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特表2024-529809アレルギー体質の個体群における抗IL-13Rα1抗体またはその結合フラグメントを使用するアトピー性皮膚炎の処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】アレルギー体質の個体群における抗IL-13Rα1抗体またはその結合フラグメントを使用するアトピー性皮膚炎の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240806BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240806BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61P37/08
A61P29/00
A61P17/00
A61K39/395 N
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552176
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 SG2022050103
(87)【国際公開番号】W WO2022186773
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】10202102087T
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(31)【優先権主張番号】10202110690S
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1. https://aslanpharma.com/aslan-pharmaceuticals-announces-positive-interim-data-from-the-multiple-ascending-dose-study-of-aslan004-in-atopic-dermatitis/ (令和3年3月1日) 2. https://aslanpharma.com/aslan-pharmaceuticals-to-present-data-on-aslan004-at-society-for-investigative-dermatology/ (令和3年5月5日) 3. 「2021 Society of Investigative Dermatology Virtual Meeting」 (令和3年5月6日) 4. https://doi.org/10.1016/j.jid.2021.07.123 (令和3年9月1日) 5. https://aslanpharma.com/aslan-pharmaceuticals-announces-positive-data-conclusively-establishing-proof-of-concept-for-aslan004-in-atopic-dermatitis/ (令和3年9月27日) 6. https://aslanpharma.com/aslan-pharmaceuticals-announces-kol-event-series-to-discuss-atopic-dermatitis-treatment-landscape-and-aslan004/ (令和3年10月18日) 7. https://aslanpharma.com/aslan-pharmaceuticals-announces-scientific-collaboration-with-dr-emma-guttman-yassky-on-identification-of-aslan004-specific-biomarkers/ (令和3年10月20日) 8. https://clinicaltrials.gov/study/NCT05158023 (令和3年12月15日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 9. https://aslanpharma.com/aslan-pharmaceuticals-to-present-additional-data-from-aslan004-proof-of-concept-study-at-two-upcoming-winter-dermatology-conferences/ (令和4年1月11日) 10. 「2022 Winter Clinical dermatology conference」 (令和4年1月15日) 11. https://aslanpharma.com/aslan-pharmaceuticals-initiates-phase-2b-study-of-aslan004-eblasakimab-in-moderate-to-severe-atopic-dermatitis/ (令和4年1月20日)
(71)【出願人】
【識別番号】523323538
【氏名又は名称】アスラン ファーマシューティカルズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヴェルカ,カレン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ワード,アリソン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
ベースラインIgEレベルが確立されていて、少なくとも10,000KU/L+/-2,000のレベルである、高度にアレルギー体質の患者におけるアレルギー性疾患、例えばアトピー性皮膚炎(例えば中等度から重度のアトピー性皮膚炎、特に制御不良の中等度から重度のアトピー性皮膚炎)の処置において使用するための、前記受容体を結合することによるIL-13Rα1を介するシグナル伝達の阻害剤である、抗体、その抗原結合フラグメントおよびそれを含む組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースラインIgEレベルが確立されていて、少なくとも10,000KU/L+/-2,000のレベルである、高度にアレルギー体質の患者におけるアトピー性皮膚炎(例えば中等度から重度のアトピー性皮膚炎、特に制御不良の中等度から重度のアトピー性皮膚炎)の処置において使用するための、前記受容体を結合することによるIL-13Rα1を介するシグナル伝達の阻害剤である、抗体、その抗原結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記ベースラインIgEレベルが、10,000+/-2,000~30,000+/-6,000KU/Lの範囲内である、請求項1に記載の使用のための抗体、その抗原結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項3】
前記処置により、前記IgEレベルをベースラインから少なくとも15%まで低下させる、請求項1または2に記載の使用のための抗体、その抗原結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項4】
前記処置により、前記IgEレベルを前記ベースラインから少なくとも20%まで低下させる、請求項3に記載の使用のための抗体、その結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項5】
前記処置により、前記IgEレベルをベースラインから少なくとも30%まで低下させる、例えば前記レベルをベースラインから30~40%、例えば30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%または40%低下させる、請求項3または4に記載の使用のための抗体、その結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項6】
前記低下が、約15日目までに観察される、請求項3から5のいずれか一項に記載の使用のための抗体、結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項7】
前記低下が、約29日目までに観察される、請求項3から6のいずれか一項に記載の使用のための抗体またはその結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項8】
前記低下が、約57日目までに観察される、請求項3から7のいずれか一項に記載の使用のための抗体、その結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項9】
前記抗体または結合フラグメントが、例えば200mg~600mgの範囲内の用量を含む処置サイクルで非経口により投与される、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための抗体、その結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項10】
前記処置サイクルまたは複数のサイクルおよび疾患修飾に続いて、維持療法が、例えばより少ない頻度(例えば月1回)で投与された同じ用量、または同じ頻度もしくはより少ない頻度(例えば約2週に1回、約3週に1回、または約4週に1回で投与されたより低い用量(例えば200mg)で投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための抗体、その結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項11】
前記抗体またはその結合フラグメントが、ほぼ週1回、(特に1回の処置サイクル、特に8週間)投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための抗体、抗原結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項12】
前記抗体またはその結合フラグメントが、ほぼ2週ごとに1回、(特に1回の処置サイクル、特に8週間)投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための抗体、抗原結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項13】
前記抗体またはその結合フラグメントが、ほぼ3週ごとに1回、(特に1回の処置サイクル、特に8週間)投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための抗体、抗原結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項14】
前記抗体またはその結合フラグメントが、ほぼ4週ごとに1回(例えば月1回)、(特に1回の処置サイクル、特に8週間)投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための抗体、抗原結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項15】
前記処置サイクルの投与前に、400~900mgの範囲内、例えば400mg、500mg、600mg、700mg、800mgまたは900mgの負荷用量を使用する、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のための抗体、抗原結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項16】
前記処置が、負荷用量を含まない、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のための抗体、抗原結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項17】
前記用量が200mgである、請求項1から16のいずれか一項に記載のその使用のための抗体、抗原結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項18】
前記用量が、350~450mgの範囲内、例えば400mgである、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用のための抗体、その結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項19】
前記用量が600mgである、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用のための抗体、その結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【請求項20】
前記処置サイクルが、600mgの初回用量、続いて400mgの3週に1回の用量を含み、例えば、前記処置サイクルが、2回繰り返される、すなわち2回の処置サイクルが8週間継続する、特に1日目に600mg、ほぼ8日目に400mg、ほぼ15日目に400mg、ほぼ22日目に400mg、ほぼ29日目に600mg、ほぼ36日目に400mg、ほぼ43日目に400mg、およびほぼ50日目に400mgが投与される、請求項1から23のいずれか一項に記載の使用のための抗体または結合フラグメント。
【請求項21】
疾患修飾が4日目までに生じ、1日目が前記抗体またはその結合フラグメントの初回投与である、例えば疾患修飾が、EASIスコアにおける低下により評価される、請求項1から20のいずれか一項に記載の使用のための抗体、抗原結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高度にアレルギー体質の個体群においてアトピー性皮膚炎を処置するための、抗IL-13Rα1抗体またはその結合フラグメントまたはそれを含む医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IL-13の活性を阻害する方法は、例えばIL-13Rαlに特異的な抗体などのIL-13Rに特異的な抗体を使用することにより、IL-13とその受容体IL-13Rとの結合を妨害することである。IL-13Rαlに対する効果的な抗体アンタゴニストはまた、IL-13の結合を妨害し、IL-4RαおよびIL-13Rαlのヘテロ二量体化を防止する可能性がある。そのような抗体は、II型受容体を介してIL-13およびIL-4の両方のシグナル伝達を阻害することができ、一方で、I型受容体を介したIL-4シグナル伝達を温存することができる。I型受容体を介したシグナル伝達は、Th2細胞が分化している間、免疫応答の誘導期において必須である。T細胞は、IL-13Rαlを発現せず、そのためII型受容体は、Th2分化に関与しない。したがって、IL-13Rαl抗体は、全体的なThl/Th2バランスに影響しないはずである。II型IL-4/IL-13受容体を介したシグナル伝達は、アレルギー性炎症が確立する間の免疫応答のエフェクタAステージの間で重要である。このため、II型受容体の遮断は、IL-13R媒介により媒介される状態の多くの症状に対して有益な効果をもたらすはずであり、そのため効果的な疾患修飾剤であるはずである。
【0003】
IL-13Rαlに対する抗体(モノクローナルおよびポリクローナルの両方)は、当技術分野において記載されている;例えば国際公開第97/15663号、国際公開第03/80675号;国際公開第03/46009号;国際公開第06/072564号;Gauchat et al,1998 Eur.J.Immunol.28:4286-4298;Gauchat et al,2000 Eur.J.Immunol.30:3157-3164;Clement et al,1997 Cytokine 9(11):959(会議抄録);Ogata et al,1998 J.Biol.Chem.273:9864-9871;Graber et al,1998 Eur.J.Immunol.28:4286-4298;C.Vermot-Desroches et al,2000 Tissue Antigens 5(Supp.l):52-53(会議抄録);Poudrier et al,2000 Eur.J.Immunol.30:3157-3164;Akaiwa et al,2001 Cytokine 13:75-84;Cancino-Diaz et al,2002 J.Invest.Dermatol.119:1114-1120;およびKrause et al,2006 MoI.Immunol.43:1799-1807を参照されたい。
【0004】
1つの特に有望な抗IL-13Rαl抗体は、抗体10G5-6として国際公開第2008/060813号に記載されている。ヒンジ安定化セリンからプロリンへの突然変異(S241Pカバットナンバリング)を有するIgG4として10G5-6は、ASLAN004として既知である。ASLAN004は、高親和性を有するヒトIL-13Rαlに結合することが示されている(例えばKdは500pMであり得る)。ASLAN004は、IL-13とその受容体IL-13Rαlとの結合を阻害することを通じてIL-13機能を効果的に弱めること、およびNHDF細胞におけるIL-13およびIL-4誘導エオタキシン放出、NHDF細胞におけるIL-13およびIL-4誘導STAT6リン酸化ならびに血液または末梢血単核細胞におけるTARCのIL-13刺激放出を阻害することが示された。
【0005】
アトピー性皮膚炎は、非常に苦痛を与え、気分を下げ、心理的にダメージを与える疾患であり得る。多くの疾患の根底にある原因があり、TARCなどのマーカーは、疾患予後および状態を追跡するために使用される。
【0006】
IgEレベルもまた評価することができ、データは、アトピー性皮膚炎の広範な群内に異なるカテゴリの患者が存在することを示唆し始めている。
【0007】
第2相のデュピルマブでは、患者個体群は、7,000KU/Lの領域内でベースラインIgE値を有していた。
【0008】
本発明者らは、14,000KU/Lの領域内のベースラインIgEレベルを有する患者を処置している。これは、潜在的により多くのアレルギー体質の患者個体群を表す。
【0009】
本発明者らは、IgEのより高いベースラインレベルを有するこれらの患者を処置することができ、抗IL-13Rα1抗体またはその結合フラグメントを用いる処置に十分に応答することができることを確立した。これらの患者がより高いレベルの炎症を有しており、したがって、処置がより困難であると思われ、例えば、疾患が修飾されている(例えばEASIスコアにより測定されるように)場合、結果を得るのがより困難である可能性がある、および/または結果を得るのに長くかかる可能性があるので、これは驚くべきことである。さらに、標的個体群においては、前向きな反応が、わずか8週間(すなわち約57日目)で達成される可能性がある。ベースラインからの低下率(同じ数値的低下率ではあるが)は、実際、IgEの開始時のレベルがより高い患者については実質的な低下がはるかに大きい。
【0010】
処置のためのこの患者の個体群を標的化することは、特に有益である場合がある。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、以下のパラグラフにより要約されるであろう:
1.例えばベースラインIgEレベルが確立されていて、少なくとも10,000KU/L+/-2,000のレベルである、高度にアレルギー体質の患者におけるアトピー性皮膚炎(例えば中等度から重度のアトピー性皮膚炎、特に制御不良の中等度から重度のアトピー性皮膚炎)などのアレルギーの処置において使用するための、前記受容体を結合することによるIL-13Rα1を介するシグナル伝達の阻害剤である阻害剤である、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0012】
2.ベースラインIgEレベルが、10,000+/-2,000~30,000+/-6,000KU/Lの範囲内である、パラグラフ1に記載の使用のための抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0013】
3.処置により、IgEレベルをベースラインから少なくとも15%まで低下させる、パラグラフ1または2に記載の使用のための抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0014】
4.処置により、IgEレベルをベースラインから少なくとも20%まで低下させる、パラグラフ3に記載の使用のための抗体またはその結合フラグメント。
【0015】
5.処置により、IgEレベルをベースラインから少なくとも30%まで低下させる、例えば前記レベルをベースラインから30~40%、例えば30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%または40%低下させる、パラグラフ3または4に記載の使用のための抗体またはその結合フラグメント。
【0016】
6.低下が、約15日目までに観察される、パラグラフ3から5のいずれか1つに記載の抗体または結合フラグメント。
【0017】
7.低下が、約29日目までに観察される、パラグラフ3から6のいずれか1つに記載の抗体またはその結合フラグメント。
【0018】
8.低下が、約57日目までに観察される、パラグラフ3から7のいずれか1つに記載の抗体またはその結合フラグメント。
【0019】
9.前記抗体または結合フラグメントが、例えば200mg~600mgの範囲内の用量を含む処置サイクルで非経口投与される、パラグラフ1から8のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその結合フラグメント。
【0020】
10.処置が静脈内投与される、パラグラフ1から9のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0021】
11.処置が皮下投与される、パラグラフ1から9のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0022】
12.複数用量が処置サイクルで投与される(例えば、処置サイクルは、4~8週間、例えば8週間である)、パラグラフ1から11のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0023】
13.複数の処置サイクルが投与される、例えば2回、3回、4回またはそれ以上の処置サイクルが投与される、パラグラフ12に記載の使用のための抗体またはその結合フラグメント。
【0024】
14.処置サイクルまたは複数のサイクルおよび疾患修飾に続いて、維持療法が、例えばより少ない頻度(例えば月1回)で投与された同じ用量、または同じ頻度もしくはより少ない頻度(例えば約2週に1回、約3週に1回、または約4週に1回)で投与されたより低い用量(例えば200mg)で投与される、パラグラフ12または13に記載の使用のための抗体またはその結合フラグメント。
【0025】
15.前記抗体またはその結合フラグメントが、ほぼ週1回(特に1回の処置サイクル、特に8週間)投与される、パラグラフ1から14のいずれか1つに記載の使用のための抗体または抗原結合フラグメント。
【0026】
16.前記抗体またはその結合フラグメントが、ほぼ2週ごとに1回(特に1回の処置サイクル、特に8週間)投与される、パラグラフ1から14のいずれか1つに記載の使用のための抗体または抗原結合フラグメント。
【0027】
17.前記抗体またはその結合フラグメントが、ほぼ3週ごとに1回(特に1回の処置サイクル、特に8週間)投与される、パラグラフ1から14のいずれか1つに記載の使用のための抗体または抗原結合フラグメント。
【0028】
18.抗体またはその結合フラグメントが、ほぼ4週ごとに1回(例えば月1回)、(特に1回の処置サイクル、特に8週間)投与される、パラグラフ1から14のいずれか1つに記載の使用のための抗体または抗原結合フラグメント。
【0029】
19.処置サイクルの投与前に、400~900mgの範囲内、例えば400mg、500mg、600mg、700mg、800mgまたは900mgの負荷用量を使用する、パラグラフ1から18のいずれか1つに記載の使用のための抗体または抗原結合フラグメント。
【0030】
20.処置が、負荷用量を含まない、パラグラフ1から18のいずれか1つに記載の使用のための抗体または抗原結合フラグメント。
【0031】
21.用量が200mgである、パラグラフ1から20のいずれか1つに記載のその使用のための抗体または抗原結合フラグメント。
【0032】
22.用量が、350~450mgの範囲内、例えば400mgである、パラグラフ1から20のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその結合フラグメント。
【0033】
23.用量が600mgである、パラグラフ1から20のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその結合フラグメント。
【0034】
24.処置サイクルが、600mgの初回用量、続いて400mgの3週に1回の用量を含み、例えば、処置サイクルが、2回繰り返される、すなわち2回の処置サイクルが8週間継続する、特に1日目に600mg、ほぼ8日目に400mg、ほぼ15日目に400mg、ほぼ22日目に400mg、ほぼ29日目に600mg、ほぼ36日目に400mg、ほぼ43日目に400mg、およびほぼ50日目に400mgが投与される、パラグラフ1から23のいずれか1つに記載の使用のための抗体または結合フラグメント。
【0035】
25.疾患修飾が4日目までに生じ、1日目が抗体またはその結合フラグメントの初回投与である、例えば疾患修飾が、臨床的に関連があるスコア、例えばEASIスコアまたはIGA、特にEASIスコアにおける低下により評価される、パラグラフ1から24のいずれか1つに記載の使用のための抗原結合フラグメント。
【0036】
26.抗体または結合フラグメントが、エピトープFFYQ(例えば、配列番号51に示されるVHおよび配列番号53に示されるVLを有する抗体、特に本明細書に開示されている配列を有する抗体または結合フラグメントと同じエピトープを結合する、パラグラフ1から25のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0037】
27.抗IL-13R抗体が、配列番号1に記載のとおりのアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2に記載のとおりのアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号10に記載のとおりのアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む、パラグラフ1から26のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0038】
28.抗IL-13R抗体が、配列番号51に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインを含む、パラグラフ1から27のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0039】
29.抗IL-13R抗体が、配列番号31に記載のとおりのアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号32に記載のとおりのアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号45に記載のとおりのアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、パラグラフ1から28のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0040】
30.抗IL-13R抗体が、配列番号53に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも95%同一の配列を含むVLドメインを含む、パラグラフ1から29のいずれか1つに記載の使用のための抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0041】
31.ベースラインIgEレベルが確立されていて、少なくとも10,000KU/L+/-2,000のレベルである、高度にアレルギー体質の患者におけるアトピー性皮膚炎(例えば中等度から重度のアトピー性皮膚炎、特に制御不良の中等度から重度のアトピー性皮膚炎)の処置において使用するための(特に請求項1から27のいずれか一項において定義されているような使用のための)、パラグラフ1から30のいずれか1つに記載の抗体または結合フラグメントを含む医薬製剤であって、前記製剤が:10~140mg/mlの抗体または結合フラグメント(例えば10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、50mg/ml、55mg/ml、60mg/ml、65mg/ml、70mg/ml、75mg/ml、80mg/ml、85mg/ml、90mg/ml、95mg/ml、100mg/ml、105mg/ml、110mg/ml、115mg/ml、120mg/ml、125mg/ml、130mg/ml、135mg/ml、140mg/ml);50mM~150mMのアルギニン(例えば50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mMまたは150mM、例えば100mMのアルギニン);15~25mMのヒスチジン緩衝液、例えば15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mMおよび25mM、例えば20mMのヒスチジン緩衝液;0.01~0.03%の非イオン界面活性剤、例えば0.02%w/vを含み、製剤のpHが、5.5~7.5の範囲内、例えば6.2~7.2(例えば6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2)、例えば6.5~7.0、特に6.4~6.9)である、医薬製剤。
【0042】
32.前記製剤が:10~140mg/mlの抗体または結合フラグメント;50mM~150mMのアルギニン(例えば50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mMまたは150mM、例えば100mMのアルギニン);15~25mMのヒスチジン緩衝液、例えば15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mMおよび25mM、例えば20mMのヒスチジン緩衝液;0.01~0.03%の非イオン界面活性剤、例えば0.02%w/vを含み、製剤のpHが、5.5~7.5の範囲内、例えば6.2~7.2(例えば6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2)、例えば6.5~7.0、特に6.4~6.9)である、パラグラフ31に記載の使用のための医薬製剤。
【0043】
33.製剤のモル浸透圧濃度が、350~550mOsmo/kgの範囲内、例えば350mOsmo/kg、355mOsmo/kg、365mOsmo/kg、370mOsmo/kg、375mOsmo/kg、380mOsmo/kg、385mOsmo/kg、390mOsmo/kg、395mOsmo/kg、400mOsmo/kg、405mOsmo/kg、410mOsmo/kg、415mOsmo/kg、420mOsmo/kg、425mOsmo/kg、430mOsmo/kg、435mOsmo/kg、440mOsmo/kg、445mOsmo/kg、450mOsmo/kg、455mOsmo/kg、460mOsmo/kg、465mOsmo/kg、470mOsmo/kg、475mOsmo/kg、480mOsmo/kg、485mOsmo/kg、490mOsmo/kg、495mOsmo/kg、500mOsmo/kg、505mOsmo/kg、515mOsmo/kg、520mOsmo/kg、525mOsmo/kg、530mOsmo/kg、535mOsmo/kg、540mOsmo/kg、545mOsmo/kg、550mOsmo/kg、例えば405~435mOsmo/kgである、パラグラフ31または32に記載の使用のための医薬製剤。
【0044】
34.さらに、50~200mMの糖、例えば50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、185mM、190mM、195mM、200mM、例えば180mMの糖を含む、パラグラフ31~30のいずれか1つに記載の使用のための医薬製剤。
【0045】
35.pHが6.5である、パラグラフ31から34のいずれか1つに記載の使用のための医薬製剤。
【0046】
36.製剤が、NaClを含まない、パラグラフ31~35のいずれか1つに記載の使用のための医薬製剤。
【0047】
37.製剤が、50~150mMのNaCl、例えば50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、例えば62.5mMまたは140mMのNaClを含む、パラグラフ31から35のいずれか1つに記載の使用のための医薬製剤。
【0048】
一実施形態において、本明細書で定義されているような高度にアレルギー体質の患者を、本明細書で定義されているような抗体またはその結合フラグメントまたは医薬製剤を用いて処置する方法が提供される。
【0049】
一実施形態において、高度にアレルギー体質の患者におけるアトピー性皮膚炎のための薬剤の製造のための、本明細書で定義されているような抗体またはその結合フラグメントまたは医薬製剤の使用が提供される。
【0050】
一実施形態において、本開示による処置と一緒/その後の治験責任者による包括的評価(IGA)における低下、例えば0、1または2の評価(それぞれ炎症兆候なし、ほぼなしおよび軽度の疾患)が提供される。特に、0または1のIGAスコアが提供される。
【0051】
一実施形態において、本開示による抗体、その抗原結合フラグメントまたは製剤およびさらなる薬剤を含む、併用療法が使用される。一実施形態において、さらなる薬剤は、アトピー性皮膚炎の処置用、例えば局所ステロイド、経口ステロイド、および/または抗ヒスタミン剤である。
【0052】
驚いたことに、本開示による抗IL-13Rα1抗体またはその結合フラグメントを用いる処置に続く疾患修飾が、TARCにおける低下を密接に伴い、実際、TARCの低下およびEASIの低下は、密接に相関している。
【0053】
本発明者らはまた、本発明の抗体、抗原結合フラグメントおよび組成物を使用して、アレルギー成分を有する他の疾患、例えばアレルギー性上皮疾患、例えばアレルギー性喘息、喘息-COPDおよび好酸球性食道炎を処置することができることを確立している。
【0054】
したがって、独立した態様において、例えば(アトピー性皮膚炎について)本明細書の他の場所に記載されているように、前記受容体を結合することによるIL-13Rα1を介するシグナル伝達の阻害剤である、抗体、結合フラグメントまたはそれを含む組成物を用いる、例えば高いIgEレベル(正常レベルと比較して高い)を有するアレルギー性疾患の処置が提供される。
【0055】
理論に縛られることを望むわけではないが、本発明者らは、このアトピー性皮膚炎の個体群におけるこれらのアレルギー性疾患で同じサイトカインおよび同様のまたは対応する機構が働くと考えられている。
【0056】
一実施形態において、アレルギー性疾患は、上皮組織で発現される。
【0057】
一実施形態において、アレルギー性疾患は、アレルギー性喘息、例えば制御不良および/または中等度から重度の喘息である。
【0058】
一実施形態において、アレルギー性疾患は、喘息-COPD、例えば制御不良および/または中等度から重度の喘息-COPDである。
【0059】
一実施形態において、アレルギー性疾患は、好酸球性食道炎、例えば制御不良および/または中等度から重度の好酸球性食道炎である。
【0060】
一実施形態において、患者は、処置の前に、例えばベースラインが確立されていて、少なくとも10,000KU/L+/-2,000のレベルであるアレルギー体質と同定されている。
【0061】
用量などアトピー性皮膚炎について本明細書に記載の優先傾向は、アレルギー性疾患の兆候に等しく適用される。
【0062】
一実施形態において、アレルギー性疾患は、アトピー性皮膚炎ではない。
【0063】
一実施形態において、アレルギー性疾患は、好酸球性食道炎ではない。
【0064】
発明の詳細な説明
本明細書で使用されるような疾患修飾は、例えば臨床的に関連のあるスコアにより測定されるような疾患状態における改善、特にEASIスコアにおける低下に関する。
【0065】
臨床的に関連のあるスコアは、臨床で使用される、例えば医師により使用されるスコアである。
【0066】
一実施形態において、疾患は、ベースラインから-20~-100%の範囲内の湿疹面積・重症度指数(EASI)スコアにおける低下率、例えばEASI50、EASI75またはEASI90により修飾される。EASIスコアおよびEASIは、本明細書では交換可能に使用される。
【0067】
本明細書で使用されるような湿疹面積・重症度指数(EASI)スコアは、アトピー性湿疹の面積(疾患の程度を示唆する)および重症度を測定するために使用されるツールである。用語「EASI」の後ろの数字は、ベースラインからのスコアにおける%低下を示唆する。このため、例えばEASI50は、スコアにおける50%低下を指し、EASI90は、スコアにおける90%低下を指す。
【0068】
一実施形態において、疾患修飾は、IGAにおける低下として測定される。
【0069】
本明細書で使用されるような治験責任者による包括的評価(IGA)は、アトピー性皮膚炎の評価のためのツールを指す。それは、患者の症状の重症度に応じて0~5ポイントのスケールを使用する:
【0070】
【表1】
【0071】
独立した態様において、食物アレルギー反応、特に重度の食物アレルギー反応、例えばピーナッツアレルギーの処置または改善のための本明細書で開示されているような抗体、抗原結合フラグメントまたは医薬製剤の使用が提供される。
【0072】
一実施形態において、高度にアレルギー体質の患者のベースラインIgEレベルは確立されており、少なくとも10,000KU/L+/-2,000、例えば8000KU/L、8500KU/L、9000KU/L、9500KU/L、10000KU/L、10500KU/L、11000KU/L、11500KU/Lまたは12000KU/Lのレベルである。
【0073】
一実施形態において、患者は、処置が投与される前に、例えば患者のベースラインIgEレベルが確立されていて、少なくとも10,000KU/L+/-2,000のレベルである、高度にアレルギー体質の患者であると同定される。したがって、一実施形態において、患者は、本明細書で定義されているような抗体またはその結合フラグメント、医薬製剤または薬剤の投与の前に、患者のベースラインIgEレベルが確立されていて、少なくとも10,000KU/L+/-2,000のレベルである、高度にアレルギー体質の患者であると同定される。したがって、一実施形態において、処置される標的個体群は、ベースラインIgEレベルが確立されていて、少なくとも10,000KU/L+/-2,000のレベルである、高度にアレルギー体質の患者である。
【0074】
一実施形態において、患者は、臨床的観察により高度にアレルギー体質であると同定される。
【0075】
喘息は、炎症および気管支痙攣により特徴づけられる呼吸器疾患であり、気道の周囲の筋肉が硬くなり、収縮して、気道を開いたままにしようとする。これにより、患者は、咳、喘鳴、胸部圧迫感および息切れをすることになる。呼吸の問題が重度になると、これは、典型的に喘息発作と呼ばれる。
【0076】
本明細書で使用されるようなアレルギー性喘息(アレルギー誘発喘息と交換可能に使用される)は、喘息の形態を指し、患者の肺が炎症を起こし、アレルゲンの吸入に応答して気道が硬くなる。一般的なアレルゲンには、花粉、ダスト、動物の鱗屑およびカビが含まれる。アレルギー性喘息を有する患者は、非アレルギー性喘息を有する患者と同じ症状-咳、喘鳴、胸部圧迫感および息切れの多くを経験する。したがって、2つの状態の間の主要な差異は、アレルギー性喘息を有する患者が、通常アレルゲンを吸入した後に症状を経験することである。
【0077】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、気道を閉塞し、結果として呼吸器障害となる慢性炎症性肺疾患の集合体である。肺気腫および慢性気管支炎は、COPDの原因となる2つの最も一般的な状態である。肺気腫(Empysema)は、肺胞が損傷を受けている状態であり、慢性気管支炎は、気管支が炎症を起こすことによる状態である。これらの2つの状態は、通常一緒に生じ、COPDを有する個体により重症度は異なる可能性がある。
【0078】
本明細書で使用されるような喘息-COPD(喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS)と交換可能に使用される)は、患者が喘息およびCOPDの両方を有することによる状態を指す。喘息-COPDと診断された患者は、肺の機能が低下しており、より重度の喘息発作があり、典型的には、喘息またはCOPDの単独の患者よりもより頻繁に症状を経験する。したがって、喘息-COPDは、いずれかの疾患単独よりもより重篤で危険な状態である。
【0079】
本明細書で使用されるような好酸球性食道炎(EOE)は、食道に好酸球が蓄積する(好酸球は通常食道で認められない)慢性免疫系疾患を指す。この蓄積は、食品、アレルゲンまたは酸の逆流に対する反応として生じ、炎症を起こし、食道組織を損傷する可能性がある。これにより、順に食道が狭くなり、嚥下が困難になる場合がある。重篤な場合、食物が喉に詰まるために、医療上の緊急事態にさえなる場合がある。EOEを有する患者の大部分は、アトピーである。したがって、アトピー性皮膚炎、食物または他の環境アレルゲンを有する個体は、EOEを発症する危険がより大きい。EOEの家族歴もまた、状態の危険因子である。現在、EOEを処置するために米国FDAにより承認されている薬剤はない。しかし、プロトンポンプ阻害剤(PPI)は、いくらかのEOE患者において食道炎症を低下させることが示されており、このため多くの場合、最初の処置として使用される。コルチコステロイドはまた、炎症の制御を助けるために投与される場合がある。
【0080】
本明細書で使用されるようなインターロイキン-13受容体(IL-13R)は、インターロイキン-13に結合するI型サイトカイン受容体である。それは、それぞれIL13Rα1およびIL4Rによりコードされる2つのサブユニットからなる。これらの2つの遺伝子は、タンパク質IL-13Rα1およびIL-4Rαをコードする。これらは、IL-13Rα1鎖に結合するIL-13と二量体を形成し、IL-4Rαは、この相互作用を安定化する。IL4Rサブユニットの存在のため、IL13Rはまた、IL-4シグナル伝達を開始することができる。どちらの場合も、これは、ヤヌスキナーゼ(JAK)/シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)経路の活性化を介して生じ、STAT6のリン酸化となる。ヒトIL-13Rα1は、Uniprot番号P3597を有する。
【0081】
以前はIL-13RおよびIL-13Rαと呼ばれていたIL-13Rα2は、IL-13に結合することができる別の受容体である。しかし、IL-13Rα1とは対照的に、このタンパク質は、高親和性でIL-13を結合するが、IL-4を結合しない。ヒトIL-13Rα2は、Uniprot番号Q14627を有する。
【0082】
一実施形態において、本開示の抗IL-13R抗体またはその結合フラグメントは、IL-13Rα1に結合する。一実施形態において、抗体またはその結合フラグメントは、IL-13Rα1にのみ結合し、IL-13Rα2には結合しない。
【0083】
一実施形態において、CDRH1は、参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2020/197502号に開示されているようなアミノ酸配列GYSFTSYWIG(配列番号1)を含む。
【0084】
一実施形態において、CDRH2は、参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2020/197502号に開示されているようなアミノ酸配列VIYPGDSYTR(配列番号2)を含む。
【0085】
一実施形態において、CDRH3は、式:
【0086】
【表2】
【0087】
を含む。
【0088】
一実施形態において、本開示の製剤で使用されるIL13-R1α1抗体または結合フラグメントは、配列番号4~30を含む配列から独立して選択されるCDRH3を含む。
【0089】
一実施形態において、本開示で使用される抗IL13R抗体または結合フラグメントは、配列番号1に記載のとおりのアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2に記載のとおりのアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号3に記載のとおりのアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む。
【0090】
一実施形態において、本開示で使用される抗IL13R抗体または結合フラグメントは、配列番号1に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号2に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH3を含む。
【0091】
一実施形態において、本開示で使用される抗IL13R抗体または結合フラグメントは、配列番号1に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号2に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号10に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH3を含む。
【0092】
一実施形態において、CDRL1は、RASQSISSSYLA 配列番号31を含むアミノ酸配列である。
【0093】
一実施形態において、CDRL2は、GASSRAT 配列番号32を含むアミノ酸配列である。
【0094】
一実施形態において、CDL3は、式:
【0095】
【表3】
【0096】
を含む。
【0097】
一実施形態において、本開示の製剤で使用されるIL-13Rα1抗体は、配列番号34~47を含む配列から独立して選択されるCDRL3を含む。
【0098】
一実施形態において、本開示で使用される抗IL-13Rα抗体または結合フラグメントは、アミノ酸配列、配列番号31を含むCDRL1、アミノ酸配列、配列番号32を含むCDRL2、および配列番号33に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0099】
一実施形態において、本開示の抗IL-13Rα抗体は、アミノ酸配列、配列番号31を含むVL CDR1、アミノ酸配列、配列番号32を含むVL CDR2、および配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、または47に記載のとおりのアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む。
【0100】
一実施形態において、本開示の抗IL-13R抗体は、アミノ酸配列、配列番号31を含むCDRL1、アミノ酸配列、配列番号32を含むCDRL2、および配列番号45に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0101】
一実施形態において、本開示の抗IL13R抗体は、配列番号1に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号2に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号3に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH3、アミノ酸配列、配列番号31を含むCDRL1、アミノ酸配列、配列番号32を含むCDRL2、および配列番号33に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0102】
一実施形態において、本開示の抗IL13R抗体は、配列番号1に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号2に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号3または10に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH3、アミノ酸配列、配列番号31を含むCDRL1、アミノ酸配列、配列番号32を含むCDRL2、および配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、または47に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0103】
一実施形態において、本開示の抗IL13R抗体は、配列番号1に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号2に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号3または10に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH3、アミノ酸配列、配列番号31を含むCDRL1、アミノ酸配列、配列番号32を含むCDRL2、および配列番号45に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0104】
一実施形態において、本開示の抗IL13R抗体は、配列番号1に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号2に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号10に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRH3、アミノ酸配列、配列番号31を含むCDRL1、アミノ酸配列、配列番号32を含むCDRL2、および配列番号45に記載のとおりのアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0105】
一実施形態において、VH領域は:配列番号48、配列番号49、配列番号50および配列番号51、またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列を含む群を含む配列から独立して選択される。
【0106】
【化1】
【0107】
【化2】
【0108】
【化3】
【0109】
【化4】
【0110】
一実施形態において、VLは、配列番号52、配列番号53および配列番号54、またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列を含む群から独立して選択される。
【0111】
【化5】
【0112】
【化6】
【0113】
【化7】

* Kは翻訳後修飾において削除された。
【0114】
一実施形態において、VH配列は、配列番号48(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、VL配列は、配列番号52、配列番号53、配列番号54(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)である。
【0115】
一実施形態において、VH配列は、配列番号49(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、VL配列は、配列番号52、配列番号53、配列番号54(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)である。
【0116】
一実施形態において、VH配列は、配列番号50(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、VL配列は、配列番号52、配列番号53、配列番号54(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)である。
【0117】
一実施形態において、VH配列は、配列番号51(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、VL配列は、配列番号52、配列番号53、配列番号54(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)である。
【0118】
一実施形態において、VL配列は、配列番号52(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、VH配列は、配列番号48、配列番号49、配列番号50または配列番号51(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)である。
【0119】
一実施形態において、VL配列は、配列番号53(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、VH配列は、配列番号48、配列番号49、配列番号50または配列番号51(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)である。
【0120】
一実施形態において、VL配列は、配列番号54(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、VH配列は、配列番号48、配列番号49、配列番号50または配列番号51(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)である。
【0121】
一実施形態において、VH配列は、配列番号51(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、VL配列は、配列番号53((またはそれと少なくとも95%同一の配列)である。
【0122】
本明細書で使用されるような可変領域は、CDRおよび適切なフレームワークを含む抗体鎖内の領域を指す。
【0123】
一実施形態において、重鎖は、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59および配列番号60、またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列を含む群から独立して選択される配列を含む。
【0124】
各配列番号55~60は、C末端でKの欠失がある翻訳後修飾を有する。配列番号55~60は、参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2020/197502号に配列番号56~61として開示されている。
【0125】
一実施形態において、軽鎖は、配列番号61:配列番号62および配列番号63またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列を含む群から独立して選択される。
【0126】
本明細書の配列番号61、62および63は、参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2020/197502号において、配列番号62、63および55として開示されている。
【0127】
一実施形態において、重鎖は、配列番号55、56、57、58、59、および60(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)から独立して選択され、軽鎖は、配列番号61、62および63(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)から独立して選択される。
【0128】
一実施形態において、重鎖は、配列番号55(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、軽鎖は、配列番号61、62、および63(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)から独立して選択される。
【0129】
一実施形態において、重鎖は、配列番号56(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、軽鎖は、配列番号61、62および64(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)から独立して選択される。
【0130】
一実施形態において、重鎖は、配列番号57(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、軽鎖は、配列番号61、62および63(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)から独立して選択される。
【0131】
一実施形態において、重鎖は、配列番号58(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、軽鎖は、配列番号61、62および63(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)から独立して選択される。
【0132】
一実施形態において、重鎖は、配列番号59(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、軽鎖は、配列番号61、62および63(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)から独立して選択される。
【0133】
一実施形態において、重鎖は、配列番号60(またはそれと少なくとも95%同一の配列)であり、軽鎖は、配列番号61、62および63(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)から独立して選択される。
【0134】
一実施形態において、重鎖は、配列番号58または60(またはそれらのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)であり、軽鎖は、配列番号61(またはそれと少なくとも95%同一の配列)に示される配列を有する。
【0135】
一実施形態において、重鎖は、配列番号58(またはそのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)であり、軽鎖は、配列番号61(またはそれと少なくとも95%同一の配列)に示される配列を有する。
【0136】
一実施形態において、重鎖は、配列番号60(またはそのいずれか1つと少なくとも95%同一の配列)であり、軽鎖は、配列番号61(またはそれと少なくとも95%同一の配列)に示される配列を有する。
【0137】
本明細書で使用されるような由来するは、使用される配列または使用される配列と非常に類似している配列が、抗体の軽鎖または重鎖などの元の遺伝物質から得られた事実を指す。
【0138】
本明細書で使用されるような「少なくとも95%同一」は、その完全長全体にわたって、参照配列と95%同一またはそれ以上、例えば96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を指すことが意図される。ソフトウエアプログラムは、パーセンテージ同一性を算出するために使用することができる。
【0139】
本明細書のタンパク質、抗体またはアミノ酸配列の任意の考察は、製造および/または貯蔵中に生成されたタンパク質、抗体またはアミノ酸配列の任意の変形を含むと理解されるであろう。例えば、製造または貯蔵中、抗体は、脱アミド化する(例えばアスパラギンまたはグルタミン残基で)および/または変更されたグリコシル化を有する、および/またはピログルタミン酸に変換されたグルタミン残基を有する、および/または除去されたか「短縮された」N-末端もしくはC末端残基を有する(コードされた抗体のC末端リジン残基は、多くの場合製造プロセス中に除去される)および/または不完全に処理されたシグナル配列の一部もしくは全部を有し、結果として、抗体の末端にとどまることができる。特定のアミノ酸配列またはその結合フラグメントを含む抗体が、記載されたもしくはコードされた配列および/または記載されたもしくはコードされた配列の変形またはそれらの結合フラグメントの異種混合物であり得ることが理解される。
【0140】
一実施形態において、本開示は、C末端リジンが開裂される、本明細書に明示的に開示されている配列まで延びる。
【0141】
一実施形態において、本開示の製剤で使用される抗体またはその結合フラグメントは、ヒト化されている。
【0142】
本明細書で使用されるようなヒト化(CDR移植抗体を含む)は、非ヒト種由来の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する分子を指す(例えば米国特許第5,585,089号明細書;国際公開第91/09967号を参照されたい)。CDR全体よりもCDRの特異性決定残基を移動させることだけが必要である可能性があることが認識されるであろう(例えばKashmiri et al.,2005,Methods,36,25-34を参照されたい)。ヒト化抗体は、場合によっては、CDRが由来する非ヒト種由来の1つまたは複数のフレームワーク残基をさらに含む可能性がある。レビューとしては、Vaughan et al,Nature Biotechnology,16,535-539,1998を参照されたい。
【0143】
CDRまたは特異性決定残基が移植される場合、任意の適切な受容体可変領域フレームワーク配列は、マウス、霊長類およびヒトフレームワーク領域を含めて、CDRが由来するドナー抗体のクラス/タイプを考慮して使用される可能性がある。本発明で使用することができるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAYおよびPOM(Kabat et al.,)である。例えば、KOLおよびNEWMは、重鎖に使用することができ、REIは、軽鎖に使用することができ、EU、LAYおよびPOMは、重鎖および軽鎖の両方に使用することができる。代わりに、ヒト生殖細胞系列配列を使用する場合がある;これらは、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/で利用可能である。
【0144】
本発明で使用されるヒト化抗体において、受容体重鎖および軽鎖は、同じ抗体に由来することは必ずしも必要ではなく、必要であれば、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含む可能性がある。
【0145】
フレームワーク領域は、受容体抗体のものと正確に同じ配列を有する必要はない。例えば、異常な残基は、その受容体鎖のクラスまたはタイプについて、より頻繁に生じる残基に変更される可能性がある。代わりに、受容体フレームワーク領域における選択された残基は、ドナー抗体の同じ位置で認められる残基に対応するように変更される可能性がある(Reichmann et al.,1998,Nature,332,323-324を参照されたい)。そのような変更は、ドナー抗体の親和性を回復させるのに必要な最小限にとどめる必要がある。変更される必要がある可能性がある受容体フレームワーク領域で残基を選択するためのプロトコルは、国際公開第91/09967号に記載される。
【0146】
一実施形態において、本開示の抗IL13R抗体は、完全にヒト型であり、特に1つまたは複数の可変ドメインは、完全にヒト型である。
【0147】
完全にヒト型の分子は、重鎖および軽鎖の両方の(存在する)可変領域および定常領域がすべてヒト起源であるか、実質的にヒト起源の配列と同一であり、必ずしも同じ抗体由来の必要はないものである。完全にヒト型の抗体の例には、例えば上述したファージディスプレイ法により生成される抗体、ならびにマウス免疫グロブリン可変領域および場合によっては定常領域の遺伝子が、それらのヒト型対応物により置き換えられているマウスにより生成される抗体、例えば、欧州特許第0546073号明細書、米国特許第5,545,806号明細書、米国特許第5,569,825号明細書、米国特許第5,625,126号明細書、米国特許第5,633,425号明細書、米国特許第5,661,016号明細書、米国特許第5,770,429号明細書、欧州特許第0438474号明細書および欧州特許第0463151号明細書に一般用語で記載されているものが含まれ得る。
【0148】
したがって、本開示の抗IL13R抗体は、天然に存在する定常ドメインまたは天然に存在するドメインの誘導体など、1つまたは複数の定常領域を含む可能性がある。本明細書で使用されるような天然に存在するドメインの誘導体は、天然に存在する配列の1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸が、例えば、不要な特性を除去することによるなどで、ドメインの特性を最適化するように置き換えられるか欠失されているが、ドメインの特徴的な機能が保持されているものを指すことが意図される。
【0149】
必要であれば、本発明で使用するための抗体は、1つまたは複数のエフェクタ分子にコンジュゲートされる場合がある。エフェクタ分子が、本発明の抗体に結合することができる単一の部分を形成するように結合している単一のエフェクタ分子または2つもしくはそれ以上のそのような分子を含む可能性があることが理解されるであろう。エフェクタ分子に結合している抗体フラグメントを取得することが望ましい場合、これは、抗体フラグメントが直接的に、またはカップリング剤を介することを含んで間接的にエフェクタ分子に結合する標準の化学的または組換えDNA手順により調製される可能性がある。そのようなエフェクタ分子を抗体にコンジュゲートするための技術は、当技術分野では周知である(Hellstrom et al.,Controlled Drug Delivery,2nd Ed.,Robinson et al.,eds.,1987,pp.623-53;Thorpe et al.,1982,Immunol.Rev.,62:119-58およびDubowchik et al,1999,Pharmacology and Therapeutics,83,67-123を参照されたい)。具体的な化学的手順には、例えば国際公開第93/06231号、国際公開第92/22583号、国際公開第89/00195号、国際公開第89/01476号および国際公開第03/031581号に記載されているものが含まれる。代わりに、エフェクタ分子がタンパク質またはポリペプチドである場合、結合は、例えば国際公開第86/01533号および欧州特許第0392745号明細書に記載されているような組換えDNA手順を使用して達成される可能性がある。
【0150】
本明細書で使用されるようなエフェクタ分子という用語は、例えば生理活性タンパク質、例えば酵素、他の抗体または抗体フラグメント、合成または天然に存在するポリマー、核酸およびそのフラグメント、例えばDNA、RNAおよびそのフラグメント、放射性核種、特に放射性ヨウ素、放射性同位体、キレート金属、ナノ粒子および蛍光化合物またはNMRもしくはESR分光法により検出することができる化合物などのレポータ基が含まれる。
【0151】
他のエフェクタ分子には、例えば診断に有用な検出可能な物質を含み得る。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、陽電子放出金属(陽電子放出断層撮影法で使用するため)、および非放射性常磁性金属イオンが含まれる。診断用薬として使用するための抗体にコンジュゲートすることができる金属イオンについては、一般に米国特許第4,741,900号明細書を参照されたい。好適な酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが含まれる;適切な補欠分子族には、ストレプトアビジン、アビジンおよびビオチンが含まれる;適切な蛍光物質には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドおよびフィコエリトリンが含まれる;適切な発光物質には、ルミノールが含まれる;適切な生物発光物質には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが含まれる;および適切な放射性核種には、125I、131I、111Inおよび99Tcが含まれる。
【0152】
別の例において、エフェクタ分子は、インビボでの抗体の半減期を延長する場合がある、および/または抗体の免疫原性を低減する場合がある、および/または上皮性関門を通る免疫系への抗体の送達を強化する場合がある。この種の適切なエフェクタ分子の例には、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質またはアルブミン結合化合物、例えば国際公開第05/117984号に記載されるものが含まれる。エフェクタ分子がポリマーである場合、一般に、合成または天然に存在するポリマー、例えば場合によっては置換された直鎖もしくは分岐鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレンまたはポリオキシアルキレンポリマーまたは分岐もしくは非分岐多糖類、例えばホモまたはヘテロ多糖であり得る。
【0153】
上述した合成ポリマーに存在する可能性がある特定の任意の置換基は、1つまたは複数のヒドロキシ、メチルまたはメトキシ基を含む。
【0154】
合成ポリマーの特定の例には、場合によっては置換された直鎖または分岐鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)またはそれらの誘導体、特に場合によっては置換されたポリ(エチレングリコール)、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)またはその誘導体が含まれる。
【0155】
特定の天然に存在するポリマーには、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲンまたはそれらの誘導体が含まれる。
【0156】
本明細書で使用されるような「誘導体」は、反応性誘導体、例えばマレイミドなどのチオール選択的反応基を含むことが意図される。反応性基は、直接的またはリンカーセグメントを介してポリマーに結合している可能性がある。そのような基の残基が、いくらかの場合、抗体フラグメントとポリマーとの間の結合基として製品の一部を形成することが理解されるであろう。
【0157】
適切なポリマーには、ポリアルキレンポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)または、特に、メトキシポリ(エチレングリコール)またはその誘導体、および特に約15000Da~約40000Daの範囲内の分子量を有するものが含まれる。
【0158】
一例において、本発明で使用するための抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に結合する。1つの特定の例において、抗体は、抗体フラグメントであり、PEG分子は、抗体フラグメント内に位置する任意の利用可能なアミノ酸側鎖または末端アミノ酸官能基、例えば任意の遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシルまたはカルボキシル基を介して結合される場合がある。そのようなアミノ酸は、抗体フラグメント内に天然に存在する可能性があるか、組換えDNA法を使用してフラグメント内に操作することができる(例えば米国特許第5,219,996号明細書;米国特許第5,667,425号明細書;国際公開第98/25971号、国際公開第2008/038024号を参照されたい)。一例において、本発明の抗体分子は、修飾Fabフラグメントであり、修飾は、1つまたは複数のアミノ酸のその重鎖のC末端への付加であり、エフェクタ分子の結合を可能にする。好適には、追加のアミノ酸は、エフェクタ分子が結合することができる1つまたは複数のシステイン残基を含む修飾ヒンジ領域を形成する。複数の部位は、2つまたはそれ以上のPEG分子を結合するために使用することができる。
【0159】
乳癌、癌関連リンパ浮腫(BCRL)などの癌を有する患者において、本開示の製剤は、リンパ浮腫関連影響、例えば線維症、過角化症、線維脂肪組織の沈着、体液貯留、肢の腫脹、皮膚弾力性の低下、および疼痛を防止する可能性がある。過剰の体積を低下させることにより、前記製剤は、リンパ系および例えば四肢機能を改善する可能性がある。
【0160】
リンパ損傷後のリンパ浮腫の発症は、組織炎症、CD4陽性細胞の浸潤およびそれらの2型ヘルパーT細胞(Th2)表現型への分化に関連する。Th2細胞は、リンパ浮腫関連症状および他のTh2関連疾患の発症において主要な役割を果たすIL-4およびIL-13を生じる。
【0161】
一実施形態において、本明細書の製剤は、別の療法と組み合わせて投与される。
【0162】
本明細書で使用されるような「組み合わせて」は、抗IL13R抗体が別の療法の前、それと同時に、または別の療法の後、同じまたは異なる製剤として投与されることを包含することが意図される。したがって、組み合わせは、第1の療法の薬理効果が、体内での第2の療法の薬理効果の存在と同時に存在する、および/または2つの療法が、一緒に使用されるようにデザインされた治療計画の一部であることである。
【0163】
本明細書で使用されるような治療用量は、適切な治療レジメンに採用された場合、例えば疾患の症状または状態を改善する、特に用量制限的副作用の誘発なしで意図された治療効果を達成するのに適している、ASLAN004などの抗IL13R抗体の量を指す。適切な治療用量は、一般に治療効果と耐用毒性との間のバランスであり、例えば、副作用および毒性は、治療により達成される利益を考慮すると許容可能である。
【0164】
一実施形態において、本開示による製剤(同じものを含む製剤を含む)は、月1回、例えば治療サイクルまたは維持療法として投与される。
【0165】
本明細書で使用されるような単位用量は、一般に、任意の過剰量を含む単回用量で投与される、本開示の抗IL13R抗体またはその結合フラグメントの量を含む製品を指す。
【0166】
現在特許請求されている抗IL13R抗体またはその抗原結合フラグメントの単位用量は、抗IL13R抗体またはその結合フラグメントの製剤などの製品の市販形態を指す場合があり、製品は、単回用量に必要である抗IL13R抗体の量に割り当てられている。したがって、メーカーは、各単位用量に含まれる抗13R抗体またはその結合フラグメントの正確な量を決定および制御することができる。
【0167】
製品は、バイアル、アンプル、輸液バッグまたはデバイス(自動注入デバイスを含む)などの技術に長けた者に周知の種々の形態であり得る。
【0168】
本明細書で使用されるような正確な量は、患者への用量および任意の過剰量として投与される量を指す。
【0169】
一実施形態において、単位用量または複数の単位用量は、本開示の方法にしたがって使用するためのものである。
【0170】
本明細書の文脈において、「含む(comprising)」は、「含む(including)」と解釈されるべきである。ある特定の特徴/要素を含む本発明の実施形態はまた、代替の実施形態である妥当な要素/特徴「からなる」または「本質的にからなる」にまで及ぶことが意図される。技術的に適切な場合、本発明の実施形態は、組み合わせることが可能である。
【0171】
特許および出願などの技術的参考文献は、参照により本明細書に組み込まれている。本明細書に具体的で明示的に記載されている実施形態はいずれも、単独または1つもしくは複数のさらなる実施形態との組み合わせのいずれかで、免責事項の基礎を形成する可能性がある。
【0172】
本明細書の背景技術のセクションは、関連する技術情報を含み、修正の根拠として使用される可能性がある。
【0173】
本明細書での主題の見出しは、本書をセクションに分割するために使用されており、本明細書に提供される開示の意味を解釈するために使用されることを意図していない。
【0174】
本明細書は、いずれも参照により本明細書に組み込まれているシンガポール共和国特許出願第10202102087T号(2021年3月1日出願);シンガポール共和国特許出願第10202110690S号(2021年9月27日出願)の優先権を主張する。これらの出願は、本明細書、特にその中で開示されている配列に関する補正の根拠として使用される場合がある。
【0175】
以下の実施例において例証のためのみに、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0176】
図1A】最大の解析対象集団の人口統計を示す表
図1B】最大の解析対象集団のベースライン疾患特徴を示す表
図1C】有効性評価可能対象集団(EES)のベースライン疾患特徴を示す表
図2A】EESについての57日目でのEASIスコアにおけるベースラインからの%変化を示す表。
図2B】EES(ASLAN004 200mg、400mgおよび600mg)についての57日目でのEASIスコアにおけるベースラインからの%変化を示すグラフ
図2C】EES(ASLAN004の低用量および高用量)についての57日目でのEASIスコアにおけるベースラインからの%変化を示すグラフ
図3A】EESについての29日目でのEASIスコアにおけるベースラインからの%変化を示す表
図3B】EES(ASLAN004 200mg、400mgおよび600mg)についての29日目でのEASIスコアにおけるベースラインからの%変化を示すグラフ
図4A】EES(ASLAN004 200mg、400mgおよび600mg)についての経時的なEASIスコアにおける%変化を示すグラフ
図4B】EES(ASLAN004の低用量および高用量)についての経時的なEASIスコアにおける%変化を示すグラフ
図5A】EES(プラセボ)についての経時的なEASIスコアにおけるベースラインでの%変化を示すグラフ
図5B】EES(ASLAN004 200mg)についての経時的なEASIスコアにおけるベースラインでの%変化を示すグラフ
図5C】EES(ASLAN004 400mg)についての経時的なEASIスコアにおけるベースラインでの%変化を示すグラフ
図5D】EES(ASLAN004 600mg)についての経時的なEASIスコアにおけるベースラインでの%変化を示すグラフ
図6A】修正治療意図(mITT)における57日目の感受性分析を示す表
図6B】mITT(ASLAN004 200mg、400mgおよび600mg)における57日目の感受性分析を示すグラフ
図6C】mITT(ASLAN004の低用量および高用量)における57日目の感受性分析を示すグラフ
図7A】EESについての57日目でのEASI50、EASI75、EASI90を示す要約表
図7B】EES(ASLAN004 200mg、400mgおよび600mg)についての57日目でのEASI50を示すグラフ
図7C】EES(ASLAN004の低用量および高用量)についての57日目でのEASI50を示すグラフ
図7D】EES(ASLAN004 200mg、400mgおよび600mg)についての57日目でのEASI75を示すグラフ
図7E】EES(ASLAN004の低用量および高用量)についての57日目でのEASI75を示すグラフ
図7F】EES(ASLAN004 200mg、400mgおよび600mg)についての57日目でのEASI90を示すグラフ
図7G】EES(ASLAN004の低用量および高用量)についての57日目でのEASI90を示すグラフ
図8A】EASI50を達成する患者の割合を示すグラフ
図8B】EASI75を達成する患者の割合を示すグラフ
図8C】EASI90を達成する患者の割合を示すグラフ
図9】EESおよびmITTについてのEASI50、75、90を達成する患者の割合を示す要約表
図10A】ESSについての57日目での0または1のIGAスコアを有する患者の割合を示す要約表
図10B】ESSについての57日目での0または1のIGAスコアを有する患者の割合を示すグラフ
図10C】ESSについての経時的な0または1のIGAスコアを有する患者の割合を示すグラフ
図11】患者のベースラインTARCおよびIgEレベルを示す表
図12A】ベースラインTARC(ASLAN004 200mgおよび400mg)からの平均%変化を示すグラフ
図12B】ベースラインTARC(ASLAN004 400mgおよびプラセボ)からの平均%変化を示すグラフ
図12C】個々の患者でのベースラインTARC(ASLAN004 400mg)からの%変化を示すグラフ
図13A】ASLAN004 200mgおよび400mgについてのベースラインからのIgE%変化を示すグラフ
図13B】ASLAN004 200mgおよび400mgについてのベースラインからの平均IgE%変化を示すグラフ
図13C】プラセボについての個々の患者でのベースラインからのIgE%変化を示すグラフ
図13D】ASLAN004 200mgについての個々の患者でのベースラインからのIgE%変化を示すグラフ
図13E】ASLAN004 400mgについての個々の患者でのベースラインからのIgE%変化を示すグラフ
図14】ASLAN004 400mgを受け取る患者について経時的なASLAN004曝露、EASI、TARCおよびIgE間の比較を示すグラフ
図15】ASLAN004とデュピルマブとの間の比較を示す表
【発明を実施するための形態】
【0177】
実施例
実施例1 研究プロトコル(初期MADエスカレーション)
患者は、ASLAN004(本明細書における配列番号51、53および59):200mg、400mg、600mgの上昇する用量コホートに登録した。最初に、用量をQWで与えた(QW)。各コホート内で、患者を3:1のASLAN004:プラセボの比に無作為化した。
【0178】
【表4】
【0179】
図13Aは、15日目、29日目、43日目および57日目でのベースラインまたは処置を受けている患者すべてからの%変化を示す。図13Bは、同じ期間にわたってベースラインからの平均%変化を示す。
【0180】
図13C図13Eは、個々の患者についてのデータを示す。
【0181】
【表5】
【0182】
高度にアレルギー体質の患者の個体群(IgE41.6%cfbl)において、ASLAN004が、IgEレベルを-34%まで低下したことを確認することができる。実質的には、これは、デュピルマブでより低いアレルギー反応を有する個体群において-15~-30%よりさらに有意な低下である。
【0183】
実施例2
プロトコルでは有効性評価データセットとして定義されている、全施設にわたる少なくとも29日間の投与を完了した32人の患者において、8週でのEASIにおけるベースラインからの平均低下は、プラセボの患者の44%(n=13)と比較して73%(n=19)であった(p=0.007)。
【0184】
有害事象および処置関連有害事象を有する患者の割合は、処置群およびプラセボ群にわたって同様であった。拡大コホートでは結膜炎の発生はなかった。
【0185】
【表6】
【0186】
ASLAN004は、湿疹面積・重症度指数(EASI)においてベースラインからの増減率の主要な有効性エンドポイントでプラセボに対して統計的に有意な改善(p<0.025)を達成し、また、他の重要な有効性エンドポイント:EASI-50、EASI-75、ピーク掻痒および患者自身による湿疹評価(POEM)で有意な改善(p<0.05)を示した。
【0187】
盲検解除の前にデータモニタリング委員会との考察に続いて、改定ITT個体群(RITT、n=29)は、研究に登録された全患者が、TARCなどのバイオマーカー、および患者の病歴に基づいて中等度から重度のAD患者の異常とみられる1つの研究施設を除外するために定義された。中等度から重度のADにおける他の公表された研究にさらに匹敵するRITT個体群において、ASLAN004はまた、EASIにおけるベースラインからの増減率においてプラセボに対して統計的に有意な改善(p<0.025)を達成し、重要な有効性エンドポイントにおいてITT個体群に対してプラセボよりもより大きい改善を示した。
【0188】
実施例3
喘息患者、例えば中等度から重度のアレルギー性喘息患者、特に制御不良の喘息患者の範囲は、実施例1にしたがって処置することができる。
【0189】
実施例4
好酸球性食道炎患者、例えば中等度から重度の好酸球性食道炎患者、特に制御不良の喘息患者の範囲は、実施例1にしたがって処置することができる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図14
図15
【配列表】
2024529809000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024529809000001.app
【国際調査報告】