(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/128 20060101AFI20240806BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20240806BHJP
B22D 11/115 20060101ALI20240806BHJP
B22D 11/20 20060101ALI20240806BHJP
B22D 11/124 20060101ALI20240806BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240806BHJP
C22C 38/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B22D11/128 350A
B22D11/00 A
B22D11/115 D
B22D11/115 S
B22D11/20 C
B22D11/20 A
B22D11/124 N
C22C38/00 301Z
C22C38/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504566
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 CN2022092403
(87)【国際公開番号】W WO2023165019
(87)【国際公開日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】202210304412.9
(32)【優先日】2022-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523025469
【氏名又は名称】中天鋼鉄集団有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523025296
【氏名又は名称】常州中天特鋼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【氏名又は名称】柳元 八大
(74)【代理人】
【識別番号】100230086
【氏名又は名称】譚 粟元
(72)【発明者】
【氏名】高 宇波
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲テイ▼
(72)【発明者】
【氏名】包 燕平
(72)【発明者】
【氏名】王 敏
(72)【発明者】
【氏名】桂 仲林
(72)【発明者】
【氏名】廖 家明
(72)【発明者】
【氏名】王 向紅
(72)【発明者】
【氏名】張 孟▲キン▼
(72)【発明者】
【氏名】沈 艶
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004KA14
4E004MB12
4E004MB13
4E004MC05
4E004MC07
4E004NB02
4E004NC04
(57)【要約】
本発明は、冶金の技術分野に属し、具体的には、全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法に関する。当該方法は、鋳造過程において、鋳型内電磁撹拌及び凝固末期電磁撹拌を開始し、凝固末期電磁撹拌に対応する鋳片の中心固相率fs=0.1~0.2、引抜き速度1.6~3.0m/minに制御するステップと、鋳片の凝固末期に軽圧下を実施し、軽圧下区間に対応する鋳片の中心固相率fs=0.4~0.85であり、圧下量が8~16mmであり、かつ多ロールに分配して少量多ロール連続軽圧下操作を行うステップと、鋳片の中心固相率fsが1であるときに対応する1番目のプレスロールを用いて単ロール重圧下を実施するステップと、を含む。本発明の方法は、高炭素鋼の小方ビレットの効率的な生産を保証しながら均質化を実現し、高品質の高炭素鋼鋳片の省エネルギー、低消費、低コスト生産のために全く新しい生産プロセス経路を作成するだけでなく、小方ビレットから高品質の高炭素特殊鋼を生産するために重要な基礎を築く。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法であって、
小方ビレットの質量成分がC:0.67~1.0%、Si:0.12~0.50%、Mn:0.02~0.80%、P≦0.025%、S≦0.025%であり、残りが具体的に添加された合金及びFeであり、
当該方法は、
鋳造過程において、鋳型内電磁撹拌及び凝固末期電磁撹拌を開始し、凝固末期電磁撹拌に対応する鋳片の中心固相率fs=0.1~0.2、引抜き速度1.6~3.0m/minに制御するステップと、
鋳片の凝固末期に軽圧下を実施し、軽圧下区間に対応する鋳片の中心固相率fs=0.4~0.85であり、圧下量が8~16mmであり、かつ多ロールに分配して少量多ロール連続軽圧下操作を行うステップと、
鋳片の中心固相率fsが1であるときに対応する1番目のプレスロールを用いて単ロール重圧下を実施するステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
鋳型内電磁撹拌の電磁トルクの設定範囲は、13~20N mmであり、及び/又は、凝固末期電磁撹拌の電磁トルクの設定範囲は、15~30N mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法。
【請求項3】
軽圧下を実施するプレスロールは、連続して分布する5~10対のプレスロールであり、圧下速度の範囲を2mm/m~6mm/mに制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法。
【請求項4】
単ロール重圧下量は、10~15mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法。
【請求項5】
鋳造過程において、引抜き速度を2.0~2.8m/minに制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法。
【請求項6】
鋳造過程において、比水量は、0.25~1.2L/kgであり、過熱度は、20~35℃である、
ことを特徴とする請求項1に記載の全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法。
【請求項7】
小方ビレット鋳片の断面は、175mm×175mmである、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金の技術分野に属し、具体的には、全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炭素鋼は、連続鋳造過程において、深刻な中心のマクロ偏析、中心ポロシティ、引け巣及び内部割れなどの内部欠陥を形成しやすく、これらの欠陥の形成により、鋳片の均質性を大幅に低下させる。後続の工程がさらに悪影響を与えることを排除しない場合、これらの欠陥は、加熱及び圧延過程によって解消できないか又は顕著に改善できないと、後続の圧延材に組織と性能の顕著な差異又は異常が発生し、さらに、鋼材の加工過程、例えば、引き抜き時にカップアンドコーン型破壊が発生したり、他の使用過程において別の失効問題が発生したりする可能性がある。
【0003】
鋳片の均質性の改善に対して、一般的に用いられる技術的手段は、主に低過熱度注湯、高強度二次冷却及び引抜き速度制御、電磁撹拌、及び圧下技術など[1-6]がある。そのうち、低過熱度注湯は、注湯過程における温度制御に対する要求が非常に高く、順調な生産及び注湯安定性の変動を引き起こしやすく、高強度二次冷却及び引抜き速度制御は、中心偏析などに対して積極的な役割を果たすことができるが、鋳片の割れ欠陥の発生確率が大幅に増加し、生産効率も損なわれる。電撹拌技術、特に電磁撹拌技術は、継続的な発展及び改善を経た後、連続鋳造過程において非常に高い工業的適用率を実現するが、単一の電磁撹拌は、内部品質の改善に対して制限がある。
【0004】
連続鋳造凝固末期圧下技術は、近年広く適用されており、当該技術は、連続鋳造鋳片の中心偏析と緻密度を改善する有効な方法として一般的に考えられているが、当該方法は、現在、主に大断面を有する円形[7]、角形[8、9]、板状[10、11]鋳片に集中的に適用されており、小方ビレット(200mm以下)に対する報告及び適用例が少ない。その理由としては、小断面の場合、主に、その液体コアが小さく、圧下効果を把握しにくいため、軽圧下を行って改善する効果が顕著ではなく、大液体コアを有する大断面の条件に比べて明らかではないため、圧下プロセスが主に大断面を有する鋳片に適用されている。圧下の形式に関して、現在の圧下技術は、一般的に、鋳片が完全に凝固する前に軽圧下を実施するか、又は凝固末期若しくは完全凝固後にのみ重圧下を実施することに重点を置き、また、圧下プロセスのパラメータの設定は、圧下効果に影響を与える決定要素であり、圧下が適切でないと、鋳片内部の品質を改善できないだけでなく、鋳片内部の偏析分布の悪化及び割れなどの鋳片欠陥を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】薛正良、李正邦、張家▲ブン▲、高炭素鋼の連続鋳造方ビレットの中心偏析[J].製鋼、2000.16(1):56-59
【非特許文献2】王韜、陳偉慶、王宏斌ら、連続鋳造パラメータと凝固末期電磁撹拌による82B鋼の小方ビレットの中心炭素偏析への影響[J].特殊鋼、2013、34(1):49-51
【非特許文献3】何金平、呉健鵬、王国平、SWRH82B連続鋳造鋳片の中心偏析の改善[J].製鋼.2005.21(3):5-8
【非特許文献4】賈燕▲ロ▼、苗鋒、趙文成ら、凝固末期電磁撹拌によるΦ400mmの鋳片の炭素偏析への影響[J].熱加工プロセス、2012、41(7):61-65
【非特許文献5】安航航、包燕平、王敏ら、高炭素耐摩耗鋼球の大方ビレットの連続鋳造過程における凝固法則及び軽圧下過程における応用[J].中南大学学報(自然科学版).2018、49(05):1037-1046
【非特許文献6】趙軍普、劉瀏、范建文ら、軽圧下技術及びその連続鋳造における研究と応用[J].材料導報.2016、30(15):57-61
【非特許文献7】曹学欠、王穎、陳杰、大丸ビレットの連続鋳造軽圧下の有限要素分析[J].連続鋳造、2018、43(4):14-16
【非特許文献8】Seiji Nabeshima,Hakaru Nakato,Tetsuya Fujii,et al.Control of Centerline Segregation in Continuously Cast Blooms with Continuous Forging Process[J].CAMP-ISIJ,1994(7):179-182
【非特許文献9】李聿軍、李亮、蘭鵬ら、特殊鋼の大方ビレットの動的軽圧下の圧下量モデルについての研究[J].連続鋳造、2018、43(4):27-32
【非特許文献10】孟懷軍、▲ケイ▼飛、ビレット連続鋳造機のロールギャップ収縮制御技術の検討と最適化[J].広幅板、2013、19(2):31-35
【非特許文献11】Sei H,Akihiro Y,Yoshihisa S,et al.Development of new continuous casting technology(PCCS)for very thick plate[J].MateriaJapan,2009,48(1):20-22。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法を提供し、小方ビレットの動的軽圧下及び重圧下の効果的な結合と、凝固区間での連続圧下及び単点圧下の結合とを革新的に用い、また、鋳片組織の制御に対する電磁撹拌の相乗作用をさらに用いて、高炭素鋼の小方ビレットの均質性の効果的な向上を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために用いられる具体的な技術手段としては、全く新しい圧下モードに基づいて高炭素鋼の小方ビレット鋳片の均質性を改善する方法は、関係する高炭素鋼鋼種の小方ビレットの成分がC:0.67~1.0%、Si:0.12~0.50%、Mn:0.02~0.80%、P≦0.025%、S≦0.025%であり、残りが各鋼種に具体的に添加された合金及びFeであり、小方ビレットの規格が145~200mm(断面の辺長、好ましくは、鋳片の断面が175mm×175mmである)である。
【0008】
引抜き速度1.6~3.0m/min及び適切な二次冷却の条件下で、175mm×175mm断面の小方ビレットに注湯する。
【0009】
注湯過程において、鋳型内電磁撹拌(M-EMS)及び凝固末期電磁撹拌(F-EMS)を開始し、凝固末期電磁撹拌の位置に対応する鋳片の中心固相率fs=0.1-0.2であり、このとき、鋳片中心の液体コアは、依然として高い流動性を有し、撹拌作用下で水平回転運動を行うことができ、撹拌は、凝固末期に溶鋼の成分及び温度を均一化し、凝固二相領域の溶質元素の集積を低減する作用を果たす。電磁撹拌は、交互撹拌、即ち、方向変換間欠撹拌を用い、このように撹拌すると、凝固前線の溶鋼に規則的で強い撹拌運動を形成し続けることがなく、「帯状偏析」の発生を回避し、また、間欠撹拌は、柱状晶の回復と継続的な成長に有利であり、過度に大きな等軸晶の占める割合を制御することができ、等軸晶の占める割合が大きすぎることによる、収縮量が大きく、デンドライトが粗く、デンドライトが崩壊し、深刻なV字形偏析が発生するという悪影響を回避することができる。
【0010】
撹拌電流及び周波数の設定は、電磁トルクの発生を基準とし、好ましくは、鋳型内電磁撹拌電磁トルクの設定範囲は、13~20N mmであり、凝固末期電磁撹拌の電磁トルクの設定範囲は、15~30N mmである。
【0011】
鋳片の凝固末期に軽圧下を実施し、圧下区間に対応する鋳片の中心固相率fs=0.4~0.85であり、圧下量が8~16mmであり、かつ多ロールに分配して少量多ロール連続軽圧下操作を行う。フィーディングを効果的に行うことにより、収縮による負圧吸引により溶鋼を鋳片の中心に集中させることを回避し、後続の重圧下のフィーディング圧力を軽減する一方、鋳片の中心領域のデンドライト間の溶質元素リッチな溶鋼を液相に適切に還流させて溶質分配を改めて行い(過大な還流を行うことができず、そうでなければ、負偏析が増加する)、また、低中心固相率での凝固前線の圧下割れの発生と鋳片の膨れによる悪影響を防止する。
【0012】
好ましくは、軽圧下を実施するプレスロールは、連続して分布する5~10対のプレスロールであり、圧下速度の範囲を2mm/m~6mm/mに制御する。
【0013】
その後、鋳片の中心固相率fsが1になり、即ち、完全に凝固した後、対応する1番目のプレスロールを用いて単ロール重圧下を実施し、好ましくは、圧下量が10~15mmである。このとき、大きな圧下量の重圧下を行うことにより、圧下による中心割れの発生リスクを大幅に回避することができ、また、中心と表面の温度差を利用して、鋳片の顕著な拡幅を引き起こすことなく圧下を鋳片の中心に効果的に伝達し、中心引け巣を十分に圧着除去し、ポロシティを解消することに有利である。
【発明の効果】
【0014】
従来技術と比較して、本発明は、以下の技術的利点を有する。
【0015】
本発明の方法は、小方ビレットに動的機械的圧下を革新的に行い、軽圧下と重圧下を組み合わせ、連続圧下と単点圧下を合理的な圧下区間で組み合わせるという圧下方式を利用し、軽圧下による鋳片偏析に対する積極的な作用、重圧下による鋳片の緻密度に対する積極的な作用、及び相乗効果を十分に利用し、高炭素鋼の小方ビレット鋳片の高生産効率条件下での内部品質の大幅かつ効果的な向上を実現する。動的圧下の実施及び圧下パラメータの合理的なオンライン調整は、鋼種が変化し、温度が変化し、冷却が変化し、引抜き速度が変化するという注湯条件下での高品質鋳片の安定生産に対して有利な条件を生み出し、当該発明方法の鋼種及び注湯条件の適用性を大幅に向上させる。また、電磁撹拌による鋳片の内部組織の制御に対する相乗効果により、鋳片の中心の均質化の制御と改善をさらに強化する。最終的に、高炭素鋼の小方ビレット鋳片の中心偏析指数を1.08以内に安定的に制御し、中心緻密度に関して、明らかな引け巣、範囲の大きいポロシティがなく、鋳片の表面と内部には、肉眼で確認できる明らかな割れがない。高炭素鋼の小方ビレットの効率的な生産を保証しながら均質化を実現し、高品質の高炭素鋼鋳片の省エネルギー、低消費、低コスト生産のために全く新しい生産プロセス経路を作成するだけでなく、小方ビレットから高品質の高炭素特殊鋼を生産するために重要な基礎を築く。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、以下の具体的な実施形態に限定されず、当業者であれば、本発明の開示内容に基づいて、他の様々な具体的な実施形態を用いて本発明を実施することができ、或いは、本発明の設計構造及び構想を用いて簡単に変化するか又は変更して得られるものは、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。なお、本発明における実施例及び実施例における特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0017】
以下、実施例を参照して本発明をさらに詳しく説明する。
【0018】
上記各代表鋼種について、注湯実施過程において、引抜き速度が2.0~2.8m/minであり、比水量が0.25~1.2L/kgであり、過熱度が20~35℃であり、各鋼種に対応する具体的な注湯基本パラメータを表1に示す。
【0019】
注湯過程において、鋳型内電磁撹拌及び凝固末期電磁撹拌を開始し、各鋼種の鋳型内電磁撹拌及び凝固末期電磁撹拌の電磁トルクなどの実施パラメータを表2に示す。凝固末期電磁撹拌は、方向変換間欠撹拌を用い、具体的な間隔が10s-3s-10sに設定され、即ち、正方向の回転が10s持続し、3s停止し、逆方向の回転が10s持続し、このように1サイクルとして動作する。凝固末期電磁撹拌の作用位置に対応する鋳片の中心固相率fsは、それぞれ0.12、0.15、0.13及び0.18である。
【0020】
鋳片の凝固末期に連続多ロール動的軽圧下(fsが04~0.85である範囲内の連続多ロール軽圧下)を実施し、各代表鋼種の動的軽圧下に関するパラメータを表3に示す。圧下区間に対応する鋳片の中心固相率fsの範囲は、主に0.4~0.85に集中し、具体的な鋼種の対応値は、鋼種の特性及び注湯条件による二相領域の分布の違いにより若干異なる。総動的軽圧下量は、代表鋼種の炭素含有量の増加に伴って10mmから16mmに増加し、プレスロール対数は、5対から10対に増加し、軽圧下区間の圧下率は、各ロールの圧下量及びロール間隔の違いにより2~6mm/mの間で変化する。
【0021】
各鋼種の注湯過程において、鋳片が完全に凝固し、即ち、fs=1になった後に、1番目のロールを用いて単ロール重圧下を再び実施し、各代表鋼種の圧下量が10~15mmである。
【0022】
【0023】
【0024】
全く新しい組み合わせ圧下モードの実施パラメータ
【表3】
【0025】
上記実施条件下で、各代表鋼種の鋳片の均質化指標の検証結果を表4に示す。この表から分かるように、実施後の175mm×175mmの小方ビレットの5点穴あけ法に対応する中心偏析指数がいずれも1.08以内に制御され、標準YB/T153-2015に基づいて均一性評価を行い、中心ポロシティが0.5グレードを超えず、中心引け巣が見られず、様々な内部割れがほとんど発生せず、かつ最大グレードが0.5グレードを超えない。
【0026】
実施例における鋳片の均質性の指標
【表4】
*5点穴あけ法による鋳片の横断面穴あけ試料から得られ、Φ5mmの切屑に炭素硫黄分析を行い、偏析指数=中心点のC含有量/本体のC含有量の平均値である。
#実行標準YB/T153-2015
【0027】
比較例1において、引抜き速度が低く、圧下を行わず、電磁撹拌のみを行い、他のパラメータが最適化調整後のものである。
【0028】
鋼種の成分は、C:0.72%、Si:0.23%、Mn:0.56%、P:0.011%、S:0.009%であり、残りがFeである。
【0029】
注湯過程において、引抜き速度が1.6m/minであり、比水量が0.56L/kgであり、過熱度が15~20℃である。
【0030】
鋳型内電磁撹拌と凝固末期電磁撹拌を開始し、鋳型内電磁撹拌の電磁トルクが15N mmであり、凝固末期電磁撹拌の電磁トルクが30N mmに設定され、凝固末期電磁撹拌が単一方向の連続撹拌を用いる。凝固末期電磁撹拌の作用位置に対応する鋳片の中心固相率fs=0.35である。
【0031】
比較例2において、圧下範囲が0.4≦fs<1をカバーし、0.9≦fs<1.0で重圧下を行い、他のパラメータが最適化調整後のものである。
【0032】
鋼種の成分は、C:0.82%、Si:0.25%、Mn:0.68%、P:0.022%、S:0.010%であり、残りがFeである。
【0033】
注湯過程において、引抜き速度が2.5m/minであり、比水量が0.25L/kgであり、過熱度が20~35℃である。
【0034】
鋳型内電磁撹拌と凝固末期電磁撹拌を開始し、鋳型内電磁撹拌の電磁トルクが15N mmであり、凝固末期電磁撹拌の電磁トルクが23N mmに設定される。凝固末期電磁撹拌は、方向変換間欠撹拌を用い、具体的な間隔が10s-3s-10sに設定され、即ち、正方向の回転が10s持続し、3s停止し、逆方向の回転が10s持続し、このように1サイクルとして動作する。凝固末期電磁撹拌の作用位置に対応する鋳片の中心固相率fs=0.15である。
【0035】
鋳片の凝固末期に動的軽圧下と重圧下を連続的に実施し(fsが0.2~0.9である範囲内で軽圧下を実施し、連続的に0.9~1.0である範囲内で重圧下を実施する)、圧下区間に対応する鋳片の中心固相率fsの範囲が0.4~1であり、軽圧下の作用区間において、fsが0.4~0.9であり、軽圧下量が14mmであり、6組の連続的なプレスロールによって実施し、当該過程の圧下率が1~5mm/mである。その後に、0.9≦fs<1.0になるときに、区間に対して単ロール重圧下を再び実施し、圧下量が7mmである。
【0036】
比較例3において、圧下量が低fsに集中し、他のパラメータが最適化調整後のものである。
【0037】
鋼種の成分は、C:0.86%、Si:0.22%、Mn:0.54%、P:0.014%、S:0.009%であり、残りがFeである。
【0038】
注湯過程において、引抜き速度が2.6m/minであり、比水量が0.60L/kgであり、過熱度が20~35℃である。
【0039】
鋳型内電磁撹拌と凝固末期電磁撹拌を開始し、鋳型内電磁撹拌の電磁トルクが15N mmであり、凝固末期電磁撹拌の電磁トルクが23N mmに設定される。凝固末期電磁撹拌は、方向変換間欠撹拌を用い、具体的な間隔が10s-3s-10sに設定され、即ち、正方向の回転が10s持続し、3s停止し、逆方向の回転が10s持続し、このように1サイクルとして動作する。凝固末期電磁撹拌の作用位置に対応する鋳片の中心固相率fs=0.15である。
【0040】
鋳片の凝固末期に動的軽圧下と重圧下を段階的に実施し、軽圧下区間に対応する鋳片の中心固相率fsの範囲が0.2~0.6であり、軽圧下量が14mmであり、4対のロールによって圧下を実施し、当該過程の圧下率が2.5~5mm/mであり、圧下量の分配と圧下率は、低中心固相率に基づいて最適化調整されたものである。その後に、完全に凝固し、即ち、fs=1になった後、単ロール重圧下を再び実施し、圧下量が14mmである。
【0041】
比較例4において、電磁撹拌を行わず、軽圧下量が大きすぎ、重圧下を行わない。
【0042】
鋼種の成分は、C:0.92%、Si:0.24%、Mn:0.33%、Cr:0.27%、P:0.021%、S:0.016%であり、残りがFeである。
【0043】
注湯過程において、引抜き速度が2.7m/minであり、比水量が1.12L/kgであり、過熱度が20~35℃である。
【0044】
鋳型内電磁撹拌を開始し、鋳型内電磁撹拌の電磁トルクが15N mmであり、凝固末期電磁撹拌を行わない。
【0045】
鋳片の凝固末期に大きな圧下量の動的軽圧下を実施し、軽圧下区間に対応する鋳片の中心固相率fsの範囲が0.4~0.7であり、軽圧下量が32mmであり、8組の連続的なプレスロールによって実施し、当該過程の圧下率が4.5~8.5mm/mである(本比較例において、軽圧下区間に対応する鋳片の中心固相率及び圧下率は、いずれも大きな圧下量に基づいて最適化調整されたものである)。
【0046】
完全凝固後に重圧下を実施しない。
【0047】
比較例における鋳片の均質性の指標
【表5】
*5点穴あけ法による鋳片の横断面穴あけ試料から得られ、Φ5mmの切屑に炭素硫黄分析を行い、偏析指数=中心点のC含有量/本体のC含有量の平均値である。
#実行標準YB/T153-2015
【0048】
表5から分かるように、比較例の条件下で、鋳片の中心偏析が明らかに上昇し、正偏析がいずれも1.13以上であり、最高値が1.21に達し、かつ中心固相率fsが低い場合、大きすぎる圧下量による中心負偏析が現れる。中心の緻密度の面に、異なる程度の中心ポロシティが依然として存在し、さらに明らかな中心引け巣が現れる。内部割れに関して、異なる比較例における不適切な圧下により、異なる部位に異なる程度の内部割れが現れる。
【0049】
以上の内容は、本発明の好ましい具体的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲は、これに限定されるものではなく、当業者が本発明に開示された技術的範囲内で本発明の技術手段及びその発明思想に基づいて行う同等置換又は変更は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】