(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】脂肪腫の疼痛を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/403 20060101AFI20240806BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240806BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K31/403
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/26
A61P25/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502632
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 IB2022000437
(87)【国際公開番号】W WO2023007247
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522087350
【氏名又は名称】ラジエル セラピューティクス エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルメンフェルド,アロン
(72)【発明者】
【氏名】ゲータ,ラケーリ
(72)【発明者】
【氏名】ブローグランド,エラン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC01
4C076CC26
4C076CC44
4C076DD09F
4C076DD37E
4C076DD38
4C076EE23F
4C076FF12
4C076FF15
4C076FF16
4C076FF43
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC12
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA21
4C086ZB26
4C086ZC54
(57)【要約】
本発明は、組織および器官における脂肪腫の疼痛の処置、特にダーカム病(DD)患者における脂肪腫の疼痛の処置のためのカルバゾール誘導体を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪腫の疼痛を処置する方法であって、前記方法は、処置を必要とする対象に、治療有効量の医薬組成物を単位剤形で投与する工程を含み、前記医薬組成物は、以下の式(I)に記載の化合物、
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩を含み、
式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、-ON(=O)、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、またはC
2-5アルキニルであり、ここで、各アルキル、アルケニル、またはアルキニルは独立して、任意選択で、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、および-ON(=O)からなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換され、
R
9は、C
1-9アルキル、C
2-9アルケニル、C
2-9アルキニル、または3から10員のヘテロシクロアルキルであり、R
9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基またはホスホニウム基で置換され、
各R
10は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルであり、
各R
11およびR
12は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、もしくはC
3-6シクロアルキルであるか、またはR
11およびR
12は、それらが結合する窒素原子と一体となって、任意選択で置換される3から10員のヘテロシクロアルキルであり、ならびに
各R
13は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルである、
方法。
【請求項2】
前記脂肪腫の疼痛を処置することは、前記脂肪腫に関連する疼痛を低減または軽減することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疼痛は、処置前と比べて少なくとも30%低減される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記疼痛は、処置前と比べて少なくとも50%低減される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記疼痛は、少なくとも約60日間軽減される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記疼痛は、化合物(I)の単回投与後に少なくとも約60日間軽減される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象は、ダーカム病を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記R
9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基で置換されたC
1-C
9アルキルである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの四級アンモニウム基は、以下の式(V)に記載の基であり、
【化2】
式中、R
14、R
15、およびR
16はそれぞれ独立して、C
1-9アルキル、C
2-9アルケニル、またはC
2-9アルキニルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの四級アンモニウム基は、以下の式(V’)に記載の基であり、
【化3】
式中、Xは、負電荷を帯びたイオンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記Xは、Clである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記R
14、R
15、およびR
16はそれぞれ独立して、メチルである、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記R
1、R
2、R
3、およびR
4の少なくとも1つは、ハロゲンである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記R
5、R
6、R
7、およびR
8の少なくとも1つは、ハロゲンである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記R
1、R
2、R
3、およびR
4の少なくとも1つは、ハロゲンであり、かつ前記R
5、R
6、R
7、およびR
8の少なくとも1つは、ハロゲンである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ハロゲンは、ブロモである、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記R
1、R
2、R
3、およびR
4の少なくとも1つは、OHである、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記R
5、R
6、R
7、およびR
8の少なくとも1つは、OHである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記R
1、R
2、R
3、およびR
4の少なくとも1つは、ニトロであり、かつ前記R
5、R
6、R
7、およびR
8の少なくとも1つは、ニトロである、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記式(I)に記載の化合物は、3-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルプロパン-1-アミニウム、
5-(9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウム、
5-(2-ヒドロキシ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウム、または
5-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウムである、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記式(I)に記載の化合物は、式(1)
【化4】
に記載の構造で表される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記式(I)に記載の化合物は、5-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウムクロリドである、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記賦形剤は、界面活性剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記界面活性剤は、Tween-80である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記賦形剤は、可溶化剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記可溶化剤は、ベンジルアルコールである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記賦形剤は、溶剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記溶剤は、プロピレングリコールである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記溶剤は、水である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記医薬組成物は、約50重量%未満の水を含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記医薬組成物は、約30重量%未満の水を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記医薬組成物は、約10重量%未満の水を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記医薬組成物は、約10重量%から約30重量%の水を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記医薬組成物は、少なくとも約0.1重量%の前記式(I)に記載の化合物を含む、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記医薬組成物は、約0.1重量%から約10重量%の前記式(I)に記載の化合物を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記医薬組成物は、約1重量%から約5重量%の前記式(I)に記載の化合物を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記医薬組成物は、1mLごとに1mgから100mgの前記式(I)に記載の化合物を含む、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記医薬組成物は、1mLごとに50mgの前記式(I)に記載の化合物を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記医薬組成物は、液体剤形で製剤化される、請求項1から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記医薬組成物は、単回注射で投与される、請求項1から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記医薬組成物は、複数回注射で投与される、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記医薬組成物は、非経口投与される、請求項1から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記医薬組成物は、皮下投与される、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記医薬組成物は、前記脂肪腫に直接皮下注射される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記医薬組成物は、前記脂肪腫1cmごとに約1mgから約10mgの投与量で前記脂肪腫に直接皮下注射される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記医薬組成物は、前記脂肪腫1cmごとに約5mgから約10mgの投与量で前記脂肪腫に直接皮下注射される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記医薬組成物は、少なくとも1つの追加の活性剤をさらに含む、請求項1から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
脂肪腫の疼痛の処置における使用のための単位剤形の医薬組成物であって、以下の式(I)に記載の化合物、
【化5】
またはその薬学的に許容可能な塩を含み、
式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、-ON(=O)、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、またはC
2-5アルキニルであり、ここで、各アルキル、アルケニル、またはアルキニルは独立して、任意選択で、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、および-ON(=O)からなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換され、
R
9は、C
1-9アルキル、C
2-9アルケニル、C
2-9アルキニル、または3から10員のヘテロシクロアルキルであり、R
9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基またはホスホニウム基で置換され、
各R
10は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルであり、
各R
11およびR
12は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、もしくはC
3-6シクロアルキルであるか、またはR
11およびR
12は、それらが結合する窒素原子と一体となって、任意選択で置換される3から10員のヘテロシクロアルキルであり、ならびに
各R
13は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルである、
医薬組成物。
【請求項50】
前記疼痛を処置することは、前記脂肪腫に関連する疼痛を低減または軽減することを含む、請求項49に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項51】
前記疼痛は、処置前と比べて少なくとも30%低減される、請求項49に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項52】
前記疼痛は、処置前と比べて少なくとも50%低減される、請求項49に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項53】
前記疼痛は、少なくとも約60日間軽減される、請求項49から51のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項54】
前記疼痛は、化合物(I)の単回投与後に少なくとも約60日間軽減される、請求項49から52のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項55】
対象は、ダーカム病を有する、請求項49から54のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項56】
前記R
9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基で置換されたC
1-C
9アルキルである、請求項49から55のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項57】
前記少なくとも1つの四級アンモニウム基は、以下の式(V)に記載の基であり、
【化6】
式中、R
14、R
15、およびR
16はそれぞれ独立して、C
1-9アルキル、C
2-9アルケニル、またはC
2-9アルキニルである、請求項56に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項58】
前記少なくとも1つの四級アンモニウム基は、以下の式(V’)に記載の基であり、
【化7】
式中、Xは、負電荷を帯びたイオンである、請求項57に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項59】
前記Xは、Clである、請求項58に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項60】
前記R
14、R
15、およびR
16はそれぞれ独立して、メチルである、請求項57に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項61】
前記R
1、R
2、R
3、およびR
4の少なくとも1つは、ハロゲンである、請求項49から60のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項62】
前記R
5、R
6、R
7、およびR
8の少なくとも1つは、ハロゲンである、請求項49から60のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項63】
前記R
1、R
2、R
3、およびR
4の少なくとも1つは、ハロゲンであり、かつ前記R
5、R
6、R
7、およびR
8の少なくとも1つは、ハロゲンである、請求項49から60のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項64】
前記ハロゲンは、ブロモである、請求項61から63のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項65】
前記R
1、R
2、R
3、およびR
4の少なくとも1つは、OHである、請求項49から60のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項66】
前記R
5、R
6、R
7、およびR
8の少なくとも1つは、OHである、請求項49から60のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項67】
前記R
1、R
2、R
3、およびR
4の少なくとも1つは、ニトロであり、かつ前記R
5、R
6、R
7、およびR
8の少なくとも1つは、ニトロである、請求項49から60のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項68】
前記式(I)に記載の化合物は、3-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルプロパン-1-アミニウム、
5-(9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウム、
5-(2-ヒドロキシ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウム、または
5-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウムである、請求項49から67のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項69】
前記式(I)に記載の化合物は、式(1)
【化8】
に記載の構造で表される、請求項49から68のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項70】
前記式(I)に記載の化合物は、5-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウムクロリドである、請求項49から69のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項71】
前記医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項49から69のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項72】
前記賦形剤は、界面活性剤である、請求項70に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項73】
前記界面活性剤は、Tween-80である、請求項72に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項74】
前記賦形剤は、可溶化剤である、請求項70に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項75】
前記可溶化剤は、ベンジルアルコールである、請求項74に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項76】
前記賦形剤は、溶剤である、請求項74に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項77】
前記溶剤は、プロピレングリコールである、請求項76に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項78】
前記溶剤は、水である、請求項76に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項79】
前記医薬組成物は、約50重量%未満の水を含む、請求項49から78のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項80】
前記医薬組成物は、約30重量%未満の水を含む、請求項49から79のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項81】
前記医薬組成物は、約10重量%未満の水を含む、請求項49から80のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項82】
前記医薬組成物は、約10重量%から約30重量%の水を含む、請求項49から81のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項83】
前記医薬組成物は、少なくとも約0.1重量%の前記式(I)に記載の化合物を含む、請求項49から82のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項84】
前記医薬組成物は、約0.1重量%から約10重量%の前記式(I)に記載の化合物を含む、請求項49から83のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項85】
前記医薬組成物は、約1重量%から約5重量%の前記式(I)に記載の化合物を含む、請求項49から84のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項86】
前記医薬組成物は、1mLごとに1mgから100mgの前記式(I)に記載の化合物を含む、請求項49から85のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項87】
前記医薬組成物は、1mLごとに50mgの前記式(I)に記載の化合物を含む、請求項86に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項88】
前記医薬組成物は、液体剤形で製剤化される、請求項49から87のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項89】
前記医薬組成物は、単回注射用に製剤化される、請求項49から88のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項90】
前記医薬組成物は、複数回注射用に製剤化される、請求項49から88のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項91】
前記医薬組成物は、非経口投与用に製剤化される、請求項49から90のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項92】
前記医薬組成物は、皮下投与用に製剤化される、請求項49から90のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項93】
前記医薬組成物は、前記脂肪腫に直接皮下注射される、請求項92に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項94】
前記医薬組成物は、前記脂肪腫1cmごとに約1mgから約10mgの投与量で前記脂肪腫に直接皮下注射される、請求項93に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項95】
前記医薬組成物は、前記脂肪腫1cmごとに約5mgから約10mgの投与量で前記脂肪腫に直接皮下注射される、請求項93に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項96】
前記医薬組成物は、少なくとも1つの追加の活性剤をさらに含む、請求項44から95のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項97】
請求項44から96のいずれか一項に記載の医薬組成物、前記医薬組成物の投与のための手段、およびその使用説明書を含む、キット。
【請求項98】
少なくとも1つの追加の治療薬をさらに含む、請求項97に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年7月28日出願の米国仮出願第63/226,441号の利益を主張し、この出願は、参照によってその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
ダーカム病は、脂肪組織の複数の疼痛を伴う増殖(脂肪腫)を特徴とする稀な障害である。脂肪腫は主に、胴体部、上腕部、および上腿部上に生じ、皮膚の真下(皮下)で見出されるが、体内のより深くで、結合組織によって筋肉、腱、靭帯、または骨に結合された状態で見出される場合もある。ダーカム病に関連する疼痛は、しばしば衰弱性であり、典型的な鎮痛処置に対して抵抗性であり得る。疼痛は、近辺の神経を圧迫する脂肪腫、または筋膜とも称される炎症結合組織によって引き起こされ得、炎症結合組織は、一般に、脂肪腫に関連する。加えて、挫傷のし易さ(easy bruising)、睡眠障害、記憶障害、鬱病、集中困難(difficulty concentrating)、不安、速い心拍(rapid heartbeat)、息切れ、糖尿病、腹部膨満、便秘、疲労、関節痛、体重増加、嗜眠、および/または錯乱などの多数の関連症状が存在する。
【0003】
ダーカム病は主に成人において生じ、男性よりも多くの女性が影響を受けている。承認された処置は存在しない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、脂肪腫に関連する疼痛の処置に有用なカルバゾール誘導体を提供する。いくつかの実施形態では、カルバゾール誘導体は、組織および器官における脂肪腫の疼痛の処置、特にダーカム病(DD)患者における脂肪腫の疼痛の処置に有用である。
【0005】
一態様では、脂肪腫の疼痛を低減する方法であって、この方法は、疼痛の低減を必要とする対象に、治療有効量の医薬組成物を単位剤形で投与する工程を含み、この医薬組成物は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、方法が本明細書に提供される。
【0006】
一態様では、脂肪腫の疼痛の処置に使用するための、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、単位剤形の医薬組成物が本明細書に提供される。
【0007】
式(I)の化合物は、以下の構造によって表されるか
【0008】
【化1】
、またはその薬学的に許容可能な塩であり、
式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、-ON(=O)、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、またはC
2-5アルキニルであり、ここで、各アルキル、アルケニル、またはアルキニルは独立して、任意選択で、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、および-ON(=O)からなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換され、
R
9は、C
1-9アルキル、C
2-9アルケニル、C
2-9アルキニル、または3から10員のヘテロシクロアルキルであり、R
9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基またはホスホニウム基で置換され、
各R
10は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルであり、
各R
11およびR
12は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、もしくはC
3-6シクロアルキルであるか、またはR
11およびR
12は、それらが結合する窒素原子と一体となって、任意選択で置換される3から10員のヘテロシクロアルキルであり、ならびに
各R
13は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルである。
【0009】
いくつかの実施形態では、脂肪腫の疼痛を処置することは、脂肪腫に関連する疼痛を低減または軽減することを含む。いくつかの実施形態では、疼痛は、処置前と比べて少なくとも30%低減される。いくつかの実施形態では、疼痛は、処置前と比べて少なくとも50%低減される。いくつかの実施形態では、脂肪腫は、血管脂肪腫ではない。
【0010】
いくつかの実施形態では、対象は、ダーカム病を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、疼痛は、化合物(I)の単回投与後に少なくとも約1ヶ月間軽減される。いくつかの実施形態では、疼痛は、化合物(I)の単回投与後に、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、または6ヶ月以上の間軽減される。
【0012】
いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基で置換されたC1-C9アルキルである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアンモニウム基は、以下の式(V)に記載の基であり、
【0013】
【化2】
式中、R
14、R
15、およびR
16はそれぞれ独立して、C
1-9アルキル、C
2-9アルケニル、またはC
2-9アルキルである。
【0014】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアンモニウム基は、以下の式(V’)に記載の基であり、
【0015】
【化3】
式中、Xは、負電荷を帯びたイオンである。いくつかの実施形態では、Xは、ハロゲン、例えば、Clである。
【0016】
いくつかの実施形態では、R14、R15、およびR16はそれぞれ独立して、メチルである。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つは、ハロゲンである。
【0017】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは、ハロゲンであり、かつR5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つは、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、ハロゲンはブロモである。
【0018】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは、OHである。いくつかの実施形態では、R5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つは、OHである。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは、ニトロであり、かつR5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つは、ニトロである。
【0019】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、3-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルプロパン-1-アミニウム、5-(9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウム、5-(2-ヒドロキシ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウム、または5-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウムである。
【0020】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、以下の式(1)に記載の構造によって表される。
【0021】
【0022】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、5-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウムクロリドである。
【0023】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、賦形剤は、界面活性剤である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、Tween-80である。いくつかの実施形態では、賦形剤は、可溶化剤である。いくつかの実施形態では、可溶化剤は、ベンジルアルコールである。いくつかの実施形態では、賦形剤は、溶剤である。いくつかの実施形態では、溶剤は、プロピレングリコールである。
【0024】
いくつかの実施形態では、溶剤は水である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約50重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約30重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10重量%から約30重量%の水を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも約0.1重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.1重量%から約10重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1重量%から約5重量%の式(I)の化合物を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1mLあたり1mgから100mgの式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1mLあたり50mgの式(I)の化合物を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液体剤形で製剤化される。
【0028】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単回注射で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数回注射で投与される。
【0029】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫1cmあたり約1mgから約10mgの投与量で脂肪腫に直接皮下注射される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫1cmあたり約5mgから約10mgの投与量で脂肪腫に直接皮下注射される。
【0031】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つの追加の活性剤をさらに含む。
【0032】
参照による援用
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個別に参照により援用されることが示されるのと同程度に、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、化合物1またはプラセボを用いたダーカム病患者の処置の84日後の脂肪腫ごとの疼痛の低減率である。プラセボでは37.50%であったのに対し、59.06%の統計学的に有意な平均疼痛低減が処置群において見られた(p=0.0004、t-試験)。
【
図2】
図2は、化合物1またはプラセボを用いたダーカム病患者の処置の84日後の患者ごとの疼痛の低減率である。プラセボでは36.82%であったのに対し、56.37%の平均疼痛低減が処置群において見られた。
【0034】
発明の詳細な説明
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0035】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別段の指示がない限り、複数の参照を含む。
【0036】
用語「Cx-y」は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルなどの化学部分(chemical moiety)と併せて使用される場合、鎖中にx~y個の炭素を含有する基を含むことを意味する。例えば、用語「C1-6アルキル」は、1~6個の炭素を含有する直鎖アルキルおよび分岐鎖アルキル基を含む、置換または非置換飽和炭化水素基を指す。用語-Cx-yアルキレン-は、アルキレン鎖中にx~y個の炭素を有する置換または非置換アルキレン鎖を指す。例えば、-C1-6アルキレン-は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、およびヘキシレンから選択され得、これらのうちのいずれか1つは、任意選択で置換される。
【0037】
「アルキル」は、直鎖アルキルおよび分岐鎖アルキル基を含む置換または非置換飽和炭化水素基を指す。アルキル基は、1~9個の炭素原子(C1-9アルキル)、1~8個の炭素原子(C1-8アルキル)、1~6個の炭素原子(C1-6アルキル)、1~5個の炭素原子(C1-5アルキル)などの1~12個の炭素原子(例えば、C1-12アルキル)を含有し得る。例示的なアルキル基として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、セプチル、オクチル、ノニル、およびデシルなどが挙げられる。アルキル基は、単結合によって分子の残りに結合される。本明細書中で特段の断りのない限り、アルキル基は、本明細書に記載の置換基などの1つまたは複数の置換基によって任意選択で置換される。
【0038】
「ハロアルキル」は、1つまたは複数のハロゲンによって置換されている、本明細書に定義されるアルキル基を指す。例示的なハロアルキル基として、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピル、および1,2-ジブロモエチルなどが挙げられる。
【0039】
「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を含有する直鎖または分岐鎖アルケニル基を含む、置換または非置換炭化水素基を指す。アルケニル基は、2~9個の炭素原子(C2-9アルケニル)、2~8個の炭素原子(C2-8アルケニル)、2~6個の炭素原子(C2-6アルケニル)、2~5個の炭素原子(C2-5アルケニル)などの2~12個の炭素原子(例えば、C2-12アルケニル)を含有し得る。例示的なアルケニル基として、エチニル(すなわち、ビニル)、プロパ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニルなどが挙げられる。本明細書中で特段の断りのない限り、アルケニル基は、本明細書に記載の置換基などの1つまたは複数の置換基によって任意選択で置換される。
【0040】
「アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合を含有する直鎖または分岐鎖アルキニル基を含む、置換または非置換炭化水素基を指す。アルキニル基は、2~9個の炭素原子(C2-9アルキニル)、2~8個の炭素原子(C2-8アルキニル)、2~6個の炭素原子(C2-6アルキニル)、2~5個の炭素原子(C2-5アルキニル)などの2~12個の炭素原子(例えば、C2-12アルキニル)を含有し得る。例示的なアルキニル基として、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどが挙げられる。本明細書中で特段の断りのない限り、アルキニル基は、本明細書に記載の置換基などの1つまたは複数の置換基によって任意選択で置換される。
【0041】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、および「ヘテロアルキニル」は、それぞれ炭素以外の原子から選択される1つまたは複数の骨格鎖原子を有する置換または非置換アルキル、アルケニル、およびアルキニル基を指す。炭素以外の原子から選択される例示的な骨格鎖原子として、例えば、O、N、P、Si、S、またはこれらの組合せが挙げられ、窒素(N)、リン(P)、または硫黄(S)原子は、任意選択で酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意選択で四級化されてもよい(すなわち、四級アンモニウムイオンを形成する)。所与の場合、数値範囲は、総鎖長を指す。例えば、3~8員ヘテロアルキルは、3~8個の原子の鎖長を有する。分子の残りへの結合は、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニル鎖中のヘテロ原子または炭素のいずれかを介し得る。本明細書中で特段の断りのない限り、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニル基は、本明細書に記載の置換基などの1つまたは複数の置換基によって任意選択で置換される。
【0042】
「アリール」は、環を形成する原子がそれぞれ炭素原子である芳香族環を指す。本明細書で使用される場合、アリール環は、単環式、二環式、三環式、または多環式の環系から選択され得、環系中の環の少なくとも1つは芳香族であり、すなわち、それは、Huckel理論に従って、環式の非局在化(4n+2)π電子系を含有する。アリール基は、任意選択で置換され得る。アリール基の例として、限定されないが、フェニルナフチル、フルオレニル、インダニル、インデニル、およびテトラリニルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、アリールは、フェニルである。構造に応じて、アリール基は、モノラジカルまたはジラジカル(すなわち、アリーレン基)であり得る。本明細書中で特段の断りのない限り、用語「アリール」または接頭辞「ar-」(「アラルキル」など)は、本明細書に記載の置換基などの1つまたは複数の置換基によって任意選択で置換されるアリールラジカルを含むことを意味する。
【0043】
「ヘテロアリール」は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む3~12員の芳香環を指し、各ヘテロ原子は、N、O、およびSから独立して選択され得る。本明細書で使用される場合、ヘテロアリール環は、単環式または二環式および縮合または架橋環系から選択され得、環系中の環の少なくとも1つは芳香族であり、すなわち、それは、Huckel理論に従って、環式の非局在化(4n+2)π電子系を含有する。ヘテロアリール中のヘテロ原子は、任意選択で酸化されてもよい。1つまたは複数の窒素原子は、存在する場合、任意選択で四級化される。ヘテロアリールは、ヘテロアリールの炭素または窒素原子などの、原子価が許容するヘテロアリールの任意の原子を介して分子の残りに結合され得る。ヘテロアリールの例として、限定されないが、アゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾインドリル、1,3-ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、ベンゾ[b][1,4]オキサジニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[l,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、シクロペンタ[d]ピリミジニル、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、5,6-ジヒドロベンゾ[h]シンノリニル、6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[6,7]シクロヘプタ[l,2-c]ピリダジニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、フロ[3,2-c]ピリジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリミジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリダジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリジニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソキサゾリル、5,8-メタノ-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、ナフチリジニル、1,6-ナフチリジノニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、5,6,6a,7,8,9,10,10a-オクタヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジニル、ピリジニル、ピリド[3,2-d]ピリミジニル、ピリド[3,4-d]ピリミジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、5、6、7、8-テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、5,6,7,8-テトラヒドロピリド[4,5-c]ピリダジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラアゾリル、トリアジニル、チエノ[2,3-d]ピリミジニル、チエノ[3,2-d]ピリミジニル、チエノ[2,3-c]プリジニル、およびチオフェニル(すなわち、チエニル)などが挙げられる。本明細書中で特段の断りのない限り、ヘテロアリールは、本明細書に記載の置換基などの1つまたは複数の置換基によって任意選択で置換される。
【0044】
用語「シクロアルキル」は、単環式または多環式の非芳香族基を指し、環を形成する原子(すなわち、骨格原子)はそれぞれ炭素原子である。いくつかの実施形態では、シクロアルキルは、飽和または部分不飽和である。いくつかの実施形態では、シクロアルキルは、スピロ環式または架橋化合物である。いくつかの実施形態では、シクロアルキルは、芳香族環(この場合、シクロアルキルは、非芳香族環炭素原子を介して結合される)と縮合される。シクロアルキル基は、3~9個の炭素原子(C3-9シクロアルキル)、3~8個の炭素原子(C3-8シクロアルキル)、3~6個の炭素原子(C3-6シクロアルキル)、3~5個の炭素原子(C3-5シクロアルキル)などの3~10個の環原子(例えば、C3-10シクロアルキル)を有する基を含む。代表的なシクロアルキルとして、限定されないが、3~10個の炭素原子、3~8個の炭素原子、3~6個の炭素原子、または3~5個の炭素原子を有するシクロアルキルなどが挙げられる。単環式シクロアルキル基として、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルなどが挙げられる。多環式基として、例えば、アダマンチル、1,2-ジヒドロナフタレニル、1,4-ジヒドロナフタレニル、テトライニル、デカリニル、3,4-ジヒドロナフタレニル-1(2H)-オン、スピロ[2.2]ペンチル、ノルボルミルおよびビシクル[1.1.1]ペンチルなどが挙げられる。本明細書中で特段の断りのない限り、シクロアルキル基は、本明細書に記載の置換基などの1つまたは複数の置換基によって任意選択で置換されてもよい。
【0045】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むシクロアルキル基を指す。本明細書中で特段の断りのない限り、ヘテロシクロアルキルラジカルは、縮合(アリールまたはヘテロアリール環と縮合される場合、ヘテロシクロアルキルは、非芳香族環原子を介して結合される)または架橋環系を含み得る単環式または二環式の環系であり得る。ヘテロシクリルラジカル中の窒素、炭素、または硫黄原子は、任意選択で酸化されてもよい。窒素原子は、任意選択で四級化されてもよい。ヘテロシクロアルキルラジカルは、部分的にまたは完全に飽和されてもよい。ヘテロシクロアルキル基の例として、限定されないが、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、デカヒドロキノリル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニル、1,1-ジオキソ-チオモルホリニルなどが挙げられる。用語「ヘテロシクロアルキル」はまた、単糖類、二糖類、およびオリゴ糖類を含むがこれらに限定されない炭水化物のすべての環形態を含む。特段の断りのない限り、ヘテロシクロアルキルは、環中に2~12個の炭素を有する。ヘテロシクロアルキル中の炭素原子の数に言及する場合、ヘテロシクロアルキル中の炭素原子の数は、ヘテロシクロアルキル(すなわち、ヘテロシクロアルキル環の骨格原子)を構成する原子(ヘテロ原子を含む)の総数と同じではないことが理解される。本明細書中で特段の断りのない限り、ヘテロシクロアルキル基は、本明細書に記載の置換基などの1つまたは複数の置換基によって任意選択で置換されてもよい。
【0046】
用語「置換された」は、構造の1つまたは複数の炭素またはヘテロ原子上の水素を置換する1つまたは複数の置換基を有する部分を指す。「置換」または「で置換された」は、そのような置換が、置換された原子および置換基の許容される原子価に従うという暗黙の条件、ならびに置換が、例えば、転位、環化、脱離などによる変換を自発的に受けない安定した化合物をもたらすという暗黙の条件を含むことが理解されるであろう。本明細書で使用される場合、用語「置換された」は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことが企図される。いくつかの実施形態では、置換基の例として、限定されないが、有機化合物の分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の置換基などが含まれる。許容される置換基は、適切な有機化合物につき1つまたは複数であり、同じでも異なっていてもよい。本開示の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有し得る。置換基は、本明細書に記載の任意の置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオ酢酸エステル、またはチオギ酸エステルである)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、炭素環、複素環、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、芳香族およびヘテロ芳香族部分などを含むことができる。
【0047】
当業者は、適切な場合、置換基自体が置換され得ることを理解するであろう。「非置換」として具体的に述べられていない限り、本明細書における化学部分への言及は、置換変異体を含むと理解される。例えば、「ヘテロアリール」基または部分への言及は、置換および非置換変異体の両方を黙示的に含む。
【0048】
置換基が、左から右に書かれたそれらの従来の化学式によって特定される場合、それらは、構造を右から左に書くことから生じる化学的に同一の置換基を等しく包含する、例えば、-CH2O-は、-OCH2-と等価である。
【0049】
「任意選択の」または「任意選択で」は、状況に続いて記載される事象が起こる場合も起こらない場合もあること、およびその記載が、その事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「任意選択で置換されたアリール」は、アリール基が置換されてもされなくてもよく、その記載が置換されたアリール基および置換を有さないアリール基の両方を含むことを意味する。
【0050】
本開示の化合物はまた、例えば、化合物の多形体、疑似多形体、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形体(無水物を含む)、立体配座多形体、および非晶質形態、ならびにそれらの混合物を含む、同じタイプの活性を有する、それらの化合物の結晶形態および非晶質形態、薬学的に許容可能な塩、双性イオン、プロドラッグ、およびこれらの化合物の活性代謝産物を含む。
【0051】
本明細書に記載の化合物は、それらの天然同位体存在度を示し得るか、または原子の1つまたは複数が、同じ原子番号を有するが、天然に主に見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する特定の同位体が人工的に濃縮され得る。本開示の化合物のすべての同位体変化は、放射性であろうとなかろうと、本開示の範囲内に包含される。例えば、水素は、1H(プロチウム)、2H(重水素)、および3H(トリチウム)と表される3つの天然同位体を有する。プロチウムは、本来、水素の最も豊富な同位体である。重水素の濃縮は、in vivo半減期および/または曝露の増加などのある種の治療上の利点をもたらし得るか、または薬物排除および代謝のin vivo経路を調査するのに有用な化合物を提供し得る。同位体濃縮化合物は、当業者に周知の従来の技術によって調製することができる。
【0052】
「異性体」は、同じ分子式を有する異なる化合物である。「立体異性体」は、原子が空間に配置される方法のみが異なる異性体である。「鏡像異性体」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体の対である。鏡像異性体対の1:1混合物は、「ラセミ」混合物である。用語「(±)」は、適切な場合、ラセミ混合物を示すために使用される。「ジアステレオ異性体(diastereoisomer)」または「ジアステレオマー(diastereomer)」は、少なくとも2つの不斉原子を有するが、互いの鏡像ではない立体異性体である。絶対配置(absolute stereochemistry)は、Cahn-Ingold-Prelog R-Sシステムに従って特定される。化合物が純粋な鏡像異性体である場合、各キラル炭素における配置は、絶対配置が未知であるRまたはSのいずれかによって特定することができる。本明細書に記載の特定の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含有し、したがって、鏡像異性体、ジアステレオマー、および他の立体異性体形態を生じ得、その不斉中心は、絶対配置の観点から、(R)-または(S)-として定義され得る。本発明の化学物質、医薬組成物、および方法は、ラセミ混合物、光学的に純粋な形態、ジアステレオマーの混合物、および中間体混合物(intermediate mixture)を含む、すべてのそのような可能な立体異性体を含むことを意味する。光学活性の(R)-および(S)-異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を用いて調製するか、または従来の技術を用いて分割することができる。化合物の光学活性は、キラルクロマトグラフィーおよび偏光分析を含むがこれらに限定されない任意の好適な方法によって分析することができ、一方の立体異性体が他方の立体異性体よりも優勢である程度を決定することができる。
【0053】
炭素間二重結合または炭素-窒素二重結合を有する化学物質は、Z-またはE-形態(またはcis-もしくはtrans-形態)で存在し得る。さらに、いくつかの化学物質は、様々な互変異性形態で存在し得る。別段の指定がない限り、本明細書に記載の化学物質は、Z-、E-、および互変異性形態のすべてを同様に含むことが意図される。
【0054】
本明細書に記載の化学物質および中間体の単離および精製は、所望される場合、濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーもしくは厚層クロマトグラフィー、またはこれらの手順の組合せなどの任意の好適な分離または精製手順によって行うことができる。好適な分離および単離手順の具体的な例証は、本明細書中の以下の実施例を参照することによって得ることができる。しかし、他の等価な分離または単離手順も使用することができる。
【0055】
配置が特定されていない場合、本明細書に記載の特定の小分子として、限定されないが、可能な場合、日常的な実験によって当業者によって作製され得る程度まで、鏡像異性体およびジアステレオマーなどのそれらの異性体、ラセミ体を含む鏡像異性体の混合物、ジアステレオマーの混合物、ならびにそれらの他の混合物などが含まれる。これらの状況では、単一の鏡像異性体またはジアステレオマー、すなわち、光学活性形態は、不斉合成によって、またはラセミ体もしくはジアステレオマーの混合物の分割によって得ることができる。ラセミ体またはジアステレオマーの混合物の分割は、可能な場合、例えば、分割剤の存在下での結晶化、または例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムを使用するクロマトグラフィーなどの従来の方法によって達成することができる。さらに、2つの鏡像異性体のうちの1つに濃縮された2つの鏡像異性体の混合物を精製して、再結晶および/または粉砕によって主要な鏡像異性体のさらなる光学的に濃縮された形態を提供することができる。さらに、そのような特定の小分子は、炭素間二重結合または炭素-窒素二重結合を有する特定の小分子のZ型およびE型(またはcis-およびtrans-型)を含む。本明細書に記載の特定の小分子が様々な互変異性形態で存在する場合、用語「特定の小分子」は、特定の小分子のすべての互変異性形態を含むことが意図される。
【0056】
用語「有効量」または「治療有効量」は、以下で定義されるように、疾患処置(症状の緩和を含む)を含むがこれに限定されない意図される用途に影響するのに充分な本明細書に記載の化合物の量を指す。治療有効量は、意図される処置用途(in vivo)、または処置される対象および疾患状態、例えば対象の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与様式などに応じて変動し得、当業者によって容易に決定され得る。この用語はまた、標的細胞において特定の応答、例えば、血小板接着および/または細胞遊走の減少を誘導する用量にも適用される。具体的な用量は、選択される特定の化合物、従うべき投与レジメン、他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、それが投与される組織、およびそれが運ばれる物理的な送達システムに応じて変動する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「処置する(treat)」または「処置すること(treating)」は、疾患、障害、または病状に関して有益な結果または所望の結果を得るための手法を指し、これには、治療的有用性(therapeutic benefit)および/または予防的有用性(prophylactic benefit)が含まれるがこれらに限定されない。治療的有用性は、例えば、処置される基礎疾患の根絶または改善を含み得る。また、治療的有用性は、例えば、対象が依然として基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、対象において改善が観察されるように、基礎疾患に関連する生理学的症状の1つまたは複数の根絶または改善を含むことができる。特定の実施形態では、予防的有用性のために、組成物は、特定の疾患を発症するリスクがある対象に、またはたとえこの疾患の診断がなされていないとしても、疾患の生理学的症状の1つまたは複数を報告する対象に投与される。
【0058】
「治療効果」は、その用語が本明細書で使用される場合、上記の治療的有用性および/または予防的有用性を包含する。予防的有用性は、疾患もしくは疾病の出現の遅延もしくは排除、疾患もしくは疾病の症状の発症の遅延もしくは排除、疾患もしくは疾病の進行の遅延、停止、もしくは逆転、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0059】
用語「同時投与」、「と組み合わせて投与される」、およびそれらの文法的等価物は、本明細書で使用される場合、両方の薬剤および/またはそれらの代謝産物が同時に対象中に存在するように、ヒトを含む動物への2つ以上の薬剤の投与を包含する。同時投与は、別々の組成物での同時投与、別々の組成物での異なる時間での投与、または両方の薬剤が存在する組成物での投与を含む。
【0060】
化合物
一態様では、以下の式(I)に記載の化合物、
【0061】
【化5】
またはその薬学的に許容可能な塩が本明細書に記載され、
式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、-ON(=O)、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、またはC
2-5アルキニルであり、ここで、各アルキル、アルケニル、またはアルキニルは独立して、任意選択で、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、および-ON(=O)からなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換され、
R
9は、C
1-9アルキル、C
2-9アルケニル、C
2-9アルキニル、または3から10員環のヘテロシクロアルキルであり、R
9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基またはホスホニウム基で置換され、
各R
10は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルであり、
各R
11およびR
12は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、もしくはC
3-6シクロアルキルであるか、またはR
11およびR
12は、それらが結合する窒素原子と一体となって、任意選択で置換される3から10員環のヘテロシクロアルキルであり、ならびに
各R
13は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルである。
【0062】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、-CN、-NO2、-OR10、-S(=O)2R10、-NR11R12、-C(=O)NR11R12、-S(=O)2NR11R12、-C(=O)R10、-C(=O)OR10、-NR13C(=O)R10、-NR13C(=O)NR11R12、-NR13S(=O)2R10、-NR13S(=O)2NR11R12、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、およびC2-5アルキニルからなる群から選択され、ここで、各アルキル、アルケニル、およびアルキニルは独立して、任意選択で、ハロゲン、-CN、-NO2、-OR10、-S(=O)2R10、-NR11R12、-C(=O)NR11R12、-S(=O)2NR11R12、-C(=O)R10、-C(=O)OR10、-NR13C(=O)R10、-NR13C(=O)NR11R12、-NR13S(=O)2R10、および-NR13S(=O)2NR11R12から選択される1つまたは複数の置換基で置換される。
【0063】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、-CN、-NO2、-OR10、-NR11R12、-C(=O)R10、-C(=O)OR10、およびC1-5アルキルからなる群から選択され、ここで、各アルキルは独立して、任意選択で、ハロゲン、-CN、-NO2、-OR10、-S(=O)2R10、-NR11R12、-C(=O)NR11R12、-S(=O)2NR11R12、-C(=O)R10、-C(=O)OR10、-NR13C(=O)R10、-NR13C(=O)NR11R12、-NR13S(=O)2R10、および-NR13S(=O)2NR11R12から選択される1つまたは複数の置換基で置換される。
【0064】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、-CN、-NO2、-OR10、および-NR11R12からなる群から選択される。
【0065】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8はそれぞれ、水素である。
【0066】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R1は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R2は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R3は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R4は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つは、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R5は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R6は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R7は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R8は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは、ハロゲンであり、かつR5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つは、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは、ハロゲンであり、R5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つは、ハロゲンであり、およびR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8の残りは、水素である。いくつかの実施形態では、R1は、ハロゲンであり、かつR5は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R1は、ハロゲンであり、かつR6は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R1は、ハロゲンであり、かつR7は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R1は、ハロゲンであり、かつR8は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R2は、ハロゲンであり、かつR5は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R2は、ハロゲンであり、かつR6は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R2は、ハロゲンであり、かつR7は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R2は、ハロゲンであり、かつR8は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R3は、ハロゲンであり、かつR5は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R3は、ハロゲンであり、かつR6は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R3は、ハロゲンであり、かつR7は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R3は、ハロゲンであり、かつR8は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R4は、ハロゲンであり、かつR5は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R4は、ハロゲンであり、かつR6は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R4は、ハロゲンであり、かつR7は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R4は、ハロゲンであり、かつR8は、ハロゲンである。
【0067】
いくつかの実施形態では、ハロゲンは、ブロモである。いくつかの実施形態では、ハロゲンは、クロロである。いくつかの実施形態では、ハロゲンは、フルオロである。いくつかの実施形態では、ハロゲンは、ヨードである。
【0068】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは、OHである。いくつかの実施形態では、R1は、OHである。いくつかの実施形態では、R2は、OHである。いくつかの実施形態では、R3は、OHである。いくつかの実施形態では、R4は、OHである。いくつかの実施形態では、R5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つは、OHである。いくつかの実施形態では、R5は、OHである。いくつかの実施形態では、R6は、OHである。いくつかの実施形態では、R7は、OHである。いくつかの実施形態では、R8は、OHである。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つは、OHであり、かつR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8の残りは、水素である。
【0069】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つはニトロであり、かつR5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つはニトロである。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つはニトロであり、かつR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8の残りは水素である。いくつかの実施形態では、R1はニトロであり、かつR5はニトロである。いくつかの実施形態では、R1はニトロであり、かつR6はニトロである。いくつかの実施形態では、R1はニトロであり、かつR7はニトロである。いくつかの実施形態では、R1はニトロであり、かつR8はニトロである。いくつかの実施形態では、R2はハロゲンであり、かつR5はニトロである。いくつかの実施形態では、R2はニトロであり、かつR6はニトロである。いくつかの実施形態では、R2はハロゲンであり、かつR7はニトロである。いくつかの実施形態では、R2はニトロであり、かつR8はニトロである。いくつかの実施形態では、R3はハロゲンであり、かつR5はニトロである。いくつかの実施形態では、R3はニトロであり、かつR6はニトロである。いくつかの実施形態では、R3はハロゲンであり、かつR7はニトロである。いくつかの実施形態では、R3はニトロであり、かつR8はニトロである。いくつかの実施形態では、R4はハロゲンであり、かつR5はニトロである。いくつかの実施形態では、R4はニトロであり、かつR6はニトロである。いくつかの実施形態では、R4はハロゲンであり、かつR7はニトロである。いくつかの実施形態では、R4はニトロであり、かつR8はニトロである。
【0070】
いくつかの実施形態では、R9は、C1-9アルキル、C2-9アルケニル、C2-9アルキニル、および3~10員ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R9は、任意選択で置換されたC1-9アルキルである。いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基で置換されたC1-9アルキルである。いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つのホスホニウム基で置換されたC1-9アルキルである。いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つのホスホニウム基で置換されたC2-9アルケニルである。いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基で置換されたC2-9アルケニルである。いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つのホスホニウム基で置換されたC2-9アルキニルである。いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基で置換されたC2-9アルキニルである。いくつかの実施形態では、R9は3~10員ヘテロシクロアルキルである。いくつかの実施形態では、R9はピペラジニルである。いくつかの実施形態では、R9はピリジニルである。いくつかの実施形態では、R9はピペリジニルである。いくつかの実施形態では、R9はモルホリニルである。いくつかの実施形態では、R9はチオモルホリニルである。いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つのホスホニウム基で置換されたC1-9アルキルである。いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基で置換されたC1-9アルキルである。いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基で置換されたプロピルである。いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基で置換されたブチルである。いくつかの実施形態では、R9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基で置換されたペンチルである。
【0071】
いくつかの実施形態では、化合物は、正電荷を帯びた部分(例えば、アンモニウム、ホスホニウム)を含む。いくつかの実施形態では、正電荷を帯びた部分を含む化合物は、負電荷を帯びた対イオンをさらに含む塩の形態であり得る。例えば、化合物が四級アンモニウムまたはホスホニウム塩を含む場合、化合物は、ハロゲン化物(例えば、塩化物)などの負電荷を帯びた対イオンを有する塩の形態であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、化合物は、負電荷を帯びた部分を含む。いくつかの実施形態では、負電荷を帯びた部分を含む化合物は、正電荷を帯びた対イオンをさらに含む塩の形態であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの四級アンモニウム基は、以下の式(V)に記載の構造で表され、
【0074】
【化6】
式中、R
14、R
15、およびR
16はそれぞれ独立して、C
1-9アルキル、C
2-9アルケニル、およびC
2-9アルキニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R
14、R
15、およびR
16はそれぞれ独立して、C
2-9アルケニルである。いくつかの実施形態では、R
14、R
15、およびR
16はそれぞれ独立して、C
2-9アルキニルである。いくつかの実施形態では、R
14、R
15、およびR
16はそれぞれ独立して、C
1-9アルキルである。いくつかの実施形態では、R
14、R
15、およびR
16はそれぞれ、メチルである。いくつかの実施形態では、式(V)は、以下の式(V’)に記載の構造によって表されるように、対イオンをさらに含み、
【0075】
【0076】
【化8】
は、本明細書に定義されるように負電荷を帯びた対イオンである。いくつかの実施形態では、Xは、ハロゲン、例えば、Cl、Br、F、Iである。いくつかの実施形態では、Xは、ハロゲン化物、例えば、Clである。
【0077】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのホスホニウム基は、以下の式(VI)に記載のものであり、
【0078】
【化9】
式中、R
17、R
18、およびR
19はそれぞれ独立して、C
1-9アルキル、C
2-9アルケニル、およびC
2-9アルキニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R
17、R
18、およびR
19はそれぞれ独立して、C
2-9アルケニルである。いくつかの実施形態では、R
17、R
18、およびR
19はそれぞれ独立して、C
2-9アルキニルである。いくつかの実施形態では、R
17、R
18、およびR
19はそれぞれ独立して、C
1-9アルキルである。いくつかの実施形態では、R
17、R
18、およびR
19はそれぞれ独立して、メチルである。いくつかの実施形態では、式(VI)は、以下の式(VI’)に記載の構造によって表されるように、対イオンをさらに含み、
【0079】
【0080】
【化11】
は、本明細書に定義されるように負電荷を帯びた対イオンである。いくつかの実施形態では、Xは、ハロゲン、例えば、Cl、Br、F、Iである。いくつかの実施形態では、Xは、ハロゲン化物、例えば、Clである。
【0081】
いくつかの実施形態では、R10は独立して、H、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、C1-5ヘテロアルキル、C1-5ハロアルキル、およびC3-6シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R10は独立して、H、C1-5アルキル、C1-5ヘテロアルキル、C1-5ハロアルキル、およびC3-6シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R10は独立して、H、C1-5アルキル、およびC3-6シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R10はHである。いくつかの実施形態では、R10は独立して、C1-5アルキルである。いくつかの実施形態では、R10は独立して、C2-5アルケニルである。いくつかの実施形態では、R10は独立して、C2-5アルキニルである。いくつかの実施形態では、R10は独立して、C1-5ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、R10は独立して、C1-5ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R10は独立して、C3-6シクロアルキルである。
【0082】
いくつかの実施形態では、R11およびR12は独立して、H、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、C1-5ヘテロアルキル、C1-5ハロアルキル、およびC3-6シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R11およびR12は、それらが結合する窒素原子と一体となって、任意選択で置換されてもよい3~10員ヘテロシクロアルキルを形成し得る。いくつかの実施形態では、R11およびR12はそれぞれ独立して、H、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、C1-5ヘテロアルキル、C1-5ハロアルキル、およびC3-6シクロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R11およびR12はそれぞれ独立して、H、C1-5アルキル、C1-5ヘテロアルキル、C1-5ハロアルキル、およびC3-6シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R11およびR12はそれぞれ独立して、H、C1-5アルキル、およびC3-6シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R11およびR12は、ともにHである。いくつかの実施形態では、R11およびR12はそれぞれ独立して、C1-5アルキルである。いくつかの実施形態では、R11およびR12はそれぞれ独立して、C2-5アルケニルである。いくつかの実施形態では、R11およびR12はそれぞれ独立して、C2-5アルキニルである。いくつかの実施形態では、R11およびR12はそれぞれ独立して、C1-5ヘテロアルキルであり、いくつかの実施形態では、R11およびR12はそれぞれ独立して、C1-5ハロアルキルであり、いくつかの実施形態では、R11およびR12はそれぞれ独立して、C3-6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、R11およびR12は、それらが結合する窒素原子と一体となって、任意選択で置換されてもよい3~10員ヘテロシクロアルキルを形成し得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、R13は独立して、H、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、C1-5ヘテロアルキル、C1-5ハロアルキル、およびC3-6シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R13は独立して、H、C1-5アルキル、C1-5ヘテロアルキル、C1-5ハロアルキル、およびC3-6シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R13は独立して、H、C1-5アルキル、およびC3-6シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R13はHである。いくつかの実施形態では、R13は独立して、C1-5アルキルである。いくつかの実施形態では、R13は独立して、C2-5アルケニルである。いくつかの実施形態では、R13は独立して、C2-5アルキニルである。いくつかの実施形態では、R13は独立して、C1-5ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、R13は独立して、C1-5ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R13は独立して、C3-6シクロアルキルである。
【0084】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、3-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルプロパン-1-アミニウム、5-(9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウム、5-(2-ヒドロキシ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウム、および5-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウムからなる群から選択される。
【0085】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、3-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルプロパン-1-アミニウムである。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、5-(カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウム9H-である。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、5-(2-ヒドロキシ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウムである。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、5-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウムである。
【0086】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、薬学的に許容可能な塩形態である。用語「塩」または「薬学的に許容可能な塩」は、様々な有機および無機対イオンに由来する塩を指す。式(I)の化合物が1つ以上の正電荷を含有する場合、対イオンは、対応する1つ以上の負電荷を有し、中性分子を生成する。式(I)の化合物が1つ以上の負電荷を含有する場合、対イオンは、対応する1つ以上の正電荷を有し、中性分子を生成する。
【0087】
薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機酸および有機酸ならびにそれらの対応する対イオンで形成することができる。それから塩を得ることができる無機酸として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。例えば、塩は、例えば塩化物および臭化物アニオンなどのハロゲン対アニオンである対アニオンを含み得る。それから塩を得ることができる有機酸として、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。薬学的に許容可能な塩基付加塩は、無機および有機塩基ならびにそれらの対応する対イオンで形成することができる。それから塩を得ることができる無機塩基として、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどが挙げられる。それから塩を得ることができる有機塩基として、例えば、一級アミン、二級アミン、および三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂など、具体的には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミンなどが含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な塩基付加塩は、アンモニウム、ホスホニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、およびマグネシウム塩から選択される。
【0088】
いくつかの実施形態では、化合物(I)は、無機酸を有する塩の形態である。いくつかの実施形態では、化合物(I)は、塩酸を有する塩の形態である(すなわち、対イオンは塩化物(Cl)である)。
【0089】
いくつかの実施形態では式(I)の化合物は、以下の式1に記載の構造によって表される、5-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウムである。
【0090】
【0091】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、以下の式1Aに記載の構造によって表される、5-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウムクロリドである。
【0092】
【0093】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、以下の式(2)に記載の構造によって表される。
【0094】
【0095】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、以下の式(3)に記載の構造によって表される。
【0096】
【0097】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、以下の式(IV)に記載の構造によって表される。
【0098】
【0099】
本明細書の任意の化合物を精製することができる。本明細書の化合物は、少なくとも1%純粋、少なくとも2%純粋、少なくとも3%純粋、少なくとも4%純粋、少なくとも5%純粋、少なくとも6%純粋、少なくとも7%純粋、少なくとも8%純粋、少なくとも9%純粋、少なくとも10%純粋、少なくとも11%純粋、少なくとも12%純粋、少なくとも13%純粋、少なくとも14%純粋、少なくとも15%純粋、少なくとも16%純粋、少なくとも17%純粋、少なくとも18%純粋、少なくとも19%純粋、少なくとも20%純粋、少なくとも21%純粋、少なくとも22%純粋、少なくとも23%純粋、少なくとも24%純粋、少なくとも25%純粋。少なくとも26%純粋、少なくとも27%純粋、少なくとも28%純粋、少なくとも29%純粋、少なくとも30%純粋、少なくとも31%純粋、少なくとも32%純粋、少なくとも33%純粋、少なくとも34%純粋、少なくとも35%純粋、少なくとも36%純粋、少なくとも37%純粋、少なくとも38%純粋。少なくとも39%純粋、少なくとも40%純粋、少なくとも41%純粋、少なくとも42%純粋、少なくとも43%純粋、少なくとも44%純粋、少なくとも45%純粋、少なくとも46%純粋、少なくとも47%純粋、少なくとも48%純粋、少なくとも49%純粋、少なくとも50%純粋、少なくとも51%純粋。少なくとも52%純粋、少なくとも53%純粋、少なくとも54%純粋、少なくとも55%純粋、少なくとも56%純粋、少なくとも57%純粋、少なくとも58%純粋、少なくとも59%純粋、少なくとも60%純粋、少なくとも61%純粋、少なくとも62%純粋、少なくとも63%純粋、少なくとも64%純粋。少なくとも65%純粋、少なくとも66%純粋、少なくとも67%純粋、少なくとも68%純粋、少なくとも69%純粋、少なくとも70%純粋、少なくとも71%純粋、少なくとも72%純粋、少なくとも73%純粋、少なくとも74%純粋、少なくとも75%純粋、少なくとも76%純粋、少なくとも77%純粋。少なくとも78%純粋、少なくとも79%純粋、少なくとも80%純粋、少なくとも81%純粋、少なくとも82%純粋、少なくとも83%純粋、少なくとも84%純粋、少なくとも85%純粋、少なくとも86%純粋、少なくとも87%純粋、少なくとも88%純粋、少なくとも89%純粋、少なくとも90%純粋。少なくとも91%純粋、少なくとも92%純粋、少なくとも93%純粋、少なくとも94%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも96%純粋、少なくとも97%純粋、少なくとも98%純粋、少なくとも99%純粋、少なくとも99.1%純粋、少なくとも99.2%純粋、少なくとも99.3%純粋。少なくとも99.4%純粋、少なくとも99.5%純粋、少なくとも99.6%純粋、少なくとも99.7%純粋、少なくとも99.8%純粋、または少なくとも99.9%純粋であり得る。
【0100】
使用方法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物および組成物は、疼痛を処置するのに有用である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物および組成物は、脂肪腫に関連する疼痛(すなわち、脂肪腫疼痛)を処置するのに有用である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物および組成物は、皮膚疾患を有する対象の脂肪腫に関連する疼痛を処置するのに有用である。本明細書に示されるように、脂肪腫への単回用量の化合物1の注射(単回注射または複数回注射のいずれかによる)は、脂肪腫関連疼痛を有意に軽減する。
【0101】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、ダーカム病を有する。いくつかの実施形態では、対象は、ダーカム病に関連する脂肪腫を有する。皮膚疾患は、稀な脂肪障害(rare adipose disorder)(RAD)であり、典型的には、皮下脂肪組織(SAT)における肥満および慢性疼痛(>3ヶ月)を特徴とする。DDに関連する疼痛は、しばしば衰弱性であり、典型的な鎮痛処置に対して抵抗性である。
【0102】
ダーカム病の病因は現在知られていない。神経系機能障害、脂肪組織機能障害、リンパ血管障害、内分泌機能障害、神経への機械的圧力、および外傷の結果を含むいくつかの仮説が提唱されている。いくつかの報告は、ダーカム病が、可変発現を伴う遺伝性常染色体優性障害であり得ることを示唆しているが、症例の大部分は、いかなる特定の遺伝子突然変異も伴わずに散発的に生じる。
【0103】
ダーカム病は、全身性びまん型、全身性結節型、局所性結節型、および傍関節型(juxta-articular form)の4つのタイプに分類することができる。びまんタイプは、明確な脂肪腫なしに、頭から足の裏までのどこかに位置するSATからの広範な疼痛を特徴とする。全身性結節は、典型的には、脂肪腫の近傍でより疼痛を伴う広範かつ疼痛を伴う脂肪組織で生じるが、局所性結節タイプでは、疼痛は、脂肪腫内およびその周囲の領域に限定される。最後に、本開示のカルバゾール誘導体(例えば、化合物I、1、2、3、または4)は、全身性びまん型、全身性結節型、局所性結節型、および傍関節型を含む、皮膚疾患のタイプのいずれか1つまたは複数を処置するのに有用である。
【0104】
混合脂肪腫、すなわち小脂肪腫および大脂肪腫を有するダーカム病の対象が存在する。脂肪腫は、直径1cm未満から直径10cm超の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本開示の化合物によって処置可能な脂肪腫は、1~2cm、2~3cm、3~4cm、4~5cm、5~6cm、6~7cm、7~8cm、8~9cm、9~10cm、1~3cm、2~4cm、3~5cm、4~6cm、5~7cm、6~8cm、7~9cm、8~10cmの範囲である、例えば、直径1、2、3、4、5、6、7、8、9、10cm、またはそれより短いかもしくは長い。本明細書に記載されるように、本開示のカルバゾール誘導体の用量(例えば、化合物I、1、2、3、または4)は、処置される脂肪腫の大きさ、および/または処置される対象が経験する疼痛の程度に基づいて調整され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、脂肪腫の疼痛を処置する方法であって、この方法は、それを必要とする対象に治療有効量の医薬組成物を単位剤形で投与する工程を含み、この医薬組成物は、以下の式(I)に記載の化合物、
【0106】
【化17】
またはその薬学的に許容可能な塩を含み、
式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、-ON(=O)、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、またはC
2-5アルキニルであり、ここで、各アルキル、アルケニル、またはアルキニルは独立して、任意選択で、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、および-ON(=O)からなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換され、
R
9は、C
1-9アルキル、C
2-9アルケニル、C
2-9アルキニル、または3から10員環のヘテロシクロアルキルであり、R
9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基またはホスホニウム基で置換され、
各R
10は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルであり、
各R
11およびR
12は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、もしくはC
3-6シクロアルキルであるか、またはR
11およびR
12は、それらが結合する窒素原子と一体となって、任意選択で置換される3から10員環のヘテロシクロアルキルであり、ならびに
各R
13は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルである、
方法が本明細書に提供される。
【0107】
いくつかの実施形態では、脂肪腫の疼痛を処置する方法であって、この方法は、処置を必要とする対象に、治療有効量の医薬組成物を単位剤形で投与する工程を含み、この医薬組成物は、式1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、脂肪腫の疼痛を処置する方法であって、この方法は、処置を必要とする対象に、治療有効量の医薬組成物を単位剤形で投与する工程を含み、この医薬組成物は、式2の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、脂肪腫の疼痛を処置する方法であって、この方法は、処置を必要とする対象に、治療有効量の医薬組成物を単位剤形で投与する工程を含み、この医薬組成物は、式3の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、脂肪腫の疼痛を処置する方法であって、この方法は、処置を必要とする対象に、治療有効量の医薬組成物を単位剤形で投与する工程を含み、この医薬組成物は、式4の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、方法が本明細書に提供される。
【0108】
脂肪腫の疼痛、例えば、ダーカム病脂肪腫に関連する疼痛の処置に使用するための、式(I)の化合物を含む単位剤形の医薬組成物が本明細書に提供される。脂肪腫の疼痛、例えば、ダーカム病脂肪腫に関連する疼痛の処置に使用するための、式1の化合物を含む単位剤形の医薬組成物が本明細書に提供される。脂肪腫の疼痛、例えば、ダーカム病脂肪腫に関連する疼痛の処置に使用するための、式2の化合物を含む単位剤形の医薬組成物が本明細書に提供される。脂肪腫の疼痛、例えば、ダーカム病脂肪腫に関連する疼痛の処置に使用するための、式3の化合物を含む単位剤形の医薬組成物が本明細書に提供される。脂肪腫疼痛、例えば、ダーカム病脂肪腫に関連する疼痛の処置に使用するための、式4の化合物を含む単位剤形の医薬組成物が本明細書に提供される。
【0109】
本開示の化合物は、脂肪腫に関連する疼痛を低減または排除する。いくつかの実施形態では、疼痛は、処置前と比べて少なくとも10%、例えば、処置前と比べて、約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低減される。いくつかの実施形態では、疼痛は、式(I)の化合物の単回投与後に、処置前と比べて、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低減され、ここで、単回投与は、本明細書に記載されるように、単回注射または複数回注射で与えられてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、疼痛の低減は、疼痛を0から10のスコアにランク付けする比較疼痛スケール(comparative pain scale)によって測定される。例えば、0のスコアは疼痛がないことを示し得、1~3のスコアは軽度の疼痛を示し得、4~6のスコアは中程度の疼痛を示し得、7~10のスコアは重度の疼痛を示し得る。いくつかの実施形態では、疼痛の低減は、本明細書に記載されるように、対象毎に評価される。いくつかの実施形態では、疼痛の低減は、処置前と比較して対象毎に評価される。いくつかの実施形態では、疼痛の低減は、プラセボ対照と比較して対象ごとに評価される。いくつかの実施形態では、疼痛の低減は、本明細書に記載されるように、脂肪腫ごとに測定/分析される。いくつかの実施形態では、疼痛の低減は、処置前と比較して脂肪腫ごとに測定/分析される。いくつかの実施形態では、疼痛の低減は、プラセボ対照と比較して脂肪腫ごとに測定/分析される。
【0111】
いくつかの実施形態では、脂肪腫は血管脂肪腫ではない。血管脂肪腫は、四肢および胴体部の皮下腫瘍である。皮下血管性脂肪腫は正常な核型を有し、これにより、脂肪腫を含む他のほとんどの脂肪腫瘍から区別される。この理由から、それらは、真の脂肪腫瘍としてではなく、血管および脂肪の過誤腫と見なされてきた。脂肪組織のみを含有する脂肪腫とは対照的に、血管脂肪腫は、病変中に延在する不完全な線維性中隔(fibrous septa)を有する薄い線維性被膜(fibrous capsule)を有し、それを異なる大きさの小葉に分割する。それらは、様々な割合の脂肪組織および血管から構成される。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、化合物(I)の単回投与後に長期間にわたって脂肪腫の疼痛を軽減する。例えば、疼痛の持続時間は、化合物(I)の単回投与後に少なくとも約1ヶ月間軽減され得る。いくつかの実施形態では、疼痛は、化合物(I)の単回投与後に、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、またはそれ以上軽減され得る。例えば、疼痛の持続時間は、化合物(I)の単回投与後に少なくとも約30日間軽減され得る。いくつかの実施形態では、疼痛は、化合物(I)の単回投与後に、少なくとも約60日間、57日間、58日間、59日間、60日間、61日間、62日間、63日間、64日間、65日間、66日間、67日間、68日間、69日間、70日間、71日間、72日間、73日間、74日間、75日間、76日間、77日間、78日間、79日間、80日間、81日間、82日間、83日間、84日間、85日間、86日間、87日間、88日間、89日間、90日間、120日間、150日間、180日間、200日間、220日間、240日間、260日間、280日間、300日間、320日間、340日間、360日間もしくは365日間、または365日以上の間軽減され得る。化合物(I)の単回投与は、化合物(I)の用量の単回注射または複数回注射で提供され得ることが理解される。
【0113】
投与および投与レジメン
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、注射は、少なくとも1cm、例えば、1.1cm、1.2cm、1.3cm、1.4cm、1.5cm、1.6cm、1.7cm、1.8cm、1.9cm、2.0cm、または2.0cm以上の注射間の距離で、脂肪腫の表面上に無作為に広げられ得る。いくつかの実施形態では、注射は、注射される皮膚表面に対して90°で、または必要に応じて任意の他の角度、例えば、5°、10°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°、65°、70°、75°、80°、または85°で行われてもよい。いくつかの実施形態では、対象ごとに、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または10個以上の脂肪腫/結節に注射することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、(脂肪腫の直径に基づいて)約1mg~約10mg/cm/脂肪腫の化合物(I)(例えば、化合物1、2、3、4)の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、(脂肪腫の直径に基づいて)約1mg~約50mg/cm/脂肪腫の化合物(I)(例えば、化合物1、2、3、4)、例えば、(脂肪腫の直径に基づいて)1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg、30mg、31mg、32mg、33mg、34mg、35mg、36mg、37mg、38mg、39mg、40mg、41mg、42mg、43mg、44mg、45mg、46mg、47mg、48mg、49mg、または50mg/cm/脂肪腫の化合物(I)(例えば、化合物1、2、3、4)の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。
【0115】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫ごとに約0.05mL~約0.1mLの投与量で脂肪腫に直接皮下注射される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.05mL~約0.2mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.1mL~約0.2mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.1mL~約0.4mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.4mL~約1mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約1mL~約2mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.05mL未満の投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.05mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.1mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.2mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.3mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.4mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.5mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.6mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.7mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.8mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約0.9mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約1.0mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約1.1mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約1.2mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約1.3mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約1.4mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約1.5mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約1.6mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約1.7mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約1.8mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約1.9mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約2.0mLの投与量で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂肪腫に直接皮下注射するために、脂肪腫ごとに約2.0mL超の投与量で製剤化される。
【0116】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.05mL~約0.1mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.05mL~約0.2mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.1mL~約0.2mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.1mL~約0.4mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.4mL~約1mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1mL~約2mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.05mL/cm/脂肪腫未満の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.05mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.1mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.2mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.3mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.4mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.5mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.6mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.7mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.8mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.9mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.0mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.1mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.2mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.3mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.4mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.5mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.6mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.7mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.8mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.9mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約2.0mL/cm/脂肪腫の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約2.0mL/cm/脂肪腫超の投与量で脂肪腫に直接皮下注射するために製剤化される。
【0117】
投与される各化合物の総量は、処置される哺乳動物、障害または疾病の重症度、投与の速度、化合物の動態(disposition)、および処方する医師の裁量に依存する。しかし、効果的な投与量は、単回または分割投与で、約0.001mg~約100mg/kg/体重/日の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、約0.01mg/kg~約100mg/kg、0.1mg/kg~約100mg/kg、約10mg/kg~約80mg/kg、約20mg/kg~約50mg/kgなどの範囲の量で投与される。いくつかの例では、前述の範囲の下限未満の投与レベルが十分に適切であり得るが、他の場合では、さらにより大きな用量が、有害な副作用を一切引き起こすことなく、例えば、そのようなより大きな用量を一日を通した投与のためにいくつかの小さな用量に分割することによって使用され得る。いくつかの実施形態では、効果的な投与量は、パルス投与(pulsed dosing)(すなわち、化合物の連日の投与の後に、投与からの連日の休止が続く)で提供され得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、対象ごとに、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、または約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、約1500mg、約1550mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、約1800mg、約1850mg、約1900mg、約1950mg、または約2000mgの量で投与され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は単回注射によって投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単回注射によって単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数回注射によって単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は複数回用量で投与され、医薬組成物は複数回注射によって複数回用量で投与される。
【0120】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数回注射、例えば、脂肪腫ごとに2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15回の注射によって投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数回注射、例えば、対象ごとに2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50回の注射によって投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数回注射、例えば、脂肪腫ごとに2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15回の注射によって単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数回注射、例えば、対象ごとに2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50回の注射によって単回用量で投与される。
【0121】
併用療法
いくつかの実施形態では、本開示のカルバゾール誘導体は、1つまたは複数の追加の療法と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示のカルバゾール誘導体は、疼痛、例えば、脂肪腫の疼痛、例えば、ダーカム病に関連する脂肪腫の疼痛を処置するための標準治療として使用される医薬品と併せて使用することができる。
【0122】
ダーカム病に対する具体的な処置は存在しない。処置は主に対症的かつ支持的であり、主に特徴的な疼痛を伴うエピソードを和らげることに焦点を当てている。様々な鎮痛剤が使用されている(すなわち、リドカイン)。脂肪腫の外科的切除は、症状を一時的に緩和し得るが、再発がしばしば起こる。脂肪吸引は、ダーカム病を有するいくつかの個体のための支持的な処置として使用されており、疼痛の初期低減およびクオリティオブライフ(QOL)の改善を提供し得る。精神療法および疼痛管理専門家との相談は、罹患した個体が長期の激しい疼痛に対処することを可能にするのに有用であり得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物または医薬組成物は、前述の療法のうちのいずれか1つまたは複数と併せて使用され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、少なくとも1つの追加の活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は細胞毒性剤である。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は鎮痛剤である。「鎮痛剤」は、哺乳動物において疼痛の低減または緩和を達成するために使用される薬物の群の任意の1つであり得る。非限定的な例として、アセトアミノフェン/パラセタモール、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、COX-2阻害剤、オピオイドなどが挙げられる。
【0124】
したがって、いくつかの実施形態では、式(I)の化合物を含む医薬組成物は、式(I)の化合物を含む医薬組成物と同時にまたは連続して1つまたは複数の第2の薬剤(例えば、疼痛、例えば、ダーカム脂肪腫に関連する疼痛を処置するのに有用な1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または5つ以上の第2の薬剤)を投与することを含む治療レジメンの一部として投与することができる。連続して投与される場合、式(I)の化合物を含む医薬組成物は、1つまたは複数の第2の薬剤の前または後に投与され得る。同時に投与される場合、式(I)の化合物および1つまたは複数の第2の薬剤を含む医薬組成物は、同じ経路(例えば、同じ場所への注射)によって、異なる経路(例えば、静脈内注入を受けながら経口摂取される錠剤)によって、または同じ組合せの一部(例えば、式(I)の化合物および1つまたは複数の第2の薬剤を含む医薬組成物を含む溶液)として投与され得る。
【0125】
本開示に記載の併用処置は、広い投与量範囲にわたって有効であり得る。例えば、成人の処置において、1日あたり0.01mg~1000mg、0.5mg~100mg、1mg~50mg、および1日あたり5mg~40mgの投与量が、使用され得る投与量の例である。正確な投与量は、選択される薬剤、投与経路、化合物が投与される形態、処置される対象、処置される対象の体重、ならびに主治医の嗜好および経験に依存する。
【0126】
医薬組成物
本開示の組成物は、任意の好適な医薬製剤に製剤化することができる。本開示の医薬組成物は、典型的には、活性成分(例えば、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩および/もしくは配位錯体)、および、不活性固体希釈剤および充填剤、希釈剤、滅菌水溶液および様々な有機溶媒、透過促進剤、可溶化剤およびアジュバントを含むがこれらに限定されない1つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含有する。本開示の組成物は、任意の好適な医薬製剤に製剤化することができる。
【0127】
医薬組成物は、投与経路に依存し得る任意の好適な形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、対象に投与するための剤形に製剤化することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口、局所、経皮、頬側、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、腫瘍内、および/または腹腔内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単位剤形として製剤化することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つまたは複数の単位用量で提供される。例えば、組成物は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、14回、30回、60回、または60回以上の用量で投与することができる。そのような量は、毎日、例えば、1日に1回、2回、または3回以上投与される個々の用量で投与することができる。しかし、本明細書において1日あたりの記述される投与量は、1日の用量の投与を毎日必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、薬剤の1つが好適な遅放性の形態(slow-release form)で提供される場合、2つ以上の1日の投与量を、より低い頻度で、例えば、2日おきから1ヶ月に1回またはそれより長い頻度で投与される蓄積注射(depot injection)として投与することができる。対象にとって最も典型的かつ好都合には、式(I)の化合物を含む医薬組成物は、1日1回、例えば、朝、夕方、または日中に投与することができる。
【0129】
単位用量は、同時にまたは連続して投与することができる。組成物は、長期の処置期間にわたって投与することができる。例示的に、処置期間は、少なくとも約1ヶ月、例えば、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、または少なくとも約1年であり得る。場合によっては、投与は、実質的に対象の残りの生涯にわたって継続することができる。
【0130】
本明細書に記載の医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含有し得る。本明細書で使用される場合、語句「薬学的に許容可能な賦形剤」または「薬学的に許容可能な担体」は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封止材料などの薬学的に許容可能な材料、組成物、またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として役立ち得る材料のいくつかの例として、(1)親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などの界面活性剤;(2)アルコールなどの可溶化剤;(3)水、アルコール、およびグリコールなどの溶媒;(4)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;(5)コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(6)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(7)粉末トラガカント;(8)麦芽;(9)ゼラチン;(10)タルク;(11)カカオ脂および坐剤用ワックス(suppository wax)などの賦形剤;(12)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油などの油;(13)プロピレングリコールなどのグリコール;(14)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;(15)エチルオレエート、およびエチルラウレートなどのエステル;(16)寒天;(17)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(18)アルギン酸;(19)発熱物質を含まない水;(20)等張食塩水;(21)リンガー溶液;(22)エチルアルコール;(23)リン酸緩衝液;(24)医薬製剤に使用される他の非毒性で適合性のある物質などが挙げられる。組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な添加剤および賦形剤をさらに含むことができる。このような添加剤および賦形剤として、限定されないが、粘着性除去剤、消泡剤、緩衝剤、ポリマー、抗酸化剤、保存剤、キレート剤、ビスコモデュレーター、等張化剤、香味剤、着色剤、臭気剤、乳白剤、懸濁化剤、結合剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0131】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1つまたは複数の界面活性剤を含む。本開示の医薬組成物および剤形を形成するために使用することができる界面活性剤として、限定されないが、親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、およびこれらの混合物などが挙げられる。すなわち、親水性界面活性剤の混合物を使用してもよく、親油性界面活性剤の混合物を使用してもよく、または少なくとも1つの親水性界面活性剤と少なくとも1つの親油性界面活性剤との混合物を使用してもよい。
【0132】
好適な親水性界面活性剤は、概して、少なくとも10のHLB値を有し得るが、好適な親油性界面活性剤は、概して、約10以下のHLB値を有し得る。非イオン性の両親媒性化合物の相対的な親水性および疎水性を特徴付けるために使用される経験的パラメータは、親水性-親油性バランス(「HLB」値)である。より低いHLB値を有する界面活性剤は、より親油性または疎水性であり、油中でより高い溶解度を有するが、より高いHLB値を有する界面活性剤は、より親水性であり、水溶液中でより高い溶解度を有する。親水性界面活性剤は、概して、約10超のHLB値を有する化合物、ならびにHLB尺度が概して適用可能でないアニオン性、カチオン性、または双性イオン性の化合物であると考えられる。同様に、親油性(すなわち、疎水性)界面活性剤は、約10に等しいまたはそれ未満のHLB値を有する化合物である。しかし、界面活性剤のHLB値は、産業用、医薬品用、化粧品用の乳化剤の製剤化を可能にするために一般的に用いられる単なる粗いガイドである。
【0133】
親水性界面活性剤は、イオン性または非イオン性のいずれかであり得る。好適なイオン性界面活性剤として、限定されないが、アルキルアンモニウム塩;フシジン酸塩;アミノ酸の脂肪酸誘導体、オリゴペプチド、およびポリペプチド;アミノ酸、オリゴペプチドおよびポリペプチドのグリセリド誘導体;レシチンおよび水素化レシチン;リゾレシチンおよび水素化リゾレシチン;リン脂質およびその誘導体;リゾリン脂質およびその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキル硫酸塩;脂肪酸塩;ドキュセートナトリウム;アシルアクチレート;モノ-およびジ-グリセリドのモノ-およびジ-アセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノ-およびジ-グリセリド;モノ-およびジ-グリセリドのクエン酸エステル;ならびにこれらの混合物などが挙げられる。
【0134】
前述の群内で、イオン性界面活性剤は、例として、レシチン、リゾレシチン、リン脂質、リゾリン脂質、およびこれらの誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキル硫酸塩;脂肪酸塩;ドキュセートナトリウム;アシルアクチレート;モノ-およびジ-グリセリドのモノ-およびジ-アセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノ-およびジ-グリセリド;モノ-およびジ-グリセリドのクエン酸エステル;ならびにこれらの混合物を含む。
【0135】
イオン性界面活性剤は、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEG-ホスファチジルエタノールアミン、PVP-ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸のラクチル酸エステル、ステアロイル-2-ラクチレート、ステアロイルラクチレート、スクシニル化モノグリセリド、モノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル、コリル、カプリル酸カプリルのイオン化形態であり得る。カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、リシノレイン酸塩、リノール酸塩(linoleate)、リノレン酸塩(linolenate)、ステアリン酸、ラウリルスルファート、硫酸テラセシル、ドキュセート、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、ならびにこれらの塩および混合物であり得る。
【0136】
親水性の非イオン性界面活性剤として、限定されないが、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴールグリセリド;ポリエチレングリコールアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリエチレングリコールアルキルフェノールなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノール;ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルおよびポリエチレングリコール脂肪酸ジエステルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオールと、グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸、およびステロールの群の少なくとも1つとの親水性エステル交換生成物;ポリオキシエチレンステロール、その誘導体、および類似体;ポリオキシエチル化ビタミンおよびその誘導体;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;およびこれらの混合物;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオールと、トリグリセリド、植物油、および水素化植物油の群の少なくとも1つとの親水性エステル交換生成物などが挙げられる。ポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、または糖類であり得る。
【0137】
他の親水性-非イオン性界面活性剤として、限定されないが、ラウリン酸PEG-10、ラウリン酸PEG-12、ラウリン酸PEG-20、ラウリン酸PEG-32、ジラウリン酸PEG-32、オレイン酸PEG-12、オレイン酸PEG-15、オレイン酸PEG-20、ジオレイン酸PEG-20、オレイン酸PEG-32、オレイン酸PEG-200、オレイン酸PEG-400、ステアリン酸PEG-15、ジステアリン酸PEG-32、ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-100、ジラウリン酸PEG-20、トリオレイン酸PEG-25グリセリル、ジオレイン酸PEG-32、ラウリン酸PEG-20グリセリル、PEG-30ラウリン酸グリセリル、PEG-20ステアリン酸グリセリル、PEG-20オレイン酸グリセリル、PEG-30オレイン酸グリセリル、PEG-30ラウリン酸グリセリル、PEG-40ラウリン酸グリセリル、PEG-40パーム核油、PEG-50硬化ヒマシ油、PEG-40ヒマシ油、PEG-35ヒマシ油、PEG-60ヒマシ油、PEG-40硬化ヒマシ油、PEG-60硬化ヒマシ油、PEG-60com油、PEG-6カプリル酸/カプリル酸グリセリド、PEG-8カプリル酸/カプリル酸グリセリド、ポリグリセリル-10ラウレート、PEG-30コレステロール、PEG-25フィトステロール、PEG-30ダイズステロール、PEG-20トリオレエート、PEG-40ソルビタンオレエート、PEG-80ソルビタンラウレート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE-9ラウリルエーテル、POE-23ラウリルエーテル、POE-10オレイルエーテル、POE-20オレイルエーテル、POE-20ステアリルエーテル、トコフェリルPEG-100スクシネート、PEG-24コレステロール、ポリグリセリル-10オレエート、Tween40、Tween60、Tween80、スクロースモノステアレート、スクロースモノラウレート、スクロースモノパルミテート、PEG10-100ノニルフェノールシリーズ、PEG15-100オクチルフェノールシリーズ、およびポロキサマーなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、界面活性剤はTweenである。いくつかの実施形態では、界面活性剤はTween80である。
【0138】
好適な親油性界面活性剤として、単なる例として、脂肪アルコール;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ステロールおよびステロール誘導体;ポリオキシエチル化ステロールおよびステロール誘導体;ポリエチレングリコールアルキルエーテル;糖エステル;糖エーテル;モノグリセリドおよびジグリセリドの乳酸誘導体;ポリオールと、グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸およびステロールの群の少なくとも1つとの疎水性エステル交換生成物;油溶性ビタミン/ビタミン誘導体;ならびにこれらの混合物などが挙げられる。この群内で、好ましい親油性界面活性剤は、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびこれらの混合物を含むか、またはポリオールと植物油、硬化植物油、およびトリグリセリドの群の少なくとも1つとの疎水性エステル交換生成物である。
【0139】
一実施形態では、組成物は、本開示の化合物の良好な可溶化および/または溶解を確実にし、本開示の化合物の沈殿を最小限に抑えるために、溶媒/可溶化剤を含み得る。これは、注射に特に重要であり得る。親水性薬物および/または界面活性剤などの他の成分の溶解度を増加させるために、または組成物を安定したもしくは均質な溶液もしくは分散液として維持するために、可溶化剤を添加してもよい。好適な溶媒/可溶化剤の例として、限定されないが、アルコールおよびポリオール、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびこれらの異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール(transcutol)、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他のセルロース誘導体、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体;約200~約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル、例えば、テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール)またはメトキシPEG;アミドおよび他の窒素含有化合物、例えば、2-ピロリドン、2-ピペリドン、ε-カプロラクタム、N-アルキルピロリドン、N-ヒドロキシアルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、N-アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、およびポリビニルピロリドン;エステル、例えば、エチルプロピオネート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリエチルシトレート、エチルオレエート、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセタート、プロピレングリコールジアセテート、ε-カプロラクトン、およびこれらの異性体、δ-バレロラクトンおよびその異性体、ベータ-ブチロラクトンおよびその異性体;ならびにジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、N-メチルピロリドン、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、および水などの当技術分野で公知の他の可溶化剤などが挙げられる。いくつかの実施形態では、可溶化剤はベンジルアルコールである。
【0140】
可溶化剤の混合物を使用してもよい。例として、限定されないが、トリアセチン、トリエチルシトレート、エチルオレエート、カプリル酸エチル、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、ポリエチレングリコール200-100、グリコフロール、トランスクトール(transcutol)、プロピレングリコール、およびジメチルイソソルビドなどが挙げられる。特に好ましい可溶化剤として、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エチルアルコール、PEG-400、グリコフロール、およびプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0141】
含まれ得る可溶化剤の量は特に限定されない。所与の可溶化剤の量は、当業者によって容易に決定され得る生物学的に許容可能な量に限定され得る。いくつかの状況では、例えば、薬物の濃度を最大化するために、生物学的に許容可能な量をはるかに超える量の可溶化剤を含めることが有利であり得、過剰な可溶化剤は、蒸留または蒸発などの従来の技法を使用して患者に組成物を提供する前に除去される。存在する場合、可溶化剤は、薬物および他の賦形剤を合わせた重量に基づいて、10重量%、25重量%、50重量%、100重量%、または約200重量%までの重量比であり得る。所望される場合、5%、2%、1%、またはそれ未満などの非常に少量の可溶化剤も使用され得る。典型的には、可溶化剤は、約1重量%~約100重量%、より典型的には、約5重量%~約25重量%の量で存在し得る。
【0142】
加えて、酸または塩基は、加工を容易にするため、安定性を高めるため、または他の理由で組成物に組み込むことができる。薬学的に許容可能な塩基の例として、アミノ酸、アミノ酸エステル、アンモニウムヒドロキシド、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素ナトリウム、カルボネート、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ハイドロカルサイト、マグネシウムアルミニウムヒドロキシド、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)などが挙げられる。酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸などの薬学的に許容可能な酸の塩である塩基も適している。リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、およびリン酸二水素ナトリウムなどのポリプロトン酸の塩も使用することができる。塩基が塩である場合、カチオンは、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの任意の好都合で薬学的に許容可能なカチオンであり得る。例として、限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、およびアンモニウムなどが挙げられ得る。
【0143】
本開示の組成物における使用に好適な酸は、薬学的に許容可能な有機または無機酸である。好適な無機酸の例として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸などが挙げられる。適切な有機酸の例として、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸などが挙げられる。
【0144】
一態様では、以下の式(I)に記載の化合物を含む医薬組成物、
【0145】
【化18】
またはその薬学的に許容可能な塩が本明細書に提供され、
式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、-ON(=O)、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、またはC
2-5アルキニルであり、ここで、各アルキル、アルケニル、またはアルキニルは独立して、任意選択で、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
10、-SR
10、-S(=O)R
10、-S(=O)
2R
10、-NR
11R
12、-C(=O)NR
11R
12、-S(=O)NR
11R
12、-S(=O)
2NR
11R
12、-C(=O)R
10、-C(=O)OR
10、-NR
13C(=O)R
10、-NR
13C(=O)NR
11R
12、-NR
13S(=O)
2R
10、-NR
13S(=O)
2NR
11R
12、-C(=S)R
10、-N(=O)、-SN(=O)、-NR
13N(=O)、および-ON(=O)からなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換され、
R
9は、C
1-9アルキル、C
2-9アルケニル、C
2-9アルキニル、または3から10員のヘテロシクロアルキルであり、R
9は、少なくとも1つの四級アンモニウム基またはホスホニウム基で置換され、
各R
10は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルであり、
各R
11およびR
12は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、もしくはC
3-6シクロアルキルであるか、またはR
11およびR
12は、それらが結合する窒素原子と一体となって、任意選択で置換される3から10員のヘテロシクロアルキルであり、ならびに
各R
13は独立して、H、C
1-5アルキル、C
2-5アルケニル、C
2-5アルキニル、C
1-5ヘテロアルキル、C
1-5ハロアルキル、またはC
3-6シクロアルキルである。
【0146】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約50重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約30重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0重量%~約30重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10重量%~約30重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約15重量%~約30重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約15重量%~約25重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約20重量%~30重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約23重量%~約27重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約24重量%~約26重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約2重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約3重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約4重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約5重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約6重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約7重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約8重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約9重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約11重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約12重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約13重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約14重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約15重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約16重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約17重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約18重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約19重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約20重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約21重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約22重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約23重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約24重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約25重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約26重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約27重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約28重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約29重量%の水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約30重量%の水を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも約0.1重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.1重量%~約10重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1重量%~約5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.1重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.2重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.3重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.4重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.6重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.7重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.8重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.9重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1.5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約2重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約2.5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約3重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約3.5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約4重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約4.5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約5.5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約6重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約6.5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約7重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約7.5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約8重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約8.5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約9重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約9.5重量%の式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10重量%の式(I)の化合物を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約10mg/mLの量で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約20mg/mLの量で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約25mg/mLの量で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約50mg/mLの量で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約75mg/mLの量で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約100mg/mLの量で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約150mg/mLの量で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約200mg/mLの量で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約250mg/mLの量で組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約400mg/mLの量で組成物中に存在し得る。
【0149】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、または約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg。約1500mg、約1550mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、約1800mg、約1850mg、約1900mg、約1950mg、または約2000mgの量で組成物中に存在し得る。
【0150】
注射用医薬組成物
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物および注射に好適な薬剤用賦形剤(pharmaceutical excipient)を含有する注射用医薬組成物を提供する。組成物中の成分および薬剤の量は、本明細書に記載される通りである。
【0151】
本開示の組成物が注射による投与のために組み込まれ得る形態として、ゴマ油、トウモロコシ油、綿実油、またはピーナッツ油、およびエリキシル剤、マンニトール、デキストロース、または滅菌水溶液、および類似の薬剤用ビヒクル(pharmaceutical vehicle)を含む水性もしくは油性懸濁液、またはエマルジョンなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物は、溶媒(例えば、水、アルコール、グリコール)、可溶化剤、溶媒、および界面活性剤を含む。
【0152】
生理食塩水中の水溶液もまた、注射のために従来から使用されている。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど(およびそれらの適切な混合物)、シクロデキストリン誘導体、および植物油もまた使用され得る。適切な流動性は、例えば、分散液の場合には必要とされる粒径を維持するためのレシチンなどのコーティングの使用によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。
【0153】
滅菌注射可能な溶液は、必要とされる量の本開示の化合物を、必要に応じて上に列挙した様々な他の成分と共に適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。概して、分散液は、様々な滅菌活性成分を、基本分散媒および上に列挙したものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、特定の望ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、これは、その予め滅菌濾過した溶液から活性成分および任意の追加の所望の成分の粉末を産生する。
【0154】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口、局所、経皮、頬側、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、腫瘍内、および/または腹腔内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は注射用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腫瘍内注射用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、注射剤、パッチ、クリーム、ゲル、または軟膏として製剤化される。
【0155】
キット
本発明はまた、キットを提供する。キットは、使用説明書、臨床試験の考察、副作用のリストなどを含み得る書面による資料とともに、式(I)の化合物および1つまたは複数の追加の薬剤を含む医薬組成物を適切な包装中に含み得る。このようなキットはまた、組成物の活性および/もしくは利点を示すかもしくは確立する、ならびに/または投与すること(dosing)、投与(administration)、副作用、薬物相互作用、もしくは医療従事者に有用な他の情報を記載する、科学文献の参照、添付文書資料、臨床試験結果、ならびに/またはこれらの要約などの情報を含み得る。このような情報は、様々な試験、例えば、in vivoモデルを含む実験動物を用いた試験およびヒト臨床試験に基づく試験の結果に基づき得る。キットは、別の薬剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、本発明の化合物および薬剤は、キット内の別々の容器中の別々の組成物として提供される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物および薬剤は、キット中の容器内の単一の組成物として提供される。好適な包装および使用のための追加の物品(例えば、液体調製物用の計量カップ、空気への曝露を最小限に抑えるためのホイルラッピングなど)は、当技術分野において公知であり、キットに含まれ得る。本明細書に記載のキットは、医師、看護師、薬剤師、処方責任者などを含む医療提供者に提供、販売および/または販売促進することができる。キットはまた、いくつかの実施形態では、消費者に直接販売されてもよい。
【実施例】
【0156】
実施例1:臨床試験
本明細書に記載の臨床試験は、ダーカム病(DD)脂肪腫を有する対象に対する化合物1(塩化物塩として提供され、化合物1Aとも称される5-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N,N-トリメチルペンタン-1-アミニウム)の安全性および有効性の評価のための二重盲検無作為化プラセボ対照第2b相臨床試験であった。
【0157】
試験目的。主要目的は、処置群とプラセボ群とを比較して、注射後84日目とベースライン時の脂肪腫の高さの平均低減率を評価することであった。有効性は、処置後とベースライン時の脂肪腫/結節の寸法に対する超音波評価によって決定した。重要な副次的目的は、比較疼痛スケールを用いた脂肪腫/結節に関連する疼痛の評価であった。安全性は、有害事象の頻度によって、ならびにバイタルサイン、臨床検査値(clinical laboratory)およびECGのベースライン値からの変化によって評価した。
試験デザイン。本試験は、脂肪腫を有するDD対象に対する二重盲検多施設共同無作為化プラセボ対照臨床試験であった。計38名のDD患者を試験に組み入れた。患者を、介入群またはプラセボ群のいずれかに約1:1の比で無作為に割り付けた。計125個の脂肪腫を有する対象20名は化合物1で処置した。計110個の脂肪腫を有する対象18名はプラセボで処置した。投与の84日後、試験の終了次第、コードを開いた。
【0158】
対照は、一回に複数回注射により試験処置を受けた。投与量(Dosing)は、超音波によって判定された脂肪腫の大きさ(直径)に従って算出した。
【0159】
表1に従って対象に投与を行った。注射は、注射される皮膚表面に対して垂直(90°)であり、少なくとも1cm離れて無作為に広げられた。
【0160】
【0161】
対象ごとに少なくとも4個、好ましくは6個、および8個以下の脂肪腫/結節に注射を行った。注射部位ごとの化合物1の用量は5mgであり、注射点間で1cm~3cmの距離を維持することで、脂肪腫の脂肪内での化合物1の良好な散布を可能とした。対象ごとに最大240mgの最大用量(1回あたり5mgの注射を計48回)を本試験で許容し、実際の最大試験用量は対象ごとに200mg(4個~8個の脂肪腫に40回の注射)であった。計20名の患者を化合物1で処置し、計18名の患者をプラセボで処置した。
【0162】
主要評価項目は、化合物1処置群とプラセボ群とを比較したときの、超音波によって評価した注射後84日目とベースライン時の脂肪腫/結節の高さの平均低減率であった。重要な副次的評価項目は、比較疼痛スケールによって測定される、84日目とベースライン時における脂肪腫/結節ごとの局所疼痛スコアの低減であった。比較疼痛スケールにより、疼痛を0から10のスコアでランク付けした。0のスコアは疼痛がないことを示し、1~3のスコアは軽度の疼痛を示し、4~6のスコアは中等度の疼痛を示し、7~10のスコアは重度の疼痛を示した。2つのレベル、すなわち(1)患者レベルで、および(2)脂肪腫によって、すなわち注射前後のすべての注射された脂肪腫の間の比較によって、疼痛を介入(化合物1)群とプラセボ群との間で比較した。
【0163】
治験薬。1バイアルキットに供給された、皮下脂肪注射用の使用準備済みの液体として、化合物1を投与した。各バイアルには、水、プロピレングリコール、および界面活性剤で構成されるビヒクル中、5mLにつき250mgの化合物1(50mg/mL)の溶液である化合物1が含まれる。この製剤を表2に記載する。
【0164】
【0165】
プラセボはビヒクルのみで構成される溶液であった。化合物1およびプラセボの注射薬はそれぞれ、0.1mlであった。ビヒクルは、1バイアルキットに供給された、皮下脂肪注射用の使用準備済みの液体であった。1つのバイアルに5mLが含まれ、化合物1製剤と類似の組成を有していたが、活性物質は含まれなかった。成分は、Tween-80、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、および水である。ビヒクルは、Nextar(イスラエル)が製造かつ包装し、cGMP規格に従うものである。
【0166】
統計的手法。すべての測定された変数および導出されたパラメータを個別に列挙し、適切な場合、記述統計によって表にした。カテゴリー変数については、試料の大きさ、絶対頻度、および相対頻度、ならびに試験群ごとの割合に対する95%CI(信頼区間)を与える要約表を提供する。連続変数については、試料の大きさ、算術平均、標準偏差、変動係数(CV%)、中央値、最小値、および最大値、ならびに試験群ごとの変数の平均に対する95%Cl(信頼区間)を与える要約表を提供する。すべての試験は両側試験であり、5%以下のp値は統計的に有意であると考慮されるであろう。SAS(登録商標)バージョン9.4(ノースカロライナ州ケーリー、SAS Institute)を使用してデータを分析した。
【0167】
患者ごとの分析(患者ごとに4~8個の脂肪腫/結節に基づく)。注射後84日目とベースライン時の脂肪腫/結節の高さの低減率における試験群間の統計的有意差を試験するために、独立標本に対する2標本T検定またはノンパラメトリックウィルコクソン符号順位検定(適宜)を適用した。脂肪腫/結節の高さの低減に関連すると疑われる共分散パラメータを同定し、上記の共変量に調整した処置群間の脂肪腫/結節の高さの低減率の差を試験するために、共分散分析(ANCOVA)モデルを適用する。
【0168】
脂肪腫/結節ごとの分析(患者ごとに4~8個の脂肪腫/結節に基づく)。MMRMモデル(反復測定のための混合効果モデル)を、ベースラインから84日目までの脂肪腫/結節の高さの低減率における群間の差を分析するために適用し、上記の共変量について適宜調整した。
【0169】
結果
ダーカム病の脂肪腫に対する化合物1の効果を、(1)ベースライン来診時および注射後28日目、56日目、および84日目の処置後のフォローアップ来診時における注射された各脂肪腫の超音波測定に基づく脂肪腫の高さおよび他の寸法の変化、(2)ベースライン来診時および注射後28日目、56日目、および84日目の処置後のフォローアップ来診時における注射された各脂肪腫の比較疼痛スケールに基づく脂肪腫疼痛の変化。
【0170】
脂肪腫疼痛の変化
注射された各脂肪腫の疼痛は、盲検の医師によって、注射前のベースライン来診時および各フォローアップ来診時に、本明細書に記載される比較疼痛スケールによって評価された。
【0171】
(i)脂肪腫ごとの脂肪腫疼痛の変化
合計125個の脂肪腫を、化合物1処置群においてベースラインでの疼痛について評価し、108個の脂肪腫をプラセボ群において評価した。表3は、処置群および試験来診による平均全脂肪腫疼痛を要約する。すべての脂肪腫の分析によるベースラインからの脂肪腫疼痛の変化(パーセンテージ)を表4に示す。
図1は、処置後84日の脂肪腫ごとの疼痛の低減率を示す。
【0172】
結果は、プラセボ群に対して化合物1処置群における脂肪腫ごとの疼痛の有意な低減を示す。全脂肪腫分析は、プラセボ群における37.50%±49.69に対して、化合物1処置群における59.06%±40.41の平均疼痛低減を示した。反復測定を伴う混合モデルによって試験された統計的有意性は、0.079のp値を生じた。t検定を使用した統計的差異の計算は、0.0004のp値を生じた。
【0173】
【0174】
【0175】
(ii)患者ごとの脂肪腫疼痛の変化
表5は、処置群および試験来診による患者別平均疼痛を示す。患者別分析によるベースラインからの脂肪腫疼痛の変化(パーセンテージ)を表6に示す。患者別分析は、プラセボ処置対象における36.82%±37.20の平均疼痛低減に対して、処置対象における56.37%±35.72の平均疼痛低減を示した(P=0.98)。
図2は、処置後84日目の患者ごとの疼痛の低減率を示す。
【0176】
【0177】
【0178】
結論
脂肪腫の高さの低減は有意ではなかったが、化合物1は、プラセボ群と比較して、脂肪腫別分析において疼痛の統計的に有意な低減を示し、患者ごとの分析において疼痛の低減の傾向を示した。いかなる理論または作用機序にも拘束されることを望むものではないが、疼痛低減のための化合物1処置の有効性は、注射された脂肪腫に脂肪組織が溶解されており、脂肪腫の密度を低下させ得、処置後の脂肪腫による神経への圧力の低下をもたらすという事実に関連し得る。
【0179】
化合物は、概して良好な耐容性を示した。重篤な有害事象は報告されず、血液パラメータの臨床的に有意な変化はなかった。有害事象は、ほとんどが注射部位の浮腫疼痛およびそう痒であった。
【0180】
いくつかの実施形態を示し、説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正形態および置換形態を作製することができる。例えば、特許請求の範囲の構築の目的のために、以下に記載される特許請求の範囲は、その文字通りの文言よりも狭く解釈されることは意図されず、したがって、本明細書からの例示的実施形態が特許請求の範囲に読み込まれることは意図されない。したがって、本発明は、例示として説明されており、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【国際調査報告】