saval, and P. Garce´s, “Blending of industrial waste from different sources as partial substitution of Portland cement in pastes and mortars,” Constr. Build. Mater., vol. 66, no. 66, pages 645-653, 2014.
[9]Samantha Elizabeth Hidalgo Astudillo “Evaluacio´n de la reactividad puzola´nica de la ceniza de paja de arroz”. Construction engineering and civil engineering projects. Polytechnic University of Valencia (2018).
【国際調査報告】