(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】アセチルコリン受容体結合最適化短縮ペプチド及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 4/00 20060101AFI20240806BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240806BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20240806BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20240806BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240806BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20240806BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240806BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240806BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240806BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240806BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
C07K4/00
C12N15/11 Z ZNA
A23L33/18
A61K8/64
A61Q19/08
A61P43/00 111
A61K38/08
A61P25/00
A61P25/02
A61P25/04
A61P27/02
A61P13/10
A61P1/00
A61P17/00
C12P21/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504903
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 KR2022011078
(87)【国際公開番号】W WO2023008913
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0098837
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0092749
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519456251
【氏名又は名称】スキンメドカンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パン、ジン ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ズン フン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ヨン チョル
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウォン イル
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018ME14
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA10
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC06
4C083CC07
4C083CC12
4C083CC23
4C083DD08
4C083DD12
4C083DD21
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD30
4C083DD31
4C083EE13
4C083FF01
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084MA52
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA08
4C084ZA20
4C084ZA33
4C084ZA66
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZC01
4C084ZC42
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA53
4H045BA55
4H045BA56
4H045EA01
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
アセチルコリン受容体結合最適化短縮ペプチド及びその用途に関し、従来のアセチルコリン受容体阻害ペプチドに比べて短縮されながらも高いアセチルコリン受容体との結合力及びアセチルコリン受容体作用抑制効果を有する本発明の最適化された短縮ペプチドを用いて、シワ改善用化粧料組成物、アセチルコリン受容体関連疾患の予防又は治療のための医薬品及び改善用健康機能食品を提供できる。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1:
[化学式1]
(R/K)XXX(R/K)
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、Xは1個の任意のアミノ酸である)
で表現されるアミノ酸配列からなる
ことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項2】
下記の化学式1-1:
[化学式1-1]
(R/K)XYZ(R/K)
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、XYZは順次に並べられる任意のアミノ酸であり、XはR、Q、G、V、L、S、Wから選択される1個のアミノ酸、YはR、Q、L、I、F、V、Yから選択される1個のアミノ酸、ZはR、S、L、C、Y、Q、Tから選択される1個のアミノ酸である)
で表現されるアミノ酸配列からなる
ことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドは、配列番号1~600からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドである
請求項2に記載のアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項4】
下記の化学式1-2:
[化学式1-2]
XRRQRR
(ただし、前記Rはアルギニン、Qはグルタミン、Xは1個の任意のアミノ酸である)
で表現されるアミノ酸配列からなる
ことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドは、配列番号3601~3620からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドである
請求項4に記載のアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項6】
下記の化学式1-3:
[化学式1-3]
RRRQRRX
(ただし、前記Rはアルギニン、Qはグルタミン、Xは1個の任意のアミノ酸である)
で表現されるアミノ酸配列からなる
ことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドは、配列番号3621~3640からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドである
請求項6に記載のアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項8】
下記の化学式2:
[化学式2]
(R/K)(R/K)XXX(R/K)
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、Xは1個の任意のアミノ酸である)
で表現されるアミノ酸配列からなる
ことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項9】
下記の化学式2-1:
[化学式2-1]
(R/K)(R/K)XYZ(R/K)
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、XYZは順次に並べられる任意のアミノ酸であり、XはR、Q、G、V、L、S、Wから選択される1個のアミノ酸、YはR、Q、L、I、F、V、Yから選択される1個のアミノ酸、ZはR、S、L、C、Y、Q、Tから選択される1個のアミノ酸である)
で表現されるアミノ酸配列からなる
ことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドは、配列番号1201~1800からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドである
請求項9に記載のアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項11】
下記の化学式2-2:
[化学式2-2]
XRRGVRR
(ただし、前記Rはアルギニン、Gはグリシン、Vはバリン、Xは1個の任意のアミノ酸である)
で表現されるアミノ酸配列からなる
ことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項12】
前記ペプチドは、配列番号3641~3660からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドである
請求項11に記載のアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項13】
下記の化学式2-3:
[化学式2-3]
RRRGVRRX
(ただし、前記Rはアルギニン、Gはグリシン、Vはバリン、Xは1個の任意のアミノ酸である)
で表現されるアミノ酸配列からなる
ことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項14】
前記ペプチドは、配列番号3661~3680からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドである
請求項13に記載のアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項15】
下記の化学式3:
[化学式3]
(R/K)XXX(R/K)(R/K)
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、Xは1個の任意のアミノ酸である)
で表現されるアミノ酸配列からなる
ことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項16】
下記の化学式3-1:
[化学式3-1]
(R/K)XYZ(R/K)(R/K)
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、XYZは順次に並べられる任意のアミノ酸であり、XはR、Q、G、V、L、S、Wから選択される1個のアミノ酸、YはR、Q、L、I、F、V、Yから選択される1個のアミノ酸、ZはR、S、L、C、Y、Q、Tから選択される1個のアミノ酸である)
で表現されるアミノ酸配列からなる
ことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項17】
前記ペプチドは、配列番号2401~3000からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドである
請求項16に記載のアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項18】
前記ペプチドは、N末端又はC末端が修飾(modification)されている
請求項1ないし17のいずれかに記載のアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項19】
前記ペプチドのN末端又はC末端が修飾(modification)されたことは、パルミトイル化(palmitoylation)、アセチル化(acetylation)、ホルミル化(formylation)又はぺギル化(PEGylation)されるか、又は
2-メルカプト酢酸(2-mercaptoacetic acid)、3-メルカプトプロピオン酸(3-mercaptopropionic acid)、6-メルカプトヘキサン酸(6-mercaptohexanoic acid)、ピログルタミン酸(pyroglutamic acid)、スクシンイミド酸(succinimide acid)、アミド化(amidation)、システアミン(cystramine)、メチルエステル(methyl ester)、エチルエステル(ethyl ester)、ベンジルエステル(benzyl ester)などであり、脂肪酸結合、例えば、ミリスチン酸(myristic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、パルミチン酸(palmitic acid)、コレステロール(cholesterole)、6-アミノヘキサン酸(6-amino hexanoic acid)及び8-アミノオクタン酸(8-amino octanoic acid)からなる群から選ばれる1以上の結合による
請求項18に記載のアセチルコリン受容体結合ペプチド。
【請求項20】
請求項1ないし17のいずれかに記載のペプチドを暗号化(coding)する
ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項1ないし17のいずれかに記載のペプチドを含む
ことを特徴とするシワ改善用化粧料組成物。
【請求項22】
請求項1ないし17のいずれかに記載のペプチドを含む
ことを特徴とするアセチルコリン受容体過剰活性関連疾患予防又は治療用組成物。
【請求項23】
前記アセチルコリン受容体過剰活性関連疾患は、
頸部筋緊張異常症(cervical dystonia)、四肢緊張異常症(limb dystonia)、体部筋肉緊張異常症(truncal dystonia)、眼瞼痙攣(blepharospasm、顔震)、痙縮(spasticity)、片側顔面痙攣(hemifacial spasm)、斜視(strabismus)、眼震(nystagmus)、チック(tics)、慢性疼痛(chronic pain)、慢性片頭痛(chronic migraine)、神経因性膀胱(neurogenic bladder)、排尿筋括約筋協調障害(detrusor-sphincter dyssynergia)、食道弛緩不能症(achalasia cardia)、多汗症(hyperhidrosis)、 神経病性疼痛(neuropathic pain)、皮膚のシワ、角張った顎、及び唾液分泌過剰(sialorrhea)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である
請求項22に記載のアセチルコリン受容体過剰活性関連疾患予防又は治療用組成物。
【請求項24】
請求項1ないし17のいずれかに記載のペプチドを含む
ことを特徴とするアセチルコリン受容体過剰活性関連疾患改善用健康機能食品組成物。
【請求項25】
請求項1ないし17のいずれかに記載のペプチドを含む
ことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチドを含む医療機器用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセチルコリン受容体結合最適化短縮ペプチド及びその用途に関し、より具体的には、ペプチドの最適化のためにアセチルコリン受容体と結合してその作用を抑制する上で重要な特定アミノ酸が一定の式で表現されるアセチルコリン受容体結合最適化短縮ペプチド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
アセチルコリン(acetylcholine)は、動物の神経組織に存在する化学物質であり、神経の末端から分泌され、神経の刺激を筋肉に伝達する役割を担う。神経末端から分泌される伝達物質としては、運動神経及び副交感神経ではアセチルコリンが、交感神経ではエピネフリン(アドレナリン)が知られている。アセチルコリンが分泌されると、血圧降下、心臓搏動抑制、腸管収縮、骨格筋収縮などの生理作用を示す。筋肉が収縮する際には、神経が筋肉に収縮しろとの命令を下し、これに応じて筋肉が収縮するが、その命令により、神経と筋肉とが会う部分(神経-筋接合部)で神経がアセチルコリンを分泌し、この物質が筋肉のアセチルコリン受容体に接合して筋肉が収縮することになる(非特許文献1:Vincent,A.,1985;Lindstrom,J.M.,et al.,1976)。大腿部骨格筋を支配する末梢のアセチルコリン受容体を遮断すると筋肉運動の麻痺が起き、呼吸又は心臓運動を担当する平滑筋及び心臓筋のアセチルコリン受容体を遮断すると呼吸、心臓運動の麻痺が起きる。
【0003】
アセチルコリン受容体は、ムスカリン性アセチルコリン受容体(muscarinic acetylcholine receptor,mAchR)とニコチン性アセチルコリン受容体(nicotinic acetylcholine receptor,nAchR)とに分類される。ムスカリン性アセチルコリン受容体は、ムスカリン(muscarine)で活性化させ得るGタンパク結合受容体(G protein-coupled receptor)であり、亜型(subtype)によって異なる信号伝達機序を活性化させる。ムスカリン性アセチルコリン受容体は、中枢神経系(central nervous system)及び末梢臓器(peripheral organ)を含めて全身に分布しており、主に副交感神経系(parasympathetic nervous system)の神経節後線維から分泌されるアセチルコリンの生理的作用を媒介する役割を担う。
【0004】
ニコチン性アセチルコリン受容体は、ニコチン(nicotine)による薬理作用を摸倣する受容体であり、神経伝達物質によって操作されるイオンチャネル(ion channel)である。イオンチャネルの開放及び閉鎖によってナトリウム、カリウム、カルシウムイオンなどを非選択的に通過させる非選択的陽イオン通路であって、神経細胞と筋肉細胞間の電気的信号伝達(electronic signaling)を調節する。ニコチン性アセチルコリン受容体は、発現部位によって、筋肉型(muscle type)と神経型(neuronal type)とに分類される。筋肉型ニコチン性アセチルコリン受容体は、運動神経(motor neuron)と骨格筋(skeletal muscle)とが会う神経筋肉接合部(neuromuscular junction)に発現しており、運動神経で分泌されたアセチルコリンが骨格筋細胞膜の終板電位(end plate potential,EPP)を誘発するのに寄与する。一方、神経型ニコチン性アセチルコリン受容体は、自律神経系(autonomic nervous system,ANS)の末梢神経節(ganglia)に発現しているので、神経節前線維(preganglionic fiber)から分泌されたアセチルコリンが神経節後線維(postganglionic fiber)を興奮させるのに寄与する。
【0005】
アセチルコリンの活性を妨害或いは阻害したり或いは行動を摸倣する薬物が非常に有用に用いられている。アセチルコリン受容体作用剤は、重症筋無力症とアルツハイマー病を治療するのに用いられる。重症筋無力症は、身体でニコチン性アセチルコリン受容体に対する抗体を生産し、正常のアセチルコリン信号伝達を阻害することから生じる自己免疫疾患であり、アセチルコリンエステラーゼ(acetylcholine esterase,AChE)阻害剤を用いて、神経と筋肉との間のシナプス隙間でアセチルコリンが不活性化する前に各受容体と相互作用し得る時間を増やすことで、重症筋無力症を治療することができる。
【0006】
また、アセチルコリンの分泌を妨害すると、筋肉の収縮を抑制して筋肉が麻痺しながらシワが伸びるが、これを用いたのがボトックス(botox)である。ボトックスは、運動神経の末端において筋肉の収縮に必須の物質であるアセチルコリンが分泌される過程を妨げる。その結果、筋肉が動けなくなり、筋肉によって誘発されたシワがなくなる。ボトックスによる筋弛緩効果は3~6週後に次第に消えるため、反復投与が必要である。
【0007】
また、アセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合することを阻害してシワを伸ばす機序を用いて化粧品用ペプチドを開発したが、これがDSM社のシンエイク(Synake)である。これは、蛇毒由来ペプチドで、シワ改善ペプチドの中で最良の臨床効果(約52%)を保有しているもので、ペプチド化粧品原料として多く使用されている。
【0008】
そこで、本発明者らは、アセチルコリン受容体結合ペプチドを研究しながら、アセチルコリン受容体との結合力が高いペプチドをスクリーニングして確保し、このようなペプチドがアセチルコリン受容体と結合してアセチルコリン結合を防止することによってアセチルコリン受容体作用を抑制するということを確認した。しかしながら、アセチルコリン受容体結合ペプチドがペプチド断片として提供されることにより、ペプチドの長さが長くなる場合には製造単価が上昇し、化粧料として製造した時に皮膚透過能が低下する問題があった。そのため、アセチルコリン受容体との高い結合力を維持しながらも、より短縮したペプチドに対する研究が必要であった。
【0009】
従来先行技術として、本発明者の先行技術である特許文献1:韓国公開特許第10-2020-0080179号には、アセチルコリン受容体阻害ペプチド及びその用途が記載されているが、アセチルコリン受容体阻害ペプチドとして8mer、11mer、14mer及び18merのペプチドが記載されているだけで、本発明の最適化された短縮ペプチド及びその効果は記載されていない。また、韓国登録特許第1216008号には、バイオパンニングを用いて選別した、アセチルコリン受容体に結合するペプチドが記載されているが、本発明のアミノ酸配列を含むペプチド及びライブラリーは記載されていない。
【0010】
また、特許文献2:韓国公開特許第2018-0028748号には、アセチルコリンを含む神経伝達物質放出調節ペプチド及びそのシワ改善効果が記載されているが、本発明のアミノ酸配列を含むペプチドのアセチルコリン受容体結合力及びこれによるアセチルコリン受容体作用抑制効果は記載されていない。特許文献3:韓国公開特許第2014-0139010号には経皮透過促進のためのペプチドが記載されているが、本発明のアセチルコリン受容体結合を用いた作用抑制ペプチドとは構成及び効果に相違がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2020-0080179号
【特許文献2】韓国公開特許第2018-0028748号
【特許文献3】韓国公開特許第2014-0139010号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Vincent,A.,1985;Lindstrom,J.M.,et al.,1976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、アセチルコリン受容体結合最適化短縮ペプチドを提供することにある。また、本発明の目的は、前記アセチルコリン受容体結合最適化短縮ペプチド最適化短縮ペプチドを提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、アセチルコリン受容体結合最適化短縮ペプチドを含むシワ改善用化粧料組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、アセチルコリン受容体結合最適化短縮ペプチドを含むアセチルコリン受容体過剰活性関連疾患予防又は治療用組成物を提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、アセチルコリン受容体結合最適化短縮ペプチドを含むアセチルコリン受容体過剰活性関連疾患改善用健康機能食品組成物及び医療機器用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を達成するために、本発明は、アセチルコリン受容体結合最適化短縮ペプチドを提供する。
【0017】
本発明において、「アミノ酸(amino acid)」又は「任意のアミノ酸」とは、ペプチド分野において合成ペプチドを製造するために使用される天然アミノ酸及びその他アミノ酸、例えば、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、塩基配列として暗号化されていないアミノ酸などのL-及びD-異性質体のいずれをも含む。
【0018】
前記天然アミノ酸は、アラニン(alanine,Ala,A)、システイン(cystenin,Cys,C)、アスパラギン酸(Aspartic acid,Asp,D)、グルタミン酸(glutamic acid,Glu,E)、フェニルアラニン(phenylalanine,Phe,F)、グリシン(glycine,Gly,G)、ヒスチジン(histidine,His,H)、イソロイシン(isoleucine,Ile,I)、リジン(lysine,Lys,K)、ロイシン(leucine,Leu,L)、メチオニン(methionine,Met,M)、アスパラギン(asparagine,Asn,N)、プロリン(proline,Pro,P)、グルタミン(glutamine,Gln,Q)、アルギニン(arginine,Arg,R)、セリン(serine,Ser,S)、トレオニン(threonine,Thr,T)、バリン(Valine,Val,V)、トリプトファン(tryptophan,Trp,W)、及びチロシン(tyrosine,Tyr,Y)であってよい。
【0019】
前記その他アミノ酸は、2-アミノアジピン酸(2-aminoadipic acid,2-aminohexanedioic acid)、α-アスパラギン(α-asparagine)、2-アミノブタン酸(2-aminobutanoic acid)、2-アミノカプリン酸(2-aminocapric acid,2-aminodecanoic acid)、α-グルタミン(α-glutamine)、α-アミノイソ酪酸(α-aminoisobutyric acid,α-methylalanine)、2-アミノピメリン酸(2-aminopimelic acid,2-aminohepanedioic acid)、γ-アミノ-β-ヒドロキシベンゼンペンタン酸(γ-amino-β-hydroxybenzenepentanoic acid)、2-アミノスベリン酸(2-aminosuberic acid,2-aminooctanedioic acid)、2-カルボキシアゼチジン(2-carboxyazetidine)、β-アラニン(β-alanine)、β-アスパラギン酸(β-aspartic acid)、3,6-ジアミノヘキサン酸(3,6-diaminohexanoic acid,β-lysine)、ブタン酸(butanoic acid)、4-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸(4-amino-3-hydroxybutanoic acid)、γ-アミノ-β-ヒドロキシシクロヘキサンペンタン酸(γ-amino-β-hydroxycyclohexanepentanoic acid)、3-シクロヘキシルアラニン(3-cyclohexylalanine)、N5-アミノカルボニルオルニチン(N5-aminocarbonylornithine)、3-スルホアラニン(3-sulfoalanine)、2,4-ジアミノプロパン酸(2,3-diaminopropionic acid)、2,7-ジアミノスベリン酸(2,7-diaminosuberic acid、2,7-diaminooctanedioic acid)、S-エチルチオシステイン(S-ethylthiocysteine)、γ-グルタミン酸(γ-glutamic acid)、γ-カルボキシグルタミン酸(γ-carboxylglutamic acid)、ヒドロキシ酢酸(hydroxyacetic acid、glycolic acid)、ピログルタミン酸(pyroglutamic acid)、ホモアルギニン(homogrginine)、ホモシステイン(homocysteine)、ホモヒスチジン(homohistidine)、2-ヒドロキシイソ吉草酸(2-hydroxyisovaleric acid)、ホモセリン(homoserine)、2-ヒドロキシペンタン酸(2-hydroxypentanoic acid)、5-ヒドロキシリジン(5-hydroxylysine)、4-ヒドロキシプロリン(4-hydroxyproline)、イソバリン(isovaline)、2-ヒドロキシプロパン酸(2-hydroxypropanoic acid、lactic acid)、メルカプト酢酸(mercaptoacetic acid)、メルカプトブタン酸(mercaptobutanoic acid)、3-ヒドロキシ-4-メチルプロリン(3-hydroxy-4-methylproline)、メルカプトプロパン酸(mercaptopropanoic acid)、3-ナフチルアラニン(3-naphthylalanine)、ノルロイシン(norleucine)、ノルチロシン(nortyrosine)、ノルバリン(norvaline)、2-カルボキシオクタヒドロインドール(2-carboxyoctahydroindole)、オルニチン(ornithine)、ペニシラミン(penicillamine、3-mercaptovaline)、2-フェニルグリシン(2-phenylglycine)、2-カルボキシピぺリジン(2-carboxypiperidine)、サルコシン(sarcosine,N-methylglycine)、1-アミノ-1-カルボキシシクロペンタン(1-amino-1-carboxycyclopentane)、スタチン(statin,4-amino-3-hydroxy-6-methylheptanoic acid)、3-チエニルアラニン(3-thienylalanine)、3-カルボキシイソキノリン(3-carboxyisoquinoline)、3-メチルバリン(3-methylvaline)、ε-N-トリメチルリジン(ε-N-trimethyllysine)、3-チアゾリルアラニン(3-thiazolylalanine)、α-アミノ-2,4-ジオキソピリミジンプロパン酸(α-amino-2,4-dioxopyrimidinepropanoic acid)などであってよい。
【0020】
本発明において、「ペプチド(peptide)」とは、アミド結合又はペプチド結合で連結された2個以上のアミノ酸からなるポリマーを意味する。
【0021】
本発明において、「アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor,AchR)」は、神経の末端から分泌されるアセチルコリンが結合する受容体で、アセチルコリンによる神経の刺激を伝達する通路として働く。例えば、筋肉の収縮が必要な場合に、神経が筋肉に収縮しろとの命令を下せば、神経と筋肉とが出会う部分で神経がアセチルコリンを分泌し、分泌されたアセチルコリンが筋肉のアセチルコリン受容体に結合することで筋肉が収縮する。
【0022】
本発明のアセチルコリン受容体は、ムスカリン性アセチルコリン受容体とニコチン性アセチルコリン受容体とに分類され、本発明のアセチルコリン受容体は、ニコチン性アセチルコリン受容体が好ましい。
【0023】
本発明は、下記の化学式1で表現されるアミノ酸配列からなるアセチルコリン受容体結合ペプチドを提供する。
【0024】
[化学式1]
【0025】
(R/K)XXX(R/K)
【0026】
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、Xは1個の任意のアミノ酸である。)
【0027】
前記ペプチドは5個のアミノ酸配列からなり、1番目及び5番目アミノ酸はそれぞれアルギニン又はリジンであり、2、3及び4番目の配列は、任意のアミノ酸であるペプチドである。
【0028】
前記アセチルコリン受容体結合ペプチドは、上記の[化学式1]で表現される5個のアミノ酸配列からなり、1番目及び5番目のアミノ酸であるK又はRがアセチルコリン受容体結合において重要な部位であってよい。上記の[化学式1]で表現されるアミノ酸配列であって、2番目、3番目及び4番目のアミノ酸が任意のアミノ酸であってよく、これは、1番目及び5番目のアミノ酸がK又はRであれば、2番目、3番目及び4番目のアミノ酸の種類が変わっても一定以上のアセチルコリン受容体結合能力を示し得ることを意味する。
【0029】
本発明は、下記の化学式1-1で表現されるアミノ酸配列からなるアセチルコリン受容体結合ペプチドを提供する。
【0030】
[化学式1-1]
【0031】
(R/K)XYZ(R/K)
【0032】
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、XYZは順次に並べられる任意のアミノ酸であり、XはR、Q、G、V、L、S、Wから選択される1個のアミノ酸、YはR、Q、L、I、F、V、Yから選択される1個のアミノ酸、ZはR、S、L、C、Y、Q、Tから選択される1個のアミノ酸である。)
【0033】
また、上記の化学式1-1で表現されるアミノ酸配列のペプチドは、配列番号1~600からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドであってよい。
【0034】
本発明は、下記の化学式1-2で表現されるアミノ酸配列からなるアセチルコリン受容体結合ペプチドを提供する。
【0035】
[化学式1-2]
【0036】
XRRQRR
【0037】
(ただし、前記Rはアルギニン、Qはグルタミン、Xは1個の任意のアミノ酸である。)
【0038】
上記の化学式1-2で表現されるアミノ酸配列のペプチドは、配列番号3601~3620からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドであってよい。
【0039】
本発明は、下記の化学式1-3で表現されるアミノ酸配列からなるアセチルコリン受容体結合ペプチドを提供する。
【0040】
[化学式1-3]
【0041】
RRQRRX
【0042】
(ただし、前記Rはアルギニン、Qはグルタミン、Xは1個の任意のアミノ酸である。)
【0043】
上記の化学式1-3で表現されるアミノ酸配列のペプチドは、配列番号3621~3640からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドであってよい。
【0044】
本発明は、下記の[化学式2]で表現されるアミノ酸配列からなるアセチルコリン受容体結合ペプチドを提供する。
【0045】
[化学式2]
【0046】
(R/K)(R/K)XXX(R/K)
【0047】
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、Xは1個の任意のアミノ酸である。)
【0048】
前記アセチルコリン受容体結合ペプチドは、上記の[化学式2]で表現される6個のアミノ酸配列からなり、1番目、2番目及び6番目のアミノ酸であるK又はRが、アセチルコリン受容体結合において重要な部位であってよい。上記の[化学式2]で表現されるアミノ酸配列であって、3番目、4番目及び5番目のアミノ酸が任意のアミノ酸であって、これは、1番目、2番目及び6番目のアミノ酸がK又はRであれば、3番目、4番目及び5番目のアミノ酸の種類が変わっても一定以上のアセチルコリン受容体結合能力を示し得ることを意味する。
【0049】
本発明は、下記の化学式2-1で表現されるアミノ酸配列からなるアセチルコリン受容体結合ペプチドを提供する。
【0050】
[化学式2-1]
【0051】
(R/K)(R/K)XYZ(R/K)
【0052】
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、XYZは順次に並べられる任意のアミノ酸であり、XはR、Q、G、V、L、S、Wから選択される1個のアミノ酸、YはR、Q、L、I、F、V、Yから選択される1個のアミノ酸、ZはR、S、L、C、Y、Q、Tから選択される1個のアミノ酸である。)
【0053】
上記の化学式2-1で表現されるアミノ酸配列のペプチドは、配列番号1201~1800からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドであってよい。
【0054】
本発明は、下記の化学式2-2で表現されるアミノ酸配列からなるアセチルコリン受容体結合ペプチドを提供する。
【0055】
[化学式2-2]
【0056】
XRRGVRR
【0057】
(ただし、前記Rはアルギニン、Gはグリシン、Vはバリン、Xは1個の任意のアミノ酸である。)
【0058】
上記の化学式2-2で表現されるアミノ酸配列のペプチドは、配列番号3641~3660からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドであってよい。
【0059】
本発明は、下記の化学式2-3で表現されるアミノ酸配列からなるアセチルコリン受容体結合ペプチドを提供する。
【0060】
[化学式2-3]
【0061】
RRGVRRX
【0062】
(ただし、前記Rはアルギニン、Gはグリシン、Vはバリン、Xは1個の任意のアミノ酸である。)
【0063】
上記の化学式2-3で表現されるアミノ酸配列のペプチドは、配列番号3661~3680からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドであってよい。
【0064】
本発明は、下記の[化学式3]で表現されるアミノ酸配列からなるアセチルコリン受容体結合ペプチドを提供する。
【0065】
[化学式3]
【0066】
(R/K)XXX(R/K)(R/K)
【0067】
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、Xは1個の任意のアミノ酸である。)
【0068】
前記アセチルコリン受容体結合ペプチドは、上記の[化学式3]で表現される6個のアミノ酸配列からなり、1番目、5番目及び6番目のアミノ酸であるK又はRがアセチルコリン受容体結合において重要な部位であってよい。上記の[化学式3]で表現されるアミノ酸配列であって、2番目、3番目及び4番目のアミノ酸が任意のアミノ酸であってよく、これは、1番目、5番目及び6番目のアミノ酸がK又はRであれば、2番目、3番目及び4番目のアミノ酸の種類が変わっても一定以上のアセチルコリン受容体結合能力を示し得ることを意味する。
【0069】
本発明は、下記の化学式3-1で表現されるアミノ酸配列からなるアセチルコリン受容体結合ペプチドを提供する。
【0070】
[化学式3-1]
【0071】
(R/K)XYZ(R/K)(R/K)
【0072】
(ただし、前記R/Kはアルギニン又はリジン、XYZは順次に並べられる任意のアミノ酸であり、XはR、Q、G、V、L、S、Wから選択される1個のアミノ酸、YはR、Q、L、I、F、V、Yから選択される1個のアミノ酸、ZはR、S、L、C、Y、Q、Tから選択される1個のアミノ酸である。)
【0073】
上記の化学式3-1で表現されるアミノ酸配列のペプチドは、配列番号2401~3000からなる群から選ばれる一つのアミノ酸配列のペプチドであってよい。
【0074】
前記アセチルコリン受容体結合ペプチドのアミノ酸配列は、本発明の先行特許である大韓民国公開特許第10-2020-0080179号に記載されたアミノ酸配列を除外する。前記大韓民国公開特許第10-2020-0080179号に記載されたアミノ酸配列はRKSLLRを含む。
【0075】
本発明は、前記ペプチドのN末端又はC末端が修飾(modification)されたことを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチドに関する。
【0076】
前記N末端又はC末端が修飾(modification)されたものは、パルミトイル化(palmitoylation)、アセチル化(acetylation)、ホルミル化(formylation)又はぺギル化(PEGylation)されるか、又は2-メルカプト酢酸(2-mercaptoacetic acid)、3-メルカプトプロピオン酸(3-mercaptopropionic acid)、6-メルカプトヘキサン酸(6-mercaptohexanoic acid)、ピログルタミン酸(pyroglutamic acid)、スクシンイミド酸(succinimide acid)、アミド化(amidation)、システアミン(cystramine)、メチルエステル(methyl ester)、エチルエステル(ethyl ester)、ベンジルエステル(benzyl ester)などであり、脂肪酸結合、例えば、ミリスチン酸(myristic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、パルミチン酸(palmitic acid)、コレステロール(cholesterole)、6-アミノヘキサン酸(6-amino hexanoic acid)及び8-アミノオクタン酸(8-amino octanoic acid)からなる群から選ばれる1以上の結合によることを特徴とするアセチルコリン受容体結合ペプチドであってよい。
【0077】
本発明のペプチドは、当分野に広く公知された方法で得ることができる。具体的には、遺伝子組換えとタンパク質発現システムを用いて製造したり、或いはペプチド合成のような化学的合成方法によって試験管内で合成する方法及び無細胞タンパク質合成法などで製造することができる。より具体的には、当分野でよく知らされた方法、例えば、自動ペプチド合成器で合成でき、遺伝子操作技術で生産できるが、これに制限されるものではない。例えば、遺伝子操作によって融合パートナーと本発明のペプチドからなる融合タンパク質を暗号化する遺伝子を製造し、製造された遺伝子を宿主微生物に形質転換させた後、宿主微生物において融合タンパク質の形態で発現させ、タンパク質分解酵素又は化合物を用いて融合タンパク質から本発明のペプチドを切断、分離し、所望のペプチドを生産することができる。
【0078】
本発明のペプチドは、塩の形態で存在してもよい。本発明に利用可能な塩の形態は、化合物の最終分離及び精製中に又はアミノ基を適切な酸と反応させることによって作られるものであってよい。例えば、酸付加塩として、アセテート、アジフェート、アルジネート、シトレート、アスパルテート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、ビサルフェート、ブチレート、カンフォレート、カンフォスルホネート、ジグルコネート、グリセロホスフェート、ヘミサルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ホルメート、フマレート、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、2-ヒドロキシエタンスルホネート、ラクテート、マレエート、メシチレンスルホネート、メタンスルホネート、ナフチレンスルホネート、ニコチネート、2-ナフタレンスルホネート、オキサレート、パモエート、ペクチネート、ペルサルフェート、3-フェニルプロピオネート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、サクシネート、タルトレート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、ホスフェート、グルタメート、ビカーボネート、パラ-トルエンスルホネート及びウンデカノエートであってよいが、これに限定されるものではない。また、酸付加塩を形成するために使用可能な酸の例には、塩酸、ブロム化水素酸、硫酸及びリン酸のような無機酸、並びにシュウ酸、マレ酸、コハク酸及びクエン酸のような有機酸であってよいが、これに限定されるものではない。
【0079】
前記ペプチドは、標的化配列、タグ(tag)、標識された残基、半減期又はペプチドの安定性を増加させるための目的で考案されたアミノ酸配列の追加、標的化、効能増加又は安定性を増加させるための抗体又は抗体切片、ヒト血清アルブミン(HSA)などとの結合又はペプチドのN末端又はC末端を修飾(modification)させることができる。
【0080】
前記「抗体」は、抗原性部位に対して指示される特異的なタンパク質分子を意味する。好ましくは、前記抗体は、特定タンパク質又はその免疫原性断片に対して特異的に結合する抗体を意味し、単クローン抗体(monoclonal antibody,mAb)、多クローン抗体(polyclonal antibody,pAb)及び組換え抗体のいずれをも含むことができる。前記抗体は、当業界に広く公知された技術を用いて容易に製造することができる。
【0081】
前記抗体は、2本の全長軽鎖(light chain)及び2本の全長重鎖(heavy chain)を有する完全な形態の他に、抗体分子の機能的な断片も含むことができる。抗体分子の機能的断片とは、少なくとも抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、F(ab)2、Fvなどがある。
【0082】
前記ペプチドは、特定組織への伝達又は安定性確保のために、ナノ粒子、マイクロ粒子、金属粒子、セラミック粒子、ヒドロゲルなどに内包又は固定化できるが、これに限定されない。
【0083】
前記ナノ粒子、マイクロ粒子、金属粒子、セラミック粒子、ハイドロゲルなどは生体適合的であり、毒性のないものであってよい。
【0084】
前記アセチルコリン受容体結合ペプチドはアセチルコリン受容体に結合し、アセチルコリンが受容体に結合することを防止してアセチルコリン受容体作用を抑制させることができる。好ましくは、筋肉の収縮を抑制してシワ改善、正常でない筋肉収縮抑制効果を呈し、手術時に筋肉の弛緩を促進して手術の便宜性を確保することができる。
【0085】
また、本発明は、前記アセチルコリン受容体結合ペプチドを暗号化するポリヌクレオチド(polynucleotide)を提供する。前記アセチルコリン受容体に対して結合活性を示し得るペプチドを暗号化できる限り、前記ポリヌクレオチドをなしている塩基配列と相同性を示す塩基配列を含むポリヌクレオチドも、本発明で提供するポリヌクレオチドの範ちゅうに含まれ得る。好ましくは、80%以上の相同性を示す塩基配列を含むポリヌクレオチドであり、より好ましくは、90%以上の相同性を示す塩基配列を含むポリヌクレオチドであり、最も好ましくは、95%以上の相同性を示す塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
【0086】
本発明は、また、前記アセチルコリン受容体結合ペプチドを含むシワ改善用化粧料組成物を提供する。
【0087】
前記アセチルコリン受容体結合ペプチドは、アセチルコリン受容体作用を抑制して筋肉の収縮が起きることを防止し、シワを改善することができる。
【0088】
前記化粧料組成物は、前記アセチルコリン受容体結合ペプチド及び化粧料分野で通常用いられる補助剤、例えば、親水性又は親油性ゲル化剤、親水性又は親油性活性剤、保存剤、抗酸化剤、溶媒、芳香剤、充填剤、遮断剤、顔料、吸臭剤又は染料を含有できる。
【0089】
前記補助剤の量は、当該分野で通常使用される量であり、いずれの場合においても、補助剤及びその比率は、本発明に係る化粧料組成物の好ましい性質に悪影響を及ぼさないように選択できる。
【0090】
前記シワ改善用化粧料組成物は、追加の添加剤を含んで製造することができる。
【0091】
前記添加剤は、保湿剤(moisturizer)、機能性原料、増粘剤(thickener)、柔軟剤、乳化剤(emulsifier)、界面活性剤及びpH調節剤などであってよい。
【0092】
前記保湿剤には、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)及びセラミド(ceramide)成分などであってよいが、これに限定されない。
【0093】
前記増粘剤としては、ポリマー、キサンタンガム、グアーガムであってよいが、これに限定されない。
【0094】
前記柔軟剤としては、ミネラルオイル、シアバター(shea butter)、パラフィンであってよいが、これに限定されない。
【0095】
前記乳化剤としては、ジメチコン、ビーズワックスなどであってよい。
【0096】
前記シワ改善用化粧料組成物は、シワ改善効果のある原料と混合して使用することができる。
【0097】
前記シワ改善効果のある原料は、ビタミンA、ビタミンA誘導体(パルミチン酸レチニル、酢酸レチニルなど)、アデノシン、ポリエトキシル化レチンアミドであってよいが、これに限定されない。
【0098】
前記化粧料組成物は、ローション、スキンソフナー、スキントナー、アストリンゼント、クリーム、ファンデーション、エッセンス、パック、マスクパック、石鹸、ボディークレンザー、クレンジングフォーム、ボディーオイル及びボディーローションからなる群から選ばれる一つ以上の剤形であってよいが、これに制限されない。
【0099】
前記化粧料組成物は毎日使用してもよく、また、定められていない期間に使用してもよく、好ましくは、使用者の年齢、皮膚状態又は皮膚タイプによって使用量、使用回数及び期間を調節することができる。
【0100】
また、本発明は、前記アセチルコリン受容体結合ペプチドを含むアセチルコリン受容体過剰活性関連疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0101】
前記薬学組成物は、アセチルコリン受容体と結合してアセチルコリン受容体活性化を抑制することにより、前記アセチルコリン受容体過剰活性関連疾患を予防又は治療できる。
【0102】
前記アセチルコリン受容体過剰活性関連疾患は、筋肉が非正常に過剰収縮する現象がある疾患であり、頸部筋緊張異常症(cervical dystonia)、四肢緊張異常症(limb dystonia)、体部筋肉緊張異常症(truncal dystonia)、眼瞼痙攣(blepharospasm、顔震)、痙縮(spasticity)、片側顔面痙攣(hemifacial spasm)、斜視(strabismus)、眼震(nystagmus)、チック(tics)、慢性疼痛(chronic pain)、慢性片頭痛(chronic migraine)、神経因性膀胱(neurogenic bladder)、排尿筋括約筋協調障害(detrusor-sphincter dyssynergia)、食道弛緩不能症(achalasia cardia)、多汗症(hyperhidrosis)、 神経病性疼痛(neuropathic pain)、皮膚のシワ、角張った顎、唾液分泌過剰(sialorrhea)、小児脳性麻痺、脳卒中後筋肉強直、腰痛、前立腺肥大症、尿失禁、声帯結節及び矯正、痔疾、痔裂などであってよい。
【0103】
また、前記薬学組成物は、手術時に筋肉の弛緩を促進して手術の便宜性を確保するために使用でき、ニコチン中毒による疾患の治療剤又は補助剤、シワ除去、角張った顎又はふくらはぎ矯正のために使用できるが、これに限定されない。
【0104】
前記薬学組成物は、前記アセチルコリン受容体結合ペプチド及び薬学的に許容可能な賦形剤を含むことができる。
【0105】
前記薬学組成物はそれぞれ、通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用できる。前記薬学組成物に含有可能な担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を挙げることができる。製剤化する場合には、通常の充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記アセチルコリン受容体結合ペプチドに少なくとも一つの賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース又はラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤には懸濁剤、耐溶液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、一般に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他にも様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できる。
【0106】
また、剤形に特に制限はないが、軟膏剤、ローション剤、スプレー剤、パッチ剤、クリーム剤、ゲル剤及びジェルから選択される1種の剤形を有する皮膚外用剤として使用されてよい。経皮吸収を増加させる製剤、例えば、非限定的に、特にジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、界面活性剤、アルコール、アセトン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールを含むことができる。塗布頻度は、治療する対象の年齢、性別、体重、治療する特定疾患又は病理状態、疾患又は病理状態の深刻度、投与経路及び処方者の判断によって相当異なってよく、塗布頻度は、毎月又は一日に10回、好ましくは毎週又は一日に4回、より好ましくは1週に3回又は1日に3回、さらに好ましくは1日1回~2回で適用できる。
【0107】
本発明の薬学組成物は、ネズミ、家畜、ヒトなどの哺乳動物に様々な経路で投与されてよい。いかなる投与方式も考えられてよいが、例えば、経口、直腸又は静脈、筋肉、皮下、皮膚、子宮内、硬膜又は脳血管内注射によって投与されてよい。好ましくは皮膚投与である。
【0108】
本発明は、また、前記アセチルコリン受容体結合ペプチドを含むアセチルコリン受容体過剰活性関連疾患改善用健康機能食品組成物に関する。
【0109】
前記健康機能食品組成物は、前記アセチルコリン受容体結合ペプチド及び食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含むことができる。
【0110】
本発明の健康機能食品組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤又は液剤などの形態を含み、本発明の アセチルコリン受容体結合ペプチドを添加できる食品には、例えば、各種食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康機能性食品類などがある。
【0111】
本発明のさらに他の態様は、前記アセチルコリン受容体結合ペプチドを含む医療機器用組成物を提供する。
【0112】
前記医療機器用組成物はフィラーであってよいが、これに限定されない。
【0113】
本発明において、「フィラー(filler)」とは、皮膚組織を補充できる物質であり、顔のはりの復元、フェースライン改善、シワ緩和のために注入されて埋めることを目的とする。
【0114】
前記医療機器用組成物は、アセチルコリン受容体結合ペプチドによって筋肉の収縮を抑制してシワを緩和でき、フェースライン改善効果も得ることができ、前記アセチルコリン受容体結合ペプチドが固定された生体適合的なマイクロ粒子、ナノ粒子、ヒドロゲルなどを注入して組織を詰めることができる。
【発明の効果】
【0115】
本発明は、アセチルコリン受容体結合最適化短縮ペプチド及びその用途に関し、より具体的には、両末端にアルギニン又はリジンを含み、中央に一定アミノ酸XYZの配列を有するペンタマー及びそのN又はC末端にアルギニン又はリジンをさらに含むヘキサマーは、既存の長いペプチド又は既存のペンタマー、ヘキサマーと比較して、アセチルコリン受容体結合力に非常に優れており、皮膚透過能が向上していることを確認することによって、シワ改善用化粧料組成物、アセチルコリン受容体関連疾患の予防又は治療のための医薬品及び改善用健康機能食品として開発できることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】先行ペプチドである11mer、8mer及びその短縮ペプチドである6merのアセチルコリン受容体親和力をそれぞれシンエイクと比較した結果である。
【
図2】エスペプ2の短縮ペプチドである6mer及び5merの重要シーケンスを確認するためのアラニンスキャニング結果である。
【
図3】エスペプ2から得た短縮ペプチド6mer及び5merのアセチルコリン受容体に対する結合力を確認した結果である。
【
図4】最適化短縮ライブラリー6mer-1、6mer-2及び5merのアセチルコリン受容体に対するバイオパンニングによってスクリーニングされたファージのアセチルコリン受容体結合特異性を示すグラフである。
【
図5】5merライブラリーにおいてXYZ上位反復アミノ酸組合せ及びXYZ下位反復アミノ酸組合せの結合力であるRU値を比較したグラフである。
【
図6】6mer-1ライブラリーにおいてXYZ上位反復アミノ酸組合せ及びXYZ下位反復アミノ酸組合せの結合力であるRU値を比較したグラフである。
【
図7】6mer-2ライブラリーにおいてXYZ上位反復アミノ酸組合せ及びXYZ下位反復アミノ酸組合せの結合力であるRU値を比較したグラフである。
【
図8】エスペプ2から得た単純5mer(5mer-ND)及び6mer(エスペプ2-6mer)、及び対照群であるシンエイク(Synake)と本発明に係る最適化ペプチド5mer(5mer-73、5mer-311)及び6mer(6mer-1-43、6mer-1-210、6mer-2-233、6mer-2-136)のアセチルコリン受容体に対する結合力を比較した結果である。
【
図9】本発明に係る6mer-1-43ペプチドのアセチルコリン受容体に対する濃度別親和力を確認した結果である。
【
図10】シンエイク(Synake)のアセチルコリン受容体に対する阻害能結果である。
【
図11】本発明に係る6mer-1-43及び6mer-1-210ペプチドのアセチルコリン受容体に対する阻害能結果である。
【
図12】本発明に係る6mer-2-136、6mer-2-233ペプチドのアセチルコリン受容体に対する阻害能結果である。
【
図13】本発明に係る5mer-73、5mer-311ペプチドのアセチルコリン受容体に対する阻害能結果である。
【
図14】本発明に係る6mer-1-43ペプチドにパルミトイルが結合したペプチド(Pal-6mer-1-43)のアセチルコリン受容体に対する阻害能結果である。
【
図15】本発明に係る5mer-73ペプチドにパルミトイルが結合したペプチド(Pal-5mer-73)のアセチルコリン受容体に対する阻害能結果である。
【
図16】本発明に係る各ペプチドのアセチルコリン受容体に対する阻害能をシンエイク(Synake)と比較した結果である。
【
図17】本発明に係る代表ペプチドの細胞毒性を評価した結果である。
【
図18】対照群である11mer(Pal-エスペプ2)と本発明に係る5mer(Pal-5mer-73)の皮膚透過能を評価した結果である。
【
図19】本発明に係る最適化短縮ペプチド(5mer-73,RRQRR)の目尻の皮膚シワに対する臨床効能を評価した結果である。
【
図20】本発明に係る最適化短縮ペプチド(5mer-73,RRQRR)の皮膚弾力に対する臨床効能を評価した結果である。
【
図21】本発明に係る最適化短縮ペプチド(5mer-73,RRQRR)の額シワの改善に対する臨床効能を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本発明の発明者らは、先行特許(韓国公開特許第10-2020-0080179号)においてアセチルコリン受容体(AchR)と結合力及び特異性が高いAchR特異的なペプチドを選別した。それらのペプチドは、WTWKGRKSLLRからなるエスペプ-2ペプチドに基づいてペプチドのアセチルコリン受容体結合に重要な配列部位を確認し、アセチルコリン受容体(AchR)との親和力が増加した8mer、11mer及び14merの最適化ペプチドを発掘したものである。これらのペプチドは、多回のバイオパンニングによってAchRとの選択的結合力が高かったが、ペプチドの長さが8~14merで構成される点で、ペプチド生産単価が高く、高皮膚透過がし難いという問題があった。特に、ペプチドの長さが長くなる場合に、生産単価が増加するだけでなく、皮膚透過にも不利に作用してしまう。
【0118】
本発明者らは、前記の問題点を解決するために、AchRとの選択的結合力に優れながらも、より短縮したペプチドを発掘する過程で本発明を案出することになった。特に、エスペプ2を6merと5merに単純に短縮させたRKSLLR及びKSLLRペプチドは、それ自体でもシンエイクペプチドに比べて結合力に優れることを確認し、エスペプ2構造に基づいて6mer及び5merの最適ペプチド構造をサーチした。前記最適化短縮ペプチドを決定するために、6merと5merの無作為ライブラリーを作製してスクリーニングしてペプチド配列を分析した結果、一定の位置に所定のアミノ酸配列を有するペプチドは、既存のエスペプ2(11mer)、6mer、5merに比べて高いアセチルコリン受容体結合力を示すことを確認した。
【0119】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。ただし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態として具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される内容が徹底且つ完全になり、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供されるものである。
【0120】
<実施例1.最適化短縮ライブラリーを作製するためにサイズを短縮させたペプチドの親和力測定>
【0121】
先行エスペプ2ペプチドの最適化短縮ライブラリーを作るために、N末端とC末端でシーケンスを一つずつを段階的に除去したペプチドの親和力を確認した。まず、バイオセンサーチップを用いて表面プラズマ共鳴実験(surface plasmon resonance,SPR)を行った(Biacore3000,Biacore AB,Uppsala,Sweden)。選択されたアセチルコリン受容体タンパク質をEDC/NHSを用いてCM5チップ(Biacore)に固定し、最大500秒まで結合(association)及び解離(dissociationを)を観察した。観察条件は、ランニングバッファー20mMトリス(pH 7.4)、速度30ul/分、濃度20μM(ペプチド)の条件で行い、その結果を
図1に示した。
【0122】
図1に示すように、N末端とC末端でアミノ酸を除去してサイズを短縮させた誘導体の親和力は、11mer(エスペプ2-11mer、WTWKGRKSLLR)1.2μM、8mer(エスペプ2-8mer、KGRKSLLR)3.1μM、及び6mer(エスペプ2-6mer、RKSLLR)57μMであり、シンエイクに比べて11merは1916倍、8merは740倍、6merは40倍の高いアセチルコリン受容体親和力を示した。
【0123】
シンエイク(Synake)は蛇毒由来ペプチドで、アセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合することを阻害してシワ改善に利用されているペプチドである。
図1に見られるように、エスペプ-2短縮ペプチド(11mer、8mer、6mer)のアセチルコリン受容体タンパク質との高い親和力はシンエイクに比べて優れているので、シワ改善を含む化粧料組成物だけでなく、アセチルコリン受容体を抑制することによってアセチルコリン受容体過剰活性と関連した疾患の予防又は治療にも利用可能であることを確認した。
【0124】
従来、アセチルコリン受容体過剰活性による様々な筋肉痙攣及び筋肉過活動に起因する疾病を治療するために使われてきたボツリヌス毒素は、優れた医学的用途にもかかわらず、1gだけで約100万人を死亡に至らせ得る猛毒性を有し、生物武器協約規制対象物質であることに照らせば、短いペプチドを用いて高いアセチルコリン受容体抑制剤効能を達成できることを確認したものである。
【0125】
<実施例2.核心シーケンス確認のためのアラニンスキャニング及び短縮ペプチドの親和力測定>
【0126】
前記短縮ペプチドの重要シーケンスを確認するためにアラニンスキャニングを行った。エスペプ2-6mer(RKSLLR)とエスペプ2-5mer(KSLLR)を野生(WT)とし、それぞれのペプチドのアミノ酸配列を順次にアラニン(alanine,Ala,A)で置換したペプチドを合成した後、実施例1で用いた同じ方法で親和力を測定してそれをWTを基準にして正規化し、
図2に示した。
【0127】
図2に見られるように、NとC末端付近の陽性(positive charge)アミノ酸が結合に重要であることを確認した。
【0128】
また、RKSLLR配列の6個アミノ酸のうち、NとC末端のRシーケンスが重要であることを確認した。このような結果に基づいて、前記6merを基準にしてN末端とC末端の両端の1個シーケンスを除去した5mer-ND(KSLLR)、5mer-CD(RKSLL)ペプチドを作製し、それらの各親和力を測定して
図3に示した。
【0129】
図3に見られるように、エスペプ26merは、RU値が177で、シンエイクに比べて親和力が高かったし、これよりも短縮した5mer-NDは、シンエイクに比べて高い結合力を示した。5mer-CDは、シンエイクと比較して多少低い結合力を示した。これにより、5merの短縮ペプチドは、両末端にリジン(K)又はアルギニン(R)を含む構造がアセチルコリン受容体結合に有利であることを確認した。
【0130】
<実施例3.6mer-1、6mer-2、5mer-NDの短縮ライブラリー作製>
【0131】
前記実施例2のアラニンスキャニングによって確認した重要シーケンスに基づいて、6mer-1;(K/R)(K/R)XXX(K/R)、6mer-2;(K/R)XXX(K/R)(K/R)、5mer-ND;(K/R)XXX(K/R)[(K/R)は、K又はRのいずれか一方、Xはランダムアミノ酸]最適化ライブラリーを作製した。
【0132】
実施例3-1.最適化短縮ライブラリーベクター作製
【0133】
6mer最適化ペプチドライブラリーを作るために、6mer-1-F(SfiI_ARAARANNKNNKNNKARA_NotI)、6mer-2-F(SfiI_ARANNKNNKNNKARAARA_NotI)、5mer-ND-F(SfiI_ARANNKNNKNNKARA_NotI)、Back(AACAGTTTCTGCGGCCGC)(NはA、T、G又はC;KはG又はT;MはC又はA)を合成した(Bioneer,Daejeon,Korea)。合成した表1のDNAライブラリーを鋳型にして5mer、6merインサート(Insert)をPCR反応(94℃で5分、60回:40℃で30秒、72℃で30秒、及び72℃で7分)をして二本鎖にした後、精製して(PCR精製キット、GeneAll,Seoul,Korea)ライブラリー遺伝子を得た。これをファージミドベクター(pIGT)に挿入するために、ファージミドベクターとインサートDNAを制限酵素で処理した。約10μgのインサートDNAをSfiI(New England Biolabs(NEB,Ipswich)及びNotI(NEB,Ipswich)で8時間反応させた後、PCR精製キットを用いて精製DNAを得た。また、約10μgのファージミドベクターをSfiI及びNotIで8時間処理し、CIAP(Calf Intestinal Alkaline Phosphatase)(NEB,Ipswich)を入れて1時間反応させた後、PCR精製キットを用いて精製した。T4 DNAリガーゼ(Bioneer,Daejeon,Korea)を用いてインサートDNAをファージミドベクターと18℃で15時間連結した後、エタノールで沈殿させ、TEバッファー100μlでDNAを溶解させた。
【0134】
【0135】
実施例3-2.電気穿孔
【0136】
ファージミドベクター10μgと6mer又は5merランダムインサートDNA3μgを連結反応させた100μlを10個に分注して電気穿孔を行った。コンピテント細胞を氷の上で溶かし、200μlのコンピテント細胞を連結反応させた溶液4μlと混合して冷却させた後、用意した0.2cmのキュベットに入れて1分間氷の上に置いた。電気穿孔機(BioRAD,Hercules,CA)を200Ωで25uF及び2.5kVの条件にプログラムし、用意したキュベットの水気を除去して電気穿孔機に位置させた後、パルスをかけた。このとき、時間定数は4.5~5msecであった。その後、直ちに、37℃として準備した20mMのグルコースが含まれた1mlのLB液体培地に入れ、得られた総25mlの細胞を100ml試験管に移した。その後、1時間、37℃で200rpmの速度で混合しながら培養した後、それから10μlを取って、ライブラリーの個数を測定するためにアンピシリン寒天培地に希釈、塗抹した。残された細胞を、1LのLBに20mMグルコース及び50μg/mlのアンピシリンを入れて30℃で1日培養した。その後、4℃で4,000gで20分間遠心分離し、沈殿した細胞以外の上澄液を全て除去し、40mlのLBで再懸濁させた後、グリセロールを最終濃度20%以上入れて-80℃に保管した。
【0137】
実施例3-3.最適化ペプチドライブラリーで組換えファージ生産
【0138】
-80℃に保存された6mer、5mer最適化ペプチドライブラリーで組換えファージを生産した。30ml SB液体培地に、-80℃に保管されたライブラリー1mlを追加して20分間37℃で200rpmの速度で混合して培養した。ここに、ヘルパーファージ(1010pfu)とアンピシリン(最終濃度50μg/ml)を入れてさらに1時間、同一条件で培養した。そして、アンピシリン(50μg/ml)及びカナマイシン(10μg/ml)が含まれたSB液体培地30mlに移し、同一条件で16時間以上培養して組換えファージを生産した。前記培養液を4℃で5,000rpmの速度で10分間遠心分離して得た上澄液にPEG/NaClを5:1の比率に混合して氷に1時間放置させた後、4℃で20分間13,000rpmの速度で遠心分離して上澄液は注意して除去し、1mlのPBSでペレットを再懸濁させた。
【0139】
可能な全てのアミノ酸配列を確率的にライブラリー内に含めるために、5merの場合、完成されたライブラリー数は、5mer最適化ライブラリーの場合の数2×2×20×20×20=3.2×104以上でなければならない。したがって、本研究では、5merライブラリーの数を1.95×106にした。また、6mer最適化ライブラリーの場合の数は、2×2×2×20×20×20=6.4×104以上でなければならず、本研究では、作製の結果、6mer-1と6mer-2のライブラリー数が1.23×106、1.53×106が得られ、成功的にライブラリーが開発されたことを確認した。これを下表2に示す。また、各ライブラリーの一部シーケンシングによって、指定配列において誤りがないことを確認した。その結果を表3に示す。
【0140】
【0141】
【0142】
<実施例4.短縮ペプチドライブラリーのバイオパンニング及びスクリーニング>
【0143】
実施例4-1.バイオパンニング(biopanning)方法
【0144】
抗体を表面発現するファージライブラリーを固定化された抗原に処理し、抗原に結合する抗体候補を選別する過程を、バイオパンニング(biopanning)といい、結合/洗浄/遊離(bind/wash/elution)の3段階で構成される。洗浄過程中に、結合力の弱い抗体を有するファージは除去され、結果的に結合力の高い抗体を発現しているファージのみが残るが、このような過程を反復することにより、抗原結合力と特異度に優れた抗体候補を発掘することができる。そこで、本発明のアセチルコリン受容体に対する結合力と特異度に優れたアセチルコリン受容体結合ペプチドをスクリーニングするためにバイオパンニング方法を利用した。
【0145】
5μg/mlのAchR α1を96ウェルプレートの8個ウェルにウェルにつき50μlずつ入れ、4℃で一晩放置した。翌日、200μlトリス(20mM pH 7)で1回洗浄後に、2% BSA(bovine serum albumin)200μlを入れて常温で2時間ブロッキング(blocking)させた後に溶液を全て捨て、200μlトリス(20mM pH 7)で3回洗浄した。前記実施例3-3のPBSで懸濁したランダムペプチド組換えファージ(投入ファージ、input phage)400μl及び2% BSA 400μlを混合してウェルにつき100μlずつ入れて30℃で1時間放置した。ウェルの溶液を全て除去し、トリス(20mM pH 7)で3回洗浄した後、0.2Mグリシン(glycine)(pH 2.2)をウェルにつき100μlずつ入れて20分間ファージを遊離させた後、1本のチューブに全て集め、1Mトリス(pH 9.0)200μlを入れて算出ファージ(output phage)を得た。
【0146】
バイオパンニングを反復するために、遊離されたファージ500μlを5mlの大腸菌(E.coli)と混ぜて37℃で200rpmで30分間培養した後、1×1010pfuヘルパーファージと最終濃度が50μg/mlになるようにアンピシリンを添加して30分間さらに培養した。その後、前記培養液を50μg/mlアンピシリン及び10μg/mlカナマイシンが含まれたSB液体培地に移し、同一条件で一晩培養してランダムペプチド組換えファージを再生産した。再生産されたランダムペプチド組換えファージを4℃で5,000rpmで10分間遠心分離して上澄液を得、上澄液にPEG/NaClを5:1[v:v]で混合して氷に1時間放置した後、4℃、13,000rpmで20分間遠心分離して上澄液を除去し、1mlのPBS(phosphate buffered saline)で沈殿物を懸濁した後、2次バイオパンニングに使用した。
【0147】
各バイオパンニング段階ごとに洗浄過程を段階別にそれぞれ3、3、4、4、5、6回(0.05% PBST)増加させる以外は、前記と同じ方法でランダム組換えファージを再生産し、バイオパンニングを行った。
【0148】
各バイオパンニングごとに投入ファージ(input phage)及び算出ファージ(output phage)数を測定するために、600nmでの吸光度が0.7(OD600=0.7)である大腸菌(E.coli)に混ぜ、アンピシリンが含まれた寒天培地(agar plate)に塗抹し、その結果を下記表4~表6に示した。
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
実施例4-2.ランダムペプチドライブラリー投入組換えファージ(input phage)を用いたELISA(enyzme-linked immunosorbent assay)方法
【0153】
前記実施例4-1のバイオパンニングの各回次別投入ファージを用いてBSA(Bovine serum albumin)及びAchRに対してELISAを行った。
【0154】
96ウェルELISAプレートに、10μg/mlのAchR又はBSAを各ウェルにつき50μlずつ入れて、4℃で一晩放置し、翌日、トリス(20mM pH 7)で3回洗浄し、PBSで希釈した2% BSAを入れて常温で2時間ブロッキングさせた後、溶液を全て捨て、トリス(20mM pH 7)で3回洗浄した。その後、前記実施例4-1の表4-6での各回次(1st、2nd、3rd、4th、5th及び6th)の投入ファージ800μlを、10% BSA200μlを混合してウェルにつき100μlずつ入れて30℃で1時間放置した。ウェルの溶液を全て除去し、トリス(20mM pH 7)で3回洗浄した後、1:1,000に希釈したHRP(horseradish peroxidase)結合抗M13抗体(HRP-conjugated anti-M13Ab,GE Healthcare社)を各ウェルにつき100μlずつ入れて30℃で1時間反応させた。その後、トリス(20mM pH 7)で3回洗浄した後、各ウェルにHRPの基質であるテトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine,TMB)溶液を100μlずつ入れて発色反応を誘導した後、100μlの1M HClを添加して反応を中止させ、450nmで吸光度(OD450)を測定した。その結果を
図4に示した。
図4に見られるように、各回次のバイオパンニングが進行されるほど、アセチルコリン/BSAのOD値が高くなっており、これは、アセチルコリン受容体に対する特異性が高いファージが成功的にスクリーニングされたことを意味する。
【0155】
<実施例5.各ライブラリーペプチドのXアミノ酸分析>
【0156】
バイオパンニング後に、各ライブラリーのペプチド配列のうち中間部位の無作為配列XXXと関連して、特にアセチルコリン受容体と高い結合力を有するアミノ酸が特定され得るかを確認した。前記実施例4のライブラリーのうち、特異性の高い各バイオパンニング6回次のファージの配列を分析した結果、5mer及び6merの両方で特定アミノ酸の反復回数が高いことを確認した。前記XXX部分を順にXYZとし、反復回数の高いペプチドのX、Y及びZの位置で個別アミノ酸出現回数を表7に示した。
【0157】
【0158】
特異にも、前記X位置はR、Q、G、V、L、S、Wと7個、Y位置はR、Q、L、I、F、V、Yと7個、Z位置はR、S、L、C、Q、T、Yと7個、のアミノ酸が、他のアミノ酸に比べて出現回数が遥かに多かった。
【0159】
<実施例6.XYZの反復配列のうち上位7個アミノ酸を組み合わせたペプチドの結合力分析>
【0160】
前記実施例5の表7によって、出現回数が多い上位7個アミノ酸を組み合わせたペプチド(上位組合せ)、及び出現回数が少ない下位13個アミノ酸を組み合わせたペプチド(下位組合せ)を、5mer、6mer-1及び6mer-2シリーズとしてそれぞれ600個ずつ合成し、各配列のアセチルコリン受容体結合力を測定した。表面プラスモン共鳴(surface plasmon resonance,SPR)分析方法を用いてAchRとの結合力(Ru;Resonance Units)を測定し、その結果を表8~13に示した。このとき、ペプチドは、10μMの濃度条件で行った。また、各シリーズの上位組合せ及び下位組合せの平均結合力を
図5~
図7に示した。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
上記の表8の5merのうち、配列番号735mer-73のRRQRR配列のアセチルコリン受容体結合力は、他の5merに比べて非常に高く現れた(結合力179)。これにより、配列番号73の拡張された6mer配列XRRQRR及びRRQRRX配列を作製してそれのアセチルコリン受容体結合力を確認し、その結果を、RRQRR配列の相対値として表14に示した。
【0168】
【0169】
上記の表14に見られるように、RRQRRの拡張配列XRRQRR及びRRQRRX配列は、大部分の配列において非常に高いアセチルコリン受容体結合力を示した。
【0170】
また、上記の表9の6merのうち、配列番号1410 6mer-1-210のRRGVRR配列のアセチルコリン受容体結合力は、他の6merに比べて非常に高く現れた(結合力184)。これにより、配列番号1410の拡張された7mer配列XRRGVRR及びRRGVRRX配列を作製してそれのアセチルコリン受容体結合力を確認し、その結果をRRGVRRの相対値として表15に示した
【0171】
【0172】
上記の表15に見られるように、RRGVRRの拡張配列XRRGVRR及びRRGVRRX配列は、大部分の配列において非常に高いアセチルコリン受容体結合力を示した。
【0173】
<実施例7.各ライブラリーにおいて結合力の高いペプチド2個と陽性対照群の結合力比較>
【0174】
前記実施例6から確認された各ライブラリーの代表ペプチドを、それぞれ2個ずつ5mer(73,311)、6mer-1(43,210)、6mer-2(136,233)を選別し、最適化前6mer、5mer-ND、シンエイクと結合力を比較した。その結果を表16及び
図8に示した。表16及び
図8に見られるように、前記実施例6において、XYZ限定された5mer及び6merの最適化された短縮ペプチドは、シンエイクだけでなく最適化前のエスペプ-2短縮ペプチドに比べも、セチルコリン受容体との結合力に優れていた。
前記最適化された短縮ペプチドのうち6mer-1-43ペプチドに対して親和力を測定し、その結果を
図9に示した。本発明に係る6mer-1-43ペプチドのアセチルコリン受容体に対する親和力は、609nMであった。
【0175】
【0176】
<実施例8.結合力の高い6のペプチドのアセチルコリン受容体作用抑制確認>
【0177】
前記実施例5でAchRに対する結合力に優れるものと確認された5mer(73,311)、6mer-1(43,210)、6mer-2(136,233)ペプチドのAchR作用抑制効果を確認した。
【0178】
アセチルコリン受容体が過発現しているTE671細胞を、10% FBSと1% P/Sが含まれたDMEM培地に、37℃、CO2 5%で培養した。約4日間、前記TE671細胞が十分に育つと、12ウェル細胞培養プレートに18mmカバースリップ(cover-slip)を敷き、培養されている細胞をトリプシンで剥がした後、ウェル当たりに2×104/cellsとなるように1mlずつ分注して4日間培養した。
【0179】
新しい12ウェル細胞培養プレートに、細胞が培養されたカバースリップを移し、HBSSバッファー997ulとFura-2-AM 3μlを分注して徐々に混ぜた後、37℃、CO
2 5%で15分間培養した。培養後にHBSSバッファー1mlで3~4回洗浄し、残っているFura-2-AMを除去し、さらに1ml分注した。チャンバーに、細胞の育っているカバースリップを嵌めた後、HBSSバッファー500μlを分注した。そして、最終濃度が400μMとなるようにニコチン濃度を合わせ、それぞれカルシウムイメージング反応を確認した。その後、ニコチン濃度は固定させておき、サンプルの濃度を調節することで、阻害される濃度を探した。対照群としてシンエイクを共に処理し、その結果を
図10~
図13に示した
【0180】
図10~
図13に見られるように、シンエイクは500μMにおいて、先行ペプチドである11merは5μMにおいてアセチルコリン受容体が阻害された。一方、本発明に係る最適化短縮ペプチド5mer(73,311)、6mer-1(43,210)、6mer-2(136,233)は、10uMにおいて阻害されることを確認した。このように新しく発掘した6merペプチドは、先行ペプチド11merに類似する阻害能を示しながら、平均シンエイク(Synake)に比べて約100倍も優れているし、5merペプチドは、約33倍優れた阻害能を示すことを確認した。
【0181】
<実施例9.ペプチド末端の修飾を用いてアセチルコリン受容体に対する阻害能評価>
【0182】
本発明に係る最適化された短縮ペプチドの末端をパルミテート(Palmitate)で修飾させ、アセチルコリン受容体に対する阻害能を評価した。前記実施例6と同じ方法でPalmitate-6mer-1-43とPalmitate-5mer-73ペプチドのアセチルコリン受容体に対する阻害能を確認した。その結果、1μMにおいて100%阻害されることを確認したし、その結果を、
図14及び
図15に示した。また、本発明に係る最適化された短縮ペプチドとパルミテートを結合させて修飾させたペプチドのアセチルコリン受容体に対する阻害能(IC
50)をシンエイクと比較して
図16に示した。
図14~
図16に見られるように、本発明に係る最適化された短縮ペプチドの末端をパルミテートで修飾させた場合に、修飾されていない短縮ペプチドに比べてアセチルコリン受容体に対する阻害能が顕著に増加していることを確認した。
【0183】
<実施例10.最適化された短縮ペプチドの細胞毒性評価>
【0184】
本発明に係る最適化された短縮ペプチドの細胞毒性を評価した。ヒトの皮膚から分離した真皮細胞である線維芽細胞(dermal fibroblast cell)を用いてMTT[(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide]法で細胞毒性を評価した。前培養した細胞を24ウェルプレート1×105cells/mlの濃度でシードし、18時間培養した。その後、培地を除去し、FBSが添加されていない培地に、希釈した試料を添加して24時間培養させた後、培地を除去し、MTT溶液を1μg/mlの濃度で加えて3時間反応させた。未反応したMTTを除去し、DMSO 100μlを加えて形成された反応物(formazane)を溶解させ、ELISAリーダーで540nmでの吸光度を測定して評価した。
【0185】
図17に見られるように、6mer-1-43(6merペプチド)と5mer-73(5merペプチド)、Pal-6mer-1-43、Pal-5mer-73ペプチドの皮膚の真皮細胞に及ぼす毒性程度をMTT法で測定した結果、100nM~100uMの濃度で両ペプチドとも細胞毒性がないものと評価された。
【0186】
<実施例11.ペプチド長さによる皮膚透過率分析>
【0187】
フランツ拡散セルシステムを用いて、先行ペプチドである11merと本発明の最適化された短縮ペプチドの皮膚透過率を比較した。
【0188】
フランツ拡散セルシステムのレセプターチャンバーにはPBS(0.05%ポリソルベート80含有、pH 7.4)を5mlを入れた後、レセプターチャンバーとドナーチャンバーとの間に、人工皮膚であるセルロースアセテート膜(cellulose acetate membrane)を1枚又は2枚入れて固定させ、フランツセルのドナーチャンバーに各既存11merと最適化された5mer-73(RRQRR)ペプチドを添加した。レセプターチャンバーの条件は、37℃、600rpmに調節したし、0.5、1、2、4、8、12、18、24時間に試料を500μlずつ回収し、時間別に皮膚を透過して出た薬物の量をHPLCで測定し、その結果を
図18に示した。
図18に見られるように、本発明に係る最適化短縮ペプチド5merの皮膚透過率は、8時間後に66.87%が透過されたが、11merは全く透過されていないことを確認した。
【0189】
上記のように、本発明の最適化短縮ペプチド5merのアセチルコリン受容体短縮ペプチドは、先行研究において優れたアセチルコリン受容体阻害効果を示した11merペプチドと類似のアセチルコリン受容体抑制活性を示しながらも、ペプチド長さを半分に短縮させることにより、皮膚透過率を劇的に高め、生産コストを画期的に低減させることができる。
【0190】
<実施例12.ペプチド化粧品剤形の目尻のシワの臨床効能評価>
【0191】
本発明に係る最適化短縮ペプチドの目尻の皮膚シワに対する臨床効能を評価した。本発明に係る最適化短縮ペプチドが含まれた試験製品及び対照群を、下記の表17のように製造し、人体適用試験を行った。選定条件を満たし、選定除外条件に該当しない被験者21人を募集したし、1人が試験参加同意撤回によって脱落し、最終20人で試験を行った。全ての測定は、空気の移動と直射光線がない恒温恒湿条件(22±2℃、50±10% RH)で、被験者が少なくとも30分以上安定を取った後に実施した。選定された被験者は、製品使用前(0週)に臨床機関を訪問し、目尻のキメ(シワ)を測定し、人口学的調査を行った。6週間1日2回(朝、夕方)、試験製品を塗布したし、製品使用後3週目、6週目にもう一度臨床機関を訪問し、製品使用前(0週)と同一に評価を受けた。
【0192】
【0193】
評価項目として、シワの全般的サイズ(Overall size)、シワ深さ(Depth)、及び最大シワ深さ(Maximum depth)を測定したし、ANTERA 3D
(R) CS(Miravex,Ireland)で撮影して目尻の皮膚シワを分析し、その結果を0週目と比較し、表18及び
図19に示した。対照群の場合、評価項目のいずれにおいても有意の差は見られなかった。
【0194】
【0195】
上記の表18及び
図19に示すように、目尻のシワの全般的サイズ(Overall size)は、製品使用前に比べて使用3週目に19.1%減少(p<0.001)、6週目に31.5%減少(p<0.001)したし、深さ(Depth)は、製品使用前に比べて、使用3週目に21.0%減少(p<0.001)、6週目に30.1%減少(p<0.001)したし、最大深さ(Maximum depth)は、製品使用前に比べて、使用3週目に14.2%減少(p<0.001)、6週目に27.9%減少(p<0.001)した。
【0196】
<実施例13.ペプチド化粧品剤形の弾力臨床効能評価>
【0197】
前記実施例12と同じ方法で皮膚弾力(Ur/Ue)に対して臨床効能を評価した。真皮緻密度は、超音波機器であるDUB
(R) Skinscanner(tpm,Germany)を用いて測定した。製品使用前(0週)、製品使用後3週目、6週目に、被験者の頬部位の真皮緻密度を測定し、前後比較してその結果を
図20に示した。
【0198】
図20に見られるように、皮膚弾力(Ur/Ue)は、製品使用前に比べて、使用3週目に6.9%増加(p<0.001)、6週目に17.8%増加(p<0.001)したし、真皮緻密度は製品使用前に比べて、製品使用3週目に18.9%増加(p<0.001)、6週目に28.5%増加(p<0.001)した。
【0199】
<実施例14.ペプチド化粧品剤形の額シワ臨床効能評価>
【0200】
本発明に係る最適化短縮ペプチド化粧品剤形の額シワに対して臨床効能を評価した。製品使用前に、額シワの部位をアンテラ3D(Antera 3D)及びDSLRで撮影した。その後、前記表17の試験製品及び対照群を吸収させたガーゼ(5cm×5cm)を額シワ部位に8時間貼布した後、ガーゼ除去後に、40分、及び2時間40分が経過した時点に、額シワ部位をアンテラ3D(Antera 3D)及びDSLRで撮影し、その結果を
図21に示した。
【0201】
図21に見られるように、製品除去前と比較して、後に額シワの改善効果が顕著に現れたし、2時間以上経過後にも、シワ改善効果が維持されることを確認した。
【配列表】
【国際調査報告】