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  • 特表-柔軟な構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】柔軟な構造体
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/16 20060101AFI20240806BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20240806BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20240806BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20240806BHJP
【FI】
F16J15/16 B
F16L55/00 G
F16J15/18 D
F16J15/3204 201
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502231
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2022068433
(87)【国際公開番号】W WO2023285187
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021118381.2
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591040649
【氏名又は名称】カーエスベー ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディート ゲゼルシャフト アウフ アクチェン
【氏名又は名称原語表記】KSB SE & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】ノーベル,タムズ
(72)【発明者】
【氏名】ベーム,ユルク・アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
3H025
3J006
3J043
【Fターム(参考)】
3H025BA01
3H025BA21
3J006AE09
3J006AE22
3J043AA15
3J043CA01
3J043CA02
3J043CA12
3J043CA14
3J043CB13
3J043HA02
(57)【要約】
本発明は、相互に接続し、相互に移動可能な要素(3)を備えた構造体(2)に関する。構造体は、流れ抵抗を変更するために流体中に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 相互に接続されており、かつ
- 相互に移動可能に配置されている
要素(3)を備えた構造体(2)であって、
前記構造体(2)が、流れ抵抗を変化させるために流体中に配置されることを特徴とする、構造体(2)。
【請求項2】
前記構造体(2)が回転駆動装置に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記構造体(2)が、回転を受けたときにシール効果を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の構造体。
【請求項4】
前記構造体(2)がゴムリップ(4)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項5】
前記構造体(2)が漏斗形状の設計であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項6】
前記構造体(2)が螺旋形状の設計であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項7】
前記構造体(2)がキャビティ(6)を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項8】
前記構造体(2)が付加的に製造されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項9】
相互に接続されており、かつ相互に移動可能に配置されている要素(3)を備えた構造体(2)の、流れ抵抗を変化させることを目的とした流体中での使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に接続されており、かつ相互に移動可能に配置されている要素を備えた構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
要素を備えたこのような構造体は、例えばメカニカルシールの機能を実行できる。メカニカルシールとは、例えば、漏れ損失が最小限に抑えられ、シール面の磨耗が最小限に抑えられるように、回転ポンプシャフトを固定ポンプケーシングに対して封止するシールである。メカニカルシールは、互いに摺動し軸方向の力によって互いに押し付けられる2つの面を備えていることが特徴である。摺動面間には液体または気体の潤滑膜が存在する。
【0003】
メカニカルシールには、シャフト軸に対して直角なシールギャップがある。このタイプのシャフトシールは、軸方向または流体力学的メカニカルシールとも呼ばれる。このようなメカニカルシールは、他のシールシステムよりも必要なスペースおよびメンテナンスが少なくなる。このようなメカニカルシールは、シールされる圧力、および周速度が、低くても高くてもいずれも優れた性能を発揮する。
【0004】
動作中、2つのシール面は互いに摺動し、油圧力と機械力によって互いに押し付けられる。これらの超仕上げされた2つの摺動面の間には、通常は液体である潤滑膜を含むシールギャップがある。
【0005】
遠心ポンプのメカニカルシールは、ケーシングを貫通するシャフトをシールするために使用される。メカニカルシールはさまざまな実施形態において遠心ポンプに設けられるが、材料の選択に関しては遠心ポンプの動作範囲を常に考慮する必要がある。
【0006】
DE102018208574A1には、メカニカルシールと、軸方向に移動可能に配置された少なくとも1つのOリングを有する2次シールとを有するシャフトシールアセンブリが記載されている。
【0007】
さらに、要素を備えた構造体が、シールとしてだけでなく、管内の流れ抵抗としても使用され得ることが考えられる。流れ抵抗は、流体力学において、運動の媒体としての流体に対抗する力に関連する物理変数である。気体または液体の媒体に対して移動する物体は、相対速度に反して作用する力の形で流れ抵抗を受ける。
【0008】
管内の意図的な流れ抵抗は、例えば継手(Armatur)によって形成され得る。継手とは、特に配管系で使用される、流体の流れを変化させ制御するための構成要素を指す。継手のタイプの選択は、流体の流れおよび媒体自体の気密性、制限および方向に関する要件に左右される。したがって、極めて高い値を有する流れ抵抗は、ほぼシールに相当する。
【0009】
DE102020003756A1には、2つの開口部と、柔軟な方法で断面を制限できる絞り部を有するチャネルとを備えたケーシングを備える継手アセンブリが記載されている。絞り部は管内の流れ抵抗として設計されている。
【0010】
以前に知られていたソリューションでは、通常、静的および動的変動をあまり許容しない。継手やメカニカルシールの既知のソリューションとの関連では、シールに至るまで流体の流れに影響を与えることは知られていない。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、流体の流れに影響を与えるための構造体を特定することである。ここでは、顧客に合わせた方法で構造体を構成できる必要がある。さらに、その構造体は、簡単、迅速、かつ安価に実装できなければならない。
【0012】
この目的は、本発明によれば、要素を備えた構造体によって達成される。好ましい変形例は、従属請求項、明細書、および図面に記載されている。
【0013】
本発明によれば、流れ抵抗を変化させるために、要素を備えた構造体が流体中に配置される。このような構成は、好ましくは、メカニカルシールの代わりに、および/または流体の流れにおける可変流れ抵抗として使用することができる。
【0014】
1つの要素は構造体の基本的な構成要素であり、その特性を失わずにさらに分解することはできない。本発明によれば、要素は、リングおよび/またはリンクとして、スリーブおよび/または多孔板および/または円錐形中空体として具体化することができる。
【0015】
これらの要素は有利には相互に接続されているが、それでもなお相互に移動可能に配置されている。このような接続は、例えば織り交ぜられたリングとして直接行われることが好ましい。このように接続された要素の配置は、好ましくは漏斗形状に形成されるシート状構造体を形成する。
【0016】
本発明の別の変形例では、要素は補助要素によって間接的に接続されており、かつチェーンおよび/または集合体および/またはストランド(Strang)および/または列に形成されている。このような補助要素は、ストランド型の固体の円形の材料として、または短いループとして実装することができる。要素は、個々のリンクとしてバンドを形成し、好ましくは螺旋状に配置される。
【0017】
要素間の接続は、柔軟な設計であることが有利であり、したがって要素が互いに対して移動することが可能になる。柔軟な接続により、要素相互の配置が、外力に従って、特に動きの形として影響を受けることが可能になる。理想的には、流体または流体の流れ内の要素を備えた構造体によって形成される流れ抵抗は、可変の方法で構成および設定できる。本発明の変形実施形態に応じて、要素の互いに対する動きは、少なくとも1次元、好ましくは2次元、特に3次元で実現することができる。
【0018】
本発明によれば、要素を備えた構造体は、回転駆動装置に接続される。接続はシャフトを介して行われることが好ましい。回転駆動装置によってシャフトが動き始めると、可動配置により要素を備えた構造体が扇状に広がり、流体の流れにおける流れ抵抗が変化する。
【0019】
理想的には、要素を備えた構造体とシャフトとの間の接続は、シャフトへの圧入および/または溶接または焼き嵌めによって行われる。
【0020】
本発明の好ましい変形例では、要素を備えた構造体は、管内の可変流れ抵抗として具体化される。回転駆動装置の動きと要素の具体化によって流れ抵抗が生じ、これを可変かつ迅速に適応させることができる。
【0021】
別の有利な変形例では、要素を備えた構造体は、メカニカルシールと同等の方法でポンプシャフト上に流れ抵抗を形成する。シャフトの回転に応じて、シャフトを潤滑するのに十分な量の流体が流れる。
【0022】
理想的には、要素を備えた構造体は、シャフトの回転を受けたときにシール効果が増大し得る。これは、例えば、要素の構成や、回転を受けたときの構造体の扇形展開によって実現できる。本発明の特に好ましい変形例では、要素を備えた構造体はゴムリップを有する。このゴムリップは、構造体の外周、好ましくは下流側に配置されることが好ましい。回転が増加すると、ゴムリップが管壁またはシャフト貫通部に接触し、シール効果が得られる。本発明の有利な変形例では、ゴムリップは、適切な回転が与えられると一種のカバーとして機能するゴムキャップで置き換えることができ、ゴムキャップが管壁やシャフト貫通部に接触して流れ断面を完全に閉じるため、完全なシールが確実に達成される。
【0023】
理想的には、要素を備えた構造体は、シート状の形成物として漏斗状の設計である。この構造体の構成は、回転中に漏斗が扇状に広がるのに特に役立ち、したがって可変流れ抵抗を形成するのに役立つ。本発明の別の変形例では、構造体の要素は、例えば間接的に螺旋状に形成される。
【0024】
要素を備えた構造体は、流体流が流れることができるキャビティを有することが有利である。要素の構成に応じて、キャビティが大きくなったり小さくなったりするため、必要な流体の流れに合わせて構成できる。
【0025】
本発明によれば、要素を備えた構造体は付加的に製造される。この特殊な製造技術に基づいてのみ、非常に少ない材料投入量で非常に迅速に構造体を柔軟に製造することが可能になる。特に、要素を相互に接続しながら、同時に相互に移動可能に配置することは、付加製造技術によってのみ達成することができる。
【0026】
付加製造構造体とは、付加製造法によって製造された構造体である。「付加製造法」という用語には、材料が層ごとに適用され、この方法で3次元要素が製造されるすべての製造方法が含まれる。この場合、層ごとの組立は、コンピュータ制御下で、所定の寸法および形状に従って、1つまたは複数の液体または固体材料から行われる。組立中に、物理的または化学的な硬化または溶融プロセスが発生する。3Dプリントの一般的な材料には、プラスチック、合成樹脂、セラミック、金属、カーボンおよびグラファイト材料がある。
【0027】
ジェネレーティブまたは付加製造法は、要素から3次元構造体を生成するために材料を層ごとに適用する方法を意味すると理解されている。本発明によれば、可変流れ抵抗は付加製造構造体として設計される。要素を備えた構造体の形成には、特に、蒸着溶接としても知られる選択的なレーザー溶融およびクラッディングが使用される。本発明の別の変形例では、溶融性プラスチックの適用と組み合わせた押出成形も、使用可能な方法である。
【0028】
選択的レーザー溶融では、まず組立材料の層を基板に適用する方法によって、構造体の1つの要素が製造される。構造体の要素を製造するための組立材料は、金属粉末粒子を含むことが好ましい。本発明の一変形例では、鉄および/またはコバルト含有粉末粒子がこの目的のために使用される。これらには、クロム、モリブデン、またはニッケルなどの添加物が含まれ得る。金属組立材料は、粉末の形で薄層としてプレートに適用される。次いで、粉末材料は、放射線によってそれぞれ所望の位置で局所的に完全に溶融され、硬化後に固体材料層が形成される。次に、基板を層の厚さだけ下げて、より多くの粉末を適用する。このサイクルは、すべての層が作成され、要素を含む最終構造体が形成されるまで繰り返される。本発明によれば、流れ抵抗として特に複雑かつ最適化された方法で形成された構造体が製造される。要素を備えた構造体は、従来の方法では工業的に製造することができない。
【0029】
放射線として、例えば、個々の粉末層から要素を生成するレーザービームを使用することが可能である。レーザービームを導くためのデータは3D CAD本体を基にソフトウェアで生成される。選択的レーザー溶融の代わりに、電子ビーム(EBN)を使用することも可能である。
【0030】
堆積溶接またはクラッディング加工では、初期部品を溶接でコーティングする方法で要素が製造される。堆積溶接法では、ワイヤまたは粉末の形の溶接溶加材を使用して容積を増加し、特に複雑で最適化された形状の要素を形成する。
【0031】
本発明によれば、相互に接続されており、かつ相互に移動可能に配置されている要素を備えた構造体が、流れ抵抗を変化させるために流体中で使用される。したがって、要素を備えた構造体は、最初は流体の流れに対して開いており、回転運動によって動的シールに変換できる柔軟なシール構造体として使用される。
【0032】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面を参照した例示的な実施形態の説明および図面自体から明らかになるであろう。
【0033】
図面では次のようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】管内の要素を備えた構造体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、例として、要素3を備えた構造体2が挿入される管1を示す。この実施形態の変形例では、要素3を備えた構造体2は、シャフト5を介して回転駆動装置に接続された可変流れ抵抗として具体化される。シャフト側から来る流体は、可変流れ抵抗を横切って、および/または可変流れ抵抗内のキャビティ6を通って流れることが好ましい。可変流れ抵抗は、回転駆動装置の動きによって扇状に広げられ、その結果、相互に接続された要素3は、それらの移動性および有効な遠心力により、接続した状態で広がって漂流する。
【0036】
可変流れ抵抗の構造体2のシャフトから離れた側の外周にはゴムリップ4があり、回転速度に応じて、管1まで伸びることができ、その過程でシール効果があり得る。したがって、可変流れ抵抗は、最大回転速度でシールとしても機能できる。
【0037】
図1に示す可変流れ抵抗は、回転速度が増加するにつれて抵抗効果を発揮する。生成的に製造された要素3は、漏斗形状を形成するために互いに移動可能に接続される。要素3は、リングとして設計することが好ましく、その材料の厚さは、形成される流れ抵抗の関数として実現される。
図1
【国際調査報告】