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特表2024-529973発現系およびこれを含む核酸ベースの薬学組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】発現系およびこれを含む核酸ベースの薬学組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/44 20060101AFI20240806BHJP
   C12N 15/40 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C12N15/44
C12N15/40 ZNA
C12N15/63 Z
A61P31/16
A61P7/04
A61K31/7105
A61K45/00
A61P37/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505218
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 KR2022010978
(87)【国際公開番号】W WO2023008881
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0100099
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0177976
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】524035726
【氏名又は名称】エスエムエル バイオファーマ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SML BIOPHARM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ジェ ファン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】バン,ユ ジン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB092
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA13
4C086ZA53
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
翻訳開始活性を有する翻訳調節因子と、該翻訳調節因子に作動可能に連結され、インフルエンザウイルスまたは重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)の免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドからなるコーディング領域を含む核酸分子が開示される。核酸分子または核酸分子が挿入された発現系は、インフルエンザまたはSFTSを治療または予防するための薬学組成物、例えばmRNAワクチンや遺伝子治療プラットフォームとして活用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロポニンT1(troponin T1,TNNT1)由来の翻訳調節因子と、
前記翻訳調節因子に作動可能に連結されるコーディング領域を含み、
前記コーディング領域は、インフルエンザウイルスまたは重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)の免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドを含む核酸分子。
【請求項2】
前記翻訳調節因子は、前記コーディング領域の上流に位置する第1翻訳調節因子および前記コーディング領域の下流に位置する第2翻訳調節因子を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記第1翻訳調節因子は、配列識別番号:1のヌクレオチドまたはその転写物からなる、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記第2翻訳調節因子は、配列識別番号:2のヌクレオチドまたは転写物からなる、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記インフルエンザウイルスの免疫原は、前記インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(hemagglutinin)またはその断片である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記インフルエンザウイルスの免疫原は、配列識別番号:3のアミノ酸からなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記インフルエンザウイルスの免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドは、配列識別番号:4のヌクレオチドまたはその転写物からなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの免疫原は、前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの糖タンパク質(glycoprotein N)またはその断片である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの免疫原は、配列識別番号:5、配列識別番号:7および配列識別番号:9から成る群から選択されるアミノ酸からなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドは、配列識別番号:6、配列識別番号:8および配列識別番号:10から成る群から選択されるヌクレオチドまたはその転写物からなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項11】
前記核酸分子は、RNA形態の核酸分子である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記核酸分子は、前記コーディング領域に作動可能に連結される転写調節因子、および前記転写調節因子の下流に位置するポリアデニル化信号配列またはポリアデノシン配列のうち少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項13】
核酸分子を含む組換え発現ベクターであって、
前記核酸分子は、トロポニンT1(troponin T1,TNNT1)由来の翻訳調節因子と、
前記翻訳調節因子に作動可能に連結されるコーディング領域を含み、
前記コーディング領域は、インフルエンザウイルスまたは重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)に由来する免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドを含む組換え発現ベクター。
【請求項14】
前記翻訳調節因子は、前記コーディング領域の上流に位置する第1翻訳調節因子と、前記コーディング領域の下流に位置する第2翻訳調節因子を含む、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項15】
前記第1翻訳調節因子は、配列識別番号:1のヌクレオチドまたは転写物からなる、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項16】
前記第2翻訳調節因子は、配列識別番号:2のヌクレオチドまたは転写物からなる、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項17】
前記インフルエンザウイルスの免疫原は、前記インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(hemagglutinin)またはその断片である、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項18】
前記インフルエンザウイルスの免疫原は、配列識別番号:3のアミノ酸からなる、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項19】
前記インフルエンザウイルスの免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドは、配列識別番号:4のヌクレオチドまたはその転写物からなる、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項20】
前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの免疫原は、前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの糖タンパク質(glycoprotein N)またはその断片である、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項21】
前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの免疫原は、配列識別番号:5、配列識別番号:7および配列識別番号:9から成る群から選択されるアミノ酸からなる、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項22】
前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドは、配列識別番号:6、配列識別番号:8および配列識別番号:10から成る群から選択されるヌクレオチドまたはその転写物からなる、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項23】
前記核酸分子は、RNA形態の核酸分子である、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項24】
前記核酸分子は、前記コーディング領域に作動可能に連結される転写調節因子および前記転写調節因子の下流に位置するポリアデニル化信号配列またはポリアデノシン配列のうち少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含む、請求項13に記載の組換え発現ベクター。
【請求項25】
請求項1に記載の核酸分子または請求項1に記載の核酸分子が挿入された発現コンストラクト(construct)を有効成分として含むインフルエンザまたは重症熱性血小板減少症候群を治療または予防するための薬学組成物。
【請求項26】
前記薬学組成物は、免疫増強剤、核酸安定化剤および脂質ナノ粒子のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項25に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2021年7月29日付で出願した韓国特許出願第10-2021-0100099号および2021年12月13日付で出願した韓国特許出願第10-2021-0177977号の優先権の利益を主張する。
本開示は、発現系に関し、より詳細には、ウイルスの免疫原発現系およびこれを用いた核酸ベースの薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトに広がる様々な感染性疾患は、近代以前からよく知られており、時々これらの感染性疾患は、深刻な大流行(pandemic)につながった。中世ヨーロッパで流行した黒死病によりヨーロッパ人口の多くが死亡した。このような感染性疾患の大流行は、現代にも続いている。20世紀初頭には、スペインインフルエンザによって第一次世界大戦で戦闘で死亡した人員より多くの人員が死亡したことが知られている。また、2019年に中国の武漢で発生したCOVID-19は、様々な変異を起こし、現在までも世界的な大流行をもたらしている。
【0003】
このような感染性疾患を予防するための戦略としてワクチンが広く使用されている。伝統的に製造されたワクチンは、感染性疾患を引き起こすウイルスまたはバクテリアの抗原を弱毒化、不活性化するタンパク質ワクチンである。伝統的な方式で製造されるワクチンは、多くの感染性疾患から効果的にヒトを保護したが、限界も存在する。特に、後天性免疫反応を回避できる様々な感染性病原菌に対しては、効果的なワクチンの開発が困難である。また、ほとんどの新しいワクチンの開発における大きな困難は、効果よりは、ワクチンの迅速な開発と大規模な配布の必要性である。これより、核酸を用いたワクチン開発は、良い選択肢となった。これにより、2019年に発生したCOVID-19の大流行の過程でも核酸ベースのmRNAワクチンは、迅速に開発され、各国の緊急使用承認を受けて、世界中でmRNAワクチン接種が行われたことがある。したがって、COVID-19に加えて、感染性疾患を効率的に予防できる核酸ベースのワクチンプラットフォームを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、感染性疾患と関連する免疫原タンパク質またはペプチドを効率的に発現させることができる核酸分子および組換え発現ベクターと、これを用いた核酸ベースの薬学組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本開示は、トロポニンT1(troponin T1,TNNT1)由来の翻訳調節因子と、該翻訳調節因子に作動可能に連結されるコーディング領域を含み、前記コーディング領域は、インフルエンザウイルスまたは重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)の免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドを含む核酸分子を提供する。
【0006】
前記翻訳調節因子は、前記コーディング領域の上流に位置する第1翻訳調節因子および/または前記コーディング領域の下流に位置する第2翻訳調節因子を含んでもよい。
一例として、前記第1翻訳調節因子は、配列識別番号:1のヌクレオチドまたはその転写物からなってもよく、前記第2翻訳調節因子は、配列識別番号:2のヌクレオチドまたはその転写物からなってもよい。
【0007】
例示的な態様において、前記インフルエンザウイルスの免疫原は、前記インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(hemagglutinin)またはその断片でありうる。
前記インフルエンザウイルスの免疫原は、配列識別番号:3のアミノ酸からなってもよい。
前記インフルエンザウイルスの免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドは、配列識別番号:4のヌクレオチドまたはその転写物からなってもよい。
【0008】
選択的な態様において、前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの免疫原は、前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの糖タンパク質(glycoprotein N)またはその断片でありうる。
前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの免疫原は、配列識別番号:5、配列識別番号:7および配列識別番号:9から成る群から選択されるアミノ酸からなってもよい。
【0009】
前記重症熱性血小板減少症候群ウイルスの免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドは、配列識別番号:6、配列識別番号:8および配列識別番号:10から成る群から選択されるヌクレオチドまたはその転写物からなってもよい。
一例として、前記核酸分子は、RNA形態の核酸分子でありうる。
前記核酸分子は、前記コーディング領域に作動可能に連結される転写調節因子、および前記転写調節因子の下流に位置するポリアデニル化信号配列またはポリアデノシン配列のうち少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含んでもよい。
【0010】
他の態様において、本開示は、前述した核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。
さらに他の態様において、本開示は、前述した核酸分子または前記核酸分子が挿入された発現コンストラクト(construct)を有効成分として含むインフルエンザまたは重症熱性血小板減少症候群を治療または予防するための薬学組成物を提供する。
例えば、薬学組成物は、ワクチン組成物でありうる。
【0011】
選択的に、前記薬学組成物は、免疫増強剤、核酸安定化剤および脂質ナノ粒子のうち少なくとも1つをさらに含んでもよい。
さらに他の態様において、本開示は、薬学的に許容される前述した核酸分子または前記核酸分子が挿入された発現コンストラクトを被対象体(subject)に投与する段階を含むインフルエンザまたは重症熱性血小板減少症候群を治療または予防するための方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の核酸分子および前記核酸分子が挿入された発現系を通してインフルエンザウイルスまたは重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)に由来するタンパク質および/またはペプチドを効率的に発現させることができる。
本開示の核酸分子および/または発現コンストラクト(construct)は、核酸ベースの薬学的活性素材として活用し、インフルエンザウイルスが引き起こすインフルエンザまたは重症熱性血小板減少症候群(SVTS)を治療および/または予防するための薬学組成物として活用することができる。核酸分子および/または発現コンストラクトを生体に投与し、生体内でTh1免疫反応とTh2免疫反応を効率的に誘導することができる。
【0013】
したがって、本開示による核酸分子および/またはこれを含む発現コンストラクトは、インフルエンザウイルスが引き起こすインフルエンザまたはSFTSを効率的に予防または治療できる核酸ベースのワクチンのような薬品の有効成分として活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の例示的な実施形態によって、感染性疾患を引き起こすタンパク質またはペプチドを効率的に発現させることができる核酸分子の構成を概略的に示した模式図である。
図2】本開示の例示的な実施例によって、ヘマグルチニン(HA)をコード化した核酸分子で免疫させたマウスの血清から生成された免疫グロブリンをELISAで測定した結果を示すグラフである。
図3】本開示の例示的な実施例によって、ヘマグルチニン(HA)をコード化した核酸分子で免疫させたマウスの血清から生成された免疫グロブリンをELISAで測定した結果を示すグラフである。
図4】本開示の例示的な実施例によってHAをコード化した核酸分子で免疫させたマウスの血清から生成された免疫グロブリンを連続的に希釈し、ELISAで測定した結果を示すグラフである。
図5】本開示の例示的な実施例によってHAをコード化した核酸分子で免疫させたマウスの血清を用いてHA抑制(HI)assayで血球凝集を抑制した希釈倍数を測定した結果を示すグラフである。
図6】本開示の例示的な実施例によって、HAをコード化した核酸分子で免疫させたマウスの血清を用いてMicro-neutralization assayでウイルス力価を測定し、中和能力を評価した結果を示すグラフである。
図7】本開示の例示的な実施例によって、HAをコード化した核酸分子で免疫させたマウスの脾臓細胞で抗原特異的IFN-ガンマを生成する細胞個数をELISPOTで測定した結果を示すグラフである。
図8】本開示の例示的な実施例によって、HAをコード化した核酸分子で免疫させたマウスの脾臓細胞で抗原特異的IFN-ガンマを生成するCD4 T細胞およびCD8 T細胞の個数をFACSを用いたフローサイトメトリー結果を示すグラフである。
図9】本開示の例示的な実施例によって、HAをコード化した核酸分子で免疫させたマウスの脾臓細胞で抗原特異的IFN-ガンマを生成するCD4 T細胞およびCD8 T細胞の個数をFACSを用いたフローサイトメトリー結果を示すグラフである。
図10】本開示の例示的な実施例によって、SFTSVの糖タンパク質Nをコード化した核酸分子の発現の有無を確認するためのwestern-blotting結果を示す写真である。
図11】本開示の例示的な実施例によって、SFTSVの糖タンパク質Nをコード化した核酸分子で免疫させたマウスの血清から生成された免疫グロブリンをELISAで測定した結果を示すグラフである。
図12】本開示の例示的な実施例によって、SFTSVの糖タンパク質Nをコード化した核酸分子で免疫させたマウスの血清から生成された免疫グロブリンをELISAで測定した結果を示すグラフである。
図13】本開示の例示的な実施例によって、SFTSVの糖タンパク質Nをコード化した核酸分子で免疫させたマウスの脾臓細胞で抗原特異的IFN-ガンマを生成する細胞個数をELISPOTで測定した結果を示すグラフである。
図14】本開示の例示的な実施例によって、SFTSVの糖タンパク質Nをコード化した核酸分子で免疫させたマウスの血清で中和抗体力価を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
用語の定義
本明細書において、用語「アミノ酸」は、最も広い意味で使用され、自然発生L-アミノ酸または残基を含むものと意図される。アミノ酸は、D-アミノ酸だけでなく、化学的に修飾されたアミノ酸、例えば、アミノ酸類似体、タンパク質に通常的に混入しない自然発生アミノ酸、例えば、ノルロイシン、およびアミノ酸の特徴であると当業界に知られている特性を有する化学的に合成された化合物を含む。例えば、天然PheまたはProと同じペプチド化合物の立体形態の制限を許容するフェニルアラニンまたはプロリンの類似体または模倣体がアミノ酸の定義内に含まれる。このような類似体および模倣体は、本明細書においてアミノ酸の「機能的均等物」として称される。
【0016】
例えば、標準固相合成技術によって合成された合成ペプチドは、遺伝子によってコード化される(encoded)アミノ酸に制限されず、これによって、与えられたアミノ酸に対してより広範囲に様々な置換を許容する。遺伝子コードによってコード化されていないアミノ酸は、本明細書において「アミノ酸類似体」として称され得る。例えば、アミノ酸類似体は、GluおよびAspに対する2-アミノアジピン酸(Aad);GluおよびAspに対する2-アミノピメリン酸(Apm);Met、Leuおよび他の脂肪族アミノ酸に対する2-アミノ酪酸(Abu);Met、Leuおよび他の脂肪族アミノ酸に対する2-アミノヘプタン酸(Ahe);Glyに対する2-アミノ酪酸(Aib);Val、LeuおよびIleに対するシクロヘキシルアラニン(Cha);ArgおよびLysに対するホモアルギニン(Har);Lys、ArgおよびHisに対する2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap);Gly、ProおよびAlaに対するN-エチルグリシン(EtGly);Gly、ProおよびAlaに対するN-エチルグリシン(EtGly);AsnおよびGlnに対するN-エチルアスパラギン(EtAsn);Lysに対するヒドロキシリシン(Hyl);Lysに対するアロヒドロキシリシン(AHyl);Pro、SerおよびThrに対する3-(および4-)ヒドロキシプロリン(3Hyp、4Hyp);Ile、LeuおよびValに対するアロイソロイシン(AIle);Argに対する4-アミジノフェニルアラニン;Gly、ProおよびAlaに対するN-メチルグリシン(MeGly、サルコシン);Ileに対するN-メチルイソロイシン(MeIle);Metおよび他の脂肪族アミノ酸に対するノルバリン(Nva);Metおよび他の脂肪族アミノ酸のためのノルロイシン(Nle);Lys、ArgおよびHisに対するオルニチン(Orn);Thr、AsnおよびGlnに対するシトルリン(Cit)およびメチオニンスルホキシド(MSO);およびPheに対するN-メチルフェニルアラニン(MePhe)、トリメチルフェニルアラニン、ハロ-(F-、Cl-、Br-またはI-)フェニルアラニンまたはトリフルオリルフェニルアラニンを含む。
【0017】
本明細書で用語「ペプチド」は、自然的に存在するものから分離したり、組換え技術(recombinant technique)によってまたは化学的に合成されたタンパク質、タンパク質断片およびペプチドを全部含む。例えば、本開示のペプチドは、少なくとも5個、一例として、少なくとも10個のアミノ酸で構成されている。
特定の実施形態において、化合物の変異体、例えば、1つ以上のアミノ酸置換を有するペプチド変異体が提供される。本明細書において「ペプチド変異体(peptide variants)」とは、1つまたはそれ以上のアミノ酸がペプチドのアミノ酸配列に置換(substitutions)、欠失(deletions)、添加(additions)および/または挿入(insertions)されており、元のアミノ酸で構成されたペプチドとほぼ同じ生物学的機能を発揮するものをいう。ペプチド変異体は、元のペプチドと70%以上、好ましくは、90%以上、より好ましくは、95%以上の同一性(identity)を有していなければならない。
【0018】
このような置換体として「保存性」と知られたアミノ酸置換体が含まれ得る。変異体は、また、非保存性(nonconservative)の変化を含むこともできる。一例として、変異体ポリペプチドの配列は、5個またはそれ以下のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入されることによって、元の配列と異なる。変異体は、また、ペプチドの免疫原性(immunogenicity)、二次構造(secondary structure)および水治療性(hydropathic nature)に最小の影響を与えるアミノ酸の欠失または付加によって変化することができる。
【0019】
「保存性」置換とは、1つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたときにも、ポリペプチドの二次構造および水治療性(hydropathic nature)等の特性に大きな変化がないことを意味する。アミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、極性(polarity)、電荷(charge)、水溶性(solubility)、疎水性(hydrophobicity)、親水性(hydrophilicity)および/または両親媒性(amphipathic nature)等の類似性を基礎にして得られる。
【0020】
例えば、アミノ酸は、共通の側鎖特性によって、a)疎水性(ノルロイシン、メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)b)中性親水性(システイン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン)、c)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、d)塩基性(ヒスチジン、リシン、アルギニン)、e)鎖方向に影響を及ぼす残基(グリシン、プロリン)、f)芳香族(トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン)に分類され得る。保存的置換は、これらそれぞれのクラス中の1つのメンバーを同じクラスの他のメンバーに交換することを伴う。
【0021】
アミノ酸側鎖置換体のサイズ、形態および種類に対する分析によって、アルギニン、リシンとヒスチジンは、全部正電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシンとセリンは、類似のサイズを有し;フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは、類似の形態を有することが分かる。したがって、このような考慮事項に基づいて、アルギニン、リシンとヒスチジン;アラニン、グリシンとセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは、生物学的に機能的均等物といえる。
【0022】
変異を導入するにあたって、アミノ酸の疎水性インデックス(hydropathic index)が考慮され得る。それぞれのアミノ酸は、疎水性と電荷によって疎水性インデックスが付与されている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。
【0023】
タンパク質の相互的な生物学的機能(interactive biological function)を付与するにあたって、疎水性アミノ酸インデックスは非常に重要である。類似の疎水性インデックスを有するアミノ酸で置換する場合、類似の生物学的活性を保有できることは、公知の事実である。疎水性インデックスを参照して変異を導入させる場合、好ましくは、±2以内、より好ましくは、±1以内、さらに好ましくは、±0.5以内の疎水性インデックスの差異を示すアミノ酸の間に置換をする。
【0024】
なお、類似の親水性値(hydrophilicity value)を有するアミノ酸間の置換が均等な生物学的活性を有するタンパク質を招くこともよく知られている。次のような親水性値がそれぞれのアミノ酸残基に付与されている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5± 1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);リシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。親水性値を参照して変異を導入させる場合、好ましくは、± 2以内、より好ましくは、±1以内、より好ましくは、±0.5以内の親水性値の差異を示すアミノ酸の間に置換をする。
【0025】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質におけるアミノ酸交換は、当該分野においてよく知られている(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,New York,1979)。最も通常的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0026】
一般的に、本明細書上に言及されているペプチド(融合タンパク質を含む)およびポリヌクレオチドは、分離した(isolated)ものである。「分離した(isolated)」ペプチドまたはポリヌクレオチドとは、元の環境から除去されたものである。例えば、自然状態で存在するタンパク質は、その状態で一緒に存在する物質の全部あるいは一部を除去することによって分離されるものである。このようなポリペプチドは、少なくとも90%以上の純度を有しなければならず、好ましくは、95%、より好ましくは、99%以上の純度を有しなければならない。ポリヌクレオチドは、ベクター内でクローニングさせることによって分離される。
【0027】
本明細書において用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、交換可能に使用され、任意の長さのヌクレオチドの重合体を指し、DNA(例えば、cDNA)およびRNA分子を包括的に含む。核酸分子の構成単位である「ヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基、および/またはその類似体、またはDNAまたはRNAポリメラーゼによって、または合成反応によって重合体内に混入しうる任意の基質でありうる。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、糖または塩基が修飾された類似体(analogue)、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびその類似体を含んでもよい。
【0028】
例えば、ヌクレオチドは、5-修飾シチジンおよび/または5-修飾ウリジンを含んでもよい。5-修飾シチジンは、5-ハロシチジン(例えば、5-ヨードシチジンまたは5-ブロモシチジン)、5-アルキニルシチジンおよびまたは5-ヘテロシクリルウリジンを含む。5-修飾ウリジンは、5-ハロウリジン(例えば、5-ヨードウリジンまたは5-ブロモウリジン)、5-アルキニルウリジンおよび/または5-ヘテロシクリルウリジンを含んでもよい。選択的に、5-修飾ウリジンは、2-デオキシリボースを含有するヌクレオシドである。
【0029】
ヌクレオチドにおける変異は、タンパク質で変異をもたらさないものもある。このような核酸は、機能的に均等なコドンまたは同じアミノ酸をコード化するコドン(例えば、コドンの縮退性によって、アルギニンまたはセリンに対するコドンは、6個である)、または生物学的に均等なアミノ酸をコード化するコドンを含む核酸分子を含む。また、ヌクレオチドにおける変異がタンパク質自体に変化をもたらすこともできる。タンパク質のアミノ酸に変化をもたらす変異である場合にも、本開示のタンパク質とほぼ同じ活性を示すものが得られる。
【0030】
本開示の核酸分子またはポリヌクレオチドが有する特徴、例えば、ワクチンおよび/または免疫増強剤としての効果を有する範囲で、本開示のペプチドおよび核酸分子は、配列リストに記載されたアミノ酸配列または塩基配列に限定されないことは、通常の技術者に明確である。例えば、発現調節配列に作動可能に連結されるコーディング領域および/またはこれから発現する組換えタンパク質/ペプチドに含まれ得る生物学的機能的均等物は、前述したコーディング領域および/組換えタンパク質と均等な生物学的活性を発揮する塩基配列の変異を有するポリヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列の変異を有するタンパク質/ペプチドでありうる。
【0031】
前述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すると、本開示によるペプチドおよび/またはタンパク質をコード化する核酸分子は、配列リストに記載された配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むと解される。前記の実質的な同一性は、上記した本開示の配列と任意の他の配列を最大限対応するようにアラインし、当業界において通常用いられるアルゴリズムを用いてアラインした配列を分析した場合に、最小61%の相同性、より好ましくは、70%の相同性、さらに好ましくは、80%の相同性、最も好ましくは、90%の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は、当業界においてよく知られている。
【0032】
本明細書において使用された用語「ベクター」は、宿主細胞に伝達が可能であり、好ましくは、1つ以上の目的遺伝子または配列の発現が可能に作られた構造物を意味する。また、特定ベクターは、ベクターが作動可能に連結されたORF形態の遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターが本明細書において「組換え発現ベクター」(または簡単に、「組換えベクター」)と称される。
【0033】
本明細書において用語「発現調節配列(expression control/regulation sequence)」または「発現調節因子(expression control/regulation element)」は、核酸の転写(transcription)および/または転写物(transcript)形態の核酸から翻訳(translation)を調節する核酸配列を意味し得る。なお、用語「転写調節配列(transcription control/regulation sequence)」または「転写調節因子(transcription control/regulation element)」は、核酸の転写を調節する核酸配列を意味する。転写調節配列は、構成的プロモーター(constitutive promoter)または誘導性プロモーター(inducible promoter)のようなプロモーターまたはエンハンサー(enhancer)等がある。
【0034】
また、転写物形態の核酸からタンパク質またはペプチドへの翻訳を調節する核酸配列に対して「翻訳調節配列(translation control/regulation sequence)」または「翻訳調節因子(translation control/regulation element)」という用語が使用され得る。これらの発現調節配列/因子、転写調節配列/因子および/または翻訳調節配列/因子は、発現する配列、例えば、転写または翻訳される核酸配列に作動可能に連結(operatively linked)されている。
【0035】
本明細書において用語「作動可能に連結された(operatively linked)」は、核酸の発現調節配列(例:プロモーター、信号配列、リボソーム結合部位、転写終結配列など)と他の核酸配列間の機能的な結合を意味し、これによって、前記調節配列は、前記他の核酸配列の転写および/または翻訳を調節する。
【0036】
核酸分子
本開示は、発現調節配列に作動可能に連結された免疫原性標的配列の発現効率が向上し、これによって、このような発現系を用いて核酸ベースのワクチンとして活用することができるという点に基づく。図1は、本開示の例示的な実施形態によって、感染性疾患を引き起こすタンパク質またはペプチドを効率的に発現させることができる核酸分子またはポリヌクレオチドの構成を概略的に示す模式図である。
【0037】
図1に示されたように、核酸分子は、発現調節因子(expression control element,ECE)と、発現調節因子(ECE)に作動可能に連結され、ウイルス由来の免疫原をコード化するオープンリーディングフレーム (open reading frame,ORF)からなるコーディング領域(CR)を含んでもよい。
発現調節因子(ECE)は、トロポニン1(troponin T1,TNNT1,slow skeletal muscle)由来の翻訳調節因子(translation control element,TLCE)を含んでもよい。コーディング領域(CR)は、翻訳調節因子(TLCE)に作動可能に連結され、インフルエンザウイルス(Influenza virus)および/または重症熱性血小板減少症候群ウイルス(Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus,SFTSV)由来の免疫原をコード化する(encoding)ORFからなってもよい。
【0038】
一態様において、発現調節因子(ECE)は、コーディング領域(CR)に作動可能に連結され、翻訳調節因子(TLCE)の上流に位置する転写調節因子(transcription control element,TCCE)をさらに含んでもよい。また、核酸分子は、発現調節因子(ECE)の下流、例えば、転写調節因子(TLCE)の下流に位置するポリアデニル化信号配列またはポリアデノシン配列(PA)のうち少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含んでもよい。
【0039】
翻訳調節因子(TLCE)は、ORF形態で挿入されるコーディング領域(CR)に作動可能に連結されるTNNT1由来のヌクレオチドを含んでもよい。例えば、翻訳調節因子(TLCE)は、コーディング領域(CR)の上流に位置する第1翻訳調節因子(U-TLCE)および/またはコーディング領域(CR)の下流に位置する第2翻訳調節因子(D-TLCE)を含んでもよい。
【0040】
一例として、第1翻訳調節因子(U-TLCE)は、キャップ依存性(cap dependent)翻訳開始活性を有する5’非翻訳領域(5’-Untranslated Region、5’-UTR)の全部または一部であってもよく、第2翻訳調節因子(D-TLCE)は、第1翻訳調節因子(U-TLCE)に対応する3’-UTRの全部または一部でありうる。
【0041】
ほとんどの真核細胞のmRNAは、5’末端に7-methyl-guanosine(cap)を有するが、タンパク質合成開始複合体(translation initiation complex)が5’末端に位置するcapを認識し、開始コドンであるAUGまで進めてタンパク質合成を開始する。すなわち、mRNAの5’末端に位置するcap構造は、タンパク質合成を開始するだけでなく、nucleaseの作用からmRNAの破壊を防ぐ。
【0042】
試験管内(in vitro)で転写の最初の過程は、pDNA(plasmid DNA)に制限酵素を処理して線形化させた後、適切なRNA重合酵素を用いて製造されたmRNAにm7G(5’)-ppp(5’)G(これをregular cap analog)を付けてcapped mRNAを作成して使用することができる。選択的にcap analogなしで試験管内転写を行い、商業的に利用可能なvaccinia virus capping酵素を用いてcap反応を行う方法があり、このようなcapの逆方向反応を防ぐ’anti-reverse’ cap analog(ARCA)を使用することができる。ARCAを導入する場合、メチル化が起こったguanosineの3’-O-methylationのみが、メチル化が起こらないguanosineのnucleotideに結合することができる。
【0043】
例えば、第1翻訳調節因子(U-TLCE)および/または第2翻訳調節因子(D-TLCE)は、それぞれ動物、例えば、哺乳綱、具体的には、霊長目、より具体的には、ヒトに由来するキャップ依存性翻訳開始活性を有するヌクレオチドからなってもよい。例えば、第1翻訳調節因子(U-TLCE)は、ヒトTNNT1由来の5’-UTRの一部であってもよい配列識別番号:1のヌクレオチドまたはその転写物からなってもよく、第2翻訳調節因子(D-TLCE)は、TNNT1由来の3’-UTRの一部であってもよい配列識別番号:2のヌクレオチドまたはその転写物からなってもよいが、これに限定されない。
【0044】
一例として、第1翻訳調節因子(D-TLCE)は、コーディング領域(CR)から発現するペプチドおよび/またはタンパク質の翻訳過程で翻訳開始複合体(translation initiation complex)が結合する領域であり、コーディング領域(CR)の翻訳を誘導するcis-actingヌクレオチドでありうる。
第1翻訳調節因子(U-TLCE)がキャップ依存性翻訳開始活性を有するヌクレオチドの全部または一部である場合、核酸分子は、ORF形態でコーディング領域(CR)に挿入されるウイルス由来の免疫原の全部または一部をコード化する標的遺伝子の発現効率を向上させるために、コーディング領域(CR)の下流に位置しうる第2翻訳調節因子(D-TLCE)を含んでもよい。第1翻訳調節因子(U-TLCE)と、第2翻訳調節因子(D-TLCE)は、コーディング領域(CR)を形成するインフルエンザウイルスおよび/またはSFTSVで免疫原として機能しうるペプチドをコード化するORFまたはその転写物(transcript)の翻訳効率を向上させ、転写物であるmRNAが細胞内で破壊されずに安定的に維持されるのに重要な役割をする。
【0045】
一例として、第1翻訳調節因子(U-TLCE)は、コーディング領域(CR)の上流に位置することができ、第2翻訳調節因子(D-TLCE)は、コーディング領域(CR)の下流に位置することができる。言い換えれば、コーディング領域(CR)は、第1翻訳調節因子(U-TLCE)と第2翻訳調節因子(D-TLCE)の間に位置することができ、インフルエンザウイルスまたはSFTSV由来のペプチド、例えば、感染性免疫原をコード化する標的配列(target sequence)を形成する。
【0046】
インフルエンザウイルスは、マイナス鎖RNA(negative-sense RNA)ウイルスであり、A、B、C、Dの4種類がある。それらのうちヒトに主に病気を起こすものは、AとBタイプである。Aタイプは、ウイルス表現抗原であるhemagglutinin(HA)とneuraminidase(NA)の組み合わせに区分される。世界的に毎年季節性インフルエンザ患者のうち3~5百万人は、深刻な症状を示し、29万~65万人は、死亡に達する。効果的な治療剤は、まだ存在せず、ワクチンを用いて予防することが最善である。不活性化インフルエンザワクチンは、1945年に米国で初めて承認され、現在は、タンパク質ワクチンとvirus-like particle(VLP)などを用いた様々な方法でインフルエンザワクチンの開発が行われている。
【0047】
例示的な態様において、コーディング領域(CR)にコード化されるインフルエンザウイルスの免疫原は、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(Hemagglutin,HA)またはその断片でありうる。例えば、インフルエンザウイルスの免疫原であるヘマグルチニンは、配列識別番号:3のアミノ酸からなってもよい。一例として、インフルエンザウイルスの免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドは、配列識別番号:4のヌクレオチドまたはその転写物からなってもよいが、これに限定されない。
【0048】
重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome,SFTS)は、SFTSVによる疾患であり、2013年には、韓国と日本でも最初の患者が報告された。韓国の場合、2013年から2017年まで605件の患者のうち死亡率は、平均20.9%に至っている。ウイルスに感染したときの症状は、主に高熱、疲労感、頭痛、筋肉痛、嘔吐、下痢などであり、重症の場合、血小板が減少し、腎臓、肝、心臓を含む様々な臓器の複合的な機能低下をもたらし、ひどい場合、死亡に至る。
【0049】
SFTSは、ほとんどが重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)を有するダニによる感染によって引き起こされ、野外活動が多く、ダニが主に棲息する草に接触することが多い農業や林業従事者においてたくさん発生する。韓国の場合、収穫時期である7月から10月の間に多くの感染が報告されている。ダニによって感染するが、他の動物宿主であるヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなどにも伝染され得るが、感染した患者の場合、血中ウイルス濃度が非常に高いため、血液を介してヒトとヒト間の伝播も可能であることが知られている。特にダニが北アメリカに移り、極東アジアを越えて世界的に発症する危険が生じた。これより、2018年に世界保健機関(WHO)では、注意が必要な病原体リストにSFTSVを含ませた。
【0050】
SFTSVは、Bunyaviridae familyに属し、3個のセグメントを含むマイナス鎖(negative-strand)RNAウイルスである。ゲノム(genome)は、Lセグメント、MセグメントおよびSセグメントに分けられる。Lセグメントは、6368個のヌクレオチドからなっているが、RNA依存性RNA重合酵素遺伝子が位置する。Mセグメントは、3378個のヌクレオチドからなり、外皮(envelope)に存在する糖タンパク質Glycoprotein N(Gn)およびGlycoprotein C(Gc)遺伝子が位置する。Sセグメントは、1744個のヌクレオチドからなり、核タンパク質(nucleoprotein)と非構造タンパク質(non-structural protein)をコード化する。
【0051】
現在までSFTSVの治療剤とワクチンは、商業的に開発されていない。開発が遅れている理由は、SFTSが比較的最近糾明された新種感染疾患であり、患者が東北アジアに集中し、患者の数が多くなかった点から、世界的な関心が大きくなかったためである。また、適切な動物モデルがなかったことも、SFTSの治療剤とワクチンが開発されない理由の1つである。
【0052】
一例として、コーディング領域(CR)にコード化される重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)の免疫原は、SFTSVの糖タンパク質N(Gn)またはその断片でありうる。
例えば、SFTSVの免疫原である糖タンパク質(Gn)は、配列識別番号:5(本明細書においてGnと称する)、配列識別番号:7(本明細書においてGnΔTMと称する)および配列識別番号:9(本明細書においてGnΔSTEMと称する)から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する、SFTSVの糖タンパク質Nから変異されたペプチドからなってもよいが、これに限らない。一例として、SFSTVの免疫原またはその断片をコード化するヌクレオチドは、配列識別番号:6、配列識別番号:8および配列識別番号:10から成る群から選択されるヌクレオチドまたはその転写物からなってもよいが、これに限らない。
【0053】
例えば、核酸分子がRNA形態である場合、コーディング領域(CR)は、インフルエンザウイルスの免疫原(例えば、HA)またはSFTSVの免疫原(例えば、糖タンパク質)またはこれらの断片をコード化するORFを有する転写物からなってもよい。
コーディング領域(CR)を構成するORFの長さは、制限がなく、ORFの長さによる発現効率は、本開示による核酸分子、これを用いた組換え発現ベクターおよび治療または予防のための核酸ワクチンなどの開発において大きな考慮対象でない。Codon usageは、通常、様々な種においてタンパク質/ペプチド発現に影響を及ぼすことができるが、ヒトのcodon usage biasは、通常、タンパク質/ペプチド発現に大きな影響を及ぼさないことが知られているので、ヒトを対象とする核酸ワクチンや遺伝子治療剤を開発するとき、考慮対象でない。
【0054】
必要に応じて、開始コドン(initial codon)は、Kozak配列を有していてもよい。終結コドン近くのヌクレオチドをも最適化する必要がある。必要に応じて、コーディング領域(CR)で発現しようとする遺伝子またはその転写物であるmRNAのコドン配列のうち三番目の部分をGCに変えて、アミノ酸の変化なく、標的遺伝子のGC%を増加させて、mRNAの安定性を高めることができる。
【0055】
選択的な実施形態において、核酸分子は、ORF形態で連結されるコーディング領域(CR)の発現効率を増加させることができるヌクレオチドがさらに挿入されてもよい。一例として、核酸分子は、翻訳調節因子、例えば、第1翻訳調節因子(U-TLCE)に隣接して核酸分子の転写を促進する転写調節因子(TCCE)を有することができる。例えば、転写調節因子(TCCE)は、第1翻訳調節因子(U-TLCE)の上流に位置することができる。このような転写調節因子(TCCE)は、特に制限されるものではない。
【0056】
例示的な態様において、転写調節因子(TCCE)は、コーディング領域(CR)にORF形態でコード化されたインフルエンザウイルス由来のHAまたはSFTSV由来のGnの転写を促進するプロモーターでありうる。転写調節因子(TCCE)は、動物細胞、より具体的には、哺乳動物細胞で作動し、コーディング領域(CR)にコード化されたウイルス由来免疫原の転写を調節することができる。
【0057】
一例として、転写調節因子(TCCE)は、哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター、またはバクテリオファージに由来するプロモーターを含む。例えば、転写調節因子(TCCE)は、CMV(cytomegalo virus)プロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、T7バクテリオファージプロモーター、T3バクテリオファージプロモーター、SM6プロモーター、RSVプロモーター、EF1アルファプロモーター、メタロチオニンプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトIL-2遺伝子のプロモーター、ヒトIFN遺伝子のプロモーター、ヒトIL-4遺伝子のプロモーター、ヒトリンホトキシン遺伝子のプロモーター、ヒトGM-CSF遺伝子のプロモーター、がん細胞特異的プロモーター(例えば、TERTプロモーター、PSAプロモーター、PSMAプロモーター、CEAプロモーター、E2FプロモーターおよびAFPプロモーター)および組織特異的プロモーター(例えば、アルブミンプロモーター)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0058】
例示的な態様において、T7バクテリオファージプロモーター、T3バクテリオファージプロモーター、SP6バクテリオファージプロモーターなど線形化されたDNA鋳型からmRNAを転写できる任意の転写調節因子(TCCE)が第1翻訳調節因子(U-TLCE)の近隣、具体的には、第1翻訳調節因子(U-TLCE)の上流に位置することができる。
【0059】
その他にも、核酸分子は、前述した翻訳調節因子(TLCE)、コーディング領域(CR)および転写調節因子(TCCE)以外にも、コーディング領域(CR)に挿入される、ウイルス由来の免疫原性ペプチドをコード化する遺伝子またはその転写物配列からなるORFの発現を誘導できるヌクレオチドが挿入され得る。1つの例示的な実施形態において、核酸分子は、転写調節因子(TCCE)または第1翻訳調節因子(U-TLCE)と、コーディング領域(CR)の開始コドンの間に挿入されるKozak配列を含んでもよい。
【0060】
選択的に、核酸分子は、コーディング領域(CR)の下流、より具体的には、第2翻訳調節因子(D-TLCE)の下流に転写した核酸分子を安定化させ、コーディング領域(CR)に存在するウイルス由来の抗原ペプチドをコード化する遺伝子またはその転写物配列からなるORFの翻訳効率をさらに向上させることができるポリアデニル化信号配列および/またはポリアデノシン配列(PA)がさらに挿入され得る。
【0061】
例えば、本開示の核酸分子がRNA形態の転写物配列からなる場合、ポリアデノシン配列(PA)は、略25個~略400個、例えば、30個~400個、50~250個、または60~250個のアデノシンからなるヌクレオチドでありうる。
他の例示的な態様において、本開示の核酸分子がDNA形態からなる場合、ポリアデニル化信号配列(PA)がコーディング領域(CR)の下流に位置することができる。一例として、ポリアデニル化信号配列(PA)は、SV40、ヒト成長ホルモン(human growth factor,hGH)、ウシ成長ホルモン(Bovine Growth hormone,BGH)またはウサギベータグロビン(rabbit beta-globin,rbGlob)等に由来するものを使用することができるが、本開示がこれに限らない。
【0062】
選択的に、ポリアデニル化信号配列またはポリアデノシン配列(PA)は、多数のアデノシン、例えば、25個~略400個、30個~400個、50個~250個、または60個~250個のアデノシンまたはその転写物からなる2個のヌクレオチドの間に5’-GATCATCAGT-3’のような信号配列またはリンカー配列が挿入された配列からなってもよい。
【0063】
核酸分子にコーディング領域(CR)を挿入するために、核酸分子は、1つ以上のクローニングサイト、好ましくは、マルチプルクローニングサイト(Multiple Cloning Site;MCS)を含んでもよい。1つ以上のクローニングサイトは、1つ以上の制限酵素(restriction endonuclease)認識配列(recognition site)および/または制限酵素によって切断される配列を含んでもよい。制限酵素は、バクテリアや古細菌などで発見される自然的な制限酵素はもちろんであり、人為的に製造された制限酵素(例えば、Zinc finger nucleaseやTAL effectorのDNA結合部位に基づく制限酵素またはPNAベースのPNAznymesなど)を含んでもよい。
【0064】
例えば、自然発生の制限酵素は、1)Type I制限酵素(認識部位から離れた部位を切断し、ATP、S-adenosyl-L-methionineおよびマグネシウムイオンを必要とする)、2)Type II制限酵素(認識部位の内部または認識部位から若干離れた特定部位を切断し、ほとんどがマグネシウムイオンを必要とする)、3)Type III制限酵素(認識部位から若干離れた部位を切断し、ATPは必要であるが、ATPの加水分解は必要としない)、4)Type IV制限酵素(メチル化、ヒドロキシメチル化またはグルコシル-ヒドロキシメチル化など修飾部位を標的とする)、5)Type V制限酵素(CRISPRsのcas9-gRNA complex)等に区分され得る。
【0065】
例えば、マルチプルクローニングサイトに下記の制限酵素によって認識される部位および/または制限酵素切断部位を含んでもよいが、これらに限らない。AngI、AatI、AbaI、BamHI、BbvI、BcgI、BplI、BsmAI、Alw26I、BsrI、ClaI、EarI、Eco57I、EcoRI、EcoRII、EcoRV、FokI、HaeIII、HindIII、HpaIII、HphI、KpnI、MboI、MluI、NaeI、NdeII、NgoMIV、NlaIII、NotI、PacI、PstI、SacI、SacII、SalI、SapI、SfaNI、SmaI、TaqI、XbaI、XhoI、PvuIおよびこれらの組み合わせ。1つの例示的な態様において、クローニングサイトは、配列識別番号:16~配列識別番号:21のうち少なくとも1つの制限酵素認識部位および/または制限酵素切断部位を含んでもよいが、これに限らない。
【0066】
核酸分子は、DNAまたはRNAでありうる。例示的な実施形態によれば、本開示による核酸分子は、RNA形態を有していてもよい。コーディング領域(CR)がインフルエンザウイルスまたはSFTSVの免疫原をコード化するORFの転写物配列からなるなど核酸分子がRNA形態からなる場合、DNA形態の核酸分子に比べて有利である。
DNA形態の核酸分子とは異なって、RNA形態の核酸分子は、mRNAへの転写のために宿主細胞の核中に進入する必要がない。RNA形態の核酸分子は、核内で宿主の染色体内に入り込む可能性がなく、宿主細胞において選別生産するために使用する選別マーカーである抗生剤抵抗遺伝子がRNA核酸分子の製作に不要であり、RNAは、DNAに比べて半減期が短いため、持続的形質転換(persistence genetic transformation)を誘導しない。
【0067】
RNA形態の核酸分子は、相対的にDNA形態の核酸分子に比べて少量を使用しても、所望の生体内免疫反応を誘導することができる。また、RNA形態の核酸分子を製作するとき、すべての製作工程を人工的に制御することができるので、生物学的汚染に対する危険なく、小規模GMP(good manufacturing practice)生産施設で安全に生産することができる。RNA核酸分子を生産するとき、感染源を直接扱う必要がなく、その代わりに、発現しようとする感染源の中和抗体誘導関連部分(中和epitope)の核酸配列のみを人工的に合成し、試験管内転写(in vitro transcription,IVT)だけで大量のRNA核酸分子を生産することができる。最近では、IVT反応に関連した試薬、特にDNA依存性RNA重合酵素が改善され、少量のDNA鋳型(template)を用いて大量のRNAを1~2週内に迅速に生産することができる。
【0068】
RNA形態の核酸分子は、naked DNA核酸分子に比べてさらに強い免疫反応を誘導することができ、RNA核酸分子自体が細胞内で複雑な抗原複合体(complex antigen)を生産し、これが抗原提示細胞のMHC(major histocompatibility complex;主組織適合性複合体)class IIに接近し、理想的な免疫増強剤として機能することができる。また、免疫反応を誘導しようとする多数の抗原を同時に製作して混合した後に免疫することができ、発現しようとする抗原の遺伝子長さに特別な制約がないので、RNA核酸分子製作の応用性および簡便性が増加することができる。
【0069】
RNA形態であってもよい核酸分子を活用しようとする場合、第1翻訳調節因子(U-TLCE)の上流にIVTを可能にする適切な転写調節因子(TCCE)が位置することができる。RNA形態の核酸分子は、IVT過程を通じて合成され得るので、一般的な生ワクチンや死菌ワクチンの製造に使用される生ウイルスや病原性微生物を直接扱う必要がなく、組換えタンパク質/ペプチドを生産するために必ず使用しなければならない酵母、大腸菌、昆虫細胞のような宿主細胞の培養などが不要である。
【0070】
ベクターに挿入されたDNA形態の核酸分子をIVT過程を通じてmRNA形態で転写するとき、制限酵素等で末端が伝達されて線形化されたDNAを鋳型として利用してRNA重合酵素(RNA polymerase)によりRNA形態の核酸分子を試験管で合成することができる。線形化されたDNAからRNAへの転写のために、例えば、バクテリオファージなどに由来するプロモーター配列のような転写調節因子(TCCE)が翻訳調節因子(TLCE)の上流に位置することができる。
【0071】
組換え発現ベクター、発現コンストラクトおよび核酸分子注入
図1に示された核酸分子は、組換え発現ベクター内に挿入され得る。組換え発現ベクターは、翻訳開始活性を有する翻訳調節因子(TLCE)と、コーディング領域(CR)を含み、転写調節因子(TCCE)およびまたはポリアデニル化信号配列(PA)を含んでもよい。すなわち、組換え発現ベクターは、図1を参照して説明した核酸分子を含んでもよいが、この核酸分子は、他の核酸と結合して融合タンパク質または融合ペプチドをコード化することもできる。この場合、核酸分子は、遺伝子伝達体である発現コンストラクト(expression construct)の形態で生体内に注入され得る。
【0072】
遺伝子伝達体に使用され得るベクターは、様々な形態で製作することができ、ウイルス ベクター(viral vectors)、DNAまたはRNA発現ベクター(expression vectors)、プラスミド(plasmid)、コスミド(cosmid)またはファージベクター(phage vectors)、CCA(cationic condensing agents)と連結されたDNAまたはRNA発現ベクター、例えば、プラスミドを内包するリポソーム(liposomes)またはニオソームでパッケージされたDNAまたはRNA発現ベクター、プロデューサー細胞(producer cells)のような特定の真核細胞(eukaryotic cells)等が含まれる。
【0073】
例示的に、本開示の核酸分子は、哺乳動物細胞中に入って発現するように構成されてもよい。このような構成は、感染性疾患の治療および/または予防目的に使用するのに特に有用である。核酸分子を宿主細胞内で発現させることは、多くの方法があり、適切ないずれの方法も使用可能である。例えば、本開示による核酸分子は、発現コンストラクトまたは遺伝子伝達システムを構成する任意のベクターに挿入され得る。
【0074】
ベクターの一類型は、さらなるDNA切片がその内部にライゲーションされ得る円形二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。他の類型のベクターは、ファージベクターである。さらに他の類型のベクターは、さらなるDNA切片がウイルスゲノム内にライゲーションされ得るウイルスベクターである。1つの特定ベクターは、それが導入された宿主細胞内で自律複製が可能である(例えば、バクテリア複製起点を有するバクテリアベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内への導入時に、宿主細胞のゲノム内に統合され得、これによって、宿主のゲノムと共に複製される。また、一般的に、組換えDNA技術に有用な発現ベクターは、たびたびプラスミドの形態で存在する。
【0075】
一例として、核酸分子は、ウイルス遺伝子伝達システムを用いて宿主細胞に挿入され得る。核酸分子が挿入され得るウイルスベクターは、アデノウイルス(adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus,AAV)、レトロウイルス(retrovirus)、ワクシニア(vaccinia)または他のポックスウイルス(e.q.,avian pox virus)、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス由来のベクターを含んでもよい。例えば、ウイルスベクターは、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)のようなレンチウイルス由来のベクター;げっ歯類レトロウイルス(murine retroviruses)、テナガザル白血病ウイルス(gibbon ape leukemia virus)、AAVs(adeno-associated viruses)およびアデノウイルス(adenoviruses)等に由来するレトロウイルスベクターが含まれるが、これらに限らない。その他にも、マウス白血病ウイルス(murine leukemia virus,MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(gibbon ape leukemia virus,GaLV)、エコトロピックレトロウイルス(ecotropic retroviruses)等に由来するレトロウイルスベクターが広く使用されている。本開示によるベクターシステムは、当業界においてよく知られている様々な方法を用いて構築され得る。
【0076】
必要に応じて、前述した核酸分子を適切なベクターに挿入した後、試験管内転写(in vitro transcription,IVT)を通じてRNA形態の核酸分子に修飾され得る。
核酸分子、例えば、DNAをこのようなベクターに挿入させる技術に関しては、すでによく知られている。レトロウイルスベクターには、形質導入された細胞の確認または選択を容易にする選択マーカー(selectable marker)に対する遺伝子および/または特定の標的細胞に対する受容体の役割をするリガンド(ligand)をコード化する遺伝子のような標的部位(targeting moiety)を付加的に挿入させることができる。標的(targeting)は、また、抗体を用いた公知の方法によっても行われ得る。
【0077】
入手可能であり、本開示の属する技術分野においてよく知られている多数のベクターを本開示の目的に使用することができる。適切なベクターの選択は、主にベクターに挿入される核酸分子のサイズおよびベクターで形質転換される特定の宿主細胞により変わる。それぞれのベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅または発現、または両方とも)およびベクターが存在する特定の宿主細胞との相溶性によって様々な成分を含有する。ベクター成分は、一般的に複製起点(特にベクターが原核細胞に挿入される場合)、選別マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、信号配列、異種核酸挿入物および/または転写終結配列を含むが、これらに限定されるものではない。
【0078】
例えば、本開示による発現ベクターは、コーディング領域(CR)内にコード化された、インフルエンザウイルスまたはSFTSV抗原の発現に影響を及ぼすことができる発現調節因子、例えば、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化信号配列、エンハンサー、膜標的化または分泌のための信号配列などを含んでもよい。エンハンサー配列は、プロモーターにおいて様々な部位に位置し、エンハンサー配列がないときのプロモーターによる転写活性と比較して、転写活性を増加させる核酸塩基配列である。
【0079】
宿主がエスケリキア(Escherichia)属菌である場合には、信号配列は、PhoA信号配列、OmpA信号配列などが、宿主がバシラス(Bacillus)属菌である場合には、α-アミラーゼ信号配列、サブチリシン信号配列などを用いることができる。宿主が酵母である場合には、信号配列は、MF-α信号配列、SUC2信号配列などが、宿主が動物細胞である場合には、インスリン信号配列、a-インターフェロン信号配列、抗体分子信号配列などを用いることができるが、本開示がこれに限定されない。
【0080】
任意のベクター(例えば、バクテリア複製起点を有するバクテリアベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)は、それが導入された宿主細胞内で自律複製が可能である。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内に導入時に宿主細胞のゲノム内に統合され得る、これによって、宿主のゲノムと共に複製される。
【0081】
本開示によるベクターシステムは、本開示の属する技術分野においてよく知られている様々な方法を用いて構築され得る。また、本開示のベクターは、典型的にクローニング(cloning)のためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築され得る。また、本開示のベクターは、原核細胞または真核細胞を宿主にして構築され得る。例えば、本開示に用いられ得るベクターは、本開示の属する技術分野においてたびたび使用されるプラスミド(イェ:pSC101、ColE1、pBR322、pUC8/9、pHC79、pUC19、pETなど)、ファージ(例:λgt4λB、λ-Charon、λΔz1、λGEM.TM.-11およびM13等)またはウイルス(例:SV40等)を操作して製作され得る。
【0082】
構成的または誘導性プロモーターは、通常の技術者によって確認できる特定の状況の必要に応じて本開示に使用され得る。様々な可能な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが広く知られている。選択されたプロモーターは、制限酵素消化を通じて供給源核酸分子からプロモーターを除去し、単離したプロモーター配列を選択ベクター内に挿入することによって、免疫原性ペプチドまたはタンパク質をコード化する遺伝子または転写物のORFからなるコーディング領域(CR)を有する核酸分子に作動可能に連結され得る。天然プロモーター配列および多数の異種プロモーターを両方とも使用してコーディング領域(CR)を構成する遺伝子または転写物の増幅および/または発現を指示することができる。異種プロモーターは、一般的に天然プロモーターと比較して、発現した関心遺伝子のより大きい転写およびより高い収率を得ることができるので好ましい。
【0083】
例えば、本開示のベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させることができる強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーターおよびT7プロモーターなど)のような転写調節因子(TCCE)、翻訳を開始するための翻訳調節配列(TLCE1、TLCE2)、および転写/翻訳終結配列を含むことが一般的である。宿主細胞としてE.coliが用いられる場合、E.coliトリプトファン生合成経路のプロモーターおよびオペレーター部位(Yanofsky,C.,J.Bacteriol.、158:1018-1024(1984))およびファージλの左向きプロモーターが発現調節部位として用いられ得る。
【0084】
なお、本開示のベクターが発現ベクターであり、真核細胞を宿主とする場合には、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例:メタロチオニンプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例:アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーターおよびHSVのtkプロモーター)またはバクテリオファージに由来するプロモーター(例:T7プロモーター、T3プロモーター、SM6プロモーター)が用いられ得、転写終結配列としてポリアデニル化信号配列を一般的に有する。
【0085】
また、本開示の組換えベクターが複製可能な発現ベクターである場合、複製が開始される特定核酸配列である複製起点(replication origin)を含んでもよい。また、組換えベクターは、選別マーカー(selection marker)を含んでもよい。選別マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面タンパク質の発現のような選択可能表現型を付与するマーカーが使用され得る。本開示のベクターは、選別標識として、当該技術分野において通常用いられる抗生剤耐性遺伝子を含み、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシンおよびテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。選別剤(selective agent)で処理された環境で選別マーカーを発現する細胞のみが生存するので、形質転換された細胞を選別することができる。選別マーカーの代表的な例として、栄養要求性マーカー(auxotrophic marker)のura4、leu1、his3等が挙げられるが、前記例によって本開示において使用され得る選別マーカーの種類が制限されるわけではない。
【0086】
発現ベクターにサブクローンされた配列を増幅させる様々な試験管内増幅技法(in vitro amplification techniques)が知られている。このような技法には、PCR(polymerase chain reaction)、LCR(ligase chain reaction)、Qβ-複製酵素増幅(replicase amplification)および他のRNA重合酵素を用いた技法がある。
【0087】
本開示のベクターは、それから発現する組換えタンパク質またはペプチドの精製を容易にするために、他の配列と融合することもできる。融合する配列は、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia,USA)、マルトース結合タンパク質(NEB,USA)、FLAG(IBI,USA)および6 x His(hexahistidine;Quiagen,USA)等があり、最も好ましくは、6 x Hisである。前記精製のためのさらなる配列のため、宿主で発現したタンパク質は、親和性クロマトグラフィーを通じて迅速かつ容易に精製される。必要に応じて、これらの組換えタンパク質の細胞外分泌を促進することができるように、Fc切片をコード化する配列が融合することもできる。
【0088】
本開示の例示的な実施形態によれば、前記融合配列が含まれているベクターによって発現した融合タンパク質は、親和性クロマトグラフィーによって精製される。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼが融合した場合には、この酵素の基質であるグルタチオンを用いることができ、6 x Hisが用いられた場合には、Ni-NTA His-結合レジンカラム(Novagen,USA)を用いて所望の組換えタンパク質を迅速かつ容易に得ることができる。
【0089】
前述したベクターを安定的かつ連続的にクローニングおよび発現させることができる宿主細胞は、本開示の属する技術分野においてよく知られているいずれの宿主細胞も用いることができ、例えば、E.coli JM109、E.coli BL21(DE3)、E.coli RR1、E.coli LE392、E.coli B、E.coli X 1776、E.coli W3110、バチルス・サブティリス、バチルス・チューリンゲンシスのようなバシラス属菌株、そしてサルモネラ・チフィムリウム、セラチア・マルセッセンスおよび様々なシュードモナス種のような腸内菌と菌株などがある。また、本開示のベクターを真核細胞に形質転換させる場合には、宿主細胞として、イースト(Saccharomyce cerevisiae)、昆虫細胞(例えば、SF9細胞)およびヒト細胞(例えば、CHO細胞株(Chinese hamster ovary)、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、3T3、RINおよびMDCK細胞株)等が用られ得る。
【0090】
本開示のベクターは、細胞を細胞内外(in vivo、ex vivo)または試験管内(in vitro)で遺伝的に修飾させるのに用られ得る。細胞を遺伝的に修飾させる方法としては、細胞をウイルスベクターで感染または形質導入させる方法、リン酸カルシウム沈殿法(calcium phosphate precipitation)、受容体細胞(recipient cells)をDNAを含む細菌プロトプラスト(bacterial protoplasts)と融合させる方法、受容体細胞にDNAを含んでいるリポソーム(liposome)または微小球(microspheres)を処理する方法、エンドサイトーシス(DEAE dextran,receptor-mediated endocytosis)、エレクトロポレーション(electroporation)、マイクロインジェクション(micro-injection)等を含む様々な方法が知られている。
【0091】
例えば、宿主細胞が原核細胞である場合、CaCl方法、ハナハン方法および/または電気穿孔法などによって実施され得る。また、宿主細胞が真核細胞である場合には、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔法、リポソーム媒介トランスフェクション法、DEAE-デキストラン処理法、および/または遺伝子ボンバードメントなどによってベクターを宿主細胞内に注入することができる。宿主細胞内に注入されたベクターは、宿主細胞内で発現することができ、このような場合には、多量の組換えタンパク質または組換えペプチドを得ることになる。例えば、前記発現ベクターがlacプロモーターを含む場合には、宿主細胞にIPTGを処理して遺伝子発現を誘導することができる。
【0092】
薬学組成物
他の態様によれば、本開示は、前述した核酸分子および/または遺伝子伝達体として前述した核酸分子が挿入された発現系である発現コンストラクト(construct)を有効成分として含有するインフルエンザまたはSFTSを予防または治療するための薬学組成物、例えば、ワクチン組成物に関する。すなわち、前述した核酸分子またはこれを含む発現コンストラクトは、免疫原として機能して、インフルエンザまたはSFTSを予防または治療するための薬学組成物の有効成分でありうる。
【0093】
したがって、本開示の他の態様によれば、前述した核酸分子の薬学的有効量を含み、必要に応じて薬学的に許容される担体(carrier)を含むインフルエンザまたはSFTSを予防または治療するための薬学組成物が開示される。この場合、前述した核酸分子は、被対象体に直接的に投与される。本明細書において「薬学的有効量」とは、本開示による核酸分子の効能または活性を達成するのに十分な量を意味する。
【0094】
本開示の他の態様によれば、本開示は、前述した本開示の核酸分子が挿入された発現コンストラクトを含み、必要に応じて薬学的に許容される担体を含むインフルエンザまたはSFTSを予防または治療するための薬学組成物が開示される。さらに他の態様において、本開示は、薬学的有効量の前述した核酸分子または発現コンストラクトを被対象体に投与する段階を含み、インフルエンザまたはSFTSを予防または治療するための方法に関する。
【0095】
本開示による核酸分子または発現コンストラクトの薬学的有効量を含む薬学組成物は、担体、希釈剤および/または賦形剤を含む。1つの例示的な態様において、有効成分である核酸分子または発現コンストラクトは、生理学的に許容される担体、すなわち生薬投与形態で使用される投与量および濃度で受容者に非毒性の担体とともに、周囲温度、適切なpHで、望む程度の純度で混合されることによって製剤化され得る。製剤のpHは、主に化合物の特定の用途および濃度によって変わるが、好ましくは、約3~約8の範囲である。さらに他の実施様態において、化合物は滅菌される。化合物は、例えば、固体または無定形組成物、凍結乾燥製剤または水溶液として保存され得る。
【0096】
1つの例示的な実施形態において、前述した核酸分子または発現コンストラクトは、カチオン性ポリマー、カチオン性ペプチドまたはカチオン性ポリペプチドのような核酸安定化剤を用いて薬学組成物中に安定化され得る。核酸安定化剤として使用され得るカチオン性(ポリ)ペプチドは、ポリリシンまたはポリアルギニンのような多重カチオン性ポリマー、カチオン性脂質またはリポフェクタント(lipofectant)でありうる。より具体的には、安定化剤は、ヒストン、ヌクレオリン、プロタミン、オリゴフェクタミン、スペルミンまたはスペルミジンおよびカチオン性多糖類、特にキトサン、TDM、MDP、ムラミルジペプチド、プルロニック(登録商標)および/またはこれらの誘導体でありうる。ヒストンおよびプロタミンは、DNAを天然的にコンパクトにするカチオン性タンパク質である。
【0097】
一例として、核酸分子または発現コンストラクトと共に複合体を形成できるヒストンは、ヒストンH1、H2a、H3およびH4を含み、プロタミンは、プロタミンP1またはP2、特にプロタミンのカチオン性部分配列が好ましい。必要に応じて、本開示による核酸分子とともに複合体を形成できる他の化合物は、さらに使用される免疫増強剤(adjuvant)でありうる。さらなる免疫増強剤は、薬学的に活性の物質および核酸分子の免疫原性を向上させることができる。
【0098】
1つの例示的な態様において、免疫増強剤は、プロタミン、ヌクレオリン、スペルミン、スペルミジンおよびカチオン性多糖類と、安定化カチオン性ペプチドまたはポリペプチド、特にキトサン、TDM、MDP、ムラミルジペプチド、プルロニック、ハクバン(alum)溶液、アルミニウムヒドロキシド、ADJUMER(ポリホスファゼン);アルミニウムホスフェートゲル;藻類(algae)のグルカン;アルガムリン(algammulin);アルミニウムヒドロキシドゲル(ハクバン(alum));高いタンパク質-吸着性アルミニウムヒドロキシドゲル;低粘性のアルミニウムヒドロキシドゲル;AFまたはSPT(スクワラン(5%)のエマルジョン、Tween-80(0.2%)、PLURONIC(登録商標)-L121(1.25%)、ホスフェート-緩衝食塩水、pH 7.4);AVRIDINE(プロパンジアミン);BAY R1005((N-(2-デオキシ-2-L-ロイシルアミノ-b-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシルドデカノイル-アミドヒドロアセテート);CALCITRIOL(1α、25-ジヒドロキシ-ビタミンD3);カルシウムホスフェートゲル;CAPTM(カルシウムホスフェートナノ粒子);コレラホロトキシン、コレラ-毒素-A1-タンパク質-A-D-切片融合タンパク質、コレラ毒素のサブユニットB;CRL 1005(ブロックコポリマーP1205);含サイトカインリポソーム;DDA(ジメチルオクタデシルアンモニウムブロミド);DHEA(ジヒドロエピアンドロステロン);DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン);DMPG(ジミリストイルホスファチジルグリセロール);DOC/ハクバン(alum)複合体(デオキシコリン酸ナトリウム塩);Freund完全アジュバント;Freund不完全アジュバント;ガンマイヌリン;Gerbuアジュバント(N-アセチルグルコサミニル-(P1-4)-N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-グルタミン(GMDP)、ジメチオクタデシルアンモニウムクロリド(DDA)、ジンク-L-プロリン塩複合体(ZnPro-8)の混合物;GM-CSF);GMDP(N-アセチルグルコサミニル-(b1-4)-N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン);マキモド(1-(2-メチルプロピル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン);(N-アセチルグルコサミニル-N-アセチルムラミル-L-Ala-D-イソGlu-L-Ala-グリセロールジパミテート);DRV(脱水-再水和(re-hydration)ビヒクル(vesicle)から製造された免疫リポソーム);インターフェロン-ガンマ;インターロイキン-1ベータ;インターロイキン-2;インターロイキン-7;インターロイキン-12;ISCOMS(「免疫増強複合体(Immunostimulating Complexes)」);ISCOPREP 7.0.3.;リポソーム;LOXORIBINE(7-アリル-8-オキソグアノシン(グアニン));LT経口アジュバント(E.coliレービル(labile)エンテロトキシン-プロトキシン);組成物のミクロスフェアおよびマイクロ粒子;MF59;(スクアレン-水のエマルジョン);MONTANIDE ISA 51(精製された不完全Freundアジュバント);MONTANIDE ISA 720(代謝作用が可能なオイルアジュバント);MPL(3-Q-デサシル(desacyl)-4’-モノホスホリルリピドA);MTP-PEおよびMTP-PEリポソーム((N-アセチル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-(ヒドロキシホスホリルオキシ))-エチルアミド、モノナトリウム塩);MURAMETIDE(Nac-Mur-L-Ala-D-Gln-OCH3);MURA PALMITINEおよびD-MURAPALMITINE(Nac-Mur-L-Thr-D-イソGIn-sn-グリセロールジパルミトイル);NAGO(ノイラミニダーゼ-ガラクトースオキシダーゼ);組成物のナノスフェアまたはナノ粒子;NISV(非イオン性界面活性剤ビヒクル(vesicle));PLEURAN(β-グルカン);PLGA、PGAおよびPLA(乳酸とグリコール酸のホモポリマーおよびコポリマー;ミクロスフェア/ナノスフェア);PLURONIC L121;PMMA(ポリメチルメタクリレート);PODDS(プロテノイドミクロスフェア);ポリエチレンカルバマート誘導体;ポリ-rA:ポリ-rU(ポリアデニル酸 - ポリウリジル酸複合体);ポリソルベート80(Tween 80);タンパク質コクリエート(cochleate)(Avanti Polar Lipids,Inc.,Alabaster,AL);STIMULON(QS-21);Quil-A(Quil-Aサポニン);S-28463(4-アミノ-otec-ジメチル-2-エトキシメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]-キノリン-1-エタノール);SAF-1(「シンテックスアジュバント(adjuvant)製剤」);センダイ(Sendai)プロテオリポソームおよびセンダイ(Sendai)含有脂質マトリックス;Span-85(ソルビタントリオレート);Specol(Marcol 52、Span 85およびTween 85のエマルジョン);スクアレンまたはRobane(2,6,10,15,19,23-ヘキサメチルテトラコサンおよび2,6,10,15,19,23-ヘキサメチル-2,6,10,14,18,22-テトラコサヘキサン);ステアリルチロシン(オクタデシルチロシンヒドロクロリド);Theramid(N-アセチルグルコサミニル-N-アセチルムラミル-L-Ala-D-イソGlu-L-Ala-ジパルミトキシプロピルアミド);トレオニル-MDP(Termurtideまたは[thr-1]-MDP;N-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン);Ty粒子(Ty-VLPまたはウイルス類似粒子);Walter-Reedリポソーム(水酸化アルミニウムに吸着した脂質Aを含むリポソーム)、およびこれと類似なもの等を含む。
【0099】
一例として、薬学組成物に含まれる免疫増強剤は、alum(Th免疫反応を誘導して体液性免疫反応強化);MF59、AS03、AS04(TLR-4 agonistであるMPLとalum混合、GSK)、AddaVax(スクアレンベース;InvivoGen)のようなoil-in-waterエマルジョン型免疫増強剤(抗原性免疫反応を強化し、Th1免疫反応をバランスよく誘導);Toll-like receptors(TLRs)、RIG-I-like receptors(RLRs)、NOD-like receptors(NLRs)のようなpattern recognition receptors(PRRs)等のagonistであるLPS(脂肪多糖類)、Poly:C,imidazoquinolines(imiquinodやR848)、CpG oligonucleotidesなどを含んでもよいが、これに限らない。
【0100】
本開示による核酸分子または発現コンストラクトと、免疫増強剤を混合する場合に、これらの配合割合は、特に限定されない。一例として、本開示による核酸分子または発現コンストラクトと、免疫増強剤は、100:1~1:100、好ましくは、10:1~1:10、より好ましくは、5:1~1:5、最も好ましくは、3:1~1:3の重量比で配合され得る。
【0101】
必要に応じて、薬学組成物は、持続放出製剤を製造することができる。持続放出製剤の好適な例は、核酸分子または遺伝子伝達体を含有する固体疎水性重合体の半透過性マトリックスを含み、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸およびガンマ-エチル-L-グルタメートの共重合体、非分解性エチレン-ビニルアセテート、分解性乳酸-グリコール酸共重合体およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。
【0102】
選択的な態様において、薬学組成物は、有効成分として使用される核酸分子を保護し、生体注入活性を向上させることができる脂質ナノ粒子(lipid nano particle,LNP)を含んでもよい。脂質ナノ粒子は、互いに物理的に会合された多数の脂質分子を含むが、ミクロスフェア(単層および多重層小胞、例えば、リポソームを含む)、エマルジョンに分散した相、ミシェル、または懸濁液の内部相を含む。脂質ナノ粒子は、伝達のために本開示の核酸分子または核酸分子から発現したペプチド(タンパク質)をカプセル化するために使用され得る。
【0103】
カチオン性脂質を含有する製剤は、核酸分子のような多価アニオンを伝達するのに有用である。含まれ得る他の脂質は、中性脂質(すなわち、荷電しないまたは両イオン性脂質)、アニオン性脂質、トランスフェクションを増強させるヘルパー脂質、およびナノ粒子が生体内で存在できる時間の長さを増加させるステルス脂質(stealth lipid)である。好適なカチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、ヘルパー脂質、およびステルス脂質の例は、本明細書に参照として併合されたWO2016/010840A1に開示されている。
【0104】
例えば、カプセル化のための脂質は、カチオン性脂質、生分解性脂質でありうる。一例として、このような脂質は、(9Z,12Z)-3((4,4-ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)-2-((((3-(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロピルオクタデカ9,12-ジエノエート、((5-((ジメチルアミノ)メチル)-1,3-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン-8,1-ジイル)ビス(デカノエート)、2-((4-(((3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)ヘキサデカノイル)オキシ)プロパン-1,3-ジイル(9Z,9’Z,12Z,12’Z)-ビス(オクタデカ-9,12-ジエノエート)、3-(((3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)-13-(オクタノイルオキシ)トリデシル3-オクチルウンデカノエート、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(Dlin-MC3-DMA(MC3)とも知られている)が挙げられる。
【0105】
好適な中性脂質は、中性、比電荷または両イオン性脂質を含んでもよい。中性リン脂質は、5-ヘプタデシルベンゼン-1,3-ジオール(レゾルシノール)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ホスホコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ホスファチジルコリン(PLPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DAPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DBPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、1,2ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、リソホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)等を含んでもよいが、これに限らない。
【0106】
ヘルパー脂質は、トランスフェクションを増強させ/増強させるか、膜融合生成性(fusogenicity)を増強させることができる。ヘルパー脂質は、ステロイド、ステロール、およびアルキルレゾルシノールを含む。具体的には、ヘルパー脂質は、コレステロール、5-ヘプタデシルレゾルシノール、およびコレステロールヘミサクシナートを含んでもよい。
【0107】
ステルス脂質は、粒子の凝集を減少させ、粒子のサイズを制御することによって、製剤化過程を補助したり、LNPの薬物動態学的特性を調節することができる。一例として、ステルス脂質は、PEG(ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシド)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(グリセロール)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリアミノ酸、およびポリN-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドのような親水性ヘッドを有する重合体を含んでもよい。具体的には、ステルス脂質は、PEG-ジラウロイルグリセロール、PEG-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、PEG-ジパルミトイルグリセロール、PEG-ジステアロイルグリセロール(PEG-DSPE)、PEG-ジラウリルグリカミド、PEG-ジミリスチルグリカミド、PEG-ジパルミトイルグリカミド、PEG-ジステアロイルグリカミド、PEG-コレステロール(1-[8’-(コレスト-5-エン3[ベータ]-オキシ)カルボキサミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)、PEG-DMB(3,4ジテトラデコキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル)等を含んでもよいが、これらに限らない。
【0108】
本開示の核酸分子は、非抗原特異的な免疫反応を誘発することができる。免疫反応と関連してT-リンパ球は、T-ヘルパー1(Th1)細胞およびT-ヘルパー2(Th2)細胞に分化され、免疫体系は、細胞内(Th1)および細胞外(Th2)病原菌(例えば抗原)を破壊することができる。Th1細胞は、マクロファージおよび細胞毒性T-細胞の活性によって細胞性免疫反応を助ける。なお、Th2細胞は、原形質細胞への転換のためのB-細胞の増強および抗体(例えば、抗原に対抗する)の形成によって体液性免疫反応を促進する。Th/Th割合は、免疫反応において非常に重要であるが、本開示の核酸分子は、Th1免疫反応、すなわち細胞媒介性免疫反応を強化、誘導する。したがって、本開示による核酸分子が薬学的に活性の物質、例えば、免疫増強成分と共に生体に投与されると、薬学組成物は、薬学的に活性の物質によって誘発された特定の免疫反応をさらに強化させることができる。
【0109】
1つの例示的な態様において、薬学組成物は、前述した核酸分子以外に薬学的に活性の物質をさらに含んでもよい。一態様において、薬学的に活性の物質は、免疫原のような免疫増強成分である。一例として、薬学的に活性の物質は、がん、伝染病、自己免疫性疾患またはアレルギーに対する治療および/または予防効果を有する化合物でありうる。例えば、薬学的に活性の物質は、ペプチド、タンパク質、核酸、治療的に活性を有する低分子量の有機または無機化合物、糖、抗原または抗体、当業界においてよく知られている治療剤、抗原細胞、抗原細胞の切片、細胞片、化学的または光線照射によって修飾された(例えば、弱毒化または不活性化された)病原菌(ウイルスまたはバクテリアなど)を含む。
【0110】
一例として、薬学的に活性の物質の1つの抗原は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、細胞、細胞抽出物、多糖類、複合多糖類、脂質、糖脂質および炭水化物でありうる。例えば、腫瘍細胞の表面抗原および表面抗原、特に、ウイルス病原菌、バクテリア病原菌、かび病原菌または原生動物病原菌の、分泌された形態が好ましい。もちろん、抗原は、例えば、本開示による核酸分子の内部に存在することができ、また、適当な担体(carrier)に結合したヘプテン(haptene)で存在することができる。他の抗原成分、不活性化または弱毒化された病原菌がもた使用され得る。
【0111】
本開示による薬学組成物は、核酸分子、薬学的に活性の物質以外に薬学的に許容される担体(carrier)を含んでもよい。1つの例示的な態様において、組成物が液体形態である場合、薬学的に許容される担体は、例えば、発熱性物質を除去した水(pyrogen-free water);例えば、ホスフェート、シトレートなど、緩衝溶液のような等張食塩水(isotonic saline)または緩衝(水)溶液、例えば、落花生油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびカカオ実のオイルのような植物油;例えば、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;アルギニン酸などのようなポリオールを含んでもよい。液体のワクチン組成物を生体に注入するために、ナトリウム塩、カルシウム塩および選択的にカリウム塩を含む水性バッファーが使用され得る。ナトリウム塩、カルシウム塩およびカリウム塩は、塩素、ヨードまたはブロムのようなハロゲンの形態、または水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、または硫酸塩などの形態で存在することができる。
【0112】
また、薬学組成物が固体形態である場合、薬学的に許容される担体は、固体フィラー、液体フィラーまたは希釈剤のような固体担体を含んでもよく、生体に投与するのに適当なカプセル化(encapsulating)化合物も使用され得る。例えば、薬学的に許容される固体担体は、ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖;例えば、とうもろこしデンプンまたはジャガイモデンプンのようなデンプン;例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、セルロースアセテートのようなセルロースおよびその誘導体;粉末化トラガカント;麦芽(malt);ゼラチン;獣脂(tallow);例えば、ステアリン酸、マグネシウムステアレートのような固体滑沢剤;カルシウム サルフェートなど。
【0113】
薬学的に許容される担体は、本開示による薬学組成物が投与される方式によって選択され得る。本開示による薬学組成物は、例えば、全身に(systemically)投与され得る。投与経路は、例えば、経口(oral)、皮下内、静脈内、筋肉内、関節内(intra-articular)、滑液嚢内(intrasynovial)、胸骨内、硬膜内(intrathecal)、肝内(intrahepatic)、病巣内(intralesional)、頭蓋内(intracranial)、経皮(transdermal)、真皮内(intradermal)、肺内(intrapulmonal)、腹腔内(intraperitoneal)、心臓内(intracardial)、動脈内(intraarterial)、および舌下局所(sublingual topical)および/または鼻腔内(intranasal)経路を含む。
【0114】
使用すべき薬学組成物の適当な量は、動物モデルを用いた通常の実験によって決定され得る。そのようなモデルは、いかなる制限も含まずに、ウサギ、ヒツジ、マウス、ラット、イヌおよびヒトでない霊長類モデルを含む。好ましい注射用単位投与形態は、滅菌水溶液、生理食塩水、またはその混合物を含む。そのような溶液のpHは、約7.4に調整されなければならない。
【0115】
注射用に適当な担体は、ヒドロゲル、調節放出用装置、遅延放出用(delayed release)装置、ポリ乳酸(polylactic acid)およびコラーゲンマトリックスを含む。局所用途に適当な薬学的に許容される担体は、ローション、クリーム、ジェルおよびこれらと類似したものに使用されるのに適当なものを含む。もし化合物が経口(perorally)投与されると、タブレット、カプセルおよびこれと類似したものは、好ましい単位投与形態である。口腔投与のために使用され得る、単位投与形態の製造のための薬学的に許容される担体は、当業界によく知られている。
【0116】
必要な場合、薬学的に活性の物質および/または核酸分子によって誘導される免疫原性をさらに増加させるために、本開示による薬学組成物は、1つ以上の補助物質をさらに含んでもよい。このような補助物質の非制限的な例は、樹状細胞(DC)の成熟を許容する化合物、例えば、リポ多糖体、TNF-アルファまたはCD40リガンド、GM-CFSおよび/またはサイトカインである。具体的には、様々なインターロイキン類、インターフェロン類、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、LT-ベータ、TNF-アルファ、hGHのような成長因子のような、免疫反応を促進する、モノカイン、リンホカイン、インターロイキンまたはケモカインのようなサイトカインである。
【0117】
本開示による薬学組成物にさらに1つ以上の緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、抗酸化剤、不透明化剤、滑沢剤、加工補助剤、着色剤、甘味剤、香料、香味剤、希釈剤、および薬物(すなわち、本開示の有効成分である核酸分子、遺伝子伝達体またはそのワクチン組成物)の素敵な外観を提供したり、製薬製品(すなわち、医薬)の製造に役に立つ他の公知の添加剤を含んでもよい。一例として、Tweenのような乳化剤;例えば、ラウリル硫酸ナトリウムのような湿潤剤;着色剤;味を付与する製剤(taste-imparting agent)、タブレットを形成する製剤;安定化剤;抗酸化剤;保存剤である。
【0118】
本開示によって薬学組成物中の核酸分子の含有量や濃度は、特に制限されない。特に、RNAプラットフォーム形態の核酸分子を使用する場合、生体内で迅速に分解されるので、安全性および安定性を確保することができる。1つの例示的な実施形態において、本開示による核酸分子は、薬学組成物中に1~1000ug/mL、好ましくは、10~1000ug/mLの濃度で使用され得るが、これに限らない。
【0119】
適切な免疫反応に重要な要因は、他のT-細胞亜集団(sub-population)の増強である。T-リンパ球は、典型的に2個の亜集団、すなわちT-ヘルパー1(Th)細胞およびT-ヘルパー2(Th)細胞に分化され、前記亜集団は、細胞内(Th)病原菌および細胞外(Th)病原菌(例えば、抗原)を破壊できる免疫系を有している。前記2個のTh細胞集団は、それらによって生産されたエフェクタータンパク質(サイトカイン)のパターンにおいて差異がある。一般的に、Th細胞は、主に体液性免疫と関連してマクロファージおよび細胞毒性があるT-細胞の活性による細胞性免疫反応を助ける。なお、Th細胞は、主に細胞性免疫と関連して原形質細胞への転換のためのB-細胞の増強によって、そして抗体(例えば、抗原に対する抗体)の形成によって、体液性免疫反応を促進させる。したがって、Th/Th割合は、免疫反応において非常に重要である。本開示による核酸分子は、Th免疫反応およびTh免疫反応を全部強化する。
【0120】
一例として、本開示による薬学組成物は、腫瘍特異性(tumor-specific)または病原菌特異性免疫反応を誘発し、腫瘍および伝染性疾患を予防するために使用され得る。選択的に、薬学組成物は、アレルギー性障害または疾患、自己免疫性疾患の予防のために使用され得るが、これに限らない。
本開示による薬学組成物は、任意の便利な投与形態、例えば、錠剤、粉末、カプセル、溶液、分散液、懸濁液、シロップ、噴霧剤、坐剤、ゲル、エマルジョン、パッチなどで投与され得る。このような組成物は、製薬製剤に通常の成分、例えば、希釈剤、担体、pH調整剤、甘味剤、バルク剤およびさらなる活性剤を含有することができる。
【0121】
本開示の薬学組成物は、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬学的に許容される担体および/または賦形剤を用いて製剤化することによって、単位用量形態で製造されたり、または多用量容器内に内入させて製造され得る。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液形態であるか、エキス剤、粉末、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含んでもよい。
【0122】
なお、本明細書において製剤は、また、治療する特定の適応症に必要な場合には、1つ超過の活性化合物、好ましくは、互いに有害な影響を及ぼさない補完的活性を有する化合物を含有することができる。選択的にまたはさらに、組成物は、その機能を増進させる作用剤、例えば、細胞毒性剤、サイトカイン、化学療法剤、または成長抑制剤、または成長増進剤を含んでもよい。このような分子は、意図された目的に有効な量で組合わせて適切に存在する。
【0123】
選択的な態様において、本開示の核酸分子を含む遺伝子伝達体が薬学組成物に含まれ得る。遺伝子伝達体は、目的とする免疫原をコード化するヌクレオチドを運搬および発現させるために製作されたものである。遺伝子伝達体を製造するために、関心遺伝子の転写物は、好適な発現コンストラクト(expression construct)内に存在することが好ましい。発現コンストラクトで、ウイルス由来免疫原をコード化する関心遺伝子の転写物は、転写調節因子(TCCE)に作動可能に連結されることが好ましい。
【0124】
例えば、発現コンストラクトは、前述した核酸分子が挿入された発現ベクターでありうる。この際、ベクターは、核酸分子を含んでもよく、核酸分子は、他のヌクレオチドと結合して、融合タンパク質または融合ペプチドをコード化することもできる。
なお、前述した遺伝子伝達体を細胞内に導入する方法は、当業界においてよく知られている様々な方法を用いて実施され得る。本開示において、遺伝子伝達体がウイルスベクターに基づいて製作された場合には、当業界においてよく知られているウイルス感染方法によって実施される。また、本開示において遺伝子伝達システムがnaked組換えDNA分子またはプラスミドである場合には、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔法、リポソーム媒介トランスフェクション法、DEAE-デキストラン処理法)、および遺伝子ボンバードメント法によって遺伝子を細胞内に移入させることができる。
【0125】
実施例1:インフルエンザウイルスhemagglutinin(HA)コード化配列が挿入された核酸分子の製作
インフルエンザウイルスのHemagglutinin(HA)コード化するヌクレオチドが挿入された核酸分子を製作した。MCSを有する核酸分子からインフルエンザウイルスのHAをコード化するコーディング領域を有する鋳型DNA配列は、次のように設計した。
【0126】
5’-KpnI認識配列(GGTACC)-T7プロモーター(配列識別番号:11)-ヒトtroponin T1(TNNT1)由来の翻訳調節因子(配列識別番号:1)-PacI認識配列(TTAATTAA)-Kozak配列(GCCACC)-インフルエンザウイルスHA(配列識別番号:3)コード化配列(HA、配列識別番号:4)-ClaI認識配列(ATCGAT)-ヒトtroponin T1(TNNT1)由来の翻訳調節因子(配列識別番号:2)-EcoRI認識配列(GAATTC)-ポリアデニル化信号(配列識別番号:12)-SapI認識配列(GAAGAGC)-NotI認識配列(GCGGCCGC)-3’。
【0127】
鋳型DNAをpGHベクター(配列識別番号:13の下流および配列識別番号:14の上流)に挿入、クローニング(cloning)し、制限酵素でlinearizationさせて、in vitro transcription(IVT)を通じてRNAプラットフォーム形態の核酸分子(以下、「pHJ5L-HA」という)を製作した。
【0128】
実験例1:in vivoマウス免疫および抗原特異的免疫グロブリンおよびサイトカイン生成の測定
Wild type Balb/cマウスにsaline(Group 1)と、実施例1で製作されたpHJ5L-HA核酸分子(Group 2)を投与した。RNA形態の核酸分子は、N-methylpseudouridine(m1Ψ)とcelluloseで精製した。RNAは、市販のcap1方式のcapping reagentを使用して修飾させ、Moderna社のCOVID-19 mRNAワクチンに使用された脂質ナノ粒子(lipid-based nanoparticles,LNP)を使用してformulationした。
【0129】
FormulationしたpHJ5L-HAを2週間隔で2回マウスに筋肉注射した後、最後の免疫後2週間後にマウスの血液採取および臓器を摘出して、核酸分子による免疫誘導程度を確認した。本実験例においてマウス免疫グループは、下記表1に示された通りであり、各グループ当たり5匹のマウスを免疫した。
【0130】
【表1】
【0131】
最後の免疫から2週後、マウスを二酸化炭素で安楽死後、剖検して、腹部大動脈から血液を採取した。採取した血液は、常温に2時間以上放置して、血球を凝集させた後、4,000gで15分間遠心分離して、血清を別に分離した。96-well plateにHAタンパク質を100ngコーティングした後、1次抗体として1% BSA in PBSに1:200で血液を希釈して、50μlずつ入れた。常温で2時間反応させた後、0.5% PBST 200μlで3回洗浄した後、2次抗体としてgoat anti-mouse IgG H+I HRP conjugatedを1% BSA in PBSに1:3000で希釈して、100μlずつ入れた。常温で1時間反応後に洗浄した後、TMB溶液を100μlずつ入れて発色を確認した。発色が十分に進行されたら、2N硫酸を50μlずつ入れて反応を中止し、吸光度を測定できるspectrophotometerを用いて450nmの波長で吸光度を測定した。
【0132】
本実施例によってマウス血清内で分泌された抗原特異的抗体の量をELISAで測定した結果を図2図3および図4に示す。生理食塩水を注射した陰性対照群(G1)とは異なって、実施例1で製作したmRNA核酸分子で免疫したグループ(G2)においてHAタンパク質に特異的な抗体が多く生成されたことを確認した。特に、Th2免疫反応に関与するIgG1とTh免疫反応に関与するIgG2aが全部多く生成され、血清を12,800倍希釈して測定しても、高い吸光度を示し、多くの抗体を形成したことを確認することができた。
【0133】
実験例2:Hemagglutin Inhibition(HI)assayを通した中和能力の評価
実験例1と同様の方法を使用してマウスの血清を得た。96-wellプレートに25μlのPBSを入れた。一番目のcolumnに25μlのマウス血清を入れ、側方のcolumnに順次に2倍ずつ希釈した。pHJ5L-HA mRNAにコード化されたHAのような種類のインフルエンザウイルス(PR8 HA)を25μlずつすべてのwellに入れた後、30分間反応させた。その後、1%の七面鳥血液を50μlずつ入れ、赤血球が凝集するまで待機した。赤血球が凝集したことは、ウイルスのHA抗原のためであり、赤血球が凝集しないことは、血清にHA抗体があるためである。分析結果を図5に示す。図5に示されたように、pHJ5L-HA mRNAを入れたグループでは、高い希釈倍率にもかかわらず、赤血球の凝集を防いで、高い抗体力価(titer)を有していることが分かる。
【0134】
実験例3:Microneutralization assayを通した中和能力の測定
実験例1と同様の方法を使用してマウスの血清を得た。96-wellプレートにMDCK細胞を3x10cells/wellとなるように敷設した。血清は、12μlずつ準備し、56℃で30分間不活性化した。不活性化した血清を培地で10倍希釈して、80μlずつ空いている96-wellプレートの一番目の列に入れた。他のwellには、40μlずつ培地を入れ、一番目の列の血清を40μlずつ渡して2倍ずつ希釈した。各wellに100 TCID50/40μl濃度のウイルスを40μlずつ入れ、37℃ インキュベーターで1時間反応させた。反応したウイルスと血清は、50μlずつ培地を除去した96-wellプレートのMDCK細胞の上に入れ、37℃インキュベーターで2時間感染させた。2時間後、完全培地50μlを各wellに入れ、37℃インキュベーターに入れた。時間帯別に細胞を観察し、細胞病変が発生すると、上澄み液を全部除去し、4%ホルムアルデヒド溶液を入れ、3時間以上固定した。その後、2%クリスタルバイオレット溶液を各wellに入れ、30分以上染色し、洗浄して、ウイルス力価を測定した。測定結果を図6に示す。pHJ5L-HA mRNAで免疫した群では、効果的にウイルスを中和したことを確認した。
【0135】
実験例4:抗原特異的IFN-ガンマ生成の測定
(1)ELISPOT分析
実験例1の免疫スケジュールによって免疫したマウスを犠牲にするとき、摘出した脾臓を40μm strainerを用いて最大限単一細胞となるようにふるいわけた。ふるいわけた脾臓細胞をpre-coating ELISpot plateに5x10 cells/wellの個数で50μlずつ入れた。Non-stimulation(Group 1)の場合、RPMI1640完全培地(10% FBS、1% antibiotics)を50μl、pHJ5L-HA mRNAで発現したpeptide stimulation(Group 2)の場合、完全培地に4μg/wellの濃度で7種類のHAペプチドを入れ、50μlずつ入れた。37℃インキュベーターで48時間培養後、製造社で提供したプロトコルによって実験を進めた。測定結果を図7に示す。陰性対照群(G1)と比較して、pHJ5L-HA mRNAで免疫した群(G2)においてspotの個数が増加し、IFN-ガンマを分泌する細胞が大きく増加したことを確認した。
【0136】
(2)FACSを用いたフローサイトメトリー
上記でふるいわけた脾臓細胞をround-bottom 96-well plateに1x10 cells/wellの個数に入れた後、同様に、7種類のHAペプチドを4μg/wellの濃度で入れ、stimulationした後、24時間37℃インキュベーターで培養した。その後、T細胞特異的な抗体とIFN-ガンマ特異的な抗体を用いて染色した後、フローサイトメトリー装置を用いてIFN-ガンマを生成するT細胞を区分した。分析結果を図8図9に示す。陰性対照群(G1)と比較して、mRNAで免疫した群(G2)においてIFN-ガンマを分泌するT細胞の個数が大きく増加した。
【0137】
実施例2:SFTSVのN glycoprotein(Gn)配列が挿入された核酸分子の製作
コーディング領域にインフルエンザHAをコード化するヌクレオチドの代わりに、SFTSVのglycoprotein N(配列識別番号:5)をコード化する修飾ヌクレオチド(配列識別番号:6)を挿入したことを除いて、実施例1の手続きを繰り返してRNAプラットフォーム形態の核酸分子(以下、「pHJ5L-Gn」という)を製作した。
【0138】
実施例3:SFTSVのN glycoprotein(Gn)欠損配列が挿入された核酸分子の製作
コーディング領域にインフルエンザHAをコード化するヌクレオチドの代わりに、SFTSVのglycoprotein N欠損タンパク質(配列識別番号:7)をコード化する修飾ヌクレオチド(配列識別番号:8)を挿入したことを除いて、実施例1の手続きを繰り返して、RNAプラットフォーム形態の核酸分子(以下、「pHJ5L-GNΔTM」という)を製作した。
【0139】
実施例4:SFTSVのN glycoprotein Gn)欠損配列が挿入された核酸分子の製作
コーディング領域にインフルエンザHAをコード化するヌクレオチドの代わりに、SFTSVのglycoprotein N欠損タンパク質(配列識別番号:9)をコード化する修飾ヌクレオチド(配列識別番号:10)を挿入したことを除いて、実施例1の手続きを繰り返して、RNAプラットフォーム形態の核酸分子(以下、「pHJ5L-GNΔSTEM」という)を製作した。
【0140】
実験例5:核酸分子の発現の確認
実施例2~実施例4で製造したmRNAから標的ペプチドの発現の有無を確認した。VERO cellを10% FBS DMEM complete mediumで6-well cell culture plateに6x10接種して、37℃、O/N incubationした。Lipofectamine2000(登録商標)で核酸分子10μgをtransfectionし、37℃で30時間incubationした。Incubation後、細胞内タンパク質を定量して、30μgずつSDS PAGEを行った。Western blotでGn、GnΔTM、GnΔSTEMタンパク質発現の有無を次のようにそれぞれ確認した。1次抗体としてSFTS Virus HB29 Antibody(NBP2-41153)を5% skim milk in PBSTに1:1000希釈して4℃、O/N incubationし、2次抗体としてanti-rabbit IgG HRP抗体を5% skim milk in PBSTに1:5000希釈して常温で1時間incubationした。図10に示されたように、pHJ5-Gn核酸分子で約60kDaのタンパク質が発現し、pHJ5L-GnΔTM核酸分子で約50 kDaのタンパク質が発現し、pHJ5L-GnΔSTEM核酸分子で約40kDaのタンパク質が発現した。
【0141】
実験例6:in vivoマウス免疫および抗原特異的免疫グロブリン生成の測定
Wild type C57BL/6マウスにsaline(Group 1)と実施例2で製作されたpHJ5L-Gn核酸分子(Group 2)を投与した。その他には、実験例1と同じ免疫スケジュールおよび投与量でマウスに筋肉注射した後、最後の免疫後2週間後にマウスの血液採取および臓器摘出を通じてmRNAによる免疫誘導の有無を確認した。本実験例において使用されたマウスグループは、実験例1の表1と同一であり、各グループ当たり5匹のマウスを免疫した。
【0142】
最後の免疫から2週後、マウスを二酸化炭素で安楽死後、剖検して、腹部大動脈から血液を採取した。採取した血液は、常温に2時間以上放置し、血球を凝集させた後、4,000gで15分間遠心分離して、血清を別に分離した。96-well plateにGnタンパク質を100ngコーティングした後、実験例1と同じ方法でマウス血清内で分泌された抗原特異的抗体の量をELISAで測定した。測定結果を図11および図12に示す。生理食塩水を注射した陰性対照群(G1)とは異なって、pHJ5L-Gn mRNAで免疫した群(G2)においてGnタンパク質に特異的な抗体が多く生成されたことを確認した。特に、Th2免疫反応に関与するIgG1とTh免疫反応に関与するIgG2cが全部多く生成されたことを確認することができた。
【0143】
実験例7:抗原特異的IFN-ガンマ生成の測定
実験例6の免疫スケジュールによって免疫したマウスを犠牲にするとき、摘出した脾臓を40μm strainerを用いて最大限単一細胞になるようにふるいわけた。その後、pHJ5L-Gn mRNAで発現したpeptide stimulation(Group 2)の場合、完全培地に200ng/wellの濃度でGnタンパク質を入れて50μlずつ入れた。37℃インキュベーターで48時間培養後、製造社で提供したプロトコルによって実験を進めた。測定結果を図13に示す。陰性対照群(G1)と比較して、pHJ5L-Gn mRNAで免疫した群(G2)においてspotの個数が増加し、IFN-ガンマを分泌する細胞が大きく増加したことを確認した。
【0144】
実験例7:中和抗体力価の測定
Vero細胞を24-wellプレートに1.5x10 cells/well濃度で接種し、37℃インキュベーターで成長させる。ラットから得た血清60μlを培地540μlに入れ、1/10で希釈し、56℃で30分間不活性化させた。不活性化させた血清をあらかじめ300μlの培地が入っている箇所に300μlを入れ、1/2で希釈する方式で、最初10倍希釈した血清を320倍まで希釈した。希釈した血清の200μlと80ffu/well濃度のSFTSウイルス溶液を200μl混合した。あらかじめ接種させた細胞の完全培地を除去し、PBSで洗浄した後、血清とウイルスが混ざった溶液を100μlずつ各wellに入れ、37℃インキュベーターで1時間反応させた。この際、20分間隔で振とうする。1時間後、ウイルス溶液を除去した後、1.5%のカルボキシルメチルセルロース溶液を1mLずつ各wellに入れ、37℃インキュベーターで2日間放置した。2日後、上澄み液を除去し、4%ホルムアルデヒド溶液を入れ、10分間常温に放置し、ウイルスを不活性化させた。10分後、上澄み液を除去し、PBSで洗浄した。PBSに1:500で希釈し、0.5%のTriton X-100 500μlのanti-SFTSV NP単クローン抗体を各wellに入れ、常温で振とうし、90分間反応させた。上澄み液を除去した後、PBSで洗浄した。2次抗体として0.5% Triton X-100が含まれたHRP-conjugated antibodyをPBSに1:2000で希釈して、各wellに500μlずつ入れた後、常温で振とうしつつ、90分間反応させた。さらに上澄み液を除去した後、PBSで洗浄した。その後、500μlのDAB substrateを各wellに入れ、fociが茶色になるまで反応後、水道水で洗って、反応を中止させる。この際、染色された点の個数が血清なしでウイルスのみを入れたwellの個数の半分になる希釈倍数をFRNT50という。希釈倍数が高いほど中和抗体が多いものを意味する。測定結果を図14に示す。mRNAで免疫したグループの血清では、高い中和抗体が存在することを確認することができる。
【0145】
前記では、本開示の例示的な実施形態および実施例に基づいて本開示を説明したが、本開示が前記実施形態および実施例に記載された技術思想に限定されるものではない。かえって本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者なら、前述した実施形態および実施例に基づいて様々な変形と変更を容易に考慮することができる。しかしながら、
このような変形と変更は、全て、本開示の権利範囲に属するという点は、添付の請求範囲において明らかである。
図1
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【配列表】
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【国際調査報告】