(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】制御性T細胞表面抗原のエピトープおよびこれに特異的に結合する抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 14/705 20060101AFI20240806BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240806BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240806BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240806BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240806BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240806BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240806BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240806BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240806BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240806BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240806BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240806BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240806BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240806BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240806BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240806BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240806BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240806BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240806BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240806BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240806BHJP
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A61P 9/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240806BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240806BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240806BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240806BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
C07K16/46
C07K19/00
C07K14/725
C12N15/62 Z
C12N15/13
A61K47/68
A61P37/02
A61P37/06
A61P11/06
A61P17/00
A61P29/00
A61P37/08
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61P17/14
A61P1/04
A61P25/00
A61P21/00
A61P9/00
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/04
A61P17/02
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502560
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 KR2022010262
(87)【国際公開番号】W WO2023287212
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0093657
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518426066
【氏名又は名称】グッド ティー セルズ、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ポムソク
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB01
2G045DA36
2G045FB03
4B065AA01X
4B065AA57X
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4B065AA87X
4B065AA94Y
4B065AB01
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4B065CA46
4C076AA95
4C076CC01
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4H045AA10
4H045AA11
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4H045BA41
4H045BA72
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA76
(57)【要約】
本発明は、制御性T細胞の表面に存在する抗原であるLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープとこれに特異的に結合する抗体または抗原結合断片に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープであって、
配列番号38、39、41、42、44および45で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドから構成された群より選択されるエピトープ。
【請求項2】
前記ポリペプチドは、配列番号35、36、37、40、43で表されるアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のエピトープ。
【請求項3】
請求項1に記載のエピトープをコードする核酸分子。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸分子が挿入された発現ベクター。
【請求項5】
請求項4に記載の発現ベクターが形質感染した宿主細胞株。
【請求項6】
配列番号35~配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する結合分子。
【請求項7】
前記結合分子は、抗体またはその断片である、請求項6に記載の結合分子。
【請求項8】
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体(humanized antibody)、二価(bivalent)、両特異性分子、ミニボディ(minibody)、ドメイン抗体、二重特異的抗体(bispecific antibody)、抗体模倣体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)またはその断片である、請求項7に記載の結合分子。
【請求項9】
抗原特異的結合ドメイン、連結ドメインおよびCD3ゼータ(ζ)シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)において、
前記抗原特異的結合ドメインは、配列番号35~配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する抗原特異的結合ドメイン;および免疫グロブリン(immunoglobulin)Fc領域を含む融合タンパク質であるキメラ抗原受容体。
【請求項10】
請求項6に記載の結合分子および薬物を含む抗体-薬物結合体。
【請求項11】
請求項6~8のいずれか1項に記載の結合分子、請求項9に記載のキメラ抗原受容体、請求項10に記載の抗体-薬物結合体のいずれか1つを有効成分として含む免疫関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項12】
前記免疫関連疾患は、自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、喘息、アトピー、および急性または慢性の炎症疾患からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項11に記載の免疫関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項13】
前記自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、アトピー皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、喘息、クローン病、ベーチェット病、シェーグレン症侯群、ギラン・バレー症侯群、慢性甲状腺炎、多発性硬化症、多発性筋炎、強直性脊椎炎、線維組織炎および結節性多発性動脈炎から構成された群より選択される少なくとも1つ
である、請求項12に記載の免疫関連疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項14】
請求項6~8のいずれか1項に記載の結合分子、請求項9に記載のキメラ抗原受容体、請求項10に記載の抗体-薬物結合体のいずれか1つを有効成分として含む脳神経系疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項15】
前記脳神経系疾患は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患である、請求項14に記載の薬学組成物。
【請求項16】
前記神経退行性疾患または神経炎症性疾患は、脳卒中、認知症、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、筋萎縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、傍腫瘍性神経症候群(Paraneoplastic syndrome)、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経因性疼痛、脳血管疾患、脊髄損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー(tauopathy)からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項14に記載の神経退行性疾患または神経炎症性疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項17】
請求項1または2に記載のエピトープを用いて抗体またはその断片である結合分子をスクリーニングする方法。
【請求項18】
請求項6に記載の抗体を用いてLrig-1タンパク質のエピトープをスクリーニングする方法。
【請求項19】
請求項1または2に記載のエピトープと抗体またはその断片である結合分子を結合する方法。
【請求項20】
Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片である結合分子であって、
(a)前記結合分子の重鎖可変領域(VH)は、次を含む結合分子の重鎖可変領域(VH):
配列番号46、52、58、64、70、76、82および88で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VH)CDR1;
配列番号47、53、59、65、71、77、83および89で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VH)CDR2;および
配列番号48、54、60、66、72、78、84および90で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VH)CDR3;および
(b)前記結合分子の軽鎖可変領域(VL)は、次を含む結合分子の軽鎖可変領域(VL):
配列番号49、55、61、67、73、79、85および91で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VL)CDR1;
配列番号50、56、62、68、74、80、86および92で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VL)CDR2;および
配列番号51、57、63、69、75、81、87および93で表されるアミノ酸配列
からなる群より選択される重鎖可変領域(VL)CDR3;であり、
前記結合分子は、配列番号35~配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する結合分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御性T細胞の表面に存在する抗原であるLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープとこれに特異的に結合する抗体または抗原結合断片に関する。
【背景技術】
【0002】
すべての正常個体において最も重要な特性は、自己(self)を構成している抗原物質に対しては有害に反応しないのに対し、非-自己(non-self)抗原に対してはこれを認識し除去できる能力を有することである。このように自己抗原に対する生体の無反応を免疫学的無反応性(immunologic unresponsiveness)または寛容(tolerance)という。自己寛容は、自己抗原の特異的な受容体を持っているかもしれないリンパ球を除去することにより、または自己抗原に接した後、自ら反応する機能が不活性化されることにより、発生する。自己寛容を誘導したり維持し続ける上で問題が生じると、自己抗原に対して免疫反応が起こり、これによってもたらされる疾患を自己免疫疾患(autoimmune disease)という。
【0003】
前記自己免疫疾患の治療のために、1970年代初め、Gershonによって典型的T細胞(conventional T cells)のエフェクター機能(effector function)を制御および抑制できるT細胞の存在の可能性がある抑制性T細胞という概念を導入して、初めて提示されて以来、免疫学の多くの分野で制御性T細胞の生物学的特性および機能を究明するための研究がなされてきている。
【0004】
そこで、前記制御性T細胞(Treg)は、過度の炎症と免疫反応の発生を自然的に防止する重要な役割を果たすが、自己免疫疾患と慢性炎症疾患が発生する場合、制御性T細胞の機能と数字が著しく減少することが報告された。したがって、免疫疾患と炎症疾患がある患者の場合、制御性T細胞が正常な水準に生成されることが重要であり、これは前記疾患の治療法の一つになり得る。
【0005】
現在まで制御性T細胞に特異的に存在する遺伝子およびタンパク質に関する研究が進められて、CD25、CTLA4、CD62L、CD38、CD103、GITRおよびCD45RBなどの物質が標識物質に相当できるとされてきたものの、まだ制御性T細胞のみを単独で標的化できる遺伝子およびタンパク質は存在しない。
【0006】
一方、相補性決定領域(complementarity determining region、以下、「CDR」という)と呼ばれる3個の多変可能な領域および4個の構造領域(framework region)を含む。前記CDRは、主に抗原の抗原決定基(epitope)に結合する役割を果たす。それぞれの鎖のCDRは、典型的にN-末端からはじまって、順次に、CDR1、CDR2およびCDR3と称し、また、特定のCDRが位置している鎖によって識別される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一つの目的は、制御性T細胞(regulatory T cell、Treg cell)の表面に存在するLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記エピトープに特異的に結合できる抗体または抗原結合断片を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、本発明の前記エピトープをコードする核酸分子;前記核酸分子が挿入された発現ベクター;および前記発現ベクターが形質感染した宿主細胞株を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記エピトープに特異的に結合できる抗体または抗原結合断片を有効成分として含む多様な疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、本発明による前記抗体と多様な疾患の予防または治療薬物が結合した抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、抗体-薬物結合体を有効成分として含む多様な疾患、例えば、免疫関連疾患;神経退行性疾患または神経炎症性疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、前記エピトープに特異的に結合できる抗体または抗原結合断片;および抗体-薬物結合体を用いて多様な疾患の予防または治療する方法を提供することである。
【0014】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープまたは前記エピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片に関する。
【0016】
本発明において、前記「エピトープ」は、配列内のアミノ酸(またはそのサブセット)が抗体または結合断片、例えば、本明細書に記述された抗体または結合断片によって特異的に認識される抗原内のアミノ酸の配列を意味する。エピトープは、1つ以上の抗原決定基を含むことができる。例えば、形態的エピトープに相応する分離されたペプチドに対して出現した抗体は、前記エピトープ配列の一部または全部を認識する。
【0017】
本発明において、前記「Lrig-1タンパク質」は、制御性T細胞の表面に存在する膜貫通タンパク質であって、細胞外あるいはルーメン側のロイシンリッチリピート(leucine-rich repeat(LRR))と3個の免疫グロブリン様ドメイン(immunoglobulin-like domains)、細胞膜貫通配列および細胞質尾部から構成されている。LRIG遺伝子ファミリーはLRIG1、LRIG2とLRIG3が存在し、それぞれのファミリーを構成するアミノ酸は非常に保全的に構成されている。前記LRIG1遺伝子は正常皮膚で高く発現しており、基底と毛包細胞に発現して上皮幹細胞の増殖を調節することができる。したがって、表皮の恒常性の維持に重要な役割をし、不存在の場合、乾癬や皮膚癌に発展しうる。LRIG1が位置した染色体3p14.3部分が切断される場合には癌細胞に発展する可能性があると報告されており、実際に腎臓癌(renal cell carcinoma)と扁平上皮癌(cutaneous squamous cell carcinoma)ではLRIG1の発現が非
常に減少していることが確認された。ところが、最近は、前記Lrig-1タンパク質を発現する癌は20~30%程度に過ぎないと究明されている。一方、本発明の目的上、前記Lrig-1タンパク質は、哺乳類またはマウスに由来するタンパク質であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の一例において、前記Lrig-1タンパク質は、哺乳類、例えば、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどの齧歯類などに由来するLrig-1タンパク質であってもよい。
【0019】
本発明の一例において、前記Lrig-1タンパク質は、配列番号1で表されるヒト由来Lrig-1タンパク質であってもよく、これは配列番号2で表される核酸配列によってコードされてもよいが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明の他の例において、前記Lrig-1タンパク質は、配列番号3で表されるマウス由来Lrig-1タンパク質であってもよく、これは配列番号4で表される核酸配列によってコードされてもよいが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明のさらに他の例において、前記Lrig-1タンパク質は、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明の前記Lrig-1細胞外ドメインは、哺乳類、例えば、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどの齧歯類などに由来するLrig-1タンパク質の細胞外ドメインであってもよい。本発明の目的上、前記Lrig-1タンパク質の細胞外タンパク質は、ヒトまたはマウスに由来するLrig-1タンパク質の細胞外ドメインであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明の一例において、前記Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインは、ヒト由来Lrig-1タンパク質の35番目~794番目のアミノ酸配列に相当する配列番号5で表されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明の他の例において、前記Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインは、マウス由来Lrig-1タンパク質の35番目~794番目のアミノ酸配列に相当する配列番号6で表されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0025】
以下、本発明についてより詳しく説明する。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、前記Lrig-1タンパク質のエピトープであって、前記配列番号35~45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含むエピトープを提供する。
【0027】
本発明の一例として、前記Lirg-1タンパク質のエピトープは、配列番号35~40で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含むエピトープであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明の他の例として、前記Lrig-1タンパク質のエピトープは、配列番号41~配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含むエピトープであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、前記Lrig-1タンパク質のエピトープは、Lrig-1タンパク質の62番目から101番目、または88番目から92番目、または90番目から101番目、または111番目から134番目、または452番目から476番目、または472番目から480番目、または542番目から553番目の塩基配列に相当する部位であってもよい。
【0030】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記Lrig-1タンパク質のエピトープは、Lrig-1タンパク質の95番目から101番目、または472番目から476番目の塩基配列に相当する部位であってもよい。
【0031】
本発明の前記エピトープは、立体構造エピトープ(conformational epitope)であってもよい。
【0032】
本発明の前記「立体構造エピトープ」は、連続的な配列からなる一次元的な線状エピトープとは異なり、不連続的なアミノ酸配列から構成される。このような立体構造エピトープは、抗体抗原結合部位の三次元的な構造と反応する。
【0033】
本発明の他の実施形態によれば、本発明で提供する前記エピトープをコードする核酸分子を提供する。
【0034】
本発明の核酸分子は、本発明で提供するポリペプチドのアミノ酸配列を、当業者に知られているように、ポリヌクレオチド配列に翻訳された核酸分子のすべてを含む。そのため、ORF(open reading frame)による多様なポリヌクレオチド配列が製造可能であり、これもすべて本発明の核酸分子に含まれる。
【0035】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する前記単離された核酸分子が挿入された発現ベクターを提供する。
【0036】
本発明において、前記「ベクター」は、ある核酸分子が連結された他の核酸を輸送できる前記核酸分子である。ベクターの一類型は、追加的なDNAセグメントが結紮できる円形二重鎖DNAを指す「プラスミド」である。他の類型のベクターはファージベクターである。さらに他の類型のベクターはウイルス性ベクターで、追加的なDNAセグメントがウイルスゲノムに結紮できる。あるベクターは、それらが流入した宿主細胞で自律的な複製が可能である(例えば、バクテリア性ベクターはバクテリア性複製起源を有するエピソーム哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば、非-エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に流入しながら宿主細胞のゲノムに統合され、これにより、宿主ゲノムとともに複製される。それだけでなく、あるベクターは、これらが作動レベルで連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本願において、「組換え発現ベクター」または単に「発現ベクター」と名付けられる。一般的に、組換えDNA手法で有用な発現ベクターは、たびたびプラスミドの形態で存在する。本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」は、ベクターの中でプラスミドが最も通常使用される形態であるため、相互交換して使用可能である。
【0037】
本発明において、前記発現ベクターの具体例としては、商業的に広く使用されるpCDNAベクター、F、R1、RP1、Col、pBR322、ToL、Tiベクター;コスミド;ラムダ、ラムダ状(lambdoid)、M13、Mu、p1 P22、Qμμ、T-even、T2、T3、T7などのファージ;植物ウイルスからなる群より選択できるが、これに限定されるものではなく、当業者に発現ベクターとして知られたすべての発現ベクターは本発明に使用可能であり、発現ベクターを選択する時には目的とする宿主細胞の性質による。宿主細胞へのベクターの導入時、リン酸カルシウムトランスフェクショ
ン、ウイルス感染、DEAE-デキストラン調節トランスフェクション、リポフェクタミントランスフェクションまたは電気穿孔法によって行われるが、これに限定されるものではなく、当業者は使用する発現ベクターおよび宿主細胞に適した導入方法を選択して用いることができる。好ましくは、ベクターは、1つ以上の選別マーカーを含むが、これに限定されず、選別マーカーを含まないベクターを用いて生産物の生産の有無によって選別可能である。選別マーカーの選択は、目的とする宿主細胞によって選別され、これはすでに当業者に知られた方法を利用するので、本発明はこれに制限を設けない。
【0038】
本発明の核酸分子がコードするタンパク質の精製を容易にするために、タグ(Tag)配列を前記発現ベクター上に挿入して融合させることができる。前記タグとしては、ヘキサ-ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、mycタグまたはflagタグを含むが、これに限定されるものではなく、当業者に知られた精製を容易にするタグはすべて本発明で利用可能である。
【0039】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する前記発現ベクターが形質転換された宿主細胞株を提供する。
【0040】
本発明において、前記「宿主細胞」には、ポリペプチド挿入物の組込みのためのベクターのレシピエント(recipient)であり得るか、またはレシピエントであった個別的な細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には単一宿主細胞の子孫が含まれ、前記子孫は自然的な、偶発的なまたは故意の突然変異のために必ずしも元の親細胞と完全に同一(形態学上またはゲノムDNA補完体において)でなくてもよい。宿主細胞には本願のポリペプチドで体内で形質転換された細胞が含まれる。
【0041】
本発明において、前記宿主細胞としては、哺乳動物、植物、昆虫、菌類または細胞性起源の細胞を含むことができ、例えば、大膓菌、ストレプトミセス、サルモネラ・ティフィムリウムなどのバクテリア細胞;酵母細胞、ピキア・パストリスなどの菌類細胞;ドロソフィラ、スポドプテラSf9細胞などの昆虫細胞;CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞、Chinese hamster ovary cells)、SP2/0(マウス骨髄腫)、ヒトリンパ芽球(Human lymphoblastoid)、COS、NSO(マウス骨髄腫)、293T、ボウズメラノーマ細胞、HT-1080、BHK(ベビーハムスター腎臓細胞、Baby Hamster Kidney cells)、HEK(ヒト胚腎臓細胞、Human Embryonic Kidney cells)またはPERC.6(ヒト網膜細胞)の動物細胞;または植物細胞であってもよいが、これに限定されるものではなく、当業者に知られた宿主細胞株として使用可能な細胞はすべて利用可能である。
【0042】
本発明の前記形質転換方法は、前記宿主細胞に目的とするベクターを注入させる任意の方法であって、宿主細胞にベクターを注入させることができる公知の方法であればすべて含まれてもよく、例えば、CaCl2を用いた方法、電気穿孔法、微細注入法、カルシウムホスフェート沈殿法、電気穿孔法、リポソーム-媒介形質感染法、DEAE-デキストラン処理法、遺伝子ボンバードメントおよびウイルスを用いた形質転換方法などを利用することができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明のエピトープに特異的に結合する結合分子を提供する。
【0044】
本発明の前記「結合分子」は、抗体または抗原結合断片のうちの1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0045】
本発明において、前記「抗体」は、全長抗体(full-length antibody)または抗体の一部分であって、Lrig-1タンパク質に結合する能力を有し、本発明の結合分子と競争的にLrig-1抗原決定部位に結合する抗体断片のすべてを含む。
【0046】
本発明において、前記「抗体」は、免疫学的に特定の抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を含む、抗原を特異的に認識する受容体の役割を果たすタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、前記抗原は、制御性T細胞(regulatory T cell)の表面に存在するLrig-1タンパク質であってもよい。好ましくは、前記Lrig-1タンパク質のロイシンリッチ部位(Leucine Rich Region)または免疫グロブリン様ドメインを特異的に認識するものであってもよいが、これに限定されない。
【0047】
本発明において、前記「免疫グロブリン」は、重鎖および軽鎖を有し、それぞれの重鎖および軽鎖は、不変領域および可変領域を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、相補性決定領域(complementarity determining region、以下、「CDR」という)と呼ばれる3個の多変可能な領域および4個の構造領域(Framework region)を含む。前記CDRは、主に抗原の抗原決定基(Epitope)に結合する役割を果たす。それぞれの鎖のCDRは、典型的にN-末端からはじまって、順次に、CDR1、CDR2およびCDR3と称し、また、特定のCDRが位置している鎖によって識別される。
【0048】
本発明において、本発明に提供される抗体またはその抗原結合断片は、本発明に提供されるCDRから選択される重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含むか、本発明に提供されるCDRの保存的変異体(conservative variants)を含むキメラ抗体または断片である。
【0049】
本発明の目的上、アミノ酸配列の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。タンパク質のN-末端および/またはC-末端での欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N-末端および/またはC-末端トランケーション(truncation)変異体とも称される。
【0050】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列における単一または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1つ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、生成された生成物の適切なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。
【0051】
アミノ酸付加変異体は、1つ以上のアミノ酸、例えば、1個、2個、3個、5個、10個、20個、30個、50個、またはそれを超えるアミノ酸のアミノ-末端および/またはカルボキシ-末端融合体を含む。
【0052】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1つ以上のアミノ酸の除去、例えば、1個、2個、3個、5個、10個、20個、30個、50個、またはそれを超えるアミノ酸の除去を特徴とする。欠失は、タンパク質の任意の位置にあり得る。
【0053】
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1つの残基が除去され、他の残基がそのサイトに挿入されることを特徴とする。変形が相同性タンパク質またはペプチドの間に保存されないアミノ酸配列の位置に存在すること、および/またはアミノ酸を類似の特性を有する他のアミノ酸に代替することが好ましい。好ましくは、タンパク質変異体におけるアミノ酸の変化は、保存的アミノ酸の変化、すなわち、類似して荷電したり荷電しないアミ
ノ酸の置換である。保存的アミノ酸の変化は、側鎖が関連するアミノ酸ファミリーのうちの1つの置換を含む。自然発生アミノ酸は、一般的に、4つのファミリー、すなわち、酸性(アスパルテート、グルタメート)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非-極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および荷電しない極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸に分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時々、芳香族アミノ酸に一緒に分類される。
【0054】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列間の類似性、好ましくは、同一性の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、基準アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%のアミノ酸領域に対して与えられる。例えば、基準アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、好ましくは、類似性または同一性の程度は、好ましくは、連続アミノ酸である、少なくとも約20個、少なくとも約40個、少なくとも約60個、少なくとも約80個、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のアミノ酸に対して与えられる。好ましい実施形態において、類似性または同一性の程度は、基準アミノ酸配列の全長に対して与えられる。配列類似性、好ましくは、配列同一性を決定するための整列は、業界に知られたツール、好ましくは、最上の配列整列を用いて、例えば、標準設定、好ましくは、EMBOSS::ニードル(needle)、マトリックス(Matrix):Blosum62、ギャップオープン(Gap Open)10.0、ギャップエクステンド(Gap Extend)0.5を使用するAlignを用いて行われる。
【0055】
「配列類似性」は、同一であるか、保存的アミノ酸置換を示すアミノ酸の百分率を示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間の同一のアミノ酸の百分率を示す。
【0056】
用語「同一性百分率」は、最上の整列後に得られる、比較される2つの配列間の同一のアミノ酸残基の百分率を示すように意図され、この百分率はあくまで統計的であり、2つの配列間の差はランダムにおよびそれらの全長にわたって分布する。2つのアミノ酸配列間の配列の比較は、通常、これらの配列を最適に整列した後、比較することにより行われ、前記比較は配列類似性の局所領域を確認し比較するためにセグメントによってまたは「比較ウィンドウ」によって行われる。比較のための配列の最適な整列は、手動によるもの以外にも、局所相同性アルゴリズムによってまたは類似性の検索方法によって、またはこれらのアルゴリズムを用いるコンピュータプログラム(米ウィスコンシン州マディソンサイエンスドライブ575所在のジェネティクスコンピューターグループ(Genetics Computer Group)のウィスコンシンジェネティクスソフトウェアパッケージ(Wisconsin Genetics Software Package)のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって生成される。
【0057】
同一性百分率は、比較される2つの配列間の同じ位置の数を決定し、この数を比較された位置の数で割り、得られた結果に100を掛けて、これら2つの配列間の同一性百分率を得ることにより計算される。
【0058】
相同性アミノ酸配列は、本発明によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%および、好ましくは、少なくとも95%、少なくとも98、または少なくとも99%の同一性を示す。
【0059】
本願に記載のアミノ酸配列変異体は、当業者によって、例えば、組換えDNA操作によって容易に製造できる。置換、付加、挿入または欠失を有するタンパク質およびペプチドを製造するためのDNA配列の操作はよく知られている。また、本願に記載のペプチドおよびアミノ酸変異体は、例えば、固相合成および類似の方法による周知のペプチド合成手法のおかげで容易に製造できる。
【0060】
本発明において、本発明に提供される抗体またはその抗原結合断片は、本発明に提供されるCDRから選択される重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含むか、本発明に提供されるCDRの保存的変異体を含むヒト化抗体または断片である。
【0061】
本発明において、本発明に提供される抗体またはその抗原結合断片は、本発明に提供される配列を含む軽鎖および/または重鎖、またはこれらの保存的変異体を含む。一実施形態において、保存的変異体は、本発明に提供される参照配列と80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上相同する配列を有する。一実施形態において、保存的変異体は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個または10個以上のアミノ酸置換、挿入または欠失を含む。
【0062】
本発明において、本発明に提供されるLrig-1タンパク質に特異的に結合する抗体は、本願に提供される配列またはその保存的変異体を含む。本願で使用される「保存的変異体」は、保存的アミノ酸置換、挿入または欠失を含む。当業者は、保存的アミノ酸置換は、例えば、類似の側鎖のような類似の構造的または化学的特性を有する他のアミノ酸と1つのアミノ酸の置換であり、参照配列の生物学的活性を維持することを認識するはずである。例示的な保存的置換は、当業界でよく知られている。
【0063】
本発明において、前記「全長抗体」は、2個の全長の軽鎖および2個の全長の重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド(Disulfide)結合で連結されており、IgA、IgD、IgE、IgM、およびIgGを含む。前記IgGはその亜型(subtype)として、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。
【0064】
また、本発明において、前記「抗原結合断片」は、抗原結合機能を保有している断片を意味し、抗原結合断片の例は、(1)軽鎖の可変領域(VL)および重鎖の可変領域(VH)と軽鎖の不変領域(CL)および重鎖の1番目の不変領域(CH1)からなるFab断片;(2)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(3)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(4)VHドメインからなるdAb断片;(5)分離されたCDR領域;(6)2個の連結されたFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)2断片;(7)VHドメインおよびVLドメインが抗原結合部位を形成するように結合させるペプチドリンカーによって結合した単鎖Fv分子(scFv);(8)二特異的な単鎖Fv二量体および(9)遺伝子の融合によって作製された多価または多特異的な断片であるダイアボディ(diabody)などを含む。前記抗原結合断片は、タンパク質加水分解酵素、例えば、パパインまたはペプシンを用いる場合、FabまたはF(ab’)2の断片を得ることができ、遺伝子組換え技術により作製することができる。
【0065】
また、本発明において、前記抗体およびその断片は、単クローン抗体(monoclo
nal antibody)、多クローン抗体(polyclonal antibody)、キメラ抗体(chimeric antibody)、ヒト化抗体(humanized antibody)、ヒト抗体(human antibody)、二価(bivalent)、両特異性分子、ミニボディ(minibody)、ドメイン抗体、二重特異的抗体(bispecific antibody)、抗体模倣体、ユニボディ(unibody)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)またはその断片であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0066】
本発明において、前記「キメラ抗体」は、マウス抗体の可変領域およびヒト抗体の不変領域を組換えた抗体であって、マウス抗体に比べて免疫反応が大きく改善された抗体である。
【0067】
また、本発明において、前記「ヒト化抗体」は、ヒトでない種に由来する抗体のタンパク質配列をヒトで自然的に生産された抗体変異体と類似するように変形させた抗体を意味する。その例として、前記ヒト化抗体は、マウス由来のCDRをヒト抗体由来のFRと組換えてヒト化可変領域を製造し、これを好ましいヒト抗体の不変領域と組換えてヒト化抗体を製造することができる。
【0068】
本発明において、前記結合分子は、Lrig-1タンパク質に結合することができ、その他のタンパク質にも結合できる二重特異的抗体または二重特異的抗原結合断片としても提供可能である。
【0069】
本発明において、前記二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片は、本発明による結合分子を含むことができる。本発明において、一例として、前記二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片は、Lrig-1タンパク質に結合できる抗原結合ドメインを含み、ここで、Lrig-1タンパク質に結合できる抗原結合ドメインは、本発明による結合分子を含むか、これにより構成される。
【0070】
本発明で提供する二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片は、本発明によるLrig-1タンパク質に結合できる結合分子である抗原結合ドメイン、および他の標的タンパク質に結合できる抗原結合ドメインを含む。ここで、他の標的タンパク質に結合できる抗原結合ドメインは、Lrig-1タンパク質以外の他のタンパク質として、これに限定されるものではないが、例えば、PD-1または細胞表面受容体に結合できる抗原結合ドメインであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0071】
本発明による二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片は、任意の好適なフォーマット、例えば、全文が本願に参照として引用された文献に記載のフォーマットで提供される。例えば、二重特異的抗体または二重特異的抗原結合断片は、二重特異的抗体接合体(例:IgG2、F(ab’)2またはCovX-ボディ)、二重特異的IgGまたはIgG-型分子(例:IgG、scFv4-Ig、IgG-scFv、scFv-IgG、DVD-Ig、IgG-sVD、sVD-IgG、または2イン(in)1-IgG、mAb2、またはTandemab common LC)、非対称性二重特異的IgGまたはIgG-型分子(例:kih IgG、kih IgG common LC、CrossMab、kih IgG-scFab、mAb-Fv、電荷対またはSEED-ボディ)、小型二重特異的抗体分子(例:ダイアボディ(Db)、dsDb、DART、scDb、tandAbs、タンデムscFv(taFv)、タンデムdAb/VHH、トリプルボディ、トリプルヘッド、Fab-scFv、またはF(ab’)2-scFv2)、二重特異的FcおよびCH3融合タンパク質(例:taFv-Fc、ジ-ダイアボディ、scDb-CH3、scFv-Fc-scFv、HCAb-VHH、scFv-kih
-Fc、またはscFv-kih-CH3)、または二重特異的融合タンパク質(例:scFv2-アルブミン、scDb-アルブミン、taFv-毒素、DNL-Fab3、DNL-Fab4-IgG、DNL-Fab4-IgG-サイトカイン2)であってもよい。当業者は、本発明による二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片を設計し製造することができる。
【0072】
本発明において、前記二重特異的抗体を生産する方法は、還元性ジスルフィドまたは非還元性チオエーテル結合と抗体または抗体断片の化学的架橋結合を含む。例えば、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)は、ジスルフィド連結された二重特異的F(ab)2ヘテロダイマーを生成するため、例えば、ヒンジ領域SH-グループを介してFab断片を化学的に架橋結合させるのに使用できる。
【0073】
また、本発明において、前記二重特異的抗体を生産するための他の方法は、二重特異的抗体を分泌できるクアドローマ細胞を生成するために、抗体-生産ハイブリドーマを、例えば、ポリエチレングリコールと融合させることを含む。
【0074】
本発明による二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片は、例えば、抗原結合分子のためのポリペプチドをコードする核酸作製物から発現によって組換えで生産できる。
【0075】
例えば、2個の抗原結合ドメイン(すなわち、PD-1などに結合できる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン、および他の標的タンパク質に結合できる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン)のための軽鎖および重鎖可変ドメインをコードし、抗原結合ドメイン間の適したリンカーまたは二量体化ドメインをコードする配列を含むDNA作製物は分子クローニング技術によって製造できる。組換え二重特異的抗体は、後に好適な宿主細胞(例:哺乳類の宿主細胞)中で作製物の発現(例:試験管内)によって生産され、次に、発現した組換え二重特異的抗体は任意に精製される。
【0076】
抗体は、非変形の親抗体と比較して抗原に対する抗体の親和度が改善された変形した抗体が生成される親和度成熟工程によって生成される。親和度成熟抗体は、当該技術分野で公知の手順で生産可能である。
【0077】
これとともに、本発明で提供する結合分子は、Lrig-1タンパク質に特異的に結合できる限り、前記アミノ酸配列の変異体を含むことができる。例えば、抗体の結合親和度および/またはその他の生物学的特性を改善させるために抗体のアミノ酸配列に変化を与えることができる。このような変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入および/または置換を含む。
【0078】
このようなアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいて行われる。アミノ酸側鎖置換体の大きさ、形状および種類に対する分析によって、アルギニン、リジンとヒスチジンはすべて正電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシンとセリンは類似の大きさを有し;フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは類似の形状を有するということが分かる。したがって、このような考慮事項に基づいて、アルギニン、リジンおよびヒスチジン;アラニン、グリシンおよびセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは生物学的に機能均等物といえる。
【0079】
変異を導入するにあたり、アミノ酸の疎水性インデックス(hydropathic index)が考慮される。それぞれのアミノ酸は、疎水性と電荷によって疎水性インデックスが付与されている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスタイン(+2.5);メ
チオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタメート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパルテート(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。タンパク質の相互的な生物学的機能(interactive biological function)を付与するにあたり、疎水性アミノ酸インデックスは非常に重要である。類似の疎水性インデックスを有するアミノ酸に置換してこそ類似の生物学的活性を保有できるということは公知の事実である。疎水性インデックスを参照して変異を導入させる場合、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、さらにより好ましくは±0.5以内の疎水性インデックスの差を示すアミノ酸間で置換をする。
【0080】
一方、類似の親水性値(hydrophilicity value)を有するアミノ酸間の置換が均等な生物学的活性を有するタンパク質をもたらすこともよく知られている。米国特許第4,554,101号に開示されているように、次の親水性値がそれぞれのアミノ酸残基に付与されている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。親水性値を参照して変異を導入させる場合、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、さらにより好ましくは±0.5以内の親水性値の差を示すアミノ酸間で置換を行うことができる。
【0081】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質におけるアミノ酸交換は、当該分野で公知である。最も通常起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Gln/Glu間の交換である。
【0082】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すれば、本発明の結合分子は、配列リストに記載の配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むと解釈される。
【0083】
本発明において、用語「実質的な同一性」とは、本発明の配列と任意の他の配列を最大限に対応するように並列し、当業界で通常利用されるアルゴリズムを用いて並列された配列を分析した場合に、最小61%の相同性、より好ましくは70%の相同性、さらにより好ましくは80%の相同性、最も好ましくは90%の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は、当業界で公知である。アラインメントに対する多様な方法およびアルゴリズムは、NCBI Basic Local Alignment
Search Tool(BLAST)、NBCI(National Center
for Biological Information)などでアクセス可能であり、インターネット上でblastp、blasm、blastx、tblastnおよびtblastxのような配列分析プログラムと連動して利用することができる。BLSATはこのアドレスで接続可能である(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)。このプログラムを用いた配列相同性の比較方法は、オンライン(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.html)を通して確認することができる。
【0084】
本発明において、前記結合分子、好ましくは、前記抗体は、抗体を生産する通常の方法によって生成できるが、親和度成熟(Affinity maturation)によって生成されてもよい。
【0085】
本発明において、前記「親和度成熟(Affinity maturation)」は、活性化されたB細胞が免疫反応過程で抗原に対する親和度が増加した抗体を生産する過程を意味する。本発明の目的上、前記親和度成熟は、自然で起こる過程と同一に、突然変異と選択の原理に基づいて親和度成熟によって生成された抗体または抗体断片を生成することができる。
【0086】
また、本発明において、前記「単クローン抗体」は、実質的に同一の抗体集団から得た単一分子組成の抗体分子を指す用語で、特定の抗原決定基(Epitope)に対して単一結合特異性および親和度を示す。
【0087】
本発明において、前記「結合」または「特異的結合」は、本願の抗体または抗体組成物の抗原に対する親和度を示すことである。抗原抗体結合における「特異的結合」は、典型的に解離定数(dissociation constant、Kd)が1×10-5M未満または1×10-6M未満または1×10-7M未満の場合、非特異的な背景結合と区分される。特異的結合は、当業界の公知の方法、例えば、ELISA、SPR(Surface plasmon resonance)、免疫沈殿(immunoprecipitation)、共沈殿(coprecipitation)などの方法で検出可能であり、非特異的結合と特異的結合を区分できる適切な対照群を含む。
【0088】
本発明の抗体または抗原結合断片は、単量体の抗原結合能の少なくとも一部を含む二量体、三量体、四量体、五量体などの多量体で存在できる。このような多量体はまた、同種多量体、または異種多量体を含むものである。抗体多量体は、多数の抗原結合部位を含むため、単量体と比較して抗原に対する結合能に優れる。抗体の多量体はさらに、多機能性(bifunctional、trifunctional、tetrafunctional)抗体の作製にも容易である。
【0089】
本発明において、前記「多機能性」とは、2つ以上の活性または機能(例えば、抗原結合能、酵素活性、リガンドまたは受容体結合能)を有する抗体または抗原結合断片を称するもので、例えば、本発明の抗体は、酵素活性を有するポリペプチド、例えば、ルシフェラーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、ガラクトシダーゼなどと結合できる。多機能性抗体はさらに、多価性(multivalent)または多特異性(bispecific、trispecificなど)形態の抗体を含む。
【0090】
また、本発明による抗体または抗原結合断片は、制御性T細胞上に存在する配列番号35~45のいずれか1つのアミノ酸配列で表されるポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合して前記制御性T細胞の機能を抑制して、エフェクターT細胞の活性を調節することにより、多様な疾患、例えば、免疫関連疾患;または神経退行性疾患または神経炎症性疾患を予防または治療することができる。
【0091】
本発明の前記「免疫関連疾患」は、自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、喘息、アトピー、および急性または慢性の炎症疾患からなる群より選択される少なくとも1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0092】
本発明の前記自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、アトピー皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、喘息、クローン病、ベーチェット病、シェーグレン症侯群、ギラン・バレー症侯群、慢性甲状腺炎、多発性硬化症、多発性筋炎、強直
性脊椎炎、線維組織炎および結節性多発性動脈炎から構成された群より選択される少なくとも1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0093】
本発明で提供する組成物が予防、改善または治療するための「脳神経系疾患」は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患であってもよい。
【0094】
本発明の前記「神経退行性疾患」および「神経炎症性疾患」は、脳卒中、認知症、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、筋萎縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、傍腫瘍性神経症候群(Paraneoplastic syndrome)、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経因性疼痛、脳血管疾患、脊髄損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー(tauopathy)からなる群より選択できるが、これに限定されるものではない。
【0095】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する結合分子、抗体または抗原結合断片;および薬物を含む抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を提供する。
【0096】
本発明において、前記「抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)」とは、抗体と薬物の生物学的活性を低下させることなく薬物と抗体とを化学的に連結した形態を指す。本発明において、前記抗体-薬物結合体は、抗体の重鎖および/または軽鎖のN-末端のアミノ酸残基に薬物が結合した形態、具体的には、抗体の重鎖および/または軽鎖のN-末端、α-アミン基に薬物が結合した形態をいう。
【0097】
本発明において、前記「薬物」は、細胞に特定の生物学的活性を有する任意の物質を意味することができ、これはDNA、RNAまたはペプチド(Peptide)を含む概念である。前記薬物は、α-アミン基と反応して架橋できる反応基を含む形態であってもよいし、α-アミン基と反応して架橋できる反応基を含むリンカーが連結されている形態も含む。
【0098】
本発明において、前記α-アミン基と反応して架橋できる反応基の例としては、抗体の重鎖または軽鎖のN-末端のα-アミン基と反応して架橋できれば、その種類は特に限定されず、当業界で公知のアミン基と反応する種類をすべて含む。その例として、イソチオシアネート(Isothiocyanate)、イソシアネート(Isocyanates)、アシルアジド(Acyl azide)、NHSエステル(NHS ester)、スルホニルクロライド(Sulfonyl chloride)、アルデヒド(Aldehyde)、グリオキサール(Glyoxal)、エポキシド(Epoxide)、オキシラン(Oxirane)、カーボネート(Carbonate)、アリールハライド(Aryl halide)、イミドエステル(Imidoester)、カルボイミド(Carbodiimide)、アンハイドライド(Anhydride)およびフルオロフェニルエステル(Fluorophenyl ester)のいずれか1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0099】
本発明において、抗体-薬物結合体は、前記抗体または抗原結合断片として、本発明のエピトープ、すなわちLrig-1タンパク質;またはLrig-1タンパク質の細胞外
ドメインの一部のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むエピトープ;または配列番号7~17のいずれか1つのアミノ酸配列で表されるポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片を含み、この時、前記薬物は、Lrig-1タンパク質に特異的に結合する抗体が標的とする疾患を治療できる薬物であればすべて含まれてもよく、例えば、免疫関連疾患を治療できる薬物;または神経退行性疾患または神経炎症性疾患を治療できる薬物であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0100】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する抗体または抗原結合断片;または抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を有効成分として含む多様な疾患、例えば、免疫関連疾患;または脳神経系疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0101】
本発明において、前記薬学組成物において有効成分として含む結合分子、抗体または抗原結合断片;またはこれに薬物が結合した抗体-薬物結合体は、配列番号35~45のいずれか1つのアミノ酸配列で表されるポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合して前記制御性T細胞の機能を調節し、エフェクターT細胞の活性を調節する過程により多様な疾患を非常に効果的に治療することができる。
【0102】
本発明の前記「免疫関連疾患」は、自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、喘息、アトピー、および急性または慢性の炎症疾患からなる群より選択される少なくとも1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0103】
本発明の前記自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、アトピー皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、喘息、クローン病、ベーチェット病、シェーグレン症侯群、ギラン・バレー症侯群、慢性甲状腺炎、多発性硬化症、多発性筋炎、強直性脊椎炎、線維組織炎および結節性多発性動脈炎から構成された群より選択される少なくとも1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0104】
本発明で提供する組成物が予防、改善または治療するための「脳神経系疾患」は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患であってもよい。
【0105】
本発明の前記「神経退行性疾患」および「神経炎症性疾患」は、脳卒中、認知症、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、筋萎縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、傍腫瘍性神経症候群(Paraneoplastic syndrome)、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経因性疼痛、脳血管疾患、脊髄損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー(tauopathy)からなる群より選択できるが、これに限定されるものではない。
【0106】
本発明のさらに他の実施形態によれば、抗原特異的結合ドメイン、連結ドメインおよびCD3ゼータ(ζ)シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor:CAR)を有効成分として含む免疫関連疾患または脳神経系疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0107】
本発明において、用語「キメラ抗原受容体」または「CAR」とは、細胞外抗原結合ド
メインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む操作された受容体を意味する。CARの最もありふれた類型がCD3ゼータ(ζ)鎖のようなT細胞同時受容体の膜通過および細胞内ドメインに融合された単クローン抗体に由来する単鎖可変断片(scFv)を含むが、本明細書に記載の本発明は、これらのドメインに限定されない。むしろ、本明細書に使用されているような「キメラ抗原受容体」または「CAR」は、任意の細胞内シグナル伝達分子を発現するように操作された任意の受容体およびこれらに融合または連結された細胞外抗原結合ドメインを意味する。本発明において、前記結合ドメインは、Lrig-1タンパク質を特異的に認識可能な単鎖可変断片(scFv)を含むことができる。本発明において、前記「単鎖可変断片」または「scFv」とは、VLとVHとの間のペプチドリンカーによる、抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)の融合タンパク質を意味する。
【0108】
また、本発明において、前記VHドメインとVLドメインは、可撓性リンカーを介して連結可能である。本発明において、前記可撓性リンカーは、約10個~30個のアミノ酸(例えば、30個、25個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個または5個のアミノ酸)のグリシン/セリンリンカーであってもよく、好ましくは、15個のアミノ酸長であってもよい。本発明において、前記リンカーの長さは、キメラ抗原受容体の重要な決定部位として作用可能で、前記範囲よりも短いリンカーは、親和度を増大させることができるが、また、細胞内多量体の形成を発生させてCARの発現を損傷させることがある。これに対し、前記範囲よりも長いリンカーは、VLおよびVH CDRを空間上より遠く移動させることにより抗原親和度を減少させることがある。
【0109】
本発明のキメラ抗原受容体は、ヒンジ領域(またはスペーサ)およびシグナル伝達ドメインの少なくとも1つをさらに含むことができる。本発明において、前記ヒンジ領域は、抗原結合ドメインと膜通過ドメインとを連結する部分で、「スペーサ」とも呼ばれるが、T細胞膜またはNK細胞膜から抗原結合ドメインを拡張するための目的を有する。本発明において、前記ヒンジ領域は、例えば、ヒトまたはその一部を含む任意の属からの任意の好適な配列から得られてもよいし、あるいは本技術分野で通常使用するCD8、CD28、4-1BB、OX40、CD3ゼータ(ζ)鎖の全部または一部、T細胞受容体αまたはβ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、これらの機能的誘導体、またはこれらの組み合わせを含むヒトタンパク質のヒンジ領域を含むことができるが、これに限定されるものではない。また、本発明において、前記ヒンジ領域は、免疫グロブリンに制限することなく免疫グロブリン(例:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgD)から選択される1つを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0110】
本発明において、前記シグナル伝達ドメインは、T細胞の内部で発見されたり発見されるように操作されたキメラ抗原受容体の部分を意味する。本発明において、前記シグナル伝達ドメインは、T細胞の血漿膜でキメラ抗原受容体を固定する役割を果たす膜通過ドメインを含むか、含まなくてもよい。本発明において、前記膜通過ドメインと前記シグナル伝達ドメインは、同一のタンパク質(例えば、CD3ゼータ(ζ)分子)に由来することができ、あるいは前記膜通過ドメインと前記シグナル伝達ドメインは、異なるタンパク質(例えば、CD28の膜貫通ドメインおよびCD3ゼータ(ζ)分子の細胞内シグナル伝達ドメイン、またはその反対)に由来することができる。
【0111】
本発明において、前記膜通過ドメインとしては、例えば、T細胞受容体αまたはβ鎖、CD3ゼータ(ζ)鎖の全部または一部、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、
CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、これらの機能的誘導体、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されるものではない。本発明において、前記補助刺激ドメインは、4-1BB(CD137);OX40;CD27;CD28;CD30;CD40;PD-1;CD2;CD7;CD258;ナチュラルキラーグループ2メンバーC(NKG2C);ナチュラルキラーグループ2メンバー(NKG2D);B7-H3;CD83;ICAM-1;LFA-1(CD11a/CD18)またはICOSに結合するリガンド;これらの活性断片;これらの機能誘導体;またはこれらの組み合わせを含むポリペプチドに由来した機能シグナル伝達ドメインを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0112】
本発明において、前記シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ(ζ)の全部または一部、共通FcRガンマ(FcER1G)、FcガンマRIIIa、FcRベータ(Fcイプシロンリップ)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DNAX-活性化タンパク質10(DAP10)、DNAX-活性化タンパク質12(DAP12)、その活性断片、その機能的誘導体、またはこれらの組み合わせを含むポリペプチドに由来した機能シグナル伝達ドメインを含むことができるが、これに限定されるものではなく、このようなシグナル伝達ドメインは、当業界で公知である。
【0113】
本発明の前記「免疫関連疾患」は、自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、喘息、アトピー、および急性または慢性の炎症疾患からなる群より選択される少なくとも1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0114】
本発明の前記自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、アトピー皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、喘息、クローン病、ベーチェット病、シェーグレン症侯群、ギラン・バレー症侯群、慢性甲状腺炎、多発性硬化症、多発性筋炎、強直性脊椎炎、線維組織炎および結節性多発性動脈炎から構成された群より選択される少なくとも1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0115】
本発明で提供する組成物が予防、改善または治療するための「脳神経系疾患」は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患であってもよい。
【0116】
本発明の前記「神経退行性疾患」および「神経炎症性疾患」は、脳卒中、認知症、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、筋萎縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、傍腫瘍性神経症候群(Paraneoplastic syndrome)、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経因性疼痛、脳血管疾患、脊髄損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー(tauopathy)からなる群より選択できるが、これに限定されるものではない。
【0117】
一方、本発明において、「予防」は、本発明の薬学組成物を用いて疾患の症状を遮断したり、その症状を抑制または遅延させるすべての行為であれば制限なく含むことができる。
【0118】
また、本発明において、「治療」は、本発明の薬学組成物を用いて疾患の症状が好転したり、有利になるすべての行為であれば制限なく含むことができる。
【0119】
本発明において、前記薬学組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟膏剤、粉末または飲料形態であることを特徴とし、前記薬学組成物は、ヒトを対象にすることを特徴とすることができる。
【0120】
本発明において、前記薬学組成物はこれらに限定されるものではないが、それぞれ通常の方法により、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用可能である。本発明の薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学組成物の剤形は、上述のような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造可能である。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウエハーなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0121】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などを追加的に含むことができる。
【0122】
本発明において、前記薬学組成物の投与経路はこれらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投下が好ましい。
【0123】
本発明において、前記「非経口」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学組成物はさらに、直腸投与のための坐剤の形態で投与されてもよい。
【0124】
本発明の前記薬学組成物は、使用された特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療される特定の疾患の重度を含む様々な要因によって多様に変化可能であり、前記薬学組成物の投与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選択可能であり、1日0.0001~50mg/kgまたは0.001~50mg/kgで投与することができる。投与は、1日に1回投与してもよく、数回分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。本発明による医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤に剤形化可能である。
【0125】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明による結合分子;または抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC);またはキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor:CAR)を薬学的有効量で個体に投与するステップを含む、例えば、免疫関連疾患;または脳神経系疾患の予防または治療方法に関する。
【0126】
本発明の前記「免疫関連疾患」は、自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、喘息、アトピー、および急性または慢性の炎症疾患からなる群より選択される少なくとも1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0127】
本発明の前記自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、アトピー皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、喘息、クローン病、ベーチェット病、シェーグレン症侯群、ギラン・バレー症侯群、慢性甲状腺炎、多発性硬化症、多発性筋炎、強直性脊椎炎、線維組織炎および結節性多発性動脈炎から構成された群より選択される少なくとも1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0128】
本発明で提供する組成物が予防、改善または治療するための「脳神経系疾患」は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患であってもよい。
【0129】
本発明の前記「神経退行性疾患」および「神経炎症性疾患」は、脳卒中、認知症、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、筋萎縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、傍腫瘍性神経症候群(Paraneoplastic syndrome)、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経因性疼痛、脳血管疾患、脊髄損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー(tauopathy)からなる群より選択できるが、これに限定されるものではない。
【0130】
本発明の抗体または抗原結合断片;および抗体-薬物結合体は、配列番号35~45のいずれか1つのアミノ酸配列で表されるポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合して前記制御性T細胞の機能を調節し、エフェクターT細胞の活性を調節することにより、多様な疾患を非常に効果的に治療することができる。
【0131】
本発明において、前記「個体」は、免疫関連疾患または脳神経系疾患の発病が疑われる個体であって、前記免疫関連疾患または脳神経系疾患発病の疑われる個体は、当該疾患が発病したか、発病しうるヒトを含むネズミ、家畜などを含む哺乳動物を意味するが、本発明の抗体、抗原結合断片または抗体-薬物結合体で治療可能な個体は制限なく含まれる。
【0132】
本発明の方法は、抗体または抗体-薬物結合体を薬学的有効量で投与することを含むことができる。好適な計1日の使用量は、正しい医学的判断範囲内で処置医師によって決定可能であり、1回または数回に分けて投与することができる。しかし、本発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって他の製剤が使用されるか否かをはじめとする、具体的組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路および組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物とともに使用されるか、同時使用される薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野でよく知られた類似因子によって異なって適用することが好ましい。
【0133】
一方、これに限定されないが、前記疾患の予防または治療方法は、1つ以上の疾患に対する治療的活性を有する化合物または物質を投与することをさらに含む併用療法であってもよい。
【0134】
本発明において、前記「併用」は、同時、個別または順次投与を示すことが理解されなければならない。前記投与が順次または個別的な場合、二次成分投与の間隔は、前記併用の有利な効果を失わないようにするものでなければならない。
【0135】
本発明において、前記抗体または抗体-薬物結合体の投与用量は、患者の体重1kgあたり約0.0001μg~500mgであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0136】
本発明では、GTC210-01、GTC210-02、GTC210-03、GTC210-04、GTC110-01、GTC110-02、GTC110-03、GTC110-03マウス抗体、GTC110-03ヒト化抗体が結合できる部位であるエピトープを発掘するために、コバレントラベリングMS(Covalent Labelling MS;CL-MS)、クロスリンキングMS(Cross-linking MS、XL-MS)実験を進行させて、2つの実験で配列が一致するか、外部に露出している部分(labeling(%)が50%以上)などがLrig-1タンパク質のエピトープとしてスクリーニングすることができた。
【0137】
本発明のスクリーニング方法で用いられるタンパク質は、細胞表面に展示(displaying)されている形態、ウイルス(例えば、バクテリオファージ)表面に展示されている形態、分離された(isolated)形態または精製された(purified)形態であってもよい。細胞表面またはウイルス表面に展示されているタンパク質を用いる場合、スクリーニングの迅速化または自動化のために、前記細胞またはウイルスは固相の基質に固定化させることが好ましい。また、分離された(isolated)または精製された(purified)形態のタンパク質も固相の基質に固定化させることが好ましい。基質として利用可能なものは、当業界で通常用いられるいかなるものでも可能であり、例えば、ポリスチレンとポリプロピレンのような炭化水素ポリマー、ガラス、金属およびゲルを含むが、これに限定されない。固相の基質は、ディップスティック、マイクロタイタープレート、粒子(例えば、ビーズ)、親和性カラムおよび免疫ブロット膜(例えば、ポリビニリデンフルオライド膜)の形態で提供される。最も好ましくは、前記固相の基質は、マイクロタイタープレートである。
【0138】
本発明のスクリーニング方法は、多様な方式で実施することができ、特に当業界で公知の多様な結合分析(binding assay)によって高速(high throughput)方式で実施することができる。
【0139】
本発明のスクリーニング方法において、試験物質または前記タンパク質は、検出可能な標識(detectable label)でラベリングされる。例えば、前記検出可能な標識(detectable label)は、化学的標識(例えば、ビオチン)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリンホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-グルコキシダーゼ)、放射能標識(例えば、C14、I125、P32およびS35)、蛍光標識[例えば、クマリン、フルオレセイン、FITC(fluoresein Isothiocyanate)、ローダミン6G(rhodamine 6G)、ローダミンB(rhodamine B)、TAMRA(6-carboxy-tetramethyl-rhodamine)、Cy-3、Cy-5、Texas Red、Alexa Fluor、DAPI(4,6-diamidino-2phenylindole)、HEX、TET、DabsylおよびFAM]、発光標識、化学発光(chemiluminescent)標識、FRET(fluorescence resonance energy transfer)標識または金属標識(例えば、金および銀)である。
【0140】
検出可能な標識がラベリングされたタンパク質または試験物質を用いる場合、タンパク質と試験物質との間の結合発生の有無は、標識から出るシグナルを検出して分析することができる。例えば、標識としてアルカリンホスファターゼが用いられる場合には、ブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、ナフトール-AS-B1-ホスフェート(naphthol-AS-B1-phosphate)およびECF(enhanced chemifluorescence)のような発色反応基質を用いてシグナルを検出する。標識としてホースラディッシュペルオキシダーゼが用いられる場合には、クロロナフトール、アミノエチルカルバゾール、ジアミノベンジジン、D-ルシフェリン、ルシゲニン(ビス-N-メチルアクリジニウムニトレート)、レゾルフィンベンジルエーテル、ルミノール、アンプレックスレッド試薬(10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン)、HYR(p-phenylenediamine-HCl and pyrocatechol)、TMB(tetramethylbenzidine)、ABTS(2,2’-Azine-di[3-ethylbenzthiazoline sulfonate])、o-フェニレンジアミン(OPD)およびナフトール/ピロニンのような基質を用いてシグナルを検出する。
【0141】
本発明の一具体例では、Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープであって、配列番号35~配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープを提供する。
【0142】
本発明の他の具体例では、ポリペプチドは、配列番号38または44で表されるアミノ酸配列からなる、エピトープを提供する。
【0143】
本発明の他の具体例では、ポリペプチドは、配列番号35~37、39~43、および45で表されるアミノ酸配列からなる、エピトープを提供する。
【0144】
本発明の他の具体例では、前記エピトープをコードする核酸分子を提供する。
【0145】
本発明の他の具体例では、前記核酸分子が挿入された発現ベクターを提供する。
【0146】
本発明の他の具体例では、発現ベクターが形質感染した宿主細胞株を提供する。
【0147】
本発明の一具体例では、配列番号35~配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する結合分子を提供する。
【0148】
本発明の他の具体例では、前記結合分子は、抗体またはその断片である、結合分子を提供する。
【0149】
本発明の他の具体例では、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体(humanized
antibody)、二価(bivalent)、両特異性分子、ミニボディ(minibody)、ドメイン抗体、二重特異的抗体(bispecific antibody)、抗体模倣体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)またはその断片である、結合分子を提供する。
【0150】
本発明の一具体例では、抗原特異的結合ドメイン、連結ドメインおよびCD3ゼータ(ζ)シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)において、前記抗原特異的結合ドメインは、配列番号35~配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプ
チドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する抗原特異的結合ドメイン;および免疫グロブリン(immunoglobulin)Fc領域を含む融合タンパク質であるキメラ抗原受容体を提供する。
【0151】
本発明の他の具体例では、前記結合分子および薬物を含む抗体-薬物結合体を提供する。
【0152】
本発明の他の具体例では、前記結合分子、キメラ抗原受容体、抗体-薬物結合体のいずれか1つを有効成分として含む免疫関連疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0153】
本発明の他の具体例では、前記免疫関連疾患は、自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、喘息、アトピー、および急性または慢性の炎症疾患からなる群より選択される少なくとも1つである、免疫関連疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0154】
本発明の他の具体例では、前記結合分子、前記キメラ抗原受容体、前記抗体-薬物結合体のいずれか1つを有効成分として含む脳神経系疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0155】
本発明の他の具体例では、前記脳神経系疾患は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患である、薬学組成物を提供する。
【0156】
本発明の他の具体例では、前記神経退行性疾患または神経炎症性疾患は、脳卒中、認知症、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、筋萎縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、傍腫瘍性神経症候群(Paraneoplastic syndrome)、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経因性疼痛、脳血管疾患、脊髄損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー(tauopathy)からなる群より選択される少なくとも1つである、神経退行性疾患または神経炎症性疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0157】
本発明の他の具体例では、次のステップを含むLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質エピトープのスクリーニング方法を提供する。(a)配列番号17のアミノ酸配列で表される重鎖領域、配列番号18のアミノ酸配列で表される軽鎖領域を含む抗体を製造するステップ、または配列番号19のアミノ酸配列で表される重鎖領域、配列番号20のアミノ酸配列で表される軽鎖領域を含む抗体を製造するステップ、または配列番号21のアミノ酸配列で表される重鎖領域、配列番号22のアミノ酸配列で表される軽鎖領域を含む抗体を製造するステップ、または配列番号23のアミノ酸配列で表される重鎖領域、配列番号24のアミノ酸配列で表される軽鎖領域を含む抗体を製造するステップ、または配列番号25のアミノ酸配列で表される重鎖領域、配列番号26のアミノ酸配列で表される軽鎖領域を含む抗体を製造するステップ、または配列番号27のアミノ酸配列で表される重鎖領域、配列番号28のアミノ酸配列で表される軽鎖領域を含む抗体を製造するステップ、または配列番号29のアミノ酸配列で表される重鎖領域、配列番号30のアミノ酸配列で表される軽鎖領域を含む抗体を製造するステップ、または配列番号31のアミノ酸配列で表
される重鎖領域、配列番号32のアミノ酸配列で表される軽鎖領域を含む抗体を製造するステップ、または配列番号33のアミノ酸配列で表される重鎖領域、配列番号34のアミノ酸配列で表される軽鎖領域を含む抗体を製造するステップと、(b)前記抗体を用いてコバレントラベリングMS(Covalent Labelling MS;CL-MS)またはクロスリンキングMS(Cross-linking MS、XL-MS)実験によりLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質エピトープをスクリーニングする方法を提供する。
【0158】
本発明の他の具体例では、前記抗体を用いてLrig-1タンパク質のエピトープをスクリーニングする方法を提供する。
【0159】
本発明の他の具体例では、前記エピトープを用いて抗体またはその断片である結合分子をスクリーニングする方法を提供する。
【0160】
本発明の他の具体例では、前記エピトープと抗体またはその断片である結合分子を結合する方法を提供する。
【0161】
本発明のさらに他の具体例では、Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片である結合分子であって、
【0162】
(a)前記結合分子の重鎖可変領域(VH)は、次を含む結合分子の重鎖可変領域(VH):配列番号46、52、58、64、70、76、82および88で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VH)CDR1;配列番号47、53、59、65、71、77、83および89で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VH)CDR2;および配列番号48、54、60、66、72、78、84および90で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VH)CDR3;および
【0163】
(b)前記結合分子の軽鎖可変領域(VL)は、次を含む結合分子の軽鎖可変領域(VL):配列番号49、55、61、67、73、79、85および91で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VL)CDR1;配列番号50、56、62、68、74、80、86および92で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VL)CDR2;および配列番号51、57、63、69、75、81、87および93で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VL)CDR3;であり、
【0164】
前記結合分子は、配列番号35~配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する結合分子を提供する。
【発明の効果】
【0165】
本発明によるLrig-1タンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、制御性T細胞上に存在する本発明のエピトープに特異的に結合して前記制御性T細胞の機能を抑制し、エフェクターT細胞の活性は維持あるいは上昇させて、多様な疾患の予防、改善または治療に非常に効率的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【
図1】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の構造を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の構造を示す図である。
【
図3】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
【
図6】本発明の一実施例によるLrig-1、Lrig-2およびLrig-3 mRNAの発現程度を示す図である。
【
図7】本発明の一実施例による制御性T細胞と非制御性T細胞内Lrig-1タンパク質の発現量の比較結果を示す図である。
【
図8】本発明の一実施例による制御性T細胞の表面にLrig-1タンパク質の発現を示す図である。
【
図9】本発明の一実施例において、抗体(GTC210-01、GTC210-02、GTC210-03、GTC210-04、GTC110-01、GTC110-02、GTC110-03およびGTC110-04)とLrig-1タンパク質に対する結合力を分析した結果を示す図である。
【
図10】本発明の一実施例において、Lrig-1タンパク質に特異的な単クローン抗体(GTC210-01、GTC210-02、GTC210-03、GTC210-04、GTC110-01、GTC110-02、GTC110-03およびGTC110-04)と制御性T細胞内でLrig-1タンパク質誘導Stat3リン酸化調節機序を分析した結果を示す図である。
【
図11】本発明の一実施例による炎症性腸疾患動物モデルに本発明による単クローン抗体を腹腔内注射した後、体重減少を確認した結果を示す図である。
【
図12】本発明の一実施例による多発性硬化症動物モデルを作製するための実験設計図を示す図である。
【
図13】本発明の一実施例による多発性硬化症動物モデルに本発明による単クローン抗体を注入し、治療効果評価点数をグラフに示す図である。
【
図14】本発明の一実施例による多発性硬化症動物モデルに本発明による単クローン抗体を注入し、治療効果評価点数をグラフに示す図である。
【
図15】本発明の一実施例による抗体を投与した場合、脱ミエリン化が目立って減少することを確認したことを示す図である。
【
図16】ヘルパーT細胞1(CD4
+T-bet
+)とヘルパーT細胞2は減少、ヘルパーT細胞17(CD4
+RoRγt
+)、制御性T細胞(CD4
+Foxp3
+)は増加し、各種炎症性サイトカイン(IFN-gamma、IL-17A)は減少し、抗炎症性サイトカイン(IL-10)は発現が増加することを示す図である。
【
図17】本発明の一実施例によるアルツハイマー動物モデルの各グループ(G1~G4)において、本発明による単クローン抗体の注入による治療効果をY字迷路試験により確認した結果を示す図である。
【
図18】本発明の一実施例によるアルツハイマー動物モデルの各グループ(G1~G4)において、本発明による単クローン抗体の注入による治療効果を新規物体認識試験により確認した結果を示す図である。
【
図19】本発明の一実施例によるアルツハイマー動物モデルの各グループ(G1~G4)において、本発明による単クローン抗体の注入による治療効果を手中迷路試験により確認した結果を示す図である。
【
図20】本発明の一実施例によるアルツハイマー動物モデルの各グループ(G1~G4)において、本発明による単クローン抗体の注入による治療効果を手中迷路試験により確認した結果を示す図である。
【
図21】本発明の一実施例によるプロテアーゼ(キモトリプシン)を処理して分解させたペプチドをコバレントラベリング分析により確認した結果を示す図である。
【
図22】本発明の一実施例によるプロテアーゼ(トリプシン)を処理して分解させたペプチドをコバレントラベリング分析により確認した結果を示す図である。
【
図23】本発明の一実施例によるプロテアーゼ(Asp-N/Lys-C)を処理して分解させたペプチドをコバレントラベリング分析により確認した結果を示す図である。
【
図24】本発明の一実施例によるそれぞれのプロテアーゼによって分解されたペプチドをコバレントラベリング分析により確認した配列を基準として整列して比較した結果を示す図である。
【
図25】本発明の一実施例によるそれぞれのプロテアーゼによって分解されたペプチドをコバレントラベリング分析により確認した配列を基準として整列して比較した結果を示す図である。
【
図26】本発明の一実施例によるプロテアーゼ(キモトリプシン)を処理して分解させたペプチドをクロスリンキング分析により確認した結果を示す図である。
【
図27】本発明の一実施例によるプロテアーゼ(トリプシン)を処理して分解させたペプチドをクロスリンキング分析により確認した結果を示す図である。
【
図28】本発明の一実施例によるそれぞれのプロテアーゼによって分解されたペプチドをクロスリンキング分析により確認した配列を基準として整列して比較した結果を示す図である。
【
図29】本発明の一実施例によるそれぞれのプロテアーゼによって分解されたペプチドをクロスリンキング分析により確認した配列を基準として整列して比較した結果を示す図である。
【
図30】本発明の一実施例によるコバレントラベリングおよびクロスリンキング分析により確認されたエピトープを整列して分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0167】
本発明は、制御性T細胞の表面に存在する抗原であるLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープとこれに特異的に結合する抗体または抗原結合断片に関する。
【0168】
本発明の一実施形態によれば、前記Lrig-1(leucine-rich and
immunoglobulin-like domains1)タンパク質のエピトープであって、配列番号38、39、41、42、44および45で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドから構成された群より選択されるエピトープを提供する。
【0169】
本発明の一実施形態によれば、配列番号35~配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する結合分子を提供する。
【0170】
本発明の一実施形態によれば、抗原特異的結合ドメイン、連結ドメインおよびCD3ゼータ(ζ)シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)において、前記抗原特異的結合ドメインは、配列番号35~配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する抗原特異的結合ドメイン;および免疫グロブリン(immunoglobulin)Fc領域を含む融合タンパク質であるキメラ抗原受容体を提供する。
【0171】
本発明の一実施形態によれば、前記Lrig-1(leucine-rich and
immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片である結合分子であって、
【0172】
(a)前記結合分子の重鎖可変領域(VH)は、次を含む結合分子の重鎖可変領域(VH):配列番号46、52、58、64、70、76、82および88で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VH)CDR1;配列番号47、53、59、65、71、77、83および89で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VH)CDR2;および配列番号48、54、60、66、72、78、84および90で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VH)CDR3;および
【0173】
(b)前記結合分子の軽鎖可変領域(VL)は、次を含む結合分子の軽鎖可変領域(VL):配列番号49、55、61、67、73、79、85および91で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VL)CDR1;配列番号50、56、62、68、74、80、86および92で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VL)CDR2;および配列番号51、57、63、69、75、81、87および93で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖可変領域(VL)CDR3;であり、
【0174】
前記結合分子は、配列番号35~配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから構成された群より選択される少なくともいずれか1つのポリペプチドを含むエピトープに特異的に結合する結合分子を提供する。
【実施例】
【0175】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0176】
実施例
【0177】
[準備例1]T細胞亜型細胞の培養
【0178】
制御性T細胞(Treg)でのみLrig-1タンパク質が発現するかを確認するために、T細胞の亜型(subset)であるTh0、Th1、Th2、Th17およびiTregを用意した。前記iTregは、自然的に分離したnTregとは異なり、下記の組成を含む培地で分化を人工的に誘導した細胞を意味する。
【0179】
T細胞の亜型はまず、マウスの脾臓から得たナイーブ(naive)T細胞を分離した後、ウシ胎児血清(FBS;hyclone、logan、UT)10%を含むRPMI1640(Invitrogen Gibco、Grand Island、NY)栄養培地に下記表1の成分をそれぞれさらに含むようにして、37℃、5%CO2培養器内で72時間培養によりそれぞれの細胞に分化誘導した。
【0180】
【0181】
[実施例1]Lrig-1構造の分析
【0182】
制御性T細胞の表面タンパク質であるLrig-1タンパク質に特異的な抗体を作製するために、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインの三次元立体構造を予測した。
【0183】
まず、抗原決定基(Epitope)の塩基配列予測のためにLrig-1タンパク質の細胞外ドメイン(Extracellular domain;ECD)の構造を確認するために、Uniprot(www.uniprot.org)とRCSB Protein Data Bank(www.rcsb.org/pdb)ツールを用いて三次元立体構造を予測した後、その結果を
図1および2に示した。
【0184】
図1に示すように、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインのうち、Lrig-LRRドメイン(アミノ酸配列41~494番)内にはLRR1~LRR15の計15個のロイシンリッチ部位(Leucine rich region)が存在した。前記LRRドメインそれぞれは23~27個のアミノ酸から構成され、ロイシンは3~5個が存在した。
【0185】
また、
図2に示すように、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインのうち、Lrig-1タンパク質のアミノ酸配列494~781番には免疫グロブリン様ドメイン(Immunoglobulin-like domain)が3個存在した。
【0186】
[実施例2]Lrig-1 mRNAの制御性T細胞での特異的発現の確認
【0187】
Lrig-1タンパク質が制御性T細胞に特異的なバイオマーカー(biomarker)として作用できるかを検証した。
【0188】
前記検証のために、マウスの脾臓からCD4ビーズにより磁石活性細胞分類機(magnet-activated cell sorting;MACS)を用いてCD4+T細胞を分離した。以後、CD25抗体を用いて、蛍光活性細胞分類機(FACS)を用いて制御性T(CD4+CD25+T)細胞および非制御性T(CD4+CD25-T)細胞を分離した。それぞれの細胞および前記準備例1で分化された細胞はトリゾール(Trizol)を用いてmRNAを抽出した後、ゲノミックRNAはgDNA抽出キット(Qiagen)を用いて、会社で提供したプロトコルによって、gDNAを除去した。gDNAの除去されたmRNAは、BDsprint cDNA合成キット(Clonetech)によりcDNAに合成した。
【0189】
前記cDNAでLrig-1 mRNAの発現量を定量的に確認するためにリアルタイム重合酵素連鎖反応(real time PCR)を行った。
【0190】
前記リアルタイム重合酵素連鎖反応は、SYBR Green(Molecular Probes)を用いて、会社で提供したプロトコルによって、95℃で3分、61℃で15秒、72℃で30秒ずつ、40サイクルの条件で、下記表2のプライマーを用いて行い、相対的な遺伝子発現量は△CT方法を用いて計算し、HPRTを用いて一般化(normalization)して、その結果を
図3~6に示した。
【0191】
【0192】
図3に示すように、非制御性T(CD4
+CD25
-T)細胞に比べて、制御性T(CD4
+CD25
+T)細胞でLrig-1の発現が18.1倍高いことが分かる。これは、従来知られている制御性T細胞のマーカーであるLag3およびIkzf4と比較した時、約10倍程度発現量が高い水準であった。また、
図4および5に示すように、他の種類の免疫細胞に比べて、制御性T細胞、特に誘導された制御性T細胞(iTreg)に比べて、自然的に分離した制御性T細胞(nTreg)でLrig-1 mRNAの発現が著しく高かった。
【0193】
また、
図6に示すように、Lrigファミリーに相当するLrig-1、Lrig-2およびLrig-3の中でLrig-1の発現が最も高かった。
【0194】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞、特に自然的に存在する制御性T細胞で特異的に発現することが分かる。
【0195】
[実施例3]Lrig-1タンパク質の制御性T細胞での特異的発現の確認
【0196】
Lrig-1 mRNAから発現したLrig-1タンパク質が制御性T細胞でのみ特異的に発現するかを確認した。
【0197】
制御性T細胞特異的な転写因子であるFOXP3プロモーターにRFP(Red fluorescence protein)が結合したFOXP3-RFP注入(Knock-in)マウスを用いて、前記マウスの脾臓から、CD4ビーズで磁石活性細胞分類機(magnet-activated cell sorting;MACS)を用いてCD4
+T細胞を分離した。以後、RFPタンパク質を用いて、蛍光活性細胞分類機(FACS)により制御性T(CD4
+RFP
+T)細胞および非制御性T(CD4
+RFP
-T)細胞を分離して得た。それぞれの前記細胞は購入したLrig-1抗体および陰性対照群はアイソタイプ(isotype)により染色して蛍光活性細胞分類機でLrig-1の発現量を測定して、その結果を
図7に示した。
【0198】
図7に示すように、点線で表される非制御性T細胞の場合、陰性対照群とほぼ同じLrig-1の発現レベルを見せたが、制御性T細胞の場合、Lrig-1の発現レベルの高い細胞が多数存在した。
【0199】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞で特異的に発現することが分かる。
【0200】
[実施例4]制御性T細胞表面でのLrig-1タンパク質特異的発現の確認
【0201】
Lrig-1タンパク質が細胞治療のターゲットになるためには、制御性T細胞の表面に発現してこそさらに効果的にターゲット治療が可能なため、Lrig-1タンパク質が表面で発現するか否かを確認した。
【0202】
前記準備例1のそれぞれの分化されたT細胞の亜型を抗-CD4-APCおよび抗Lrig-1-PE抗体で染色し、蛍光活性細胞分類機(Fluorescence-Activated Cell Sorter;FACS)を用いてそれぞれの細胞表面でLrig-1の発現量を測定して、その結果を
図8に示した。
【0203】
図8に示すように、活性化されたT細胞(activated T cell)、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞およびナイーブ(Naive)T細胞ではLrig-1の発現が0.77~15.3の量で発現するのに対し、分化が誘導されたT細胞(iTreg)では83.9と高く発現した。
【0204】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞(Treg)細胞で特異的に発現するだけでなく、特に制御性T細胞の表面でさらに高く発現することが分かる。
【0205】
[製造例1~8]Lrig-1タンパク質に特異的な単クローン抗体の作製
【0206】
本発明によるLrig-1タンパク質に特異的な抗体を作製した。本抗体は特定の抗原決定基を決めて生産するのではなく、Lrig-1タンパク質にどの部位でも結合できる抗体を生産した。
【0207】
前記抗体を作製するために、Lrig-1タンパク質が発現する細胞を作製した。より詳しくは、配列番号2に相当するDNA断片およびpcDNA(hygro)を切断酵素で切断した後、37℃で培養してライゲーション(Lrigation)して、Lrig-1タンパク質のDNA配列が挿入(insert)されているpcDNAを作製した。前記作製された配列番号2が挿入されたpcDNAは、L細胞に形質注入(transfection)により導入されてL細胞の表面にLrig-1タンパク質が発現できるようにした。
【0208】
前記細胞表面に発現するLrig-1に結合できる軽鎖(Light chain)および重鎖(heavy chain)のアミノ酸配列をHuman scFv libraryから選別して、計8個の重鎖および軽鎖を選別した。
【0209】
前記選別された重鎖および軽鎖のアミノ酸配列をmlgG2a Fc領域またはヒトIgG1 Fc領域と融合して単クローン抗体(monoclonal antibody)を作製した。前記単クローン抗体の配列は、下記表3の通りである。
【0210】
【0211】
【0212】
[実施例5]本発明による抗体のLrig-1タンパク質に対する結合能評価
【0213】
本発明による単クローン抗体である製造例1~製造例9がLrig-1をよく認識するかを確認するために、Lrig-1を安定して発現するL細胞に前記製造例1~9の抗体それぞれを結合させた後、マウス抗体を認識できかつ、eFlour670がコンジュゲーション(conjugation)された二次抗体(secondary antib
ody)を入れた後、FACSを用いて前記製造例のLrig-1タンパク質に対する結合力を分析して、その結果を
図9に示した。
【0214】
図9に示すように、本発明によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体ともL細胞の表面に存在するLrig-1タンパク質を効果的に認識して結合したことを確認することができた。
【0215】
[実施例6]本発明による抗体の許容可能なCDRの変化
【0216】
各CDRにおいてそれぞれのアミノ酸位置の役割を調べるために、製造例1~9のLrig-1タンパク質に特異的に結合する抗体のCDRをGTC210-03を基準として並べて分析した。
【0217】
許容可能な抗体のCDRの変化を分析した結果、対照群と比較して、Lrig-1のエピトープに特異的に結合し、制御性T細胞内シグナル伝達経路を調節し、免疫関連疾患に効果がある抗体の許容可能なCDRの変化を表4にまとめており、その具体的な配列を表5に示した。
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
[実施例7]本発明による抗体の制御性T細胞内シグナル伝達経路の調節
【0222】
本発明による単クローン抗体である製造例1~製造例9がLrig-1タンパク質により制御性T細胞内のシグナル伝達経路にどのような影響を及ぼすかを分析するために、前記製造例1~9に相当する単クローン抗体を制御性T細胞に処理して前記制御性T細胞の表面に存在するLrig-1を刺激した後、ホスホチロシン免疫ブロット(phosphotyrosine immunoblot)により刺激を受けた制御性T細胞内に存在するStat3タンパク質のチロシンリン酸化(tyrosine phosphorylation)程度を分析し、その結果を
図10に示した。
【0223】
図10に示すように、本発明によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体(GTC210-01、GTC210-02、GTC210-03およびGTC210-04)は、Stat3のリン酸化(phosphorylation)をTh17細胞と同じ水準に増加させることを確認することができた。一方、本発明によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体(GTC110-01、GTC110-02、GTC110-03およびGTC110-04)は、Stat3のリン酸化(phosphorylation)をiTreg細胞と同じ水準に引き続き維持および減少させることを確認することができた。
【0224】
[実施例8]製造例1~4の治療効果の確認
【0225】
[8-1]免疫関連疾患の治療効果の確認
【0226】
本発明による単クローン抗体である製造例1~4の自己免疫疾患に対する治療効果を確認するために、RAG-1
-/-マウスにCD45RB(high)細胞を養子移植(adoptive transfer)して自己免疫疾患である炎症性腸疾患(infla
mmatory bowel disease、IBD)を誘導した後、前記製造例1~4の抗体を200μg/mouseの量で腹腔内注射した後、自己免疫疾患の治療効果を分析して、その結果を
図11に示した。
【0227】
図11に示すように、本発明によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体(GTC210-01、GTC210-02、GTC210-03およびGTC210-04)は、炎症性腸疾患誘導マウスにおいて体重減少効果を著しく阻害することを確認することができた。
【0228】
これにより、本発明によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体は、多様な免疫細胞および炎症細胞の過度の活性化および発現によって誘導される自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、喘息、アトピー、または急性または慢性の炎症疾患などの免疫関連疾患を効果的に予防、改善または治療可能であることが分かる。
【0229】
[8-2]多発性硬化症治療効果の確認
【0230】
1.GTC210-01抗体の多発性硬化症治療効果の確認
【0231】
多発性硬化症マウスモデルを作製するために、
図12に示した実験設計図によって実験を行った。0日目に7週齢C57BL/6マウスにMOGペプチドを皮下注射し、結核菌毒素を腹腔内に注射した。2日目にマウスの免疫システムを増強するために、結核菌毒素をもう一度注射した。9日目にマウスに製造例1で作製されたGTC210-01抗体を投与し、陽性対照群としては抗-IL-17a抗体を投与した。
【0232】
その後、7日目から以下の評価基準により臨床的点数を計算してマウスの多発性硬化症治療効果を評価し、その結果を
図13に示した。
【0233】
<評価基準>
0点:何ら症状がなく、正常に動く
1点:尾端部分の一部がマヒして下へ垂れ下がっている
2点:尾全体がマヒして尾全体が垂れ下がっている
3点:後肢の一方が一部マヒしたものの、刺激に反応できる
4点:後肢の一方が完全にマヒして刺激に反応せず、肢を引きずっている
5点:後肢が全部マヒして前肢で体を引きずっている
6点:前肢で体を引きずりにくくなったものの、まだ前肢は刺激に反応がある
7点:マウスが動かないものの、一方の前肢は刺激に反応がある
8点:マウスが動かず、両前肢とも刺激に反応がない
9点:マウスが動かず、呼吸が不規則
10点:マウスが死ぬ
【0234】
図13に示すように、多発性硬化症誘導モデルに本発明による抗体を投与した場合、多発性硬化症が著しく治療されることを確認することができ、特に22日および23日目には正常マウスと類似水準に回復することを確認することができた。
【0235】
2.GTC210-03抗体の多発性硬化症治療効果の確認
【0236】
多発性硬化症マウスモデルを作製するために、
図12に示した実験設計図によって実験を行った。0日目に7週齢C57BL/6マウスにMOGペプチドを皮下注射し、結核菌毒素を腹腔内に注射した。2日目にマウスの免疫システムを増強するために、結核菌毒素をもう一度注射した。次に、2、4、6日目にマウスに製造例3で作製されたGTC21
0-03抗体5mg/kgの濃度で投与した。
【0237】
その後、10日目から以下の評価基準により臨床的点数を計算してマウスの多発性硬化症治療効果を評価し、その結果を
図14に示した。
【0238】
<評価基準>
0点:何ら症状がなく、正常に動く
1点:尾端部分の一部がマヒして下へ垂れ下がっている
2点:尾全体がマヒして尾全体が垂れ下がっている
3点:後肢の一方が一部マヒしたものの、刺激に反応できる
4点:後肢の一方が完全にマヒして刺激に反応せず、肢を引きずっている
5点:後肢が全部マヒして前肢で体を引きずっている
6点:前肢で体を引きずりにくくなったものの、まだ前肢は刺激に反応がある
7点:マウスが動かないものの、一方の前肢は刺激に反応がある
8点:マウスが動かず、両前肢とも刺激に反応がない
9点:マウスが動かず、呼吸が不規則
10点:マウスが死ぬ
【0239】
図14に示すように、多発性硬化症誘導モデルに本発明による抗体を投与した場合、多発性硬化症が著しく治療されることを確認することができ、特にますます状態が悪くなる陽性対照群とは異なり、製造例3のGTC210-03抗体を投与した場合、約18日頃から好転し始めることが分かった。
【0240】
3.GTC210-03抗体の脱ミエリン化(demyelination)減少の確認
【0241】
前記製造例3のGTC210-03抗体投与の場合、脱ミエリン化が減少するかを確認するために、免疫組織化学的分析(Immunohistochemical Analysis)方法によりこれを検証した。疾患誘導後、最もマウスの状態が良くない21日目にマウスの脊髄を得て、ミエリンの破壊程度と炎症細胞の侵入程度を確認した。
【0242】
まず、H&E染色のためにPBS洗浄により赤血球が除去された動物モデルの肺と気管支を24時間ホルムアルデヒドに保管した後、パラフィン組織セクションを作製した。次に、染色薬をキシレン(xylene)に入れて脱パラフィン(deparaffin)をした後、100%アルコールを用いてキシレン(xylene)を除去した後に、マウスの神経組織に対してヘマトキシリン(Hematoxylin stain)染色を行った後、鑑別脱色(differentiator)をした。以後、ブルーイング(Blueing)をした後、エオシン(Eosin stain)染色をして対照染色した。また、ミエリンの破壊程度を確認するために、ルクソールファストブルー(Luxol Fast Blue)染色剤を使用した。これはミエリン部位を染色する染色剤で疾患が多く進んだ場合、染色がまともに行われない。具体的には、ルクソールファストブルー(Luxol Fast Blue)もキシレン(xylene)に入れて脱パラフィン(deparaffin)をした後、100%アルコールを用いてキシレン(xylene)を除去した後に、マウスの神経組織に対してルクソールファストブルー(Luxol Fast Blue)で60℃で16~24時間染色した後、鑑別脱色(differentiator)をした後、その結果を
図15に示した。
【0243】
その結果、
図15にてそれぞれH&E染色とルクソール染色(Luxol fast bule)の結果、対照群に比べて前記製造例3のGTC210-03抗体を投与した場合、脱ミエリン化が目立って減少することを確認することができた。
【0244】
4.EAE(Experimental autoimmune encephalomyelitis)マウス疾病モデルにおける炎症反応減少の確認
【0245】
免疫関連疾患、すなわち自己免疫疾患における炎症反応の減少を確認するために、代表的な動物モデルである自己免疫脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis、以下、EAE)マウス疾病モデルを使用した。前記製造例3のGTC210-03抗体を投与して治療されたマウスの脾臓細胞を分離し、CD4 T細胞を再活性化させた。この場合、マウスの体内ですでに抗原に露出したため、体外で再度刺激を与えるとより強い活性が起きて、分化を終えたCD4 T細胞が各自の代表サイトカインを分泌する。マウスの場合、疾患誘導後10日目になる日に細胞を得て、40μg/mlのMOGペプチドで48時間再活性化させた。以後、培養液に存在するサイトカインの量をELISAにより確認した。
【0246】
その結果、
図16に示すように、前記製造例3のGTC210-03抗体を投与した場合、ヘルパーT細胞1(CD4
+T-bet
+)と、ヘルパーT細胞17(CD4
+RoRγt
+)は減少し、制御性T細胞(CD4
+Foxp3
+)は増加し、各種炎症性サイトカイン(IFN-gamma、IL-17A)は減少し、抗炎症性サイトカイン(IL-10)は発現が増加することを確認することができた。そのため、本願発明によるエピトープに特異的に結合する前記製造例3のGTC210-03抗体を投与した場合、「炎症性」サイトカインの発現を抑制するだけでなく、「抗炎症性」サイトカインであるIL-10の発現を増加させて、結局、炎症反応を抑制させることを確認することができた。
【0247】
[8-3]アルツハイマー治療効果の確認
【0248】
本発明による抗体のアルツハイマー治療能を評価するために、下記表6のように群を設計した。具体的には、7ヶ月になったアルツハイマー誘導5xFADマウス(認知および運動欠乏を伴ったアミロイド沈着、神経膠症および進行性神経損失を示すことが知られている)にGTC110-04マウス抗体とGTC210-01抗体をそれぞれ10mpkの量で1ヶ月間静脈に注射した。8ヶ月になったアルツハイマーマウスに陽性対照群としてグラチラマーアセテート(glatiramer acetate、GA、CopaxoneR)を100ugの量で3週間皮下注射した。
【0249】
【0250】
その後、前記グループのマウスでY字迷路試験(Y-maze test)、新規物体認識試験(Novel Object Recognition)および水中迷路試験(Water maze test)を行った。
【0251】
1.Y字迷路試験(Y-maze test)
【0252】
具体的には、Y字迷路試験の場合、40cmの長さ(壁の高さ15cm)の同じ3つの
アーム(arm)を120度の角度で配置して作った迷路フレームを用いた。この実験は齧歯類の本能的な探索習性を利用した行動実験であり、新しい領域を探索する可能性が高いことに着目した方法であった。すぐ前に探索したアーム(arm)を記憶して同じアーム(arm)に入らないほど高い記憶力の数値を示した。個体あたり8分の探索時間を提供し、最終結果は
図17に自発的交替(spontaneous alteration)(%)値で表現した。自発的交替(spontaneous alteration)(%)値は次の式1で計算した。ここで、行動パターンの分析はSMART VIDEO
TRACKING Software(Panlab、USA)を用いて実施して、その結果を
図17に示した。
【0253】
<式1>
Spontaneous alternation(%)=The number of
triplet/(total arm entry-2)
【0254】
図17に示すように、実験動物が周辺の手がかりを把握して順次に迷路に入る相対的頻度を測定した本実験において、アルツハイマー誘導マウスに本発明による抗体(GTC210-01およびGTC110-04抗体)を投与した場合、正常対照群と類似水準に自発的交替値を有することを確認することができた。
【0255】
2.新規物体認識試験(Novel Object Recognition)
【0256】
新規物体認識試験の場合、40cm×40cmのアクリルケージに異なる2つの物体を用いて記憶力を評価した。アクリルケージ内を慣れさせた後、2つの物体を一定の位置に位置させて自由に認知させた後、各物体を探索した時間を測定した。24時間の遅延時間を個体別に与え、再度同じ位置に1つの物体のみ他の物体に変更した。この時、変更した物体を新規物体として認識して探索時間が長いほど記憶力が良いと判断することができる。24時間前の物体を記憶できなければ新規物体と既存の物体を区分できず両物体とも均一に探索する可能性がある。計10分間自由に探索させ、結果は選好度数値(preference index=Novel object exploring time/total exploring time)で
図18に示した。この時、分析はSMART VIDEO TRACKING Software(Panlab、USA)を用いて実施した。
【0257】
図18に示すように、新規物体に対する選好度数値(Preference Index)において正常対照群(G1)は0.51±0.06、G2群(vehicle)は0.42±0.04と測定され、アルツハイマー誘導群(G2)は正常対照群(G1)に比べて選好度数値が低く観察された。ところが、本発明による抗体(GTC210-01およびGTC110-04抗体)を投与した場合、正常対照群以上に選好度数値が増加したことを確認することができた。
【0258】
3.水中迷路試験(Water maze test)
【0259】
水中迷路試験の場合、Morrisによって考案された方法に基づいて実施した。ステンレスプール(pool)(直径90cm、高さ50cm)に水(22±1℃)を満たして、水面の高さが30cmとなるようにした。隠れたプラットフォーム(platform)(直径5cm)は水面下1cmの地点に位置させた。評価初日に3回~4回の訓練を実施した。1個体あたりの全体泳ぎ時間は60秒に設定し、60秒以内にプラットフォームを探した個体は10秒間プラットフォーム上で滞在するようにして記憶を誘導した。60秒経過してもプラットフォームを探せなかった個体は人為的にプラットフォームに案内してプラットフォーム上で10秒間滞在するようにし、この時の脱出時間は60秒とした
。泳ぐ練習をさせた後、6日目にプローブテスト(probe test)を実施して、空間知覚能力として、プラットフォームのあった象限内の滞在時間を全体泳ぎ時間の比率で計算した値(Percentage of time in SW area、%)、プラットフォームのあった位置への到達時間(Latency to target、sec)を測定し、その結果は
図19および20に示した。この時、分析はSMART VIDEO TRACKING Software(Panlab、USA)を用いて実施した。結果の解析から除外させる基準は、泳ぎによる探索をせずに特定の部位のみ旋回する個体に設定した。
【0260】
図19および
図20に示すように、本発明による抗体(GTC210-01およびGTC110-04抗体)を投与した場合、プラットフォームのあった象限内の滞在時間を全体泳ぎ時間の比率で計算した値(Percentage of time in SW area、%)が著しく増加し、プラットフォームのあった位置への到達時間(Latency to target、sec)は正常対照群と類似水準に著しく減少したことを確認することができた。
【0261】
[実施例9]Lrig-1タンパク質のエピトープの確認
【0262】
Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインにおいて前記製造例3のGTC210-03抗体が結合できる部位の構造エピトープを発掘するために、下記の実験を行った。
【0263】
[9-1]試薬および材料
【0264】
CNBr活性化セファロース4B(CNBr-activated sepharoseTM 4B)(GE、17-0430-01)ジエチルピロカーボネート(Diehtylpyrocarbonate)(DEPC、Sigma、159220)イミダゾール(Imidazole)(Acros、301870010)
シーケンシンググレード修飾トリプシン(Sequencing grade modified trypsin)(promega、V5117)
キモトリプシン(Chymotrypsin)、Sequencing grade(Promega、V1062)
Asp-N、Sequencing grade(Promega、V1621)
rLyc-C、Mass spec grade(Promega、V1671)
disuccinimidyl dibutyric urea(DSBU;Thermo、A35459)
ジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide)(DMSO、Sigma、D5879)
炭酸水素ナトリウム(Sodium bicarbonate)(NaHCO3、Sigma、792519)
塩化ナトリウム(Sodium chloride)(NaCl、Sigma、S3014)
酢酸ナトリウム(Sodium acetate)(NaOAc、Sigma、S2889)
トリス(Tris)(GE、17-1321-01)、グリシン(Glycine)(GE、17-1323-01)
ProteaseMAXTM Surfactant、Trypsin Enhancer(Promega、V207A)
アセトン(Acetone)(Merck、1.07021.2521)
ジチオトレイトール(Dithiothreitol)(DTT;GE、17-1318-02)
ヨードアセトアミド(Iodoacetamide)(IAA;sigma、I-6125)
Sodium phosphate monobasic dihydrate(NaH2PO4、Sigma、71505)
Sodium phosphate dibasic hepta-hydrate(Na2HPO4、Sigma、S9390)
シリンジフィルタ(Syringe filter)0.2um(Sartorius stedim、16534)
アセトニトリル(Acetonitrile)、メタノール(Methanol)、水(HPLC grade、J.T baker)
ギ酸(Formic acid)(Sigma、33015)
【0265】
[9-2]実験方法
【0266】
[9-2-1]コバレントラベリングMS(Covalent Labelling MS;CL-MS)
【0267】
抗原および抗体の比率が2:1となるようにし、抗原サンプルを用意した。その後、DEPCが1%を超えないように添加した後に、37℃で1分間反応させ、イミダゾールを添加して反応を終了させた。以後、アセトンを添加して沈殿反応を行った後に、遠心分離により上澄液を除去し、0.1%のPMを用いて沈殿物をよく溶かした。このように溶かした沈殿物にトリプシン、キモトリプシンまたはAsp-N/Lys-Cを入れて分解する過程を経た後、PNGase-Fを用いてタンパク質に付いた糖鎖を除去した。最後に、DTTおよびIAAを用いてタンパク質のシステイン間に存在する二硫化結合を切断し、LC-MS、MS2分析を行った。
【0268】
[9-2-2]クロスリンキングMS(Cross-linking MS、XL-MS)
【0269】
抗原および抗体の比率が2:1となるようにし、抗原サンプルを2つ用意した。その後、クロスリンカー(CSBU)をDMSOにより十分に溶かした。以後、サンプルおよびDSGの比率が1:100となるように添加し、他の1つにはDMSOのみを添加した後に、25℃で1時間反応させた。反応が完了した後、トリプシンまたはキモトリプシンを用いて分解する過程を経た後、PNGase-Fを用いてタンパク質に付いた糖鎖を除去した。最後に、DTTおよびIAAを用いてタンパク質のシステイン間に存在する二硫化結合を切断し、LC-MS、MS2分析を行った。
【0270】
[9-2-3]LC-MS、MS分析条件
【0271】
1.液体クロマトグラフィー(Liquid chromatography、LC)の条件
カラム(Column):Hypersil GOLDTM(1.9μm、1×100mm)
流速(Flow rate):100μl/min
移動相A(Mobile phase A):D.W/0.2%Formic acid移動相B(Mobile phase B):ACN/0.2%Formic acid温度(Temperature):30℃
LC condition(gradient)
【0272】
【0273】
2.MS、MS2 condition
【0274】
【0275】
【0276】
【0277】
【0278】
【0279】
[9-3]コバレントラベリングMS(Covalent labeling MS;CL-MS)
【0280】
対照群のhuTregL1-his(Ag、Control)と試験群のhuTregL1-his/E7-mlgG2a(Ag+Ab、Test)サンプルにDEPC処理後、トリプシン、キモトリプシンまたはAsp-N/Lys-Cを処理して分解させた試料をそれぞれ3回反復分析した(
図21~
図23参照)。前記分析結果に出ている対照群(Control1)および試験群(Test1)のMS分析結果をBioPhama finderプログラムを用いて対照群(huTregL1-his)の配列とマッチし、標識されたペプチド(labeling peptides)を比較した。また、キモトリプシン、トリプシンまたはAsp-N/Lys-Cを処理した対照群および試験群試料で非標識のペプチドおよび標識のペプチドを確認する過程を行った。反復試験の結果を総合して、対照群および試験群のラベリング(%)を比較(decrease≧5%)した結果をアミノ酸配列を基準(Res#)としてまとめて、
図21および
図22に示した。このようにまとめられた結果に基づいてhuTregL1-his配列に代入した後、そのうち2つのプロテアーゼ試験結果で一致する配列を探した。
【0281】
結果上、Labeling decrease(%)が5%以上の配列のうち、配列E62-L101、D111-L134、Q542-Y553がそれぞれ13.2%、15.3%、14.7%で10%以上のlabeling decrease(%)が確認された。E62-L101配列においてE62-K92部分(AL)が65.9%、L65-F87部分(Y)が48.7%、L88-L101部分が88.6%のlabeling(%)を示した。この結果を通して、E62-L101配列のうち、labeling(%)が50%以上のL88-L101部分が外部に露出していると考えられる。D111-L134配列の場合、キモトリプシン処理群で15.3%のlabeling decrease(%)を示したが、ControlのRSDが62.4%であることを確認した。Q542-Y553配列もキモトリプシン処理群で14.7%のlabeling
decrease(%)を示し、対照群である抗原のlabeling(%)が50%以上でタンパク質構造上外部に露出した部分と判断された。
【0282】
試験群(huTregL1-his/E7-mlgG2a)のCL-MS分析結果を通して導出された本配列のうち、2つ以上のプロテアーゼ処理群で5%以上のlabeling decrease(%)が出ただけでなく、外部に露出していると判断される配列であるE62-L101配列がエピトープサイトに相当することを最終的に把握した。
【0283】
[9-4]クロスリンキングMS(XL-MS)
【0284】
試験群(huTregL1-his/E7-mlgG2a)混合物サンプルを用意し、試験群試料にクロスリンカー(cross-linker)であるDSBU(disuccinimidyl dibutyric urea)を処理し、プロテアーゼ(キモトリプシンまたはトリプシン)で前記試験群試料を分解させた(
図27および
図28)。その後、キモトリプシンおよびトリプシンで分解されたペプチドが対照群に比べて試験管で検出されない(2%以下を含む)ペプチド配列を確認した。また、当該ペプチドでクロスリンカーのみ結合する形態(mono)を調べて再確認した(M%)後、最終的に試験群サンプルでは検出されないペプチド配列を総合して、エピトープサイトに決定した。L88-K92、S90-L101、N211-W222の3つの配列の場合、キモトリプシンまたはトリプシンともに対照群と比較して試験群サンプルで検出された同一の配列のペプチド比率(T%)が2%以下と確認された。T158-F174、G442-K476はChymotrypsin(Y)とTrypsin(T)でそれぞれ減少した。T%が検出(0%)されない配列はTrypsin(T)処理群のS362-K365が唯一であった。Cross-linking分析により2つのprotease処理群で有意に重複減少したL88-K92、S90-L101およびN211-W222の3つの配列がエピトープサイトに決定された。
【0285】
[9-5]結論
【0286】
図29および
図30に示すように、上記の結果を総合してエピトープを予測した。具体的には、huTregL1-his(Ag)のE62-L101、G452-K476の2つの配列がCL-MS、XL-MS分析結果で一致する位置として確認された。L62-L101のうち、L88-K92部分は、CL-MSの結果、2つのプロテアーゼ処理群(Chymotrypsin、Asp-N/Lys-C)でlabeling decrease(%)が確認され、XL-MS分析においても2つのプロテアーゼ処理群(Chymotrypsin、Trypsin)で有意に減少した。S95-L101部分の場合、XL-MSでキモトリプシンおよびトリプシンで重複的に確認されるエピトープであった。また、CL-MSの結果から、ラベリング(%)が50%以上のL88-L101部分が外部に露出していた。特に、L88-L101の場合、配列内のアミノ酸配列が親水性アミノ酸(Q89-S95)で連続的に構成されていた。
【0287】
また、G452-K476の場合、CL-MS分析により確認した結果、A472-F480部分が外部に露出しており、そのうち、A472-K476部分がエピトープに相当すると判断した。N211-W222の場合、XL-MSではエピトープサイトに選定されたが、CL-MS分析におけるのと重複しておらず、ひいては、当該配列部分のlabeling(%)が50%以下で構造上内部に位置してエピトープから除いた。
【0288】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正および変形が可能であることは当技術分野における通常の知識を有する者には自明であ
ろう。
【産業上の利用可能性】
【0289】
本発明によるLrig-1タンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、制御性T細胞上に存在する本発明のエピトープに特異的に結合して前記制御性T細胞の機能を抑制し、エフェクターT細胞の活性は維持あるいは上昇させて、多様な疾患の予防、改善または治療に非常に効率的に使用することができる。
【配列表】
【国際調査報告】