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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ボトリティスのRNAベースの防除
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240806BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/82 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 5/14 20060101ALI20240806BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20240806BHJP
   C12N 15/866 20060101ALI20240806BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240806BHJP
   A01N 63/60 20200101ALI20240806BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N1/14 A
C12N15/82 Z
C12N5/14
A01H5/00 A
C12N15/866 Z
A01P3/00
A01N63/60
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504793
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 US2022074168
(87)【国際公開番号】W WO2023010022
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/225,758
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】511152991
【氏名又は名称】グリーンライト バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】GREENLIGHT BIOSCIENCES,INC.
【住所又は居所原語表記】200 Boston Avenue, Suite 1000, Medford, MA 02155, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】マッコークル,ケストレル
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】デヴィセティ,ウペンドラ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ,サムビット・クマール
(72)【発明者】
【氏名】カリー,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】スリダラン,クリシュナクマール
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ユフェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA88X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA53
4H011AA03
4H011BB19
4H011DH15
(57)【要約】
特に植物におけるボトリティス感染を治療または防除する剤、組成物および方法が開示される。特定の剤は、ボトリティス・シネレア真菌細胞に投与される場合にRNAiを誘導するポリヌクレオチド分子を含む。特定の実施形態では、組成物は、ボトリティス・シネレアのDNAまたは標的遺伝子、または当該DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの断片に対して本質的に相補的であるか、または当該断片に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む殺菌的に有効な量のポリヌクレオチドを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトリティス・シネレアを防除するための組成物であって、
(a)配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子、または前記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの断片に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む、殺菌的に有効な量のポリヌクレオチド、または
(b)DNAまたは標的遺伝子または前記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%の配列同一性を有する少なくとも1つのサイレンシング要素を含む、殺菌的に有効な量の少なくとも1つのポリヌクレオチドであって、前記DNAまたは標的遺伝子が、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する、殺菌的に有効な量の少なくとも1つのポリヌクレオチド、または
(c)配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子、または前記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの断片の少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する、少なくとも1つの断片を含む、殺菌的に有効な量の少なくとも1つのRNA、または
(d)前記ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、ボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または増殖/生殖能力の低下を引き起こすRNA分子であって、前記RNA分子が、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子または前記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの断片に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む、RNA分子、または
(e)前記ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、ボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または増殖/生殖能力の低下を引き起こす2本鎖RNA分子であって、前記2本鎖RNA分子の少なくとも1つの鎖が、DNAまたは標的遺伝子または前記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの断片に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも85%、90%、95%、98%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含み、前記DNAまたは標的遺伝子は、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する、2本鎖RNA分子、または
(f)配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列、または前記ヌクレオチド配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する配列を含む少なくとも1つの鎖を含む、殺菌的に有効な量の少なくとも1つの2本鎖RNA、または
(g)配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列、または前記ヌクレオチド配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する配列の少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む、殺菌的に有効な量のポリヌクレオチド、または
(h)配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列の少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも1つの断片を含む、殺菌的に有効な量の少なくとも1つのRNA、または
(i)前記ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、植物上のボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または生殖/増殖能力の低下を引き起こすRNA分子であって、前記RNA分子が、配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列の断片に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む、RNA分子、または
(j)前記ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、ヴィティス・ヴィニフェラ上のボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または生殖/増殖能力の低下を引き起こす2本鎖RNA分子であって、前記殺菌性の2本鎖RNA分子の少なくとも1つの鎖が、配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列の断片に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む、2本鎖RNA分子、または
(k)前記ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、植物上のボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または生殖/増殖能力の低下を引き起こす2本鎖RNA分子であって、前記殺菌性の2本鎖RNA分子の少なくとも1つの鎖が、配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列の断片に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する、2本鎖RNA分子、を含む、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、固体、液体、粉末、懸濁液、乳濁液、スプレー、カプセル化、マイクロビーズ、担体粒子、フィルム、マトリックス、種子処理、土壌ドレンチ、および埋め込み型製剤からなる群より選択される少なくとも1つの形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
担体剤、界面活性剤、有機シリコーン、有機シリコーン界面活性剤、ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、毒性緩和剤、および病原体成長制御剤からなる群より選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチド、または前記RNA、または前記dsRNAが、前記ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたは接触する場合に、植物上のボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または生殖能力(胞子形成)の低下を引き起こす2本鎖RNA分子を含み、前記2本鎖RNA分子が、配列番号2、7、9、11および12からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子、または前記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも21個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも95%の配列同一性を有する少なくとも1つの断片を含み、前記二本鎖RNA分子の長さが、少なくとも100個の塩基対の長さであるか、または約100個の塩基対から約600個の塩基対の間の長さである、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチド、または前記RNA、または前記dsRNAが、配列番号26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む第1の鎖を含むdsRNAを含む、請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の鎖が、配列番号26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列に対して少なくとも約98%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチド、または前記RNA、または前記dsRNAが、前記第1の鎖に相補的な第2の鎖をさらに含む、請求項5または6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記(f)、(g)、(h)、(i)、(j)または(k)のヌクレオチド配列が、配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記(a)~(e)において列挙されるDNAまたは標的遺伝子が、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ボトリティス・シネレアの標的遺伝子の発現を抑制するdsRNAであって、前記dsRNAの第1の鎖が、少なくとも100個のヌクレオチドの長さを有し、配列番号14、19、21、23、および24からなる群より選択される配列によってコードされるRNAの少なくとも100個の連続したヌクレオチドに対して85%~100%相補的であるRNA配列を含む、dsRNA。
【請求項11】
前記dsRNAの第2の鎖が前記第1の鎖に対して相補的である、請求項10に記載のdsRNA。
【請求項12】
前記dsRNAの前記第1の鎖が、前記14、19、21、23、および24からなる群より選択される配列によってコードされるRNAに対して95%~100%相補的であるヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載のdsRNA。
【請求項13】
前記dsRNAが、配列番号26、31、33、35、36、38、43、45、47、及び48からなる群より選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも約98%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項12に記載のdsRNA。
【請求項14】
前記dsRNAが、配列番号26のヌクレオチド配列を含む、請求項12または13のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項15】
ボトリティス・シネレアの標的遺伝子の発現を抑制するdsRNAであって、前記dsRNAの第1の鎖が、配列番号26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列に対して少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも約98%同一、約100%同一、または100%同一であるRNA配列を含む、dsRNA。
【請求項16】
前記第1の鎖に相補的な第2の鎖をさらに含む、請求項15に記載のdsRNA。
【請求項17】
前記dsRNAの前記第1の鎖が、配列番号26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列に対して少なくとも約98%同一であるRNA配列を含む、請求項15および16のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項18】
前記dsRNAの前記第1の鎖が、配列番号26に対して少なくとも約98%同一であるRNA配列を含む、請求項17に記載のdsRNA。
【請求項19】
スプレー可能な溶液、乳濁液、タンクミックス、および粉末からなる群より選択される形態で適用するために製剤化された、請求項10~18のいずれか一項に記載のdsRNAを含む組成物。
【請求項20】
担体剤、界面活性剤、有機シリコーン、有機シリコーン界面活性剤、ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド除草剤分子、ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺菌剤、非ポリヌクレオチド殺菌剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド殺虫剤、毒性緩和剤、および病原体成長制御剤からなる群より選択される1つ以上の追加の成分をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記(a)~(e)、(g)~(j)において列挙される少なくとも18個の連続したヌクレオチドが、少なくとも400個の連続したヌクレオチドである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
植物のボトリティス・シネレア感染を防除するための方法であって、前記ボトリティス・シネレアを、請求項1~21の組成物のうちのいずれかと接触させることを含む、方法。
【請求項23】
植物のボトリティス・シネレア感染を防除するための方法であって、前記植物に、請求項1~21の組成物のいずれかを局所的に適用することを含む方法。
【請求項24】
前記局所的な適用が、前記植物の葉、茎、花、または果実に前記組成物をスプレーすることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記局所的な適用が、前記植物の葉に前記組成物をスプレーすることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記植物が、結実植物、野菜、または観賞植物からなる群より選択され、任意選択で、そのような植物が、イチゴ、ブドウ、トマト、またはマメからなる群より選択される、請求項22、23、24、または25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
RNA干渉が誘導され、ボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性の低下、病原性の低下、増殖/生殖能力(胞子形成)の低下が起こる、請求項21、22、23、24、25または26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
植物のボトリティス・シネレア感染を防除するための方法であって、
(a)前記ボトリティス・シネレアを、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子、または前記DNAまたは標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも85%、90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドと接触させること、または
(b)前記植物に、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子、または前記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも85%、90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物を局所的に適用すること、または
(c)配列番号1~12からなる群より選択される配列を有するDNAの少なくとも18個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを、前記植物内に発現させること、
(d)前記ボトリティス・シネレアを、少なくとも1つの鎖が配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列の少なくとも18個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも85%、90%または95%の配列同一性を有する断片を含む殺菌的に有効な量の2本鎖RNAと接触させること、または
(e)前記植物に、少なくとも1つの鎖が配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列の少なくとも18個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも85%、90%もしくは95%の配列同一性を有する断片を含む殺菌的に有効な量の2本鎖RNAを局所的に適用すること、を含む、方法。
【請求項29】
前記ポリヌクレオチドが、2本鎖RNAである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記2本鎖RNAが化学的もしくは酵素的に合成されるか、または微生物においての発現もしくは植物細胞においての発現によって生成される、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記2本鎖RNAが、配列番号26の少なくとも21個の連続したヌクレオチドを含むヌクレオチド配列を有する鎖を含む、請求項28、29または30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記2本鎖RNAが、配列番号26を含む鎖を含む、請求項28、29、または30、31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項28(d)または(e)のヌクレオチド配列が配列番号26である、請求項28、29、30、31または32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が、前記植物に、配列番号26の少なくとも18個、19個、20個または21個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも85%、90%または95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物を局所的に適用することを含む、請求項28、29、30、31または32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、前記ボトリティス・シネレアを、2本鎖RNAを含む有効量の溶液と接触させることであって、前記2本鎖RNAの少なくとも1つの鎖が、配列番号2のヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子の少なくとも18個、19個、20個または21個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも85%、90%または95%の配列同一性を有し、RNA干渉が誘導され、ボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または増殖/生殖能力(胞子形成)の低下が起こる、ことを含む、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記溶液が、有機シリコーン界面活性剤、担体剤、有機シリコーン、有機シリコーン界面活性剤、ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド除草剤分子、ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド殺虫剤、毒性緩和剤、および病原体成長制御剤からなる群より選択される1つ以上の成分をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記植物が、ブドウ、トマト、イチゴ、またはマメである、請求項28~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記(a)~(e)において列挙される少なくとも18個の連続したヌクレオチドが、少なくとも400個の連続したヌクレオチドである、請求項28~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
請求項28~37のいずれか一項に記載の方法によって提供される、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物、または前記植物の果実、種子もしくは増殖可能な部分。
【請求項40】
前記植物が、結実植物、野菜、または観賞植物からなる群より選択され、任意選択で、そのような植物がブドウ、イチゴ、トマト、またはマメからなる群より選択される、請求項39に記載の植物。
【請求項41】
以下に操作可能な形で連結される異種プロモーターを含む組換えDNA構築物
(a)配列番号1~12からなる群より選択される配列を有する標的遺伝子または前記標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも85%、90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むDNA、または
(b)配列番号1~12からなる群より選択される配列を有するDNA、またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して少なくとも85%、90%または95%の同一性を有する少なくとも18個の連続したヌクレオチドを含むDNA、または
(c)標的遺伝子または前記標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも85%、90%もしくは95%の配列同一性を有する少なくとも1つのサイレンシング要素をコードするDNAであって、前記標的遺伝子が、配列番号1~12からなる群より選択される配列を有する、DNA、または
(d)配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列またはそれに対して少なくとも85%、90%もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むRNAをコードするDNA。
【請求項42】
請求項41に記載の組換えDNA構築物を含む、植物染色体または色素体または組換え植物ウイルスベクターまたは組換えバキュロウイルスベクター。
【請求項43】
請求項41の組換えDNA構築物をゲノムにおいて有するトランスジェニック植物細胞であって、そのような植物細胞が、結実植物、野菜、または観賞植物の細胞からなる群より選択され、任意選択で、そのような植物細胞が、イチゴ、ブドウ、トマト、またはマメの細胞からなる群より選択される、トランスジェニック植物細胞。
【請求項44】
請求項43に記載のトランスジェニック植物細胞を含むトランスジェニック植物、または前記トランスジェニック植物の果実、種子もしくは増殖可能な部分。
【請求項45】
前記(a)~(d)において列挙される少なくとも18個の連続したヌクレオチドが、少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドである、請求項43または44のいずれか一項に記載の植物。
【請求項46】
請求項1~39のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、RNA、またはdsRNAをコードするDNA。
【請求項47】
前記(a)~(c)において列挙される少なくとも18個の連続したヌクレオチドが、少なくとも400個の連続したヌクレオチドである、請求項41に記載の組換えDNA構築物。
【請求項48】
前記(a)~(c)において列挙される少なくとも18個の連続したヌクレオチドが、少なくとも400個の連続したヌクレオチドである、請求項42に記載の植物染色体または色素体または組換え植物ウイルスベクターまたは組換えバキュロウイルスベクター。
【請求項49】
前記(a)~(c)において列挙される少なくとも18個の連続したヌクレオチドが、少なくとも400個の連続したヌクレオチドである、請求項43に記載のトランスジェニック植物細胞。
【請求項50】
植物上のボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子の発現を抑制する殺菌的に有効な量のポリヌクレオチドを含む組成物であって、前記標的遺伝子が、Sec18/Cdc48、CDC42、NBP35、SDH、Bcrrp1、XM_024691746.1、Bcsec15、Bcswd2、Bcmcm4、Bcgpi2、Bcrpb5、およびBcded1からなる群より選択される、組成物。
【請求項51】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列の断片に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む2本鎖RNA分子である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記組成物が、可溶性液体濃縮物、懸濁液、コロイド、ミセル、および乳濁液からなる群より選択される液体混合物の形態である、請求項2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、全体が参照により本出願に組み込まれている、2021年7月26日に出願された米国仮特許出願第63/225,758号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
壊死性真菌であるボトリティス・シネレアは、1,000種を超える植物に侵入することが報告されており(Williamson et al.,2007;Elad et al.,2016)、これらの植物の多くは経済的に非常に重要である。野菜(例えば、キュウリ、トマト、ズッキーニ)や結実植物(例えば、イチゴ、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー)を含む農作物は、この病原体から最も深刻な影響を受けるもののうちのいくつかである(Jarvis et al.,1962;Elad et al.,2016)。ボトリティス・シネレアは、世界中で100億ドルから1,000億ドルの農業損失を引き起こしていると推定される。例えば、ボトリティス果実腐敗病(Botrytis fruit rot、BFR)は、2007年から2016年にかけてイチゴ収穫量の36%の減少に寄与し、その結果、年間2億5,000万ドルの純生産価値の損失をもたらした(Qushim et al.,2018)。ボトリティス・シネレアは、非常に破壊的な性質を持っているため、科学的および経済的に重要な真菌病原体のリスト上で2番目にランク付けされている(Dean et al.,2012)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ボトリティス・シネレアは死体栄養性病原体として分類されているが、これは、それが損傷組織または老化組織に侵入し、そして成長し、最終的には細胞死および組織死を引き起こす傾向があるという意味である。病気の症状が、葉、茎、花、および農産物上の灰色がかった色の、柔らかくて、どろどろした斑点として現れる。したがって、ボトリティス・シネレアに起因する様々な植物や植物部位の病気は、よく「灰色かび病」または「ボトリティス腐敗病」と呼ばれている。特に湿度が高い場合、斑点が灰色の真菌胞子のコーティングで覆われる可能性がある。果物や植物は萎びて、腐って、そしてよく黒色の、石のような菌核(高度に黒化した真菌の越冬構造)を形成する。真菌の接種材料(例えば、無性の分生子や胞子)は非常に豊富で遍在しており、通常は感染した植物組織に由来する(Jarvis,1962)。ボトリティス・シネレアに起因する病気の防除または管理は、化学的殺菌剤に大きく依存している。さらに、ボトリティス・シネレアは、殺菌剤耐性菌対策委員会(Fungicide Resistance Action Committee、FRAC;www.frac.info)によれば、殺菌剤耐性発現に関してリスクが高い病原体と考えられている。登録されたすべての灰色かび病防除用の部位特異的化学殺菌剤に耐性があるボトリティス・シネレア分離株の発見は、植物病原性真菌における耐性発現のこれまでにない例を示す(Leroch et al.,2013;Fernandez-Ortuno et al.,2015)。さらに、この発見は、これらの耐性真菌の遺伝子型が野外個体群で優勢になった場合、部位特異的でリスクを低くした殺菌剤が最終的に病気の防除や総合的な害虫管理に役立たなくなる可能性があることを示す。さらに、化学的殺菌剤は、環境に有害である可能性があり、特異性または選択性が欠けている可能性があり、最終的に非標的効果をもたらす(例えば、非標的有益生物に影響する)可能性がある。したがって、ボトリティス・シネレア感染を防除するためのより環境に優しくて新規な病気防除戦略が長年にわたって必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの問題に取り組むために、本発明は、特に、結実植物、野菜、および観賞植物などの植物の葉や他の地上部分にスプレーされる場合に、RNA干渉(RNAi)のプロセスを通じてボトリティス・シネレアの成長を選択的に減らすまたは無くす局所的に適用される2本鎖(ds)RNAを対象とする。
【0005】
RNA干渉(RNAi)技術は内部の生物学的プロセスを通じて害虫や病原体の遺伝子発現をサイレンシングする、高度に選択的な生物学的処理であることが示されている。RNAiを開始する2本鎖RNA(dsRNA)の外因性適用は、特定の植物害虫種を効果的に防除するために使用されている。本開示は、RNAi組成物を使用して真菌病原体であるボトリティス・シネレアを防除するアプローチを対象とする。特定の実施形態では、植物に投与される外因性dsRNAの適用を使用することによってボトリティス・シネレア防除を提供する方法および組成物が記載される。そのようなdsRNAは、特定のボトリティス・シネレア標的遺伝子の発現を調節するように設計される特定のトリガー配列を含む。RNAi調節のための潜在的な標的遺伝子を特定するために、ボトリティス・シネレアの全ゲノム情報を分析して、RNAiトリガーによる潜在的な標的のための遺伝子配列を特定する。トリガーは、特定の設計基準を満たすトリガー配列を作成するために、公的に入手可能なRNAi設計ツールと組み合わせる独自の計算アルゴリズムを通じて設計される。RNAiを介するボトリティス・シネレアの防除のためのいくつかのそのようなトリガーが本明細書に記載され特許請求されている。本明細書で特許請求されかつ表1Aに開示される特定のトリガーによるボトリティス・シネレアの処理の後、表1Bに記載されかつ実施例1で説明されるように、インビトロでの真菌成長の減少が観察された。その後、表2~表10および図1図5に開示されかつ例2~例3で説明されるように、実験室および温室アッセイでの植物または植物部位への適用の後の特定のトリガーは、ボトリティス・シネレアに起因する灰色かび病および症状を軽減する能力を実証した。重要なことには、実施例4および図6~10で説明されるように、本明細書に記載されかつ特許請求されている特定のトリガーおよび組成物は評価され、経済的に重要な植物に対する大規模野外現地試験においてボトリティス・シネレアに起因する病気を軽減する有効性をすでに示している。
【0006】
本明細書に記載される組成物および方法は、ボトリティス・シネレア感染を防除または予防するのに有用な、本明細書で「トリガー」と呼ばれる、1本鎖もしくは2本鎖のDNAもしくはRNA分子などの組換えポリヌクレオチド分子、またはボトリティス・シネレア感染に耐性があるトランスジェニック植物を作製するための組換えDNA構築物を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドトリガーは、ボトリティス・シネレアによる植物の感染を防除または予防するための局所的に適用された剤として提供される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドトリガーを発現する(種子または増殖可能な部分を含む)トランスジェニック植物などの、ボトリティス・シネレアによる感染に対して強化された耐性を有する植物が提供される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドトリガーを含む組成物で局所的に処理された(種子または増殖可能な部分を含む)植物(例えば、dsRNA分子の溶液でスプレーされている植物)が提供される。ボトリティス・シネレア、またはボトリティス・シネレアによる感染から保護される植物、植物部位もしくは種子に局所的に適用されるポリヌクレオチド含有組成物も提供される。本明細書に記載される実施形態から特に恩恵を受ける植物としては、ブドウ、トマト、イチゴ、スナップエンドウ、ナス、唐辛子、ピーマン、トマティーロ、グランドチェリー、ケープグーズベリー、タバコ、リンゴ、ナシ、マルメロ、モモ、プラム、チェリー、アーモンド、アプリコット、ブラックベリー、ブルーベリー、ラズベリー、カーネーション、ペチュニア、およびバラが挙げられるが、これらに限定されない。
【0007】
いくつかの実施形態は、ポリヌクレオチドトリガーによるボトリティス・シネレアにおける標的遺伝子の抑制に関する。本明細書には、配列番号1~12からなる、本明細書で「標的遺伝子配列群」または「標的遺伝子配列」と呼ばれる標的遺伝子のヌクレオチド配列が提供される。本発明の特定の実施形態は、RNAiをもたらすこれらの標的遺伝子のRNA転写物にハイブリッド化するように設計されるポリヌクレオチドに関する。また、配列番号13~24、49~52からなる、本明細書で「トリガー配列群」または「トリガー配列」と呼ばれる、標的遺伝子を標的とするトリガーのヌクレオチド配列も提供される。さらに、配列番号25~36、53~56からなる、これらのトリガーのRNA配列、「RNAトリガー配列群」または「RNAトリガー配列」が本明細書に提供される。RNAトリガー配列群は、チミンをウラシルに置き換えることを除いて、トリガー配列群と同じである。配列番号37~48、57~60からなる、「RNAトリガー配列逆相補体群」または「RNAトリガー配列逆相補体」と呼ばれる、RNAトリガー配列群に対する逆相補体も本明細書に提供される。RNAトリガー配列逆相補体群は、5’から3’に読まれるRNAトリガー配列群における配列に対する完全な相補体である。トリガー配列群およびRNAトリガー配列群は、標的遺伝子配列の対応したmRNA転写物に従って、そのような転写物上のRNAiに影響するように設計され、関連したタンパク質の翻訳を防止するかまたは減少させ、真菌の防除をもたらす。本明細書に提供される表1Aは、様々な遺伝子標的配列を、それらの対応したトリガー配列、RNAトリガー配列、およびRNAトリガー逆相補体配列とマッチする。配列番号は、本明細書とともに提出される配列番号リストに提供される配列に関する。
【0008】
一態様では、植物のボトリティス・シネレア感染を防除するための方法は、ボトリティス・シネレアを、標的遺伝子配列群からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する標的遺伝子またはそのDNA相補体の対応した断片に対して約95%~約100%の同一性を有する配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片(例えば、100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの断片が含まれる)を含むポリヌクレオチドと接触させることを含む。一実施形態では、植物のボトリティス・シネレア感染を防除するための方法は、ボトリティス・シネレアを、標的遺伝子配列群からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはいくつかの実施形態では、配列番号2、7、9、11、12からなる群より選択される配列を有する標的遺伝子、または当該標的遺伝子から転写されるRNAの少なくとも18個の連続したヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号23~36からなる群より選択される配列の少なくとも18個の連続したヌクレオチドに対して相補的であるか、または約95%~約100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子によってコードされるmRNAに対して相補性を有するように設計される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、2本鎖RNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、もしくはRNAトリガー配列逆相補体群より選択されるか、またはより特別に配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、または48からなる群より選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドを含む組成物もしくは溶液の局所的な適用は、ポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドを含む組成物もしくは溶液を、ボトリティス・シネレアに感染しているかまたは感染する可能性がある結実植物、野菜、または観賞植物の地上部分(例えば、花、茎、および/または葉)にスプレーすることによって達成される。いくつかの実施形態では、植物は、ブドウ、イチゴ、トマト、マメ、ナス、唐辛子、ピーマン、トマティーロ、グランドチェリー、ケープグーズベリー、タバコ、リンゴ、ナシ、マルメロ、モモ、プラム、チェリー、アーモンド、アプリコット、ブラックベリー、ブルーベリー、ラズベリー、カーネーション、ペチュニア、もしくはバラ、またはそれらの変種である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドとの接触は、ポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドを含む組成物もしくは溶液を、直接ボトリティス・シネレアに局所的に適用するか、またはボトリティス・シネレアと接触する表面またはマトリックス(例えば、植物または土壌)に局所的に適用することによって(例えば、スプレーまたは散布または浸漬によって)達成される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドとの接触は、ボトリティス・シネレア感染を防除する配列を発現するトランスジェニック植物を提供することによって達成される。
【0009】
いくつかの実施形態は、ボトリティス・シネレアを、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有する標的遺伝子またはそのDNA相補体の対応した断片に対して約95%~約100%の同一性を有する配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片(例えば、100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの断片)を有するポリヌクレオチドを含む剤に曝露することによって、植物のボトリティス・シネレア感染を防除するための方法であって、上記剤は、ボトリティス・シネレアの接触または摂取(例えば、内部吸収/トランスフェクション)の後に機能し、ボトリティス・シネレアにおける生物学的機能を抑制することによって、ボトリティス・シネレア感染を防除する方法に関する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、もしくはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含むか、またはポリヌクレオチドは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、もしくはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される1つ以上のヌクレオチド配列に対して約95%~約100%同一である1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、2本鎖RNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、米国特許第10,858,385号または第10,954,541号に記載されるRNAの無細胞生成のプロセスのうちのいずれか1つを通じて作製される2本鎖RNAであり、上記特許の両方は参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
いくつかの実施形態では、剤は、
(a)配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子、または上記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの断片に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む、殺菌的に有効な量のポリヌクレオチド、または
(b)DNAまたは標的遺伝子または上記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%の配列同一性を有する少なくとも1つのサイレンシング要素を含む、殺菌的に有効な量の少なくとも1つのポリヌクレオチドであって、上記DNAまたは標的遺伝子が、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する、殺菌的に有効な量の少なくとも1つのポリヌクレオチド、または
(c)配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子、または上記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの断片の少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する、少なくとも1つの断片を含む、殺菌的に有効な量の少なくとも1つのRNA、または
(d)上記ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、ボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または増殖/生殖能力の低下を引き起こすRNA分子であって、上記RNA分子が、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子または上記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの断片に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む、RNA分子、または
(e)上記ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、ボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または増殖/生殖能力の低下を引き起こす2本鎖RNA分子であって、上記2本鎖RNA分子の少なくとも1つの鎖が、DNAまたは標的遺伝子または上記DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの断片に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも85%、90%、95%、98%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含み、上記DNAまたは標的遺伝子は、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する、2本鎖RNA分子、または
(f)配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する配列を含む少なくとも1つの鎖を含む、殺菌的に有効な量の少なくとも1つの2本鎖RNA、または
(g)配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する配列の少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む、殺菌的に有効な量のポリヌクレオチド、または
(h)配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列の少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも1つの断片を含む、殺菌的に有効な量の少なくとも1つのRNA、または
(i)上記ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、植物上のボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または生殖/増殖能力の低下を引き起こすRNA分子であって、上記RNA分子が、配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列の断片に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む、RNA分子、または
(j)上記ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、ヴィティス・ヴィニフェラ上のボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または生殖/増殖能力の低下を引き起こす2本鎖RNA分子であって、上記殺菌性の2本鎖RNA分子の少なくとも1つの鎖が、配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列の断片に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドを含む、2本鎖RNA分子、または
(k)上記ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、植物上のボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または生殖/増殖能力の低下を引き起こす2本鎖RNA分子であって、上記殺菌性の2本鎖RNA分子の少なくとも1つの鎖が、配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列の断片に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または100%の配列同一性を有する、2本鎖RNA分子、を含む。
【0011】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む剤は、植物の畑に適用するために例えばスプレー可能な溶液もしくは乳濁液、タンクミックス、または粉末として製剤化される。いくつかの実施形態では、剤は、例えば微生物発酵産物の形態で生物学的に生成されるか、またはトランスジェニック植物細胞において発現される。
【0012】
本明細書に記載される、標的遺伝子を標的とするRNAi分子をコードする任意の適切なDNAが、本明細書に記載される組成物および方法に使用されることができる。DNAは、1本鎖DNA(ssDNA)または2本鎖DNA(dsDNA)であってよい。いくつかの実施形態では、DNAは、転写される場合に(例えば、1本鎖のままであるかもしくはRNAヘアピンに折り畳まれる)1本鎖RNA(ssRNA)分子、またはアニールして2本鎖RNA(dsRNA)分子を生成する相補的ssRNA分子を生成する1つ以上のDNA発現カセット(複数可)を含む。
【0013】
いくつかの実施形態は、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の対応した断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片(例えば、100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの断片)を有する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物の植物への局所的な適用を含む、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法に関する。一実施形態では、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法は、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはいくつかの実施形態では、配列番号2、7、9、11、12からなる群より選択される配列を有する標的遺伝子、または当該標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個の連続したヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物の植物への局所的な適用を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、RNAトリガー配列またはRNAトリガー配列逆相補体からなる群より選択されるか、またはRNAトリガー配列またはRNAトリガー配列逆相補体に対して少なくとも約75%または少なくとも約80%または少なくとも約85%または少なくとも約90%または少なくとも約95%または少なくとも約98%または約100%または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、RNAトリガー配列より選択される1つ以上の配列、およびRNAトリガー配列逆相補体より選択される対応した配列を含むdsRNAである。一実施形態では、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法は、有効量のポリヌクレオチドがボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触するように少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物の植物への局所的な適用を含み、上記ポリヌクレオチドが、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する標的遺伝子、または当該標的遺伝子から転写されたRNAの一部分に相補的な少なくとも18個の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、もしくはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含むか、またはRNAトリガー配列もしくはRNAトリガー配列逆相補体に対して少なくとも約75%もしくは少なくとも約80%もしくは少なくとも約85%または少なくとも約90%または少なくとも約95%または少なくとも約98%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、dsRNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、RNAトリガー配列より選択される1つ以上の配列、およびRNAトリガー配列逆相補体より選択される1つ以上の対応した配列を含むdsRNAである。いくつかの実施形態は、植物の畑に適用するために例えば、スプレー可能な溶液もしくは乳濁液、タンクミックス、または粉末として製剤化されるポリヌクレオチドを含む組成物に関する。いくつかの実施形態では、植物は結実植物、野菜、または観賞植物である。いくつかの実施形態では、植物は、ブドウ、トマト、イチゴ、マメ、ナス、唐辛子、ピーマン、トマティーロ、グランドチェリー、ケープグーズベリー、タバコ、リンゴ、ナシ、マルメロ、モモ、プラム、チェリー、アーモンド、アプリコット、ブラックベリー、ブルーベリー、ラズベリー、カーネーション、ペチュニア、またはバラである。
【0014】
いくつかの実施形態は、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の対応した断片に対して本質的に同一または相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチド分子を殺菌的に有効な量で含む、ボトリティス・シネレアを防除するための殺菌的な組成物に関する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド分子は、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはいくつかの実施形態では配列番号2、7、9、11、12からなる群より選択される配列を有する標的遺伝子、または当該標的遺伝子から転写されたRNAの一部分に相補的な少なくとも18個の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、もしくはRNAトリガー配列逆相補体トリガーより選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含むか、またはトリガー配列群、RNAトリガー配列もしくはRNAトリガー配列逆相補体より選択されるヌクレオチド配列に対して相補的であるかもしくは少なくとも約75%もしくは少なくとも約80%もしくは少なくとも約85%もしくは少なくとも約90%もしくは少なくとも約95%もしくは少なくとも約98%もしくは約100%もしくは100%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド分子はRNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、RNAトリガー配列より選択される1つ以上の配列、およびRNAトリガー配列逆相補体より選択される1つ以上の対応した配列を含むdsRNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド分子は組換えポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド分子は2本鎖RNAである。関連した実施形態は、植物の畑に適用するために例えば、スプレー可能な溶液もしくは乳濁液、タンクミックス、または粉末として製剤化されるポリヌクレオチド分子を含み、任意選択で、担体剤、界面活性剤、有機シリコーン、有機シリコーン界面活性剤、ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド殺菌剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺菌剤、毒性緩和剤、および病原体成長制御剤などの1つ以上の追加の成分を含む殺菌的な組成物を含む。
【0015】
いくつかの実施形態は、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の対応した断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片(例えば、100%の同一性または相補性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの断片)を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを、植物内に発現させることを含む、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法に関する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、もしくはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含むか、またはRNAトリガー配列またはRNAトリガー配列逆相補体より選択される配列に対して少なくとも約75%もしくは少なくとも約80%もしくは少なくとも約85%もしくは少なくとも約90%もしくは少なくとも約95%もしくは少なくとも約98%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、RNAトリガー配列より選択される1つ以上の配列、およびRNAトリガー配列逆相補体より選択される対応した配列を含むdsRNAである。
【0016】
いくつかの実施形態は、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の対応した断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むDNA要素に操作可能な形で連結される異種プロモーターを含む組換えDNA構築物に関する。いくつかの実施形態では、DNA要素はdsRNAをコードする。いくつかの実施形態では、dsRNAは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、またはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含む。関連する実施形態は、組換えDNA構築物を含むかまたは異種プロモーターを有さないDNA要素を含む、植物染色体または色素体または組換え植物ウイルスベクターまたは組換えバキュロウイルスベクターを含む。
【0017】
いくつかの実施形態は、RNAと接触するかまたはRNAがトランスフェクトされるボトリティス・シネレアにおける標的遺伝子の発現を抑制するRNAをコードする組換えDNAをゲノム内に有するトランスジェニック植物細胞に関し、上記RNAは、標的遺伝子の断片に相補的な18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を有する少なくとも1つのサイレンシング要素を含む。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は標的遺伝子配列群より選択される。特定の実施形態は、標的遺伝子配列群より選択される1つ以上の標的遺伝子をサイレンシングするためのRNAをコードする組換えDNAをゲノムにおいて有するトランスジェニック植物細胞である。いくつかの実施形態では、RNAは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、またはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含むか、またはRNAトリガー配列もしくはRNAトリガー配列逆相補体より選択される配列に対して少なくとも約75%もしくは少なくとも約80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも約90%もしくは少なくとも約95%もしくは少なくとも約98%もしくは約100%もしくは100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態は、植物上のボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合にボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の減少、または増殖/生殖能力(胞子形成)の減少を引き起こす、単離された組換えRNA分子に関し、上記組換えRNA分子は、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の対応した断片に対して本質的に相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片(例えば、100%の相補性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの断片)を含む。いくつかの実施形態では、組換えRNA分子は2本鎖RNAである。特定の実施形態は、配列番号13~60、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される配列を有する鎖を有する単離された組換え2本鎖RNA分子を含む。別の実施形態は、配列番号26、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号35、配列番号36からなる群より選択される配列を有する鎖を有する単離された組換え2本鎖RNA分子に関する。他の実施形態は、配列番号25~48からなる群より選択される配列を有する鎖を有する単離された組換えdsRNA分子に関する。
【0019】
いくつかの実施形態は、標的遺伝子配列群より選択される標的遺伝子の対応した断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物に提供することを含む、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法に関する。一実施形態では、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法は、標的遺伝子または当該標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個の連続したヌクレオチドに対して同一であるかまたは相補的である少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物に提供することを含み、上記標的遺伝子が標的遺伝子配列群において特定された遺伝子からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、もしくはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含むか、またはRNAトリガー配列またはRNAトリガー配列逆相補体に対して少なくとも約75%もしくは少なくとも約80%もしくは少なくとも約85%もしくは少なくとも約90%もしくは少なくとも約95%もしくは少なくとも約98%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、dsRNAである。いくつかの実施形態では、dsRNAは、RNAトリガー配列より選択される1つ以上の配列、およびRNAトリガー配列逆相補体より選択される1つ以上の対応した配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態は、ボトリティス・シネレアを、標的遺伝子配列群より選択される標的遺伝子のDNA配列の一部分の同等の長さの対応した断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片(例えば、100%の同一性または相補性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの断片)を含むポリヌクレオチドと接触させることを含む、植物のボトリティス・シネレア感染を防除するための方法に関する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、2本鎖RNAである。
【0021】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む人工組成物に関する。いくつかの実施形態では、ボトリティス・シネレア感染からの保護を必要とする植物への局所的な適用に有用な製剤が提供される。いくつかの実施形態では、トランスジェニック植物細胞およびトランスジェニック植物を作製するのに有用な組換え構築物およびベクターが提供される。いくつかの実施形態では、植物、植物種子または増殖可能な部分を処理するのに有用な製剤およびコーティングが提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドで処理されるかまたは当該ポリヌクレオチドを含むそのような植物、種子、または増殖可能な部分から生産される商品および食料品(特に、検出可能な量の本明細書に記載されるポリヌクレオチドを有する商品および食料品)が提供される。いくつかの実施形態は、標的遺伝子配列群より選択される配列または配列の断片によってコードされるタンパク質に結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体に関する。別の態様は、トリガー配列群またはその相補体より選択される配列もしくは配列の断片によってコードされるタンパク質に結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体に関する。そのような抗体は、当業者に公知の通常の方法により作成される。
【0022】
本発明の他の態様および特定の実施形態は、以下の詳細な説明に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】トリガーGS349で処理されたものと未処理のものとの比較による、接種した植物全体におけるボトリティス・シネレアのパーセント病気重症度を示すグラフである。
図2】GS413で処理されたものと未処理のものとの比較による、接種した植物全体におけるボトリティス・シネレアのパーセント病気重症度を示すグラフである。
図3】GS686で処理されたものと未処理のものとの比較による、接種した植物全体におけるボトリティス・シネレアのパーセント病気重症度を示すグラフである。
図4】GS728で処理されたものと未処理のものとの比較による、接種した植物全体におけるボトリティス・シネレアのパーセント病気重症度を示すグラフである。
図5】GS730で処理されたものと未処理のものとの比較による、接種した植物全体におけるボトリティス・シネレアのパーセント病気重症度を示すグラフである。
図6】野外現地試験における、GS349、GS730、化学的標準プログラム、生物学的標準プログラムで処理されたイチゴの苗と未処理の照合とのボトリティス・シネレア感染の症状進展曲線下面積として測定される病気重症度を比較するグラフである。
図7】野外現地試験における、GS730、化学的標準プログラム、生物学的標準プログラムで処理されたブドウの苗と未処理の照合とのボトリティス・シネレア感染の症状進展曲線下面積として測定される病気重症度を比較するグラフである。
図8】は、野外現地試験における、GS730、化学的標準プログラム、生物学的標準プログラムで処理されたブドウの苗と未処理の照合とのボトリティス・シネレア感染の症状進展曲線下面積として測定される病気重症度を比較するグラフである。
図9】GS349、GS2280、GS2303、およびGS2297、化学的標準プログラム、生物学的標準プログラムで処理されたサヤマメの苗と未処理の照合とのボトリティス・シネレア感染の症状進展曲線下面積として測定される病気重症度を比較するグラフである。
図10】野外現地試験における、GS349、化学的標準プログラム、生物学的標準プログラムで処理されたイチゴの苗と未処理の照合とのボトリティス・シネレア感染の症状進展曲線下面積として測定される病気重症度を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
16206-013PC0という配列ファイルは、96kBのxmlファイルとして本明細書に提出される。また、xmlファイルに記載された配列を含む付録Aが本明細書に提供され、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0025】
I.定義
別途定義されない限り、使用された全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。用語が単数形で記載される場合、本発明者らはまた、その用語の複数形によって説明される本発明の態様も企図する。参照によって組み込まれる参考文献で使用される用語及び定義に矛盾がある場合、本出願で使用される用語は、本明細書で与えられる定義を有するものとする。使用された他の技術用語は、技術分野専門の様々な辞書、例えば、“The American Heritage(登録商標)Science Dictionary”(Editors of the American Heritage Dictionaries,2011,Houghton Mifflin Harcourt,Boston and New York)、“McGraw-Hill Dictionary of Scientific and Technical Terms”(6th edition,2002,McGraw-Hill,New York)、または“Oxford Dictionary of Biology”(6th edition,2008,Oxford University Press,Oxford and New York)によって例示されているような、それらが使用される技術分野における通常の意味を有する。発明者らは、ある機構または作用様式に限定されることを意図していない。その参照は、例示的な目的のためにのみ提供される。
【0026】
特に明記しない限り、本明細書の本文中の核酸配列は、左から右に読んだ場合に5’から3’方向に与えられる。当業者であれば、所与のDNA配列は、DNAのチミン(T)ヌクレオチドのウラシル(U)ヌクレオチドによる置換を除いてDNA配列と同一である、対応したRNA配列を定義すると理解されることを認識するであろう。したがって、特定のDNA配列を提供すると、正確なRNA同等物が定義されると理解される。所与の第1のポリヌクレオチド配列は、DNAであろうとRNAであろうと、その正確な相補配列(DNAであってもRNAであってもよい)、すなわちワトソンクリック塩基対を形成することによって第1のポリヌクレオチドに完全にハイブリッド化する第2のポリヌクレオチドの配列をさらに定義する。DNA:DNA2本鎖(ハイブリッド化した鎖)の場合、塩基対はアデニン:チミンまたはグアニン:シトシンである。DNA:RNA2本鎖の場合、塩基対はアデニン:ウラシルまたはグアニン:シトシンである。したがって、完全にハイブリッド化した(鎖間に「100%の相補性」がある、または鎖が「相補的」である)平滑末端2本鎖ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、1つの鎖のヌクレオチド配列を提供することによって明確に定義され、DNAとして与えられるかRNAとして与えられるかに関係ない。標的遺伝子または標的遺伝子の断片に対して「本質的に同一」または「本質的に相補的」とは、ポリヌクレオチド鎖(または2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも1つの鎖)が(一般に植物または真菌細胞において見出されるような生理学的条件下で)標的遺伝子もしくは標的遺伝子の断片かまたは標的遺伝子の転写物もしくは標的遺伝子の断片にハイブリッド化するように設計されるという意味である。当業者は、そのようなハイブリッド化が必ずしも100%の配列同一性または相補性を必要としないことを理解するであろう。いくつかの実施形態では、トリガーは、標的遺伝子の配列に対して100%同一ではないが、標的遺伝子またはそれから転写されるRNAの配列に相補的なままであるように設計され得る。第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係がある場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と「操作可能な形で」接続または「連結」される。例えば、プロモーターがDNAの転写または発現を提供する場合、プロモーター配列はDNAに「操作可能な形で連結」される。一般に、操作可能な形で連結されたDNA配列は連続している。
【0027】
「ポリヌクレオチド」という用語は、一般に複数のヌクレオチドを含むDNAまたはRNA分子を指し、一般に「オリゴヌクレオチド」(18個~25個のヌクレオチドの長さのポリヌクレオチド分子)および26個以上のヌクレオチドのより長いポリヌクレオチドの両方を指す。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で一般的に行われている非標準的ヌクレオチドまたは化学的に改変されたヌクレオチドを含む複数のヌクレオチドを含む分子も含む。例えば、技術マニュアル「RNA interference(RNAi)and DsiRNAs」,2011年(Integrated DNA Technologies Coralville,Iowa)に開示されている化学的改変について参照されたい。一般に、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、DNAであろうとRNAであろうとまたはその両方であろうと、また1本鎖であろうと2本鎖であろうと、標的遺伝子のDNAまたは標的遺伝子のRNA転写物の同等サイズの断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチド(または2本鎖ポリヌクレオチドの場合、少なくとも18個の連続した塩基対)の少なくとも1つの断片を含む。本開示全体を通じて、「少なくとも18個の連続した」とは、「間のすべての整数点を含む、約18個から約10,000個まで」を意味する。したがって、本発明の実施形態は、18個~25個のヌクレオチド(18‐mers、19‐mers、20‐mers、21‐mers、22‐mers、23‐mers、24‐mers、もしくは25‐mers)の長さを有するオリゴヌクレオチド、または26個以上のヌクレオチドの長さを有する中位の長さのポリヌクレオチド(26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約110個、約120個、約130個、約140個、約150個、約160個、約170個、約180個、約190個、約200個、約210個、約220個、約230個、約240個、約250個、約260個、約270個、約280個、約290個もしくは約300個のヌクレオチドのポリヌクレオチド)、または約300個のヌクレオチドを超える長さを有する長いポリヌクレオチド(例えば、約500個~約400個のヌクレオチド、約400個~約600個のヌクレオチド、約500個~約600個のヌクレオチド、約600個~約700個のヌクレオチド、約700個~約800個のヌクレオチド、約800個~約900個のヌクレオチド、約900個~約1,000個のヌクレオチド、約300個~約500個のヌクレオチド、約300個~約600個のヌクレオチド、約300個~約700個のヌクレオチド、約300個~約800個のヌクレオチド、約300個~約900個のヌクレオチド、もしくは約1,000個のヌクレオチドの長さ、もしくは約1,000個のヌクレオチドを超える長さ(例えば、最大、標的遺伝子のコード部分もしくは非コード部分、またはそれらの両方を含む標的遺伝子の全長)のポリヌクレオチド)を含む。ポリヌクレオチドが2本鎖である場合、その長さは同様に塩基対の観点から記述されることができる。
【0028】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、1本鎖(ss)または2本鎖(ds)であり得る。「2本鎖」とは、一般に生理学的に関連している条件下で、十分に相補的な逆平行の核酸鎖の間で生じて2本鎖核酸構造を形成する塩基対合を指す。実施形態は、ポリヌクレオチドがセンス1本鎖DNA(ssDNA)、センス1本鎖RNA(ssRNA)、2本鎖RNA(dsRNA)、2本鎖DNA(dsDNA)、2本鎖DNA/RNAハイブリッド、アンチセンスssDNA、またはアンチセンスssRNAからなる群より選択されるもの、およびこれらのタイプのいずれかのポリヌクレオチドの混合を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、(内因的に生成されるsiRNAおよび成熟miRNAなどの)天然に存在する制御性小分子RNAに典型的な長さよりも長い2本鎖RNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、少なくとも約30個の連続した塩基対の長さの2本鎖RNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、約50個~約600個の塩基対の長さを有する2本鎖RNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標準的なリボヌクレオチド以外の成分を含むことができ、例えば、一実施形態は、末端デオキシリボヌクレオチドを含むRNAである。
【0029】
様々な実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、DNAおよびRNA内に存在するヌクレオチドなどの天然に存在するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの組み合わせである(例えば、主にリボヌクレオチドからなるが、1つ以上の末端デオキシリボヌクレオチドもしくは1つ以上の末端ジデオキシリボヌクレオチドを有する合成ポリヌクレオチド、または主にデオキシリボヌクレオチドからなるが、1つ以上の末端ジデオキシリボヌクレオチドを有する合成ポリヌクレオチド)。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、イノシン、チオウリジン、またはプソイドウリジンなどの非標準的ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは化学的に改変されたヌクレオチドを含む。化学的に改変されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの例は当該技術分野でよく知られている。参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許公開第2011/0171287号、米国特許公開第2011/0171176号、米国特許公開第2011/0152353号、米国特許公開第2011/0152346号、および米国特許公開第2011/0160082号を参照されたい。例示的な例は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、またはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合改変で部分的または完全に改変されることができる、天然に存在するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのホスホジエステルバックボーンを含むが、これらに限定されず、改変されたヌクレオシド塩基または改変された糖は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド合成に使用でき、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、蛍光部分(例えば、フルオレセインまたはローダミン)または他の標識(例えば、ビオチン)で標識されることができる。
【0030】
いくつかの実施形態は、標的遺伝子配列群において特定された遺伝子(Sec18/Cdc48,CDC42,NBP35,SDH,Bcrrp1,XM_024691746.1,Bcsec15,Bcswd2,Bcmcm4,Bcgpi2,Bcrpb5およびBcded1)からなる群より選択される標的遺伝子、標的遺伝子配列群もしくはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAもしくは標的遺伝子、またはそのいずれかのRNA転写物、または前述のもののいずれか1つのDNAもしくはRNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むポリヌクレオチドに関する。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドの数は、少なくとも18個、例えば、18個~24個、または18個~28個、または20個~30個、または20個~50個、または20個~100個、または50個~100個、または50個~500個、または100個~250個、または100個~500個、または200個~1,000個、または500個~2,000、またはそれより多いものである。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドの数は、18個を超える個数、例えば、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、または30個を超える個数、例えば、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約110個、約120個、約130個、約140個、約150個、約160個、約170個、約180個、約190個、約200個、約210個、約220個、約230個、約240個、約250個、約260個、約270個、約280個、約290個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、または500個を超える個数の連続したヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群において特定された遺伝子からなる群より選択される標的遺伝子、標的遺伝子配列群もしくはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAもしくは標的遺伝子、またはそれらのいずれかのRNA転写物、または前述のもののいずれかのDNAもしくはRNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個(全体を通じて使用される少なくとも18個、19個、20個、または21個への言及は、群のこれらの下限のいずれかが個別化されることができることを意味するものとする)の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群において特定された遺伝子からなる群より選択される標的遺伝子、標的遺伝子配列群もしくはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAもしくは標的遺伝子、またはそれらのいずれか1つのRNA転写物、または前述のもののいずれか1つのDNAもしくはRNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む1つの鎖を有する2本鎖核酸(例えば、dsRNA)である。塩基対として表現されるそのような2本鎖核酸は、標的遺伝子配列群において特定された遺伝子からなる群より選択される標的遺伝子、標的遺伝子配列群もしくはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAもしくは標的遺伝子、またはそのいずれかのRNA転写物、または前述のもののいずれかのDNAもしくはRNA相補体の同等の長さの断片に対応している少なくとも18個の連続した、完全に一致した塩基対の少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドに含まれる各断片は、天然に存在する制御性小分子RNAに典型的な長さよりも長く、例えば、各断片は、少なくとも約30個の連続したヌクレオチド(または塩基対)の長さである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの全長、またはポリヌクレオチドに含まれる各断片の長さは、DNAまたは標的遺伝子の全長より短い。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの全長は、約50個~約600個のヌクレオチド(1本鎖ポリヌクレオチドの場合)または塩基対(2本鎖ポリヌクレオチドの場合)である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、図面および表1Aに開示されるdsRNAトリガーのいずれかの長さのdsRNAなどの、約100個~約600個の塩基対のdsRNAである。
【0031】
いくつかの実施形態は、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子の調節または抑制を誘導することによって発現を調節するように設計されるポリヌクレオチドに関する。いくつかの実施形態では、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子は、標的遺伝子配列群において特定された遺伝子(Sec18/Cdc48,CDC42,NBP35,SDH,Bcrrp1,XM_024691746.1,Bcsec15,Bcswd2,Bcmcm4,Bcgpi2,Bcrpb5およびBcded1)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子もしくはcDNAの断片のヌクレオチド配列(例えば、標的遺伝子配列群)、またはボトリティス・シネレアの標的遺伝子から転写されたRNAの配列に対して本質的に同一であるかまたは本質的に相補的であるヌクレオチド配列を有するように設計され、上記配列はコード配列または非コード配列であってよい。発現を調節するこれらの有効なポリヌクレオチド分子は、本明細書では「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチドトリガー」、「トリガー」、または「複数のトリガー」と呼ばれる場合がある。
【0032】
任意のサイズの有効なポリヌクレオチドは、単独または組み合わせて、本明細書に記載される様々な方法および組成物に使用されることができる。いくつかの実施形態では、単一のポリヌクレオチドトリガーを使用して、組成物(例えば、局所的な適用のための組成物、またはトランスジェニック植物を作製するのに有用な組換えDNA構築物)を作製する。他の実施形態では、異なったポリヌクレオチドトリガーの混合物またはプールが使用される。そのような場合に、ポリヌクレオチドトリガーは、単一の標的遺伝子または複数の標的遺伝子に対するものであり得る。
【0033】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、ある分子を、その本来の状態または天然の状態でそれに通常結合している他の分子から分離することを指す。したがって、「単離された」という用語は、通常は本来の状態又は自然の状態で結合している他のDNA分子(複数可)から分離されているDNA分子を指す場合がある。そのようなDNA分子は、組換えDNA分子のように、組換えられた状態で存在している場合がある。したがって、例えば組換え技術の結果として、通常は結合していない調節配列またはコード配列に融合したDNA分子は、導入遺伝子として細胞の染色体に組み込まれるかまたは他のDNA分子とともに存在している場合でも、単離されたものと見なされる。
【0034】
本明細書で使用される「標的遺伝子配列群」または「標的遺伝子配列」という用語は、配列番号1~12を含む配列の群を指す。本明細書で使用される「トリガー配列群」または「トリガー配列」という用語は、配列番号13~24、49~52を含む配列の群を指す。本明細書で使用される「RNAトリガー配列群」または「RNAトリガー配列」という用語は、配列番号25~36、53~56を含む配列の群を指す。本明細書で使用される「RNAトリガー配列逆相補体群」または「RNAトリガー配列逆相補体」という用語は、配列番号37~48、57~60を含む配列の群を指す。
【0035】
いくつかの実施形態は、1つ以上の遺伝子(「標的遺伝子」)を抑制するように設計されるポリヌクレオチドに関する。「遺伝子」という用語は、転写物の発現を提供するかまたは転写物をコードする核酸の任意の部分を指す。「遺伝子」は、プロモーター領域、5’非翻訳領域、イントロン領域を含むことができる転写コード領域、3’非翻訳領域、またはこれらの領域の組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標的遺伝子(複数可)は、コード配列もしくは非コード配列、またはそれらの両方を含むことができる。他の実施形態では、標的遺伝子は、メッセンジャーRNAに対して同一であるかまたは相補的である配列を有し、例えば、いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、その対応したcDNAによって表される。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、1つ以上の標的遺伝子を抑制するように設計され、各標的遺伝子は、標的遺伝子配列群において特定される遺伝子(Sec18/Cdc48,CDC42,NBP35,SDH,Bcrrp1,XM_024691746.1,Bcsec15,Bcswd2,Bcmcm4,Bcgpi2,Bcrpb5およびBcded1)からなる群より選択されるかまたは標的遺伝子配列群より選択されるDNA配列によってコードされる。様々な実施形態では、ポリヌクレオチドは、1つ以上の標的遺伝子を抑制するかまたは下方制御するように設計され、各標的遺伝子は、標的遺伝子配列群において特定された遺伝子からなる群より選択されるかまたは標的遺伝子配列群より選択される配列によってコードされ、かつ複数の標的遺伝子を抑制するかまたはこれらの標的遺伝子のうちの1つ以上の異なった領域を標的とするように設計され得る。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群、トリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性を有する21個の連続したヌクレオチドの複数の断片を含む。そのような場合、各断片は、サイズまたは配列において同一であってもよいし異なっていてもよく、標的遺伝子に対してセンスであってもよいしアンチセンスであってもよい。例えば、一実施形態では、ポリヌクレオチドは、タンデムまたは反復配列において複数の断片を含み、各断片は、標的遺伝子配列群において特定される遺伝子、標的遺伝子配列群もしくはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAもしくは標的遺伝子または前述のいずれかのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、断片は、標的遺伝子の異なった領域に由来することができ、例えば、断片は、標的遺伝子の異なったエクソン領域に対応することができる。いくつかの実施形態では、標的遺伝子に対応していない「スペーサー」ヌクレオチドは、任意選択で、断片の間または断片に隣接して使用されることができる。
【0036】
本明細書で使用される「植物」という用語は、本文の文脈が別段に明記しない限り、ボトリティス感染、すなわちボトリティス・シネレア感染を受けやすい植物を指す。ボトリティス感染を受けやすい植物の例としては、ブドウ(Vitis vinifera)、トマト(Solanum lycopersicum)、イチゴ(Fragaria ananassa)、サヤマメ、ナス、唐辛子、ピーマン、マメ、トマティーロ、グランドチェリー、ケープグーズベリー、タバコ、リンゴ、ナシ、マルメロ、モモ、プラム、チェリー、アーモンド、アプリコット、ブラックベリー、ブルーベリー、ラズベリー、および開花観賞植物(例えば、バラ、ペチュニアなど)が挙げられる。
【0037】
他の定義は、以下のセクションに提供される。
【0038】
II.ボトリティス・シネレアの防除のためのポリヌクレオチド
本開示のポリヌクレオチドは、RNAiを介した植物のボトリティス・シネレア感染の防除または予防に有用である。本開示のいくつかの態様によれば、ポリヌクレオチドは、Sec18/Cdc48,CDC42,NBP35,SDH,Bcrrp1,XM_024691746.1,Bcsec15,Bcswd2,Bcmcm4,Bcgpi2,Bcrpb5およびBcded1からなる群より選択される1つ以上のボトリティス・シネレアの標的遺伝子によってコードされるmRNAを干渉するのに有効である。
【0039】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群からなる群より選択されるか、または特定の実施形態では、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体、またはそれから転写されたRNAの対応した断片に対して約75%~約100%の同一性、約80%~約100%の同一性、約85%~約100%の同一性、約90%~約100%の同一性、約95%~約100%の同一性、約98%~約100%の同一性、約100%の同一性、または正確に100%の同一性の配列を有する18個以上、19個以上、20個以上、21個以上、22個以上、23個以上、24個以上、25個以上、30個以上、50個以上、75個以上、100個以上、125個以上、150個以上、200個以上、250個以上、300個以上、400個以上、500個以上、600個以上、700個以上、800個以上、900個以上、または1000個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群からなる群より選択されるか、または特定の実施形態では、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体、またはそれから転写されたRNAの少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも125個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも600個、少なくとも700個、少なくとも800個、少なくとも900個、または少なくとも1,000個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的ヌクレオチド配列を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群からなる群より選択されるか、または特定の実施形態では、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体、またはそれから転写されたRNAの対応した断片に対して本質的に相補的である少なくとも21個の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体、またはそれから転写されたRNAの対応した断片に対して本質的に相補的である少なくとも400個の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子によってコードされるmRNAに対して相補性を有するように設計される。いくつかの実施形態では、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子は、Sec18/Cdc48,CDC42,NBP35,SDH,Bcrrp1,XM_024691746.1,Bcsec15,Bcswd2,Bcmcm4,Bcgpi2,Bcrpb5およびBcded1からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、2本鎖RNAである。また、いくつかの実施形態では、2本鎖RNAは、配列番号25~36、53~56からなる群より選択されるか、またはいくつかの実施形態では、配列番号26、31、33、35、および36からなる群より選択される配列を含む1つの鎖、およびそれに対して相補的である第2の鎖を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択されるか、または特定の実施形態では、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体、またはそれから転写されたRNAの同等の長さの断片に対して本質的に相補的であるか、または正確に(100%)同一である連続したヌクレオチドの配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択されるか、または特定の実施形態では、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体、またはそれから転写されたRNAの同等の長さの断片に対して約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性の全体配列を有する。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドの数は、18を超える個数、例えば、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、または30個を超える個数、例えば、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約110個、約120個、約130個、約140個、約150個、約160個、約170個、約180個、約190個、約200個、約210個、約220個、約230個、約240個、約250個、約260個、約270個、約280個、約290個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、500個を超える連続したヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択されるか、または特定の実施形態では、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個(全体を通じて使用される少なくとも18個、19個、20個、21個などへの言及は、群のこれらの下限のいずれかが個別化されることができることを意味するものとする)の少なくとも1つの断片を含む。
【0042】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体、またはそれから転写されたRNAの対応した断片に対して本質的に相補的であるか、または100%同一である21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNAまたは標的遺伝子の対応した断片に対して100%の同一性を有する21個の連続したヌクレオチドの1つ以上の断片に加えて、1つ以上の「ニュートラル」配列(標的遺伝子に対して配列の同一性または相補性を有さない配列)を含み、したがって、ポリヌクレオチドは、全体として、DNAまたは標的遺伝子に対する全体的な相補性または配列同一性がより低い。
【0043】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群から選択されるか、または特定の実施形態では、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する1つ以上のDNAまたは標的遺伝子、またはそのDNA相補体またはそれから転写されたRNAの対応した断片に対して相補的であるかまたは100%同一である21個以上の連続したヌクレオチドの複数の断片の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子の対応した断片に対して相補的であるかまたは100%の配列同一性を有する21個の連続したヌクレオチドの1つ以上の断片に加えて、1つ以上の「ニュートラル」配列(標的遺伝子に対して配列同一性または相補性を有さない配列)を含み、したがって、ポリヌクレオチドは、全体として、所与の標的遺伝子に対する全体的な相補性または配列同一性がより低い。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択されるか、または特定の実施形態では、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択されるDNA配列を有する標的遺伝子またはそのDNA相補体、またはそれから転写されたRNAの長さ全体にわたって位置的に分布される対応した断片に対して相補的であるかまたは100%同一性を有する21個以上の連続したヌクレオチドまたはもっと長いものの複数の断片の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子の長さ全体にわたって位置的に分布される対応した断片に対して100%の同一性を有する21個の連続したヌクレオチドの1つ以上の断片に加えて、1つ以上の「ニュートラル」配列(標的遺伝子に対して配列同一性または相補性を有さない配列)を含み、したがって、ポリヌクレオチドは、全体として、所与の標的遺伝子に対する全体的な相補性または配列同一性がより低い。
【0044】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、RNAトリガー配列群またはRNAトリガー配列逆相補体群からなる群より選択されるか、または特定の実施形態では、配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列の少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも350個、少なくとも400個、少なくとも450個、または少なくとも500個の連続したヌクレオチドに対して約75%~約100%、約80%~約100%、約85%~約100%、約90%~約100%、約95%~約100%、約98%~約100%、約100%、または100%同一である配列を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列、RNAトリガー配列もしくはRNAトリガー配列逆相補体からなる群より選択されるか、または特定の実施形態では配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47および48からなる群より選択される配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または正確に100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号13~60からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号26および31からなる群より選択される配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または正確に100%同一である配列を含む。
【0046】
いくつかの実施形態は、トリガー配列群、RNAトリガー配列群もしくはRNAトリガー配列逆相補体群からなる群より選択されるか、または特定の実施形態では配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47および48からなる群より選択される配列に対して約95%~約100%同一性の配列を含むポリヌクレオチドに関する。いくつかの実施形態は、RNAトリガー配列群もしくはRNAトリガー配列逆相補体群、または特定の実施形態では配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列の一部分に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むポリヌクレオチドに関する。いくつかの実施形態では、18個以上の連続したヌクレオチドは、21個以上の連続したヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドの数は、少なくとも18個、例えば、18個~24個、または18個~28個、または20個~30個、または20個~50個、または20個~100個、または50個~100個、または50個~500個、または100個~250個、または100個~500個、または200個~1,000個、または500個~2,000、またはそれより多いものである。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドの数は、18個を超える個数、例えば、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、または30個を超える個数、例えば、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約110個、約120個、約130個、約140個、約150個、約160個、約170個、約180個、約190個、約200個、約210個、約220個、約230個、約240個、約250個、約260個、約270個、約280個、約290個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、約600個、または600個を超える個数の連続したヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、およびRNAトリガー配列逆相補体群からなる群より選択されるか、または特定の実施形態では配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列内に見出される同等の長さの断片に対して100%同一性の配列を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個(全体を通じて使用される少なくとも18個、19個、20個、21個などへの言及は、群のこれらの下限のいずれかが個別化されることができることを意味するものとする)の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、およびRNAトリガー配列逆相補体群からなる群から選択されるか、または特定の実施形態では配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列内に見出される同等の長さの断片に対して少なくとも85%の同一性の配列を有する少なくとも200個、300個、400個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号26に見出される同等の長さの断片に対して少なくとも85%同一である少なくとも200個、300個、400個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択されるか、または特に配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の断片に対して約95%~100%の同一性を有する少なくとも18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、50個、75個、100個、150個、200個、250個、300個、400個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む1つの鎖を有する2本鎖核酸(例えば、dsRNA)である。塩基対として表現されるそのような2本鎖核酸は、標的遺伝子配列群より選択されるか、または配列番号2、7、9、11、および12からなる群より特に選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対応する少なくとも18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、50個、75個、100個、150個、200個、250個、300個、400個、500個、550個、575個、または600個の連続した、完全に一致した塩基対の少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドに含まれる各断片は、天然に存在する制御性小分子RNAに典型的な長さよりも長く、例えば、各断片は、少なくとも約30個の連続したヌクレオチド(または塩基対)の長さである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの全長、またはポリヌクレオチドに含まれる各断片の長さは、標的遺伝子配列群より選択されるか、または配列番号2、7、9、11、および12からなる群より特に選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子の全長より短い。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの全長は、約50個~約600個のヌクレオチド(1本鎖ポリヌクレオチドの場合)または塩基対(2本鎖ポリヌクレオチドの場合)である。
【0048】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、図面および表に開示されるRNAトリガー配列のいずれかの長さのdsRNAなどの、約100個~約600個の塩基対のdsRNAである。いくつかの実施形態では、dsRNAは、配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47および48からなる群より選択される配列を含む1つの鎖を含む。いくつかの実施形態では、dsRNAは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、およびRNAトリガー配列逆相補体群からなる群より選択されるか、または特定の実施形態では配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列内に見出される同等の長さの断片に対して少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%または少なくとも98%または100%の同一性の配列を有する少なくとも200個、300個、400個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む1つの鎖を含む。いくつかの実施形態では、dsRNAは、配列番号26に見出される同等の長さの断片に対して少なくとも85%同一である少なくとも200個、300個、400個、500個、550個、575個、または600個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む1つの鎖を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子によってコードされるmRNAに対して相補性を有するように設計される。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、標的遺伝子配列群において特定された遺伝子(Sec18/Cdc48,CDC42,NBP35,SDH,Bcrrp1,XM_024691746.1,Bcsec15,Bcswd2,Bcmcm4,Bcgpi2,Bcrpb5およびBcded1)からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、dsRNAである。いくつかの実施形態では、dsRNAは、標的遺伝子によってコードされるmRNAに結合する(例えば、本質的に相補的である)第1の鎖と、第1の鎖に相補的な第2の鎖とを含む。dsRNAは、同じ長さまたは異なった長さのRNA鎖を含み得る。いくつかの実施形態では、dsRNAは、第2の鎖(例えば、センス鎖)と同じ長さの第1の鎖(例えば、アンチセンス鎖)を含む。いくつかの実施形態では、dsRNAは、第2の鎖(例えば、センス鎖)とは異なった長さの第1の鎖(例えば、アンチセンス鎖)を含む。第1の鎖は、第2の鎖よりも約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、または20%超長くてよい。第1の鎖は、第2の鎖よりも1個~5個、2個~5個、2個~10個、5個~10個、5個~15個、10個~20個、15個~20個、または20個超のヌクレオチド長くてよい。dsRNA分子は、ステムループ構造の単一のオリゴヌクレオチド、ならびに2つ以上のループ構造と、自己相補的なセンス鎖およびアンチセンス鎖を含むステムとを有する環状1本鎖RNAから組み立てることもでき、上記RNA分子の自己相補的なセンス領域およびアンチセンス領域は、核酸ベースまたは非核酸ベースのリンカー(複数可)によって連結され、上記環状RNAは、RNAiを媒介できる活性なRNAi分子を生成するために、インビボまたはインビトロで処理することができる。RNAi分子は分子の一端に3’オーバーハングを含んでよく、もう一方の端は平滑末端であるか、またはオーバーハング(5’または3’)を持っていてよい。RNAi分子が分子の両端にオーバーハングを含む場合、オーバーハングの長さは同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群において特定された遺伝子(Sec18/Cdc48,CDC42,NBP35,SDH,Bcrrp1,XM_024691746.1,Bcsec15,Bcswd2,Bcmcm4,Bcgpi2,Bcrpb5およびBcded1)からなる群より選択されるボトリティス・シネレアの標的遺伝子のタンパク質産物の発現を調節するように設計される。
【0051】
いくつかの実施形態では、dsRNAは、RNAトリガー配列またはRNAトリガー配列逆相補体より選択される配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または正確に100%同一である1つ以上のヌクレオチド配列を含む1つの鎖を含む。いくつかの実施形態では、dsRNAは、RNAトリガー配列群またはRNAトリガー配列逆相補体群より選択されるか、または特定の実施形態では配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列の一部分に対して約95%~約100%の同一性を有する18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、50個、75個、100個、150個、200個、250個、300個、400個、500個、550個、575個、または600個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、dsRNAは、配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列の一部分に対して95%の配列同一性を有する21個の連続したヌクレオチドの配列を含む。そのようなdsRNAは、第1の鎖に相補的な第2の鎖をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、dsRNAは、RNAトリガー配列より選択されるヌクレオチド配列を含む第1の鎖と、対応したRNAトリガー配列逆相補体または第1の鎖の配列に相補的な別の配列より選択される第2の鎖とを含む。特定の実施形態は、ポリヌクレオチドが、配列番号26、31、33、35、および36からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む第1の鎖を含むdsRNAであるものを含む。
【0052】
III.ポリヌクレオチドの長さ
本明細書で提供される標的遺伝子を標的とするRNAi分子は、長さが異なり得る。いくつかの実施形態では、長いRNA(例えば、dsRNAまたはssRNA)分子が殺菌剤として(例えば、植物に)適用されるが、細胞に入った後、dsRNAはダイサー酵素によって、例えば、15個~25個のヌクレオチドの長さを有するより短い2本鎖RNA断片に切断されることを理解するべきである。したがって、本開示のRNAi分子は、例えば15個~25個のヌクレオチド断片として送達されてもよく、またはより長い2本鎖核酸(例えば少なくとも100個のヌクレオチド)として送達されてもよい。
【0053】
本発明のポリヌクレオチドの全長は、18個の連続したヌクレオチドよりも長いかまたはそれに等しくてよく、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体またはそれから転写されたRNAの同等の長さの断片に対して約75%~約100%の同一性の配列を有する連続したヌクレオチドに加えてヌクレオチドを含んでよい。同様に、本発明のポリヌクレオチドは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、またはRNAトリガー配列逆相補体群からなる群より選択される配列の18個以上の連続したヌクレオチドに対して約75%~約100%同一である1つ以上の配列を含んでよく、また追加の無関係な配列を含んでよい。言い換えれば、ポリヌクレオチドの全長は、1つ以上の標的遺伝子を抑制するように設計されるポリヌクレオチドのセクションまたは断片の長さよりも長くてよい。
【0054】
例えば、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子を抑制する「活性」断片(例えば、「活性」断片は、標的遺伝子またはそれから転写されたmRNAの断片に対して本質的に相補的な配列であってもよく、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、またはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される配列であってもよい)に隣接するヌクレオチドを有することができるか、または活性断片間に「スペーサー」ヌクレオチドを含むか、または5’末端または3’末端または5’末端と3’末端の両方に追加のヌクレオチドを有することができる。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、ボトリティス・シネレアの防除のために本明細書に開示される配列に特に関連していない(相補的または同一ではない配列を有する)追加のヌクレオチドを含むことができる。例えば、そのようなポリヌクレオチドは、安定化二次構造を提供するヌクレオチドを含んでもよく、クローニングもしくは製造の利便性のためにヌクレオチドを含んでもよい。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、活性断片のすぐ隣に位置する追加のヌクレオチドを含むことができる。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、1つのそのような断片を含み、当該断片に隣接する追加の5’Gまたは追加の3’Cまたはそれらの両方を有する。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、1つ以上のオーバーハングを形成するために追加のヌクレオチドを含む2本鎖RNA、例えば、3’オーバーハングを形成するために2つのデオキシリボヌクレオチドを含むdsRNAである。他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に列挙される1つ以上の活性断片、ならびにボトリティス・シネレアの他の標的遺伝子に活性な追加の断片、または別の真菌もしくは害虫に活性な追加の断片を含んでよい。
【0055】
したがって、様々な実施形態では、ポリヌクレオチド全体のヌクレオチド配列は、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、またはRNAトリガー配列逆相補体群に対して100%同一または相補的ではなく、標的遺伝子における連続したヌクレオチドの配列に対して100%同一または相補的ではない。例えば、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも2つの断片を含み、(1)少なくとも2つの断片は、1つ以上のスペーサーヌクレオチドによって分離されるか、または(2)少なくとも2つの断片は、対応した断片が標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の内に存在する順序とは異なる順序で配置されている。
【0056】
いくつかの実施形態は、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子の下方制御または抑制を誘導することによって発現を調節するように設計されるポリヌクレオチドに関する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子もしくはcDNA(例えば、標的遺伝子配列群)のヌクレオチド配列、またはボトリティス・シネレアの標的遺伝子から転写されたRNAの配列に対して本質的に同一であるか、または本質的に相補的であるヌクレオチド配列を有するように設計され、上記配列はコード配列または非コード配列であってよい。発現を調節するこれらの有効なポリヌクレオチド分子は、本明細書では「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチドトリガー」、「トリガー」、または「複数のトリガー」と呼ばれる場合がある。そのような実施形態の例は、RNAトリガー配列群、RNAトリガー配列逆相補体群より選択される1つ以上の配列を含むポリヌクレオチドを含む。さらなる例は、RNAトリガー配列群またはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される配列の一部分に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むポリヌクレオチドを含む。
【0057】
任意のサイズの有効なポリヌクレオチドは、単独または組み合わせて、本明細書に記載される様々な方法および組成物に使用されることができる。いくつかの実施形態では、単一のポリヌクレオチドトリガーを使用して、組成物(例えば、局所的な適用のための組成物、またはトランスジェニック植物を作製するのに有用な組換えDNA構築物)を作製する。他の実施形態では、異なるポリヌクレオチドトリガーの混合物またはプールが使用される。このような場合、ポリヌクレオチドトリガーは、単一の標的遺伝子または複数の標的遺伝子に対するものであり得る。
【0058】
IV.許容されたミスマッチ
本明細書で使用される「本質的に同一」または「本質的に相補的」とは、ポリヌクレオチド(または2本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも1つの鎖)が、標的遺伝子の発現を抑制する(例えば、標的遺伝子転写物および/またはコードされたタンパク質のレベルまたは活性の低下に影響する)ために、標的遺伝子または標的遺伝子から転写されたRNA(例えば、転写物)に対して十分な同一性または相補性を有することを意味する。本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子の発現を抑制する(例えば、標的遺伝子転写物またはコードされたタンパク質のレベルまたは活性の低下に影響するか、またはボトリティス・シネレアの防除を提供する)ために、標的遺伝子または標的遺伝子から転写されたRNAに対して100%の同一性または相補性を有する必要はない。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたはその一部分は、標的遺伝子または標的遺伝子から転写されたRNAのいずれかにおける少なくとも18個または19個の連続したヌクレオチドの配列と本質的に同一であるか、または本質的に相補的であるように設計される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたはその一部は、標的遺伝子または標的遺伝子から転写されたRNAにおける21個の連続したヌクレオチドの1つ以上の配列に対して100%同一であるか、または100%相補的であるように設計される。特定の実施形態では、「本質的に同一の」ポリヌクレオチドは、内因性標的遺伝子または標的遺伝子から転写されたRNAの18個以上の連続したヌクレオチドの配列と比較する場合、100%の配列同一性、または少なくとも約83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する。特定の実施形態では、「本質的に相補的な」ポリヌクレオチドは、標的遺伝子または標的遺伝子から転写されたRNAの18個以上の連続したヌクレオチドの配列と比較する場合、100%の配列相補性、または少なくとも約83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列相補性を有する。
【0059】
配列同一性:2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの、本明細書に使用される、文脈における「配列同一性」または「同一性」という用語は、指定された比較ウィンドウにわたって最大の対応のために整列される場合、同じである2つの分子の配列における残基を指す。
【0060】
パーセント同一性は、両方の配列において同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して一致した位置の数を得、一致した位置の数を比較ウィンドウにおける位置の総数で除し、そして結果に100を乗じて配列同一性のパーセントを得ることによって計算される。参照配列と比較してすべての位置において同一である配列は、参照配列に対して100%同一であると言われ、その逆も同様である。2つのヌクレオチド配列のパーセント同一性は、比較ウィンドウにわたって分子の2つの最適に整列された配列(例えば、核酸配列またはポリペプチド配列)を比較することによって決定されることができ、比較ウィンドウにおける配列の部分は、2つの配列の最適な整列のための参照配列(追加又は削除を含まない)と比較して追加又は削除(すなわちギャップ)を含む場合がある。2つ以上の配列を比較する最適な整列は、利用可能な様々なコンピュータープログラムによるローカルまたはグローバル整列を使用して実行されることができる。The algorithm of Smith T.F.and Waterman M.S.(1981),Identification of common molecular subsequences J.Mol.Biol.147(1):195-,PubMed:7265238 DOI:10.1016/0022-2836(81)90087-5は、適切なローカル整列戦略であり、EMBOSS Water(https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/)などのツールで利用される。The algorithm of Needleman S.B.and Wunsch C.D.(1970),A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins,J.Mol.Biol.48(3):443-53,PubMed:5420325,DOI:10.1016/0022-2836(70)90057-4は、適切なグローバル整列戦略であり、EMBOSS Needle(https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/)などのツールで利用される。比較される配列と関連したパラメーターに応じて、ローカルまたはグローバル整列戦略は最適な整列を見出す可能性が高いが、両方の戦略を利用して最も正確なパーセント同一性を与える最適な整列を確認することができる。
【0061】
配列長さの数値に関する「約」という用語は、最大1~5%の+/-の分散を有する記載された値を意味する。例えば、約30個の連続したヌクレオチドは、27個~33個の連続したヌクレオチドの範囲、またはその間の任意の範囲を意味する。配列同一性のパーセントの数値に関する「約」という用語は、最も近い整数に四捨五入した最大1~3%の+/-の分散を有する記載されたパーセント値を意味する。例えば、約90%の配列同一性は、87%~93%の範囲を意味する。ただし、配列同一性のパーセントは100%を超えることはできない。したがって、約98%の配列同一性は、95%~100%の範囲を意味する。
【0062】
標的遺伝子または転写物に対するミスマッチを含むポリヌクレオチドは、本明細書に記載される組成物および方法の特定の実施形態では使用されることができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される変異体は、所与の変異に対してほぼ等しい確率で選択される4つのヌクレオチド(A、U、G、C)を有するランダムに配置された変異を含む。いくつかの実施形態では、これらの変異は、配列の小さな領域にわたって分布されるか、または配列の長さ全体にわたって広く分布される可能性がある。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子または標的遺伝子の転写物における同等の長さの断片に対して本質的に同一であるか、または本質的に相補的である少なくとも18個または少なくとも19個または少なくとも21個の連続したヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、標的遺伝子または標的遺伝子の転写物における同等の長さの断片に対して本質的に同一であるかまたは本質的に相補的である18個、19個、20個、または21個以上の連続したヌクレオチドのポリヌクレオチドは、標的遺伝子または転写物に対して1つまたは2つのミスマッチ(すなわち、ポリヌクレオチドの21個の連続したヌクレオチドと、標的遺伝子または標的遺伝子の転写物における同等の長さの断片との間の1つまたは2つのミスマッチ)を有し得る。特定の実施形態では、標的遺伝子または標的遺伝子の転写物における同等の長さの断片に対する同一性または相補性の連続した18個、19個、20個、もしくは21個以上のヌクレオチドスパンを含む約50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個以上のヌクレオチドのポリヌクレオチドは、標的遺伝子または転写物に対して1つまたは2つ以上のミスマッチを有する可能性がある。
【0063】
内因性標的遺伝子または標的遺伝子から転写されたRNAに対してミスマッチを有するポリヌクレオチドを設計される際に、許容される可能性が高い特定のタイプの、および特定の位置におけるミスマッチは使用されることができる。特定の実施形態では、Du et al.(2005)Nucleic Acids Res.,33:1671-1677によって記載されているように、アデニンとシトシン、またはグアノシンとウラシル残基の間に形成されるミスマッチを使用する。(2005)Nucleic Acids Res.,33:1671-1677.いくつかの実施形態では、Du et al.(2005)Nucleic Acids Res.,33:1671-1677によって記載されているように、19の塩基対重複領域におけるミスマッチは、低許容位置5、7、8または11(19-ヌクレオチド標的の5’末端から)に、中許容位置3、4、および12~17(19-ヌクレオチド標的の5’末端から)に、および/または相補性の領域のいずれかの末端、すなわち位置1、2、18、および19(19-ヌクレオチド標的の5’末端から)の高許容位置にある。(2005)Nucleic Acids Res.,33:1671-1677.許容されるミスマッチは、通常のアッセイにより経験的に決定できる。
【0064】
V.ニュートラル配列におけるサイレンシング要素の埋め込み
いくつかの実施形態では、標的遺伝子に対応した配列を含み、かつ観察された標的遺伝子の抑制に関与するサイレンシング要素は、「ニュートラル」配列に埋め込まれる、すなわち、標的遺伝子に対して配列同一性または相補性を有さない追加のヌクレオチドに挿入される。ニュートラル配列は、例えば、ポリヌクレオチドの全長を増加させるため、またはサイレンシング複合体への増加された結合などの望ましい特性を付与するために、望ましい場合がある。例えば、製造における安定性、費用対効果、またはサイレンシング効率などの有効な生物学的活性の理由から、ポリヌクレオチドは特定のサイズであることが望ましい場合がある。いくつかの実施態様では、ニュートラル配列はまた、ヘアピントリガーにおいてループなどの好ましい二次構造を形成するのに有用であり、又はトリガー領域間のスペーサーとして有用である。
【0065】
したがって、一実施形態では、標的遺伝子配列群における標的遺伝子の同等の長さの断片に対応し、かつボトリティス・シネレア感染の防除を提供することが判明される21塩基対のdsRNAサイレンシング要素は、追加の39個の塩基対のニュートラル配列に埋め込まれ、それにより約60個の塩基対のポリヌクレオチドを形成する。いくつかの実施形態では、dsRNAトリガーは、約60個~約600個の塩基対、または100個~約500個の塩基対のニュートラル配列を含み、その中には、標的遺伝子配列群より選択される配列を有する標的遺伝子の同等の長さの断片に対して100%の同一性または100%の相補性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片が埋め込まれる。別の実施形態では、標的遺伝子の同等の長さの断片に対して100%の同一性または100%の相補性の配列を有する単一の21塩基対サイレンシング要素は、ニュートラル配列のより大きなセクションに埋め込まれた場合に(例えば、総ポリヌクレオチド長さは約60個の塩基対から約300個の塩基対である場合に)有効であることが判明される。ポリヌクレオチドがニュートラル配列の領域を含む実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子と比較して比較的に低い全体的な配列同一性を有する。例えば、ニュートラル配列の追加の189個の塩基対に埋め込まれた(標的遺伝子の21-ヌクレオチド断片に対して100%の同一性または相補性の)単一の21塩基対トリガーを含む、210個の塩基対の全長を有するdsRNAは、標的遺伝子に対して約10%の全体的な配列同一性を有する。
【0066】
VI.関連技術
本明細書に記載されるポリヌクレオチドおよび核酸分子の実施形態は、プロモーター、初期転写配列、転写開始要素、転写伸長要素、転写停止要素、小分子RNA認識部位、アプタマーまたはリボザイム、(例えば、殺菌タンパク質または選択可能なマーカーなどの導入遺伝子を発現する)コード配列または(例えば、追加の抑制要素を発現する)非コード配列を発現するための追加の発現カセットなどの追加の要素を含んでよい。例えば、本発明の一態様は、標的遺伝子配列群の相補体より選択される配列を有するDNAの同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むDNAに操作可能な形で連結される転写開始配列を有する異種プロモーターを含む組換えDNA構築物を提供する。本発明の別の態様は、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、またはRNAトリガー配列逆相補体群から選択される群より選択される配列または配列の断片を有するアンチセンス領域を有するRNAヘアピンをコードするDNAに操作可能な形で連結される転写開始配列を有する異種プロモーターを含む組換えDNA構築物を提供する。別の実施形態では、(a)標的遺伝子配列群より選択される標的遺伝子を抑制するためのRNAサイレンシング要素、および(b)アプタマーをコードするDNAに操作可能な形で連結されるプロモーターを含む組換えDNA構築物は、RNAアプタマーを含むRNA転写物及びRNAサイレンシング要素が植物の細胞において発現される場所から、植物のゲノムに安定的に組み込まれ、上記アプタマーは、RNAサイレンシング要素を細胞中の所望の位置に導く役割を果たす。別の実施態様では、小分子RNAによる(例えば、特定の細胞または組織にのみ発現されるmiRNAまたはsiRNAによる)結合および切断のための1つ以上の認識部位を含めることによって、植物におけるより正確な発現パターンが可能になり、小分子RNAが発現される場所で組換えDNA構築物の発現が抑制される。
そのような追加の要素は以下に説明される。
【0067】
VII.ポリヌクレオチドとの接触によるボトリティス・シネレア感染の防除
本明細書では、植物のボトリティス・シネレア感染を防除する方法が提供される。そのような方法は、ボトリティス・シネレアを、本明細書に記載されるポリヌクレオチドおよび他の組成物のいずれかと接触させることを含む。いくつかの実施形態は、植物を、上記セクションIIまたは本明細書における他の場所で記載されるポリヌクレオチドのいずれかと接触させることによって、植物のボトリティス・シネレア感染を防除する方法に関する。いくつかの実施形態は、ボトリティス・シネレアを、Sec18/Cdc48,CDC42,NBP35,SDH,Bcrrp1,XM_024691746.1,Bcsec15,Bcswd2,Bcmcm4,Bcgpi2,Bcrpb5およびBcded1からなる群より選択されるボトリティス・シネレアの標的遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドと接触させることに関する。いくつかの実施形態は、ボトリティス・シネレアを、標的遺伝子配列群からなる群より選択されるDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の対応した断片に対して約95%~約100%の同一性または相補性を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むポリヌクレオチドと接触させることによって、植物のボトリティス・シネレア感染を防除する方法に関する。一実施形態では、植物のボトリティス・シネレア感染を防除する方法は、ボトリティス・シネレアを、配列番号1~12からなる群より選択されるDNA配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の対応した断片に対して100%の同一性を有する少なくとも18個の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドと接触させることを含む。他の実施形態では、植物のボトリティス・シネレア感染を防除する方法は、配列番号2、7、9、11、および12からなる群より選択されるDNA配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の対応した断片に対して100%の同一性を有する少なくとも18個の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、2本鎖RNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、2本鎖RNA)は、化学的もしくは酵素的に合成されるか、または微生物における発現もしくは植物細胞における発現によって生成される。実施形態は、ポリヌクレオチドがトリガー配列群、RNAトリガー配列群、またはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される配列を有する鎖を含むdsRNAであるものを含む。実施形態は、ポリヌクレオチドがRNAトリガー配列群またはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される配列の一部分に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むものをさらに含む。この方法で使用するポリヌクレオチドを、複数の標的遺伝子向けに設計することができる。本発明の関連した態様は、この方法で使用する単離されたポリヌクレオチド、およびこの方法によって提供される改善されたボトリティス・シネレア耐性を有する植物を含む。特定の実施形態は、ポリヌクレオチドが配列番号26、31、33、35、36からなる群より選択される配列を含むdsRNAまたはその相補体であるものを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性の配列を有する。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して正確に(100%)同一である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性の全体配列を有する。
【0069】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1~12からなる群より選択されるDNA配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の対応した断片に対して100%の同一性を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNAまたは標的遺伝子の対応した断片に対して100%の同一性を有する21個の連続したヌクレオチドの1つ以上の断片に加えて、「ニュートラル」配列(標的遺伝子に対して配列同一性または相補性を有さない配列)を含み、したがって、ポリヌクレオチドは、全体として、標的遺伝子に対する全体的な配列同一性がより低い。
【0070】
いくつかの実施形態では、この方法で使用されるポリヌクレオチドは、単離されたDNAまたはRNA断片として提供される。いくつかの実施形態では、この方法で使用されるポリヌクレオチドは、発現構築物の一部分ではなく、プロモーターまたはターミネーター配列などの追加の要素を欠いている)。そのようなポリヌクレオチドは、約18個~約500個または約50個~約600個のヌクレオチド(1本鎖ポリヌクレオチドの場合)または約18個~約500個または約50個~約600個の塩基対(2本鎖ポリヌクレオチドの場合)の1本鎖または2本鎖ポリヌクレオチドなどの、比較的に短いものであってよい。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号13~60のdsRNAトリガーのいずれかの長さのdsRNAなどの、約100個~約600個の塩基対のdsRNAである。あるいは、ポリヌクレオチドは、より複雑な構築物で提供され、例えば、組換え発現構築物の一部分として提供されるか、または組換えベクター、例えば組換え植物ウイルスベクターもしくは組換えバキュロウイルスベクターに含まれることができる。いくつかの実施形態では、そのような組換え発現構築物またはベクターは、対象となる遺伝子(例えば、殺菌性タンパク質)を発現するための発現カセットなどの追加の要素を含むように設計される。
【0071】
いくつかの実施形態は、ボトリティス・シネレアを、標的遺伝子配列群で同定された遺伝子からなる群より選択される標的遺伝子のDNAの同等の長さの断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むポリヌクレオチドと接触させることを含む、植物のボトリティス・シネレア感染を防除する方法に関する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列群からなる群より選択される配列を有する鎖を有するdsRNAを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、ボトリティス・シネレアを、RNAトリガー配列群より選択される配列を含む鎖を有する2本鎖RNAを含む有効量の溶液と接触させることを含む植物のボトリティス・シネレア感染を防除する方法を提供し、上記溶液は、当技術分野で周知のオルガノシリコーン界面活性剤および/または他の農業用製剤成分をさらに含む。
【0072】
この方法の様々な実施形態では、接触は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを含む適切な組成物(例えば、セクションIIに記載のポリヌクレオチド、セクションVIIIに記載のdsRNA、またはセクションIXに記載の組成物)の、ボトリティス・シネレアに感染しているかまたは感染する可能性がある植物の表面への適用を含む。そのような組成物は、例えば、固体、(可溶性液体濃縮物などの均質混合物、および懸濁液、コロイド、ミセル、および乳濁液などの不均質混合物を含む)液体、粉末、懸濁液、乳濁液、スプレー、カプセル化またはマイクロカプセル化製剤として、マイクロビーズまたは他の担体粒子の中または上に、フィルムまたはコーティング内に、またはマトリックス上もしくはマトリックス内に、または葉、種子、根、もしくは茎の処理として提供されることができる。一実施形態では、表面は植物の葉、花、または果実である。そのような実施形態では、適用は、植物の葉、花、または果実にスプレーすることによって達成されることができる。接触は、種子処理の形態であってもよい。殺虫剤の製剤化および種子処理の当業者に知られているように、適切な結合剤、不活性担体、界面活性剤などは、任意に組成物に含まれることができる。いくつかの実施形態では、接触は、1つ以上の担体剤および/または1つ以上の界面活性剤(例えば、有機シリコーン、有機シリコーン界面活性剤)、非ポリヌクレオチド殺菌剤、ポリヌクレオチド除草剤分子、ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、毒性緩和剤、および病原体成長制御剤をさらに含む組成物内にポリヌクレオチドを提供することを含む。一実施形態では、接触は、植物上のボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそうでなければそれによって内部的に吸収されることができる組成物内にポリヌクレオチドを提供することを含む。
【0073】
VIII.殺菌性2本鎖RNA分子
本発明の別の態様は、ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、ボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または増殖/生殖能力(胞子形成)の低下を引き起こす殺菌性2本鎖RNA分子を提供し、殺菌性2本鎖RNAは、上記セクションIIまたは本明細書の他の場所に記載されるポリヌクレオチドのいずれかのヌクレオチド配列を含む。本発明の特定の実施形態は、ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかまたはそれと接触する場合に、植物上のボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、または増殖/生殖能力(胞子形成)の低下を引き起こす殺菌性2本鎖RNA分子を提供し、殺菌性2本鎖RNA分子は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有する標的遺伝子またはDNAの同等の長さの断片に対して本質的に同一であるかまたは本質的に相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNAは、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、またはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される1つ以上の配列を含む第1の鎖を含む。いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNAは、配列番号13~60からなる群より選択されるか、または配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列の少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも550個、少なくとも575個、または少なくとも600個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または約75%~約100%、約80%~約100%、約85%~約100%、約90%~約100%、95%~約100%、約98%~約100%、約100%、または100%同一である配列を含む第1の鎖を含む。いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNAは、RNAトリガー配列群またはRNAトリガー配列逆相補体群からなる群より選択されるか、または配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列の一部分に対して約95%~約100%の同一性を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、18個以上の連続したヌクレオチドは、21個の連続したヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNAは、RNAトリガー配列またはRNAトリガー配列逆相補体より選択される配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または正確に100%同一である配列を含む第1の鎖を含む。いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNAは、配列番号13~60からなる群より選択されるか、または配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNAは、第1の鎖に相補的な第2の鎖をさらに含む。いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNAは、RNAトリガー配列より選択されるヌクレオチド配列を含む第1の鎖を含み、対応したRNAトリガー配列逆相補体より選択される配列を含む第2鎖をさらに含む。いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNAは、配列番号26、31、33、35、および36からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む第1の鎖を含み、配列番号38、43、45、47、および48からなる群より選択される対応した相補的な配列より選択される配列を含む第2の鎖をさらに含む。
【0074】
殺菌性dsRNAの1つの鎖の全長は、18個の連続したヌクレオチドより長いかまたはそれに等しくてよく、RNAトリガー配列群もしくはRNAトリガー配列逆相補体より選択されるか、または配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列の一部分に対して約95%~約100%の配列を有する連続したヌクレオチドに加えて、ヌクレオチドを含んでよい。RNAトリガー配列群およびRNAトリガー配列逆相補体群より選択されるヌクレオチド配列を含む殺菌性dsRNAは、RNAトリガー配列群およびRNAトリガー配列逆相補体群より選択される配列のヌクレオチドに加えて、ヌクレオチドを含んでよい。言い換えれば、dsRNA鎖の全長は、RNAトリガー配列群またはRNAトリガー配列逆相補体より選択される配列または配列の一部分の長さよりも長くてよい。例えば、dsRNAは、標的遺伝子を抑制する「活性」断片に隣接するヌクレオチドを有してよいか、または活性断片の間に「スペーサー」ヌクレオチドを含んでよいか、または5’末端にもしくは3’末端にもしくは5’末端と3’末端の両方に追加のヌクレオチドを有してよい。一実施形態では、dsRNAは、所与のトリガーによって標的とされる標的遺伝子に特に関連していない(相補的または同一ではない配列を有する)追加のヌクレオチド、例えば、安定化している二次構造を提供するか、またはクローニングもしくは製造における利便性を提供するヌクレオチドを含んでよい。一実施形態では、dsRNAは、RNAトリガー配列群またはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される配列または配列の一部分にすぐ隣に位置する追加のヌクレオチドを含んでよい。一実施形態では、dsRNAは、断片に隣接する追加の5’Gまたは追加の3’Cまたはその両方を有する1つのそのような断片を含む。別の実施形態では、dsRNAは、オーバーハングを形成するために追加のヌクレオチドをさらに含み、例えば、dsRNAは、3’オーバーハングを形成するために2つのデオキシリボヌクレオチドを含む。したがって、様々な実施形態では、dsRNA全体のヌクレオチド配列は、RNAトリガー配列またはRNAトリガー配列逆相補体に対して100%同一または相補的ではない。例えば、いくつかの実施形態では、dsRNAは、RNAトリガー配列またはRNAトリガー配列逆相補体より選択される配列の一部分に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも2つの断片を含み、(1)上記少なくとも2つの断片は、1つ以上のスペーサーヌクレオチドによって分離され、または(2)上記少なくとも2つの断片は、対応した断片が標的遺伝子内に存在する順序とは異なる順序で配置される。
【0075】
いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNA分子は、長さが約50個~約600個の塩基対である。いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNA分子は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有する標的遺伝子またはDNAの同等の長さの断片に対して本質的に同一であるか、または本質的に相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの複数の断片を含み、上記断片は、標的遺伝子の異なった領域に由来する(例えば、断片は、標的遺伝子の異なったエクソン領域に対応することができ、標的遺伝子に対応していない「スペーサー」ヌクレオチドは、断片間にまたは断片に隣接して任意に使用されることができる)か、または異なった標的遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNA分子は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有する標的遺伝子またはDNAの同等の長さの断片に対して本質的に同一であるか、または本質的に相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの複数の断片を含み、上記断片は、標的遺伝子の異なった領域に由来し、断片が標的遺伝子内に自然に存在する順序とは異なる順序で殺菌性dsRNA分子内に配置される。いくつかの実施形態では、殺菌性dsRNA分子は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有する標的遺伝子またはDNAの同等の長さの断片に対して100%の同一性または100%相補的である配列を有する18個の連続したヌクレオチドの複数の断片を含み、上記断片は、標的遺伝子の異なった領域に由来し、断片が標的遺伝子内に自然に存在する順序とは異なる順序で殺菌性2本鎖RNA分子内に配置される。いくつかの実施形態では、sRNA分子は、トリガー配列群からなる群より選択される配列を含む1つの鎖、またはその相補体を含む。
【0076】
殺菌性dsRNA分子は、ボトリティス・シネレアによる感染を防除または予防するために、植物に局所的に適用されることができる。殺菌性dsRNA分子は、トランスフェクションまたはボトリティス・シネレアによる直接接触に適した形態、例えばスプレーまたは粉末の形態で提供されることができる。殺菌性dsRNA分子を提供するための他の方法および適切な組成物は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載されるものと同様である。
【0077】
いくつかの実施形態は、1つ以上の殺菌性ポリヌクレオチドと、水または他の溶剤と、任意選択で有機シリコーン界面活性剤とを含むタンクミックスに関する。実施形態は、ポリヌクレオチドのタンクミックス製剤と、場任意選択で少なくとも1つの殺虫剤とを含む。そのような組成物の実施形態は、1つ以上の殺菌性ポリヌクレオチドが、細菌もしくは真菌もしくは酵母細胞などの生きているもしくは死んだ微生物内に提供されるか、または微生物発酵産物として提供されるか、または生きているもしくは死んだ植物細胞内に提供されるか、または合成の組換えポリヌクレオチドとして提供されるものを含む。一実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるように、ポリヌクレオチドを含む微生物の非病原性株を含む。上記微生物の摂取は、ボトリティス・シネレアの成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、増殖/生殖能力(胞子形成)の低下、または死亡を引き起こす。適切な微生物の非限定的な例は、E.coli,B.thuringiensis,Pseudomonas spp.,Photorhabdus spp.,Xenorhabdus spp.,Serratia entomophilaおよび関連したSerratia spp.,B.sphaericus,B.cereus,B.laterosporus,B.popilliae,Clostridium bifermentansおよび他のClostridium種、または他の胞子形成性グラム陽性の細菌を含む。一実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるように、ポリヌクレオチドを含む植物ウイルスベクターを含む。ボトリティス・シネレアに感染した植物に対する、植物ウイルスベクターによる処理は、ボトリティス・シネレアの抑制された成長、死亡、または増殖/生殖能力(胞子形成)の低下を引き起こす。一実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるように、ポリヌクレオチドを含むバキュロウイルスベクターを含む。当該ベクターの摂取は、ボトリティス・シネレアの抑制された成長、死亡、または毒性もしくは病原性の低下、または増殖/生殖能力(胞子形成)の低下を引き起こす。一実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、ポリマーなどの合成のマトリックスにカプセル化されるか、または微粒子に付着され植物の表面に局所的に適用される。ボトリティス・シネレアに感染した植物に対する局所的な処理は、ボトリティス・シネレアの抑制された成長、死亡、または毒性もしくは病原性の低下、または増殖/生殖能力(胞子形成)の低下を引き起こす。一実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、このポリヌクレオチドを発現する植物細胞(例えば、本発明のトランスジェニック植物細胞)の形態で提供される。ボトリティス・シネレア感染に対する植物細胞またはこの植物細胞の内容物は、植物上のボトリティス・シネレアの抑制、死亡、または毒性もしくは病原性の低下、または増殖/生殖能力(胞子形成)の低下を引き起こす。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1つ以上のポリヌクレオチドは、効率的な葉の被覆に必要な適切な粘着剤および湿潤剤、ならびにdsRNAなどのポリヌクレオチドをUV損傷から保護するためのUV保護剤とともに提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1つ以上のポリヌクレオチドは、担体剤、界面活性剤、有機シリコーン、有機シリコーン界面活性剤、非ポリヌクレオチド殺菌剤、ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド殺虫剤、毒性緩和剤、および病原体成長制御剤とともにさらに提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの殺虫剤または殺菌剤をさらに含む。
【0079】
そのような組成物は、任意の便利な方法によって、例えば、直接ボトリティス・シネレアにスプレーもしくは散布するか、またはボトリティス・シネレアによる感染の予防もしくは防除が望まれる植物(例えば、植物の葉、茎、および/または花を含める)もしくは環境にスプレーもしくは散布するか、または植物の表面にコーティングを塗布するか、または種子の植え付けに備えて種子にコーティングを塗布するか、またはボトリティス・シネレアによる感染の予防もしくは防除が望まれる植物の根の周りに土壌ドレンチを施用することによって適用される。
【0080】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドの有効量は、(例えば、ボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性、増殖もしくは生殖の抑制や減少を引き起こすことによって)ボトリティス・シネレアの防除を提供するか、またはボトリティス・シネレアによる感染を予防するのに十分な量である。ポリヌクレオチドの有効量の決定は、通常のアッセイにより行われる。本明細書で提供される方法および組成物において有用であり得る殺菌性ポリヌクレオチドの濃度および用量に上限はないが、効率および経済性のために、より低い有効濃度および用量が一般的に求められる。有効量のポリヌクレオチドの非限定的な実施態様は、1本の植物にスプレーされる液体形態の、1ミリリットルあたり約10ナノグラム~約100マイクログラムの範囲のポリヌクレオチド、または植物の畑に適用される、1エーカーあたり約10ミリグラム~約100グラムのポリヌクレオチドを含む。本明細書に記載されるポリヌクレオチドが植物に局所的に適用される場合、濃度は、植物の葉または花びら、茎、果実、葯、花粉、葉、根、もしくは種などの他の植物部位の表面に適用されるスプレーまたは処理の量を考慮して調節できる。一実施形態では、本明細書に記載される、25-merのポリヌクレオチドを使用する草本植物のための有用な処理は、植物1本あたり約1ナノモル(nmol)のポリヌクレオチド、例えば、植物1本あたり約0.05~1nmolのポリヌクレオチドである。草本植物の他の実施形態は、植物1本あたり約0.05~約100nmol、または約0.1~約20nmol、または約1nmol~約10nmolのポリヌクレオチドの有用な範囲を含む。特定の実施形態では、約40~約50nmolのssDNAポリヌクレオチドが適用される。特定の実施形態では、約0.5nmol~約2nmolのdsRNAが適用される。特定の実施形態では、1ミリリットルあたり約0.5~約2.0ミリグラム、または1ミリリットルあたり約0.14ミリグラムのdsRNAまたはssDNA(21-mer)を含む組成物が適用される。特定の実施形態では、1ミリリットルあたり約0.5~約1.5ミリグラムの約50個~約200個以上のヌクレオチドの本発明のdsRNAポリヌクレオチドの組成物が適用される。特定の実施形態では、約1nmol~約5nmolの本発明のdsRNAが植物に適用される。特定の実施形態では、植物に局所的に適用されるポリヌクレオチド組成物は、本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドを、1ミリリットルあたり約0.01~約10ミリグラム、または1ミリリットルあたり約0.05~約2ミリグラム、または1ミリリットルあたり約0.1~約2ミリグラムの濃度で含む。いくつかの実施形態では、1ヘクタールあたり約5g~約100gの濃度のポリヌクレオチド活性成分が適用される。非常に大きな植物、木、または蔓は、それに応じてより大量のポリヌクレオチドを必要とする場合がある。複数のオリゴヌクレオチド(例えば、本発明の単一の組換えDNA分子によってコードされる複数のトリガー)に加工されることができる本発明の長いdsRNA分子を使用する場合、より低い濃度を使用することができる。有効なポリヌクレオチド治療計画の非限定的な例は、1植物あたり約0.1~約1nmolのポリヌクレオチド分子、または1植物あたり約1nmol~約10nmolのポリヌクレオチド分子、または1植物あたり約10nmol~約100nmolのポリヌクレオチド分子の治療を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドは、局所的に適用されたポリヌクレオチドが生物の細胞に入ることを可能にする剤である「導入剤」とともに提供される。そのような導入剤は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含む組成物の一部分として組み込むか、またはポリヌクレオチドの適用前後もしくは適用と同時に適用することができる。いくつかの実施形態では、導入剤は、ボトリティス・シネレアによる本発明のポリヌクレオチドの取り込みを改善する剤である。いくつかの実施形態では、導入剤は、ポリヌクレオチドによる植物細胞への透過に対して、植物組織、例えば、種子、葉、茎、根、花、または果実の表面をコンディショニングする剤である。いくつかの実施形態では、導入剤は、ポリヌクレオチドが表皮ワックス障壁、気孔、および/または細胞壁もしくは膜障壁を通過して植物細胞に入る経路を可能にする。
【0082】
適切な導入剤は、生物の外部の透過性を増加させるか、またはポリヌクレオチドに対する生物の細胞の透過性を増加させる剤を含む。適切な導入剤は、化学剤、物理剤、またはそれらの組み合わせを含む。コンディショニングまたは移動のための化学薬品は、(a)界面活性剤、(b)有機溶剤または水溶液または有機溶剤の水性混合物、(c)酸化剤、(d)酸、(e)塩基、(f)油、(g)酵素、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドおよび導入剤の適用は、任意選択で、インキュベーションステップ、(例えば、酸、塩基もしくは酸化剤を中和するか、または酵素を不活性化する)中和ステップ、水洗ステップ、またはそれらの組み合わせを含む。適切な導入剤は、乳濁液、逆相乳濁液、リポソーム、もしくは他のミセル様組成物の形態であってよいか、またはポリヌクレオチドに乳濁液、逆相乳濁液、リポソームもしくは他のミセル様組成物の形態をとらせてよい。導入剤の実施形態は、核酸分子と結合することが知られているカウンターイオンまたは他の分子、例えば、無機アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、リチウムイオン、スペルミン、スペルミジンまたはプトレシンなどのポリアミン、および他の陽イオンを含む。導入剤の実施形態は、DMSO、DMF、ピリジン、N-ピロリジン、ヘキサメチルホスホルアミド、アセトニトリル、ジオキサン、ポリプロピレングリコールなどの有機溶剤、または水と混和可能な、もしくは非水系においてホスホヌクレオチドを溶解する他の溶剤(例えば合成反応で使用されるもの)を含む。導入剤の実施形態は、界面活性剤または乳化剤を含むかまたは含まない天然由来の油または合成油、例えば、植物由来の油、作物油(例えば、herbicide.adjuvants.comからオンラインで公的に利用可能な9th Compendium of Herbicide Adjuvantsにリストされるもの)、パラフィン油、ポリオール脂肪酸エステル、またはポリエチレンイミンまたはN-ピロリジンなどのアミドまたはポリアミンで改変された短鎖分子を有する油を含む。
【0083】
導入剤の実施形態は、有機シリコーン製剤を含む。例えば、適切な導入剤は、CAS番号27306-78-1およびEPA番号:CAL.REG.NO.5905-50073-AAを有するSILWET L-77(登録商標)ブランドの界面活性剤として市販されており、現在Momentive Performance Materials,Albany,N.Y.から入手可能である、有機シリコーン製剤である。BREAK-THRU S 240ブランドのポリエーテル改変ポリシロキサン(CASRN独自)界面活性剤、現在Goldschmidt Chemical Corporation,Hopewell,VAから入手可能である。BREAK-THRU S 279のエンドキャップされたポリエーテルトリシロキサン界面活性剤、その成分が次の既存化学物質リストに列挙される。EINECS,TSCA,ENCS,AICS,ECL,PICCS CHINA,NDSL。INDUCEブランドのアジュバントNMFCアイテム42652、クラス60、現在Helena Chemical Company,Collierville,TNから入手可能である。CA REG No.34704-50065を有する、FRANCHISE(登録商標)with LECI-TECH(登録商標)ブランドの界面活性剤、現在Loveland Products,Inc.Greely,COから入手可能である。一実施形態は、ポリヌクレオチドとBREAK-thru 301とを含む組成物を含む。一実施形態は、ポリヌクレオチドと、約0.015~約2重量パーセント(wt%)(例えば、約0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.5wt%)の範囲のSilwet L-77,Break-thru S240,Break-thru S279,InduceまたはFranchiseなどの有機シリコーン製剤を含む導入剤を含む組成物を含む。一実施形態は、本発明のポリヌクレオチドと、約0.3~約1重量パーセント(wt%)または約0.5~約1重量パーセント(wt%)の範囲のSILWET L-77(登録商標),BREAK-THRU S240,BREAK-THRU S279,InduceまたはFranchiseブランドの界面活性剤を含む導入剤とを含む組成物を含む。
【0084】
本発明で使用する導入剤として有用な有機シリコーン化合物は、(a)共有結合で連結されるトリシロキサン先端基、(b)共有結合で連結されるn-プロピルリンカーを含むが、これに限定されないアルキルリンカー、(c)共有結合で連結されるポリグリコール鎖、(d)末端基、を含む化合物を含むが、これらに限定されない。そのような有機シリコーン化合物のトリシロキサン先端基は、ヘプタメチルトリシロキサンを含むが、これに限定されない。アルキルリンカーは、n-プロピルリンカーを含み得るが、これに限定されない。ポリグリコール鎖は、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含むが、これらに限定されない。ポリグリコール鎖は、約「7.5」の平均鎖長「n」を提供する混合物を含み得る。特定の実施形態では、平均鎖長「n」は、約5から約14まで変化し得る。末端基は、メチル基などのアルキル基を含み得るが、これらに限定されない。導入剤として有用な有機シリコーン化合物は、トリシロキサンエトキシレート界面活性剤またはポリアルキレンオキシド改変ヘプタメチルトリシロキサンを含むが、これらに限定されない。本発明で使用する導入剤の例は、化合物I
【化1】

(化合物I:ポリアルキレンオキシドヘプタメチルトリシロキサン、平均n=7.5)である。
【0085】
導入剤として有用な有機シリコーン化合物は、例えば、約0.015~約2重量パーセント(wt%)の範囲(例えば、約0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.5wt%)の新たに作製された濃度で使用される。
【0086】
導入剤の実施形態は、ポリヌクレオチドを含む組成物において提供されるか、またはそれとともに使用される、塩化アンモニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、および硫酸アンモニウムなどの1つ以上の塩を含む。いくつかの実施形態では、塩化アンモニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、および/または硫酸アンモニウムは、約0.5%~約5%(w/v)、または約1%~約3%(w/v)、または約2%(w/v)の濃度で使用される。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む組成物は、300ミリモル以上の濃度のアンモニウム塩を含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む組成物は、約0.015~約2重量パーセント(wt%)の濃度のオルガノシリコーン導入剤、および約80~約1200mMまたは約150mM~約600mMの濃度の硫酸アンモニウムを含む。
【0087】
導入剤の実施形態は、リン酸塩を含む。ポリヌクレオチドを含む組成物において有用なリン酸塩は、カルシウム、マグネシウム、カリウム、またはナトリウムのリン酸塩を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む組成物は、少なくとも約5ミリモル、少なくとも約10ミリモル、または少なくとも約20ミリモルの濃度でリン酸塩を含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む組成物は、約1mM~約25mMの範囲または約5mM~約25mMの範囲のリン酸塩を含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む組成物は、少なくとも約5ミリモル、少なくとも約10ミリモル、または少なくとも約20ミリモルの濃度でリン酸ナトリウムを含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む組成物は、約5ミリモル、約10ミリモル、または約20ミリモルの濃度のリン酸ナトリウムを含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む組成物は、約1mM~約25mMの範囲または約5mM~約25mMの範囲のリン酸ナトリウム塩を含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む組成物は、約10mM~約160mMの範囲または約20mM~約40mMの範囲のリン酸ナトリウム塩を含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む組成物は、pH約6.8のリン酸ナトリウム緩衝液を含む。
【0088】
導入剤の実施形態は、界面活性剤および/またはそれに含まれる有効な分子を含む。界面活性剤および/またはそれに含まれる有効な分子は、脂肪酸のナトリウム塩またはリチウム塩(獣脂または獣脂アミンまたはリン脂質など)および有機シリコーン界面活性剤を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む組成物は、核酸分子と結合することが知られているカウンターイオンまたは他の分子とともに製剤化される。非限定的な例は、テトラアルキルアンモニウムイオン、トリアルキルアンモニウムイオン、スルホニウムイオン、リチウムイオン、およびポリエチレンイミン、スペルミン、スペルミジンまたはプトレシンなどのポリアミンを含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含む組成物は、非ポリヌクレオチド除草剤、例えば、グリホサート、ジカンバ、クロランベン、およびTBAを含むオーキシン様安息香酸除草剤、グルホシネート、フェノキシカルボン酸除草剤を含むオーキシン様除草剤、ピリジンカルボン酸除草剤、キノリンカルボン酸除草剤、ピリミジンカルボン酸除草剤、およびベナゾリンエチル除草剤、スルホニル尿素、イミダゾリノン類、ブロモキシニル、ダラポン、シクロヘザンジオン、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ阻害剤、および4-ヒドロキシフェニル-ピルビン酸-ジオキシゲナーゼ阻害除草剤とともに製剤化される。
【0089】
IX.ボトリティス・シネレア感染を防除するための殺菌性組成物
本発明の別の態様は、殺菌的に有効な量の少なくとも1つのRNAを含む、ボトリティス・シネレアを防除するための殺菌性組成物を提供する。そのようなRNAは、セクションIIまたは本明細書の他の場所に記載されるRNAのいずれかであってよい。一実施形態では、RNAは、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体またはそれから転写されたRNAの対応した断片に対して約100%の同一性、約75%~約100%の同一性、約80%~約100%の同一性、約85%~約100%の同一性、約90%~約100%の同一性、約95%~約100%の同一性、約98%~約100%の同一性、約100%の同一性、または正確に100%の同一性の18個以上、19個以上、20個以上、21個以上、22個以上、23個以上、24個以上、25個以上、30個以上、50個以上、75個以上、100個以上、125個以上、150個以上、200個以上、250個以上、300個以上、400個以上、500個以上、600個以上、700個以上、800個以上、900個以上、または1,000個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。一実施形態では、RNAは、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体またはそのような標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも125個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも600個、少なくとも700個、少なくとも800個、少なくとも900個、または少なくとも1,000個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるヌクレオチド配列を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、RNAは、配列番号13~60からなる群より選択されるか、または配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列の少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも550個、少なくとも575個、または少なくとも600個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるか、または約75%~約100%、約80%~約100%、約85%~約100%、約90%~約100%、95%~約100%、約98%~約100%、約100%、または100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、RNAトリガー配列もしくはRNAトリガー配列逆相補体より選択されるか、または配列番号26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択される配列に対して本質的に相補的であるか、または少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%、または正確に100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号13~60からなる群より選択されるか、または配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47、および48からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0091】
この文脈において、「防除」は、死亡の増加、成長の抑制、毒性および/もしくは病原性の低下、または増殖/生殖能力(胞子形成)の低下などのボトリティス・シネレアにおける生物学的変化の誘発を含むが、これらに限定されない。「殺菌的に有効な量」または「殺菌性」とは、死亡の増加、成長の抑制、毒性および/もしくは病原性の低下、および増殖/生殖能力の低下が挙げられるがこれらに限定されない、ボトリティス・シネレアにおける生物学的変化を誘発するのに有効な剤の量を意味する。いくつかの実施形態では、殺菌的に有効な量のRNAの植物への適用は、ボトリティス・シネレア感染に対する植物の耐性を改善する。RNAは、それに含まれる1つ以上の断片よりも長い場合がある(すなわち、RNAは上記断片の追加のヌクレオチド3’および/または5’を含む場合がある)が、標的遺伝子の各断片と対応した断片は同等の長さである。この方法で使用するRNAは、複数の標的遺伝子のために設計されることができる。実施形態は、殺菌性組成物が、標的遺伝子配列群より選択されるヌクレオチド配列を有するDNAもしくは標的遺伝子もしくはそれから転写されたRNAの一部分に対して相補的である少なくとも18個、19個、20個、もしくは21個の連続したヌクレオチドを含む殺菌的に有効な量のポリヌクレオチド、またはDNAもしくは標的遺伝子もしくはそれから転写されたRNAの少なくとも21個の連続したヌクレオチドに対して本質的に相補的であるかもしくは本質的に同一である少なくとも1つのサイレンシング要素を含む殺菌的に有効な量の少なくとも1つのポリヌクレオチドであって、上記DNAもしくは標的遺伝子が標的遺伝子配列群より選択されるヌクレオチド配列を有する、殺菌的に有効な量の少なくとも1つのポリヌクレオチド、または配列番号1~12のヌクレオチド配列を有するDNAもしくは標的遺伝子もしくは当該DNAもしくは標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個、19個、20個、もしくは21個の連続したヌクレオチドに対して同一もしくは相補的である少なくとも1つの断片を含む、殺菌的に有効な量の少なくとも1つのRNA、またはボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかもしくはそれと接触する場合に、ボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、もしくは増殖/生殖能力(胞子形成)の低下を引き起こすRNA分子であって、上記RNA分子が、配列番号1~12のヌクレオチド配列を有するDNAもしくは標的遺伝子もしくは当該標的遺伝子から転写されたRNAに対して相補的である少なくとも18個、19個、20個、もしくは21個の連続したヌクレオチドを含む、RNA分子、またはボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるかもしくはそれと接触する場合に、ボトリティス・シネレアの死亡、成長の抑制、毒性もしくは病原性の低下、もしくは増殖/生殖能力(胞子形成)の低下を引き起こす殺菌性2本鎖RNA分子であって、上記殺菌性2本鎖RNA分子の少なくとも1つの鎖は、DNAもしくは標的遺伝子もしくはそれから転写されたRNAの断片もしくは同等の長さに対して相補的である21個の連続したヌクレオチドを含み、上記DNAもしくは標的遺伝子は、配列番号1~12からなる群より選択される配列を有する、殺菌性2本鎖RNA分子、またはRNAトリガー配列群もしくはRNAトリガー配列逆相補体群より選択される配列を含む、殺菌的に有効な量の少なくとも1つの2本鎖RNA、を含むものを含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、2本鎖RNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、化学的もしくは酵素的に合成されるか、または微生物における発現もしくは植物細胞における発現によって生成される。実施形態は、トリガー配列群、RNAトリガー配列群、RNAトリガー配列逆相補体群より選択されるか、または配列番号14、19、21、23、24、26、31、33、35、36、38、43、45、47もしくは48からなる群より選択されるか、またはより具体的な実施形態では配列番号19の配列の21個以上の連続したヌクレオチドに対して同一である配列を含むdsRNAまたはその相補体を含む殺菌性組成物を含む。
【0092】
様々な実施形態では、ボトリティス・シネレアを防除するための殺菌性組成物は、固体、(可溶性液体濃縮物などの均質混合物、および懸濁液、コロイド、ミセル、および乳濁液などの非均質混合物を含む)液体、粉末、懸濁液、乳濁液、エアロゾル、カプセル化もしくはマイクロカプセル化製剤からなる群より選択される少なくとも1つの形態、マイクロビーズもしくは他の担体粒子の中もしくは上、フィルムもしくはコーティングの中、またはマトリックスの上もしくは内、または葉、種子、根、もしくは茎の処理としてのものである。殺菌剤の製剤化および種子、茎、果実、もしくは葉の処理に関して当業者に知られているように、適切な結合剤、不活性担体、界面活性剤などは、ポリヌクレオチド含有組成物に任意に含むことができる。防除対象となるボトリティス・シネレアは、一般に植物に侵入する病原体である。いくつかの実施形態では、植物は、ブドウ、トマト、イチゴ、スナップインゲン、ナス、唐辛子、ピーマン、トマティーロ、グランドチェリー、ケープグーズベリー、タバコ、リンゴ、ナシ、マルメロ、モモ、プラム、チェリー、アーモンド、アプリコット、ブラックベリー、ブルーベリー、ラズベリー、カーネーション、ペチュニア、またはバラである。いくつかの実施形態では、殺菌性組成物は、植物に埋め込まれる粒子、ペレット、またはカプセルからなる群より選択される少なくとも1つの埋め込み型製剤である。そのような実施形態では、方法は、埋め込み型製剤を植物に埋め込むことを含む。一実施形態では、殺菌性組成物は、ボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるか、またはそうでなければそれによって内部的に吸収されることができる。いくつかの実施形態では、殺菌性組成物は、担体剤、界面活性剤、有機シリコーン、有機シリコーン界面活性剤、非ポリヌクレオチド殺菌剤、ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド殺虫剤、および毒性緩和剤、病原体成長制御剤からなる群より選択される1つ以上の成分をさらに含む。一実施形態では、殺菌性組成物は、SILWET(登録商標)ブランドの界面活性剤、例えば、CAS番号27306-78-1およびEPA番号:CAL.REG.NO.5905-50073-AAを有し、現在Momentive Performance Materials,Albany,N.Y.から入手可能であるSILWET L-77(登録商標)ブランドの界面活性剤などの非イオン性有機シリコーン界面活性剤をさらに含む。一実施形態は、BREAK-thru 301をさらに含む殺菌性組成物を含む。他の界面活性剤としては、例えば、現在Goldschmidt Chemical Corporation,Hopewell,VAから入手可能であるBREAK-THRU S 240ブランドのポリエーテル改変ポリシロキサン(CASRN独自)界面活性剤、成分がEINECS,TSCA,ENCS,AICS,ECL,PICCS CHINA,NDSLの既存化学物質リストに列挙されるBREAK-THRU S 279のエンドキャップされたポリエーテルトリシロキサン界面活性剤、現在Helena Chemical Company,Collierville,TNから入手可能であるINDUCEブランドのアジュバントNMFCアイテム42652,クラス60が挙げられる。CA REG No.34704-50065を有する、FRANCHISE(登録商標)with LECI-TECH(登録商標)ブランドの界面活性剤は、現在Loveland Products,Inc.Greely,COから入手可能である。あるいは、植物は、殺菌性組成物の効力を改善する物質の別個の(先行の、後の、または同時の)適用とともに、殺菌性組成物で局所的に処理される。例えば、SILWET L-77(登録商標)を例にとったSILWET(登録商標)ブランドの界面活性剤、BREAK-THRU S24、BREAK-THRU S279、INDUCEまたはFRANCAHISEブランドの界面活性剤などの非イオン性有機シリコーン界面活性剤を含む溶液の最初の局所的な適用によって植物にスプレーした後、殺菌性組成物の2度目の局所的な適用を行うことができ、またはその逆も同様である。
【0093】
この方法で使用する特定のRNA(例えば、実施例に記載されるdsRNAトリガー)と1つ以上の非ポリヌクレオチド殺菌剤との組み合わせは、RNA単独または非ポリヌクレオチド殺菌剤単独で得られる効果と比較して、ボトリティス・シネレア感染に対する予防または防除効果を高めることが予想される。
【0094】
様々な実施形態では、殺菌性組成物は微生物細胞を含むか、または微生物において生成される。例えば、殺菌性組成物は、細菌または酵母細胞を含むか、または細菌または酵母細胞において生成されることができる。同様の実施形態では、殺菌性組成物は、トランスジェニック植物細胞を含むか、または植物細胞(例えば、ポリヌクレオチドを一時的に発現する植物細胞)において生成される。そのような植物細胞は、植物における細胞、または組織培養物もしくは細胞懸濁液において増殖する細胞であり得る。
【0095】
一実施形態では、殺菌性組成物は、ボトリティス・シネレアによる感染を受けやすい任意の植物の形態で提供され、上記植物の内または上にRNAを含む。そのような植物は、RNAを発現する安定したトランスジェニック植物、またはRNAを一時的に発現するか、または例えばスプレーまたはコーティングすることによってRNAで処理された非トランスジェニック植物であり得る。安定したトランスジェニック植物は、一般に、それらのゲノムに組み込まれたRNAをコードする組換え構築物を含む。
【0096】
殺菌性組成物において有用なRNAは、1本鎖(ss)または2本鎖(ds)であり得る。実施形態は、RNAがセンス1本鎖RNA(ssRNA)、アンチセンス1本鎖(ssRNA)、または2本鎖RNA(dsRNA)からなる群より選択される少なくとも1つであるものを含み、これらのタイプのうちの任意のタイプのRNAの混合物は使用されることができる。一実施形態では、2本鎖DNA/RNAハイブリッドが使用される。RNAは、標準的なリボヌクレオチド以外の成分を含むことができ、例えば、一実施形態は、末端デオキシリボヌクレオチドを含むRNAである。
【0097】
殺菌性組成物におけるRNAは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有する標的遺伝子またはDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を有する。一実施形態では、RNAは、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して本質的に同一または相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドは、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性の配列を有する。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドは、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%同一である。いくつかの実施形態では、RNAは、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性の全体配列を有する。
【0098】
殺菌性組成物におけるRNAは、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、18個以上、例えば、18個~24個、または18個~28個、または20個~30個、または20個~50個、または20個~100個、または50個~100個、または50個~500個、または100個~250個、または100個~600個、または200個~1000個、または500個~2000個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、断片は、18個を超える連続したヌクレオチド、例えば、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、または30個を超える個数、例えば、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約110個、約120個、約130個、約140個、約150個、約160個、約170個、約180個、約190個、約200個、約210個、約220個、約230個、約240個、約250個、約260個、約270個、約280個、約290個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、約550個、約575個、約600個、または600個を超える連続したヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、RNAは、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのいずれかのRNA転写物または前述のもののいずれかのDNAもしくはRNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。特定の実施形態では、RNAは、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのいずれかのRNA転写物または前述のもののいずれかのDNAもしくはRNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む1つの鎖を有する2本鎖核酸(例えば、dsRNA)である。塩基対として表現されるそのような2本鎖核酸は、遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのいずれかのRNA転写物または前述のもののいずれかのDNAもしくはRNA相補体の同等の長さの断片に対応する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続した、完全に一致した塩基対の少なくとも1つの断片を含む。特定の実施形態では、RNAに含まれる各断片は、天然に存在する制御性小分子RNAに典型的な長さよりも長く、例えば、各断片は、少なくとも約30個の連続したヌクレオチド(または塩基対)の長さである。いくつかの実施形態では、RNAの全長、またはRNAに含まれる各断片の長さは、対象となる配列(標的遺伝子配列群またはトリガー配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子)の全長より短い。いくつかの実施形態では、RNAの全長は、約50個~約600個のヌクレオチド(1本鎖RNAの場合)または塩基対(2本鎖RNAの場合)である。いくつかの実施形態では、RNAは、長さが約50個~約600個のヌクレオチドの少なくとも1つのRNA鎖を含む。
【0099】
殺菌性組成物におけるRNAは、一般に、1つ以上の標的遺伝子を抑制するように設計される。そのような標的遺伝子は、コード配列または非コード配列またはその両方を含み得る。特定の実施形態では、RNAは、Sec18/Cdc48,CDC42,NBP35,SDH,Bcrrp1,XM_024691746.1,Bcsec15,Bcswd2,Bcmcm4,Bcgpi2,Bcrpb5,Bcded1からなる群より選択される1つ以上のボトリティス・シネレアの標的遺伝子を抑制するように設計され、これらの遺伝子の1つ以上の異なった領域を標的とするように設計されることができる。様々な実施形態では、RNAは、1つ以上の遺伝子を抑制するように設計され、各遺伝子は、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有し、この群からの複数の遺伝子を抑制するか、またはこれらの遺伝子の1つ以上の異なった領域を標的とするように設計されることができる。一実施形態では、RNAは、複数のセクションまたは断片を含み、上記複数のセクションまたは断片のそれぞれが、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのいずれかのRNA転写物または前述のもののいずれかのDNAもしくはRNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。そのような場合、各セクションはサイズまたは配列において同一であっても異なっていてもよく、標的遺伝子に対してセンスであってもアンチセンスであってもよい。例えば、一実施形態では、RNAは、タンデムまたは反復配列において複数のセクションを含み、各セクションは、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのいずれかのRNA転写物または前述のもののいずれかのDNAもしくはRNA相補体の同等の長さの断片に対して100%同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。上記断片は、標的遺伝子の異なった領域に由来することができ、例えば、断片は、標的遺伝子の異なったエクソン領域に対応することができ、標的遺伝子に対応していない「スペーサー」ヌクレオチドは、任意選択で、断片の間にまたは断片に隣接して使用されることができる。
【0100】
殺菌性組成物におけるRNAの全長は、18個の連続したヌクレオチドを超えることができ、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNAもしくはRNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する連続したヌクレオチドに加えてヌクレオチドを含むことができる。言い換えれば、RNAの全長は、1つ以上の標的遺伝子を抑制するように設計されるRNAのセクションまたは断片の長さを超えることができ、各標的遺伝子は、標的遺伝子配列群からなる群より選択されるDNA配列またはその相補体を有する。例えば、RNAは、標的遺伝子を抑制する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片の「活性」断片に隣接するヌクレオチドを有するか、または活性断片の間に「スペーサー」ヌクレオチドを含むか、または5’末端にもしくは3’末端にもしくは5’末端と3’末端の両方に追加のヌクレオチドを有することができる。一実施形態では、RNAは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体に特に関連していない(相補的または同一ではない配列を有する)追加のヌクレオチド、例えば、安定化している二次構造を提供するか、またはクローニングや製造における利便性を提供するヌクレオチドを含む。一実施形態では、RNAは、標的遺伝子配列群もしくはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子または前述のもののいずれかのDNAもしくはRNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性または相補性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの1つ以上の断片のすぐ隣に位置する追加のヌクレオチドを含む。一実施形態では、RNAは、1つのそのような断片を含み、その断片に隣接する追加の5’Gまたは追加の3’Cまたはその両方を有する。別の実施形態では、RNAは、オーバーハングを形成するために追加のヌクレオチドを含む2本鎖RNA、例えば、3’オーバーハングを形成するために2つのデオキシリボヌクレオチドを含むdsRNAである。したがって、様々な実施形態では、RNA全体のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子における連続したヌクレオチドの断片に対して100%同一または相補的ではない。例えば、いくつかの実施形態では、RNAは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも2つの断片を含み、(1)少なくとも2つの断片は、1つ以上のスペーサーヌクレオチドによって分離されている、または(2)少なくとも2つの断片は、対応した断片が標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体において存在する順序とは異なる順序で配置されている。
【0101】
様々な実施形態では、殺菌性組成物におけるRNAは、天然に存在するリボヌクレオチドからなる。実施形態は、例えば、完全にリボヌクレオチドからなる合成RNA、または主にリボヌクレオチドからなるが、1つ以上の末端デオキシリボヌクレオチドまたは1つ以上の末端デオキシリボヌクレオチドを有する合成RNAを含む。特定の実施形態では、RNAは、イノシン、チウリジンまたはプソイドウリジンなどの非標準的ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、RNAは化学的に改変されたヌクレオチドを含む。殺菌性組成物におけるRNAは、当業者に知られている適切な手段によって提供される。実施形態は、RNAが(例えば、T7ポリメラーゼまたは他のポリメラーゼを使用する転写などのインビトロ転写によって)化学的または酵素的に合成されるか、または微生物または細胞培養物(例えば、培養物中で増殖する植物細胞または真菌細胞)における発現によって生成されるか、または微生物発酵によって生成されるものを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、RNAは、発現構築物の一部分ではない単離されたRNAとして提供される。いくつかの実施形態では、RNAは、プロモーター配列またはターミネーター配列などの追加の要素が欠けている単離されたRNAとして提供される。そのようなRNAは、比較的に短くてよく、例えば、約18個~約300個もしくは約50個~約600個のヌクレオチド(1本鎖RNAの場合)または約18個~約300個もしくは約50個~約600個の塩基対(2本鎖RNAの場合)の1本鎖または2本鎖RNAである。あるいは、RNAは、より複雑な構築物で、例えば組換え発現構築物の一部分として、または組換えベクター、例えば組換え植物ウイルスベクターもしくは組換えバキュロウイルスベクターに含まれて、提供されることができる。いくつかの実施形態では、そのような組換え発現構築物またはベクターは、アプタマーもしくはリボザイムをコードする追加のRNA、または対象となる遺伝子(例えば、殺菌性タンパク質)を発現するための発現カセットなどの追加の要素を含むように設計される。
【0103】
X.ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法、ならびにそのようにして提供される植物、植物部位、および種子
いくつかの実施形態は、標的遺伝子配列群において特定される遺伝子からなる群より選択される標的遺伝子または当該標的遺伝子から転写されたRNAの断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物に提供することを含む、ボトリティス・シネレア感染/コロニー形成に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法に関する。これらの標的遺伝子の実施形態は、表1Aにおける名前によって特定され、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有する遺伝子、および関連植物病原菌からのオルソログを含む関連遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、2本鎖RNA)は、化学的もしくは酵素的に合成されるか、または微生物における発現/生成もしくは植物細胞における発現によって生成される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列群より選択される配列を有する鎖を有するdsRNAまたはその相補体である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トリガー配列群より選択される配列を有する鎖を有するdsRNAを含む。
【0104】
関連態様において、本発明は、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を対象とし、上記耐性は、標的遺伝子配列群において特定される遺伝子からなる群より選択される標的遺伝子の同等の長さの断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物内に発現させることによって提供され、それにより得られる植物は、ポリヌクレオチドの発現しない対照植物と比較して、ボトリティス・シネレア感染に対してより強い耐性を有する。関連態様では、本発明は、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を対象とし、上記耐性は、標的遺伝子配列群において特定される遺伝子からなる群より選択される標的遺伝子の断片に対して約95%~約100%の同一性または相補性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物内に発現させることによって提供され、それにより得られる植物は、ポリヌクレオチドが発現しない対照植物と比較して、ボトリティス・シネレア感染に対する改善された耐性を有する。
【0105】
さらに別の態様では、本発明は、この方法によって提供される、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物によって生成される種子または増殖可能な部位(特に、トランスジェニック子孫種子または増殖可能な部位)を対象とする。この方法によって提供される、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物によって生産される製品、およびそのような植物のトランスジェニック子孫種子または増殖可能な部位から生産される製品も企図される。
【0106】
本発明の別の態様は、ポリヌクレオチド含有組成物で処理された植物が、未処理の植物と比較してボトリティス・シネレア感染に対するより強い耐性を示すように、標的遺伝子配列群より選択される配列を有する標的遺伝子またはそのDNA相補体の断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を有する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物の植物への局所的な適用を含む、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法を提供する。一実施形態では、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して本質的に同一である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。ポリヌクレオチドは、それに含まれる1つ以上の断片よりも長い場合があるが、各断片と標的遺伝子の対応した断片は同等の長さである。一実施形態では、本発明は、配列番号1~12からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する標的遺伝子または当該標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個の連続したヌクレオチドに対して相補的であるヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物の植物への局所的な適用を含む、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法を提供する。一実施形態では、本発明は、有効量のポリヌクレオチドが植物の内または上のボトリティス・シネレアにトランスフェクトされるように、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物を植物に局所的に適用することを含む、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法を提供し、上記ポリヌクレオチドは、配列番号1~12のヌクレオチド配列を有する標的遺伝子または当該標的遺伝子から転写されたRNAの領域に対して相補的である少なくとも18個の連続したヌクレオチドを含む。
【0107】
この方法で使用するポリヌクレオチドは、複数の標的遺伝子のために設計されることができる。実施形態は、組成物がトリガー配列群からなる群より選択される配列を有する鎖を有するdsRNAを含むものを含む。本発明の関連態様は、局所的な適用のための組成物、およびこの方法で使用する単離されたポリヌクレオチド、およびこの方法によって提供される強化されたボトリティス・シネレア耐性を有する植物を含む。
【0108】
本明細書全体で使用される「局所的な適用」とは、例えば葉、茎、花、果実、新芽、根、茎、種子、花、葯、もしくは花粉などの植物部位の表面への適用、または植物全体、または植物の地上部もしくは地下部への適用などの、植物の表面または外部などの対象の表面または外部への適用を意味する。局所的な適用は、土壌への適用、またはボトリティス・シネレアがポリヌクレオチドに遭遇できる表面もしくはマトリックスへの適用など、非生物表面上で行われることができる。この方法の様々な実施形態では、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物は、例えば固体、液体(可溶性液体濃縮物などの均質混合物、および例えば可溶性液体濃縮物などの不均質混合物を含む)、懸濁液、コロイド、ミセル、および乳濁液)、粉末、懸濁液、乳濁液、スプレー、カプセル化またはマイクロカプセル化製剤、マイクロビーズまたは他の担体粒子中または上、フィルムまたはコーティング中、またはマトリックス上またはマトリックス内、あるいはマトリックスとして葉、種子、根、茎の処理などの適切な形態で植物に局所的に適用される。この方法のいくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド含有組成物は、植物の地上部分に局所的に適用され、例えば、植物の葉、茎、および開花部分にスプレーまたは散布される。
【0109】
この方法の実施形態は、葉面スプレー(例えば、液体ポリヌクレオチド含有組成物を植物の葉にスプレーする)または葉面散布(例えば、植物に粉末の形態または担体粒子上の組成物を含むポリヌクレオチド含有組成物を散布する)の局所的な適用を含む。他の実施形態では、ポリヌクレオチド含有組成物は、例えば土壌ドレンチによって、根などの植物の地下部分に局所的に適用される。他の実施形態では、ポリヌクレオチド含有組成物は、植物に成長する種子に局所的に適用される。局所的な適用は、植物の果実または植物の果実からの種子の局所的な処理の形態であり得る。殺菌剤の配合および種子または茎の処理の当業者に知られているように、適切な結合剤、不活性担体、界面活性剤などをポリヌクレオチド含有組成物に任意に含めることができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド含有組成物は、植物に局所的に埋め込まれる微粒子、ペレット、またはカプセル化からなる群より選択される少なくとも1つの局所埋め込み型製剤である。そのような実施形態では、この方法は、局所埋め込み型製剤を植物に局所的に埋め込むことを含む。一実施形態では、ポリヌクレオチド含有組成物は、ボトリティス・シネレアによってトランスフェクトされ得るか、またはそうでなければ内部的に吸収され得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド含有組成物は、担体剤および/または界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)をさらに含む。非イオン性有機シリコーン界面活性剤の例は、SILWET(登録商標)ブランドの界面活性剤、BREAK THRU S240、BREAK THRU S279、BREAK THRU 301、Induce および Franchise、例えば、SILWET L-77(登録商標)ブランドの界面活性剤を含む。界面活性剤の最初の局所的な適用の後にポリヌクレオチド含有組成物の第2の局所的な適用が続いてもよく、またはその逆でもよい。いくつかの実施形態では、植物は、ポリヌクレオチド含有組成物による局所的な処理に加えて、その前後もしくは同時にポリヌクレオチド含有組成物の効能を強化する物質を適用することにより処理される。例えば、SILWET(登録商標)ブランドの界面活性剤BREAK THRU S240、BREAK THRU S279、BREAK THRU 301、InduceおよびFranchise、例えばSILWET L-77(登録商標)などの非イオン性有機シリコーン界面活性剤を含有する溶液の最初の局所的な適用を植物にスプレーすることができる。その後、ポリヌクレオチド含有組成物の2回目の局所的な適用を行ってもよいし、あるいはその逆も可である。
【0111】
ポリヌクレオチド含有組成物において有用な特定のポリヌクレオチド(例えば、実施例に記載されるポリヌクレオチドトリガー)と1つ以上の非ポリヌクレオチド殺虫剤との組み合わせは、ポリヌクレオチド単独または非ポリヌクレオチド殺虫剤単独で得られる効果と比較してボトリティス・シネレア感染の予防または防除効果の改善をもたらすことが予想される。
【0112】
ポリヌクレオチド含有組成物において有用なポリヌクレオチドは、当業者に知られている適切な手段によって提供される。実施形態は、ポリヌクレオチドが化学的または酵素的に合成され(例えば、T7ポリメラーゼまたは他のポリメラーゼを使用する転写などのインビトロ転写によって)、微生物または細胞培養物(例えば、植物細胞、微生物細胞、または病原体細胞(培養物で増殖)、植物細胞での発現によって生成されるか、微生物発酵によって生成される。
【0113】
多くの実施形態では、ポリヌクレオチド含有組成物において有用なポリヌクレオチドは、単離されたDNAまたはRNA断片として提供される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド含有組成物において有用なポリヌクレオチドは、発現構築物の一部分ではなく、プロモーターまたはターミネーター配列などの追加の要素を欠いている。そのようなポリヌクレオチドは、約18個~約500個または約50個~約600個のヌクレオチド(1本鎖ポリヌクレオチドの場合)または約18個~約500個または約50個~約600個の塩基対(2本鎖ポリヌクレオチドの場合)の1本鎖または2本鎖ポリヌクレオチドなどの、比較的に短いものであってよい。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、図および表1Aに開示されるdsRNAトリガーのいずれかの長さのdsRNAなど、約100個~約600個の塩基対のdsRNAである。あるいは、ポリヌクレオチドは、より複雑な構築物で提供され、例えば、組換え発現構築物の一部分として提供されるか、または組換えベクター、例えば組換え植物ウイルスベクターもしくは組換えバキュロウイルスベクターに含まれることができる。そのような組換え発現構築物またはベクターは、対象となる遺伝子(例えば、殺菌性タンパク質)を発現させるための発現カセットなどの追加要素を含むように設計されることができる。
【0114】
ポリヌクレオチド含有組成物において有用なポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を有する。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAの同等の長さの断片に対して本質的に同一または相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドは、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAの断片に対して約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性の配列を有する。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドは、標的遺伝子からなる群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して正確に(100%)同一である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性の全体配列を有する。
【0115】
ポリヌクレオチド含有組成物において有用なポリヌクレオチドは、18個以上(例えば18個~24個、または18個~28個、または20個~30個、または20個~50個、または20個~100個、または50個~100個、または50個~500個、または100個~250個、または100個~600個、または200個~1000個、または500個~2000個以上)の連続したヌクレオチドの断片を含む。いくつかの実施形態では、断片は、18個を超える個数、例えば、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、または30個を超える個数、例えば、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約110個、約120個、約130個、約140個、約150個、約160個、約170個、約180個、約190個、約200個、約210個、約220個、約230個、約240個、約250個、約260個、約270個、約280個、約290個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、約550個、約575個、約600個、または600個を超える個数の連続したヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%同一性の配列を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、1つの鎖が標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%同一性の配列を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む2本鎖核酸(例えば、dsRNA)である。塩基対として表現されるそのような2本鎖核酸は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対応する少なくとも18個、19個、20個、21個の連続した完全に一致した塩基対の少なくとも1つの断片を含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドに含まれる各断片は、天然に存在する制御性小分子RNAに典型的な長さよりも長く、例えば、各断片は、少なくとも約30個の連続したヌクレオチド(または塩基対)の長さである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの全長、またはポリヌクレオチドに含まれる各断片の長さは、対象となる配列(標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体)の全長より短い。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの全長は、約50個~約600個のヌクレオチド(1本鎖ポリヌクレオチドの場合)または塩基対(2本鎖ポリヌクレオチドの場合)である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、表1Aに開示されるdsRNAトリガーのいずれかの長さのdsRNAなどの、約100個~約600個の塩基対のdsRNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号14、19、21、23、および24からなる群より選択される配列によってコードされるdsRNAである。
【0116】
局所的に適用されるポリヌクレオチドは、一般に、RNAiを介して1つ以上の遺伝子(「標的遺伝子」)を抑制するように設計される。そのような標的遺伝子は、コード配列または非コード配列またはその両方を含み得る。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、1つ以上の標的遺伝子を抑制するように設計され、各標的遺伝子は、標的遺伝子配列群からなる群より選択されるDNA配列を有する。様々な実施形態では、局所的に適用されるポリヌクレオチドは、1つ以上の遺伝子を抑制するように設計され、各遺伝子は、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有し、この群からの複数の遺伝子を抑制するか、またはこれらの遺伝子の1つ以上の異なった領域を標的とするように設計されることができる。一実施形態では、局所的に適用されるポリヌクレオチドは、それぞれが標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む複数のセクションまたは断片を含む。そのような場合、各セクションはサイズまたは配列において同一であっても異なっていてもよく、標的遺伝子に対してセンスであってもアンチセンスであってもよい。例えば、一実施形態では、局所的に適用されるポリヌクレオチドは、タンデムまたは反復配列において複数のセクションを含むことができ、各セクションは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAの同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。
【0117】
局所的に適用されるポリヌクレオチドの全長は、18個の連続したヌクレオチドを超えることができ、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する連続したヌクレオチドに加えてヌクレオチドを含むことができる。言い換えれば、局所的に適用されるポリヌクレオチドの全長は、1つ以上の標的遺伝子を抑制するように設計されるポリヌクレオチドのセクションまたは断片の長さよりも長くてもよく、各標的遺伝子は、標的遺伝子配列群からなる群より選択されるDNA配列を有する。例えば、局所的に適用されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子を抑制する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片の「活性」断片に隣接するヌクレオチドを有することができるか、または活性断片間に「スペーサー」ヌクレオチドを含むことができるか、または5’末端にもしくは3’末端にもしくは5’末端と3’末端の両方に追加のヌクレオチドを有することができる。一実施形態では、局所的に適用されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体に特に関連していない(相補的または同一ではない配列を有する)追加のヌクレオチド(例えば、二次構造を安定化するため、またはクローニングや製造の利便性のために提供されるヌクレオチド)を含む。
【0118】
一実施形態では、局所的に適用されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性または相補性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの1つ以上の断片のすぐ隣に位置する追加のヌクレオチドを含む。一実施形態では、局所的に適用されるポリヌクレオチドは、その断片に隣接して追加の5’Gまたは追加の3’Cまたはその両方を有する1つのそのような断片を含む。別の実施形態では、局所的に適用されるポリヌクレオチドは、オーバーハングを形成する追加のヌクレオチドを含む2本鎖RNA、例えば、3’オーバーハングを形成する2つのデオキシリボヌクレオチドを含むdsRNAである。したがって、様々な実施形態では、局所的に適用されたポリヌクレオチド全体のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子における連続したヌクレオチドの断片に対して100%同一または相補的ではない。例えば、いくつかの実施形態では、局所的に適用されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはDNA相補体の断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも2つの断片を含み、ここで(1)少なくとも2つの断片は、1つ以上のスペーサーヌクレオチドによって分離されている、または(2)少なくとも2つの断片は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体において対応した断片が存在する順序とは異なる順序で配置されている。
【0119】
関連態様では、本発明は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAの同等の長さの断片またはそのDNA相補体に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を有する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物を、植物に局所的に適用することを含む方法によって提供されるボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を対象とし、上記方法によってポリヌクレオチド組成物で処理された植物は、未処理の植物と比較して、ボトリティス・シネレア感染に対するより強い耐性を示す。
【0120】
一実施形態は、トリガー配列群より選択される配列を有するdsRNAトリガーまたはその相補体または配列番号13~24、49~52の配列によってコードされるdsRNAトリガーを、植物または植物に成長する種子に局所的に適用することによって提供される、対照植物と比較してボトリティス・シネレア感染に対してより強い耐性を有する植物である。さらに別の態様では、本発明は、この方法によって提供される、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物によって生成される種子(特にトランスジェニック子孫種子)を対象とする。この方法によって提供される、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物によって生産される製品、およびそのような植物のトランスジェニック子孫種子または茎/苗条から生産される製品も企図される。
【0121】
XI.ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有するトランスジェニック植物を提供する方法、およびそのようにして提供される植物および種子
本発明の別の態様は、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有する標的遺伝子またはDNAまたはそのDNA相補体(またはその両方)の断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを、植物において発現させることを含む、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法を対象とし、このような方法によって得られる植物は、ポリヌクレオチドが発現しない対照植物と比較して、ボトリティス・シネレア感染に対してより強い耐性を有する。一実施形態では、この方法は、標的遺伝子配列群もしくはトリガー配列群より選択される配列を有する標的遺伝子またはDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現することを含む。一実施形態では、本発明は、配列番号1~12からなる群より選択される配列を有するDNAの少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドに対して同一であるかまたは相補的である少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを、植物において発現することを含む、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供する方法を提供する。「植物においてポリヌクレオチドを発現する」とは、一般に、「植物においてRNA転写物を発現する」こと、例えば、標的遺伝子配列群より選択される配列を有する標的遺伝子またはDNAまたはそのDNA相補体の少なくとも1つの断片に対してアンチセンスであるかまたは本質的に相補的であるリボヌクレオチド配列を含むRNAを、植物において発現することを意味する。実施形態は、植物において発現されるポリヌクレオチドが、トリガー配列群より選択される配列を有する少なくとも1つの断片を含むRNAまたはその相補体であるものを含む。しかし、植物において発現されるポリヌクレオチドは、DNA(例えば、ゲノム複製中に植物において生成されるDNA)、またはそのようなDNAによってコードされるRNAであってもよい。本発明の関連した態様は、この方法で使用する単離されたポリヌクレオチド、およびこの方法によって提供される改善されたボトリティス・シネレア耐性を有する植物を含む。
【0122】
この方法は、植物において少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させることを含み、ポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列より選択される配列を有する標的遺伝子またはDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、DNAの形態で(例えば、単離されたDNA分子の形態で、または発現構築物として、または形質転換ベクターとして)植物に提供され、植物において発現されるポリヌクレオチドは、植物における第2のポリヌクレオチド(例えば、第1のポリヌクレオチドのRNA転写物)である。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、トランスジェニック発現によって、すなわち、ポリヌクレオチドを、植物の1つまたは複数の細胞において発現できる場所から植物のゲノムに安定に組み込むことによって、植物において発現される。一実施形態では、第1のポリヌクレオチド(例えば、標的遺伝子配列群より選択される標的遺伝子またはDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むDNAに操作可能な形で連結されたプロモーターを含む組換えDNA構築物)は、二次的に生成されるポリヌクレオチド(例えば、標的遺伝子配列群より選択される標的遺伝子またはDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの断片の転写物を含むRNA転写物)が植物の1つまたは複数の細胞において発現される場所から、植物のゲノムに安定に組み込まれる。安定に形質転換された植物を提供する方法については、「トランスジェニック植物細胞およびトランスジェニック植物の生成と利用」のセクションで論じる。
【0123】
別の実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、一時的な発現(すなわち、配列の植物ゲノムへの安定的な組み込みに起因しない発現)によって発現される。そのような実施形態では、方法は、当技術分野で知られている通常の技術によって植物にポリヌクレオチド(例えば、dsRNAまたはdsDNA)を導入するステップを含むことができる。例えば、一時的な発現は、無針注射器を使用して植物の葉または茎にポリヌクレオチド溶液を浸透させることによって達成され得る。
【0124】
植物において発現されるポリヌクレオチドが一時的な発現によって発現されるいくつかの実施態様では、第1のポリヌクレオチドは、RNA又はDNA、又はRNAとDNAの両方の形態で植物に提供され、かつ二次的に生成された第2のポリヌクレオチドは、植物において一時的に発現される。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、(a)1本鎖RNA分子(ssRNA)、(b)自己ハイブリッド化して2本鎖RNA分子を形成する1本鎖RNA分子、(c)2本鎖RNA分子(dsRNA)、(d)1本鎖DNA分子(ssDNA)、ユーロ自己ハイブリッド化して2本鎖DNA分子を形成する1本鎖DNA分子、(f)RNA分子に転写される改変Pol III遺伝子を含む1本鎖DNA分子、(g)2本鎖DNA分子(dsDNA)、(h)RNA分子に転写される改変Pol III遺伝子を含む2本鎖DNA分子、および(i)2本鎖の、ハイブリッド化したRNA/DNA分子、またはそれらの組み合わせより選択される1つ以上である。特定の実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、適切な形態での、例えば、固体、液体(可溶性液体濃縮物などの均質混合物、および懸濁液、コロイド、ミセル、および乳濁液などの非均質混合物)、粉末、懸濁液、乳濁液、スプレー、カプセル化またはマイクロカプセル化製剤としての、マイクロビーズもしくは他の担体粒子の中もしくは上の、フィルムもしくはコーティングの中の、またはマトリックスの上もしくは中における、または植物の葉、種子、根、もしくは茎の処理の形態でのポリヌクレオチド含有組成物の植物への局所的な適用によって、植物に導入される。殺虫剤の製剤化および種子処理の当業者に知られているように、適切な結合剤、不活性担体、界面活性剤などは、任意に組成物に含まれることができる。そのような実施形態では、ポリヌクレオチド含有組成物は、担体剤、界面活性剤、有機シリコーン、有機シリコーン界面活性剤、非ポリヌクレオチド殺菌剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド殺虫剤、毒性緩和剤、および病原体成長制御剤。一実施形態では、組成物は、CAS番号27306-78-1およびEPA番号:CAL.REG.NO.5905-50073-AAを有する、現在Momentive Performance Materials, Albany,N.Y.から入手可能なSILWET L-77(登録商標)ブランドの界面活性剤を例にとったSILWET(登録商標)ブランドの界面活性剤などの非イオン性有機シリコーン界面活性剤をさらに含むことができる。BREAK-THRU S 240ブランドは、現在Goldschmidt Chemical Corporation,Hopewell,VAから入手可能なポリエーテル改変ポリシロキサン(CASRN独自)界面活性剤である。BREAK-THRU S 279はエンドキャップされたポリエーテルトリシロキサン界面活性剤であり、その成分は次の既存化学物質リストに列挙される:EINECS、TSCA、ENCS、AICS、ECL、PICCS CHINA、NDSL。INDUCEブランドのアジュバントNMFCアイテム42652、クラス60、現在Helena Chemical Company,Collierville,TNから入手可能である。CA REG No.34704-50065を有する、FRANCHISE(登録商標) with LECI-TECH(登録商標)ブランドの界面活性剤、現在Loveland Products,Inc.Greely,COから入手可能である。あるいは、そのような追加の成分または殺虫剤は、例えば、別個の局所的な適用によって、または植物におけるトランスジェニック発現によって、別個に提供され得る。あるいは、植物は、ポリヌクレオチド含有組成物による処理に加えて、その前後もしくは同時にポリヌクレオチド含有組成物の効能を強化する別の物質で局所的に処理することもできる。例えば、SILWET L-77(登録商標)を例にとったSILWET(登録商標)ブランドの界面活性剤、BREAK-THRU S24、BREAK-THRU S279、INDUCEまたはFRANCAHISEブランドの界面活性剤などの非イオン性有機シリコーン界面活性剤を含有する溶液の最初の局所的な適用を植物にスプレーした後、ポリヌクレオチド含有組成物に対して2回目の局所的な適用をすることができ、またはその逆も可である。一実施形態は、BREAK-thru 301をさらに含む組成物を含む。
【0125】
ポリヌクレオチド単独または非ポリヌクレオチド殺菌剤単独で得られる効果と比較して、この方法で使用する特定のポリヌクレオチド(例えば、実施例に記載されるポリヌクレオチドトリガー)と1つ以上の非ポリヌクレオチド殺菌剤との組み合わせは、ボトリティス・シネレア感染に対する予防または防除効果の改善をもたらすことが予想される。
【0126】
植物において発現されるポリヌクレオチドが一時的な発現によって発現されるいくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAまたはRNAとDNAの両方の形態で植物に提供され、かつ二次的に生成される第2のポリヌクレオチドは植物において一時的に発現される。第1のポリヌクレオチドの適用の部位は、第2のポリヌクレオチドが一時的に発現される部位と同じである必要はない。例えば、第1のポリヌクレオチドは、葉への局所的な適用、種子処理、根のドレンチによって、または茎への注入によって植物に提供されることができ、第2のポリヌクレオチドは、植物の他の場所、例えば、根においてまたは植物にわたって一時的に発現されることができる。この方法のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物を、植物の地上部分に局所的に適用される(例えば、植物の葉、茎、および開花部分にスプレーまたは散布される)。他の実施形態では、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物は、例えば土壌ドレンチによって、根などの植物の地下部分に局所的に適用される。他の実施形態では、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物は、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物に成長する種子に局所的に適用される。いくつかの実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、1本鎖(ss)RNAまたは2本鎖(ds)RNAまたはその両方の組み合わせであり得るRNAである。
【0127】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチド(DNAまたはRNAまたはその両方)が植物に提供され、第1のポリヌクレオチドに対応する(同一または相補的な)配列を有する第2のポリヌクレオチドがその後、植物において発現される。そのような実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、ssRNAまたはdsRNAまたはその両方の組み合わせであり得るRNA転写物である。ポリヌクレオチドが一時的な発現によって発現されるいくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAまたはRNAとDNAの両方の形態で植物に提供され、二次的に生成される第2のポリヌクレオチドは植物において一時的に発現される。そのような実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、(a)1本鎖RNA分子(ssRNA)、(b)自己ハイブリッド化して2本鎖RNA分子を形成する1本鎖RNA分子、(c)2本鎖RNA分子(dsRNA)、(d)1本鎖DNA分子(ssDNA)、(e)自己ハイブリッド化して2本鎖DNA分子を形成する1本鎖DNA分子、(f)RNA分子に転写される改変Pol III遺伝子を含む1本鎖DNA分子、(g)2本鎖DNA分子(dsDNA)、(h)RNA分子に転写される改変Pol III遺伝子を含む2本鎖DNA分子、および(i)2本鎖の、ハイブリッド化したRNA/DNA分子、またはそれらの組み合わせより選択される1つ以上である。ポリヌクレオチドが一時的な発現によって発現されるそのような実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、DNAおよびRNA内において存在するものなどの天然に存在するヌクレオチドから構成され得る。ポリヌクレオチドが一時的な発現によって発現されるそのような実施形態では、第1のポリヌクレオチドは化学的に改変され得るか、または化学的に改変されたヌクレオチドを含む。第1のポリヌクレオチドは、当業者に知られている適切な手段によって提供される。第1のポリヌクレオチドは、RNAまたはDNA断片として提供され得る。あるいは、第1のポリヌクレオチドは、より複雑な構築物で提供され、例えば組換え発現構築物の一部分として提供され、または組換えベクターに、例えば組換え植物ウイルスベクターにまたは組換えバキュロウイルスベクターに含まれて提供されることができる。そのような組換え発現構築物またはベクターは、対象となる遺伝子(例えば、殺菌性タンパク質)を発現させるための発現カセットなどの追加要素を含むように設計されることができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドはRNA分子であり、約18個~約300個もしくは約50個~約600個のヌクレオチド(1本鎖RNAの場合)、または約18個~約300個もしくは約50個~約600個の塩基対(2本鎖RNAの場合)の1本鎖または2本鎖RNAのように、比較的に短くてよい。あるいは、ポリヌクレオチドは、より複雑な構築物で提供され、例えば、組換え発現構築物の一部分として提供されるか、または組換えベクター、例えば組換え植物ウイルスベクターもしくは組換えバキュロウイルスベクターに含まれることができる。いくつかの実施形態では、そのような組換え発現構築物またはベクターは、対象となる遺伝子(例えば、殺菌性タンパク質)を発現するための発現カセットなどの追加の要素を含むように設計される。
【0129】
植物において発現されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群、トリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を有する。一実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドは、標的遺伝子配列群、トリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性の配列を有する。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドは、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して正確に(100%)同一である。いくつかの実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群、トリガー配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性の全体配列を有する。
【0130】
植物において発現されるポリヌクレオチドは、一般に1つ以上の遺伝子(「標的遺伝子」)を抑制するように設計される。そのような標的遺伝子は、コード配列または非コード配列またはその両方を含み得る。特定の実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、1つ以上の標的遺伝子を抑制するように設計され、各標的遺伝子は、標的遺伝子配列群からなる群より選択されるDNA配列を有する。様々な実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、1つ以上の遺伝子を抑制するように設計され、各遺伝子は、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有し、この群からの複数の遺伝子を抑制するか、またはこれらの遺伝子の1つ以上の異なる領域を標的とするように設計されることができる。一実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、複数のセクションまたは断片を含み、上記セクションまたは断片のそれぞれが、標的遺伝子配列群、トリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。そのような場合、各セクションはサイズまたは配列において同一であっても異なっていてもよく、標的遺伝子に対してセンスであってもアンチセンスであってもよい。例えば、一実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、タンデムまたは反復配列において複数のセクションを含むことができ、各セクションは、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。断片は、標的遺伝子の異なる領域に由来することができ、例えば、断片は、標的遺伝子の異なるエクソン領域に対応することができ、標的遺伝子に対応していない「スペーサー」ヌクレオチドを、必要に応じて、断片の間にまたは断片に隣接して使用されることができる。
【0131】
植物において発現されるポリヌクレオチドの全長は、18個の連続したヌクレオチドを超えることができ、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~100%の同一性の配列を有する連続したヌクレオチドに加えて、ヌクレオチドを含むことができる。言い換えれば、植物において発現されるポリヌクレオチドの全長は、1つ以上の標的遺伝子を抑制するように設計されるポリヌクレオチドのセクションまたは断片の長さを超えることができ、各断片は標的遺伝子配列群からなる群より選択されるDNA配列を有する。例えば、植物において発現されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子を抑制する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片の「活性」断片に隣接するヌクレオチドを有するか、または活性断片間に「スペーサー」ヌクレオチドを含むか、または5’末端にまたは3’末端にまたは5’末端と3’末端の両方に追加のヌクレオチドを有することができる。一実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補配列に特に関連していない(すなわち、相補的または同一ではない配列を有する)追加のヌクレオチド(例えば、安定している二次構造を提供するヌクレオチド、またはクローニングまたは製造の利便性のためのヌクレオチド)を含む。一実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性または相補性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの1つ以上の断片のすぐ隣に位置する追加のヌクレオチドを含む。一実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、そのような断片を1つ含み、その断片に隣接して、追加の5’Gまたは追加の3’Cまたはその両方を有する。別の実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、オーバーハングを形成する追加のヌクレオチドを含む2本鎖RNA、例えば、3’オーバーハングを形成する2つのデオキシリボヌクレオチドを含むdsRNAである。したがって、様々な実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチド全体のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子における連続したヌクレオチドの断片に対して100%同一または相補的ではない。例えば、いくつかの実施形態では、植物において発現されるポリヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも2つの断片を含み、ここで(1)少なくとも2つの断片は、1つ以上のスペーサーヌクレオチドによって分離されている、または(2)少なくとも2つの断片は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体において対応した断片が存在する順序とは異なる順序で配置されている。
【0132】
関連態様において、本発明は、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して本質的に同一であるかまたは相補的である18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを、植物において発現させることによって提供される、ボトリティス・シネレア感染に対する強化された耐性を有する植物を対象とし、それによって得られる植物は、ポリヌクレオチドが発現しない対照植物と比較して、ボトリティス・シネレア感染に対してより強い耐性を有する。関連態様において、本発明は、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることによって提供される、ボトリティス・シネレア感染に対する強化された耐性を有する植物を対象とし、それによって得られる植物は、ポリヌクレオチドが発現しない対照植物と比較して、ボトリティス・シネレア感染に対してより強い耐性を有する。一実施形態は、トリガー配列群より選択される配列を有するRNAまたはその相補体を植物において発現させることによって提供される、対照植物と比較してボトリティス・シネレア感染に対してより強い耐性を有する植物である。さらに別の態様では、本発明は、この方法によって提供される、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物によって生成される種子または茎の挿し木(特に、トランスジェニック子孫の種子またはクローン化された茎)を対象とする。この方法によって提供される、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物によって生産される製品、およびそのような植物のトランスジェニック子孫種子から生産される製品も企図される。
【0133】
XII.ボトリティス・シネレア感染を防除するための組換えDNA構築物
本発明の別の態様は、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むDNA要素に操作可能な形で連結された異種プロモーターを含む組換えDNA構築物を提供する。いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物は:(a)配列番号1~12からなる群より選択される配列を有するDNAまたはそれから転写されたRNAの同等の長さの断片の少なくとも18個、19個、20個または21個の連続したヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列を含むDNA、または(b)配列番号1~12からなる群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性を有する18個、19個、20個、または21個以上の連続したヌクレオチドを含むDNA、または(c)配列番号1~12からなる群より選択される配列を有する標的遺伝子または標的遺伝子から転写されたRNAの少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドに相補的な少なくとも1つのサイレンシング要素をコードするDNA、または(d)標的遺伝子配列群における遺伝子より選択される標的遺伝子または標的遺伝子から転写されたRNAの一部分に相補的な少なくとも18個、19個、20個または21個の連続したヌクレオチドを含む少なくとも1つのサイレンシング要素をコードするDNA、またはユーロ(e)トリガー配列群より選択されるヌクレオチド配列、またはボトリティス・シネレアに由来するオーソロガスヌクレオチド配列に相補的な少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドを含むRNAをコードするDNAであって、上記オーソロガスヌクレオチド配列は、トリガー配列群より選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、上記配列同一性パーセントは同じ長さにわたって計算される、DNA、または(f)その少なくとも1つの鎖がトリガー配列群より選択されるヌクレオチド配列またはその相補体またはボトリティス・シネレアに由来するオーソロガスヌクレオチド配列に相補的な少なくとも18個、19個、20個または21個の連続したヌクレオチドを含む少なくとも1つの2本鎖RNA領域を含むRNAをコードするDNAであって、上記オーソロガスヌクレオチド配列は、トリガー配列群からなる群より選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、上記配列同一性パーセントは同じ長さにわたって計算される、DNA、または(g)RNAトリガー配列群またはRNAトリガー配列逆相補体群より選択されるヌクレオチド配列を含むRNAをコードするDNA、に操作可能な形で連結された異種プロモーターを含む。実施形態は、配列番号25~48、53~60からなる群より選択される配列またはその組み合わせまたはその相補体を有するRNAをコードするDNA要素に操作可能な形で連結された異種プロモーターを含む組換えDNA構築物を含む。
【0134】
実施形態は、トリガー配列群からなる群より選択される配列を有する鎖を有するdsRNAをコードするDNAに操作可能な形で連結された異種または同種の植物由来のプロモーターを含む組換えDNA構築物を含む。組換えDNA構築物は、例えば、そのような組換えDNA構築物の転写物を植物において発現させることによって、ボトリティス・シネレア感染に対して強化された耐性を有する植物を提供するのに有用である。組換えDNA構築物は、ボトリティス・シネレア感染からの保護が必要な植物、種子、増殖可能な植物部位、土壌もしくは畑、または表面に適用できる組成物の作製に有用なポリヌクレオチドの製造にも有用である。本発明の関連態様は、組換えDNA構築物を含む組成物、組換えDNA構築物を含む植物染色体または色素体または組換え植物ウイルスベクターまたは組換えバキュロウイルスベクター、ゲノムにおいて組換えDNA構築物を有するトランスジェニック植物細胞、およびそのようなトランスジェニック植物細胞を含むトランスジェニック植物またはトランスジェニック植物の果実、種子もしくは増殖可能な部分、および組換えDNA構築物もしくはその中にコードされるRNAの発現または処理によって提供されるボトリティス・シネレアおよび害虫に対する強化された耐性を有する植物を含む。
【0135】
組換えDNA構築物は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むDNAに操作可能な形で連結された異種プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、18個以上の連続したヌクレオチドの断片は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して正確に(100%)同一である。いくつかの実施形態では、DNAは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体に対して約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性の全体配列を有する。
【0136】
したがって、組換えDNA構築物は、標的遺伝子配列群またはそのDNA相補体より選択される配列を有する標的遺伝子の発現を抑制するように設計される18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むDNAに操作可能な形で連結された異種プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子は、Sec18/Cdc48,CDC42,NBP35,SDH,Bcrrp1,XM_024691746.1,Bcsec15,Bcswd2,Bcmcm4,Bcgpi2,Bcrpb5およびBcded1からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、DNAは、18個以上、例えば、18個~24個、または18個~28個、または20個~30個、または20個~50個、または20個~100個、または50個~100個、または50個~500個、または100個~250個、または100個~600個、または200個~1000個、または500個~2000個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。いくつかの実施形態では、断片は、18個を超える連続したヌクレオチド、例えば、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、または30個を超える個数、例えば、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約110個、約120個、約130個、約140個、約150個、約160個、約170個、約180個、約190個、約200個、約210個、約220個、約230個、約240個、約250個、約260個、約270個、約280個、約290個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、約550個、約575個、約600個、または600個を超える連続したヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、DNAは、標的遺伝子配列群またはそのDNA相補体より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むRNAをコードする。特定の実施形態では、DNAは、1つの鎖が標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む2本鎖核酸(例えば、dsRNA)をコードする、塩基対として表現されるそのような2本鎖核酸は、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対応する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続した完全に一致した塩基対の少なくとも1つの断片を含む。特定の実施形態では、DNAに含まれる各断片は、天然に存在する制御性小分子RNAに典型的な長さよりも長い。いくつかの実施形態では、各断片は、長さが少なくとも約30個の連続したヌクレオチド(または塩基対)である。いくつかの実施形態では、DNAの全長、またはポリヌクレオチドに含まれる各断片の長さは、対象となる配列(標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子)の全長より短い。いくつかの実施形態では、DNAの全長は約50個~約600個である。いくつかの実施形態では、DNAは、配列番号13~24、49~52からなる群より選択される配列またはそれらの組み合わせまたはそれらの相補体を有するRNAをコードする。
【0137】
組換えDNA構築物は、一般に1つ以上の標的遺伝子を抑制するように設計されるRNAをコードするDNAに操作可能な形で連結された異種プロモーターを含む。そのような標的遺伝子は、コード配列または非コード配列またはその両方を含み得る。特定の実施形態では、組換えDNA構築物は、Sec18/Cdc48,CDC42,NBP35,SDH,Bcrrp1,XM_024691746.1,Bcsec15,Bcswd2,Bcmcm4,Bcgpi2,Bcrpb5,およびBcded1からなる群より選択されるボトリティス・シネレアの1つ以上の標的遺伝子を抑制するように設計される。様々な実施形態では、組換えDNA構築物は、1つ以上の遺伝子を抑制するように設計され、各遺伝子は、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有し、この群からの複数の遺伝子を抑制するか、またはこれらの遺伝子の1つ以上の異なる領域を標的とするように設計されることができる。一実施形態では、組換えDNA構築物は、それぞれが標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む複数のセクションまたは断片に操作可能な形で連結された異種プロモーターを含む。そのような場合、各セクションはサイズまたは配列において同一であっても異なっていてもよく、標的遺伝子に対してセンスであってもアンチセンスであってもよい。例えば、一実施形態では、組換えDNA構築物は、タンデムまたは反復配列において複数のセクションに操作可能な形で連結された異種プロモーターを含むことができ、各セクションは標的遺伝子配列より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。断片は、標的遺伝子の異なる領域に由来することができ、例えば、断片は、標的遺伝子の異なるエクソン領域に対応することができ、標的遺伝子に対応していない「スペーサー」ヌクレオチドを、必要に応じて、断片の間にまたは断片に隣接して使用されることができる。
【0138】
組換えDNA構築物は、18個の連続したヌクレオチドを超える全長を有し得、かつ標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片の断片に加えてヌクレオチドを含み得るDNAに操作可能な形で連結された異種プロモーターを含む。言い換えれば、DNAの全長は、1つ以上の標的遺伝子を抑制するように設計されるDNAの断片の長さよりも長くてよく、各標的遺伝子は、標的遺伝子配列群からなる群より選択されるDNA配列を有する。例えば、DNAは、標的遺伝子を抑制する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片の「活性」断片に隣接するヌクレオチドを有するか、または活性断片の間に「スペーサー」ヌクレオチドを含むか、または5’末端にもしくは3’末端にもしくは5’末端と3’末端の両方に追加のヌクレオチドを有することができる。一実施形態では、異種プロモーターは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体に特に関連していない(相補的または同一ではない配列を有する)追加のヌクレオチド(例えば、安定している二次構造を提供するヌクレオチド、またはクローニングまたは製造の利便性のためのヌクレオチド)を含むDNAに操作可能な形で連結される。一実施形態では、異種プロモーターは、標的遺伝子配列より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の同一性または相補性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの1つ以上の断片のすぐ隣に位置する追加のヌクレオチドを含むDNAに操作可能な形で連結される。一実施形態では、異種プロモーターは、そのような断片を1つ含み、その断片に隣接して、追加の5’Gまたは追加の3’Cまたはその両方を有するDNAに操作可能な形で連結される。別の実施形態では、異種プロモーターは、オーバーハングを形成する追加のヌクレオチドを含む2本鎖RNAをコードするDNAに操作可能な形で連結される。したがって、様々な実施形態では、異種プロモーターに操作可能な形で連結されたDNA全体のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列群からなる群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子における連続したヌクレオチドの断片に対して100%同一または相補的ではない。例えば、いくつかの実施形態では、異種プロモーターは、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の断片に対して100%の同一性の配列を有する21個の連続したヌクレオチドの少なくとも2つの断片を含むDNAに操作可能な形で連結され、ここで(1)少なくとも2つの断片が1つ以上のスペーサーヌクレオチドによって分離されている、または(2)少なくとも2つの断片が、標的遺伝子配列群より選択される配列を有するDNAもしくはそのDNA相補体において対応した断片が存在する順序とは異なる順序で配置されている。
【0139】
組換えDNA構築物では、異種プロモーターは、1本鎖(ss)または2本鎖(ds)、または両方の組み合わせであり得る転写物をコードするDNAに操作可能な形で連結される。この方法の実施形態は、DNAがセンス1本鎖RNA(ssRNA)、アンチセンスssRNA、もしくは2本鎖RNA(dsRNA)、もしくはこれらのいずれかの組み合わせを含む転写物をコードするものを含む。
【0140】
組換えDNA構築物は、当業者に知られている適切な手段によって提供される。実施形態は、組換えDNA構築物がインビトロで合成され、微生物または細胞培養物(培養物において増殖する植物細胞など)における発現によって生成されるか、植物細胞における発現によって生成されるか、または微生物発酵物によって生成されるものを含む。
【0141】
組換えDNA構築物で使用する異種プロモーターは、植物において機能するプロモーター、原核生物において機能するプロモーター、真菌細胞で機能するプロモーター、およびバキュロウイルスプロモーターからなる群より選択される。プロモーターの非限定的な例は、「プロモーター」という見出しのセクションに記載されている。
【0142】
いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物は、同様にDNAに操作可能な形で連結された第2のプロモーターを含む。例えば、18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むDNAは、プロモーターが反対方向かつ収束様式で転写し、相補的であって互いにハイブリッド化して2本鎖RNAを形成することができるDNAの逆鎖転写物を生成するように配置される2つのプロモーターに隣接することができる。一実施形態では、DNAは2つの根特異的プロモーターの間に位置し、これによりDNAの反対方向での転写が可能となり、結果としてdsRNAが形成される。
【0143】
いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物は、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含むDNAに操作可能な形で連結された異種プロモーターに加えて、他のDNA要素を含む。そのようなDNA要素は当技術分野で公知であり、イントロン、リコンビナーゼ認識部位、アプタマーまたはリボザイム、およびコード配列を発現するための(例えば、殺菌性タンパク質もしくは選択可能なマーカーなどの導入遺伝子を発現するための)、または非コード配列を発現するための(例えば、追加の抑制要素を発現するための)追加の発現カセットを含むが、これらに限定されない。小分子RNA(例えば、特定の細胞または組織にしか発現しないmiRNAまたはsiRNA)による結合および切断のための1つ以上の認識部位を含めることによって、植物におけるより正確な発現パターンが可能になり、組換えDNA構築物の発現は、小分子RNAが発現される場所で抑制される。
【0144】
いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物は組換えベクターにおいて提供される。「組換えベクター」とは、ある細胞から別の細胞に遺伝情報を伝達するために使用される組換えポリヌクレオチド分子を意味する。本発明に適した実施形態は、組換えプラスミド、組換えコスミド、人工染色体、および組換え植物ウイルスベクターおよび組換えバキュロウイルスベクターなどの組換えウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。代替の実施形態は、組換えプラスミド、組換えコスミド、人工染色体、および異種プロモーターを含まないDNA要素を含む組換え植物ウイルスベクターおよび組換えバキュロウイルスベクターなどの組換えウイルスベクターを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物は、植物染色体または色素体において、例えば、トランスジェニック植物細胞またはトランスジェニック植物において提供される。したがって、ゲノムにおいて組換えDNA構築物を有するトランスジェニック植物細胞、ならびにそのようなトランスジェニック植物細胞を含むトランスジェニック植物または部分的トランスジェニック植物も本発明に包含される。部分的トランスジェニック植物は、例えば、トランスジェニック植物細胞を含むトランスジェニック台木に接ぎ木される非トランスジェニック接ぎ穂を含む。実施形態には、トランスジェニック植物細胞を含むトランスジェニックトマト台木を含む。植物は、ボトリティス・シネレアによる感染を受けやすい任意の植物でよい。実施形態は、植物が未発芽植物種子、栄養段階の植物、または生殖段階の植物であるものを含む。さらに別の態様では、本発明は、ゲノムにおいて本明細書に記載される組換えDNA構築物を有するトランスジェニック植物によって生成される種子(特にトランスジェニック子孫種子)を対象とする。そのようなトランスジェニック植物によって生成される製品、およびそのようなトランスジェニック植物のトランスジェニック子孫種子から生成される製品も企図される。
【0146】
組換えDNA構築物は、植物または植物の種子、根、もしくは茎の表面への局所的な適用のため、またはボトリティス・シネレア感染からの保護を必要とする任意の基質への局所的な適用のための組成物において提供されることができる。同様に、組換えDNA構築物は、ボトリティス・シネレアへの局所的な適用のための組成物において、またはボトリティス・シネレアによる内部吸収(例えば、トランスフェクション)のための組成物において提供され得る。様々な実施形態では、組換えDNA構築物を含むそのような組成物は、固体、(溶液などの均質混合物、および懸濁液、コロイド、ミセル、および乳濁液などの非均質混合物を含む)液体、粉末、懸濁液、乳濁液、スプレー、カプセル化またはマイクロカプセル化製剤、マイクロビーズまたは他の担体粒子の中もしくは上、フィルムまたはコーティングの中、またはマトリックスの上または内、または葉、種子、根、または幹の処理からなる群より選択される少なくとも1つの形態で提供される。局所的な適用は、植物の果実または植物の果実からの種子の局所的な処理の形態であり得る。殺虫剤の製剤化および種子処理における当業者に知られているように、適切な結合剤、不活性担体、界面活性剤などは、組換えDNA構築物を含む組成物に含まれることができる。いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物を含む局所的な適用のための組成物は、植物に局所的に埋め込まれる微粒子、ペレット、またはカプセルからなる群より選択される少なくとも1つの局所埋め込み型製剤である。そのような実施形態では、この方法は、局所埋め込み型製剤を植物に局所的に埋め込むことを含む。一実施形態では、組換えDNA構築物を含む局所的な適用のための組成物は、ボトリティス・シネレアによって内部吸収(例えば、トランスフェクション)され得る。いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物を含む組成物は、担体剤、界面活性剤(参照により本明細書に組み込まれる)、有機シリコーン、有機シリコーン界面活性剤、非ポリヌクレオチド殺菌剤、ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド除草剤分子、非ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、ポリヌクレオチド殺虫剤、非ポリヌクレオチド殺虫剤、毒性緩和剤、および病原体成長制御剤より選択される1つ以上の成分をさらに含む。一実施形態では、組換えDNA構築物を含有する組成物は、CAS番号27306-78-1およびEPA番号:CAL.REG.NO.を有するSILWET L-77(登録商標)ブランドの界面活性剤を例に取ったSILWET(登録商標)ブランドの界面活性剤などの非イオン性有機シリコーン界面活性剤をさらに含む。5905-50073-AAを有し、現在Momentive Performance Materials,Albany,N.Y.から入手可能であるSILWET L-77(登録商標)ブランドの界面活性剤などの非イオン性有機シリコーン界面活性剤をさらに含む。BREAK-THRU S 240ブランドは、現在Goldschmidt Chemical Corporation,Hopewell,VAから入手可能なポリエーテル改変ポリシロキサン(caSRN独自)界面活性剤である。BREAK-THRU S 279のエンドキャップされたポリエーテルトリシロキサン界面活性剤であり、その成分が次の既存化学物質リストに列挙される:EINECS,TSCA,ENCS,AICS,ECL,PICCS CHINA,NDSL。INDUCEブランドのアジュバントNMFCアイテム42652、クラス60、現在Helena Chemical Company,Collierville,TNから入手可能である。CA REG No.34704-50065を有する、FRANCHISE(登録商標) with LECI-TECH(登録商標)ブランドの界面活性剤は、現在Loveland Products,Inc.Greely,COから入手可能である。一実施形態は、BREAK-thru 301をさらに含む殺菌性組成物を含む。
【0147】
本明細書に記載される特定の組換えDNA構築物(例えば、実施例に記載されるポリヌクレオチドトリガーを含む組換えDNA構築物)と1つ以上の非ポリヌクレオチド殺虫剤との組み合わせは、遺伝子導入的に発現されるか局所的に適用されるかにかかわらず、組換えDNA構築物単独または非ポリヌクレオチド殺虫剤単独の場合と比較して、ボトリティス・シネレア感染および害虫侵入に対する予防と防除効果の改善をもたらすことが予想される。一実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチド、ならびに非ポリヌクレオチド殺虫剤をコードする1つ以上の遺伝子を発現するための組換えDNA構築物は、組換えDNA構築物を発現する植物においてボトリティス・シネレア感染および害虫侵入に対する強化された耐性を提供することが見出される。一実施形態は、トリガー配列群より選択される配列、および非ポリヌクレオチド殺虫剤をコードする1つ以上の遺伝子を有する断片を含むRNAを発現するための組換えDNA構築物に関する。
【0148】
様々な実施形態では、組換えDNA構築物を含む組成物は微生物細胞を含むか、または微生物において生成される。例えば、組換えDNA構築物を含有するための組成物は、細菌または酵母細胞を含むことができ、または細菌または酵母細胞において生成することができる。同様の実施形態では、組換えDNA構築物を含む組成物は、トランスジェニック植物細胞を含むか、または植物細胞(例えば、組換えDNA構築物を一時的に発現する植物細胞)において生成される。そのような植物細胞は、植物における細胞、または組織培養もしくは細胞懸濁液中で増殖させた細胞であり得る。
【0149】
XIII.トランスジェニック植物細胞
いくつかの実施形態は、ボトリティス・シネレアにおける標的遺伝子の発現を抑制するため、またはボトリティス・シネレア感染を防除するための、本明細書に記載される方法において有用なポリヌクレオチドを発現するトランスジェニック植物細胞に関する。一態様では、本発明は、標的遺伝子配列群、トリガー配列群より選択される配列を有するDNAの断片に対して約95%~約100%の同一性の配列を有する18個以上の連続したヌクレオチド、又はそのDNA相補体の少なくとも1つのセグメントを含むRNAをコードする組換えDNAを、そのゲノム中に有するトランスジェニック植物細胞を提供する。一態様では、本発明は、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子配列の断片に対して本質的に同一または本質的に相補的な少なくとも1つのサイレンシング要素を含むRNAをコードする組換えDNAをゲノムにおいて有するトランスジェニック植物細胞を提供し、ここで、標的遺伝子配列は、標的遺伝子配列群またはそのDNA相補体より選択される。一態様では、本発明は、RNAと接触または内部で吸収されるボトリティス・シネレアにおける標的遺伝子の発現を抑制するRNAをコードする組換えDNAをそのゲノムにおいて有するトランスジェニック植物細胞を提供し、ここでRNAは少なくとも標的遺伝子の断片に相補的な18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を有する1つのサイレンシング要素であって、標的遺伝子は、標的遺伝子配列群における遺伝子からなる群より選択される。特定の実施形態は、RNAと接触するかまたはそれを内部的に吸収するボトリティス・シネレアにおける標的遺伝子の発現を抑制するRNAをコードする組換えDNAをゲノムにおいて有するトランスジェニック植物細胞であって、RNAが1つ以上の標的遺伝子配列群の断片に相補的な18個以上の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を有する少なくとも1つのサイレンシング要素を含む、トランスジェニック植物細胞である。一態様において、本発明は、トリガー配列群より選択される配列を有するRNAをコードする組換えDNAをそのゲノムにおいて有するトランスジェニック植物細胞を提供する。そのようなトランスジェニック植物細胞は、そのような植物細胞を欠いている対照植物と比較して、ボトリティス・シネレア感染に対する強化された耐性を有するトランスジェニック植物を提供するのに有用である。トランスジェニック植物細胞は、単離されたトランスジェニック植物細胞、培養下で増殖させたトランスジェニック植物細胞、またはボトリティス・シネレアによる感染を受ける任意のトランスジェニック植物のトランスジェニック細胞であり得る。
【0150】
一実施形態では、組換えDNAはトランスジェニック植物のゲノムに安定に組み込まれ、そこからトランスジェニック植物の1つ又は複数の細胞において発現することができる。安定に形質転換された植物を提供する方法については、「トランスジェニック植物細胞とトランスジェニック植物の生成と利用」のセクションで論じる。
【0151】
いくつかの実施形態は、RNAと接触するかまたはそれを内部的に吸収するボトリティス・シネレアにおける標的遺伝子の発現を抑制するRNAをコードする組換えDNAをそのゲノムにおいて有するトランスジェニック植物細胞に関し、上記RNAが標的遺伝子に相補的な少なくとも1つのサイレンシング要素を含み、上記標的遺伝子配列は標的遺伝子配列群またはその相補体より選択される。いくつかの実施形態では、サイレンシング要素は、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して約95%~約100%の相補性の配列を有する少なくとも18個以上の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、サイレンシング要素は、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に、インビボでハイブリッド化するか、または生理的条件下(例えば、ボトリティス・シネレアの細胞において通常見出される生理的条件など)でハイブリッド化することができる、少なくとも18個以上の連続したヌクレオチドを含む。連続したヌクレオチドの数は少なくとも18個、例えば18個~24個、または18個~28個、または20個~30個、または20個~50個、または20個~100個、または50個~100個、または50個~500個、または100個~250個、または100個~500個、または200個~1000個、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、連続したヌクレオチドの数は、18を超える個数、例えば、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、または30個を超える個数、例えば、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約110個、約120個、約130個、約140個、約150個、約160個、約170個、約180個、約190個、約200個、約210個、約220個、約230個、約240個、約250個、約260個、約270個、約280個、約290個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、約550個、約575個、約600個、または600個を超える連続したヌクレオチドである。特定の実施形態では、サイレンシング要素は、標的遺伝子配列群、トリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む。特定の実施形態では、RNAは、1つの鎖が標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対して100%の同一性の配列を有する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続したヌクレオチドの少なくとも1つの断片を含む2本鎖核酸(例えば、dsRNA)である。塩基対として表現されるそのような2本鎖核酸は、標的遺伝子配列群またはトリガー配列群より選択される配列を有するDNAまたは標的遺伝子またはそのDNA相補体の同等の長さの断片に対応する少なくとも18個、19個、20個、または21個の連続した完全に一致した塩基対の少なくとも1つの断片を含む。特定の実施形態では、RNAに含まれる各サイレンシング要素は、天然に存在する制御性小分子RNAに典型的な長さよりも長い。いくつかの実施形態では、各断片は、長さが少なくとも約30個の連続したヌクレオチド(または塩基対)である。特定の実施形態では、RNAの長さは約50個~約600個のヌクレオチドである。特定の実施形態では、RNAは、トリガー配列群より選択される配列を有する。
【0152】
いくつかの実施形態では、トランスジェニック植物細胞はさらに、追加の異種DNA配列を発現することができる。特定の実施形態では、トランスジェニック植物細胞は、(i)トリガー配列群より選択される配列を有する少なくとも1つのRNAをコードする組換えDNA、および(ii)少なくとも1つの殺真菌剤をコードするDNAをそのゲノムに安定に組み込んでいる。
【0153】
関連態様において、本発明は、トランスジェニック植物細胞を含むトランスジェニック植物、トランスジェニック植物およびトランスジェニック植物のトランスジェニック子孫植物種子またはトランスジェニック増殖可能な部位を含むトランスジェニック植物から生産される製品を対象とする。また、トランスジェニック植物によって生産される製品、およびそのようなトランスジェニック植物のトランスジェニック子孫種子から生産される製品も企図される。
【0154】
XIV.RNAi用のポリヌクレオチドを生成する方法
特許請求される方法および組成物のポリヌクレオチドは、当技術分野で知られている任意の適切な方法によって生成することができる。本開示のRNA分子を生成する方法の例は、(T7ポリメラーゼまたは他のポリメラーゼを使用する転写などの)インビトロ転写(IVT)、化学合成、(植物または微生物などの)生物においての発現、または(植物細胞培養物などの)細胞培養物での発現、および微生物発酵を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるRNAは、米国特許第10,858,385号または米国特許第10,954,541号に記載のRNAの無細胞生成プロセスのいずれか1つを通じて作製され、その両方が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるdsRNAは、参照により本明細書に組み込まれるWIPO特許出願公開第WO2021/113774号に記載されているように、dsRNAの発現を増強するための組換えプラスミドの使用を通じて作製される。
【0155】
XV.プロモーター
本発明で使用されるプロモーターは、構築物が転写されることが意図される細胞において機能する。一般に、これらのプロモーターは、組換え構築物において使用される異種プロモーターであり、すなわち、それらは、本明細書に記載される構築物において使用される他の核要素に操作可能な形で連結されることが自然に見出されない。様々な実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーター、空間特異的プロモーター、時間的特異的プロモーター、発生特異的プロモーター、および誘導性プロモーターからなる群より選択される。多くの実施形態では、プロモーターは、植物において機能するプロモーター、例えば、pol IIプロモーター、pol IIIプロモーター、pol IVプロモーター、またはpol Vプロモーターである。
【0156】
本発明の組換えDNA構築物との使用に適した非構成的プロモーターは、空間特異的プロモーター、時間特異的プロモーター、および誘導性プロモーターを含む。空間特異的プロモーターは、オルガネラ特異的、細胞特異的、組織特異的、または器官特異的プロモーター(例えば、それぞれ色素体、根、花粉、または種子における発現のための色素体特異的、根特異的、花粉特異的、または種子特異的プロモーター)を含み得る。多くの場合、種子特異的、胚特異的、アロイロン特異的、または胚乳特異的プロモーターが特に有用である。時間的に特異的なプロモーターは、植物の成長サイクルにおける特定の発育段階中、または昼夜の異なる時間帯、または一年の異なる季節に発現を促進する傾向があるプロモーターを含み得る。誘導性プロモーターは、化学物質、または生物的または非生物的ストレス(例えば、水不足または干ばつ、熱、寒さ、高いまたは低い栄養素または塩分レベル、高いまたは低い光レベル、または害虫または病原体感染)などの環境条件によって誘導されるプロモーターを含むが、これらに限定されない。マイクロRNAプロモーターは、特に時間的に特異的、空間的に特異的、または誘導可能な発現パターンを持つプロモーターとして有用である。miRNAプロモーター、ならびに特定の発現パターンを有するmiRNAプロモーターを同定する方法の例は、米国特許出願公開第2006/0200878号、第2007/0199095号、および第2007/0300329号に提供されており、これらは特に参照により本明細書に組み込まれる。発現特異的プロモーターはまた、一般に「強いプロモーター」または「弱いプロモーター」とみなされるプロモーターを含む、構成的に発現されるが発現の程度または「強度」が異なるプロモーターを含み得る。
【0157】
具体的な対象となるプロモーターは、次の例を含む。アグロバクテリウムのT-DNAから単離されたオパリンシンターゼプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、強化されたプロモーター要素、またはエンハンサー要素(Zea maysの熱ショックタンパク質70からのイントロン)に連結された強化されたCaMV35Sプロモーターなどのキメラプロモーター要素、根特異的プロモーター、例えば、米国特許第5,837,848号、第6,437,217号および第6,426,446号に開示されるもの、米国特許第6,433,252号に開示されるトウモロコシL3オレオシンプロモーター、米国特許出願公開第2004/0216189号に開示される、色素体局在アルドラーゼをコードする植物核遺伝子のプロモーター、米国特許第6,084,089号に開示される寒冷誘導性プロモーター、米国特許第6,140,078号に開示される塩誘導性プロモーター、米国特許第6,294,714号に開示される光誘導性プロモーター、米国特許第6,252,138号に開示される病原体誘導性プロモーター、および米国特許出願公開第2004/0123347A1号に開示される水分不足誘導性プロモーター。プロモーターおよびそれらの使用、特に植物において機能する組換えDNA構築物における使用を開示する上記の特許および特許刊行物のすべては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0158】
対象となる植物の維管束特異的プロモーターまたは師部特異的プロモーターは、例えば、Agrobacterium rhizogenesのrolC又はrolAプロモーター、腫瘍原性アグロバクテリウム T-DNA遺伝子5のプロモーター、イネスクロースシンターゼRSs1遺伝子プロモーター、Commelina黄斑バドナウイルスプロモーター、ヤシ葉腐朽ウイルスプロモーター、イネツグロ桿菌ウイルスプロモーター、エンドウ豆グルタミンシンターゼGS3A遺伝子のプロモーター、ジャガイモインベルターゼ遺伝子のinvCD111及びinvCD141プロモーター、Kertbundit et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,88:5212-5216によりタバコにおいて師部特異的発現を有することが示されるArabidopsisから単離されたプロモーター、VAHOX1プロモーター領域、エンドウ豆細胞壁インベルターゼ遺伝子プロモーター、ニンジン由来の酸インベルターゼ遺伝子プロモーター、硫酸トランスポーター遺伝子Sultr1のプロモーター、植物スクロースシンターゼ遺伝子のプロモーター、および植物スクローストランスポーター遺伝子のプロモーターを含む。
【0159】
本発明の組換えDNA構築物またはポリヌクレオチドでの使用に適したプロモーターは、ポリメラーゼII(「pol II」)プロモーターおよびポリメラーゼIII(「pol III」)プロモーターを含み得る。RNAポリメラーゼIIは、通常長さが400ヌクレオチドよりも短い構造RNAまたは触媒RNAを転写し、単純なT残基の連続を終結シグナルとして認識する。それは、siRNA2本鎖を転写するために使用される(例えば、Lu et al.(2004)Nucleic Acids Res.,32:e171を参照されたい)。したがって、短いRNA転写物が本発明の組換えDNA構築物から生成される特定の実施形態では、Pol IIプロモーターが使用される。一実施形態では、組換えDNA構築物は、自己切断リボザイム配列(例えば、自己切断ハンマーヘッドリボザイム)が隣接するRNA転写物を発現するpol IIプロモーターを含み、その結果、規定された5’末端と3’末端を有し、潜在的に干渉する隣接配列がないボトリティス・シネレアの標的遺伝子の転写物に結合する1本鎖RNAなどのプロセシングされたRNAをもたらす。別のアプローチは、pol IIIプロモーターを使用して、比較的に規定された5’および3’末端を有する転写物を生成し、つまり、最小限の5’および3’隣接配列を有するRNAを転写する。いくつかの実施形態では、Pol IIIプロモーター(例えば、U6またはH1プロモーター)は、転写されたRNAに2塩基対のオーバーハング(UU)をもたらす短いATリッチ転写終結部位を追加するためのものである。これは、例えばsiRNAタイプの構築物の発現に役立つ。siRNA構築物の発現を駆動するためのpol IIIプロモーターの使用が報告されている。van de Wetering et al.(2003)EMBO Rep.,4:609-615,and Tuschl(2002)Nature Biotechnol.,20:446-448を参照されたい。バキュロウイルスポリヘドリンおよびp10プロモーターなどのバキュロウイルスプロモーターは当技術分野で知られており、市販されている。例えば、Invitrogen’s“Guide to Baculovirus Expression Vector Systems(BEVS)and Insect Cell Culture Techniques”,2002(Life Technologies,Carlsbad,Calif.)および F.J.Haines et al.を参照されたい。“Baculovirus Expression Vectors”,日付な(Oxford Expression Technologies,Oxford,UK).
【0160】
プロモーター要素は、天然に存在するプロモーターまたはプロモーター要素またはその相同体ではないが、遺伝子の発現を調節できる核酸配列を含み得る。そのような「遺伝子非依存性」調節配列の例は、リガンド結合領域またはアプタマー(以下の「アプタマー」を参照されたい)および(シス作用性であり得る)調節性領域を含む、天然に存在するまたは人工的に設計された核酸配列を含む。例えば、Isaacs et al.(2004)Nat.Biotechnol.,22:841-847,Bayer and Smolke(2005)Nature Biotechnol.,23:337-343,Mandal and Breaker(2004)Nature Rev.Mol.Cell Biol.,5:451-463,Davidson and Ellington(2005)Trends Biotechnol.,23:109-112,Winkler et al.(2002)Nature,419:952-956,Sudarsan et al.(2003)RNA,9:644-647,and Mandal and Breaker(2004)Nature Struct.Mol.Biol.,11:29-35を参照されたい。そのような「リボレギュレーター」は、特定の空間的または時間的特異性のために選択または設計されることができ、例えば、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子を、所定の濃度の適切なリガンド存在下(または非存在下)でのみ抑制するサイレンシング要素をコードするDNAの翻訳を調節することができる。一例は、本質的に生体調節的であり、ストレス(例えば、水、温度、栄養ストレスなどの非生物的ストレス、または害虫や病原体による付着などの生物的ストレス)下にあるときに植物によって生成される内因性リガンド(例えば、ジャスモン酸またはサリチル酸)に応答する。ストレス下では、内因性リガンドのレベルは、生体調節因子がボトリティス・シネレアの標的遺伝子を抑制するサイレンシング要素をコードするDNAの転写を開始するのに十分なレベルまで増加する。
【0161】
XVI.リコンビナーゼ部位
いくつかの実施形態では、本発明の組換えDNA構築物またはポリヌクレオチドは、1つ以上の部位特異的リコンビナーゼ認識部位をコードするDNAを含む。一実施形態では、組換えDNA構築物は、少なくとも一対のloxP部位を含み、loxP部位間のDNAの部位特異的組換えは、Creリコンビナーゼによって媒介される。loxP部位の位置および相対的な配向は、望ましい組換えを達成するために選択される。例えば、loxPサイトが同じ方向にある場合、loxP部位間のDNAは環状に切除される。別の実施形態では、組換えDNA構築物は、1つのloxP部位をコードするDNAを含む。CreリコンビナーゼおよびloxP部位を持つ別のDNAの存在下では、2つのDNAが組み換えられる。
【0162】
XVII.導入遺伝子転写ユニット
いくつかの実施形態では、本発明の組換えDNA構築物またはポリヌクレオチドは、導入遺伝子転写ユニットを含む。導入遺伝子転写ユニットは、関心対象となる遺伝子、例えば天然タンパク質または異種タンパク質をコードするDNA配列を含む。関心対象となる遺伝子は、任意の種(細菌、ウイルスなどの非真核生物、真菌、原生生物、植物、無脊椎動物、および脊椎動物を含むがこれらに限定されない)に由来する任意のコード配列または非コード配列であり得る。導入遺伝子転写単位は、導入遺伝子の転写に必要な5’配列または3’配列または両方をさらに含むことができる。
【0163】
XVIII.イントロン
いくつかの実施形態では、本発明の組換えDNA構築物またはポリヌクレオチドは、スプライシング可能なイントロンをコードするDNAを含む。「イントロン」とは、一般に、エクソン(DNAまたは対応する転写されたRNAのタンパク質をコードする断片)の間に位置するDNAの断片(またはそのような断片から転写されたRNA)を意味し、メッセンジャーRNAの成熟中に、存在するイントロンは、真核生物の核において起こる切断/連結プロセスによって、酵素的にRNA鎖から「スプライスアウト」または除去される。「イントロン」という用語は、成熟RNA転写物からスプライスアウトできるRNA断片に転写される非コードDNA配列にも適用されるが、タンパク質をコードするエクソンの間に見出されるイントロンではない。これらの一例は、植物(場合によっては、特に単子葉植物)における下流コード配列の発現を増強する能力を有するスプライス可能な配列である。これらのスプライシング可能な配列は、一部分の植物遺伝子の5’非翻訳領域、およびいくつかのウイルス遺伝子(例えば、GallieおよびWalbot(1992)Nucleic Acids Res.,20:4631-4638)によって植物遺伝子の発現を増強すると記載されるタバコモザイクウイルスの5’リーダー配列または「omega」リーダー)の5’非翻訳領域に自然に位置している。これらのスプライシング可能な配列または「発現増強イントロン」は、植物遺伝子のプロモーターとタンパク質コードエクソンの間の5’非翻訳領域に人工的に挿入されることができる。そのような発現増強イントロンの例は、トウモロコシアルコールデヒドロゲナーゼ(Zm-Adh1)、トウモロコシBronze-1発現増強イントロン、イネアクチン1(Os-Act1)イントロン、Shrunken-1(Sh-1)イントロン、トウモロコシスクロースシンターゼイントロン、熱ショックタンパク質18(hsp18)イントロン、および82キロダルトンの熱ショックタンパク質(hsp82)イントロンを含むが、これらに限定されない。米国特許第5,593,874号および第5,859,347号(特に参照により本明細書に組み込まれる)には、遺伝子プロモーターから3’及び第一のタンパク質をコードするエクソンから5’の位置にある非翻訳リーダーにおける、70キロダルトンのトウモロコシ熱ショックタンパク質(hsp70)に由来する発現増強イントロンを含むことによって、植物で使用するための組換えDNA構築物を改良する方法が記載される。
【0164】
XIX.リボザイム
いくつかの実施形態では、本発明の組換えDNA構築物またはポリヌクレオチドは、1つ以上のリボザイムをコードするDNAを含む。具体的な関心対象となるリボザイムは、自己切断リボザイム、ハンマーヘッドリボザイム、またはヘアピンリボザイムを含む。一実施形態では、組換えDNA構築物は、転写されたRNAを切断してボトリティス・シネレアの標的遺伝子を抑制するためのサイレンシング要素などのRNAの規定された断片を提供するように機能する1つ以上のリボザイムをコードするDNAを含む。
【0165】
XX.遺伝子抑制要素
いくつかの実施形態では、本発明の組換えDNA構築物またはポリヌクレオチドは、ボトリティス・シネレア標的遺伝子以外の標的遺伝子を抑制するための追加の遺伝子抑制要素をコードするDNAを含む。抑制される標的遺伝子は、コード配列または非コード配列、またはその両方を含み得る。
【0166】
適切な遺伝子抑制要素は、米国特許出願公開第2006/0200878号に詳細に記載され、その開示は特に参照により本明細書に組み込まれるものであり、以下の1つ以上を含む。
○(a)抑制対象となる遺伝子の少なくとも1つの断片に対してアンチセンスである少なくとも1つのアンチセンスDNA断片を含むDNA、
○(b)抑制対象となる遺伝子の少なくとも1つの断片に対してアンチセンスである少なくとも1つのアンチセンスDNA断片の複数のコピーを含むDNA、
○(c)抑制対象となる遺伝子の少なくとも1つの断片である少なくとも1つのセンスDNA断片を含むDNA、
○(d)抑制対象となる遺伝子の少なくとも1つの断片である少なくとも1つのセンスDNA断片の複数のコピーを含むDNA、
○(e)2本鎖RNAを形成することによって抑制対象となる遺伝子を抑制するためのRNAに転写し、抑制対象となる遺伝子の少なくとも1つの断片に対してアンチセンスである少なくとも1つのアンチセンスDNA断片と、抑制対象となる遺伝子の少なくとも1つの断片である少なくとも1つのセンスDNA断片とを含むDNA、
○(f)単一の2本鎖RNAを形成することによって抑制対象となる遺伝子を抑制するためのRNAに転写し、抑制対象となる遺伝子の少なくとも1つの断片に対してアンチセンスである複数のシリアルアンチセンスDNA断片と、抑制対象となる遺伝子の少なくとも1つの断片である複数のシリアルセンスDNA断片とを含むDNA、
○(g)RNAの複数の2本鎖を形成することによって抑制対象となる遺伝子を抑制するためのRNAに転写し、抑制対象となる遺伝子の少なくとも1つの断片に対してアンチセンスである複数のアンチセンスDNA断片と、抑制対象となる遺伝子の少なくとも1つの断片である複数のセンスDNA断片とを含むDNAであって、複数のアンチセンスDNA断片および複数のセンスDNA断片は一連の逆方向反復で配置される、DNA、
○(h)植物miRNA由来のヌクレオチドを含むDNA、
○(i)siRNAのヌクレオチドを含むDNA、
○(j)リガンドに結合可能なRNAアプタマーに転写するDNA、および
○(k)リガンドに結合し得るRNAアプタマーに転写するDNA、及び抑制対象となる遺伝子の発現を制御し得る制御RNAに転写するDNAであって、該制御が該制御RNAの立体構造に依存し、制御性RNAの立体構造は、RNAアプタマーの結合状態によってアロステリックに影響される、DNA。
【0167】
いくつかの実施形態では、イントロンを使用して、いずれのタンパク質をコードするエクソン(コード配列)の非存在下で遺伝子抑制要素を送達する。一例では、発現増強イントロンなどのイントロンは、イントロン内に遺伝子抑制要素を埋め込むことによって中断され、転写時に遺伝子抑制要素がイントロンから切除される。したがって、タンパク質をコードするエクソンは、本明細書に開示される組換えDNA構築物の遺伝子抑制機能を提供する必要はない。
【0168】
XXI.転写調節要素
いくつかの実施形態では、本発明の組換えDNA構築物またはポリヌクレオチドは、転写調節要素をコードするDNAを含む。転写調節要素は、本発明の組換えDNA構築物の発現レベルを(そのような調節要素の非存在下での発現に対して)調節する要素を含む。適切な転写調節要素の例は、特に参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0200878号に詳細に記載されるように、リボスイッチ(シス作用性またはトランス作用性)、転写物安定化配列、転写開始部位、転写伸長配列、転写停止要素、およびmiRNA認識部位を含む。
【0169】
XXII.トランスジェニック植物細胞とトランスジェニック植物の作製と使用
植物の形質転換は、いくつかの周知の方法および組成物のいずれかを含み得る。植物の形質転換に適した方法は、DNAを細胞に導入できる実質的にあらゆる方法を含む。植物の形質転換の1つの方法は、例えば、米国特許第5,015,580号(大豆)、米国特許第5,538,880号(トウモロコシ)、米国特許第5,550,318号(トウモロコシ)、米国特許第5,914,451号(大豆)、米国特許第6,153,812号(小麦)、米国特許第6,160,208号(トウモロコシ)、米国特許第6,288,312号(米)、米国特許第6,365,807号(米)、および米国特許第6,399,861号(トウモロコシ)、および米国特許第6,403,865号(トウモロコシ)に示される微粒子銃の照射であり、このいずれもトランスジェニック植物の生成を可能にするために参照として組み込まれる。
【0170】
植物の形質転換の別の有用な方法は、2成分Tiプラスミドシステムを含むアグロバクテリウムによるアグロバクテリウムが媒介する形質転換であり、アグロバクテリウムは第1のTiプラスミド(多くの場合に解除されている)、野生型Tiプラスミドの少なくとも1つのT-DNA境界を含有する第2のキメラのプラスミド、形質転換された植物細胞中で機能し、本発明のポリヌクレオチド又は組換えDNA構築物に操作可能な形で連結されるプロモーターを保持する。参照により組み込まれる米国特許第5,159,135号に記載される2成分系を参照されたい。またDe Framond(1983)Biotechnology,1:262-269;およびHoekema et al.,(1983)Nature,303:179を参照されたい。そのような二元系では、1つ又は複数のT-DNAの境界を含有する、より小さなプラスミドは、E.coliなどの適切な代替宿主中で好都合に構成および操作することができ、その後アグロバクテリウムに移動する。
【0171】
植物、特に作物植物の、Agrobacteriumが媒介する形質転換の詳細な手順は、米国特許第5,004,863号、第5,159,135号、および第5,518,908号(綿)、米国特許第第5,416,011号、第5,569,834号、第5,824,877号および第6,384,301号(大豆)、米国特許第5,591,616号および第5,981,840号(トウモロコシ)、第5,463,174号(キャノーラを含むアブラナ)、第7,026,528号(小麦)、及び第6,329,571号(イネ)、及び米国特許出願公開第2004/0244075(トウモロコシ)及び第2001/0042257A1号(テンサイ)に開示される手順を含み、これらはすべて、トランスジェニック植物の生成を可能にするために参照により具体的に組み込まれる。米国特許出願公開第2011/0296555号は、実施例5に形質転換ベクター(ベクター配列を含む)及びトウモロコシ、ダイズ、キャノーラ、ワタ、サトウキビを形質転換するための詳細なプロトコルを開示し、トランスジェニック植物の生成を可能にするために参照により具体的に組み込まれる。同様な方法は、多くの植物種、双子葉植物と単子葉植物の両方で報告されており、他に、ピーナッツ(Cheng et al.(1996)Plant Cell Rep.,15:653)、アスパラガス(Bytebier et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,84:5345)、オオムギ(Wan and Lemaux(1994)Plant Physiol.,104:37)、イネ(Toriyama et al.(1988)Bio/Technology,6:10;Zhang et al.(1988)Plant Cell Rep.,7:379)、小麦(Vasil et al.(1992)Bio/Technology,10:667;Becker et al.(1994)Plant J.,5:299),アルファルファ(Masoud et al.(1996)Transgen.Res.,5:313)、およびトマト(Sun et al.(2006)Plant Cell Physiol.,47:426-431).参照により組み込まれる米国特許出願公開第2003/0167537A1号において、転写因子がCaMV35Sプロモーターによって構成的に発現される、形質転換されたArabidopsis thaliana植物のベクター、形質転換方法、及び生成に関する説明も参照されたい。ボトリティス感染を受けやすい植物に特に有用な形質転換方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、公的に記載されるトマトの形質転換法を参照されたい(Sharma et al.(2009),J.Biosci.,34:423-433),ナス(Arpaia et al.(1997)Theor.Appl.Genet.,95:329-334),ジャガイモ(Bannerjee et al.(2006)Plant Sci.,170:732-738;Chakravarty et al.(2007)Amer.J.Potato Res.,84:301-311;S.Millam“Agrobacterium-mediated transformation of potato.”Chapter19(pp.257-270),“Transgenic Crops of the World:Essential Protocols”,Ian S.Curtis(editor),Springer,2004),およびトウガラシ(Li et al.(2003)Plant Cell Reports,21:785-788).安定したトランスジェニックジャガイモ、トマト、およびナスが様々な地域で商業的に導入されており、例えば、K.Redenbaugh et al.“Safety Assessment of Genetically Engineered Fruits and Vegetables:A Case Study of the FLAVR SAVR Tomato”,CRC Press,Boca Raton,1992を参照されたい、および広範囲な公的に利用可能なGM作物データーベースにおける商業的なトランスジェニック作物に関する文章については、CERA.(2012).GM Crop Database.Center for Environmental Risk Assessment(CERA),ILSI Research Foundation,Washington D.C.,電子的に利用可能なものはcera-gmc.org/?action=gm_crop_databaseを参照されたい。他の植物種の形質転換の様々な方法は、当技術分野で公知であり、例えば、百科事典の参考文献である“Compendium of Transgenic Crop Plants”,Chittaranjan Kole及びTimothy C.Hall編,Blackwell Publishing Ltd.,2008;ISBN 978-1-405-16924-0(mrw.interscience.wiley.com/emrw/9781405181099/hpt/tocで電子的に入手可能)には、穀類及び飼料用草(イネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、エンバク、モロコシ、トウジンビエ、シコクビエ、冷期の飼料用草、及びバヒアグラス)、油料種子作物(ダイズ、アブラナ、ヒマワリ、ピーナッツ、亜麻、ゴマ、ベニバナ)、マメ科穀物及び飼料(インゲンマメ、ササゲ、エンドウ、ソラマメ、レンズ豆、テパリービーン、アジアマメ、キマメ、ベッチ、ヒヨコマメ、ハウチワマメ、アルファルファ、及びクローバー)、温帯果実及びナッツ(リンゴ、ナシ、モモ、プラム、ベリー類、サクランボ、ブドウ、オリーブ、アーモンド、ペルシャクルミ)、熱帯および亜熱帯果実及びナッツ(柑橘類、グレープフルーツ、バナナ・プランテン、パイナップル、パパイヤ、マンゴー、アボカド、キウイフルーツ、パッションフルーツ、及び柿)、野菜作物(トマト、ナス、ピーマン、野菜のアブラナ、大根、ニンジン、ウリ、ネギ、アスパラガス、及び葉物野菜)、砂糖、塊茎、及び繊維作物(サトウキビ、テンサイ、ステビア、ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバ、及びワタ)、プランテーション作物、観賞植物、及び芝草(タバコ、コーヒー、ココア、茶、ゴムノキ、薬用植物、観賞用植物、及び芝草)、及び森林樹種のための形質転換手順が記載されている。
【0172】
安定的に組み込まれた組換えDNAを含むトランスジェニック植物細胞及びトランスジェニック植物を提供する形質転換方法は、好ましくは培地上の組織培養及び制御された環境において実施される。「培地」は、細胞をインビトロ、つまり無傷の生体外で増殖させるために使用される多数の栄養混合物を指す。レシピエント細胞の標的は、分裂組織細胞、カルス、未成熟胚又は胚の一部分、及び小胞子、花粉、精子、卵細胞などの配偶子細胞を含むが、これらに限定されない。生殖可能な植物を再生できるいずれの細胞も、本発明の実施に有用なレシピエント細胞であることが意図される。カルスは、未成熟胚又は胚の一部、苗の先端分裂組織、小胞子などを含むが、これらに限定されない様々な組織源から開始することができる。カルスとして増殖することが可能であるこれらの細胞は、遺伝的形質転換のためのレシピエント細胞として機能することができる。本発明のトランスジェニック植物(例えば、様々な培地及びレシピエントの標的細胞、未成熟胚の形質転換、及びその後の稔性トランスジェニック植物の再生)を作製するための実用的な形質転換方法及び材料は、例えば、参照によって具体的に組み込まれている米国特許第6,194,636号及び米国特許出願公開第2004/0216189号に開示されている。
【0173】
一般的な形質転換の実施において、DNAは、1回の形質転換実験のいずれにおいても、低パーセントの標的細胞にしか導入されない。一般的に、マーカー遺伝子は、トランスジェニックDNA構築物を受け取ること及びゲノムに組み込むことによって安定的に形質転換される細胞を特定するための効率的なシステムを提供するために使用される。好ましいマーカー遺伝子は、抗生物質又は除草導入剤などの選択的導入剤に耐性を付与する選択的マーカーを提供する。植物細胞がそれに対して耐性を有する抗生物質又は除草導入剤のいずれも、選択に対して有用な薬導入剤となり得る。形質転換された可能性のある細胞は、マーカーに対応している選択的な導入剤に曝露される。生存細胞の集団では、一般的に、耐性付与遺伝子(選択的マーカー)が細胞の生存を可能にするのに十分なレベルで組み込まれかつ発現する細胞が対象となる。細胞はさらに試験されて、組換えDNAの安定した組み込みを確認することができる。一般的に使用される選択的マーカー遺伝子は、カナマイシン又はパロモマイシン(nptll)、ハイグロマイシンB(aphIV)、及びゲンタマイシン(aac3及びaacC4)などの抗生物質に対する耐性、又はグルホシネート(bar又はpat)及びグリホサート(EPSPS)などの除草導入剤に対する耐性を付与するものを含む。有用な選択的マーカー遺伝子及び選択導入剤の例は、すべてが参照によって具体的に組み込まれる米国特許第5,550,318号、第5,633,435号、第5,780,708号、第6,118,047号に示される。形質転換体を視覚的に識別する能力を提供するマーカーなどの、スクリーニング可能なマーカーまたはレポーターも使用されることができる。有用なスクリーニング可能なマーカーの例は、例えば、発色基質(例えば、βグルクロニダーゼ(GUS)(uidA)又はルシフェラーゼ(luc))に作用することによって検出可能な色を生成するか、または緑色蛍光タンパク質(GFP)(gfp)又は免疫原性分子などのそれ自体が検出可能であるタンパク質を発現する遺伝子を含む。当業者は、他の多くの有用なマーカー又はレポーターが使用可能であることを認識するであろう。
【0174】
トランスジェニック植物細胞における組換えDNA構築物の転写を検出することまたは測定することは、タンパク質検出法(例えば、ウェスタンブロット法、ELISA法、および他の免疫化学的方法)、酵素活性の測定、又は核酸検出法(例えば、サザンブロット法、ノーザンブロット法、PCR法、RT-PCR法、蛍光インサイチュハイブリッド化法)を含むいずれかの適切な方法によって達成することができる。
【0175】
ボトリティス・シネレアの標的遺伝子を標的とする本発明の組換えポリヌクレオチドの植物細胞における転写を検出又は測定するのに適した他の方法は、例えば、ボトリティス・シネレアの成長速度、死滅率、繁殖率、又は補充率など、組換えポリヌクレオチドが存在しない場合に観察される発現レベルと比較して、ボトリティス・シネレアにおける標的遺伝子の発現レベルを直接的又は代理的に示す他の形質を測定すること、又は、ボトリティス・シネレアによって侵入された植物又は植物の畑における傷害(例えば、根の損傷)又は収量損失を測定することを含む。一般に、関心対象となる組換えポリヌクレオチドの植物細胞における転写を検出又は測定するための適切な方法は、例えば、肉眼的又は顕微鏡的な形態学的形質、成長速度、収量、繁殖率又は補充率、害虫又は病原体に対する耐性、又は生物的又は非生物的ストレス(例えば、水不足ストレス、塩分ストレス、栄養ストレス、暑さ又は寒さのストレス)に対する耐性を含む。そのような方法は、表現型形質の直接測定又は代理的アッセイ(例えば、植物では、これらのアッセイは、非生物的ストレスの耐性を決定するための葉や根のアッセイなどの植物部位アッセイを含む)を使用することができる。そのような方法は、ボトリティス・シネレアに対する耐性の直接測定(例えば、植物組織への損傷)または代用アッセイ(例えば、植物収量アッセイ、またはバイオアッセイ)を含む。
【0176】
本発明の組換えDNA構築物は、例えば、他の遺伝子を発現又は抑制することによって、追加の形質(例えば、形質転換された植物の場合、除草剤耐性、害虫耐性、低温発芽耐性、水不足耐性などを含む形質)を付与するために、他の組換えDNAと積み重ねることができる。遺伝子発現の調整された減少及び増加のための構築物は、具体的に参照により組み込まれる米国特許出願公開第2004/0126845A1号に開示されている。
【0177】
稔性トランスジェニック植物の種子は、収穫され、そのゲノムにおいて組換えDNA構築物を含む本発明のトランスジェニック植物のハイブリッド世代を含む子孫世代を成長させるために使用されることができる。したがって、本発明の組換えDNA構築物を有する植物の直接形質転換に加えて、組換えDNAを有する第1の植物と、構築物を欠いている第2の植物とを交配することによって、本発明のトランスジェニック植物を調製することができる。例えば、組換えDNAは、形質転換に適した植物系統に導入して、トランスジェニック植物を生成させ、これを第2の植物系統と交配させて、得られた子孫に組換えDNAを遺伝子移入することができる。本発明のトランスジェニック植物は、1つ以上の追加の形質(例えば、除草剤耐性、病気又は害虫耐性、環境ストレス耐性、改変された栄養素含有量、及び収量の改善を含むが、これらに限定されない)を付与する他の組換えDNAを有する植物系統と交配して、所与の標的配列発現行動及び追加の形質の両方を付与する組換えDNAを有する子孫植物を生成することができる。
【0178】
そのような形質を組み合わせた育種では、追加の形質を供与するトランスジェニック植物を雄系統(受粉者)とし、基本形質を保持するトランスジェニック植物を雌系統とすることができる。この交雑の子孫は、ある植物が両方の親の形質のDNAを保持し、ある植物が一方の親の形質のDNAを保持するように分離する、そのような植物は、親の組換えDNAに関連するマーカーによって特定することができ、両方の親の形質のDNAを保持する子孫植物は、例えば通常6世代から8世代のような複数回の雌親系統に戻して交配して、一方の元のトランスジェニック親系統と実質的に同じ遺伝子型およびもう一方のトランスジェニック親系統の組換えDNAを有するホモ接合型の子孫植物を生成することができる。
○本発明のさらに別の態様は、本発明のトランスジェニック種子から成長させたトランスジェニック植物である。本発明は、組換えDNAを含むトランスジェニック種子から直接成長させたトランスジェニック植物、並びに同じトランスジェニック種子から成長させなかった第2の植物にトランスジェニック種子から直接成長させたトランスジェニック植物を交配させることによって作成される近交系又はハイブリッド系を含む子孫世代の植物を意図する。交配は、例えば、次のステップ(a)第1の親植物(例えば、非トランスジェニック又はトランスジェニック)と本発明に従ったトランスジェニックである第2の親植物の種子または茎の挿し木を植えるステップ、
○(b)第1及び第2の親植物の種子または茎の挿し木を、花をつける植物に成長させるステップ、
○(c)第1の親からの花に第2の親の花粉を用いて受粉させるステップ、及び
○(d)受粉した花を有する親植物に実った種子を収穫するステップを含むことができる。
【0179】
組換えDNAをエリート品種に、例えば戻し交配によって遺伝子移入して、あるソースからの特定の望ましい形質を、その形質を欠く近交系又は他の植物に移すことは、しばしば望ましいことである。これは、例えば、課題の形質に適した遺伝子(本発明に従って調製された構築物)を保持するドナー近交系(「B」)(非反復親)に対して、第一の優れた近交系(「A」)(反復親)を交配することによって達成されることができる。まずこの交配の子孫は、反復しない親「B」から伝達される所望の形質のために、得られた子孫中で選択され、そして選択された子孫は、上位の反復する親「A」に戻し交配される。所望の形質のための選択を用いた戻し交配を5世代以上行った後、子孫は、伝達される形質を制御する遺伝子座について本質的に半接合体であるが、他のほとんど又はほとんどすべての遺伝子について上位の親のようになる。最後の戻し交配世代は、例えば1つ以上の形質転換イベントのように、伝達される遺伝子(複数可)の純粋な繁殖である子孫を与えるために自殖される(自殖が許可される)。
【0180】
一連の育種操作を通じて、選択されたDNA構築物は、さらなる組み換え操作を必要とせずに、ある系統から全く異なった系統に移動させることができる。したがって、1つ以上のDNA構築物の真の育種である近交系植物を生成することができる。異なった近交系の植物を交配することによって、DNA構築物の様々な組み合わせを有する多数の異なったハイブリッドを生成することができる。このようにして、ハイブリッドによく関連付けられた望ましい農業特性(「ハイブリッド活力」)、および1つ以上のDNA構築物によって付与される望ましい特性を有する植物を生成することができる。
【0181】
本発明の特定のトランスジェニック植物細胞及びトランスジェニック植物では、時には、ボトリティス・シネレアの標的遺伝子の発現も調節しながら、対象となる遺伝子を発現させることが望ましい。したがって、いくつかの実施態様では、トランスジェニック植物は、関心対象となる少なくとも1つの遺伝子を発現させるための遺伝子発現要素をさらに含む組換えDNAを含有し、かつ本発明の組換えDNA構築物の転写は、遺伝子発現要素の同時転写で影響される。
【0182】
本発明はまた、本発明のトランスジェニック植物細胞、植物、又は種子から生産される製品を提供し、収穫された葉、根、苗条、茎、果実、種子、又は植物の他の部分、油、抽出物、発酵物又は消化生成物、又は本発明のトランスジェニック植物細胞、植物、又は種子から生産されるそのような製品を含む任意の食品又は非食品製品を含むが、これらに限定されない。本明細書で意図される1つ以上の商品又は製品において、本発明の組換えDNA構築物の1つ以上の核酸配列の検出は、商品又は製品が、本発明のトランスジェニック植物細胞、植物、又は種子を含有するか、又は由来することの事実上の証拠である。
【0183】
一般的に、本発明の組換えDNA構築物またはその一部分を有するトランスジェニック植物のゲノムは、ボトリティス・シネレア感染に対する強化された耐性を示す。様々な実施態様では、例えば、トランスジェニック植物が、追加の形質を付与するために他の組換えDNAと積み重ねられた本発明の組換えDNA構築物を発現する場合、トランスジェニック植物は、組換えDNA構築物を欠いている植物と比較して、以下、
(a)強化された非生物的ストレス耐性、
(b)強化された生物的ストレス耐性、
(c)改変された一次代謝産物組成、
(d)改変された二次代謝産物組成、
(e)改変された微量要素、カロテノイド、又はビタミン組成、
(f)強化された収量、
(g)強化された窒素、リン酸、その他の栄養素を使用する能力、
(h)改変された農業特性、
(i)改変された成長又は繁殖特性、及び
(j)強化された収穫、貯蔵又は加工品質
からなる形質の群より選択される、少なくとも1つの追加の改変された形質を有する。
【0184】
いくつかの実施態様では、トランスジェニック植物は、非生物的ストレス(例えば、水不足や干ばつへの耐性、暑さ、寒さ、最適でない栄養素又は塩分レベル、最適でない光レベル)又は生物的ストレス(例えば、密集、アレロパシー、又は負傷)により、改善された耐性一次代謝産物(例えば、脂肪酸、油、アミノ酸、タンパク質、糖、炭水化物)組成により、改変された二次代謝産物(例えば、アルカロイド、テルペノイド、ポリケチド、非リボソームペプチド、及び混合生合成由来の二次代謝産物)の組成、改変された微量元素(例えば、鉄、亜鉛)、カロテノイド(例えば、β-カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、又はその他のカロテノイド及びキサントフィル)、又はビタミン(例えば、トコフェロール)組成、改善された収量(例えば、非ストレス条件下での改善された収量又は生物的又は非生物的ストレス下での改善された収量)、窒素、リン酸、その他の栄養素の改善された使用能力、改変された農業特性(例えば追熟の遅れ、遅発性老化、早晩満期、改変されたシェード許容値、根又は茎の改善された耐倒伏性、茎の「グリーンスナップ」に対する改善された耐性、改変された光周期応答)、改変された成長又は繁殖特性(例えば、意図的矮小化、意図的な雄性不稔、例えば、ハイブリッド化の手順における改善された有用性、改善された栄養成長速度、改善された発芽、改善された雌雄繁殖能力)、改善された収穫、貯蔵、又は加工品質(例えば、貯蔵期間中の害虫に対するより強い耐性、傷つきにくさ、消費者向けアピールの強化など)、又はこれらの性質の組み合わせにより特徴づけられる。
【0185】
別の実施態様では、トランスジェニック種子、又はトランスジェニック植物によって生成された種子は、改変された一次代謝産物(例えば、脂肪酸、油、アミノ酸、タンパク質、糖、炭水化物)の組成、改変された二次代謝産物組成、改変された微量元素、カロテノイド、又はビタミン組成、改変された収穫、貯蔵、又は加工品質、又はこれらの組み合わせを有する。別の実施態様では、例えば、アレルゲン性タンパク質又は糖タンパク質のレベル又は毒性代謝物のレベルを減少させるために、トランスジェニック植物又はトランスジェニック植物の種子の天然成分のレベルを変更することが望ましい場合がある。
【0186】
一般的に、トランスジェニック植物細胞から再生されたトランスジェニック植物の集団のスクリーニングは、所望の形質を有するトランスジェニック植物に成長するトランスジェニック植物細胞を特定するために実施される。トランスジェニック植物は、増強された形質、例えば、増強された水使用効率、増強された耐寒性、増加された収量、増強された窒素使用効率、増強された種子タンパク質、増強された病気耐性、及び増強された種子油を検出するためにアッセイされる。スクリーニング方法は、温室又は野外試験での形質の直接スクリーニング、又は代替形質のスクリーニングを含む。そのような分析は、植物の化学組成、バイオマス、生理的特性、又は形態の変化を検出することを目的としている。化学組成の変化は、種子の組成、タンパク質、遊離アミノ酸、油、遊離脂肪酸、デンプン、トコフェロール、または他の栄養素の含有量を分析することによって検出されることができる。成長又はバイオマス特性の変化は、植物の高さ、茎の直径、節間の長さ、根及び苗条の乾燥重量を測定することによって検出される。生理学的特性の変化は、ストレス条件に対する反応を評価する(例えば、水分不足、窒素またはリン酸塩の欠乏、寒冷または高温の生育条件、病原体または昆虫の攻撃、光不足、または植物密度の増加などの課せられたストレス条件下でのアッセイ)ことによって特定される。その他の選抜的特性は、開花までの日数、花粉の飛散までの日数、果実の成熟までの日数、果実の品質又は生産量、葉の伸長速度、葉緑素含有量、葉の温度、林分、苗の活力、節間長、草丈、葉数、葉面積、分げつ、支柱根、緑色保持、茎の倒伏、根の倒伏、植物の健康、繁殖力、グリーンスナップ、及び害虫耐性を含む。さらに、収穫された果実または種子の表現型特性を評価することができ、例えば、植物の場合、これは、収穫された果物の総数もしくは重量、またはそのような果物の色、酸味、糖度、または風味を含むことができる。
【0187】
以下の実施例は、例示の目的のために提示されるものであって、限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0188】
概要
本実施例は、トマト、イチゴ、ブドウ、およびサヤマメを含む様々な結実植物および野菜の上のボトリティス・シネレアを防除するdsRNAの外部からの適用の展開および有効性を強調することを目的とする。
【0189】
実施例1 インビトロ液体ベースのアッセイ
真菌培養
ボトリティス・シネレアを毎週平板培養し、培養物を、4℃で保管されるシリカ上での長期保管から、麦芽エキス寒天(MEA)上に加えた。3つのシリカペレットをMEA寒天平板の中心に加え、使用前にパラフィルム/テープシールなしで室温で10~14日間増殖させた。通常、12日間経過した培養物を使用した。
【0190】
胞子と培地の準備
ボトリティス・シネレアの純粋培養物を0.01%のTriton x-100溶液で満たし、滅菌ホッケースティックで分生子をこすり落とした。懸濁液を2本の1.5mLの遠心管に移し、8,000rpmで2分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレット化した胞子を滅菌水で2回洗浄し、滅菌水に再懸濁した。血球計を使用して分生子を定量し、最終濃度が5,000分生子/mLストックになるまで希釈した。アッセイ設定のために、以下の成分を使用して1.25X最少培地の原液を調製した。原液を作成すると、NaOHまたはKOHを使用してpHを6.0に調整し、次に0.2umのフィルタータワーと真空ポンプを通過して濾過滅菌し、4℃で保管した。Kao&Michayluk Vitamins(100X)はフィルター滅菌原液である。Kao&Michaylukが説明されるように、原液はビタミンとアミノ酸を含む。フィルター滅菌後、100mlの溶液中の20mgの4-アミノ安息香酸を加えた。
【0191】
最少培地(MM)配合
800mLの1.25X MMを調製した。
【表1】
【0192】
硝酸塩の原液を作製するために、以下に説明される2つの部分を別々に調製し、121℃で20分間オートクレーブ処理し、冷却してから混合した。
【0193】
20X硝酸塩
250mLの20X硝酸塩を、2つの部分で調製した。
【0194】
第1部分200mL
【表2】
【0195】
第2部分50mL
【表3】
【0196】
実験設定
スクリーニングアッセイを、真菌バイオマスを測定する前に処理液(対照およびdsRNA)とともに3日間共インキュベートされている分生子を含む96ウェルプレートに準備した。各処理を単一のプレートにおいて8回繰り返した。各ウェルは、12.5μlの分生子懸濁液、25μlの処理液、12.5μlの滅菌脱イオン水、および200μlの最少培地から構成された。各プレートをブレスライトフィルムで覆い、24時間照明を備えた120RPMに設定された振盪台上の23℃のパーシバル増殖チャンバー内に置いた。プレートに72時間インキュベートされた後、真菌の増殖を測定した。
【0197】
アッセイプレートの読み取り
Cytation 5機械でプレートを読み取ることによって真菌バイオマスを決定した。バイオマスを測定するために、2.5Xレンズを備えた明視野顕微鏡下でウェルごとに8枚の写真スライスを編集するようにプログラムを設定した。
【0198】
データ分析
分析をCytation5で自動的に実行して、最終的なバイオマスを決定した。
【0199】
結果を表1Bに示し、上記の数回の実行にわたる試験された配列の対照に対するバイオマスの平均減少を表す。
【0200】
実施例2 剥離葉アッセイ
【0201】
植物組織
ブランディワイン品種のトマトの苗を、アッセイ用の最初の本葉を収穫する前に温室で3週間育てた。収穫にノード2~4を優先させ、側尖のみをアッセイに使用した。ほぼ同じサイズの小葉を毎週使用し、処理間でランダム化した。剥離された小葉を処理のためにすぐに実験室に持ち込み、収穫後4時間以内に使用した。剥離された小葉を、処理されるまで4℃で保管し、インキュベーションのために1%水寒天培地上に置いた。
【0202】
真菌培養
ボトリティス・シネレア分離株(B05.10)を、長期保管のためにシリカ上に保存し、栄養培地での増殖のために4℃で保管されたこれらのチューブから抽出した。3つのシリカペレットを麦芽エキス寒天(MEA)寒天プレートの中心に加え、パラフィルム/テープシールなしで室温で約14日間、または使用前に豊富な分生子が形成されるまで増殖させた。
【0203】
小葉の処理
接種の24時間前に小葉を処理し、アトマイザーを使用して小葉を完全に覆う小さな液滴の細かい霧を得た。Silwet L-77を展着剤として使用し、最終濃度が0.03%となるように加えた(Silwet L-77 brand Phyto Technology Laboratories,S7777 Lot#14D7777001F)。接種された対照に、殺菌剤またはその他の実験材料のない状態で、Silwet L-77を含む同じ体積の滅菌脱イオン水をスプレーした。小葉をペーパータオルの上に置き、アトマイザーを小葉から約6インチ離して適用することによって、小葉をスプレー処理した。処理された葉を1%水寒天(1Lの脱イオン水に10gのBacto Agar,Difcoを溶かし、121℃で30分間滅菌し、55℃の温度に達すると100×20mmのペトリ皿に注ぐ)上に置き、翌日の接種前に湿度を維持するためにペトリ皿をビニール袋の下に置く前にペトリ皿の蓋を元に戻した。処理された小葉のペトリ皿を、翌日まで実験室のカウンターに放置した。各処理を10回繰り返し、各繰り返しは、葉の中央脈の各側に1つずつ、2つの接種部位を有する単一の処理された小葉とした。
【0204】
接種
分生子懸濁液は、7%白ブドウジュース溶液を培養プレート上に注ぎ、滅菌スパチュラでプレートをこすり落として胞子および菌糸体を取り除くことによって調製した。ブドウジュース溶液を、Welch’sブランドの有機白ブドウジュースを滅菌脱イオン水に混合することによって調製した。培養物の胞子と菌糸体を取り除いた後、懸濁液を2層のチーズクロスを経由して注ぐことによって、真菌の菌糸体を除去し、清潔な50mLのコニカルチューブにおける分生子懸濁液を捕捉した。約3μLのTWEEN 20を分生子懸濁液に加えて、コニカルチューブへの付着を防止した。Neubauer改良型血球計数器を使用して胞子濃度を測定し、胞子濃度が1x10分生子/mLに達するまで、接種材料をさらに7%ブドウジュースで希釈した。接種材料を使用して、調製から2時間以内に宿主組織に接種した。各トマト小葉に対して2回接種し、接種部位を小葉の中脈の片側に1つずつ配置した。リピーターピペットを使用して、10μL体積の胞子懸濁液を各接種部位に配置した。処理間の汚染を避けるために、小葉表面先端に触れないよう特別な注意を払った。
【0205】
インキュベーション
ペトリ皿を6枚の高さでランチトレイに置き、インキュベーターに移した。インキュベーターに対して湿度管理し、相対湿度を約75%に保った。インキュベーターを12/12の明るい日/暗い日で保管し、温度を23℃に設定した。
【0206】
評価
接種(DPI)後5日目に測定を行った。病変の直径を決定するのに役立つために、発生した各病変を、電子ノギスを使用して互いに直角な2つの方向で測定した。
【0207】
データ分析
SAS JMP統計プログラム(バージョン13.2.1)を使用してデータを分析し、未処理の接種された対照との比較をした。接種された対照の平均病変直径が16mm未満である場合、アッセイを「失敗した」と見なし、より強い病害性とより一貫した病変の発生を得るためにアッセイを繰り返した。
【0208】
結果を表2に示し、上記の数回の実行にわたるテストされた配列の対照に対する病変サイズの平均減少パーセントを表す。
【0209】
実施例3.温室(全植物アッセイ)
植物組織
「Lanai」品種のトマトの苗を植えた後、18セルのトレイにおいて1ポットあたり1本の苗を残して間引きした。発芽後3週間の苗を使用して、dsRNA処理を評価した。23℃/17℃の昼/夜温度で、24時間ごとに10時間の光に当てて植物を育てた。RHは周囲のRHであり、水のみを与えた日曜日を除いて毎日、植物に肥料を1日2回与えた。実験全体にわたって、Fafardブランドの培地(70~80%のミズゴケピートモス、パーライト、バーミキュライト、ドロマイト石灰岩および散水剤)を使用して植物を育てた。
【0210】
真菌培養
ボトリティス・シネレアB05.10分離株を維持し、接種材料の調製にブドウジュース添加物を使用しなかったことを除き、剥離葉アッセイについて前述のものと同じように胞子を収穫した。
【0211】
植物の処理
スプレーブースを使用して、接種の約24時間前にトマトの苗全体を処理した。0.07%のSilwet L-77溶液を展着剤として使用し、水における最終体積が0.07%となるように加えた(Silwet L-77 brand Phyto Technology Laboratories,S7777 Lot#14D7777001F)。スプレーブースのデッキを苗の冠部から20インチ上に設置し、100メッシュのフィルターを備えたツインジェット8002EVSノズルをスプレー機構内に配置した。10秒で133mL(+/-6mL)の捕集量を得るために、スプレーブームを処理適用前に次のような仕様で校正した。50GPAのレート、1.25MPHの速度、6’のスプレー長さ、シングルパス、および45psi。実験1回ごとに、これらの処理を10回ずつ繰り返した。
【0212】
接種手動
ポンピングによって加圧されるmist-o-maticアプリケーターを使用して、植物への接種を行った。GH空間における接種の直前に、接種材料懸濁液をmist-o-maticに注いだ。容器を半分までしか満たさず、接種材料を均一の被覆で、すべての葉の表面に均一に適用した。
【0213】
インキュベーション
PVCパイプで支えられ、3M半透明プラスチックで覆われる、高さ40インチの湿度チャンバーにおいて植物をインキュベートした。加湿器はチャンバー内にあり、低くて連続した湿度に設定された(水道水で満たされた)。温度はD:24~20℃/N:20~18℃、照明時間は15時間であり、そのうちの9時間は補助照明を有した。RHは周囲のRHであり、水やりを地下灌漑によって毎日行い、ベンチは排水前に10分間浸水された。
【0214】
評価
2週間の実験において、トマトの苗を3回評価し、接種の4日後に評価を始め、最初の評価日から3~4日ごとに行った。病変の数と、壊死性病変、病原体胞子形成、および白化を含める症状を示す植物のパーセントである病気重症度とについて植物を評価した。
【0215】
データ分析
各配列について示されたデータは、温室においての、2回の生物学的実行(処理ごとに10回の繰り返し)の平均である。パーセント病気重症度(%DS)は、病変、白化、壊死、および萎れを含める症状を有するトマトの葉のパーセント面積によって決定された。病気重症度は、12日間の試験期間中の3つの日付(評価番号)に評価された。処理されたものを、未処理の接種された対照、および化学標準品と比較した。SAS JMPバージョン13.2.1を使用して、統計的分析を行い、Tukey-Kramer and student’s T testsを使用して、処理されたものを未処理の接種された対照および化学標準品と比較した。
【0216】
結果を表3~表14および図1図5に示す。
【0217】
実施例4 野外現地試験
実施例4.1 GS349およびGS730組成物によるイチゴにおけるボトリティス感染の防除
それぞれが本明細書に記載されるトリガー配列(GS349またはGS730)を含むdsRNAを含むRNAi組成物を、野外現地試験でのイチゴにおけるボトリティス防除する能力について評価された。製剤化されていない(水に溶解した)GS349およびGS730を、それぞれ水および標準アジュバントSilwet L-77 0.1%v/vとタンクで混合した。GS349はヘクタールあたり25グラムの有効成分の濃度(g ai/ha)および50g ai/haで試験し、GS730は100g ai/haの濃度で試験した。標準的な生物学的殺菌剤であるSerenade ASO,85g ai/haを陽性対照として使用した。第2の陽性対照群は、化学標準品Teldor Plus750g ai/ha、Signum600g ai/ha、およびSwitch500g ai/haの交互の適用により処理した。この試験はまた、未処理群を陰性対照として含む。
【0218】
イチゴの苗に、試験組成物および陽性対照を12回の適用でスプレーした。最初の適用から14日後から苗を観察し、病気の進行は、病気の影響を受けた果実の表面積のパーセント(%病気重症度)を測定することによって評価した。病気重症度は、試験観察期間全体にわたってプロットされ、症状進展曲線下面積(AUDPC)は、複数の評価にわたる様々な処理の累積的な効果を測定するために、計算された。平均値は、Fisher’s LSD,alpha(p)≦0.05に従って分離された。
【0219】
結果を図6に示した。統計的有意性は、各バーにおける文字によって示された。両方の濃度でのGS349およびGS730は、未処理の対照に対する、ボトリティスの有意な防除を示した。GS349 25g ai/haおよびGS730 100g ai/haは、生物学的標準品であるSerenadeと有意な差がなかった。50g/h aiでのGS349は、生物学的標準品に対して大幅に改善された防除を示し、化学標準品と有意な差がなかった。
【0220】
実施例4.2 GS730組成物によるブドウにおけるボトリティス感染の防除
それぞれが本明細書に記載されるトリガー配列(GS730)を含むdsRNAを含むRNAi組成物を、野外現地試験でのブドウにおけるボトリティスを防除する能力について評価した。未製剤化組成物および製剤化組成物を試験した。未製剤化組成物は、水およびSilwet L-77 0.1%v/vとタンクで混合した。製剤化サンプルは、RO水、プロピレングリコール、直鎖アルコールエトキシレート、リグノスルファネート、クエン酸ナトリウム二水和物、ポリアクリル酸ポリマー、2つの殺生物組成物、無水クエン酸、および消泡剤で製剤化されており、これらのすべては市場から容易に入手できる。未製剤化および製剤化されたGS730を、それぞれ50g ai/haおよび100g ai/haの濃度で試験した。JMS Sylet Oil1%v/vと交互するSerenade9.4l/haの標準的な生物学的プログラムは、陽性対照として使用された。化学標準品であるMiravis Prime392g ai/ha aiおよびSwitch610g ai/haは、交互の適用において第2の陽性対照群に適用された。未処理群を、陰性対照として使用した。
【0221】
陽性対照を、開花時に、房閉鎖時に、ベレゾン時に、および収穫の7~10日前に、ブドウの苗に適用した。試験適用は陽性対照と同じタイミングで行われ、開花、房閉鎖、ベレゾンの7日後に、および収穫の7~10日前に追加の適用を行った。症状を、最後の適用から2日後(スライド3)、または最後の適用の18日前から、3~4週間にわたって評価した。パーセント病気重症度は評価され、AUDPCは実施例4.1に記載されるものと同じ方法で計算された。
【0222】
2つの異なった試験の結果を図7および図8に示した。統計的有意性は、各バーにおける文字によって示された。両方の試験において、両方の濃度での未製剤化GS730および100g ai/haでの製剤化GS730は、未処理の照合と比較してボトリティス病害の有意な減少を示し、Serenade及びJMS Stylet Oilの生物学的標準プログラムと統計的な差がなかった。2番目の試験では、両方の濃度での未製剤化GS730および100g ai/haでの製剤化GS730は、Miravis PrimeおよびSwitchの化学プログラムに相当する結果を示した。
【0223】
実施例4.3 GS349、GS2280、GS2303、およびGS2297組成物によるサヤマメにおけるボトリティス感染の防除
それぞれが本明細書に記載されるトリガー配列(GS349、GS2280、GS2303、またはGS2297)を含むdsRNAを含むRNAi組成物を、野外現地試験でのサヤマメにおけるボトリティス防除する能力について評価した。すべての試験サンプルは、RO水、プロピレングリコール、直鎖アルコールエトキシレート、リグノスルファネート、クエン酸ナトリウム二水和物、ポリアクリル酸ポリマー、2つの殺生物組成物、無水クエン酸、および消泡剤で製剤化されており、これらのすべては市場から容易に入手できる。製剤サンプルは、標準的なアジュバントで非イオン性界面活性剤であるActivator 90 0.125%v/vとタンクで混合された。組成物は、10g ai/ha、20g ai/ha、および40g ai/haの濃度で試験した。陽性対照は、化学標準品であるSwitch525g ai/haおよび生物学的標準品であるDouble Nickel LC9.4l/haであり、両方ともActivator 90 0.125%v/vとタンクで混合された。上記のように、未処理の照合を、陰性対照として使用した。
【0224】
組成物を、エーカーあたり50ガロンの水を送達する小区画スプレーヤーを使用して、サヤマメの苗物に適用した。各サンプルおよび各陽性対照に対して合計3回の適用を行った。症状は、最初の適用の8日後から、3回目および最後の適用の37日後まで評価された。パーセント病気重症度は評価され、AUDPCは実施例4.1に記載されるものと同じ方法で計算された。
【0225】
結果を図9に示す。統計的有意性は、各バーにおける文字によって示された。すべての試験された濃度でのすべての配列は、陰性対照と比較して、ボトリティス・シネレア病害を大幅に軽減し、生物学的標準品であるDouble Nickelと有意差がなかった。20g ai/haおよび40g ai/haでのGS349、10g ai/haおよび40g ai/haでのGS2280、試験されたすべての濃度でのGS2303、および20g ai/haでのGS2297は、化学標準品での処理と比較して症状に有意差がないことをさらに示した。
【0226】
実施例4.4 GS349組成物によるイチゴにおけるボトリティス感染の防除
それぞれが本明細書に記載されるトリガー配列(GS349)を含むdsRNAを含むRNAi組成物を、野外現地試験でのイチゴにおけるボトリティス防除する能力について評価した。全ての試験サンプルは、実施例4.3に記載されるように製剤化され、標準的なアジュバントであるActivator 90 0.25%v/vとタンクで混合された。組成物は、10g ai/ha、20g ai/ha、30g ai/ha、および40g ai/haの濃度で試験された。Regalia470g ai/haおよびStylet Oil6800g ai/haの生物学的標準プログラムは、陽性対照として使用された。Captan2240g ai/haおよびSwitch525g ai/haの化学標準プログラムは、第2の陽性対照として使用された。未処理の照合群は、陰性対照として使用された。
【0227】
組成物は、エーカーあたり50ガロンの水を送達する小区画スプレーヤーを使用して、イチゴの苗に適用された。5回の適用は、週1回の間隔で行われた。症状は、最初の適用の6日後から、5回目および最後の適用の12日後まで評価された。パーセント病気重症度は評価され、AUDPCは実施例4.1に記載されるものと同じ方法で計算された。
【0228】
結果を図10に示す。統計的有意性は、各バーにおける文字によって示された。すべての試験された濃度でのGS349は、ボトリティス・シネレア病害を大幅に軽減し、化学的または生物学的標準プログラムとの有意差を示さなかった。
【0229】
表1A.この研究で使用される例示的なトリガー配列のユニバーサルID番号とSEQ識別
【表4】
【0230】
表1B.インビトロ液体ベースのアッセイ結果
活性は、処理後のバイオマスを未処理対照と比較してバイオマスの減少パーセントを決定することによって確認された。2つの濃度のdsRNAは、Cytation5機械を使用してバイオマスを測定する前に、ボトリティス・シネレア分生子とともに3日間共インキュベートされた。平均バイオマス減少は数回の生物学的実行の平均値として、それぞれにおいて各処理を8回ずつ繰り返した。
【表5】
【0231】
表2.剥離葉のアッセイ結果
活性は、2つの異なった濃度での各処理の平均病変サイズを未処理の接種された対照と比較することにより確認した。病変サイズの平均減少率は、各dsRNA配列に対する2回以上の生物学的実行の平均を取ることによって計算した。
【表6】
【0232】
表3~表14 温室、全植物のアッセイ結果
【0233】
表3
最終評価日(評価#3)におけるGS349に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。2回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後3週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった。
【表7】
【0234】
表4
最終評価日(評価#3)におけるGS413に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。2回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後3週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった。
【表8】
【0235】
表5
最終評価日(評価#3)におけるGS686に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。2回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後3週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった。
【表9】
【0236】
表6
最終評価日(評価#3)におけるGS728に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。2回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後3週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった。
【表10】
【0237】
表7
最終評価日(評価#3)におけるGS730に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。2回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後3週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった。
【表11】
【0238】
表8
最終評価日(評価#3)におけるGS2280に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。3回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後4週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった
【表12】
【0239】
表9
最終評価日(評価#3)におけるGS2297に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。3回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後4週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった。
【表13】
【0240】
表10
最終評価日(評価#3)におけるGS2303に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。3回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後4週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった。
【表14】
【0241】
表11
最終評価日(評価#3)におけるGS245に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。3回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後4週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった。
【表15】
【0242】
表12
最終評価日(評価#3)におけるGS659に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。3回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後4週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった。
【表16】
【0243】
表13
最終評価日(評価#3)におけるGS793に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。3回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後4週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった。
【表17】
【0244】
表14
最終評価日(評価#3)におけるGS2291に対するTukey-Kramer分析を使用する処理の平均分離率、および未処理の接種された処理と比較する対照平均パーセント。3回の実行からのデータが結合され、各実行は10回の繰り返しを含み、それぞれの回で発芽後4週間の「Lanai」トマトの苗を評価した。Tukey-Kramer分析のp値は0.05未満であった。
【表18】
【0245】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024529957000001.xml
【国際調査報告】