(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】電池パック用の熱および電気絶縁体
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240806BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240806BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240806BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240806BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240806BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20240806BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20240806BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240806BHJP
H01M 50/24 20210101ALI20240806BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M50/249
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/658
H01M10/653
H01M50/293
H01M50/291
H01M50/24
F16L59/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503492
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 US2022073866
(87)【国際公開番号】W WO2023004298
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 省三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 エミ
【テーマコード(参考)】
3H036
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB15
3H036AB18
3H036AC01
3H036AD09
3H036AE01
5H031AA09
5H031CC01
5H031CC02
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH08
5H031KK02
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC28
5H040JJ03
5H040LL04
5H040LL06
5H040NN01
(57)【要約】
電気自動車の電池パックのための可撓性熱絶縁体、およびそれを備えた電気自動車の電池パックが提供される。可撓性熱絶縁体は、反対向きの第1および第2の面を有する耐火性材料のシートを含む複合壁を有する。第1の感圧接着層が、耐火性材料のシートの第1の面に接合される。さらに、スクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層が耐火性材料の第2の面に接合されるか、あるいはシリコーンゴム層が耐火性材料の第2の面に接合されるかの一方である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車の電池パックのための可撓性熱絶縁体であって、
反対向きの第1および第2の面を有している難燃性材料のシートと、
前記難燃性材料のシートの前記第1の面に接合された第1の感圧接着層と、
前記難燃性材料の前記第2の面に接合されたスクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層または前記難燃性材料の前記第2の面に接合されたシリコーンゴム層の一方と
を含む複合壁
を備える可撓性熱絶縁体。
【請求項2】
前記スクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層に接合された第2の感圧接着層
をさらに含む、請求項1に記載の可撓性熱絶縁体。
【請求項3】
前記第2の感圧接着層に剥離可能に固定された剥離フィルム
をさらに含み、
前記剥離フィルムは、前記電気自動車の電池パックの表面への固定のために下方にある前記第2の感圧接着層を露出させるべく除去されるように構成されている、請求項2に記載の可撓性熱絶縁体。
【請求項4】
前記第1の感圧接着層および前記第2の感圧接着層は、アクリル系感圧接着剤である、請求項3に記載の可撓性熱絶縁体。
【請求項5】
前記壁は、1000℃に10分間にわたって曝されたときに火炎伝播を防止する、請求項1に記載の可撓性熱絶縁体。
【請求項6】
前記壁は、1000℃に10分間にわたって曝される前および後に4000Mohm以上の電気絶縁抵抗を有する、請求項1に記載の可撓性熱絶縁体。
【請求項7】
前記壁は、5mmの最大厚さを有する、請求項1に記載の可撓性熱絶縁体。
【請求項8】
前記壁は、2mmの最大厚さを有する、請求項7に記載の可撓性熱絶縁体。
【請求項9】
前記壁は、1000℃に10分間にわたって曝された後に2kVの絶縁耐力を有する、請求項1に記載の可撓性熱絶縁体。
【請求項10】
前記難燃性材料のシートは、シリカマルチフィラメント糸の織布シートである、請求項1に記載の可撓性熱絶縁体。
【請求項11】
ハウジングと、
前記ハウジングによって境界付けられた複数のセルと、
複数の複合壁と
を備え、
前記複合壁の各々は、
反対向きの第1および第2の面を有している耐火性材料のシートと、
前記耐火性材料のシートの前記第1の面に接合された第1の感圧接着層と、
前記耐火性材料の前記第2の面に接合されたスクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層または前記耐火性材料の前記第2の面に接合されたシリコーンゴム層の一方と
を含んでおり、
前記複合壁のうちの前記少なくともいくつかが、前記セルのうちの隣接するセルを互いに隔てている、電気自動車の電池パック。
【請求項12】
前記複合壁のうちの少なくともいくつかは、前記スクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層に接合された第2の感圧接着層を含む、請求項11に記載の電気自動車の電池パック。
【請求項13】
前記第1の感圧接着層に剥離可能に固定された剥離フィルムをさらに含み、前記剥離フィルムは、前記ハウジングの表面への動作可能な固定のために下方にある前記第1の感圧接着層を露出させるべく除去されるように構成されている、請求項12に記載の電気自動車の電池パック。
【請求項14】
前記第1の感圧接着層および前記第2の感圧接着層は、アクリル系感圧接着剤である、請求項13に記載の電気自動車の電池パック。
【請求項15】
前記複合壁は、1000℃に10分間にわたって曝されたときに火炎伝播を防止する、請求項11に記載の電気自動車の電池パック。
【請求項16】
前記複合壁は、1000℃に10分間にわたって曝される前および後に4000Mohm以上の電気絶縁抵抗を有する、請求項11に記載の電気自動車の電池パック。
【請求項17】
前記複合壁は、2mmの最大厚さを有する、請求項16に記載の電気自動車の電池パック。
【請求項18】
前記複合壁は、1000℃に10分間にわたって曝された後に2kVの絶縁耐力を有する、請求項11に記載の電気自動車の電池パック。
【請求項19】
前記耐火性材料のシートは、シリカ織物である、請求項11に記載の電気自動車の電池パック。
【請求項20】
前記シリカ織物のシートは、織布シートであり、前記織布シートは、シリカマルチフィラメント糸から織られている、請求項19に記載の電気自動車の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月19日に出願された米国仮出願第63/223,481号の利益、および2022年7月15日に出願された米国出願第17/866,316号の優先権を主張し、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
本発明は、一般的には、熱および電気絶縁体に関し、より詳細には、電池パック内および電池パックからの火炎伝播を阻止するための熱および電気絶縁体に関する。
【0003】
2.関連技術
電気自動車の用途に用いられる電池パックなどの電池パックを、熱絶縁の状態に収容または遮蔽することが知られている。そのような熱絶縁を形成するために使用される一般的な材料は、ガラス繊維織物である。ガラス繊維織物の絶縁は、通常の使用における汚染および環境温度に対して、満足できる水準の保護を提供するが、ガラス繊維織物の絶縁は、例えば電気自動車の電池パックの1つ以上のセルの熱暴走状態において直面する可能性がある電池パックから外部への火炎伝播または電池パックのセル間の火炎伝播に対して、所望の水準の保護をもたらさない。電池パックからの火炎の伝播および電池パックのセル間の火炎の伝播を阻止しつつ、電池パックに電気絶縁保護も提供する熱絶縁を提供することが望まれる。
【0004】
発明の概要
本開示の目的は、電気自動車の電池パックにおいて使用するための熱絶縁体であって、少なくとも電池パックからの火炎の伝播および電池パックのセル間の火炎の伝播を阻止するという要望に対処する熱絶縁体を提供することである。
【0005】
さらなる目的は、1000℃の温度において5分間にわたって電池パックの火炎の伝播および電池パックのセル間の火炎の伝播を阻止することである。
【0006】
さらなる目的は、1000℃の温度において最大10分間にわたって電池パックの火炎の伝播および電池パックのセル間の火炎の伝播を阻止することである。
【0007】
本開示のさらなる目的は、電気自動車の電池パックにおいて使用するための熱絶縁体であって、少なくとも電池パックおよび電池パックのセル間に電気絶縁保護を提供するという要望に対処する熱絶縁体を提供することである。
【0008】
本開示のさらなる目的は、電気自動車の電池パックにおいて使用するための熱絶縁体であって、電池パックの周囲および電池パックのセル間に熱絶縁体を容易に沿わせることができるように可撓性である熱絶縁体を提供することである。
【0009】
本開示のさらなる目的は、電池パックの周囲および電池パックのセル間への熱絶縁体の設置をさらに容易にすることである。
【0010】
本開示のさらなる目的は、電気自動車の電池パック用の熱絶縁体であって、軽量であり、熱絶縁体が占める空間の大きさを最小限に抑えるために薄型であり、製造および使用において経済的である熱絶縁体を提供することである。
【0011】
本発明の一態様は、スクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層と、スクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層の面に塗布された第1の感圧接着層と、感圧接着剤に接合されたシリカ織物とを含む壁を有する電気自動車の電池パック用の熱絶縁体を提供する。
【0012】
本発明の別の態様によれば、所望の場所への熱絶縁体の固定を容易にするために、第2の感圧接着層をシリカ織物上に接合することができる。
【0013】
本発明の別の態様によれば、剥離フィルムを第2の感圧接着層に剥離可能に固定することができ、剥離フィルムは、電気自動車の電池パックの表面および/または電気自動車の電池パックのハウジングへの固定のために、下方にある第2の感圧接着層を露出させるべく除去されるように構成される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、第1の感圧接着層および第2の感圧接着層を、アクリル系感圧接着剤として設けることができる。
【0015】
本発明の別の態様によれば、壁は、1000℃に10分間にわたって曝されたときに火炎伝播を防止する。
【0016】
本発明の別の態様によれば、壁は、1000℃に10分間にわたって曝される前および後に、4000Mohm以上の電気絶縁抵抗を有する。
【0017】
本発明の別の態様によれば、壁は5mmの最大厚さを有することによって、設計の選択肢を広げ、重量を低減する薄い外形を有する。
【0018】
本発明の別の態様によれば、壁は2mmの最大厚さを有することにより、設計の選択肢を広げ、重量を最小化する最小化された外形を有する。
【0019】
本発明の別の態様によれば、壁は、1000℃に10分間にわたって曝された後に、2kVの絶縁耐力を有する。
【0020】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パック用の可撓性熱絶縁体は、反対向きの第1および第2の面を有するシリカ織物のシートと、シリカ織物のシートの第1の面に接合された第1の感圧接着層とを含む複合壁を有する。
【0021】
本発明の別の態様によれば、反対向きの第1および第2の面を有する難燃性材料のシートを含む複合壁を有する電気自動車の電池パック用の可撓性熱絶縁体が提供される。第1の感圧接着層が、難燃性材料のシートの第1の面に接合される。さらに、スクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層が難燃性材料の第2の面に接合されるか、あるいはシリコーンゴム層が難燃性材料の第2の面に接合されるかの一方である。
【0022】
本発明の別の態様によれば、第2の感圧接着層を、スクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層に接合することができる。
【0023】
本発明の別の態様によれば、剥離フィルムを第1の感圧接着層に剥離可能に固定することができ、剥離フィルムは、電気自動車の電池パックの表面および/または電気自動車の電池パックのハウジングへの固定のために、下方にある第1の感圧接着層を露出させるべく除去されるように構成される。
【0024】
本発明の別の態様によれば、第1の感圧接着層および第2の感圧接着層を、アクリル系感圧接着剤として設けることができる。
【0025】
本発明の別の態様によれば、複合壁は、1000℃に10分間にわたって曝されたときに火炎伝播を防止する。
【0026】
本発明の別の態様によれば、複合壁は、1000℃に10分間にわたって曝される前および後に、4000Mohm以上の電気絶縁抵抗を有する。
【0027】
本発明の別の態様によれば、複合壁は、5mmの最大厚さを有する。
本発明の別の態様によれば、複合壁は、2mmの最大厚さを有する。
【0028】
本発明の別の態様によれば、複合壁は、1000℃に10分間にわたって曝された後に、2kVの絶縁耐力を有する。
【0029】
本発明の別の態様によれば、可撓性熱絶縁体の複合壁は、シリカ織物のシートの第2の面に接合されたシリコーン層を含む。
【0030】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パックが提供される。電気自動車の電池パックは、複数のセルを境界付けるハウジングを含む。さらに、複合壁が複数のセルを覆う。複合壁は、反対向きの第1および第2の面を有するシリカ織物のシートと、シリカ織物のシートの第1の面に接合された第1の感圧接着層とを含む。
【0031】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パックは、スクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層に接合された第2の感圧接着層をさらに含むことができる。
【0032】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パックは、第1の感圧接着層に剥離可能に固定された剥離フィルムをさらに含むことができ、剥離フィルムは、ハウジングの表面への動作可能な固定のために、下方にある第1の感圧接着層を露出させるべく除去されるように構成される。
【0033】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パックの第1の感圧接着層および第2の感圧接着層を、アクリル系感圧接着剤として設けることができる。
【0034】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パックの複合壁は、1000℃に10分間にわたって曝されたときに火炎伝播を防止する。
【0035】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パックの複合壁は、1000℃に10分間にわたって曝される前および後に、4000Mohm以上の電気絶縁抵抗を有する。
【0036】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パックの複合壁は、5mmの最大厚さを有する。
【0037】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パックの複合壁は、2mmの最大厚さを有する。
【0038】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パックの複合壁は、1000℃に10分間にわたって曝された後に、2kVの絶縁耐力を有する。
【0039】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パックの複合壁は、難燃性材料のシートの第2の面に接合されたシリコーン層をさらに含み、難燃性材料は、シリカ織物である。
【0040】
本発明の別の態様によれば、シリカ織物は、シリカマルチフィラメント糸から織られる。
【0041】
図面の簡単な説明
これらの態様、特徴、および利点、ならびに他の態様、特徴、および利点は、現時点における好ましい実施形態および最良の態様の以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面に照らして、当業者にとって容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の一態様に従って構成された複数の熱絶縁体を備える電池パックを有する電気モータ車両の概略の斜視図である。
【
図2A】本発明による熱絶縁体を備えない電気自動車の電池パック内の複数のセルの概略図を示しており、火炎発生位置(
図2A)から妨げられることなく電池パックの全体(
図2C)に火炎が伝播する熱暴走状態にある。
【
図2B】本発明による熱絶縁体を備えない電気自動車の電池パック内の複数のセルの概略図を示しており、火炎発生位置(
図2A)から妨げられることなく電池パックの全体(
図2C)に火炎が伝播する熱暴走状態にある。
【
図2C】本発明による熱絶縁体を備えない電気自動車の電池パック内の複数のセルの概略図を示しており、火炎発生位置(
図2A)から妨げられることなく電池パックの全体(
図2C)に火炎が伝播する熱暴走状態にある。
【
図3A】
図2A~
図2Cと同様の図であるが、電池パックが複数の熱絶縁体を含んでおり、熱暴走状態の位置(
図3A)から電池パックの全体(
図3C)への火炎伝播の熱絶縁体による抑制および阻止が示されている。
【
図3B】
図2A~
図2Cと同様の図であるが、電池パックが複数の熱絶縁体を含んでおり、熱暴走状態の位置(
図3A)から電池パックの全体(
図3C)への火炎伝播の熱絶縁体による抑制および阻止が示されている。
【
図3C】
図2A~
図2Cと同様の図であるが、電池パックが複数の熱絶縁体を含んでおり、熱暴走状態の位置(
図3A)から電池パックの全体(
図3C)への火炎伝播の熱絶縁体による抑制および阻止が示されている。
【
図4】本開示の一実施形態による熱絶縁体の概略の斜視図である。
【
図4A】
図4の熱絶縁体を含む電池パックのハウジング表面温度を示すグラフであり、電池パックは1000℃に10分間にわたって曝されている。
【
図5】本開示の別の実施形態による熱絶縁体の概略の斜視図である。
【
図5A】
図5の熱絶縁体を含む電池パックのハウジング表面温度を示すグラフであり、電池パックは1000℃に10分間にわたって曝されている。
【発明を実施するための形態】
【0043】
好ましい実施形態の詳細な説明
図面をさらに詳しく参照すると、
図1が、本発明の一態様による少なくとも1つの熱絶縁体10(複数の熱絶縁体10として図示されている)を備えて構成されたリチウムイオン電池パックなどの電池パック12を有する電動モータ車両自動車として示された自動車(電気自動車11とも呼ばれる)を示している。電気自動車の電池パック12は、複数の電池モジュール15を備えるハウジング14を含み、各々の電池モジュール15は、複数のセル16を境界付けている。通常の使用時や、車両の衝突の状態または電池パック12に衝撃力を引き起こす他の何らかの状態などの非通常の状況においても、セル16のいずれか1つにおいて始まる熱暴走状態は、熱絶縁体10によって制御および抑制され、したがって、セル16間および電池パック12の外部への火炎伝播(広がり)が、少なくとも10分間は防止され、ケースとも呼ばれる電池ハウジング14の外面温度が、1000℃の温度で10分間にわたって行われる試験で証明されるとおり、500℃未満に維持される(
図4Aが、本開示の一態様に従って構成された熱絶縁体10の第1の実施形態について、19で示されている1000℃の温度に10分間にわたって曝されたときの外面温度17を示し、
図5Aが、本開示の別の態様に従って構成された熱絶縁体110の第2の実施形態について、119で示されている1000℃の温度に10分間にわたって曝されたときの外面温度117を示しており、熱絶縁体10、100の違いについては、以下でさらに詳細に説明される)。
【0044】
図4に概略的に示されるように、熱絶縁体10は、複数のセル16の上に重なり、セル16間に延在して各々のセル16を隣接するセル16から効果的に絶縁するおおむね平坦な複合シート(複合壁、積層壁、または壁18とも呼ばれる)を含む。複合壁18は、反対向きの第1および第2の面22、24を有する絶縁織物20のシートを含む。絶縁織物20は、密に織られた難燃性フィラメント(マルチフィラメント糸とも呼ばれる)などの難燃性材料から形成され、1つの好ましい実施形態において、絶縁織物20は、密に織り合わせられたシリカマルチフィラメント糸25から全体が形成され、マルチフィラメント糸25は、好ましくは、最大密度のために密な平織パターンを使用して織られる。さらに、第1の感圧接着層26を、隣接するセル16の間ならびに/あるいはハウジング14の内面および/または外面の周りを含む電池パック12の所望の表面への複合壁18の固定を容易にするために、シリカ織物20のシートの第1の面22に接合することができる。さらに、シリコーンゴム層28が、シリカ織物20のシートの第2の面24にコーティングされ、あるいは他のやり方で接合される。シリコーンゴム層28は、流体を通さない層であることにより、汚染の侵入に対する保護を強化しつつ、壁18の難燃性を大幅に向上させ、したがってセル16から外部への火炎伝播および隣接するセル16間の火炎伝播をさらに防止して、緊急事態の際の電池パック12の使用寿命を延ばす。
【0045】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パック12の熱絶縁体110の複合壁118は、熱絶縁体10に関して上述したシリコーンゴム層28の代わりに、
図5に示されるように、シリカ織物20の織布シートの第2の面24に接合された第2の感圧接着層30をさらに含むことができ、かつ第2の感圧接着層30に接合されたスクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層32をさらに含むことができ、したがって第2の感圧接着層30は、シリカ織物20のシートの第2の面24とスクリム強化ポリエーテルエーテルケトン層32との間に挟まれる。
【0046】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パックは、第1の感圧接着層26に剥離可能に固定された剥離フィルム34をさらに含むことができ、剥離フィルム34は、それぞれのセル16およびハウジング14の表面に動作可能に固定するために、下方にある第1の感圧接着層26を露出させるために除去されるように構成されている。
【0047】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パック12の第1の感圧接着層26および第2の感圧接着層30を、アクリル系感圧接着剤として設けることができる。
【0048】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パック12の複合壁18、118は、1000℃に10分間にわたって曝されたときに火炎伝播を防止する。
【0049】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パック12の複合壁18、118は、1000℃に10分間にわたって曝される前および後に、4000Mohm以上の電気絶縁抵抗を有する。
【0050】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パック12の複合壁18、118は、5mmの最大厚さ(t)を有する。
【0051】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パック12の複合壁18、118は、2mmの最大厚さ(t)を有する。
【0052】
本発明の別の態様によれば、電気自動車の電池パック12の複合壁18、118は、1000℃に10分間にわたって曝された後に、2kVの絶縁耐力を有する。
【0053】
明らかに、本発明の多くの修正および変形が、上記の教示に照らして可能である。すべての請求項およびすべての実施形態のすべての特徴を互いに組み合わせることが、そのような組み合わせが互いに矛盾しない限り、可能であると考えられる。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明を、具体的に記載されているやり方以外のやり方で実施してもよいことを理解されたい。
【国際調査報告】