(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】病気治療の評価
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20240806BHJP
G16H 30/00 20180101ALI20240806BHJP
G16C 20/70 20190101ALI20240806BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G16H50/20
G16H30/00
G16C20/70
A61B5/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502444
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 US2022037277
(87)【国際公開番号】W WO2023288054
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524019036
【氏名又は名称】エーアイキュー グローバル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジェラフ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】イップ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマンディ,エス.ショーン
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XB09
4C117XE44
4C117XE45
4C117XE46
4C117XJ13
4C117XJ18
4C117XJ34
4C117XK05
4C117XK09
4C117XR07
4C117XR08
4C117XR09
4C117XR10
5L099AA15
(57)【要約】
本開示は、病変ごとのレベルで疾患の治療または進行を評価するための方法、システム、および非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体を提供する。本システムおよび方法は、病変の総数、退縮または進行している病変の総数および比率、病変のサイズの経時的変化、ならびに分子イメージング剤の取り込み値を含む様々な特徴の測定に基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の疾患の治療および進行を評価する方法であって、
前記被験者の第1のイメージングスキャンを取得するステップであって、前記イメージングスキャンは、前記被験者内の病変を識別し、セグメント化するように構成される、ステップ;
前記スキャンを処理して、
前記病変の場所を特定し、
前記被験者の前記病変を定量化し、
各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算するステップ;および、
個々の病変に向けられた特徴、前記被験者の任意の組み合わせもしくは全ての病変にわたるイメージング信号の差異を考慮した特徴、またはそれらの組み合わせ、に関する前記イメージング信号の評価に基づく疾患治療評価スコアを提供するステップ、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1のスキャンからの個々の病変に向けられた前記特徴は、前記被験者における病変の総数、最高病変イメージング信号、平均病変イメージング信号、総病変イメージング信号、各病変のサイズおよび/または体積、ならびにそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のスキャンからの個々の病変に向けられた前記特徴は、前記被験者内の全ての病変を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のスキャンからの個々の病変に向けられた前記特徴は、前記被験者における病変の総数、最高病変イメージング信号、および総病変イメージング信号を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1のスキャンからの異なる病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する前記特徴は、前記異なる病変間の最大、平均、および総イメージング信号の1つまたは複数のテクスチャ特徴を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記被験者の第2のイメージングスキャンを取得するステップであって、前記イメージングスキャンは、病変を識別し、セグメント化するように構成され、前記第1のスキャンと第2のスキャンとは、一定期間だけ離れている、ステップ;
前記第2のスキャンを処理して、
前記病変の場所を特定し、
前記被験者の前記病変を定量化し、
各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算し、
前記第1のスキャンと第2のスキャンとの間で相同病変を判定し、対応する各イメージング信号の変化を測定し、
各病変の前記変化に基づいて各病変を分類する、ステップ;および、
個々の病変に向けられた特徴もしくは前記第2のスキャンから前記被験者内の任意の組み合わせもしくは全ての病変にわたるイメージング信号の差異を考慮した特徴についての前記第1のスキャンまたは第2のスキャンからの前記イメージング信号の評価、前記第1のスキャンと第2のスキャンとの間の個々の病変に向けられた特徴の変化の評価、前記第1のスキャンと第2のスキャンとの間の相同病変についての異なる病変にわたる少なくとも1つのイメージング信号の差異を考慮した特徴の変化の評価、またはそれらの組み合わせに基づく疾患治療評価スコアを提供するステップ、を更に含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
各病変を、完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、または新規(iNL)に分類する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴の前記変化は、前記被験者における病変の総数の変化、個々の病変間の最大、平均、及び総イメージング信号の変化、並びにそれらの組み合わせを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のスキャンからの異なる病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する特徴の前記変化は、前記異なる病変間の最大、平均、および総イメージング信号の1つまたは複数のテクスチャ特徴の変化を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のスキャンからの異なる病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する特徴における前記変化は、1回のスキャンにおける異なる病変間の最大、平均、および総イメージング信号の標準偏差;最大、平均、および総イメージング信号における変化の標準偏差;最大、平均、および総イメージング信号の歪度および尖度の標準偏差;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、または新規(iNL)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、新規(iNL)のそれぞれに分類された病変の総数の比率;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)に分類された病変の最大、平均、および総イメージング信号における変化の標準偏差;部分奏効(iPR)に分類された病変の最大、平均、および総イメージング信号における変化の標準偏差;第2のスキャン後の進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからの前記平均イメージング信号の標準偏差、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の前記平均イメージング信号の標準偏差、および両者間の変化率;第2のスキャン後の完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の第1のスキャンからの前記平均イメージング信号の標準偏差、部分奏効(iPR)に分類された病変の前記平均イメージング信号の標準偏差、および両者間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから進行(iPD)と分類された病変の前記被験者における最大,平均,および総イメージング信号、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大,平均,および総イメージング信号、ならびに両者の間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから完全奏効(iCR)及び部分奏効(iPR)に分類された病変の前記被験者における最大、平均、及び総イメージング信号、部分奏効(iPR)に分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大、平均、及び総イメージング信号、並びに両者の間の変化率;の変化、並びに、これらの組み合わせを含む、請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
異なる病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する特徴の前記変化は、進行(iPD)または新規(iNL)に分類された病変の総数;進行(iPD)に分類された病変の最大、平均、および総イメージング信号の前記変化の標準偏差;第2のスキャン後の進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからの平均イメージング信号の標準偏差;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の平均イメージング信号の標準偏差;第2のスキャン後の第1のスキャンからの進行(iPD)に分類された病変の前記被験者における最大及び総イメージング信号;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された、前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大及び総イメージング信号;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された、前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における平均イメージング信号;及びそれらの組み合わせを含む、請求項7~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1のイメージングスキャンを取得するステップは、前記被験者における分子イメージング剤のスキャンを取得することを含み、前記分子イメージング剤は、病変をセグメント化または標的化するように構成される、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第1のイメージングスキャンを処理するステップは、各病変に対する前記分子イメージング剤の取り込み値を計算することを含み、前記疾患治療評価スコアは、個々の病変に向けられた特徴、前記被験者の任意の組み合わせまたは全ての病変にわたる取り込み値の差異を考慮する特徴、またはそれらの組み合わせに対する前記取り込み値の評価を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のスキャンからの個々の病変に向けられた前記特徴は、前記被験者における病変の総数、最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込み、およびそれらの組合せを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のスキャンからの異なる病変間の取り込み値の差異を考慮する前記特徴は、前記異なる病変間の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みの標準偏差、歪度、尖度、およびそれらの組み合わせを含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のイメージングスキャンを取得するステップは、前記被験者内の分子イメージング剤のスキャンを取得することを含み、前記分子イメージング剤は病変を標的化またはセグメント化するように構成される、請求項6~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記第2のスキャンを処理するステップは、各病変に対する前記分子イメージング剤の取り込み値を計算することを含み、前記疾患治療評価スコアは、相同病変に対する異なる病変にわたる取り込み値の差異を考慮する特徴の変化を含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴の前記変化は、前記被験者における病変の総数、最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込み、およびそれらの組み合わせの変化を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のスキャンからの異なる病変にわたる取り込み値の差異を考慮する特徴の変化は、1回のスキャンにおける異なる病変間の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みの標準偏差;最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みの歪度および尖度の標準偏差;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、または新規(iNL)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、または新規(iNL)のそれぞれに分類された病変の総数の比率;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)に分類された病変の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;部分奏効(iPR)に分類された病変の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;第2のスキャン後の進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからの平均病変取り込みの標準偏差、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の平均病変取り込みの標準偏差、および両者の間の変化率;第2のスキャン後の完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の第1のスキャンからの平均病変取り込みの標準偏差、部分奏効(iPR)に分類された病変の平均病変取り込みの標準偏差、および両者の間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから進行(iPD)に分類された病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込み、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、および総病変取り込み、ならびに両者の間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから完全奏効(iCR)及び部分奏効(iPR)に分類された病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、及び総病変取り込み、部分奏効(iPR)に分類された第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、及び総病変取り込み、並びに両者の間の変化率;の変化、並びに、これらの組み合わせを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
異なる病変にわたる取り込みの差異を考慮する特徴の変化は、進行(iPD)または新規(iNL)に分類された病変の総数;進行(iPD)に分類された病変の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;第2のスキャン後の進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからの平均病変取り込みの標準偏差;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の平均病変取り込みの標準偏差;前記第2のスキャン後の第1のスキャンからの進行(iPD)と分類された病変の前記被験者における最大病変取り込みと総病変取り込み;進行(iPD)および新規(iNL)と分類された第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大病変取り込みと総病変取り込み;進行(iPD)と新規(iNL)と分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における平均病変取り込み;およびそれらの組み合わせを含む、請求項17~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記被験者の少なくとも1つの追加イメージングスキャンを取得するステップであって、前記イメージングスキャンは、病変を識別し、セグメント化するように構成される、ステップ;
前記少なくとも1つの追加イメージングスキャンを処理して:
前記病変の場所を特定し、
前記被験者の病変を定量化し、
各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算し、
任意の2つのイメージングスキャン間で相同病変を判定し、対応する各イメージング信号における変化を測定し、
各病変の前記変化に基づいて各病変を分類するステップ;および
個々の病変に向けられたイメージング信号もしくは前記少なくとも1回の追加のスキャンから前記被験者内の任意の組み合わせもしくは全ての病変にわたるイメージング信号の差異を考慮した特徴についての前記イメージング信号の評価、任意の2つのスキャンの間の個々の病変に向けられた特徴の変化の評価、任意の2つのスキャンの間の相同病変の異なる病変にわたる少なくとも1つのイメージング信号の差異を考慮した特徴の変化の評価、またはそれらの組み合わせに基づく疾患治療評価スコアを提供するステップ、を含む、請求項6~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
解剖学的スキャンを取得することをさらに含む、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記解剖学的スキャンは、前記第1のスキャン、前記第2のスキャン、前記少なくとも1つの追加イメージングスキャン、またはそれらの任意の組み合わせと同時に取得される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
解剖学的位置に応じて前記病変を分類することをさらに含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患治療評価スコアが、病変の解剖学的位置、病変の解剖学的分布、またはそれらの組み合わせの評価にさらに基づく、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患治療評価スコアは、さらに、ラジオミクス特徴に基づく、請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記疾患治療評価スコアがさらにバイオマーカーデータに基づく、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記疾患治療評価スコアは、前記治療の臨床的有用性の持続期間の尺度である、請求項1~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
以前のイメージングスキャンからの、特定の病変もしくは病変の組み合わせの除去、または、特定の病変もしくは病変の組み合わせの治療成効を表す1つ以上のイメージング特徴の変更による疾患治療のシミュレーションに基づいて、疾患予測分析を提供するステップをさらに含む、請求項1~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記疾患予測分析が、シミュレーションされた生存曲線を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記疾患が癌である、請求項1~29のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
命令を記憶した非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体であって、1つまたは複数のプロセッサによって実行されるとき、
被験者の第1のイメージングスキャン、ならびに関連するスキャンおよび被験者のデモグラフィックを受信することであって、前記イメージングスキャンは、前記被験者の病変を識別し、セグメント化するように構成される、こと;
前記第1のスキャンを処理して、前記病変の位置を特定し、病変の総数を定量化し、各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算すること;
個々の病変に向けられた特徴、前記被験者内の任意の組み合わせまたは全ての病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する特徴、またはそれらの組み合わせについて前記イメージング信号を評価すること、および、
疾患治療評価スコアを提供すること、を含む動作を実行する、非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項33】
前記第1のスキャンからの個々の病変に向けられた前記特徴は、前記被験者における病変の総数、最高病変イメージング信号、平均病変イメージング信号、総病変イメージング信号、およびそれらの組み合わせを含む、請求項32に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項34】
前記第1のスキャンからの異なる病変間のイメージング信号の差異を考慮する前記特徴は、前記異なる病変間の最大、平均、および総イメージング信号の1つまたは複数のテクスチャ特徴を含む、請求項32または33に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項35】
前記動作は、
第2のイメージングスキャン、ならびに関連するスキャン及び被験者のデモグラフィックを受信するステップであって、前記イメージングスキャンは、病変を識別し、セグメント化するように構成される、ステップ;
第2のスキャンを処理して、前記病変の位置を特定し、病変の総数を定量化し、各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算するステップ;
前記第1のスキャンと第2のスキャンとの間の相同病変位置を決定するステップと
対応する各イメージング信号の変化を測定するステップを含む、
請求項32~34のいずれかに記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項36】
前記第2のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴の前記変化は、前記被験者における、病変の総数の変化、異なる病変およびそれらの組み合わせの間の、最大、平均、および総イメージング信号の変化を含む、請求項35に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項37】
前記第2のスキャンからの異なる病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する特徴における前記変化は、1回のスキャンにおける異なる病変間の最大、平均、および総イメージング信号の標準偏差;最大、平均、および総イメージング信号における変化の標準偏差;最大、平均、および総イメージング信号の歪度および尖度の標準偏差;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、または新規(iNL)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、新規(iNL)のそれぞれに分類された病変の総数の比率;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)に分類された病変の最大、平均、および総イメージング信号における変化の標準偏差;部分奏効(iPR)に分類された病変の最大、平均、および総イメージング信号における変化の標準偏差;第2のスキャン後の進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからの前記平均イメージング信号の標準偏差、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の前記平均イメージング信号の標準偏差、および両者間の変化率;第2のスキャン後の完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の第1のスキャンからの前記平均イメージング信号の標準偏差、部分奏効(iPR)に分類された病変の前記平均イメージング信号の標準偏差、および両者間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから進行(iPD)と分類された病変の前記被験者における最大,平均,および総イメージング信号、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大,平均,および総イメージング信号、ならびに両者の間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから完全奏効(iCR)及び部分奏効(iPR)に分類された病変の前記被験者における最大、平均、及び総イメージング信号、部分奏効(iPR)に分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大、平均、及び総イメージング信号、並びに両者の間の変化率;の変化、並びに、これらの組み合わせを含む、請求項35又は36記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項38】
前記第1のイメージングスキャンが、前記被験者における分子イメージング剤のイメージングスキャンを含み、前記分子イメージング剤は病変を標的化またはセグメント化する、請求項37に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項39】
前記第1のイメージングスキャンを処理することは、各病変に対する前記分子イメージング剤の取り込み値を計算することを含み、前記疾患治療評価スコアは、個々の病変に向けられた特徴、前記被験者の任意の組み合わせまたは全ての病変にわたる取り込み値の差異を考慮する特徴、またはそれらの組み合わせに対する前記取り込み値の評価を含む、請求項38に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項40】
前記第1のスキャンからの個々の病変に向けられた前記特徴は、前記被験者における病変の総数、最高病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込み、およびそれらの組合せを含む、請求項39に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項41】
前記第1のスキャンからの異なる病変間の取り込み値の差異を考慮する前記特徴は、前記異なる病変間の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みの標準偏差、歪度、尖度、およびそれらの組み合わせを含む、請求項39または40に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項42】
前記第2のイメージングスキャンは、前記被験者における分子イメージング剤のイメージングスキャンを含み、前記分子イメージング剤は病変を標的化またはセグメント化する、請求項35~41のいずれかに記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項43】
前記第2のスキャンを処理することは、各病変に対する前記分子イメージング剤の取り込み値を計算することを含み、前記疾患治療評価スコアは、相同病変に対する異なる病変にわたる取り込み値の差異を考慮する特徴の変化を含む、請求項42に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項44】
前記第2のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴の前記変化は、前記被験者における病変の総数、最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込み、およびそれらの組み合わせの変化を含む、請求項43に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項45】
前記第2のスキャンからの異なる病変にわたる取り込み値の差異を考慮する特徴の変化は、1回のスキャンにおける異なる病変間の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みの標準偏差;最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みの歪度および尖度の標準偏差;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、または新規(iNL)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、または新規(iNL)のそれぞれに分類された病変の総数の比率;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)に分類された病変の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;部分奏効(iPR)に分類された病変の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;第2のスキャン後の進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからの平均病変取り込みの標準偏差、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の平均病変取り込みの標準偏差、および両者の間の変化率;第2のスキャン後の完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の第1のスキャンからの平均病変取り込みの標準偏差、部分奏効(iPR)に分類された病変の平均病変取り込みの標準偏差、および両者の間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから進行(iPD)に分類された病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込み、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、および総病変取り込み、ならびに両者の間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから完全奏効(iCR)及び部分奏効(iPR)に分類された病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、及び総病変取り込み、部分奏効(iPR)に分類された第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、及び総病変取り込み、並びに両者の間の変化率;の変化、並びに、これらの組み合わせを含む、請求項43または44に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項46】
異なる病変にわたる取り込みの差異を考慮する特徴の変化は、進行(iPD)または新規(iNL)に分類された病変の総数;進行(iPD)に分類された病変の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;第2のスキャン後の進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからの平均病変取り込みの標準偏差;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の平均病変取り込みの標準偏差;前記第2のスキャン後の第1のスキャンからの進行(iPD)と分類された病変の前記被験者における最大病変取り込みと総病変取り込み;進行(iPD)および新規(iNL)と分類された第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大病変取り込みと総病変取り込み;進行(iPD)と新規(iNL)と分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における平均病変取り込み;およびそれらの組み合わせを含む、請求項43~45のいずれかに記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項47】
前記動作は、さらに、
少なくとも1つの追加イメージングスキャン、ならびに関連するスキャン及び被験者のデモグラフィックを受信するステップであって、前記少なくとも1つのイメージングスキャンは、病変を識別し、セグメント化するように構成される、ステップ;
前記少なくとも1つの追加イメージングスキャンを処理して、前記病変の位置を特定し、病変の総数を定量化し、各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算する、ステップ;
任意の2つのイメージングスキャン間の相同病変位置を決定するステップ;および、
対応する各イメージング信号の変化を測定するステップ、を含む、
請求項32~45のいずれかに記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項48】
前記動作はさらに、
前記第1のスキャン、前記第2のスキャン、前記少なくとも1つの追加イメージングスキャン、またはそれらの任意の組み合わせと同時に解剖学的スキャンを受信するステップを含む、
請求項32~47のいずれかに記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項49】
前記動作はさらに、
解剖学的位置に応じて、前記第1のスキャン、前記第2のスキャン、少なくとも1つの追加イメージングスキャン、またはそれらの任意の組み合わせから前記病変を分類するステップを含む、
請求項48に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項50】
前記動作は、さらに、
前記被験者の解剖学的位置のサブセット内の病変間の差異、もしくは前記被験者の解剖学的位置の異なるサブセット間の差異、またはそれらの組み合わせを考慮した特徴について、前記被験者の解剖学的部位のサブセット内の個々の病変を評価するステップを含む、
請求項49に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項51】
前記疾患治療評価スコアが、病変の解剖学的位置、病変の解剖学的分布、またはそれらの組み合わせの評価にさらに基づいている、請求項49または50に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項52】
前記動作は、さらに、
ラジオメトリックスキャンを受信するステップ;
前記ラジオメトリックスキャンの一部または全部からラジオメトリック特徴を抽出するステップ;および、
少なくとも1つのラジオメトリック特徴の変化を評価し、病変を進行性か奏効性かに分類するステップを含み、
前記疾患治療評価スコアは、さらにラジオメトリック特徴に基づく、
請求項32~51のいずれかに記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項53】
前記動作は、さらに、
疾患関連バイオマーカーデータを受信するステップを含み、前記疾患治療評価スコアはさらに前記疾患関連バイオマーカーデータに基づく、請求項32~52のいずれかに記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項54】
前記疾患治療評価スコアは、前記治療の臨床的有用性の持続期間の尺度である、請求項32~53のいずれかに記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項55】
前記動作は、さらに、
以前のイメージングスキャンから、特定の病変もしくは病変の組み合わせを除去するか、または特定の病変もしくは病変の組み合わせの治療成功を表す1つ以上のイメージング特徴を変更するステップと、
疾患予測分析を提供するステップ、
と含む、請求項32~54のいずれかに記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項56】
前記疾患予測分析が、シミュレーションされた生存曲線を含む、請求項55に記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項57】
前記疾患が癌である、請求項32~56のいずれかに記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項58】
1つまたは複数のプロセッサ、および
請求項32~57のいずれかに記載の非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体、を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、病変単位での疾患治療の評価のための、コンピュータ実装方法、システム、および非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体を提供する。
【0002】
〔背景技術〕
本出願は、2021年7月16日に出願された米国仮出願第63/222,746号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
末期がん患者は、数百の病変を呈することがある(例えば、骨転移性前立腺がん(mPC)における骨転移)。このような患者における治療効果は、99mTc-メチレンジホスホネート(MDP)平面シンチグラフィー(骨スキャン);胸部、腹部、骨盤CTスキャン;血清前立腺特異抗原(PSA);および臨床症状を組み合わせてモニタリングすることができる。これまでの推奨では、経過観察によって確認されたスキャン上の新たな病変の出現に基づいて進行が定義されていた(例えば、2+2ルール)。しかし、多くの病変を有する患者の評価は複雑であるため、進行の判定は主に医師の裁量に基づくようになった。定量的なアプローチで患者から収集したすべての情報を加味したさらなる推奨は、医師の意思決定を支援し標準化するのに不可欠な情報を提供することができる。
【0004】
この包括的なアプローチに必要な情報を提供するために、例えば、ポジトロン断層撮影やコンピュータ断層撮影(PET/CT)を用いた分子イメージングが検討されてきた。様々な分子イメージング薬剤を用いた分子イメージング、例えば18F-フッ化ナトリウムPET/CT(NaF)イメージングは、MDP骨スキャンと比較して骨転移の検出感度が優れていることが示されている。複数の研究により、1つのタイムポイント(ベースライン時または追跡調査時)またはタイムポイント間の変化を測定することで、分子イメージング指標の予後予測能が示されている。
【0005】
mCRPC患者の集団内では、病変間の奏効にかなりの不均質性が認められ、少なくとも1つの進行病変と奏効病変が同時に存在した。このmPCの特徴は、FDG PET/CT画像を用いて確認された。同一患者内の病変がどのように奏効するかという不均質性は、何が患者の転帰を左右するのかを完全に理解するために、単一患者の指標を使用することを妨げる。
【0006】
〔概要〕
本開示は、被験者における疾患の治療および進行を評価するコンピュータ実行方法および非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体に関する。いくつかの実施形態において、疾患は癌である。
【0007】
いくつかの実施形態において、本方法は、被験者の疾患の治療および進行を評価する方法であって、
前記被験者の第1のイメージングスキャンを取得するステップであって、前記イメージングスキャンは、前記被験者内の病変を識別し、セグメント化するように構成される、ステップ;
前記スキャンを処理して、
前記病変の場所を特定し、
前記被験者の前記病変を定量化し、
各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算するステップ;および、
個々の病変に向けられた特徴、前記被験者の任意の組み合わせもしくは全ての病変にわたるイメージング信号の差異を考慮した特徴、またはそれらの組み合わせに関する前記イメージング信号の評価に基づく疾患治療評価スコアを提供するステップ、
を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1のスキャンからの個々の病変に向けられた前記特徴は、被験者における病変の総数、最高病変イメージング信号、平均病変イメージング信号、総病変イメージング信号、各病変のサイズおよび/または体積、およびそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、前記第1のスキャンからの個々の病変に向けられた前記特徴は、前記被験者における病変の総数、最高病変イメージング信号、総病変イメージング信号を含む。いくつかの実施形態では、前記第1のスキャンからの個々の病変に向けられた前記特徴は、前記被験者内の全ての病変を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1のスキャンからの異なる病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する特徴は、異なる病変間の最大イメージング信号、平均イメージング信号、及び総イメージング信号の1つ以上のテクスチャ特徴を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1のイメージングスキャンを取得するステップは、被験者における分子イメージング剤のスキャンを取得することを含み、分子イメージング剤は、病変をセグメント化または標的化するように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記第1のイメージングスキャンを処理するステップは、各病変に対する前記分子イメージング剤の取り込み値を計算することを含み、前記疾患治療評価スコアは、個々の病変に向けられた特徴、前記被験者の任意の組み合わせもしくは全ての病変にわたる取り込み値の差異を考慮する特徴、またはそれらの組み合わせに対する前記取り込み値の評価を含む。いくつかの実施形態では、前記第1のスキャンからの個々の病変に向けられた前記特徴は、前記被験者における病変の総数、最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込み、およびそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、前記第1のスキャンからの異なる病変間の取り込み値の差異を考慮する前記特徴は、前記異なる病変間の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みの標準偏差、歪度、尖度、およびそれらの組み合わせを含む。
【0012】
本方法は、前記被験者の第2のイメージングスキャンを取得するステップであって、前記イメージングスキャンは、病変を識別し、セグメント化するように構成され、前記第1のスキャンと第2のスキャンとは、一定期間だけ離れている、ステップ;前記第2のスキャンを処理して、前記病変の場所を特定し、前記被験者の前記病変を定量化し、各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算し、前記第1のスキャンと第2のスキャンとの間で相同病変を判定し、対応する各イメージング信号の変化を測定し、各病変の前記変化に基づいて各病変を分類する、ステップ;および、個々の病変に向けられた特徴もしくは前記第2のスキャンから前記被験者内の任意の組み合わせもしくは全ての病変にわたるイメージング信号の差異を考慮した特徴についての前記第1のスキャンまたは第2のスキャンからの前記イメージング信号の評価、前記第1のスキャンと第2のスキャンとの間の個々の病変に向けられた特徴の変化の評価、前記第1のスキャンと第2のスキャンとの間の相同病変についての異なる病変にわたる少なくとも1つのイメージング信号の差異を考慮した特徴の変化の評価、またはそれらの組み合わせに基づく疾患治療評価スコアを提供するステップ、を更に含む。いくつかの実施形態では、各病変は、完全に奏効(iCR)、部分的に奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、又は新規(iNL)に分類される。
【0013】
いくつかの実施形態では、第2のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴の変化は、被験者における病変の総数の変化、個々の病変間の最大、平均、及び総イメージング信号の変化、並びにそれらの組み合わせを含む。
【0014】
ある実施形態では、前記第2のスキャンからの異なる病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する特徴における前記変化は、1回のスキャンにおける異なる病変間の最大、平均、および総イメージング信号の標準偏差;最大、平均、および総イメージング信号における変化の標準偏差;最大、平均、および総イメージング信号の歪度および尖度の標準偏差;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、または新規(iNL)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、新規(iNL)のそれぞれに分類された病変の総数の比率;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)に分類された病変の最大、平均、および総イメージング信号における変化の標準偏差;部分奏効(iPR)に分類された病変の最大、平均、および総イメージング信号における変化の標準偏差;第2のスキャン後の進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからの前記平均イメージング信号の標準偏差、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の前記平均イメージング信号の標準偏差、および両者間の変化率;第2のスキャン後の完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の第1のスキャンからの前記平均イメージング信号の標準偏差、部分奏効(iPR)に分類された病変の前記平均イメージング信号の標準偏差、および両者間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから進行(iPD)と分類された病変の前記被験者における最大,平均,および総イメージング信号、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大,平均,および総イメージング信号、ならびに両者の間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから完全奏効(iCR)及び部分奏効(iPR)に分類された病変の前記被験者における最大、平均、及び総イメージング信号、部分奏効(iPR)に分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大、平均、及び総イメージング信号、並びに両者の間の変化率;の変化、並びに、これらの組み合わせを含む。ある選択された実施形態では、異なる病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する特徴の前記変化は、進行(iPD)または新規(iNL)に分類された病変の総数;進行(iPD)に分類された病変の最大、平均、および総イメージング信号の前記変化の標準偏差;第2のスキャン後の進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからの平均イメージング信号の標準偏差;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の平均イメージング信号の標準偏差;第2のスキャン後の第1のスキャンからの進行(iPD)に分類された病変の前記被験者における最大及び総イメージング信号;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された、前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大及び総イメージング信号;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された、前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における平均イメージング信号;及びそれらの組み合わせを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2のイメージングスキャンを取得するステップは、前記被験者内の分子イメージング剤のスキャンを取得することを含み、前記分子イメージング剤は病変を標的化またはセグメント化するように構成される。いくつかの実施形態では、第2のスキャンを処理するステップは、各病変に対する前記分子イメージング剤の取り込み値を計算することを含み、前記疾患治療評価スコアは、相同病変に対する異なる病変にわたる取り込み値の差異を考慮する特徴の変化を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、第2のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴の前記変化は、前記被験者における病変の総数、最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込み、およびそれらの組み合わせの変化を含む。ある実施形態では、 前記第2のスキャンからの異なる病変にわたる取り込み値の差異を考慮する特徴の変化は、1回のスキャンにおける異なる病変間の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みの標準偏差;最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みの歪度および尖度の標準偏差;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、または新規(iNL)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、または新規(iNL)のそれぞれに分類された病変の総数の比率;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)に分類された病変の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;部分奏効(iPR)に分類された病変の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;第2のスキャン後の進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからの平均病変取り込みの標準偏差、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の平均病変取り込みの標準偏差、および両者の間の変化率;第2のスキャン後の完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の第1のスキャンからの平均病変取り込みの標準偏差、部分奏効(iPR)に分類された病変の平均病変取り込みの標準偏差、および両者の間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから進行(iPD)に分類された病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込み、進行(iPD)および新規(iNL)に分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、および総病変取り込み、ならびに両者の間の変化率;第2のスキャン後の第1のスキャンから完全奏効(iCR)及び部分奏効(iPR)に分類された病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、及び総病変取り込み、部分奏効(iPR)に分類された第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大病変取り込み、平均病変取り込み、及び総病変取り込み、並びに両者の間の変化率;の変化、並びに、これらの組み合わせを含む。
【0017】
選択された実施形態において、異なる病変にわたる取り込みの差を考慮する特徴の変化は、進行(iPD)または新規(iNL)に分類された病変の総数;進行(iPD)に分類された病変の最大病変取り込み、平均病変取り込み、総病変取り込みにおける変化の標準偏差;第2のスキャン後の進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからの平均病変取り込みの標準偏差;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の平均病変取り込みの標準偏差;前記第2のスキャン後の第1のスキャンからの進行(iPD)と分類された病変の前記被験者における最大病変取り込みと総病変取り込み;進行(iPD)および新規(iNL)と分類された第2のスキャンからの病変の前記被験者における最大病変取り込みと総病変取り込み;進行(iPD)と新規(iNL)と分類された前記第2のスキャンからの病変の前記被験者における平均病変取り込み;およびそれらの組み合わせを含む。
【0018】
本方法は、被験者の少なくとも1つの追加イメージングスキャンを取得するステップであって、前記イメージングスキャンは、病変を識別し、セグメント化するように構成される、ステップ;前記少なくとも1つの追加イメージングスキャンを処理して:前記病変の場所を特定し、前記被験者の病変を定量化し、各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算し、任意の2つのイメージングスキャン間で相同病変を判定し、対応する各イメージング信号における変化を測定し、各病変の前記変化に基づいて各病変を分類するステップ;および個々の病変に向けられたイメージング信号もしくは前記少なくとも1回の追加のスキャンから前記被験者内の任意の組み合わせもしくは全ての病変にわたるイメージング信号の差異を考慮した特徴についての前記イメージング信号の評価、前記2つのスキャンの間の個々の病変に向けられた特徴の変化の評価、前記2つのスキャンの間の相同病変についての異なる病変にわたる少なくとも1つのイメージング信号の差異を考慮した特徴の変化の評価、またはそれらの組み合わせに基づく疾患治療評価スコアを提供するステップ、を含む。
【0019】
本方法は、解剖学的スキャンを取得することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、解剖学的スキャンは、第1のスキャンと同時に取得される。いくつかの実施形態では、解剖学的スキャンは、第2のスキャンと同時に取得される。いくつかの実施形態では、解剖学的スキャンは、第1のスキャン及び第2のスキャンと同時に取得される。いくつかの実施形態では、本方法は、解剖学的位置に応じて病変を分類することをさらに含む。いくつかの実施形態では、疾患治療評価スコアは、病変の解剖学的位置、病変の解剖学的分布、またはそれらの組み合わせの評価にさらに基づく。
【0020】
いくつかの実施形態では、疾患治療評価スコアはさらにラジオミクス特徴に基づく。
【0021】
いくつかの実施形態では、疾患治療評価スコアはさらにバイオマーカーデータに基づく。
【0022】
いくつかの実施形態において、疾患治療評価スコアは、治療の臨床的有用性の持続期間の尺度である(例えば、全生存期間、無増悪生存期間、病変数及び/又は病変サイズの減少)。
【0023】
いくつかの実施形態において、本方法は、特定の病変、又は病変の組み合わせの除去による疾患治療のシミュレーション、又は、以前のイメージングスキャンから、特定の病変、又は病変の組み合わせの治療の成功を表す1つ以上のイメージング特徴の変化に基づいて、疾患予測分析を提供するステップを更に含み得る。
【0024】
本明細書でさらに開示するのは、命令を記憶した非一過性のコンピュータ可読媒体、および前記非一過性のコンピュータ可読媒体と実行されると本明細書で説明する方法を実行する1つまたは複数のプロセッサとを含むシステムである。
【0025】
本開示の他の態様および実施形態は、以下の詳細な説明および添付図面に照らして明らかになるであろう。
〔図面の簡単な説明〕
【0026】
図1A-1Cは、Harmonら(J Clin Oncol,2017、35(24):2829-2837頁、、参照により本明細書に組み込まれる)によって記載された方法を用い、Linら(J Nucl Med,2016.57(12):p.1872-1879、参照により本明細書に組み込まれる)による限界値を使用した、示された各臨床試験のカプランマイヤー曲線である。Linらによる上記記載では、患者は、進行性疾患(ΔSUV
total>44%)、安定性疾患(-30%<ΔSUV
total<44%)、または部分奏効(ΔSUV
total<-30%)を有するものとして分類される。
【0027】
図2A-2Cは、最もホットな病変のSUV(
peak)が30%を超えて増加した場合、2つの最もホットな病変のSUV(
total)が75%を超えて増加した場合、または新たな病変があった場合に、患者をPDと分類するNAFCIST法を用いた、示された各臨床試験のKaplan-Meier曲線である。
【0028】
図3A-3Bは、示されたPCF臨床試験(
図3A)およびNCI臨床試験(
図3B)のKaplan-Meier曲線であり、PSAが25%を超えて増加した場合に患者をPDと分類するPSA法を用いている。
【0029】
図4A-4Cは、他の3つのデータセット(
図4A)および3つの外部検証セット(
図4B-4C)のそれぞれについて、分割が訓練されたモデルを用いて決定され、分割がPCFデータで訓練されたモデルのハザードスコアの中央値に基づいて決定されたPCFデータからの検証曲線を示すカプランマイヤー曲線である。
【0030】
図5は、外部メラノーマデータセットの検証曲線を示すカプランマイヤー曲線であり、分割はPCFデータで訓練されたモデルのハザードスコア中央値に基づいている。
【0031】
図6は、機械学習モデルの出力例である。このグラフは、患者が進行する可能性を時間に対してプロットしたものである。
【0032】
図7は、患者から進行性病変を最適な選択で除去することによる、患者の改善シミュレーションを示す。
【0033】
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、画像スキャンから決定された被験者内の病変の特徴に基づいて、疾患の治療を評価するための方法およびシステムを提供する。
【0035】
これまでの評価方法は、同じデータセット内で開発され、試験されてきた。しかし、本明細書で示すように、以前の研究で単独で予測可能であることが示された患者レベルの評価指標は、異なるイメージングセンター、スキャナー、病期で収集された外部データセットに適用すると、もはや予測不可能であった。有益性の持続期間の予測を一般化するために、本明細書に記載されるように、多くの特徴を用いて機械学習モデルを訓練し、このモデルは完全に外部のデータセットにおいて臨床的有用性の持続期間を予測した。本明細書に記載された方法とシステムは、異なるイメージングセンタにおいて、異なるスキャナーおよび病期で取得された非常に異なる患者集団において、患者の転帰を予測することができた。本方法とシステムは、化学療法やAR指向性療法のような全身療法のセカンドラインやサードラインの高転移性患者からのデータを用いて、特定の療法で治療された患者のうち、どの患者に持続的な効果があるのか、あるいはないのかを予測することができた。
【0036】
本明細書で使用される用語「comprise(s)」、「include(s)」、「having(s)」、「has(s)」、「can」、「contain(s)」、およびそれらの変形は、付加的な行為または構造の可能性を排除しない、オープンエンドな経過的語句、用語、または単語であることを意図している。単数形の「a」、「and」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないと指示されない限り、複数形の参照を含む。本開示は、また、明示的に規定されているか否かにかかわらず、本明細書に提示された実施形態または要素を「含む(comprising)」、「~構成される(consisting of~)」、および「~本質的に構成される(consisting essntial of~)」する他の実施形態を企図する。
【0037】
本明細書における数値範囲の記載については、その間に同程度の精度で介在する各数値が明示的に企図されている。例えば、6~9の範囲については、6と9に加えて7と8という数字が想定され、6.0~7.0の範囲については、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0という数字が明示的に想定されている。
【0038】
本明細書において特に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。用語の意味および範囲は明確であるべきであるが、潜在的な曖昧さがある場合には、本明細書で提供される定義が、いかなる辞書または外来定義よりも優先する。さらに、文脈上別段の定めがない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0039】
「被験者」とは、ヒトであっても非ヒトであってもよく、成人または年少者(例えば、子供)のいずれかを含むことができる。さらに、被験者とは、あらゆる生物を意味し、好ましくは哺乳類(例えば、ヒトまたは非ヒト)である。哺乳類の例としては、これらに限定されることなく、哺乳類クラスの任意のメンバー:ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、その他の類人猿およびサル類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの農業家畜;ウサギ、イヌ、ネコなどの家庭家畜;ラット、マウス、モルモットなどのげっ歯類を含む実験動物などが挙げられる。本明細書に提供される方法および組成物の一実施形態では、哺乳動物はヒトである。“被験者”および“患者”は、本明細書において互換的に使用され得る。
【0040】
「バイオマーカー」には、タンパク質およびその断片、ペプチド、ポリペプチド、プロテオグリカン、糖タンパク質、リポタンパク質、炭水化物、脂質、核酸、無機または有機化学物質、天然高分子、低分子などの生物学的化合物であって、生物学的試料中に存在し、生物学的試料(例えば、組織、体液、細胞)から単離され得るもの、または生物学的試料中で測定され得るものが含まれる。さらに、バイオマーカーは、無傷の分子全体であってもよいし、部分的に機能的な部分であってもよいし、例えば、抗体や他の特異的結合タンパク質によって認識される部分であってもよい。バイオマーカーは、特定の病期など、被験者の所与の状態に関連付けられうる。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、がんバイオマーカー(例えば、循環腫瘍DNA、タンパク質バイオマーカー(例えば、前立腺特異抗原、α-フェトプロテイン、カルチノエンブリオニック抗原))である。バイオマーカーの測定可能な側面には、例えば、被験者からの生物学的試料中のバイオマーカーの存在、非存在、または濃度、および/または標準(例えば、体内または健常被験者からの試料)と比較した測定可能な側面のいずれかの相対的変化が含まれる。測定可能な側面は、また、2つ以上のバイオマーカーの2つ以上の測定可能な側面の比であってもよい。本明細書で使用するバイオマーカーは、2つ以上の個々のバイオマーカーの測定可能な側面を含むバイオマーカープロファイルも包含する。2つ以上の個々のバイオマーカーは、例えば、核酸および炭水化物などのバイオマーカーの同じクラスまたは異なるクラスであってもよく、または、例えば、1つのバイオマーカーの非存在および別のバイオマーカーの濃度などの同じまたは異なる測定可能な側面を測定してもよい。バイオマーカーのプロファイルは、任意の数の個々のバイオマーカーまたはその特徴を含む。別の実施形態では、バイオマーカーのプロファイルは、少なくとも1つの内部標準の少なくとも1つの測定可能な側面を含む。バイオマーカーを同定および定量する方法は当該技術分野において周知であり、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および他の免疫アッセイ、ゲル電気泳動、タンパク質およびDNAアレイ、質量分析、比色アッセイ、電気化学アッセイ、および蛍光法などの組織学的および分子学的方法が含まれる。
【0041】
本明細書で使用する「造影剤」という用語は、臓器、血管、組織、および/または病変がより見えるように、特定の領域、組織、および/または生物学的流体を強調するために使用される薬剤を指す。
【0042】
好ましい方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載したものと類似または同等の方法および材料を、本開示の実施または試験に使用することができる。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、および実施例は、例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【0043】
本開示は、被験者における疾患の進行および治療を評価するためのシステムおよび方法を提供する。本方法は、被験者の第1のイメージングスキャンを取得するステップを含み、イメージングスキャンは、被験者内の病変を識別およびセグメント化するように構成される。いくつかの実施形態では、イメージングモダリティは、病変が被験者の周囲の組織及び器官から識別可能又は区別可能であるように、病変のセグメンテーションを本質的に可能にする。いくつかの実施形態では、本方法は、分子イメージング剤(例えば、放射性トレーサー、イメージングプローブ、又は造影剤)が病変をセグメント化又は標的化する、被験者の第1のイメージングスキャンを取得するステップを含む。本明細書で使用される「病変」とは、傷、潰瘍、膿瘍、腫瘍など、傷害または疾患によって異常または損傷を受けた臓器または組織内の部位を指す。
【0044】
イメージングスキャンは、得られた画像から(例えば、データ特性化アルゴリズムを使用して)特徴の抽出を可能にする任意のイメージングモダリティを備える。イメージングスキャンの種類の例としては、CT、PET、SPECT、MRI、US等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に、スキャンの種類にかかわらず、三次元イメージングデータが好ましい。
【0045】
いくつかの実施形態では、イメージングモダリティは、イメージング剤を採用し得る。イメージング剤は、Molecular Imaging and Contrast Agent Database(MICAD)に提供されるMolecular Imagining Probes and Contrast Agents Listに含まれるような、FDAが承認したイメージング剤を含むことができる。イメージング剤の種類の例としては、フルオロデオキシグルコース(18F)(FDG)またはその変種(例えば、2-デオキシ-2-18F-フルオログルコース、3′-デオキシ-3′-〔18F〕フルオロ-L-チミジン(FLT))、フルシクロビン(18F)、または増殖細胞(腫瘍細胞または癌細胞)に迅速に蓄積する類似の細胞増殖マーカー;〔18F〕DMPY2 PET、原発性および転移性メラノーマのマーカー;転移性骨病変における治療効果のイメージングに、通常、選択されるイメージング剤であるNaF;99mTc-methoxyisobutylisonitrile(99mTc-sestamibi)および16α-18F-fluoro-17β-estradiol(FES);インテグリンαvβ3が血管新生に重要な役割を果たすことから、血管新生阻害療法のイメージング薬剤として使用される〔18F〕Galacto-RGD(αvβ3選択的トレーサー);およびガドリニウムに基づく造影剤(例えば、ガドテレートメグルミン(Gd-DOTA))が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、イメージング剤は生物学的に活性な分子に結合させることができ、後者は特定のタイプの病変に対する特異性を提供する。イメージングモダリティの性質はイメージング剤の選択に影響を及ぼす。例えば、陽電子放出断層撮影法(PET)はFDGまたはNaFを使用することができ、SPECT(単光子放出コンピュータ断層撮影法)は99mTc-sestamibiを使用することができる。
【0046】
疾患は、上述したように、分子イメージング病変特徴によってモニターできる任意の疾患または障害を含み得る。いくつかの実施形態では、疾患は癌である。癌はいかなる癌であってもよい。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施形態において、癌または癌細胞は、リンパ腫、子宮頸癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、結腸直腸癌、前立腺癌、骨癌、卵巣癌、乳癌および/または白血病からなる。
【0047】
本方法は、被験者の病変の位置を特定し、定量化し、各病変の少なくとも1つのイメージング特徴(例えば、イメージング剤の取り込み値)のイメージング信号を計算するためにイメージングスキャンを処理することを含む。スキャンの処理は、コンピュータが実行する方法を用いて完了することができる。例えば、米国特許第10,445,878号およびPerkらの、Phys Med Biol.2018を参照されたい。これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
疾患または疑われる疾患に関する知識、および適切な場合には、分子イメージング剤の取り込みおよび滞留分布の性質を用いることにより、多数の分散病変の自動病変識別を高い精度で達成することができる。識別可能な各病変の自動測定により、病変ごとのレベルでの分析が可能となり、病変の一部のみを分析する場合には得られないかもしれない、被験者の疾患および治療に関する全体的な評価が得られる。
【0049】
病変を識別する1つの方法として、背景画像レベルをわずかに上回る閾値レベルに対して評価することが含まれる。他の同定技術としては、例えば、必要な場合にCT又はMRI画像をガイドとして画像解析者が着色分子イメージングデータをフリーハンドで輪郭付けする手動輪郭付け、又は経験豊富な医師が各病変部の周囲の円の大きさを調整する円形輪郭付け、或いは取り込み勾配に基づく方法、またはイメージング特徴同定法などの他の自動輪郭付け技術などが考えられる。
【0050】
同定は、特定のトレーサー又は特定の画像モダリティのイメージング特徴(例えば、取り込み率及び取り込みの程度)に関して、解剖学的構造又は組織の正常な変動を考慮することができる。その結果、病変部位をより明瞭に示す正規化されたスキャンが得られ、主観的な解釈が減少し、病変部に基づく差異の評価が改善される。同定と下流処理により、解剖学的構造または組織から病変をセグメント化することもでき、これにより同定後に病変周囲の境界を定義することができる。一部の組織、特に偽陽性取り込みを示す可能性のある組織を除去することにより、複数のびまん性病変が存在する場合、病変又は疾患の進行についてより高感度の評価がなされ得る。全体として、同定プロセスは病変の寸法(形状、大きさ、体積)を検出し、絞り込み、定義する。
【0051】
各病変の識別、および任意選択によるセグメンテーションの後、病変の総数が決定され、識別された各病変が多数の特徴によって特徴付けられる。
【0052】
本方法は、上述したように、個々の病変に向けられた特徴についてのイメージング信号の評価に基づく疾患治療評価スコアを提供するステップを含むが、被験者の任意の組み合わせ又は全ての病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する特徴、又はそれらの組み合わせについても評価することを含む。疾患治療評価スコアを提供することは、Cox比例ハザード分析及びランダム生存フォレスト分析を含むがこれらに限定されない多変量生存分析を実行することを含み得る。
【0053】
疾患治療評価スコアは、治療の臨床的有用性の持続期間の尺度を提供し得る。例えば、治療の臨床的有用性の持続期間には、全生存期間、疾患特異的生存期間、無病生存期間、無転移生存期間、無増悪生存期間、病変数および/または病変サイズの減少、バイオマーカーに基づく転帰の変化などが含まれ得る。
【0054】
第1のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴は、被験者における病変の総数、最高病変イメージング信号、平均病変イメージング信号、総病変イメージング信号、各病変のサイズ及び/又は体積、及びこれらの組み合わせ(例えば、強度(I)、標準化取り込み値(SUV)、ハウンスフィールド単位(HU))を含み得る。いくつかの実施形態では、第1のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴は、被験者における病変の総数を含む。いくつかの実施形態では、第1のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴は、被験者における病変の総数、最高病変イメージング信号、及び総病変イメージング信号を含む。いくつかの実施形態では、第1のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴は、被験者における全ての病変を含む。
【0055】
第1のスキャンからの異なる病変にわたるイメージング信号における差異を考慮する特徴は、1つ以上のテクスチャ特徴を含み得る。テクスチャ特徴には一次特徴を含めることができる。一次特徴には、例えば、強度又は大きさ、エントロピー、全信号、最小信号、最大信号、百分率、平均、中央値、範囲、偏差(例えば、標準偏差、二乗平均平方根偏差)、歪度、尖度、分散、均質性が含まれる。テクスチャ特徴には、体積、表面積、球形度または比率、面積、周囲長、幅、直径を含む形状特徴も含まれ得るが、これらに限定されない。テクスチャ特徴には、グレイトーン空間依存行列などの共起行列を含む、2次またはそれ以上の高次の統計的テクスチャ特徴のいずれかまたはすべてを含めることもできる。選択された実施形態では、1つまたは複数のテクスチャ特徴には、異なる病変間の最大、平均、および総イメージング信号が含まれる。
【0056】
いくつかの実施形態では、第1のスキャンからの異なる病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する特徴は、標準偏差、歪度、尖度、及び異なる病変間の組合せを含み得る。これらの値は、被験者全体における分子イメージング信号値の分布(例えば、不均質性)及び/又は被験者全体における分子イメージング信号値の積分値を評価する。
【0057】
第1のイメージングスキャンを処理することは、各病変に対する分子イメージング剤の取り込み値を計算することを含み、疾患治療評価スコアは、個々の病変に向けられた特徴、被験者内の任意の組み合わせまたはすべての病変にわたる取り込み値の差異を考慮した特徴、またはそれらの組み合わせについて取り込み値を評価することを含む。取り込み値には、ただし、最大値、病変体積における最大の取り込み値;平均値、病変部における取り込み値の平均;総取り込み値;または病変体積全体にわたって取り込まれた取り込み値の積分値が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、第1のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴は、被験者における病変の総数、病変の最大取り込み、病変の平均取り込み、病変の総取り込み、及びそれらの組合せを含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、第1のスキャンからの異なる病変にわたる取り込み値(例えば、標準化更新値;SUV)の差異を考慮する特徴は、異なる病変間の最大病変取り込み、平均病変取り込み、及び総病変取り込み(例えば、それぞれSUVmax、SUVmean、SUVtotal)の標準偏差、歪度、尖度、及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、第1のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴は、被験者における病変の総数、最大病変取り込み(例えば、SUVmax)、平均(mean)または平均(average)、病変取り込み(例えば、SUVmean)、総病変取り込み(例えば、SUVtotal)、およびそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、第1のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴は、被験者における病変の総数、最大病変取り込み(例えば、SUVmax)、及び総病変取り込み(例えば、SUVtotal)を含む。
【0060】
本方法は、被験者の第2のイメージングスキャンを取得するステップをさらに含み得、イメージングスキャンは、病変を識別し、セグメント化するように構成され、第1のスキャンと第2のスキャンは、ある期間によって分離される。いくつかの実施形態では、本方法は、分子イメージング剤(例えば、放射性トレーサー又は造影剤)が病変又は標的病変のセグメンテーションを可能にする被験者の第2のイメージングスキャンを取得することを含む。いくつかの実施形態では、第1のスキャンの間の期間は、設定された日数、週数、又は月数(例えば、14日、1ヶ月、6週間等)である。いくつかの実施形態では、期間は、被験者が治療レジメンを受けている期間である。例えば、その期間は、癌患者に対する化学療法又は放射線療法のコースに必要な期間を包含し、第2のスキャンは、治療レジメンの有効性を評価するために使用され得る。
【0061】
第2のスキャンは、第1のスキャンと同様に処理され、病変の位置を特定し、病変を定量化し、各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算する。加えて、第2のスキャンの各病変は、第1のスキャンの対応する病変と照合され、各個々の病変の特徴の変化(例えば、サイズ、形状、体積、イメージング信号の変化)が決定され得る。このように、本方法は、第2スキャンを処理して、第1スキャンと第2スキャンとの間の相同病変を決定し、対応する各イメージング信号の変化を測定することを含んでよい。
【0062】
マッチングにより、単に各病変の全体的な測定値の比較だけでなく、病変のボクセルごとの体積間の比較を含む測定が可能になる。例えば、対応するボクセル間の差の分布ヒストグラムを作成することができる。マッチングの一部であるレジストレーション処理により、両スキャンで同一の関心領域を定義することができ、わずかに異なる体積決定により生じる体積ベースの測定値のばらつきをなくすこともできる。
【0063】
第1のスキャンから第2のスキャンへの病変のマッチング又は位置合わせは、様々なイメージング解析ツールによって完了することができる(例えば、米国特許第9,603,567号及びYipら、Phys Med Biol.2014参照、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、マッチング及びレジストレーションプロセスは、それらのボリュームの値(例えば、イメージング信号又は他の放射線イメージング特徴データ)の間の相関を測定するために、第1のスキャンの病変部に関して第2のスキャンの病変部のボリュームのデータを数学的に「スライド」させてもよい。このスライディング処理は、最良の一致が得られるまで、スキャン間の潜在的な変形を考慮することを含めて、例えば垂直方向及び水平方向の複数の次元で、及び回転の複数の次元で実行することができる。回転及び変形において相関させる能力は、スキャン間の被験者の手足の曲げ又は組織の変形に対応するために、手足及び容易に変形可能な組織の病変を一致させることを可能にする。この目的のために、回転及び変形は、特定の四肢の可能な動き、又は同定された解剖学的領域に関連し、特定の組織の機械的特性によって条件付けられる組織の可塑性を反映するように制約され得る。マッチング処理は、登録前又は登録後の第1及び第2のスキャン画像において最も近接している病変を単に選択してもよく、及び/又は病変の相対的なサイズ及び形状を調べてもよい。病変の成長、収縮、融合、分裂、出現、消失、移動などを経時的に、あるいは他の同定された病変に関してモニターすることにより、マッチングにより方法の精度を高めることができる。
【0064】
病変のマッチングの後、各病変は、第1のスキャンから第2のスキャンの対応する病変までの病変の特徴の変化に基づいて分類され得る。分類に使用される病変の特徴は、本明細書の他の箇所に記載されるような特徴を含み得る。例えば、PerkらのPhys Med Biol.2018、Kyriakopoulos,C.E.らのJ Clin Oncol,2020、及びLin,C.ら、J Nucl Med,2016を参照されたい。これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。各病変又は各病変部位は、特徴に基づいて、完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)又は新規(iNL)として分類され得る。
【0065】
本方法は、個々の病変に向けられた特徴、または第2のスキャンからの被験者内の任意の組合せもしくは全ての病変にわたるイメージング信号の差異を考慮した特徴、第1のスキャンと第2のスキャンとの間の個々の病変に向けられた特徴の変化、第1のスキャンと第2のスキャンとの間の相同病変についての異なる病変にわたる少なくとも1つのイメージング信号の差異を考慮した特徴の変化、またはそれらの組合せについての第1のスキャンもしくは第2のスキャンからのイメージング信号の評価に基づいて、疾患治療評価スコアを提供することを含む。
【0066】
第2のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴の変化は、被験者における病変の総数の変化、個々の病変間の最大、平均、及び総イメージング信号の変化、並びにそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、第2のスキャンからの異なる病変間のイメージング信号の差異を考慮する特徴の変化は、異なる病変間の最大、平均、及び総イメージング信号の1つ以上のテクスチャ特徴の変化を含む。いくつかの実施形態では、第2のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴の変化は、被験者における病変の総数の変化、最大イメージング信号(Imax)、平均イメージング信号(Imean)、総イメージング信号(Itotal)、並びにそれらの組み合わせの変化を含む。いくつかの実施形態では、第2のスキャンからの個々の病変に向けられた特徴の変化は、被験者における病変の総数、最大、平均、及び総取り込み値(例えば、SUVmax、SUVmean、SUVtotal)、及びそれらの組み合わせの変化を含む。
【0067】
第2スキャンからの異なる病変に渡るIsの差異を考慮するイメージング特徴の変化は、以下を含み得る:1回のスキャンにおける異なる病変間の最大、平均、総又はその他のイメージング信号の標準偏差の変化(それぞれΔHetero Imax、ΔHetero Imean、及びΔHetero Itotal);Imax,Imean,Itotalの変化(それぞれHetero ΔImax,Hetero ΔImean,Hetero ΔItotal,)の標準偏差;Imax,Imean,Itotalの歪度(ΔSkewness)と尖度(ΔKurtosis)の標準偏差;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、新規(iNL)のいずれかに分類された病変の総数;完全奏効(iCR)と部分奏効(iPR)に分類された病変の総数の比率;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、新規(iNL)のそれぞれに分類された病変の総数の比率;完全奏効(iCR)および部分奏効(iPR)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD;Hetero ΔProgressors)に分類された病変の最大イメージング信号、平均イメージング信号、および総イメージング信号の変化の標準偏差;部分奏効(iPR;Hetero ΔResponders)に分類された病変のImax,Imean,Itotalの変化の標準偏差;第2のスキャン後の、進行中(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからのImeanの標準偏差(Progressors Hetero1)、進行(iPD)と新規(iNL)に分類された病変のImeanの標準偏差(Progressors Hetero2)、および両者間の変化率(ΔProgressors Hetero);第2のスキャン後の、完全奏効(iCR)と部奏効(iPR)に分類された病変の第1のスキャンからのImeanの標準偏差(Responders Hetero1)、部分奏効(iPR)に分類された病変のImean の標準偏差(Responders Hetero2)、および両者間の変化率(ΔResponders Hetero);第2のスキャン後の、第1のスキャンからの進行(iPD)と分類された病変の最高病変イメージング信号(Progressors Max)、平均病変イメージング信号(Progressors Mean)、総病変イメージング信号(Progressors Total)、第2のスキャンからの進行(iPD)と新規(iNL)と分類された病変の最高病変イメージング信号、平均病変イメージング信号、総病変イメージング信号、両者の変化率(ΔResponders Hetero);第2のスキャン後の、第1のスキャンからの完全奏効(iCR)及び部分奏効(iPR)に分類された病変の被験者における最高病変イメージング信号(Responders Max)、平均病変イメージング信号(Responders Mean)及び総病変イメージング信号(Responders Total)、第2のスキャンから部分奏効(iPR)に分類された病変の被験者における最高病変イメージング信号、平均病変イメージング信号及び総病変イメージング信号、並びに両者の間の変化率;の変化、並びに、これらの組み合わせ。
【0068】
いくつかの実施形態では、異なる病変にわたるイメージング信号(I)の差異を考慮する特徴の変化は、進行(iPD)又は新規(iNL)に分類された病変の総数;進行(iPD)に分類された病変のImax、Imean、及びItotalの変化の標準偏差;第2のスキャン後の、進行(iPD)に分類された病変の第1のスキャンからのImeanの標準偏差;進行(iPD)及び新規(iNL)に分類された病変のImeanの標準偏差;第2のスキャン後の、第1のスキャンから、進行(iPD)と分類された病変の被験者における最高病変イメージング信号と総病変イメージング信号;進行(iPD)および新規(iNL)に分類された第2のスキャンからの、病変の被験者における最高病変イメージング信号および総病変イメージング信号;進行(iPD)と新規(iNL)に分類された第2のスキャンからの病変の被験者における平均病変イメージング信号;及びそれらの組み合わせを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、第2スキャンからの異なる病変にわたる差異を考慮するイメージング特徴の変化は、以下を含むことができる:異なる病変間の最大、平均、又は総イメージング剤取り込み(例えば、SUVmax、SUVmean、及びSUVtotal)の標準偏差の変化(例えば、それぞれΔHetero SUVmax、ΔHetero SUVmean、及びΔHetero SUVtotal);イメージング剤の最大、平均、または総取り込みの変化の標準偏差(例えば、それぞれ、Hetero ΔSUVmax、Hetero ΔSUVmean、およびHetero ΔSUVtotal);イメージング剤の最大、平均、または総取り込み(例えば、SUVmax、SUVmean、SUVtotal)の歪度(ΔSkewness)および尖度(ΔKurtosis)の標準偏差;特定の画像評価指標(例えば、病変体積)により、完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、または新規(iNL)に分類された病変の総数;完全奏効(iCR)と部分奏効(iPR)に分類された病変の合計;完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、安定(iSD)、進行(iPD)、新規(iNL)のそれぞれに分類された病変の総数の比率;完全奏効(iCR)と部分奏効(iPR)に分類された病変の総数の比率;進行(iPD)及び新規(iNL)と分類された病変の総数の比率;進行(iPD)と分類された病変(Hetero ΔProgressors)の最大、平均、又は総取り込み値(例えば、SUVmax、SUVmean、SUVtotal)の変化の標準偏差;部分奏効(iPR)(Hetero ΔResponders)分類された病変の最大、平均、または総取り込み値(例えば、SUVmax、SUVmean、SUVtotal)の変化の標準偏差;第2のスキャン後の、進行(iPD)と分類された病変の第1のスキャンからの平均取り込み値(例えば、SUVmean)(Progressors Hetero 1)の標準偏差、進行(iPD)と新規(iNL)と分類された病変の平均取り込み値(例えば、SUVmean)(Progressors Hetero2)の標準偏差、及び両者間の変化率(ΔProgressors Hetero);第2のスキャン後の、完全奏効(iCR)と部奏効(iPR)に分類された第1のスキャンからの平均取り込み値(例えば、SUVmean)(Responders Hetero)の標準偏差、部分奏効(iPR)に分類された病変の平均取り込み値(例えば、SUVmean)(Responders Hetero2)の標準偏差、および両者間の変化率(ΔResponders Hetero);第2のスキャン後の、第1のスキャンからの進行(iPD)と分類された病変の患者の最高病変取り込みイメージング信号(Progressors Max)、平均病変取り込みイメージング信号(Progressors Mean)、総病変取り込みイメージング信号(Progressors Total)、第2のスキャンからの進行(iPD)と新規(iNL)と分類された病変の最高病変取り込みイメージング信号、平均病変取り込みイメージング信号、総病変取り込みイメージング信号、両者の変化率(ΔResponders Hetero);第2のスキャン後の、第1のスキャンからの完全奏効(iCR)及び部分奏効(iPR)に分類された病変の被験者における最高病変取り込み(Responders Max)、平均病変取り込み(Responders Mean)、及び総病変取り込み(Responders Total)、部分奏効(iPR)に分類された第2のスキャンからの病変の被験者における最高病変取り込み、平均病変取り込み、及び総病変取り込み、並びにそれらの間の変化率;の変化、並びに、それらの組み合わせ。
【0070】
いくつかの実施形態では、異なる病変にわたる取り込み値(例えばSUV)の差異を考慮する特徴の変化は、以下を含む:進行(iPD)または新規(iNL)に分類された病変の総数;進行(iPD)に分類された病変の最大、平均、または総取り込み値(例えば、SUVmax、SUVmean、SUVtotal)の変化の標準偏差;第2のスキャン後の、進行(iPD)と分類された病変の第1のスキャンからの平均取り込み値(例えば、SUVmean)の標準偏差;進行(iPD)と新規(iNL)と分類された病変の平均取り込み値(例えば、SUVmean)の標準偏差;第2のスキャン後の、第1のスキャンからの進行中(iPD)に分類された病変の被験者の最高病変取り込み及び総病変取り込み;進行中(iPD)並びに新規(iNL)に分類された第2のスキャンからの病変の被験者における最高病変取り込み及び総病変取り込み;進行(iPD)並びに新規(iNL)に分類された第2のスキャンからの病変の被験者の平均病変取り込み;及びそれらの組み合わせ。
【0071】
本方法は、後の時点で被験者の任意の数の追加スキャンを取得し、上記方法のステップのいずれか又は全てを繰り返すことを含んでよい。このような場合、疾患評価スコアは、経時的又は異なる治療レジメン後の疾患の進行又は退行を評価することができる。従って、本方法は、単一又は複数の治療レジメンの短期又は長期の縦断的評価を可能にし得る。
【0072】
従って、本方法は、被験者の少なくとも1つの追加イメージングスキャンを取得するステップであって、前記イメージングスキャンは、病変を識別し、セグメント化するように構成される、ステップ;前記少なくとも1つの追加イメージングスキャンを処理して:前記病変の場所を特定し、前記被験者の病変を定量化し、各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算し、任意の2つのイメージングスキャン間で相同病変を判定し、対応する各イメージング信号における変化を測定し、各病変の前記変化に基づいて各病変を分類するステップ;および個々の病変に向けられた、または少なくとも1回の追加イメージングスキャンからの前記被験者内の任意の組み合わせもしくは全ての病変にわたるイメージング信号の差異を考慮する特徴についての前記イメージング信号の評価、任意の2つのイメージングスキャン間の個々の病変に向けられた特徴の変化の評価、任意の2つのイメージングスキャン間の相同病変に対する異なる病変にわたる少なくとも1つのイメージング信号における差異を考慮する特徴の前記変化の評価、またはそれらの組み合わせに基づく疾患治療評価スコアを提供するステップ、を含む。第1のスキャン及び第2のスキャンに関して本明細書の他の箇所で提供されるような取得、処理、及び提供ステップの説明は、少なくとも1つの追加のイメージングスキャンにも適用可能である。
【0073】
本方法は、解剖学的スキャン(例えば、CT、MRI、超音波)を取得することをさらに含んでよい。例えば、解剖学的スキャンは、第1のスキャンと同時に、第2のスキャンと同時に、又は第1及び第2のスキャンの両方と同時に取得することができる。解剖学的スキャンは、既知の解剖学的位置間の関係により、対応する病変を一致させるのに役立つ場合がある。解剖学的位置はまた、病変の測定値及びイメージング信号値を決定する際に、病変の同定及び組織又は他の解剖学的特徴の除去に役立つことがある。本方法は、解剖学的スキャンを処理し、解剖学的関心領域のセットを生成することを含み得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、解剖学的位置(例えば、特定のタイプの組織(例えば、乳房または骨)または身体の区分(例えば、脚または脳))に従って病変を分類することを含む。本方法は、解剖学的位置に基づく病変のサブセットの特徴測定値を提供することができる。したがって、本方法は、病変のグループに関する情報を提供することができる。いくつかの実施形態において、疾患治療評価スコアは、病変の解剖学的位置、病変の解剖学的分布、またはそれらの組み合わせの評価にさらに基づく。
【0075】
いくつかの実施形態では、特徴は放射線学的特徴であってもよい。ラジオミクス特徴は、サイズ及び形状に基づく特徴、画像強度ヒストグラムの記述子、画像ボクセル間の関係の記述子(例えば、グレイレベル共起行列(GLCM)、ランレングス行列(RLM)、サイズゾーン行列(SZM)、及び近傍グレイトーン差行列(NGTDM)由来のテクスチャ)、フィルタリング画像から抽出されたテクスチャ、及びフラクタル特徴などの様々なグループに分けることができる。これらの特徴の数学的定義は、イメージングモダリティに依存せず、当技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、疾患治療評価スコアは、ラジオミクス特徴に更に基づく。
【0076】
疾患治療評価スコアは、さらに他の非画像データに基づいてもよい。例えば、疾患治療評価スコアは、バイオマーカー(例えば、前立腺特異抗原(PSA)、循環腫瘍細胞(CTC)、循環腫瘍DNA(ctDNA)、及び他のバイオマーカー)からの結果を組み込んでもよい。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、疾患(例えば、疾患関連バイオマーカー)または一般的な患者の健康状態(例えば、ゲノム、プロテオーム、メタボロームデータ)を示すものであってもよい。
【0077】
本方法は、疾患治療のシミュレーションに基づく疾患予測分析を提供することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、疾患予測解析は、シミュレーションの疾患進行を監視するために、以前のイメージングスキャンから特定の病変又はその組合せを除去してもよい。いくつかの実施形態では、疾患予測解析は、シミュレーション疾患進行を監視するために、特定の病変の治療成功を代表するように(例えば、サイズ又はイメージング剤の総取り込みの減少)又はそれらの組み合わせとなるように、以前のイメージングスキャンから1つ又は複数のイメージング特徴を変更してもよい。いくつかの実施形態では、疾患予測解析は、
図6に示すように、シミュレーション生存曲線を含む。
【0078】
本開示は、また、非一過性のコンピュータ可読媒体を提供する。非一過性のコンピュータ可読媒体は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されたときに、開示される方法に記載される動作の一部または全部を実行する命令を記憶する。
【0079】
いくつかの実施形態では、1つ以上のプロセッサは、以下の少なくとも1つ又は全てを含む動作を実行する:被験者の病変を識別及びセグメント化するように構成される、被験者の第1のイメージングスキャン、及び関連するスキャン及び被験者のデモグラフィックを受信すること;第1のイメージングスキャンを処理して、病変の位置を識別し、病変の総数を定量化し、各病変の特徴(例えば、イメージング信号値、例えば、イメージング剤の取り込み値)を決定すること;個々の病変に向けられた特徴、被験者の任意の組合せ又は全ての病変にわたるイメージング信号値、例えば取り込み値、又はそれらの組合せの差異を考慮する特徴を評価すること;及び疾患治療評価スコアを提供すること。スキャン及び被験者のデモグラフィックは、スキャンの日時、スキャンで使用された分子イメージング剤、スキャンの種類及び/又はスキャナーの種類、スキャンの説明(例えば、場所、深さ等)、被験者の診断又は疑われる疾患の説明、被験者の説明(例えば、性別、身長、年齢、体重)、又は開示された方法を実施するのに役立ち得る被験者に関する任意の追加情報(例えば、切断、摘出された臓器又は臓器の損傷等)のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0080】
プロセッサは、以下の動作のいずれか又は全てをさらに実行することができる:病変を識別し、セグメント化するように構成される被験者の第2のイメージングスキャンと、関連するスキャンと、被験者のデモグラフィックとを受信すること;第2のイメージングスキャンを処理して、病変の位置を識別し、病変の総数を定量化し、各病変の特徴(例えば、イメージング信号値、例えば、イメージング剤の取り込み値)を決定すること;第1のスキャンと第2のスキャンとの間の相同病変の位置を決定すること;病変を識別し、セグメント化するように構成される少なくとも1つの追加イメージングスキャン及び関連するスキャン及び被験者デモグラフィックを受信することで;少なくとも1つの追加イメージングスキャンを処理して、病変の位置を識別し、病変の総数を定量化し、各病変の少なくとも1つのイメージング特徴についてイメージング信号を計算すること;任意の2つのイメージングスキャンの間で相同病変の位置を決定すること;対応するイメージング信号のいずれかまたはすべての変化を測定すること;第1のイメージングスキャン、第2のイメージングスキャン、またはその両方と同時に解剖学的スキャンを受信すること;解剖学的位置に応じて第1のイメージングスキャン、第2のイメージングスキャン、またはその両方から病変を分類すること;被験者の解剖学的位置のサブセット内の病変間の差異または被験者の解剖学的位置の異なるサブセット間の差異を考慮する特徴について、被験者の解剖学的位置のサブセット内の個々の病変を評価すること;ラジオメトリックスキャンスキャンを受信すること;ラジオメトリックスキャンスキャンのいずれかまたはすべてからラジオメトリック特徴を抽出すること;少なくとも1つの放射線学的特徴の変化を評価し、病変を進行性または奏効性に分類すること;および疾患関連バイオマーカーデータを受信すること;またはこれらの組み合わせ。
【0081】
本明細書で説明する方法は、上述したように、1つまたは複数のプロセッサと、1つまたは複数のプロセッサによって実行可能な命令を記憶するコンピュータ読み取り可能媒体とを含むシステムとして実施することができる。システムは、1つまたは複数のプロセッサおよび/またはコンピュータ可読媒体を含む少なくとも1つのコンピュータシステムを含み得る。システムは、1つまたは複数のコンピュータシステムに接続されるか、または1つまたは複数のコンピュータシステムと統合された1つまたは複数のローカルサーバまたはデータベースをさらに含むことができる。1つまたは複数のプロセッサは、互いまたは他のプロセッサと有線または無線通信を介して通信するように構成され得る。1つまたは複数のプロセッサは、類似または異なるデバイスであり得る1つまたは複数のプロセッサ制御デバイス上で動作するように構成され得る。
【0082】
本明細書で説明するシステム、方法および可読媒体は、様々なプライバシー基準(例えば、HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act))に準拠して、保護された医療情報(PHI)の機密性およびセキュリティを保護する。したがって、システム、方法、および可読媒体は、HIPAA準拠と見なされ得る。システム、方法および可読媒体は、アクセス制御の手段、電子PHIを認証する機構、暗号化/復号化の機能、および活動を記録し監査を実施する機構の一つまたはすべてを提供または許可することができる。データは、既知の暗号化/復号化及びセキュリティ技術を用いて通信され得る。例えば、DICOMイメージング標準は暗号化をサポートする。システムおよび方法は、保護被験者者データを匿名化してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、システムは、a)リスクスコア、b)スキャン画像、c)治療推奨、などのうちの1つ以上をユーザーに表示する。
【0084】
いくつかの実施形態では、データは、第1の場所(例えば、スキャンセンター)で収集され、分析のために第2の場所に転送される。いくつかの実施形態では、分析されたデータ又はレポートは、第1の場所又は第3の場所(例えば、治療医の場所又は患者の場所)に転送されるか、又は他の方法で利用可能にされる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、被験者の治療方法に統合される。 例えば、いくつかの実施形態では、被験者が1回以上のスキャンを受け、本明細書に記載のシステムおよび方法によってデータが解析され、結果の報告が生成され、その結果に基づいて被験者が治療される(例えば、既存の治療の継続、治療の変更(例えば、介入タイプ、用量、タイミングなどの変更)、経過観察など)。
〔実施例〕
〔方法〕
【0086】
〔患者集団〕
前立腺がん患者を被験者とした3つの独立した臨床試験から患者を収集し、遡及的に評価した。各試験は、
18F-NaF PET/CTイメージングでベースライン時および2、3ヵ月後にイメージングされた前立腺がん患者で構成されていた。被験者患者の内訳を表1に示す。
【表1】
【0087】
〔イメージング処理〕
AIQ Solutions骨転移アプリケーションを用いて画像を処理した。Perk,T.G.らの「Physics in Medicine and Biology,2018」63(22):ページ1-10記載されているように、統計的に最適化された領域しきい値を用いて候補病変を同定した。バックグラウンドの骨取り込みが上昇した患者には患者固有の適応因子が適用された。以前に訓練され試験されたランダムフォレストモデルが、解析から良性病変を除去するために使用された(参照:Perk,T.G.らの63(22):ページ1-12).PCFデータセットがランダムフォレストモデルの訓練に使用されたため、そのデータセットの病変を分類するためにleave-one-out cross validationが使用された。各病変について定量的指標を抽出した:病変内の最高取り込み(SUVmax)、病変の平均取り込み(SUVmean)、活動性腫瘍量(SUVtota=SUVmean×腫瘍の体積、NaF PETのTLG相当)、SUVpeak(病変の最高取り込みボクセルの周囲1cm3の平均SUV)など。
【0088】
タイムポイント間で一致した病変を追跡するために、関節登録が用いられた。病変は、病変の大きさに基づいて調整されたSUV
totalの試験・再試験一致限界に基づいて、奏効カテゴリーに分類された(表2)。5つの奏効カテゴリーとは、完全奏効(CR、ベースライン時の病変で追跡時に一致する病変がない)、部分奏効(PR、SUV
totalの変化<試験-再試験下限値)、病勢安定(SD、SUV
totalが試験-再試験限界値の間、病勢進行(PD、SUV
totalの変化>試験-再試験上限値)、新規病変(NL、ベースライン時に一致する病変がない追跡時の病変)である。
【表2】
【0089】
〔既報モデルの実施〕
文献から特定された患者レベルの分類のための2つの方法を、利用可能な4つの患者集団において実施した。具体的には、Harmonら(J Clin Oncol,2017.35(24):ページ2829-2837)は、3サイクルの治療後のSUVtotalの変化に基づき、患者を進行性、安定、奏効性のいずれかに分けることができることを実証した。これは、放射線学的および臨床的無増悪生存期間(PFS)の両方と強い相関を示した。Linらの限界(J Nucl Med,2016.57(12):p.1872-1879)を用いて、患者を、進行性疾患(ΔSUVtotal>44%)、安定疾患(-30%<ΔSUVtotal<44%)、部分奏効(ΔSUVtotal<-30%)に分類した。SUV>15g/mlの単一閾値と医師による手動の分類が使用され、ここではSORT閾値とランダムフォレストベースの病変分類が使用されるという点で実施方法が若干異なっている。
【0090】
最近、PERCIST(PET Response Criteria in Solid Tumors)基準のNaFバージョンが提案された(NAFCIST: Na18 F PET response criteria in primary bone tumor)(参照:Kairemo,K.,et al.,ESMO Open, 2019.4(1):p.e000439)。PERCIST基準と同様に、NAFCISTは、後続スキャンの各最高取り込み病変のSUVpeakを測定する。二次基準には2番目のタイムポイントにおける5つの最高取り込み病変(1臓器につき2個以下)または新病変のSUVtotalの変化が含まれる。最もホットな病変のSUVpeakが30%以上減少した場合、患者は部分奏効と分類され、最もホットな病変のSUVpeakが30%以上増加した場合、2つの最もホットな病変のSUVtotalが75%以上増加した場合、または新たな病変があった場合、患者は進行性と分類される。いずれの基準も満たさない患者は病勢安定と分類された。この方法は、以前は手動で実施されていたが、今回は自動で実施された。第3の方法は、ベースラインとフォローアップの間のPSA値の変化を用いた(Rescign,P.ら,JCO,2018,36(15_suppl)5063-5063参照)。
【0091】
〔AIQ解析〕
各患者について84のイメージング特徴が抽出され、特徴の全リストは表2に示されている。特徴は、単一の時点(ベースラインまたはフォローアップ)で測定されるか、または奏効(ベースラインからフォローアップまでの変化)を捕らえるかに基づいてカテゴリーに分けられている。さらに、特徴は均質性(homogeneity)か異質性(heterogeneity)のどちらかを表すものとした。homogeneity featureは、最大病変取り込みや平均病変取り込みのように、患者内の病変間の取り込みの違いを考慮しない特徴を記述する。対照的に、不均質性特徴は病変間の違いを反映する。不均質性の特徴には、病変の取り込みの標準偏差、歪度、尖度、および各応答病変カテゴリーにおける病変の比率が含まれる。PRまたはPDに分類された病変は、各カテゴリーの最大値、平均値、合計値、および平均値の標準偏差(hetero)を決定するために一緒に評価され、次に患者のこれらの病変集団内の変化を決定した。病変値の標準偏差(hetero)の奏効に関しては、標準偏差の変化(ΔHetero)または病変の変化の標準偏差(HeteroΔ)の2つの方法で計算した。
【表3】
【0092】
これらの特徴が臨床的有用性を予測する能力を評価するため、ランダム生存フォレスト(RSF)モデルを各データセットに別々に実行した。これを行うために、2つの別々の訓練ケースと試験ケースを実施した。まず、PCFデータが、最も多くの患者(44人)を有し、様々な治療タイプ(6治療)を有し、3つのイメージング診断センターから取得されたため、モデル訓練のために選択された。2つ目のアプローチでは、他の2つのデータセットのデータを使用して2つ目のモデルを作成し、PCFデータで試験した。各アプローチにおいて、訓練データは6つの異なるRSFモデルのセットを訓練するために使用された。すべての特徴、ベースライン、経過観察、奏効、均質性および非均質性。訓練後、各モデルの重みはロックされ、試験データに適用された。ベースラインまたは経過観察イメージングのみを受けた患者は、適切な場合にモデルに含まれた。経過観察イメージングの前に治療を中止した患者は、ベースラインモデルにのみ含まれた。ランダム生存フォレストは、scikit-survivalを用いてPythonで実装した。
【0093】
〔統計解析〕
全データセットの各患者について、臨床的有用性の持続期間を、治療開始から、病勢進行(放射線学的、生化学的、臨床的)、死亡などの何らかの要因により治療が中止されるまでの日数と定義した。
【0094】
各データセットについて、単変量Cox-比例ハザード回帰を各指標について行った。各データセットにおける臨床的有用性を予測する能力について、3つの別々のモデルが評価され、それぞれの概要は以下の通りである。モデルの性能は、一致指数(C-指数)を用いて比較された。C-指数の有意性は、C-指数がランダムな偶然の結果ではないことを検定する並べ替え検定を用いて決定した。これを行うために、臨床的有用性の持続期間と打ち切りをランダムに1000回シャッフルし、各順列置換についてc-指数を再計算した。c-指数がモデルc-指数より大きいインシデントの比率をp値とした。
【0095】
Harmonらの、NAFCIST、PSAの変化の患者分類法を評価するためにカプランマイヤー解析を用いた。RSFモデルの分離ロバスト性の説明として、訓練データのリスクスコア中央値を用いて、試験データをリスクスコア中央値以上と以下に分離した。カプランマイヤー解析の有意性は、log-rank検定を用い、群間比較を行って決定した。
【0096】
報告されたP値はすべて両側であり、統計的有意性の定義にはP<0.05が用いられた。解析はPythonで行った。
【0097】
以下の式は、本明細書で使用される関係を定義する。ここで、N
lesionsは病変の数であり、N
CRは完全奏効病変の数(CR)であり、N
SDは総イメージング信号の変化に基づく安定病変の数(SD)であり、N
PRは総イメージング信号の変化に基づく部分奏効病変の数(PR)であり、N
PDは総イメージング信号の変化に基づく進行病変の数(PD)であり、N
NLは新規病変の数(NL)である。
【数1】
【0098】
各試験の病変数、有効期間、異時性奏効(少なくとも1つの進行病変と奏効病変を同時に有する)の患者の比率の要約を表4に示す。PCFのデータは病変数が最も多く、有効期間も最も短かったが、MVIのデータは病変数が非常に少なかった。NCIデータセットはその中間であった。複数のPET画像を有する96例中66例に、不均質な奏効がみられた。これは病変数が多い患者ほど多かった。
【表4】
【0099】
Cox-Proportional Hazards回帰を用いたすべてのNaF PET/CT指標と有効期間との相関を表6に示す。各指標のハザード比を表6に示す。進行病変の数のみが4試験すべてでc-指数が0.6を超えていた。
【表5】
【表6】
【0100】
Harmonらに記載されたSUV
total分類法の性能(参照、J Clin Oncol,2017.35(24):p.2829-2837、参照により本明細書に組み込まれる)を
図1に示す。この方法は、PCFデータセットにおいて臨床的有用性の有意な分離を示したが(p=0.02)、NCIデータセットまたはMVIデータセットでは有意な分離はなかった(p>0.5)。
【0101】
NAFCIST基準をすべてのデータセットに適用した結果を
図2に示すが、PD患者と非PD患者の間に有意な分離は見られなかった。本研究のほとんどの患者は、この基準を用いてPDに分類された。
【0102】
PSA奏効基準をPCFとNCIのデータセットに適用した結果を
図3に示すが、PD患者と非PD患者の間に有意な分離は見られなかった。
【0103】
84の特徴量をすべて含めたランダム生存フォレストの結果を、カプランマイヤー曲線を用いて
図4に示す。訓練データから得られたリスクスコアの中央値は、すべての外部検証データセットにおいて、早期に薬物療法を中止する患者と、効果が延長する患者を有意に分離することができた。
【0104】
RSFモデルによってみられる特徴を変化させた結果を表7に示す。すべての検証において、すべての特徴が含まれる場合に、最も高い性能が得られた。平均して、奏効特徴のみを用いたRSFモデルは、単一タイムポイント測定のみを用いたモデルよりも良い性能を示した。均質性特徴のみを使用した場合、RSFモデルは3つのデータセットで良好な性能を示したが、非均質性を使用した場合、モデルはすべての外部検証セットで良好であった。
【表7】
【0105】
PCFで訓練させたモデルを、免疫チェックポイント阻害剤で治療されたFDG PET/CTでイメージングされ、メラノーマ患者15人の外部データセットに適用した。機械学習の結果を
図5に示す。PCFデータから得られたリスクスコアの中央値は、すべての外部検証データセットにおいて、早期に薬剤を中止することになるメラノーマ患者と、延長効果が期待できる患者を有意に分離することができた。
【0106】
このモデルは、ある時間までに患者がどの程度進行している可能性が高いかの推定値も提供することができる。その例を
図6に示す。特定の病変を除去し、患者の生存曲線における改善を示すことにより、治療のシミュレーションを行うことができる。
図7は、患者のリスクスコアとその結果の生存曲線を最も改善する、患者から除去すべき5つの病変の最適な組み合わせを見つけるためにグリッド検索が実行された例示的なケースである。
【0107】
本出願において言及された全ての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された方法の種々の修正および変形は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、関連分野の当業者にとって自明である、本発明を実施するための記載された態様の様々な改変は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1】
図1A~1Cは、Harmonら(J Clin Oncol,2017、35(24):2829-2837頁、、参照により本明細書に組み込まれる)によって記載された方法を用い、Linら(J Nucl Med,2016.57(12):p.1872-1879、参照により本明細書に組み込まれる)による限界値を使用した、示された各臨床試験のカプランマイヤー曲線である。Linらによる上記記載では、患者は、進行性疾患(ΔSUV
total>44%)、安定性疾患(-30%<ΔSUV
total<44%)、または部分奏効(ΔSUV
total<-30%)を有するものとして分類される。
【
図2】
図2A-2Cは、最もホットな病変のSUV(
peak)が30%を超えて増加した場合、2つの最もホットな病変のSUV(
total)が75%を超えて増加した場合、または新たな病変があった場合に、患者をPDと分類するNAFCIST法を用いた、示された各臨床試験のKaplan-Meier曲線である。
【
図3】
図3A-3Bは、示されたPCF臨床試験(
図3A)およびNCI臨床試験(
図3B)のKaplan-Meier曲線であり、PSAが25%を超えて増加した場合に患者をPDと分類するPSA法を用いている。
【
図4】
図4A-4Cは、他の3つのデータセット(
図4A)および3つの外部検証セット(
図4B-4C)のそれぞれについて、分割が訓練されたモデルを用いて決定され、分割がPCFデータで訓練されたモデルのハザードスコアの中央値に基づいて決定されたPCFデータからの検証曲線を示すカプランマイヤー曲線である。
【
図5】
図5は、外部メラノーマデータセットの検証曲線を示すカプランマイヤー曲線であり、分割はPCFデータで訓練されたモデルのハザードスコア中央値に基づいている。
【
図6】
図6は、機械学習モデルの出力例である。このグラフは、患者が進行する可能性を時間に対してプロットしたものである。
【
図7】
図7は、患者から進行性病変を最適な選択で除去することによる、患者の改善シミュレーションを示す。
【
図8】
図8は、その方法を示すフローチャートである。
【国際調査報告】