(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】複数の炭素質領域から形成されたリチウム硫黄バッテリカソード
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240806BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240806BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240806BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240806BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240806BHJP
C01B 32/15 20170101ALI20240806BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/134
H01M10/052
H01M4/13
C01B32/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024503870
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 US2022037905
(87)【国際公開番号】W WO2023004060
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520424560
【氏名又は名称】ライテン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラニング,ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ストウェル,マイケル・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,アヌラーグ
(72)【発明者】
【氏名】ベル,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】フアン,チェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】バウカム,ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヨウ
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バンヒュースデン,カレル
(72)【発明者】
【氏名】ロゴジナ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ガズダ,イェジー
(72)【発明者】
【氏名】シャン,ジンニン
【テーマコード(参考)】
4G146
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA11
4G146AB05
4G146AC02A
4G146AC04A
4G146AD17
4G146AD25
5H029AJ01
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM14
5H029BJ02
5H029BJ04
5H029DJ13
5H029EJ04
5H029EJ12
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ06
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA11
5H050CB12
5H050EA02
5H050FA17
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
(57)【要約】
バッテリ電極に組み込むのに好適な物質の組成物が開示される。いくつかの実施態様では、物質の組成物は、いくつかの炭素質粒子によってサイズまたは形状を画定することができる細孔を含むことができる。粒子の各々は、隣接する領域が細孔のうちのいくつかによって互いに分離されるように、複数の領域を有することができる。例えば、複数の隣接する粒子の合体に適応させるために、粒子の各々の周囲の全体にわたって、変形可能な領域を分布させることができる。物質の組成物はまた、複数の集合体及び複数の凝集体を含むことができ、ここで、各集合体は、ともに連結された多数の粒子を含み、各凝集体は、ともに連結された多数の集合体を含む。
【選択図】
図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細孔を含む物質の組成物であって、前記物質の組成物は、
複数の粒子であって、前記粒子の各々は、
複数の第1の細孔を含む第1のゾーンであって、前記複数の第1の細孔は、均一な細孔サイズを有する、前記第1のゾーンと、
複数の第2の細孔を含む第2のゾーンであって、前記第2のゾーンは、前記第1のゾーンに対して同心円状に位置付けられ、かつ前記複数の第1の細孔のうちの少なくともいくつかによって、前記第1のゾーンから分離されており、前記複数の第2の細孔は、前記粒子の中心から前記粒子の境界までの半径方向に沿って徐々に減少する細孔サイズを有する、前記第2のゾーンと、を含む、
前記複数の粒子と、
複数の集合体であって、各々が、ともに連結された多数の前記粒子を含む、前記複数の集合体と、
複数の凝集体であって、各々が、ともに連結された多数の前記集合体を含む、前記複数の凝集体と、
を含む、前記物質の組成物。
【請求項2】
前記粒子の各々は、20ナノメートル(nm)~150nmのおおよその範囲内の主要寸法を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項3】
前記集合体の各々は、10ナノメートル(nm)~10マイクロメートル(μm)のおおよその範囲内の主要寸法を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項4】
前記凝集体の各々は、0.1マイクロメートル(μm)~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項5】
前記細孔の各々は、0ナノメートル(nm)~100nmのおおよその範囲内の主要寸法を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項6】
前記第1のゾーンは、第1の多孔性を有し、前記第2のゾーンは、前記第1の多孔性とは異なる第2の多孔性を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項7】
前記第1のゾーンは、第1の密度を有し、前記第2のゾーンは、前記第1の密度とは異なる第2の密度を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項8】
前記第1のゾーンは、0.0立方センチメートル(cc)/g~2.0cc/gの第1の細孔密度を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項9】
前記第2のゾーンは、1.5立方センチメートル(cc)/g~5.0cc/gの第2の細孔密度を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項10】
前記物質の組成物は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力で、100ジーメンス(S)/m~20,000S/mのおおよその範囲内の導電率を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項11】
前記凝集体のうちの少なくともいくつかは、1つ以上のポリマー系結合剤で互いに接続されている、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項12】
前記複数の細孔のうちの少なくともいくつかの内部に分散された1つ以上の導電性添加剤をさらに含む、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項13】
前記粒子の各々は、平坦なグラフェン、しわ状グラフェン、複数のカーボンナノチューブ(CNT)、または複数のカーボンナノオニオン(CNO)のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項14】
前記粒子の各々は、前記第2のゾーン上に前記それぞれの粒子の前記中心に対して同心円状に配設され、かつ前記複数の細孔のうちの少なくともいくつかによって前記第2のゾーンから分離された第3のゾーンをさらに含み、前記第3のゾーンは、複数の第3の細孔を含む、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項15】
前記複数の第1の細孔は、マクロ細孔であり、前記複数の第2の細孔は、メソ細孔であり、前記複数の第3の細孔は、マイクロ細孔である、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項16】
前記粒子の各々は、前記第2のゾーン上に前記それぞれの粒子の前記中心に対して同心円状に配設された1つ以上の追加のゾーンをさらに含み、前記1つ以上の追加のゾーンの各々は、前記複数の細孔のうちの少なくともいくつかによって、直接隣接するゾーンから分離されている、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項17】
前記複数の第2の細孔のうちの細孔の前記細孔サイズは、前記半径方向に沿って徐々に減少する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項18】
バッテリであって、
前記バッテリのサイクル中に複数のアルカリイオンを放出するように構成されたアルカリ金属を含むアノードと、
前記アノードの1つ以上の露出した表面上に堆積されたポリマーネットワークであって、前記ポリマーネットワークは、互いに架橋された複数のフッ素化ポリマー鎖でグラフトされた炭素質材料を含み、前記複数のフッ素化ポリマー鎖は、前記バッテリの動作サイクルに応答して、アルカリ金属フッ化物を生成するように構成され、前記アルカリ金属フッ化物は、前記アノードからのアルカリ金属樹枝状結晶の形成を抑制するように構成され、前記炭素質材料は、平坦なグラフェン、しわ状グラフェン、複数のカーボンナノチューブ(CNT)、または複数のカーボンナノオニオン(CNO)のうちの1つ以上を含む、前記ポリマーネットワークと、
前記アノードとは反対に位置付けられたカソードと、
前記カソードの全体にわたって少なくとも部分的に分散され、かつ前記アノードと接触する電解質であって、前記電解質は、前記カソードと前記アノードとの間で前記複数のアルカリイオンを輸送するように構成されている、前記電解質と、
前記アノードと前記カソードとの間に位置付けられたセパレータと、
を備える、前記バッテリ。
【請求項19】
前記複数のフッ素化ポリマー鎖は、複数のモノマーを含み、1つ以上のモノマーは、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレート(DFHA)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(HDFDMA)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート(OFPMA)、テトラフルオロプロピルメタクリレート(TFPM)、3-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イルメタクリレート(HFAモノマー)、または2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン(PFSt)を含むビニル系モノマーを含む、請求項18に記載のバッテリ。
【請求項20】
前記ポリマーネットワークは、約0.001μm~5μmの厚さを有する、請求項18に記載のバッテリ。
【請求項21】
前記複数のフッ素化ポリマー鎖は、前記炭素質材料の表面にグラフトされている、請求項18に記載のバッテリ。
【請求項22】
前記グラフト化は、過酸化ベンゾイル(BPO)またはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のうちの少なくとも1つを含む1つ以上のラジカル開始剤に基づく、請求項21に記載のバッテリ。
【請求項23】
前記アノードは、アルカリ金属イオン(AIBN)を介在するように構成された少なくともいくつかの隣接するグラフェンシートを含む、請求項21に記載のバッテリ。
【請求項24】
前記複数のフッ素化ポリマー鎖は、ウルツ反応を介して、少なくともいくつかのアルカリ金属イオンと化学的に相互作用するように構成されている、請求項18に記載のバッテリ。
【請求項25】
前記ウルツ反応は、前記アルカリ金属フッ化物の生成に関連付けられる、請求項24に記載のバッテリ。
【請求項26】
前記ポリマーネットワークの全体にわたって分散された複数のグラフェンナノプレートレットをさらに含み、前記グラフェンナノプレートレットは、前記ポリマーネットワーク内で互いに隔離されている、請求項18に記載のバッテリ。
【請求項27】
前記グラフェンナノプレートレットの分散は、1つ以上の異なる濃度レベルを含む、請求項26に記載のバッテリ。
【請求項28】
前記グラフェンナノプレートレットの分散は、前記複数のフッ素化ポリマー鎖のうちの少なくともいくつかで官能化された前記炭素質材料のうちの少なくともいくつかをさらに含む、請求項27に記載のバッテリ。
【請求項29】
前記ポリマーネットワークは、約0.001重量%~2重量%の前記フッ素化ポリマー鎖を含む、請求項18に記載のバッテリ。
【請求項30】
前記ポリマーネットワークは、
前記アノードと接触する界面層と、
前記界面層の上部に配設された保護層と、をさらに含む、請求項18に記載のバッテリ。
【請求項31】
前記界面層は、メタクリレート(MA)、アクリレート、ビニル官能基、またはエポキシとアミン官能基との組み合わせを含む、複数の架橋可能なモノマーのうちの1つ以上を含む、請求項30に記載のバッテリ。
【請求項32】
前記保護層は、密度勾配によって特徴付けられている、請求項31に記載のバッテリ。
【請求項33】
前記密度勾配は、前記保護層の1つ以上の自己回復特性に関連付けられている、請求項32に記載のバッテリ。
【請求項34】
前記密度勾配は、前記ポリマーネットワークを強化するように構成されている、請求項32に記載のバッテリ。
【請求項35】
前記ポリマーネットワークは、前記アノードからの樹枝状成長を抑制するように構成されている、請求項32に記載のバッテリ。
【請求項36】
前記アノードは、アルカリ金属層である、請求項18に記載のバッテリ。
【請求項37】
前記カソード上に配設されたフィルムをさらに含み、前記フィルムは、互いに化学結合された三官能性エポキシ化合物及びジアミンオリゴマー化合物を含む、格子を含み、前記フィルムは、前記バッテリのサイクル中に生成されたアルカリ金属含有ポリ硫化物中間体の化学結合に関連付けられる、請求項18に記載のバッテリ。
【請求項38】
前記ポリマーネットワークは、前記フッ素化ポリマー鎖でグラフトされた約5重量%~100重量%の前記複数の炭素質材料と、フッ素化ポリマー、1つ以上の非フッ素化ポリマー、1つ以上の架橋可能なモノマー、またはそれらの任意の組み合わせの残部と、を含む、請求項18に記載のバッテリ。
【請求項39】
前記フッ素化ポリマー鎖でグラフトされた前記複数の炭素質材料は、5重量%~50重量%の前記フッ素化ポリマー鎖と、残部の炭素質材料と、を含む、請求項18に記載のバッテリ。
【請求項40】
バッテリであって、
格子中に架橋された複数のフッ素化ポリマー鎖でグラフトされた炭素質材料を含むポリマーネットワークを含むアノードであって、前記アノードは、前記バッテリの動作サイクル中に複数のアルカリイオンを出力するように構成されている、前記アノードと、
前記アノードとは反対に位置付けられたカソードと、
前記カソード上に配設された保護シースであって、前記保護シースは、互いに化学反応するように構成された三官能性エポキシ化合物及びジアミンオリゴマー系化合物を含む、前記保護シースと、
前記カソードの全体にわたって少なくとも部分的に分散され、かつ前記アノードと接触する電解質であって、前記電解質は、前記カソードと前記アノードとの間で前記複数のアルカリイオンを輸送するように構成されている、前記電解質と、
前記アノードと前記カソードとの間に位置付けられたセパレータと、
を備える、前記バッテリ。
【請求項41】
前記格子は、前記バッテリの動作サイクルに応答して、アルカリ金属フッ化物を生成するように構成されており、前記アルカリ金属フッ化物は、前記アノードからのアルカリ金属樹枝状結晶の形成を抑制するように構成されている、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項42】
前記ポリマーネットワークは、前記アノードの1つ以上の露出した表面上に堆積される、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項43】
前記炭素質材料は、平坦なグラフェン、しわ状グラフェン、複数のカーボンナノチューブ(CNT)、または複数のカーボンナノオニオン(CNO)のうちの1つ以上を含む、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項44】
前記複数のフッ素化ポリマー鎖は、複数のモノマーを含み、1つ以上のモノマーは、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレート(DFHA)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(HDFDMA)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート(OFPMA)、テトラフルオロプロピルメタクリレート(TFPM)、3-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イルメタクリレート(HFAモノマー)、または2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン(PFSt)を含むビニル系モノマーを含む、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項45】
前記ポリマーネットワークは、約0.001μm~5μmの厚さを有する、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項46】
前記複数のフッ素化ポリマー鎖のうちの少なくともいくつかは、前記炭素質材料のうちのそれぞれの1つの表面にグラフトされている、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項47】
前記複数のフッ素化ポリマー鎖は、ウルツ反応を介して、前記アノードの前記アルカリ金属の前記1つ以上の表面と化学的に相互作用するように構成されている、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項48】
前記炭素質材料は、前記ポリマーネットワークの全体にわたって分散された複数のグラフェンナノプレートレットを含み、前記グラフェンナノプレートレットは、前記ポリマーネットワーク内で互いに隔離されている、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項49】
前記ポリマーネットワークの全体にわたる前記複数のグラフェンナノプレートレットの分散は、1つ以上の異なる濃度レベルを含む、請求項48に記載のバッテリ。
【請求項50】
前記複数のグラフェンナノプレートレットのうちの少なくともいくつかは、前記複数のフッ素化ポリマー鎖のうちの少なくともいくつかで官能化されている、請求項48に記載のバッテリ。
【請求項51】
前記ポリマーネットワークは、約0.001重量%~2重量%の前記フッ素化ポリマー鎖を含む、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項52】
前記ポリマーネットワークは、
前記アノードと接触する相間領域と、
前記相間領域の上部に配設された保護領域と、をさらに含む、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項53】
前記相間領域は、前記アノードと前記ポリマーネットワークとの間の界面におけるウルツ反応に基づく、請求項52に記載のバッテリ。
【請求項54】
前記相間領域は、メタクリレート(MA)、アクリレート、ビニル官能基、またはエポキシと1つ以上のアミン官能基との組み合わせを含む、複数の架橋可能なモノマーのうちの1つ以上を含む、請求項52に記載のバッテリ。
【請求項55】
前記保護領域は、密度勾配によって特徴付けられている、請求項52に記載のバッテリ。
【請求項56】
前記密度勾配は、前記保護領域の1つ以上の自己回復特性に関連付けられている、請求項55に記載のバッテリ。
【請求項57】
前記密度勾配は、前記ポリマーネットワークを強化するように構成されている、請求項55に記載のバッテリ。
【請求項58】
前記ポリマーネットワークは、前記アノードからの樹枝状成長を抑制するように構成されている、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項59】
前記アノードは、1つ以上の露出した表面をさらに含み、各露出した表面は、1つ以上のアルカリ金属含有ナノ構造またはマイクロ構造を含む、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項60】
前記1つ以上のアルカリ金属含有ナノ構造またはマイクロ構造の各々は、前記炭素質材料のうちの少なくともいくつかを含む、請求項59に記載のバッテリ。
【請求項61】
前記アノードは、三次元(3D)構造を含む、請求項40に記載のバッテリ。
【請求項62】
バッテリであって、
格子構成で配置され、かつ1つ以上の炭素質材料を含むアノードと、
前記アノードとは反対に位置付けられたカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配設されたセパレータと、
前記カソード上に配設された保護シースであって、前記保護シースは、互いに化学反応するように構成された三官能性エポキシ化合物及びジアミンオリゴマー系化合物を含む、前記保護シースと、
前記カソード内に少なくとも部分的に分散され、かつ前記アノードと接触する電解質と、
を備える、前記バッテリ。
【請求項63】
前記アノードの1つ以上の露出した表面上に堆積されたポリマーネットワークをさらに含み、前記ポリマーネットワークは、前記1つ以上の炭素質材料でグラフトされ、かつ互いに架橋された複数のフッ素化ポリマー鎖を含む、請求項62に記載のバッテリ。
【請求項64】
前記ポリマーネットワークは、前記アノードに関連付けられたアルカリ金属樹枝状結晶の形成を抑制するように構成されたアルカリ金属フッ化物をさらに含む、請求項63に記載のバッテリ。
【請求項65】
前記保護シースは、前記保護シースと、1つ以上のリチウム含有ポリ硫化物中間体との間の化学結合に基づいて、前記バッテリ内のポリ硫化物マイグレーションを防止するように構成されている、請求項62に記載のバッテリ。
【請求項66】
前記カソード中に延在する1つ以上の亀裂をさらに含み、前記保護シースは、前記1つ以上の亀裂の全体にわたって分散される、請求項62に記載のバッテリ。
【請求項67】
前記保護シースは、破裂に対する前記カソードの感受性を低減するように構成されている、請求項62に記載のバッテリ。
【請求項68】
前記保護シースは、前記三官能性エポキシ化合物及び前記ジアミンオリゴマー系化合物に基づく架橋三次元構造を有する、請求項62に記載のバッテリ。
【請求項69】
前記三官能性エポキシ化合物は、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTE)、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、またはトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレートのうちの1つ以上である、請求項68に記載のバッテリ。
【請求項70】
前記ジアミンオリゴマー系化合物は、ジヒドラジドスルホキシド(DHSO)またはJEFFAMINE(登録商標)D-230ポリエーテルアミンのうちの1つ以上である、請求項69に記載のバッテリ。
【請求項71】
前記保護シースは、トリメチロールプロパントリス[ポリ(プロピレングリコール)]及びアミン末端エーテルを含む、請求項62に記載のバッテリ。
【請求項72】
前記炭素質材料は、平坦なグラフェン、しわ状グラフェン、複数のカーボンナノチューブ(CNT)、または複数のカーボンナノオニオン(CNO)のうちの1つ以上を含む、請求項62に記載のバッテリ。
【請求項73】
前記カソードは、平坦なグラフェン、しわ状グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、またはカーボンナノオニオン(CNO)のうちの1つ以上を含むホスト構造を含み、前記アノードは、固体リチウム金属層を含む、請求項62に記載のバッテリ。
【請求項74】
前記アノード上に配設されたフッ化錫層と、
前記フッ化錫層と前記アノードとの間に形成されたフッ化リチウム層であって、前記フッ化リチウム層は、フッ素イオンとリチウムイオンとの間の反応に関連付けられている、前記フッ化リチウム層と、をさらに含む、請求項62に記載のバッテリ。
【請求項75】
前記フッ化リチウム層は、前記アノードからの樹枝状成長を阻害するように構成されている、請求項74に記載のバッテリ。
【請求項76】
前記アノード上に配設された固体電解質相間層をさらに含み、前記固体電解質相間層は、錫、マンガン、モリブデン、フッ素化合物、フッ化錫、フッ化マンガン、窒化ケイ素、窒化リチウム、硝酸リチウム、リン酸リチウム、酸化マンガン、またはリチウムランタン酸化ジルコニウム(LLZO)のうちの1つ以上を含む、請求項62に記載のバッテリ。
【請求項77】
バッテリであって、
前記バッテリのサイクル中に複数のリチウムイオンを出力するように構成されたアノードと、
前記アノード上に配設された勾配層であって、前記勾配層は、ポリマーネットワークを含有し、前記ポリマーネットワークは、前記ポリマーネットワークの全体にわたって分散され、かつ前記ポリマーネットワーク内で互いに隔離されたグラフェンナノプレートレットに関連付けられたしわ状グラフェンで形成された密度勾配を含み、少なくともいくつかのしわ状グラフェンは、1つ以上の屈曲点に沿って体積が膨張し、かつ前記バッテリのサイクル中に生成されたポリ硫化物を保持するように構成されており、前記ポリマーネットワークは、
少なくともいくつかのしわ状グラフェンの1つ以上の屈曲点上にグラフトされた複数のフッ素化ポリ(メタ)アクリレートと、
前記ポリマーネットワーク内の複数の炭素-フッ素(C-F)結合であって、前記複数の炭素-フッ素(C-F)結合のうちの少なくともいくつかが、ウルツ反応によって、前記複数のリチウムイオンのうちの少なくともいくつかと化学反応し、かつフッ素イオン(F
-)を置換することによって、炭素-リチウム(C-Li)結合に変換するように構成されている、前記複数の炭素-フッ素(C-F)結合と、
前記ウルツ反応中に、フッ素イオン(F
-)の置換中に形成された複数の炭素-炭素(C-C)結合であって、炭素-炭素(C-C)結合の形成は、前記ポリマーネットワークの架橋に関連付けられている、前記複数の炭素-炭素(C-C)結合と、
フッ素イオン(F
-)の置換に応答して形成されたフッ化リチウム(LiF)であって、前記複数のリチウムイオンのうちの少なくともいくつかの消費に関連付けられている、前記フッ化リチウム(LiF)と、
を含む、前記勾配層と、
前記アノードとは反対に位置付けられたカソードと、
前記カソードの全体にわたって分散され、かつ前記アノードの前記全体にわたって分散された電解質と、
前記アノードと前記カソードとの間に位置付けられたセパレータと、
を備える、前記バッテリ。
【請求項78】
前記バッテリのサイクル中に、前記電解質に露出した前記アノードの表面に形成された固体電解質相間をさらに含む、請求項77に記載のバッテリ。
【請求項79】
前記勾配層は、前記バッテリのサイクル中に、前記固体電解質相間を成長させるように構成されている、請求項78に記載のバッテリ。
【請求項80】
前記勾配層は、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、または物理的気相堆積(PVD)のうちの1つ以上によって前記アノード上に堆積される、請求項77に記載のバッテリ。
【請求項81】
バッテリであって、
前記バッテリのサイクル中に複数のリチウムイオンを出力するように構成されたアノードと、
前記アノード上に配設された勾配層であって、前記勾配層は、ポリマーネットワークを含み、前記ポリマーネットワークは、前記ポリマーネットワークの全体にわたって分散され、かつ前記ポリマーネットワーク内で互いに隔離されたグラフェンナノプレートレットに関連付けられたしわ状グラフェンで形成された密度勾配を含み、少なくともいくつかのしわ状グラフェンは、1つ以上の屈曲点に沿って体積が膨張し、かつ前記バッテリのサイクル中に生成されたポリ硫化物を保持するように構成されており、前記ポリマーネットワークは、
少なくともいくつかのしわ状グラフェンの1つ以上の屈曲点上にグラフトされた複数のフッ素化ポリ(メタ)アクリレートと、
前記ポリマーネットワーク内の複数の炭素-フッ素(C-F)結合であって、前記複数の炭素-フッ素(C-F)結合のうちの少なくともいくつかが、ウルツ反応によって、前記複数のリチウムイオンのうちの少なくともいくつかと化学反応し、かつフッ素イオン(F
-)を置換することによって、炭素-リチウム(C-Li)結合に変換するように構成されている、前記複数の炭素-フッ素(C-F)結合と、
前記ウルツ反応中に、フッ素イオン(F
-)の置換中に形成された複数の炭素-炭素(C-C)結合であって、炭素-炭素(C-C)結合の形成は、前記ポリマーネットワークの架橋に関連付けられている、前記複数の炭素-炭素(C-C)結合と、
前記複数の炭素-炭素(C-C)結合のうちの少なくともいくつかの形成に応答して形成されたフッ化リチウム(LiF)であって、前記複数のリチウムイオンのうちの少なくともいくつかの消費に関連付けられている、前記フッ化リチウム(LiF)と、
を含む、前記勾配層と、
前記アノードとは反対に位置付けられ、かつ複数の細孔を含有するカソードであって、前記カソードは、
複数の非トリゾーン粒子と、
複数のトリゾーン粒子であって、各トリゾーン粒子は、
互いに絡み合い、かつメソ細孔によって互いに分離された複数の炭素断片と、
1つ以上の隣接する非トリゾーン粒子またはトリゾーン粒子と合体するように構成された変形可能な周囲と、を含む、
前記複数のトリゾーン粒子と、
複数の集合体であって、各集合体は、ともに連結された多数の前記トリゾーン粒子を含む、前記複数の集合体と、
前記複数の集合体の全体にわたって散在する複数のメソ細孔と、
複数の凝集体であって、各凝集体は、互いに連結された多数の前記集合体を含む、前記複数の凝集体と、
前記複数の集合体の全体にわたって散在する複数のマクロ細孔と、
をさらに含む、前記カソードと、
前記カソード及び前記アノードの全体にわたって分散された電解質と、
前記アノードと前記カソードとの間に位置付けられたセパレータと、
を備える、前記バッテリ。
【請求項82】
各集合体は、10ナノメートル(nm)~10マイクロメートル(μm)の範囲内の主要寸法を有する、請求項81に記載のバッテリ。
【請求項83】
各メソ細孔は、3.3ナノメートル(nm)~19.3nmの主要寸法を有する、請求項81に記載のバッテリ。
【請求項84】
各凝集体は、0.1μm~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有する、請求項81に記載のバッテリ。
【請求項85】
各凝集体は、0.1μm~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有する、請求項77に記載のバッテリ。
【請求項86】
カソードであって、
第1の濃度レベルの炭素質材料で形成された第1の多孔性炭素質領域であって、前記第1の多孔性炭素質領域は、
第1の複数の非トリゾーン粒子と、
第1の複数のトリゾーン粒子であって、各トリゾーン粒子は、
互いに絡み合い、かつメソ細孔によって互いに分離された第1の複数の炭素断片と、
1つ以上の隣接する非トリゾーン粒子またはトリゾーン粒子と合体するように構成された第1の変形可能な周囲と、を含む、前記第1の複数のトリゾーン粒子と、
第1の複数の集合体であって、各集合体は、ともに連結された多数の前記トリゾーン粒子を含み、各集合体は、10ナノメートル(nm)~10マイクロメートル(μm)の範囲内の主要寸法を有する、前記第1の複数の集合体と、
前記第1の複数の集合体の全体にわたって散在する第1の複数のメソ細孔であって、各メソ細孔は、3.3ナノメートル(nm)~19.3nmの主要寸法を有する、前記第1の複数のメソ細孔と、
第1の複数の凝集体であって、各凝集体は、互いに連結された多数の前記集合体を含み、各凝集体は、0.1μm~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有する、前記第1の複数の凝集体と、
前記第1の複数の集合体の全体にわたって散在する第1の複数のマクロ細孔であって、各マクロ細孔は、0.1μm~1,000μmの主要寸法を有する、前記第1の複数のマクロ細孔と、を含む、前記第1の多孔性炭素質領域と、
前記第1の多孔性炭素質領域に隣接して位置付けられた第2の多孔性炭素質領域であって、前記第2の多孔性炭素質領域は、前記第1の濃度レベルの炭素質材料とは異なる第2の濃度レベルの炭素質材料で形成され、前記第2の多孔性炭素質領域は、
第2の複数の非トリゾーン粒子と、
第2の複数のトリゾーン粒子であって、各トリゾーン粒子は、
互いに絡み合い、かつメソ細孔によって互いに分離された第2の複数の炭素断片と、
1つ以上の隣接する非トリゾーン粒子またはトリゾーン粒子と合体するように構成された第2の変形可能な周囲と、を含む、前記第2の複数のトリゾーン粒子と、
第2の複数の集合体であって、各集合体は、ともに連結された多数の前記トリゾーン粒子を含み、各集合体は、10ナノメートル(nm)~10マイクロメートル(μm)の範囲内の主要寸法を有する、前記第2の複数の集合体と、
前記第2の複数の集合体の全体にわたって散在する第2の複数のメソ細孔であって、各メソ細孔は、3.3ナノメートル(nm)~19.3nmの主要寸法を有する、前記第2の複数のメソ細孔と、
第2の複数の凝集体であって、各凝集体は、互いに連結された多数の前記集合体を含み、各凝集体は、0.1μm~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有する、前記第2の複数の凝集体と、
前記第2の複数の集合体の全体にわたって散在する第2の複数のマクロ細孔であって、各マクロ細孔は、0.1μm~1,000μmの主要寸法を有する、前記第2の複数のマクロ細孔と、を含む、前記第2の多孔性炭素質領域と、を備える、前記カソード。
【請求項87】
前記第1の多孔性炭素質領域または前記第2の多孔性炭素質領域のうちの1つ以上は、それぞれ、前記第1の多孔性炭素質領域または前記第2の多孔性炭素質領域上に、分離された液相を形成するように構成された選択的に透過性のある殻をさらに含む、請求項86に記載のカソード。
【請求項88】
前記第1の多孔性炭素質領域または前記第2の多孔性炭素質領域のうちの1つ以上の内部に分散された電解質をさらに含む、請求項86に記載のカソード。
【請求項89】
前記第1の多孔性炭素質領域は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力で、500S/m~20,000S/mのおおよその範囲内の導電率を有する、請求項86に記載のカソード。
【請求項90】
前記第2の多孔性炭素質領域は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力で、0S/m~500S/mのおおよその範囲内の導電率を有する、請求項86に記載のカソード。
【請求項91】
前記第1の複数の凝集体または第2の複数の凝集体のうちの1つ以上は、1つ以上のポリマー系結合剤で互いに接続された集合体を含む、請求項86に記載のカソード。
【請求項92】
前記トリゾーン粒子の各々は、
前記トリゾーン粒子の各々の中心の周りに位置する第1の多孔性領域であって、前記第1の多孔性領域は、第1の細孔を含む、前記第1の多孔性領域と、
前記第1の多孔性領域を取り囲む第2の多孔性領域であって、前記第2の多孔性領域は、第2の細孔を含む、前記第2の多孔性領域と、を含む、請求項86に記載のカソード。
【請求項93】
前記第1の細孔は、第1の細孔密度を画定し、前記第2の細孔は、前記第1の細孔密度とは異なる第2の細孔密度を画定する、請求項86に記載のカソード。
【請求項94】
1つ以上の追加の多孔性炭素質領域をさらに含み、少なくとも1つの追加の多孔性炭素質領域は、前記第2の多孔性炭素質領域と結合されている、請求項86に記載のカソード。
【請求項95】
1つ以上の追加の多孔性炭素質領域は、前記第1の多孔性炭素質領域から離れて炭素質材料の濃度レベルを段階的に減少させるように配置されている、請求項94に記載のカソード。
【請求項96】
前記第1の複数のメソ細孔は、第1のメソ細孔密度を有し、前記第2の複数のメソ細孔は、前記第1のメソ細孔密度とは異なる第2のメソ細孔密度を有する、請求項86に記載のカソード。
【請求項97】
前記第1の複数のマクロ細孔は、第1の細孔密度を有し、前記第2の複数のマクロ細孔は、前記第1の細孔密度とは異なる第2の細孔密度を有する、請求項86に記載のカソード。
【請求項98】
前記第1の多孔性炭素質領域または前記第2の多孔性炭素質領域のうちの1つ以上は、硫黄を核形成するように構成されている、請求項86に記載のカソード。
【請求項99】
前記カソードは、約1:5~10:1の硫黄対炭素重量比を有する、請求項86に記載のカソード。
【請求項100】
前記第1の多孔性炭素質領域または前記第2の多孔性炭素質領域のうちの1つ以上の内部に分散された1つ以上の導電性添加剤をさらに含む、請求項86に記載のカソード。
【請求項101】
前記カソード上に配設された保護シースをさらに含む、請求項86に記載のカソード。
【請求項102】
前記保護シースは、
三官能性エポキシ化合物と、
ジアミンオリゴマー系化合物と、を含み、それらの両方は、互いに化学反応するように構成されている、請求項101に記載のカソード。
【請求項103】
前記カソードは、リチウム硫黄バッテリに組み込まれている、請求項102に記載のカソード。
【請求項104】
前記三官能性エポキシ化合物は、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTE)、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、またはトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレートのうちの1つ以上である、請求項103に記載のカソード。
【請求項105】
前記保護シースは、前記保護シースと、前記リチウム硫黄バッテリの動作放電充電サイクル中に生成された1つ以上のリチウム含有ポリ硫化物中間体との間の化学結合に基づいて、前記リチウム硫黄バッテリ内のポリ硫化物マイグレーションを防止するように構成されている、請求項103に記載のカソード。
【請求項106】
複数の細孔を含む物質の組成物であって、前記物質の組成物は、
複数の非トリゾーン粒子と、
複数のトリゾーン粒子であって、各トリゾーン粒子は、
互いに絡み合い、かつメソ細孔によって互いに分離された複数の炭素断片と、
1つ以上の隣接する非トリゾーン粒子またはトリゾーン粒子と合体するように構成された変形可能な周囲と、を含む、前記複数のトリゾーン粒子と、
複数の集合体であって、各集合体は、ともに連結された多数の前記トリゾーン粒子を含み、各集合体は、10ナノメートル(nm)~10マイクロメートル(μm)の範囲内の主要寸法を有する、前記複数の集合体と、
前記複数の集合体の全体にわたって散在する複数のメソ細孔であって、各メソ細孔は、3.3ナノメートル(nm)~19.3nmの主要寸法を有する、前記複数のメソ細孔と、
複数の凝集体であって、各凝集体は、互いに連結された多数の前記集合体を含み、各凝集体は、0.1μm~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有する、前記複数の凝集体と、
前記複数の凝集体の全体にわたって散在する複数のマクロ細孔であって、各マクロ細孔は、0.1μm~1,000μmの主要寸法を有する、前記複数のマクロ細孔と、を含む、前記物質の組成物。
【請求項107】
前記物質の組成物の1つ以上の露出した表面上に、分離された液相を形成するように構成された選択的に透過性のある殻をさらに含む、請求項106に記載の物質の組成物。
【請求項108】
前記物質の組成物内に分散された電解質をさらに含む、請求項106に記載の物質の組成物。
【請求項109】
前記細孔の各々は、0ナノメートル(nm)~32.3nmのおおよその範囲内の主要寸法を有する、請求項106に記載の物質の組成物。
【請求項110】
前記物質の組成物は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力で、100S/m~20,000S/mのおおよその範囲内の導電率を有する、請求項106に記載の物質の組成物。
【請求項111】
少なくともいくつかの凝集体は、1つ以上のポリマー系結合剤で互いに接続されている、請求項106に記載の物質の組成物。
【請求項112】
前記トリゾーン粒子の各々は、
前記トリゾーン粒子の各々の中心の周りに位置する第1の多孔性領域であって、前記第1の多孔性領域は、第1の細孔を含む、前記第1の多孔性領域と、
前記第1の多孔性領域を取り囲む第2の多孔性領域であって、前記第2の多孔性領域は、第2の細孔を含む、前記第2の多孔性領域と、を含む、請求項106に記載の物質の組成物。
【請求項113】
前記第1の細孔は、第1の細孔密度を画定し、前記第2の細孔は、前記第1の細孔密度とは異なる第2の細孔密度を画定する、請求項112に記載の物質の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2021年12月28日に出願された「LITHIUM-SULFUR BATTERY CATHODE FORMED FROM MULTIPLE CARBONACEOUS REGIONS」と題する米国特許出願第17/563,183号に対する優先権を主張し、これは、2021年7月23日に出願された「CARBONACEOUS MATERIALS FOR LITHIUM-SULFUR BATTERIES」と題する米国特許出願第17/383,803号に対する優先権を主張する一部継続出願であり、それらの全ては、本願の譲受人に譲渡される。本特許出願はまた、2021年7月23日に出願された「POWDERED MATERIALS INCLUDING CARBONACEOUS STRUCTURES FOR LITHIUM-SULFUR BATTERY CATHODES」と題する米国特許出願第17/383,735号、2021年7月23日に出願された「PROTECTIVE POLYMERIC LATTICES FOR LITHIUM ANODES IN LITHIUM-SULFUR BATTERIES」と題する米国特許出願第17/383,744号、2021年7月23日に出願された「BATTERY INCLUDING MULTIPLE PROTECTIVE LAYERS」と題する米国特許出願第17/383,756号、2021年7月23日に出願された「CARBON-SCAFFOLDED LITHIUM-SULFUR BATTERY CATHODES FEATURING A POLYMERIC PROTECTIVE LAYER」と題する米国特許出願第17/383,769号、及び2021年7月23日に出願された「PROTECTIVE LAYER INCLUDING TIN FLUORIDE DISPOSED ON A LITHIUM ANODE IN A LITHIUM-SULFUR BATTERY」と題する米国特許出願第17/383,793号に対する優先権も主張し、それらの全ては、本願の譲受人に譲渡される。先行の出願の開示は、それらのそれぞれの全体において、本特許出願の一部とみなされ、本特許出願において参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、バッテリに関し、より具体的には、動作サイクル損失を補償することができるリチウムイオンバッテリに関する。
【背景技術】
【0003】
バッテリにおける最近の開発により、消費者が多くの新しい分野において電子デバイスを使用することが可能になる。しかしながら、バッテリ技術のさらなる改善が望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の概要は、以下の発明を実施するための形態にさらに説明されている概念の一部を簡略化された形式で紹介するために提供されている。本発明の概要は、特許請求される主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定することを意図するものでもない。
【0005】
本開示に記載される主題の1つの革新的な態様は、複数の細孔を含む物質の組成物として実装することができる。物質の組成物は、バッテリ電極に組み込むのに好適であり得、複数の粒子を含み、その粒子の各々は、均一な細孔サイズを有する複数の第1の細孔を含む第1のゾーンと、複数の第2の細孔を含む第2のゾーンと、を含む。第2のゾーンは、第1のゾーンに対して同心円状に位置付けられ得、かつ複数の第1の細孔のうちの少なくともいくつかによって、第1のゾーンから分離され得、そこでは、複数の第2の細孔は、粒子の中心から粒子の境界までの半径方向に沿って徐々に減少する細孔サイズを有する。物質の組成物はまた、各々がともに連結された多数の粒子を含む複数の集合体と、各々がともに連結された多数の集合体を含む複数の凝集体と、を含み得る。
【0006】
いくつかの実施態様では、粒子の各々は、20ナノメートル(nm)~150nmの主要寸法を有し得る。集合体の各々は、10ナノメートル(nm)~10マイクロメートル(μm)の主要寸法を有し得る。凝集体の各々は、0.1μm~1,000μmの主要寸法を有し得る。細孔のうちの少なくともいくつかは、粒子または集合体のうちの1つ以上の全体にわたって分散され得、ここで、細孔の各々は、0nm~100nmの主要寸法を有し得る。
【0007】
一実施態様では、粒子の各々は、第1の多孔性領域、及びその第1の多孔性領域に隣接して位置付けられる第2の多孔性領域を含み得る。第1の多孔性領域は、第1のタイプの細孔を有し得、第2の多孔性領域は、第1の多孔性領域が第2の多孔性領域とは異なる多孔性を有するように、第2のタイプの細孔を有し得る。このように、第1のタイプの細孔は、第1の細孔密度を有し得、第2のタイプの細孔は、第2の細孔密度を有し得る。例えば、第1の多孔性領域は、0.0立方センチメートル(cc)/g~2.0cc/gの第1の細孔密度を有し得、第2の多孔性領域は、1.5~5.0cc/gの第2の細孔密度を有し得る。いくつかの態様では、第2の多孔性領域は、第1の多孔性領域によって少なくとも部分的に封入され得る。
【0008】
いくつかの実施態様では、細孔のうちのいくつかは、凝集体の全体にわたって散在し得、ここで、細孔のうちの少なくともいくつかは、1.3nm~32.3nmの主要寸法を有する。導電性添加剤は、細孔のうちの少なくともいくつかの内部に分散され得る。いくつかの態様では、物質の組成物は、10m2/g~3,000m2/gの表面積、及び/または10m2/g~3,000m2/gの複合表面積(例えば、細孔内に微小に閉じ込められた硫黄を伴う)を有する露出した炭素表面を有し得る。一実施態様では、物質の組成物は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力で、100S/m~20,000S/mの導電率を有し得る。一実施態様では、粒子、集合体、及び/または凝集体は、硫黄の核形成を支援し得る露出した炭素表面を含み得、そのため、物質の組成物は、約1:5~10:1の硫黄対炭素重量比を有する。いくつかの態様では、凝集体のうちのいくつかは、1つ以上のポリマー系結合剤で互いに接続されている。
【0009】
本開示に記載される主題の別の革新的な態様は、バッテリとして実装され得る。いくつかの実施態様では、バッテリは、アノード、そのアノードの1つ以上の露出した表面上に配設されたポリマーネットワーク、アノードとは反対に位置付けられたカソード、カソードの全体にわたって少なくとも部分的に分散され、かつアノードと接触する電解質、カソードとアノードとの間で複数のアルカリイオンを輸送するように構成された電解質、及びセパレータを含み得る。いくつかの実施態様では、アノードは、バッテリの動作放電充電サイクル中にアルカリイオンを放出することができるアルカリ金属を含み得る。ポリマーネットワークは、互いに架橋されたフッ素化ポリマー鎖でグラフトされた炭素質材料を含み得る。フッ素化ポリマー鎖は、バッテリの動作サイクルに応答して、アルカリ金属含有フッ化物を生成し得る。一実施態様では、アルカリ金属含有フッ化物の形成は、例えば、リチウムがリチウム含有樹枝状結晶の構造を形成するのではなく、フッ化リチウムを形成するよう消費されるように、アノードからのアルカリ金属樹枝状結晶の形成を抑制し得る。電解質は、カソードの全体にわたって少なくとも部分的に分散され、かつアノードと接触し得、カソードとアノードとの間でアルカリイオンの輸送を支援し得る。セパレータは、アノードとカソードとの間に位置付けられ得る。
【0010】
一実施態様では、炭素質材料は、平坦なグラフェン、しわ状グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、及び/またはカーボンナノオニオン(CNO)を含み得る。フッ素化ポリマー鎖は、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレート(DFHA)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(HDFDMA)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート(OFPMA)、テトラフルオロプロピルメタクリレート(TFPM)、3-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イルメタクリレート(HFAモノマー)を含むモノマー、及び/または2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン(PFSt)を含むビニル系モノマーを含み得る。ポリマーネットワークは、約0.001μm~5μmの厚さを有し得る。
【0011】
いくつかの態様では、フッ素化ポリマー鎖は、炭素質材料の表面にグラフトされ得、すなわち、グラフト化は、過酸化ベンゾイル(BPO)またはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のうちの少なくとも1つを含むラジカル開始剤に基づき得る。フッ素化ポリマー鎖は、ウルツ反応を介して、アルカリ金属イオンと化学反応することができ、これは、アルカリ金属フッ化物の生成に関連付けられ得る。グラフェンナノプレートレットは、ポリマーネットワークの全体にわたって分散され得、ここで、グラフェンナノプレートレットは、ポリマーネットワーク内で互いに隔離される。グラフェンナノプレートレットの分散は、(グラフェンナノプレートレットの)異なる濃度レベルを含み得る。いくつかの態様では、グラフェンナノプレートレットの分散は、少なくともいくつかのフッ素化ポリマー鎖で官能化された炭素質材料を含み得る。
【0012】
一実施態様では、ポリマーネットワークは、約0.001重量%~2重量%のフッ素化ポリマー鎖を含む。いくつかの態様では、ポリマーネットワークは、アノードと接触する相間層と、相間層の上部に配設された保護層と、を含む。相間層は、アノードとポリマーネットワークとの間の界面におけるウルツ反応に基づき得る。いくつかの態様では、架橋されたポリマーネットワークは、フッ素化ポリマー、非フッ素化ポリマー、もしくは架橋可能なモノマー、またはそれらの組み合わせの残部とともに、フッ素化ポリマー鎖でグラフトされた約5重量%~100重量%の炭素質材料を含み得る。一実施態様では、フッ素化ポリマー鎖でグラフトされた炭素質材料は、5重量%~50重量%のフッ素化ポリマー鎖と、残部の炭素質材料と、を含み得る。
【0013】
いくつかの態様では、ポリマーネットワークは、相間層及び/または保護層の自己回復特性に関連付けられた密度勾配をさらに画定し得、ポリマーネットワークを強化し得、これは、アノードからの樹枝状成長を抑制し得る。一実施態様では、アノードは、アルカリ金属層であり得、及び/または電解質に露出した表面を含み得、ここで、各露出した表面は、アルカリ金属含有ナノ構造またはマイクロ構造を含み得る。いくつかの態様では、アルカリ金属含有ナノ構造またはマイクロ構造は、炭素質粒子、各々が炭素質粒子を含む多数の集合体、または各々がいくつかの集合体を含む多数の凝集体を含み得る。
【0014】
一実施態様では、炭素質粒子の各々は、第1の細孔密度を有する第1の多孔性領域、及び第2の細孔密度を有する第2の多孔性領域を有する。第2の多孔性領域は、第1の多孔性領域によって少なくとも部分的に封入され得、第2の密度は、第1の密度よりも下回り得る。いくつかの態様では、第2の多孔性領域は、バッテリの動作放電充電サイクルに関連付けられ得るときに、少なくとも一時的に元素硫黄を微小に閉じ込め得る。
【0015】
いくつかの実施態様では、アノードは、構造上、三次元(3D)の足場及び/または構造によって画定され得、これには、少なくともアルカリ金属を介在し得る隣接するグラフェンシートが含まれ得る。例えば、アノードは、アルカリ金属電着及び/または中間層のための露出した表面を有する隣接するグラフェンシートを有する格子として形成され得る。一実施態様では、フィルムが、カソード上に配設され得、互いに化学結合された三官能性エポキシ化合物及びジアミンオリゴマー化合物を有する格子を含み得る。フィルムは、バッテリの動作放電充電サイクル中に生成されたアルカリ金属含有ポリ硫化物中間体と結合し得、アノード上に配設されたポリマーシースを補完し得る。
【0016】
本開示に記載される主題の別の革新的な態様は、アノード、アノードとは反対に位置付けられたカソード、カソード上に配設された保護シース、電解質、及びセパレータを含む、バッテリとして実装され得る。ポリマーネットワークは、アノード上に配設され得、格子内に架橋された複数のフッ素化ポリマー鎖でグラフトされた炭素質材料を含み得る。いくつかの態様では、格子は、バッテリの動作サイクルに応答して、アルカリ金属フッ化物を生成し得る。アルカリ金属フッ化物は、アノードからのアルカリ金属樹枝状結晶の形成を抑制するように構成され得る。追加的に、アノードは、バッテリの動作サイクル中にアルカリイオンを出力し得る。カソード上に配設された保護シースは、三官能性エポキシ化合物及びジアミンオリゴマー系化合物を含み得、それらの両方は、互いに化学反応し得る。電解質は、カソード全体にわたって分散し得、アノードと接触し得る。セパレータは、アノードとカソードとの間に位置付けられ得る。
【0017】
いくつかの実施態様では、ポリマーネットワークは、アノードの1つ以上の露出した表面上に堆積され得る。炭素質材料は、平坦なグラフェン、しわ状グラフェン、複数のカーボンナノチューブ(CNT)、または複数のカーボンナノオニオン(CNO)のうちの1つ以上を含み得る。フッ素化ポリマー鎖は、複数のモノマーを含み得、1つ以上のモノマーは、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレート(DFHA)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(HDFDMA)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート(OFPMA)、テトラフルオロプロピルメタクリレート(TFPM)、3-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イルメタクリレート(HFAモノマー)、または2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン(PFSt)を含むビニル系モノマーを含み得る。ポリマーネットワークは、約0.001μm~5μmの厚さを有し得る。フッ素化ポリマー鎖は、炭素質材料のうちのそれぞれの1つの表面にグラフトされ得る。
【0018】
様々な実施態様では、フッ素化ポリマー鎖は、ウルツ反応を介して、アノードのアルカリ金属の1つ以上の表面と化学的に相互作用し得る。いくつかの態様では、炭素質材料は、ポリマーネットワークの全体にわたって分散されたグラフェンナノプレートレットを含み得る。グラフェンナノプレートレットは、ポリマーネットワーク内で互いに隔離され得る。ポリマーネットワークの全体にわたる複数のグラフェンナノプレートレットの分散は、異なる濃度レベルを有し得る。グラフェンナノプレートレットは、フッ素化ポリマー鎖で官能化され得る。
【0019】
いくつかの実施態様では、ポリマーネットワークは、約0.001重量%~2重量%のフッ素化ポリマー鎖を含む。一実施態様では、ポリマーネットワークは、アノードと接触する相間領域と、相間領域の上部に配設された保護領域と、を含み得る。相間領域は、アノードとポリマーネットワークとの間の界面におけるウルツ反応に基づき得る。相間領域は、メタクリレート(MA)、アクリレート、ビニル官能基、またはエポキシとアミン官能基との組み合わせを含む、複数の架橋可能なモノマーのうちの1つ以上を含み得る。保護領域は、密度勾配によって特徴付けられ得、その密度勾配は、保護領域の自己回復特性に関連付けられ得る。密度勾配は、ポリマーネットワークを強化し得る。このようにして、ポリマーネットワークは、アノードからの樹枝状成長を抑制し得る。
【0020】
様々な実施態様では、アノードは、露出した表面を含み得、ここで、各露出した表面は、アルカリ金属含有ナノ構造及び/またはマイクロ構造を有し、それらの各々は、炭素質材料を含み得る。一実施態様では、アノードは、三次元(3D)構造を有し得、ここで、いくつかの隣接するグラフェンシートは、アルカリ金属イオンを介在させ得る。
【0021】
本開示に記載される主題の別の革新的な態様は、アノード、カソード、カソード上に配設された保護シース、セパレータ、及び電解質を含む、バッテリとして実装され得る。アノードは、格子構成で配置され得、炭素質材料を含み得る。カソードは、アノードとは反対に位置付けられ得る。セパレータは、アノードとカソードとの間に配設され得る。カソード上に配設された保護シースは、三官能性エポキシ化合物及びジアミンオリゴマー系化合物を含み得、それらの両方は、互いに化学反応し得る。このようにして、保護シースは、保護シースと、1つ以上のリチウム含有ポリ硫化物中間体との間の化学結合に基づいて、バッテリ内のポリ硫化物マイグレーションを防止し得る。電解質は、カソード内に分散し得、アノードに接触し得る。
【0022】
一実施態様では、ポリマーネットワークは、アノードの1つ以上の露出した表面上に堆積され得る。ポリマーネットワークは、炭素質材料でグラフトされたフッ素化ポリマー鎖を有し、互いに架橋され得る。このようにして、ポリマーネットワークは、アルカリ金属含有フッ化物を保持し得、それは、今度は、アノードに関連付けられたアルカリ金属樹枝状結晶の形成を抑制し得る。
【0023】
様々な実施態様では、亀裂は、カソード中に延在し得、ここで、保護シースは、1つ以上の亀裂全体にわたって分散し得る。このようにして、保護シースは、配置されて、破裂に対するカソードの感受性を低減し得る。一実施態様では、保護シースは、三官能性エポキシ化合物及びジアミンオリゴマー系化合物に基づく架橋された三次元構造を有する。いくつかの例では、三官能性エポキシ化合物は、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTE)、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、またはトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレートのうちの1つ以上であり、ジアミンオリゴマー系化合物は、ジヒドラジドスルホキシド(DHSO)またはJEFFAMINE(登録商標)D-230ポリエーテルアミンのうちの1つ以上である。加えて、または代替において、保護シースは、トリメチロールプロパントリス[ポリ(プロピレングリコール)]及びアミン末端エーテルを含み得る。
【0024】
いくつかの実施態様では、炭素質材料は、平坦なグラフェン、しわ状グラフェン、複数のカーボンナノチューブ(CNT)、及び/または複数のカーボンナノオニオン(CNO)を含み得る。一実施態様では、カソードは、平坦なグラフェン、しわ状グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、またはカーボンナノオニオン(CNO)のうちの1つ以上を有するホスト構造を含み得、ここで、アノードは、固体リチウム金属層を含む。
【0025】
一実施態様では、フッ化錫層は、アノード上に配設され得、フッ化リチウム層は、フッ化錫層とアノードとの間に形成され得る。フッ化リチウム層は、フッ素イオンとリチウムイオンとの間の化学反応に関連付けられ得る。このようにして、フッ化リチウム層は、アノードからのリチウム含有樹枝状成長を阻害し得る。いくつかの態様では、固体電解質相間は、アノード上に配設され得る。固体電解質相間は、錫、マンガン、モリブデン、フッ素化合物、フッ化錫、フッ化マンガン、窒化ケイ素、窒化リチウム、硝酸リチウム、リン酸リチウム、酸化マンガン、及び/またはリチウムランタン酸化ジルコニウム(LLZO)を含み得る。
【0026】
本開示に記載される主題の別の革新的な態様は、バッテリとして実装され得る。様々な実施態様では、バッテリは、バッテリのサイクル中に複数のリチウムイオンを出力するように構成されたアノード、アノード上に配設された勾配層、アノードとは反対に位置付けられたカソード、カソード及びアノードの全体にわたって分散された電解質、ならびにアノードとカソードとの間に位置付けられたセパレータを含み得る。いくつかの実施態様では、勾配層は、ポリマーネットワークを含み得、そのポリマーネットワークは、ポリマーネットワーク全体にわたって分散され、かつポリマーネットワーク内で互いに隔離されたグラフェンナノプレートレットに関連付けられたしわ状グラフェンで形成された密度勾配を含み得、少なくともいくつかのしわ状グラフェンは、1つ以上の屈曲点に沿って体積が膨張し、かつバッテリのサイクル中に生成されたポリ硫化物を保持するように構成され得る。いくつかの事例では、ポリマーネットワークは、少なくともいくつかのしわ状グラフェンの1つ以上の屈曲点上にグラフトされた複数のフッ素化ポリ(メタ)アクリレートと、ポリマーネットワーク内の複数の炭素-フッ素(C-F)結合であって、複数の炭素-フッ素(C-F)結合のうちの少なくともいくつかが、ウルツ反応によって、複数のリチウムイオンのうちの少なくともいくつかと化学反応し、かつフッ素イオン(F-)を置換することによって、炭素-リチウム(C-Li)結合に変換するように構成されている、複数の炭素-フッ素(C-F)結合と、ウルツ反応中のフッ素イオン(F-)の置換中に形成された複数の炭素-炭素(C-C)結合であって、炭素-炭素(C-C)結合の形成が、ポリマーネットワークの架橋に関連付けられている、複数の炭素-炭素(C-C)結合と、フッ素イオン(F-)の置換に応答して形成されたフッ化リチウム(LiF)であって、フッ化リチウム(LiF)は、複数のリチウムイオンのうちの少なくともいくつかの消費に関連付けられている、フッ化リチウム(LiF)と、を含み得る。
【0027】
いくつかの事例では、バッテリはまた、バッテリのサイクル中に、電解質に露出したアノードの表面に形成された固体電解質相間も含み得る。他の事例では、勾配層は、バッテリのサイクル中に、固体電解質相間を成長させるように構成され得る。いくつかの態様では、勾配層は、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、または物理的気相堆積(PVD)のうちの1つ以上によって、アノード上に堆積され得る。
【0028】
本開示に記載される主題の別の革新的な態様は、バッテリとして実装され得る。様々な実施態様では、バッテリは、バッテリのサイクル中に複数のリチウムイオンを出力するように構成されたアノード、アノード上に配設された勾配層、アノードとは反対に位置付けられたカソード、カソード及びアノードの全体にわたって分散された電解質、ならびにアノードとカソードとの間に位置付けられたセパレータを含み得る。いくつかの実施態様では、勾配層は、ポリマーネットワークを含み得、そのポリマーネットワークは、ポリマーネットワーク全体にわたって分散され、かつポリマーネットワーク内で互いに隔離されたグラフェンナノプレートレットに関連付けられたしわ状グラフェンで形成された密度勾配を含み得、少なくともいくつかのしわ状グラフェンは、1つ以上の屈曲点に沿って体積が膨張し、かつバッテリのサイクル中に生成されたポリ硫化物を保持するように構成され得る。いくつかの事例では、ポリマーネットワークは、少なくともいくつかのしわ状グラフェンの1つ以上の屈曲点上にグラフトされた複数のフッ素化ポリ(メタ)アクリレートと、ポリマーネットワーク内の複数の炭素-フッ素(C-F)結合であって、複数の炭素-フッ素(C-F)結合のうちの少なくともいくつかが、複数のリチウムイオンのうちの少なくともいくつかと化学反応し、かつフッ素イオン(F-)を置換することによって、炭素-リチウム(C-Li)結合に変換するように構成されている、複数の炭素-フッ素(C-F)結合と、ウルツ反応中のフッ素イオン(F-)の置換中に形成された複数の炭素-炭素(C-C)結合と、複数の炭素-炭素(C-C)結合のうちの少なくともいくつかの形成に応答して形成されたフッ化リチウム(LiF)であって、フッ化リチウム(LiF)は、複数のリチウムイオンのうちの少なくともいくつかの消費に関連付けられ得る、フッ化リチウム(LiF)と、を含み得る。
【0029】
いくつかの態様では、第1の複数のメソ細孔は、第1のメソ細孔密度を有し、第2の複数のメソ細孔は、第1のメソ細孔密度とは異なる第2のメソ細孔密度を有する。他の態様では、第1の複数のマクロ細孔は、第1の細孔密度を有し、第2の複数のマクロ細孔は、第1の細孔密度とは異なる第2の細孔密度を有する。いくつかの他の態様では、第1の多孔性炭素質領域または第2の多孔性炭素質領域のうちの1つ以上は、硫黄を核形成するように構成され得る。
【0030】
いくつかの実施態様では、カソードは、複数の細孔を含み、複数の非トリゾーン粒子、複数のトリゾーン粒子、各々がともに連結された多数のトリゾーン粒子を含む複数の集合体、複数の集合体の全体にわたって散在される複数のメソ細孔、各々が互いに連結された多数の集合体を含む複数の凝集体、及び複数の集合体全体にわたって散在される複数のマクロ細孔を含み得る。いくつかの事例では、各トリゾーン粒子は、互いに絡み合い、かつメソ細孔によって互いに分離された複数の炭素断片と、1つ以上の隣接する非トリゾーン粒子またはトリゾーン粒子と合体するように構成された変形可能な周囲と、を含み得る。いくつかの態様では、各集合体は、10ナノメートル(nm)~10マイクロメートル(μm)の範囲内の主要寸法を有し得、各メソ細孔は、3.3ナノメートル(nm)~19.3nmの主要寸法を有し得、各凝集体は、0.1μm~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有し得、各マクロ細孔は、0.1μm~1,000μmの主要寸法を有し得る。
【0031】
いくつかの事例では、第1の多孔性炭素質領域または第2の多孔性炭素質領域のうちの1つ以上はまた、それぞれ、第1の多孔性炭素質領域または第2の多孔性炭素質領域上に、分離された液相を形成するように構成された選択的に透過性のある殻も含み得る。いくつかの態様では、第1の多孔性炭素質領域は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力で、500S/m~20,000S/mのおおよその範囲内の導電率を有する。他の態様では、第2の多孔性炭素質領域は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力で、0S/m~500S/mのおおよその範囲内の導電率を有する。いくつかの他の態様では、第1の複数の凝集体または第2の複数の凝集体のうちの1つ以上は、1つ以上のポリマー系結合剤で互いに接続された集合体を含み得る。
【0032】
いくつかの実施態様では、トリゾーン粒子の各々は、トリゾーン粒子の各々の中心の周りに位置する第1の多孔性領域であって、第1の多孔性領域は、第1の細孔を含む、第1の多孔性領域と、第1の多孔性領域を取り囲む第2の多孔性領域であって、第2の多孔性領域は、第2の細孔を含む、第2の多孔性領域と、を含み得る。いくつかの事例では、第1の細孔は、第1の細孔密度を画定し、第2の細孔は、第1の細孔密度とは異なる第2の細孔密度を画定する。他の実施態様では、カソードはまた、1つ以上の追加の多孔性炭素質領域も含み得、少なくとも1つの追加の多孔性炭素質領域は、第2の多孔性炭素質領域と結合される。いくつかの事例では、1つ以上の追加の多孔性炭素質領域は、第1の多孔性炭素質領域から離れて炭素質材料の濃度レベルを段階的に減少させるように配置される。
【0033】
本開示に記載される主題の別の革新的な態様は、複数の細孔を含む物質の組成物として実装され得る。様々な実施態様では、物質の組成物は、複数の非トリゾーン粒子と、複数の集合体であって、各集合体は、ともに連結された多数のトリゾーン粒子を含み、各集合体は、10ナノメートル(nm)~10マイクロメートル(μm)の範囲内の主要寸法を有する、複数の集合体と、複数の集合体の全体にわたって散在する複数のメソ細孔であって、各メソ細孔は、3.3ナノメートル(nm)~19.3nmの主要寸法を有する、複数のメソ細孔と、複数の凝集体であって、各凝集体は、互いに連結された多数の集合体を含み、各凝集体は、0.1μm~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有する、複数の凝集体と、複数の集合体の全体にわたって散在する複数のマクロ細孔であって、各マクロ細孔は、0.1μm~1,000μmの主要寸法を有する、複数のマクロ細孔と、を含み得る。いくつかの実施態様では、各トリゾーン粒子は、互いに絡み合い、かつメソ細孔によって互いに分離された複数の炭素断片と、1つ以上の隣接する非トリゾーン粒子またはトリゾーン粒子と合体するように構成された変形可能な周囲と、を含み得、いくつかの態様では、細孔の各々は、0ナノメートル(nm)~32.3nmのおおよその範囲内の主要寸法を有する。他の態様では、物質の組成物は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力で、100S/m~20,000S/mのおおよその範囲内の導電率を有する。
【0034】
様々な実施態様では、物質の組成物はまた、物質の組成物の1つ以上の露出した表面上に、分離された液相を形成するように構成された選択的に透過性のある殻も含み得る。他の実施態様では、物質の組成物はまた、物質の組成物内に分散された電解質も含み得る。いくつかの事例では、少なくともいくつかの凝集体は、1つ以上のポリマー系結合剤で互いに接続される。
【0035】
本開示に記載されている主題の1つ以上の実施態様の詳細は、添付の図面、及び以下の説明に記載されている。他の特徴、態様、及び利点は、明細書、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。以下の図の相対的な寸法は、縮尺通りには描かれていない場合があることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】いくつかの実施態様による、例示的なバッテリを描写する略図を示す。
【
図2】いくつかの実施態様による、別の例示的なバッテリを描写する略図を示す。
【
図3】いくつかの実施態様による、バッテリの例示的な電極の略図を示す。
【
図4】いくつかの実施態様による、保護格子を含む例示的なバッテリの一部分の略図を示す。
【
図5】いくつかの実施態様による、フッ化錫(SnF
2)層を含むアノード構造の略図を示す。
【
図6】いくつかの実施態様による、
図5のアノード構造の拡大部分の略図を示す。
【
図7】いくつかの実施態様による、バッテリのポリマーネットワークの略図を示す。
【
図8A】いくつかの実施態様による、勾配多孔性を有する例示的な炭素質粒子の略図を示す。
【
図8B】いくつかの実施態様による、トリゾーン粒子の例の略図を示す。
【
図8C】いくつかの実施態様による、
図8Bのトリゾーン粒子を表す例示的なステップ機能を示す。
【
図8D】いくつかの実施態様による、例示的な炭素質粒子の細孔体積対細孔幅の例示的な分布を描写するグラフを示す。
【
図9】A及びBは、いくつかの実施態様による、
図8A及び/または
図8Bに描写された例示的な炭素質粒子、集合体、及び/または凝集体の電子顕微鏡写真を示す。
【
図10】A及びBは、いくつかの実施態様による、二酸化炭素(CO
2)で処理された炭素質粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
【
図11】いくつかの実施態様による、本開示のアノード及び/またはカソードで広く使用されている炭素多孔性タイプを描写する略図を示す。
【
図12】いくつかの実施態様による、バッテリのアノードまたはカソード全体にわたって分散されたマイクロ細孔及びメソ細孔についての累積細孔体積対細孔幅を描写するグラフを示す。
【
図13】いくつかの実施態様による、サイクル数毎のバッテリ性能を描写するグラフを示す。
【
図14】いくつかの実施態様による、サイクル数毎の容量を描写する棒グラフを示す。
【
図15】いくつかの実施態様による、サイクル数毎のバッテリ性能を描写するグラフを示す。
【
図16】いくつかの実施態様による、サイクル数毎のバッテリ放電容量を描写するグラフを示す。
【
図17】いくつかの実施態様による、サイクル数毎のバッテリ放電容量を描写するグラフを示す。
【
図18】いくつかの実施態様による、様々なTBT含有電解質混合物についてのバッテリ比放電容量を描写するグラフを示す。
【
図19】いくつかの実施態様による、
図1のバッテリについての、サイクル数毎のバッテリ比放電容量を描写するグラフを示す。
【
図20】他の実施態様による、
図2のバッテリについての、サイクル数毎のバッテリ比放電容量及び放電容量保持を描写するグラフを示す。
【
図21】いくつかの他の実施態様による、
図2のバッテリについての、サイクル数毎のバッテリ比放電容量及び放電容量保持を描写するグラフを示す。
【
図22】いくつかの実施態様による、バッテリの例示的なカソードの略図を示す。
【0037】
様々な図面における同様の参照番号及び参照記号は同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の説明は、本開示の革新的な態様を説明する目的のために、いくつかの例示的な実施態様を対象とする。しかしながら、当業者は、本明細書内の教示が多数の異なる方法で適用され得ることを容易に認識するであろう。記載される実施態様は、任意のタイプの電気化学セル、バッテリ、またはバッテリパックで実装され得、様々な性能関連の不足を補償するために使用され得る。したがって、開示される実施態様は、本明細書で提供される例によって限定されるべきではなく、むしろ、添付された特許請求の範囲によって意図される全ての実施態様を包含するものである。追加的に、本開示の既知の要素については、本開示の関連する詳細を不明瞭にしないために記載しないか、または省略することになる。
【0039】
バッテリは、典型的には、互いに接続されて、携帯電話、ラップトップ、電気自動車(EV)、工場、及びビルなど(ただし、これらに限定されない)の多種多様なデバイスに電力を提供することができる、いくつかの電気化学セルを含む。リチウムイオンバッテリまたはリチウム硫黄バッテリなどの特定のタイプのバッテリは、使用される電解質のタイプによって、または制御されていないバッテリの副反応によって、性能が制限され得る。結果として、電解質の最適化により、それぞれのバッテリのサイクル能力、比放電容量、放電容量保持、安全性、及び寿命を改善し得る。例えば、未使用または「新規」のバッテリにおいて、リチウムイオンは、起動時に、その後、初期及び後続の放電サイクル中に、アノードからカソードに自由に輸送される。次いで、バッテリの充電サイクル中に、リチウムイオンは、カソード内のそれらの電気化学的に好ましい位置からアノードに強制的に戻され得、それらは、その後の使用のために貯蔵される。充電式バッテリに関連するこの周期的な放電充電プロセスにより、結果として、バッテリのそれぞれの放電及び充電中に、カソードとの間のリチウムイオンの輸送を妨害し得る望ましくない化学種の生成がもたらされ得る。具体的には、リチウム含有ポリ硫化物中間種(本明細書では、「ポリ硫化物」と称される)は、リチウムイオンがカソード内に存在する元素硫黄(または、いくつかの構成では、硫化リチウム、Li2S)と相互作用するときに、生成される。これらのポリ硫化物は、電解質中で可溶性であり、結果として、動作サイクル中にバッテリ全体にわたって拡散し、それによって、カソードからの活性材料の損失をもたらす。ポリ硫化物の過度の濃度レベルの生成は、動作サイクル中に、好ましくないバッテリ容量減衰及びセル故障をもたらす場合があり、潜在的に、電気自動車(EV)の走行範囲を低減させ、そのようなEVが再充電を必要とする頻度を増加させる可能性がある。
【0040】
いくつかの場合では、ポリ硫化物は、バッテリ内に提供される固体電解質相間(SEI)における無機物層の形成に関与する。一例では、アノードは、電解質中に形成され、かつ0.020MのLi2S5(0.10M硫黄)及び5.0重量%のLiNO3を含有する安定した無機物層によって、保護され得る。フッ化リチウム及びポリ硫化物(LiF-Li2Sx)を有するアノードは、Li-Cuハーフセルについて、233サイクル後にSEIを濃縮して、95%の安定したクーロン効率をもたらしながら、同時に、アノードからカソードに延在して故障または破裂したセルをもたらし得る、リチウム樹枝状結晶または他の制御されていないリチウム成長の形成を防止し得る。しかしながら、ポリ硫化物が特定の濃度(0.50Mよりも大きい硫黄など)で生成されたときに、SEIの形成は、妨げられ得る。結果として、アノードからのリチウム金属は、好ましくなくエッチングされ得、電解質に露出した粗くて不完全な表面を作り出す可能性がある。相対的に高い濃度のポリ硫化物に起因するこのアノードの好ましくない劣化(エッチング)は、ポリ硫化物の溶解及び拡散がバッテリ性能を制限している可能性があることを示し得る。
【0041】
いくつかの実施態様では、炭素質カソードの多孔性を調整して、エネルギー密度を最大化することと、バッテリの電解質への、及び/またはバッテリの電解質全体にわたるポリ硫化物のマイグレーションを阻害することとの間の所望のバランスを達成し得る。本明細書で使用される場合、炭素質という用語は、1つ以上の種類または構成の炭素を含有するか、またはその炭素で形成される材料を指し得る。例えば、カソードの多孔性は、硫黄及び炭素複合カソードでは、従来のリチウムイオンバッテリ電極におけるよりも高くあり得る。相対的に低い多孔性を有するより密度の高い電極は、電解質摂取量、寄生重量、及びコストを最小化し得る。硫黄の利用は、ポリ硫化物の溶解度、及びそれらのポリ硫化物から硫化リチウム(Li2S)への変換によって制限され得る。ポリ硫化物の硫化リチウムへの変換は、カソードのアクセス可能な表面積に基づき得る。本開示の態様は、カソード多孔性が電解質構成材料に基づいて調整されて、バッテリ体積エネルギー密度を最大化し得ることを認識する。加えて、または代替において、1つ以上の保護層または保護領域を、電解質に露出したカソード及び/またはアノードの表面に追加して、カソード多孔性レベルを調整することができる。いくつかの態様では、これらの保護層または保護領域は、バッテリ全体にわたってポリ硫化物の望ましくないマイグレーションを阻害することができる。
【0042】
本明細書に開示される主題の様々な態様は、液相電解質を含むリチウム硫黄バッテリを対象としており、それは、三元溶媒パッケージ及び1つ以上の添加剤を含み得る。いくつかの実施態様では、リチウム硫黄バッテリは、カソード、カソードとは反対に位置付けられたアノード、及び電解質を含み得る。カソードは、いくつかの領域を含み得、各領域は、互いに隣接及び接触する2つ以上の炭素質構造によって画定され得る。いくつかの事例では、電解質は、カソード全体にわたって散在され得、かつアノードに接触し得る。いくつかの態様では、電解質は、三元溶媒パッケージ及び4,4’-チオビスベンゼンチオール(TBT)を含み得る。他の事例では、電解質は、三元溶媒パッケージ及び2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)を含み得る。
【0043】
様々な実施態様では、三元溶媒パッケージは、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,3-ジオキソラン(DOL)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、及び1つ以上の添加剤を含み得、その添加剤には、硝酸リチウム(LiNO3)が含まれ得、これらは、全て液相状態であり得る。いくつかの実施態様では、三元溶媒パッケージは、約5,800マイクロリットル(μL)のDME、2,900マイクロリットル(μL)のDOL、及び1,300マイクロリットル(μL)のTEGDMEを互いに混合して混合物を作り出すことによって調製され得る。約0.01モルのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を三元溶媒パッケージに溶解して、約2重量パーセント(重量%)の硝酸リチウムを含む、2:1:1の体積比で、DME:DOL:TEGDME中の約1MのLiTFSIの希釈レベルを生成し得る。他の実施態様では、三元溶媒パッケージは、2,000マイクロリットル(μL)のDME、8,000マイクロリットル(μL)のDOL、及び2,000マイクロリットル(μL)のTEGDMEを用いて調製され得、約0.01モルの溶解リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を含み得る。いくつかの態様では、三元溶媒パッケージは、DME:DOL:TEGDMEの混合物中に、1モル濃度(M)LiTFSIの第1の近似希釈レベルで調製され得る。他の事例では、三元溶媒パッケージは、DME:DOL:TEGDME中の約1MのLiTFSIの第2の近似希釈レベルで、1:4:1の近似体積比で調製され得、5MのTBT溶液の添加、もしくは5MのMBT溶液の添加か、または他の添加剤及び/または化学物質の添加のいずれかを含み得る。
【0044】
様々な実施態様では、各炭素質構造は、相対的に高密度の外殻領域、及び相対的に低密度のコア領域を含み得る。いくつかの態様では、コア領域は、外殻領域の内側部分の内部に形成され得る。外殻領域は、約1.0グラム毎立方センチメートル(g/cc)~3.5g/ccの炭素密度を有し得る。コア領域は、約0.0g/cc~1.0g/ccの炭素密度、または第1の炭素密度よりも低いいくつかの他の範囲の炭素密度を有し得る。他の実施態様では、各炭素質構造は、例えば、炭素質構造が勾配多孔性を含まないように、同じまたは同様の密度を有する外殻領域及びコア領域を含み得る。
【0045】
カソードの様々な領域は、外殻領域からコア領域に延在する多孔性ネットワークを形成するように、互いに相互接続されたマイクロ多孔性チャネル、メソ多孔性チャネル、及びマクロ多孔性チャネルを含み得る。例えば、いくつかの態様では、多孔性ネットワークは、各々が約1.5nmの主要寸法を有する細孔を含み得る。
【0046】
いくつかの実施態様では、多孔性ネットワークの1つ以上の部分は、カソード内の元素硫黄(これに限定されない)などの電気活性材料を一時的に微小に閉じ込め得、これは、リチウムイオンと複合化することによって、バッテリ比容量を増加させ得る。いくつかの態様では、三元溶媒パッケージは、調整可能な極性、調整可能な溶解度を有し得、リチウムイオンを輸送することを可能にすることができる。追加的に、三元溶媒パッケージは、バッテリの充電放電サイクル中に、ポリ硫化物(PS)を少なくとも一時的に懸濁し得る。
【0047】
本開示に記載される主題の特定の実施態様は、1つ以上の潜在的な利点を実現するために実装され得る。いくつかの実施態様では、カソード内のマイクロ多孔性チャネル、メソ多孔性チャネル、及びマクロ多孔性チャネルの相互接続によって形成された多孔性ネットワークは、多数の異なる細孔サイズを有する複数の細孔を有し得る。いくつかの実施態様では、複数の細孔は、約2nm未満の細孔サイズを有するマイクロ細孔を含み得、約5~50nmの細孔サイズを有するメソ細孔を含み得、約50nmよりも大きい細孔サイズを有するマクロ細孔を含み得る。マイクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ細孔は、電解質全体にわたってポリ硫化物の望ましくないマイグレーションまたは拡散を集合的に軽減し得る。ポリ硫化物シャトル効果は、カソードからの活性材料の損失をもたらし得るため、ポリ硫化物シャトル効果を軽減または低減する能力は、バッテリ性能を増加させることができる。
【0048】
一実施態様では、マイクロ細孔は、カソード内に予め詰め込まれた元素硫黄(S8、または例えば、S2、S4、もしくはS6の形態で、硫黄のより小さい鎖/断片)を微小に閉じ込めるように選択された約1.5nmの細孔サイズを有し得る。カソード内の元素硫黄の微小閉じ込めは、バッテリサイクル中に生成されたTBTまたはMBT複合体が、カソードのメソ細孔内の長鎖ポリ硫化物のマイグレーションを阻害することを可能にし得る。カソードのメソ細孔内のこれらの長鎖ポリ硫化物の蓄積は、カソードを体積膨張させてポリ硫化物を保持させ、それによって、ポリ硫化物シャトル効果を低減させ得る。したがって、リチウムイオンは、ポリ硫化物によってブロックまたは妨害されることなく、電解質を介してアノードとカソードとの間を自由に輸送し続け得る。ポリ硫化物による干渉なしに、電解質全体にわたってリチウムイオンが自由に移動することにより、バッテリ性能を増加させることができる。
【0049】
加えて、または代替において、1つ以上の保護層、シース、フィルム、及び/または領域(本明細書では、総称して「保護層」と称される)は、アノード及び/またはカソード、及び/またはセパレータ上に配設され得、かつ電解質に接触し得る。保護層は、ポリ硫化物と結合して、ポリ硫化物のマイグレーションを妨げ、リチウム樹枝状結晶の形成を防止することが可能である材料を含み得る。いくつかの態様では、保護層は、異なる構成で配置され得、本明細書に開示される電解質化学物質及び/または組成物のいずれかとともに使用され得、今度は、バッテリの完全な調整可能性をもたらし得る。
【0050】
一実施態様では、炭素質材料は、フッ素化ポリマー鎖でグラフトされ得、アノードの1つ以上の露出した表面上に堆積され得る。フッ素化ポリマー鎖は、ウルツ反応を介して、アノード表面からのリチウム金属と接触すると、ポリマーネットワークに架橋され得る。架橋されたポリマーネットワークの形成は、今度は、アノードに関連付けられたリチウム金属樹枝状結晶の形成を抑制し得、また、フッ化リチウムを生成し得る。ポリマーネットワーク内のフッ素化ポリマーは、バッテリ動作サイクル中に化学反応に関与して、フッ化リチウムを生成し得る。フッ化リチウムの形成は、電解質からのリチウムイオンとフッ素イオンとの化学結合を必要とし得る。
【0051】
加えて、または代替において、ポリマーネットワークは、本明細書に開示される電解質の化学物質及び/または組成物のいずれか、及び/またはカソード上に配設された保護シースと組み合わされ得る。一実施態様では、保護シースは、二官能性、またはより高次の官能性のエポキシ化合物及びアミン化合物またはアミド化合物を含有する化合物を組み合わせることによって形成することができる。それらの分子間架橋は、電解質中の溶解に対する高い耐薬品性を有する3Dネットワークの形成をもたらすことになる。組成物は、例えば、三官能性エポキシ化合物及びジアミンオリゴマー系化合物を含み得、これらは、互いに反応して、カソード内に生成されたポリ硫化物に結合し、かつ電解質へのそれらのマイグレーションまたは拡散を防止することができる、保護格子を生成し得る。追加的に、保護格子は、バッテリサイクルに起因してカソード内に形成し得る1つ以上の亀裂を通って拡散し得る。保護格子は、カソード内に形成されたそのような亀裂全体にわたって拡散されるときに、カソードの構造的完全性を増加させ得、体積膨張に関連するカソードの潜在的な破裂を低減し得る。
【0052】
様々な実施態様では、開示されたバッテリ構成要素のうちの1つ以上は、電解質に露出したアノードの縁端部または表面上に配設された共形的なコーティング材と組み合わされ得る。いくつかの実施態様では、共形的なコーティング材は、ポリマーネットワークを置き換え得る勾配界面層を含み得る。いくつかの態様では、勾配界面層は、フッ化錫層と、フッ化錫層とアノードとの間に形成された錫リチウム合金領域と、を含み得る。錫リチウム合金領域は、バッテリの動作サイクルに応答して、アノードとフッ化錫層との間に均一に分散されたフッ化リチウム層を形成し得る。
【0053】
様々な実施態様では、本開示の様々な態様を使用するリチウム硫黄バッテリは、外部資源、例えば、地下資源及び/または地球外地下資源から取り出された電気活性材料を含み得る。そのような実施態様では、カソードは、電気活性材料をカソード内に微小に閉じ込め得る機能的な細孔を含む、硫黄のないカソードとして調製され得る。いくつかの態様では、カソードは、ともに連結された多数の炭素質粒子を含む集合体を含み得、ともに連結された多数の集合体を含む凝集体を含み得る。一実施態様では、カソード(及び/またはアノード)を形成するために使用される炭素質材料を調整して、固有の細孔サイズ、サイズ範囲、及び体積を画定し得る。いくつかの実施態様では、炭素質粒子は、トリゾーン粒子の有無にかかわらず、非トリゾーン粒子を含み得る。他の実施態様では、炭素質粒子は、トリゾーン粒子を含まない場合がある。各トリゾーン粒子は、マイクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ細孔を含み得、非トリゾーン及びトリゾーン粒子の両方は、各々、20nm~300nmのおおよその範囲内の主要寸法を有し得る。炭素質粒子の各々は、互いに入れ子になり、メソ細孔によって直接隣接する炭素質断片から分離された炭素質断片を含み得る。いくつかの態様では、炭素質粒子の各々は、形状が変化し、かつ隣接する材料と合体する、変形可能な周囲を有し得る。
【0054】
細孔のうちのいくつかは、複数の炭素質断片、及び/または炭素質粒子の変形可能な周囲の全体にわたって分布し得る。様々な実施態様では、メソ細孔は、集合体全体にわたって散在され得、マクロ細孔は、複数の凝集体全体にわたって散在され得る。一実施態様では、各メソ細孔は、3.3ナノメートル(nm)~19.3nmの主要寸法を有し得、各集合体は、10nm~10マイクロメートル(μm)のおおよその範囲内の主要寸法を有し得、各凝集体は、0.1μm~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有し得る。以下にさらに説明されるように、固有の電解質配合物及び保護層に適合する細孔サイズの特定の組み合わせを使用して、好ましくないポリ硫化物拡散の有害な影響を低減または軽減することができ、これは、バッテリ性能をさらに増加させ得る。
【0055】
図1は、いくつかの実施態様による例示的なバッテリ100を示している。このバッテリ100は、リチウム硫黄電気化学セル、リチウムイオンバッテリ、またはリチウム硫黄バッテリであり得る。バッテリ100は、第1の基材101、第2の基材102、カソード110、カソード110とは反対に位置付けられたアノード120、及び電解質130を含む、本体105を有し得る。いくつかの態様では、第1の基材101は、アノード120のための集電体として機能し得、第2の基材102は、カソード110のための集電体として機能し得る。カソード110は、第2の基材102上に堆積された第1の薄膜111を含み得、第1の薄膜111上に堆積された第2の薄膜112を含み得る。いくつかの実施態様では、電解質130は、硝酸リチウム、フッ化錫、ヨウ化リチウム、ビス(シュウ酸)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸セシウム、フッ化セシウム、イオン液体、フッ化リチウム、フッ化エーテル、TBT、MBT、DPTなどの1つ以上の添加剤を含む、液相電解質であり得る。これらの例示的な添加剤のための好適な溶媒パッケージは、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)などの1:1:1を含む様々な希釈比を含み得る。
【0056】
単純にするために示されていないが、一実施態様では、リチウム層が、アノード120の1つ以上の露出した炭素表面上に電着され得る。いくつかの事例では、リチウム層は、リチウムの現場以外での電着によって、アノード120の露出した表面上に設けられた元素リチウムを含み得る。いくつかの態様では、リチウム層は、リチウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、及び/またはセシウムを含み得、ここで、各金属は、アノード120の露出した炭素表面上に、現場以外で堆積され得る。リチウム層は、バッテリ100の動作サイクル中に、カソード110との間を輸送するために利用可能なリチウムイオンを提供し得る。結果として、バッテリ100は、動作のための追加のリチウム源を必要としない場合がある。硫化リチウムを使用する代わりに、元素硫黄(S8)が、カソード110内に形成された様々な細孔または多孔性ネットワーク内に予め詰め込まれ得る。バッテリの動作サイクル中に、元素硫黄は、従来のカソード設計よりも多くの量のリチウムを(少なくとも一時的に)微小に閉じ込めることができるリチウム硫黄錯体を形成し得る。結果として、バッテリ100は、そのような従来のカソード設計に依存するバッテリよりも性能が上であり得る。
【0057】
様々な実施態様では、リチウム層は、バッテリ100の放電サイクル中に、リチウムイオン125及び電子174に解離及び/または分離し得る。リチウムイオン125は、
図1の例に描写されているように、アノード120から電解質130を通ってカソード110に向かい、カソード110内のそれらの電気化学的に好ましい位置にマイグレーションし得る。リチウムイオン125が電解質130を通って移動するときに、電子174は、リチウムイオン125から放出され、電荷を運ぶことができるようになり、したがって、アノード120とカソード110との間に電流を伝える。結果として、電子174は、外部回路を通ってアノード120からカソード110に移動して、負荷172に電力供給し得る。負荷172は、白熱電球、家電、または電気自動車(EV)(ただし、これらに限定されない)などの任意の好適な回路、デバイス、またはシステムであり得る。
【0058】
いくつかの実施態様では、バッテリ100は、固体電解質相間層140を含み得る。この固体電解質相間層140は、いくつかの事例では、バッテリ100の動作サイクル中に、アノード120上に人工的に形成され得る。そのような事例では、固体電解質相間層140はまた、人工固体電解質相間またはA-SEIとも称され得る。固体電解質相間層140は、A-SEIとして形成されるときに、錫、マンガン、モリブデン、及び/またはフッ素化合物を含み得る。具体的には、モリブデンは、陽イオンを提供し得、フッ素化合物は、陰イオンを提供し得る。陽イオン及び陰イオンは、互いに相互作用して、フッ化錫、フッ化マンガン、窒化ケイ素、窒化リチウム、硝酸リチウム、リン酸リチウム、酸化マンガン、酸化ランタンジルコニウムリチウム(LLZO、Li7La3Zr2O12)などの塩を生成し得る。いくつかの事例では、A-SEIは、リチウムイオン125が電解質130に露出することに応答して形成され得、その電解質は、錫及び/またはフッ素を含む溶媒ベースの溶液を含み得る。
【0059】
様々な実施態様では、固体電解質相間層140は、バッテリ100の活性化の前に、アノード120上に人工的に設けられ得る。代替的に、一実施態様では、固体電解質相間層140は、例えば、バッテリ100の動作サイクル中に、アノード120上に自然に形成し得る。いくつかの事例では、固体電解質相間層140は、マイクロコーティング材としてアノード120に適用することができる遮蔽材の外層を含み得る。このようにして、電解質130に面するアノード120の一部分上に固体電解質相間層140を形成することは、電解質130の電気化学的還元をもたらし得、これは、今度は、アノード120の制御されていない分解を低減し得る。
【0060】
いくつかの実施態様では、例えば、
図1に示されるように、バッテリ100は、固体電解質相間層140の側面を守るバリア層142を含み得る。このバリア層142は、アノード120上にコーティング及び/または堆積された機械的強度増強材144を含み得る。いくつかの態様では、機械的強度増強材144は、バッテリ100のための構造的支持を提供し得、アノード120からのリチウム樹枝状結晶の形成を防止し得、及び/またはバッテリ100全体にわたってリチウム樹枝状結晶の突起を防止し得る。いくつかの実施態様では、機械的強度増強材144は、アノード120上の保護コーティング材として形成され得、1つ以上の炭素同素体、カーボンナノオニオン(CNO)、ナノチューブ(CNT)、還元された酸化グラフェン、酸化グラフェン(GO)、及び/またはカーボンナノダイヤモンドを含み得る。いくつかの事例では、固体電解質相間層140は、機械的強度増強材144内に形成され得る。
【0061】
いくつかの実施態様では、第1の基材101及び/または第2の基材102は、固体銅金属箔であり得、バッテリ100のエネルギー容量、速度能力、寿命、及び長期安定性に影響を及ぼし得る。例えば、バッテリ100のエネルギー容量及び他の性能属性を制御するために、第1の基材101及び/または第2の基材102は、バッテリ100の電気化学的安定性及び/または導電率を増加させるように、エッチング、炭素コーティング材、または他の好適な処理に供され得る。他の実施態様では、第1の基材101及び/または第2の基材102は、バッテリ100の最終使用用途及び/または性能要件に応じて、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼、及び/または炭素質材料の選択を含み得るか、またはその選択から形成され得る。例えば、第1の基材101及び/または第2の基材102は、バッテリ100が1つ以上の性能要件または測定項目を満たすように、別々に調整または適応され得る。
【0062】
いくつかの態様では、第1の基材101及び/または第2の基材102は、少なくとも部分的に発泡体ベースまたは発泡体由来のものであり得、金属発泡体、金属箔、金属ふるい、多孔金属、またはシートベースの三次元(3D)構造のうちの任意の1つ以上から選択することができる。他の態様では、第1の基材101及び/または第2の基材102は、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノ繊維マット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマーコーティング繊維発泡体、炭素発泡体、グラファイト発泡体、または炭素エアロゲルであり得る。いくつかの他の態様では、第1の基材101及び/または第2の基材102は、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元された酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、グラファイト繊維発泡体、剥離グラファイト発泡体、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0063】
図2は、いくつかの実施態様による、別の例示的なバッテリ200を示している。バッテリ200は、多くの点で、
図1のバッテリ100と同様であり得、このため、同様の要素の説明は、本明細書では繰り返さない。いくつかの実施態様では、バッテリ200は、リチウム金属バッテリ、及び/または固体電解質を特徴とする固体バッテリなどの次世代バッテリであり得る。他の実施態様では、バッテリ200は、液相電解質230を含み得、したがって、本明細書に開示された保護層及び/または電解質の化学物質または組成物のいずれかを含み得る。
【0064】
いくつかの他の実施態様では、電解質230は、固体または実質的に固体であり得る。例えば、いくつかの事例では、電解質230は、ゲル相で始まり、次いでその後、バッテリ200の活性化時に固体化し得る。バッテリ200は、従来の炭素足場アノードを、初期に空の空洞に堆積されたリチウムの単一の固体金属層で置き換えることによって、ポリ硫化物シャトル効果に関連する特定の容量またはエネルギー損失を低減し得る。例えば、
図1のバッテリ100のアノード120は、炭素足場を含み得るが、
図2のバッテリ200のアノード220は、任意の炭素材料を欠いているリチウム金属アノードであり得る。一実施態様では、リチウム金属アノードは、単一の固体リチウム金属層として形成され得、「リチウム金属アノード」と称され得る。
【0065】
様々なカソード材料に関連するエネルギー密度利得は、リチウム金属がカソード210中に予め詰め込まれているか、及び/または電解質230内に広く行きわたっているかどうかに基づき得る。カソード210及び/または電解質230のいずれかは、アノード220のリチウム化に利用可能なリチウムを提供し得る。例えば、大容量カソードを有するバッテリは、大容量カソードによる使用のために必要とされる増加した量のリチウムを供給するために、より厚いまたはよりエネルギッシュに高密度のアノードを必要し得る。いくつかの実施態様では、アノード220は、その中に堆積されるリチウムで段階的に充填されることができる足場付き炭素質構造を含み得る。これらの炭素質構造は、従来のグラファイトアノードと比較して、より多く量のリチウムをアノード220内に保持することが可能であり得、これは、交互構造のグラフェン層の間に介在されたリチウムを単独でホスティングすることが制限され得るか、またはリチウムで電気めっきされ得る。例えば、従来のグラファイトアノードは、6つの炭素原子を使用して、単一のリチウム原子を保持し得る。対照的に、アノード220などの純粋なリチウム金属アノードを使用することによって、本明細書に開示されたバッテリは、アノード220における炭素の使用を低減し得るか、さらには排除し得、これにより、アノード220が、従来のグラファイトアノードよりも相対的に小さい体積で、より多くの量のリチウムを貯蔵することが可能になり得る。このようにして、バッテリ200のエネルギー密度は、同様のサイズの従来のバッテリよりも大きくあり得る。
【0066】
アノード220などのリチウム金属アノードは、アノードからのリチウム樹枝状結晶の形成及び成長を阻害するように設計された固体電解質で機能するように調製され得る。いくつかの態様では、セパレータ250は樹枝状結晶の形成及び成長をさらに制限し得る。セパレータ250は、
図1の電解質130と同様のイオン伝導率を有し得るが、依然として、リチウム樹枝状結晶の形成を低減する。いくつかの態様では、セパレータ250は、セラミック含有材料から形成され得、結果として、金属リチウムと化学結合することができない。結果として、セパレータ250は、電解質230を通る電子の流れまたは通過を妨げることによって短絡を同時に防止しながら、セパレータ250を横切って分散された細孔を通るリチウムイオン輸送を制御するために使用され得る。
【0067】
一実施態様では、空隙空間(単純にするため、図示せず)は、アノード220内またはその近くで、バッテリ200内に形成され得る。この実施態様におけるバッテリ200の動作サイクルは、空隙空間へのリチウムの堆積をもたらし得る。結果として、空隙空間は、リチウム含有領域(固体リチウム金属層など)になるか、またはリチウム含有領域に変換し、アノード220として機能し得る。いくつかの態様では、空隙空間は、バッテリ200の金属含有電気不活性成分とグラフェン含有成分との間の化学反応に応答して作り出され得る。具体的には、グラフェン含有成分は、動作サイクル中に、空隙空間中に堆積されたリチウムと化学反応し、リチウム化グラファイト(LiC6)またはパターン化リチウム金属を生成し得る。化学反応によって生成されたリチウム化グラファイトは、バッテリ200の放電サイクル中に、アノード220とカソード210との間で電荷または「電流」を運ぶために使用することができる、リチウムイオン及び/または電子の生成及び/または放出を生成または誘導し得る。
【0068】
そして、アノード220が固体リチウム金属層である実施態様では、バッテリ200は、(足場付き炭素及び/または介在されたリチウム化グラファイトアノードを有するバッテリと比較して)単位体積当たりのより多くの電気活性材料及び/またはリチウムを保持することが可能であり得る。いくつかの態様では、アノード220は、固体リチウム金属層として調製されたときに、足場付き炭素及び/または介在されたリチウム化グラファイトアノードを有するバッテリよりも高いエネルギー密度及び/または比容量を有するバッテリ200をもたらし得、それによって、より長い放電サイクル時間、及び単位時間当たりの追加のパワー出力をもたらす。固体電解質が所望されないか、または最適でない事例では、
図2のバッテリ200の電解質230は、本明細書に開示された液相電解質の化学物質及び/または組成物のいずれかを用いて調製され得る。加えて、または代替において、電解質230は、それぞれ、放電サイクル中及び充電サイクル中に、アノード220からカソード210に、及びその逆も同様に、周期的な輸送に利用可能なリチウム及び/またはリチウムイオンを含み得る。
【0069】
カソード210内に予め詰め込まれた元素硫黄281から電解質230中に生成されたポリ硫化物282のマイグレーションを低減するために、バッテリ200は、1つ以上の固有のポリ硫化物保持特徴を含み得る。例えば、ポリ硫化物が電解質230中で可溶であると仮定すると、いくつかのポリ硫化物は、電気化学的電位、化学的勾配、及び/または他の現象の相違に起因して、カソード210からアノード220に向かってドリフトまたはマイグレーションすることが予想され得る。ポリ硫化物282、特に長鎖型ポリ硫化物のマイグレーションは、アノード220からカソード210へのリチウムイオンの輸送を妨げる可能性があり、それは、今度は、電気自動車(EV)などの負荷272に電力供給することができる電流を生成するのに利用可能な電子の数を低減させる可能性がある。いくつかの態様では、リチウムイオン225は、
図2の例に描写されているように、輸送経路に沿って、アノード220内またはその近くの1つ以上の開始位置226から、カソード210内またはその近くの1つ以上の終了位置227に、輸送され得る。
【0070】
いくつかの実施態様では、ポリマーネットワーク285は、アノード220上に配設されて、アノード220からカソード210へのポリ硫化物282の制御されていないマイグレーションを低減し得る。ポリマーネットワーク285は、リチウムアノード表面への露出時に、ウルツ反応を介して互いに架橋されたフッ素化ポリマー鎖でグラフトされた炭素質材料のうちの1つ以上の層を含み得る。ポリマーネットワーク285内の炭素質材料は、グラフェン、少数層グラフェン、FLG、多数層グラフェン、及びMLG(ただし、これらに限定されない)を含み得、炭素-フッ素(C-F)結合を含有するフッ素化ポリマー鎖で化学的にグラフトされ得る。これらのC-F結合は、アノード220の表面からのリチウム金属と化学反応して、イオン性の高い炭素-リチウム結合(C-Li)を生成し得る。そして次に、これらの形成されたC-Li結合は、ポリマー鎖のC-F結合と反応して、ポリマー鎖をポリマーネットワークに架橋し(かつそれによって形成し)、フッ化リチウム(LiF)を生成することができる、新しい炭素-炭素結合を形成し得る。
【0071】
結果として得られたフッ化リチウムは、ポリマーネットワーク285の周囲全体に沿って均一に分布され得、そのため、リチウムイオンは、一様に消費されて、バッテリサイクル中にフッ化リチウムを形成し得るか、または別様に含み得る、界面層283を生成する。界面層283は、
図2に示されるように、カソード210に面するアノード220の表面または一部に沿って延在し得る。結果として、リチウムイオン225は、互いに結合及び/または反応する可能性がより低く、ポリマーネットワーク285内のフッ素化ポリマー鎖によって利用可能になるフッ素原子と結合及び/または反応する可能性がより高い。結果として生じたリチウム-リチウム化学反応の還元は、望ましくないリチウム金属樹枝状結晶の形成の原因となるリチウム-リチウム結合を減少させる。追加的に、いくつかの実施態様では、ポリマーネットワーク285は、アノード220と電解質230との間で自然にまたは人工的に作り出す相間層240を置き換え得る。
【0072】
一実施態様では、ポリマーネットワーク285の界面層283は、アノード220に接触しており、保護層284は、界面層283の上部(界面層283と相間層240との間など)に配設される。いくつかの態様では、界面層283及び保護層284は、例えば、
図7を参照して説明されるように、様々な程度の密度の架橋されたフッ化ポリマー鎖の勾配を集合的に画定し得る。
【0073】
いくつかの他の実施態様では、バッテリ200は、カソード210上に配設された保護格子280を含み得る。保護格子280は、互いに化学反応して窒素原子及び酸素原子を生成し得る三官能性エポキシ化合物及びジアミンオリゴマー系化合物を含み得る。保護格子280によって利用可能になった窒素原子及び酸素原子は、ポリ硫化物282と結合することができ、それによって、ポリ硫化物282をカソード210及び/または保護格子280内に閉じ込める。カソード210及び/または保護格子280のいずれかは、バッテリ200の動作サイクル中に、屈曲及び/または体積膨張することができる炭素-炭素結合及び/または領域を含み得、これは、動作サイクル中に生成されたポリ硫化物282をカソード210に閉じ込め得る。
【0074】
図1の電解質130及び
図2の電解質230は、本明細書に開示された1つ以上のレシピに従って調製され得る。例えば、電解質130及び/または電解質230で使用される三元溶媒パッケージは、DME、DOL、及びTEGDMEを含み得る。一実施態様では、溶媒混合物は、5800μLのDME、2900μLのDOL、及び1300μLのTEGDMEを混合し、室温(77°Fまたは25℃)で撹拌することによって調製され得る。次に、0.01モル(2,850.75mg)のLiTFSIを計量し得る。その後、0.01モルのLiTFSIを、室温で撹拌することによって溶媒混合物に溶解し、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積1:4:1)中の約10mLの1MのLiTFSIを調製し得る。最後に、約223mgのLiNO
3を10mLの溶液に添加して、約2重量%のLiNO
3のDME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=58:29:13)中の10mLの1MのLiTFSIを生成し得る。
【0075】
加えて、または代替において、電解質130及び/または電解質230で使用される三元溶媒パッケージは、DME、DOL、TEGDME、及びTBTまたはMBTを含み得る。2,000μLのDME、8,000μLのDOL、及び2,000μLのTEGDMEを混合して、室温(68°Fまたは25℃)で撹拌することによって、溶媒混合物を調製し得る。次に、0.01モル(2,850.75mg)のLiTFSIを計量し、室温で撹拌することによって、約3mLの溶媒混合物に溶解させ得る。次に、溶解したLiTFSI及び添加した溶媒混合物(約8,056mg)を、10mLのメスフラスコ中で混合して、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積1:4:1)中の約1MのLiTFSIを生成し得る。最後に、約0.05mモル(約12.5mg)のTBTまたはMBTを10mL溶液に添加して、10mLの5MのTBTまたはMBT溶液を生成し得る。
【0076】
図3は、いくつかの実施態様による、例示的な電極300を示している。様々な実施態様では、電極300は、
図1のバッテリ100のカソード110及び/またはアノード120の一例であり得る。いくつかの他の実施態様では、電極300は、
図2のバッテリ200のカソード210の一例であり得る。電極300がカソード(
図1のバッテリ100のカソード110など)として実装されるとき、電極300は、元素硫黄などの電気活性材料を一時的に微小に閉じ込め得、これにより、リチウムと反応してポリ硫化物を生成するのに利用可能な硫黄の量を減少させ得る。いくつかの態様では、電極300は、リチウム系バッテリに関連する最初のサイクルの動作損失を補償することができる、リチウム及び/またはリチウムイオンの過剰供給を提供し得る。
【0077】
いくつかの実施態様では、電極300は、多孔性であり得、
図1の電解質130などの液相電解質を容易に受け入れ得る。電解質130中に懸濁されたリチウムイオン125などの電気活性種は、電極300の細孔に予め詰め込まれている元素硫黄と化学反応してポリ硫化物を生成し得、これは、今度は、バッテリサイクル中に電極300に捕捉され得る。いくつかの態様では、電極300は、1つ以上の屈曲点に沿って体積膨張して、バッテリサイクル中に作り出された追加の量のポリ硫化物を保持し得る。ポリ硫化物を電極300内に閉じ込めることによって、本明細書に開示された主題の態様は、リチウムイオン125が、バッテリ100の放電サイクル中に(例えば、ポリ硫化物によって妨げられることなく)アノード120から電解質130を通ってカソード110に自由に流れることを可能にし得る。例えば、リチウムイオン125がカソード110に到達して、カソード110内に含有されるか、またはそのカソードに関連する元素硫黄と反応すると、硫黄は、Li
2S
8→Li
2S
6→Li
2S
4→Li
2S
2→Li
2Sの順に従って、鎖の長さが減少しているリチウムポリ硫化物(Li
2S
x)に還元される(ここで、2≦x≦8である)。高次ポリ硫化物は、様々な種類の溶媒及び/または電解質に可溶であり得、それによって、健全なバッテリ動作のために必要なリチウムイオン輸送を妨げる。電極300によるそのような高次のポリ硫化物の保持によって、リチウムイオン125が電解質130を通ってより自由に流れることが可能になり、それにより、今度は、アノード120からカソード110に電荷を運ぶのに利用可能な電子の数を増加させ得る。
【0078】
電極300は、幅305によって画定された本体301を含み得、第1の薄膜310及び第2の薄膜320を含み得る。第1の薄膜310は、ともに連結して電極300の第1の多孔性構造316を形成する、複数の第1の集合体312を含み得る。いくつかの事例では、第1の多孔性構造316は、約0~500S/mの導電率を有し得る。他の事例では、第1の導電率は、約500~1,000S/mであり得る。いくつかの他の事例では、第1の導電率は、1,000S/mを上回り得る。いくつかの態様では、第1の集合体312は、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノオニオン(CNO)、薄片状グラフェン、しわ状グラフェン、炭素質材料上で成長したグラフェン、及び/またはグラフェン上で成長したグラフェンを含み得る。
【0079】
いくつかの実施態様では、第1の集合体312は、複数の第1のナノ粒子314で装飾され得る。いくつかの事例では、第1のナノ粒子314は、錫、リチウム合金、鉄、銀、コバルト、半導体材料、及び/またはシリコンなどの金属、及び/または同種の他のものを含み得る。いくつかの態様では、CNTは、単位体積当たりの大きな露出した表面積、及び相対的に高い温度(77°Fまたは25℃を上回るなど)における安定性を提供するそれらの能力に起因して、第1のナノ粒子314のための支持材料として使用され得る。例えば、第1のナノ粒子314は、(装飾、堆積、表面修正などによって)CNT及び/または他の炭素質材料の露出した表面上で固定化され得る。第1のナノ粒子314は、CNT及び/または他の炭素質材料の露出した表面上で化学的に利用可能な炭素と反応し得る。
【0080】
第2の薄膜320は、ともに連結して第2の多孔性構造326を形成する複数の第2の集合体322を含み得る。いくつかの事例では、第1の多孔性構造316及び/または第2の多孔性構造326の導電率は、約0S/m~250S/mであり得る。第1の多孔性構造316が第2の多孔性構造326よりも高い濃度の集合体を含む事例では、第1の多孔性構造316は、第2の多孔性構造326よりも高い導電率を有し得る。一実施態様では、第1の導電率は、約250S/m~500S/mであり得、これに対して、第2の導電率は、約100S/m~250S/mであり得る。別の実施態様では、第2の導電率は、約250S/m~500S/mであり得る。さらに別の実施態様では、第2の導電率は、500S/mを上回り得る。いくつかの態様では、第2の集合体322は、CNT、CNO、薄片状グラフェン、しわ状グラフェン、炭素質材料上に成長したグラフェン、及び/またはグラフェン上に成長したグラフェンを含み得る。
【0081】
第2の集合体322は、複数の第2のナノ粒子324で装飾され得る。いくつかの実施態様では、第2のナノ粒子324は、鉄、銀、コバルト、半導体材料、及び/またはシリコンなどの金属、及び/またはその種の他のものを含み得る。いくつかの事例では、CNTはまた、第2のナノ粒子324のための支持材料としても使用され得る。例えば、第2のナノ粒子324は、CNT及び/または他の炭素質材料の露出した表面上に(装飾、堆積、表面修正などによって)固定化され得る。第2のナノ粒子324は、CNT及び/または他の炭素質材料の露出した表面上で化学的に利用可能な炭素と反応し得る。
【0082】
いくつかの態様では、第1の薄膜310及び/または第2の薄膜320(ならびにそれらのそれぞれの直前の薄膜上に配設された任意の追加の薄膜)は、材料及び/または集合体の層または領域として作り出され得る。この層または領域は、コンマナノメートルから数μmまでの厚さ、例えば、約0~5ミクロン、約5~10ミクロン、約10~15ミクロン、または15ミクロンよりも大きい範囲であり得る。本明細書に開示された材料及び/または集合体のいずれか、例えば、CNOは、第1の薄膜310及び/または第2の薄膜320に組み込まれて、説明された厚さレベルをもたらし得る。
【0083】
いくつかの実施態様では、第1の薄膜310は、化学的堆積、物理的堆積、またはFrank-van der Merwe成長、Stranski-Krastonov成長、Volmer-Weber成長などの技術を介して交互に成長した多層によって、
図1の第2の基材102上に堆積され得る。他の実施態様では、第1の薄膜310は、材料のエピタキシャル成長を伴うエピタキシーまたは他の好適な膜堆積プロセスによって、第2の基材102上に堆積され得る。第2の薄膜320及び/または後続の薄膜は、第1の薄膜310を参照して説明された方法と同様の方法で、それらのそれぞれの直前の薄膜上に堆積され得る。
【0084】
様々な実施態様では、第1の集合体312及び/または第2の集合体322の各々は、ともに結合または融合した多くの相対的に小さい粒子によって形成された相対的に大きな粒子であり得る。結果として、相対的に大きな粒子の外部表面積は、多くの相対的に小さい粒子の結合した表面積を著しく下回り得る。集合体をともに保持する力は、例えば、共有結合、イオン結合、または元の一次粒子の焼結もしくは複雑な物理的絡み合いを引き起こす他の種類の化学結合であり得る。
【0085】
上で考察されたように、第1の集合体312は、ともに連結して第1の多孔性構造316を形成し得、第2の集合体322は、ともに連結して第2の多孔性構造326を形成し得る。第1の多孔性構造316の導電率は、第1の多孔性構造316内の第1の集合体312の濃度レベルに基づき得、第2の多孔性構造326の導電率は、第2の多孔性構造326内の第2の集合体322の濃度レベルに基づき得る。いくつかの態様では、第1の集合体312の濃度レベルは、第1の多孔性構造316に相対的に高い導電率を持たせ得、第2の集合体322の濃度レベルは、(第1の多孔性構造316が第2の多孔性構造326よりも大きい導電率を有するように)第2の多孔性構造326に、相対的に低い導電率を持たせ得る。第1の多孔性構造316及び第2の多孔性構造326の導電率における、結果として生じる差は、電極300の間に導電率勾配を作り出し得る。いくつかの実施態様では、導電率勾配を使用して、電極300、及び/または
図1のバッテリ100の1つ以上の動作の全体にわたって、電気伝導を制御または調整し得る。
【0086】
本明細書で使用される場合、相対的に小さいソース粒子は、「一次粒子」と称され得、一次粒子によって形成された相対的に大きな集合体は、「二次粒子」と称され得る。
図1、
図8~10、及び本開示全体にわたる他所に示されるように、一次粒子は、ともに融合及び/または連結された複数のグラフェンシート、層、領域、及び/またはナノプレートレットであり得るか、あるいはそれらを含み得る。したがって、いくつかの事例では、カーボンナノオニオン(CNO)、カーボンナノチューブ(CNT)、及び/または他の調整可能な炭素材料を使用して、一次粒子を形成し得る。いくつかの態様では、いくつかの集合体は、約500nm~25μmの主要寸法(長さ、幅、及び/または直径など)を有し得る。また、いくつかの集合体は、グラフェンシート、層、領域、及び/またはともに直交する角度で連結されたナノプレートレットの、「生来粒子」と称される、生来形成されたより小さい一次粒子の集合を含み得る。いくつかの事例では、これらの生来粒子は、各々、約50nm~250nmのそれぞれの寸法を有し得る。
【0087】
これらの生来粒子の表面積及び/または多孔性は、蒸気、水素ガス、二酸化炭素、酸素、オゾン、KOH、ZnCl2、H3PO4、または他の類似の化学薬品のうちの1つ以上を単独または組み合わせて使用する、熱プロセス、プラズマプロセス、または組み合わされた熱プラズマプロセスによる炭素活性化などの二次プロセスによって与えられ得る。いくつかの実施態様では、第1の多孔性構造316及び/または第2の多孔性構造326は、非平衡条件下での気体-固体反応によって制御することができる炭素質ガス種から生成され得る。このようにして第1の多孔性構造316及び/または第2の多孔性構造326を生成することは、炭素含有プラズマ種の制御された冷却から形成される炭素含有ラジカルの再結合に関与し得る(これは、好適な化学反応器における供給原料炭素含有のガス種及び/またはプラズマ種の興奮または圧縮によって生成され得る)。
【0088】
いくつかの実施態様では、第1の集合体312及び/または第2の集合体322は、各それぞれの集合体内で、水素を除く他の元素に対する、99%を上回る炭素の割合を有し得る。いくつかの事例では、各集合体の中央値のサイズは、約0.1ミクロン~50ミクロンであり得る。第1の集合体312及び/または第2の集合体322はまた、金属有機フレームワーク(MOF)を含み得る。
【0089】
いくつかの実施態様では、第1の多孔性構造316及び第2の多孔性構造326は、例えば、
図3に示されるように、ホスト構造328を集合的に画定し得る。いくつかの事例では、ホスト構造328は、例えば、
図8に示されるように、炭素足場に基づき得、及び/または装飾された炭素を含み得る。ホスト構造328は、構造的な定義を電極300に提供し得る。いくつかの事例では、ホスト構造328は、正極として製造され、
図1のカソード110で使用され得る。他の実施態様では、ホスト構造328は、負極として製造され、
図1のアノード120で使用され得る。いくつかの他の実施態様では、ホスト構造328は、IUPACによって定義されたマイクロ細孔、メソ細孔、及び/またはマクロ細孔などの、異なるサイズを有する細孔を含み得る。いくつかの事例では、マイクロ細孔のうちの少なくともいくつかは、約1.5nmの幅を有し得、これは、硫黄が電極300中に予め詰め込まれるのを可能にするのに十分大きい可能性があり、さらに、電極300内にポリ硫化物を閉じ込めるのに十分小さい可能性がある。
【0090】
ホスト構造328は、
図3に示されるように、電極300内に設けられるときに、第1の多孔性構造316及び/または第2の多孔性構造326の露出した表面及び/または輪郭によって作り出されたマイクロ多孔性経路、メソ多孔性経路、及び/またはマクロ多孔性経路を含み得る。これらの経路は、ホスト構造328が、例えば、バッテリ100のカソード110に向かってリチウムイオンを輸送することによって、電解質を受け入れることを可能にし得る。具体的には、電解質130は、ホスト構造328の様々な多孔性経路に浸透し、バッテリ100の電極300及び/または他の部分の全体にわたって均一に分散し得る。ホスト構造328のそのような領域への電解質130の浸透は、アノード120からカソード110に向かってマイグレーションするリチウムイオン125が、カソード110に関連付けられた元素硫黄と反応して、リチウム硫黄錯体を形成することを可能にし得る。結果として、元素硫黄は、それ以外の場合にリチウム酸化コバルト(LiCoO)または他のリチウムイオンセルなどの非硫黄化学物質を使用して達成可能である、追加の量のリチウムイオンを保持し得る。
【0091】
いくつかの態様では、第1の多孔性構造316及び/または第2の多孔性構造326の各々は、蒸気、水素ガス、二酸化炭素、酸素、オゾン、KOH、ZnCl2、H3PO4、または他の同様の化学薬品のうちの1つ以上を単独でまたは組み合わせて使用する、熱プロセス、プラズマプロセス、または複合熱プラズマプロセスのうちの1つ以上に基づく多孔性を有し得る。例えば、一実施態様では、マクロ多孔性経路は、50nmよりも大きい主要寸法を有し得、メソ多孔性経路は、約20nm~50nmの主要寸法を有し得、マイクロ多孔性経路は、4nmよりも小さい主要寸法を有し得る。このように、マクロ多孔性経路及びメソ多孔性経路は、リチウムイオン125を輸送するための調整可能な導管を提供することができ、マイクロ多孔性経路は、電極300内の活性材料を制限し得る。
【0092】
いくつかの実施態様では、電極300は、1つ以上の追加の薄膜(単純にするために、図示せず)を含み得る。この1つ以上の追加の薄膜の各々は、異なる薄膜にわたって互いに相互接続された別々の集合体を含み得、その薄膜の少なくともいくつかは、異なる濃度レベルの集合体を有する。結果として、任意の薄膜の濃度レベルは、(グラデーションなどによって)変化させて、特定の電気抵抗(またはコンダクタンス)値を達成し得る。例えば、いくつかの実施態様では、集合体の濃度レベルは、最初の薄膜310と最後の薄膜との間(
図1に描写されている方向195など)で次第に低減し得、及び/または個々の薄膜は、約10ミクロン~約200ミクロンの平均厚さを有し得る。加えて、または代替において、第1の薄膜310は、相対的に高い濃度の炭素質集合体を有し得、第2の薄膜320は、相対的に低い濃度の炭素質集合体を有し得る。いくつかの態様では、相対的に高い濃度の集合体は、相対的に低い電気抵抗に対応し、相対的に低い濃度の集合体は、相対的に高い電気抵抗に対応する。
【0093】
ホスト構造328は、第1の集合体312及び/または第2の集合体322の露出した表面上に複数の活性部位を調製され得る。これらの活性部位、ならびに第1の集合体312及び/または第2の集合体322の露出した表面は、電極300をバッテリ100に組み込む前における、現場以外での電着を容易にし得る。電気めっきは、電流の印加及び/または変調による金属陽イオンの化学的還元を介してリチウム層330(ホスト構造328の露出した表面上のリチウムを含む)を作り出すことができるプロセスである。電極300が
図1のバッテリ100のアノード120として機能する実施態様では、ホスト構造328は、リチウム層330は、約1~5マイクロメートル(μm)、5μm~20μm、または20μmよりも大きい厚さを有するように電気めっきされ得る。いくつかの事例では、現場以外での電着は、バッテリ100の組み立て前に、バッテリ100とは別の場所で行われ得る。
【0094】
様々な実施態様では、リチウム層330によって提供される過剰なリチウムは、バッテリ100内で輸送するために利用可能なリチウムイオン125の数を増加させ得、それによって、(従来のリチウムイオン及び/またはリチウム硫黄バッテリと比較して)バッテリ100の貯蔵容量、寿命、及び性能を増加させ得る。
【0095】
いくつかの態様では、リチウム層330は、第1の集合体312及び/または第2の集合体322との化学反応に基づいて、リチウム介在グラファイト(LiC6)及び/またはリチウム化グラファイトを生成し得る。交互のグラフェン層の間に介在されたリチウムは、バッテリ100の動作サイクル中の電気化学的勾配の相違に起因して、電極300内においてマイグレーションまたは輸送され得、それは、今度は、バッテリ100のエネルギー貯蔵及び電力供給を増加させ得る。
【0096】
図4は、いくつかの実施態様による、保護格子402を含む例示的なバッテリ400の一部の略図を示している。いくつかの実施態様では、保護格子402は、バッテリ200のアノード220上に配設され得る。他の実施態様では、保護格子402は、バッテリ200(または他の好適なバッテリ)のカソード210上に配設され得る。いくつかの態様では、保護格子402は、
図2の保護格子280の一例であり得る。保護格子402は、
図1のバッテリ100及び/または
図2のバッテリ200と同様の方法で、多くの構成要素(例えば、アノード、カソード、関連する集電体、炭素質材料、電解質、及びセパレータ)とともに機能し得る。
【0097】
保護格子402は、互いに化学反応して(例えば、
図6及び
図8に示されるように)3D格子構造を生成することができる、三官能性エポキシ化合物及びジアミンオリゴマー系化合物を含み得る。いくつかの態様では、保護格子402は、ポリ硫化物内に存在するリチウムと化学結合することができる窒素原子及び酸素原子を提供することによって、バッテリ400内のポリ硫化物のマイグレーションを防止し得、それによって、電解質130を通るポリ硫化物のマイグレーションを妨げる。結果として、リチウムイオン125は、
図1のアノード120及びカソード110からより自由に輸送され得、それによって、バッテリ性能の尺度を増加させる。
【0098】
カソード110の周期的な使用は、カソード110中に少なくとも部分的に延在する亀裂404の形成を引き起こし得る。一実施態様では、保護格子402は、亀裂404全体にわたって分散し得、それによって、周期的な使用中にカソード110内でのポリ硫化物の保持によって引き起こされる、カソード110の体積膨張中に破裂するカソード110の感受性を低減する。一実施態様では、
図4の保護格子402は、二官能性またはより高次の官能性のエポキシ化合物と、アミンまたはアミド化合物との間の化学反応に基づく架橋された3D構造を有し得る。例えば、二官能性またはより高次の官能性のエポキシ化合物は、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTE)、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、またはトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレートであり得、二官能性またはより高次の官能性のアミン化合物は、ジヒドラジド硫黄酸化物(DHSO)、またはポリエーテルアミンのうちの1つであり得、例えば、主鎖内のオキシプロピレン単位の繰り返しを特徴とするJEFFAMINE(登録商標)D-230であり得る。
【0099】
様々な実施態様では、それらの化合物を組み合わせて、任意の数の量、総量、比率、及び/または組成物で互いに反応させて、バッテリ400の動作中に生成されたポリ硫化物との結合に関連する異なる性能能力を達成し得る。例えば、一実施態様では、113mgのTMPTE、及び134mgのJEFFAMINE(登録商標)D-230ポリエーテルアミンをともに混合し、1mL~10mLのテトラヒドロフラン(THF)または任意の他の溶媒で希釈し得る。追加の量のTMPTE及び/またはJEFFAMINEをともに混合し、THFまたは任意の他の溶媒中で、134mgのJEFFAMINE(登録商標)D-230ポリエーテルアミン毎に113mgのTMPTEの例示的な比率で希釈し得る。この実施態様について、概念実証(POC)データは、
図4の保護格子402が約2.6重量%の、
図1のカソード110または
図2のカソード210の画定された重量を有することを示している。他の実施態様では、保護格子402は、約2重量%~21重量%のカソード110及び/またはカソード210の重量を有し得、ここで、カソード110及び/またはカソード210のインピーダンスの増加は、保護格子402について、約10重量%以上の重量レベルにおいて予想され得る。
【0100】
様々な実施態様では、保護格子402は、-NH2基及びエポキシ基のモル及び/またはモル濃度比に基づいて製造され得、二官能性またはより高次の官能性のエポキシと、アミンまたはアミド化合物との間の様々な形態の架橋にさらに適応し得る。いくつかの態様では、そのような形態の架橋は、例えば、1つの-NH2基が2つのエポキシ基と化学結合され、1つのエポキシ基のみと化学結合する1つの-NH2基を含む構成にさらに拡張し得る、完全に架橋された段階を含み得る。またさらに、1つ以上の実施態様では、過剰量(本明細書に提示された比率を上回る)の-NH2基を含む混合物を調製して、保護格子402に追加のポリ硫化物結合能力を提供し得る。
【0101】
いくつかの他の実施態様では、保護格子402は、201gのTMPTEを、109g~283gのJEFFAMINE(登録商標)D-230ポリエーテルアミンと混合することによって調製され得る。次いで、結果として得られた混合物を、1L~20Lの選択された溶媒(THFなど)で希釈し得る。結果として得られた希釈溶液を、カソード110上に堆積し、及び/またはそれ以外の場合では配設して、1重量%~10重量%の架橋剤含有率を達成し得る。追加のTMPTE及び/またはJEFFAMINEを一緒に混合し、THFまたは別の好適な溶媒中で、109g~283gのJEFFAMINE(登録商標)D-230ポリエーテルアミン毎に201gのTMPTEの例示的な比率で希釈され得る。
【0102】
さらに他の実施態様では、保護格子402は、201gのTMPTEを74g~278gのDHSOと混合することによって調製され得る。次いで、結果として得られた混合物を、1L~20Lの選択された溶媒(THFなど)で希釈し得る。結果として得られた希釈溶液を、カソード110上に堆積し、及び/またはそれ以外の場合では配設して、1重量%~10重量%の架橋剤含有率を達成し得る。追加のTMPTE及び/またはJEFFAMINEを一緒に混合し、THFまたは別の好適な溶媒中で、201g~278gのJEFFAMINE(登録商標)D-230ポリエーテルアミン毎に201gのTMPTEの例示的な比率で希釈され得る。
【0103】
一実施態様では、二官能性またはより高次の官能性のエポキシ化合物は、二官能性またはより高次の官能性アミン化合物と化学反応して、3D架橋形態の保護格子402を生成し得、それは、官能性エポキシ化合物及びアミン含有分子の両方を含み得る。いくつかの態様では、保護格子402は、
図1のカソード110または
図2のカソード210上に堆積されたときに、約1nm~5μmの厚さを有し得る。
【0104】
いくつかの実施態様では、保護格子402は、カソード110またはカソード210の構造的な完全性を増加させ得、表面粗さを低減し得、カソード内のポリ硫化物を保持し得る。例えば、一実施態様では、保護格子402は、カソードの露出した表面上のシースとして機能し、かつポリ硫化物と結合して、それらのマイグレーション、及び電解質130への拡散を予防し得る。このようにして、本明細書に開示された主題の態様は、ポリ硫化物シャトル効果を抑制することによって、バッテリ容量減衰を防止(または少なくとも低減)し得る。いくつかの態様では、保護格子402はまた、
図4のカソード内に形成された亀裂404を充填して、カソードコーティング材の完全性を改善し得る。様々な実施態様では、保護格子402は、溶媒の存在下でのドロップキャスティングプロセスによって調製され得、結果として得られた溶液は、カソード110の亀裂404内に浸透し、カソード110内のポリ硫化物と結合して、電解質130全体にわたるそれらのマイグレーション及び/または拡散を防止することができる。
【0105】
様々な実施態様では、保護格子402は、動作バッテリサイクル中に生成されたポリ硫化物中のリチウムと化学結合することができる窒素原子及び/または酸素原子を提供し得る。一例では、ポリ硫化物は、例えば、DHSOによって提供される利用可能な窒素原子と結合し得る。別の例では、ポリ硫化物は、例えば、DHSOによって提供される利用可能な酸素原子と結合し得る。さらに別の例では、ポリ硫化物は、他の利用可能な酸素原子と結合し得る。
【0106】
いくつかの他の実施態様では、上述したレシピは、TMPTEを、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル910及び/またはトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレートに置き換えることによって、変更することができる。様々な実施態様では、ジアミンオリゴマー系化合物は、通常、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、または混合PO/EO構造のいずれかに基づくJEFFAMINE(登録商標)D-230、またはポリエーテル骨格を含有する他のポリエーテルアミン、例えば、JEFFAMINE(登録商標)D-400、JEFFAMINE(登録商標)T-403であり得る(または含み得る)。保護格子402はまた、様々な濃度レベルの不活性分子、例えば、様々な長さのポリエチレングリコール鎖を含み得、これは、保護格子の機械的特性、ポリ硫化物中に存在するリチウムに対する様々な原子の化学結合を微調整することを可能にし得る。
【0107】
図5は、いくつかの実施態様による、フッ化錫(SnF
2)層を含むアノード構造500の略図を示している。具体的には、この略図は、第1の領域Aに関連付けられた構成要素の全てが第2の領域Bにおける同一の対応物を有する、アノード構造500の切断概略図を描写しており、ここで、第1及び第2の領域A及びBは、集電体520の周りで反対の配向を有する。このように、第1の領域Aの構成要素を参照した以下の説明は、第2の領域Bの構成要素と等しく適用可能である。いくつかの態様では、アノード502は、
図1のアノード120、及び/または
図2のアノード220の一例であり得る。
【0108】
考察したように、
図1のバッテリ100及び
図2のバッテリ200などのリチウム硫黄バッテリは、カソードに予め詰め込まれた硫黄が動作前及び動作中に電解質中に急速に溶解し得るという点で、変換化学型電気化学セルとして動作する。リチウム化されたアノードによって提供され得、及び/または電解質中に広く行きわたっている可能性があるリチウムは、アノードから電解質を通ってカソードに輸送するのに好適なリチウムイオン(Li+)に解離する。
図1を参照して説明されるように、リチウムイオンの生成は、電子の対応する放出に関連付けられ、電子は、外部回路を介して流れて負荷に電力を供給することができる。しかしながら、リチウムがリチウムイオン及び電子に解離すると、リチウムイオンのうちのいくつかが、カソードで生成されたポリ硫化物と望ましくない反応をする可能性があり、したがって、出力電流または電圧を発生させるのにもはや利用可能ではない可能性がある。ポリ硫化物によるこのリチウムイオンの消費は、ホストセルまたはバッテリの全体的な容量を低減させ、また、セル故障をもたらし得るアノードの腐食も促進し得る。
【0109】
いくつかの実施態様では、保護層516は、セルの組み立てまたは形成中にアノード502の化学反応性を低減させ得る、パッシベーションコーティング材として設けられ得る。いくつかの態様では、保護層516は、リチウムイオンとポリ硫化物との間の化学反応により引き起こされる腐食からアノード502を同時に保護しながら、リチウムイオンに対して透過性があり得る。他の実施態様では、保護層516は、天然のSEI及び/または従来の他のタイプのA-SEIを置き換えることができる、人工の固体電解質相間(A-SEI)であり得る。様々な実施態様では、保護層516は、アノード502上に配設された1つ以上のフィルムの上部にライナーとして堆積され得る。いくつかの態様では、保護層516は、バッテリの動作サイクルに関連付けられた電気化学反応中に形成する自己生成層であり得る。いくつかの態様では、保護層516は、5ミクロン未満である厚さを有し得る。他の態様では、保護層516は、0.1ミクロン~1.0ミクロンの厚さを有し得る。
【0110】
様々な実施態様では、アノード502上への保護層516の形成及び/または堆積を容易にし得る1つ以上の工学的添加剤が、バッテリの電解質内に提供され得る。他の実施態様では、工学的添加剤は、保護層516の活性成分であり得る。いくつかの態様では、保護層516は、アノードの第1の縁端部5181及び第2の縁端部5182からの望ましくないリチウム成長を防止することができる錫イオン及び/またはフッ化物イオンを提供することができる。
【0111】
勾配層514は、保護層516の真下のアノード502上に形成及び/または堆積され得る。様々な実施態様では、勾配層514は、アノード502内に含有されるか、またはそのアノードに関連付けられたリチウムが、アノード502からのリチウム含有樹枝状結晶の成長をもたらし得る、電解質540との望ましくない化学的相互作用及び/または反応に関与するのを防止することができる。勾配層514はまた、解離されたリチウムイオンとフッ化物イオンとの間の化学反応に基づいて、フッ化リチウムの生成も容易にし得る。考察されたように、アノード502内またはその近くにフッ化リチウムが存在すると、ポリ硫化物シャトル効果が減少し得る。例えば、フッ化リチウムの形成(例えば、利用可能なリチウムイオン及びフッ素イオンの形成)は、アノードの第1の縁端部5181及び/または第2の縁端部5182の全体にわたって均一に生じ得る。このようにして、アノード502の近くの電解質540中の高いリチウム濃度の局所化領域は、実質的に阻害される。結果として、アノードから長手方向に延在するリチウム含有樹枝状構造の形成に寄与するリチウム-リチウム結合は、それに対応して阻害され、それによって、リチウムイオンがアノード502から電解質に自由に通過する(例えば、バッテリ動作サイクル中に遭遇したときに)。いくつかの態様では、勾配層514全体にわたるリチウムの均一な分布は、バッテリ動作サイクル中のリチウムイオン束の均一性を増加させることができる。いくつかの態様では、勾配層514は、約5ナノメートル(nm)の厚さであり得る。
【0112】
1つ以上の実施態様では、勾配層514は、アノード502からのリチウム含有樹枝状成長を減少または防止するだけでなく、破裂することなく、ホストバッテリの動作サイクル中に、アノード502の膨張及び収縮する能力を増加させるように、ホストバッテリを構造的に強化し得る。いくつかの態様では、勾配層514は、段階のある濃度勾配(例えば、炭素、錫、及び/またはフッ素を含む1つ以上の形成材料及び/または成分)を有する3D構造を有し、これは、迅速なリチウムイオン輸送を容易にする。結果として、勾配層514は、全体的なバッテリ効率及び性能を著しく改善する。
【0113】
いくつかの実施態様では、勾配層514は、保護層516が成長または堆積され得る電気化学的に望ましい表面を提供することができる。例えば、いくつかの態様では、勾配層514は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ニッケル、亜鉛、クロム、バナジウム、チタン、及び/または他の金属を含む(ただし、これらに限定されない)化合物及び/または有機金属化合物を含み得る。他の態様では、勾配層514は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ニッケル、亜鉛、クロム、バナジウム、チタン、及び/または他の金属の酸化物、炭化物、及び/または窒化物を含み得る。
【0114】
いくつかの実施態様では、勾配層514は、薄片状グラフェン、少数層グラフェン(FLG)、カーボンナノオニオン(CNO)、グラフェンナノプレートレット、またはカーボンナノチューブ(CNT)(ただし、これらに限定されない)を含む炭素質材料を含み得る。他の実施態様では、勾配層514は、炭素、酸素、水素、錫、フッ素、及び/または他の好適な化学化合物、及び/またはフッ化錫及び1つ以上の炭素質材料に由来する分子を含み得る。勾配層514は、異なる濃度レベルでアノード502上に直接的または間接的に調製及び/または堆積され得る。例えば、勾配層514は、95重量%のフッ化錫の残部とともに5重量%の炭素質材料を含み得、これは、フッ化錫からのフッ素原子及び/またはフッ化物イオンの相対的に均一な解離をもたらし得る。
【0115】
他の好適な比率としては、95%のフッ化錫を伴う5%の炭素質材料、90%のフッ化錫を伴う10%の炭素質材料、85%のフッ化錫を伴う15%の炭素質材料、80%のフッ化錫を伴う20%の炭素質材料、75%のフッ化錫を伴う25%の炭素質材料、70%のフッ化錫を伴う30%の炭素質材料、65%のフッ化錫を伴う35%の炭素質材料、60%のフッ化錫を伴う40%の炭素質材料、55%のフッ化錫を伴う45%の炭素質材料、50%のフッ化錫を伴う50%の炭素質材料、45%のフッ化錫を伴う55%の炭素質材料、45%のフッ化錫を伴う55%の炭素質材料、40%のフッ化錫を伴う60%の炭素質材料、35%のフッ化錫を伴う65%の炭素質材料、30%のフッ化錫を伴う70%の炭素質材料、25%のフッ化錫を伴う75%の炭素質材料、20%のフッ化錫を伴う80%の炭素質材料、15%のフッ化錫を伴う85%の炭素質材料、10%のフッ化錫を伴う90%の炭素質材料、5%のフッ化錫を伴う95%の炭素質材料が挙げられる。次いで、以下でさらに説明されるように、フッ素原子及び/またはフッ化物イオンは、リチウムイオンと均一に反応及び結合して、フッ化リチウムを形成し得る。
【0116】
いくつかの実施態様では、アノード502とカソード(
図5には図示せず)との間を循環するリチウムイオンは、勾配層514内に錫リチウム合金領域512を生成し得る。いくつかの態様では、ホストバッテリの動作サイクルは、錫リチウム合金領域512内にフッ化リチウムの均一な分散をもたらし得る。フッ化リチウムの均一な分散は、フッ化錫層510(ならびに勾配層514及び/または保護層中に分散した可能性がある追加のフッ化錫)内のフッ化錫(II)(SnF
2)の少なくともいくつかの脱フッ素反応を容易にし得る。脱フッ素反応によって利用可能になったフッ素原子及び/またはフッ化物イオンは、アノード502内またはその近くに存在するリチウムイオンのうちの少なくともいくつかと化学結合して、フッ化リチウム(LiF)を作り出し得、それに応じて、リチウムイオンのうちの少なくともいくつかが互いに結合し、かつアノード502からのリチウム樹枝状成長を作り出すことを防止し得る。
【0117】
例えば、フッ化錫の中に存在するフッ素原子及び/またはフッ化物イオンのうちの少なくとも一部分は、保護層516から解離し、1つ以上の化学反応を介して錫イオン(Sn2+)及びフッ素イオン(2F-)を生成し得る。保護層516から解離したフッ素原子及び/またはフッ化物イオンは、電解質540内に存在し、及び/または保護層516もしくは勾配層514の全体にわたって分散されたリチウムイオンのうちの少なくともいくつかに化学結合し得る。いくつかの態様では、解離したフッ素原子は、錫リチウム合金領域512内にLi-F結合またはLi-F化合物を形成し得る。他の態様では、解離したフッ素原子は、勾配層514内にフッ化錫層510を形成し得る。
【0118】
追加的に、一実施態様では、脱フッ化錫フッ化物の少なくとも一部は、勾配層514全体にわたって均一に分散して、フッ化リチウム(LiF)結晶を生成し得る。フッ化リチウム結晶は、電気絶縁体として機能し得、電子が、アノード502から、アノード502の第1の縁端部5181及び/または第2の縁端部5182を介して、電解質540中に流れるのを防止し得る。
【0119】
様々な実施態様では、勾配層514は、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、または物理的気相堆積(PVD)のうちの1つ以上によって、アノード502上に堆積され得る。例えば、ALDを使用して、例えば、高圧接合プロセス中に電解質540と少なくとも部分的に反応するALDフィルムなどの保護フィルムをアノード502上に堆積し得る。したがって、ALDフィルムを使用して、リチウム移動のために利用可能な原子平面を使用して、保護層516または勾配層514を生成し得る。そのようなリチウム移動は、少数層グラフェン(FLG)またはグラファイトについて観察したものと原理的に同様であり得、FLGまたはグラファイト中の交互構造のグラフェン層は、酸化チタンリチウム(LTO)、リン酸鉄リチウム(PO3)(LFP)として含まれる様々な形態のリチウムイオンを介在する。介在されたリチウム、例えば、LTO及び/またはLFPについて説明された形態は、配向されて、リチウム原子及び/またはリチウムイオンの迅速な輸送及び/または拡散を容易にし得、これは、前述されたように、(例えば、フッ化錫層510及び/または他所における)フッ化リチウムの形成及び/または合成を促進し得る。介在されたリチウムの追加の形態、例えば、ペロブスカイトチタン酸リチウムランタン(LLTO)はまた、アノード502内にリチウムを貯蔵するようにも機能し得る。
【0120】
いくつかの実施態様では、勾配層514は、炭素及び/または炭素質材料の様々な異なるタイプ及び/または形態を含み得、各々は、電解質540及び/またはアノード502内に存在する汚染物質(ポリ硫化物など)との、炭素の反応性を調整するように選択または構成することができる1つ以上の物理的属性を有する。いくつかの態様では、選択可能な物理的属性には、多孔性、表面積、表面官能化、または導電性が含まれ得る(ただし、これらに限定されない)。追加的に、勾配層514は、炭素質材料の1つ以上の物理的属性を調整して、炭素質材料によって供給される炭素と、電解質540及び/またはアノード502内に存在するポリ硫化物との所望の炭素の反応性を達成するために使用することができる、結合剤または他の添加剤を含み得る。
【0121】
一実施態様では、勾配層514内の炭素質材料は、不要な汚染物質を捕捉することができ、それによって、汚染物質がアノード502の露出した表面で利用可能なリチウムと化学反応することを防止することができる。代わりに、不要な汚染物質(例えば、ポリ硫化物)は、勾配層514内の炭素質材料の様々な露出した表面と(例えば、炭素-リチウム相互作用を介して)化学反応し得る。いくつかの実施態様では、勾配層514内の炭素質材料は、利用可能なリチウムに凝集し得る。炭素質材料とリチウムイオンとの間の凝集度は、勾配層514の調製中に誘発される化学反応を介して選択または修正され得る。
【0122】
いくつかの実施態様では、様々な炭素同素体が、勾配層514内に(例えば、錫リチウム合金領域512及び/またはフッ化錫層510の1つ以上の部分に)組み込まれ得る。これらの炭素同素体は、1つ以上の反応物で官能化され得、勾配層514及び電解質540内のカーボンナノダイヤモンドの界面においてシーラント層及び/または領域を形成するために使用され得る。いくつかの態様では、カーボンナノダイヤモンドは、アノード502及び/または勾配層514の機械的堅牢性を増加させることができる。他の態様では、カーボンナノダイヤモンドはまた、アノード502の外側にあるバッテリの画定領域内にポリ硫化物を保持する方法で、電解質540中に存在するポリ硫化物を微小に閉じ込め及び/または結合することによって、ポリ硫化物シャトル効果を低減するために使用することができる、露出した炭素質表面を提供することもできる。
【0123】
代替的に、他の実施態様では、勾配層514内のカーボンナノダイヤモンドは、特定のLA寸法(例えば、sp2混成軌道炭素)、還元された酸化グラフェン(rGO)、及び/またはグラフェンを有する表面及び/または領域を含む、炭素及び/または炭素質材料で置き換えることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示された炭素質材料をバッテリ内で使用することは、炭素積層化及び勾配層514内の層形成を増加させることができる。剥離及び酸化された炭素質材料はまた、(剥離及び酸化されていない炭素質材料と比較して)勾配層514内により均一な層状構造をもたらし得る。いくつかの態様では、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBA)及び/またはジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒を、本明細書に開示された炭素質材料に適用して、勾配層514内の露出した炭素質表面の湿潤を増加させ得る。
【0124】
いくつかの実施態様では、勾配層514を形成するため使用されるスラリーをドープして、勾配層514内の炭素質材料の結晶構造を改善するか、または別様に影響を与え得る。例えば、特定のドーパントの添加は、特定の対応する方法で、炭素質材料の結晶構造に影響を与えることができ、(例えば、炭素質材料内の露出した炭素原子へのグラフト化を介して)勾配層514内に官能基を付加し得る。
【0125】
いくつかの実施態様では、フッ素含有官能基またはシリコン含有官能基のうちの1つ以上で官能化された露出した表面を有する炭素質材料が、勾配層514内に含まれ得る。他の実施態様では、フッ素含有官能基またはシリコン含有官能基のうちの1つ以上で官能化された露出した表面を有する炭素質材料が、勾配層514の下に堆積されて、勾配層514とアノード502との間の界面上に安定したSEIを形成し得る。一実施態様では、安定したSEIは、保護層516を置き換え得る。いくつかの実施態様では、勾配層514は、リチウム及び炭素相間を有する他の技術を使用して、アノード502上にスラリーキャスト及び/または堆積され得、これらのいずれかは、シリコン及び/または窒素で官能化されて、アノード502の露出した表面に向かうポリ硫化物の拡散及びマイグレーションを阻害し得る。追加的に、特定のポリマー及び/または架橋剤を勾配層514内に組み込んで、勾配層514を機械的に強化するか、勾配層514を横断するリチウムイオン輸送を改善するか、または勾配層514を横断するリチウムイオン流束の均一性を増加させることができる。勾配層514内に組み込むのに好適な例示的なポリマー及び/またはポリマー材料は、ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(エチレンイミン)を含み得る。勾配層514内に組み込むのに好適な例示的な架橋剤には、無機リンカー(例えば、ホウ酸塩、アルミ酸塩、ケイ酸塩)、多官能性有機分子(例えば、ジアミン、ジオール)、ポリ尿素、または高分子量(MW)(例えば、>10,000ダルトン)カルボキシルメチルセルロース(CMC)が含まれ得る。
【0126】
勾配層514を生成するための様々な製造方法が使用され得る。一実施態様では、勾配層514の堆積及び/または形成の前に、アノード502と電解質540との間の界面の直接コーティングは、担体(例えば、溶媒、結合剤、ポリマー)に溶解した炭素質材料及び他の化学物質の分散を用いて行われ得る。別の実施態様では、勾配層514の堆積は、別個の動作として行われ得るか、またはアノード502上にキャストすることができるスラリー中に、様々な他の活性成分(例えば、金属、炭素質材料、フッ化錫など)が添加され得る。代替的に、別の実施態様では、保護層516は、カレンダロール積層プロセスによって、アノード502上に直接転写され得る。保護層516及び/または勾配層514はまた、部分的に硬化されるリチウムイオン導電性エポキシを組み込んで、例えば、カレンダロール積層プロセス中にリチウムとの密着力をより良く増加させ得る。
【0127】
一実施態様では、炭素包含層構造(
図5には図示せず)が、勾配層514の置き換えとして、アノード502上に配設され得る。この炭素包含層構造は、リチウム移動のために利用可能な原子平面を含み得、バッテリの様々な部分におけるフッ化リチウムの形成を誘導することができる方法で、保護層516全体にわたって、電解質540によって提供されたリチウムイオンを均一に輸送することができる。様々な実施態様では、炭素包含層構造は、少数層グラフェン(FLG)またはグラファイトの1つ以上の配置を含み得、及び/またはリチウムを介在して、酸化錫リチウム(LTO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、ペロブスカイトチタン酸リチウムランタン(LLTO)を含む1つ以上の反応生成物を生成することができる。
【0128】
いくつかの実施態様では、フッ化錫層510は、保護層516、勾配層514、またはアノード502の銅包含表面及び/または領域の腐食を含む、腐食に対する保護層として機能し得る。いくつかの態様では、フッ化錫層510はまた、リチウム堆積のために好適な均一な種層を提供することもでき、それによって、樹枝状結晶の形成を阻害することができる。追加的に、いくつかの実施態様では、フッ化錫層510は、1つ以上のリチウムイオン介在化合物を含み得、任意の1つ以上は、低電圧ペナルティを有する。好適なリチウムイオン介在化合物には、グラファイト炭素(例えば、グラファイト、グラフェン、還元されたグラフェン酸化物(rGO)を含まれ得る。一実施態様では、アノード502の製造中に、リチウムイオンは、フッ化錫層510内の露出した炭素質表面上にめっきされる前に介在する傾向があり得る。このようにして、フッ化錫層510は、リチウムめっき及び/または電気めっき操作の開始前に、種層として容易に機能するための均一なLi分布を有するであろう。
【0129】
一実施態様では、1つ以上の共形的なコーティング材が、アノード502の一部の上に適用され得、結果として得られた共形的なコーティング材は、アノード502の第1の縁端部5181及び/または第2の縁端部5182に接触及び適合する。いくつかの態様では、共形的なコーティング材は、第1のスペーサ縁端部保護領域5301及び第2のスペーサ縁端部保護領域5302として開始し得、これらのスペーサ縁端部保護領域は、保護層516、錫リチウム合金領域512、及び/またはフッ化錫層510のうちの1つ以上と反応するか、または別様にはそれらを組み合わせて、アノード502内のリチウムと、電解質中に懸濁された様々な物質、例えば、銅(Cu)との間の表面及び/または界面を少なくとも部分的に封止及び保護する共形的なコーティング材544を形成する。いくつかの態様では、共形的なコーティング材544内に存在するフッ化錫からのフッ素原子の解離は、リチウム樹枝状結晶を形成または成長させるのではなく、アノード502内のリチウムと反応して、フッ化リチウムを形成し得る。このようにして、共形的なコーティング材544は、アノード502からのリチウム樹枝状結晶の形成または成長を減少させ得る。
【0130】
共形的なコーティング材544は、任意の数の異なる厚さで、アノード502上に堆積または配設され得る。いくつかの態様では、共形的なコーティング材544の厚さは、5μm未満であり得る。他の態様では、共形的なコーティング材544の厚さは、2μm未満であり得る。いくつかの他の態様では、共形的なコーティング材544の厚さは、1μm未満であり得る。これらの厚さレベルは、バッテリサイクル中にアノード502に向かうポリ硫化物のマイグレーションを妨げることができ、それによって、リチウムイオンの少なくともいくつかがポリ硫化物と反応するのを防止する。ポリ硫化物と反応しないリチウムイオンは、バッテリの放電サイクル中にアノードからカソードに輸送するために利用可能である。
【0131】
共形的なコーティング材544(ならびに保護層516及び勾配層514)は、アノード502の第1の縁端部518
1及び/または第2の縁端部518
2に向かってリチウムイオン束を固有に調整することができ、それによって、アノード502の腐食を防止することができる。そのような調整は、ポリシリコン(ポリSi)ゲートの製造中に使用されるゲートスペーサと同様の方法で機能し得る。具体的には、ゲートスペーサまたはゲート側壁構成体を使用して、集積回路(IC)の製造中にポリシリコンゲートを保護し、かつ機械的に支持し得る。同様に、
図5のアノード502のための共形的なコーティング材544によって提供される縁端部保護は、アノード502の第1の縁端部518
1及び/または第2の縁端部518
2に向かうリチウムイオン束を調整し、それによって、アノード502の腐食を防止する。アノード502のための共形的なコーティング材544によって提供されるこのタイプの縁端部保護は、円筒形セル、積層形セル、及び/または同様の他のもの(ただし、これらに限定されない)などの他のバッテリ、及び/または電気セルフォーマット及び/または構成に等しく適用し得、様々な構成体は、これらの設計の各々のパラメータ内に適合するように特別に設計される。
【0132】
いくつかの実施態様では、共形的なコーティング材544、保護層516、及び/またはアノード502上の勾配層514の製造及び/または堆積は、アノード502が組み込まれているバッテリまたはセル構成のタイプ、例えば、パウチ形セル及び/またはプリズム形セルと比較した円筒形セルに依存し得る。一実施態様では、円筒形セルについて、金属アノードは、電気活性材料、典型的には、金属リチウム、及び/またはリチウム含有合金、例えば、リチウムを含むグラファイト及び/または他の炭素質複合材、ならびに任意の単独一様材料もしくは多層シート材料から構成され得る。一例では、
図5の例に描写されているように、アノード502として使用される固体金属リチウム箔は、集電体520として使用される銅基材に取り付けられて、電子がタブ546を介して外部負荷に移動することを容易にし得る。他の実施態様では、バッテリ500は、集電体520のないアノード502を含み得、そこでは、アノード502内に含有された炭素質材料は、回路に結合された導電性媒体を提供し得る。
【0133】
いくつかの実施態様では、アノード構造500は、心棒の周りを巻くことによって、電気化学セル及び/またはバッテリに組み込まれ得る。円筒形セルのレイアウトは、典型的には、アノード構造500などの両面アノードを使用する。いくつかの実施態様では、アノード構造500を使用する円筒形セル構造は、共形的なコーティング材544を使用して、アノード502の第1の縁端部5181及び/または第2の縁端部5182を保護し得る。共形的なコーティング材544によって提供される均一な保護は、本明細書では「縁端部保護」と称され得る。一実施態様では、この縁端部保護は、保護層516のサイズ及び/または面積を拡張して、アノードの任意の幾何学的に誘発される縁端部効果、例えば、表面粗さを超えて重複することによって、アノード構造500を使用するセルに組み込まれ得る。
【0134】
他の実施態様では、アノード構造500は、パウチ形セル及び/またはプリズム形セル中に組み込まれ得る。一般に、パウチ形セル及び/またはプリズム形セルの2つの構成体が製造され得、以下を含み、すなわち、(1):ゼリーロール型セル(例えば、産業界では、リチウムポリマーバッテリとして見られる)であり、2つの心棒巻線電極が、前述したように、円筒形セルと同様の方法で製造され得、(2):積層プレート型セルであり、これは、予めキャスト及び/または予め積層されて調製されたアノードのシートから切断され得、例えば、アノード502の保護されていない縁端部(積層プレート型構成で調製された場合)が露出しており、セル内の腐食、高速イオン流束、及び露出に対して脆弱である。積層プレート型構成の共形的なコーティング材544は、アノード502を保護して、電解質540中のリチウムの過飽和を防止し得る。このようにして、共形的なコーティング材544は、バッテリの動作サイクル中に、アノード502上のリチウムめっきを制御することができる。
【0135】
いくつかの実施態様では、1つ以上の化学反応は、電解質540とアノード502との間で、セルアセンブリまたはセル休止期間中に発生し得る(溶媒分解及び/または添加剤反応を伴う)。これらの化学反応は、共形的なコーティング材544の生成を支援し得る。いくつかの態様では、(例えば、室温及び/または20℃に対して)上昇された温度及び/または低減された温度は、共形的なコーティング材544のリチウム誘導重合のための刺激として使用され得る。例えば、リチウム誘導重合は、1つ以上の触媒の存在下で、及び/またはリチウム金属及びその関連する化学反応性を誘発剤として使用することによって発生し得、その誘発剤は、アノード構造500及び/または共形的なコーティング材544のうちの任意の1つ以上の層内で成分種のフリーラジカルベースの重合を開始する。追加的に、正方向または逆方向のいずれかの電気バイアス下での電気化学反応を使用して、共形的なコーティング材544をアノード502上に製造及び/または堆積することができ、ならびに二次金属及び/または塩を添加剤として使用することができ、この添加剤は、分解して、電解質540に露出したアノード502内の第1の縁端部5181及び/または第2の縁端部5182の金属リチウム上に合金を形成することができる。例えば、好適な添加剤は、例えば、リチウムと共合金化するためか、またはアノード502の第1の縁端部5181及び/または第2の縁端部5182へのリチウム移動を低減するためのブロック層として使用されるために所望される、1つ以上の金属種を含有し得る。
【0136】
図6は、いくつかの実施態様による、
図5のアノード構造500の拡大部分600の概略図を示している。この拡大部分600は、
図5に示されるように、第1の縁端部518
1及び/または第2の縁端部518
2に対して直交する方向に、第1のスペーサ縁端部保護領域530
1及び第2のスペーサ縁端部保護領域530
2(
図6では、総称して、縁端部保護領域530と称される)の配置を例解している。結果として、縁端部保護領域530は、構造及び/または格子に組織化された炭素質材料610を含み得、リチウムイオンが縁端部保護領域530を横切ってアノード502から不必要に逃げ出すのをブロックし得る。このようにして、リチウムイオンの解離、流束、輸送、及び/または他の移動は、
図6の拡大部分600(ならびに、
図5のアノード構造500)全体にわたって効果的にチャネル化され得、それによって、最適なバッテリ動作サイクルをもたらす。いくつかの実施態様では、縁端部保護領域を生成するために使用される炭素質材料610には、少数層グラフェン(FLG)、多数層グラフェン(MLG)、グラファイト、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノオニオン(CNO)などが含まれ得る。炭素質材料610(例えば、
図8A、
図8B、
図9A、
図9B、
図10A、及び/または
図10Bに示される)は、様々な濃度レベルで合成されるか、自己核形成されるか、または他の方法でともに連結されて、縁端部保護領域530の完璧な調整能力を提供することができる。例えば、その密度、厚さ、及び/または組成物は、保護層516または勾配層514を超えるリチウムイオン透過を低減し、それに応じてリチウムイオン透過を促すように設計され得る。いくつかの実施態様では、縁端部保護領域530の厚さは、5μm未満であり得る。他の態様では、縁端部保護領域530の厚さは、2μm未満であり得る。いくつかの他の態様では、縁端部保護領域530の厚さは、1μm未満であり得る。いくつかの実施態様では、導電性添加剤640は、炭素質材料610、ならびに結合剤620に添加され得る。
【0137】
図7は、いくつかの実施態様による、ポリマーネットワーク710の略図を示している。いくつかの態様では、ポリマーネットワーク710は、
図2のポリマーネットワーク285の一例であり得る。ポリマーネットワーク710は、アノード702上に配設され得る。アノード702は、任意の数のアルカリ金属含有ナノ構造またはマイクロ構造を含む1つ以上の露出した表面を有するアルカリ金属層として形成され得る。アルカリ金属には、リチウム、ナトリウム、亜鉛、インジウム、及び/またはガリウム(ただし、これらに限定されない)が含まれ得る。アノード702は、バッテリの動作サイクル中にアルカリイオンを放出し得る。
【0138】
炭素質材料の層714は、フッ素化ポリマー鎖でグラフトされて、アノード702の1つ以上の露出した表面上に堆積され得る。グラフト化は、炭素質材料を、1つ以上のラジカル開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)またはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いて活性化することと、その後のモノマー分子と反応させることと、に基づき得る(例えば、それらによって開始され得る)。ポリマーネットワーク710は、互いにともに架橋されたフッ素化ポリマー鎖、及び層714の炭素質材料に基づき得、このため、層714は、ポリマーネットワーク710の生成中に消費される。いくつかの実施態様では、ポリマーネットワーク710は、約0.001μm~5μmの厚さを有し得、約0.001重量%~2重量%のフッ素化ポリマー鎖を含み得る。いくつかの他の実施態様では、ポリマーネットワーク710は、約5重量%~100重量%のフッ素化ポリマー鎖でグラフトされた複数の炭素質材料と、フッ素化ポリマー、もしくは1つ以上の非フッ素化ポリマー、もしくは1つ以上の架橋可能なモノマー、またはそれらの組み合わせの残部と、を含み得る。一実施態様では、フッ素化ポリマー鎖でグラフトされた炭素質材料は、5重量%~50重量%のフッ素化ポリマー鎖と、残部の炭素質材料と、を含み得る。
【0139】
バッテリサイクル中、ポリマーネットワーク710内の炭素-フッ素結合は、新たに形成したリチウム金属と化学結合して、炭素-リチウム結合(C-Li)に変換し得る。これらのC-Li結合は、今度は、ウルツ反応750を介してポリマーネットワーク710内の炭素-フッ素結合と反応して、新たに形成されたC-C結合によってポリマーネットワークをさらに架橋し、アルカリ金属含有フッ化物(フッ化リチウム(LiF)など)を形成し得る。アルカリ金属含有フッ化物の均一な形成につながる追加のポリマーネットワーク架橋は、それによって、アノード702に関連付けられたアルカリ金属樹枝状結晶の形成740を抑制し、それによって、バッテリ性能及び寿命を改善し得る。一実施態様では、層714中の炭素質材料の1つ以上の露出したグラフェン表面への、フッ素化m/アクリレート(FMA)のグラフト化は、例えば、グラフェングラフトポリFMAなどの形成につながる有機溶液中で行われ得る。露出したグラフェン表面上の炭素-フッ素結合の組み込みにより、ウルツ反応750が、炭素-フッ素結合と、アノード702によって提供されたアルカリ金属(例えば、リチウム)の金属表面との間で生じることが可能になり得る。このようにして、ウルツ反応750の完了により、ポリマーネットワーク710の形成がもたらされ得る。いくつかの態様では、ポリマーネットワーク710は、ウルツ反応750の完了に従って密度勾配716を含み得る。この密度勾配716は、相互接続されたグラフェンの薄片を含み得、その現場で形成された1つ以上の金属フッ化物塩で注入され得る。追加的に、層の多孔性及び/または機械的特性は、各々が固有の及び/または別個の物理的構造を有する炭素の充填、及び/または官能化炭素の組み合わせによって調整され得る。
【0140】
いくつかの実施態様では、密度勾配716内の炭素質材料は、平坦なグラフェン、しわ状グラフェン、複数のカーボンナノチューブ(CNT)、または複数のカーボンナノオニオン(CNO)のうちの1つ以上を含み得る(例えば、
図8A及び/
図8Bに描写されているように、また、
図9A~9B及び
図10A~10Bの顕微鏡写真に示されるように)。一実施態様では、グラフェンナノプレートレットは、ポリマーネットワーク710全体にわたって分散され、かつポリマーネットワーク内で互いに隔離され得る。グラフェンナノプレートレットの分散は、1つ以上の異なる濃度レベルを含む。一実施態様では、グラフェンナノプレートレットの分散は、フッ素化ポリマー鎖のうちの少なくともいくつかで官能化された炭素質材料のうちの少なくともいくつかを含み得る。
【0141】
例えば、フッ素化ポリマー鎖には、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレート(DFHA)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(HDFDMA)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルメタクリレート(OFPMA)、テトラフルオロプロピルメタクリレート(TFPM)、3-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イルメタクリレート(HFAモノマー)、または2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン(PFSt)を含むビニル系モノマーを含む1種以上のアクリレートまたはメタクリレートモノマーが含まれ得る。
【0142】
いくつかの実施態様では、フッ素化ポリマー鎖は、炭素質材料の層の表面にグラフトされ得、それによって、ウルツ反応750を介して、アノードのアルカリ金属の1つ以上の表面と化学的に相互作用し得る。有機化学、有機金属化学、及び無機主族ポリマーでは、ウルツ反応は、カップリング反応であり、この反応によって、2つのハロゲン化アルキルが、乾燥エーテル溶液中でナトリウム金属(またはいくつかの他の金属)と反応して、高級アルカンを形成する。この反応において、ハロゲン化アルキルは、アルカリ金属、例えば、ナトリウム金属により乾燥エーテル(水分を含まない)溶液中で処理されて、高級アルカンを形成する。ウルツ反応のナトリウム中間生成物が高極性及び高反応性の炭素-ナトリウム金属結合である場合、これは、今度は、炭素-ハロゲン化合物結合と化学反応して、新たに形成されたC-C結合及びナトリウムハロゲン化合物をもたらす。新しい炭素-炭素結合の形成により、偶数個の炭素原子を含有する高級アルカンの調製のために、ウルツ反応を使用することが可能になり、例えば、次式の通りである。
2R-X+2Na→R-R+2Na+X- (式1)
【0143】
その他の金属もまた、特に銀、亜鉛、鉄、活性化銅、インジウム、及びマンガンと塩化銅との混合物が、ウルツ結合に影響を与えるために使用されている。ハロゲン化アリールを扱う関連する反応は、ウルツ-フィッティッヒ反応と呼ばれる。これは、フリーラジカル中間体の形成、及びその後の不均化反応によって、アルケンが生成されることを説明することができる。ウルツ反応750は、アルケン生成物を生成する副反応を可能にするフリーラジカルメカニズムを通じて生じる。いくつかの実施態様では、上述したウルツ反応に関連付けられる化学的相互作用は、アルカリ金属フッ化物、例えば、フッ化リチウムを形成し得る。
【0144】
一実施態様では、ポリマーネットワーク710は、アノード702と接触する界面層718を含み得る。保護層720は、界面層718の上部に配設され得、それは、アノード702とポリマーネットワーク710との間の界面におけるウルツ反応750に基づき得る。界面層718は、(例えば、フッ素化ポリマーなどの)相対的に高い架橋密度、高い金属フッ化物濃度、及び相対的に低い炭素-フッ素結合濃度を有し得る。界面層718とは対照的に、保護層720は、相対的に低い架橋密度、低い金属フッ化物濃度、及び高い炭素-フッ素結合濃度を有し得る。
【0145】
いくつかの実施態様において、界面層718は、メタクリレート(MA)、アクリレート、ビニル官能基、またはエポキシ官能基とアミン官能基との組み合わせなど、架橋可能なモノマーを含み得る。一実施態様では、保護層720は、密度勾配716によって特徴付けられ得る。このようにして、密度勾配716は、保護層720の1つ以上の自己回復特性に関連付けられ得、及び/またはポリマーネットワーク710を強化し得る。いくつかの実施態様では、保護層720は、バッテリサイクル中にアノード702からのアルカリ金属樹枝状結晶の形成740をさらに抑制することができる。
【0146】
動作上、界面層718は、アノード702の長さにわたる界面において金属フッ化物、例えば、フッ化リチウムを均一に生成することによって、アノード702に関連するアルカリ金属樹枝状結晶の形成740を抑制することができる。この均一な金属フッ化物の生成は、例えば、金属フッ化物への変換を介して、樹枝状結晶の表面の分解を引き起こして、最終的にアルカリ金属樹枝状結晶の形成740を抑制する。追加的に、残りの樹枝状結晶上でのフッ素化ポリマー鎖の架橋は、アルカリ金属樹枝状結晶の形成740をさらに抑制することができる。いくつかの実施態様では、密度勾配716は、フッ素化ポリマー鎖間の架橋の程度を制御するように調整され得る。
【0147】
図8Aは、いくつかの実施態様による、勾配多孔性を有する例示的な炭素質粒子800の簡略化された断面図を示している。炭素質粒子800は、反応器内で合成されて、
図1のカソード110及び/またはアノード120、
図2のカソード210及び/またはアノード220、または
図3の電極300を生成するための制御方法で出力され得る。物質の組成物とも称され得る、炭素質粒子800はまた、内部で互いに入れ子になった複数の領域を含む。各領域は、少なくとも第1の多孔性領域811及び第2の多孔性領域812を含み得る。第1の多孔性領域811は、複数の第1の細孔801を含み得、第2の多孔性領域812は、複数の第2の細孔802を含み得る。いくつかの態様では、各領域は、第1の細孔801のうちの少なくともいくつかによって直近の隣接領域から分離され得る。第1の細孔801は、炭素質粒子800の第1の多孔性領域811全体にわたって分散され得、第2の細孔802は、炭素質粒子800の第2の多孔性領域812全体にわたって分散され得る。このようにして、第1の細孔801は、第1の細孔密度に関連付けられ得、第2の細孔802は、第1の細孔密度とは異なる第2の細孔密度に関連付けられ得る。いくつかの態様では、第1の細孔密度は、約0.0立方センチメートル(cc)/g~2.0cc/gであり得、第2の細孔密度は、約1.5~5.0cc/gであり得る。いくつかの態様では、第1の細孔801は、ポリ硫化物820を保持するように構成され得、第2の細孔802は、炭素質粒子800の出口経路を提供し得る。
【0148】
炭素質粒子800の群は、ともに連結されて、炭素質集合体(簡略のため、図示せず)を形成することができ、炭素質集合体の群は、ともに連結されて、炭素質凝集体(単純にするため、図示せず)を形成することができる。いくつかの実施態様では、第1の細孔801及び第2の細孔802は、炭素質粒子800のそれぞれの群によって形成された集合体全体にわたって分散され得る。いくつかの態様では、第1の多孔性領域811は、第2の多孔性領域812によって少なくとも部分的に封入され得、そのため、それぞれの凝集体は、第1の細孔801のうちのいくつか、及び/または第2の細孔802のうちのいくつかを含み得る。
【0149】
いくつかの実施態様では、炭素質粒子800は、20nm~150nmのおおよその範囲内の主要寸法「A」を有し得、炭素質粒子800の群によって形成された集合体は、20nm~10μmのおおよその範囲内の主要寸法を有し得、集合体の群によって形成された凝集体は、0.1μm~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有し得る。いくつかの態様では、第1の細孔801及び第2の細孔802のうちの少なくともいくつかは、1.3nm~32.3nmのおおよその範囲内の主要寸法を有する。一実施態様では、第1の細孔801の各々は、0nm~100nmのおおよその範囲内の主要寸法を有する。
【0150】
炭素質粒子800はまた、炭素質粒子800の周囲810に沿って分布する複数の変形可能な領域813も含み得る。炭素質粒子800は、1つ以上の他の炭素質粒子(周囲810など)との連結された境界に沿って電気を伝えることができる。炭素質粒子800はまた、ポリ硫化物820を第1の細孔801の内部、及び/または1つ以上のブロック領域822に閉じ込められ得、それによって、ポリ硫化物820のアノードへのマイグレーションを阻害し、リチウムイオンがホストバッテリのアノードからカソードに輸送され得る速度を増加させる。
【0151】
いくつかの実施態様では、炭素質粒子800は、10m2/g~3,000m2/gのおおよその範囲内の、露出した炭素表面の表面積を有し得る。他の実施態様では、炭素質粒子800は、いくつかの第1の細孔801及び/またはいくつかの第2の細孔802の内部に微小に閉じ込められた硫黄824を含む、複合表面積を有し得る。本明細書で使用される場合、ポリ硫化物820を微小に閉じ込める第1の細孔801及び/または第2の細孔802は、「機能的細孔」と称され得る。いくつかの態様では、炭素質粒子、炭素質粒子の対応する群によって形成された集合体、または集合体の対応する群によって形成された凝集体のうちの1つ以上は、硫黄824を核形成するように構成された1つ以上の露出した炭素表面を含み得る。複合表面積は、10m2/g~3,000m2/gのおおよその範囲内であり得、炭素質粒子800は、約1:5~10:1の硫黄対炭素重量比を有し得る。いくつかの態様では、炭素質粒子800は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力で、100S/m~20,000S/mのおおよその範囲内の導電率を有し得る。
【0152】
いくつかの実施態様では、炭素質粒子800は、炭素質粒子800の群をともに連結する結合剤として機能することができる、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及び/またはポリ酢酸ビニルのうちの1つ以上を含む、界面活性剤またはポリマーを含み得る。他の実施態様では、炭素質粒子800は、第1の細孔801または第2の細孔802のうちの少なくともいくつかの内部に配設されたゲル相電解質または固相電解質を含み得る。
【0153】
図8Bは、いくつかの実施態様による、トリゾーン粒子850の例の略図を示している。様々な実施態様では、トリゾーン粒子850は、
図8Aの炭素質粒子800の一例であり得る。トリゾーン粒子850は、第1のゾーン851、第2のゾーン852、及び第3のゾーン853などの(ただし、これらに限定されない)3つの別個のゾーンを含み得る。いくつかの態様では、ゾーン851~853の各々は、前出のゾーンを取り囲み、及び/または封入する。例えば、第1のゾーン851は、第2のゾーン852によって取り囲まれるか、または封入され得、第2のゾーン852は、第3のゾーン853によって取り囲まれるか、または封入され得る。第1のゾーン851は、トリゾーン粒子850の内部領域に対応し得、第2のゾーン852は、トリゾーン粒子850の中間遷移領域に対応し得、第3のゾーン853は、トリゾーン粒子850の外部領域に対応し得る。いくつかの態様では、トリゾーン粒子850は、1つ以上の隣接する非トリゾーン粒子及び/またはトリゾーン粒子850との接触に応答して変形する透過性のある殻855を含み得る。
【0154】
いくつかの実施態様では、第1のゾーン851は、相対的に低い密度、相対的に低い導電率、及び相対的に高い多孔性を有し得、第2のゾーン852は、中間密度、中間導電率、及び中間多孔性を有し得、第3のゾーン853は、相対的に高い密度、相対的に高い導電率、及び相対的に低い多孔性を有し得る。いくつかの態様では、第1のゾーン851は、約1.5g/cc~5.0g/ccの炭素質材料の密度を有し得、第2のゾーン852は、約0.5g/cc~3.0g/ccの炭素質材料の密度を有し得、第3のゾーン853は、約0.0~1.5g/ccの炭素質材料の密度を有し得る。他の態様では、第1のゾーン851は、約0~40nmの幅を有する細孔を含み得、第2のゾーン852は、約0~35nmの幅を有する細孔を含み得、第3のゾーン853は、約0~30nmの幅を有する細孔を含み得る。いくつかの他の実施態様では、第2のゾーン852は、トリゾーン粒子850について画定されない場合がある。一実施態様では、第1のゾーン851は、約0nm~100nmの主要寸法D1を有し得、第2のゾーン852は、約20nm~150nmの主要寸法D2を有し得、第3のゾーン853は、約200nmの主要寸法D3を有し得る。
【0155】
本開示の態様は、トリゾーン粒子850の固有のレイアウト、及び第1のゾーン851、第2のゾーン852、及び第3のゾーン853の相対的な寸法、多孔性、及び導電率を選択及び/または修正して、ポリ硫化物シャトル効果を最小化することと、ホストバッテリの比容量を最大化することとの間の所望のバランスを達成することができることを認識する。具体的には、いくつかの態様では、細孔のサイズ及び体積は、1つのゾーンから他のゾーンまでにおいて減少し得る。いくつかの実施態様では、トリゾーン粒子は、細孔サイズ及び細孔分布(例えば、細孔密度)の範囲を有する1つのゾーンから完全に構成され得る。
図8Bの例の場合、第1のゾーン851または第1の多孔性領域に関連付けられた細孔861は、相対的に大きな幅を有し、かつマクロ細孔として定義され得、第2のゾーン852または第2の多孔性領域に関連付けられた細孔862は、中間サイズの幅を有し、かつメソ細孔として定義され得、第3のゾーン853または第3の多孔性領域に関連付けられた細孔863は、相対的に小さい幅を有し、かつマイクロ細孔として定義され得る。
【0156】
トリゾーン粒子850の群は、ともに連結されて、集合体(簡略のため、図示せず)を形成し得、集合体の群は、ともに連結されて、凝集体(簡略のため、図示せず)を形成し得る。いくつかの実施態様では、複数のメソ細孔は、炭素質粒子800のそれぞれの群によって形成された集合体全体にわたって散在され得る。いくつかの態様では、第1の多孔性領域811は、それぞれの集合体が1つ以上のメソ細孔及び1つ以上のマクロ細孔を含み得るように、第2の多孔性領域812によって少なくとも部分的に封入され得る。一実施態様では、各メソ細孔は、3.3ナノメートル(nm)~19.3nmの主要寸法を有し得、各マクロ細孔は、0.1μm~1,000μmの主要寸法を有し得る。いくつかの事例では、トリゾーン粒子850は、互いに絡み合い、かつメソ細孔のうちの少なくともいくつかによって互いに分離された炭素断片を含み得る。
【0157】
いくつかの実施態様では、トリゾーン粒子850は、炭素質材料の群をともに連結する結合剤として機能することができる、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及び/またはポリ酢酸ビニルのうちの1つ以上を含む、界面活性剤またはポリマーを含み得る。他の実施態様では、トリゾーン粒子850は、細孔のうちの少なくともいくつかの内部に配設されたゲル相電解質または固相電解質を含み得る。
【0158】
いくつかの実施態様では、トリゾーン粒子850は、10m2/g~3,000m2/gのおおよその範囲内の、露出した炭素質表面の表面積、及び/または10m2/g~3,000m2/gのおおよその範囲内の複合表面積(細孔内に微小に閉じ込められた硫黄を含む)を有し得る。一実施態様では、多数のトリゾーン粒子850を含む物質の組成物は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力、及び約1:5~10:1の硫黄対炭素重量比で、100S/m~20,000S/mのおおよその範囲内の導電率を有し得る。
【0159】
図8Cは、いくつかの実施態様による、
図8Bのトリゾーン粒子850の領域の各々における平均細孔体積を表す例示的なステップ機能800Cを示している。説明されているように、トリゾーン粒子850全体にわたって分布する細孔は、異なるサイズ、体積、または分布を有し得る。いくつかの実施態様では、平均細孔体積は、トリゾーン粒子850の中心と、隣接するゾーンとの間の距離に基づいて減少し得、そのため、例えば、第1のゾーン851または第1の多孔性領域に関連付けられた細孔は、相対的に大きな体積または細孔サイズを有し、第2のゾーン852または第2の多孔性領域に関連付けられた細孔は、中間体積を有し、第3のゾーン853または第3の多孔性領域に関連付けられた細孔は、相対的に小さな体積を有する。内部領域は、周囲近くの領域よりも大きな細孔体積を有する。より大きな細孔体積を有する領域は、大きな硫黄負荷を提供するのに対して、より小さい細孔体積の外側領域は、セルサイクル中のポリ硫化物のマイグレーションを軽減する。
図8Cの例では、内側領域における平均細孔体積は、約3cc/gであり、最も外側の領域における平均細孔体積は、-0.5cc/gであり、中間領域における平均細孔体積は、0.5cc/g~3cc/gである。
【0160】
図8Dは、本明細書に説明される炭素質粒子の細孔体積対細孔幅の例示的な分布を描写するグラフ800Dを示している。グラフ800Dに描写されているように、相対的に大きな細孔体積に関連付けられた細孔は、例えば、細孔体積が減少するにつれて細孔幅が一般的に増加するように、相対的に小さい細孔幅を有し得る。いくつかの態様では、約1.0nm未満の細孔幅を有する細孔は、マイクロ細孔と称され得、約3~11nmの細孔幅を有する細孔は、メソ細孔と称され得、約24nmよりも大きい細孔幅を有する細孔は、マクロ細孔と称され得る。
【0161】
図9Aは、いくつかの実施態様による、複数の炭素質構造902の電子顕微鏡写真900を示している。いくつかの実施態様では、炭素質構造902の各々は、様々なモノリシック炭素成長及び/または層状化によって取り囲まれた実質的に中空のコア領域を有し得る。いくつかの態様では、モノリシック炭素成長及び/または層状化は、
図8A及び8Bを参照して説明されるモノリシック炭素成長及び/または層状化の例であり得る。いくつかの事例では、炭素質構造902は、様々なレベルの密度及び/または濃度で組織化されたいくつかの同心状の多層化フラーレン、及び/または同様の形をした炭素質構造を含み得る。例えば、炭素質構造902の各々の実際の最終的な形状、サイズ、及びグラフェン構成は、様々な製造プロセスに依存し得る。炭素質構造902は、いくつかの態様では、水溶性が乏しいことを示し得る。したがって、いくつかの実施態様では、非共有結合官能化を利用して、基礎となるカーボンナノ材料の真性的特性に影響を与えることなく、炭素質構造902の1つ以上の分散性特性を変更することができる。いくつかの態様では、基礎となるカーボンナノ材料は、sp
2カーボンナノ材料を形成し得る。いくつかの実施態様では、炭素質構造902の各々は、約20~500nmの直径を有し得る。様々な実施態様では、炭素質構造902の群は、ともに合体及び/または連結して、集合体904を形成することができる。追加的に、集合体904の群は、ともに合体及び/または連結して、凝集体906を形成することができる。いくつかの態様では、炭素質構造902、集合体904、及び/または凝集体906のうちの1つ以上を使用して、
図1のバッテリ100、
図2のバッテリ200、または
図3の電極300のアノード及び/またはカソードを形成することができる。
【0162】
図9Bは、いくつかの実施態様による、炭素質材料で形成された集合体の電子顕微鏡写真950を示している。いくつかの実施態様では、集合体960は、
図9Aの集合体904の1つの例であり得る。一実施態様では、外部炭素質殻型構造952は、他の炭素質殻型構造954によって提供される炭素とともに融合して、炭素質構造956を形成することができる。炭素質構造956の群は、互いに合体及び/または連結して、集合体1010を形成することができる。いくつかの態様では、炭素質構造956の各々のコア領域958は、例えば、
図8A及び/または
図8Bを参照して説明されているように、コア領域958が相互接続されたグラフェン構造の様々な定義された濃度レベルを含み得るという点で、調整可能であり得る。いくつかの実施態様では、炭素質構造956のいくつかは、外部炭素質殻型構造952において、またはその近くで、0.1g/cc~2.3g/ccの第1の濃度の相互接続された炭素を有し得る。炭素質構造956の各々は、コア領域1008に向かって内向きに延在するリチウムイオンを輸送するための細孔を有し得る。
【0163】
いくつかの実施態様では、炭素質構造956の各々の細孔は、約0.0nm~0.5nm、約0.0~0.1nm、約0.0~6.0nm、または約0.0~35nmの幅または寸法を有し得る。各炭素質構造956はまた、第1の濃度とは異なるコア領域958において、またはその近くで第2の濃度を有し得る。例えば、第2の濃度は、同心円状に配置されたいくつかの相対的に低い密度の炭素質領域を含み得る。一実施態様では、第2の濃度は、約0.0g/cc~1.0g/ccまたは約1.0g/cc~1.5g/ccにおいて、第1の濃度よりも低くあり得る。いくつかの態様では、第1の濃度と第2の濃度との間の関係は、それぞれの電極内に硫黄またはポリ硫化物を閉じ込めることと、リチウムイオンの輸送を最大化することとの間のバランスを達成するために使用され得る。例えば、硫黄及び/またはポリ硫化物は、第1の濃度を通って移動し得、リチウム硫黄バッテリの動作サイクル中に、第2の濃度内に少なくとも一時的に閉じ込められ得、及び/または第2の濃度全体にわたって散在し得る。
【0164】
いくつかの実施態様では、炭素質構造956のうちの少なくともいくつかは、モノリシック及び/または相互接続された成長として組織化され、かつ熱反応器内で生成されるCNO酸化物を含み得る。例えば、炭素質構造956は、以下の例示的なレシピに従って、コバルトナノ粒子で装飾され得、その製法については、コバルト(II)酢酸塩(C4H6CoO4)、すなわち酢酸のコバルト塩(多くの場合、四水化物Co(CH3CO2)2・4H2Oとして見出され、これは、Co(OAc)2・4H2Oとして略記され得る)は、40.40重量%の炭素(CNO形態の炭素を指す)に対応する約59.60重量%の比率で熱反応器に流入され得、その結果、コバルトでCNO酸化物上の活性部位の官能化をもたらし、それぞれ、15,000倍のレベルで、コバルト装飾されたCNOを示すものである。いくつかの実施態様では、炭素#29、及び/またはコバルト装飾されたCNOを生成するために使用される好適なガス混合物が、以下のステップを含み得る。
・0.75標準立方フィート/分(scfm)で30分間Arパージ;
・実行のために、0.25scfmに変更されたArパージ;
・温度増加:25℃~300℃を20分;及び
・温度増加:300℃~500℃を15分。
【0165】
図9A及び9Bを参照して説明される炭素質材料は、1つ以上のグラフェンの事例を含み得るか、または別様に1つ以上のグラフェンの事例から形成され得、このグラフェンは、ハニカム構造における3つの隣接格子に結合された各原子を有する炭素原子の単層を含み得る。この単層は、凝縮相の表面の内部またはその表面などにおいて、一次元に制限された離散的材料であり得る。例えば、グラフェンは、x平面及びy平面のみ(かつz平面ではない)の外向きに成長し得る。このようにして、グラフェンは、(複数の炭素-炭素結合などによって)同じ層内の隣接する原子に強く結合された各層の原子を有する1つまたはいくつかの層を含む、二次元(2D)材料であり得る。
【0166】
いくつかの実施態様では、グラフェンナノプレートレット(例えば、炭素質構造956の各々に含まれる形成構造)は、第1のグラフェン層、第2のグラフェン層、及び第3のグラフェン層などの、複数の例のグラフェンを含み得、これらは、全て垂直方向に互いの上部に積層されている。GNPと称され得る、グラフェンナノプレートレットの各々は、1nm~3nmの厚さを有し得、約100nm~100μmの範囲にわたる横方向寸法を有し得る。いくつかの実施態様では、グラフェンナノプレートレットは、ロールツーロール(R2R)生成によって、順次配置された複数のプラズマ溶射トーチによって生成され得る。いくつかの態様では、R2R生成は、別個の基材への2D材料(複数可)の移動を含む、巻かれたシートとして加工される連続基材上への堆積を含み得る。いくつかの事例では、R2R生成を使用して、
図3の電極300の第1の薄膜310及び/または第2の薄膜320を形成することができ、そのため、例えば、第1の薄膜310内の第1の集合体312の濃度レベルは、第2の薄膜320内の第2の集合体322の濃度レベルとは異なる。すなわち、R2Rプロセスで使用されるプラズマ溶射トーチは、異なる濃度レベルで炭素質材料を溶射し、特定の濃度レベルのグラフェンナノプレートレットを使用して第1の薄膜310及び/または第2の薄膜320を作り出すことができる。したがって、R2Rプロセスは、
図1のバッテリ100及び/または
図2のバッテリ200のための細かなレベルの調整能力を提供することができる。
【0167】
図10A及び10Bは、いくつかの実施態様による、二酸化炭素(CO
2)で処理された炭素質粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像1000及び1050をそれぞれ示している。
図10A及び10Bに示されている炭素質粒子は、1つ以上の事例のグラフェンを含むか、または別様に1つ以上の事例のグラフェンから形成され得、このグラフェンは、ハニカム構造内の3つの隣接格子に結合した各原子を有する炭素原子の単一層を含み得る。
【0168】
図11は、いくつかの実施態様による、様々な炭素質集合体の炭素多孔性タイプを描写する略
図1100を示している。様々な実施態様では、
図11を参照して説明される炭素質集合体は、
図9Aの集合体904、及び/または
図9Bの炭素質構造956の例であり得る。いくつかの態様では、
図11を参照して説明されている炭素質集合体を使用して、
図3の電極300を形成することができる。説明されているように、集合体は、
図9Aの炭素質構造902、または
図9Bの炭素質構造956などの炭素質構造の群から形成され得、またはその群を含み得る。いくつかの態様では、炭素質構造は、CNOであり得る。
【0169】
炭素質構造を使用して、略
図1100に示される多孔性タイプのいずれかを有する電極(
図3の電極300など)を形成することができる。例えば、電極は、多孔性タイプI1110、多孔性タイプII1120、及び多孔性タイプIII1130のいずれかを含み得る。いくつかの実施態様では、多孔性タイプI1110は、第1の細孔1111、第2の細孔1112、及び第3の細孔1113を含み得、それらの全ては、5nm未満の主要寸法でサイズ設定されて、電極内にポリ硫化物を保持する。いくつかのポリ硫化物は、より大きな錯体を形成するときにサイズが成長して、多孔性タイプI1110の細孔内に移動不可能に収容されるようになることができる。いくつかの実施態様では、集合体は、ともに連結されて、より大きなポリ硫化物及び/またはポリ硫化物錯体を保持することができる、多孔性タイプII1120及び/または多孔性タイプIII1130の細孔を作り出すことができる。
【0170】
図12は、いくつかの実施態様による、例示的な電極の細孔サイズ対細孔分布を描写するグラフ1200を示している。本明細書で使用される場合、「炭素1」は、ほとんどマイクロ細孔(主要寸法が5nm未満など)を含む構造化された炭素質材料を指し、「炭素2」は、ほとんどメソ細孔(主要寸法が約20nm~50nmなど)を含む構造化された炭素質材料を指す。いくつかの実施態様では、本明細書に開示されたバッテリのうちの1つで使用するのに好適な電極は、グラフ1200に描写されている細孔サイズ対細孔分布を有するように調製され得る。
【0171】
図13は、いくつかの実施態様による、サイクル数毎のバッテリ性能を描写する第1のグラフ1300及び第2のグラフ1310を示している。具体的には、第1のグラフ1300は、従来の電解質を使用する従来のバッテリの比放電容量に対して、本明細書に開示された電解質1302を使用する例示的なバッテリの比放電容量を示している。第2のグラフは、従来の電解質を使用するバッテリの容量保持に対して、電解質1302を使用するバッテリの容量保持を示している。いくつかの態様では、電解質1302は、
図1の電解質130または
図2の電解質230の一例であり得る。第1のグラフ1300及び第2のグラフ1310において、従来の電解質は、2重量%のLiNO
3を用いて、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=1:1:1)中の1MのLiTFSIとして調製されている。
【0172】
図14は、いくつかの実施態様による、サイクル数毎のバッテリ性能を描写する棒グラフ1400を示している。具体的には、棒グラフ1400は、従来の電解質を使用する従来のバッテリのサイクル数毎の比放電容量に対して、本明細書に開示された電解質1402を使用する例示的なバッテリのサイクル数毎の比放電容量を描写している。いくつかの態様では、電解質1402は、
図1の電解質130または
図2の電解質230の一例であり得る。棒グラフ1400において、従来の電解質は、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=1:1:1)中の1MのLiTFSIとして調製されている。棒グラフ1400は、例示的なバッテリ(
図1のバッテリ100または
図2のバッテリ200など)において電解質1402を使用することは、従来の電解質を使用するバッテリと比較して、第3回目のサイクル数では約28%まで、第50回目のサイクル数では約30%まで、そして第60回目では約39%まで、バッテリの比放電容量を増加させ得ることを示している。
【0173】
図15は、いくつかの実施態様による、サイクル数毎のバッテリ性能を描写する第1のグラフ1500及び第2のグラフ1510を示している。具体的には、第1のグラフ1500は、従来の電解質を使用する例示的なリチウム硫黄コインセルバッテリのサイクル数毎の電極放電容量に対して、本明細書に開示された電解質1502を使用する例示的なリチウム硫黄コインセルのサイクル数毎の電極放電容量を示しており、第2のグラフ1510は、従来の電解質を使用するリチウム硫黄コインセルバッテリのサイクル数毎の電極放電容量に対して、電解質1502を使用するリチウム硫黄コインセルバッテリのサイクル数毎の容量保持を示している。いくつかの態様では、電解質1502は、
図1の電解質130または
図2の電解質230の一例であり得る。リチウム硫黄コインセルバッテリは、1Cの放電率(1時間以内に完全に放電するなど)において、100%の放電深度(DOD)で循環され、室温(68°Fまたは20℃)でほぼ保持される。従来の電解質は、2重量%のLiNO
3を用いて、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=1:1:1)中の1MのLiTFSIとして調製されている。
【0174】
図16は、いくつかの実施態様による、サイクル数毎の電極放電容量を描写するグラフ1600を示している。具体的には、グラフ1600は、従来の電解質を使用する従来のバッテリの電極放電容量に対して、本明細書に開示された電解質1602を使用する例示的なバッテリのサイクル数毎の電極放電容量を描写している。いくつかの態様では、電解質1602は、
図1の電解質130または
図2の電解質230の一例であり得る。従来の電解質は、2重量%のLiNO
3を用いて、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=1:1:1)中の1MのLiTFSIとして調製され、電解質1602は、約2重量%のLiNO
3を用いて、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=58:29:13)中の1MのLiTFSIとして調製されている。
【0175】
図17は、いくつかの実施態様による、サイクル数毎の電極放電容量を描写する別のグラフ1700を示している。具体的には、グラフ1700は、従来の電解質及び溶媒パッケージを使用する従来のバッテリの電極放電容量に対して、本明細書に開示された電解質1702及び溶媒パッケージ1704を使用する例示的なバッテリのサイクル数毎の電極放電容量を描写している。従来の電解質は、約2重量%のLiNO
3を用いて、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=1:1:1)中の1MのLiTFSIとして調製され、電解質1702は、2重量%のLiNO
3を用いて、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=58:29:13)中の1MのLiTFSIとして調製されている。従来の溶媒パッケージは、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=1:1:1)中の1MのLiTFSIとして調製され、溶媒パッケージ1704は、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=58:29:13)中の1MのLiTFSIとして調製されている。
【0176】
図18は、いくつかの実施態様による、様々なTBT含有電解質混合物についてのサイクル数毎の比放電容量を描写するグラフ1800を示している。グラフ1800に示されているように、「181」は、いかなるTBTも添加されていない電解質を示し、0MTBT濃度レベルを結果としてもたらし、「181-25TBT」は、25MのTBT濃度レベルで調製された電解質を示しており、以下同様である。いくつかの実施態様では、5MのTBT濃度レベルは、いかなるTBTも添加されていない電解質に対して、約70mAh/gの放電容量の増加がもたらされ得る。
【0177】
図19は、いくつかの実施態様による、サイクル数毎の電極放電容量を描写する第1のグラフ1900、及びサイクル数毎の電極容量保持を描写する第2のグラフ1910を示している。具体的には、第1のグラフ1900は、本明細書に開示された保護格子を含まない例示的なバッテリの電極放電容量に対して、本明細書に開示された保護格子を含む例示的なバッテリのサイクル数毎の電極放電容量を描写している。第2のグラフ1910は、本明細書に開示された保護格子を含まない例示的なバッテリの電極容量保持に対して、本明細書に開示された保護格子を含む例示的なバッテリのサイクル数毎の電極容量保持を描写している。いくつかの態様では、保護格子は、
図4の保護格子402の一例であり得る。第1のグラフ1900及び第2のグラフ1910の両方の性能結果には、2重量%のLiNO
3を用いて、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=58:29:13)中の1MのLiTFSIで調製された電解質の使用が含まれる。
【0178】
図20は、他の実施態様による、サイクル数毎の電極放電容量を描写する第1のグラフ2000、及びサイクル数毎の電極容量保持を描写する第2のグラフ2010を示している。具体的には、第1のグラフ2000は、
図7のポリマーネットワークを含む例示的なバッテリのサイクル数毎の電極放電容量を描写している。第2のグラフ2010は、
図7のポリマーネットワークを含む例示的なバッテリのサイクル数毎の放電容量保持を描写している。バッテリは、
図1のバッテリ100または
図2のバッテリ200の一例であり得る。第1のグラフ2000及び第2のグラフ2010の両方の性能結果には、2重量%のLiNO
3を用いて、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=58:29:13)中の1MのLiTFSIで調製された電解質の使用が含まれる。
【0179】
図21は、いくつかの他の実施態様による、サイクル数毎の電極放電容量を描写する第1のグラフ2100、及びサイクル数毎の電極容量保持を描写する第2のグラフ2110を示している。具体的には、第1のグラフ2100は、
図5の保護層516を含む例示的なバッテリのサイクル数毎の電極放電容量を描写している。第2のグラフ2110は、
図5の保護層516を含む例示的なバッテリのサイクル数毎の放電容量保持を描写している。バッテリは、
図1のバッテリ100または
図2のバッテリ200の一例であり得る。第1のグラフ1900及び第2のグラフ1910の両方の性能結果には、2重量%のLiNO
3を用いて、DME:DOL:TEGDME(体積:体積:体積=58:29:13)中の1MのLiTFSIで調製された電解質の使用が含まれる。
【0180】
図22は、いくつかの実施態様による、本体2201及び幅2205を有する例示的なカソード2200を示している。いくつかの実施態様では、カソード2200は、
図3の電極300の一例であり得る。カソード2200は、多くの点で
図3の電極300と同様であり得、このため、同様の要素に関する説明は、本明細書では繰り返さない。一実施態様では、カソード2200は、第1の多孔性炭素質領域2210、及びその第1の多孔性炭素質領域2210に隣接して位置付けられた第2の多孔性炭素質領域2220を含む。第1の多孔性炭素質領域2210は、第1の濃度レベルの炭素質材料で形成され得、第2の多孔性炭素質領域2220は、第1の濃度レベルの炭素質材料とは異なる第2の濃度レベルの炭素質材料で形成され得る。例えば、第2の多孔性炭素質領域2220は、
図22に示されるように、第1の多孔性炭素質領域2210よりも低い濃度レベルの炭素質材料を有し得る。いくつかの態様では、追加の多孔性炭素質領域(単純にするために、
図22には図示せず)は、少なくとも第2の多孔性炭素質領域と結合され得る。
【0181】
具体的には、これらの追加の多孔性炭素質領域は、第1の多孔性炭素質領域2210から離れる方向に、炭素質材料の濃度レベルを段階的に減少させるように配置されて、完全なイオン輸送及び電流調整能力を提供することができる。すなわち、一実施態様では、第2の多孔性炭素質領域2220は、バルク電解質(例えば、液相で提供される)に面し得、カソード2200の第1の多孔性炭素質領域2210は、集電体(単純にするために、
図22には図示せず)と結合され得る。このようにして、第1の多孔性炭素質領域2210などのより高い濃度の炭素質領域は、炭素質材料の隣接する接触点間のより高いレベルの電気伝導(
図22に、「e
-」として示されている)を促進することができ、これに対して、第2の多孔性炭素質領域2220などのより希薄な炭素質領域は、従来のリチウムイオンバッテリに対して、リチウム硫黄バッテリ放電充電サイクルの改善に関連付けられたより高いレベルのリチウムイオン輸送を促進することができる。いくつかの実施態様では、第2の多孔性炭素質領域2220と結合され、かつこの第2の多孔性炭素質領域2220に隣接して位置付けられた追加の炭素質領域は、第2の多孔性炭素質領域2220よりも低い密度の炭素質材料を有し得る。このようにして、より低い密度の追加の炭素質領域は、より高いレベルのリチウムイオン輸送に適応して、例えば、電極300の様々な性能特性の調整を可能にすることができる。
【0182】
一実施態様では、第1の多孔性炭素質領域2210は、第1の非トリゾーン粒子2211を含み得る。第1の多孔性炭素質領域内の第1の非トリゾーン粒子2211の構成は、1つの例示的な構成である。他の配置、配向、整列などは、非トリゾーン粒子に対して可能である。いくつかの態様では、各非トリゾーン粒子は、本開示の他所で開示された1つ以上の炭素質材料の例であり得る。第1の多孔性炭素質領域2210はまた、
図22に示されるように、第1の非トリゾーン粒子2211全体にわたって散在され、または任意の他の配置、配向、または構成で位置付けられた第1のトリゾーン粒子2212を含むこともできる。各第1のトリゾーン粒子2212は、
図8Bのトリゾーン粒子850の一例であり得る。加えて、または代替において、第1のトリゾーン粒子2212の各々は、互いに絡み合い、かつメソ細孔2214によって互いに分離された第1の炭素断片2213を含み得る。各トリゾーン粒子は、隣接する第1の非トリゾーン粒子2211及び/または第1のトリゾーン粒子2212と合体するように構成された第1の変形可能な周囲2215を有し得る。
【0183】
第1の多孔性炭素質領域2210はまた、第1の集合体2216を含み得、ここで、各集合体は、ともに連結された多数の第1のトリゾーン粒子2212を含む。1つ以上の特定の例では、各第1の集合体は、10ナノメートル(nm)~10マイクロメートル(μm)の範囲内の主要寸法を有し得る。メソ細孔2214は、第1の複数の集合体全体にわたって散在し得、ここで、各メソ細孔は、3.3ナノメートル(nm)~19.3nmの主要寸法を有する。追加的に、第1の多孔性炭素質領域2210は、第1の凝集体2217を含み得、ここで、各凝集体は、互いに連結された多数の第1の集合体2216を含む。いくつかの態様では、各第1の凝集体2217は、0.1μm~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有し得る。マクロ細孔2218は、第1の集合体2216全体にわたって散在し得、ここで、各マクロ細孔は、0.1μm~1,000μmの主要寸法を有し得る。いくつかの実施態様では、上述した炭素質材料、同素体、及び/または構造のうちの1つ以上は、
図9A及び9Bに示された例の1つ以上の例であり得る。
【0184】
第2の多孔性炭素質領域は、第2の非トリゾーン粒子2221を含み得、これは、第1の非トリゾーン粒子2211の一例であり得る。第2の多孔性炭素質領域2220は、第2のトリゾーン粒子2222を含み得、これは、それぞれ、第1のトリゾーン粒子2212の各々の一例であり得、及び/または
図8Bのトリゾーン粒子850の一例であり得る。加えて、または代替において、各第2のトリゾーン粒子2222は、互いに絡み合い、かつメソ細孔2214によって互いに分離された第2の炭素断片2223を含み得る。各第2のトリゾーン粒子2222は、1つ以上の隣接する第2の非トリゾーン粒子2221または第2のトリゾーン粒子2222と合体するように構成された第2の変形可能な周囲2225を有し得る。
【0185】
追加的に、第2の多孔性炭素質領域2220は、第2の集合体2226を含み得、ここで、各第2の集合体2226は、ともに連結された多数の第2のトリゾーン粒子2222を含み得る。1つ以上の特定の例では、各第2の集合体2226は、10ナノメートル(nm)~10マイクロメートル(μm)の範囲内の主要寸法を有し得る。メソ細孔2214は、第2の集合体2226全体にわたって散在し得、各メソ細孔は、3.3ナノメートル(nm)~19.3nmの主要寸法を有し得る。さらに、第2の多孔性炭素質領域2220は、第2の凝集体2227を含み得、各第2の凝集体2227は、互いに連結された多数の第2の集合体2226を含み得、ここで、各凝集体は、0.1μm~1,000μmのおおよその範囲内の主要寸法を有し得る。マクロ細孔2218は、第2の複数の集合体全体にわたって散在し得、ここで、各マクロ細孔は、0.1μm~1,000μmの主要寸法を有する。いくつかの実施態様では、上述した炭素質材料、同素体、及び/または構造のうちの1つ以上は、
図9A及び9Bに示された例の1つ以上の例であり得る。
【0186】
一実施態様では、第1の多孔性炭素質領域2210及び/または第2の多孔性炭素質領域2220は、選択的に透過性のある殻(単純にするため、
図22には図示せず)を含み得、これは、それぞれ、第1の多孔性炭素質領域2210または第2の多孔性炭素質領域2220上に、分離された液相を形成し得る。本発明に開示された電解質のいずれかなどの電解質は、リチウム硫黄バッテリ放電充電動作サイクルに関連付けられたリチウムイオン輸送のために、第1の多孔性炭素質領域及び/または第2の多孔性炭素質領域内に分散され得る。
【0187】
1つ以上の特定の例では、第1の多孔性炭素質領域2210は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力で、500S/m~20,000S/mのおおよその範囲内の導電率を有し得る。第2の多孔性炭素質領域2220は、平方インチ当たり(psi)12,000ポンドの圧力で、0S/m~500S/mのおおよその範囲内の導電率を有し得る。第1の凝集体2217及び/または第2の凝集体2227は、1つ以上のポリマー系結合剤で互いに接続された集合体を含み得る。
【0188】
いくつかの態様では、第1のトリゾーン粒子2212または第2のトリゾーン粒子2222は、それぞれの第1のトリゾーン粒子2212または第2のトリゾーン粒子2222の中心の周りに位置する第1の多孔性領域(単純にするため、
図22には図示せず)をそれぞれ含み得る。第1の多孔性領域は、第1の細孔を含み得る。第2の多孔性領域(単純にするため、
図22には図示せず)は、第1の多孔性領域を取り囲み得る。第2の多孔性領域は、第2の細孔を含み得る。一実施態様では、第1の細孔は、第1の細孔密度を画定し得、第2の細孔は、第1の細孔密度とは異なる第2の細孔密度を画定し得る。
【0189】
いくつかの態様では、メソ細孔2214は、第1のメソ細孔及び第2のメソ細孔(単純にするため、両方とも
図22には図示せず)に群化され得る。1つ以上の特定の例では、第1のメソ細孔は、第1のメソ細孔密度を有し得、第2のメソ細孔は、第1のメソ細孔密度とは異なる第2のメソ細孔密度を有し得る。追加的に、マクロ細孔2218は、第1の細孔密度を有し得る第1のマクロ細孔と、第1の細孔密度とは異なる第2の細孔密度を有し得る第2のマクロ細孔と(単純にするため、両方とも
図22には図示せず)、に群化され得る。
【0190】
一実施態様では、第1の多孔性炭素質領域2210及び/または第2の多孔性炭素質領域2220は、本発明によって開示されたリチウム硫黄バッテリのいずれかの動作放電充電サイクルを容易にする必要があるような硫黄を核形成し得る。例えば、カソード2200は、約1:5~10:1の硫黄対炭素重量比を有し得る。いくつかの態様では、1つ以上の導電性添加剤は、第1の多孔性炭素質領域2210及び/または第2の多孔性炭素質領域2220内に分散されて、例えば、それに応じて、カソード2200の放電充電サイクル性能に影響を与える可能性がある。追加的に、
図4の保護格子402などの保護シースは、カソード上に配設され得る。
【0191】
本明細書で使用されるとき、品目のリストの「少なくとも1つ」または「1つ以上」を指す表現は単一のメンバーを含む、それら品目の任意の組み合わせを指す。例えば、「a,b、またはcのうちの少なくとも1つ」は、aのみ、bのみ、cのみ、aとbの組み合わせ、aとcの組み合わせ、bとcの組み合わせ、及びaとbとcの組み合わせの可能性を対象とすることを意図される。
【0192】
本明細書で開示されている構造及びその構造的同等物を含む、本明細書で開示されている実施態様に関連して記載されている種々の例解的な構成成分、論理回路、論理ブロック、モジュール、回路、操作、及びアルゴリズムプロセスは、電子的なハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの組み合わせとして実行され得る。ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアの互換性は、一般に、機能性の観点から記載されており、上述した様々な例解的な構成要素、ブロック、モジュール、回路、及びプロセスにおいて例解されている。そのような機能性がハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアで実行されるかどうかは、全体的なシステムに対して課されたアプリケーション及び設計の制約に依存する。
【0193】
本開示に記載されている実施態様に対する種々の修正は、当業者にとって容易に明らかであり得、本明細書で定義されている一般的な原理は本開示の精神または範囲から逸脱することなく他の実施態様に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示された実施態様に限定されることを意図されていないが、本明細書に開示された本発明、原理、及び新たな特徴と矛盾しない最も広い範囲に与えられるべきである。
【0194】
追加的に、別個の実施態様の文脈で本明細書に記載されている種々の特徴は単一の実施態様において組み合わせて実行することもできる。逆に、単一の実施態様の文脈で記載されている種々の特徴はまた、複数の実施態様において別個に、または任意の好適な部分組み合わせで実行されることも可能である。したがって、特徴は、互いに組み合わせて上記のように記載され得、さらには最初にそのように主張される場合もあるが、主張される組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては、その組み合わせから切り出すことができ、その特許請求される組み合わせは、部分組み合わせ、または部分組み合わせの変形例を対象とし得る。
【0195】
同様に、操作は特定の順序で図面に描写されている一方で、これは、望ましい結果を達成するために、そのような操作が示される特定の順序または連続した順序で実行されること、または例解される全ての操作が実行されることを必要とすることとして理解されるべきではない。さらに、図面は、フローチャートまたはフロー図の形態でもう1つの例示的なプロセスを概略的に描写し得る。しかしながら、描写されていない他の動作は、概略的に例解されている例示的なプロセスに組み込むことができる。例えば、1つ以上の追加の動作は、例解される動作のうちのいずれかの前に、後に、同時に、またはそれらの間に実施することができる。状況によっては、マルチタスク及び並列処理が有利である場合がある。さらに、上述した実施態様における様々なシステム構成要素の分離は、全ての実施態様においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、また、記載されたプログラム構成要素及びシステムは、一般に、単一の製品にともに統合化され得るか、または複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。
【国際調査報告】