(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】より高温での電気分解のために向上した耐久性を有する隔膜
(51)【国際特許分類】
C25B 13/08 20060101AFI20240806BHJP
H01M 8/1032 20160101ALI20240806BHJP
H01M 8/1039 20160101ALI20240806BHJP
H01M 8/1027 20160101ALI20240806BHJP
H01M 8/103 20160101ALI20240806BHJP
H01M 8/1069 20160101ALI20240806BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240806BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240806BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20240806BHJP
【FI】
C25B13/08 301
H01M8/1032
H01M8/1039
H01M8/1027
H01M8/103
H01M8/1069
C25B9/00 A
C25B1/04
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503818
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022070136
(87)【国際公開番号】W WO2023001793
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524026388
【氏名又は名称】グリーン・ハイドロジェン・システムズ・アクシェセルスケープ
【氏名又は名称原語表記】Green Hydrogen Systems A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,マルティン カルマー
(72)【発明者】
【氏名】テアキルセン,カスパー ティプスマーク
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB31
4K021DC01
4K021DC03
5H126BB03
5H126BB06
5H126FF05
5H126GG11
5H126GG18
5H126HH01
5H126HH03
5H126HH04
5H126HH10
5H126JJ05
5H126JJ08
5H126JJ10
(57)【要約】
本発明は、隔膜を製造するための新たな方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔膜を得るためのプロセスまたは方法であって、当該プロセスは、以下の工程(i)~(vi):
(i)
キャスティングにより形成される隔膜片を準備する工程であって、前記隔膜片がポリマーのバインダを含んで成る、工程、
(ii)
前記ポリマーのバインダに機能を付与する工程であって、この工程で生じる機能付与によって、架橋が可能になる、工程、
(iii)
必要に応じて、溶媒を用いて、前記工程(ii)において得られる機能が付与された隔膜を濯ぐ工程、
(iv)
前記隔膜片をさらに処理する工程であって、以下の(a)または(b):
(a)前記工程(iii)において濯がれた機能が付与された隔膜を約12時間から約48時間の期間にわたって約20℃~約80℃で乾燥させること、または、前記隔膜において、前記溶媒が実質的に存在しなくなるまで乾燥させること、および、前記機能が付与された隔膜を乾燥させた後に前記隔膜のマトリクスに架橋剤を添加すること、あるいは、
(b)前記隔膜のマトリクスにおいて、前記溶媒を架橋剤に置き換えること
を含み、前記架橋剤がジアルコール(例えば、エチレングリコールまたはプロピレングリコールなど)またはトリアルコール(例えば、グリセロールなど)である、工程、
(v)
前記工程(iv)において得られる乾燥させた隔膜を約12時間~約48時間の期間にわたって約180℃~約240℃で架橋させる工程、
(vi)
前記工程(v)での架橋を完了させた後、前記隔膜を溶媒の中で濯ぎ、必要に応じて、後処理する工程
を含む、プロセスまたは方法。
【請求項2】
前記ポリマーのバインダは、スルホン系ポリマーであって、例えば、ポリフェニルスルホン(PPSU)、またはポリビニリデンクロリド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、またはこのようなポリマーのコポリマーなどである、請求項1に記載の隔膜を得るためのプロセスまたは方法。
【請求項3】
前記工程(ii)における機能付与の反応によって、スルホン化反応が生じて、-SO
3H基が前記ポリマーのバインダに追加されるか、あるいは、
前記工程(ii)における機能付与の反応によって、ハロメチル化、リチウム化、ブロモ化、アミノメチル化などが生じる、請求項1または2に記載の隔膜を得るためのプロセスまたは方法。
【請求項4】
前記工程(ii)における機能付与の反応は、例えば、約40℃~約80℃などの範囲内の温度(例えば、約45℃など、例えば、約50℃など、例えば、約55℃など、例えば、約60℃など、例えば、約65℃など、例えば、約70℃など、例えば、約75℃など)および約1時間~約48時間などの範囲内の期間(例えば、約1時間~約48時間など、例えば、約3時間など、例えば、約4時間など、例えば、約5時間など、例えば、約6時間など、例えば、約7時間など、例えば、約8時間など、例えば、約9時間など、例えば、約10時間など、例えば、約11時間など、例えば、約12時間など、例えば、約24時間など、または、例えば、約48時間など)で行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセスまたは方法。
【請求項5】
前記工程(iii)における濯ぐ工程は、前記隔膜を適切な溶媒(例えば、脱ミネラル化された水、またはアルコール、またはDMF、または、例えば、DMSO、またはこれらの混合物など)の中で濯ぐことによって行われ、前記溶媒の温度は、約0℃~約5℃であってよい、請求項1~4のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセスまたは方法であって、6.前記工程(iv)における乾燥させる工程は、約24時間の期間にわたって行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセスまたは方法。
【請求項6】
前記工程(v)における架橋反応は、熱による架橋によって行われるか、ラジカル架橋によって開始されるか、ポリマーのUV照射によって実施され、必要に応じて、さらなる架橋試薬(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはグリセロールなど)の存在下で行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセスまたは方法。
【請求項7】
前記工程(v)における架橋反応は、上昇した温度(例えば、約190℃、例えば、約200℃など、例えば、約210℃など、例えば、約220℃など、例えば、約230℃などの範囲内の温度)などで約24時間からの範囲内の反応時間にわたって行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセスまたは方法。
【請求項8】
前記工程(vi)における濯ぐ工程は、脱ミネラル化された水、またはアルコール、またはDMF、または、例えば、DMSO、またはこれらの混合物の中で行う、請求項1~7のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセスまたは方法。
【請求項9】
前記工程(vi)における後処理は、前記隔膜をアルカリ性の水溶液(例えば、強度が約5重量%~約30重量%のKOH溶液など)で処理することを含んでよく、前記隔膜の処理は、約2時間~約48時間(例えば、約12時間、または約48時間など)の期間にわたって、前記アルカリ性の水溶液の中で進行してよい、請求項1~8のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセスまたは方法。
【請求項10】
当該プロセスは、前記工程(vi)の後に追加の工程(vii)を含んでよく、前記工程(vii)では、脱ミネラル化された水で前記隔膜を濯ぎ、続いて、約30分~約2時間の期間にわたって(例えば、約60分、または、例えば、約90分など)、脱ミネラル化された水の中で煮沸させる、請求項1~9のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセスまたは方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセスによって得ることができる隔膜、または以下の(i)~(iii):
(i)架橋されたポリマー(例えば、スルホン系ポリマーなど)であって、エチレングリコールまたはグリセロールで架橋されているポリマー、
(ii)ポリマーのメッシュ、ガーゼ、ネットまたはクロスなどから選択されるスキャフォールド、および
(iii)金属酸化物
を含む、隔膜。
【請求項12】
請求項11に記載の隔膜の電気化学的な用途における使用または電気化学的なデバイスにおける構成要素としての使用であって、前記電気化学的な用途または電気化学的なデバイスが、アルカリ性の電解物を含み、上昇した温度まで前記電解物を加熱し、例えば、約50℃~約150℃の範囲内で加熱され、あるいは、例えば、約120℃を超えて、あるいは、例えば、約100℃を超えて、あるいは、例えば、約80℃を超えて加熱され、前記電解物は、濃度が約30重量%以上のKOH水溶液である、
使用。
【請求項13】
前記隔膜は、電気化学的なデバイスの構成要素としての隔膜であるか、あるいは、水の電気分解、例えば、水を酸素と水素とに分ける電気分解などのために適合または構成される用途における、請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、電気化学セル(又は電気化学電池)の分野に関する。特に、電気化学的な用途(又は応用又は適用)(又はエレクトロケミカル・アプリケーション)で使用するためのセパレータ膜(又はセパレータ・メンブレン)または隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)に関する。
また、本発明は、任意の電気化学的な用途(又は応用又は適用)(又はエレクトロケミカル・アプリケーション)またはプロセス(又は工程又は方法)で使用するための膜(又はメンブレン)または隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を製造するためのプロセス(又は工程又は方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
当該分野において、電気化学的な用途(又は応用又は適用)(又はエレクトロケミカル・アプリケーション)で使用するためのセパレータ・エレメント(又はセパレータ要素又はセパレータ部品)を提供するためのいくつかの解決策(又はソリューション)が提案されている。
このような電気分解(又は電解)の用途において使用される反応条件および化学品(又はケミカル)は厳しいものとなり得ることから、電気分解反応(又は電解反応)の間に耐えて機能することができるセパレータ・エレメント(又はセパレータ要素又はセパレータ部品)を提供するための様々な解決策(又はソリューション)が提供されている。
例えば、WO2009/147084では、イオン透過性のウェブ(又は網)により強化されたセパレータ(又はイオン・パーミアブル・ウェブ・レインフォースト・セパレータ(ion-permeable web reinforced separator)に関する膜(又はメンブレン)が提案されている。
具体的には、この文献は、全体として対称の構造を有し、なおかつ実質的に平坦(又はフラット)な表面を有する自己支持型(又は自立型)のイオン透過性のウェブ(又は網)により強化されたセパレータ(又は自己支持型(又は自立型)のイオン透過性ウェブ強化セパレータ又はセルフ・サポーティング・イオン・パーミアブル・ウェブ・レインフォースト・セパレータ(self-supporting ion-permeable web-reinforced separator))に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、電気分解(又は電解)の条件(又はコンディション)の間により高い熱的な安定性(又は熱安定性)および化学的な安定性(又は化学安定性)を示す膜(又はメンブレン)または隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の提供が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、任意の電気化学的な用途(又は応用又は適用)(又はエレクトロケミカル・アプリケーション)(例えば、電気分解(又は電解)、具体的には、例えば、アルカリ水電気分解(又はアルカリ水電解)など、バッテリ(又は電池)(アルカリと酸)、燃料電池(又はフューエル・セル)など)で使用することができる隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の提供に関する。
【0005】
本発明は、より高い熱的な安定性(又は熱安定性)および/または化学的な安定性(又は化学安定性)などを示す隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を提供することによって、問題を解決することに関する。
【0006】
また、本発明は、本発明に従って隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を製造(又は調製又は生成)するためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)に関する。
【0007】
従って、1つの態様において、本発明は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を製造(又は調製又は生成)するための方法(又はメソッド)またはプロセス(又は工程)に関する。当該方法またはプロセスは、以下の(i)~(vii)の工程(又はステップ)を含む。
(i)
例えば、スルホン系ポリマー(又はスルホンに基づくポリマー又はスルホン・ベース・ポリマー)を含む隔膜片(又は一片の隔膜(又は隔壁)又は隔膜ピース(又は隔壁ピース)又はダイアフラム・ピース)を提供(又は準備)する工程(又はステップ)、
(ii)
スルホン系ポリマーに機能(又は機能性又は官能性又は官能基又はファンクショナリティ)を付与する工程(又はステップ)であって、例えば、延長した期間(又は長い期間)にわたって、上昇した温度において、濃硫酸中でスルホン化すること(又はスルホネーション)による、工程(又はステップ)、
(iii)
工程(ii)において得られる機能が付与された隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を濯ぐ工程(又はステップ)であって、冷たい脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)の中で濯ぐ工程(又はステップ)、
(iv)
隔膜片(又は一片の隔膜(又は隔壁)又は隔膜ピース(又は隔壁ピース)又はダイアフラム・ピース)をさらに処理する工程(又はステップ)であって、以下の(a)、(b)または(c)の1つを含む、工程(又はステップ):
(a) 工程(iii)において濯がれた機能が付与された隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を必要に応じて乾燥させることであって、上昇した温度において、延長された期間(又は長い期間)にわたって、または隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)が実質的に水を含まなくなるまで、隔膜を乾燥させること、あるいは
(b) 隔膜(又は隔壁)のマトリクス(又は母材)(又はダイアフラム・マトリクス)において、水を架橋剤に置き換えること、あるいは、
(c) 上記の(a)において機能が付与された隔膜(又はダイアフラム)を乾燥させた後、隔膜(又は隔壁)のマトリクス(又は母材)(又はダイアフラム・マトリクス)に架橋剤を添加すること、
(v)
工程(iv)において得られる乾燥させた隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を架橋させる工程(又はステップ)であって、上昇した温度において、延長された期間(又は長い期間)にわたって、架橋する工程(又はステップ)、
(vi)
工程(v)での架橋を完了させた後、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)の中で濯ぎ、延長された期間(又は長い期間)にわたって、アルカリ性の水溶液(又はアルカリ水溶液)で処理する工程(又はステップ)、
(vii)
工程(vi)においてアルカリで処理した隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)で濯ぎ、続いて、延長された期間(又は長い期間)にわたって、脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)の中で煮沸(又は沸騰又はボイル)させる工程(又はステップ)。
【0008】
1つの態様において、本発明は、本発明に従うプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)によって得ることができる(又は製造することができる)隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)に関する。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、任意の電気化学的な用途(又は応用又は適用)(又はエレクトロケミカル・アプリケーション)における本発明に従う隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の使用(又は使用方法又はユース)に関する。
特に、本発明は、反応温度が80℃を超える任意の電気化学的な用途(又は応用又は適用)(又はエレクトロケミカル・アプリケーション)における隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の使用(又は使用方法又はユース)に関する。
【0010】
1つの非制限的な態様において、本発明は、1以上のポリマー、ポリマーの種類(又はタイプ)(又はポリマータイプ)またはコポリマーを含んでよい隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)に関する。
1つの態様において、ポリマーは、スルホン系(又はスルホンに基づく又はスルホン・ベース)のものであってよい。なお、さらなる態様において、スルホン系ポリマー(又はスルホンに基づくポリマー又はスルホン・ベース・ポリマー)は、架橋されてよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(定義)
本発明によると、「隔膜(又は隔壁又はダイアフラム(diaphragm))」または「膜(又はメンブレン(membrane))」は、詳細な説明の全体を通して、互いに交換可能に使用してよい用語であり、電解電池(又は電解セル又はエレクトロリティック・セル(electrolytic cell))において、アノードとカソードを分離し、なおかつ、アノードとカソードの間であればどこにでも配置されてよいエレメント(又は構成要素又は要素又は部品)であって、任意の種類(又はタイプ)のエレメント(又は構成要素又は要素又は部品)を意味することが意図されている。なお、アノードとカソードは、電解物(又は電解質又は電解液)(又はエレクトロライト(electrolyte))を介して、接続(又は結合)されている。
隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、イオン透過性(又はイオン・パーミアブル(ion-permeable))である。ただし、実質的には、あらゆる種類(又はタイプ)の気体(又はガス)を透過するものではない(又は不透過性(又はインパーミアブル(impermeable))である)。特に、酸素および水素の気体(又はガス)を通すことができない(又は不透過性(又はインパーミアブル(impermeable))である)。
【0012】
用語「電気化学的な用途(又は応用又は適用)(又はエレクトロケミカル・アプリケーション(electrochemical application))」は、任意の用途(又は応用又は適用又はアプリケーション)であって、少なくとも1つのアノードと、少なくとも1つのカソードと、電解物(又は電解質又は電解液)(又はエレクトロライト(electrolyte))とを使用(又は採用)することを包含する用途を意味することが意図されている。
このような用途(又は応用又は適用又はアプリケーション)として、例えば、水の分解、任意のバッテリの用途(又は応用又は適用又はアプリケーション)(アルカリまたは酸に基づくもの)、任意の種類(又はタイプ)の燃料電池(又はフューエル・セル)などを挙げることができる。
【0013】
用語「キャスティング(又はキャスト)により形成(又は生成又は成形又は製造)される(casted)」または「プレス(又は押圧又は圧縮)により形成(又は生成又は成形又は製造)される(pressed)」は、詳細な説明の全体を通して、互いに交換可能に使用してよい用語であり、溶媒中に溶解されたポリマーのフルード(又は流体)またはセミフルード(又は半流体)の組成物(又はコンポジション)から、平坦なポリマーの膜(又はフラット・ポリマー・メンブレン)をキャスティング(又はキャスト)により形成(又は生成又は成形又は製造)するための任意のよく知られているプロセス(又は工程又は方法)、例えば、ロール、フラット・モールドでのキャスティング(又はキャスト)、あるいはフルード・バスへの押出成形(エクストルージョン)による任意のよく知られているプロセス(又は工程又は方法)を意味することが意図されている。
これらの例は、特許文献WO2009/147086A1において見つけることができる。なお、この文献は、その全体が参考として本明細書中に組み込まれている。さらなる例としては、以下において見つけることができる。
https://synderfiltration.com/learning-center/articles/introduction-to-membranes/phase-inversion-membranes-immersion-precipitation/
なお、これについても、その全体が参考として本明細書中に組み込まれている。
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム(diaphragm))の提供に関する。当該隔膜は、任意の電気化学的な用途(又は応用又は適用)(又はエレクトロケミカル・アプリケーション)において使用することができるものである。
本発明によると、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、ポリマーを含んで成る。かかるポリマーは、架橋(又はクロスリンク)されてよい。
本発明の1つの重要な態様は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)をキャスティング(又はキャスト)により形成(又は生成又は成形又は製造)した後に架橋を行う態様である。
本発明の別の重要な態様は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)が熱的および/または化学的に安定である態様である。
例えば、アルカリ性の電気分解(又はアルカリ電気分解又はアルカリ電解)において、気体(又はガス)のセパレータ(又はガス・セパレータ)は、最も共通するものであり、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)である。
当該分野で知られている通り、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、多孔性(又は多孔質又はポーラス)の構造(又はポーラス・ストラクチャ)であり、ガス分離(又はガス・セパレーション)およびイオン伝導(又はイオン・コンダクティビティ)の能力(又は性能又はケーパビリティ)を有する。ガス分離およびイオン伝導の能力は、液体の電解物(又は電解質又は電解液)(又はエレクトロライト(electrolyte))を取り込む(又は摂取又は吸収又はアップテークする)ことによって提供されるものである。
アルカリ性の電気分解(又はアルカリ電気分解又はアルカリ電解)において、ほとんどの産業上の利用(又は用途又は応用又は適用又はアプリケーション)では、電解物(又は電解質又は電解液又はエレクトロライト(electrolyte))は、濃縮された水酸化カリウム(KOH)の溶液である(30重量%)。
共通する操作(又は運転又はオペレーション)の温度は、最大で約80~100℃である。ここで、ほとんどのシステム(又は系)では、約80℃で操作(又は運転又はオペレーション)することが推奨されている。
強アルカリ性の溶液ならびに酸素が存在することによって、電気分解(又は電解)の方法において共通して使用される材料のほとんどには、非常に厳しい環境が与えられる。
市販されている最新技術の隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、Zirfon UTP500である。
Zirfon UTP500は、複合材料(又は複合材又はコンポジット・マテリアル)であり、無機粒子(酸化ジルコニウム)と、ポリマーのバインダ材料(又はポリマー製のバインダ材料又はポリマーバインダ材料)と、ポリマー(又はポリマー製)のメッシュ(mesh)とから成るものである。
しかし、ポリマーのバインダは、最新技術の例によると、ポリスルホンタイプのポリマーであり、そのアルカリ性の電気分解(又は電解)の環境における安定性は、100~110℃を超える温度において、劇的に低下する。
現在では、当該分野において、このような環境における安定性は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の安定性である。このような安定性は、電解装置(又はエレクトロライザー・ユニット)の操作温度(又は運転温度又はオペレーション温度)を決定するものである。
エレクトロライザーの効率(又はエフィシエンシー)の実質的な増加(又はゲイン)は、温度を例えば約120℃まで上昇させることによって達成することができる。
最初の実験は、温度を10℃増加させることによって電池の電圧(又はセル・ボルテージ)が低下し、10℃あたりスタック効率(又はスタック性能又はスタック・エフィシエンシー)が2~3%増加することを示している。
結果として、依然として、化学的および/または熱的に安定な隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)が必要である。
当該分野において、気体のセパレータ(又はガス・セパレータ)の材料(又はマテリアル)として最良(又はベスト)の特性(又はプロパティ)を有する隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を達成するために、ポリマーバインダの量と、ポリマーバインダを溶解させる溶媒の量と、無機粒子の量との間の狭い関係によって、複合隔膜(又は複合隔壁又はコンポジット・ダイアフラム)を製造(又は調製又は生成又は形成)するための共通の手順が制限されている。
より大きな分子量(鎖長(又はチェイン・レングス))を有するポリマー材料(又はポリマー・マテリアル)によって、厳しい環境(例えば、アルカリ性の電気分解(又は電解))における改善された安定性(又は向上した安定性)(すなわち、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の完全性(又は一体性(又はインテグリティ))が失われる前に、より長持ちする)が示されることは、当該分野において、知られている。
より安定なポリマーを得るための別の方法は、ポリマー材料(又はポリマー・マテリアル)を架橋(又はクロスリンク)させることである。
しかし、増加した安定性へのパス(又は経路又は道)は、ともに、ポリマーの溶媒への溶解性(又は溶解度)も制限される。すなわち、所望の特性(又はプロパティ)を有する隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を達成することができない。その原因は、3つの成分(バインダ、溶媒および無機粒子)の間の比であり、仕上げられた隔膜(又は最終製品の隔膜)において、最適な値を下回る。
【0015】
驚くべきことに、本発明の発明者らは、以下のことを見出した。まず、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)をキャスティング(又はキャスト)により形成(又は生成又は成形又は製造)し、その後、反応を行って、それにより、結合ポリマー(又はバインディング・ポリマー)の架橋を生じさせることによって、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の熱的および/または化学的な安定性(又はスタビリティ)を改善(又は向上)させることができる。
【0016】
結果として、本発明は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を得るためのプロセス(又は工程)又は方法(又はメソッド)に関する。当該プロセスは、以下の(i)~(vii)の工程(又はステップ)を含む。
(i)
隔膜片(又は一片の隔膜(又は隔壁)又は隔膜ピース(又は隔壁ピース)又はダイアフラム・ピース)を準備(又は提供)する工程(又はステップ)であって、例えば、隔膜片がポリマーのバインダ(又はポリマー製のバインダ又はポリマーバインダ)を含んで成る、工程(又はステップ)
(ii)
ポリマーのバインダに機能(又は機能性又は官能性又は官能基又はファンクショナリティ)を付与する工程(又はステップ)であって、この工程において生じる機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)によって、架橋が可能になる、工程(又はステップ)
(iii)
必要に応じて、工程(ii)において得られる機能が付与された隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を水中で濯ぐ工程(又はステップ)
(iv)
隔膜片をさらに処理する工程(又はステップ)であって、以下の(a)、(b)または(c)の1つを含む、工程(又はステップ)
(a) 必要に応じて、工程(iii)において濯がれた機能が付与された隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を上昇した温度において延長された期間(又は長い期間)にわたって乾燥させること、または、隔膜が実質的に水を含まなくなるまで隔膜を乾燥させること、または、
(b) 隔膜(又は隔壁)のマトリクス(又は母材)(又はダイアフラム・マトリクス)において、水を架橋剤に置き換えること、または
(c) 上記の(a)において機能が付与された隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を乾燥させた後、隔膜(又は隔壁)のマトリクス(又は母材)(又はダイアフラム・マトリクス)に架橋剤を添加すること
(v)
工程(iv)において得られる乾燥させた隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を上昇した温度で延長された期間(又は長い期間)にわたって架橋させる工程(又はステップ)
(vi)
工程(v)での架橋を完了させた後、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)の中で濯ぎ、延長された期間(又は長い期間)にわたって、アルカリ性の水溶液(又はアルカリ水溶液)で処理する工程(又はステップ)
(vii)
工程(vi)においてアルカリで処理した隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)で濯ぎ、続いて、延長された期間(又は長い期間)にわたって、脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)の中で煮沸(又は沸騰又はボイル)させる工程(又はステップ)。
【0017】
本開示の記載から明確な通り、本発明は、キャスティング(又はキャスト)により形成(又は生成又は成形又は製造)された形状(又は形態又はフォーム)あるいはプレス(又は押圧又は圧縮)により形成(又は生成又は成形又は製造)された形状(又は形態又はフォーム)で隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を提供する方法(又はメソッド)に関する。
従って、1つの態様では、工程(i)において、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、キャスティング(又はキャスト)により形成(又は生成又は成形又は製造)された形状(又は形態又はフォーム)で提供される。また、当業者に明確な通り、キャスティング(又はキャスト)により形成(又は生成又は成形又は製造)されて提供される隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)あるいはプレス(又は押圧又は圧縮)により形成(又は生成又は成形又は製造)されて提供される隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、適切なスキャフォールド(又はスキャフォールディング)を含んで成る(例えば、ポリマー(又はポリマー製)のメッシュ(mesh)、ガーゼ(gauze)またはクロス(cloth)など)。
非制限的な例は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(製)のメッシュであってよい。
他の例は、任意の適切な種類の様々な不織繊維(又は不織ファイバー)である。
他の非制限的な例は、例えば、ポリエーテル エーテル ケトン(PEEK)、ポリフェニレン スルフィド(PPS)、エチレン テトラフルオロエチレン(ETFE)またはそのコポリマーである。
【0018】
また、当業者に明確な通り、本発明に従う隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、適切な金属酸化物(又は金属オキシド)または他の適切な材料(又はマテリアル)を含み、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を通して、イオン伝導性(又はイオン伝導度又はイオン・コンダクティビティ)を可能にする。
このような金属酸化物(又は金属オキシド)は、チタン(又はチタニウム)、ニッケル、バナジウムなどの酸化物(又はオキシド)であってよい。
他の例は、ポリチタン酸(polytitanic acid)、ポリジルコン酸(polyzirconic acid)、あるいは、酸化ジルコニウム(又はジルコニウムオキシド)、二酸化チタン(又はチタニウムジオキシド)、酸化アルミ(又はアルミニウムオキシド)、タルク、硫酸バリウム(又はバリウムスルフェート)またはチタン酸カリウム(又はカリウムチタネート)、および水を含む無機のゲル(又はハイドラス・インオーガニック・ゲル(hydrous inorganic gel))、例えば、酸化マグネシウムのゲル(又はマグネシウムオキシド・ゲル)、酸化ジルコニウムのゲル(又はジルコニウムオキシド・ゲル)、酸化チタンのゲル(又はチタニウムオキシド・ゲル)またはリン酸ジルコニルのゲル(又はジルコニルホスフェート・ゲル)であってよい。
【0019】
本発明に従って様々なポリマーを使用してよい。
1つの非制限的な例は、スルホン系ポリマー(又はスルホンに基づくポリマー又はスルホン・ベース・ポリマー)である。
1つの具体的な非制限的な例は、例えば、ポリフェニルスルホン(polyphenylsulfone(PPSU))であってよい。
他の具体的な非制限的な例は、ポリマー(ポリビニリデンクロリド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート)またはこのようなポリマーのコポリマーである。
ポリマーのバインダ(又はポリマー製のバインダ又はポリマーバインダ)は、架橋可能となるように、さらなる機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)または構成(又は形状又はコンフィギュレーション)に敏感(又は感受性)でなければならない。
非制限的な例は、例えば、ハロメチル化(又はハロメチレーション)、リチウム化(又はリチエーション)、ブロモ化(又はブロミネーション)、アミノメチル化(又はアミノメチレーション)などである。
さらなる非制限的な例は、ポリマーを濃硫酸と反応させることによって、ポリマーのバインダ(又はポリマー製のバインダ又はポリマーバインダ)をスルホン化(又はスルホネーション)することである。
例示の非制限的な例を以下のスキーム(又は式)に示す。
【0020】
【0021】
ポリマーのバインダ(又はポリマー製のバインダ又はポリマーバインダ)に機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)するための反応条件(又はリアクション・コンディション)は、試薬およびポリマーの種類(又はタイプ)によって変動してよく、当業者の知識によって、容易に考えられる。
上記の例では、硫酸の存在下でのスルホン化反応(又はスルホネーション反応又はスルホネーション・リアクション)にPPSUを供する。
好ましくは、硫酸は、濃硫酸である。すなわち、その濃度は98重量%である。
【0022】
ポリマーの機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)の間の反応の温度は、例えば、約40℃~約80℃などの範囲内、例えば、約45℃など、例えば、約50℃など、例えば、約55℃など、例えば、約60℃など、例えば、約65℃など、例えば、約70℃など、例えば、約75℃などであってよい。
【0023】
1つの特定の態様において、ポリマーへの機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)の間の温度、約75℃~約85℃の範囲内であってよい。
なお、さらなる態様において、ポリマーへの機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)の間の温度は、約80℃であってよい。
【0024】
ポリマーへの機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)の間の反応時間(又はリアクション・タイム)は、例えば、約1時間~約48時間などの範囲内、例えば、約3時間など、例えば、約4時間など、例えば、約5時間など、例えば、約6時間など、例えば、約7時間など、例えば、約8時間など、例えば、約9時間など、例えば、約10時間など、例えば、約11時間など、例えば、約12時間など、例えば、約24時間など、例えば、約48時間などであってよい。
【0025】
1つの態様において、ポリマーへの機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)の間の反応時間(又はリアクション・タイム)は、約14時間~約18時間の範囲内であってよい。
なお、さらなる態様において、ポリマーへの機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)の間の反応時間(又はリアクション・タイム)は、約16時間であってよい。
【0026】
ポリマーへの機能付与反応(又は機能性付与反応又は官能性付与反応又は官能基付与反応又は官能基化反応又はファンクショナリゼーション・リアクション)の完了後、機能付与されたポリマー(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーションされたポリマー)から、任意の適切な精製方法によって、反応で使用した試薬を除去する。
このような方法として、例えば、脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)の中で濯ぐこと(又は工程又はステップ)(又はリンス又はリンシング工程)を挙げることができる。
このような水の温度は、例えば、約0℃~約5℃であってよい。
この工程(又はステップ)を行って、反応を停止(又はストップ)させる。
しかし、反応で使用する試薬に応じて、任意の溶媒または溶媒混合物(又は溶媒混合液又はソルベント・ミックス)を使用してよく、残存する試薬を濯ぎ出してよい(又は洗い流してよい)。
非制限的な例は、例えば、アルコールまたはDMF(ジメチルホルムアミド)、またはDMSO(ジメチルスルホキシド)、またはそれらの任意の混合物(又は混合液)であってよい。
上記の例において、濯ぐこと(又は工程又はステップ)(又はリンス又はリンシング工程)は、濯ぐ流体(又はリンス・フルード)が本質的に中性のpH、すなわち、約5.5~約6.5の範囲内のpHを有する場合、完了したと考えてよい。
【0027】
必要に応じて、機能付与されたポリマー(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーションされたポリマー)は、濯いだ後、乾燥させることで、濯ぐプロセス(又はリンス・プロセス)で使用した溶媒を除去してよい。
乾燥は、任意の適切な温度(例えば、約20℃~約80℃など)で進行してよく、一定の期間(約12時間~約48時間、例えば、約24時間など)にわたって進行してよい。
【0028】
1つの特定の態様において、乾燥温度は、約75℃~約85℃の範囲内であってよい。
なお、さらなる態様において、乾燥温度は、約80℃であってよい。
【0029】
さらなる態様において、乾燥は、一定の期間(約14時間~約18時間の範囲内)にわたって進行してよい。
なお、さらなる態様において、乾燥は、約16時間の期間にわたって進行してよい、
【0030】
本開示で記載した通り、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、必要に応じて、工程(ii)の後、すなわち、ポリマーバインダに機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)した後に乾燥させてよい。
代替として、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)に含まれるポリマーに機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)した後、隔膜を乾燥させる代わりに、ポリマーのマトリクス(又は母材)(又はポリマー・マトリクス)に存在する水または他の溶媒を交換してよく、あるいは、そうでなければ、架橋剤と置換(リプレイス)/置換(ディスプレイス)されてよい。そうすることで、ポア(又は孔又は細孔)の崩壊(又は破壊又はコラプス又はコラプシング)を回避することができる。なお、このようなポア(又は孔又は細孔)の崩壊(又は破壊又はコラプス又はコラプシング)は、場合によっては、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を乾燥させるとき、すなわち、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)から水を除去するときに発生し得るものである。
ポリマーのマトリクス(又は母材)(又はポリマー・マトリクス)またはストラクチャ(又は構造)におけるポア(又は孔又は細孔)の崩壊(又は破壊又はコラプス又はコラプシング)は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)のイオン伝導性(又はイオン伝導度又はイオン・コンダクティビティ)の減少に寄与(又は貢献)してよい。
架橋剤は、例えば、ジアルコール(例えば、エチレングリコールまたはプロピレングリコールなど)またはトリアルコール(例えば、グリセロールなど)であってよい。
【0031】
さらに、代替として、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、工程(ii)の後、すなわち、ポリマーバインダに機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)した後に乾燥させてよい。
隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)が十分に乾燥したと考えられた後(水を含まないか、水の量が減少した後)、架橋剤を添加してよい。
このような架橋剤は、例えば、ジアルコール(例えば、エチレングリコールまたはプロピレングリコールなど)またはトリアルコール(例えば、グリセロールなど)であってよい。
従って、この態様において、架橋剤は、吸収(又は浸漬又はソーク)させることができ、あるいは、そうでなければ、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)のストラクチャ(又は構造)またはマトリクス(又は母材)に拡散(又は分散又はディフューズ)させることができる。
【0032】
なお、さらに、代替として、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、工程(ii)の後、すなわち、ポリマーバインダに機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)した後、架橋剤を添加することなく、乾燥させてよい。
【0033】
ポリマーに十分に機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)させた後、ポリマーを架橋させる。
架橋反応は、熱による架橋(又は熱架橋)によるものであってよい。あるいは、架橋反応は、ラジカルによる架橋(又はラジカル架橋)によって開始されてもよい。あるいは、架橋反応は、ポリマーのUV照射(又はUV放射又はUV-イラディエーション)によって行われるものであってもよい。
架橋反応の種類(又はタイプ)、すなわち、反応を開始させて反応を達成する様式(又はマナー)は、当業者に明確であり、これは、もちろん、ポリマーの機能性(又は官能性又は官能基又はファンクショナリティ)に依存する。
上記の例において、熱処理(又はサーマル・トリートメント)を採用してよく、それにより、架橋をもたらすことができる。
架橋をもたらすために採用される温度は、約180℃~約240℃などの範囲内、例えば、約190℃など、例えば、約200℃など、例えば、約210℃など、例えば、約220℃など、例えば、約230℃などであってよい。
1つの特定の態様において、架橋温度は、約220℃であってよい。
架橋のための反応時間(又はリアクション・タイム)は、約12時間~約48時間の範囲内、例えば、約24時間などであってよい。
特定の態様において、架橋のための反応時間(又はリアクション・タイム)は、約12時間であってよい。
反応の例を以下のスキーム(又は式)に示す。
以下のスキームは、架橋剤を使用することなく、本発明に従う方法を示すものである。
【0034】
【0035】
必要に応じて、上記で言及した通り、架橋剤、例えば、ジアルコール(例えば、エチレングリコールまたはプロピレングリコールなど)、またはトリアルコール(例えば、グリセロールなど)などを使用してもよい。
実際、その目的のために、二官能性(又は二機能性又はビファンクショナリティ)の反応基または三官能性(又は三機能性又はトリファンクショナリティ)の反応基を有する部位を採用してよい。ただし、試薬の沸点が十分に高く、架橋反応の反応温度に匹敵する場合に限られる。
非制限的な例を以下のスキーム(又は式)に示す。
【0036】
【0037】
上記から明確な通り、本発明に従うプロセス(又は工程)は、架橋剤を含んでいなくてよい。あるいは、架橋剤を採用しなくてもよく、または架橋剤を含んでいなくてもよい。
架橋反応が完了した後、適切な溶媒または溶媒混合物(又は溶媒混合液又はソルベント・ミクスチャ)で隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を洗浄する。
例えば、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)の中で濯いでよい(又はリンスしてよい)。
水の温度は、周囲温度であってよい。
しかし、反応で使用した試薬に応じて、任意の溶媒または溶媒混合物(又は溶媒混合液又はソルベント・ミクスチャ)を使用してよく、それにより、残存する試薬を濯ぎ出してよい(又は洗い流してよい)。
非制限的な例は、例えば、アルコールまたはDMF(ジメチルホルムアミド)、またはDMSO(ジメチルスルホキシド)、または任意のそれらの混合物(又は混合液又はミクスチャ)であってよい。
濯いだ後(又はリンス後)、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)をさらに処理してよい。それにより、架橋反応に由来する微量の副生成物(又はバイプロダクト)を除去することができる。
上記の例において、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)をアルカリ性の水溶液(又はアルカリ水溶液)に浸漬させてよい。
溶液は、強度(又は濃度)が約5重量%~約30重量%のKOH溶液(強KOH溶液)であってよい。隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の処理は、一定の期間(約2時間~約48時間、例えば、約12時間など、または約48時間)にわたって行ってよい。
【0038】
製造(又は調製又は生成)の最終工程(又はファイナル・ステップ)において、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)の中で濯いでよい(又はリンスしてよい)。その後、一定の期間(約30分~約2時間、例えば、約60分など、または、例えば、約90分)にわたって、脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)の中で煮沸(又は沸騰又はボイル)させてよい。
【0039】
従って、本発明は、本発明に従うプロセス(又は工程)によって得ることができる(又は製造することができる)隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)に関する。
【0040】
別の態様において、本発明は、本発明に従う隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の任意の電気化学的な用途(又は応用又は適用又はアプリケーション)における使用(又は使用方法又はユース)に関する。
【0041】
さらなる態様において、本発明は、本発明に従う隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の任意の電気化学的なデバイス(又は装置)におけるエレメント(又は構成要素又は要素又は部品)としての使用(又は使用方法又はユース)に関する。
【0042】
具体的には、本発明に従う隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の使用(又は使用方法又はユース)は、任意の電気化学的なデバイス(又は装置)におけるエレメント(又は構成要素又は要素又は部品)として、あるいは水の電気分解(又は電解)(例えば、水の酸素と水素への分解など)のために適合または構成された任意の用途(又は応用又は適用又はアプリケーション)における使用であってよい。
【0043】
デバイス(又は装置)または用途(又は応用又は適用又はアプリケーション)は、アルカリ性の環境における電気分解(又は電解)を含んでよく、電解物(又は電解質又は電解液)(又はエレクトロライト(electrolyte))として、アルカリ性の水溶液(又はアルカリ水溶液)を具体的に用いるものである。
非制限的な例は、電解物(又は電解質又は電解液)(又はエレクトロライト(electrolyte))として作用する約30重量%以上の濃度を有するKOHの水溶液であってよい。
【0044】
1つの態様において、本発明に従う使用(又は使用方法又はユース)は、アルカリ性の電解物(又は電解質又は電解液)(又はエレクトロライト(electrolyte))を含んでよい。ここで、電解物(又は電解質又は電解液)は、上昇した温度まで、加熱されてよい。
さらなる態様において、上昇した温度は、約50℃~約150℃の範囲内、あるいは、例えば約120℃超、または例えば約100℃超、または例えば約80℃超であってよい。
【0045】
特定の態様において、上昇した温度は、約80℃超である。
【0046】
さらなる態様において、本発明に従う隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の使用(又は使用方法又はユース)は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)が以下のように構成され得るようなものである。すなわち、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、電解物(又は電解質又は電解液)(又はエレクトロライト(electrolyte))がその多孔性(又は多孔度又はポロシティ)に起因して、電解物(又は電解質又は電解液)を収容または吸収することができ、結果として、電解物(又は電解質又は電解液)は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の多孔性の構造に入ることができるようになる。
次いで、膜(又はメンブレン)を通して、イオン伝導性(又はイオン伝導度又はイオン・コンダクティビティ)にすることができる。その一方で、膜は、依然として、酸素ガスを水素ガスから分離する。酸素ガスおよび水素ガスは、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)のそれぞれの側にあるアノードおよびカソードにおいてそれぞれ製造されるものである。
【0047】
なお、さらなる態様において、本発明は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)に関し、当該隔膜は、架橋されたポリマーのバインダ(又は架橋ポリマーバインダ)を含んで成る。
【0048】
1つの態様において、本発明は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)に関し、当該隔膜は、架橋されたポリマーのバインダ(又は架橋ポリマーバインダ)を含んで成る。ここで、ポリマーのバインダは、ポリフェニルスルホン(PPSU)である。
【0049】
1つの態様において、ポリマーのバインダは、スルホン酸基の組み込み(又は導入又は結合又はインコーポレーション)によって、機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)されてよい。このような機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)は、濃硫酸の援助(又は支援又はエイド)によって達成されてよい。
【0050】
さらなる態様において、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、スキャフォールド(又はスキャフォールディング)を含んでよい。
スキャフォールド(又はスキャフォールディング)は、例えば、ポリマー(又はポリマー製)のメッシュ(mesh)、ガーゼ(gauze)、ネット(net)またはクロス(cloth)などであってよい。
【0051】
なお、さらなる態様において、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、金属酸化物(又は金属オキシド)または金属(又はメタル)を含んでよい。
1つの態様において、金属酸化物(又は金属オキシド)の成分(又はコンポーネント)は、任意の適切な金属酸化物(又は金属オキシド)であってよく、あるいは、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を通してイオン伝導性(又はイオン伝導度又はイオン・コンダクティビティ)を可能にする他の適切な材料(又はマテリアル)であってよい。
このような金属酸化物(又は金属オキシド)は、チタン(又はチタニウム)、ニッケル、バナジウムなどの酸化物(又はオキシド)であってよい。
他の例は、ポリチタン酸(polytitanic acid)、ポリジルコン酸(polyzirconic acid)、あるいは、酸化ジルコニウム(又はジルコニウムオキシド)、二酸化チタン(又はチタニウムジオキシド)、酸化アルミ(又はアルミニウムオキシド)、タルク、硫酸バリウム(又はバリウムスルフェート)またはチタン酸カリウム(又はカリウムチタネート)、および水を含む無機のゲル(又はハイドラス・インオーガニック・ゲル(hydrous inorganic gel))、例えば、酸化マグネシウムのゲル(又はマグネシウムオキシド・ゲル)、酸化ジルコニウムのゲル(又はジルコニウムオキシド・ゲル)、酸化チタンのゲル(又はチタニウムオキシド・ゲル)またはリン酸ジルコニルのゲル(又はジルコニルホスフェート・ゲル)であってよい。
【0052】
例として、金属酸化物(又は金属オキシド)(例えば、ZrO2など)をポリマーのバインダ(又はポリマー製のバインダ又はポリマーバインダ)に添加してよく、それにより、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)をより親水性にする(濡れ性(又はウェッタビリティ)を増加させる)。なぜなら、そのさらなる結果によって、仕上げられた(又は完成した又は製品としての)隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)のイオン伝導性(又はイオン伝導度又はイオン・コンダクティビティ)が増加するからである。
【0053】
金属酸化物(又は金属オキシド)を含む隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を製造(又は調製又は生成)するための例示の非制限的な方法は、ポリマーのバインダ(又はポリマーバインダ)/ポリマーに金属酸化物(又は金属オキシド)を添加することによるものであってよく、それにより、スラリータイプ(又はスラリー型)の混合物を形成してよい。すなわち、以下の通りであってよい。
工程1(又はステップ1):
ポリマー/ポリマーのバインダ(又はポリマーバインダ)を適切な溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)など)に溶解させる工程(又はステップ)
工程2(又はステップ2):
ポリマー/溶媒の混合物を金属酸化物(又は金属オキシド)の粒子と混合する工程(又はステップ)
この混合する工程(又はステップ)は、数時間にわたって、減圧下(又は真空下)で行われてよい。それにより、均質な混合物を確実に得ることができ、気泡(又はエア・バブル)の混入(又はインクルージョン)を回避または排除することができる。
工程3(又はステップ3):
本発明に従う隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)をキャスト(又はキャスティング)する工程(又はステップ)(溶媒は実質的に除去している)
従って、このような隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、溶媒を除去する際に固化する。そうすることで、ポリマーのバインダ(又はポリマー製のバインダ又はポリマーバインダ)/ポリマーは、金属酸化物(又は金属オキシド)とともに固化して、スキャフォールド(又はスキャフォールディング)(ただし、使用する場合)を囲むようになる。スキャフォールド(又はスキャフォールディング)は、ネット(net)またはグリッド(grid)などであってよい。
【0054】
従って、キャスティング(又はキャスト)により形成(又は生成又は成形又は製造)される隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、多孔性(又は多孔質)の構造(又は多孔構造又はポーラス・ストラクチャ)のように作用する。このような多孔性の構造は、金属酸化物粒子(又は金属オキシド粒子又はメタル・オキシド・パーティクル)を包含(又はエンクローズ)し、多孔性(又は多孔質)の媒体(又はメディア)(又は多孔媒体又はポーラス・メディア)を形成する。このような多孔性の媒体は、電解液(又は電解質液)(又はエレクトロライト・フルード(electrolyte fluid))を収容することができるものである。
【0055】
具体的な実施形態において、本発明は、以下の項目(又はアイテム)にも関連する。
【0056】
項目(又はアイテム)
[1]
隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、当該プロセスは、以下の(i)~(vi)の工程(又はステップ):
(i)
隔膜片(又は一片の隔膜(又は隔壁)又は隔膜ピース(又は隔壁ピース)又はダイアフラム・ピース)を準備(又は提供)する工程(又はステップ)であって、隔膜片がポリマーのバインダ(又はポリマー製のバインダ又はポリマーバインダ)を含んで成る、工程(又はステップ)、
(ii)
ポリマーのバインダに機能(又は機能性又は官能性又は官能基又はファンクショナリティ)を付与する工程(又はステップ)であって、この工程において生じる機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)によって、架橋が可能になる、工程(又はステップ)、
(iii)
必要に応じて、溶媒を用いて、工程(ii)において得られる機能が付与された隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を濯ぐ工程(又はステップ)、
(iv)
隔膜片をさらに処理する工程(又はステップ)であって、以下の(a)、(b)または(c):
(a) 必要に応じて、工程(iii)において濯がれた機能が付与された隔膜を上昇した温度において延長された期間(又は長い期間)にわたって乾燥させること、または、隔膜が実質的に水を含まなくなるまで隔膜を乾燥させること、または、
(b) 隔膜(又は隔壁)のマトリクス(又は母材)(又はダイアフラム・マトリクス)において、水を架橋剤に置き換えること、または
(c) 上記の(a)において機能が付与された隔膜を乾燥させた後、隔膜のマトリクスに架橋剤を添加すること
の1つを含む、工程(又はステップ)、
(v)
工程(iv)において得られる乾燥させた隔膜を上昇した温度で延長された期間(又は長い期間)にわたって架橋させる工程(又はステップ)、
(vi)
工程(v)での架橋を完了させた後、隔膜を溶媒の中で濯ぎ、必要に応じて、後処理する工程(又はステップ)
を含む、プロセス(工程)または方法(又はメソッド)。
【0057】
[2]
第1項に記載の隔膜を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、ポリマーのバインダ(又はポリマー製のバインダ又はポリマーバインダ)は、スルホン系ポリマー(又はスルホンに基づくポリマー又はスルホン・ベース・ポリマー)であって、例えば、ポリフェニルスルホン(PPSU)、またはポリビニリデンクロリド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、またはこのようなポリマーのコポリマーなどである、プロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)。
【0058】
[3]
第1項または第2項に記載の隔膜を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、
工程(ii)における機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)の反応によって、スルホン化反応が生じて、-SO3H基がポリマーのバインダ(又はポリマー製のバインダ又はポリマー・バインダ)に追加されるか、あるいは、
工程(ii)における機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)の反応によって、ハロメチル化(又はハロメチレーション)、リチウム化(又はリチエーション)、ブロモ化(又はブロミネーション)、アミノメチル化(又はアミノメチレーション)などが生じる、
プロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)。
【0059】
[4]
第1項~第3項のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、架橋剤が、ジアルコール(例えば、エチレングリコールまたはプロピレングリコールなど)またはトリアルコール(例えば、グリセロールなど)である、プロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)。
【0060】
[5]
第1項~第4項のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、工程(ii)における機能付与(又は機能性付与又は官能性付与又は官能基付与又は官能基化又はファンクショナリゼーション)の反応は、例えば、約40℃~約80℃などの範囲内の温度(例えば、約45℃など、例えば、約50℃など、例えば、約55℃など、例えば、約60℃など、例えば、約65℃など、例えば、約70℃など、例えば、約75℃など)および約1時間~約48時間などの範囲内の期間(例えば、約1時間~約48時間など、例えば、約3時間など、例えば、約4時間など、例えば、約5時間など、例えば、約6時間など、例えば、約7時間など、例えば、約8時間など、例えば、約9時間など、例えば、約10時間など、例えば、約11時間など、例えば、約12時間など、例えば、約24時間など、または、例えば、約48時間など)で行われる、プロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)。
【0061】
[6]
第1項~第5項のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、工程(iii)における濯ぐ工程は、適切な溶媒(例えば、脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)、またはアルコール、またはDMF、または、例えば、DMSO、またはこれらの任意の混合物(又は混合液又はミクスチャ)など)において、隔膜を濯ぐことによって行われ、溶媒の温度が約0℃~約5℃であってよい、プロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)。
【0062】
[7]
第1項~第6項のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、工程(iv)における乾燥させる工程(又はステップ)を約20℃~約80℃の範囲内の温度において約12時間~約48時間の期間(例えば、約24時間など)にわたって行う、プロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)。
【0063】
[8]
第1項~第7項のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、工程(v)における架橋反応は、熱による架橋によって行われるか、ラジカル架橋によって開始されるか、ポリマーのUV照射によって実施され、必要に応じて、さらなる架橋試薬(又はクロスリンキング・リエージェント)(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはグリセロールなど)の存在下で行われる、プロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)。
【0064】
[9]
第1項~第8項のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、工程(v)における架橋反応は、約180℃~約240℃などの範囲内の上昇した温度(例えば、約190℃など、例えば、約200℃など、例えば、約210℃など、例えば、約220℃など、例えば、約230℃など)で約12時間~約48時間の範囲内の反応時間(例えば、約24時間など)にわたって行われる、プロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)。
【0065】
[10]
第1項~第9項のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、工程(vi)における濯ぐ工程は、脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)、またはアルコール、またはDMF、または、例えば、DMSO、またはこれらの任意の混合物(又は混合液又はミクスチャ)で行う、プロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)。
【0066】
[11]
第1項~第10項のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、工程(vi)における後処理(又はポスト・トリートメント)は、隔膜をアルカリ性の水溶液(又はアルカリ水溶液)(例えば、強度(又は濃度)が約5重量%~約30重量%のKOH溶液(又は強KOH溶液)など)で処理することを含んでよく、隔膜の処理は、約2時間~約48時間(例えば、約12時間、または約48時間など)の期間にわたって、前記アルカリ性の水溶液(又はアルカリ水溶液)の中で進行してよい、プロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)。
【0067】
[12]
第1項~第11項のいずれか1項に記載の隔膜を得るためのプロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)であって、当該プロセスは、工程(vi)の後に追加の工程(vii)を含んでよく、この工程(vii)では、脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)で隔膜を濯ぎ、続いて、約30分~約2時間の期間にわたって(例えば、約60分、または、例えば、約90分など)、脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)の中で煮沸させる、プロセス(又は工程)または方法(又はメソッド)。
【0068】
[13]
第1項~第12項のいずれか1項に記載のプロセス(又は工程)によって得ることができる隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)(又は製造することができる隔膜(又は隔壁又はダイアフラム))。
【0069】
[14]
任意の電気化学的な用途(又は応用又は適用)(又はエレクトロケミカル・アプリケーション)における、第13項に記載の隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の使用(又は使用方法又はユース)。
【0070】
[15]
架橋されたポリマーのバインダ(架橋されたポリマー製のバインダ又は架橋ポリマーバインダ)を含んで成る隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)であって、ポリマーのバインダは、スルホン系ポリマー(又はスルホンに基づくポリマー又はスルホン・ベース・ポリマー)(例えば、ポリフェニルスルホン(PPSU)など)であり、このポリマーは、必要に応じて、エチレングリコールまたはグリセロールで架橋されている、隔膜。
【実施例】
【0071】
(実施例)
以下、非制限的な実施例によって本発明を説明する。実施例は、本発明に係る隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を製造(又は調製又は生成又は形成)するための方法(又はメソッド)を示す。
【0072】
工程1(又はステップ1):
ポリマー/ポリマーのバインダ(又はポリマーバインダ)(例えば、PPSUなど)を適切な溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)など)に溶解させる工程(又はステップ)
工程2(又はステップ2):
ポリマー/溶媒の混合物(又は混合液)を金属酸化物(又は金属オキシド)の粒子(例えば、ZrO2)と混合する工程(又はステップ)
この混合する工程(又はステップ)は、数時間にわたって、減圧下(又は真空下)で行われてよい。それにより、均質な混合物を確実に得ることができ、気泡(又はエア・バブル)の混入(又はインクルージョン)を回避することができる。
工程3(又はステップ3):
本発明に従う隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)をキャスティング(又はキャスト)により形成(又は生成又は成形又は成形)して、溶媒を除去する工程(又はステップ)
従って、このような隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、溶媒を除去する際のキャスト(又はキャスティング)の形状(又はキャスト・シェイプ)で固化する。そうすることで、ポリマーのバインダ(又はポリマーバインダ)/ポリマーは、金属酸化物(又は金属オキシド)とともに、固化して、スキャフォールド(ネット(net)またはグリッド(grid)などであってもよい)を囲むようになる。
【0073】
キャスティング(又はキャスト)により形成(又は生成又は成形又は製造)される隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)(上記に記載のもの)は、ポリフェニルスルホン(polyphenylsulfone(PPSU))を含むものであり、このような隔膜をスルホン化反応(又はスルホネーション反応又はスルホネーション・リアクション)(上昇した温度(80℃)で16時間にわたる濃硫酸(H2SO4)(98重量%)による処理)に供した。
反応後、冷たい脱ミネラル化された水中(5℃)で隔膜(又はダイアフラム)を徹底的に濯いだ。そうすることで、ポリマーの骨格(又はバックボーン)のスルホン化反応(又はスルホネーション反応又はスルホネーション・リアクション)を停止させた。
スルホン化した隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を80℃で16時間にわたって乾燥させた。その後、熱硬化のプロセス(又は工程)を開始した。
【0074】
12時間にわたって、220℃の温度に隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を加熱することによって、架橋(工程)を行った。
別の実験において、例えば、エチレングリコールの形態で架橋剤を添加した。また、別の実験において、グリセロールを添加した。それにより、ポリマーの骨格(又はバックボーン)における-SO3H基のテザリング(又は系留)またはブリッジング(又は架橋)をもたらした。
【0075】
架橋(工程)の後、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)で徹底的に洗浄する。その後、24時間にわたって、15重量%のKOHに浸漬させる。
KOHにおける隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の活性化(又はアクティベーション)は、重要な工程(又はステップ)である。この工程によって、SO2の残渣を除去する(SO2は、KOHと反応して、K2SO4およびH2Oを形成する)。なぜなら、SO2は、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)の不安定(性)を促進し得るからである。
最終的に、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)で洗浄し、脱ミネラル化された水(又は脱ミネラル水)の中で2時間にわたって煮沸(又は沸騰又はボイル)させた。
【0076】
アルカリ性の電解物(又は電解質又は電解液)(又はエレクトロライト(electrolyte))(約30重量%のKOH水溶液)を用いる完全電解セル(又はフル電解セル(full electrolytic cell))において、ならびに、現場(又はエクス・サイチュ(ex-situ))での試験セットアップ(耐久試験(又はデュラビリティ・テスト)のために加圧されたタンク(単数または複数)(30重量%のKOH、タンク内での純粋な酸素のバブリング、110、120、130、140および150℃の温度)に浸漬)において、上記で得られた隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を試験した。これらの試験では、従来の架橋されていない隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)と寿命(又はライフ・タイム)を比較する。
さらに、イオン伝導性(又はイオン伝導度又はイオン・コンダクティビティ)、液体透過性(又はリキッド・パーミアビリティ)およびガス分離能(又はガス・セパレーション・ケーパビリティ)
などの特性(又はプロパティ)も現場(又はエクス・サイチュ(ex-situ))でのセットアップでも試験する。
究極の試験(又はテスト)は、上記の特性(又はキャラクテリスティック)をすべて含むものであり、インサイチュ(in-situ)(又は系中)でのセル試験(又はセル・テスト)(120、130、140および150℃、数千時間)である。
以下のことが見出された。本発明の方法(又はメソッド)により製造されて(又は得られて)、電解セル(又は電解槽又は電解電池)に組み込まれた隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)は、上記で示した温度の全体にわたって、架橋されていないカウンターパート(又は非架橋のカウンターパート)と比較して、同一またはそれよりも改善(又は向上)した優れた伝導性(又は伝導度又はコンダクティビティ)を示した。また、より重要で顕著なこととして、実験温度のより高温側において、有意により長い寿命(又はライフ・タイム)を示した(機械的な一体性(又は機械的な完全性又はメカニカル・インテグリティ)を損なうことはなかった)。
実験が完了した後、隔膜(又は隔壁又はダイアフラム)を目視により検査したところ、無傷(又はインタクト)であることがわかった(メカニカル・サウンド)。このとき、目視により、分解(又はデグラデーション)の兆候(又はサイン)は全くなく、ただ、試験前とほとんど同じガス分離能であることを示している。
【国際調査報告】