(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-13
(54)【発明の名称】逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240805BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20240805BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240805BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M3/00 Z
C12N5/071
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551665
(86)(22)【出願日】2023-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 KR2023009097
(87)【国際公開番号】W WO2024010279
(87)【国際公開日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0083336
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523319324
【氏名又は名称】クレセル,シーオー.エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ヒュン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,シ-ユン
(72)【発明者】
【氏名】リー,スル-ギ
(72)【発明者】
【氏名】チュン,グジン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC01
4B029GA08
4B029GB10
4B029HA09
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、線維芽細胞と角化細胞を用いた人工皮膚に関し、より詳しくは、逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置に関する。このために、直交するX軸、Y軸、及びZ軸上で、平板120を独立して移送可能な3Dプリンタ100と、上部に固定配置され、逆分化幹細胞(iPSC)から分化された線維芽細胞貯蔵された線維芽細胞液容器150と、前記線維芽細胞液容器150に隣接して配置され、前記逆分化幹細胞(iPSC)から分化された角化細胞(Keratinocyte)が貯蔵された角化細胞液容器140と、一端が前記角化細胞液容器140に連結され、他端が噴射装置160に連結される第1の移送管145と、一端が前記線維芽細胞容器150に連結され、他端が前記噴射装置160に連結される第2の移送管155と、上部に前記第1及び第2の移送管145、155が独立して連結され、下部に前記第1の移送管145に連結される第1のノズル、及び前記第2の移送管155に連結される第2のノズルが備えられた前記噴射装置160とを含むことを特徴とする逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置が提供される。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交するX軸、Y軸、及びZ軸上で、平板120を独立して移送可能な3Dプリンタ100と、
上部に固定配置され、逆分化幹細胞(iPSC)から分化された線維芽細胞(Fibroblast)が貯蔵された線維芽細胞液容器150と、
前記線維芽細胞液容器150に隣接して配置され、前記逆分化幹細胞(iPSC)から分化された角化細胞(Keratinocyte)が貯蔵された角化細胞液容器140と、
一端が前記角化細胞液容器140に連結され、他端が噴射装置160に連結される第1の移送管145と、
一端が前記線維芽細胞容器150に連結され、他端が前記噴射装置160に連結される第2の移送管155と、
上部に前記第1及び第2の移送管145、155が独立して連結され、下部に前記第1の移送管145に連結される第1のノズル、及び前記第2の移送管155に連結される第2のノズルが備えられた前記噴射装置160とを含むことを特徴とする逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置。
【請求項2】
前記逆分化幹細胞(iPSC)は、一人の供与者から由来することを特徴とする請求項1に記載の逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置。
【請求項3】
前記線維芽細胞は、DMEM(Dulbecco’s modified eagle medium)バッジに、FBS(fetal bovine serum)、インシュリン、EGF(epidermal growth factor)、BMP4(Bone Morphogenetic Protein 4)、及びNEAA(non essential amino acid)のうち、少なくとも1つを投入して分化させることを特徴とする請求項1に記載の逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置。
【請求項4】
前記DMEMバッジは、分化開始日から6日目まで、3:1組成のDMEM/F12バッジであり、
7日目から13日目では、1:1組成のDMEM/F12バッジであり、
14日目から21日目では、3:1組成のDMEM/F12バッジであることを特徴とする請求項3に記載の逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置。
【請求項5】
分化開始日から21日目まで、5%の前記FBS、
分化開始日から6日目まで、5μg/mlの前記インシュリンと、10ng/mlの前記EGF、
14日目から21日目まで、5μg/mlの前記インシュリンと、10ng/mlの前記EGF、
4日から6日目まで、25ng/mlの前記BMP4、及び
7日目から13日目まで、1%の前記NEAAがそれぞれ投入されることを特徴とする請求項3に記載の逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置。
【請求項6】
前記角化細胞は、DMEMバッジ又はdkSFM培養液に、FBS、インシュリン、EGF、BMP4、NEAA、レチノイン酸、及びCaCl
2のうち、少なくとも1つを投入して分化させることを特徴とする請求項1に記載の逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置。
【請求項7】
前記DMEMバッジは、分化開始日から7日目まで、3:1組成のDMEM/F12バッジであり、
前記dkSFM培養液は、8日目から21日目まで用いられることを特徴とする請求項6に記載の逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置。
【請求項8】
分化開始日から7日目まで、2%の前記FBS、
分化開始日から21日目まで、5μg/mlの前記インシュリン、
分化開始日から7日目まで、25ng/mlの前記EGF、
8日目から21日目まで、20ng/mlの前記EGF、
分化開始日から7日目まで、25ng/mlの前記BMP4、
8日目から15日目まで、20ng/mlの前記BMP4、
16日目から21日目まで、10ng/mlの前記BMP4、
分化開始日から15日目まで、1μg/mlの前記レチノイン酸、及び
18日目から21日目まで、1.2mMの前記CaCl
2がそれぞれ投入されることを特徴とする請求項6に記載の逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維芽細胞(Fibroblast)と角化細胞(Keratinocyte)を用いた人工皮膚に関し、より詳しくは、逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、幹細胞から線維芽細胞を培養するか、角化細胞(又は、角質細胞)を培養して、人工皮膚を作られるということが多数の学術論文を通じて知られている。このため、実際に初代培養細胞は、商業会社(米国ATCC)から購買も可能である。
【0003】
ところが、このような初代培養細胞は、増殖に限界があり、物品(LOT)別に変化が非常に大きい。例えば、一度購入した初代培養細胞は、増殖を通じて、6つの人工皮膚を作ることができるが、追加生産のためには、再度、初代培養細胞を購入しなければならなかった。しかし、各初代培養細胞毎の特性変化が大きいため、作られた人工皮膚の特性が一定でなかった。これは、いずれの供与者から初代培養細胞をもらったかによって、異なるためである。
【0004】
そこで、一定の特性を有する人工皮膚を大量生産することができる技術の研究開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、逆分化幹細胞から分化された線維芽細胞と角化細胞を用いて、人工皮膚の製造装置を提供することである。
【0006】
但し、本発明の目的は、以上で言及したことに限定されず、言及していない他の目的は、以下の記載から、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって、明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、直交するX軸、Y軸、及びZ軸上で、平板120を独立して移送可能な3Dプリンタ100と、上部に固定配置され、逆分化幹細胞(iPSC)から分化された線維芽細胞が貯蔵された線維芽細胞液容器150と、線維芽細胞液容器150に隣接して配置され、逆分化幹細胞(iPSC)から分化された角化細胞が貯蔵された角化細胞液容器140と、一端が角化細胞液容器140に連結され、他端が噴射装置160に連結される第1の移送管145と、一端が線維芽細胞容器150に連結され、他端が噴射装置160に連結される第2の移送管155と、上部に前記第1及び第2の移送管145、155が独立して連結され、下部に前記第1の移送管145と連結される第1のノズル、及び前記第2の移送管155と連結される第2のノズルが備えられた前記噴射装置160とを含むことを特徴とする逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置が提供される。
【0008】
前記供与者は、一人である。
【0009】
また、噴射ステップ(S160)において、線維芽細胞と角化細胞は、パターン形状に噴射される。
【0010】
前記線維芽細胞の分化ステップ(S140)は、DMEM(Dulbecco’s modified eagle medium)バッジに、FBS(fetal bovine serum)、インシュリン、EGF(epidermal growth factor)、BMP4(Bone Morphogenetic Protein 4)、及びNEAA(non essential amino acid)のうち、少なくとも1つを投入して分化させる。
【0011】
前記DMEMバッジは、分化開始日から6日目まで、3:1組成のDMEM/F12バッジであり、7日目から13日目では、1:1組成のDMEM/F12バッジであり、14日目から21日目では、3:1組成のDMEM/F12バッジである。
【0012】
分化開始日から21日目まで、5%の前記FBS、分化開始日から6日目まで、5μg/mlの前記インシュリンと10ng/mlの前記EGF、14日目から21日目まで、5μg/mlの前記インシュリンと10ng/mlの前記EGF、4日から6日目まで、25ng/mlの前記BMP4、及び7日目から13日目まで、1%の前記NEAAがそれぞれ投入される。
【0013】
また、角化細胞の分化段階(S120)は、DMEMバッジ又はdkSFM培養液に、FBS、インシュリン、EGF、BMP4、NEAA、レチノイン酸、及びCaCl2のうち、少なくとも1つを投入して分化させる。
【0014】
前記DMEMバッジは、分化開始日から7日目まで、3:1組成のDMEM/F12バッジであり、前記dkSFM培養液は、8日目から21日目まで用いられる。
【0015】
また、分化開始日から7日目まで、2%のFBS、分化開始日から21日目まで、5μg/mlの前記インシュリン、分化開始日から7日目まで、25ng/mlのEGF、8日目から21日目まで、20ng/mlのEGF、分化開始日から7日目まで、25ng/mlのBMP4、8日目から15日目まで、20ng/mlのBMP4、16日目から21日目まで、10ng/mlのBMP4、分化開始日から15日目まで、1μg/mlの前記レチノイン酸、及び18日目から21日目まで、1.2mMのCaCl2がそれぞれ投入される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、1人の供与者から供与された逆分化幹細胞(iPSC)を用いて、皮膚細胞を作り出すので、増殖に限界がなく、作られた細胞間の特性差が少ないため、品質が一定である。
【0017】
但し、本発明により得られる効果は、以上で言及した効果に限定されず、言及していない他の効果は、以下の記載から、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって明確に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
この明細書における添付の図面は、本発明の好適な実施例を例示しており、後述する発明の詳細な説明と共に本発明の技術思想を更に理解させる役割を果たすので、本発明は、このような図面に記載された事項に限定して解析されてはいけない。
【
図1】
図1は、BJ-iPSCのAP染色(左)と、全分化能マーカー免疫蛍光染色(右)の写真である。
【
図2】
図2は、本発明に用いられる線維芽細胞の分化過程を示すフローチャートである。
【
図3a】
図3aは、ATCCで常用中のヒト皮膚線維芽細胞(hDF)の写真であり、
図3bは、本発明により逆分化幹細胞から分化された線維芽細胞の写真である。
【
図3b】
図3aは、ATCCで常用中のヒト皮膚線維芽細胞(hDF)の写真であり、
図3bは、本発明により逆分化幹細胞から分化された線維芽細胞の写真である。
【
図4】
図4は、本発明により分化された線維芽細胞のビメンチンマーカーを通じて、タンパク質発現量を示すグラフである。
【
図5a】
図5a~
図5cは、線維芽細胞特異マーカー及び核を様々な光学染色薬で染色した写真であり、
図5dは、
図5a~
図5cを合わせた(Merged)写真である。
【
図5b】
図5a~
図5cは、線維芽細胞特異マーカー及び核を様々な光学染色薬で染色した写真であり、
図5dは、
図5a~
図5cを合わせた(Merged)写真である。
【
図5c】
図5a~
図5cは、線維芽細胞特異マーカー及び核を様々な光学染色薬で染色した写真であり、
図5dは、
図5a~
図5cを合わせた(Merged)写真である。
【
図5d】
図5a~
図5cは、線維芽細胞特異マーカー及び核を様々な光学染色薬で染色した写真であり、
図5dは、
図5a~
図5cを合わせた(Merged)写真である。
【
図6a】
図6a~
図6eは、線維芽細胞及び全分化能幹細胞特異マーカーに対するRNA発現量を示すグラフである。
【
図6b】
図6a~
図6eは、線維芽細胞及び全分化能幹細胞特異マーカーに対するRNA発現量を示すグラフである。
【
図6c】
図6a~
図6eは、線維芽細胞及び全分化能幹細胞特異マーカーに対するRNA発現量を示すグラフである。
【
図6d】
図6a~
図6eは、線維芽細胞及び全分化能幹細胞特異マーカーに対するRNA発現量を示すグラフである。
【
図6e】
図6a~
図6eは、線維芽細胞及び全分化能幹細胞特異マーカーに対するRNA発現量を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本発明に用いられる角化細胞の分化過程を示すフローチャートである。
【
図8a】
図8aは、ATCCで常用中のヒト角化細胞の写真であり、
図8bは、本発明により逆分化幹細胞から分化された角化細胞の写真である。
【
図8b】
図8aは、ATCCで常用中のヒト角化細胞の写真であり、
図8bは、本発明により逆分化幹細胞から分化された角化細胞の写真である。
【
図9】
図9は、本発明により分化された角化細胞のKRT14マーカーを通じて、タンパク質発現量を示すグラフである。
【
図11a】
図11a~
図11dは、角化細胞及び全分化能幹細胞の特異マーカーに対するRNA発現量を示すグラフである。
【
図11b】
図11a~
図11dは、角化細胞及び全分化能幹細胞の特異マーカーに対するRNA発現量を示すグラフである。
【
図11c】
図11a~
図11dは、角化細胞及び全分化能幹細胞の特異マーカーに対するRNA発現量を示すグラフである。
【
図11d】
図11a~
図11dは、角化細胞及び全分化能幹細胞の特異マーカーに対するRNA発現量を示すグラフである。
【
図12】
図12は、本発明による3Dプリンタの概略的な斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明による逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、添付の図面を参考として、本発明の実施例について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明に関する説明は、構造的乃至機能的な説明のための実施例に過ぎないので、本発明の権利範囲は、本文に説明された実施例により制限されることと解析されてはいけない。すなわち、実施例は、様々な変更が可能であり、様々な形態を有することができるので、本発明の権利範囲は、技術的思想を実現することができる均等物を含むことと理解されなければならない。また、本発明で提示された目的又は効果は、特定の実施例がこれを全て含むべきであるか、このような効果のみを含むべきであるという意味ではないので、本発明の権利範囲は、これにより制限されることと理解されてはいけない。
【0020】
本発明における用語の意味は、以下のように理解される。
【0021】
「第1」、「第2」などの用語は、ある構成要素を他の構成要素から区別するためのものであり、これらの用語によって権利範囲が限定されてはいけない。例えば、第1の構成要素は、第2の構成要素と名付けられ、同様に、第2の構成要素も、第1の構成要素と名付けられることができる。ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いることは、該当他の構成要素に直接して連結されることもできるが、中間に他の構成要素が存在することもあり得ると理解されるべきである。これに対して、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いることは、中間に他の構成要素が存在しないことと理解されるべきである。一方、構成要素間の関係を説明する他の表現、すなわち、「~間に」と「すぐ~間に」、又は「~に隣接する」と「~に直接隣接する」なども同様に解析されるべきである。
【0022】
単数の表現は、文脈上、明らかに異なることを意味しない限り、複数の表現を含む。また、「含む」又は「有する」等の用語は、説示された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、パーツ、又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとすることであり、1つ又はその以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、パーツ、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を排除しないことと理解すべきである。
【0023】
ここで用いられる全ての用語は、異なった定義しない限り、本発明が属する分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されることと同一の意味を有する。一般に使用される辞書に定義されている用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致することと解析されるべきであり、本発明において明らかに定義されない限り、理想的又は過度に形式的な意味を有するものと解析できない。
【0024】
図13は、本発明による逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図13に示しているように、まず、「1」である供与者の逆分化幹細胞を準備する(S100)。
【0025】
図1は、BJ-iPSCのAP染色(左)と、全分化能マーカー免疫蛍光染色(右)の写真である。
図1に示しているように、BJ線維芽細胞由来のヒト誘導万能幹細胞(BJ-iPSC)を、エピソーマルベクター(Episomal vector)(pCXLE-Hoct3/4-shp53-F、pCXLE-hSK、pCXLE-hUL; Addgene製品)、及び4D-ヌクレオフェクター(Nucleofector)技術を活用して、準備する。
【0026】
リプログラミングされたBJ-iPSC細胞の全分化能(Pluripotency)を検証するために、アルカリフォスターゼ(Alkaline phosphatase)染色を行い、
図1でのように、全てのiPSC colonyで染色されることを確認した。また、全分化能マーカーであるOCT4、Nanog、SSEA4抗体を用いて、免疫蛍光染色を行い、マーカーが発現されることを確認した。
【0027】
次の逆分化幹細胞(iPSC)から線維芽細胞(Fibroblast)を分化するステップ(S140)と、逆分化幹細胞(iPSC)から角化細胞(Keratinocyte)を分化するステップ(S120)とが、同時に独立して又は順次行われる。
【0028】
線維芽細胞の分化
以下、添付の図面を参照して、線維芽細胞の分化(S140)を詳しく説明する。
図2は、本発明で用いられる線維芽細胞の分化過程を示すフローチャートである。
図2に示しているように、まず、分化開始3日前(D-3)から、分化開始1日前(D-1)の間に、mTeSR
TM-1のバッジを準備する。mTeSR
TM-1のバッジは、高度に専門化された血清-無含有完全細胞培養バッジである。
【0029】
ついで、分化開始日(D0)に、DMEM(Dulbecco’s modified eagle medium)バッジは、分化開始日から6日目まで、3:1組成のDMEM/F12バッジであり、7日目~13日目では、1:1組成のDMEM/F12バッジであり、14日目~21日目では、3:1組成のDMEM/F12バッジである。具体的に、60mmの皿に、55個の杯状体(hiPSCs-EB)を播種する。
【0030】
また、分化開始日(D0)から21日目(D21)まで、5%のFBS(fetal bovine serum)、分化開始日(D0)から6日目(D6)まで、5μg/mlのインシュリンと10ng/mlのEGF(epidermal growth factor)、14日目(D14)(継代培養)から21日目(D21)まで、5μg/mlのインシュリンと10ng/mlのEGF、4日目(D4)から6日目(D6)まで、25ng/mlのBMP4(Bone Morphogenetic Protein 4)、及び7日目(D7)から13日目(D13)まで、1%のNEAA(non essential amino acid)がそれぞれ投入される。そして、18日目(D18)に、継代培養をする。
【0031】
ここで、ECM(Extracellular matrix)では、分化開始3日前(D-3)から12日目(D12)まで、hESC-qualified Matrigel(1:100)でコーティングされた皿を用い、13日目(D13)から21日目(D21)の間には、Type Iコラーゲンでコーティングされた皿を用いる。このような過程により、21日目(D21)に、線維芽細胞の分化が完成する。
【0032】
図3aは、ATCCで常用中のヒト皮膚線維芽細胞(hDF)の写真であり、
図3bは、本発明により逆分化幹細胞から分化された線維芽細胞の写真である。
図3aと
図3bを対比すると、本発明により分化された線維芽細胞(
図3b)は、細胞質が長く伸び、且つ、
図3aに一致した形状ではないが、類似した形状(代表形状である間葉(mesenchymal)形状)を備えていることを確認できる。
【0033】
また、
図4は、本発明により分化された線維芽細胞のビメンチン(VIMENTIN)マーカーを通じて、タンパク質発現量を示すグラフである。
図4から、100個の細胞を分化すると、97.94個の細胞でビメンチンマーカーがよく発現していることを確認できる。たとえ、約2%の未線維芽細胞状態が残っているが、全体としては、高純度の線維芽細胞によく分化していることを示す。
【0034】
分化された線維芽細胞において、線維芽細胞マーカーが発現するか、また、特異的mRNAが発現するかを確認するために、蛍光染色及びリアルタイム重合酵素連鎖反応(qPCR、quantitative real-time polymerase chain reaction)を行った。
図5a乃至
図5cは、分化された線維芽細胞(iPSC-F)の特異マーカー及び核を、様々な光学染色薬で染色した写真であり、
図5dは、
図5a~
図5cを合わせた写真である。
図5aは、FITC(Fluorescein isothiocyanate)光学染色薬で染色したビメンチンマーカーの写真であり、
図5bは、TRITC(Tramethylrhodamine)光学染色薬で染色したフィブロネクチン(Fibronectin)マーカーの写真であり、
図5cは、DAPI(4’、6-diamidino-2-phenylindole)光学染色薬で核を染色した写真である。
図5dの写真から、分化された細胞が線維芽細胞であることを確認できる。
【0035】
図6a~
図6eは、線維芽細胞の特異マーカーに対するRNA発現量を示すグラフである。
図6aは、COL1A1マーカーに対する発現量を示すグラフであって、未分化状態である逆分化幹細胞(iPSC)である場合、発現量が無く、実際供与者の初代培養細胞である線維芽細胞(Fibro-)、及び本発明により逆分化幹細胞から線維芽細胞に分化を誘導した細胞(iPSC-F)では、マーカーがそれぞれ、100倍及び80倍に増幅して、高い遺伝子発現量を示している。
【0036】
図6bは、COL3A1マーカーに対する発現量を示すグラフである。
図6bにおいて、未分化状態である逆分化幹細胞(iPSC)であるとき、発現量が無く、実際供与者の初代培養細胞である線維芽細胞(Fibro-)、及び本発明により逆分化幹細胞から線維芽細胞に分化を誘導した細胞(iPSC-F)では、マーカーがそれぞれ、70、000倍及び50、000倍に増幅して、高い遺伝子発現量を示す。
【0037】
図6cは、COL1A2マーカーに対する発現量を示すグラフである。
図6cでは、未分化状態である逆分化幹細胞(iPSC)であるとき、発現量が無く、実際供与者の初代培養細胞である線維芽細胞(Fibro-)、及び本発明により逆分化幹細胞から線維芽細胞に分化を誘導した細胞(iPSC-F)では、マーカーがそれぞれ、50倍及び30倍に増幅して、高い遺伝子発現量を示している。
【0038】
図6dは、ビメンチンマーカーに対する発現量を示すグラフである。
図6dでは、未分化状態である逆分化幹細胞(iPSC)であるとき、発現量が殆ど無く(約1)、実際供与者の初代培養細胞である線維芽細胞(Fibro-)、及び本発明により逆分化幹細胞から線維芽細胞に分化を誘導した細胞(iPSC-F)では、マーカーがそれぞれ、33倍及び37倍に増幅して、高い遺伝子発現量を示している。
【0039】
図6eは、未分化状態である逆分化幹細胞からのみ出るSOX2マーカーに対するグラフである。
図6eに示しているように、未分化状態である逆分化幹細胞(iPSC)であるとき、1.0の発現量を示し、実際供与者の初代培養細胞である線維芽細胞(Fibro-)、及び本発明により逆分化幹細胞から線維芽細胞に分化を誘導した細胞(iPSC-F)では、発現量が無かった。これらの
図6a~
図6eから、逆分化幹細胞から線維芽細胞に分化が確実に行われたことを確認できる。
【0040】
角化細胞の分化
以下、添付の図面を参照して、角化細胞の分化(S120)について詳しく説明する。
図7は、本発明で用いられる角化細胞の分化過程を示すフローチャートである。
図7に示しているように、まず、分化開始3日前(D-3)から分化開始1日前(D-1)の間に、mTeSR
TM-1のバッジを準備する。
【0041】
DMEMバッジは、分化開始日(D0)から日目(D7)まで、3:1組成のDMEM/F12バッジであり、また、dkSFM培養液は、8日目(D8)から21日目(D21)まで用いられる。
【0042】
また、分化開始日(D0)から7日目(D7)まで、2%のFBS、分化開始日(D0)から21日目(D21)まで、5μg/mlのインシュリン、分化開始日(D0)から7日目(D7)まで、25ng/mlのEGF、8日目(D8)から21日目まで、20ng/mlのEGF、分化開始日(D0)から7日目(D7)まで、25ng/mlのBMP4、8日目(D8)から15日目(D15)まで、20ng/mlのBMP4、16日目(D16)から21日目(D21)まで、10ng/mlのBMP4、分化開始日(D0)から15日目(D15)まで、1μg/mlのレチノイン酸、及び18日目(D18)から21日目(D21)まで、1.2mmのCaCl2がそれぞれ投入される。
【0043】
ここで、ECMでは、分化開始3日前(D-3)から21日目(D21)まで、hESC-qualified Matrigel(1:100)でコーティングされた皿を用いる。このような過程により、21日目(D21)に、角化細胞の分化が完成する。
【0044】
図8aは、ATCCで常用中のヒト角化細胞の写真であり、
図8bは、本発明により逆分化幹細胞から分化された角化細胞の写真である。
図8a及び
図8bに示しているように、本発明により分化された角化細胞(
図8b)は、細胞質が丸い多角形状に分化し、且つ、
図8aに類似した形状を有していることが確認できる。
【0045】
図9は、本発明により分化された角化細胞のKRT14マーカーを通じて、タンパク質発現量を示すグラフである。
図9に示しているように、100個の細胞を分化したとき、86.17個の細胞で、KRT14マーカーがよく発現していることが確認できる。たとえ、一部未角化細胞が残っているが、全体としては、角化細胞によく分化したことを示す。
【0046】
図10a~
図10bは、各細胞の特異マーカー及び核を、様々な光学染色薬で染色した写真であり、
図10cは、
図10a乃至
図10bを合わせた写真である。
図10aは、TRITC光学染色薬で染色したKRT14マーカーの写真であり、
図10bは、DAPI光学染色薬で核を染色した写真である。
図10cの写真から、分化した細胞が角化細胞細胞であることが確認できる。
【0047】
図11a乃至
図11dは、角化細胞の特異マーカーに対する発現量を示すグラフである。
【0048】
図11aは、KRT14マーカーに対する発現量を示すグラフであって、未分化状態である逆分化幹細胞(iPSC)であるとき、発現量が無く、実際供与者の初代培養細胞である角化細胞(Kera-)、及び本発明により逆分化幹細胞から角化細胞に分化を誘導した細胞(iPSC-K)では、マーカーがそれぞれ、約4、500倍及び1、500倍に増幅して、高い遺伝子発現量を示している。
【0049】
図11bは、NP63マーカーに対する発現量を示すグラフであって、未分化状態である逆分化幹細胞(iPSC)であるとき、発現量が無く、実際供与者の初代培養細胞である角化細胞(Kera-)、及び本発明により逆分化幹細胞から角化細胞に分化を誘導した細胞(iPSC-K)では、マーカーがそれぞれ、約5、500倍及び1、000倍に増幅して、高い遺伝子発現量を示している。
【0050】
図11cは、インボルクリン(involucrin)マーカーに対する発現量を示すグラフであって、未分化状態である逆分化幹細胞(iPSC)であるとき、発現量が極めて一部現れ(約1)、実際供与者の初代培養細胞である角化細胞(Kera-)、及び本発明により逆分化幹細胞から角化細胞に分化を誘導した細胞(iPSC-K)では、マーカーがそれぞれ、約50倍及び30倍に増幅して、高い遺伝子発現量を示している。
【0051】
図11dは、未分化状態である逆分化幹細胞でのみ出るSOX2マーカーに対するグラフである。
図11dに示しているように、未分化状態である逆分化幹細胞(iPSC)であるとき、1.0の発現量を示し、実際供与者の初代培養細胞である角化細胞(Kera-)、及び本発明により逆分化幹細胞から角化細胞に分化を誘導した細胞(iPSC-K)では、マーカーの発現量が無かった。これらの
図11a乃至
図11dから、逆分化幹細から角化細胞に分化が確実に行われたことが確認できる。
【0052】
人工皮膚の製造
以下、添付の図面を参照して、人工皮膚の製造過程を詳しく説明する。3Dプリンタで分化された角化細胞と線維芽細胞を、特定のパターンに噴射する(S160)。
図12は、本発明による3Dプリンタの概略的な斜視図である。
図12に示しているように、移送ステージ181は、Z軸駆動部185により、Z軸方向(上下方向)に往復移送可能である。
【0053】
X軸駆動部182は、移送ステージ181上に設置され、Y軸駆動部184と載置テーブル110をX軸方向に往復移送させる。Y軸駆動部184は、X軸駆動部182上に設置され、載置テーブル110をY軸方向に往復移送させる。このため、X、Y、Z軸駆動部182、184、185には、サーボモータと駆動回路が内蔵される。
【0054】
平板120は、載置テーブル110上に固定され、角化細胞液と線維芽細胞液が蒸着される。
【0055】
角化細胞液容器140には、本発明により分化された角化細胞が液体と混入しており、線維芽細胞容器150には、本発明により分化された線維芽細胞が液体と混入している。
【0056】
第1の移送管145は、角化細胞液容器140と噴射装置160の間に連結され、ポンプ(図示せず)の吸入力により、角化細胞液を噴射装置160に移送する。第2の移送管155は、線維芽細胞液容器150と噴射装置160の間に連結され、ポンプ(図示せず)の吸入力により、線維芽細胞液を噴射装置160に移送する。
【0057】
噴射装置160の下端には、第1、2のノズル125が独立して位置し、平板120に向けて断続的に液体を噴射する。
【0058】
人工皮膚を具現するために、角化細胞液と線維芽細胞液は選別的に噴射されて、複数の層を形成する。また、3Dプリンタ100は、予めプログラムされた特定のパターン(しわ状、波状、指紋など)で、角化細胞液と線維芽細胞液を噴射することができる。
【0059】
噴射が完了した平板120は、共培養されることで、人工皮膚が完成する(S180)。
【0060】
本発明のX、Y、Z軸駆動部182、184、185は、X、Y、Z軸直交ロボットによっても具現される。また、本発明は、人工皮膚の他に、角膜、腫瘍など、各種の人体組織の模写、人工臓器、人工組織などの形成、培養にも使用することができる。
【0061】
前述したように、本発明の好適な実施例に対する詳細な説明は、当業者が本発明を具現し実施できるように提供されている。前記では、本発明の好適な実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者は、本発明の領域から逸脱しない範囲内で、本発明を様々に修正及び変更できることを理解するだろう。例えば、当業者は、上述した実施例に記載された各構成を互いに組み合わせる方式に利用することができる。そこで、本発明は、ここに現れた実施形態に制限しようとすることではなく、ここで開示された原理及び新規の特徴と一致する最広の範囲を付与しようとすることである。
【0062】
本発明は、本発明の精神及び必須の特徴を逸脱しない範囲で、他の特定の形態に具体化することができる。そこで、前記の詳細な説明は、全ての面で制限的に解析されてはいけず、例示的なことと考えられるべきである。本発明の範囲は、添付の請求項の合理的解析により決められ、本発明の等価範囲内での全ての変更は、本発明の範囲に含まれる。本発明は、ここに現れた実施形態に制限しようとすることではなく、ここで開示された原理及び新規の特徴と一致する最広の範囲を付与しようとすることである。また、特許請求の範囲で明示的な引用関係がない請求項を組み合わせて、実施例を構成するか、出願後の補正により、新たな請求項として含むことができる。
【産業上利用可能性】
【0063】
本発明は、線維芽細胞と角化細胞を用いた人工皮膚に関し、より詳しくは、逆分化幹細胞から分化された細胞を用いた人工皮膚の製造装置に関する。
【国際調査報告】