(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ガラス化及びガラス化された生物活性剤の送達のための装置
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20240806BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61J1/05 351A
A61J3/00 300Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580428
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022035892
(87)【国際公開番号】W WO2023278815
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523177953
【氏名又は名称】アップカラ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッツラフ、メアリー
(72)【発明者】
【氏名】モハンティ、プラバンス
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ジュオラン
(72)【発明者】
【氏名】レディ、アルン
(72)【発明者】
【氏名】ブロンサート、ローラ
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047AA11
4C047CC19
4C047CC30
4C047DD02
4C047DD03
4C047DD04
4C047DD05
4C047DD11
4C047DD22
4C047DD32
4C047DD33
4C047DD35
4C047GG15
4C047HH06
(57)【要約】
生物活性剤をガラス化し、ガラス化された生物活性剤を送達するための装置は、内面、外面、及び周囲を有する上部ハウジング、内面、外面、及び周囲を有する底部ハウジング、及び前記ハウジングを相互接続し、上部ハウジングと底部ハウジングの内面の間に内部容積を画定する相互接続構造体を含む。前記底部ハウジングは、底部ハウジングが上部ハウジングから離れて湾曲する第1構成と、底部ハウジングが上部ハウジングに向かって湾曲する第2構成との間で変形可能であるように可撓性材料で形成され得る。前記相互接続構造体は、内面同士が第1距離だけ離間している第1位置で、及び、内面同士が第1距離よりも短い第2距離だけ離間している第2位置で、上部ハウジングと底部ハウジングを相互接続してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性剤をガラス化し、ガラス化された生物活性剤を送達するための装置であって、
内面、外面、及び周囲を有する上部ハウジング;
内面、外面、及び周囲を有する底部ハウジング;及び
前記上部ハウジングと前記底部ハウジングとを相互接続して、前記上部ハウジングの内面と前記底部ハウジングの内面との間に内部容積を画定するように動作可能な相互接続構造体、
を備え、
前記底部ハウジングは、可撓性材料で形成され、これにより、前記底部ハウジングは、該底部ハウジングが前記上部ハウジングから離れて湾曲する第1構成と、該底部ハウジングが前記上部ハウジングに向かって湾曲する第2構成との間で変形可能である、
装置。
【請求項2】
前記第1構成にある前記底部ハウジングを有する前記装置の内部容積は、前記第2構成にある前記底部ハウジングを有する前記装置の内部容積よりも大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記上部ハウジングの周囲と前記底部ハウジングの周囲とが相互接続されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記相互接続構造体が、前記上部ハウジングの周囲から延伸するロック要素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記底部ハウジングが、前記底部ハウジングの周囲から延伸する係合リップを含み、前記係合リップが、前記ロック要素と係合する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記内部容積内に配置された基板をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記基板が、前記上部ハウジングの周囲と前記底部ハウジングの周囲との間に保持される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記上部ハウジングは、前記内部容積が通って露出される中央ポートを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記中央ポートに結合可能なコネクタをさらに備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記コネクタが、シールによって密封可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記コネクタが、注射器または針を受け入れるように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記上部ハウジングと前記底部ハウジングとの間に配置され、該上部ハウジングと該底部ハウジングとが相互接続されたときに、該上部ハウジングと該底部ハウジングとの間にシールを形成するガスケットをさらに備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記ガスケットが、疎水性で多孔質である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
生物活性剤をガラス化し、ガラス化された生物活性剤を送達するための装置であって、
内面、外面、及び周囲を有する上部ハウジング;
内面、外面、及び周囲を有する底部ハウジング;及び
前記上部ハウジングと前記底部ハウジングとを相互接続して、前記上部ハウジングの内面と前記底部ハウジングの内面との間に内部容積を画定するように動作可能な相互接続構造体、
を備え、
前記相互接続構造体は、前記上部ハウジングの内面と前記底部ハウジングの内面が、第1距離だけ離間している第1位置で、及び、前記上部ハウジングの内面と前記底部ハウジングの内面が、前記第1距離よりも短い第2距離だけ離間している第2位置で、前記上部ハウジングと前記底部ハウジングを相互接続するように動作可能である、
装置。
【請求項15】
前記上部ハウジングと前記底部ハウジングが第1位置で相互接続されるときに、該上部ハウジングと該底部ハウジングとの間にシールが形成され、また、前記上部ハウジングと前記底部ハウジングが第2位置で相互接続されるときに、該上部ハウジングと該底部ハウジングとの間にシールが形成され、前記第2位置にある内部容積は、前記第1位置にある内部容積と比較してサイズが縮小されている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記上部ハウジングと前記底部ハウジングとの間に配置され、該上部ハウジングと該底部ハウジングとが前記第1位置及び前記第2位置で相互接続されたときに、該上部ハウジングと該底部ハウジングとの間にシールを形成するガスケットをさらに備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記ガスケットが、疎水性で多孔質である、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記相互接続構造体は、前記上部ハウジングが前記底部ハウジングの上に載置され、ガラス化のために該上部ハウジングと該底部ハウジングとの間に空隙ができるように、該上部ハウジングを支持する第3位置をさらに備える、請求項14~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記上部ハウジングの周囲と前記底部ハウジングの周囲とが相互接続されている、請求項14~18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記相互接続構造体が、前記上部ハウジングの周囲から延伸するロック要素を含む、請求項14~19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記底部ハウジングが、前記底部ハウジングの周囲から延伸する複数の凹部を含み、前記凹部が、前記ロック要素と選択的に係合する、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記凹部が、第1凹部と第2凹部とを含み、前記ロック要素が前記第1凹部と係合するときに、前記上部ハウジング及び前記底部ハウジングが前記第1位置で相互接続し、前記ロック要素が前記第2凹部と係合するときに、前記上部ハウジング及び前記底部ハウジングが前記第2位置で相互接続する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記内部容積内に配置された基板をさらに備える、請求項14~18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記上部ハウジングは、前記内部容積が通って露出される上部チューブを含む、請求項14~18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記底部ハウジングは、前記内部容積が通って露出される底部チューブを含む、請求項14~18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
前記底部チューブが、シールによって密封可能である、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記底部チューブが、注射器または針を受け入れるように構成される、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記上部ハウジングと前記底部ハウジングとの間に配置され、該上部ハウジングと該底部ハウジングとの間を密封するガスケットをさらに備える、請求項14~18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
ガラス化された生物活性剤を送達するための方法であって、
内面、外面、及び周囲を有する上部ハウジング;
内面、外面、及び周囲を有する底部ハウジング;
及び
前記内部容積内に配置され、ガラス化された生物活性剤を含むかまたは支持する基板
を備え、前記上部ハウジング及び前記底部ハウジングは、相互接続されて、該上部ハウジングの内面と該底部ハウジングの内面との間に内部容積を画定し、ガラス化された生物活性剤を送達するための装置を提供すること;
投与溶剤を前記装置の前記内部容積内に導入すること;及び
前記生物活性剤を前記投与溶剤に再構成すること
を含む、
方法。
【請求項30】
前記装置が、前記上部ハウジングと前記底部ハウジングとを相互接続するように動作可能な相互接続構造体をさらに備える、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記基板が、前記上部ハウジングの周囲と前記底部ハウジングの周囲との間に保持される、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記底部ハウジングは、該底部ハウジングが前記上部ハウジングから離れるように湾曲する第1構成と、該底部ハウジングが前記上部ハウジングに向かって湾曲する第2構成との間で変形可能であるように、可撓性材料で形成され、前記内部容積が、前記底部ハウジングが前記第2構成にあるときよりも、該底部ハウジングが前記第1構成にあるときの方が大きい、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記投与溶剤を、前記第2構成にある前記底部ハウジングで前記内部容積内に該底部ハウジングが前記第1構成に変形するまで導入することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記装置が、前記上部ハウジングの内面と前記底部ハウジングの内面とが第1距離だけ離間されている第1位置で、及び、前記上部ハウジングの内面と前記底部ハウジングの内面とが第1距離よりも短い第2距離だけ離間されている第2位置で、該上部ハウジングと該底部ハウジングを相互接続するように動作可能な相互接続構造体をさらに備える、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記上部ハウジングと前記底部ハウジングが前記第1位置で相互接続されるときに、該上部ハウジングと該底部ハウジングとの間にシールが形成され、また、前記上部ハウジングと前記底部ハウジングが前記第2位置で相互接続されるときに、該上部ハウジングと該底部ハウジングとの間にシールが形成され、前記第2位置にある内部容積は、前記第1位置にある内部容積と比較してサイズが縮小されている、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記装置が、前記相互接続構造体は前記上部ハウジングが前記底部ハウジングの上に載置され、ガラス化のために該上部ハウジングと該底部ハウジングとの間に空隙ができるように、該上部ハウジングを支持する第3位置をさらに備える、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記上部ハウジングの周囲と前記底部ハウジングの周囲が、相互接続されている、請求項34~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記ハウジングが第1位置にあるときに、前記投与溶剤を前記内部容積に導入することをさらに含む、請求項34~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ハウジングを前記第1位置から前記第2位置に移動させることによって前記再構成された生物活性剤を投与することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記基板上の前記生物活性剤を前記内部容積中の該基板でガラス化することをさらに含む、請求項29~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記投与溶剤で前記生物活性剤を回収することをさらに含む、請求項29~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記投与溶剤で前記生物活性剤を前記底部ハウジングが崩壊して前記上部ハウジングに向かって湾曲されるまで回収することをさらに含む、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記投与溶剤が、内部容積の前記基板と前記上部ハウジングとの間の部分に導入される、請求項29~42のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2021年7月1日に出願され、「ガラス化及びガラス化された生物活性剤の送達のための装置」と題されている米国仮出願第63/217,460号及び2021年7月1日に出願され、「ガラス化及びガラス化された生物活性剤の送達のための装置」と題されている米国仮出願第63/217,458号の優先権を主張する。それらの全体が、いずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、ガラス化及びガラス化された生物活性剤の送達のための装置に関する。
【背景】
【0003】
疾患または症状を治療するための生物学的製剤の送達は、最も一般的には静脈内(IV)投与によるものである。生物学的製剤は通常、高分子量(例えば 500 Da以上)の治療用分子と考えられ、かつ/または体内で通常見られる分子(例えば、抗体)に類似した分子である。モノクローナル抗体(mAb)は、現在IV投与が承認されている生物学的製剤の大部分を占めている。IV点滴用に承認されたmAbの代表的な例は多数あり、他の多数のそのようなmAbの中でも、臓器移植拒絶反応を治療するためのムロモナブCD3、他の疾患の中でも特に関節リウマチを治療するためのインフリキシマブ、非ホジキンリンパ腫を治療するためのリツキシマブ、及びB細胞性慢性リンパ性白血病を治療するためのアレムツザマブが含まれる。現在、IV投与を必要とする他の生物学的製剤も周知されている。例えば、これに限定されないが、特に黒色腫を治療するためのアルデスロイキンが挙げられる。実際的な観点から見ると、抗体療法では多くの場合、大きな治療用量が必要となり(例えば、トラスツズマブの場合は8 mg/kg、リツキシマブの場合は375 mg/m2)、IV経由でのみ投与できる抗体を完全に可溶化するための注射量が必要となる。
【0004】
IV点滴の1つの制限は、治療薬の急速なクリアランスの可能性である。生物学的製剤の循環器からのクリアランスは、腎臓濾過または非特異的結合及び吸収(内皮飲作用等)のいずれかによって起こる。循環半減期が短いと、投与は毎週から毎日になり、頻繁に注射する必要性が生じ得る。そのため、患者の不快感、治療計画の総費用、及び患者による不遵守のリスクが増加する。
【0005】
血漿半減期を延長するために、PEG化として知られる戦略が開発されている。即ち、親水性ポリマー(ポリエチレングリコール;「PEG」)を治療薬に共有結合させる方法である。これは、治療用分子の流体力学的サイズを増大させ、それにより、腎クリアランス速度を低減させ、また、循環器における持続性を最大数百倍まで大幅に向上させる。しかし、FDAが承認したIV投与用のPEG化された生物学的製剤の成功例は限られており、例えば、慢性痛風を治療するためのペグロチカーゼ(尿酸代謝酵素)等がある。
【0006】
IV送達の他の制限は、高レベルの生物学的製剤の静脈内投与による非標的臓器での潜在的な毒性副作用である。例えば、アルデスロイキン療法は、抗体療法よりも大幅に少ない用量(1回あたり0.037 mg/kg)を必要とするが、アルデスロイキンの全身注入は、潜在的に致死的な重篤な副作用を伴うため、入院投与が必要である。有効性と最小限の毒性のバランスという点で最適化することが極めて難しいことが証明されているもう1つの組換えサイトカイン療法は、免疫刺激性抗がん治療としての腫瘍壊死因子a(TNF-a)を使用している。TNF-aは腫瘍内皮に優先的に作用し、腫瘍組織の出血性壊死を引き起こす透過性亢進を誘導すると考えられている。しかし、全身的に高レベルのTNF-aに曝露されると、低血圧や敗血症性ショック様症候群等の重篤な毒性を引き起こす可能性がある。
【0007】
生物学的製剤のIV送達後の毒性及び急速なクリアランスの問題は、両方とも点滴された治療薬のほぼ即時的な全身的な利用可能性に関連している。治療効果を達成するために、このような迅速な利用が必要な場合はあるが、多くの生物学的製剤は、(全身への利用可能性を維持しながら)体内へゆっくりと薬物動態的に分布して恩恵を受けている。さらに、IV点滴にはカテーテルを媒介した感染のリスクが伴い、特に院内環境での耐性胞子の出現により、著しい痛みや不快感が生じ、管理下での入院投与が必要となる。
【0008】
患者により優しい投与のため、また自己投与を可能にするために、生物学的製剤の皮下(SC)送達は、非常に興味深い方法である。現在、承認された多くの生物学的製剤がSC投与されており、この投与経路の成功は、特にプレフィルドシリンジ(PFS)、ペン、または自己投与や自宅投与を可能にする自動注射装置への送達と組み合わせた場合、慢性的な病状または症状の管理に使用される生物学的療法にとって非常に重要である。実際では、最近、ファイザー社とモデルナ社からのCOVID-19ワクチンを含め、多くのPEG化された生物学的製剤がSC注射用に承認されている。皮下投与により患者のコンプライアンスが向上し、入院が回避されるため、治療費が削減される。特に、頻繁な投与が必要となり得る循環半減期が短い生物学的製剤の場合、継続的な入院患者へのIV点滴が必要な場合とは対照的に、SC注射による治療薬を自己投与できることは、患者の生活の質に多大な利益をもたらす。
【0009】
SC注射の使用がIV送達を改善できる別の状況は、全身注入後に重度の毒性を有する生物学的薬物の場合である。例えば、a及びb INF等の組換えサイトカイン療法は、様々ながん、B型及びC型肝炎、及び多発性硬化症等の多くの疾患に治療効果をもたらすが、そのような治療薬のIV送達は、治療薬が急速に全身拡散した後に有害事象を引き起こす可能性がある。SC投与は、注射部位で相対的な蓄積効果を生み出すため、IV点滴よりも利点がある。治療薬が全身的な循環に排出されるのに必要な時間は、生体内での薬剤の半減期を効果的に延長させ、同時に、様々な区画での最大薬物濃度を低減させる。そのため、必要な投与頻度が減少し、有害な事象の頻度や重症度が軽減される。
【0010】
SC注射は、よりフラットな薬物動態プロファイル(ピーク血漿濃度はより低いが、有効レベルでの持続時間はより長い)を達成するために使用することができるが、SC経路の制限は、痛みを伴わずに投与できる注射量である。これは、ヒトの場合、通常は最大約 2~2.5 mlの液体である。腫瘍学用途における治療用抗体等、いくつかの生物学的製剤のレジメンでは、安定した注射可能な形態で調製できる薬剤の最も濃縮された形態では5 mlの投与量が必要であり、従来のSC注射には問題がある。この容積上の制限を克服するために、現在臨床試験中の1つの戦略として、組換えヒトヒアルロニダーゼを用いて、結合組織の細胞外マトリックス(ECM)の重要な多糖成分であるヒアルロン酸を局所的に消化することである。
【0011】
ヒアルロニダーゼを生物学的製剤と同時注射すると、局所ECMにナノスケールの多孔性が生成され、注射部位からの液体の迅速な排出が可能になり、痛みを伴わずに大量の溶液を注射できるようになる。マトリックスは約24時間以内に自己修復するため、この変化は一時的なものにすぎない。早期乳がんの治療等の状況に適応される長期(1年超)の維持療法における患者のコンプライアンスを向上させるために、現在、IV点滴として投与され、腫瘍学で承認されたいくつかのmAb(トラスツズマブ、リツキシマブ)は、この改変された投与戦略で試験されている。
【0012】
生物学的製剤の局所注射の別の動機は、全身曝露とその後に生じ得る毒性を最小限に抑えることである。この例としては、加齢黄斑変性症(AMD)を治療するための血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニストの硝子体内(目に直接)注射がある。VEGFを標的とするRNAアプタマーであるペガプチニブ、及び、抗VEGF mAbであるベバシズマブ及びラニビズマブは全て、AMDの進行を遅らせる能力を実証している。しかし、VEGFアンタゴニストの全身注入は、全身の健康な血管系におけるVEGFの正常な機能を破壊する可能性があり、血栓塞栓症、高血圧、及び創傷治癒障害のリスク増加につながる可能性がある。初期の臨床研究では、VEGFアンタゴニストの硝子体内注射は、IV点滴と比較して、安全性プロファイルが改善され、全身性有害事象の頻度が低減されることは示された。
【0013】
生物学的治療薬の局所注射の別の重要な動機は、治療薬の局所濃度を最高にし、特定の組織または器官に対する治療の有効性を改善することである。例えば、二重特異性抗体カトゥマキソマブ(抗CD3/抗上皮細胞接着分子EPCAM)は、上皮癌、胃癌、または卵巣癌に起因する悪性腹水を治療するために腹腔内注射される。前臨床薬物動態研究では、カトゥマキソマブの腹腔内(IP)投与により、腹水中に高い局所濃度の抗体が生成される一方、全身性抗CD3刺激の潜在的な毒性を考慮すると重要な所見である全身曝露が大幅に制限されること(血漿中の検出下限は<5%)が確認された。
【0014】
SC投与の前述の利点を活用するには、注入量を小さく保つために高濃度の溶液が必要である。高濃度タンパク質製剤(HCPF)は、一般に不精確ではあるが、50~150 mg/mL範囲のタンパク質製剤に適用されるが、HCPFの物理的特性は非タンパク質の生物学的製剤にも適用することができる。HCPFの特性には、例えば、粘度の増加、高い乳光、液-液相分離、ゲル形成、またはタンパク質粒子形成傾向の増加が含まれる。高濃度製剤の主な目標は、タンパク質の安定性と良好な注入性であり、この後者には低から中程度の粘度が必要である。化学分解のメカニズムには、脱アミド化、酸化、及びイソアスパラギン酸の形成が含まれる。コロイドの安定性が不十分であると、不可逆的な凝集、沈殿、及び相分離が発生する。
【0015】
限定的ではあるが、タンパク質濃度が150~200 mg/mLの市販された高濃度の生物学的製剤は、凍結乾燥(フリーズドライ)製品として供給される。しかし、高濃度の凍結乾燥タンパク質製剤の開発には、非常に長い再構成時間や安定性の問題等、さらなる課題が生じる。高タンパク質濃度で観察される特性の中には、凍結乾燥された医薬品の開発に特別な課題を課すものもある。
【0016】
コロイドの不安定性は、より高いタンパク質濃度で増加する。液-液相分離は、凍結乾燥の凍結工程中に増強され得る。凍結乾燥中の賦形剤の相分離もタンパク質の安定性を損なう可能性がある。賦形剤の相分離は、凍結乾燥された固体におけるタンパク質の安定化を説明するためによく使用される「ガラス状固定化」の概念が常に成り立つわけではない理由の1つであり得る。即ち、タンパク質は単にガラスを「見ていない」。 効果的なタンパク質安定剤として機能する賦形剤は、化学的に不活性なガラスを形成するだけでなく、「タンパク質と単一相も形成する」。これには、分離を阻止しながらもタンパク質を変性させないために、タンパク質表面との「適度な」相互作用が必要である」(Pikal, M. J. タンパク質の凍結乾燥。ペプチドとタンパク質の安定的な製剤化と送達; Cleland, J. L.; Langer, R., Eds., ACSシンポジウムシリーズ、アメリカ化学会: Washington, D.C., 1994; pp 120-133)。乾燥中にタンパク質に水素結合したままの賦形剤は、タンパク質から相分離されることができない。
【0017】
凍結中のタンパク質の挙動は、凍結乾燥の別の重要な側面である。高濃度(約 50 mg/ml)では、凍結により乳光が増加し、目に見える粒子の形成とモノマー含有量の減少が伴う可能性がある。化学的分解、つまり糖化は、冷凍プロセスに関連している。タンパク質濃度が増加すると、ガラス転移温度と崩壊温度の差が徐々に大きくなる。凍結乾燥されたHCPFの再構成時間は非常に長く、最大30分間以上かかることが観察されている。
【0018】
要約すると、高濃度は、しばしば、限られた注射量内で高用量の生物活性剤を求める臨床医の要求である。これは、効率的な凍結乾燥サイクルを開発するための理想的な出発点ではない。固体が高濃度及び高密度であると、水蒸気の輸送が妨げられ、乾燥時間が長くなる。凍結乾燥物中のタンパク質濃度と再構成時間の増加との間には相関関係もある。
【0019】
有効性を改善し、患者のコンプライアンス及び快適さのニーズに対処するために、高濃度の生物学的治療薬をガラス化、保存、輸送、再構成、及び/または送達するための新しい構造物が必要である。
【概要】
【0020】
実施形態では、生物活性剤をガラス化し、ガラス化された生物活性剤を送達するための装置が提供される。該装置は、内面、外面、及び周囲を有する上部ハウジング;内面、外面、及び周囲を有する底部ハウジング;及び、前記上部ハウジングと前記底部ハウジングとを相互接続して、該上部ハウジングの内面と該底部ハウジングの内面との間に内部容積を画定するように動作可能な相互接続構造体を備える。前記底部ハウジングは、可撓性材料で形成され、これにより、前記底部ハウジングは、該底部ハウジングが前記上部ハウジングから離れて湾曲する第1構成と、該底部ハウジングが前記上部ハウジングに向かって湾曲する第2構成との間で変形可能である。
【0021】
別の実施形態では、生物活性剤をガラス化し、ガラス化された生物活性剤を送達するための装置が提供される。該装置は、内面、外面、及び周囲を有する上部ハウジング;内面、外面、及び周囲を有する底部ハウジング;及び、前記上部ハウジングと前記底部ハウジングとを相互接続して、該上部ハウジングの内面と該底部ハウジングの内面との間に内部容積を画定するように動作可能な相互接続構造体を備える。前記相互接続構造体は、前記上部ハウジングの内面と前記底部ハウジングの内面が第1距離だけ離間している第1位置で、及び、前記上部ハウジングの内面と前記底部ハウジングの内面が第1距離よりも短い第2距離だけ離間している第2位置で、前記上部ハウジングと前記底部ハウジングを相互接続するように動作可能である。
【0022】
さらに別の実施形態では、生物活性剤をガラス化し、かつ/またはガラス化された生物活性剤を送達するための方法が提供される。該方法は、ガラス化された生物活性剤を送達するための装置を提供することを含み、該装置は、内面、外面、及び周囲を有する上部ハウジング;内面、外面、及び周囲を有する底部ハウジング;(前記上部ハウジング及び前記底部ハウジングは相互接続されて、該上部ハウジングの内面と該底部ハウジングの内面との間に内部容積を画定する);及び前記内部容積内に配置され、ガラス化された生物活性剤を含むかまたは支持する基板を備える。該方法はさらに、投与溶剤を前記装置の前記内部容積に導入すること及び前記生物活性剤を前記投与溶剤に再構成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図面に示された実施形態は、本質的に説明的及び例示的なものであり、請求項に定義される主題を限定することを意図したものではない。以下の例示的な実施形態の詳細な説明は、以下の図面と併せて参照すると理解することができる。これらの図面では、同様の構造は同様の参照番号で示されている。
【0024】
図1は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による装置の斜視図を示す。
【0025】
図2は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図1の装置の断面斜視図を示す。
【0026】
図3は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図1の装置の側面図を示す。
【0027】
図4は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図1の装置の側断面図を示す。
【0028】
図5は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、密封構成にある
図1の装置の斜視図を示す。
【0029】
図6は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、密封構成にある
図1の装置の断面斜視図である。
【0030】
図7は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、密封構成にある
図1の装置の側面図を示す。
【0031】
図8は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、密封構成にある
図1の装置の側断面図を示す。
【0032】
図9は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、保存または輸送構成にある
図1の装置の斜視図を示す。
【0033】
図10は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、保存または輸送構成にある
図1の装置の断面斜視図を示す。
【0034】
図11は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、保存または輸送構成にある
図1の装置の側面図を示す。
【0035】
図12は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、保存または輸送構成にある
図1の装置の側断面図を示す。
【0036】
図13は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、シールを備えた保存または輸送構成にある
図1の装置の斜視図を示す。
【0037】
図14は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、シールを備えた保存または輸送構成にある
図1の装置の側断面図を示す。
【0038】
図15は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、使用するためにガラス化された生物活性剤の再構成中の
図1の装置の斜視図を示す。
【0039】
図16は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、使用するためにガラス化された生物活性剤の再構成中の
図1の装置の断面斜視図を示す。
【0040】
図17は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、使用するためにガラス化された生物活性剤の再構成中の
図1の装置の側面図を示す。
【0041】
図18は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、使用するためにガラス化された生物活性剤の再構成中の
図1の装置の側断面図を示す。
【0042】
図19は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、ガラス化された生物活性剤の回収中の、
図1の装置の斜視図を示す。
【0043】
図20は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、ガラス化された生物活性剤の回収中の、
図1の装置の断面斜視図を示す。
【0044】
図21は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、ガラス化された生物活性剤の回収中の、
図1の装置の側面図を示す。
【0045】
図22は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、ガラス化された生物活性剤の回収中の、
図1の装置の側断面図を示す。
【0046】
図23は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、湾曲したコネクタを備えていない装置の斜視図を示す。
【0047】
図24は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、湾曲したコネクタを備えている装置の斜視図を示す。
【0048】
図25は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、湾曲したコネクタを備えている
図24の装置の断面斜視図を示す。
【0049】
図26は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、使用するためにガラス化された生物活性剤の再構成中の、
図24の装置の斜視図を示す。
【0050】
図27は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、使用するためにガラス化された生物活性剤の再構成中の、
図24の装置の断面斜視図を示す。
【0051】
図28は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、使用するためにガラス化された生物活性剤の再構成中の、
図24の装置の側面図を示す。
【0052】
図29は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、使用するためにガラス化された生物活性剤の再構成中の、
図24の装置の側断面図を示す。
【0053】
図30は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、使用中に押し潰され、膨張した装置原型の底部ハウジングを示す一連の写真を示す。
【0054】
図31は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、温度試験中の装置原型の構成要素を示す写真を示す。
【0055】
図32は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による原型装置の内部及び液体薬物/凍結乾燥された薬物の保存と流通のために工業的に使用されるガラスバイアルの内部のガラス化中の膜基板の温度比較を提供するグラフを示す。
【0056】
図33は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による装置の試験工程のフローチャートを示す。
【0057】
図34は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図33における試験結果のデータを示す。
【0058】
図35は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、機能分析工程のフローチャートを示す。
【0059】
図36は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図35の機能分析結果のデータを示す。
【0060】
図37は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による装置と市販品とを比較するルシフェラーゼの安定化データのグラフを示す。
【0061】
図38は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による装置の斜視図を示す。
【0062】
図39は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図38の装置の分解斜視図を示す。
【0063】
図40は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図38の装置の側面分解図を示す。
【0064】
図41は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図38の装置の側面図を示す。
【0065】
図42は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図38の装置の上部ハウジングの斜視図を示す。
【0066】
図43は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図38の装置の底部ハウジングの斜視図を示す。
【0067】
図44は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、上部ハウジングが底部ハウジングの上に載置されている
図38の装置の側断面図を示す。
【0068】
図45は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、第1位置にある
図38の装置の側断面図を示す。
【0069】
図46は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、第2位置にある
図38の装置の側断面図を示す。
【0070】
図47は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、針集合体及び注射器を備えた
図38の装置の斜視図及び側断面図を示す。
【0071】
図48は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による
図38の装置と市販品とを比較する、ルシフェラーゼの安定化データのグラフを示す。
【0072】
図49は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による装置と市販品とを比較する、ガラス化されたルシフェラーゼの溶出効率のデータ及びグラフを示す。
【0073】
図50は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、半透明な部分を備えた組立装置の斜視図を示す。
【0074】
図51は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図50の装置の断面斜視図を示す。
【0075】
図52は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、
図50の装置の側断面図を示す。
【0076】
図53は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、上部ハウジングが底部ハウジングに向かって移動された
図50の装置の側断面図を示す。
【0077】
図54は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、上部ハウジングが底部ハウジングに向かって移動された
図50の装置の断面斜視図を示す。
【0078】
図55は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、生物活性剤の再構成中の
図50の装置の側断面図を示す。
【0079】
図56は、本明細書に示され記載される1つまたは複数の実施形態による、生物活性剤の再構成中の
図50の装置の断面斜視図を示す。
【0080】
次に、本開示の様々な実施形態についてより詳細に参照するが、そのいくつかの実施形態が添付の図面に示されている。可能な限り、全ての図面を通じて、同様または類似の部分を指すために同じ参照番号が使用される。
【詳細な説明】
【0081】
本開示は、生物活性剤のガラス化、ガラス化された生物活性剤の保存及び/または輸送、並びに濃縮された生物活性剤として送達するためのガラス化された生物活性剤の再構成に使用され得る装置の実施形態を提供する。また、これらの実施形態は、これらの工程のうちの1つのみに使用することもできる。例えば、ガラス化ではなく再構成に使用することもでき、または、ガラス化ではなく輸送及び再構成等の工程のサブセットに使用することもできる。
【0082】
図1~4は、基板が真空にさらされ、またはガラス化され得るガラス化構成における本開示による装置の実施形態を示す。
図1は、ガラス化構成にある本開示の一実施形態による装置10の斜視図である。図中、構造を明確にするためにいくつかの部分が半透明に示されている。
図2は、装置10の断面斜視図である。
図3は、装置10の側面図である。また、
図4は、装置10の側断面図である。
【0083】
装置10は、前記装置の上端を画定する上部ハウジング12と、前記装置の下端を画定する底部ハウジング14とを含む。これらの上部ハウジング及び底部ハウジングは、互いに係合して、組立装置を形成するように構成される。留意されたいこととして、「上」、「下」、「上部」、及び「底部」のような位置に関する用語は、本開示の実施形態の説明を助けるために本明細書で使用されるが、限定するものではない。前記装置は、図示されているものとは逆になったり、異なる位置に配置されたりしてもよい。
【0084】
前記上部ハウジング12は、前記底部ハウジングの凹状の上面に面する凹状の下面を有し、これにより、内部容積がハウジングの凹面の間に画定される。前記上部ハウジング12はさらに、内部容積への流体接続を提供するコネクタ40を有する。図示の実施形態では、コネクタ40は、上部ハウジング内の中央ポート42に接続し、直角に曲がるまで上方に延伸し、その後、先端44まで外方に延伸する。ガラス化中、前記コネクタは、開放していてもよく、閉鎖していてもよい。図示の実施形態では、プラグまたはシール50が前記先端を閉鎖している。
【0085】
図2及び
図4に最もよく示されるように、装置10はさらに、ガラス化された生物活性剤を含有または支持し得る基板16を含む。前記基板は、膜足場または本開示における機能に動作可能な任意の他の構造であってもよい。あるいは、前記基板は、別個に提供され、前記装置の一部とみなされなくてもよい。この例では、前記基板は、装置10の内部容積内に配置されるように、底部ハウジング上に支持される。
【0086】
装置10は、上部ハウジングと底部ハウジングを相互接続するように動作可能な相互接続構造体をさらに含む。図示の実施形態では、上部ハウジング12及び底部ハウジング14はそれぞれ、ほぼ円形の外周を有するほぼ円形であるが、長方形または三角形等の他の形状も可能である。この例では、外周の直径はほぼ同じである。該実施形態では、前記相互接続構造体は、上部ハウジング12の外周32から延伸し、底部ハウジング14の外周に選択的に係合する複数のロック要素30を含む。
図1~4のガラス化構成では、ロック要素30は、底部ハウジングの外周34の上に載置され、それにより、ガスが前記内部容積と周囲領域との間を自由に流動できるように、上部ハウジングと底部ハウジングとの間に空間を提供する。
【0087】
この例では、底部ハウジング14の外周34は、下向きに湾曲したリップ36を有し、ロック要素30は、以下に説明するさらなる構成でこのリップ36と係合するように、下向きかつ内向きに湾曲している。
【0088】
前記相互接続構造体は、上部ハウジング及び底部ハウジングから分離され、これらのハウジングを相互接続するように動作可能な1つまたは複数の要素を含む他の形態をとってもよい。
【0089】
図1~4のガラス化構成にある装置10を使用すると、基板上の生物活性剤は、典型的には真空下でガラス化され得る。ガラス形成糖トレハロースの存在下での脱水による生物活性剤のガラス化は、米国特許第10,433,540号及び米国仮出願第63/115,936号(現在のPCT出願WO/2022/109315)に開示されている。次に、前記相互接続構造体が前記上部ハウジングを前記底部ハウジングに相互接続するまで、該上部ハウジングを該底部ハウジングに向かって移動させることによって、装置を密封構成に移動させる。
図5~8は、該構成にある装置10を示している。ここでは、上部ハウジングの外周32がロック要素30によって底部ハウジングの外周34に密封される。
図8に最も良く示されるように、基板16は周囲の間に捕捉されて保持されてもよい。密封性を強化するために、シールまたは接着材料等の密封材料を周囲の間に設けてもよい。あるいはまたはさらに、前記上部ハウジング及び底部ハウジングを形成する材料は、互いに密封するように選択される。
【0090】
いくつかの実施形態では、前記上部ハウジング及び底部ハウジングは両方ともポリマーで形成されるが、他の材料が使用されてもよい。
【0091】
図5~8の密封構成では、装置10は、ガラス化後に真空環境にあってもよい。プラグまたはシール50は、コネクタ40の先端44内に残る。あるいは、プラグまたはシール50は、ガラス化後、真空が残っている間に追加してもよい。この時点で、装置10の内部容積は、基板16の上と下の両方に真空を含む。
【0092】
ここで
図9~12を参照すると、装置10は、保存または輸送構成で示されている。この構成では、装置の周囲の真空が解放され、それによって、上部ハウジング12及び底部ハウジング14の外側に大気圧がかかる。底部ハウジング14は、前記内部容積が最小になり、かつ、前記基板が上部ハウジング12と底部ハウジング14の内面の間に保持されるまで上方に曲がるのに十分な柔軟性を有する材料で形成されている。この構成では、底部ハウジング14は、凹状の内面を有する状態から凸状の内面を有する状態に反転する。図示の実施形態では、上部ハウジング12及び底部ハウジング14は、逆になった、または反転された底部ハウジングが上部ハウジング12の内面と同一の広がりの内面を有するように形成され、それによって装置10の内部容積がほぼ最小化される。残りの空の容積は、ほとんどコネクタ40の中にある。
【0093】
図13及び14は、保存/輸送構成にある装置が、輸送及び保存中にプラグ50を保護するために、プラグ50上に取り付けられた金属シール等のシール52をさらに有し得ることを示す。これは、一般的な凍結乾燥バイアルのような別の防湿シールをさらにまたは追加で備えていてもよい。
【0094】
図15~18は、使用するためにガラス化された生物活性剤の再構成を示す。プラグ50を露出させるために、シール52(例えば、キャップ、金属キャップ等)を取り外してもよい。そして、注射器62の針60が、プラグ50を通してコネクタ40に挿入され、あるいは、シール52は、それを取り外す必要なく注射器で穴を開けるのに十分な程薄くてもよい。投与溶剤が装置10に注入される。該投与溶剤は、生物、場合によってはヒトへの投与に適していてもよい。投与溶剤が添加されると、装置10の内部容積は膨張する。コネクタ40内に存在する真空は、前記投与溶剤をコネクタ40内に引き込むのを助け得る。さらに投与溶剤が添加されると、底部ハウジング14が上部ハウジング12から離れ、前記投与溶剤が基板16の上の空間を満たす。さらに、前記投与溶剤は、基板を通って移動し、装置10がガラス化構成にあったときと同様に、底部ハウジング14の内面がその凹面形状に戻るまで、基板の下の空間を満たす。その後、前記生物活性剤は、前記投与溶剤に再構成され、使用できる状態になる。再構成のプロセスは、適度な機械的撹拌等のような追加の工程を含めてもよい。
【0095】
図19~22に示されるように、前記再構成された生物活性剤を含む投与溶剤が、次いで注射器62内に回収されるが、該注射器62は、再構成の工程で使用したものと同じものであってもよく、新しいものであってもよい。前記投与溶剤が回収されると、吸引により底部ハウジング14が再び反転位置に移動し、ここで、内面は凸面であり、上部ハウジング12の内面と同一の広がりを有する。示されるように、内部容積は、生物活性剤を含む投与溶剤のほぼ全てが注射器62内に回収されるように最小化される。次いで、該生物活性剤を含む投与溶剤を患者に投与してもよい。
【0096】
図23~29に示されるように、他のコネクタが装置10とともに使用され得る。
図23は、湾曲したコネクタ70を備えていない中央ポート42を示す。中央ポート42は、それに設けられたプラグまたはシールを用いて、再構成及び回収に直接利用してもよい。
図24及び25は、針を必要とせずに注射器72の本体に直接接続するように構成されたコネクタ70を示す。
図26~29は、注射器本体72が取り付けられた同じコネクタ70を示す。この装置は、注射器本体を取り付けた状態で保存及び輸送してもよく、または、再構成の工程のために前記本体を取り付けた状態で輸送してもよい。他のコネクタを使用してもよい。
【0097】
図30は、上で論じた装置の原型を示す一連の写真であり、使用中に底部ハウジングがどのように押し潰され、膨張するかを示す。
【0098】
図31は、温度試験中の前記原型の構成要素を示す写真である。
【0099】
図32は、本開示による原型装置の内部及び液体薬物/凍結乾燥された薬物の保存と流通のために工業的に使用されるガラスバイアルの内部の、ガラス化中の膜基板の温度比較を提供するグラフである。ガラスバイアルの場合、温度上昇は、材料の導電率の違いにより、原型装置よりわずかに速くなる。
【0100】
該原型の残留水分及び残留容積についての試験結果を表1に示す。
表1
【0101】
前記原型装置の溶出効率を測定する試験を実施した。
図33は、該試験における工程のフローチャートである。生物活性剤を含む試験投与溶剤を、4つのガラス化構成にある原型装置に分注し、ガラス化を実施した。次いで、該生物活性剤を再構成して定量した。
図34は、87%の該生物活性剤が回収されたことを示す結果のデータである。
【0102】
さらに、機能分析を実施し、
図34にそのフローチャートが示されている。生物活性剤をサンプル原型装置の基板(「足場装置」と表記される)の上に、及び対照(PES膜と表記される)の上に堆積させ、それぞれのサンプルを真空下で加熱して30分間ガラス化した。ガラス形成糖トレハロースの存在下での脱水による生物活性剤のガラス化は、米国特許第10,433,540号及び米国仮出願第63/115,936号(現在のPCT出願WO/2022/109315)に開示されている。次に、それぞれのサンプルを55℃、4℃、及び-20℃で5日間保存し、その後サンプルを分析した。
【0103】
図36は、その試験結果を示す。示されるように、HRPに結合した抗IgG検出抗体を市販品の状態(液体)または原型装置内においてガラス化された状態で、-20℃、4℃、または55℃で5日間保存した。溶出したタンパク質を定量し、BCAを用いて正規化した。次いで、IgGを標的とするELISAにおいて該抗体を検出抗体として使用した。
【0104】
図37は、ルシフェラーゼの安定化データを示し、通常の-70℃で保存された市販品及び55℃で1時間保存された該市販品を上で論じた装置及びプロセスを用いてガラス化されて55℃で保存されたルシフェラーゼと比較するグラフである。示されるように、本装置及びプロセスを用いてガラス化されて保存されたルシフェラーゼは、-70℃で保存された市販品とほぼ同等に機能するが、55℃で1時間保存された市販品の機能は劣る。グラフのデータは、次のように取得した。ガラス化について、50μLのガラス化マトリックス中のルシフェラーゼを2つの本明細書に開示の装置に添加した。添加された材料には、1.6μg/μLルシフェラーゼ、600mMトレハロース、及び2.27%グリセロールが含まれていた。これを真空チャンバー内及び37℃で30分間ガラス化した。該サンプルを55℃で一晩保存した。熱ストレスを受けた液体対照として、ルシフェラーゼ原液をPBS(リン酸塩緩衝の生理食塩水)で40 μg/mLに希釈し、55℃で保存した(「55℃で保存した液体」)。再構成について、2 mLのPBSを本明細書に記載の装置に注入した後、該装置から回収した。アッセイについて、調製した試薬溶液(0.5 mM ATP、4.5 mM MgSO
4、及び1.5 mMルシフェリンの25 mM EPPS溶液)を使用した。ルシフェラーゼ原液をPBSで40 μg/mLに希釈し、新鮮な対照を調製した(「-70℃で保存された液体」)。該3種類のサンプルから希釈系列を調製した。50 μLのルシフェラーゼ希釈液及び50 μLの試薬を96ウェル黒色プレートのウェルに添加した。該サンプルを室温で10分間インキュベートし、発光を検出した。
【0105】
図38は、本開示の一実施形態による装置100を組立構成で示す。明確にするために、
図39及び40は、構成要素を分離した状態で装置100を示す。
図39は分解斜視図であり、
図40は側面分解図である。前記装置は、該装置の上端を画定する上部ハウジング120と、装置100の下端を画定する底部ハウジング140とを含み、該上部ハウジング120及び底部ハウジング140は、組立装置を形成するために互いに係合するように構成される。留意されたいこととして、「上」、「下」、「上部」、及び「底部」のような位置に関する用語は、本発明の実施形態の説明を助けるために本明細書で使用されるが、限定するものではない。前記装置は、図示されているものとは逆になったり、異なる位置に配置されたりしてもよい。
【0106】
図39及び40に最もよく示されるように、装置100はさらに、ガラス化された生物活性剤を含み得る基板160を含む。基板160は、膜足場または本開示における機能に動作可能な任意の他の構造であってもよい。あるいは、基板160は、別個に提供され、装置100の一部とみなされなくてもよい。
【0107】
再び
図38~40を参照すると、装置100は、上部ハウジング120と底部ハウジング140が相互接続されたときにそれらの間にシールを形成し得る疎水性多孔質ガスケット180をさらに含む。この疎水性多孔質ガスケットは、液体の通過を阻止するが、気体の通過を許容する任意の材料で形成され得る。前記材料の非限定的な例としては、PVDF(フッ化ポリビニリデン)、PTFE、及びポリプロピレンが挙げられる。
【0108】
装置100は、ガスケット180が間に配置された状態で上部ハウジング120と底部ハウジング140を相互接続するように動作可能な相互接続構造体をさらに含み、これにより、ハウジングとガスケット180が協働して、上部ハウジング120の内面と底部ハウジング140の内面との間に内部容積を画定する。特定の実施形態では、前記相互接続構造体は、少なくとも2つの位置で、即ち、ハウジング120、140の内面が第1距離だけ離間している第1位置、及び、これらの内面が第1距離よりも短い第2距離だけ離間している第2位置で、上部ハウジング120と底部ハウジング140を相互接続するようにさらに動作可能である。
【0109】
図示の実施形態では、上部ハウジング120及び底部ハウジング140はそれぞれ、ほぼ円形の外周を有するほぼ円筒形であるが、長方形または三角形等の他の形状も可能である。上部ハウジング120の外周200と底部ハウジング140の外周220を
図39に示す。この例では、外周の直径はほぼ同じである。
図40を参照すると、底部ハウジング140の外周220は、底部ハウジング140の上部リップ280に対して異なる高さにある2つの環状凹部240及び260を有する。該実施形態では、前記相互接続構造体は、上部ハウジング120の外周320から延伸し、底部ハウジング140の環状凹部240または260の1つと選択的に係合する3つのロック要素300を含む。第1位置では、ロック要素300は、上部凹部240に係合する。第2位置では、ロック要素300は、下部凹部260に係合する。前記相互接続構造体は、上部ハウジング120及び底部ハウジング140から分離され、これらのハウジング120、140を相互接続するように動作可能な1つまたは複数の要素を含む他の形態をとってもよい。
【0110】
図41は、上部ハウジング120が底部ハウジング140の上に載置され、その間にガスケット180が配置された装置100の側面図である。
図41では、ロック要素300は、環状凹部240及び260の上にあり、前記ハウジング120、140を相互接続していない。代わりに、ロック要素300は、底部ハウジング140の上縁に載置されている。
図41に示されるように、各ロック要素300は、外側に、次に下方に、次に内側に延伸し、内側に延伸する部分が凹部240または260と係合するように作用する。内側に延伸する部分340は、面取りされた下面を有する内側の端で終端する。これにより、上部ハウジング120が底部ハウジング140に向かって押されるときに、各ロック要素300は、部分340が上部環状凹部240と係合するまで、外側に押されることが可能になる。また、該実施形態では、底部ハウジング140の上部リップ280は、ロック要素300が下方に移動して凹部240内に入るのを助けるために、面取りされた上面を有する。同様に、凹部240は、上部ハウジング120が底部ハウジング140に向かってさらに押されたときに、ロック要素300が下方に移動して下部凹部260内に入ることができるように、面取りされた下面を有する。しかし、該実施形態では、ロック要素300が解放されて上方に移動するのを防ぐために、内側に延伸する部分340の上面は平坦な上面を有し、凹部240及び260も平坦な上面を有する。このように、ハウジング120、140の第1位置への移動及び第1位置から第2位置への移動は、ロック要素300を手動で広げてハウジング120、140を互いから解放しない限り、一方向の移動となるように構成される。
【0111】
ここで
図42及び43を参照して上部ハウジング120及び底部ハウジング140の特定の実施形態の詳細をさらに説明する。上部ハウジング120は、ハウジング120、140が相互接続されたときに、底部ハウジング140に面する内面400を有する。該実施形態では、内面400は、ほぼ平坦であり、周囲320の周りに配置された複数の半径方向に延伸するリブ420を有する。開口部440は、内面400の中央領域に画定され、
図41に示される上部チューブ460と連通する。上部チューブ460は、開口部440を介して上部ハウジング120と底部ハウジング140との間の内部容積との流体連通を提供する。
【0112】
再び
図42を参照すると、各リブ420は、開口部440から半径方向外側に離間した最小の高さを有する内端480を有する。各リブ420は、ほぼ平坦な内面400の外縁付近またはその外縁にある外端500まで半径方向外側に延伸し、外端500は、内端480の高さよりも高い高さを有する。
【0113】
ここで
図43を参照すると、底部ハウジング140は、同様にほぼ平坦な内面600を有し、周囲220の周りに配置された複数の半径方向に延伸するリブ520を有する。開口部640は、内面600の中央領域に画定され、
図41に示される底部チューブ660と流体連通する。再び
図43を参照すると、各リブ520は、開口部640に近い内端680と、周囲220に近い外端700とを有する。これらのリブ520は、上部ハウジング120のリブ420とは反対側に構成され、外端700が最小の高さを有し、内端680がより高い高さを有する。
【0114】
図44は、上部ハウジング120が底部ハウジング140の上に載置されているが、ロック要素300(1つのみ図示されている)が上部リップ280に載置されている装置100の断面図を提供する。この位置では、上部ハウジング120は、ロック要素300を上部凹部240または下部凹部260に係合させるために、底部ハウジング140に向かって押されていない。ガスケット180は、底部ハウジング140の上部リップ280の上に載置されているが、ハウジング120と140の内面の間の内部容積720と連通する空隙800を画定するように、上部ハウジング120から離間されている。基板160は、内部容積720内に配置され、底部ハウジング140の内面上のリブ520の上に載置されている。
図44に示される位置は、当業者に知られている、または知られるようになる任意の方法を用いて、生物活性剤を基板内にガラス化するために使用することができる。空気通路により、加熱の有無にかかわらず、真空乾燥等のプロセスを用いてガラス化が可能になる。ガラス形成糖トレハロースの存在下での脱水による生物活性剤のガラス化は、米国特許第10,433,540号及び米国仮特許出願第63/115,936号、現在のPCT出願WO/2022/109315に開示されている。開示されたプロセスは、実施形態に使用し得る。
【0115】
図45は、装置100の同様の断面図を示すが、ロック要素300が上部環状凹部240に係合し、装置100を第1位置に配置している。ガスケット180は、ハウジング120、140を互いに密封するが、ガスの通過を可能にする。内部容積720は、ガラス化された生物活性剤を再構成するために使用され得る。示されるように、該実施形態では、この位置では、上部ハウジング120のリブ420は、底部ハウジング140のリブ520から離間されている。
【0116】
図46は、装置100の同様の断面図を示すが、ロック要素300が下部環状凹部260に係合し、内部容積720のサイズが縮小される第2位置に装置100を配置している。この位置では、基板160は、リブ420、520の間で圧迫される。この位置は、液体を底部チューブ660に流して上部チューブ460を通して出す等して、再構成された生物活性剤を投与するために使用され得る。いくつかの例では、上部チューブ660は、生物活性剤を投与するための針集合体を受け入れ得る。上部チューブ660は、生物活性剤を収容するためのキャップも受け入れ得る。同様に、底部チューブ660は、注射器またはキャップを受け入れ得る。
【0117】
図47は、針集合体及び注射器を備えた装置組立を示す図である。
【0118】
図48は、ルシフェラーゼの安定化データを示し、通常の-70℃で保存された市販品及び55℃で1時間保存された該市販品を上で論じた装置及びプロセスを用いてガラス化されて55℃で保存されたルシフェラーゼと比較するグラフである。示されるように、本装置及びプロセスを用いてガラス化され保存されたルシフェラーゼは、-70℃で保存された市販品とほぼ同等に機能するが、55℃で1時間保存された市販品は、使用できなくなる。グラフのデータは、次のように取得した。ガラス化について、50μLのガラス化マトリックス中のルシフェラーゼを2つの本明細書に開示の装置に添加した。添加された材料には、1.6μg/μLルシフェラーゼ、600 mMトレハロース、及び2.27%グリセロールが含まれていた。これを真空チャンバー内及び37℃で30分間ガラス化した。該サンプルを55℃で一晩保存された。熱ストレスを受けた液体対照として、ルシフェラーゼ原液をPBS(リン酸塩緩衝の生理食塩水)で40 μg/mLに希釈し、55℃で保存した(「55℃で保存した液体」)。再構成について、2 mLのPBSを本明細書に記載の装置に注入した後、該装置から回収した。アッセイについて、調製した試薬溶液 (0.5 mM ATP、4.5 mM MgSO
4、及び1.5 mMルシフェリンの25 mM EPPS溶液)を使用した。ルシフェラーゼ原液をPBSで40 μg/mLに希釈し、新鮮な対照を調製した(「-70℃で保存された液体」)。該3種類のサンプルから希釈系列を調製した。50μLのルシフェラーゼ希釈液及び50 μLの試薬を96ウェル黒色プレートのウェルに添加した。該サンプルを室温で10分間インキュベートし、発光を検出した。
【0119】
図49は、市販品と比較した、本明細書で議論されるようにガラス化されたルシフェラーゼの溶出効率を示す。該測定は、総タンパク質含有量を対象としているが、タンパク質は55℃に曝露されると機能しなくなる可能性がある。
【0120】
前記装置の上述の実施形態は、注射としてではなく、IVで使用するために改変されてもよい。
図50~52は、ガラス化、輸送、再構成、及びIV投与のための装置1100の実施形態を示す。
図50は、一部が半透明の組立装置の斜視図である。
図51は、装置1100の断面斜視図である。
図52は、装置1100の断面概略図である。装置1100は、その上端を画定する上部ハウジング1120と、その下端を画定する底部ハウジング1140とを有し、上部ハウジング1120及び底部ハウジング1140は、組立装置を形成するために互いに係合するように構成される。留意されたいこととして、「上」、「下」、「上部」、及び「底部」のような位置に関する用語は、本発明の実施形態の説明を助けるために本明細書で使用されるが、限定するものではない。装置1100は、図示されているものとは逆になったり、異なる位置に配置されたりしてもよい。
【0121】
図51及び52に最もよく示されるように、装置1100はさらに、ガラス化された生物活性剤を含み得る基板1160を含む。あるいは、基板1160は、別個に提供され、装置1100の一部とみなされなくてもよい。
【0122】
図50~52は、上部ハウジング1120が底部ハウジング1140の上に載置され、基板1160が底部ハウジング1140の中に載置された装置1100を示す。
図52に最もよく示されるように、上部ハウジング1120は、外周1200を有し、底部ハウジング1140は、外周1220を有する。この例では、外周1200及び1220は、ほぼ同じ直径を有する。
【0123】
装置1100は、ハウジング1120と1140との間の内部容積内に基板1160を密封するよう、上部ハウジング1120と底部ハウジング1140を相互接続するように動作可能な相互接続構造体をさらに有する。この例では、前記相互接続構造体は、底部ハウジング1140の外周1220から延伸する複数のロック要素1300によって提供される。これらのロック要素1300は、上方に延伸し、その後、傾斜した上面を有する先端まで内側に延伸する。
図51及び52では、上部ハウジング1120がこれらの傾斜した先端の上に載置されているのが示されている。これは、前記基板のガラス化が達成され得るガラス化の位置である。
【0124】
図53及び54は、
図51及び52と同様である。ただし、上部ハウジング1120が底部ハウジング1140に向かって移動している。これにより、ロック要素1300は、上部ハウジングの外周1200に係合し、それを底部ハウジング1140の外周1220に密封する。前記ハウジングを互いに密封し、かつ/または前記基板に対して密封するため、Oリング1340または他のシールを設けてもよい。
【0125】
図53及び54に示される位置は、保存、輸送、再構成、及び投与のために使用される。
【0126】
上部ハウジング1120は入口1400を含み、底部ハウジング1140は出口1420を有する。入口1400は、基板1160の上の上部ハウジング1120内の容積と連通し、出口は、基板1160の下の底部ハウジング1140内の容積と連通する。装置1100はさらに、上部ハウジング1120内に疎水性多孔質膜1180を有する。この疎水性膜は、液体の通過を阻止するが、気体の通過を許容する任意の材料で形成され得る。
【0127】
図55及び56は、基板1160上における生物活性剤の再構成を示す。液体は、上部ハウジング1120における入口1400に供給される。矢印で示されるように、液体が基板1160を通って流れて出口1420から出る一方で、内部容積内のガスは、膜1180を通って逃避し得る。このように、装置1100は、インライン投与装置として使用され得る。
【0128】
本明細書に図示し説明したものに加えて、本開示の様々な改変は、当業者には明らかであろう。このような改変も、添付の請求項の範囲に含まれることが意図されている。
【0129】
理解されるように、別途指定しない限り、全ての試薬は当技術分野で知られている供給源から入手可能である。
【0130】
また、理解されるべきこととして、特定の構成要素及び/または条件は当然変化し得るため、本開示は、本明細書に記載される特定の態様及び方法に限定されない。さらに、本明細書で使用される用語は、本開示の特定の態様を説明する目的でのみ使用され、決して限定することを意図したものではない。また、理解されることとして、用語「第1」、「第2」、及び「第3」等は、本明細書では様々な要素、構成要素、領域、層、及び/または断面を説明するために使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、層、及び/または断面は、これらの用語によって制限されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、または断面を別の要素、構成要素、領域、層、または断面から区別するためにのみ使用される。従って、以下で説明する「第1要素」、「構成要素」、「領域」、「層」、または「断面」は、本明細書での教示から逸脱することなく、第2(または他の)要素、構成要素、領域、層、または断面と呼ぶことができる。同様に、本明細書で使用される単数形「1つの」及び「この」は、内容に明確に別段の指示がない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形を包含することを意図している。「または」は、「及び/または」を意味する。本明細書で使用される場合、「及び/または」という用語には、関連する列挙された項目の1つまたは複数のあらゆる組み合わせが含まれる。さらに理解されたいこととして、本明細書で使用される「含む」及び/または「含んでいる」、または「包含する」及び/または「包含している」という用語は、記載された特徴、領域、整数、工程、操作、要素、及び/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、領域、整数、工程、操作、要素、構成要素、及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。
【0131】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに理解されたいこととして、一般に使用される辞書で定義されているような用語は、ここで明示的に定義されている場合を除いて、関連技術及び本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化された意味または過度に形式的な意味で解釈されるべきではない。
【0132】
本開示の例示的な組成物、態様、及び方法を詳細に参照するが、これらは発明者らに現在知られている本開示を実施する最良のモードを構成する。図面は、必ずしも正確な縮尺ではない。しかし、理解されたいこととして、開示された態様は、様々な代替形態で具体化され得る本開示の単なる例示にすぎない。従って、本明細書に開示される特定の詳細は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に本開示の任意の態様の代表的な基礎として、及び/または当業者に本開示を多様に利用することを教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0133】
本明細書で言及される特許、刊行物、及び出願は、本開示が関係する当業者にレベルを示すものである。これらの特許、刊行物、及び出願は、個々の特許、刊行物、または出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
本明細書において特定の実施形態を図示し説明してきたが、理解されたいこととして、請求される主題の主旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び改変を行い得る。さらに、請求される主題の様々な態様が本明細書で説明されているが、そのような態様は、組み合わせて利用する必要はない。従って、添付される請求項の範囲は、請求される主題の範囲内にある全ての変更及び改変を網羅することが意図されている。
【0135】
上記の説明は、本開示の特定の実施形態を例示するものであるが、その実施を限定することを意図するものではない。以下の請求項は、それらに相当する全てのものを含めて、本開示の範囲を定義することを意図している。
【国際調査報告】