IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キナクシス インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-529800階層予測のためのシステム、方法及び装置
<>
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図1
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図2
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図3
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図4
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図5
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図6
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図7
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図8
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図9
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図10
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図11
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図12
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図13
  • 特表-階層予測のためのシステム、方法及び装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】階層予測のためのシステム、方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240806BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507870
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 CA2021051049
(87)【国際公開番号】W WO2023004488
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】521084851
【氏名又は名称】キナクシス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハジ ソレイマニ、バールーズ
【テーマコード(参考)】
5L010
【Fターム(参考)】
5L010AA04
(57)【要約】
前処理モジュールと予測調停モジュールとを備える、階層内で予測を調停するためのシステム及び方法。前処理モジュールは、階層の構造を再構成し、加算行列S中の階層のノード間の関係をキャプチャする。予測調停行列は、最小2乗プロシージャを使用して全予測誤差を最適化するために、Sと、ノード間の重み付け方式を反映する重み行列Wとベース予測とを使用する。調停された予測は、一致誤差が0である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
階層における予測調停のためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、
前処理モジュールによって、前記階層に関するデータを受信するステップと、
前記前処理モジュールによって、前記データと、前記階層の構造に関する加算行列とに基づいて前記階層を生成するステップと、
予測調停モジュールによって、前記階層のベース予測と前記加算行列と重み行列とを受信するステップであって、前記重み行列が前記階層の各ノードのための重み付け方式を反映し、前記重み行列が前記前処理モジュール又は前記予測調停モジュールのいずれかによって生成される、前記階層のベース予測と前記加算行列と重み行列とを受信するステップと、
前記予測調停モジュールによって、前記階層の下位レベルの各ノードに対する制約を前提として、前記ベース予測を前記階層の前記下位レベルに射影するための最小2乗最適化技法に基づいて、調停された予測を生成するステップと
を含む、階層における予測調停のためのコンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記調停された予測が非負最小2乗最適化技法に基づく、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記調停された予測は、前記下位レベル予測の各ノードがそれぞれの範囲内で結合される反復最適化に基づく、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記重み行列の各エントリが前記階層の1つ又は複数のメトリクスに関する、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記重み行列が対角である、請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記重み行列の各エントリが前記階層の各ノードの予測誤差に関する、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記前処理モジュールが、
i)0値、又はしきい値よりも小さい値を有する、前記階層の1つ又は複数のノードを削除することと、
ii)兄弟情報に基づいて前記階層の1つ又は複数の消失した記録を充填することと、
iii)前記階層のすべてのレベルにおいて回転特徴を抽出することと
のうちの少なくとも1つを実行する、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
計算装置であって、前記計算装置は、
プロセッサと、
命令を記憶するメモリと
を備え、前記命令は、前記プロセッサによって実行されたとき、
前処理モジュールによって、階層に関するデータを受信するステップと、
前記前処理モジュールによって、前記データと前記階層の構造に関する加算行列とに基づいて前記階層を生成するステップと、
予測調停モジュールによって、前記階層のベース予測と前記加算行列と重み行列とを受信するステップであって、前記重み行列が前記階層の各ノードのための重み付け方式を反映し、前記重み行列が前記前処理モジュール又は前記予測調停モジュールのいずれかによって生成される、前記階層のベース予測と前記加算行列と重み行列とを受信するステップと、
前記予測調停モジュールによって、前記階層の下位レベルの各ノードに対する制約を前提として、前記ベース予測を前記階層の前記下位レベルに射影するための最小2乗最適化技法に基づいて、調停された予測を生成するステップと
に前記装置を設定する、計算装置。
【請求項9】
前記調停された予測が非負最小2乗最適化技法に基づく、請求項8に記載の計算装置。
【請求項10】
前記調停された予測は、前記下位レベル予測の各ノードがそれぞれの範囲内で結合される反復最適化に基づく、請求項8に記載の計算装置。
【請求項11】
前記重み行列の各エントリが前記階層の1つ又は複数のメトリクスに関する、請求項8に記載の計算装置。
【請求項12】
前記重み行列が対角である、請求項11に記載の計算装置。
【請求項13】
前記重み行列の各エントリが前記階層の各ノードの予測誤差に関する、請求項8に記載の計算装置。
【請求項14】
前記前処理モジュールが、
i)0値、又はしきい値よりも小さい値を有する、前記階層の1つ又は複数のノードを削除することと、
ii)兄弟情報に基づいて前記階層の1つ又は複数の消失した記録を充填することと、
iii)前記階層のすべてのレベルにおいて回転特徴を抽出することと
のうちの少なくとも1つを実行する、請求項8に記載の計算装置。
【請求項15】
非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体は命令を含み、前記命令は、コンピュータによって実行されたとき、前記コンピュータに、
前処理モジュールによって、階層に関するデータを受信することと、
前記前処理モジュールによって、前記データと、前記階層の構造に関する加算行列とに基づいて前記階層を生成することと、
予測調停モジュールによって、前記階層のベース予測と前記加算行列と重み行列とを受信することであって、前記重み行列が前記階層の各ノードのための重み付け方式を反映し、前記重み行列が前記前処理モジュール又は前記予測調停モジュールのいずれかによって生成される、前記階層のベース予測と前記加算行列と重み行列とを受信することと、
前記予測調停モジュールによって、前記階層の下位レベルの各ノードに対する制約を前提として、前記ベース予測を前記階層の前記下位レベルに射影するための最小2乗最適化技法に基づいて、調停された予測を生成することと
を行わせる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
前記調停された予測が非負最小2乗最適化技法に基づく、請求項15に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記調停された予測は、前記下位レベル予測の各ノードがそれぞれの範囲内で結合される反復最適化に基づく、請求項15に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記重み行列の各エントリが前記階層の1つ又は複数のメトリクスに関する、請求項15に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記重み行列が対角である、請求項18に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記重み行列の各エントリが前記階層の各ノードの予測誤差に関する、請求項15に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複雑なサプライ・チェーンをもつ企業は、将来の数か月にわたる各製品に対するそれらの需要を予想することに極めて重要な関心をもっている。
【背景技術】
【0002】
複雑なサプライ・チェーンをもつ企業は、将来の数か月にわたる各製品に対するそれらの需要を予想することに極めて重要な関心をもっている。需要の正確な推定値を有していることは、企業がそれらの製造を前もって計画し、過剰在庫及び過少在庫を回避するのに足りるだけの製品を製造する役に立つ。需要のより良い予想及び予測に達するために使用され、活用され得るサプライ・チェーン・データ中に特定の階層がある。たとえば、製品は異なる顧客によって注文され、製品と顧客との組合せごとの需要は、別個に予測され、製品の総需要に集約され得る。又は代替的に、製品の総需要は、集約された履歴需要から直接予測され得る。いかなる場合も、異なる顧客からの製品の需要の合計は製品の総需要に一致するべきであるという集約制約がある。しかしながら、階層の異なるレベルにおける将来の需要が別個に予想される場合、予測は正しく合計されない。この理由で、たいていの企業は、(たとえば、各製品と顧客の組合せに対する)それらの需要を階層の最も分解されたレベルにおいてのみ予測する。
【0003】
階層は、多くの異なる方法で定義され得、多くのレベルを有することができる。たとえば、階層は地理的領域に基づき得、したがって、製品の総需要は異なる国からの需要の合計に等しく、所与の国の需要はその国の異なる地域/地区からの需要の合計に等しくなる。階層が定義され得る別の方法は製品ファミリーに基づく。たとえば、あるエレクトロニクス企業におけるテレビジョンに対する総需要はテレビジョンの異なるサイズ又はモデルに対する需要の合計に等しい。階層はまた、時間次元に基づいて定義され得る。たとえば、週単位の需要の合計は月単位又は四半期単位の需要に一致するべきである。
【0004】
問題の複雑な性質により、たいていの企業は階層のただ1つのレベルにおけるそれらの需要を予想する。それは、通常、ある企業が、最も正確であるか又はその企業のために最も理にかなっていると考えるレベルである。とはいえ、各個々の予測は関連する誤差を有する。階層内の個々の予測を合計することは全体的な予測における累積誤差につながり、それはかなり大きくなり得る。
【0005】
時系列予測の分野において、Hyndmanは、トレース最小化による階層型のグループ化された時系列のための最適予測調停を含む、時間階層において予測を最適に調停することについて考察した。しかしながら、この研究はサプライ・チェーンの予測の管理に容易に変換されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、全体的な予測誤差を最小にすることによって全体的な予測アクティビティを改善する必要がある。さらに、たとえば、サプライ・チェーンなど、非時系列階層のための予測調停を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
階層の異なるレベルにおける予測を考慮に入れ、階層の全体的な予測誤差を低減することによって全体的な予測を改善することができるシステム及び方法を本明細書で開示する。いくつかの実施例では、異なるレベルの一貫性のない予測を入力として取り、予測が正しく合計されるように、予測を完全に一貫したものになるように調停するために、階層内の関係についての情報が使用される。さらに、階層全体にわたる予測の全体的な精度が改善される。
【0008】
一態様では、階層における予測調停のためのコンピュータ実装方法であって、本方法は、前処理モジュールによって、階層に関するデータを受信するステップと、前処理モジュールによって、データと、階層の構造に関する加算行列(summation matrix)とに基づいて階層を生成するステップと、予測調停モジュールによって、階層のベース予測と加算行列と重み行列(weight matrix)とを受信するステップであって、重み行列が階層の各ノードのための重み付け方式を反映し、重み行列が前処理モジュール又は予測調停モジュールのいずれかによって生成される、階層のベース予測と加算行列と重み行列とを受信するステップと、予測調停モジュールによって、階層の下位レベルの各ノードに対する制約を前提として、ベース予測を階層の下位レベルに射影するための最小2乗最適化(least squares optimization)技法に基づいて、調停された予測を生成するステップとを含む、コンピュータ実装方法が提供される。
【0009】
いくつかの実施例では、調停された予測は非負最小2乗最適化技法に基づく。いくつかの実施例では、調停された予測は、下位レベル予測の各ノードがそれぞれの範囲内で結合される反復最適化(iterative optimization)に基づく。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の1つ又は複数のメトリクスに関し、いくつかの事例では、重み行列は対角であり得る。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の各ノードの予測誤差に関する。いくつかの実施例では、前処理モジュールは、i)0値、又はしきい値よりも小さい値を有する、階層の1つ又は複数のノードを削除することと、ii)兄弟(sibling)情報に基づいて階層の1つ又は複数の消失した記録を充填することと、iii)階層のすべてのレベルにおいて回転特徴を抽出することとのうちの少なくとも1つを実行する。
【0010】
別の態様では、階層における予測調停のための計算装置であって、本計算装置は、プロセッサと、命令を記憶するメモリとを備え、命令は、プロセッサによって実行されたとき、前処理モジュールによって、階層に関するデータを受信するステップと、前処理モジュールによって、データと、階層の構造に関する加算行列とに基づいて階層を生成するステップと、予測調停モジュールによって、階層のベース予測と加算行列と重み行列とを受信するステップであって、重み行列が階層の各ノードのための重み付け方式を反映し、重み行列が前処理モジュール又は予測調停モジュールのいずれかによって生成される、階層のベース予測と加算行列と重み行列とを受信するステップと、予測調停モジュールによって、階層の下位レベルの各ノードに対する制約を前提として、ベース予測を階層の下位レベルに射影するための最小2乗最適化技法に基づいて調停された予測を生成するステップとに装置を設定する、計算装置が提供される。
【0011】
いくつかの実施例では、調停された予測は非負最小2乗最適化技法に基づく。いくつかの実施例では、調停された予測は、下位レベル予測の各ノードがそれぞれの範囲内で結合される反復最適化に基づく。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の1つ又は複数のメトリクスに関し、いくつかの事例では、重み行列は対角であり得る。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の各ノードの予測誤差に関する。いくつかの実施例では、前処理モジュールは、i)0値、又はしきい値よりも小さい値を有する、階層の1つ又は複数のノードを削除することと、ii)兄弟情報に基づいて階層の1つ又は複数の消失した記録を充填することと、iii)階層のすべてのレベルにおいて回転特徴を抽出することとのうちの少なくとも1つを実行する。
【0012】
別の態様では、階層における予測調停のための非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、本コンピュータ可読記憶媒体は命令を含み、命令は、コンピュータによって実行されたとき、コンピュータに、前処理モジュールによって、階層に関するデータを受信することと、前処理モジュールによって、データと、階層の構造に関する加算行列とに基づいて階層を生成することと、予測調停モジュールによって、階層のベース予測と加算行列と重み行列とを受信することであって、重み行列が階層の各ノードのための重み付け方式を反映し、重み行列が前処理モジュール又は予測調停モジュールのいずれかによって生成される、階層のベース予測と加算行列と重み行列とを受信することと、予測調停モジュールによって、階層の下位レベルの各ノードに対する制約を前提として、ベース予測を階層の下位レベルに射影するための最小2乗最適化技法に基づいて調停された予測を生成することとを行わせる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0013】
いくつかの実施例では、調停された予測は非負最小2乗最適化技法に基づく。いくつかの実施例では、調停された予測は、下位レベル予測の各ノードがそれぞれの範囲内で結合される反復最適化に基づく。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の1つ又は複数のメトリクスに関し、いくつかの事例では、重み行列は対角であり得る。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の各ノードの予測誤差に関する。いくつかの実施例では、前処理モジュールは、i)0値、又はしきい値よりも小さい値を有する、階層の1つ又は複数のノードを削除することと、ii)兄弟情報に基づいて階層の1つ又は複数の消失した記録を充填することと、iii)階層のすべてのレベルにおいて回転特徴を抽出することとのうちの少なくとも1つを実行する。
【0014】
別の態様では、階層における予測誤差を低減するためのコンピュータ実装方法であって、本方法は、前処理モジュールによって、階層に関するデータを受信するステップと、前処理モジュールによって、データと、階層の構造に関する加算行列とに基づいて階層を生成するステップと、予測調停モジュールによって、階層のベース予測と加算行列と重み行列とを受信するステップであって、重み行列が階層の各ノードのための重み付け方式を反映し、重み行列が前処理モジュール又は予測調停モジュールのいずれかによって生成される、階層のベース予測と加算行列と重み行列とを受信するステップと、予測調停モジュールによって、階層の下位レベルの各ノードに対する制約を前提として、ベース予測を階層の下位レベルに射影するための最小2乗最適化技法に基づいて、調停された予測を生成するステップとを含む、コンピュータ実装方法が提供される。
【0015】
いくつかの実施例では、調停された予測は非負最小2乗最適化技法に基づく。いくつかの実施例では、調停された予測は、下位レベル予測の各ノードがそれぞれの範囲内で結合される反復最適化に基づく。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の1つ又は複数のメトリクスに関し、いくつかの事例では、重み行列は対角であり得る。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の各ノードの予測誤差に関する。いくつかの実施例では、前処理モジュールは、i)0値、又はしきい値よりも小さい値を有する、階層の1つ又は複数のノードを削除することと、ii)兄弟情報に基づいて階層の1つ又は複数の消失した記録を充填することと、iii)階層のすべてのレベルにおいて回転特徴を抽出することとのうちの少なくとも1つを実行する。
【0016】
別の態様では、階層における予測誤差を低減するための計算装置であって、本計算装置は、プロセッサと、命令を記憶するメモリとを備え、命令は、プロセッサによって実行されたとき、前処理モジュールによって、階層に関するデータを受信するステップと、前処理モジュールによって、データと、階層の構造に関する加算行列とに基づいて階層を生成するステップと、予測調停モジュールによって、階層のベース予測と加算行列と重み行列とを受信するステップであって、重み行列が階層の各ノードのための重み付け方式を反映し、重み行列が前処理モジュール又は予測調停モジュールのいずれかによって生成される、階層のベース予測と加算行列と重み行列とを受信するステップと、予測調停モジュールによって、階層の下位レベルの各ノードに対する制約を前提として、ベース予測を階層の下位レベルに射影するための最小2乗最適化技法に基づいて調停された予測を生成するステップとに装置を設定する、計算装置が提供される。
【0017】
いくつかの実施例では、調停された予測は非負最小2乗最適化技法に基づく。いくつかの実施例では、調停された予測は、下位レベル予測の各ノードがそれぞれの範囲内で結合される反復最適化に基づく。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の1つ又は複数のメトリクスに関し、いくつかの事例では、重み行列は対角であり得る。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の各ノードの予測誤差に関する。いくつかの実施例では、前処理モジュールは、i)0値、又はしきい値よりも小さい値を有する、階層の1つ又は複数のノードを削除することと、ii)兄弟情報に基づいて階層の1つ又は複数の消失した記録を充填することと、iii)階層のすべてのレベルにおいて回転特徴を抽出することとのうちの少なくとも1つを実行する。
【0018】
別の態様では、階層における予測誤差を低減するための非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、本コンピュータ可読記憶媒体は命令を含み、命令は、コンピュータによって実行されたとき、コンピュータに、前処理モジュールによって、階層に関するデータを受信することと、前処理モジュールによって、データと、階層の構造に関する加算行列とに基づいて階層を生成することと、予測調停モジュールによって、階層のベース予測と加算行列と重み行列とを受信することであって、重み行列が階層の各ノードのための重み付け方式を反映し、重み行列が前処理モジュール又は予測調停モジュールのいずれかによって生成される、階層のベース予測と加算行列と重み行列とを受信することと、予測調停モジュールによって、階層の下位レベルの各ノードに対する制約を前提として、ベース予測を階層の下位レベルに射影するための最小2乗最適化技法に基づいて、調停された予測を生成することとを行わせる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0019】
いくつかの実施例では、調停された予測は非負最小2乗最適化技法に基づく。いくつかの実施例では、調停された予測は、下位レベル予測の各ノードがそれぞれの範囲内で結合される反復最適化に基づく。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の1つ又は複数のメトリクスに関し、いくつかの事例では、重み行列は対角であり得る。いくつかの実施例では、重み行列の各エントリは階層の各ノードの予測誤差に関する。いくつかの実施例では、前処理モジュールは、i)0値、又はしきい値よりも小さい値を有する、階層の1つ又は複数のノードを削除することと、ii)兄弟情報に基づいて階層の1つ又は複数の消失した記録を充填することと、iii)階層のすべてのレベルにおいて回転特徴を抽出することとのうちの少なくとも1つを実行する。
【0020】
本明細書の主題の1つ又は複数の実施例の詳細は添付の図面及び以下の説明に記載されている。主題の他の特徴、態様、及び利点は説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【0021】
様々な図面における同様の参照番号及び名称は同様の要素を示す。
【0022】
任意の特定の要素又は行為の説明を容易に識別するために、参照番号中の最上位の1つ又は複数の数字は、その要素が最初に導入された図番号を指す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施例による、システム・アーキテクチャを示す図である。
図2】一実施例による、ブロック図を示す図である。
図3】一実施例による、階層の実例を示す図である。
図4】一実施例による、階層予測を示す図である。
図5】一実施例による、階層予測を示す図である。
図6】記号の表を示す図である。
図7】一実施例による、予測調停フレームワークを示す図である。
図8】一実施例による、射影行列(projection matrix)の評価を示す図である。
図9】一実施例による、射影行列の評価を示す図である。
図10】一実施例による、フロー・チャートを示す図である。
図11】一実施例による、フロー・チャートを示す図である。
図12】一実施例による、予測調停のフロー・チャートを示す図である。
図13】一実施例による、ベース予測誤差と調停された予測誤差との比較を示す図である。
図14】一実施例による、日付に対する需要の2つのグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
予測を調停し、すべての予測を階層全体にわたって一致させ、それによって、前の試みが遭遇した不一致の問題を解決する、階層予測のシステム及び方法を本明細書で開示する。さらに、これらのシステム及び方法は、階層全体にわたって全体的な誤差を低減するために階層のすべてのレベルからの情報を使用する。
【0025】
図1は、一実施例による、システム・アーキテクチャ100を示す。
【0026】
いくつかの実施例では、階層予測システムは前処理モジュール104と予測調停モジュール106とを備える。2つのモジュールは任意の既存の予測パイプライン108にプラグインされ、それによって(全体的な予測誤差を低減することによって)予測の任意の集合を一致させ、精度を改善し得る。これにより、企業は、本明細書で開示する階層予測システム及び方法とともに既存の適合した予測ソリューションを使用することが可能になる。
【0027】
クライアント・データ・ソース102は、階層が再構成され得るように(クライアントからの)階層の構造についての情報を与える。いくつかの実施例では、前処理モジュール104は、階層、及び階層のノード間の関係、並びに階層のより高いレベルのためのデータ集約を構築する。
【0028】
いくつかの実施例では、前処理モジュール104は、極めて小さい(すなわち、しきい値よりも小さい)値を有するか、又は値0を有するノードを削除する。そのような小さい数量は、予測調停にほとんど価値を与えないが、構造をより複雑にする。
【0029】
いくつかの実施例では、前処理モジュール104は、兄弟情報に基づいて消失した記録を充填することができる。すなわち、前処理モジュール104は、消失した情報を埋めるために階層を活用することができる。
【0030】
いくつかの実施例では、前処理モジュール104は、階層のすべてのレベルにおいて回転特徴(すなわち、ラグベースの特徴)を抽出することができる。いくつかの実施例では、そのような抽出は、より高いレベルについてのデータを集約するとき、親の中の子の回転特徴の統計を使用して達成され得る。
【0031】
予測調停モジュール106は、予測が一致し、全体的な低減された予測誤差を有することを保証する。予測調停モジュール106は、予測を一致させ、より正確にする最適化プロシージャを含む。いくつかの実施例では、予測調停中の最適化は制約され得る。たとえば、サプライ・チェーンにおける需要を予測するとき、予測において負の数が許されるべきでない。いくつかの実施例では、企業のビジネス・ニーズに基づいて、予測調停の制約なしの形態と制約ありの形態の両方がユーザによって構成され得る。
【0032】
いくつかの実施例では、一般的な重み付け方式が最適化のために使用され得る。いくつかの実施例では、重み付け方式は、任意のビジネス固有の重要度値又はメトリクスに基づいて、最適化中に個々のノードに重要度値を割り当てることができる。いくつかの実施例では、これらのメトリクス/値は、製品のコスト、注文の量、予測の誤り率などを含む。そのような場合、重み付け方式は前処理モジュールによって考案され得る。いくつかの実施例では、重み付け方式は各ノードの予測誤差に重要度値を割り当てることができる。そのような場合、予測パイプライン108が階層中の各ノードについての誤差推定値を与えるので、重み付け方式は予測パイプライン108に従って考案される。
【0033】
図2は、動的需要感知システムの一実施例によるブロック図200を示す。
【0034】
ブロック図200は、システム・サーバ202と、クライアント・データ・ソース216と、クライアント予測パイプライン218とを含む。システム・サーバ202は、メモリ210と、ディスク204と、プロセッサ212と、前処理モジュール208と、予測調停モジュール206とを含むことができる。1つのプロセッサ212が示されているが、システム・サーバ202は1つ又は複数のプロセッサを備えることができる。いくつかの実施例では、不揮発性メモリであり得るディスク204と比較して、メモリ210は揮発性メモリであり得る。いくつかの実施例では、システム・サーバ202はネットワーク214を介してクライアント・データ・ソース216及びクライアント予測パイプライン218と通信することができる。
【0035】
ブロック図200はまた、追加の特徴及び/又は機能を含むことができる。たとえば、システム・サーバ202は、限定はしないが、磁気ディスク又は光ディスク又はテープを含む追加のストレージ(リムーバブル及び/又は非リムーバブル)を含むこともできる。そのような追加のストレージはメモリ210とディスク204とによって図2に示されている。記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラム・モジュール又は他のデータなどの情報の記憶のための任意の方法又は技術において実装される揮発性媒体及び不揮発性媒体、リムーバブル媒体及び非リムーバブル媒体を含むことができる。メモリ210及びディスク204は非一時的コンピュータ可読記憶媒体の実例である。非一時的コンピュータ可読媒体はまた、限定はしないが、ランダム・アクセス・メモリ(RAM:Random Access Memory)、読取り専用メモリ(ROM:Read-Only Memory)、電気的消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュ・メモリ及び/又は他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読取り専用メモリ(CD-ROM:Compact Disc Read-Only Memory)、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD:Digital Versatile Disc)、及び/又は他の光ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク・ストレージ又は他の磁気記憶デバイス、及び/又は所望の情報を記憶するために使用され得、システム・サーバ202によってアクセスされ得る任意の他の媒体を含む。いかなるそのような非一時的コンピュータ可読記憶媒体もシステム・サーバ202の一部であり得る。
【0036】
ネットワーク214を介したシステム・サーバ202とクライアント・データ・ソース216とクライアント予測パイプライン218との間の通信は様々なネットワーク・タイプを介して行われ得る。非限定的な例示的なネットワーク・タイプは、ファイバー・チャネル、スモール・コンピュータ・システム・インターフェース(SCSI:Small Computer System Interface)、Bluetooth、イーサネット(登録商標)、Wi-fi、赤外線データ通信協会(IrDA:Infrared Data Association)、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN:Local Area Network)、ワイヤレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN:Wireless Local Area Network)、インターネットなどのワイド・エリア・ネットワーク(WAN:Wide Area Networks)、シリアル、及びユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)を含むことができる。一般に、ブロック図200の様々な構成要素間の通信は、ハードワイヤード構成要素、セルラー構成要素、Wi-Fi構成要素又はBluetoothネットワーク化構成要素などを介して行われ得る。いくつかの実施例では、システム200の1つ又は複数の電子デバイスは、クラウドベースのメモリ・ストレージなど、クラウドベースの特徴を含み得る。
【0037】
クライアント・データ・ソース216はクライアントからの様々な生データを与え得る。クライアント・データ・ソース216は、階層の構造と、階層の様々なノード間の関係とを含む、階層を再構成するための十分な情報を含むことができる。
【0038】
ネットワーク214を使用して、システム・サーバ202は、クライアント・データ・ソース216からデータを取り出し、クライアント予測パイプライン218にアクセスすることができる。取り出されたデータはメモリ210又はディスク204に保存され得る。場合によっては、システム・サーバ202はまた、ウェブ・サーバを備えることができ、ウェブ・ブラウザ上に表示されるために好適なフォーマットにリソースをフォーマットすることができる。
【0039】
図3は、一実施例による階層300の実例を示す。例示的な階層300は、レベル0 302(ルート又は全データ)、レベル1 304(部品/(SKU:stock keeping unit)レベル)、及びレベル2 306(部品-顧客レベル)の3つのレベルをもつ、部品と顧客との階層である。8つのノードが、A1、A2、A3、B1、B2、A、B、Dataと標示されている。レベル2 306における5つのノード(A1、A2、A3、B1、B2)と、レベル1 304における2つのノード(A、B)と、レベル0 302における1つのノード(Data)とがある。サプライ・チェーンの一実施例では、階層は複数のレベルと数千個のノードとを有することができる。
【0040】
階層300は顧客-部品階層を示すが、階層の様々な形態があり得る。
【0041】
非限定的な実例では、階層は、階層の異なるレベルが異なる地理的領域を表す地理的階層である。たとえば、最も低いレベルは国の主要な地域を表すことができ、中間レベルは異なる国を表すことができ、最上位のレベルは世界全体を表すことができる。たとえば、サプライ・チェーン階層において、ノードA1、A2及びA3における(国Aの)あらゆる地域からの予測需要の合計は、ノードAにおける(国Aについての)予測需要に等しくなければならない。同様に、ノードB1及びB2における(国Bの)あらゆる地域からの予測需要の合計はノードBにおける(国Bについての)予測需要に等しくなければならない。最後に、ノードAにおける国AとノードBにおける国Bとからの予測需要の合計はレベル0 302(Data)における世界の予測需要に等しくなければならない。
【0042】
非限定的な実例では、階層は製品階層であり、階層の異なるレベルが製品の異なるタイプ(たとえばサイズ、型、モデル)を表す。製品の異なるタイプ/サイズについての需要の合計は合計製品需要に一致しなければならない。
【0043】
非限定的な実例では、階層はイベント時間ベースの階層であり、階層の異なるレベルが需要の異なる時間期間を表す。週単位の需要(レベル2 306)の合計は月単位/四半期単位の需要(レベル1 304)に一致しなければならず、それは年単位の需要(レベル0 302)に一致しなければならない。
【0044】
図4は、一実施例による階層予測400を示す。
【0045】
ノードが以下の予測値、すなわち、A1=20、A2=30及びA3=50、B1=80及びB2=70、A=100、B=150及びData=250を有する、理想的な予測402が示されている。202において、A1+A2+A3=A、B1+B2=B、及びA+B=Dataであることに留意されたい。すなわち、1つのレベルにおける分岐の1つの集合についてのすべての予測の合計はその上のノードについての予測に等しく、1つのレベルにおけるすべての予測の合計はその上のレベルについての予測に等しい。
【0046】
しかしながら、実際には、異なるレベルにおける予測は互いに無関係に行われるので、異なるレベルにおける予測は常に合うとは限らない。実予測404はこの現象を示す。たとえば、ノードA1、A2及びA3についての予測の合計はA1+A2+A3=100であるが、ノードAについての予測は実際には110である。+10、すなわち、A-(A1+A2+A3)=10の相違がある。同様に、ノードB1及びB2についての予測の合計はB1+B2=150であるが、ノードBについての予測は実際には170である。+20、すなわち、B-(B1+B2)=20の相違がある。さらに、ノードA及びBについての予測の合計はA+B=280であるが、Dataについての予測は230である。-50、すなわち、Data-(A+B)=-50の相違がある。
【0047】
各レベルにおける相違は「一致誤差」と呼ばれる。これは、各予測に関連する(すなわち、各ノードにおける)誤差である予測誤差とは異なる。たとえば、A1は20の予測を有する。図4に示されていないが、A1におけるこの予測は関連する不確定性、たとえば、A1=20+又は-2を有する。各ノードは、各予測を作成するアルゴリズムによって与えられる、それ自体の予測誤差を有する。
【0048】
本明細書で開示する階層予測のシステム及び方法では、階層の各レベルにおける予測は、一致誤差が0であるように調停される。最適予測は極下位レベル(すなわち、最も分解されたレベル)において取得され、これらの最も低いレベルの最適予測は、0一致誤差に従って、より高いレベルの予測を計算するために追加される。
【0049】
予測調停
図5は、一実施例による階層予測を示す。例示的な階層500は、1から8までインデックス付けされた8つのノード(たとえば、A1、A2、A3、B1、B2、A、B、Data)を有する。5つのノード(A1、A2、A3、B1、B2)は階層の最も低いレベルにあり、2つのノード(A、B)は中間レベルにあり、1つのノード(Data)は階層の最も高いレベルにある。階層がサプライ・チェーンを表すいくつかの実施例では、階層は複数のレベルと数千個のノードとを有することができる。
【0050】
一致誤差が0であるので、8つのノードの各々の調停された予測502は下の子予測ノードの合計であり、下位レベルノードが最適下位レベル予測506を有する。調停された予測502と最適下位レベル予測506との間の関係は式508によって与えられ、調停された予測502を得るために、最適下位レベル予測506に加算行列504が適用される。加算行列504は、階層500中に示された実例の場合、8×5行列であるが、最適下位レベル予測506は5×1ベクトルであり、調停された予測502は8×1ベクトルである。
すなわち、
【数1】

である。
【0051】
図6は、いくつかの実施例において予測調停について説明するために使用される様々な実体を要約した記号の表600を示す。
【0052】
調停された予測を見つける問題は、ここでは、最適下位レベル予測を見つけることに変更される。いくつかの実施例では、下位レベル予測は、すべてのレベルからの予測を下位レベルに写像する射影行列を使用することによって推定され得る。このようにして、下位レベルへの最適射影を見つけるために、すべてのレベルにおけるすべての予測が使用される。
【数2】
【0053】
式(3)において、yは、ベース予測を表すベクトル(すなわち、階層中のノードのすべてにおいて、図1の予測パイプライン108によって生成される予測のベクトル)である。したがって、最適下位レベル予測を見つける問題は、ここでは、ベース予測を階層の下位レベルに最適に写像する最適射影Pを見つけることに変更される。最適射影Pが取得されると、調停された予測は、以下の公式を使用して計算され得る。
【数3】
【0054】
このフォーミュレーションを使用して、ベース予測は、最初に射影Pを使用して下位レベルに写像され、次いで、下位レベル予測は、図5において定義された加算演算Sを使用してすべてのレベルに集約される。すべてのより高いレベル予測は下位レベルに基づいて計算されるので、集約演算は階層全体にわたって100%一致を保証する。
【0055】
図7は、上記の式(1)~式(3)を参照しながら、一実施例による予測調停フレームワーク700を示す。図7では、式(3)702は、下位レベル射影704と、すべてのレベルへの集約706との2つのステップに分けられる。
【0056】
式(1)において、調停された予測(すなわち、すべてのノードにおける調停された予測のベクトル)は、ベース予測(すなわち、すべてのノードにおける予測のベクトル)と置き換えられ、最小2乗法(Ordinary Least Squares)(OLS)アルゴリズムを使用して最適下位レベル予想(β)のベクトルのための連立1次方程式を解き、その結果、
【数4】

となる。
【0057】
式(4)において、Sは加算行列Sの転置である。式(2)と式(4)とを比較すると、射影行列Pは以下のように見つけられる。
P=(SS)-1(5)
【0058】
Pにおいて定義された射影演算は線形変換であり、それは、βにおけるあらゆる下位レベル予測がすべての予測の重み付けされた線形結合になることを意味する。射影行列Pを計算した後に、任意のベース予測が下位レベルに射影され、上方に集約され得る。これにより、アルゴリズムを既存の予測パイプラインとともに使用することが可能になる。
【0059】
図8は、式(4)と式(5)とによって定義される、一実施例による射影行列800の評価を示す。下位レベル予測βは式(4)802中に示され、それによって射影行列Pを識別する。
【0060】
一般化された予測調停
OLS解(式(5)参照)は、最適化中にツリーのノードの各々についての重みを考慮することができる重み付けされた最適化に一般化され得る。この一般化された形態では、射影行列Pは、一般化最小2乗法(Generalized Least Squares)(GLS)技法を使用して見つけられ得、
P=(SWS)-1W(6)
となる。
【0061】
Wが対角であるとき、GLSは加重最小2乗法(Weighted Least Squares)(WLS)と呼ばれる。式(6)は図9に示されており、図9には、重み行列Wの異なる実施例の実例とともに、式(6)の等価物902が示されている。式(6)は一般的であり、重み行列Wは、特定の重み付け方式が使用されないとき、単位行列(identity matrix)に設定され得ることに留意されたい。
【0062】
階層は、1回構築され、加算行列Sによって定義される。例示的な階層300では、重み行列Wは8×8行列である。いくつかの実施例では、Wは対角行列である(すなわち、すべての非対角(off-diagonal)要素が0であり、対角要素、すなわち、8つのノードに対応する8つの要素のみが非0である)。実例は、ベース予測の誤り率の逆数、各ノードにおける注文の量、各ノードにおける注文の総コスト/額などであり得る。非対角要素はノード間の関係を重み付けする。
【0063】
いくつかの実施例では、ベース予測の誤り率の逆数は重み行列Wの対角成分として使用される。そのような実施例では、階層の下位レベルへの射影は最良線形不偏推定量(BLUE:Best Linear Unbiased Estimate)である。
【0064】
この重み付け方式は、顧客が、顧客によって望まれる任意のビジネス固有の重要度値又はメトリックを使用することを可能にするように拡張され得る。いくつかの実施例では、重要度は、そのノードにおける注文の量に基づいてノードに割り当てられ得る。いくつかの実施例では、重要度は、ノード中の項目の総コストに基づいてノードに割り当てられ得る。いくつかの実施例では、重要度は階層の異なるレベルに割り当てられ得る。見られ得るように、重要度は任意の他のメトリックに割り当てられ得る。
【0065】
これらの重みは、射影を見つけるとき、最適化における各項目の重要度を決定する。たとえば、第1の製品が第2の製品の10倍注文された場合、第1の製品は予測調停により大きい影響を及ぼす。いくつかの実施例では、低い誤り率をもつ一番売れている製品が調停に最も大きい影響を及ぼすように、誤り率と数量/コストとの組合せが使用される。
【0066】
図10は、階層予測の一実施例によるフロー・チャート1000を示す。ステップ1004において、(図1の)前処理モジュール104は、階層の構成を許可するデータを受信する。たとえば、前処理モジュールは、階層レベルに対応するキー列の集合をもつ記録又は表データを受信することができる。ステップ1006において、前処理モジュール104は、階層とデータ集約とを構築し、ステップ1008において階層に関する加算行列Sを生成する。図10に示された実施例では、重み行列Wもステップ1008において生成される。ここで、重み行列Wは階層における各ノードのメトリクスに関する。この情報は、次いで、(図1の)既存の予測パイプライン108にプラグインされ、予測パイプライン108は、ステップ1010において、すべての項目とすべてのレベルとの予測(すなわちベース予測)を生成する。ステップ1012において、(図1の)予測調停モジュール106は、ベース予測を受信し、ステップ1016において、調停された予測を生成するために、ステップ1014において、予測を調停し、最適化する。
【0067】
図11は、階層予測の一実施例によるフロー・チャート1100を示す。ステップ1104において、(図1の)前処理モジュール104は、階層の構成を許可するデータを受信する。たとえば、前処理モジュールは、階層レベルに対応するキー列の集合をもつ記録又は表データを受信することができる。ステップ1106において、前処理モジュール104は、階層とデータ集約とを構築し、ステップ1108において階層に関する加算行列Sを生成する。この情報は、次いで、(図1の)既存の予測パイプライン108にプラグインされ、予測パイプライン108は、ステップ1110において、すべての項目とすべてのレベルとの予測(すなわちベース予測)を生成する。図12に示された実施例では、重み行列Wはステップ1112において生成される。ここで、Wは各ノードにおける予測誤差に関し、予測誤差の各々はステップ1110中に生成される。ステップ1114において、(図1の)予測調停モジュール106は、ベース予測を受信し、ステップ1118において、調停された予測を生成するために、ステップ1116において、予測を調停し、最適化する。
【0068】
制約付き予測調停
上記で説明したように、一般化最小2乗法(GLS)最適化は、全体的な予測誤差が低減されるように予測を調整し、調停された予測が正しく合う(すなわち、一致誤差が0である)ことを保証する。しかしながら、これにより、予測のいくつかは負の値を有することになる。また、異なる適用例においてドメイン固有の制約が存在する。たとえば、製品の需要が予測されている場合、調停された予測された需要は負になることができない。しかしながら、そのような制約の統合は最適化アルゴリズムに対して自明でないか又は知られていない。この自明でない問題を解決するために、最適化中に非負制約(non-negativity constraint)が課される。この修正された手法では、下位レベルの調停された予測βは負になることができないという制約を所与として、それらの予測βを見つけるために非負最小2乗法(NNLS:Non-Negative Least Squares)アルゴリズムが使用される。
【数5】
【0069】
この形態の最適化は、それが閉形式(closed-form)解を有しないという点で、加重最小2乗技法と異なる。OLSとWLSとは両方とも、それぞれ式(5)及び式(6)を解くことによって直接得られ得る閉形式解を有する。しかしながら、制約付き形態の最適化は反復最適化と数値ソルバー(numerical solver)とを必要とする。
【0070】
式(7)中のNNLSは、アクティブである制約の集合が任意の候補解において維持される、アクティブ・セット法を使用して解かれ得る。解におけるわずかな変更がそれらの制約に違反し得ることを意味する、候補解が厳密に境界上にある場合、制約はアクティブと呼ばれる。アクティブ・セットは、どの制約が最適化の最終結果に影響を及ぼすかを決定する。制約付き最適化によって見つけられた解は、最小の全体的な誤差を有するという観点から最適な答えではないことがあるが、それは、解がすべての制約を満たし、したがって、それは探索空間の実現可能な領域において最適であることを保証する。
【0071】
いくつかの実施例では、ツリー中の任意のノードについての任意の形態の不等式制約(inequality constraint)が使用され得る。たとえば、予想される量が下限と上限との間であるように制約される場合、有界変数最小2乗法(BVLS:Bounded-Variable Least Squares)最適化が使用され得る。
【数6】
【0072】
いくつかの実施例では、階層中の各ノードはそれ自体の下限制約及び上限制約を有することができる。有界変数最小2乗(BVLS)法も、数値ソルバーを必要とする反復最適化である。NNLSと同様に、BVLSもアクティブ・セット・ストラテジーを使用するが、BVLSは、アクティブ制約の2つの集合、すなわち、アクティブ下限制約のための1つの集合と、アクティブ上限制約のための別の集合とを維持するという違いがある。このように、最適化の各反復において、どの制約が違反される可能性があるかは知られており、したがって、最適化はそれに応じて誘導され得る。
【0073】
任意の制約をもつこのタイプの制約付き最適化はサプライ・チェーンにおける多くの適用例のために有用である。たとえば、製品の実際の供給はそれらの生産量又は製造上の制約に基づく数よりも高くすることができないことを、企業が知っている場合、この情報は、予想値に上限を設定することによって最適化に組み込まれ得る。
【0074】
いくつかの実施例では、NNLS最適化はまた、下限を0に設定し、上限を無限大に設定することによって、BVLSを使用して解かれ得る。しかしながら、BVLSは、反復ごとに制約の2つの集合を維持し、それらの集合について検査することにより、NNLSよりも計算上わずかに遅いので、非負制約付き変数はNNLS最適化を使用して解かれる。事実上、ユーザが、基礎になる機構と最適化とについての知識を有する必要がないように、階層予測の開発された解は、ユーザ構成に基づいて適正な最適化技法を決定する。
【0075】
要約すると、本明細書で開示する階層予測の方法及びシステムは、全体的な予測誤差の低減を保証しながら、一致誤差を完全になくす。
【0076】
図12は、一実施例による予測調停のフロー・チャート1200を示す。フロー・チャート中の記号のうちのいくつかの表記法1202が与えられる。
【0077】
ステップ1204において、加算行列Sと、重み行列Wと、ベース予測y HATとが入力される。加算行列Sは階層から構築される。重み行列Wは顧客選好に基づいて構築される。すなわち、重み行列Wは予測パイプラインの前に構築され得る。代替的に、Wがベース予測誤差を含む場合、予測パイプラインがベース予測誤差を生成するので、Wは予測パイプラインの後に構築される。
【0078】
加算行列Sはm×n行列であり、重み行列Wはm×m行列であり、y hatはm×1ベクトルであり、ここで、「m」は階層におけるノードの総数を示し、「n」は階層の最も低いレベルにおけるノードの総数を示す。
【0079】
ステップ1206において、反復の初期化が行われる。最初に、n×1ベクトルである、パッシブ制約の集合Qは空に設定され、候補解Cは、(n×1ベクトルである)調停された予測βのように、0に設定される。n×1ベクトルである、アクティブ制約の集合Rは階層中の「n」個の最も低いノードについて定義される。誤差ベクトル「e」はn×1ベクトルである。構成要素は、階層中の最も低いノードの各々における射影誤差を示す。
最初は、e=SW y hatである。
【0080】
ステップ1208からステップ1214まで、アクティブ制約の集合とパッシブ制約の集合とが計算され、決定1216において、解の一部分が負についてテストされる。負がない場合、新しい反復誤差ベクトルeと調停された予測ベクトルβとがステップ1218において計算される。ステップ1208において、アクティブ制約Rの非ヌル集合のデュアル条件と、Rに関連するノードについての最大誤差とがテストされる。1008におけるテスト条件が満たされない場合、ステップ1228において計算された調停された予測とともに、反復プロセスは終了する。ステップ1208に示された両方の条件が満たされる場合、ステップ1210から決定1216までが反復される。
【0081】
決定1216において、候補解Cの一部分に負がある場合、負を取り除くためにステップ1220とステップ1222とが実行され、パッシブ制約の集合Qとアクティブ制約の集合Rとはステップ1224において更新される。候補解Cが計算され、その後、新しい反復された誤差ベクトルeの計算が行われ、調停された予測ベクトルβがステップ1218において計算される。ステップ1208におけるテスト条件が満たされない場合、ステップ1228において計算された調停された予測とともに、反復プロセスは終了する。ステップ1208に示された両方の条件が満たされる場合、ステップ1210から決定1216までが反復される。
【0082】
反復プロシージャは、ステップ1208において設定された条件が満たされなくなるまで反復され、調停された予測は、次いで、ステップ1228において計算され、ステップ1230において出力が与えられる。
【0083】
図13は、異なる部品/SKUについて、調停された予測誤差がベース予測誤差に対してプロットされた、一実施例による比較1300を示す。このプロット及び予測は、80個の異なる部品と800超の部品顧客を含む実顧客データに基づく。プロット中の各円は階層の中間レベル中のノード(すなわち部品)に対応する。各円のサイズは対応するノードにおける注文の量に比例する。
【0084】
1の傾きをもつライン1302は、調停された予測誤差がベース予測誤差よりも改善した場所を画定する。階層予測調停は、ライン1302の下の円についての予測精度を改善(すなわち、誤差を低減)し、ライン1302の上の円についての精度を低下(すなわち、誤差を増加)させた。図13に示されたグラフから、円の大部分がライン1302の下にあるので、階層調停は階層における予測の大部分を改善した。このことは、全体的な予測誤差が、7.6%の改善と等価である、0.3333739から0.308036に低減されたことを示す、項目1304に反映されている。予測誤差は加重平均絶対パーセント誤差(WMAPE:Weighted Mean Absolute Percentage Error)を使用して計算される。
【0085】
図14は、一実施例による、日付に対する需要の2つのグラフ1400を示す。
【0086】
グラフ1402には、2017年7月から2018年7月までの履歴需要1406が示されている。2018年7月以降の需要のベース予測1408を与えるために、パイプライン予測プログラム(たとえば、図1の予測パイプライン108)が使用される。2018年7月以降の調停された予測1410が示されている。
【0087】
グラフ1404には、調停された予測1410とベース予測1408とに対する2018年7月以降の実際の需要1412が示されている。1204から明らかなように、調停された予測1410は、需要のベース予測1408よりも(2018年7月以降の)予想された需要の著しい改善である。
【0088】
上記のフロー・チャートを参照するアルゴリズムを含む、上記で説明したアルゴリズムについて別個に説明したが、本明細書で開示するアルゴリズムのうちの任意の2つ又はそれ以上が任意の組合せで組み合わせられ得ることを理解されたい。本明細書で説明する方法、モジュール、アルゴリズム、実装形態、又はプロシージャのいずれも、(a)プロセッサ、(b)コントローラ、及び/又は(c)任意の他の好適な処理デバイスによる実行のための機械可読命令を含むことができる。本明細書で開示する任意のアルゴリズム、ソフトウェア、又は方法は、たとえば、フラッシュ・メモリ、CD-ROM、フロッピー(登録商標)・ディスク、ハード・ドライブ、デジタル多用途ディスク(DVD)、又は他のメモリ・デバイスなど、非一時的有形媒体上に記憶されたソフトウェアで実施され得るが、当業者は、アルゴリズム全体及び/又はそれの一部は、代替的に、コントローラ以外のデバイスによって実行され、及び/又はよく知られている様式でファームウェア又は専用ハードウェアにおいて実施され得ることを容易に諒解するであろう(たとえば、それは、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、プログラマブル論理デバイス(PLD:programmable logic device)、フィールド・プログラマブル論理デバイス(FPLD:field programmable logic device)、ディスクリート論理などによって実装され得る)。さらに、本明細書で示されているフローチャートを参照しながら特定のアルゴリズムについて説明したが、当業者は、例示的な機械可読命令を実装する多くの他の方法が代替的に使用され得ることを容易に諒解するであろう。たとえば、ブロックの実行の順序は変更され得、及び/又は説明したブロックのうちのいくつかは変更されるか、なくされるか、又は組み合わせられ得る。
【0089】
本明細書で示し、説明したアルゴリズムは、特定の機能を実行し、互いに作用する様々なモジュールを有することに留意されたい。これらのモジュールは、説明のためにそれらの機能に基づいて分離されているにすぎず、コンピュータ・ハードウェア、及び/又は適切な計算ハードウェア上での実行のためにコンピュータ可読媒体に記憶される実行可能なソフトウェア・コードを表すことを理解されたい。異なるモジュール及びユニットの様々な機能は、任意の様式でモジュールとして上記のように、ハードウェア、及び/又は非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されるソフトウェアとして組み合わせられ又は分離され得、別個に又は組み合わせて使用され得る。
【0090】
主題の特定の実施例について説明した。他の実施例は以下の特許請求の範囲の範囲内に入る。たとえば、特許請求の範囲に記載された行為は、異なる順序で実行され、依然として望ましい結果を達成し得る。一実例として、添付図に示されているプロセスは、望ましい結果を達成するために、必ずしも示されている特定の順序、又は連続した順序を必要としない。いくつかの実装形態では、マルチタスキング及び並列処理が有利であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】