(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-09
(54)【発明の名称】生細菌および/または安定細菌を含むスプレー可能な製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20240802BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240802BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240802BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240802BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240802BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240802BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20240802BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240802BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240802BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240802BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240802BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240802BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240802BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240802BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240802BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240802BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240802BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20240802BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240802BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P17/00
A61P31/10
A61P31/12
A61P31/04
A61P11/00
A61K35/741
A61K35/74 A
A61K9/12
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508640
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022072628
(87)【国際公開番号】W WO2023017141
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524054440
【氏名又は名称】ユン エンヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】ヘンケンズ,ティム
(72)【発明者】
【氏名】クラエス,イングマル
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ,アリックス
(72)【発明者】
【氏名】ガムガミ,イマネ
(72)【発明者】
【氏名】ルベール,サラ
(72)【発明者】
【氏名】デ ボエック,イルケ
(72)【発明者】
【氏名】スパコバ,イリーナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA13
4C076AA22
4C076AA24
4C076BB03
4C076BB25
4C076BB31
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4C076CC18
4C076CC31
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4C076GG45
4C087AA01
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4C087BC56
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4C087NA03
4C087NA10
4C087ZA59
4C087ZA89
4C087ZB32
4C087ZB33
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、生細菌および/または安定細菌を含むスプレー可能な製剤、ならびにそのようなスプレー可能な製剤、特に液体スプレーの形態での製剤、を製造する方法に関する。本発明は、さらに、ヒトまたは動物の医薬におけるこのスプレー可能な製剤の使用、ならびに呼吸器疾患の予防および/または治療のためのこのスプレー可能な製剤の使用に関する。本発明はさらに呼吸器疾患の予防および/または治療のための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性無水液体担体中に懸濁された生存可能な非芽胞形成の粉末状の細菌粒子を含むスプレー可能な製剤であって、該粉末状の細菌粒子の少なくとも90%の粒径が400μm 未満であって、該スプレー可能な製剤が雰囲気圧下であり、および前記スプレー可能な製剤は液体スプレーの形態である、スプレー可能な製剤。
【請求項2】
スプレー可能な製剤は噴射ガス、特に炭水化物噴射ガスを含まない、請求項1に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項3】
スプレー可能な製剤は、スプレー可能な液体製剤であり、スプレーすると液滴として分散する、請求項1または2に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項4】
不揮発性無水液体担体は、植物由来、動物由来、または鉱物由来であり、好ましくは不揮発性無水液体担体は油性液体担体であり、より好ましくは、不揮発性無水液体担体は脂肪酸、トリグリセリド、飽和もしくは不飽和脂肪、ステロイド誘導体、またはリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質もしくはスルホ脂質から構成される複合油を含む、請求項1に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項5】
粉末状の細菌粒子の少なくとも90%の粒子は粒径が1~250μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、最も好ましくは5~10μmを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項6】
懸濁液中の粉末状の細菌粒子の濃度は、スプレー可能な製剤の総重量に対して、0.1~20重量%であり、好ましくは1~10重量%であり、最も好ましくは、3~7重量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項7】
製剤はさらに沈降防止剤を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項8】
沈降防止剤は二酸化ケイ素またはその誘導体である、請求項7に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項9】
沈降防止剤の濃度は、スプレー可能な製剤の総重量に対して、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.5~3重量%、および最も好ましくは1~2.5重量%である、請求項7または8に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項10】
スプレー可能な製剤は、スプレー可能な製剤の総重量に対して、50~99重量%、好ましくは70~98重量%、より好ましくは85~97重量%、最も好ましくは90~95重量%の不揮発性無水液体担体を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項11】
スプレー可能な製剤は、レオロジー添加剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項12】
スプレー可能な製剤は、抗酸化物質および/またはビタミン、特にビタミンD3およびEから選択されるビタミン、をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項13】
製剤は、界面活性剤および/または乳化剤および/または湿潤剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項14】
製剤は、生体接着剤および/または粘膜接着剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項15】
製剤は、甘味料および/または香料をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項16】
製剤は、特に、エピカテキン、キノン、クレアチン、ヒドロキシチロソール、ピリドキサミン、システイン、ホモシステイン、グルタチオンまたは他の捕捉性アルファカルボニルからなる群から選択される製剤安定剤をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項17】
生存可能なおよび/または安定な細菌は、プロバイオティック細菌、特にラクトバチルス種またはスタフィロコッカス種である、請求項1~16のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項18】
ラクトバチルス種は、L.プランタルム、L.ペントーサス、L.ラムノサスおよび/またはL.カゼイである、請求項17に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項19】
スプレー可能な製剤は口鼻腔咽頭喉頭用のスプレーである、請求項1~18のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項20】
スプレー可能な製剤は局所皮膚科外用スプレーである、請求項1~18のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項21】
ヒトまたは動物の医薬で使用するための、請求項1~19のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項22】
ウイルス性、細菌性および/または真菌性の呼吸器疾患の予防および/または治療に使用するための、請求項1~21のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項23】
コロナウイルス疾患の予防および/または治療に使用するための、請求項1~21のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤。
【請求項24】
粉末状の細菌粒子を無水担体に懸濁する工程を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤を製造する方法。
【請求項25】
請求項1~23のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤を適用する工程を含む、口鼻腔咽頭喉頭マイクロバイオームの自然な保護機能を強化する方法。
【請求項26】
請求項1~23のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤を適用する工程を含む、ウイルス性、細菌性および/または真菌性の呼吸器疾患を予防および/または治療する方法。
【請求項27】
請求項1~23のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤を適用する工程を含む、コロナウイルス疾患を予防および/または治療する方法。
【請求項28】
局所皮膚科適用のための請求項1~23のいずれか1項に記載のスプレー可能な製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生細菌および/または安定細菌を含むスプレー可能な製剤、ならびにそのようなスプレー可能な製剤、特に液体スプレーの形態での製剤、を製造する方法に関する。本発明は、さらに、ヒトまたは動物の医薬におけるこのスプレー可能な製剤の使用、ならびに呼吸器疾患の予防および/または治療のためのこのスプレー可能な製剤の使用に関する。本発明はさらに呼吸器疾患の予防および/または治療のための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
最近、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のパンデミックによって浮き彫りになったように、呼吸器ウイルス感染症(インフルエンザ、RSウイルス(RSV)、コロナウイルス)は、重大な健康および経済的負担と関連している。気道感染症は一般に、吸入されたウイルスが鼻腔、鼻咽頭、および中咽頭を含む上気道(URT)の粘膜表面に感染することによって始まる。ウイルス感染は、ビリオンが特定の宿主細胞受容体に結合することで始まり、次に組織指向性に応じて上皮細胞または自然免疫細胞に侵入する。その後のウイルスの複製と宿主細胞の損傷により、まず自然免疫系が活性化され、続いて適応免疫系が活性化される。抗ウイルス自然免疫活性化の代表的な転写分子マーカーはインターフェロン調節因子(IRF)と核因子κB (NF-κB)であり、I型およびIII型インターフェロンの産生と、ケモカイン産生を介したナチュラルキラー細胞や好中球などの白血球の補充および活性化につながる経路を活性化する。2019年のコロナウイルス疾患 (COVID-19)で説明されているように、過剰または不均衡な免疫活性化は、気道組織の破壊と重度の炎症に関連する。これは、IL-などの炎症促進性メディエーターの過剰産生とともに起こるI型およびIII型インターフェロン産生の減少を特徴とする。サイトカインストームとして認識される過剰な炎症促進性サイトカイン放出を有する免疫過剰反応は、インフルエンザなどの他の呼吸器ウイルス疾患でも発生する。
【0003】
これらの粘膜表面に存在するマイクロバイオームは、侵入する病原体をブロックし、上皮バリア機能と免疫恒常性を維持することにより、重要な多因子のゲートキーパー機能を備えている。URTでの最初の感染後、例えば、インフルエンザウイルス、RSV、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、風土病のヒトコロナウイルス(例えば、HCoV-229E)、および最近出現したSARS-CoV-2などのいくつかのコロナウイルスなど、いくつかのウイルスがその後の肺炎および関連する同時感染を引き起こす可能性がある。肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、およびモラクセラ・カタラーリス(Moraxellacatarrhalis)を含む病原性共生生物は、ウイルス誘発性の損傷や免疫機能不全から恩恵を受ける可能性がある。これまでの研究では、インフルエンザなどの呼吸器系ウイルス感染中にコアURTマイクロバイオームの安定性が損なわれ、病原性共生生物の異常増殖につながる可能性があることが示唆されている。しかしながら、重篤な患者のかなりの部分において、マイクロバイオームが同時感染(co-infection)や重篤な炎症の発症に対して十分に防御できていない可能性があるかどうかは、まだ十分に研究されていない。
【0004】
呼吸器マイクロバイオームは気道において重要なゲートキーパー機能を果たすことが示唆されているが、呼吸器ウイルス感染症に対する戦略として呼吸器マイクロバイオームの調節を検討した試験はこれまでほとんど行われていない。
【0005】
プロバイオティクスは粉末、カプセル、錠剤などの乾燥形式で配合しやすいため、マイクロバイオーム治療薬の経口摂取が今日でも最も一般的な投与経路となっている。これらの経口適用は、腸肺軸を通って腸に到達したときに、全身的な抗ウイルス効果および抗炎症効果をもたらす可能性がある。しかし、URTでの局所マイクロバイオーム療法での投与は、経口経路に代わる安全でより標的を絞った代替手段としてますます研究されている。URTに投与されるマイクロバイオーム治療薬は、呼吸器ウイルスを直接ブロックまたは阻害し (予防)、感染および炎症部位での効率的かつ直接的な免疫調節を確実にすることができる。実際、呼吸器免疫系内の標的化された局所粘膜免疫刺激は、例えば、制御性T細胞サブセットのより効率的な誘導など、URT免疫系の特定の細胞とのより直接的かつ効率的な接触を通じて、腸-肺軸と比較して特別な利益をもたらす可能性がある。
【0006】
これらの製剤の対象を絞った適用と送達は、いくつかの複雑な技術的およびバイオテクノロジーの問題に直面している。その1つは、選択された菌株が、バイオマス生成のための発酵、バイオマスの濃縮、および乾燥というバイオプロセスの工程に耐えられるように十分に頑健性がある必要があることであり、そのため、十分な収量を生み出し、品質を損なうことなく工業規模のプロセスを経済的に興味深いものにするために、各工程を最適化する必要がある。安定した長期生存率と高品質のプロバイオティック製品を実現するには、さまざまな乾燥技術およびプロセスを適用できるが、それぞれに考慮すべき長所と短所がある。特定の菌株を産生する際には、例えばバッチ式か連続式かといったプロセスの種類、製造コスト、および加工条件と応力を考慮することが重要である。
【0007】
しかしながら、最も重要なアウトカムパラメーター(outcome parameter)は、乾燥プロバイオティクスの適用性と、粒径分布、密度、粉末流動性、および表面状態などの力特性(power characteristics)である。これらの特性により、標的となるURT適用製剤(URT application formulation)へのさらなる処理が決まる。具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、および喉の滞留時間を増大するためのさまざまな膨潤ポリマーなどの生体接着剤または粘膜接着剤を含むトローチ(lozenge)または溶融錠剤を使用して、標的を絞った喉への適用を実現できる。これらの製剤は、粉末、カプセル、錠剤、および類似した誘導体などの乾燥および粉末のプロバイオティック製剤に関する広範な研究のおかげで、比較的簡単に実現できる。これらの製剤の大きな欠点は、製剤が乾燥しており、その中の微生物が口鼻腔咽頭喉頭(oronasopharynx)の標的領域に到達したときに代謝を蘇生させて再活性化するために液体と一定の滞留時間を必要とすることである。また、乾燥粉末製剤は口鼻腔咽頭喉頭を刺激する傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、課題は、乾燥製剤が呼吸器疾患の保護および/または治療を提供するためにURTを特異的に標的とすることができないことである。また、乾燥粉末製剤は口鼻腔咽頭喉頭を刺激する傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の目的は、口鼻腔咽頭喉頭の標的領域への微生物の送達を高い分散性および滞留時間で可能にする製剤を提供することである。
【0010】
驚くべきことに、無水担体中に懸濁された生存可能な(viable)および/または安定な粉末状の細菌粒子を含むスプレー可能な製剤であって、該粉末状の細菌粒子の少なくとも90%の粒径が400μm 未満であって、該スプレー可能な製剤が非加圧である、スプレー可能な製剤が、上記の課題の解決策を提供することが見出された。特に、このようなスプレー可能な製剤は使いやすく、乾燥製剤とは対照的に喉に均一に沈着することが判明した。さらに、粉末状の細菌の少なくとも90%が400μm未満の粒径を持っているため、粉末状の細菌を含む製剤はスプレー可能である。また、粉末状の細菌の粒径が、本発明のスプレー可能な製剤が投与されるときに細菌が広範囲に分散することも可能にする。粉末状の細菌の前記粒径は比較的小さいと考えられ、したがって、より大きな粒径を有する粒子と比較して、粒子が大きな接触表面積を有することになる。また、前記粒径により、同じ体積内のより大きな粒子サイズと比較して、体積当たりにより多くの粒子が存在し、したがって、より多くの粉末状の細菌がURT内に沈着し、嚥下によってURTから除去される粒子が少なくなる。
【0011】
さらに、粉末状の細菌の少なくとも90%が400μm未満の粒径を持つ場合、懸濁液中での沈降は少なくなる。したがって、粉末状の細菌は懸濁液中に均一に存在する。
【0012】
さらに、本発明のスプレー可能な製剤は、呼吸器ウイルス疾患における口鼻腔咽頭喉頭マイクロバイオームの自然な保護機能を強化することが判明した。特に、ラクトバチルス科(Lactobacillaceae)に属するマイクロバイオーム株は、ウイルスURT感染のさまざまな段階に対して多因子作用を示す。
【0013】
第1の態様において、本発明は、無水担体中に懸濁された生存可能なおよび/または安定な粉末状の細菌粒子を含むスプレー可能な製剤であって、該粉末状の細菌粒子の少なくとも90%の粒径が400μm 未満であって、該スプレー可能な製剤が非加圧である、スプレー可能な製剤を提供する。
【0014】
特に、本発明は、不揮発性無水液体担体(non-volatile anhydrousliquidcarrier)中に懸濁された生存可能な非芽胞形成の粉末状の細菌粒子を含むスプレー可能な製剤であって、該粉末状の細菌粒子の少なくとも90%の粒径が400μm 未満であって、該スプレー可能な製剤が雰囲気圧(ambient pressure)下であり、特に、該スプレー可能な製剤は液体スプレーの形態である、スプレー可能な製剤を提供する。
【0015】
さらなる1つの実施形態において、スプレー可能な製剤は噴射ガス(propellant gas)、特に炭水化物噴射ガス(carbohydrate propellant gas)を含まない。
【0016】
別の実施形態において、スプレー可能な製剤は、スプレーすると液滴として分散するものである。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、スプレー可能な製剤の無水担体(特に不揮発性無水液体担体)は、植物由来、動物由来、または鉱物由来であり、好ましくは無水担体(特に不揮発性無水液体担体)は油性液体担体であり、より好ましくは、脂肪酸、トリグリセリド、飽和もしくは不飽和脂肪、ステロイド誘導体、またはリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質もしくはスルホ脂質(sulpho lipid)からなる複合油を含む。
【0018】
本発明の別の実施形態において、粉末状の細菌粒子の少なくとも90%の粒子は粒径が400μm 未満を有し、好ましくは1~250μm、より好ましくは2~100μm、さらにより好ましくは5~50μm、最も好ましくは5~10μmを有する。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、懸濁液中の粉末状の細菌粒子の濃度は、スプレー可能な製剤の総重量に対して、0.1~20重量%であり、好ましくは1~10重量%であり、最も好ましくは、3~7重量%である。
【0020】
別の特定の実施形態において、スプレー可能な製剤はさらに沈降防止剤(antisedimentationagent)を含み、さらに別の特定の実施形態では、沈降防止剤は二酸化ケイ素およびその誘導体である。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、沈降防止剤の濃度は、スプレー可能な製剤の総重量に対して、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.5~3重量%、および最も好ましくは1~2.5重量%である。
【0022】
本発明の別の特定の実施形態において、スプレー可能な製剤は、スプレー可能な製剤の総重量に対して、50~99重量%、好ましくは、70~98重量%、より好ましくは85~97重量%、最も好ましくは90~95重量%の無水担体を含む。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態において、スプレー可能な製剤は、スプレー可能な製剤の総重量に対して、50~99重量%、好ましくは、70~98重量%、より好ましくは85~97重量%、最も好ましくは90~95重量%の不揮発性無水液体担体を含む。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、スプレー可能な製剤は、レオロジー添加剤をさらに含む。
【0025】
本発明のさらなる特定の実施形態において、スプレー可能な製剤は、抗酸化物質、特にビタミンD3およびEから選択される抗酸化物質、をさらに含む。
【0026】
本発明の別の特定の実施形態において、スプレー可能な製剤は、界面活性剤および/または乳化剤および/または湿潤剤をさらに含む。
【0027】
本発明の特定の実施形態において、スプレー可能な製剤は、生体接着剤および/または粘膜接着剤をさらに含む。
【0028】
別の特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤は、甘味料および/または香料をさらに含む。
【0029】
特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤は、特に、エピカテキン、キノン、クレアチン、ヒドロキシチロソール、ピリドキサミン、システイン、ホモシステイン、グルタチオンまたは他の捕捉性アルファカルボニル(trapping alfa carbonyl)からなる群から選択される製剤安定剤をさらに含む。
【0030】
さらに特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤中の生存可能なおよび/または安定な細菌は、プロバイオティック細菌(probiotic bacteria)、特に乳酸菌またはスタフィロコッカス(Staphylococcus)種であり、より具体的には、ラクトバチルス(Lactobacillus)種である。
【0031】
別の特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤における乳酸菌は、ストレプトコッカス(Streptococcus)種またはL.プランタルム(L. plantarum)、L.ペントーサス(L. pentosus)、L.ラムノサス(L. rhamnosus)および/またはL.カゼイ(L. casei)などのラクトバチルス(Lactobacillus)種である。
【0032】
別の特定の実施形態において、スプレー可能な製剤は口鼻腔咽頭喉頭用のスプレーである。
【0033】
さらに特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤は局所皮膚科外用スプレーである。
【0034】
さらに特定の実施形態において、本発明はヒトまたは動物の医薬で使用するための本発明のスプレー可能な製剤に関する。
【0035】
別の特定の実施形態において、本発明は口鼻腔咽頭喉頭マイクロバイオームの自然な保護機能を増強するために使用するための本発明のスプレー可能な製剤に関する。
【0036】
さらに特定の実施形態において、本発明はウイルス性、細菌性および/または真菌性の呼吸器疾患の予防および/または治療に使用するための本発明のスプレー可能な製剤に関する。
【0037】
別の特定の実施形態において、本発明はコロナウイルス疾患の予防および/または治療に使用するための本発明のスプレー可能な製剤に関する。
【0038】
さらなる1つの態様において、本発明は、粉末状の細菌粒子を無水担体、より具体的には、不揮発性無水液体担体、に懸濁する工程を含む、本発明のスプレー可能な製剤の製造方法を提供する。
【0039】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のスプレー可能な製剤を適用する工程を含む、口鼻腔咽頭喉頭マイクロバイオームの自然な保護機能を強化する方法に関する。
【0040】
さらに別の実施形態において、本発明は、本発明のスプレー可能な製剤を適用する工程を含む、ウイルス性、細菌性および/または真菌性の呼吸器疾患を予防および/または治療する方法を提供する。
【0041】
さらなる特定の実施形態において、本発明は、本発明のスプレー可能な製剤を適用する工程を含む、コロナウイルス疾患を予防および/または治療する方法を提供する。
【0042】
別の特定の実施形態において、本発明は、局所皮膚科適用のための本発明のスプレー可能な製剤の使用に関する。
【0043】
さらに特定の実施形態において、本発明は、表面を洗浄する(cleaning)ための本発明のスプレー可能な製剤の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
ここで図面を特に参照すると、示された詳細は例として、本発明の異なる実施形態を説明する目的のみであることが強調される。これらは、本発明の原理および概念的な態様の最も有用かつ容易な説明であると考えられるものを提供する目的で提示されている。この点に関して、本発明の基本的な理解に必要な以上に詳細に本発明の構造の詳細を示す試みは行われていない。図面を伴う説明により、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具体化され得るかが当業者には明らかとなる。
【0045】
【
図1】2%の二酸化ケイ素を有する15℃の油中のさまざまな細菌濃度の生存率をCFU/g油懸濁液の油懸濁液で表した経時的実験。CFU/g油懸濁液で表す。対照は、L.ラムノサスとL.プランタルムのプロバイオティック混合物であり、CFU/グラム粉末として表される(油担体で希釈されていない純粋株)。
【
図2】2%の二酸化ケイ素を有する25℃の油中のさまざまな細菌濃度の生存率をCFU/g油懸濁液の油懸濁液で表した経時的実験。対照は、L.ラムノサスとL.プランタルムのプロバイオティック混合物であり、CFU/グラム粉末として表される(油担体で希釈されていない純粋株)。
【
図3】適用後30分後、2時間後、4時間後の喉における乳酸菌(lactobacilli)の滞留。喉における乳酸菌の存在は、軟口蓋と舌の後端(表面±2.5 cm
2)を拭き取ることにより、P1、P2、P3として示される3人の異なる人について検査されている。
【
図4】2%の二酸化ケイ素を有する4℃の油中のさまざまな細菌濃度の生存率データ。
【
図5-1】L.カゼイ AMBR2、L.プランタルムWCFS1、およびL.ラムノサス GGの個別および組み合わせの、(A、B)粉末中の生存率、または(C)喉スプレー製剤中の生存率;粉末(D~E)、および乳酸菌を含まないまたは含む、それぞれプラセボ(placebo)スプレーおよびベルム(verum)スプレー製剤(F~G)の免疫刺激活性。細菌株の組み合わせの生存率を、さまざまな保存温度4℃、15℃、および25℃で経時的に評価した。CFU:コロニー形成単位。培地条件は細胞そのものを表し、ベースラインとして機能する。リポフェクタミンを含む50μg/mlのポリ(I:C)(Poly(I:C)/Lipo)は対照IRF誘導剤として機能し、20ng/mlのLPS(LPS20)は、対照NF-κB誘導剤として機能する。データは条件ごとの平均値±SD として表される。 *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001および****p<0.0001は、中程度の条件(点線)と比較した、一元配置分散分析検定とそれに続くダネットの多重比較検定によって決定された。
【
図6-1】スプレー適用後の健康なボランティアの喉のマイクロバイオーム内の乳酸菌の保持の評価。 (A)研究のセットアップ、(B) 16S rRNA アンプリコン配列決定によるマイクロバイオーム分析に基づく、喉スワブ中の投与された乳酸菌の相対存在量、(C) qPCR 分析に基づく、喉スワブ中の投与された乳酸菌の相対的な存在量。 喉スワブは、ベースライン (TO)、喉スプレーの使用後 30 分(T1)および 2 時間 (T2) に収集された。L.カゼイ AMBR2、L.ラムノサス GG、および L.プランタルムWCFS1の存在は、パネルBの16S rRNAアンプリコン配列決定 (相対存在量) によって評価された。30分および2時間の時点で、種特異的プライマーを使用したqPCRを使用して、パネルDのベルムグループのCFU/ml数を推定した。標準曲線に基づいて、検出限界は103 CFU/mlと推定された。
【発明を実施するための形態】
【0046】
すでに上記で詳述したように、本発明は無水担体中に、より特定すると不揮発性無水液体担体中で、懸濁された生存可能なおよび/または安定な粉末状の細菌粒子を含むスプレー可能な製剤を提供する。
【0047】
特に、本発明は、無水担体中に懸濁された生存可能なおよび/または安定な粉末状の細菌粒子を含むスプレー可能な製剤であって、該粉末状の細菌粒子の少なくとも90%の粒径が400μm未満であって、該スプレー可能な製剤が非加圧である、スプレー可能な製剤を提供する。
【0048】
別の実施形態において、本発明は不揮発性無水液体担体中に懸濁された生存可能な非芽胞形成の粉末状の細菌粒子を含むスプレー可能な製剤であって、該粉末状の細菌粒子の少なくとも90%の粒径が400μm未満であって、該スプレー可能な製剤が雰囲気圧下であって、および、該スプレー可能な製剤は液体スプレーの形態である、スプレー可能な製剤を提供する。
【0049】
さらなる実施形態において、スプレー可能な製剤は噴射ガス、特に炭水化物噴射ガスを含まない。
【0050】
別の実施形態において、スプレー可能な製剤は、スプレーすると液滴として分散する。
【0051】
本発明の特定の実施形態において、スプレー可能な製剤の無水担体(特に不揮発性無水液体担体)は、植物由来、動物由来、または鉱物由来であり、好ましくは無水担体(特に不揮発性無水液体担体)は油性液体担体であり、より好ましくは、脂肪酸、トリグリセリド、飽和もしくは不飽和脂肪、ステロイド誘導体、またはリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質もしくはスルホ脂質からなる複合油を含む。
【0052】
本発明のさらに特定の実施形態において、粉末状の細菌粒子の少なくとも90%の粒子は粒径が1~250μm、より好ましくは2~100μm、最も好ましくは5~50μmを有する。
【0053】
本発明の別の実施形態において、粉末状の細菌粒子の少なくとも90%の粒子は粒径が400μm 未満を有し、好ましくは1~250μm、より好ましくは2~100μm、さらにより好ましくは5~50μm、最も好ましくは5~10μmを有する。
【0054】
特定の実施形態において、粉末状の細菌粒子の少なくとも99%の粒子は粒径が50μm 未満を有し、および/または粉末状の細菌粒子の少なくとも80%の粒子は粒径が30μm未満を有し、および/または粉末状の細菌粒子の少なくとも35%の粒子は粒径が10μm未満を有する。
【0055】
本発明の文脈において、用語「スプレー可能な」製剤は、分散された液滴の塊の中で移動可能な成分の組み合わせとして解釈されるべきである。スプレー可能な製剤はさらに、例えばエアゾールスプレー可能な製剤またはバッグオンバルブシステム(bag-on-valve system)に適したスプレー可能な製剤などの非加圧製剤または加圧製剤であってもよい。
【0056】
したがって、本願において「スプレー可能な製剤」に言及する場合、これは「液体スプレー」、すなわち、液体組成物をスプレーすることによって適用される液体組成物を意味する。本明細書で使用される「液体スプレー」は、霧または小さな滴または液滴の形態で、空気中に吹き付けられるか送られるか、またはホルダーから押し出される液体製剤または組成物である。
【0057】
本発明の文脈において、微生物という用語は、「生存可能な」細菌粒子を指し、細菌が生きていることを意味し、その断片、培養上清、発酵形態、または死滅形態を意味するものではない。前記生存可能な細菌粒子は、保存性を高めるために凍結乾燥またはスプレー乾燥されることが好ましい。
【0058】
本発明の文脈において、「粉末状の」細菌という用語は、細菌粒子が粉末または微細粉塵の形態などの微細な乾燥粒子であることを指す。
【0059】
さらに、本発明の文脈において、微生物という用語は「安定な」細菌粒子を指し、これは、生存可能な細菌を含む粒子が無水担体(特に不揮発性無水液体担体)に懸濁されているときに安定であることを意味する。特に、本発明の微生物は、スプレー可能な製剤自体の中で複製/増殖しないように、好ましくは休眠状態にある。「安定な」細菌とは、微生物がその「休眠」状態に留まり、スプレー可能な製剤の適用時にのみ活性化されることを意味する。
【0060】
また本発明の文脈において、「粒径(particle size)」という用語は、すべての細菌粒子の平均交差または直径を指す。特に、これは、製剤中の粒子の大部分が指定された範囲内の直径を持っていることを意味する。特に、製剤中の粒子の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%が、指定された範囲内の直径を有する。
【0061】
生存可能なおよび/または安定な粉末状の細菌粒子は、プロバイオティック細菌を含むことができる。本発明の文脈において、用語「プロバイオティック(probiotic)」 は、ヒトまたは動物の医薬の分野で使用された場合に健康上の利益をもたらす細菌を含むことを意味する。本発明の製剤は、任意の既知のプロバイオティック微生物、例えば、これに限定されるものではないが、乳酸菌、より具体的には、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillusrhamnosus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)および/またはラクトバチルス・カゼイ(Lactobacilluscasei)の製剤に非常に適している。明らかに、本発明の製剤は、意図される用途に応じて、プロバイオティック微生物の1種のみ、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0062】
1つの特定の実施形態において、本発明は懸濁液中の粉末状の細菌粒子の濃度が、スプレー可能な製剤の総重量に対して0.1~20重量%、好ましくは1~10重量%、最も好ましくは3~7重量%である、本明細書に定義されるスプレー可能な製剤を提供する。
【0063】
より具体的には、本発明は本明細書に定義されるスプレー可能な製剤であって、沈降防止剤をさらに含む製剤を提供する。これらの沈降防止剤は、二酸化ケイ素およびその誘導体であり得る。さらに、沈降防止剤は親水性でも疎水性でもよい。また、沈降防止剤はベントナイト、または電解質ベースの沈降防止剤であってもよい。沈降防止剤は、無水担体(特に不揮発性無水液体担体)中に懸濁された粉末状の細菌粒子の沈降を避けるために添加される。
【0064】
本発明はさらに、スプレー可能な製剤の総重量に対して0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.5~3重量%、最も好ましくは1~2.5重量%で存在する沈降防止剤を提供する。特に、本明細書で定義されるスプレー可能な製剤中に1~2.5%の二酸化ケイ素が存在した場合、3ヶ月後に、無水担体(特に不揮発性無水液体担体)中に懸濁された粉末状の細菌粒子の沈降は見られなかった。
【0065】
さらに特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤は、スプレー可能な製剤の総重量に対して、50~99重量%、好ましくは70~98重量%の、より好ましくは85~97重量%、最も好ましくは90~95重量%の無水担体(特に不揮発性無水液体担体)を含む。
【0066】
本発明の文脈において、「無水」担体という用語は、実質的に水を含まない、すなわち実質的に水を含まない液体を意味する。特に、無水担体(特に不揮発性無水液体担体)は、スプレー可能な製剤の総重量に対して、5重量%未満、特に4重量%未満、3重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満の最大量の水を含むことができる。生存可能なおよび/または安定な粉末状の細菌粒子が無水担体(特に不揮発性無水液体担体)中に懸濁される場合、安定な懸濁液を提供することができる。
【0067】
本発明はレオロジー添加剤をさらに含む、本明細書に定義されるスプレー可能な製剤をさらに提供する。レオロジー添加剤は、スプレー可能な製剤の粘度を変えるために存在することができる。本発明のスプレー可能な製剤中に存在することができる典型的なレオロジー添加剤は、多糖類、例えばセルロース誘導体、キサンタンガム、ペクチン、およびシリコン誘導体である。
【0068】
また、本発明は特にビタミンD3およびEから選択される抗酸化剤をさらに含む、本明細書に定義されるスプレー可能な製剤を提供する。ビタミンまたは他の抗酸化剤は、抗酸化効果を提供するために本発明のスプレー可能な製剤中に存在することができる。過酸化物は、本明細書で定義されるスプレー可能な製剤の機能に悪影響を与える。さらに、過酸化物によって引き起こされる酸化は、製剤の酸敗や時間の経過による製剤の香料プロファイルの劣化を防ぐために制御する必要がある。抗酸化作用により過酸化物が中和され、スプレー可能な製剤の機能が強化される。また抗酸化剤は、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、EDTA二ナトリウムであり得る。
【0069】
さらに、本発明は、界面活性剤および/または乳化剤および/または湿潤剤をさらに含む、本明細書に定義されるスプレー可能な製剤を提供する。典型的な界面活性剤/乳化剤/湿潤剤は、例えばグリセリン、ポリオール、脂肪酸エステルである。
【0070】
本発明は生体接着剤および/または粘膜接着剤をさらに含む、本明細書に定義されるスプレー可能な製剤をされに提供する。これらの接着剤は、喉への保持時間を長くするために、本発明のスプレー可能な製剤中に存在することができる。生体接着剤および/または粘膜接着剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサンなどのセルロース誘導体、および/またはポリアクリル酸などの異なる膨潤ポリマーであり得る。
【0071】
特定の実施形態において、本発明は甘味料および/または香料をさらに含む、本明細書に定義されるスプレー可能な製剤を提供する。本発明のスプレー可能な製剤中に存在することができる香料および甘味料は、典型的には、オレンジA、オレンジB、レモン、歯磨き粉、ミント、ペパーミント、シナモン、トフィー、キャラメル、コーヒー、グレープフルーツ、イチゴ/バナナ、ブラックベリー、チェリー、バニラ、ラズベリー、バナナ、イチゴである。
【0072】
本発明は、エピカテキン、キノン、クレアチン、ヒドロキシチロソール、ピリドキサミン、システイン、ホモシステイン、グルタチオンまたは他の捕捉アルファカルボニルからなる群から特に選択される製剤安定剤をさらに含む、本明細書に定義されるスプレー可能な製剤をさらに提供する。安定剤は、メイラード反応を低減するために、本発明のスプレー可能な製剤中に存在することができる。メイラード反応は、還元糖とアミノ酸の間の化学反応であり、これらは両方とも微生物に本質的に存在する。この反応は、製剤の臭気と色の安定性に影響を与える。製剤安定剤はメイラード反応の発生を低減し、それによって本明細書に定義されるスプレー可能な製剤の色および臭気を安定化する。
【0073】
特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤の生存可能なおよび/または安定な細菌は、プロバイオティック細菌、特に乳酸菌またはスタフィロコッカス種である。本明細書で定義されるスプレー可能な製剤は、プロバイオティック乳酸菌(特に、ラクトバチルス種)を含むことができ、このスプレー可能な製剤の投与により、呼吸器マイクロバイオームの調節が可能になる。したがって、本明細書で定義されるスプレー可能な製剤中の乳酸菌のプロバイオティック活性は、呼吸器疾患の予防および/または治療である。
【0074】
具体的には、ストレプトコッカス種および/またはラクトバチルス種は本発明のスプレー可能な製剤中に存在することができる。これらの種は、呼吸器疾患の予防および/または治療を提供することができる。さらにより具体的には、本発明のスプレー可能な製剤は、ヒトのTHP-1 Dual単球の核因子(NF)-κBおよびヒトのインターフェロン調節因子(IRF)経路を有意に活性化するラクトバチルス種、例えば、L.プランタルム、L.ペントーサス、L.ラムノサスおよび/またはL.カゼイ、生きているL.カゼイ、L.ラムノサスおよびL.プランタルムなどを含むことができる。L.カゼイおよびL.プランタルムは、ヒト初代気道上皮細胞において、抗ウイルス応答に必須のI型インターフェロンであるインターフェロン-β(IFN-β)の発現を特異的に誘導した。UVで不活化されたL.ラムノサスおよびL.プランタルムは、ヒトTHP-1 Dual単球のNF-κBおよびIRF経路を活性化する能力を維持した。L.カゼイ、L.ラムノサス、およびL.プランタルムの組み合わせは、ヒトTHP-1 Dual単球においてNF-κBおよびIRF経路の優れた誘導をもたらした。
【0075】
特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤中に存在することができるL.プランタルムは 、その16SrRNA遺伝子において配列番号4と少なくとも97%の配列類似性を有するL.プランタルム株である。
【0076】
さらに特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤中に存在することができるL.ペントーサスは、その16S rRNA遺伝子において配列番号1と少なくとも97%の配列類似性を有するL.ペントーサス株である。
【0077】
また別の特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤中に存在することができるL.ラムノサスは、その16S rRNA遺伝子において配列番号5と少なくとも97%の配列類似性を有するL.ラムノサス株である。
【0078】
特に、本発明はさらに、本明細書で定義されるスプレー可能な製剤を提供するものであって、ラクトバチルス株はL.ペントーサスYUN-V1.0 受託番号LMG P-29455で寄託 (2016年3月9日にBCCMに寄託);L.プランタルムYUN-V2.0受託番号LMG P-29456で寄託 (2016年3月9日にBCCMに寄託);およびL.ラムノサスYUN-S1.0受託番号LMG P-29611 で寄託(2016年5月12日にBCCMに寄託)を含むリストから選択される。
【0079】
本明細書で言及されている微生物学的寄託物は、対応住所:LaboratoriumvoorMicrobiologie,Universiteit Gent, K.L. Ledeganckstraat 35 - 9000 Gent,Belgium のBCCM/LMG Bacteria collection (「ベルギー共同微生物コレクション」) でなされた。
【0080】
L.ペントーサスYUN-V1.0はもともと健康な女性の膣分離株であった菌株を継代培養した後に我々の研究室で得られた単一コロニー分離株である。L.ペントーサスYUN-V1.0株の16SrRNA遺伝子配列(配列番号1)を、プライマー8F(5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3':配列番号2)および1525R(5'- AAGGAGGTGATCCAGCCGCA-3':配列番号3)を使用するPCRによって決定した。
【0081】
YUN-V2.0は、もともとヒトの唾液から分離されたラクトバチルス・プランタルム株の継代培養後に我々の研究室で得られた単一コロニー分離株である。L.プランタルムYUN-V2.0株の16SrRNA遺伝子配列(配列番号4)を、プライマー8F(5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3':配列番号2)および1525R(5'- AAGGAGGTGATCCAGCCGCA-3':配列番号3)を使用するPCRによって決定した。
【0082】
YUN-S1.0は、もともと健康な人から分離されたラクトバチルス・ラムノサス株の継代培養後に我々の研究室で得られた単一コロニー分離株である。L.ラムノサスYUN-S1.0株の16SrRNA遺伝子配列(配列番号5)を、プライマー8F(5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3':配列番号2)および1525R(5'- AAGGAGGTGATCCAGCCGCA-3':配列番号3)を使用するPCRによって決定した。
【0083】
これらの特定の「YUN」株は、そのまま使用することもできるし、好ましくはそのような株を含む組成物、特に液体スプレーの形態のスプレー可能な製剤に配合することもできる。
【0084】
本発明のスプレー可能な製剤は、投与されると、呼吸器ウイルス疾患における口鼻腔咽頭喉頭マイクロバイオームの自然な保護機能を強化する。したがって、本発明はスプレー可能な製剤が口鼻腔咽頭喉頭用のスプレーである、本明細書に定義されるスプレー可能な製剤をさらに提供する。
【0085】
本発明の別の態様では、スプレー可能な製剤が局所皮膚科用スプレーであり得る。本発明のスプレー可能な製剤の局所適用は、皮膚微生物叢(skin microbiota)を回復するために皮膚に局所的に適用することができる。特に、本スプレー可能な製剤は、例えばブドウ球菌、マラセチア属菌、白癬菌属菌のような病原菌による異常増殖に関連する皮膚疾患の症状を治療するために使用することができる。さらに、本発明のスプレー可能な製剤は、特定の悪臭を生成する皮膚細菌による悪臭(malodour)の生成を低減するために使用することができる。
【0086】
また、本明細書では、本発明のスプレー可能な製剤が油懸濁液であってもよいことも開示される。この油懸濁液は、局所皮膚科用油として適用できる。あるいは、この油懸濁液は、外耳炎などの外耳道の疾患の予防および/または治療に適用できる。
【0087】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書に記載のスプレー可能な製剤がヒトの医薬および/または動物の医薬に使用できる。したがって、本発明のスプレー可能な製剤は、薬剤として使用することができる。特に、本発明のスプレー可能な製剤は、特に口鼻腔咽頭喉頭マイクロバイオームの自然な保護機能を強化するための薬剤として使用することができる。
【0088】
さらなる特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤は、ウイルス性、細菌性および/または真菌性の呼吸器疾患の予防および/または治療に使用することができる。さらに特定の実施形態において、本発明のスプレー可能な製剤は、コロナウイルス疾患の予防および/または治療に使用することができる。特に、本発明のスプレー可能な製剤は、COVID-19の予防および/または治療に使用することができる。
【0089】
さらなる1つの態様において、本発明は粉末状の細菌粒子を無水担体(特に不揮発性無水液体担体)中に懸濁するステップを含む、本明細書に定義されるスプレー可能な製剤を製造する方法に関する。
【0090】
そしてさらなる1つの態様において、本発明は本明細書に定義されるスプレー可能な製剤を適用するステップを含む、口鼻腔咽頭喉頭マイクロバイオームの自然の保護機能を増強するための方法に関する。
【0091】
より具体的には、本発明は本明細書に定義されるスプレー可能な製剤を適用するステップを含む、ウイルス性、細菌性および/または真菌性の呼吸器疾患を予防および/または治療する方法に関する。
【0092】
また特に本発明は本明細書に定義されるスプレー可能な製剤を適用するステップを含む、コロナウイルス疾患を予防および/または治療する方法に関する。特にこの方法はCOVID-19の予防および/または治療に適用される。
【0093】
またさらなる1つの態様において、局所的な皮膚科適用のための、本明細書に定義される噴霧可能な製剤の使用に関する。
【0094】
また本発明は表面を洗浄するための、本明細書で定義されるスプレー可能な製剤の使用に関する。
【0095】
次に、本発明を以下の合成例および生物学的例によって説明するが、これらは本発明の範囲を決して限定するものではない。
【実施例】
【0096】
実施例1:粒径と沈降
【0097】
表1:油懸濁液中のさまざまな粒径の細菌粉末(L.ラムノサス)の沈降の割合。 評価は室温で行われた。
【表1】
【0098】
20%の沈降は、細菌粉末が完全に沈降したことを意味する。粗い粉末(coarse powder)は、微細な粉末(fine powder)や極微細な粉末(very fine powder)よりも早く沈殿する。長期にわたり安定した懸濁液を得るには、油懸濁液に微細な粉末または極微細な粉末を使用することが好ましい選択肢である。
【0099】
実施例2:二酸化ケイ素の沈降防止剤としての効果
【0100】
この方法は、植物由来のプロバイオティック(1-2.5-5-10% m/m)油懸濁液(87-98 % m/m)中の沈降防止剤(二酸化ケイ素)の濃度(1-1.5-2-2.5-3%m/m)を増加させる効果を示す。沈降速度、凝集(視覚的制御)、およびプロバイオティックの生存率が評価される。プロバイオティック混合物は、L.ラムノサスYUN-S1.0 とL.プランタルムYUN-V2.0の組み合わせである。
【0101】
表2:油懸濁液中の細菌と二酸化ケイ素の濃度を示すコード体系(Coding system)。数字は細菌の濃度を表し、文字は二酸化ケイ素の濃度を表す。
【表2】
【0102】
沈降と凝集は、開始時、T3d、T1w、T2w、T1m、T2m、T3m、T6m、T12m、T18m、T24m、T36mで目盛り付きチューブで測定される。プロバイオティックの生存率は、TO、T3m、T6m、T9m、T12m、T18m、T24m、T36m、4℃~15℃、および25℃で、スプレッドプレーティングおよびコロニー計数によって測定される。
【0103】
懸濁液の粘度(mPa.s)は、ブルックフィールド粘度計DV1を使用して22+/-2℃で測定した。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
驚くべきことに、 4℃よりも25℃の方が沈降は少ないことが分かった。低温では粘度が増加するため、懸濁した粉末状の粒子の沈降速度が遅くなることが予想される。また、(25℃では)プロバイオティック濃度が低い(1%および 2.5% m/m)と、高濃度の5%および10%よりも多くの沈降が見られるが、4℃ではその逆であることがわかった。
【0108】
このタイプの二酸化ケイ素と選択されたプロバイオティック粉末を使用して室温で安定した懸濁液を得るには、少なくとも 1.5%の二酸化ケイ素を含む5%のプロバイオティック濃度が好ましい。
【0109】
4℃および25℃では、2.5%および3%二酸化ケイ素での沈降は見られなかったが、2%二酸化ケイ素ではわずかな沈降帯が見られた。
【0110】
長期にわたって安定した懸濁液を得るには、このタイプの疎水性修飾二酸化ケイ素を2%使用することが好ましいと思われるが、このような高濃度では粘度が増加するため、スプレー特性を考慮する必要がある。
【0111】
実施例3:生存率
【0112】
さまざまな細菌の生存率を、2%二酸化ケイ素を含む油中で15℃および25℃で試験したところ、細菌は少なくとも90%が400μm未満の粒子サイズを有する粉末状の細菌粒子として存在する。
【0113】
図1で示されるとおり、15℃で保存した場合、すべての製剤の生存率が維持された。25℃(
図2)では、プロバイオティック細菌の開始濃度が低いほど、生存する細菌数のより速い減少が観察された。したがって、スプレー可能な製剤中の粉末状の細菌粒子の濃度が5%(またはそれ以上)であると、長期間安定で生存可能な製品が得られるという点で好ましいと思われる。
【0114】
実施例4:喉への滞留
【0115】
テストされたスプレー可能な製剤 (液体スプレーの形態):
- 3つのプロバイオティック株5% m/m: L.プランタルムYUN-V2.0、L.カゼイAmbr2、L.ラムノサスYUN-S1.0;
- 酸化防止剤:0.1% m/m
- ビタミンD3 0.01% m/m: 100IU/グラム
- 親水性二酸化ケイ素 1.5% m/m
- 植物油担体 93.4% m/m:トリグリセリドと脂肪酸の混合物
この調査には3名が参加した。
【0116】
喉スプレーの使用前に、乳酸菌の存在を評価するために、各被験者からの空のスワブ (Copan) で採取した。軟口蓋の後端と舌の後端から、約2.5cm2の領域にわたって約5秒間綿棒でこすることにより、スワブサンプルを採取した。
【0117】
綿棒の先端は1mlの0.1M PBSバッファー中で混合される。10倍連続希釈シリーズを作成し、スプレッドプレーティング法によりMRSのCFU数を決定する。被験者は、喉のアプリケーターを備えた適切なスプレーポンプを使用して、スプレー可能な製剤を±500マイクロリットルスプレーした。
【0118】
喉スプレーを使用してから30、120、240分後にサンプルを収集した。 この間飲食は禁止された。
【0119】
図3では、すべての被験者とサンプルを組み合わせたブランクの乳酸菌数(喉スプレー使用前)は、5E01±2E01CFU/2.5cm
2だったことを示す。これは、乳酸菌が正常な口腔マイクロバイオームで存在していることを示す。プロバイオティック喉スプレー製剤の適用後の4E+05-8E05 CFU/2.5 cm
2の平均保持率は、30分後にすべての被験者のすべてのサンプルで得られた。この量は、2時間後には3E03-4E03 CFU/2.5 cm
2に、4時間後には7E02-9E02に徐々に減少した。6サンプル中5サンプルに1E03 CFU/2.5 cm
2を超える乳酸菌が存在していれば、成功と言える。1日あたり 3~5回の塗布頻度で12~24時間持続するスプレー可能な製剤による乳酸菌保護バリアを得ることができる。
【0120】
もう1つの成功した結果では、回収された乳酸菌が口腔内に4時間存在した後、他の内因性存在微生物に対して明確な阻害ゾーン(inhibition zone)を示したことです。これは、選択された細菌株の頑健性(robustness)が考慮すべき重要なパラメーターであることを示しています。
【0121】
実施例5:呼吸器ウイルス阻害とインターフェロン経路誘導のための喉スプレー
【0122】
材料と方法
【0123】
THP1-Dual単球におけるNF-κBおよびIRFの誘導
【0124】
THP1-Dual単球(Invivogen)は10%ウシ胎児血清(FCS)、25mM HEPESおよび2mML-グルタミンを含むRPMI1640(ThermoFisher Scientific)培地中で37℃、5%CO2で維持された。細菌を用いた実験では、THP1-Dual細胞を96ウェルプレートに105細胞/ウェルの濃度で播種した。細菌は、培養からの生菌の場合は106CFU/ウェル、培養からのUV不活化細菌の場合は107CFU/ウェル、粉末状の細菌の場合は108CFU/ウェルで添加した。スプレーは1:20希釈で加えた。プレートは37℃、5% CO2で24時間インキュベートした。NF-κBの誘導は、パラ-ニトロフェニルリン酸(pNPP)バッファーの添加後、Synergy HTX Plate Reader (BioTek) を使用して405 nmでのSEAPレポーター活性に基づいて評価した。IRFの誘導は、QUANTI-Luc(商標) (InvivoGen)バッファーの添加後、Synergy HTX Plate Reader (BioTek)を用いてルシフェラーゼレポーター発光活性に基づいて評価した。IRF誘導には50μg/mlのリポフェクタミン2000(Invitrogen)を含むポリ(I:C)、またはNF-κB誘導には20ng/mlの大腸菌(Sigma)由来のリポ多糖(LPS)を陽性対照として使用した。
【0125】
スプレー製剤と細菌の生存率の評価
【0126】
L.カゼイAMBR2、L.ラムノサスGG、およびL.プランタルムWCFS1は、ヒマワリ油懸濁液中の細菌粉末とアエロジル(Aerosil)の組み合わせに基づいて、口腔/喉を対象としたスプレーに製剤化された。そのマイクロバイオームスプレーは、凍結乾燥したL.カゼイAMBR2、L.プランタルムWCFS1、およびL.ラムノサスGGをそれぞれ50%、33.3%、および16.7%の比率で含んでいた。
【0127】
個々の細菌株からの粉末の生存率について、粉末をPBSに再懸濁し、段階希釈物をMRS寒天上にプレーティングすることにより、4週間ごとに6か月間にわたって4℃および25℃で評価した。粉末1g当たりのCFUの量を開始濃度と比較して評価した。粉末の混合物または最終的なスプレー製剤について、生存率を4℃、15℃、および 25℃で6か月間にわたって評価した。4週間ごとに、粉末(PBSに懸濁した後)またはスプレーを段階希釈でMRS寒天上に播種し、CFU/gの粉末またはスプレーの量を測定した。
【0128】
健康な被験者の喉における乳酸菌滞留の評価
【0129】
スプレー内の細菌が一時的に喉に定着できるかどうかを評価するため、12名の健康な成人男性および女性の被験者に、スプレーを使用し、スプレー投与の開始時、30分後、および2時間後の喉から綿棒で採取するよう依頼した。
【0130】
各時点で、PowerFecal DNA単離キット(Qiagen)を使用した微生物DNA抽出用に eNAT(商標)スワブを使用し、MRS寒天培地での乳酸菌培養用にPBSで喉のスワブを2つ採取した。喉サンプルのデュアルインデックスペアエンド配列決定(Dual-index paired-end sequencing)は、先行文献(DeBoecket al. 2017,2019) に記載されているように、MiSeq Desktop シーケンサー (M00984、Illumina) 上の16S rRNA遺伝子のV4領域に対して実行された。
【0131】
qPCR分析のため、L.カゼイAMBR2、L.プランタルム381WCFS1およびL.ラムノサスGG用の種特異的プライマーが設計された。最初に、各種の標準曲線を作成し、Ct~CFU 比を推定した。遺伝子の発現は、StepOne Plus リアルタイムPCRシステム (v.2.0;AppliedBiosystems、Foster City,California,United States) でのRT-qPCRによって定量化した。各DNAサンプルは、PowerSYBR(登録商標) Green PCR Master Mix(Applied Biosystems) を使用して、0.15μMの各プライマー、40ngのcDNA、およびヌクレアーゼフリー水の総量20μLで増幅した。喉の奥および両方の扁桃腺に沿って拭き取ることによって喉スワブを収集し、1mlのPBSに再懸濁し、段階希釈物をMRS寒天上にプレーティングした後に培養した。プレートは37℃で2日間インキュベートした。
【0132】
結果
【0133】
現在入手可能なURT用のほとんどのプロバイオティックスプレーは生理食塩水またはPBS中の細菌懸濁液で構成されているが、喉での細菌の滞留を高めるために、および生存可能なプロバイオティックCFU数の十分な用量を確保するために、(不揮発性無水担体として)油が選択された。まず、凍結乾燥粉末の各細菌株の生存率を4℃と25℃で評価した(
図5A)。3つの細菌株すべてについて、4℃での生存率は時間が経っても安定していた。L.カゼイAMBR2およびL.プランタルムWCFS1に関して、対数減少は観察されず、AMBR2およびWCFS1については開始時にそれぞれ2.79x10
10 CFU/g粉末および3.56x10
11であったが、26週間後には2.21x10
10CFU/g粉末および3.15x10
11CFU/g粉末となった。L.ラムノサスGGに関して、生存率は1.18x10
11CFU/g粉末から7.15x10
10CFU/gに減少した。室温(25℃)では、L.プランタルムWCFS1はほぼ安定であるようにみえ、26週で1桁減少したが(5.84x10
10)、一方でL.ラムノサスGGでは8.57x10
9、L.カゼイAMBR2では2.02x10
7だった。
【0134】
次に、混合物中のさまざまな濃度の細菌株を評価した。L.カゼイAMBR2を50%、L.プランタルムWCFS1を33.3%、およびL.ラムノサスGGを16.7%では、室温で長期保管した場合に最適な比率であることが判明し、これは意図した保管条件を反映していた。次に、粉末状の形態(
図5B)および喉スプレー製剤(
図5C)の組み合わせた細菌株の生存率を4℃、15℃、および25℃で評価した。混合粉末(
図5B)では、生存率は開始時の2.09x10
11 CFU/g から、4℃、15℃、および25℃で26週間保存した時点でそれぞれ1.11x10
11、4.51x10
10、および8.01x10
9 CFU/gにわずかに減少した。スプレー製剤(
図5C)では、3.78x10
9 CFU/g スプレーで開始した生存率は4℃および15℃で26週間安定していた。25℃では、26週間で2桁の減少(3.3x10
7 CFU/g) が観察された。
【0135】
その後、我々は、これらの細菌株およびそれらの組み合わせの粉末状の形態(
図5D~E)および油中のスプレー製剤(
図5F~G)が、ヒト単球における免疫刺激活性を保持することを確認した。粉末状の形態のすべての単一の細菌株およびそれらの組み合わせは、10
8 CFU/ml の用量でも依然として有意なIRFおよびNF-κB誘導が可能であって、これは健康なボランティアで以前にテストされたひと吹きあたりの(per puff)L.カゼイAMBR2濃度に相当する。油懸濁液中の3つの細菌株を含む喉スプレー製剤の免疫刺激作用も、乳酸菌を含まないプラセボ油製剤と比較した。油中でL.カゼイAMBR2を50%、L.プランタルムWCFS1を33.3%、およびL.ラムノサスGGを16.7%有する喉スプレー製剤は、有意にヒト単球でIRFおよびNF-κBが誘導された(
図5F~G)。プラセボ製剤も、乳酸菌を含むスプレー製剤と比較して程度は低いものの、NF-κBを誘導したが、IRFには有意な影響を与えなかった。
【0136】
最後に、縦断的なプラセボ対照サンプリング・セットアップを用いて、12人の健康なボランティアの喉において、製剤化されたスプレーで投与された乳酸菌の保持を評価した。生きた細菌の存在は培養および定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって評価され、乳酸菌の全体的な保持はDNAレベルでの16S rRNAアンプリコン配列決定によって定量された(
図6A)。ボランティアは研究の開始時に約9.5x10
8 CFUの乳酸菌を含むベルムスプレーを2吹き(twopuffs)スプレーするか、乳酸菌を含まないプラセボスプレーを使用し、ベースライン時、30分後、2時間後に喉のスワブを採取した(
図6A)。喉のスワブのマイクロバイオーム分析により、喉の主要な細菌属がプレボテラ(Prevotella)、ベイロネラ(Veillonella)、ストレプトコッカス(Streptococcus)種などの標準的な喉の共生生物に属していることが示された。すべての時点にわたるマイクロバイオームデータに基づく主座標分析 (PCoA) プロットでは、テストしたどの時点でも治療グループごとの明確なクラスター化は示されなかった(データ示さず)。ラクトバチルス科アンプリコン配列変異体(ASV)の相対存在量の明らかな違いが、プラセボスプレーグループとベルムスプレーグループの間で、特にスプレー使用後30分で観察された(
図6B)。スプレー投与の30分後に、投与した細菌株に対応する3つのラクトバチルスASVがベルムグループで検出された。ラクトバチルスASV1(L.ラムノサス)は、ベルムグループの被験者6名全員から検出され、ラクトバチルスASV3(L.カゼイ)およびラクトバチルスASV7(L.プランタルム)が被験者6名中5名で検出された。プラセボグループにおいて、被験者の一人が、30分後のラクトバチルス・カゼイASVの低い内因性相対存在量があったことを除いて、これらのラクトバチルスASVは検出されなかった。2時間後、ベルムグループの被験者6名中5名は依然として検出可能なラクトバチルスASVを保有していた。
【0137】
細菌投与後のベルムグループのサンプル由来のDNA配列決定によって観察された、投与された細菌株の存在量の高さを確認および定量化するため、ターゲットqPCRに基づいてCFU/ml数を推定することを目的とした(
図6C)。配列決定データと一致して、30分後の、ベルムグループにおけるL.ラムノサス GGの推定CFU数は1.26x10
4~9.24x10
5 CFU/mlだった。L.カゼイ AMBR2に関しては、推定CFU/ml数は1.72x10
5~1 .8x10
7CFU/mlの範囲であり、L.プランタルム WCFS1に関しては、4.63x10
4 CFU~3.36x10
6CFUだった。2時間後、検出される乳酸菌の量が減少した。L.ラムノサス GGおよびL.プランタルム WCFS1は、1名の参加者を除いて検出されなくなった。一方で、L.カゼイ AMBR2はスプレーで50%という最高の割合で投与されたが、被験者6名中5名で依然として検出され、CFU/ml数の中央値は4x10
3CFU/mlだった。
【0138】
細菌のDNAを分析することに加えて、投与された乳酸菌がまだ生存しているかどうかを評価するために喉のスワブも培養した。ベルムグループからの培養喉スワブは、投与された3つのラクトバチルス科株に典型的なコロニー形態を示し、種の同一性は、コロニーPCRおよび16S rRNA遺伝子の配列決定によって確認され、これにより、スプレーで投与された種に対応する種が、DNAを介して喉で検出され、生存できることが確認された。
【0139】
図面の用語
Viability of different bacteria concentrations in oil with 2% silicondioxideat15℃ 2%二酸化ケイ素を有する15℃の油中のさまざまな細菌濃度の生存率
CFU/g oil suspension CFU/g 油懸濁液
Control 対照
bacteria 細菌
Time/weeks 時間/週
Viability of different bacteriaconcentrations in oil with 2% silicon dioxideat25℃ 2%二酸化ケイ素を有する25℃の油中のさまざまな細菌濃度の生存率
Retention of lactobacilli in oral cavityafter 30 - 120 - 240 minutes, countedonMRS agar 30、120、240分後の口腔内の乳酸菌の保持率(MRS寒天上で計測)
tongue 舌
soft palate 軟口蓋
30min 30分
2h 2時間
4h 4時間
person 人
Viability of different bacteriaconcentrations in oil with 2% silicon dioxideat4℃ 2%二酸化ケイ素を有する4℃の油中のさまざまな細菌濃度の生存率
CFU/g powder CFU/g 粉末
time (weeks) 時間(週)
IRF induction in THP-1 Dual monocytes(luminescence) THP-1 Dual単球におけるIRF誘導(発光)
Medium 培地
powder 粉末
spray スプレー
Poly(I:C) ポリ(I:C)
Verum ベルム
Poly I:C ポリI:C
SEAP activity in THP-1 Dual monocytes THP-1 Dual単球におけるSEAP活性
Randomized ランダム化
Placebo プラセボ
Baseline ベースライン
Relative abundance Lactobacillus ASVs ラクトバチルスASV相対存在量
start 開始
time point 時点
L. casei L.カゼイ
L. plantarum L.プランタルム
L. rhamnosus L.ラムノサス
Estimated CFU/ml counts 推定CFU/ml数
【配列表】
【国際調査報告】