(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】改良された鋳造可能マグネシウム合金
(51)【国際特許分類】
C22C 23/06 20060101AFI20240806BHJP
C22F 1/06 20060101ALI20240806BHJP
C22C 1/02 20060101ALI20240806BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
C22C23/06
C22F1/06
C22C1/02 503L
C22F1/00 602
C22F1/00 604
C22F1/00 611
C22F1/00 612
C22F1/00 623
C22F1/00 630A
C22F1/00 631A
C22F1/00 681
C22F1/00 691B
C22F1/00 692A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502543
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 GB2022052109
(87)【国際公開番号】W WO2023017280
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507217615
【氏名又は名称】マグネシウム エレクトロン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230503
【氏名又は名称】五百川 惟志
(72)【発明者】
【氏名】マシュー マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ポール リオン
(72)【発明者】
【氏名】イスメト サイド
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエラ ホラン
(57)【要約】
本発明は、(a)1.32~1.8wt%のGdと、(b)2~3.6wt%のNdと、(c)0.55~0.7wt%のZrと、(d)0.20~0.40wt%のZnと、(d)少なくとも85wt%のMgとを含み、Gd:Ndの比(wt%)は0.40~0.63であるマグネシウム合金に関する。本発明はまた、マグネシウム合金を含む航空機構成要素、およびマグネシウム合金の製造方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1.32~1.8wt%のGdと、
(b)2~3.6wt%のNdと、
(c)0.55~0.7wt%のZrと、
(d)0.20~0.40wt%のZnと、
(d)少なくとも85wt%のMgと、
を含み、
Gd:Ndの比(wt%)は、0.40~0.63である、マグネシウム合金。
【請求項2】
200mm×200mm×25.4mmの板に砂型鋳造され、T6時効処理を施されたとき、ASTM B557M-15に従って測定された少なくとも310MPaの極限引張強さを有する、請求項1に記載のマグネシウム合金。
【請求項3】
200mm×200mm×25.4mmの板に砂型鋳造され、T6時効処理を施されたとき、ASTM B557M-15に従って測定された少なくとも315MPaの極限引張強さを有する、請求項2に記載のマグネシウム合金。
【請求項4】
前記Gd:Nd(wt%)の比は、0.40~0.61である、請求項1から3のいずれか一項に記載のマグネシウム合金。
【請求項5】
前記Gd:Nd(wt%)の比は、0.40~0.57である、請求項4に記載のマグネシウム合金。
【請求項6】
前記合金は、1.35~1.8wt%のGdを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のマグネシウム合金。
【請求項7】
前記合金は、1.40~1.70wt%のGdを含む、請求項5に記載のマグネシウム合金。
【請求項8】
前記合金は、2.2~3.4wt%のNdを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のマグネシウム合金。
【請求項9】
前記合金は、2.6~3.1wt%のNdを含む、請求項8に記載のマグネシウム合金。
【請求項10】
前記合金は、0.6~0.7wt%のZrを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のマグネシウム合金。
【請求項11】
前記合金は、少なくとも90wt%のMgを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のマグネシウム合金。
【請求項12】
前記合金は、少なくとも92wt%のMgを含む、請求項11に記載のマグネシウム合金。
【請求項13】
前記合金は、(i)最大0.4wt%のGdおよびNd以外の希土類金属、(ii)最大0.05wt%のAg、(iii)最大0.01wt%のCu、(iv)最大0.010wt%のFe、(v)最大0.0020wt%のNi、(vi)最大0.01wt%の他の元素、を任意選択的に含み、残部はマグネシウムである、請求項1から12のいずれか一項に記載のマグネシウム合金。
【請求項14】
前記合金は、200mm×200mm×25.4mmの板に砂型鋳造され、T6時効処理を施されたとき、ASTM E112-13に従って測定された10~100μmの平均平面粒子サイズを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載のマグネシウム合金。
【請求項15】
前記合金は、200mm×200mm×25.4mmの板に砂型鋳造され、T6時効処理を施されたとき、ASTM E112-13に従って測定された20~80μmの平均平面粒子サイズを有する、請求項14に記載のマグネシウム合金。
【請求項16】
前記合金は、第1の結晶相と第2の結晶相とを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のマグネシウム合金。
【請求項17】
前記合金は、200mm×200mm×25.4mmの板に砂型鋳造され、T6時効処理を施されたとき、少なくとも98%の第1の結晶相を有する、請求項16に記載のマグネシウム合金。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載のマグネシウム合金を含む航空機構成要素。
【請求項19】
前記航空機構成要素は、駆動列構成要素、エンジン構成要素、または構造構成要素である、請求項18に記載の航空機構成要素。
【請求項20】
前記航空機構成要素は、電動航空機構成要素である、請求項18または19に記載の航空機構成要素。
【請求項21】
(a)Mg、Gd、Nd、ZrおよびZnを加熱して、1.32~1.8wt%のGd、2~3.6wt%のNd、0.55~0.7wt%のZr、0.20~0.40wt%のZnおよび少なくとも85wt%のMgを含み、Gd:Ndの比(wt%)が0.40~0.63である、溶融マグネシウム合金を形成するステップと、
(b)得られた溶融マグネシウム合金を混合するステップと、
(c)マグネシウム合金を鋳造するステップと、
を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のマグネシウム合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度鋳造可能なマグネシウム合金、ならびにそのような合金の製造方法およびその合金を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
【0003】
希土類金属とジルコニウムとを含むマグネシウム合金(Mg-RE-Zr合金)は、航空宇宙およびその他の専門用途で定期的に使用されている。このような用途では、強度対重量比が材料選択の重要な要素となる。概して、強度対重量比が大きいほど(つまり、同じ密度の2つの材料で強度が大きいほど)望ましい。強度対重量比が重要となる用途の例としては、従来型航空機と電動航空機の両方で、駆動列構成要素(ギアボックス、ハウジングカバー、および類似の品目)、エンジン構成要素(ケース、カバー、可動部構成要素など)、および構造構成要素(パネル、ボディ部品、など)が挙げられる。同様の材料要件は、宇宙機/衛星の総重量によって宇宙に打ち上げるコストが決まる宇宙機および衛星の用途にも当てはまる。
【0004】
Mg-RE-Zr合金のファミリー内でも、特性は、大きく異なり得、複数のサブファミリーが存在する。特定の希土類元素を選択し、少量の他の元素を添加することによって、合金の性能の特定の態様を向上させ得る。より広範なグループに属する合金の例は数多くある。さまざまな希土類金属の一般的な利点は教科書で取り上げられている(例えば、「Light Alloys」、第4版、Ian Polmear、265ページ、
図5.17)。希土類金属は、合金内での固溶度の限界まで強度が向上し、含有量がさらに増加すると特性が低下することが一般的に認められている。
【0005】
このような合金の例は、本出願人の先の米国特許第7,935,304号明細書に開示される。この文書では、2~4.5重量%のネオジム、0.2~7.0%の少なくとも1種の原子番号62~71の希土類金属、最大1.3重量%の亜鉛、0.2~0.7重量%のジルコニウム、任意選択的に1つ以上の他の微量成分を含む合金について説明している。
【0006】
この定義の範囲内にある合金は、AMS4429Bで次の組成を有するものとして定義される。
【表1】
【0007】
改良された鋳造可能Mg-RE-Zr合金、特に改良された強度特性を有する合金が求められている。
【発明の概要】
【0008】
(発明の概要)
【0009】
本発明は、
(a)1.32~1.8wt%のGdと、
(b)2~3.6wt%のNdと、
(c)0.55~0.7wt%のZrと、
(d)0.20~0.40wt%のZnと、
(d)少なくとも85wt%のMgと、
を含み、
Gd:Ndの比(wt%)は0.40~0.63である、マグネシウム合金に関する。
【0010】
驚くべきことに、上記の組成を有し、Gd:Nd(wt%)比が0.40~0.63であるマグネシウム合金は、強度が向上し、特に極限引張強さ(UTS)が向上することが本発明者らによって見出された。いくつかの実施形態では、合金は鋳造マグネシウム合金、より具体的には砂型鋳造合金であり得る。特に、鋳造マグネシウム合金は、5~350mmの厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、鋳造マグネシウム合金は、25~350mm、より具体的には100~350mm、さらにより具体的には200~350mmの厚さを有し得る。他の実施形態では、鋳造マグネシウム合金は、5~100mm、より具体的には10~100mmの厚さを有し得る。本発明の文脈において、「厚さ」という用語は、鋳造マグネシウム合金の最小次元を意味するために使用される。驚くべきことに、本発明の合金は、より厚い鋳物においてその特性の保持が改良されていることが発明者らによって発見された。いくつかの実施形態では、合金は鍛造マグネシウム合金であり得る。鍛造合金は、鍛造合金または押出合金であり得る。
【0011】
特にマグネシウム合金の極限引張強さ(UTS)は、200mm×200mm×25.4mmの板に砂型鋳造され、T6時効処理を施されたとき、ASTM B557M-15に従って測定された少なくとも310MPaの極限引張強さであり得る。より具体的には、UTSは少なくとも315MPa、さらにより具体的には少なくとも316MPa、より具体的には少なくとも320MPaであり得る。特に、UTSは350MPa以下であり得る。
【0012】
本発明に関連して、「時効処理」という用語は、マグネシウム合金を室温より高い温度に加熱し、その温度に一定時間保持し、その後室温(つまり約25℃)に戻すプロセスを指すために使用される。特に、時効処理は、T6時効処理であり得る。このようなプロセスは当技術分野で知られており、概して、マグネシウム合金を515℃~524℃の温度に加熱し、その温度に一定時間保持し(溶体化処理のため)、必要に応じて急冷し(すなわち、それを加熱された温度よりも低い温度、例えば室温(約25℃)まで冷却することを可能にする)、マグネシウム合金を200℃~204℃の温度まで再加熱してその温度に一定時間保持(析出熱処理のため)することを含む。
【0013】
本発明に関連して、「合金」という用語は、2つ以上の金属元素を一緒に溶融し、混合し、再凝固させることによって混合および融合して作られた組成物を意味するために使用される。したがって、本発明の合金の文脈では、言及されたすべての元素は金属の形態にある(例えば、塩として存在するわけではない)。
【0014】
特に、Gd:Ndの比(wt%)は、0.40~0.61であり得る。より具体的には、Gd:Ndの比(wt%)は、0.40~0.60であり得る。さらに具体的には、Gd:Ndの比(wt%)は、0.40~0.57であり得る。
【0015】
特に、マグネシウム合金は、1.35~1.8wt%のGd、より具体的には1.40~1.75wt%のGd、さらにより具体的には1.40~1.70wt%のGdを含み得る。
【0016】
より具体的には、マグネシウム合金は、2.2~3.4wt%のNd、さらにより具体的には2.6~3.1wt%のNdを含み得る。
【0017】
特に、マグネシウム合金は、0.6~0.7wt%のZr、より具体的には0.60~0.70wt%のZrを含み得る。
【0018】
より具体的には、マグネシウム合金は少なくとも90wt%のMg、さらにより具体的には少なくとも92wt%のMgを含み得る。いくつかの実施形態では、合金の残りはマグネシウムおよび偶発的不純物であり得る。
【0019】
特に、マグネシウム合金は、(i)最大0.4wt%のGdおよびNd以外の希土類金属、(ii)最大0.05wt%のAg、(iii)最大0.01wt%のCu、(iv)最大0.010wt%のFe、(v)最大0.0020wt%のNi、(vi)最大0.01wt%の他の元素、を任意選択的に含み得、残部はマグネシウムであり得る。GdおよびNd以外の希土類金属としては、Ce、LaおよびPrが挙げられ得る。
【0020】
「希土類金属」という用語は、本発明に関連して、15のランタニド元素、並びにScおよびYを指すために使用される。
【0021】
特に、マグネシウム合金は、200mm×200mm×25.4mmの板に砂型鋳造され、T6時効処理を施されたとき、少なくとも10μm、より具体的には10~100μm、さらに具体的には20~80μmの平均平面粒子サイズを有し得る。平均平面粒子サイズは、ASTM E112-13に規定されているハイン線形切片法を使用して、マグネシウム合金の代表的な部分で測定された。この文脈では、「代表セクション」という用語は、合金内の平均的な状態を表すために選択されたセクションを意味するために使用される。通常、このような切片は、剪断、焼成、または粒子構造を変えるその他のプロセスの影響を受けた領域から採取されるべきではない。
【0022】
粒子サイズは、材料の性能に影響を与えることが当技術分野で知られている。Hall-Petchの関係は、粒径を小さくすることでUTSを増加し得ることを示す。粒子サイズを細かくすることには、他にも利点がある。ただし、工業的に使用される大型鋳物では、10μm未満の粒径(超微細として知られている)を実現するのは概して困難である。このような大型の鋳物は通常、複雑な形状および6 mm超の平均肉厚を有する。このような材料で超微細な粒径を実現するには、材料の形成/加工や高凝固速度プロセス(噴霧化、高圧ダイカストなど)の使用などのプロセスを採用する必要がある。しかしながら、これらのプロセスは、実用上の考慮から砂型鋳造が好ましい製造方法である多くの産業用/航空宇宙用構成要素(すなわち、本発明の合金の主な用途)には適していない。したがって、本発明の合金については、20μmより大きく、通常100μm未満の粒径を有する材料で必要な特性(例えば改良されたUTS)を達成することが望ましい。多くの市販のマグネシウム合金、例えばMg-Al合金の粒径は、凝固速度に強く依存しており、冷却速度が増加すると結晶粒径が小さくなる(例えば、L.A.Dobrzan’ski、M.Kro’l、T.Tan’ski、Effect of cooling rate and aluminum contents on the Mg-Al-Zn alloys’ structure and mechanical properties、Journal of Achievements in Materials and Manufacturing Engineering 43/2(2010)613-633を参照)。本発明の合金は、例えば壁厚25.4mmで砂型鋳造(すなわち、冷却速度が遅い方法)された場合に、改良された(すなわち、より小さい)平均粒径および機械的特性を達成できることが発明者らによって見出された(例えば、UTS)。
【0023】
より具体的には、マグネシウム合金は、2つ以上の結晶相を含み得、すなわちマグネシウム合金は異種性であり得る。いくつかの実施形態では、合金は、第1の結晶相および第2の結晶相を含み得る。第1の結晶相は、その結晶構造および/またはその組成に関して第2の結晶相とは異なり得る。特に、マグネシウム合金は、200mm×200mm×25.4mmの板に砂型鋳造され、T6時効処理を施されたとき、少なくとも97%、より具体的には少なくとも98%、特に少なくとも98.5%、より詳細には少なくとも99%の第1の結晶相を含み得る。この文脈において、百分率はマグネシウム合金の二次元走査型電子顕微鏡(SEM)微細構造画像の面積を表す。
【0024】
驚くべきことに、本発明の合金では、本明細書で特定する比較的低いZn含有量を有すると、第1の相の含有量が増加する(および第2の相の含有量が減少する)ことが発明者らによって発見された。これによって、合金のUTSが向上する。これは、Zn含有量が高いほどUTSが高くなるという一般的に考えられているこの技術分野の一般知識に反している。この例は、ZK41A、ZK51A、およびZK61A砂型鋳造合金を説明する国際規格ASTM B60-15に記載されている。これらはMg-Zn-Zr合金で、Znレベルがそれぞれ約4.3、約4.6、および約6%(仕様範囲の中間点)であることを除けば、名目上は同一である。これらの合金の最小UTS仕様はそれぞれ200、234、276MPaであり、Zn含有量の増加によってUTS値がどのように高くなるかを示す。
【0025】
本発明はまた、上記のマグネシウム合金を含む航空機または宇宙機の構成要素(例えば、従来の航空機または電動航空機の構成要素)にも関する。より具体的には、航空機部品は電動航空機部品であり得る。「航空機」という用語には、飛行機およびヘリコプターが含まれる。「宇宙機」という用語には衛星も含まれる。合金にGdを含めると、中性子吸収効果が得られ得、中性子のレベルが増加した環境(例えば、宇宙)では有益であり得る。特に、航空機構成要素は、駆動列構成要素、エンジン構成要素、または構造構成要素であり得る。より具体的には、駆動列構成要素は、ギアボックス、ハウジング、またはカバーであり得る。特に、エンジン構成要素は、ケース、カバー、または可動構成要素であり得る。より具体的には、構造構成要素は、パネルまたは本体部分であり得る。
【0026】
本発明はまた、
(a)Mg、Gd、Nd、ZrおよびZnを加熱して、1.32~1.8wt%のGd、2~3.6wt%のNd、0.55~0.7wt%のZr、0.20~0.40wt%のZnおよび少なくとも85wt%のMgを含み、Gd:Ndの比(wt%)が0.40~0.63である、溶融マグネシウム合金を形成するステップと、
(b)得られた溶融マグネシウム合金を混合するステップと、
(c)マグネシウム合金を鋳造するステップと、
を含むマグネシウム合金の製造方法にも関する。
【0027】
特に、この方法は、上で定義したマグネシウム合金を製造するためのものであり得る。得られる合金中の任意の他の必要な成分(例えば、合金について説明した前段落に挙げたもの)は、加熱ステップ(a)で添加され得る。より具体的には、加熱ステップは、650℃(すなわち、純マグネシウムの融点)以上、さらにより具体的には1090℃(純マグネシウムの沸点)未満の温度で実施され得る。特に、温度範囲は650℃~850℃、より具体的には700℃~800℃、さらにより具体的には750℃~780℃であり得る。より具体的には、ステップ(b)において、得られる合金は完全に溶融および/または溶解され得る。
【0028】
より具体的には、ステップ(a)において、得られる合金は完全に溶融され得る。特に、ステップ(a)での溶融の前に、合金成分は元素の形態で、または1つ以上の合金として存在し得る。
【0029】
特に、ステップ(c)において、鋳造は、溶融マグネシウム合金を型に注ぎ込み、その後冷却して固化させることを含み得る。型は、ダイ型、永久鋳型、砂型、インベストメント鋳型、直接冷却鋳造(DC)鋳型、または他の型であり得る。
【0030】
ステップ(c)の後、本方法は、(d)押出、(e)鍛造、(f)圧延、(g)機械加工の1つ以上の追加ステップを含み得る。
【0031】
本発明は、特許請求される本発明の範囲を限定することを意図したものではない下記の図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施例1~9の合金のGd:Nd比(wt%)に対する極限引張強さ(UTS)のグラフである。
【
図2】実施例10~16の合金のZn含有量(wt%)に対する極限引張強さ(UTS)のグラフである。
【
図3】走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定された実施例5の合金の微細構造を示す図である。
【
図4】合金の第1の相と第2の相とを識別する処理後の
図3の画像である。
【
図5】実施例1~16の合金の第2の相の面積%に対する極限引張強さ(UTS)のグラフである。
【
図6】実施例1~16の合金のGd:Nd比(wt%)に対する第2の相の面積%のグラフである。
【実施例】
【0033】
(実施例)
【0034】
マグネシウム合金組成物を、下記の表1に列挙された量で成分を組み合わせることによって調製した。次いで、これらの組成物を750℃~780℃に加熱することによって溶融した。次に、溶融物を200mmx200mmx25.4mmの型に流し込み、T6時効処理を施した。次に、合金の極限引張強さ(UTS)をASTM B557M-15に従って試験した。
【0035】
【0036】
図1は、表1のサンプルのGd:Nd比に対するUTSのグラフである。これは、本発明のサンプル、すなわち請求項に記載のGd:Nd比(wt%)を有するサンプルがUTSを改良したことを明らかに示している。
【0037】
図3は、実施例5のマグネシウム合金(すなわち、200mm×200mm×25.4mmの型に鋳造され、T6時効処理を受けたもの)の光学的微細構造のSEM画像である。これは、合金がほぼ等軸の結晶粒構造を持っていることを示す。この合金はほぼ完全に単相であり、二次相の小さな領域がわずかに存在するだけである。同じ合金のSEM画像を
図4に示す。
図4では、少量の第2の相が白い領域として表示される。
【0038】
さらなるマグネシウム合金組成物を、下記の表2に列挙される量で成分を組み合わせることによって調製した。これらの組成物は、本発明のマグネシウム合金に対するZn含有量の影響を実証するために調製された。組成物を750℃~780℃に加熱することによって溶融した。次に、溶融物を200mmx200mmx25.4mmの型に流し込み、T6時効処理を施した。次に、合金の極限引張強さ(UTS)をASTM B557M-15に従って試験した。
【0039】
【0040】
図2は、表2の実施例10~16のZn含有量に対するUTSのグラフである。このデータは、特許請求の範囲外のZn含有量を有するマグネシウム合金が強度特性の低下を示すことを示している。
【0041】
第2の相の百分率を、各合金(つまり、200mmx200mmx25.4mmの型に鋳造され、T6熱処理を受けたもの)の光学二次元SEM画像を生成することによって測定した。2つの相は異なる原子組成を有し、後方散乱電子SEM画像ではコントラストとして現れる。画像処理ソフトウェアを使用することによって、最初のSEM画像を白黒画像に変換し得る。第1の相は黒で、第2の相の領域は白として表示される。ソフトウェアを使用して、第2の相(白)の面積を総面積の百分率として測定する。これは、
図4に示すタイプの画像である。合金ごとに少なくとも2つの画像を撮影し、平均百分率を計算した。これらの結果を下記の表3に示す。
【0042】
【0043】
表3における第2の相の値の百分率を、各合金のUTS値と対比して
図5に示す。
図5のグラフは、第2の相の量が増加するにつれてUTSが減少する傾向を示す。
【0044】
さらなるグラフを
図6に示す。このグラフは、各例の第2の相の面積百分率に対するGd:Nd比をプロットしている。参照しやすいように、データ点を円(0.5未満のZn値、すなわち本発明の合金の範囲内)および四角(0.5超のZn値、すなわち本発明の合金の範囲を超える)としてプロットした。円(本発明の合金の範囲内のZn含有量を有する合金)について、本発明の合金で必要とされる値を超えるGd:Nd比を有する合金については、第2の相の百分率は、より高く、そうしてUTSは、より低い。四角のデータ点(本発明の合金の範囲外のZn含有量を有する合金)は、本発明の合金で必要とされる範囲内のGd:Nd比を有するが本発明の合金で必要とされる範囲を超えるZn含有量を有する合金については、より高い第2の相の百分率を示し、したがって、より低いUTSを示す。
【国際調査報告】