(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】細胞培養システム
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20240806BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240806BHJP
C12N 5/0793 20100101ALI20240806BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20240806BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20240806BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20240806BHJP
C12N 5/079 20100101ALI20240806BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240806BHJP
C12M 1/22 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/071
C12N5/0793
C12N5/09
C12N5/0775
C12N5/077
C12N5/079
C12M1/00 A
C12M1/22
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024503422
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 FI2022050549
(87)【国際公開番号】W WO2023062268
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519096781
【氏名又は名称】タンペレ・ユニバーシティー・ファウンデーション・エスアール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】アッリ プリーマギ
(72)【発明者】
【氏名】チアラ フェデレ
(72)【発明者】
【氏名】テーム イハライネン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC08
4B029GA01
4B029GA02
4B029GA03
4B029GB09
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AC12
4B065BC41
4B065CA46
(57)【要約】
本開示は、細胞培養のためのシステム(200)、特に支持基板(201)、アゾベンゼン含有層(202)及び保護コーティング層(203)を含む光再構成可能なシステムに関する。 本開示は、システムのアゾベンゼン含有材料の表面に可逆的にトポグラフィーを刻むこと、システム上で細胞を培養する方法、及びその方法によって得られる細胞培養物にも関する。 また、このシステムを製造する方法も開示される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体(101、201)、アゾベンゼン含有中間層(102、202)、及び保護ポリマーを含む最上層(103、203)を含む、細胞培養のためのシステム(100、200)。
【請求項2】
前記アゾベンゼン含有層の厚さが50nm~5μmであり、そして前記最上層の厚さが20nm~100μm、好ましくは20nm~200nmである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アゾベンゼン含有層の厚さが50nm~5μmであり、そして前記最上層の厚さが50nm~100μmである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記支持構造体が、ペトリ皿、顕微鏡カバースリップ、及びウェルプレートなどの細胞培養ディスクから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
保護ポリマーがエラストマー及びヒドロゲルから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記エラストマーがシロキサンである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記シロキサンがPDMSである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記保護ポリマーがパリレン、好ましくはパリレンCである、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記アゾベンゼンが、N-エチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-4-(4-ニトロフェニルアゾ)アニリンである、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のシステムの製造方法であって、
a) 支持構造体を提供し、
b) 支持構造体をアゾベンゼン含有層でコーティングし、そして
c)アゾベンゼン含有層を保護ポリマーを含む最上層でコーティングすることを含む方法。
【請求項11】
工程b)のコーティングがスピンコーティングを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程c)のコーティングがスピンコーティングを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
工程c)のコーティングが、ポリマーがパリレン、好ましくはパリレンCである場合、化学蒸着重合を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか1項に記載のシステムのアゾベンゼン含有材料上にトポグラフィーを可逆的に刻むための方法であって、光ビームを前記材料にフォーカシングさせるか、又はレーザー光の干渉パターンを材料に投影することを含む方法。
【請求項15】
前記フォーカシングが、最上層上でレーザー光を走査することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記光の波長が400nm~600nm、好ましくは430nm~530nmである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記光の強度が 1Wcm
-2~5Wcm
-2である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
2つの干渉するレーザー光の波長が400nm~600nm、好ましくは430nm~530nmであり、そして2つの干渉するレーザー光の強度が100mWcm
-2~600mWcm
-2である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~9のいずれか1項に記載のシステムをパターン化する方法であって、 アゾベンゼン含有層の1 つ又は複数の領域を、レーザー、好ましくは連続波レーザーによって生成される400nm~600nmの光にさらすことにより、システムにトポグラフィー特徴を生成することを含む方法。
【請求項20】
前記レーザーによって生成される光の強度が 1Wcm
-2~5Wcm
-2である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の方法によって得られるパターン化されたシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のパターン化されたシステムのトポグラフィー特徴を消去するための方法であって、レーザー、好ましくは連続波レーザーによって生成される、又は蛍光灯もしくはLEDによって生成される400nm~600nmの光、好ましくは460nm~530nmの光にトポグラフィー特徴をさらすことを含む方法。
【請求項23】
レーザー、蛍光灯、又はLED によって生成される光の強度が1Wcm
-2~5Wcm
-2である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
細胞培養プラットフォームとしての、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム又は請求項21に記載のパターン化されたシステムの使用。
【請求項25】
請求項21に記載のパターン化されたシステム上で細胞を培養する、細胞培養方法。
【請求項26】
以下の工程:
a) パターン化されたシステムを提供する工程、
b) パターン化されたシステムの最上層を細胞接着タンパク質でコーティングする工程、及び
c) 細胞接着タンパク質上に細胞を播種する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、ニューロン、間葉幹細胞、星状細胞、心筋細胞、及び癌細胞から選択される、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞接着タンパク質が、コラーゲン、フィブロネクチン、及びラミニンから選択される、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
工程b)の前に酸素プラズマ処理を含む、請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
請求項25~29のいずれか1項に記載の方法により得られる細胞培養物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞培養のためのシステム、特にアゾベンゼン含有層および保護コーティング層を含む二層構造を含む光再構成可能なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品開発では、開発された新しい分子の90% 以上が臨床段階の試験で失敗する。 成功率が低い主な原因は、インビトロ 研究で使用される細胞モデルである。 これらのモデル システムは、人体の自然な状態を再現することはできない。生体内では、細胞の微小環境がさまざまな細胞機能を調節している。 従って、より優れた細胞ベースのモデルが明らかに必要とされている。そのためには、細胞の微小環境を含め、インビトロ細胞培養における動的なインビボ条件を可能な限り忠実に模倣することが重要である。
【0003】
現在、細胞は、細胞の動的な生体内微小環境、細胞ニッチの適切なシミュレーションを行わずに、主に細胞培養ディスク、フラスコ、プレートで培養されている。 これらの条件における大きな欠点の1 つは、表面の特徴、つまり表面トポグラフィーが欠如していることであり、細胞が人体内で遭遇する環境を十分に反映していないことである。 さらに、私たちの体内の付着細胞は継続的に変化し、周囲と相互作用している。 この挙動は動的な細胞外環境を作り出すが、これを インビトロで再現するのは困難である。
【0004】
微細パターン化された細胞培養基質を構築するために、さまざまなマイクロエンジニアリング手法が使用されているが、それらは通常、滑らかな構造ではなく正方形のトポグラフィーを特徴とし、細胞環境には似ていない。 さらに、それらは依然として再構成可能性又は表面の動的な変更の欠如に悩まされており、従って細胞に対して静的な環境しか提供しない。
【0005】
従って、細胞培養用の再構成可能な表面が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アゾベンゼン含有層及び保護コーティング層を含む二層構造を使用して光誘発表面特徴を作り出すことによって、表面トポグラフィーを繰り返し変更し、消去し、又は全体的に再構成できるという観察に基づいている。
【0007】
従って、本発明の目的は、支持構造体、アゾベンゼン含有中間層、及び保護ポリマーを含む最上層を含む細胞培養システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
また、本発明の目的は、細胞培養システムを製造する方法を提供することであり、ここで前記方法は、
a) 支持構造体を提供し、
b) 支持構造体をアゾベンゼン含有層でコーティングし、そして
c)アゾベンゼン含有層を保護ポリマーを含む最上層でコーティングすることを含む。
【0009】
また、本発明の目的は、システムのアゾベンゼン含有材料の表面に可逆的にトポグラフィーを刻む方法を提供することであり、この方法は、光ビームを材料に集束させるか、又はレーザー光の干渉パターンを材料に投影することを含む。
【0010】
また、本発明の目的は、システムをパターン化する方法で提供することであり、この方法は、アゾベンゼン含有層の1つ又は複数の領域を、レーザー、好ましくは連続波レーザーによって生成される400nm~600nmの光にさらすことにより、システムにトポグラフィー特徴を生成することを含む。
【0011】
また、本発明の目的は、請求項19に記載の方法によって得られるパターン化されたシステムを提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、パターン化されたシステムのトポグラフィー的特徴を消去するための方法を提供することであり、この方法は、レーザー、好ましくは連続波レーザーによって生成される、又は蛍光灯もしくはLEDによって生成される400nm~600nmの光、好ましくは460nm~530nmの光にトポグラフィー特徴をさらすことを含む。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、細胞培養プラットフォームとしてのシステム又はパターン化されたシステムの使用を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、細胞がパターン化されたシステム上で培養される、細胞培養方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、パターン化されたシステム上で細胞を培養する方法によって得られる細胞培養物を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、添付の従属請求項に記載されている。
【0017】
構造及び動作方法の両方に関する本発明の例示的且つ非限定的な実施形態は、その追加の目的及び利点と共に、添付の図面と併せて読むと、特定の例示的な実施形態についての以下の説明から最も良く理解される。
【0018】
この文書では、「含む(comprise)」及び「含む(include)」という動詞は、言及されていない機能の存在を除外したり要求したりしないオープンな制限として使用されている。 添付の従属請求項に記載された特徴は、特別な明示的な記載がない限り、相互に自由に組み合わせることができる。 さらに、この文書全体での「a」又は「an」、つまり単数形の使用は複数形を排除するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の例示的で非限定的な実施形態によるシステムを示す。
【0020】
【
図2】
図2は、光により誘発されるアゾベンゼン誘導体のトランス-シス異性化反応を示す。
【0021】
【
図3】
図3は、本発明の例示的なシステムのアゾベンゼンによるa)表面レリーフグラフト形成およびb)消去のグラフ表示を示す。
【0022】
【
図4】
図4は、本発明の例示的なシステムの干渉リソグラフィー、原子間力顕微鏡3D投影、平均断面プロファイル及びレーザー走査によって刻まれたトポグラフィーによって刻まれた正弦波表面レリーフ格子を示す。
【0023】
【
図5】
図5は、アゾベンゼンベースのフィルムを含む本発明の例示的なシステムの平らな(左)と1μm周期の正弦波トポグラフィー(右)上のマディン・ダービーイヌ腎臓上皮細胞との間の形態学的差異を示す。
【0024】
【
図6a】
図6aは、強度 300mWcm
-2 (488 nm、円偏光、プローブビーム波長633nm) で表面レリーフ格子 (SRG) を刻んだ際の、異なる厚さの PDMS での回折効率 (DE) 曲線 (各曲線の3回の測定で平均) を示している。 SRG 表記の末尾の DE 値の標準偏差は、±7%(DR1g)、0.5%(DR1g-PDMS
50)、±5%(DR1g-PDMS
1)、及び ± 6%(DR1g-PDMS
0.02)である。
【0025】
【
図6b】
図6bは、SRG刻印後のDR1g-1PDMS
0.02上の表面トポグラフィーのAFM画像を示す。
【0026】
【
図6c】
図6cは、SRG刻印後のDR1g-PDMS
1上の表面トポグラフィーのAFM画像を示す。
【0027】
【
図7】
図7は、a)500mWcm
-2の強度でのSRG刻印、及びb)530nmのLEDでのSRG消去の間の、PDMS層の異なる厚さの回折効率曲線;c)刻印(上)及び消去(下)後のDR1g-PDMS
1の表面トポグラフィーのAFM画像;d) 写真の刻印された(実線)及び消去された(破線)DR1g-PDMS
1のSRG変調深度の断面プロファイルを示す。
【0028】
【
図8】
図8は、コーティングされていない DR1g (左) とパリレン C の 90nm層でコーティングされた DR1g (右) のアセトンに対する耐性を示す。
【0029】
【
図9】
図9は、a)表面変調されたDR1g上のポリアクリルアミドヒドロゲルコーティングのグラフ表示;及び b) DR1g 光刺激によってヒドロゲル内に誘発された横方向ひずみの蛍光微粒子による DIC 分析を示す。
【0030】
【
図10】
図10は、以下を示す:a)細胞培養実験のためのDR1g-PDMS1サンプル調製の概略図;b) 細胞播種から 24 時間後の、平らなガラス基板上の MDCK II 細胞とDR1g及び DR1g-PDMS1の表面パターン化されたフィルムの光学顕微鏡画像、 黒い矢印はSRGのトポグラフィーの方向を示す、スケールバー: 50 μm;c)異なる時点(24時間、72時間)での、表面パターン化されたDR1g-PDMS1二重層上の免疫標識MDCK II細胞、 使用した標識は、DAPI (クロマチン)、E-カドヘリン (細胞間結合)、及び pFAK (成熟接着斑) であった。 接着斑の組織化は、pFAK 画像の高速フーリエ変換 (FFT) によって分析され、画像内の周期性が示された (1 次ピークで示される)。 黒い矢印は SRG のトポグラフィーの方向を示す。 スケールバー20μm。
【0031】
【
図11】
図11は、以下を示す:(a) 乾燥環境、及び b) 液体環境における、青色領域 (470 ± 40 nm) でフィルター処理された共焦点顕微鏡の蛍光灯による消去後の DR1g-PDMS1 上の SRG トポグラフィーの DHM 画像を、照射時間:5分、 スケールバー: 10μm、c) 乾燥環境及び d) 液体環境における、消去後の DR1g-PDMS1上の SRGトポグラフィーの表面プロファイル 。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1つの側面によれば、本開示は細胞培養のためのシステムに関する。 例示的なシステム100を
図1に示す。このシステムは、支持構造体101、アゾベンゼン含有中間層102、及び最上層103を備える。
【0033】
支持構造体は、細胞培養に使用される任意の支持構造体であり得る。 例示的な支持構造体は、ペトリ皿などの細胞培養ディスク、顕微鏡カバースリップ、及びウェルプレートである。 支持構造体は通常、プラスチック又はガラスで作られている。 ペトリ皿の形式の例は、ポリ(スチレン)及びガラス底のペトリ皿である。
【0034】
アゾベンゼンを含む材料は光で再構成可能である。 本明細書で定義されるように、光再構成可能な材料は、光にさらされるとその形状が再構成可能な材料である。 アゾベンゼン分子は置換されていても非置換であってもよい。 例示的なアゾベンゼン単位の光誘起変換を図 2 に示す。ここで、R と R‘は異なるパラ置換基を指す。 メタ位とオルト位に異なる置換基を付加することもできる。 本技術に適したアゾベンゼンの例は、エチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-4-(4-ニトロフェニルアゾ)アニリンである。
【0035】
最上層は、エラストマーやヒドロゲルなどの保護ポリマーで構成されている。 例示的なエラストマーは、ポリジメチルシロキサン、PDMSなどのシロキサン含有ポリマーである。
【0036】
別の実施形態によれば、保護ポリマーはパリレン、好ましくはパリレンC、すなわちポリ(クロロ-パラ-キシリレン)を含む。 さまざまな置換された [2.2] パラ-シクロファンが存在し、それによってフェニル環に官能基が導入される可能性がある。 これらの官能基により、官能化されたパリレンフィルムの堆積が可能になったり、さらなる官能化を受けて生物活性分子の固定化が可能になったりする。
【0037】
PDMS 及びパリレンCは、優れた機械特性及びバリア特性、疎水性、耐薬品性、生体適合性があるため、好ましいコーティング剤である。 パリレンC のさらなる利点は、パリレン C を蒸着してピンホールのない超薄膜を生成できることである。 さらに、パリレンC は半結晶質であるにもかかわらず、対象範囲の厚さでは非常に透明である。
【0038】
1つの実施形態によれば、アゾベンゼン含有層の厚さd1は50nm~5μmであり、最上層の厚さd2は20nm~100μm、好ましくは20nm~200nmである。
【0039】
別の実施形態によれば、アゾベンゼン含有層の厚さd1は50nm~5μmであり、最上層の厚さd2は50nm~100μmである。 アゾベンゼン含有層の厚さの例は500nmである。
【0040】
保護ポリマーがPDMS又はパリレンCである場合、最上層の厚さは90nm未満であることが好ましい。
【0041】
保護ポリマーがヒドロゲルである場合、最上層の厚さは50μm未満であることが好ましい。
【0042】
本開示はまた、細胞培養のためのシステム100を製造する方法にも関し、この方法は以下の工程を含む。
a)支持構造体101を設ける工程、
b)支持構造体をアゾベンゼン含有層102でコーティングする工程、及び
c)アゾベンゼン含有層を、保護ポリマーを含む最上層103でコーティングする工程。
【0043】
支持構造体は、好ましくは、ペトリ皿、顕微鏡カバースリップ、ウェルプレートから選択される。 1つの実施形態によれば、保護ポリマーはヒドロゲル又はエラストマーを含む。 エラストマーの例はシロキサンである。 特定のシロキサンは PDMS である。
【0044】
別の実施形態によれば、保護ポリマーはパリレンを含む。 特定のパリレンはパリレンCである。
【0045】
1つの実施形態によれば、工程b)のコーティングはスピンコーティングを含む。
【0046】
別の実施形態によれば、工程c)のコーティングはスピンコーティングを含む。 保護ポリマーがPDMSなどのシロキサンである場合には、スピンコーティングが好ましい。
【0047】
別の実施形態によれば、工程c)のコーティングは化学蒸着重合を含む。 これは、保護ポリマーがパリレンCなどのパリレンを含む場合に好ましい方法である。
【0048】
マイクロ及びサブマイクロメートルスケールのトポグラフィーは、光干渉リソグラフィー、デジタルマイクロミラーデバイス、マイクロレンズアレイにより、又は単にフィルム表面上でレーザービーム(例えば、レーザー走査型顕微鏡から)を走査することによって、アゾベンゼン含有材料の表面に可逆的に刻むことができる。集束した光ビームが存在すると、アゾベンゼンベースの薄いコーティングは光ビームの焦点体積内に蓄積したり、光線の焦点体積から漏れたりする傾向がある。 従って、光ビームの走査動作により、描画ツールと同様に任意の形状を書き込むことができる。
【0049】
本発明の例示的なシステムに対するトポグラフィー的特徴の生成及びそこからの消去の概略図を
図3に示す。
【0050】
従って、システムのアゾベンゼン含有材料の表面にトポグラフィーを可逆的に刻む方法を提供することも本開示の側面である。 1つの実施形態によれば、この方法は、光ビームを前記材料に集束させる工程を含む。 特定の実施形態によれば、この方法は、アゾベンゼン含有層上でレーザービームを走査する工程を含む。
【0051】
別の実施形態によれば、システムのアゾベンゼン含有材料の表面にトポグラフィーを可逆的に刻むための方法は、干渉リソグラフィーを利用する。 この実施形態によれば、この方法は、レーザー光の干渉パターンを材料に投影することを含む。
【0052】
中間層は最上層でコーティングされるので、最上層にもトポグラフィーが形成される。
【0053】
可逆的に刻むことは、パターン化と消去を含む。パターン化及び消去に使用される光の波長は、典型的には400nm~600nm、好ましくは430nm~530nmである。 適切な強度範囲は、使用する技術によって異なる。 たとえば、干渉リソグラフィーには 100mWcm-2 ~ 600mWcm-2 で十分であるが、レーザー走査型共焦点顕微鏡でのパターン化/消去には約 1Wcm-2 ~ 5Wcm-2 が使用される。
【0054】
1つの実施形態によれば、パターン化のためには、この方法は、アゾベンゼン含有層の1つ又は複数の領域を、レーザー、好ましくは連続波レーザーによって生成される400nm~600nm、好ましくは430nm~530nmの光に曝露し、それによってトポグラフィー的特徴をシステムに生成することを含む。 レーザーによって生成される光の例示的な強度は、好ましくは1Wcm-2 ~5Wcm-2 である。
【0055】
実施形態によれば、消去のためには、パターン化されたシステムのトポグラフィー的特徴は、レーザー、好ましくは連続波レーザーによって生成される400nm~600nm、好ましくは430nm~530nmの光にさらされる。 レーザーによって生成される光の強度の例は、1Wcm-2 ~5Wcm-2である。
【0056】
上で開示された方法によって取得可能な本開示の例示的なシステム300が
図4に示されている。 この図は、干渉リソグラフィーによって刻まれた正弦波表面レリーフ格子、原子間力顕微鏡の3D 投影、システムのレーザー走査によって刻まれた平均断面プロファイル及びトポグラフィーも示している。
【0057】
別の態様によれば、本開示は、システムのアゾベンゼン含有層の1つ又は複数の領域を、レーザー、好ましくは連続波レーザーによって生成される400nm~600nm、好ましくは430nm~530nmの光にさらすことによるシステムのパターン化し、これにより、システムにトポグラフィー的特徴を生成する方法に関する。光の強度は通常、1Wcm-2 ~5Wcm-2 である。 例示的な波長は488nmであり、アゾベンゼン含有物質がエチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-4-(4-ニトロフェニルアゾ)-アニリンである場合、これは好ましい波長である。 例示的な強度は1Wcm-2である。
【0058】
本開示はまた、レーザー、好ましくは連続波レーザーによって生成される460nm~530nmの光をトポグラフィー的特徴にさらすことによってシステムからトポグラフィー的特徴を消去する方法にも関する。 例示的な波長は、470nm、488nm、及び530nmである。 別の実施形態によれば、消去は、430nm~530nmの範囲でフィルタリングされた蛍光灯によって生成される光を使用することによって実行される。 レーザーによって生成される例示的な強度は、1Wcm-2 である。 蛍光灯によって生成される光の強度は、通常、1Wcm-2 ~5Wcm-2 である。 消去は、上記のレーザーや蛍光灯のほか、LEDを用いて行うこともできる。
【0059】
本発明により、自由形状のトポグラフィーパターンを細胞培養基材上に作成することが可能になる。 さらに、細胞がすでに基板上で成長している場合でも、均一な光源 (蛍光灯、LED ライト、レーザーなど) を使用してトポグラフィーを消去し、そして培養皿に新しいパターンを作成するために書き換えることができ、 これにより、人体の動的な状態をよりよく模倣し、動的なトポグラフィーを作成することが可能になる。
【0060】
従って、上面にトポグラフィー的特徴を含むシステム上で細胞を培養するための方法を提供することが本開示のさらに1つの側面である。 トポグラフィー的特徴を含むシステムは、上に開示したように入手可能である。
【0061】
例示的な実施形態によれば、この方法は以下の工程を含む:
a) パターン化されたシステムを提供する工程、
b) パターン化されたシステムの最上層を細胞接着タンパク質でコーティングする工程、及び
c) 細胞接着タンパク質上に細胞を播種する工程。
【0062】
好ましい実施形態によれば、この方法は、工程b)の前にシステムを酸素プラズマ処理にかける工程を含む。
【0063】
例示的な細胞は、上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、ニューロン、間葉幹細胞、星状細胞、心筋細胞、及び癌細胞からなる群から選択される。
【0064】
この方法に適した細胞接着タンパク質の例は、コラーゲン、フィブロネクチン、及びラミニンからなる群から選択される。 細胞接着タンパク質の選択は、播種する細胞の種類によって異なる。
【0065】
本発明のシステムは、アゾベンゼン含有二重層を使用して光誘発表面特徴を生成することに基づいて、表面トポグラフィーの堅牢な再構成可能な制御を可能にする。 1つの実施形態によれば、細胞培養ディスクは、表面の容易な化学修飾を可能にし、生体適合性を確保し、既存のタンパク質堆積技術を完全にサポートする保護シロキサン層を提供するアゾベンゼン含有ポリマーフィルムでコーティングされる。 別の実施形態によれば、細胞培養ディスクは、表面の容易な化学修飾を可能にし、生体適合性を確保し、既存のタンパク質堆積技術を完全にサポートする保護パリレンC層を提供するアゾベンゼン含有ポリマーフィルムでコーティングされる。
【0066】
インビボでは、細胞と周囲の細胞外マトリックス(ECM)との動的相互作用は、組織の形態形成、治癒、腫瘍増殖などの多くの生理学的及び病理学的プロセスの調節において重要な役割を果たしている。 本発明は、表面特徴を光で操作できるため、細胞外ニッチ、(多)細胞の空間配置、配向、及び移動のリアルタイム制御を可能にする。 このプロセスは可逆的で、遠隔制御可能で非侵襲性であり、これは、例えば、細胞分化、幹細胞表現型収集、組織再生、細胞の方向性遊走の誘発、並びにトポグラフィー的及び化学的合図の切り離しなどの時間プログラムの定義にとって重要であると考えられる。体内では、細胞は、機械伝達と呼ばれるプロセスで生化学的活動に変換できるさまざまな種類の生物物理学的手がかりにさらされる。 これらの合図は、細胞の整列や移動などの重要な共同調節因子である。 例えば、筋肉、神経細胞、及び内皮細胞は、私たちの体内で高度に整列した組織を示し、細胞の遊走は細胞環境のトポグラフィー的特徴に大きく影響される。
【0067】
光誘発パターン化の実現可能性と細胞に対するその効果を実証するために、上皮細胞を平らな表面(
図5、左)及び光誘発アゾベンゼン含有材料を含むシステムの表面(
図5、右)で培養した。 図からわかるように、表面トポグラフィーは細胞の整列と移動に大きな影響を与える。
【0068】
結果及び議論
DR1g-PDMS 二層構造におけるSRGの書き込みと消去の特性評価
プラットフォームを組み立てるために、まずカバーガラスをエチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-4-(4-ニトロフェニルアゾ)-アニリンの光パターン化可能な非晶質薄層、すなわちさらに PDMSでコーティングされたディスパースレッド1含有分子ガラス(DR1g;厚さ480± 20nm)でコーティングした。得られた DR1g-PDMS二重層構造は、DR1g が光応答部分として機能する光応答性細胞培養プラットフォームとして使用された。
【0069】
SRG 形成に対するPDMS (ベース: 硬化剤比 10:1) の効果を研究するために、n-ヘキサン中の 3つの異なる PDMS プレポリマー希釈液 (0.02、1、及び 50wt-%) を同じスピンコーティングパラメータで試験した。 これらのサンプルは、ここでは DR1g-PDMSx と表示される。ここで、x はヘキサン中の PDMS 濃度を表す。 PDMS層の厚さは、エリプソメトリー及びプロフィロメトリーによって測定された。 0.02 及び 1wt% 層の正確な測定には偏光解析法が使用され、最も厚い PDMS 層 (50 wt%) には表面形状計が使用された。 厚さは4.5μm(DR1g-PDMS50)、65nm(DR1g-PDMS1)、20nm(DR1g-PDMS0.02)であった。DR1g-PDMS 二重層は、ロイズミラー構成で光干渉リソグラフィーを使用して光パターン化され、DR1g 内の質量移動と PDMS コーティングの表面変形を誘発して SRG を形成した。 干渉パターンの周期性は、波長とミラーとレーザー光線の間の角度によって決まった。 角度を変えることで、異なる周期性の SRG を実現できる (およそ 300nm ~ 10 μm の範囲)。ここでは、この周期が同じ材料の上皮細胞の配列を制御する際に以前に使用されていたため、周期を1μm に設定した。 異なる DR1g-PDMS 二重層内の SRG 形成の現場 モニタリングは、回折効率 (DE) 測定によって実施された。 DR1g 膜の厚さ (480 ± 20nm) は、SRG の形成が層の厚さの小さな変動に依存しないように十分な厚さになるように選択された。 従って、DE の違いはもっぱら PDMS 層の違いによるものであった。SRの形成を確認するために、サンプルを原子間力顕微鏡 (AFM) で画像化した。
【0070】
DR1g-PDMS 二重層への SRG 書き込み中の DE 曲線を図 6a に示す。 これらの画像から、PDMS 層の厚さが増加するにつれてDE が体系的に減少することが観察できる。 AFMイメージングにより、DR1g-PDMS
0.02及びDR1g-PDMS
1のSRGが1μmの予想周期で形成されていることが確認された(
図6b、c)。 表面変調深さは、DR1g-PDMS
0.02 では 400nm 以上であったが、DR1g-PDMS
1では、変調深さは大幅に減少し、160nmに達した。DR1g-PDMS
50では、AFM では正弦波パターンが観察できなかったため、SRG は PDMS コーティングの外表面に形成されなかった。8%DEは、DR1g/PDMSインターフェースでの回折格子形成に起因すると考えられる。 アゾベンゼンを含むフィルムがガラス基板と保護コーティングの間にある場合、効率的に移動するためのより強い制約が課せられる。 SRG の形成には材料の質量移動が必要であるため、厚い PDMS 層の存在により、SRG 形成中にDR1gが受ける複雑な応力場に対する障害が増大する。 従って、DR1g薄膜上の 100 nm 未満の厚さの PDMS コーティングは、SRG の形成を阻害しないが、その形成の力学を変化させる。
【0071】
SRG の形成後、トポグラフィーはDR1gのガラス転移温度 (71℃) より低い温度で少なくとも 1年間は安定であるが、熱又はDR1gの吸収帯と一致する波長を持つ均一な光線で消去できる。 直接加熱は局所的に行うことができず、細胞培養条件と適合しないため、可視光(530nm LEDなど)でSRGを消去することが好ましい。 SRG 消去のダイナミクスを研究するために、同じ初期 DE 値 (約 7%、
図7a) を示すサンプルの消去中にDEを監視した。 消去のダイナミクスを
図7b に示す。全てのサンプルはプロセスの終了時に同様のDE値 (約 0.5%) に達したため、PDMS 層の厚さはDE値の観点から消去プロセスの有効性に影響を与えないようである。 ただし、PDMS の厚さが異なると消去ダイナミクスに明らかな違いが観察される。 興味深いことには、DR1g-PDMS
1では他のサンプルと比較してD が系統的により速く減少しており、適切な厚さのPDMS層がトポグラフィーの消去を加速することさえできることを示唆している。 DR1g-PDMS
50では、消去ダイナミクスは他のサンプルとは異なり、DEは2段階のプロセスで比較的ゆっくりと減少した。
【0072】
サンプルをAFMで画像化したところ、図 7c に示すように、トポグラフィーが DR1g-PDMS1 の初期値の85%まで減少していることが確認された。 図 7d の表面プロファイルは、消去されたトポグラフィーと消去されていないトポグラフィーの違いをさらに強調している。 変調深さの減少は、DR1g-PDMS0.02 では 70% であった。 DE 値が同様の値に達したとしても、AFM は、DR1g-PDMS1 では、消去されたトポグラフィーがより低い変調深度に達したことを示している。 これは、細胞培養研究のために DR1g-PDMS1を選択する動機となった。 格子が深い場合、均一なレーザービームによる消去は、より低い SRG と比較して効果が低くなる。従って、このサンプルで観察されたより高い残存格子から判断されるように、トポグラフィーの完全な消去は、DR1g-PDMS0.02 表面で達成するのがより困難である可能性がある。DR1g-PDMS1では、格子の深さが高速消去プロセスに有利であり、残留トポグラフィーが低くなり、細胞増殖実験中に必要な照射時間が制限される。 格子はまた、整列の点で細胞応答を誘発するのに十分な深さであった。 より厚い PDMS 層は、DR1g層を細胞から分離するためのより優れた保護層として機能する可能性がある。
【0073】
DR1g 層は、化学蒸着重合 (CVD) によってパリレンC (つまり、ポリ(クロロ-パラ-キシリレン) でコーティングされた。パリレンC のCVD は、各蒸着実行ごとにメイン蒸着チャンバーに挿入された4つの二次チャンバーによって仲介された。 このような二次チャンバーには上部に小さなオリフィスがあり、その機能は反応性モノマーの堆積速度を制御し、堆積される層の厚さを微調整することであった。 一般的に、蒸着されたパリレン膜の厚さは、機械に装填されたダイマーの質量に直接比例する。しかし、極薄膜(<100 nm)の場合、ダイマー質量の減少は、(非常に短く不安定な圧力のため)制御性と信頼性の低い堆積プロセスにつながる。 パリレンモノマーの平均自由行程よりも小さいサイズ(クヌーセン数が 1より大きい)の穴を通したパリレン分子の流出を利用することにより、 堆積された層の厚さは、反応性モノマーの正確な部分のみを二次チャンバーに入れることによって確実に得ることができる。
【0074】
準備された基板は触針形状測定法によって特性評価され、13nm~415nm の範囲の厚さを示した。 次いで、PDMSでコーティングされたサンプルについて上述したように、SRGの形成を試験した。 サンプルは、厚さが90nm 未満の全てのサンプルで SRG の形成を示した。 パリレンC層のバリア特性も試験された;透過性試験は、サンプルの表面にさまざまな有機溶媒 (アセトン、エタノール、イソプロパノール) と水を1μl 滴下することによって実行された。 数秒から3分以内に、溶媒滴は DR1g層の一部を溶解するか、最終的に蒸発するまでサンプルの表面上にそのまま残る。55nmを超えるサンプルは、予想通り、水の浸透に対して耐性があったが、有機溶媒 (特にエタノールとイソプロパノール) に対しても最適な保護を提供した。試験された最も強力な溶媒はアセトンで、これはパリレン層の厚さの上限を定義するために使用され、その上にSRGを形成することができ、同時にアセトンの浸透に対する一貫した信頼性の高い保護を示した (図 8)。
【0075】
ポリアクリルアミドヒドロゲル層も DR1g 基板のコーティングに使用された (図 9a、b)。 ポリアクリルアミドには、赤色光 (607nm) を発する蛍光微粒子が充填されている。 ヒドロゲルの厚さは 100 μm と推定された。 次に、ユーザー定義の関心領域 (ROI) において、レーザー走査型共焦点顕微鏡 (LSM 780、Zeiss) で 488 nm レーザーによって DR1g を光刺激した。 これらのROIでは、タイムラプス顕微鏡で捕捉され、デジタル画像相関 (DIC)で分析された蛍光微粒子によって示されるように、感光性材料の流れがヒドロゲル内で対応する変形を引き起こした。試験したヒドロゲル (2.8kPa) では、ひずみはヒドロゲルの内部に少なくとも 50 μm の深さまで伝わった。 この実験は、原理的には、DR1g の光誘起表面変形を使用して、ヒドロゲルなどの柔らかい材料を局所的かつ機械的に刺激できることを実証した。 このようなヒドロゲルには細胞を充填することができ、または細胞をヒドロゲル表面で培養することができる。
【0076】
SRG ガイドによる細胞アライメント
細胞は環境の物理的特性と機械的力をその表面で感知するが、これらの力は細胞の奥深く、さらには核にまで伝達される。 完治の主な部位は細胞とECMの接触で、主に細胞膜の多タンパク質複合体である接着斑である。 細胞とECMの界面での接着斑の形成は、細胞の付着、整列、移動を調節する。 カルシウム依存性膜貫通タンパク質である E-カドヘリンは、細胞間接触部位で見られる分子の 1 つである。 E-カドヘリンは特に接着結合に存在し、緊密で分極した上皮の形成中に細胞間界面で重要な役割を果たす。
【0077】
DR1g-PDMS
1 二重層上の微細トポグラフィーが集合的な細胞のアライメントを誘導できるかどうかを研究するために、Madin-Darby イヌ腎臓II 型 (MDCKII) 上皮細胞をSRG 上に播種し、その下のマイクロトポグラフィーとのアライメントを研究した。 この細胞株は、細胞の集団行動を研究するための優れたモデルを提供する。 マイクロトポグラフィー上の単一細胞の機械的伝達は主に研究されているが、細胞間の接触が完全に破壊されることなく協調運動が起こる細胞集合体については、そのような挙動はまだ完全には特徴付けられていない。
図10aは、サンプル前処理の概略図を示している。 簡単に説明すると、続いてDR1gとPDMS をスピンコートして二重層構造を形成し、前述のようにSRGを刻み込んだ。 パターン化の後、表面へのタンパク質の付着を改善するために、酸素プラズマ処理で表面を親水性にした。次に、表面への細胞接着を改善するために表面をコラーゲンIでコーティングし、MDCKII 細胞をサンプル上に播種し、最大72 時間培養した。 マイクロトポグラフィーに沿った細胞の移動をタイムラプス顕微鏡で追跡した。 細胞は、DR1-PDMS
1 への播種後最初の 24時間の間にすでに微細トポグラフィーに沿って整列した。24時間後、細胞は小さなコロニーを形成し、裸のDR1gと DR1g-PDMS
1 の両方でパターン方向に沿って伸びており、PDMS 層が細胞の下のトポグラフィーの感知を阻害していないことを示している (図 10b)。 細胞は、72時間の時点で集密的な細胞単層を形成した。
【0078】
細胞-物質及び細胞-細胞相互作用の観点から、マイクロトポグラフィーに対する細胞応答を、さまざまな時点でMDCKII細胞を免疫標識することによってさらに調査した。 単一細胞を区別するために、核をDAPIで染色した。 細胞間相互作用は、E-カドヘリンの細胞内局在を検出することによって研究された。 細胞播種から24時間後、細胞核は円形であったが、E-カドヘリンの局在化から観察されるように、細胞は表面の微細トポグラフィーに沿って細長い形態を持っていた(
図10c)。 さらに、E-カドヘリンは細胞質に蓄積しており、細胞はまだ成熟した細胞間接合を形成していなかった。72時間の時点では、細胞の形態は24時間の時点よりもあまり伸長していなかった。 72 時間後、細胞は均一な細胞層を形成し、E-カドヘリンは細胞間界面に局在し、二重層表面で強い細胞間相互作用を示した。E-カドヘリンの喪失は代わりに、上皮間葉転換(EMT)を示しており、上皮細胞は表現型の特徴を失い、より運動性が高く浸潤性の高い非分極間葉細胞に変化する。 E-カドヘリンは細胞間界面に局在しているため、二重層表面の細胞は72時間後に緊密な上皮層を形成していた。
【0079】
接着斑キナーゼ (FAK) は接着斑の発生に最初に存在する分子の 1 つであり、そのリン酸化は成熟した接着斑の形成を示す。 従って、接着斑の形態学的パラメーターは、リン酸化 FAK(pFAK)を免疫標識することによって研究された。 播種から 24 時間後に基底面の細胞端で接着斑が観察され、高速フーリエ変換 (FFT) を使用してその分布をさらに分析した。FFTは空間画像情報を周波数空間に変換し、周期的な特徴が強調されて特定の周波数パターンが生成される。分析により、細胞播種から24時間後に 1次周波数ピークが検出できることが示され(図 9c、pFAK 画像のFFT)、これは画像特徴 (pFAK) の周期的な分布を示している。 72 時間後、pFAK は依然として細胞端で観察されたが、均一な細胞層を形成した後、細胞の移動はより制限された。 接着斑チャネルの FFT では、一次周波数ピークがまだ見えており、接着斑が周期的に分布しており、細胞が依然としてトポグラフィー的手がかりからの情報を認識していることを示している。
【0080】
生細胞による SRG トポグラフィーの消去。 LEDを使用する代わりに、共焦点顕微鏡の蛍光灯(可視スペクトルの青色領域でフィルタリング)を使用して微細トポグラフィーを消去することで、測定直後の生細胞の観察が可能になった。 ほとんどの顕微鏡には生細胞培養に適した環境制御機能を装備できるため、このセットアップは生物学的環境にとって実用的であると考えられた。 消去パラメーターを設定するために、まず細胞を使用せずに室温で乾燥した液体環境で消去を実行した。明視野画像とデジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)画像からわかるように、蛍光灯で照明すると、乾燥環境と水性環境の両方で明確に区別できる円形の領域が得られ、表面プロファイルに関する定量的な結果が得られる(
図11a、b)。 DHM を使用して表面を監視することで、AFM と比較してより広い領域にわたる表面トポグラフィーの迅速かつ定量的な特性評価が可能になった。 DHM 画像は、照射後5分以内に変調深度が再現可能に減少することを示¥した。 乾燥条件では、変調深さは初期値から 75% 減少しまし(図 11c)、これは、表面粗さが56nm から14nm に減少したことで示されている。 液体環境では、消去領域の変調深度は 50% 減少し (
図11d)、さらに (部分的に) 消去された表面は著しく粗くなり、丸い表面特徴を示した。
【0081】
MDCKII 細胞をSRGトポグラフィー上に播種し、消去前に24時間培養して、マイクロトポグラフィーに沿った細胞の配向を可能にした。 湿潤雰囲気中、37℃で培地を上に置き、共焦点顕微鏡の蛍光灯でサンプルを5分間照射し、消去から2時間後に固定し、免疫標識した。 部分的な光消去は、トリプシン処理による細胞除去後、DHM によって確認された。PDMS層の存在下では、裸のDR1gと比較して消去はより均一になり、上記の丸い表面の特徴の数が大幅に減少した。 細胞に対する光毒性の可能性も研究された。 この実験では、カバーガラスの底面にDR1gをスピンコートし、ガラス基板が細胞と材料の界面にあるサンプル上に細胞を播種した。このような対照サンプルでは、消去プロセスと同様の光強度が細胞の平面に到達することが保証されたが、細胞接着部位にトポグラフィー的変化は生じなかった。 対照サンプルを蛍光灯で5 分間照射し、3時間の消去後に生死生存率 / 細胞毒性アッセイを実行した。 消去されていない領域と同様に、消去された領域では死んだ細胞が見られなかったため、細胞生存率に対する重大な急性光毒性影響は観察されなかった。 細胞形態に対する光毒性の影響を研究する場合、同様の接着特性を確保するために、PDMS を対照サンプルの反対側の細胞と材料の界面にスピンコートした。 照射から2時間以内では、細胞形態に有意な違いは観察されなかった。
【0082】
細胞グループは、消去後の形態の広がりが少なく、サイズが小さくなっていた。これは、トポグラフィーの変化後に基板付着が部分的に失われたことを示している可能性がある。 さらに、消去後、pFAK は細胞の端よりも細胞の中心に集中していることが観察された。 微細トポグラフィーが均一な上皮細胞層の下で消去された場合、顕著な形態変化は観察されなかった。 この観察は、強力な細胞間結合が形成された場合、少なくとも消去後2時間以内には、誘導表面トポグラフィーの喪失に応答して単層の上皮細胞がすぐには再配置されないことを示唆している。 接着斑配向の定量化は、上記と同様に実施した。 配向データは、小さな細胞グループで消去した後、接着斑がよりランダムに配向していることを示した。ただし、集密的な細胞層の場合には違いは観察されなかった。 これは、より小さな細胞グループが光誘起のトポグラフィー的変化を感知し、それに応じて接着斑の向きを変えることができることを示している。 消去は焦点の伸長と面積に影響を与えないようであった。 たとえ液体の存在下で共焦点顕微鏡のランプを使用してトポグラフィーの消去が部分的であったとしても、マイクロトポグラフィーと表面の粗さは変化する可能性がある。 トポグラフィーの変化は、小さな細胞グループの形態と接着斑の配向に影響を与えた。 しかし、少なくとも2時間の期間中は、集団的な形態学的反応や接着斑の配向は観察されなかった。 細胞は照射後も消去された表面に付着し、生存したままであった。
【0083】
結論
ここで紹介するプラットフォームは、光応答性アゾベンゼンを含むフィルムと薄い PDMS 又はパリレンCコーティングで構成されており、光応答性と細胞培養環境における材料の安定性を独立して制御できる。 これらの層は一緒になって二層構造を形成し、アゾベンゼン含有フィルムの光誘導運動による表面トポグラフィーの変更が可能になった。 SRGトポグラフィーは、PDMS 及びパリレンC 層の存在下で効率的に光書き込み及び消去されました。 MDCKII上皮細胞を光パターン化システムに播種すると、SRG トポグラフィーは、均一な上皮層の形成後も表面トポグラフィーに沿って局所接着配向を導くことができた。表面トポグラフィーは、生細胞の存在下で共焦点顕微鏡の蛍光灯を使用して変更でき、表面トポグラフィーの非侵襲的制御が可能になる。 SRGトポグラフィーの消去は部分的であったにもかかわらず、細胞剥離や細胞死を引き起こすことなくトポグラフィーを変更することができた。 従って、光媒介消去は、従来の顕微鏡セットアップで実行できるリアルタイム細胞実験のために材料のトポグラフィーを動的に制御する戦略である。 このプラットフォームはタンパク質でさらにパターン化することができ、トポグラフィー的及び生化学的手がかりを個別に制御し、さまざまな用途に合わせてさらに機能化することが可能になる。
【実施例】
【0084】
実験セクション
サンプル調製
ポリマーはPDMSである。 アゾベンゼン含有ディスパース レッド 1 分子ガラス (DR1g、Solaris Chem Inc.) とポリジメチルシロキサン (PDMS、SYLGARD 184、Dow) の二重層を、スピン コーティング (Laurell Technologies Corporation) によって正方形のカバーガラス上に調製した。 まず、カバーガラスをアセトン中で 10 分間2回超音波処理した。 濃度9%(w/v)のDR1gのクロロホルム溶液を調製した。 溶液 (35 μl) をカバーガラス (22x22mm2) 上に 1500rpm で 30 秒間堆積させた。 PDMS は、プレポリマー シリコーン エラストマー ベースと硬化剤を 10:1 の比率で混合することによって調製された。 未硬化の PDMS を n-ヘキサンで希釈して、50、1、及び 0.02wt% の溶液を作成した。溶液を薄い DR1g フィルム上に6000rpm で150秒間塗布し、55℃で1.5 時間硬化させた。 まず、上述のようにシリコン基板上にPDMS溶液をスピンコーティングすることによって、厚さ測定用のサンプルを調製した。 生成された PDMS フィルムの厚さは、反射エリプソメトリー (J.A、Woollam VASE) で測定された。 50重量%PDMS溶液はエリプソメトリー測定するには厚すぎる膜を形成したため、厚さを触針式表面計(Veeco Dektak 150)で測定した。 どちらの技術でも、解像度の限界はサブナノメートルの範囲にある。
【0085】
サンプル調製
ポリマーはパリレンCである。アゾベンゼンを含む ディスパース レッド 1分子ガラス (DR1g、Solaris Chem Inc.) とパリレン C (Galentis Ltd.) の二重層を、上に示したように ディスパース レッド 1 をスピン コーティングし、続いて、他の場所で説明されている浸出ベースの方法を使用して、パリレン C を化学蒸着 (Para Tech Coating Inc.)することによって正方形のカバーガラス上に調製した。 各二次堆積チャンバーの内部をより大きな主機械チャンバーと接続するオリフィスは、横方向のサイズが 200 μm ~ 8000 μm の範囲の正方形の穴であった。フィルムの最終的な厚さは、触針式粗面計(Bruker Dektak XT)を使用して推定された。 各堆積実行ごとに、2gのジクロロ-p-シクロファン二量体を、内部表面積19210mm 2 の4つの円筒形二次チャンバーとして機能する堆積システムに装填した。
【0086】
サンプル調製
ポリマーはポリアクリルアミドヒドロゲルである。円形のガラス製カバーガラス (13mm) を超音波浴中で 2% Hellmanex 溶液で 30 分間洗浄し、豊富な脱イオン水で洗浄し、注意深く乾燥させた。 ガラスカバースリップの不動態化は、PLL-PEG をグラフトすることで達成された。 0.1mg/ml PLL-g-PEG の PBS 溶液を 1 滴 (10 ~ 30 μl) カバースリップ上に滴下し、30 分間反応させた。 次いで、基板を多量の脱イオン水で洗浄した。試薬溶液は次のように調製した:アクリルアミド (10wt%)、ビス-アクリルアミド (0.03wt%)、蛍光微粒子 (0.04wt%)、N,N,N‘,N’-テトラメチル エチレンジアミン (TEMED、0.02vol%)、及び過硫酸アンモニウム (0.1wt%) をPBSに溶解した。次に、ゲル化溶液をDR1-gでコーティングされたカバーガラス上にピペットで移し、不動態化されたカバーガラスで 15 分間覆った。 ヒドロゲルの予想弾性率は2.8kPa、厚さは 100 μm である。
【0087】
表面レリーフ格子の書き込みと消去。二層構造は、ロイドミラー構成で干渉リソグラフィーを使用して光パターン化された。 表面レリーフ格子 (SRG) の書き込みは、円偏光、強度 500mWcm-2、面積 0.50cm2の 488nm 連続波レーザー (Coherent Genesis CX488-2000) を使用して行われた。 マイクロトポグラフィ周期 Λ は 1 又は 1.5 μm に設定され、Λ = λ/2sinθ によって決定され、ここで、λ はレーザーの波長、θ はミラーとレーザー ビーム間の角度である。SRG の消去は 530nmのLED で行われ、ビームは 100mWcm-2 の強度で SRG トポグラフィーに直接集束された。 SRG の書き込みと消去は、低出力 (1mW) 633nmのHe-Ne レーザーで監視され、1 次の回折ビームの回折効率が測定された。
【0088】
細胞培養。 この研究には、上皮Madin-Darbyイヌ腎臓II型(MDCKII)細胞が使用された。 ウシ胎児血清 (10%) 及びペニシリン/ストレプトマイシン (1%) を補充した MEM GlutaMax(Gibco) からなる培地中、5%CO2 の加湿雰囲気下、37 ℃で培養した。 細胞を播種する前に、サンプルを UV 光下で 40 分間滅菌した。 サンプルを、0.02N酢酸中の50μg ml-1モノマーラット尾I型コラーゲン溶液(Thermo Fischer Scientific)で40分間コーティングした。
【0089】
免疫標識。 細胞を4%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、PBSで洗浄し、透過化緩衝液(PBS中0.5%BSA、0.5%Triton(登録商標)-X100)で10分間透過化し、PBS中の3%ウシ血清アルブミンを使用して1時間ブロックした。 サンプルをウサギ抗 pFAK (1:200、Abcam、♯ab81298) 及びラット抗ウボモルリン/E-カドヘリン (1:100、Sigma-Aldrich) で標識した。 使用した二次抗体は、抗ラット Alexa568 (1:200、Thermo Fisher Scientific #A110077) 及び抗ウサギ Alexa 647 (1:200、Thermo Fisher Scientific #A21244) であった。アクチン細胞骨格は、488-ファロイジン (1:50、Sigma-Aldrich #49 409) を使用して標識された。 サンプルは、細胞核を染色する 4‘,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール (DAPI) (Thermo-Fisher Scientific、#P36935) を含む ProLong Diamond 退色防止封入剤で封入した。
【0090】
光学イメージング。 サンプルは光学 (Zeiss) 及び共焦点顕微鏡 (Nikon A1R レーザー走査型共焦点顕微鏡、Nikon Instruments Europe BV) で画像化された。 共焦点顕微鏡では、使用したレーザーラインは 405、488、561、及び 633nm であった。 各画像について、光退色を避けるためにレーザー強度が調整され、画像の明るさが最適化されるように検出器の感度が調整された。 60x/1.4 Plan-Apochromat油浸対物レンズと 20x/0.8 Plan-Apochromat 空気浸対物レンズを使用して、1024 x 1024 ピクセルの画像を得た。 データは 3D Z スタックの形式であり、それぞれ 150 ~ 250nm 間隔の 30 ~ 40 のスライスが含まれていた。 タイムラプス顕微鏡検査はEVOS FL auto(Thermo Fisher Scientific)を使用して実行された。
【0091】
共焦点顕微鏡によるトポグラフィー消去。SRGトポグラフィーは、LSM780 レーザー走査型共焦点顕微鏡 (Zeiss) で消去された。 消去時には Plan-Apochromat 20/1.4 水浸対物レンズを使用した。 照射中、サンプルは乾燥環境、液体培養環境、又は細胞培養環境のいずれかにあった。 サンプルは、強度1.5Wcm-2の青色領域 (470±40nm) でフィルターされた蛍光灯で5分間照射された。 消去の前後にトポグラフィーの明視野画像が撮影された。MDCKII細胞の場合、サンプルは蛍光灯で照射され、その後表面特性評価のためにトリプシンで細胞がサンプルから剥離されるか、免疫標識のために2 時間後に固定された。
【0092】
生死生存率アッセイ。 MDCKII細胞を光パターン化二重層上に播種し、サンプルの上で 24 時間培養した。 トポグラフィーは上記のように消去された。消去から 3 時間後、細胞を PBS で洗浄し、哺乳類細胞用*生死 生存率/細胞毒性キット*(Thermo Fischer Science) を使用して、PBS中、0.50μl/mlのカルセインAM及び2μl/mlのエチジウムモノダイマー-1を含む、600 μl 生死 試薬溶液を各サンプルに加えて染色した。サンプルは、5%CO2を含む加湿雰囲気下、37 ℃で 30 分間インキュベートされた。インキュベーション後、試薬溶液を吸引し、細胞の乾燥を防ぐために600μlのPBSを添加した。 サンプルは、488nm及び561nm のレーザーラインを使用して共焦点顕微鏡 (Nikon A1Rレーザー走査型共焦点顕微鏡) で画像化された。 20x/0.8 Plan-Apochromat 空気浸対物レンズを使用して、1024x1024 ピクセル画像を得た。
【0093】
画像及び統計分析。 接着斑の分布は、ImageJ の FFT プラグインを使用して接着斑チャネルの高速フーリエ変換で分析された。 FFT 画像を生成する前に、900 ピクセルの円形領域が切り取られ、この領域からFFT画像が生成された。 ImageJ を使用して、接着斑の伸び、面積、配向を測定した。 接着斑の伸びと配向のさらなる分析は、MomentMacroJ v1.4B スクリプト (https://www.hopkinsmedicine.org/fae/mmacro.html) を使用して行われた。
図3d ~fのグラフは、10 枚の個別の画像から定量化された 100 個の接着斑の平均を表している。 図 5c、d及び図 7c では、グラフは 2 つの別個の画像から定量化された 30 個の接着斑の平均を表している。分析の前に、接着斑画像を処理してピクセルノイズを除去した。 主慣性モーメント (最大値と最小値) を測定し、細胞の伸びをこれらの値の比 (最大値/最小値) として定義した。 値が高いほど、接着斑がより長く伸びていることを示す。 接着斑の方向は、表面パターンの方向と最大軸の間の角度として定義された。 統計分析は、Origin バージョン 2019b (OriginLab Corporation) 及び MATLAB(登録商標) を使用して行われた。 定量化された接着斑が 10 万件未満の実験について、テストの統計的検出力を推定した。実際の電力値が 75% を超える場合、統計的な差異は有意であると推定された。 データは非正規分布であることが判明したため、ボンフェローニによるノンパラメトリック クラスカル-ワリス(Kruskal-Wallis)検定とダン-シダック(Dunn-Sidak)事後検定を使用して統計的有意性を評価した。
【0094】
上記の説明で提供された特定の例は、添付の特許請求の範囲及び/又は適用可能性を限定するものとして解釈されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
従って、本発明の目的は、請求項1に記載のパターン化された細胞培養システムを提供することである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明のさらに別の目的は、パターン化されたシステムのトポグラフィー的特徴を消去するための方法を提供することであり、この方法は、レーザー、好ましくは連続波レーザーによって生成される、又は蛍光灯もしくはLEDによって生成される430nm~600nmの光、好ましくは460nm~530nmの光にトポグラフィー特徴をさらすことを含む。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体(101、201)、アゾベンゼン含有中間層(102、202)、及び
エラストマー、ヒドロゲル及びパリレン、好ましくはパリレンCから選択される保護ポリマーを含む最上層(103、203)を含む
システムのアゾベンゼン含有中間層の1か所以上の領域を、レーザー、好ましくは連続波レーザーによって生成される光にさらすことにより取得される、細胞培養のための
パターン化されたシステム(100、200)
であって、前記光の波長が、430nm~530nmであり、前記光の強度が1Wcm
-2
~5Wcm
-2
であることにより、前記システムにトポグラフィー的特徴を生じる、パターン化されたシステム。
【請求項2】
前記アゾベンゼン含有層の厚さが50nm~5μmであり、そして前記最上層の厚さが20nm~100μm、好ましくは20nm~200nmである、請求項1に記載の
パターン化されたシステム。
【請求項3】
前記アゾベンゼン含有層の厚さが50nm~5μmであり、そして前記最上層の厚さが50nm~100μmである、請求項1に記載の
パターン化されたシステム。
【請求項4】
前記支持構造体が、ペトリ皿、顕微鏡カバースリップ、及びウェルプレートなどの細胞培養ディスクから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の
パターン化されたシステム。
【請求項5】
前記エラストマーがシロキサンである、請求項
1~4のいずれか1項に記載の
パターン化されたシステム。
【請求項6】
前記シロキサンがPDMSである、請求項
5に記載の
パターン化されたシステム。
【請求項7】
前記アゾベンゼンが、N-エチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-4-(4-ニトロフェニルアゾ)アニリンである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の
パターン化されたシステム。
【請求項8】
支持構造体(101、201)、アゾベンゼン含有中間層(102、202)、及びエラストマー、ヒドロゲル及びパリレン、好ましくはパリレンCから選択される保護ポリマーを含む最上層(103、203)を含むシステムのアゾベンゼン含有材料上にトポグラフィーを可逆的に刻むための方法であって、
以下の工程:
前記最上層上でレーザー光を走査すること、ここで前記光の波長が400nm~600nm、好ましくは430nm~530nmであり、前記光の強度が1Wcm
-2
~5Wcm
-2
である;又は
レーザー光の干渉パターンを材料に投影すること
、ここで2つの干渉するレーザー光の波長が400nm~600nm、好ましくは430nm~530nmであり、そして2つの干渉するレーザー光の強度が100mWcm
-2
~600mWcm
-2
である;
を含む方法。
【請求項9】
請求項
1~7のいずれか1項に記載のパターン化されたシステムのトポグラフィー特徴を消去するための方法であって、レーザー、好ましくは連続波レーザーによって生成される、又は蛍光灯もしくはLEDによって生成される400nm~600nmの光、好ましくは460nm~530nmの光にトポグラフィー特徴をさらすことを含む方法。
【請求項10】
レーザー、蛍光灯、又はLED によって生成される光の強度が1Wcm
-2~5Wcm
-2である、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
細胞培養プラットフォームとしての、請求項1~
7のいずれか1項に記載のパターン化されたシステムの使用。
【請求項12】
請求項
1~7のいずれか1項に記載のパターン化されたシステム上で細胞を培養する、細胞培養方法。
【請求項13】
以下の工程:
a) パターン化されたシステムを提供する工程、
b) パターン化されたシステムの最上層を細胞接着タンパク質でコーティングする工程、及び
c) 細胞接着タンパク質上に細胞を播種する工程を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が、上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、ニューロン、間葉幹細胞、星状細胞、心筋細胞、及び癌細胞から選択される、請求項
12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞接着タンパク質が、コラーゲン、フィブロネクチン、及びラミニンから選択される、請求項
13又は14に記載の方法。
【請求項16】
工程b)の前に酸素プラズマ処理を含む、請求項
12~15のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】