(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-09
(54)【発明の名称】新規のポリチオフェン/ポリアニオン組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20240802BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C08G61/12
H01G9/00 290G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574787
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2022065147
(87)【国際公開番号】W WO2022258501
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593194476
【氏名又は名称】アグフア-ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーケンス,ロアルド
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032BA04
4J032BB04
4J032BB08
4J032BC03
4J032BD02
4J032BD07
4J032CG01
4J032CG02
4J032CG06
(57)【要約】
(a)式Iの第1のモノマーと、式IIの第2のモノマーとのポリチオフェンコポリマーであって、式中、Aが、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される少なくとも1つの官能基でさらに官能化された置換または非置換のC
1-C
5アルキレン架橋を表し、Bが、置換または非置換のC
1-C
5アルキレン架橋を表すが、但し、Bが、pH応答基でさらに官能化されていないことが条件であり、第1のモノマーと第2のモノマーとのモル比が1/4~4/1である、ポリチオフェンコポリマーと、(b)ポリマーポリアニオンであって、ポリマーポリアニオンのモノマー単位の少なくとも75mol%が、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される官能基で官能化されている、ポリマーポリアニオンと、を含むポリチオフェン分散液であって、ポリチオフェンコポリマーの第1のモノマー及び第2のモノマーの合計に対するポリアニオンの官能基のモル比が1.1~1.75であることを特徴とする、ポリチオフェン分散液。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式I
【化1】
の第1のモノマーと、式II
【化2】
の第2のモノマーとのポリチオフェンコポリマーであって、
式中、
Aが、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される少なくとも1つの官能基でさらに官能化された置換または非置換のC
1-C
5アルキレン架橋を表し、
Bが、置換または非置換のC
1-C
5アルキレン架橋を表すが、但し、Bが、pH応答基でさらに官能化されていないことが条件であり、
前記第1のモノマーと前記第2のモノマーとのモル比が1/4~4/1である、前記ポリチオフェンコポリマーと、
(b)ポリマーポリアニオンであって、前記ポリマーポリアニオンのモノマー単位の少なくとも75mol%が、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される官能基で官能化されている、前記ポリマーポリアニオンと、
を含むポリチオフェン分散液であって、
前記ポリチオフェンコポリマーの前記第1のモノマー及び前記第2のモノマーの合計に対する前記ポリアニオンの前記官能基のモル比が1.1~1.75であることを特徴とする、前記ポリチオフェン分散液。
【請求項2】
前記第1のモノマーと前記第2のモノマーとの前記モル比が3/7~1/1である、請求項1に記載のポリチオフェン分散液。
【請求項3】
前記ポリチオフェンコポリマーの前記第1のモノマー及び前記第2のモノマーの合計に対する前記ポリアニオンの前記官能基のモル比が1.25~1.65である、請求項1または2に記載のポリチオフェン分散液。
【請求項4】
前記第1のモノマーが、式I-a
【化3】
の化学構造を有し、
式中、
L
1が、1~15個の炭素原子を含む二価の連結基を表し、
Cが、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される基を表す、請求項1~3のいずれかに記載のポリチオフェン分散液。
【請求項5】
前記第1のモノマーが、式I-b
【化4】
の化学構造を有し、
式中、
L
2が、10個以下の炭素原子を含む二価の連結基を表し、
Mが、水素を表すか、またはスルホン酸基の負電荷を相殺するための対イオンを表す、先行請求項のいずれかに記載のポリチオフェン分散液。
【請求項6】
前記第2のモノマーが、3,4-エチレンジオキシチオフェンである、先行請求項のいずれかに記載のポリチオフェン分散液。
【請求項7】
前記ポリマーポリアニオンが、ポリ(4-スチレンスルホン酸)またはその塩である、先行請求項のいずれかに記載のポリチオフェン分散液。
【請求項8】
前記ポリマーポリアニオンの重量平均分子量(Mw)が、100000~300000Daである、先行請求項のいずれかに記載のポリチオフェン分散液。
【請求項9】
前記ポリチオフェン及び前記ポリアニオンがポリチオフェン/ポリアニオン粒子として存在し、液相遠心沈降法(CPS)によって測定される前記ポリチオフェン/ポリアニオン粒子の中央粒径(d
50)が5~40nmである、先行請求項のいずれかに記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項10】
先行請求項のいずれかに記載の導電性ポリマー分散液を含む液体配合物。
【請求項11】
前記配合物が、2~8.5のpHを有する、請求項10に記載の液体配合物。
【請求項12】
20℃、せん断速度100s
-1でレオメータを用いて測定される前記配合物の粘度が、1~250mPa・sである、請求項10または11に記載の液体配合物。
【請求項13】
多孔質アノード体を含むポリマーコンデンサーの作製方法であって、前記作製方法が、請求項10~12のいずれかに記載の液体配合物を前記多孔質アノード体の少なくとも一部に導入するステップを含む、前記作製方法。
【請求項14】
電子デバイスにおける導電層の作製のための、請求項10~12のいずれかに記載の液体配合物の使用。
【請求項15】
前記電子デバイスが、光伝導セル、フォトレジスタ、光スイッチ、フォトトランジスタ、光電管、IR検出器、光起電デバイス、太陽電池、記憶デバイス用の被覆材料、電界効果抵抗デバイス、帯電防止フィルム、バイオセンサー、エレクトロクロミックデバイス、固体電解質コンデンサー、ハイブリッドコンデンサー、超コンデンサー、エネルギー貯蔵デバイス、バッテリー、及び電磁遮蔽物から選択される、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のポリチオフェン/ポリアニオン組成物及びさまざまな用途(例えば、ポリマーコンデンサーなど)におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガス排出に対する環境的な懸念から、バッテリー容量を大きくしたバッテリー式電気自動車及び(プラグイン)ハイブリッド電気自動車に対する需要が喚起されている。こうした自動車用電子機器中の制御装置は、いわゆるポリマーコンデンサーをいくつか含む。
【0003】
この分野では、ポリマーハイブリッドアルミニウム電解コンデンサーがよく利用される。こうしたコンデンサーは、電極及び誘電体層として働くエッチング処理アルミニウム/酸化アルミニウム(Al/Al2O3)箔からなり、このAl/Al2O3箔は、対電極として機能する導電性ポリマー層によって被覆されている。一般にはポリ(3,4-エチレンジオキシ-チオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)が使用され、PEDOT:PSSは、水性分散液からの浸漬被覆によってAl/Al2O3基材上を被覆する導電性ポリマー複合物である。
【0004】
こうしたコンデンサーの製造の重要な側面は、Al/Al2O3箔への導電性ポリマー粒子の浸透である。表面積を広げるために、Al箔にはエッチング処理が施され、その後にこのエッチング処理Al箔が陽極酸化されてAl2O3の薄層を与える。このプロセスによって多孔質Al/Al2O3基材が創出され、この基材は水性PEDOT:PSS分散液で浸漬被覆される。したがって、導電性ポリマー粒子の粒径が、Al/Al2O3基材の細孔へのポリマーの浸透能力を決定付ける。それ故に、導電性ポリマー分散液の粒径が小さければ小さいほど、より良好な被覆が得られる上、コンデンサーの等価直列抵抗(ESR)も低下する。
【0005】
こうしたPEDOT:PSS分散液の粒径を小さくすることは、複合物中の両ポリマーの相対量を変えることによって達成され得る。ポリマーコンデンサーを作製する上で、PEDOT:PSSの質量比は、典型的には、1:2.5とされ、この質量比にする理由は、これによって特性(PEDOT:PSS層の表面抵抗及びPEDOT:PSS分散液の粒径など)の間でバランスが得られることにある。PSSの量を増やした場合、結果として得られる粒子は小さくなるが、表面抵抗が大幅に上昇する(Conjugated Polymers 3rd Edition,2007,CRC Press)。代わりに、PSSの量を減らせば表面抵抗は低下するが、PEDOT:PSS分散液の粘度、粒径、及び凝集物(>5μm)の数が大幅に上昇する。
【0006】
特許文献1(Heraeus)では、さまざまなPEDOT:PSS比及びポリマーコンデンサーにおけるその使用について開示されている。PEDOT:PSS比は、好ましくは、0.67~1.5である。しかしながら、導電性は、PEDOT:PSS質量比が1:2.5の参照材料の導電性と比較して低いものである。粒径に対する効果は報告されていない。
【0007】
特許文献2(Shin-Etsu Polymer)では、さまざまなPEDOT:PSS比が開示されている。PSSの含量を減らした材料について、導電性が上昇することが報告されている。PEDOT:PSSの粒径に対する影響は報告されていない。
【0008】
特許文献3(Kemet)においても、2つのポリマーの比が異なるPEDOT:PSS分散液について記載されている。PSSの量を増やすこと及び合成方法を変えることによってPEDOT:PSSの粒径が小さくなっている。
【0009】
特許文献4(Agfa Gevaert/Heraeus)では、4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ダイオキシン-3-イルメトキシ)ブタン-1-スルホン酸(EDOT-S)の合成及び重合について開示されている。EDOT-Sは共有結合したスルホン酸を含むため、こうしたモノマーを用いて調製されるチオフェンポリマーは、ポリアニオン(PSSなど)を用いて水中で安定化させる必要がないものである。アニオン性基またはその塩を含むモノマーは、自己ドープ型EDOTモノマーと称されることが多い。
【0010】
特許文献5(Heraeus)では、自己ドープ型EDOT誘導体(例えば、EDOT-S)を使用する水溶性チオフェンポリマーの調製方法が開示されている。
【0011】
特許文献6(Kemet)では、自己ドープ型ポリチオフェン(当該文献では、真性導電性ポリマー(intrinsically conductive polymer)と称されている)を含むポリマーコンデンサーが開示されている。
【0012】
特許文献7(Tosoh)では、さまざまな自己ドープ型EDOTモノマー(EDOT-S、及びEDOT-Sの分岐アルキル代替物)の合成及び重合について開示されている。こうした材料のポリマーは水溶性であることから、ポリアニオンによる水中安定化を必要としない。しかしながら、報告された導電性は、多くの場合、PEDOT:PSS分散液の導電性と比較して1桁低いものである。こうした導電性ポリマーの別の不利な点は、その調製コストが高くなることである。
【0013】
特許文献8(Agfa Gevaert)では、とりわけ、EDOT及びEDOT-Sのコポリマーについて開示されている。しかしながら、PSSの量は、すべてのコポリマーで一定である。
【0014】
特許文献9(Tosoh)では、上述のEDOT-Sの分岐アルキル代替物と少なくとも1つの他のチオフェンモノマーとのコポリマーについて記載されている。得られるコポリマーは水溶性であるため、PSSは使用されていない。導電性は、PEDOT:PSS分散液の導電性と比較して低いものである。
【0015】
特許文献10(Tayca)では、アルキル化EDOT誘導体とEDOTとのコポリマーをPSSと組み合わせたもの、及びコンデンサーにおけるその使用について開示されている。EDOTとEDOT誘導体とのモル比が異なるコポリマーが調製されているが、PSSの量は不変である。粒径に対する効果については記載されていない。
【0016】
特許文献11(Heraeus)では、自己ドープ型(例えば、EDOT-Sから調製されるもの)及び外部ドープ型のポリチオフェンポリマー(例えば、PEDOT:PSS)の両方を使用するポリマーコンデンサーの生産プロセスについて開示されている。
【0017】
したがって、ポリマーコンデンサーを作製するために、生じる表面抵抗が低く、かつ、より小さな粒径が得られる導電性ポリマー分散液が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2014/048561号
【特許文献2】特願2020-202123号
【特許文献3】国際公開第2020/040851号
【特許文献4】欧州特許出願公開第1122274号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第3037497号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2016/351339号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2015/337061号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1458785号明細書
【特許文献9】国際公開第2015/194657号
【特許文献10】欧州特許出願公開第2508547号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第2901464号明細書
【発明の概要】
【0019】
本発明の目的は、粒子が小さく、かつ導電性が高い導電性ポリマー分散液、及びポリマーコンデンサーの作製におけるその使用を提供することである。
【0020】
本発明の目的は、請求項1に記載の分散液によって実現される。
【0021】
本発明の追加の目的は、本明細書の以後の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
「単官能性」という用語(例えば、重合可能な単官能性化合物における「単官能性」という用語)は、重合可能な化合物が重合可能な基を1つ含むことを意味する。
【0023】
「二官能性」という用語(例えば、重合可能な二官能性化合物における「二官能性」という用語)は、重合可能な化合物が重合可能な基を2つ含むことを意味する。
【0024】
「多官能性」という用語(例えば、重合可能な多官能性化合物における「多官能性」という用語)は、重合可能な化合物が重合可能な基を3つ以上含むことを意味する。
【0025】
「アルキル」という用語は、各炭素原子数のアルキル基について可能なすべての変形形態を意味し、すなわち、メチル、エチル、炭素原子数3のものについては、n-プロピル及びイソプロピル、炭素原子数4のものについては、n-ブチル、イソブチル、及びターシャリー-ブチル、炭素原子数5のものについては、n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピル、及び2-メチル-ブチルを意味する(その他も同様)。
【0026】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアルキル基は、好ましくは、C1-C6アルキル基である。
【0027】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアルケニル基は、好ましくは、C2-C6アルケニル基である。
【0028】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアルキニル基は、好ましくは、C2-C6アルキニル基である。
【0029】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアルカリル基は、好ましくは、1つ、2つ、3つ、またはそれを超える数のC1-C6アルキル基を含むフェニル基またはナフチル基である。
【0030】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアラルキル基は、好ましくは、フェニル基またはナフチル基を含むC7-C20アルキル基である。
【0031】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアリール基は、好ましくは、フェニル基またはナフチル基である。
【0032】
別段の指定がない限り、置換または非置換のヘテロアリール基は、好ましくは、1つ、2つ、または3つの酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子、またはそれらの組み合わせによって置換された5員または6員の環である。
【0033】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアルキレン基は、好ましくは、C1-C6アルキレン基である。
【0034】
「置換」という用語(例えば、置換アルキル基における「置換」という用語)は、アルキル基が、そのような基に通常存在する原子(すなわち、炭素及び水素)以外の原子によって置換されたものであり得ることを意味する。例えば、置換アルキル基は、ハロゲン原子またはチオール基を含み得る。非置換アルキル基は、炭素原子及び水素原子のみを含む。
【0035】
別段の指定がない限り、置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基、置換アルカリル基、置換アリール、及び置換ヘテロアリール基は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及びターシャリー-ブチル、エステル、アミド、アミン、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸エステル、スルホンアミド、-Cl、-Br、-I、-OH、-SH、-CN、ならびに-NO2からなる群から選択される1つ以上の構成要素によって置換されている。
【0036】
導電性ポリマー分散液
本明細書では、導電性ポリマーを含む分散液は、導電性ポリマー分散液と称される。
【0037】
本発明による導電性ポリマー分散液は、以下に記載のポリアニオン及び導電性ポリマーを含む。
【0038】
導電性ポリマー分散液の分散媒体は、好ましくは、水、水溶性有機溶媒、またはその混合物から選択される。好ましい有機溶媒は、プロトン性有機溶媒(アルコールまたは酸など)である。分散媒体は、好ましくは、水である。
【0039】
導電性ポリマー分散液は、他の成分(分散剤など)を含み得る。
【0040】
導電性ポリマー分散液は、好ましくは、以下に記載のように調製される。
【0041】
導電性ポリマー分散液は、
(a)式I
【化1】
のモノマーと、式II
【化2】
のモノマーとのポリチオフェンコポリマーであって、
式中、
Aが、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される少なくとも1つの基でさらに官能化された置換または非置換のC
1-C
5アルキレン架橋を表し、
Bが、置換または非置換のC
1-C
5アルキレン架橋を表すが、但し、BがpH応答基でさらに官能化されていないことが条件であり、
式Iのモノマーと式IIのモノマーとのモル比が1/4~4/1である、ポリチオフェンコポリマーと、
(b)ポリマーポリアニオンであって、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される置換基を当該ポリアニオンのモノマー単位の少なくとも75mol%が含む、ポリマーポリアニオンと、
を含み、
ポリチオフェンの式Iのモノマー単位及び式IIのモノマー単位の合計に対するポリアニオンの官能基のモル量の比が1.1~1.75であることを特徴とする。
【0042】
式I及び式IIについて本明細書で使用される「基で官能化されたアルキレン架橋」という特徴は、20個以下のC原子を有する二価の連結基を任意選択で介して基がアルキレン架橋に共有結合でカップリングしていることを意味する。好ましい連結基は、20個以下のC原子を有するアルキレン基またはエーテル基である。
【0043】
本明細書で使用されるC1-C5アルキレン架橋という用語は、1~5つの炭素原子を含むアルキレン架橋を意味する。
【0044】
モル量は、チオフェンモノマーの総モル含量に対する、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される官能基を有するポリマーポリアニオン中
のモノマーのモル含量の比として定義される。
【0045】
本明細書で使用されるpH応答基は、周囲媒体のpHに応じてイオン性から非イオン性へと変化し得る基を意味する。したがって、そのようなpH応答基は、酸または塩基である。pH応答基は、好ましくは、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩から選択される。
【0046】
式Iのモノマーと式IIのモノマーとのモル比は、好ましくは、3/7~1/1であり、より好ましくは、35/65~45/55である。
【0047】
ポリチオフェンの式Iのモノマー単位及び式IIのモノマー単位の合計に対するポリアニオンの官能基のモル量の比は、1.1~1.75であり、より好ましくは、1.25~1.65であり、最も好ましくは、1.4~1.6である。
【0048】
導電性ポリマー
導電性ポリマー分散液は、導電性ポリマーを含む。
【0049】
導電性ポリマーは、ポリチオフェンである。
【0050】
そのようなポリチオフェンは、典型的には、当該ポリマーの主鎖上に位置する正電荷を有する。この正電荷は、好ましくは、アニオンによって少なくとも部分的に相殺される。
【0051】
アニオンが共有結合でポリマーに結合している場合、そうしたポリマーは、自己ドープ型ポリマーまたは真性導電性ポリマーと称されることが多い。そのような自己ドープ型ポリマー(すなわち、アニオン性基を含む)の調製に使用されるモノマーは、自己ドープ型モノマーとも称される。
【0052】
アニオンが別の化合物である場合、ポリマーは、典型的には、外部ドープ型ポリマーまたは外的導電性ポリマー(extrinsically conductive polymer)と称される。別の化合物として添加されるアニオンは、好ましくは、ポリアニオンである。
【0053】
ポリチオフェンは、式I
【化3】
のモノマーと、式II
【化4】
のモノマーとのコポリマーであり、
式中、
Aは、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される少なくとも1つの基でさらに官能化された置換または非置換のC
1-C
5アルキレン架橋を表し、
Bは、置換または非置換のC
1-C
5アルキレン架橋を表すが、但し、BがpH応答基でさらに官能化されていないことが条件であり、
式Iのモノマーと式IIのモノマーとのモル比は、1/4~4/1である。
【0054】
式Iのモノマー
ポリチオフェンは、式Iのモノマーを含む。
【0055】
式I中のAは、好ましくは、C2アルキレン架橋を表す。
【0056】
ポリチオフェンは、好ましくは、式I-a
【化5】
のモノマー単位を含み、
式中、
L
1は、1~15個の炭素原子を含む二価の連結基を表し、
Cは、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される官能基を表す。
【0057】
Cは、好ましくは、スルホン酸またはその塩を表す。
【0058】
ポリチオフェンは、より好ましくは、式I-b
【化6】
のモノマー単位を含み、
式中、
L
2は、10個以下の炭素原子を含む二価の連結基を表す。
Mは、水素を表すか、またはスルホン酸基の負電荷を相殺するための対イオンを表す。
【0059】
表1には、典型的な式Iのモノマーが示される。
【表1-1】
【表1-2】
【0060】
式IIのモノマー
式II中のBは、好ましくは、C2アルキレン架橋を表す。
【0061】
特に好ましい実施形態では、式IIのモノマー単位は、3,4-エチレンジオキシチオフェンである。
【0062】
ポリアニオン
導電性ポリマー分散液はポリマーポリアニオンを含み、このポリアニオンのモノマー単
位の少なくとも75mol%は、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される置換基を含む。
【0063】
ポリマーポリアニオンのモノマー単位の少なくとも75mol%、好ましくは、少なくとも80mol%、より好ましくは、少なくとも90mol%、最も好ましくは、少なくとも99mol%は、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される官能基を含む。
【0064】
官能基は、好ましくは、スルホン酸またはその塩である。
【0065】
ポリマーポリアニオンは、異なるモノマーのコポリマーであり得るが、好ましくは、ホモポリマーである。
【0066】
特に好ましい実施形態では、ポリマーポリアニオンは、スチレンベースのものである。
【0067】
特定の好ましい実施形態によれば、ポリアニオンは、ポリ(4-スチレンスルホン酸)またはその塩である。
【0068】
ポリマーアニオンの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは、1000~1000000Daであり、より好ましくは、50000~500000Daであり、最も好ましくは、100000~300000Daである。
【0069】
導電性ポリマーの調製
ポリチオフェンポリマーは、好ましくは、水性媒体中で上記のチオフェンモノマーを酸化重合させることによって調製される。
【0070】
外部ドープ型ポリチオフェンの場合、酸化重合は、好ましくは、ポリアニオンの存在下で実施される。
【0071】
水相媒体中のチオフェンモノマーの濃度は、好ましくは、0.1~25wt%の範囲内であり、好ましくは、0.5~10wt%の範囲内であり、これらはすべて、水性反応媒体の総重量に対するものである。
【0072】
適切な酸化剤は、鉄(III)塩(FeCl3など)ならびに芳香族スルホン酸及び脂肪族スルホン酸の鉄(III)塩、H2O2、K2Cr2O7、KMnO4、アルカリ金属過ホウ酸塩、アルカリ金属過硫酸塩またはアンモニウム過硫酸塩、ならびにその混合物である。
【0073】
追加の適切な酸化剤については、例えば、Handbook of Conducting Polymers(Ed.Skotheim,T.A.),Marcel Dekker:New York,1986,Vol.1,pages 46-57に記載されている。
【0074】
特に好ましい酸化剤は、ペルオキシ二硫酸の塩(具体的には、K2S2O8、Na2S2O8)、鉄(III)塩(具体的には、塩化鉄(III))、またはそれらの組み合わせである。
【0075】
ペルオキシ二硫酸の塩と、このペルオキシ二硫酸の切断を触媒する少なくとも1つの追
加の化合物(Fe(III)塩など)と、の混合物が特に好ましい。
【0076】
特に好ましい実施形態によれば、酸化剤は、Fe2(SO4)3とNa2S2O8との混合物である。
【0077】
水性反応媒体の調製方法はさまざまなものが存在する。チオフェンモノマーを水性反応媒体中に溶解もしくは分散させた後に酸化剤(複数可)(同じく水相中に溶解もしくは分散され得る)が添加され得るか、または最初に酸化剤(複数可)を水性反応媒体中に溶解もしくは分散させた後にチオフェンモノマー(同じく水相中に溶解もしくは分散され得る)が添加される。
【0078】
複数の酸化剤(例えば、Fe2(SO4)3とNa2S2O8との混合物)が使用される場合、これらの成分のうちの1つをチオフェンモノマーと水性反応媒体中で最初に混合した後に、第2の酸化剤を添加することもさらに可能である。
【0079】
酸化重合は、好ましくは、EP-11453877(Agfa Gevaert)に開示されているように不活性な雰囲気の下で実施される。酸化剤(例えば、ペルオキシ二硫酸の塩)が反応媒体に添加されるときの反応媒体の酸素含量は、好ましくは、3mg/リットル未満であり、より好ましくは、1.5mg/リットル未満であり、最も好ましくは、0.5mg/リットル未満である。
【0080】
反応媒体中の酸素の濃度は任意の手段によって制御することができ、こうした手段は、凍結解凍を使用する手法、不活性ガス(アルゴン、窒素、またはヘリウムなど)を反応媒体に長時間通気するもの、不活性ガス雰囲気下での犠牲反応(sacrificial reaction)で酸素を消費させるものなどである。不活性ガスは、好ましくは、重合が完了するまで反応媒体に通気され、それによって酸素濃度は3mg/l未満に維持される。
【0081】
酸化重合は、好ましくは、EP-A1384739(Heraeus)に開示されるように、低pHで実施される。pHは、好ましくは、1.5以下であり、より好ましくは、1.00以下である。
【0082】
pHを調整するために、酸は、好ましくは、水溶性無機酸及び水溶性有機酸の群から選択される。無機酸の例は、塩酸、硫酸、硝酸、及びリン酸である。有機酸の例としては、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、及びトリフルオロメタンスルホン酸が挙げられる。
【0083】
反応混合物の温度は、好ましくは、0~100℃であり、より好ましくは、0~50℃であり、最も好ましくは、5~30℃である。
【0084】
反応混合物中のチオフェンモノマー及びポリアニオンの量は、固形分が、好ましくは、0.05~25wt%、より好ましくは、0.1~10wt%、最も好ましくは、0.8~2wt%である安定なポリチオフェン/ポリアニオン分散液が得られるように選択される。
【0085】
重合反応の完了後、液体組成物は、例えば、ろ過、具体的には、限外ろ過、ならびに/またはイオン交換体での処理、具体的には、アニオン交換体及びカチオン交換体での処理によってさらに精製され得る。
【0086】
精製ステップの後、導電性ポリマー分散液は、その使用用途向けにさらに最適化され得
る。例えば、ポリマーコンデンサーの作製に使用される場合、以下に記載のポリマーコンデンサー配合物が導電性ポリマー分散液から調製され得る。
【0087】
導電性ポリマーの調製の間にはさまざまな均質化手法が使用され得る。こうした均質化手法は、
-超音波均質化手法、
-加圧均質化手法、及び
-機械的均質化手法
から選択され得る。
【0088】
好ましい機械的ホモジナイザーは、ローター・ステーター式ホモジナイザー及びブレード型ホモジナイザーである。別の機械的均質化手法は、スピニングディスクリアクターを使用するものであり得る。
【0089】
好ましい高圧ホモジナイザー(例えば、GaulinホモジナイザーまたはArieteホモジナイザーなど)は、加圧下で非常に狭いチャネルまたはオリフィスに分散液を強制的に通すものである。別の好ましい高圧ホモジナイザーは、マイクロフルイダイザーである。
【0090】
2つ以上のホモジナイザーが、好ましくは連続様式で、併用され得る。
【0091】
均質化手法は、重合反応前、重合反応中、及び重合反応後に使用され得る。こうした均質化手法は、以下に記載の液体配合物の調製の間にも使用され得る。
【0092】
液体配合物
導電性ポリマー分散液が使用される用途に応じて、追加の成分が導電性ポリマー分散液に添加され、それによって、そうした用途向けに最適化された液体配合物が形成され得る。
【0093】
例えば、ポリマーコンデンサーの作製に使用される場合、そのような液体配合物は、ポリマーコンデンサー配合物と称され得る。
【0094】
以下に記載の追加の成分のすべてまたは一部もまた、上述の導電性ポリマー分散液に添加され得る。
【0095】
上記の導電性ポリマー及びポリアニオンに加えて、配合物は、追加の添加剤をさらに含み得、こうした追加の添加剤は、界面活性物質、接着促進剤、架橋剤、結合剤、導電性向上化合物、熱安定性及び水分安定性改善化合物、酸性化合物、ならびにアルカリ性化合物などである。
【0096】
界面活性化合物は、
-アニオン性界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸及び塩、パラフィンスルホネート、アルコールスルホネート、エーテルスルホネート、スルホスクシネート、リン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸、またはカルボキシレートなど)、
-カチオン性界面活性剤(第四級アルキルアンモニウム塩など)、
-非イオン性界面活性剤(直鎖アルコールエトキシレート、オキソアルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、またはアルキルポリグルコシドなど)、ならびに
-双性イオン性界面活性剤(カルボン酸基及び第四級アンモニウム基の両方を含む化合物(例えば、ラウリル-N,N-(ジメチル-アンモニオ)-ブチレート及びラウリル-N
,N-(ジメチル)-グリシンベタイン)、硫酸基及び第四級アンモニウム基の両方を含む化合物(例えば、3-[(3-コラミド-プロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパン-スルホネート、3-(4-tert-ブチル-1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート、及び3-(ベンジル-ジメチル-アンモニオ)プロパンスルホネート)、リン酸基及び第四級アンモニウム基の両方を含む化合物(例えば、ヘキサデシルホスホコリン)、ヒドロキシ基が付加された第四級アンモニウム基を含む化合物(例えば、ラウリルジメチルアミンN-オキシド)、ならびにリン脂質(リン酸基を介してカップリングした第四級アンモニウム頭部と、2つの疎水性脂肪酸と結合したグリセロールと、からなる)など)
であり得る。
【0097】
特に好ましい界面活性剤は、Dynol(登録商標)及びZonyl(登録商標)という商標で入手可能な市販の界面活性剤である。
【0098】
好ましい接着促進剤は、有機官能性シランまたはその加水分解物(3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノ-プロピル-トリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、またはオクチルトリエトキシシランなど)である。
【0099】
好ましい架橋剤は、メラミン化合物、ブロックイソシアネート、官能性シラン(テトラエトキシシランなど)、アルコキシシラン加水分解物(テトラエトキシシランなど)、エポキシシラン(3-グリシドキシ-プロピルトリアルコキシシランなど)である。
【0100】
好ましい結合剤は、ポリウレタン、ポリアクリレート、またはポリオレフィンである。
【0101】
好ましい導電性向上剤は、
-エーテル基を含む化合物(例えば、テトラヒドロフランなど)、
-ラクトン基を含む化合物(γ-ブチロラクトンまたはγ-バレロ-ラクトンなど)、
-アミド基またはラクタム基を含む化合物(カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム,N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-ホルムアミド、N-メチル-ホルムアニリド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-オクチル-ピロリドン、2-ピロリドン、N-ブチル-ピロリドン、及びN-ヒドロキシエチル-ピロリドンなど)、
-スルホン及びスルホキシド(スルホラン(テトラメチレンスルホン)またはジメチルスルホキシド(DMSO)など)、
-糖または糖誘導体(アラビノース、サッカロース、グルコース、フルクトース、またはラクトースなど)、
-二価アルコールまたは多価アルコール(ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マンノース、ガラクトース、ソルボース、グルコン酸、またはエチレングリコール、ジ(エチレングリコール)またはトリ(エチレングリコール)、1,1,1-トリメチロール-プロパン、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパン-ジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2,3-プロパントリオール、1,2,4-ブタントリオール、または1,2,6-ヘキサントリオール、芳香族の二価アルコールまたは多価アルコール(レゾルシノールなど)など)
である。
【0102】
特に好ましい導電性向上化合物は、N-メチル-ピロリジノン、N-ブチル-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-ピロリドン、DMSO、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群から選択される。
【0103】
好ましい安定性向上化合物は、没食子酸誘導体である。
【0104】
ポリマーコンデンサー配合物は、1~14のpHを有し、より好ましくは、1~8のpHを有し得る。腐食感受性誘電体(酸化アルミニウムまたは酸化ニオブなど)向けには、ポリマーコンデンサー配合物は、そうした誘電体を損なわないために、好ましくは、2.5~8のpHを有する。
【0105】
pHの調整には、WO2010/003874の4ページ目13~32行目に記載の塩基または酸を使用することが好ましい。こうした化合物は、ポリマーコンデンサー配合物のフィルム形成を損なうことはなく、より高い温度(はんだ付け温度など)でも揮発しない。好ましい化合物は、塩基(2-ジメチルアミノエタノール、2,2’-イミノジエタノール、または2,2’,2”-ニトリロトリエタノール)及び酸(ポリスチレンスルホン酸)である。
【0106】
ポリマーコンデンサー配合物の粘度は、典型的には、適用方法に応じて最適化され、0.01~1000mPa・s(20℃、せん断速度100s-1でレオメータを用いて測定した場合)であり得る。好ましくは、粘度は、1~500mPa・sであり、より好ましくは、1~250mPa・sである。アルミニウム巻回型コンデンサーの生産の場合、粘度は、好ましくは、1~200mPa・sである一方で、タンタル電解コンデンサーまたはアルミニウム積層型コンデンサーの生産では、粘度は、好ましくは、1~50mPa・sである。
【0107】
粘度の調整は、例えば、追加の添加剤として適切なレオロジー調整剤を添加することによって達成され得る。
【0108】
上述のように、分散した導電性ポリマーの粒径は、多孔質アノード体の含浸に影響し得る。ポリチオフェン/ポリアニオン粒子の中央粒径(d50)は、好ましくは、1~150nmであり、より好ましくは、2~50nmであり、最も好ましくは、5~40nmである。d50粒径は、好ましくは、レーザー回折または液相遠心沈降法(CPS)によって測定される。
【0109】
ポリマーコンデンサー配合物の固形分は、各場合において配合物の総重量に基づいて、好ましくは、0.01~20wt%、より好ましくは、0.1~15wt%であり、最も好ましくは、0.25~10wt%である。
【0110】
ポリマーコンデンサー
ポリマーコンデンサー(ポリマー電解質コンデンサーとも称される)は、固体導電性ポリマー電解質を含む電解コンデンサーである。
【0111】
電解コンデンサーでは、アノード酸化によって絶縁酸化皮膜を形成する化学的特徴を有するいくつかの特殊金属(いわゆるバルブ金属と称されることが多い)が使用される。電解槽においてアノード素材に正電圧を印加することによって、印加電圧に対応する厚さを有する酸化物バリア層が形成され得る。この酸化皮膜は、電解コンデンサーにおいて誘電体として働く。コンデンサーの静電容量を増やすために、アノード表面は粗面化され、したがって、酸化皮膜表面も粗面化される。
【0112】
コンデンサーを完成させるには、粗い絶縁酸化物表面に対電極を適合させる必要がある。これは、電解質によって達成され、この電解質は、電解コンデンサーのカソード電極として働く。
【0113】
ポリマーコンデンサー間の主な差異は、アノード素材、及び誘電体として使用されるその酸化物である。
-ポリマータンタル電解コンデンサーでは、高純度焼結タンタル粉末がアノードとして使用され、五酸化タンタル(Ta2O5)が誘電体とされる。
-ポリマーアルミニウム電解コンデンサーでは、電気化学的にエッチング処理(粗面化)された高純度アルミニウム箔がアノードとして使用され、酸化アルミニウム(Al2O3)が誘電体とされる。
【0114】
自体の酸化皮膜(誘電体)で被覆された多孔質金属層(アノード)は、本明細書では、多孔質アノード体と称される。
【0115】
ポリマーコンデンサーの作製方法
本発明によるポリマーコンデンサーの作製方法は、多孔質アノード体の少なくとも一部にポリマーコンデンサー配合物を導入するステップを含む。
【0116】
ポリマーコンデンサー配合物は、任意の既知のプロセスによって多孔質アノード体中に導入することができ、こうしたプロセスは、含浸、浸漬、注入、滴下、吹き付け、噴霧、ナイフコーティング、ブラッシング、または印刷(例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、もしくはタンポン印刷)などである。
【0117】
好ましくは、ポリマーコンデンサー配合物は、多孔質アノード体をポリマーコンデンサー配合物中に浸漬し、それによって当該液体組成物を多孔質アノード体に含浸させることによって多孔質アノード体の少なくとも一部に導入される。
【0118】
液体組成物中への浸漬または液体組成物での含浸は、好ましくは、1秒~120分間、より好ましくは、5秒~60分間、最も好ましくは、10秒~15分の範囲内で実施される。アノード体への液体組成物の導入は、例えば、加圧もしくは減圧、振動、超音波、または熱によって促進され得る。
【0119】
液体組成物での多孔質アノード体の含浸後に、液体組成物中に含まれている溶媒を、好ましくは、少なくとも部分的に除去することで、誘電体を完全または部分的に被覆する固体電解質が得られ、それによってコンデンサー体が形成される。固体電解質による誘電体の被覆率は、好ましくは、少なくとも10%であり、より好ましくは、少なくとも25%であり、最も好ましくは、少なくとも50%である。被覆率は、DE-A-102005043828に記載のものであり得る。
【0120】
溶媒は、好ましくは、液体組成物から電極体を取り出し、乾燥させることによって除去される。この乾燥ステップは、好ましくは、20℃~260℃の温度、より好ましくは、50℃~220℃の温度、最も好ましくは、80℃~200℃の温度で実施される。
【0121】
浸漬及び乾燥ステップは、特定の要件を満たす上で、誘電体上に付着する固体電解質層の厚さが適するように、または電極体中への電解質の充填度が適するように、1回または数回繰り返され得る。
【0122】
ポリマーカソード層の形成には、自己ドープ型ポリチオフェン及び外部ドープ型ポリチオフェンの両方を使用することが有利であり得る。両方の型のポリチオフェンポリマーを単一のポリマーコンデンサー配合物中で組み合わせ、上記のように導入することができる。一方で、自己ドープ型または外部ドープ型のポリチオフェンをそれぞれが含む異なるポリマーコンデンサー配合物を使用してコンデンサー中に両方の型のポリチオフェンを導入することが好ましい。好ましくは、最初に自己ドープ型ポリチオフェンが多孔質アノード
体中に導入され、その後に外部ドープ型ポリチオフェンが導入される。自己ドープ型ポリチオフェン及び外部ドープ型ポリチオフェンの両方を使用することについては、例えば、WO2014/048562(Heraeus)及びUS2016/0351338(AVX)に開示されている。
【0123】
この様式でのコンデンサー体の作製後に、当業者に知られる方法及び様式によってコンデンサー体にさらに手を加えることができる。タンタル電解コンデンサーの場合、コンデンサー体は、例えば、ポリマー外層(DE-A-102004022674もしくはDE-A-102009007594に記載のもの)ならびに/またはグラファイト層及び銀層(DE-A-102005043828から知見が得られるもの)で被覆することができ、一方、アルミニウム巻回型コンデンサーの場合、コンデンサー体は、US7,497,879B2の教示に従って、アルミニウムビーカー中に組み込まれ、このアルミニウムビーカーに封着ガラスが付与され、このアルミニウムビーカーがクリンピングによって機械的に堅く密封される。その結果、コンデンサーは、既知の様式では経年劣化によって生じる誘電体の欠陥とは無縁のものとなり得る。
【実施例】
【0124】
材料
下記の実施例において使用した材料はすべて、別段の指定がない限り、標準的な入手元(ALDRICH CHEMICAL Co.(Belgium)及びACROS(Belgium)など)から容易に入手可能であった。水は、脱イオン水を使用した。
【0125】
EDOTは、Heraeusから市販されている3,4-エチレンジオキシチオフェンである。
【0126】
PSSは、Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie,Vol.E 20,Makromolekulaire Stoffe,Teil 2(1987),page1141に開示の方法に従って調製された300kDaのMwを有するポリスチレンスルホン酸の5.85wt%水溶液である。
【0127】
Lewatit(登録商標)MonoPlusM600は、LanxessAGから市販されている塩基性ゲル型アニオン交換樹脂である。
【0128】
Lewatit(登録商標)MonoPlusS108Hは、LanxessAGから市販されている酸性ゲル型アニオン交換樹脂である。
【0129】
方法
表面抵抗測定
表面抵抗SERは、2点プローブ法を使用して室温で測定した。
【0130】
粒径測定
中央粒径(d50)及びd90粒径は、CPS instrumentsのモデルMOD DC24000 UHRディスク遠心機での液相遠心沈降粒径分析によって決定した。
【0131】
静電容量測定
コンデンサーの静電容量は、ポテンショスタットを用いて120Hz、室温で測定した。
【0132】
ESR測定
等価直列抵抗(ESR)は、ポテンショスタットを用いて100kHz、室温で測定した。
【0133】
実施例1
モノマーI-7の合成
【化7】
水素化ナトリウム(鉱物油中60wt%分散液、11.04g、276mmol)及びテトラヒドロフラン(THF、68.8mL)を三口丸底フラスコに添加し、撹拌し、窒素雰囲気下に置いた。
【0134】
この混合物を撹拌しながら、この混合物に対して、チエノ[3,4-b]-1,4-ダイオキシン-2-メタノール(34.40g,200mmol)をTHF(206.4mL)中に含む溶液を滴下して添加した。その後、反応物を1時間撹拌した。その後、1,4-ブタンスルトン(31.33g,230mmol)をTHF(68.8mL)中に含む溶液を添加した。次に、反応混合物を1時間還流した。その後、反応物を室温に冷却し、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE、500mL)を添加し、混合物を10分間撹拌した。
【0135】
反応混合物をデカントし、2回目のMTBE(500mL)の添加を行い、混合物をさらに30分間撹拌した。
【0136】
形成された沈殿物(66.5g)をろ過し、MTBEで洗浄し、減圧下、22℃で乾燥させた。イソプロパノール(375mL)及びNaOH水溶液(8wt%、70mL)の混合物中で粉末の再結晶化を実施した。残留物をろ過し、イソプロパノールで洗浄してから減圧下で乾燥させることで、モノマーI-7(64.5g、97.6%)を灰白色の粉末として得た。
【0137】
実施例2
COPOL-01a:PSSの合成
65.5gのPSS水溶液、脱イオン水(325mL)、硝酸(4.3g、48.14mmol)を反応容器中で混合した。硫酸鉄(III)(0.16g、0.4mmol)及び過硫酸ナトリウム(3.15g、13.24mmol)を添加した。
【0138】
反応混合物を撹拌し、窒素気流下で90分間5℃に冷却した。酸素レベルは、30ppb未満である。
【0139】
EDOT(1.36g、9.61mmol)及びモノマーI-7水溶液(7.3mLの水中0.80g、2.4mmol)を反応混合物に添加し、窒素雰囲気下、5℃で20時間撹拌した。
【0140】
反応混合物をイオン交換体(110gのLewatit(登録商標)MonoPlusM600+60gのLewatit(登録商標)MonoPlusS108H(ろ過及び2回の水洗浄(50mL)を反復実施したもの))で処理した。
【0141】
得られた粘性混合物を高せん断均質化処理(Lab Gaulin、4×600bar)に供した。分散液を減圧下で濃縮した。この手順によって、青色のCOPOL-01a:PSS水分散液(1.11wt%)を得た。
【0142】
実施例3
COPOL-01b:PSS~COPOL-09:PSSの合成
表2に従ってEDOT、モノマーI-7、及びPSSの量を変えた一連の共重合を、実施例2に記載のように実施した。
【0143】
表2には、各場合で使用したPSS溶液及び水の量と共にEDOT及びモノマーI-7の量(共にg)が示される。表2は、EDOT/モノマーI-7のモル比も示す。
【表2】
【0144】
比較実施例1~5
PEDOT:PSSの合成
表3に従ってEDOT及びPSSの量を変えた一連の重合を、実施例2に記載のように実施した。
【0145】
表3には、反応に使用したEDOT、PSS、及びその他の成分の量が示される。
【表3】
【0146】
PSS、脱イオン水、及び硝酸を反応容器中で混合した。硫酸鉄(III)及び過硫酸ナトリウムを添加した。
【0147】
反応混合物を撹拌し、窒素気流下で90分間5℃に冷却した。酸素レベルは、30ppb未満であった。
【0148】
EDOTを反応混合物に添加し、窒素雰囲気下、5℃で20時間撹拌した。
【0149】
反応混合物をイオン交換体(Lewatit(登録商標)MonoPlusM600+Lewatit(登録商標)MonoPlusS108H(ろ過及び2回の水洗浄(50mL)を反復実施したもの))で処理した。得られた粘性混合物を高せん断均質化処理(Lab Gaulin、4×600bar)に供した。分散液を減圧下で濃縮した。
【0150】
この手順によって、青色のPEDOT:PSS水分散液を得た。
【0151】
比較実施例6:EDOT-Sのホモポリマーの合成
EDOT-S(10.8g、32.49mmol)、水(198mL)、及び硫酸(96%、6.6g、64.98mmol)を反応容器中で混合した。
【0152】
反応混合物を窒素気流下、20℃で90分間撹拌した。酸素レベルを30ppb未満に保った。
【0153】
塩化鉄(III)水溶液(50wt%、6.32g、19.5mmol)を添加した。その後、過硫酸ナトリウム水溶液(15wt%、93.2mL、64.98mmol)を反応混合物に徐々に添加し、窒素雰囲気下、20℃で3時間撹拌する。
【0154】
反応混合物をイオン交換体(245gのLewatit(登録商標)MonoPlusM600+145gのLewatit(登録商標)MonoPlusS108H(ろ過及び2回の水洗浄(100mL)を反復実施したもの))で処理した。得られた粘性混合物を高せん断均質化処理(Lab Gaulin、2×700bar)に供した。分散液を
減圧下で濃縮した。この手順によって、青色のPEDOT-S水分散液(1.26wt%)を得た。
【0155】
比較実施例7:PEDOT:PSS及びPEDOT-Sの混合物
PEDOT:PSS(比較実施例1で調製したもの)とEDOT-Sのホモポリマーとの50/50wt%混合物を調製した。この混合物をP(EDOT:EDOT-S):PSSコポリマーと同じ様式で評価した。
【0156】
実施例4
実施例2~3及び比較実施例1~7で調製したポリマーを、上記の特徴付け手法によって評価した。結果は、表4に示される。
【0157】
ポリチオフェンの式Iのモノマー単位(モノマーI-7)及び式IIのモノマー単位(EDOT)の合計に対するポリアニオンの官能基のモル量(この場合はPSSのスルホン酸基のモル量)の比が、[PSSのSO
3H基]/[総モノマー]として示される。
【表4】
【0158】
COPOL-01a:PSS~COPOL-09:PSSは、モノマーI-7(EDOT-S)とEDOTとのコポリマー中の両モノマーの比が異なり、[PSSのSO3H基]/[総モノマー]比も異なるものである。
【0159】
COMP-01~COMP-05は、PEDOTホモポリマーを含む。ここでは、PSSの量を減らすと粒径の増大が認められ、このことから、これらの導電性ポリマーは、コンデンサー用途にあまり適さないものである。
【0160】
COMP-06は、コンデンサー用途に有用な粒径を有するモノマーI-7(EDOT-S)のホモポリマーである。しかしながら、SERが大きすぎるものである。
【0161】
COMP-07は、PEDOT:PSS及びPEDOT-Sの混合物である。SER及び粒径が大きすぎるものである。
【0162】
本発明のコポリマー01~09は、SERも粒径も小さいことから、コンデンサー用途に特に適するものである。
【0163】
コポリマーの[モノマーI-7]/[EDOT]比が35/65~1/1であり、[PSSのSO3H基]/[総モノマー]比が1.6~1.4の場合に最良の結果が得られる。
【0164】
実施例5:コンデンサーの作製
表面上にエッチング層を含む化学的改変アルミニウム箔をバルブ金属ベースとして作製した。誘電体層を形成させて、このアルミニウム箔を被覆した。得られた化学的改変アルミニウム箔をアノード部品として使用した。アルミナ層の定格電圧は90Vであり、静電容量は6.4μF/cm2である。厚さ20μmのソルダマスクをAl箔上に印刷して、10mm×10mmの開口部のアレイを付与した。このパターン化箔を切断して30mm×105mmのストリップとして、その上に5つの開口部を有するようにした。
【0165】
コンデンサーの製造において使用する導電性ポリマー分散液を水、ジエチレングリコール、及びDYNOL(商標)604と共に配合物化し、アルミニウム箔の被覆前に超音波均質化ステップに供して処理した。
【0166】
COPOL-01b:PSS分散液を用いてストリップを浸漬被覆し、150℃で5分間乾燥させた。この浸漬被覆ステップ及び硬化ステップを数回繰り返した。その後、炭素ペースト及び銀ペーストを連続的にPEDOT層上にスクリーン印刷し、硬化させた。静電容量及び等価直列抵抗(ESR)を上記のように測定した。
【0167】
追加のコンデンサーを上記のように作製及び測定した。その際、COPOL-01c:PSS、COPOL-02:PSS、COPOL-05:PSS、及びCOMP-05を導電性ポリマー分散液として使用した。
【0168】
表5には、コンデンサー評価の結果のまとめが示される。
【表5】
【0169】
本発明によるコポリマーを使用する分散液を用いることで、コンデンサーの静電容量は大きくなる一方で、ESRは小さくなることが、表5の結果から明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式I
【化1】
の第1のモノマーと、式II
【化2】
の第2のモノマーとのポリチオフェンコポリマーであって、
式中、
Aが、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される少なくとも1つの官能基でさらに官能化された、置換または非置換のC
1-C
5アルキレン架橋を表し、
Bが、置換または非置換のC
1-C
5アルキレン架橋を表すが、但し、Bが、pH応答
基でさらに官能化されていないことが条件であり、
前記第1のモノマーと前記第2のモノマーとのモル比が1/4~4/1である、前記ポリチオフェンコポリマーと、
(b)ポリマーポリアニオンであって、前記ポリマーポリアニオンのモノマー単位の少なくとも75mol%が、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される官能基で官能化されている、前記ポリマーポリアニオンと、
を含むポリチオフェン分散液であって、
前記ポリチオフェンコポリマーの前記第1のモノマー及び前記第2のモノマーの合計に対する前記ポリアニオンの前記官能基のモル比が1.1~1.75であることを特徴とする、前記ポリチオフェン分散液。
【請求項2】
前記第1のモノマーと前記第2のモノマーとのモル比が3/7~1/1である、請求項1に記載のポリチオフェン分散液。
【請求項3】
前記ポリチオフェンコポリマーの前記第1のモノマー及び前記第2のモノマーの合計に対する前記ポリアニオンの前記官能基のモル比が1.25~1.65である、請求項1に記載のポリチオフェン分散液。
【請求項4】
前記第1のモノマーが、式I-a
【化3】
の化学構造を有し、
式中、
L
1が、1~15個の炭素原子を含む二価の連結基を表し、
Cが、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩、リン酸エステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、及びカルボン酸またはその塩からなる群から選択される基を表す、請求項1に記載のポリチオフェン分散液。
【請求項5】
前記第1のモノマーが、式I-b
【化4】
の化学構造を有し、
式中、
L
2が、10個以下の炭素原子を含む二価の連結基を表し、
Mが、水素を表すか、またはスルホン酸基の負電荷を相殺するための対イオンを表す、請求項1に記載のポリチオフェン分散液。
【請求項6】
前記第2のモノマーが、3,4-エチレンジオキシチオフェンである、請求項1に記載のポリチオフェン分散液。
【請求項7】
前記ポリマーポリアニオンが、ポリ(4-スチレンスルホン酸)またはその塩である、請求項1に記載のポリチオフェン分散液。
【請求項8】
前記ポリマーポリアニオンの重量平均分子量(Mw)が、100000~300000Daである、請求項1に記載のポリチオフェン分散液。
【請求項9】
前記ポリチオフェン及び前記ポリアニオンがポリチオフェン/ポリアニオン粒子として存在し、液相遠心沈降法(CPS)によって測定される前記ポリチオフェン/ポリアニオン粒子の中央粒径(d
50)が5~40nmである、請求項1に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項10】
請求項1に記載の導電性ポリマー分散液を含む液体配合物。
【請求項11】
前記配合物が、2~8.5のpHを有する、請求項10に記載の液体配合物。
【請求項12】
20℃、せん断速度100s
-1でレオメータを用いて測定される前記配合物の粘度が、1~250mPa・sである、請求項10に記載の液体配合物。
【請求項13】
多孔質アノード体を含むポリマーコンデンサーの作製方法であって、前記作製方法が、請求項10に記載の液体配合物を前記多孔質アノード体の少なくとも一部に導入するステップを含む、前記作製方法。
【請求項14】
電子デバイスにおける導電層の作製のための、請求項10に記載の液体配合物の使用。
【請求項15】
前記電子デバイスが、光伝導セル、フォトレジスタ、光スイッチ、フォトトランジスタ、光電管、IR検出器、光起電デバイス、太陽電池、記憶デバイス用の被覆材料、電界効果抵抗デバイス、帯電防止フィルム、バイオセンサー、エレクトロクロミックデバイス、固体電解質コンデンサー、ハイブリッドコンデンサー、超コンデンサー、エネルギー貯蔵デバイス、バッテリー、及び電磁遮蔽物から選択される、請求項14に記載の使用。
【国際調査報告】