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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-09
(54)【発明の名称】血流中の血栓の超音波検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20240802BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
A61B8/06
A61B5/026 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506444
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 US2022039297
(87)【国際公開番号】W WO2023014806
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/229,342
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ヤセル エス アブ-モスタファ
【テーマコード(参考)】
4C017
4C601
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AC23
4C601DD03
4C601DE04
4C601EE09
4C601JC06
4C601JC15
(57)【要約】
本明細書中に開示するシステム及び方法は、血流中を懸濁状態にする粒子の測定した相対速度、及び/または血流中を懸濁状態にする粒子の他の特性に基づく、血流中の不整な粒子の検出に関するものであり、他の特性は、血管内の粒子の相対位置、及び粒子が血流中を懸濁状態にする他の粒子と集団化する傾向を含む。測定した相対速度及び/または他の関係する因子に基づいて、血流中の不整な粒子のサイズ、形状、及び周波数を含む不整な粒子の特性を測定することもできる。機械学習技術を用いて、血流中を懸濁状態にする不整な粒子の挙動のパターンを特定することができる。これらのパターンは、特定の健康上のリスク及び健康状態に対応することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット領域内の主血流を超音波プローブで撮像するステップと、
前記超音波プローブで観測した前記ターゲット領域内の前記主血流に対応する中心周波数を測定するステップと、
前記主血流内を懸濁状態にする1つ以上の物体の差分速度を測定するステップと、
前記測定した差分速度に基づいて、前記主血流内の1つ以上の異常物体を検出するステップと
を含む異常検出方法。
【請求項2】
血管の断面内の前記1つ以上の異常物体の相対位置を測定するステップを更に含み、
前記相対位置を測定するステップが、
(i)前記血管の半径に沿った前記異常物体の位置、及び
(ii)前記主血流中に存在する前記異常物体と他の1つ以上の前記異常物体との間の距離
を測定することを含む、請求項1に記載の異常検出方法。
【請求項3】
前記測定した差分速度及び前記測定した相対位置に基づいて、前記主血流中に存在する前記1つ以上の異常物体のサイズを測定するステップを更に含む、請求項2に記載の異常検出方法。
【請求項4】
90ミクロンの大きさしかない直径を有する物体の存在を確認するステップを更に含む、請求項3に記載の異常検出方法。
【請求項5】
前記測定した差分速度及び前記測定した相対位置に基づいて、前記主血流中に存在する前記1つ以上の異常物体の形状を測定するステップを更に含む、請求項2に記載の異常検出方法。
【請求項6】
前記ターゲット領域内の前記主血流を撮像するステップが、超音波センサを用いて、カラードップラー法で、前記主血流の画像列を構成することを含む、請求項1に記載の異常検出方法。
【請求項7】
1つ以上の収集したデータセットを用いて機械学習モデルを学習させるステップを更に含み、前記1つ以上の収集したデータセットは、前記ターゲット領域内の前記主血流のサンプル画像列、及び対応する関心事のパラメータの値を含む、請求項2に記載の異常検出方法。
【請求項8】
前記関心事のパラメータが、制御された実験における前記異常物体のサイズである、請求項7に記載の異常検出方法。
【請求項9】
前記関心事のパラメータが、制御された実験における前記異常物体の周波数である、請求項7に記載の異常検出方法。
【請求項10】
前記関心事のパラメータが、特定の健康問題に関連するリスク閾値である、請求項7に記載の異常検出方法。
【請求項11】
前記関心事のパラメータが、前記異常物体のサイズであり、脳卒中に関連する血栓のサイズに相当する、請求項10に記載の異常検出方法。
【請求項12】
前記機械学習モデルが、コグニティブ・ニューラルネットワークである、請求項7に記載の異常検出方法。
【請求項13】
超音波センサと、
一組の異常検出パラメータと、
1つ以上のサンプル・データセットと、
機械学習モデルと
を具えた異常検出システムであって、
前記超音波センサは、血管のターゲット領域内の血流の画像列を生成し、
前記一組の異常検出パラメータは、(i)速度と、(ii)血管内位置と、(iii)物体位置とを含み、前記速度は、前記血流自体の速度に対する、前記血流中の物体の相対速度であり、前記血管内位置は、前記血流中の前記物体の、前記血管の半径に沿った相対位置であり、前記物体位置は、前記血流中の他の物体に対する、前記血流中の前記物体の相対位置であり、
前記超音波センサは、短いパルスによるパルス波ドップラー法を用いて、前記血流の前記画像列を生成し、前記画像列は前記異常検出パラメータを含み、
前記サンプル・データセットは、サンプル血流の画像列、及び対応する前記異常検出パラメータの既知の値を含み、
前記1つ以上のサンプル・データセットを用いて、前記機械学習モデルを学習させて、前記異常検出パラメータに基づいて、前記血流中の異常物体の存在を検出する
異常検出システム。
【請求項14】
前記機械学習モデルがニューラルネットワークである、請求項13に記載の異常検出システム。
【請求項15】
前記異常検出パラメータに基づいて、前記機械学習モデルが、更に、前記血流中に存在する1つ以上の前記異常物体のサイズを測定する、請求項13に記載の異常検出システム。
【請求項16】
前記機械学習モデルが、90ミクロンの大きさしかない直径を有する物体を検出するように構成されている、請求項13に記載の異常検出システム。
【請求項17】
前記異常検出パラメータに基づいて、前記機械学習モデルが、更に、前記血流中に存在する1つ以上の前記異常物体の形状を測定する、請求項13に記載の異常検出システム。
【請求項18】
前記異常検出パラメータに基づいて、前記機械学習モデルが、更に、前記血流中に存在する1つ以上の前記異常物体の周波数を測定する、請求項13に記載の異常検出システム。
【請求項19】
前記異常検出パラメータが、選択された健康状態についてのリスク閾値に相当し、前記機械学習モデルが、更に、前記選択された健康状態のリスクを評価する、請求項13に記載の異常検出システム。
【請求項20】
超音波センサと、
一組の血栓検出パラメータと、
1つ以上のサンプル・データセットと、
機械学習モデルと
を具えた血栓検出及び分類システムであって、
前記超音波センサは、血管のターゲット領域内の血流の画像列を生成し、
前記一組の血栓検出パラメータは、(i)速度と、(ii)血管内位置と、(iii)血栓位置とを含み、前記速度は、前記血流自体の速度に対する、前記血流中の血栓の相対速度であり、前記血管内位置は、前記血流中の前記血栓の、前記血管の半径に沿った相対位置であり、前記血栓位置は、前記血流中の他の粒子に対する前記血栓の相対位置であり、
前記超音波センサは、短いパルスによるパルス波ドップラー法を用いて、前記血流の前記画像列を生成し、前記画像列は前記血栓検出パラメータを含み、
前記サンプル・データセットは、サンプル血流の画像列、及び対応する前記血栓検出パラメータの既知の値を含み、
前記1つ以上のサンプル・データセットを用いて、前記機械学習モデルを学習させて、前記血栓検出パラメータに基づいて、前記血流中の前記血栓の存在を検出し、前記血流中の前記血栓の周波数を測定し、前記血流中の前記血栓の直径を測定し、前記血流中の前記血栓の形状を測定する
血栓検出及び分類システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、超音波による血流中の物体の検出及び分析に関するものである。特に、一部の実現は、機械学習を用いた、血栓を含む物体の、発症前の検出及び分析に関するものであり得る。
【背景技術】
【0002】
血流中の異常は、深刻な健康上のリスクをもたらし得る。血流中の不整(不規則)な物体及び形成物は、血栓を含めて、特に危険であり得る。血栓のような一部の物体は、長期間にわたって次第に大きくなる。血流中の血栓及び他の物体が大きくなるに連れて、血流がますます制限され、このことは発作、肺塞栓、深部静脈血栓症、及び他の疾患のような深刻な健康状態の恐れを増加させる。現在、医療技術は、超音波またはコンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)のような撮像技術を用いて直接観察するのに十分なほど大きい血栓及び他の物体の検出を可能にするに過ぎない。これらの物体が検出するのに十分なほど大きくなる時までに、患者は既に症状及び他の悪い健康状態を患っていることが多い。従って、小さい物体及び血栓の検出が望まれる、というのは、このことは医師が疾患を早期に、患者が悪い健康転帰を経験し始める前に識別して治療することを可能にするからである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書中では、血栓のような血流中の粒子の、血流の速度と比較した当該粒子の相対速度に基づく検出用のシステム及び方法を説明する。相対速度に加えて、検出は、血管の断面内の粒子及び血栓の位置、及び血管内の血栓の互いに対する位置を調べることによって、実現及び/または支援することもできる。粒子の速度及び位置の両方の変化は、固体粒子が流体中を移動している際に検出可能である。これらの速度及び位置のパラメータは、粒子のサイズ、形状、及び他の特性に影響される。
【0004】
超音波センサを用いて、上述した検出を実現することができる。1つの好適例では、超音波センサをカラードップラー(color Doppler)法と共に検出用に用いることができる。カラードップラー技術は、短いパルスによるパルス波ドップラー法を用いて、血管のターゲット(対象)領域内の血流の画像列を生成する。画像は、血流中を懸濁状態にする血栓を含めた粒子の存在及び特性についての情報を含むことができる。
【0005】
機械学習を用いて、血流の画像列から関連情報を抽出することができる。血流及び既知のターゲットのサンプル画像列を含む収集したデータを用いて、機械学習モデルを学習させることができる。既知のターゲットは、特定試料中の確認されたサイズまたは周波数の粒子または血栓とすることができる。既知のターゲットは他のパラメータとすることもできる。1つの好適例では、既知のターゲットを、血栓が特定の健康問題を特定の時間枠(タイムフレーム)内に生じさせる危険性とすることもできる。1つの好適例では、機械学習モデルをニューラルネットワーク(神経回路網)とすることができる。
【0006】
本発明の他の特徴及び態様は、以下の詳細な説明より、添付した図面と併せて解釈すれば明らかになり、これらの図面は、一例として、種々の実施形態による特徴を図示する。発明の概要は、本発明の範囲を限定することは意図せず、本発明の範囲は、専ら本明細書に添付した特許請求の範囲によって規定される。
【0007】
本明細書中に開示する技術を、1つ以上の種々の実施形態により、以下の図面を参照しながら詳細に説明する。これらの図面は例示目的で提供するに過ぎず、開示する技術の代表的または例示的な実施形態を表現するに過ぎない。これらの図面は、開示する技術に対する読者の理解を促進するために提供し、開示する技術の全幅、範囲、または適用可能性を限定するものと考えるべきでない。なお、図示を明瞭かつ容易にするために、これらの図面は必ずしも原寸に比例して作成していない。
【0008】
これらの図面は、排他的であること、または本発明を開示する詳細な形態に限定することは意図していない。本発明は、修正及び変更を伴って実施することができること、及び開示する技術は特許請求の範囲及びその等価物のみによって限定されることを理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】血管セグメントの一例を示す図であり、この血管セグメントを通って、血栓が血流速度と比べて異なる速度で移動する。
図2】血管断面の一例を示す図であり、断面内の血栓の相対位置を示す。
図3】血管断面の一例を示す図であり、断面内での互いに対する相対位置を示す。
図4】血流異常検出方法の一例の流れ図である。
図5】血流異常検出方法の一例の流れ図である。
図6】血流異常検出システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
血流中の血栓及び/または他の異常の早期の検出は、生命を救うことができる。本明細書中に開示するシステム及び方法は、血流中の血栓及び他の粒子の検出に指向し、その周波数、サイズ、血管内の相対位置、及び他の特性の検出を含む。これらのシステム及び方法は、非侵襲的な方法を採用し、この方法では、血栓及び他の粒子を、その観測された流体力学的挙動に基づいて検出することができる。90ミクロンの直径を有する血栓及び他の粒子を、本明細書中に説明するシステム及び方法で検出することができる。
【0011】
この技術は、重要な流体力学の原理-特定条件下では、流体中を進行する量子が流体自体と同じ速度では進行しない-を基礎とする。流体内を懸濁状態にする個別の粒子の速度は、粒子のサイズ及び他の因子に依存する。従って、流体内のこれらの粒子の移動は、流体の速度に対する波動の周波数の変化を生じさせる。これらの波動周波数の変化を検出して、流体内の粒子の存在、サイズ、及び周波数に対応付けることができる。このことはドップラーシフトとして知られている。
【0012】
ナビエ-ストークス(Navier-Stokes)方程式とニュートン-オイラー(Newton-Euler)方程式とは、互いに相互作用し、組み合わさって固体粒子を含有する流体の流れを記述する2組の重要な方程式である。ナビエ-ストークス方程式は、流体の流れを次式のように記述する:
【数1】
ここに、
(外1)
、ρf、p、及びv=μ/ρfは、流体の速度、密度、圧力、及び動粘度であり、μは動粘性係数である。
【0013】
固体の物体または粒子が、流体内を懸濁状態にし、流体内を移動する際には、ナビエ-ストークス方程式を、懸濁粒子の運動を記述する他の方程式と組み合わせなければならない。ニュートン-オイラー方程式は、こうした粒子の運動を次式のように記述する:
【数2】
ここに、Vp=4πa3/3及びIp=2ρpVa2/5は、粒子の体積及び慣性モーメントであり、aは粒子の半径であり;gは重力加速度であり;σ=-pI+2μEは流体応力であり、Iは恒等行列であり、E=(∇uf+∇uTf)/2は変形テンソルであり;rは球の中心からの距離ベクトルであるのに対し、nは粒子表面∂Vpに対する法線方向の単位ベクトルであり、Fc及びTcは粒子に作用する追加的な力及びトルクである。
【0014】
これらの方程式にとって重要なパラメータはレイノルズ(Reynolds)数である。流体に関連するレイノルズ数は、流動における慣性力及び粘性力のような特性を含めて、流体が挙動する様子を記述する。層流では、レイノルズ数が1未満であれば、粒子は確かに流体と同じ速度で進行する。しかし、レイノルズ数が1の閾値を超えると、速度差が存在する。流体自体のレイノルズ数は一般にReで表す。流体内を懸濁状態にする特定粒子付近の流れは、それ自体のレイノルズ数を有し、Re_pで表される。Re_pは、粒子と、当該粒子が懸濁状態にしている流体との速度差を生じさせる。このことを現在技術では「スリップ」と称する。この速度差に加えて、流体内を移動中の粒子は、流体の流れの中心と壁面との間も移動することができ、流体の流れ内でまとまってクラスタ(集団)化し易いことがある。
【0015】
平均的な血流のレイノルズ数はおよそ2000である。従って、血液のレイノルズ数が1の閾値よりも3桁大きいので、血流内を移動中の粒子の差分速度を検出することができる。この検出は、超音波ドップラー技術を用いて血流を撮像することによって実現することができる。血流内を移動中の各粒子または血栓は、超音波センサの範囲内に短時間だけ留まる「イベント(事象)」である、というのは、血液が各粒子または血栓を運び去るからである。カラードップラー法を用いて血流を撮像することができる。それに加えて、観測可能なドップラーシフトの大きさ及び周波数は、粒子または血栓のサイズにも依存する。従って、ドップラー信号は、血液中の粒子についての複数の情報を示すことができる。例えば、ドップラー信号は、粒子または血栓の存在を示すだけでなく、周波数、サイズ、位置、及び他の因子のような特性も示すことができる。これらの追加的因子は、血栓及び他の因子をノイズから区別することに役立つことができる。
【0016】
血流中の血栓及び他の粒子は、血流を構成する通常の細胞とは異なる挙動をするので、検出することができる。血栓及び他の粒子は、区別可能な流体力学的挙動を呈する。即ち、血流内を移動中の血栓及び他の粒子は、周囲の血流とは異なる速度で進行する。血栓及び他の粒子は、血管内の特定位置を占めると共に、互いに対する特定位置を占める傾向を有する。これら3つの挙動パターン、即ち(i)差分速度、(ii)血管内の相対位置、及び(iii)血流中の他の粒子に対する相対位置が、血栓及びその特性の検出をもたらす。
【0017】
血流内を移動中の個別の血栓及び他の粒子は、これらが超音波プローブの範囲を通過する際に、ドップラースペクトル中の「イベント」として見える。撮像した血管のこの部分内の血流の周波数に対するドップラーシフトを測定することは、強力な基準点を提供する。換言すれば、ドップラーシフトは中心周波数に対して測定する。従って、血流内を移動中の血栓または他の粒子は、血流に変化が存在する場合でも、高レベルの信頼性で検出することができる。例えば、血流の変化は、患者の血管のどの部分を測定するか、患者が直近に食事をしたか否か、及び他の要因に依存して存在し得る。この血栓検出は、異なる血流のベースラインを有し得る異なる患者においても信頼性がある。
【0018】
機械学習技術を用いて、これらのイベントと一致するパターンを識別して解釈することができる。機械学習技術を用いて、スペクトルからイベントを区別し、これにより血流中の血栓または他の粒子の存在を確認することができる。機械学習技術を更に用いて、イベントのパターンを解釈して、血流中の異なる粒子または血栓のサイズ及び周波数を特性化することができる。流体力学の原理は、血栓または他の粒子が血流中に存在する際に、検出可能なイベントが存在するという思想をサポートするが、このイベントについての閉形式解は存在しない。換言すれば、血栓及び他の物体の異なる速度、好適な位置についてのパターン、及びクラスタ化する傾向は存在するが、これらのパターンは、観測及び従来の数学的技法単独により、高度に簡略化されたシナリオの例を超えて、厳密に特定されておらず、厳密に特定することができない。
【0019】
以下に説明する実施形態は、血栓検出に関するものであるが、本明細書中に説明する技術を用いて、血流中の健康上のリスクをもたらすあらゆる粒子または物体を検出することができる。例えば、これらの技術は、血流中の癌細胞のような異物または異常物体、及び他の健康状態を表すイベントの検出を可能にすることができる。従って、機械学習モデルは、血栓または他の粒子を検出して、その特性を識別することにとって重要である。機械学習モデルを学習させて、血栓または他の粒子を効果的に検出し特性化することができる。
【0020】
図1は、血管セグメントの一例を示す図であり、この血管セグメントを通って、血栓が、血流速度と比べて異なる速度で移動する。血管セグメント100は、通常の血液細胞102、104、並びに血栓106を含む。セグメント100内では、血液細胞102、104、及び血栓106が一緒に血流108を形成する。血流108は血流速度112を有することができる。血栓106は血流108内を移動中であることができる。血栓106は、血流速度112とは異なる速度110で移動することができる。
【0021】
図2は、血管断面の一例を示す図であり、断面内の血栓の相対位置を示す。血管断面206は、通常の血液細胞102、104、並びに血栓106を含む。血管断面は半径200を有する。血栓106は、血管断面206の中心208及び外壁210に対して特定位置を占めることができる。血栓106の位置は、血管断面206の外壁210に対する血栓106の、半径200に沿った距離202として記述することができる。血栓106の位置は、血管断面206の中心218に対する血栓106の、半径200に沿った距離202として記述することもできる。
【0022】
図3は、血管断面の一例を示す図であり、断面内での互いに対する相対位置を示す。血管断面206は、通常の血液細胞102、104、並びに血栓106、300を含む。血栓の互いに対する相対位置は、2つの血栓106、300間の距離302として表現することができる。血管断面206は、複数の血栓を含むこともでき、これらの血栓の各々が、互いに対する位置を占めることができる。
【0023】
図4は、血流異常検出方法の一例の流れ図である。超音波プローブを用いて、血管のターゲット領域402内の血流400の画像列を生成することができる。ターゲット領域402は、血流の測定が望まれる体内の領域とすることができる。例えば、ターゲット領域402は、患者の腕または脚の血管内とすることができる。画像は、異なる種類の医療撮像技術を用いて生成することができる。例えば、カラードップラー法を用いて画像列を生成することができる。画像より、血管のターゲット領域402内の血流400の中心周波数404を測定することができる。中心周波数404は、血流全体に対応するドップラー周波数シフトである。血流400内を懸濁状態にする1つ以上の粒子408の差分周波数406を測定することもできる。血流内を移動中の粒子は、周囲の血流とは異なる周波数を有し得る。この周波数差は、血流の画像列より検出可能である。
【0024】
差分周波数を分析して、血流の特性、及び血流内を懸濁状態にするあらゆる粒子の特性を測定することができる。例えば、測定した差分周波数406の分析は、不整な粒子が血流404中に存在することを示すことができる。この不整な粒子は血栓であり得る。
【0025】
図5は、血流異常検出方法の一例の流れ図である。超音波プローブを用いて、血管412のターゲット領域402内の血流400の画像列を生成することができる。ターゲット領域402は、血流400の測定が望まれる体内の領域とすることができる。例えば、ターゲット領域402は、患者の腕または脚の血管412とすることができる。画像は、異なる種類の医療撮像技術を用いて生成することができる。例えば、カラードップラー法を用いて画像列を生成することができる。この画像より、血管412のターゲット領域402内の血流400の中心周波数404を測定することができる。中心周波数404は、血流全体に対応するドップラーシフトである。
【0026】
血流400のいくつかの特性を測定することができる。これらの特性は、血流400についての重要な情報を示すことができ、この情報は、医学的危険性が存在するか否かを示すことができる。血流400内を懸濁状態にする1つ以上の粒子408の差分周波数406を測定することもできる。血流内を移動する粒子は、周囲の血流とは異なる周波数を有し得る。この周波数差は、血流の画像列より検出可能である。
【0027】
血管412の断面410内の粒子408の相対位置402を測定することができる。具体的には、粒子408の位置は、血管412の断面410の半径414に沿って測定することができる。例えば、粒子408と血管412の壁面との間の距離を測定することができる。その代わりに、あるいはそれに加えて、粒子408と血管412の中心208との間の距離を測定することもできる。血流400中の血栓のような不整な粒子は、血流400中の特定領域内を懸濁状態にする傾向を有し得る。従って、検出した粒子408の位置は、血流400についての、特定種類の不整に相当し得る情報を提供することができ、この情報は特定種類の健康上のリスクに相当し得る。
【0028】
クラスタ化係数416を測定することもできる。クラスタ化係数は、血流400内の粒子408の、他の粒子418に対する相対位置を定量化することができる。血流400内を懸濁状態にする一部の種類の粒子408、418は、血流400内で互いに近接して位置する傾向を有することがある。一実施形態では、この種類の粒子408を血栓とすることができる。血栓は、血管内でまとまってクラスタ化する傾向がある。測定したクラスタ化係数は、血流400についての情報を提供することができ、この情報は特定種類の不整に相当し得るし、この不整は特定種類の健康上のリスクに相当し得る。例えば、互いに非常に近接してグループ化された血栓の測定は、脳卒中の重大なリスクを示すことができる。
【0029】
差分周波数406、相対位置420、及びクラスタ化係数416を分析して、血流400の特性、及び血流400内を懸濁状態にするあらゆる粒子408、または粒子408、418の特性を測定することができる。例えば、測定した差分周波数406、相対位置420、及びクラスタ化係数416は、不整な粒子が血流400中に存在することを示すことができる。この不整な粒子は血栓とすることができる。
【0030】
差分周波数416、相対位置402、及びクラスタ化係数416を更に分析して、血流中に検出された粒子の特性を測定することができる。例えば、これらの係数は、血流中を懸濁状態にする粒子のサイズ、形状、及び/または周波数を示すことができる。これらの係数は、特定の医学的状態、及び/または特定の有害な医療事象の恐れにも相当し得る。例えば、血管断面内の血栓の相対位置の分析は、脳卒中のような有害な医療事象の恐れに対応することができ、あるいは血栓が特定のサイズに達したことを示すことができる。クラスタ化係数の更なる分析は、同様に、脳卒中のような有害な医療事象の恐れに対応することができる。
【0031】
図6は、血流異常検出システムの一例を示す図である。血流異常検出システムは、超音波センサ600を含むことができる。超音波センサ600は、血管608のターゲット領域606内の血流604の画像列602を生成することができる。血流異常検出システムは、一組の異常検出パラメータ610を含むこともできる。関連する異常検出パラメータの少数の例は、血流中の粒子の、血流自体の速度と比較した相対速度632、血流中の粒子の相対位置634、及び血流中の粒子の、血流中の他の粒子に対する相対位置とすることができる。これらのパラメータの値は、血流についての重要な情報を示すことができ、これらの情報は、血流中の異常または不整な粒子の存在、及びあらゆる不整な粒子の特性を含み、これらの特性は、不整な粒子の形状、サイズ、及び周波数を含む。
【0032】
これらの異常検出パラメータ610の全部を、血管を通る血流の高画質の画像列から測定することができる。一実施形態では、高画質の画像列を、カラードップラー技術を用いて生成することができる。超音波センサ600は、短いパルスによるパルス波ドップラー法を用いて、異常検出パラメータ610を含む血流604の画像列602を生成することができる。
【0033】
血流異常検出システムは、学習データ614を含む1つ以上のサンプル・データセットを含むこともできる。サンプル・データセットは、サンプル血流のサンプル画像列616、620、624とすることができ、これらは既知の関心事のパラメータ618、622、626に対応付けられている。既知のパラメータ618、622、626は、異常検出パラメータの既知の値とすることができる。例えば、既知のパラメータ618、622、626は、サンプル画像列中に検出された不整な粒子のサイズ、形状、及び/または周波数の既知の値に相当することができる。検出された不整な粒子は血栓とすることができる。既知のパラメータ618、622、626は、特定の健康状態について設定されたリスク閾値に相当することもできる。例えば、既知のパラメータ618、622、626は、50%より大きい脳卒中の可能性が存在する血栓を有する試料に相当することができる。
【0034】
血流異常検出システムは、機械学習モデル612を含むことができる。機械学習モデル612は、学習データ614を用いて学習させることができる。次に、学習させた機械学習モデルが、学習したパラメータを適用して、血管608のターゲット領域606内の血流604の画像列602を分析することができる。機械学習モデルは、血流604についての情報を決定することができ、この情報は、血流中のあらゆる不整な粒子の存在、及び検出したあらゆる不整な粒子の特性を含む。機械学習モデルは出力データ642を生成することができる。出力データ642は、血流中に検出された不整な粒子の特性の値を含むことができる。例えば、出力データ642は、血流604中に存在する異常物630の測定したサイズ628を含むことができる。出力データ642は、血流604中に存在する異常物630の測定した形状638を含むことができる。出力データ642は、血流604中に存在する異常物630の測定した周波数640を含むことができる。
【0035】
一実施形態では、図6の血流異常検出システムを、血流中の血栓を検出するように具体的に構成することができる。血栓の検出及び分類システムは、超音波センサを含むことができる。超音波センサは、ターゲット領域内の血流の画像列を生成することができる。血栓検出及び分類システムは、一組の血栓検出パラメータを含むこともでき、これらのパラメータは:(i)速度と;(ii)血管内位置と;(iii)血栓位置とを含み、速度は、血流自体の速度に対する血流中の血栓の相対速度であり、血管内位置は、血流中の血栓の、血管の半径に沿った相対位置であり、血栓位置は、血流中の血栓の、他の粒子に対する相対位置である。血栓検出及び分類システム内の超音波センサは、短いパルスによるパルス波ドップラー法を用いて、血栓検出パラメータを含む、血流の画像列を生成することができる。
【0036】
血栓検出及び分類システムは、1つ以上のサンプル・データベースを含むこともでき、サンプル・データベースは、サンプル血流の画像列、及び対応する血栓検出パラメータの既知の値を含む。血栓検出及び分類システムは、機械学習モデルを含むこともでき、機械学習モデルを、1つ以上のサンプル・データセットを用いて学習させて、血栓検出パラメータに基づいて、血流中の血栓の存在を検出し、血流中の血栓の周波数を測定し、血流中の血栓の直径を測定し、血流中の血栓の形状を測定する。
【0037】
本発明の種々の実施形態を上述してきたが、これらの実施形態は、限定ではなく一例として提示してきたに過ぎないことを理解するべきである。同様に、種々の図は、本発明のアーキテクチャの構成及び他の構成の一例を表すことがあり、本発明が含むことができる特徴及び機能を理解することに役立つために表す。本発明は、図示するアーキテクチャまたは構成の例に限定されず、多種多様な代案のアーキテクチャ及び構成を用いて所望の特徴を実現することができる。実際に、本発明の所望の特徴を実現するための、代案の機能的、論理的、または物理的な区分化及び構成を実現することができる方法は、当業者にとって明らかである。また、本明細書中に表現したもの以外の多数の異なる構成モジュール名を、種々の区分に適用することができる。それに加えて、流れ図、動作の説明及び方法の請求項に関しては、本明細書中にステップを提示する順序は、文脈上で特に断りのない限り、列挙した機能を同じ順序で実行するように種々の実施形態を実現することを命ずるものではない。
【0038】
本発明は、種々の好適な実施形態及び実現に関して上述しているが、個別の実施形態のうちの1つ以上において説明した種々の特徴、態様、及び機能は、その用途を、当該特徴、態様、及び機能を説明した特定の実施形態に限定されず、その代わりに、単独でも種々の組合せでも、本発明の他の実施形態のうちの1つ以上に適用することができ、こうした実施形態を説明しているか否か、及びこうした特徴を説明した実施形態の一部として提示しているか否かにはよらないことを理解するべきである。従って、本発明の全幅及び範囲は、上述した好適な実施形態のいずれによっても限定されるべきでない。
【0039】
本文書中に用いる用語及び語句、及びその種々の変化形は、特に明示的断りのない限り、限定とは反対に制約がないものとして解釈するべきである。前記の例として:「含む」は、「限定なしで含む」等を意味するものとして読むべきであり;「例」は、説明中のアイテムの、排他的または限定的なリストではなく、好適な例を提供するために用い;「ある」、「1つの」は、「少なくとも1つの」、「1つ以上の」、等を意味するものとして読むべきであり;「従来の」、「伝統的な」、「通常の」、「標準的な」、「既知の」といった形容詞、及び類似の意味の語は、記載したアイテムを、所定の期間に、あるいは所定の時点で利用可能なアイテムに限定するものとして解釈するべきでなく、その代わりに、現在、あるいは将来の任意の時点で利用可能であり得る従来の、伝統的な、通常の、または標準的な技術を包含するように読むべきである。同様に、通常の当業者にとって明らかであるか既知である技術を本文書が参照する場合、こうした技術が、現在、あるいは将来の任意の時点で当業者にとって明らかであるか既知であるものを包含する。
【0040】
一部の例における、「1つ以上の」、「少なくとも1つの」、「但しこれらに限定されない」のような範囲を広げる語句、または他の類似の語句は、こうした範囲を広げる語句が存在しないことのある例において、より狭い場合が意図または要求されていることを意味するものと読むべきでない。「モジュール」という用語の使用は、当該モジュールの一部として記載または特許請求する構成要素または機能の全部が共通のパッケージ内に構成されていることを暗に意味しない。実際に、あるモジュールの種々の構成要素のいずれか、あるいは全部は、制御論理回路であるか他の構成要素であるかによらず、単一のパッケージ内に組み合わせることも別個に維持することもでき、更に、複数のグループ分けまたはパッケージの形に、あるいは複数の場所にわたって分散させることができる。
【0041】
それに加えて、本明細書中に説明する種々の実施形態は、例示的なブロック図、フローチャート(流れ図)、及び他の図示の形で記載している。本文書を読んだ後に通常の当業者にとって明らかになるように、図示する実施形態及びその種々の代案は、図示する例への限定なしに実現することができる。例えば、ブロック図及びそれに伴う説明は、特定のアーキテクチャまたは構成を命ずるものとして解釈するべきでない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】