(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】有機不純物を含有するハロゲン化水素溶液を精製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C01B 7/00 20060101AFI20240806BHJP
C01B 7/09 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C01B7/00 A
C01B7/09 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504485
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 US2022038421
(87)【国際公開番号】W WO2023009565
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アプリン,ジェフリー,トッド
(72)【発明者】
【氏名】マニマラン,タニカヴェル
(72)【発明者】
【氏名】シャー,ケユル
(72)【発明者】
【氏名】ケアー,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン,チャールズ,ウェスリー
(57)【要約】
本開示は、ハロゲン化水素溶液を精製するための新規のプラントプロセスに関する。プロセスは、ハロゲン化水素溶液中の有機化合物、特にフェノール系化合物をハロゲン化して、ハロゲン化化合物を析出させることを含む。ハロゲン化化合物は、濾過物であり得、ハロゲン化水素溶液は、吸着剤層でさらに精製され、清浄なハロゲン化水素溶液が、他のプロセスで再利用されるか、使用され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール系残留物を含有するHXストリームを精製するプロセスであって、
酸化的ハロゲン化によって前記HXストリームを処理して、前記フェノール系残留物をハロゲン化して、ハロゲン化フェノール系残留物及びハロゲン化溶液を生成することと、
前記ハロゲン化溶液を冷却することと、
前記ハロゲン化溶液から前記ハロゲン化フェノール系残留物を濾過して、部分的に精製されたHXストリームを生成することと、を含み、
前記HXストリームは、HClストリーム、HBrストリーム、HIストリーム、またはこれらの組み合わせを含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記部分的に精製されたHXストリームを吸着剤層に通過させ、精製されたHXストリームを生成することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記HXストリームは、約5重量%未満のフェノール系残留物を含有する、請求項1~2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項4】
前記HXストリームは、約1重量%未満のフェノール系残留物を含有する、請求項1~2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記HXストリームは、HXが約30重量%未満である、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記HXストリームは、HXが約15重量%未満である、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記HXストリーム、前記部分的に精製されたHXストリーム、及び前記精製されたHXストリームは、それぞれHBrを含む、請求項1~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記酸化的ハロゲン化は、酸化的臭素化であり、臭素の前記ハロゲンである、請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記酸化的ハロゲン化は、約60℃以上で行われる、請求項1~8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記酸化的ハロゲン化は、約90℃以上で行われる、請求項1~8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
前記反応物は、前記ハロゲン化温度よりも少なくとも約20℃低い温度まで冷却される、請求項1~10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
前記反応物は、約60℃以下まで冷却される、請求項1~10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記反応物は、約40℃以下まで冷却される、請求項1~10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
ハロゲン対フェノール系残留物の比率は、約2:1~20:1重量/重量である、請求項1~13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
ハロゲン対フェノール系残留物の比率は、約8:1~12:1重量/重量である、請求項1~13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
前記吸着剤層は、炭素層またはポリスチレン層を含む、請求項2~15のいずれかに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の実施形態は、概して、ハロゲン化水素溶液から、有機不純物、特にフェノール系不純物を除去するためのプロセスに関する。これは、ハロゲン化後の副生成物ストリーム(stream)に対して特に有用である。
【背景技術】
【0002】
工業的プロセスの中でも、有機化合物のハロゲン酸化(または酸化的ハロゲン化)により、かなりの数の商用製品が生産される。例えば、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)のような臭素化難燃剤は、TBBPAを生産するために、有機基質、例えば、ビスフェノールを臭素酸化することによって調製される。その臭素酸化の生成物は、貴重な難燃剤を含むが、典型的にはHBr及び不純物を含む水性の副生成物ストリームも含む。塩素酸化においても、水性の副生成物ストリームが対処すべき課題である。
【0003】
商業上競争的な工業プロセスでは、経済的な方法で、副生成物ストリームを利用するか、または廃棄する必要がある。これには、ストリームをプロセスに戻して再利用すること、ストリームを別のプロセスへ進路変更させること、またはストリームを別個の商用製品に転換すること、が含まれる場合がある。これらの選択肢がない場合、廃棄が必要となる場合があるが、工業的ストリームを単純に廃棄することは、環境的に困難であり、かつプロセスからの原子の価値を無駄にすることになるため商業的に有効でない。したがって、ストリームをプロセスに戻して再利用すること、ストリームを別のプロセスへ進路変更させること、またはストリームを別個の商用製品に転換することが非常に好ましいが、副生成物ストリームの不純物の特性を克服することが、克服すべき重大なハードルとなる。
【発明の概要】
【0004】
本開示の種々の実施形態は、概して、フェノール系残留物を有するハロゲン化水素ストリームを処理するためのプロセスに関する。
【0005】
本開示の実施形態は、酸化的ハロゲン化によってHXストリームを処理するか、またはハロゲンを用いてストリームを処理して、フェノール系残留物をハロゲン化し、ハロゲン化フェノール系残留物及びハロゲン化溶液を生成するためのプロセスである場合がある。ハロゲン化溶液は、冷却、かつ濾過されて、ハロゲン化溶液からハロゲン化フェノール系残留物が除去され、部分的に精製されたHXストリームが生成され得る。プロセスは、部分的に精製されたHXストリームを吸着剤層に通過させ、精製されたHXストリームを生成する、さらなる工程を含む場合がある。
【0006】
いくつかの実施形態では、HXストリームは、HClストリーム、HBrストリーム、HIストリーム、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、HXストリームは、HClもしくはHBrストリーム、またはHBrストリームを含む。HXストリームは、約30重量%未満のHX、約20重量%未満のHX、約15重量%未満のHX、または約12重量%未満のHXであり得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、HXストリームは、約5重量%未満のフェノール系残留物、約3重量%未満のフェノール系残留物、または約1重量%未満のフェノール系残留物を含有する場合がある。
【0008】
一実施形態では、HXストリーム、部分的に精製されたHXストリーム、及び精製されたHXストリームは、それぞれHBrを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、酸化的ハロゲン化は、酸化的臭素化であり、かつ臭素のハロゲンである。
【0010】
いくつかの実施形態では、酸化的ハロゲン化は、約60℃以上、80℃以上、または90℃以上で行われる。
【0011】
いくつかの実施形態では、酸化的ハロゲン化後の反応物は、約60℃以下まで冷却されるか、または反応物は、約40℃以下まで冷却される。いくつかの実施形態では、反応物は、酸化的ハロゲン化温度よりも少なくとも約20℃低い温度まで冷却される。
【0012】
いくつかの実施形態では、ハロゲン対フェノール系残留物の比率は、約2:1~20:1重量/重量であるか、またはハロゲン対フェノール系残留物の比率は、約8:1~12:1重量/重量である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の好ましい実施形態を詳述するものの、他の実施形態が想到されることが理解されよう。したがって、本開示は、その範囲が、以下の説明、または、図面に示す構成要素の構造及び配置の詳細に限定されることを意図するものではない。本開示は、他の実施形態であることができ、様々な方法で実施または実行することができる。また、好ましい実施形態を説明するために、特定の用語を、明確性のために使用する。
【0014】
本明細書及び付属の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、別途明確に指示されない限り、複数形の指示対象を含むことにもまた留意されなければならない。
【0015】
また、好ましい実施形態を説明するために、用語を明確性のために使用する。各用語は、当業者によって理解される最も広い意味を想到し、同様の目的を実現するために同様の様式で動作する、あらゆる技術的等価物を含むことが意図される。
【0016】
本明細書において、範囲は、「約」、もしくは「およそ」ある特定の値から、及び/または、「約」、もしくは「およそ」別の特定の値まで、として表現されることができる。そのような範囲が表現されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/または他の特定の値までを含む。
【0017】
「含む(comprising)」、または「含む(comprising)」、または「含む(including)」は、少なくとも、名前の付いた化合物、要素、粒子、または方法ステップが、組成物、または物品、または方法に存在するものの、他のそのような化合物、材料、粒子、方法ステップが、名前の付いたのと同じ機能を有する場合であっても、他の化合物、材料、粒子、方法ステップの存在を除外しないことを意味する。
【0018】
また、1つ以上の方法ステップへの言及は、明示的に識別された追加の方法ステップ、または、これらのステップの間に介在する方法ステップの存在を排除するものではないことも理解されなければならない。同様に、デバイスまたはシステム中での、1つ以上の構成要素への言及は、明示的に識別された追加の構成要素、または、これらの構成要素の間に介在する構成要素の存在を排除するものではないことも理解されなければならない。
【0019】
本開示は、プラントプロセス開発プログラムの一部として開発された。有機化合物の臭素酸化(すなわち、芳香環上の臭素の求電子置換)により、臭化水素としても知られている臭化水素酸が発生し、これは、利用されるか、または廃棄される必要がある。しかし、
HBrストリームには、多くの課題が含まれる。特に、一部のプロセスからのフェノール系化合物により、副生成物ストリームの利用及び/または取り扱いが困難となる場合がある。HBrから臭素価を回収する試みは、有機不純物の存在が原因で困難である。任意のプラントプロセスにおける一般的な選択肢の1つは、ストリームをプロセスまたは関連するプロセスへと再利用することか、またはストリームを別の生成物に転換することである。しかし、未処理のHBrストリームを再利用することは、望ましくない副生成物の生成をもたらす可能性があり、これにより、最終生成物の純度の低下、または装置内の固形物の析出及び/または装置のプラギングを含むがこれらに限定されない、いくつかの問題が生じる可能性がある。
【0020】
このプラントプロセス開発プログラムの一部として、有機不純物、特にHBrに溶解したフェノール系不純物の大部分を除去するプロセスが、開発されてきた。TBBPA副生成物ストリーム中の有機不純物は、臭素及び/または塩素と反応させ、溶解性不純物を、析出可能な大幅に難溶性のハロゲン化化合物に転換することによって除去可能であることが判明した。濾過による固形物の除去により、溶液中の臭素化不純物のレベルが実質的に低下したHBrが得られる。必要であれば、これらの臭素化不純物は、炭素層または樹脂層を通過させることによってさらに減少させることができる。臭素との反応は、フェノール系不純物の全てが確実に完全に臭素化するために、2~20倍過剰の臭素、好ましくは、10倍で実施され得る。反応時間を減らすためには、より高い臭素化温度が好ましい。60℃を超える反応温度、好ましくは90℃を超える反応温度が推奨される。本方法によって精製されるHBr溶液は、臭素価を回収するために再利用するか、または他の用途に使用することができる。特に、ハロゲン酸化に依存する他のプロセスは、本方法を使用して同様に精製することができる。
【0021】
したがって、本開示は、フェノール系残留物を含有するHXストリームを精製するためのプロセスを含む。プロセスは、酸化的ハロゲン化によってHXストリームを処理して、フェノール系残留物をハロゲン化し、それにより、ハロゲン化フェノール系残留物及びハロゲン化溶液を生成することを含む場合がある。ハロゲン化溶液は、冷却、かつ濾過されて、ハロゲン化フェノール系残留物が除去され、部分的に精製されたHXストリームが生成され得る。
【0022】
HXストリームは、ハロゲン化水素とも呼ばれる水素ハロゲン化物を含有するストリームまたは溶液であるということができる。水素ハロゲン化物という用語は、塩化水素酸、臭化水素酸、及びヨウ化水素酸などのハロゲン酸、すなわち、HCl、HBr、及びHIを含む。化合物はまた、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素であるということができる。水素ハロゲン化物は、HXと略記されることもあり、ここで、Xは、ハロゲン、すなわち、Cl、Br、またはIとして十分に認識されている。水素ハロゲン化物溶液は、HCl溶液もしくはHBr溶液を含む場合があるか、または水素ハロゲン化物溶液は、HBr溶液を含む場合がある。いくつかの実施形態では、HXストリーム、部分的に精製されたHXストリーム、及び精製されたHXストリームは、それぞれ独立してHBrを含む場合がある。水素ハロゲン化物溶液またはHX溶液は、水溶液を含む場合がある。水素ハロゲン化物溶液またはHX溶液は、部分的にハロゲン化された有機化合物を含む場合があるか、または先行のハロゲン化反応から生じた有機化合物を含む場合がある。
【0023】
部分的に精製されたHXストリームは、さらに処理され得る。この処理は、部分的に精製されたHXストリームを吸着剤層に通過させ、精製されたHXストリームを生成することを含む場合がある。吸着剤層は、水性ストリームから有機化合物を除去する、酸性媒体の工業用途で使用される任意の吸着剤物質とすることができる。吸着剤層としては、炭素層(例えば、活性炭素層)、またはポリスチレン層、ポリジビニルベンゼン層、もしくは他のポリ芳香族樹脂などの中性の樹脂層を挙げることができる。
【0024】
HXストリームは、概して、約5重量%未満のフェノール系残留物、約1重量%未満のフェノール系残留物、または約0.5重量%未満のフェノール系残留物を含有する場合がある。フェノール系残留物は、ハロゲンによる求電子置換を受けやすい、芳香族構造または擬似芳香族構造(キノン部分など)を含む場合がある。フェノール系残留物は、モノブロモフェノール、ジブロモフェノール、トリブロモフェノール、及び他のフェノール系生成物及び/または芳香族生成物、または擬似芳香族生成物を含む場合がある。フェノール系残留物は、ビスフェノールA(IUPAC名:4,4′-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール)の臭素化の副生成物である場合がある。
【0025】
HXストリームは、約50重量%未満のHX、約40重量%未満のHX、または約30重量%未満のHXであり得る。プロセスは、先行の化学的プロセスによって減少または希釈されたHXストリームに対して使用することができる。したがって、HXストリームは、好ましくは、約20重量%未満のHX、約15重量%未満のHX、または約12重量%未満のHXであり得る。
【0026】
初期のHXストリームの酸化的ハロゲン化は、求電子置換が起こり得る任意の温度以上で実施され得る。酸化的ハロゲン化は、25℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、または90℃以上で実施され得る。酸化的ハロゲン化は、より高温で実施され得るが、一般的に、反応媒体の圧力によって制限される。酸化的ハロゲン化は、専用装置内で200℃の高さで実施され得るが、より高い温度は、一般的に安全でないとみなされる。
【0027】
初期のHXストリームの酸化的ハロゲン化は、フェノール系残留物に対して求電子置換を起こすことができる任意のハロゲンを用いて実施され得る。酸化的ハロゲン化またはハロゲン酸化とは、一般的に、溶液中の有機物質をハロゲン化し、それにより、ハロゲン化炭素結合及びハロゲン化水素が生じるような温度で、ハロゲンを用いて溶液を処理することを意味する。酸化的ハロゲン化は、臭素(例えば、酸化的臭素化)を用いて、または塩素(例えば、酸化的塩素化)を用いて実施され得る。酸化的ハロゲン化はまた、塩素及び臭素の組み合わせを用いて実施され得る。例えば、塩素の添加によるHBrの臭素への転換、または過酸化水素の添加によるHBrの臭素への転換などの酸化的ハロゲン化は、HXストリームに添加することができるハロゲンを用いて実施され得るか、またはその場で生成することができるハロゲンを用いて実施され得る。HX溶液中のハロゲンは、酸化的ハロゲン化でのハロゲンと同じものである必要はない。一実施形態では、HXは、HBrであり得、ハロゲン源は、臭素であり得る。別の実施形態では、HXは、HBrであり得、ハロゲン源は、塩素の一部が、HBrと反応して臭素及びHClを生成する塩素であり得、かつ酸化ハロゲン化は、塩素化及び臭素化の混合である場合がある。好ましくは、酸化的ハロゲン化は、酸化的臭素化である。
【0028】
初期のHXストリームの酸化的ハロゲン化は、フェノール系残留物が有効にハロゲン化されるような、ハロゲン対フェノール系残留物の比率で実施され得る。ハロゲン対フェノール系残留物の比率は、約2:1~約20:1重量/重量、好ましくは、約8:1~約12:1重量/重量であり得る。
【0029】
酸化的ハロゲン化後、ハロゲン化溶液は、冷却され、次に、濾過され得る。ハロゲン化溶液は、ハロゲン化の温度よりも少なくとも約10℃低い、ハロゲン化の温度よりも少なくとも約20℃低い、またはハロゲン化の温度よりも少なくとも約30℃低い温度まで冷却され得る。ハロゲン化溶液は、60℃未満、約50℃未満、または約40℃未満まで冷却され得る。冷却は、製造プロセスで使用される任意の技術によって実施可能である。一実施形態では、冷却は、残留ハロゲンを取り除くこと、例えば、ハロゲン化溶液から残留臭素を除去することによって実現することができる。
【0030】
部分的に精製されたHXストリーム及び精製されたHXストリームは、他のプロセス反応に使用することができる。例えば、部分的に精製されたHBrストリームは、塩素化を受けて、臭素が生じる場合があり、該臭素は、溶液から取り除かれて、他の臭素化反応で使用され、それにより、価値のある臭素価が回収可能である。同様に、精製されたHXストリームは、塩素を用いて処理されて、臭素が生じ得る。
【0031】
本開示の実施形態は、約1重量%未満のフェノール系残留物を含有するHXストリームを精製するためのプロセスである場合があり、ここで、HXが約15重量%以下であるHXストリームが、ハロゲンとして臭素または塩素を用いて60℃超で処理され、フェノール系残留物がハロゲン化されて、ハロゲン化溶液が生成される。ハロゲン化溶液は、60℃未満まで冷却され、かつ濾過されて、部分的に精製されたHXストリームが生成され得る。部分的に精製されたHXストリームは、さらに、吸着剤層に通過させることによって処理され得る。
【0032】
本開示の実施形態は、約1重量%以下のフェノール系残留物を含有するHBrストリームを精製するためのプロセスである場合があり、ここで、HBrが約15重量%以下であるHBrストリームが、ハロゲンとして臭素を用いて60℃超で処理され、フェノール系残留物が臭素化されて、ハロゲン化溶液が生成される。ハロゲン化溶液は、60℃未満まで冷却され、かつ濾過されて、部分的に精製されたHBrストリームが生成され得る。部分的に精製されたHBrストリームは、さらに、吸着剤層に通過させることによって処理され得る。
【0033】
本開示の実施形態は、約1重量%以下のフェノール系残留物を含有するHBrストリームを精製するためのプロセスである場合があり、ここで、HBrが約15重量%以下であるHBrストリームが、ハロゲンとして塩素を用いて約80℃以上で処理され、フェノール系残留物がハロゲン化されて、ハロゲン化溶液が生成される。ハロゲン化溶液は、約60℃以下まで冷却され、かつ濾過されて、部分的に精製されたHXストリームが生成され得る。部分的に精製されたHXストリームは、さらに、吸着剤層に通過させることによって処理され得る。
【0034】
本開示の実施形態は、約1重量%以下のフェノール系残留物を含有するHBrストリームを精製するためのプロセスである場合があり、ここで、HBrが約15重量%以下であるHBrストリームが、ハロゲンとして臭素を用いて約90℃以上で処理され、フェノール系残留物がハロゲン化されて、ハロゲン化溶液が生成される。ハロゲン化溶液は、約60℃以下まで冷却され、かつ濾過されて、部分的に精製されたHBrストリームが生成され得る。部分的に精製されたHBrストリームは、さらに、吸着剤層に通過させることによって処理され得る。
【0035】
本開示の実施形態は、約1重量%以下のフェノール系残留物を含有するHBrストリームを精製するためのプロセスである場合があり、ここで、HBrが約15重量%以下であるHBrストリームが、ハロゲンとして臭素を用いて約90℃以上で処理され、フェノール系残留物がハロゲン化されて、ハロゲン化溶液が生成される。ハロゲン化溶液は、約40℃以下まで冷却され、かつ濾過されて、部分的に精製されたHBrストリームが生成され得る。部分的に精製されたHBrストリームは、さらに、吸着剤層に通過させることによって処理され得る。
【実施例】
【0036】
実施例1
機械的撹拌機、冷却器、及びサーモウェルを備えた3つ口の20L反応器を準備した。
306ppmのフェノール系不純物を含有する約10%HBr溶液のプロセス廃出物ストリームを使用した。液体クロマトグラフィー(LC)法を、フェノール系不純物の測定に使用した。HBr溶液(16kg)を反応器に充填し、撹拌した。それを、電気マントルで95℃まで加熱した。溶液の温度が50℃を超えた時点で、160gの臭素を添加して、加熱を続けた。混合物を95℃で30分間加熱した後、加熱を止め、冷却器を還流から蒸留に切り替えた。真空ポンプを、希薄亜硫酸ナトリウム溶液を含有する2つの氷冷トラップ経由で接続した。混合物を、真空下で未反応の臭素及び一部の水を取り除くことによって徐々に60℃まで冷却した。次に、大気圧で周囲まで冷却させた。次に、中型のフリットガラス漏斗を使用して濾過し、析出した固形物を除去した。濾過したHBr溶液のLC分析は、わずか26ppmのフェノール系不純物を示した。それを、スチレン系樹脂のカラムに通過させたところ、LC分析によって、HBr溶液中のフェノール系不純物は0ppmであった。
【0037】
実施例2
エースフィッティング付きの500mLの厚壁ガラス反応器に、サーモウェル、モノメータ、及びストップコック付きのテフロンオーバーヘッドを取り付け、そのオーバーヘッドから冷却器を通して受け皿フラスコに接続した。受け皿フラスコを、別の冷却器及びトラップを通して真空ラインに接続した。約500ppmのフェノール系不純物を含有する300gの廃出物ストリームHBrを反応器に充填した。それを、磁気的に撹拌しながら、電気マントルで急速に加熱した。混合物の温度が50℃に到達した時点で、3gの臭素を添加し、反応器を密閉した。約15分で、混合物の温度は、120℃に達し、反応器圧力は約25psiを示した。混合物をこの温度で25分間撹拌した後、電気マントルを低下させ、オーバーヘッドストップコックを注意深く開くことによって圧力を解放した。蒸留して移動した液体を受容器に収集した。混合物の温度を60℃に低下させるために、ゆっくりと真空を適用したが、典型的には、60℃にするためには、120~130mmHgの真空が必要であった。混合物を60℃で濾過したところ、高温のHBr溶液は、63ppmのフェノール系不純物しか含有していなかった。
【0038】
実施例3
800gのHBr試料(3-1A及び3-2A)をそれぞれ、80gの臭素(すなわち、10重量%)で処理し、55℃及び80℃までそれぞれ加熱し、30分間保持した。混合物を保持時間終了時に高温で濾過し、GC分析のために試料を採取した。結果を表1に示す。
【0039】
得られた溶液を、約4時間静置させて、室温まで冷却させた。溶液を再度濾過してから、次に進めた。次に、各混合物(3-1B及び3-2B)の400gの部分を、80℃で塩素化し、さらなる固形物の形成に注視した。
【0040】
類似の方法で、HBrの2つの溶液(3-3及び3-4)を、1重量%の臭素で処理し、55℃及び80℃まで加熱し、30分間保持し、高温で濾過し、かつGC分析のために試料を採取し、次に、室温まで冷却させて、再度濾過した。
【表1】
【0041】
実施例4
HBr試料を濾過して、固形物を除去し、分析のために試料を採取した(4-0)。
【0042】
4-1Aの場合、3083gのHBr試料を、5Lのフラスコに充填して、80℃まで加熱した。約1重量%(30g)の臭素を、表面下に注意深く添加した。溶液を、大型の撹拌棒で約3時間混合した。次に、混合物を、まだ高温のうちに濾過し、単離した固形物をDI水で洗浄した。次に、高温溶液を3等分した。一部(4-1B)をそのままにして一晩静置させた。第2の部分(4-1C)を、臭素を除去する反応に十分なだけの固体亜硫酸ナトリウムで処理し、分析のために試料を採取し、かつ一晩静置させた。第3の部分(4-1D)996gを、1Lのフラスコに充填し、80℃まで加熱し、33gの塩素(HBr価の少なくとも75%を転換するのに十分な)を、約5分間かけて添加した。反応物を30分間撹拌して、高温で濾過した。
【0043】
試料4-2の場合、950gのHBr試料を、1Lのフラスコに充填して、80℃まで加熱し、続いて5gの臭素を添加した。混合物を3時間撹拌し、高温で濾過し、次に、分析のために試料を採取した。
【0044】
試料4-3に対して、95℃まで加熱したことを除いて、試料4-2と全く同じ処理を行った。
【表2-1】
【表2-2】
【0045】
実施例5
HBr試料を濾過して、固形物を除去し、分析のために試料を採取した(試料5-0)。
【0046】
試料番号5-1では、863.9gのHBr試料を、1Lの4つ口の丸底フラスコに充填した。混合物を、約30℃まで加熱し、約26gのCl2を、約15分間かけて添加した。添加の間、反応温度を約40℃まで上昇させた。保持時間15分で混合物から試料を採取した(試料を分析前に濾過した)。保持時間30分で実験を停止し、残存する混合物を濾過した。試料の各部分を、溶液中に残存する臭素を除去するのに十分なだけの固体亜硫酸ナトリウムで処理した後に、完全に分析した。
【0047】
室温で約6時間静置させた後、固形物を観察し、溶液を濾過した。合計約16時間の静置後にさらなる固形物が形成したことが観察されたため、溶液を再度濾過した。
【0048】
試料番号5-2では、866gのHBr試料を、装置に充填した。混合物を、約60℃まで加熱し、約26gのCl2を、約15分間かけて添加した。保持時間30分で実験を停止し、混合物を、まだ高温のうちに濾過した。溶液を室温で一晩静置させ、再度濾過した。最終溶液から、分析のために試料を採取した。
【0049】
試料番号5-3では、878gのHBr試料を、装置に充填した。混合物を、約80℃まで加熱し、約26gのCl2を、約15分間かけて添加した。保持時間30分で実験を停止し、混合物を、まだ高温のうちに濾過した。溶液を室温で一晩静置させ、再度濾過した。最終溶液から、分析のために試料を採取した。
【0050】
試料番号5-4では、878gのHBr試料を、装置に充填した。混合物を、約100℃まで加熱し、約26gのCl2を、約15分間かけて添加した。添加の間、反応温度を約96℃まで低下させた。保持時間30分で実験を停止し、混合物を、まだ高温のうちに濾過した。溶液を室温で一晩静置させ、再度濾過した。また、最終溶液から、分析のために試料を採取した。高温で濾過しても、固形物は単離しなかった。溶液が冷却されると、固形物が結晶化することが観察された。
【0051】
試料番号5-5では、874gのHBr試料を、装置に充填した。混合物を、約80℃まで加熱した。溶液が飽和するまで過剰の臭素を表面下に添加した。保持時間30分で実験を停止し、混合物を、まだ高温のうちに濾過した。溶液を、室温で一晩静置させたが、極めて少量の固形物しか形成しなかったため、一晩の静置後に再び濾過はしなかった。臭素のみの方法では、塩素化経路で生成されるよりも溶解性の低い固形物が生成されるように思われる。
【表3】
【0052】
実施例6
およそ8%のHBr溶液を濾過し、試料6-0として分析した。この8%のHBr溶液の、400g溶液の3つに、0.53g、0.843g、及び1.652gの粒状活性炭
素(Norit GAC 1240)を添加し、溶液を室温で4時間撹拌した。4つの全ての試料を、0.45ミクロンのWhatman Autovialシリンジレスフィルタで濾過し、炭素微粉を除去して、分析した。データを表4にて報告する。
【表4】
【0053】
実施例7
50mmのIDカラムに、139.3gの粒状活性炭素(Norit GAC 1240)を充填して、約280mLの層容量を得た。フェノール類を含有するHBr溶液を、5mL/分で、上向きの供給形態でカラムの底を通してポンプで汲み上げた。したがって、滞留時間は1時間未満であった。供給から1時間の時点で試料の採取を開始した。複数の試料をAPHAカラーに関して分析し、同時に、約2.5時間で採取した単一の試料(試料7-1)を完全に分析した。APHAカラーデータに関するデータを、表5に提示し、出発物質及び2.5時間で採取した試料の分析について、表6に提示する。
【表5】
【表6】
【0054】
実施例7
11mm直径のジャケット付きカラムに、15gのスチレン系吸着性樹脂を充填した。水を含むサーキュレータを使用して、60℃の温度を維持した。フェノール類を含むHBr溶液を、予め臭素と反応させて、急速冷却し、次に、濾過し、次いで、制御された速度で蠕動ポンプを介して吸着剤層に送り込んだ。HBr中のフェノール類の開始濃度を、カラムを通過したHBrの総容量におけるフェノール類の濃度と共に報告する。フェノール類の濃度は、HPLC分析によって測定する。データを表7にて報告する。
【表7】
【0055】
実施形態
加えて、または代替的に、本開示は、以下の実施形態の1つ以上を含むことができる。
【0056】
実施形態1.フェノール系残留物を含有するHXストリームを精製するプロセスであって、酸化的ハロゲン化によって前記HXストリームを処理して、前記フェノール系残留物をハロゲン化して、ハロゲン化フェノール系残留物及びハロゲン化溶液を生成することと、前記ハロゲン化溶液を冷却することと、前記ハロゲン化溶液から前記ハロゲン化フェノ
ール系残留物を濾過して、部分的に精製されたHXストリームを生成することと、を含む、前記プロセス。
【0057】
実施形態2.フェノール系残留物を含有するHXストリームを精製するプロセスであって、酸化的ハロゲン化によって前記HXストリームを処理して、前記フェノール系残留物をハロゲン化して、ハロゲン化フェノール系残留物及びハロゲン化溶液を生成することと、前記ハロゲン化溶液を冷却することと、前記ハロゲン化溶液から前記ハロゲン化フェノール系残留物を濾過して、部分的に精製されたHXストリームを生成することと、前記部分的に精製されたHXストリームを吸着剤層に通過させて、精製されたHXストリームを生成することと、を含む、前記プロセス。前記吸着剤層は、炭素層またはポリスチレン層を含む。
【0058】
実施形態3.約1重量%以下のフェノール系残留物を含有するHBrストリームを精製するためのプロセスであって、HBrが約15重量%以下である前記HBrストリームが、前記ハロゲンとして臭素を用いて60℃超で処理され、前記フェノール系残留物が臭素化されて、ハロゲン化溶液が生成される、前記プロセス。前記ハロゲン化溶液は、60℃未満まで冷却され、かつ濾過されて、部分的に精製されたHBrストリームが生成され得る。前記部分的に精製されたHBrストリームは、さらに、吸着剤層に通過させることによって処理され得る。
【0059】
実施形態4.前記酸化的ハロゲン化は、約60℃以上、80℃以上、または90℃以上で行われる、先行実施形態のうち1項に記載の前記プロセス。
【0060】
実施形態5.前記反応物は、前記ハロゲン化温度よりも少なくとも約20℃低い温度まで冷却される、先行実施形態のうち1項に記載の前記プロセス。前記反応物は、約60℃以下まで冷却され得る。前記反応物は、約40℃以下まで冷却され得る。
【0061】
実施形態6.ハロゲン対フェノール系残留物の比率は、約2:1~20:1重量/重量である、先行実施形態のうち1項に記載の前記プロセス。ハロゲン対フェノール系残留物の比率は、約8:1~12:1重量/重量であり得る。
【0062】
実施形態7.前記HXストリームは、約5重量%未満、約3重量%未満、または約1重量%未満のフェノール系残留物を含有する、先行実施形態のうち1項に記載の前記プロセス。
【0063】
実施形態8.前記HXストリームは、約30重量%未満のHX、約20重量%未満のHX、約15重量%未満のHX、または約12重量%未満のHXである、先行実施形態のうち1項に記載の前記プロセス。
【0064】
実施形態9.前記HXストリーム、前記部分的に精製されたHXストリーム、及び前記精製されたHXストリームは、それぞれHBrを含む、先行実施形態のうち1項に記載の前記プロセス。
【0065】
実施形態10.前記酸化的ハロゲン化は、酸化的臭素化であり、臭素の前記ハロゲンである、先行実施形態のうち1項に記載の前記プロセス。
【0066】
本明細書で開示する実施形態及び特許請求の範囲は、それらの適用が、明細書で説明される、及び、図面で図示される構成要素の構造及び配置の詳細に限定されないものと理解されるべきである。むしろ、明細書及び図面は、想到される実施形態の例をもたらす。本明細書で開示する実施形態及び特許請求の範囲はさらに、他の実施形態を実施可能であり
、かつ、様々な方法で実践及び実施することが可能である。また、本明細書で用いる専門用語及び用語は、説明のためのものであり、特許請求の範囲を限定するものとみなされてはならないものと理解されるべきである。
【0067】
したがって、当業者は、明細書及び特許請求の範囲が基づく着想を、本出願で提示される実施形態及び特許請求の範囲のいくつかの目的を実施するための他の構造、方法、及びシステムの設計のための基礎として速やかに利用することができることを理解するであろう。したがって、特許請求の範囲は、そのような等価な構造を含むものとみなされることが重要である。
【国際調査報告】