(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】がんを治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240806BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240806BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20240806BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240806BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240806BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240806BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240806BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240806BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240806BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240806BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20240806BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20240806BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240806BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P15/08
A61P19/08
A61P13/12
A61P35/04
A61P37/04
A61K45/06
A61P43/00 121
A61K35/17
A61P17/00
A61P13/08
A61P7/00
A61K31/4184
A61K31/517
A61K31/497
A61K31/5377
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505311
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022038903
(87)【国際公開番号】W WO2023009834
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520281789
【氏名又は名称】フォグホーン セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FOGHORN THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アダム、アマル
(72)【発明者】
【氏名】イチカワ、カナ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンテマン、マーティン、エフ.
(72)【発明者】
【氏名】シュー、ラン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA17
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4C087ZA89
4C087ZA96
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、例えば、がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療するための有用な方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、記載の方法は、免疫療法と組み合わせて、BRM/BRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤を投与することを含む。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療することを必要とする対象おいてそれを治療する方法であって、前記対象に、有効量の、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤ならびに有効量の免疫療法を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
がんを治療することを必要とする対象おいてそれを治療する方法であって、前記対象に、有効量の以下の構造を有する化合物、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩、及び有効量の免疫療法を投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
前記免疫療法が、前記薬剤もしくは前記化合物、またはその薬学的に許容される塩と同時に投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫療法が、前記薬剤もしくは前記化合物、またはその薬学的に許容される塩の前に投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫療法が、前記薬剤もしくは前記化合物、またはその薬学的に許容される塩の後に投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫療法が、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CD-161阻害剤、または養子T細胞移入療法である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫療法が、CTLA-4阻害剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫療法が、PD-1阻害剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫療法が、PD-L1阻害剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫療法が、CD-161阻害剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫療法が、養子T細胞移入療法である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記がんが、以前に投与された免疫療法に応答しなかった、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記がんが、免疫療法に耐性がある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記がんが、BAF複合体の機能喪失をもたらす変異を含まない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記有効量の前記薬剤または前記化合物が、前記対象における活性化T細胞のレベルを増加させるのに有効な量である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記有効量の前記薬剤または前記化合物が、腫瘍微小環境における活性化T細胞のレベルを増加させるのに有効な量である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記がんが、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、食道胃癌、食道癌、膵臓癌、肝胆道癌、軟部組織肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、腎細胞癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺癌、前立腺癌、胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、消化管神経内分泌腫瘍、子宮肉腫、消化管間質腫瘍、CNS癌、胸腺腫瘍、副腎皮質癌、虫垂癌、小腸癌、陰茎癌、骨癌、または血液癌である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが、食道癌である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、陰茎癌、骨癌、腎細胞癌、前立腺癌、または血液癌である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記がんが、非小細胞肺癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記がんが、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、または血液癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記がんが、黒色腫である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記黒色腫が、ブドウ膜黒色腫、粘膜黒色腫、または皮膚黒色腫である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記黒色腫が、ブドウ膜黒色腫である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記がんが、前立腺癌である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記がんが、血液癌である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記血液癌が、多発性骨髄腫、大細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、免疫グロブリンAλ骨髄腫、びまん性混合組織球性リンパ腫及びリンパ球性リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記がんが、乳癌である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記乳癌が、ER陽性乳癌、ER陰性乳癌、トリプルポジティブ乳癌、またはトリプルネガティブ乳癌である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記がんが、骨癌である、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記骨癌が、ユーイング肉腫である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記がんが、腎細胞癌である、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記腎細胞癌が、小眼球転写因子ファミリー転座腎細胞癌である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記がんが、BRG1及び/またはBRMタンパク質を発現する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項35】
前記対象または前記がんが、BRG1の機能喪失変異を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項36】
前記BRG1の機能喪失変異が、タンパク質のATPase触媒ドメインにある、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記BRG1の機能喪失変異が、BRG1のC末端での欠失である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記がんが、上皮成長因子受容体変異及び/もしくは未分化リンパ腫キナーゼドライバー変異を有しないか、または有しないと判定されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項39】
前記がんが、KRAS変異、GNAQ変異、GNA11変異、PLCB4変異、CYSLTR2変異、BAP1変異、SF3B1変異、EIF1AX変異、TFE3転位、TFEB転位、MITF転位、EZH2変異、SUZ12変異、及び/もしくはEED変異を有するか、または有すると判定されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項40】
前記がんが、転移性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項41】
前記がんが、抗がん療法に対して耐性があるか、または抗がん療法による以前の処置に応答しなかった、請求項1または2に記載の方法。
【請求項42】
前記抗がん療法が、化学療法剤もしくは細胞傷害性剤、免疫療法、手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固、あるいはそれらの組み合わせである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗がん療法が、化学療法剤または細胞傷害性剤である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記化学療法剤または細胞傷害性剤が、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記がんが、PKC阻害剤に対して耐性があるか、またはPKC阻害剤による以前の処置に応答しなかった、請求項1または2に記載の方法。
【請求項46】
前記方法が、前記対象に、抗がん療法を投与することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項47】
前記抗がん療法が、化学療法剤もしくは細胞傷害性剤、免疫療法、手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固、あるいはそれらの組み合わせである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記抗がん療法が、手術、MEK阻害剤、及び/またはPKC阻害剤、あるいはそれらの組み合わせである、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記MEK阻害剤が、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはタメチニブである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記PKC阻害剤が、ソトラスタウリンまたはIDE196である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療するための免疫療法と組み合わせて使用するための、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する、薬剤。
【請求項52】
がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療するための免疫療法と組み合わせて使用するための、以下の構造を有する化合物:
【化2】
またはその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月29日に出願された米国仮出願第63/227,111号、及び2021年11月17日に出願された米国仮出願第63/280,430号の利益を主張する。上記出願の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、BRG1またはBRM関連因子(BAF)複合体を調節する化合物を用いてがんを治療する方法に関する。
【0003】
クロマチン調節は、遺伝子発現に不可欠であり、ATP依存性クロマチンリモデリングが、かかる遺伝子発現が生じる機序である。ヒトスイッチ/スクロース非発酵性(SWI/SNF)クロマチンリモデリング複合体は、BAF複合体としても知られており、BRG1(Brahma関連遺伝子-1)及びBRM(Brahma)として知られている2つのSWI2様ATPaseを有する。転写活性化因子BRG1は、ATP依存性クロマチンリモデラーSMARCA4としても知られ、19番染色体上のSMARCA4遺伝子によってコードされる。BRG1は、一部のがん腫瘍で過剰発現され、がん細胞の増殖に必要とされる。BRMは、可能性の高いグローバル転写活性化因子SNF2L2及び/またはATP依存性クロマチンリモデラーSMARCA2としても知られており、9番染色体上のSMARCA2遺伝子によってコードされ、BRG1の機能喪失変異を特徴とする細胞における腫瘍細胞の増殖に不可欠であることが示されている。BRG及び/またはBRMの脱活性化は、細胞周期停止及び腫瘍抑制を含む、細胞における下流効果をもたらす。
【0004】
患者の免疫系を利用する免疫療法は、多くの異なるがん型の治療において有効であることが見出されており、がん療法の重要な部分となっている。しかしながら、一部のがんは、免疫療法に対する反応性が低い。したがって、免疫療法に対するがんの反応性を高めるアプローチを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、例えば、がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療するための有用な方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、がんの治療のための免疫療法と組み合わせたBRM及び/またはBRG-1阻害剤の投与を含む。
【0006】
一態様では、本発明は、がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療する方法を特徴とする。この方法は、対象に、(i)有効量の、対象におけるBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤、ならびに(ii)有効量の免疫療法を投与するステップを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、対象におけるBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤と同時に投与される。いくつかの実施形態では、免疫療法は、対象におけるBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤の前(例えば、少なくとも1時間前、少なくとも12時間前、少なくとも1日前、少なくとも1週間前、少なくとも2週間前、少なくとも4週間前)に投与される。いくつかの実施形態では、免疫療法は、対象におけるBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤の後(例えば、少なくとも1時間後、少なくとも12時間後、少なくとも1日後、少なくとも1週間後、少なくとも2週間後、少なくとも4週間後)に投与される。
【0008】
いくつかの実施形態では、がんは、以前に投与された免疫療法に応答しなかった。いくつかの実施形態では、がんは、免疫療法に対して耐性がある(例えば、耐性があると判定される、または予測される)。
【0009】
前述の方法のうちのいずれかの一実施形態では、免疫療法は、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、または養子T細胞移入療法である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、PD-1抗体などのPD-1阻害剤、PD-L1抗体などのPD-L1阻害剤、CTLA-4抗体または融合タンパク質などのCTLA-4阻害剤、CSF-1R阻害剤、IDO阻害剤、A1アデノシン阻害剤、A2Aアデノシン阻害剤、A2Bアデノシン阻害剤、A3Aアデノシン阻害剤、アルギナーゼ阻害剤、またはHDAC阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、PD-1阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、またはBMS 936559)である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、PD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブまたはMEDI4736)である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、CSF-1R阻害剤(例えば、ペキシダルチニブまたはAZD6495)である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、IDO阻害剤(例えば、ノルハルマン、ロスマリン酸、またはα-メチル-トリプトファン)である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、A1アデノシン阻害剤(例えば、8-シクロペンチル-1,3-ジメチルキサンチン、8-シクロペンチル-1,3-ジプロピルキサンチン、8-フェニル-1,3-ジプロピルキサンチン、バミフィリン、BG-9719、BG-9928、FK-453、FK-838、ロロフィリン、またはN-0861)である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、A2Aアデノシン阻害剤(例えば、ATL-4444、イストラデフィリン、MSX-3、プレラデナント、SCH-58261、SCH-412,348、SCH-442,416、ST-1535、VER-6623、VER-6947、VER-7835、ヴィアデナント(viadenant)、またはZM-241,385)である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、A2Bアデノシン阻害剤(例えば、ATL-801、CVT-6883、MRS-1706、MRS-1754、OSIP-339,391、PSB-603、PSB-0788、またはPSB-1115)である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、A3Aアデノシン阻害剤(例えば、KF-26777、MRS-545、MRS-1191、MRS-1220、MRS-1334、MRS-1523、MRS-3777、MRE-3005-F20、MRE-3008-F20、PSB-11、OT-7999、VUF-5574、またはSSR161421)である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、アルギナーゼ阻害剤(例えば、アルギナーゼ抗体、(2s)-(+)-アミノ-5-ヨードアセトアミドペンタン酸、NG-ヒドロキシ-L-アルギニン、(2S)-(+)-アミノ-6-ヨードアセトアミドヘキサン酸、または(R)-2-アミノ-6-ボロノ-2-(2-(ピペリジン-1-イル)エチル)ヘキサン酸)である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、HDAC阻害剤(例えば、バルプロ酸、SAHA、またはロミデプシン)である。
【0010】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、CD-161(KLRB1またはNKR-P1Aとしても知られる)阻害剤(例えば、IMT-009)である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、NK及びT細胞モジュレーター(例えば、IMT-073)である。
【0011】
いくつかの実施形態では、有効量の、対象におけるBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する(例えば、活性レベルを、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%低減する)薬剤は、対象における(例えば、腫瘍微小環境における)活性化T細胞のレベルを増加させるのに有効な量である。
【0012】
いくつかの実施形態では、がんは、BRG1及び/またはBRMタンパク質を発現し、及び/または細胞または対象は、BRG1及び/またはBRMを発現していると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、BRG1タンパク質を発現し、及び/または細胞または対象は、BRG1を発現していると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、BRMタンパク質を発現し、及び/または細胞または対象は、BRMを発現していると同定されている。いくつかの実施形態では、対象またはがんは、BRG1の機能喪失変異を有する、及び/またはそれを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、対象またはがんは、BRMの機能喪失変異を有する、及び/またはそれを有すると同定されている。
【0013】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、1つ以上のBRG1変異(例えば、ホモ接合変異)を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、1つ以上のBRG1変異は、タンパク質のATPase触媒ドメインに変異を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のBRG1変異は、BRG1のC末端での欠失を含む。
【0014】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、上皮成長因子受容体(EGFR)変異を有しないか、または有しないと判定されている。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)ドライバー変異を有しないか、または有しないと判定されている。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、KRAS変異を有するか、または有すると判定されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、がんは、GNAQに変異を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、GNA11に変異を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、PLCB4に変異を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、CYSLTR2に変異を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、BAP1に変異を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、SF3B1に変異を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、EIF1AXに変異を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、TFE3転位を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、TFEB転位を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、MITF転位を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、EZH2変異を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、SUZ12変異を有するか、または有すると判定されている。いくつかの実施形態では、がんは、EED変異を有するか、または有すると判定されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、がんは、転移性である。例えば、がんは、遊走細胞の遊走及び/または浸潤を呈する細胞を含み、及び/または内皮動員及び/または血管新生を呈する細胞を含む。転移性癌は、腹膜、胸膜、心膜、またはくも膜下の空間の表面を播種することを介して広がり得る。代替的に、転移性癌は、リンパ系を介して広がり得るか、または血行的に広がり得る。いくつかの実施形態では、がんは、細胞遊走がん(例えば、非転移性細胞遊走がん)である。
【0017】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、食道胃癌、食道癌、膵臓癌、肝胆道癌、軟部組織肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、腎細胞癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺癌、前立腺癌、胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、消化管神経内分泌腫瘍、子宮肉腫、消化管間質腫瘍、CNSがん、胸腺腫瘍、副腎皮質癌、虫垂癌、小腸癌、陰茎癌、骨癌、または血液癌である。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、食道癌である。
【0018】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、陰茎癌、骨癌、腎細胞癌、前立腺癌、または血液癌である。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌である。
【0019】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、または血液癌である。
【0020】
いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫(例えば、ブドウ膜黒色腫、粘膜黒色腫、または皮膚黒色腫)である。いくつかの実施形態では、がんは、前立腺癌である。いくつかの実施形態では、がんは、血液癌(例えば、多発性骨髄腫、大細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、免疫グロブリンAλ骨髄腫、びまん性混合組織球性リンパ腫及びリンパ球性リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(例えば、T細胞性急性リンパ芽球性白血病またはB細胞性急性リンパ芽球性白血病)、びまん性大細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫)である。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌(例えば、ER陽性乳癌、ER陰性乳癌、トリプルポジティブ乳癌、またはトリプルネガティブ乳癌)である。いくつかの実施形態では、がんは、骨癌(例えば、ユーイング肉腫)である。いくつかの実施形態では、がんは、腎細胞癌(例えば、小眼球症転写因子(MITF)ファミリー転座腎細胞癌(tRCC))である。
【0021】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、薬物耐性である(例えば、がんは、化学療法剤もしくは細胞傷害性剤に対して耐性があると判断されているか、またはその可能性が高い、例えば、遺伝子マーカーによって、または化学療法剤もしくは細胞傷害性剤に応答しなかったがんなどの化学療法剤もしくは細胞傷害性剤に対して耐性がある可能性が高い)、及び/または以前の療法(例えば、化学療法剤もしくは細胞傷害性剤、免疫療法、手術、放射線療法、熱処理、もしくは光凝固、またはそれらの組み合わせ)に対して応答しなかった。
【0022】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、ベムラフェニブ、ダカルバジン、CTLA4阻害剤、PD-1阻害剤、インターフェロン治療剤、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、放射線療法、テモゾリミド、イリノテカン、CAR-T療法、ハーセプチン、パージェタ、タモキシフェン、ゼローダ、ドセタキソール、カルボプラチンなどのプラチナ製剤、パクリタキセル及びドセタキセルなどのタキサン、ALK阻害剤、MET阻害剤、アリムタ、アブラキサン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、アバスチン、ハラベン、ネラチニブ、PARP阻害剤、ブリラネストラント、mTOR阻害剤、トポテカン、ゲムザール、VEGFR2阻害剤、葉酸受容体拮抗薬、デムシズマブ、フォスブレタブリン、CD-161阻害剤、もしくはPD-L1阻害剤)、またはそれらの組み合わせに対して耐性がある、及び/または応答しなかった。
【0023】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、ダカルバジン、テモゾロミド、シスプラチン、トレオスルファン、フォテムスチン、IMCgp100、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、PD-1阻害剤(例えば、ニボルマブもしくはペムブロリズマブ)、PD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、もしくはデュルバルマブ)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、もしくはトラメチニブ)、及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤(例えば、ソトラスタウリンもしくはIDE196)に対して耐性があるか、または応答しなかった。
【0024】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、例えば、MEK阻害剤またはPKC阻害剤のブドウ膜黒色腫の治療に使用される、以前に投与された治療薬に対して耐性があるか、または応答しなかった。例えば、いくつかの実施形態では、がんは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、もしくはタメチニブ)、及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤(例えば、ソトラスタウリンもしくはIDE196)に対して耐性があるか、または応答しなかった。
【0025】
いくつかの実施形態では、細胞におけるBRD7のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、小分子化合物、抗体、酵素、及び/またはポリヌクレオチドである。
【0026】
いくつかの実施形態では、細胞におけるBRD7のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、クラスター化された規則的な間隔の短い回文反復配列(CRISPR)関連タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはメガヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)である。
【0027】
いくつかの実施形態では、細胞におけるBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、酵素である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸、短い干渉RNA(siRNA)、短いヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、CRISPR/Cas9ヌクレオチド(例えば、ガイドRNA(gRNA))、またはリボザイムである。いくつかの実施形態では、細胞におけるBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、小分子化合物(例えば、BRG1を上回るBRMに対して選択的であるか、またはBRMを上回るBRG1に対して選択的であるBRM及び/またはBRG1阻害剤などの小分子BRM及び/またはBRG1阻害剤)である。いくつかの実施形態では、小分子化合物は、分解剤である。
【0028】
いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、N-(1-((4-(6-(2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩であり、以下の構造を有する。
【化1】
【0029】
いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤、またはその薬学的に許容される塩は、以下の構造を有する。
【化2】
【0030】
いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤、またはその薬学的に許容される塩は、以下の構造を有する。
【化3】
【0031】
いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤、またはその薬学的に許容される塩は、以下の構造を有する。
【化4】
【0032】
いくつかの実施形態では、本方法は、前述の化合物のうちのいずれか及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物を投与することを含む。
【0033】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、有効量の化合物は、基準物質と比較して、BRG1のレベル及び/または活性を、少なくとも5%(例えば、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)低減する。
【0034】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、有効量の化合物は、基準物質と比較して、少なくとも12時間(例えば、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、少なくとも24時間、少なくとも30時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、少なくとも28日間、またはそれ以上)、BRG1のレベル及び/または活性を少なくとも5%(例えば、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)低減する。
【0035】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、有効量の化合物は、基準物質と比較して、BRMのレベル及び/または活性を、少なくとも5%(例えば、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)低減する。
【0036】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、有効量の化合物は、基準物質と比較して、少なくとも12時間(例えば、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、少なくとも24時間、少なくとも30時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、少なくとも28日間、またはそれ以上)、BRMのレベル及び/または活性を少なくとも5%(例えば、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)低減する。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物の有効量は、肝臓及び/または脳へのがんの転移性コロニー形成を阻害するのに有効な量である。
【0038】
前述の方法のうちのいずれかの別の実施形態では、本方法は、対象に、追加の抗がん療法、例えば、化学療法剤もしくは細胞傷害性薬剤、免疫療法、手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固、あるいはそれらの組み合わせを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗がん療法は、化学療法剤または細胞傷害性剤であり、例えば、代謝拮抗剤、抗有糸分裂剤、抗腫瘍剤、抗生剤、アスパラギン特異的酵素、ビスホスホネート、抗悪性腫瘍剤、アルキル化剤、DNA修復酵素阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、コルチコステロイド、脱メチル化剤、免疫調節剤、ヤヌス関連キナーゼ阻害剤、ホスフィノシチド3-キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、もしくはチロシンキナーゼ阻害剤、またはそれらの組み合わせである。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、手術などのブドウ膜黒色腫の治療に使用される別の抗がん療法、MEK阻害剤、及び/またはPKC阻害剤、あるいはそれらの組み合わせと組み合わせて使用される。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、本発明の化合物の投与の前、その後、またはそれと同時に手術を行うことをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、本発明の化合物の投与の前、その後、またはそれと同時に、MEK阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、もしくはタメチニブ)及び/またはPKC阻害剤(例えば、ソトラスタウリンもしくはIDE196)の投与をさらに含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、抗がん療法及び本発明の化合物は、互いに28日以内(例えば、21日以内、14日以内、もしくは7日以内)に、各々が一緒になって対象を治療するのに有効な量で投与される。
【0041】
特定の実施形態では、抗増殖剤は、化学療法剤または細胞傷害性薬剤、分化誘導剤(例えば、レチノイン酸、ビタミンD、サイトカイン)、ホルモン剤、免疫学的剤、または抗血管新生剤である。化学療法剤及び細胞傷害性薬剤としては、アルキル化剤、細胞傷害性抗生物質、代謝拮抗剤、ビンカアルカロイド、エトポシド、及び他の薬剤(例えば、パクリタキセル、タキソール、ドセタキセル、タキソテール、シス-プラチン)が挙げられるが、これらに限定されない。抗増殖剤を有する追加の化合物の一覧は、L.Brunton,B.Chabner and B.Knollman(eds).Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Twelfth Edition,2011,McGraw Hill Companies,New York,NYに見出すことができる。
【0042】
本方法は、アルキル化剤、白金剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍抗生物質、抗有糸分裂剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNA拮抗剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNF αアゴニスト/アンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫調節剤、ホルモン剤及び抗ホルモン剤、光力学薬剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アンチセンス化合物、コルチコステロイド、HSP90阻害剤、プロテオソーム阻害剤(例えば、NPI-0052)、CD40阻害剤、抗CSI抗体、FGFR3阻害剤、VEGF阻害剤、MEK阻害剤、サイクリンD1阻害剤、NF-kB阻害剤、アントラサイクリン、ヒストンデアセチラーゼ、キネシン阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、COX2阻害剤、mTOR阻害剤、カルシニューリン拮抗薬、IMiD、または増殖性疾患を治療するために使用される他の薬剤からなる群から選択される抗増殖剤を投与することをさらに含み得る。
【0043】
特定の実施形態では、抗増殖剤、及び/または免疫療法、ならびにBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、互いに28日以内(例えば、21、14、10、7、5、4、3、2、もしくは1日以内)、または24時間以内(例えば、12、6、3、2、もしくは1時間、または同時に)に、各々が一緒になって対象を治療するのに有効な量で投与される。
【0044】
別の態様では、本発明は、がん(例えば、本明細書に記載のがん)を治療することを必要とする対象においてそれを治療するために、例えば、本明細書に記載の方法に従って、免疫療法(例えば、本明細書に記載の免疫療法)と組み合わせて使用するための、BRM及び/またはBRG1(例えば、本明細書に記載の薬剤)のレベル及び/または活性を低減する薬剤を特徴とする。
【0045】
さらに別の態様では、本発明は、がん(例えば、本明細書に記載のがん)を治療することを必要とする対象において、例えば、本明細書に記載の方法に従って、がん(例えば、本明細書に記載のがん)を治療するための免疫療法(例えば、本明細書に記載の免疫療法)と組み合わせて使用するための、以下の構造を有する化合物、
【化5】
またはその薬学的に許容される塩を特徴とする。
【0046】
別の態様では、本発明は、がん(例えば、本明細書に記載のがん)を治療することを必要とする対象においてそれを治療するために、医薬の製造において、例えば、本明細書に記載の方法に従って、免疫療法(例えば、本明細書に記載の免疫療法)と組み合わせて、BRM及び/またはBRG1(例えば、本明細書に記載の薬剤)のレベル及び/または活性を低減する薬剤の使用を特徴とする。
【0047】
さらに別の態様では、本発明は、がん(例えば、本明細書に記載のがん)を治療することを必要とする対象においてそれを治療するために、医薬の製造において、例えば、本明細書に記載の方法に従って、免疫療法(例えば、本明細書に記載の免疫療法)と組み合わせて、以下の構造を有する化合物、
【化6】
またはその薬学的に許容される塩の使用を特徴とする。
【0048】
化学用語
本発明の化合物は、1つ以上の不斉炭素原子を有することができ、光学的に純粋なエナンチオマー、例えば、ラセミ体などのエナンチオマーの混合物、光学的に純粋なジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、またはジアステレオマーラセミ体の混合物の形態で存在することができる。光学的に活性な形態は、例えば、ラセミ体の分割により、不斉合成または不斉クロマトグラフィー(キラル吸着剤または溶離剤を用いたクロマトグラフィー)により得ることができる。つまり、ある特定の開示された化合物は、様々な立体異性体形態で存在してもよい。立体異性体は、それらの空間配置のみが異なる化合物である。エナンチオマーは、最も一般的には、それらがキラル中心として機能する非対称に置換された炭素原子を含むため、その鏡像を重ねることができない立体異性体の対である。エナンチオマーは、互いの鏡像であり、かつ重ねることができない一対の分子のうちの1つを意味する。ジアステレオマーは、最も一般的には、それらが2つ以上の非対称に置換された炭素原子を含有し、かつ1つ以上のキラル炭素原子の周りの置換基の立体配置を表すため、鏡像として関連しない立体異性体である。化合物のエナンチオマーは、例えば、キラルクロマトグラフィー及びそれに基づく分離方法などの1つ以上の周知の技術及び方法を使用して、例えば、ラセミ体からエナンチオマーを分離することによって調製され得る。本明細書に記載される化合物のエナンチオマーをラセミ混合物から分離するための適切な技術及び/または方法は、当業者により容易に決定され得る。「ラセミ体」または「ラセミ混合物」とは、2つのエナンチオマーを含む化合物を意味し、そのような混合物は光学活性を呈さず、すなわち、それらは偏光面を回転させない。「幾何異性体」とは、炭素-炭素二重結合、シクロアルキル環、または架橋二環式系との関係において置換原子の向きが異なる異性体を意味する。炭素-炭素二重結合の各側の原子(H以外)は、E(置換基は炭素-炭素二重結合の反対側にある)立体配置にあっても、Z(置換基は同じ側に配向されている)立体配置にあってもよい。「R」、「S」、「S*」、「R*」、「E」、「Z」、「シス」、及び「トランス」は、コア分子に対する立体配置を示す。ある特定の開示された化合物は、アトロプ異性体形態で存在してもよい。アトロプ異性体は、回転に対する立体歪み障壁が配座異性体の単離を可能にするのに十分な高さである、単結合の周りの妨げられた回転から生じる立体異性体である。本発明の化合物は、異性体特異的合成により、または異性体混合物から分割して、個々の異性体として調製され得る。従来の分割手法は、光学的に活性な酸を使用して異性体対の各異性体の遊離塩基の塩を形成すること(続いて、遊離塩基の分別結晶及び再生成を行う)、光学的に活性なアミンを使用して異性体対の各異性体の酸形態の塩を形成すること(続いて、遊離酸の分別結晶及び再生成を行う)、光学的に純粋な酸、アミン、またはアルコールを使用して異性体対の異性体の各々のエステルもしくはアミドを形成すること(続いて、キラル補助剤のクロマトグラフィー分離及び除去)、または様々な周知のクロマトグラフィー法を使用して出発物質もしくは最終生成物のいずれかの異性体混合物を分割することを含む。開示された化合物の立体化学が構造によって命名または示されている場合、命名されたまたは示された立体異性体は、他の立体異性体に対して少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%である。単一のエナンチオマーが構造によって命名または示されている場合、示されたまたは命名されたエナンチオマーは、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%光学的に純粋である。単一のジアステレオマーが構造によって命名または示されている場合、示されたまたは命名されたジアステレオマーは、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%純粋である。光学純度パーセントは、エナンチオマーの重量、またはエナンチオマーの重量及びその光学異性体の重量に対する比である。重量によるジアステレオマー純度は、1つのジアステレオマーの重量または全てのジアステレオマーの重量に対する比である。開示された化合物の立体化学が構造によって命名または示されている場合、命名されたまたは示された立体異性体は、他の立体異性体に対してモル分率で少なくとも60%、70%、80%、90%、99%、または99.9%純粋である。単一のエナンチオマーが構造によって命名または示されている場合、示されたまたは命名されたエナンチオマーは、モル分率で少なくとも60%、70%、80%、90%、99%、または99.9%純粋である。単一のジアステレオマーが構造によって命名または示されている場合、示されたまたは命名されたジアステレオマーは、モル分率で少なくとも60%、70%、80%、90%、99%、または99.9%純粋である。モル分率による純度パーセントは、エナンチオマーのモル、またはエナンチオマーのモル及びその光学異性体のモルに対する比である。同様に、モル分率による純度パーセントは、ジアステレオマーのモル、またはジアステレオマーのモル及びその異性体のモルに対する比である。開示された化合物が立体化学を示さずに構造によって命名または示され、化合物が少なくとも1つのキラル中心を有する場合、名前または構造は、対応する光学異性体を含まない化合物のエナンチオマー、化合物のラセミ混合物、化合物の混合物、またはその対応する光学異性体に対して1つのエナンチオマーが濃縮されている混合物のいずれかを包含すると理解されるべきである。開示された化合物が、立体化学を示さずに構造によって命名または示され、2つ以上のキラル中心を有する場合、名前または構造は、他のジアステレオマーを含まないジアステレオマー、他のジアステレオマー対を含まないいくつかのジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマー対の混合物、一方のジアステレオマーが他のジアステレオマーに対して濃縮されているジアステレオマーの混合物、または1つ以上のジアステレオマーが他のジアステレオマー(複数可)に対して濃縮されているジアステレオマーの混合物を包含すると理解されるべきである。本発明は、これらの形態の全てを包含する。
【0049】
特に明記しない限り、本明細書に示される構造はまた、1つ以上の同位体的に濃縮された原子の存在のみで異なる化合物を含むことも意味する。本発明の化合物に組み込み得る例示的な同位体としては、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、32P、33P、35S、18F、36Cl、123I、及び125Iなど、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素、及びヨウ素の同位体が挙げられる。同位体標識された化合物(例えば、3H及び14Cで標識されたもの)は、化合物または基質組織分布アッセイにおいて有用であり得る。トリチウム化(すなわち、3H)及び炭素-14(すなわち、14C)同位体は、それらの調製の容易さ及び検出可能性のために有用であり得る。さらに、重水素(すなわち、2H)などのより重い同位体での置換により、より大きな代謝安定性に起因する特定の治療的利益(例えば、増加したインビボ半減期または低減した必要用量)が得られてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の水素原子は、2Hまたは3Hによって置き換えられるか、または1つ以上の炭素原子は、13Cまたは14C濃縮炭素によって置き換えられる。15O、13N、11C、及び18Fなどの陽電子放出同位体は、基質受容体占有率を調べるための陽電子放出断層撮影(PET)研究に有用である。同位体で標識された化合物の調製は、当業者に既知である。例えば、同位体で標識された化合物は、一般に、本明細書に記載される本発明の化合物について開示されるものに類似する手順に従って、同位体で標識された試薬を非同位体標識試薬に置換することによって調製され得る。
【0050】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本開示で使用するための方法及び材料を本明細書で説明する。当該技術分野で既知の他の好適な方法及び材料もまた使用され得る。それらの材料、方法、及び例は、例証にすぎず、限定するようには意図されていない。本明細書で言及される全ての出版物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。
【0051】
定義
この出願では、文脈から別途明確でない限り、(i)「a」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解されてもよく、(ii)「または」という用語は、「及び/または」を意味すると理解されてもよく、(iii)「comprising(を含む)」及び「including(を含む)」という用語は、それ自体で表されるか、または1つ以上の追加の構成要素もしくはステップとともに表されるかにかかわらず、項目化された構成要素またはステップを包含すると理解されてもよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、「A1アデノシン阻害剤」という用語は、ヒトにおいてADORA1遺伝子(受託番号P30542)によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のA1アデノシン阻害剤としては、8-シクロペンチル-1,3-ジメチルキサンチン、8-シクロペンチル-1,3-ジプロピルキサンチン、8-フェニル-1,3-ジプロピルキサンチン、バミフィリン、BG-9719、BG-9928、FK-453、FK-838、ロロフィリン、及びN-0861が挙げられる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「A2Aアデノシン阻害剤」という用語は、ヒトにおいてADORA2A遺伝子(受託番号P29274)によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のA2Aアデノシン阻害剤としては、ATL-4444、イストラデフィリン、MSX-3、プレラデナント、SCH-58261、SCH-412,348、SCH-442,416、ST-1535、VER-6623、VER-6947、VER-7835、ヴィアデナント(viadenant)、及びZM-241,385が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「A2Bアデノシン阻害剤」という用語は、ヒトにおいてADORA2B遺伝子(受託番号P29275)によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のA2Bアデノシン阻害剤としては、ATL-801、CVT-6883、MRS-1706、MRS-1754、OSIP-339,391、PSB-603、PSB-0788、及びPSB-1115が挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「A3Aアデノシン阻害剤」という用語は、ヒトにおいてADORA3遺伝子(受託番号P0DMS8)によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のA3Aアデノシン阻害剤としては、KF-26777、MRS-545、MRS-1191、MRS-1220、MRS-1334、MRS-1523、MRS-3777、MRE-3005-F20、MRE-3008-F20、PSB-11、OT-7999、VUF-5574、及びSSR161421が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「約」及び「およそ」という用語は、説明されている値の上下10%以内の値を指す。例えば、「約5nM」という用語は、4.5~5.5nMの範囲を示す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、対象または系への組成物(例えば、化合物または本明細書に記載されるような化合物を含む調製物)の投与を指す。動物対象への(例えば、ヒトへの)投与は、任意の適切な経路によるものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、気管支(気管支点滴によるものを含む)、頬側、経腸、皮内(interdermal)、動脈内、皮内(intradermal)、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、くも膜下腔内、腫瘍内、静脈内、脳室内、粘膜、鼻腔、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(気管内点滴によるものを含む)、経皮、膣、及び硝子体であり得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「アルギナーゼ阻害剤」という用語は、ヒトにおいてARG1遺伝子(受託番号P05089)またはARG2遺伝子(受託番号P78540)によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる化合物を指す。既知のアルギナーゼ阻害剤としては、(2s)-(+)-アミノ-5-ヨードアセトアミドペンタン酸、NG-ヒドロキシ-L-アルギニン、(2S)-(+)-アミノ-6-ヨードアセトアミドヘキサン酸、及び(R)-2-アミノ-6-ボロノ-2-(2-(ピペリジン-1-イル)エチル)ヘキサン酸が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「BAF複合体」という用語は、ヒト細胞におけるBRG1またはHBRM関連因子複合体を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「BAF複合体関連障害」という用語は、BAF複合体の活性のレベルによって引き起こされるか、または影響される障害を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「BRG1の機能喪失変異」という用語は、活性の減弱(例えば、BRG1活性の少なくとも1%の低減、例えば、BRG1活性の2%、5%、10%、25%、50%、または100%の低減)を有するタンパク質をもたらすBRG1における変異を指す。例示的なBRG1の機能喪失変異には、限定されないが、BRG1のC末端におけるホモ接合性BRG1の変異及び欠失が含まれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「BRG1の機能喪失障害」という用語は、BRG1活性の低減(例えば、BRG1活性の少なくとも1%の低減、例えば、BRG1活性の2%、5%、10%、25%、50%、または100%の低減)を呈する障害(例えば、がん)を指す。
【0063】
「がん」という用語は、腫瘍、新生物、がん腫、肉腫、白血病、及びリンパ腫などの悪性腫瘍細胞の増殖によって引き起こされる状態を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「併用療法」または「組み合わせて投与される」は、2つ(またはそれ以上)の異なる薬剤または治療が、特定の疾患または状態に対する定義された治療レジメンの一部として対象に投与されることを意味する。治療レジメンは、対象に対する別々の薬剤の効果が重複するように、各薬剤の投与の用量及び周期性を定義する。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤の送達は、同時であっても並行であってもよく、薬剤は共製剤化されてもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤は、共製剤化されておらず、処方されたレジメンの一部として逐次的様式で投与される。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤または組み合わせた治療の投与は、症状、または障害に関連する他のパラメータの低減が、単独でまたは一方の非存在下で送達される1つの薬剤または治療で観察されるものよりも大きいようなものである。2つの治療の効果は、部分的に相加的、完全に相加的、または相加的を超える(例えば、相乗的)であり得る。各治療薬の順次のまたは実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を経た直接的な吸収を含むが、これらに限定されない何らかの適切な経路によって生じさせることができる。治療薬は、同じ経路によって投与することも、異なる経路によって投与することもできる。例えば、組み合わせの第1の治療剤は、静脈内注射によって投与されてもよいが、一方で、組み合わせの第2の治療剤が経口投与されてもよい。
【0065】
本明細書で使用される場合、「CTLA-4阻害剤」という用語は、ヒトにおいてCTLA4遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のCTLA-4阻害剤としては、イピリムマブが挙げられる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「CSF-1R阻害剤」という用語は、ヒトにおいてCSF1R遺伝子(受託番号P07333)によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のCSF-1R阻害剤としては、ペキシダルチニブ及びAZD6495が挙げられる。
【0067】
タンパク質またはRNAの「レベルを決定する」とは、直接または間接的のいずれかで、当該技術分野で既知である方法による、タンパク質またはRNAの検出を意味する。「直接決定すること」とは、物理的実体または値を得るためにプロセスを実行すること(例えば、試料に対してアッセイもしくは試験を実行すること、またはその用語が本明細書で定義されるように「試料を分析すること」)を意味する。「間接的に決定すること」は、別の団体または供給源(例えば、物理的実体または値を直接的に取得した第3者の研究室)から物理的実体または値を受領することを指す。タンパク質レベルを測定する方法には、概して、限定されないが、ウェスタンブロット法、免疫ブロット法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫沈降、免疫蛍光、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学分析、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)質量分析法、液体クロマトグラフィー(LC)質量分析法、マイクロサイトメトリー、顕微鏡法、蛍光活性化細胞分類(FACS)、及びフローサイトメトリー、ならびに限定されないが、酵素活性または他のタンパク質パートナーとの相互作用を含む、タンパク質の性質に基づくアッセイが含まれる。RNAレベルを測定する方法は、当該技術分野で既知であり、限定されないが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)及びノーザンブロット分析が含まれる。
【0068】
タンパク質またはRNAの「減少したレベル」または「増加したレベル」とは、それぞれ、基準物質と比較した場合のタンパク質またはRNAレベルの減少または増加を意味する(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%、またはそれ以上の減少または増加、基準物質と比較して約10%、約15%、約20%、約50%、約75%、約100%、または約200%超の減少または増加、約0.01倍、約0.02倍、約0.1倍、約0.3倍、約0.5倍、約0.8倍未満、またはそれ未満の減少または増加、あるいは約1.2倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.8倍、約2.0倍、約3.0倍、約3.5倍、約4.5倍、約5.0倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約1000倍超、またはそれ以上の増加)。タンパク質のレベルは、質量/体積(例えば、g/dL、mg/mL、μg/mL、ng/mL)または試料中の総タンパク質に対する百分率で表され得る。
【0069】
「BAF複合体の活性を減少させる」とは、BAF複合体に関連する活性、または関連する下流効果のレベルを減少させることを意味する。BAF複合体の活性を減少させる非限定的な例は、Sox2の活性化である。BAF複合体の活性レベルは、当該技術分野で既知の任意の方法、例えば、Kadoch et al.Cell,2013,153,71-85に記載されている方法を使用して測定することができ、その方法は参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、本明細書に記載される化合物、ペプチド、タンパク質、または他の物質の天然発生型、合成、及び半合成類似体を指す。本明細書に記載される化合物、ペプチド、タンパク質、または他の物質の誘導体は、元の材料の生物学的活性を保持または改善し得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、「薬物耐性であると判定された」がんは、化学療法剤に対する無反応または低下した反応性に基づいて薬物耐性であるか、または予後アッセイ(例えば、遺伝子発現アッセイ)に基づいて薬物耐性であると予測されるがんを指す。
【0072】
「薬剤耐性」とは、1つ以上の化学療法剤(例えば、本明細書に記載の任意の薬剤)に反応しないか、または低下した反応を示すがんを意味する。
【0073】
本明細書で使用される場合、「以前の治療に反応しなかった」または「以前の治療が無効である」という用語は、治療による治療にもかかわらず進行したがんを指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「HDAC阻害剤」という用語は、ヒストンデアセチラーゼクラスの酵素、例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10、HDAC11、SIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、及びSIRT7のメンバーであるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のHDAC阻害剤としては、バルプロ酸、SAHA、及びロミデプシンが挙げられる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「IDO阻害剤」という用語は、ヒトにおいてIDO1遺伝子(受託番号P14902)によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のIDO阻害剤としては、ノルハルマン、ロスマリン酸、及びα-メチル-トリプトファンが挙げられる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「BRMを阻害すること」及び/または「BRG1を阻害すること」という用語は、タンパク質のATPase触媒結合ドメインまたはブロモドメインのレベルまたは活性を、遮断または低減することを指す。BRM及び/またはBRG1阻害は、当該技術分野で既知の方法、例えば、BRM及び/またはBRG1 ATPaseアッセイ、Nano DSFアッセイ、あるいはBRM及び/またはBRG1ルシフェラーゼ細胞アッセイを使用して決定され得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、IDE196としても知られている、「LXS196」という用語は、以下の構造を有するPKC阻害剤、
【化7】
またはその薬学的に許容される塩、を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「転移性結節」は、元の腫瘍の部位以外の部位における体内の腫瘍細胞の凝集を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「転移性癌」とは、腫瘍を形成するがん細胞が、リンパ系を介して、または血液由来の拡散を介して、例えば、対象内に二次腫瘍を生じさせる、対象内の1つの位置から別の位置(複数可)への転移または拡散の可能性が高いか、または開始している、腫瘍またはがんを指す。そのような転移性挙動は、悪性腫瘍を示し得る。場合によっては、転移性挙動は、腫瘍細胞の細胞遊走及び/または浸潤挙動の増加と関連付けられ得る。
【0080】
転移性と定義され得るがんの例としては、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、乳癌、卵巣癌、大腸癌、胆道癌、膀胱癌、神経膠芽腫及び髄芽腫を含む脳癌、子宮頸癌、絨毛癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、血液新生物、多発性骨髄腫、白血病、上皮内新生物、肝臓癌、リンパ腫、神経芽細胞腫、口腔癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、黒色腫を含む皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣癌、間質腫瘍、胚細胞腫瘍、甲状腺癌、及び腎癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書で使用される場合、「非転移性細胞遊走癌」は、リンパ系を介して、または血行性拡大を介して遊走しないがんを指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「PD-1阻害剤」という用語は、ヒトにおいてPDCD1遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のPD-1阻害剤としては、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、BMS 936559、及びアテゾリズマブが挙げられる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「PD-L1阻害剤」という用語は、ヒトにおいてCD274遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のPD-L1阻害剤としては、アテゾリズマブ及びデュルバルマブが挙げられる。
【0084】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、薬学的に許容される賦形剤を用いて製剤化され、かつ哺乳動物、例えば、ヒトへの投与に適切な、本明細書に記載される化合物を含む組成物を表す。典型的には、薬学的組成物は、哺乳動物の疾患の治療のための治療レジメンの一部として、政府規制機関の承認によって製造または販売される。薬学的組成物は、例えば、単位剤形(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ゲルキャップ、またはシロップ)での経口投与のため、局所投与(例えば、クリーム、ゲル、ローション、または軟膏として)のため、静脈内投与(例えば、粒子塞栓物質を含まない滅菌溶液として、及び静脈内使用に好適な溶媒系で)のため、または任意の他の薬学的に許容される製剤で製剤化することができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書に記載されており(例えば、活性化合物を懸濁または溶解することが可能なビヒクル)、かつ患者において実質的に非毒性及び非炎症性であるという特性を有する化合物以外の任意の成分を指す。賦形剤には、例えば、抗付着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮助剤、崩壊剤、染料(色)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、フィルム形成剤またはコーティング剤、香味剤、香料、滑剤(流動促進剤)、潤滑剤、防腐剤、印刷インク、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味料、及び水和水が含まれ得る。
【0086】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載される化合物の任意の薬学的に許容される塩を意味する。本明細書に記載される化合物のうちのいずれかの薬学的に許容される塩は、過度の毒性、刺激性、アレルギー応答を起こさずに、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、健全な医学的判断の範囲内であり、かつ合理的な利益/リスク比と釣り合う塩を含み得る。薬学的に許容される塩は、当該技術分野において周知である。例えば、薬学的に許容される塩は、Berge et al.,J.Pharmaceutical Sciences 66:1-19,1977及びPharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(Eds.P.H.Stahl and C.G.Wermuth),Wiley-VCH,2008に記載されている。塩は、本明細書に記載される化合物の最終的な単離と精製との間にその場で、または遊離塩基基を好適な有機酸と反応させることにより別々に調製することができる。
【0087】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩として調製することができるように、イオン化可能な基を有してもよい。これらの塩は、無機酸または有機酸を含む酸付加塩であってもよく、または塩は、本発明の化合物の酸性形態の場合、無機または有機塩基から調製されてもよい。高い頻度で、本化合物は、薬学的に許容される酸または塩基の付加生成物として調製される薬学的に許容される塩として調製または使用される。好適な薬学的に許容される酸及び塩基、ならびに適切な塩の調製方法は、当該技術分野で周知である。塩は、無機及び有機の酸及び塩基を含む、薬学的に許容される非毒性の酸及び塩基から調製され得る。
【0088】
本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」は、治療されている疾患(例えば、がん)が悪化しない投薬または治療中及びその後の時間の長さを指す。
【0089】
本出願で使用される場合、「増殖」は、(細胞)要素を構成することに起因する類似の形態(細胞)の複製または増殖を伴う。
【0090】
「BRM及び/またはBRG1の活性を低減すること」とは、BRM及び/またはBRG1に関連する活性または関連する下流効果のレベルを減少させることを意味する。BRM及び/またはBRG1の活性レベルは、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して測定され得る。いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1の活性を低減する薬剤は、小分子BRM及び/またはBRG1阻害剤である。いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1の活性を低減する薬剤は、小分子BRM及び/またはBRG1分解剤である。
【0091】
「BRM及び/またはBRG1のレベルを低減すること」とは、例えば、細胞または対象に分解剤を投与することによって、細胞または対象におけるBRM及び/またはBRG1のレベルを低減することを意味する。BRM及び/またはBRG1のレベルは、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して測定され得る。
【0092】
「基準物質」とは、タンパク質またはRNAレベルを比較するために使用される任意の有用な基準物質を意味する。基準物質は、比較目的で使用される任意の試料、標準、標準曲線、またはレベルであり得る。基準物質は、通常の基準試料または基準標準もしくはレベルであり得る。「基準試料」は、例えば、対照、例えば、「正常対照」などの所定の陰性対照値、または同じ対象から採取された以前の試料;正常な細胞もしくは正常な組織などの正常な健康な対象からの試料;疾患を有していない対象からの試料(例えば、細胞または組織);疾患があると診断されているが、本発明の化合物によりまだ治療されていない対象からの試料;本発明の化合物により治療されている対象からの試料;または既知の正常濃度の精製されたタンパク質もしくはRNA(例えば、本明細書に記載される任意のもの)の試料であり得る。「基準標準またはレベル」とは、基準試料に由来する値または数値を意味する。「正常対照値」は、非疾患状態を示す所定の値、例えば、健康な対照対象で期待される値である。典型的には、正常対照値は、範囲(「XとYとの間」)、高閾値(「X以下」)、または低閾値(「X以上」)として表される。特定のバイオマーカーの正常対照値内の測定値を有する対象は、典型的には、そのバイオマーカーの「正常範囲内」と称される。正常な基準標準またはレベルは、疾患または障害(例えば、がん)を有していない正常な対象;本発明の化合物により治療されている対象に由来する値または数であり得る。好ましい実施形態では、基準試料、標準、またはレベルは、以下の基準:年齢、体重、性別、病期、及び全体的な健康のうちの少なくとも1つによって、試料対象試料と一致する。正常な基準範囲内の精製されたタンパク質またはRNA、例えば、本明細書に記載される任意のもののレベルの標準曲線もまた基準として使用することができる。
【0093】
本明細書で使用される場合、「BRG1を上回るBRMに対して選択的である」という用語は、化合物がBRG1のレベル及び/または活性を阻害するよりも少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、または少なくとも100%)大きいBRMのレベル及び/または活性を阻害する化合物を指す。
【0094】
本明細書で使用される場合、「BRMを上回るBRG1に対して選択的である」という用語は、化合物がBRMのレベル及び/または活性を阻害するよりも少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、または少なくとも100%)大きいBRG1のレベル及び/または活性を阻害する化合物を指す。
【0095】
本明細書で使用される場合、「転移の拡大を遅らせること」とは、新しい遺伝子座の形成を低減させるもしくは停止すること、または腫瘍負荷を低減させる、停止する、もしくは逆転させることを指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、本発明による組成物が、例えば、実験的、診断的、予防的、及び/または治療的目的のために投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象には、任意の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳動物)が含まれる。対象は、治療を求めているもしくは必要としている、治療を要求している、治療を受けている、将来治療を受けることになる、または特定の疾患もしくは状態について訓練を受けた専門家によって治療を受けているヒトもしくは動物であり得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療される」、または「治療すること」という用語は、治療的処置または任意の手段を意味し、目的は、望ましくない生理学的状態、障害、もしくは疾患を減速(軽減)すること、または有益なもしくは所望の臨床結果を得ることである。有益なまたは望ましい臨床結果は、これらに限定されないが、症状の軽減;状態(condition)、障害、もしくは疾患の程度の減弱;状態(condition)、障害、もしくは疾患の安定化(すなわち、悪化していない)状態(state);状態(condition)、障害、もしくは疾患の進行の発症の遅延または減速;状態(condition)、障害、もしくは疾患状態(disease state)の向上または寛解(部分的または完全);患者により必ずしも識別可能ではない少なくとも1つの測定可能な物理学的パラメータの改善(amelioration);または状態(condition)、障害、もしくは疾患の増強または改善(improvement)を含む。治療は、過度のレベルの副作用なしに臨床的に有意な応答を誘発することを含む。治療はまた、治療を受けていない場合の予測生存期間と比較して、生存期間を延長することを含む。本発明の化合物はまた、例えば、障害を発症するリスクが増加した対象において、障害を「予防的に治療する」または「予防する」ために使用され得る。
【0098】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本開示で使用するための方法及び材料を本明細書で説明する。当該技術分野で既知の他の好適な方法及び材料もまた使用され得る。それらの材料、方法、及び例は、例証にすぎず、限定するようには意図されていない。本明細書で言及される全ての出版物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。
【0099】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、以下の説明に示される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】BRG1/BRM阻害剤(化合物A)によるいくつかのがん細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図2】BRG1/BRM阻害剤(化合物A)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ブドウ膜黒色腫細胞株92-1の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図3】BRG1/BRM阻害剤(化合物A)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ブドウ膜黒色腫細胞株MP41の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図4】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)によるいくつかのがん細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図5】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)で処理されたがん細胞株の用量応答曲線から計算された曲線下面積(AUC)を示すグラフである。
【
図6】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)による、ブドウ膜黒色腫及び非小細胞肺癌細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図7】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ブドウ膜黒色腫細胞株92-1の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図8】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ブドウ膜黒色腫細胞株MP41の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図9】PKC阻害剤(LXS196)による、親細胞株及びPKC阻害剤難治性ブドウ膜黒色腫細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図10】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)による、親細胞株及びPKC阻害剤難治性ブドウ膜黒色腫細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図11】BRG1/BRM阻害剤(化合物C)による、ブドウ膜黒色腫細胞株を移植したマウスにおける腫瘍増殖の阻害を示すグラフである。
【
図12】ブドウ膜黒色腫細胞株を移植し、BRG1/BRM阻害剤(化合物C)を投与したマウス由来の腫瘍のサイズの図である。
【
図13】ブドウ膜黒色腫細胞株を移植し、BRG1/BRM阻害剤(化合物C)を投与したマウスの体重変化を示すグラフである。
【
図14】N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドによる、いくつかのブドウ膜黒色腫細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図15】N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドによる、ブドウ膜黒色腫細胞株を移植したマウスにおける腫瘍増殖の阻害を示すグラフである。
【
図16】N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドによる、ブドウ膜黒色腫細胞株を移植し、それを投与したマウスの体重変化を示すグラフである。
【
図17】PD-1阻害剤単独、BRM/BRG1阻害剤単独、及びPD-1阻害剤とBRM/BRG1阻害剤との組み合わせを有するB16/F10同系モデルにおける腫瘍増殖抑制を示すグラフである。
【
図18】PD-1阻害剤単独、BRM/BRG1阻害剤単独、及びPD-1阻害剤とBRM/BRG1阻害剤との組み合わせを有する各個々のマウスについてのB16/F10同系モデルにおける腫瘍成長抑制を示すグラフである。
【
図19】PD-1阻害剤単独、BRM/BRG1阻害剤単独、及びPD-1阻害剤とBRM/BRG1阻害剤との組み合わせを有する各個々のマウスについてのB16/F10同系モデルにおけるカプラン-マイヤー生存曲線を示すグラフである。
【
図20】PD-1阻害剤単独、BRM/BRG1阻害剤単独、及びPD-1阻害剤とBRM/BRG1阻害剤との組み合わせを有するA20リンパ腫モデルにおける腫瘍増殖抑制を示すグラフである。
【
図21】PD-1阻害剤単独、BRM/BRG1阻害剤単独、及びPD-1阻害剤とBRM/BRG1阻害剤との組み合わせを有する各個々のマウスについてのA20リンパ腫モデルにおける腫瘍成長抑制を示すグラフである。
【
図22】PD-1阻害剤単独、BRM/BRG1阻害剤単独、及びPD-1阻害剤とBRM/BRG1阻害剤との組み合わせを有する各個々のマウスについてのA20リンパ腫モデルにおけるカプラン-マイヤー生存曲線を示すグラフである。
【
図23】PD-1阻害剤単独、BRM/BRG1阻害剤単独、及びPD-1阻害剤とBRM/BRG1阻害剤との組み合わせを有するCT26結腸直腸モデルにおける腫瘍増殖抑制を示すグラフである。
【
図24】PD-1阻害剤単独、BRM/BRG1阻害剤単独、及びPD-1阻害剤とBRM/BRG1阻害剤との組み合わせを有する各個々のマウスについてのCT26結腸直腸モデルにおける腫瘍成長抑制を示すグラフである。
【
図25】PD-1阻害剤単独、BRM/BRG1阻害剤単独、及びPD-1阻害剤とBRM/BRG1阻害剤との組み合わせを有する各個々のマウスについてのCT26結腸直腸モデルにおけるカプラン-マイヤー生存曲線を示すグラフである。
【
図26】PD-L1阻害剤単独、BRM/BRG1阻害剤単独、及びPD-L1阻害剤とBRM/BRG1阻害剤との組み合わせを有する各個々のマウスについてのCT26結腸直腸モデルにおける腫瘍成長抑制を示すグラフである。
【
図27】PD-L1阻害剤単独、BRM/BRG1阻害剤単独、及びPD-L1阻害剤及びBRM/BRG1阻害剤との組み合わせを有する各個々のマウスについてのCT26結腸直腸モデルにおけるカプラン-マイヤー生存曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0101】
本発明者らは、細胞におけるBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性の阻害または枯渇が、免疫療法処置と組み合わせて、がんの処置に有効であることを見出した。したがって、本発明は、例えば、がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療するための有用な方法を特徴とする。
【0102】
BRM及び/またはBRG1還元剤
細胞におけるBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する本明細書に記載される薬剤は、抗体、タンパク質(酵素など)、ポリヌクレオチド、または小分子化合物であり得る。薬剤は、BRM及び/またはBRG1に関連する活性、または関連する下流効果のレベルを低減するか、または細胞もしくは対象におけるBRM及び/またはBRG1のレベルを低減する。
【0103】
いくつかの実施形態では、細胞におけるBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、酵素、ポリヌクレオチド、または小分子化合物、例えば、分解剤、または小分子BRM及び/またはBRG1阻害剤である。
【0104】
抗体
BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、抗体またはその抗原結合断片であり得る。例えば、本明細書に記載のBRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、BRM及び/またはBRG1への結合を通してBRM及び/またはBRG1の活性及び/または機能を低減もしくは遮断する抗体である。
【0105】
標的抗原(例えば、BRM及び/またはBRG1)に対する治療抗体の作製及び使用は、当該技術分野で既知である。例えば、上述の本明細書に引用された参考文献、及びZhiqiang An(Editor),Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic.1st Edition.Wiley 2009を参照されたく、また、抗体操作、縮重オリゴヌクレオチドの使用、5’-RACE、ファージディスプレイ、及び変異誘発、抗体の試験及び特徴付け、抗体の薬物動態及び薬力学、抗体の精製及び保存、ならびにスクリーニング及びラベリング技術を含む組換え抗体を作製する方法については、Greenfield(Ed.),Antibodies:A Laboratory Manual.(Second edition)Cold Spring Harbor Laboratory Press 2013も参照されたい。
【0106】
ポリヌクレオチド
いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、RNA干渉(RNAi)経路によって作用する阻害性RNA分子である。阻害性RNA分子は、BRM及び/またはBRG1の発現レベル(例えば、タンパク質レベルまたはmRNAレベル)を低下させ得る。例えば、阻害性RNA分子は、完全長のBRM及び/またはBRG1を標的とする低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、及び/またはマイクロRNA(miRNA)を含む。siRNAは、典型的には、約19~25塩基対の長さを有する二本鎖RNA分子である。shRNAは、ヘアピンターンを含むRNA分子であり、RNAiを介して標的遺伝子の発現を減少させる。マイクロRNAは、典型的には、約22ヌクレオチドの長さを有する非コードRNA分子である。MiRNAは、例えば、mRNAの切断、mRNAの不安定化、またはmRNAの翻訳の阻害を引き起こすことによって、mRNA分子上の標的部位に結合し、mRNAをサイレンシングする。分解は、酵素性のRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって引き起こされる。
【0107】
いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、アンチセンス核酸である。アンチセンス核酸としては、アンチセンスRNA(asRNA)及びアンチセンスDNA(asDNA)分子(典型的には約10~30ヌクレオチド長)が挙げられ、これらは、標的配列(例えば、BRM及び/またはBRG1)のヌクレオチド塩基との水素結合相互作用を通して、ポリヌクレオチド標的配列または配列部分を認識する。標的配列は、一本鎖もしくは二本鎖RNA、または一本鎖もしくは二本鎖DNAであり得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、機能の負の制御因子または機能の正の制御因子のレベル及び/または活性を低減する。他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、機能の正の制御因子の阻害因子のレベル及び/または活性を低減する。
【0109】
ポリヌクレオチドは、例えば、修飾ヌクレオチド(例えば、2’-フルオロ、2’-o-メチル、2’-デオキシ、糖部開環核酸(unlocked nucleic acid)、2’-ヒドロキシ、ホスホロチオエート、2’-チオウリジン、4’-チオウリジン、2’-デオキシウリジンを含有するように修飾され得る。理論に束縛されるものではないが、特定の修飾は、ヌクレアーゼ耐性及び/または血清内安定性を増加させるか、または免疫原性を低下させることができると考えられている。また、上述のポリヌクレオチドは、リポソーム、マイクロスフィアなどの特殊形態で提供され得るか、または遺伝子療法に適用され得るか、または結合部分と組み合わせて提供され得る。かかる結合部分としては、リン酸骨格の電荷中和剤として作用するポリカチオン、または細胞膜との相互作用を増強するか、もしくは核酸の取り込みを増加させる脂質(例えば、リン脂質、コレステロールなど)などの疎水性部分が挙げられる。これらの部分は、3’または5’末端で核酸に結合されてもよく、塩基、糖、または分子内ヌクレオシド結合を介して結合されてもよい。他の部分は、エキソヌクレアーゼ、RNase,などのヌクレアーゼによる分解を防止するために、核酸の3’または5’末端に特異的に配置されたキャッピング基であってもよい。かかるキャッピング基としては、当該技術分野で既知のヒドロキシル保護基が挙げられ、ポリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールなどのグリコールを含む。ポリヌクレオチドの阻害作用は、インビボ及びインビトロで本発明の細胞株または動物ベースの遺伝子発現系を使用して試験することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性もしくは機能を低減する。実施形態では、ポリヌクレオチドは、BRM及び/またはBRG1の発現を阻害する。他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、BRD7の分解を増加させ、及び/またはBRM及び/またはBRG1の安定性(すなわち、半減期)を減少させる。ポリヌクレオチドは、インビトロで、化学合成または転写され得る。
【0111】
阻害性ポリヌクレオチドは、当該技術分野で周知の方法によって設計することができ、任意のRNAを一意的に分解するのに必要な配列特異性を提供するのに十分な相同性を有するsiRNA、miRNA、shRNA、及びasRNA分子は、これらに限定されないが、Thermo Fisher Scientific、the German Cancer Research Center、及びThe Ohio State University Wexner Medical Centerのウェブサイト上で維持されるものを含む当該技術分野で既知のプログラムを使用して設計することができる。阻害性ポリヌクレオチド配列を最適化するためのいくつかの設計された種類の系統的試験は、当業者によって日常的に行われ得る。干渉ポリヌクレオチドを設計する際の考慮事項としては、これらに限定されないが、生物物理学的、熱力学的、及び構造的な考慮事項、センス鎖の特定の位置における塩基選択性(base preferences)、ならびに相同性が挙げられる。また、リボザイム、リボヌクレアーゼP、siRNA、及びmiRNAなどの非コードRNAに基づく阻害性治療剤の作製及び使用は、当該技術分野で既知であり、例えば、Sioud,RNA Therapeutics:Function,Design,and Delivery(Methods in Molecular Biology).Humana Press 2010に記載されている。
【0112】
本発明で使用するためのポリヌクレオチドを発現するためのベクターの構築は、当業者への詳細な説明を必要としない従来の技術を使用して達成され得る。効率的な発現ベクターの生成には、ポリヌクレオチドの発現を制御する制御配列を有することが必要である。これらの制御配列は、プロモーター配列及びエンハンサー配列を含み、これらの配列と相互作用する特異的な細胞因子によって影響を受け、当該技術分野で周知である。
【0113】
遺伝子編集
いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、遺伝子編集系の構成要素である。例えば、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、BRM及び/またはBRG1における改変(例えば、挿入、欠失(例えば、ノックアウト)、転位、逆位、単一点変異、または他の変異)を導入する。いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、ヌクレアーゼである。例示的な遺伝子編集システムとしては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターベースヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化規則間隔短鎖回文反復(CRISPR)システムが挙げられる。ZFN、TALEN、及びCRISPRベースの方法は、例えば、Gaj et al.,Trends Biotechnol.31(7):397-405(2013)を参照されたい。
【0114】
CRISPRは、クラスター化規則間隔短鎖回文反復のセット(またはセットを含むシステム)を指す。CRISPRシステムは、CRISPR及びCas(CRISPR関連タンパク質)または本明細書に記載の遺伝子をサイレンシングまたは変異するために使用され得る他のヌクレアーゼに由来するシステムを指す。CRISPRシステムは、天然に存在するシステムであり、細菌及び古細菌のゲノムに見出される。CRISPR遺伝子座は、交互に反復する配列とスペーサー配列で構成されている。天然に存在するCRISPRシステムでは、スペーサーは、典型的には、細菌にとって異質の配列(例えば、プラスミドまたはファージ配列)である。CRISPRシステムは、真核生物における遺伝子編集(例えば、特定の遺伝子の変化、サイレンシング、及び/または増強)に使用するために改変されている。例えば、Wiedenheft et al.,Nature 482(7385):331-338(2012)を参照されたい。例えば、システムのかかる修飾は、特異的に設計されたCRISPRと、1つ以上の適切なCasタンパク質を含有するプラスミドとを、真核細胞に導入することを含む。CRISPR遺伝子座は、RNAに転写され、Casタンパク質によって、スペーサーに隣接する反復配列を含む低分子RNAにプロセシングされる。RNAは、スペーサー配列に応じて、特定のDNA/RNA配列をサイレンシングするようにCasタンパク質を誘導するためのガイドとして機能する。例えば、Horvath et al.,Science 327(5962):167-170(2010)、Makarova et al.,Biology Direct 1:7(2006)、Pennisi,Science 341(6148):833-836(2013)を参照されたい。いくつかの例では、CRISPRシステムは、DNAの両方の鎖を切断するヌクレアーゼであるCas9タンパク質を含む。例えば、同上の文献を参照されたい。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される使用(例えば、本明細書に記載される1つ以上の方法による使用)のためのCRISPRシステムでは、CRISPRのスペーサーは、標的遺伝子の配列(例えば、BRM及び/またはBRG1の配列)に由来する。
【0116】
いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、遺伝子編集のためのCRISPRシステムで使用するためのガイドRNA(gRNA)を含む。本発明の方法で使用するための例示的なgRNAは、以下の表1に提供されている。実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、BRD7の核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)ZFN、またはZFNをコードするmRNAを含む。実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、BRM及び/またはBRG1の核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)TALEN、またはTALENをコードするmRNAを含む。
【0117】
例えば、gRNAは、遺伝子(例えば、BRM及び/またはBRG1)の改変を操作するために、CRISPRシステムで使用され得る。他の例では、ZFN及び/またはTALENは、遺伝子(例えば、BRM及び/またはBRG1)の改変を操作するために使用され得る。例示的な改変には、挿入、欠失(例えば、ノックアウト)、転位、逆位、単一点変異、または他の変異が含まれる。改変は、例えば、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで、細胞内の遺伝子に導入することができる。いくつかの実施形態では、改変は、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減し(例えば、ノックダウンする、またはノックアウトする)、例えば、改変は、機能の負の制御因子である。さらに別の例では、改変は、BRM及び/またはBRG1における欠陥(例えば、欠陥を引き起こす変異)を修正する。
【0118】
ある特定の実施形態では、CRISPRシステムは、標的遺伝子、例えば、BRM及び/またはBRG1を編集する(例えば、塩基対を追加または削除する)ために使用される。他の実施形態では、CRISPRシステムは、中途停止コドンを導入する(例えば、それによって標的遺伝子の発現を減少させる)ために使用される。さらに他の実施形態では、CRISPRシステムは、例えば、RNA干渉と同様に、可逆的な様式で標的遺伝子をオフにするために使用される。実施形態では、CRISPRシステムは、Casを、標的遺伝子、例えば、BRM及び/またはBRG1のプロモーターに誘導するために使用され、それによって、RNAポリメラーゼを立体的に遮断する。
【0119】
いくつかの実施形態では、CRISPRシステムは、例えば、米国公開第20140068797号、Cong et al.,Science 339(6121):819-823(2013)、Tsai,Nature Biotechnol.,32(6):569-576(2014)、ならびに米国特許第8,871,445号、同第8,865,406号、同第8,795,965号、同第8,771,945号、及び同第8,697,359号に記載されている技術を使用して、BRM及び/またはBRG1を編集するために生成され得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、CRISPR干渉(CRISPRi)技術は、特定の遺伝子、例えばBRM及び/またはBRG1をコードする遺伝子の転写抑制のために使用され得る。CRISPRiでは、操作されたCas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼヌルdCas9、またはdCas9融合タンパク質、例えば、dCas9-KRABまたはdCas9-SID4X融合物)は、配列特異的ガイドRNA(sgRNA)と対合し得る。Cas9-gRNA複合体は、RNAポリメラーゼを遮断し、それによって、転写伸長を妨げることができる。複合体はまた、転写因子の結合を妨げることによって、転写開始を遮断することができる。CRISPRi法は、特異的であり、最小限のオフターゲット効果を有し、多重化可能であり、例えば、(例えば、複数のgRNAを使用して)、同時に、2つ以上の遺伝子を抑制することができる。また、CRISPRi法は、可逆的な遺伝子抑制を可能にする。
【0121】
いくつかの実施形態では、CRISPR媒介遺伝子活性化(CRISPRa)は、例えば、本明細書に記載の1つ以上の遺伝子、例えば、BRM及び/またはBRG1を阻害する遺伝子の転写活性化のために使用され得る。CRISPRa技術では、dCas9融合タンパク質は、転写活性化因子を動員する。例えば、dCas9を使用して、VP64またはp65活性化ドメイン(p65D)などのポリペプチド(例えば、活性化ドメイン)を動員し、sgRNA(例えば、単一のsgRNAまたは複数のsgRNA)とともに使用して、1つ以上の遺伝子、例えば、内因性遺伝子(複数可)を活性化することができる。複数の活性化剤は、複数のsgRNAを使用することによって動員することができ、これは、活性化効率を増加させることができる。様々な活性化ドメイン及び単一または複数の活性化ドメインを使用することができる。dCas9を操作して活性化因子を動員することに加えて、sgRNAを操作して、活性化因子を動員することもできる。例えば、RNAアプタマーをsgRNAに組み込んで、VP64などのタンパク質(例えば、活性化ドメイン)を動員することができる。いくつかの例では、相乗的活性化メディエーター(SAM)システムは、転写活性化に使用することができる。SAMでは、MS2アプタマーがsgRNAに付加される。MS2は、p65AD及び熱ショック因子1(HSF1)に融合しされたMS2コートタンパク質(MCP)を動員する。CRISPRi及びCRISPRa技術は、例えば、Dominguez et al.,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.17(1):5-15(2016)により詳細に記載されている(参照により本明細書に組み込まれる)。
【0122】
小分子化合物
本発明のいくつかの実施形態では、細胞におけるBRM及び/またはBRG1のレベル及び/活性を低減する薬剤は、小分子化合物である。いくつかの実施形態では、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤は、以下の構造:
【化8】
を有する。
【0123】
他の実施形態、及びこれらの化合物の生成の合成のための例示的な方法が、本明細書に記載される。
【0124】
薬学的使用
本明細書に記載される化合物は、本発明の方法において有用であり、理論によって拘束されるものではないが、BAF複合体のレベル、状態、及び/または活性を調節するために、すなわち、哺乳動物のBAF複合体内のBRG1及び/またはBRMタンパク質の活性を阻害することにより、それらの能力を発揮すると考えられる。BAF複合体関連障害には、限定されないが、BRG1の機能喪失変異関連障害が含まれる。
【0125】
本発明の一態様は、がん(例えば、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、または陰茎癌)などのBRG1の機能喪失変異に関連する障害の治療を、それを必要とする対象において行う治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、黒色腫(例えば、ブドウ膜黒色腫)、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、または血液癌を治療する方法に関する。
【0126】
いくつかの実施形態では、化合物は、(a)腫瘍サイズの低減、(b)腫瘍成長率の低減、(c)腫瘍細胞死の増加、(d)腫瘍進行の低減、(e)転移数の低減、(f)転移率の低減、(g)腫瘍再発の減少、(h)対象の生存率の増加、(i)対象の無増悪生存期間の増加のうちの1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上)をもたらすのに効果的である量及び時間で投与される。
【0127】
がんの治療は、腫瘍のサイズまたは体積の低減をもたらし得る。例えば、治療後、腫瘍サイズは、治療前のそのサイズに対して5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)低減される。腫瘍のサイズは、いずれの再現性のある測定手段で測定され得る。例えば、腫瘍のサイズは、腫瘍の直径として測定され得る。
【0128】
がんの治療は、腫瘍の数の減少をさらにもたらし得る。例えば、治療後、腫瘍数は、治療前の数に対して5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)低減される。腫瘍の数は、任意の再現性のある測定手段で測定され得、例えば、腫瘍の数は、肉眼で見えるか、または特定の倍率(例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または50倍)で見える腫瘍をカウントすることによって測定され得る。
【0129】
がんの治療は、原発腫瘍部位から離れた他の組織または器官の転移性結節の数の減少をもたらし得る。例えば、治療後、転移性結節の数は、治療前の数に対して5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)低減される。転移性結節の数は、いずれの再現性のある測定手段で測定され得る。例えば、転移性結節の数は、肉眼で見えるか、または特定の倍率(例えば、2倍、10倍、または50倍)で見える転移性結節をカウントすることによって測定され得る。
【0130】
がんを治療することにより、未治療の対象の集団と比較して、本発明に従って治療された対象の集団の平均生存時間の増加がもたらされ得る。例えば、平均生存時間が、30日超(60日、90日、または120日超)増加する。集団の平均生存時間の増加は、任意の再現可能な手段で測定され得る。集団の平均生存時間の増加は、例えば、集団について、本発明の化合物による治療の開始後の平均生存期間の長さを計算することにより測定され得る。集団の平均生存時間の増加はまた、例えば、集団について、本発明の化合物の薬学的に許容される塩による治療の最初のラウンドの完了後の平均生存期間の長さを計算することによって測定され得る。
【0131】
また、がんを治療することにより、未治療の集団と比較して、治療された対象の集団の死亡率の減少がもたらされ得る。例えば、死亡率は、2%超(例えば、5%、10%、または25%超)減少される。治療された対象の集団の死亡率の減少は、任意の再現性のある手段で、例えば、集団について、本発明の薬学的に許容される塩による治療の開始後の単位時間当たりの疾患関連死の平均数を計算することによって測定され得る。集団の死亡率の減少はまた、例えば、集団について、本発明の薬学的に許容される塩による治療の最初のラウンドの完了後の単位時間当たりの疾患関連死の平均数を計算することによって測定され得る。
【0132】
本発明によって治療され得る例示的ながんとしては、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、食道胃癌、食道癌、膵臓癌、肝胆道癌、軟部組織肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、腎細胞癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、消化管神経内分泌腫瘍、子宮肉腫、消化管間質腫瘍、CNSがん、胸腺腫瘍、副腎皮質癌、虫垂癌、小腸癌、血液癌、及び陰茎癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
組み合わせ製剤及びその使用
本発明の化合物は、1つ以上の治療薬と組み合わせることができる。特に、治療薬は、本明細書に記載される任意のがんを治療または予防的に治療するものであり得る。
【0134】
併用療法
本発明の化合物は、単独で、または追加の治療剤、例えば、がんもしくはそれに関連する症状を治療する他の薬剤と組み合わせて、またはがんを治療するための他の種類の治療と組み合わせて使用され得る。併用治療では、1つ以上の治療用化合物の投与量は、単独で投与した場合の標準的な投与量から低減され得る。例えば、用量は、薬物の組み合わせ及び順列から経験的に決定され得るか、またはアイソボログラフ分析(例えば、Black et al.,Neurology 65:S3-S6,2005)によって推定され得る。この場合、組み合わせたときの化合物の投与量は、治療効果を提供するものであるべきである。
【0135】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、化学療法剤(例えば、細胞傷害性剤またはがんの治療に有用な他の化合物)である。これらには、アルキル化剤、代謝拮抗剤、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体及び関連阻害剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、L-アスパラギナーゼ、トポイソメラーゼ阻害剤、インターフェロン、白金配位錯体、アントラセンジオン置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、アドレノコルチカン抑制剤、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、ならびに性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体が含まれる。5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン(LV)、イレノテカン、オキサリプラチン、カペシタビン、パクリタキセル、及びドキセタキセルも含まれる。化学療法剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド、スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン、アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ、エチレンイミン及びメチルアメラミン、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチローロメラミン、アセトゲニン(具体的には、ブラタシン及びブラタシノン)、カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む)、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びバイゼレシン合成類似体を含む)、クリプトフィシン(具体的には、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8)、ドラスタチン、デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189及びCB1-TM1を含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチイン、スポンギスタチン、ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、ニトロソウレア、例えば、カムルスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン、抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、具体的には、カリケアマイシンガンマll及びカリケアマイシンオメガll(例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed Engl.33:183-186(1994)を参照されたい);ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)などの抗生物質、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、Adriamycin(登録商標)(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む、ドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝物;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルホミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン、マイタンシン及びアンサミトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン、ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene,Oreg.)、ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、Taxol(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton,N.J.)、ABraxane(登録商標)、発色団不含の、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg,Ill.)、及びTaxotere(登録商標)ドキセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;Gemzar(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどの白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;Navelbine(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。本明細書に記載される第1の治療剤と組み合わせて投与されるカクテルにおいて、2つ以上の化学療法剤を使用することができる。併用化学療法の好適な投与レジメンは、当該技術分野で既知であり、例えば、Saltz et al.(1999)Proc ASCO 18:233a及びDouillard et al.(2000)Lancet 355:1041-7に記載されている。
【0136】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、がん治療で使用されるサイトカイン(例えば、インターフェロンまたはインターロイキン(例えば、IL-2))などの生物学的製剤である治療剤である。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、抗VEGF剤、例えば、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))などの抗血管新生剤である。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、免疫グロブリンベースの生物学的製剤、例えば、標的をアゴナイズして抗がん応答を刺激するか、またはがんにとって重要な抗原に拮抗するモノクローナル抗体(例えば、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、Fc融合タンパク質、またはその機能的断片)である。そのような薬剤には、Rituxan(リツキシマブ)、Zenapax(ダクリズマブ)、Simulect(バシリキシマブ)、Synagis(パリビズマブ)、Remicade(インフリキシマブ)、Herceptin(トラスツズマブ)、Mylotarg(ゲムツズマブオゾガミシン)、Campath(アレムツズマブ)、Zevalin(イブリツモマブチウキセタン)、Humira(アダリムマブ)、Xolair(オマリズマブ)、Bexxar(トシツモマブ-I-131)、Raptiva(エファリズマブ)、Erbitux(セツキシマブ)、Avastin(ベバシズマブ)、Tysabri(ナタリズマブ)、Actemra(トシリズマブ)、Vectibix(パニツムマブ)、Lucentis(ラニビズマブ)、Soliris(エクリズマブ)、Cimzia(セルトリズマブペゴル)、Simponi(ゴリムマブ)、Ilaris(カナキヌマブ)、Stelara(ウステキヌマブ)、Arzerra(オファツムマブ)、Prolia(デノスマブ)、Numax(モタビズマブ)、ABThrax(ラキシバクマブ)、Benlysta)(ベリムマブ)、Yervoy(イピリムマブ)、Adceトリス(ブレンツキシマブベドチン)、Perjeta(ペルツズマブ)、Kadcyla(Ado-トラスツズマブエムタンシン)、及びGazyva(オビヌツズマブ)が含まれる。抗体-薬物複合体も含まれる。
【0137】
第2の薬剤は、非薬物治療である治療剤であり得る。例えば、第2の治療剤は、腫瘍組織の放射線療法、凍結療法、温熱療法、及び/または外科的切除である。
【0138】
第2の薬剤は、チェックポイント阻害剤であってもよい。一実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、阻害抗体(例えば、モノクローナル抗体などの単一特異性抗体)である。抗体は、例えば、ヒト化または完全にヒトであり得る。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、融合タンパク質、例えば、Fc受容体融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、チェックポイントタンパク質と相互作用する、抗体などの薬剤である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、チェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する、抗体などの薬剤である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、CTLA-4(例えば、イピリムマブ/ヤーボイまたはトレメリムマブなどの抗CTLA4抗体)の阻害剤(例えば、阻害抗体または小分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤、PD-1(例えば、ニボルマブ/Opdivo(登録商標);ペムブロリズマブ/Keytruda(登録商標);ピディリズマブ/CT-011)の阻害剤(例えば、阻害抗体または小分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、PD-L1(例えば、MPDL3280A/RG7446;MEDI4736;MSB0010718C;BMS 936559)の阻害剤(例えば、阻害抗体または小分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、PDL2(例えば、AMP 224などのPDL2/Ig融合タンパク質)の阻害剤(例えば、阻害抗体またはFc融合もしくは小分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、B7-H3(例えば、MGA271)、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはそれらの組み合わせの阻害剤(例えば、阻害抗体または小分子阻害剤)である。
【0139】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、手術などのブドウ膜黒色腫の治療に使用される別の抗がん療法、MEK阻害剤、及び/またはPKC阻害剤と組み合わせて使用される。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、本発明の化合物の投与の前、その後、またはそれと同時に手術を行うことをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、本発明の化合物の投与の前、その後、またはそれと同時に、MEK阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、もしくはタメチニブ)及び/またはPKC阻害剤(例えば、ソトラスタウリンもしくはIDE196)の投与をさらに含む。
【0140】
本明細書に記載される組み合わせの実施形態のいずれにおいても、第1及び第2の治療剤は、同時にまたは逐次的に、いずれかの順序で投与される。第1の治療剤は、第2の治療剤の直前、直後、最大1時間、最大2時間、最大3時間、最大4時間、最大5時間、最大6時間、最大7時間、最大8時間、最大9時間、最大10時間、最大11時間、最大12時間、最大13時間、14時間、最大16時間、最大17時間、最大18時間、最大19時間、最大20時間、最大21時間、最大22時間、最大23時間、最大24時間、または最大1~7、1~14、1~21、もしくは1~30日前または後に投与され得る。
【0141】
薬学的組成物
本発明の化合物は、好ましくは、インビボでの投与に好適な生物学的に適合した形態で、哺乳動物、好ましくはヒトに投与するための薬学的組成物に製剤化される。したがって、一態様では、本発明は、好適な希釈剤、担体、または賦形剤と混合された本発明の化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0142】
本発明の化合物は、遊離塩基の形態で、塩、溶媒和物の形態で、及びプロドラッグとして使用されてもよい。全ての形態は、本発明の範囲内である。本発明の方法に従って、当業者によって理解されるように、記載される化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグは、選択された投与経路に応じて様々な形態で患者に投与され得る。本発明の化合物は、例えば、経口、非経口、頬側、舌下、鼻腔、直腸、パッチ、ポンプ、または経皮投与により投与され得、薬学的組成物はそれに応じて製剤化される。非経口投与には、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、鼻腔、肺内、くも膜下腔内、直腸、及び局所様式の投与が含まれる。非経口投与は、選択された期間にわたる連続注入によるものであり得る。
【0143】
本発明の化合物は、例えば、不活性希釈剤または同化性可食担体とともに経口投与することができるか、または硬質もしくは軟質シェルゼラチンカプセルに封入することができるか、または錠剤に圧縮することができるか、または食事の食べ物とともに直接組み込むことができる。経口治療投与のために、本発明の化合物は、賦形剤とともに組み込まれ得、消化可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、及びウエハースの形態で使用され得る。
【0144】
本発明の化合物はまた、非経口的に投与されてもよい。本発明の化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水中で調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、DMSO、及びそれらの混合物中にアルコールありまたはなしで、ならびに油中に調製することができる。これらの調製物は、通常の保存条件及び使用条件下で、微生物の成長を防止するための保存剤を含んでもよい。好適な製剤の選択及び調製のための従来の手順及び成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(2003,20nd ed.)及び1999年に出版されたThe United States Pharmacopeia:The National Formulary(USP 24 NF19)に記載されている。注射可能用途に好適な薬学的形態には、注射可能な滅菌溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液及び滅菌粉末が含まれる。全ての場合で、形態は減菌でなければならず、シリンジを介して容易に投与され得る程度に流体でなければならない。
【0145】
本明細書に記載される化合物は、例えば、腫瘍内注射として腫瘍内に投与されてもよい。腫瘍内注射は、腫瘍血管への直接注射であり、個別の固形の接近可能な腫瘍に対して特に企図される。局所、領域、または全身投与も適切であり得る。本明細書に記載される化合物は、例えば、およそ1cm間隔で間隔をあけて、腫瘍に注射または複数回注射を投与することにより有利に接触させることができる。外科的介入の場合、本発明は、手術不能の腫瘍を切除に供するためなど、手術前に使用することができる。連続投与はまた、適切な場合、例えば、カテーテルを腫瘍または腫瘍血管に埋め込むことにより適用され得る。
【0146】
本発明の化合物は、本明細書に記述されるように、動物、例えば、ヒトに、単独でまたは薬学的に許容される担体と組み合わせて投与され得、その比率は、化合物の溶解度及び化学的性質、選択された投与経路、ならびに標準的な薬務によって決定される。
【0147】
投薬量
本発明の化合物、及び/または本発明の化合物を含む組成物の投与量は、化合物の薬力学的特性;投与の様式;レシピエントの年齢、健康、及び体重;症状の性質及び程度;治療の頻度、及びもしあれば併用治療の種類;ならびに治療される動物における化合物のクリアランス率などの多くの要因に応じて変化し得る。当業者は、上記の要因に基づいて適切な投与量を決定することができる。本発明の化合物は、最初に好適な投与量で投与されてもよく、この量を、臨床応答に応じて、必要次第で調整してもよい。概して、本発明の化合物が、例えば、0.05mg~3000mg(固体形態として測定)の毎日用量でヒトに投与される場合、満足な結果を得ることができる。
【0148】
あるいは、患者の体重を使用して投与量を計算することができる。例えば、患者に投与される化合物またはその薬学的組成物の用量は、0.1~50mg/kgの範囲であり得る。
【0149】
いくつかの実施形態では、本化合物、薬剤、またはその薬学的組成物(例えば、化合物1)の用量は、1mg~15mg(例えば、約1mg~2.5mg、約2.5mg~5mg、約5mg~7.5mg、または約7.5mg~約10mg)であり得る。いくつかの実施形態では、本化合物、薬剤、またはその薬学的組成物(例えば、化合物1)の用量は、約2mg~3mg(例えば、約2.5mg)である。いくつかの実施形態では、本化合物、薬剤、またはその薬学的組成物(例えば、化合物1)の用量は、約4mg~6mg(例えば、約5mg)である。いくつかの実施形態では、本化合物、薬剤、またはその薬学的組成物(例えば、化合物1)の用量は、約7mg~8mg(例えば、約7.5mg)である。いくつかの実施形態では、本化合物、薬剤、またはその薬学的組成物(例えば、化合物1)の用量は、約9mg~11mg(例えば、約10mg)である。
【0150】
いくつかの実施形態では、本化合物、薬剤、またはその薬学的組成物(例えば、化合物1)は、2回以上の用量で投与され、用量は、1日1回、1日2回(BID)、1週間に1回、2週間に1回、または1カ月に1回投与される。いくつかの実施形態では、投与は、少なくとも7日、例えば、少なくとも7日、8日、9日、10日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、またはそれ以上の期間を含む複数の用量を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、本化合物、薬剤、またはその薬学的組成物(例えば、化合物1)は、1つ以上のサイクルのための1週間の休息とともに1日1回1週間投与される。いくつかの実施形態では、本化合物、薬剤、またはその薬学的組成物(例えば、化合物1)は、本明細書に記載の用量(例えば、約2.5mg、5mg、7.5mg、または10mgの用量)で、1つ以上のサイクルのための1週間の休息とともに1日1回1週間投与される。
【0152】
いくつかの実施形態では、本化合物、薬剤、またはその薬学的組成物(例えば、化合物1)は、1つ以上のサイクルのための1週間の休息とともに1日1回2週間投与される。いくつかの実施形態では、本化合物、薬剤、またはその薬学的組成物(例えば、化合物1)は、本明細書に記載の用量(例えば、約2.5mg、5mg、7.5mg、または10mgの用量)で、1つ以上のサイクルのための1週間の休息とともに1日1回2週間投与される。
【実施例】
【0153】
以下の略語は、実施例セクションを通して使用される。
【表1】
【0154】
実施例1.N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを、以下のスキーム1に示すように合成した。
【化9】
【0155】
ステップ1:6-フルオロピリジン-2-カルボニルクロリド(中間体B)の調製
【化10】
ジクロロメタン(500mL)及びN,N-ジメチルホルムアミド(0.26mL、3.54mmol)中の6-フルオロピリジン-2-カルボン酸(50.0g、354mmol)の冷却した(0℃)溶液に、塩化オキサリル(155mL、1.77mol)を添加した。塩化オキサリルを完全に添加した後、反応混合物を室温に加温した。0.5時間後、混合物を真空下で濃縮して、中間体B(56.50g)を白色の固体として得て、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0156】
ステップ2:2-クロロ-1-(6-フルオロ-2-ピリジル)エテノン(中間体C)の調製
【化11】
1,4-ジオキサン(800mL)中の中間体B(56.0g、351mmol)の冷却した(0℃)混合物に、ヘキサン(351mL、702mmol)中の2Mのトリメチルシリルジアゾメタンの溶液を滴加した。得られた反応混合物を25℃で10時間撹拌した。続いて、反応混合物を、1,4-ジオキサン(500mL、2.0mol)中の4M HClの溶液でクエンチした。2時間撹拌した後、反応溶液を真空下で濃縮して、油を得た。残渣を、NaHCO
3飽和水溶液で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、中間体C(35.5g)を白色の固体として得て、これを次のステップに直接使用した。
LCMS(ESI)m/z:[M+H]
+=173.8.
【0157】
ステップ3:4-(6-フルオロ-2-ピリジル)チアゾール-2-アミン(中間体E)の調製
【化12】
メタノール(250mL)及び水(250mL)の混合物中の中間体C(35.5g、205mmol)及びチオ尿素(14.0g、184mmol)の溶液に、NaF(3.56g、84.8mmol)を室温で添加した。0.5時間撹拌した後、反応混合物を部分的に真空下で濃縮して、MeOHを除去し、得られた溶液を、2M HCl水溶液でpH約3に酸性化した。15分後、溶液を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を廃棄し、水相をNaHCO
3飽和水溶液でアルカリ化し、30分間撹拌し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層をブラインで3回洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を、石油エーテルを用いて粉砕し、25℃で10分撹拌し、濾過した。得られた固体を真空下で乾燥させて、中間体E(28.0g、143mmol、収率70.1%、純度100%)を白色の固体として得た。
LCMS(ESI)m/z:[M+H]
+=195.8.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ 8.00-7.96(m,1H),7.72(d,J=7.2Hz,1H),7.24(s,1H),7.16(s,2H),7.02(d,J=8.0Hz,1H).
【0158】
ステップ4:4-[6-[シス-2,6-ジメチルモルホリン-4-イル]-2-ピリジル]チアゾール-2-アミン(中間体G)の調製
【化13】
ジメチルスルホキシド(10mL)中の中間体E(2.00g、10.3mmol)、シス-2,6-ジメチルモルホリン(3.54g、30.7mmol)、及びDIPEA(5.35mL、30.7mmol)の10個の別個の混合物を、N
2雰囲気下で、120℃で並行して撹拌した。36時間後、反応混合物を合わせ、水に滴加した。得られた懸濁液を濾過し、濾過ケーキを水で3回、石油エーテルで1回洗浄し、次いで減圧下で乾燥させて、中間体G(25.5g、87.8mmol、収率95.2%)を黄色の固体として得た。
LCMS(ESI)m/z:[M+H]
+=291.2.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ 7.56-7.54(m,1H),7.17(s,1H),7.13(d,J=7.6Hz,1H),7.01(s,2H),6.72(d,J=8.8Hz,1H),4.26-4.15(m,2H),3.67-3.55(m,2H),2.38-2.34(m,2H),1.17(d,J=6.4Hz,6H).
【0159】
ステップ5:tert-ブチルN-[(1S)-2-[[4-[6-[シス-2,6-ジメチルモルホリン-4-イル]-2-ピリジル]チアゾール-2-イル]アミノ]-1-(メトキシメチル)-2-オキソ-エチル]カルバメート(中間体I)の調製
【化14】
ジクロロメタン(60mL)中の中間体G(12.0g、41.3mmol)及び(2S)-2-(tertブトキシカルボニルアミノ)-3-メトキシ-プロパン酸(10.9g、49.6mmol)の溶液に、EEDQ(12.3g、49.6mmol)を添加した。室温で16時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=2:1~3:2)によって精製して、中間体I(20.0g、40.7mmol、収率98.5%)を黄色の粘性物質として得た。
LCMS(ESI)m/z:[M+H]
+=492.2.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ 12.37(s,1H),7.78(s,1H),7.64-7.60(m,1H),7.25(d,J=7.2Hz,1H),7.16(d,J=7.2Hz,1H),6.79(d,J=8.4Hz,1H),4.50-4.48(m,1H),4.25(d,J=11.6Hz,2H),3.70-3.51(m,4H),3.26(s,3H),2.44-2.40(m,2H),1.39(s,9H),1.18(d,J=6.4Hz,6H).
【0160】
ステップ6:(S)-4-(4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)-1-メトキシ-3-オキソブタン-2-アミニウムクロリド(中間体J)の調製
【化15】
1,4-ジオキサン(200mL、800mmol)中の4M HClの溶液に、ジクロロメタン(50mL)中の中間体I(20.0g、40.7mmol)の溶液を添加した。室温で2時間撹拌した後、混合物をメチルtert-ブチルエーテルで希釈し、懸濁液を得た。固体を濾過によって収集し、メチルtert-ブチルエーテルで2回洗浄し、真空中で乾燥させて、中間体J (19.0g)を黄色の固体として得て、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。
LCMS(ESI)m/z:[M+H]
+=392.3.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ 13.44-12.30(m,1H),8.65(d,J=4.4Hz,3H),7.87(s,1H),7.66-7.64(m,1H),7.25(d,J=7.2Hz,1H),6.83(d,J=8.8Hz,1H),4.39-4.30(m,1H),4.25(d,J=11.6Hz,2H),3.94-3.86(m,1H),3.85-3.77(m,1H),3.69-3.57(m,2H),3.31(s,3H),2.43(m,2H),1.18(d,J=6.4Hz,6H).
【0161】
1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボン酸(中間体K)の調製
1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボン酸を、以下のスキーム2に示すように合成した。
【化16】
【0162】
ステップA:tert-ブチル1H-ピロール-3-カルボキシレート(中間体N)の調製
【化17】
THF(1300mL)中のtert-ブチル-プロパ-2-エノエート(78.6mL、542mmol)及び1-(イソシアノメチルスルホニル)-4-メチルベンゼン(106g、542mmol)の混合物に、鉱油中の60% NaH(25.97g、649mmol)を1時間にわたって30℃でゆっくりと添加し、次いで70℃に加熱した。2時間後、反応混合物を飽和NH
4Cl水溶液に注ぎ、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相をブラインで2回洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させて、濾過し、減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=20:1~3:1)によって精製して、中間体N(41.5g、236mmol、収率43%)を黄色の固体として得た。
LCMS(ESI)m/z[M+Na]
+=180.4.
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 8.36(br s,1H),7.35-7.25(m,1H),6.71-6.62(m,1H),6.59-6.49(m,1H),1.48(s,9H).
【0163】
ステップB:tert-ブチル1-メチルスルホニルピロール-3-カルボキシレート(中間体O)の調製
【化18】
THF(1500mL)中の中間体N(40.5g、242mmol)の冷却した(0℃)溶液に、NaHMDS(484mL、484mmol)の1M溶液を添加した。0℃で30分間撹拌した後、メタンスルホニルクロリド(28.1mL、363mmol)をゆっくりと添加し、混合物を30℃に温めた。16時間後、反応混合物を飽和NH
4Cl水溶液にゆっくりと注ぎ、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層をブラインで2回洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させて、濾過し、減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)によって精製して、黄色の固体を得た。黄色の固体を、メチルtert-ブチルエーテルを用いて、室温で粉砕し、20分間撹拌し、濾過し、真空中で乾燥させて、中間体O(25.7g、105mmol、収率43%)を白色の固体として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 7.66-7.64(m,1H),7.10-7.08(m,1H),6.73-6.71(m,1H),3.21(s,3H),1.56(s,9H).
【0164】
ステップC:1-メチルスルホニルピロール-3-カルボン酸(中間体K)の調製
【化19】
1,4-ジオキサン(100mL)中の中間体O(25.7g、105mmol)の混合物に、1,4-ジオキサン(400mL、1.6mol)中のHClの4M溶液を15℃で添加した。15℃で14時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、メチルtert-ブチルエーテルを用いて、15℃で16時間粉砕した。混合物を濾過し、真空中で乾燥させて、中間体K(18.7g、98.8mmol、収率94%)を白色の固体として得た。
LCMS(ESI)m/z[M+H]
+=189.8.
1H NMR(400MHz,メタノール-d
4)δ 7.78-7.77(m,1H),7.25-7.23(m,1H),6.72-6.70(m,1H),3.37(s,3H).
【0165】
ステップ7:N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
【化20】
ジクロロメタン(50mL)中の1-メチルスルホニルピロール-3-カルボン酸(中間体K)(2.43g、12.9mmol)、EDCI(2.69g、14.0mmol)、HOBt(1.89g、14.0mmol)、及びDIPEA(10.2mL、58.4mmol)の溶液に、中間体J(5.00g、11.7mmol)を添加した。室温で4時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を、水で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を飽和NH
4Cl水溶液で3回洗浄し、ブラインで1回洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:1~1:2)によって精製した。残渣を、メチルtert-ブチルエーテルを用いて粉砕した。0.5時間後、懸濁液を濾過し、濾過ケーキをメチルtert-ブチルエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させた。固体をジメチルスルホキシド(12mL)中に溶解し、水(800mL)に滴加した。懸濁液を濾過して、湿った濾過ケーキを得た。濾過ケーキを水中に懸濁し、室温で撹拌した。1時間後、固体を濾過によって収集し、水で3回洗浄し、真空下で乾燥させて、N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド(3.9g、6.93mmol、収率59.3%)を白色の固体として得た。
LCMS(ESI)m/z:[M+H]
+=563.1.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ 12.49(br s,1H),8.51(d,J=7.2Hz,1H),7.98-7.97(m,1H),7.78(s,1H),7.67-7.57(m,1H),7.29-7.27(m,1H),7.26(d,J=7.2Hz,1H),6.88-6.74(m,2H),4.94-4.91(m,1H),4.25(d,J=11.6Hz,2H),3.77-3.67(m,2H),3.63-3.62(m,2H),3.57(s,3H),3.31(s,3H),2.44-2.38(m,2H),1.18(d,J=6.0Hz,6H).
【0166】
実施例2.N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d
3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d
2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
【化21】
N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d
3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d
2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを、実施例1に記載の合成プロトコルに従って調製し、中間体HをN-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(メチル-d
3)-L-セリン-3,3-d
2に置き換えた。N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(メチル-d
3)-L-セリン-3,3-d
2を、A.Yang et al,Org.Process Res.Dev.2019,23,818-824に記載の合成手順に従って同位体が濃縮された物質から調製した。
LCMS(ESI)m/z:[M+H]
+=568.2.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ 12.45(s,1H),8.47(d,J=7.2Hz,1H),7.98(dd,J=2.3,1.7Hz,1H),7.78(s,1H),7.62(dd,J=8.5,7.4Hz,1H),7.29(dd,J=3.2,2.3Hz,1H),7.26(d,J=7.3Hz,1H),6.84-6.75(m,2H),4.91(d,J=7.2Hz,1H),4.25(dd,J=13.1,2.3Hz,2H),3.69-3.59(m,2H),3.56(s,3H),2.42(dd,J=12.8,10.5Hz,2H),1.18(d,J=6.2Hz,6H).
【0167】
実施例3.N-((R)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ)-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
N-((R)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ)-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを、実施例1に記載の合成プロトコルに従って調製し、中間体Hを(2R)-2-(tertブトキシカルボニルアミノ)-3-メトキシ-プロパン酸に置き換えた。
LCMS(ESI)m/z:[M+H]+=563.1.
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 12.5(s,1H),8.50(d,J=7.2Hz,1H),7.98(t,J=1.6Hz,1H),7.78(s,1H),7.62(dd,J=7.2,8.4Hz,1H),7.29(dd,J=2.0,3.2Hz,1H),7.26(d,J=7.2Hz,1H),6.79-6.81(m,2H),4.92(q,J=6.4,12.8Hz,1H),4.25(d,J=11.2Hz,2H),3.69-3.75(m,2H),3.59-3.66(m,2H),3.56(s,3H),3.31(s,3H),2.41(dd,J=10.8,12.8Hz,2H),1.18(d,J=6.0Hz,6H).
【0168】
実施例4.N-((R)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
N-((R)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを、実施例1に記載の合成プロトコルに従って調製し、中間体HをN-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(メチル-d3)-D-セリン-3,3-d2に置き換えた。N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(メチル-d3)-D-セリン-3,3-d2は、A.Yang et al,Org.Process Res.Dev.2019,23,818-824に記載の合成手順に従って同位体が濃縮された物質から調製した。
LCMS(ESI)m/z:[M+H]+=568.3.
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 12.46(s,1H),8.52-8.38(m,1H),7.97(t,J=1.9Hz,1H),7.76(s,1H),7.62(dd,J=8.5,7.3Hz,1H),7.29(dd,J=3.3,2.3Hz,1H),7.26(d,J=7.4Hz,1H),6.79(dt,J=5.1,1.8Hz,2H),4.89(d,J=5.2Hz,1H),4.31-4.20(m,2H),3.63(ddd,J=10.5,6.2,2.5Hz,2H),3.56(s,3H),2.41(dd,J=12.8,10.5Hz,2H),1.18(d,J=6.2Hz,6H).
【0169】
実施例5.BRM及びBRG-1のATPase触媒活性のアッセイ
BRMまたはBRG-1のATPase触媒活性を、ADP-Glo(商標)(Promega、V9102)を使用したインビトロ生化学アッセイによって測定した。反応が完了したら、ADP-Glo(商標)キナーゼアッセイを2ステップで行った。第1のステップは、反応中に消費されていないあらゆるATPを枯渇させることである。第2のステップは、反応生成物であるADPをATPに変換することであり、これは、ルシフェラーゼによって発光を生成するために利用され、Envisionなどの発光リーダーによって検出された。
【0170】
アッセイ反応混合物(10μL)は、30nMのBRMまたはBRG-1、20nMのサケ精子DNA(Invitrogen製、UltraPure(商標)サケ精子DNA溶液、カタログ番号15632011)、及びATPaseアッセイ緩衝液中の400μMのATPを含み、ATPaseアッセイ緩衝液は、20mMのトリス(pH8)、20mMのMgCl2、50mMのNaCl、0.1%Tween-20、及び1mMの新鮮なDTT(Pierce(商標)DTT(ジチオトレイトール)、カタログ番号20290)で構成される。少量の白色Proxiplate-384プラスプレート(PerkinElmer、カタログ番号6008280)上の2.5μLのATP/DNA溶液に、2.5μLのATPase溶液を添加することによって反応を開始し、室温で1時間インキュベートした。次いで、キットに提供される5μLのADP-Glo(商標)試薬を添加した後、反応物を、室温で40分間インキュベートした。次いで、キットに提供される10μLのキナーゼ検出試薬を添加して、ADPをATPに変換し、反応物を、室温で60分間インキュベートした。最後に、発光測定値を、Envisionなどのプレート読み取りルミノメーターで収集する。
【0171】
BRM及びBRG-1を、90%超の純度でハイファイブ昆虫細胞株から合成した。
【0172】
N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、アッセイで、BRMに対して3.9nM、BRG1に対して5.2nMのIP50を有することが見出された。N-((R)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、アッセイで、BRMに対して443nM、BRG1に対して777nMのIP50を有することが見出された。N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、アッセイで、BRMに対して4.6nM、BRG1に対して7.4nMのIP50を有することが見出された。
【0173】
実施例6.化合物Aの合成
BRG1/BRM阻害剤化合物Aは、以下の構造を有する。
【化22】
【0174】
化合物Aを、以下のスキーム3に示すように合成した。
【化23】
【0175】
化合物Aの存在下でのBRMまたはBRG-1のATPase触媒活性を、上記のADP-Glo(商標)(Promega、V9102)を使用したインビトロ生化学アッセイによって測定した。化合物Aは、アッセイで、BRMに対して10.4nM、BRG1に対して19.3nMのIP50を有することが見出された。
【0176】
実施例7.ブドウ膜黒色腫及び血液癌細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPase阻害の効果
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株(92-1、MP41、MP38、MP46)、前立腺癌細胞株(LNCAP)、肺癌細胞株(NCI-H1299)、及び不死化胚性腎臓株(HEK293T)を、増殖培地を含む96ウェルプレートに播種した(表1を参照)。BRG1/BRM ATPase阻害剤である化合物Aを、DMSO中に溶解し、播種時に0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。細胞を、37℃で3日間インキュベートした。処理から3日後、培地を細胞から除去し、30マイクロリットルのTrypLE(Gibco)を細胞に10分間添加した。細胞をプレートから分離し、170マイクロリットルの増殖培地を添加して、再懸濁した。2つのDMSOで処理された対照ウェルから、細胞をカウントし、実験の開始時にプレーティングされた初期の細胞数を、37℃でさらに4日間、新鮮な化合物を含有するプレートに再プレーティングした。7日目に、細胞を、上記のように採取した。3日目及び7日目に、Cell-titer glo(Promega)を添加することにより相対細胞増殖を測定し、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で発光を測定した。各細胞株の増殖が50%阻害された化合物の濃度(GI
50)を、Graphpad Prismを使用して計算し、以下にプロットする。多発性骨髄腫細胞株(OPM2、MM1S、LP1)、ALL細胞株(TALL1、JURKAT、RS411)、DLBCL細胞株(SUDHL6、SUDHL4、DB、WSUDLCL2、PFEIFFER)、AML細胞株(OCIAML5)、MDS細胞株(SKM1)、卵巣癌細胞株(OV7、TYKNU)、食道癌細胞株(KYSE150)、ラブドイド腫瘍株(RD、G402、G401、HS729、A204)、肝臓癌細胞株(HLF、HLE、PLCRPF5)、及び肺癌細胞株(SW1573、NCIH2444)について、上記の方法を、以下の変更を用いて行った。細胞を96ウェルプレートに播種し、翌日、BRG1/BRM ATPase阻害剤である化合物Aを、DMSO中に溶解し、0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。3日目及び7日目の細胞を分ける時点で、細胞を新しい96ウェルプレートに分け、再播種から4時間後に新しい化合物を添加した。表1に、使用した試験細胞株及び増殖培地を列挙する。
【表2】
【0177】
結果:
図1に示されるように、ブドウ膜黒色腫細胞株及び血液癌細胞株は、他の試験された細胞株よりも、BRG1/BRM阻害に対して感受性が高かった。ブドウ膜黒色腫及び血液癌細胞株の阻害は、7日目まで維持された。
【0178】
実施例8.ブドウ膜黒色腫細胞株におけるBRG1/BRM阻害剤と臨床PKC及びMEK阻害剤との比較
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株、92-1またはMP41を、増殖培地の存在下で96ウェルプレートに播種した(表1を参照)。BAF ATPase阻害剤(化合物A)、PKC阻害剤(LXS196;MedChemExpress)、またはMEK阻害剤(Selumetinib;Selleck Chemicals)を、DMSOに溶解させ、播種時に0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。細胞を、37℃で3日間インキュベートした。処理から3日後、細胞増殖をCell-titer glow(Promega)で測定し、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で発光を読み取った。
【0179】
結果:
図2及び
図3に示されるように、化合物Aは、臨床PKC阻害剤及び臨床MEK阻害剤として同等のブドウ膜黒色腫細胞の増殖阻害を示した。さらに、化合物Aは、臨床PKC阻害剤及び臨床MEK阻害剤よりも速く阻害の開始をもたらすことが見出された。
【0180】
実施例9.化合物Bの合成
BRG1/BRM阻害剤化合物Bは、以下の構造を有する。
【化24】
【0181】
化合物Bを、以下のスキーム4に示すように合成した。
【化25】
【0182】
DMF(20mL)中の(2S)-2-アミノ-4-メチルスルファニル-N-[4-[3-(4-ピリジル)フェニル]チアゾール-2-イル]ブタンアミド(2g、4.75mmol、HCl塩)及び1-メチルスルホニルピロール-3-カルボン酸(898.81mg、4.75mmol)の混合物に、EDCI(1.37g、7.13mmol)、HOBt(962.92mg、7.13mmol)、及びDIEA(2.46g、19.00mmol、3.31mL)を添加し、混合物を25℃で3時間撹拌した。混合物をH2O(100mL)に注ぎ入れ、沈殿物を濾過により収集した。固体をMeOH(20mL)中で研和し、沈殿物を濾過により収集した。固体をDMSO(10mL)中に溶解し、次いで混合物をMeOH(50mL)に注ぎ入れ、形成された沈殿物を濾過により収集し、凍結乾燥させて、化合物B(2.05g、3.66mmol、収率77.01%)を白色の固体として得た。
LCMS(ESI)m/z[M+H]+=555.9.
1H NMR(400MHz,DMSO)δ 12.49(s,1H),8.68-8.66(m,2H),8.46(d,J=7.2Hz,1H),8.31-8.30(m,1H),8.02-8.00(m,1H),7.94-7.96(m,1H),7.83(s,1H),7.73-7.74(m,3H),7.61-7.57(m,1H),7.31-7.29(m,1H),6.79-6.77(m,1H),4.74-4.69(m,1H),3.57(s,3H),2.67-2.53(m,2H),2.13-2.01(m,5H).ee%=100%.
【0183】
化合物Bは、記載されるATPaseアッセイで、BRMに対して3.6nM、BRG1に対して5.7nMのIP50を有することが見出された。
【0184】
実施例10.ブドウ膜黒色腫、血液癌、前立腺癌、乳癌、及びユーイング肉腫細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPase阻害の効果
手順:実施例7での上記の全ての細胞株も、化合物Bを用いて上記のように試験した。さらに、以下の細胞株も以下のように試験した。簡潔には、ユーイング肉腫細胞株(CADOES1、RDES、SKES1)、網膜芽腫細胞株(WERIRB1)、ALL細胞株(REH)、AML細胞株(KASUMI1)、前立腺癌細胞株(PC3、DU145、22RV1)、黒色腫細胞株(SH4、SKMEL28、WM115、COLO829、SKMEL3、A375)、乳癌細胞株(MDAMB415、CAMA1、MCF7、BT474、HCC1419、DU4475、BT549)、B-ALL細胞株(SUPB15)、CML細胞株(K562、MEG01)、バーキットリンパ腫細胞株(RAMOS2G64C10、DAUDI)、マントル細胞リンパ腫細胞株(JEKO1、REC1)、膀胱癌細胞株(HT1197)、及び肺癌細胞株(SBC5)について、上記の方法を、以下の変更を用いて行った:細胞を96ウェルプレートに播種し、翌日、BRG1/BRM ATPase阻害剤である化合物Bを、DMSO中に溶解し、0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。3日目及び7日目の細胞を分ける時点で、細胞を新しい96ウェルプレートに分け、再播種から4時間後に新しい化合物を添加した。表2に、使用した試験細胞株及び増殖培地を列挙する。
【表3】
【0185】
結果:
図4に示されるように、ブドウ膜黒色腫細胞株、血液癌細胞株、前立腺癌細胞株、乳癌細胞株、及びユーイング肉腫細胞株は、他の試験された細胞株よりもBRG1/BRM阻害に対して感受性が高かった。ブドウ膜黒色腫、血液癌、前立腺癌、乳癌、及びユーイング肉腫細胞株の阻害は、7日目まで維持された。
【0186】
実施例11.ブドウ膜黒色腫及び血液癌細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPase阻害の効果
手順:前述のように(「バーコード化腫瘍細胞株の混合物における遺伝子型特異的癌脆弱性のハイスループット同定」、Yu et al,Nature Biotechnology 34,419-423,2016)、PRISM(混合物中の相対阻害の同時プロファイリング)を使用してプールされた細胞生存率アッセイを、以下の改変を用いて行った。細胞株を、Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)コレクションから入手し、独自の感染及びプーリングのプロトコルを、かかる細胞株の巨大な一覧に適用するために、10%の熱失活ウシ胎児血清(FBS)を補充したフェノールレッド不含RPMI-1640培地に順応させた。ブラストサイジンを選択マーカーとして使用して、全ての細胞株に対して推定感染多重度(MOI)1で、レンチウイルスのスピン感染プロトコルを実行して、24ヌクレオチドのバーコードを各細胞株に導入した。次いで、安定してバーコード化された750超のPRISMがん細胞株を、倍加時間に従って、25個のプールに一緒にプールした。スクリーニングの実行のために、前述のように各ウェルに25種類の細胞株のプールを播種する代わりに(Yu et al.)、全ての付着細胞株または全ての浮遊細胞株のプールを、それぞれ、T25フラスコ(100,000細胞/フラスコ)または6ウェルプレート(50,000細胞/ウェル)を使用して一緒に播種した。細胞を、10μMの最高濃度から開始して、8測定点、3倍ごとの用量応答を3重で、DMSOまたは化合物のいずれかで処理した。アッセイの堅牢性のための対照として、2.5μM及び0.039μMの最高濃度を使用して、細胞を、それぞれ、先の検証された2つの化合物、汎Raf阻害剤であるAZ-628、及びプロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブを用いて、並行して処理した。
【0187】
化合物による処理から3日後、細胞を溶解し、ゲノムDNAを抽出し、バーコードをPCRによって増幅し、次世代配列決定で検出した。細胞生存率は、処理試料中の細胞株特異的バーコードの計数を、DMSO対照及び0日目対照中のものと比較することによって決定した。用量応答曲線を細胞株ごとに適合させ、対応する曲線下面積(AUC)を計算し、全ての細胞株のAUCの中央値と比較した(
図5)。
【0188】
結果:AUCが中央値未満である細胞株を、最も感受性が高いとみなした。
【0189】
実施例12.ブドウ膜黒色腫細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPase阻害剤の効果
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株(92-1、MP41、MP38、MP46)及び非小細胞肺癌細胞(NCIH1299)を、増殖培地を含む96ウェルプレートに播種した(表2を参照)。BRG1/BRM ATPase阻害剤である化合物Bを、DMSO中に溶解し、播種時に0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。細胞を、37℃で3日間インキュベートした。処理から3日後、細胞増殖をCell-titer glow(Promega)で測定し、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で発光を読み取った。
【0190】
結果:
図6に示されるように、化合物Bは、細胞株において強力な増殖阻害をもたらした。
【0191】
実施例13.ブドウ膜黒色腫細胞株におけるBRG1/BRM阻害剤と臨床PKC及びMEK阻害剤との比較
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株、92-1またはMP41を、増殖培地の存在下で96ウェルプレートに播種した(表2を参照)。BAF ATPase阻害剤(化合物B)、PKC阻害剤(LXS196;MedChemExpress)、及びMEK阻害剤(セルメチニブ;Selleck Chemicals)を、DMSO中に溶解し、播種時に0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。細胞を、37℃で3日間インキュベートした。処理から3日後、細胞増殖をCell-titer glow(Promega)で測定し、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で発光を読み取った。
【0192】
結果:
図7及び
図8に示されるように、化合物Bは、臨床PKC阻害剤及び臨床MEK阻害剤と比較して、ブドウ膜黒色腫細胞の増殖阻害についてより強力な効果を示した。さらに、化合物Bは、臨床PKC阻害剤及び臨床MEK阻害剤よりも速く増殖阻害の開始をもたらすことが見出された。
【0193】
実施例14.BRG1/BRM ATPase阻害剤は、PKC阻害剤耐性細胞の増殖を阻害するのに有効である。
手順:MP41ブドウ膜黒色腫細胞を、最大1μMの漸増濃度の化合物を含有する増殖培地で長期培養することによって、PKC阻害剤(LXS196、MedChemExpress)に対して耐性にした(表2を参照)。3カ月後、PKC阻害剤(LXS196)またはBRG1/BRM ATPase阻害剤(化合物B)に対する親MP41細胞及びPKC阻害剤(PKCi)耐性細胞の感受性を、実施例6で上記のように、7日間の増殖阻害アッセイで試験した。
【0194】
結果:PKCi耐性細胞は、親MP41細胞株よりも高い濃度のLXS196で増殖に耐え得るが(
図9)、BRG1/BRM ATPase阻害剤(化合物B)は、依然として、PKCi耐性細胞株と親細胞株との両方の強力な増殖阻害をもたらした(
図10)。PKCi耐性細胞は、親MP41細胞よりも、化合物Bに対してより感受性であった(
図10)。
【0195】
実施例15.化合物Cの合成
BRG1/BRM阻害剤化合物Cは、以下の構造を有する。
【化26】
【0196】
化合物Cを、以下のスキーム5に示すように合成した。
【化27】
【0197】
化合物Cは、上記のATPaseアッセイで、BRMに対して5.3nM、BRG1に対して1.3nMのIP50を有することが見出された。
【0198】
実施例16.BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤は、インビボでブドウ膜黒色腫の腫瘍増殖の阻害を引き起こす。
手順:ヌードマウス(Envigo)を、50%のMatrigel中の5×106個の92-1ブドウ膜黒色腫細胞を用いて、腋窩領域に皮下移植した。腫瘍を、平均約200mm3に増殖させ、この時点で、マウスをグループ化し、投薬を開始した。マウスに、ビヒクル(20%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)または漸増用量の化合物Cを、強制経口投与によって1日1回投薬した。腫瘍量及び体重を、3週間にわたって測定し、用量を体重によって調整して、適当な用量をmg/kg単位で得た。この時点で、動物を安楽殺し、腫瘍を解剖し、画像化した。
【0199】
結果:
図11及び
図12に示されるように、化合物Cによる処置は、最高(50mg/kg)用量で観察された用量依存的な様式での腫瘍退縮を伴う腫瘍増殖阻害をもたらした。
図13に示されるように、いずれの処置も忍容性良好であり、体重減少は観察されなかった(
図13)。
【0200】
実施例17.ブドウ膜黒色腫及び血液癌細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPase阻害の効果
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株(92-1、MEL202、MP41、MP38、MP46)、前立腺癌細胞(22RV1)、急性白血病細胞(EOL1、THP1)、組織球性リンパ腫細胞(U937)を、増殖培地を含む96ウェルプレートに播種した(表2を参照)。BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤であるN-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを、DMSO中に溶解し、播種時に0~2μM(ブドウ膜黒色腫細胞株の場合)、または0~1μM(他の細胞株の場合)の濃度勾配で細胞に添加した。細胞を、37℃で3日間インキュベートした。処理から3日後、細胞増殖をCell-titer glow(Promega)で測定し、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で発光を読み取った。
【0201】
結果:
図14に示されるように、N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、全ての細胞株において強力な増殖阻害をもたらした。表3に示されるように、測定された絶対IC
50値は、試験した全ての細胞株について350ナノモル未満であった。
【0202】
表3に、使用した試験細胞株及び増殖培地、ならびに化合物での処理から3日後の絶対IC
50値(nM)を列挙する。
【表4】
【0203】
実施例18.BRG1/BRM ATPase阻害剤は、インビボでブドウ膜黒色腫の腫瘍増殖の阻害を引き起こす。
手順:ヌードマウス(Envigo)を、50%のMatrigel中の5×106個の92-1ブドウ膜黒色腫細胞を用いて、腋窩領域に皮下移植した。腫瘍を、平均約200mm3に増殖させ、この時点で、マウスをグループ化し、投薬を開始した。マウスに、ビヒクル(20%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)または漸増用量のN-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを強制経口投与によって、1日1回投与した。腫瘍量及び体重を、3週間にわたって測定し、用量を体重によって調整して、適切な用量をmg/kgとして得た。
【0204】
結果:
図15に示されるように、N-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドによる処置は、最高(1.5mg/kg)用量で観察された用量依存的な様式での腫瘍退縮を伴う腫瘍増殖阻害をもたらした。
図16に示されるように、観察された体重変化%に基づいて、いずれの処置も忍容性良好であった。
【0205】
実施例19.FHD-286とαPD-1 Abの組み合わせは、免疫学的に不活性なB16F10黒色腫モデルにおいて相乗的利益を提供する。
手順:B16F10細胞をマウスに移植し、腫瘍を50mm3まで増殖させた。マウスを、1日当たり1.5mg/kgのN-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド及び10mg/kgの抗PD-1抗体で週に2回処置した。
【0206】
結果:
図17~19に示されるように、BRM/BRG1阻害剤と抗PD-1抗体の組み合わせは、このモデルにおいて、腫瘍抑制及び生存に対する相加以上の効果をもたらした。
【0207】
実施例20.BRM/BRG1阻害剤とPD-1阻害剤の組み合わせは、A20リンパ腫の腫瘍を有するマウスに相乗的な利益を提供する。
手順:A20細胞をマウスに移植し、腫瘍を50mm3まで増殖させた。マウスを、1日当たり1.5mg/kgのN-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド及び10mg/kgの抗PD-1抗体で週に2回処置した。
【0208】
結果:
図20~22に示されるように、BRM/BRG1阻害剤と抗PD-1抗体の組み合わせは、このモデルにおいて、腫瘍抑制及び生存に対する相加以上の効果をもたらした。
【0209】
実施例21.BRM/BRG1阻害剤とPD-1阻害剤の組み合わせは、CT26結腸直腸腫瘍の腫瘍を有するマウスに相乗的な利益を提供する。
手順:CT26細胞をマウスに移植し、腫瘍を50mm3まで増殖させた。マウスを、1日当たり1.5mg/kgのN-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド及び10mg/kgの抗PD-1抗体で週に2回処置した。
【0210】
結果:
図23~25に示されるように、BRM/BRG1阻害剤と抗PD-1抗体の組み合わせは、このモデルにおいて、腫瘍抑制及び生存に対する相加以上の効果をもたらした。
【0211】
実施例22.BRM/BRG1阻害剤とPD-L1阻害剤の組み合わせは、CT26結腸直腸の腫瘍を有するマウスに相乗的な利益を提供する。
手順:CT26細胞をマウスに移植し、腫瘍を50mm3まで増殖させた。マウスを、1日当たり1.5mg/kgのN-((S)-1-((4-(6-(シス-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド及び10mg/kgの抗PD-L1抗体で週に2回処置した。
【0212】
結果:
図26及び27に示されるように、BRM/BRG1阻害剤と抗PD-L1抗体の組み合わせは、このモデルにおいて、腫瘍抑制及び生存に対する相加以上の効果をもたらした。
【0213】
他の実施形態
1.がんを治療することを必要とする対象おいてそれを治療する方法であって、前記対象に、有効量の、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤ならびに有効量の免疫療法を投与することを含む、前記方法。
2.がんを治療することを必要とする対象おいてそれを治療する方法であって、前記対象に、有効量の以下の構造を有する化合物、
【化28】
またはその薬学的に許容される塩、及び有効量の免疫療法を投与することを含む、前記方法。
3.前記免疫療法が、前記薬剤もしくは化合物、またはその薬学的に許容される塩と同時に投与される、実施形態1または2に記載の方法。
4.前記免疫療法が、前記薬剤もしくは化合物、またはその薬学的に許容される塩の前に投与される、実施形態1または2に記載の方法。
5.前記免疫療法が、前記薬剤もしくは化合物、またはその薬学的に許容される塩の後に投与される、実施形態1または2に記載の方法。
6.前記免疫療法が、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CD-161阻害剤、または養子T細胞移入療法である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.前記免疫療法が、CTLA-4阻害剤である、実施形態6に記載の方法。
8.前記免疫療法が、PD-1阻害剤である、実施形態6に記載の方法。
9.前記免疫療法が、PD-L1阻害剤である、実施形態6に記載の方法。
10.前記免疫療法が、CD-161阻害剤である、実施形態6に記載の方法。
11.前記免疫療法が、養子T細胞移入療法である、実施形態6に記載の方法。
12.前記がんが、以前に投与された免疫療法に応答しなかった、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.前記がんが、免疫療法に対して耐性がある、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
14.前記がんが、前記BAF複合体の機能喪失をもたらす変異を含まない、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
15.前記有効量の前記薬剤または化合物が、前記対象における活性化T細胞のレベルを増加させるのに有効な量である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
16.前記有効量の前記薬剤または化合物が、腫瘍微小環境における活性化T細胞のレベルを増加させるのに有効な量である、実施形態15に記載の方法。
17.前記がんが、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、食道胃癌、食道癌、膵臓癌、肝胆道癌、軟部組織肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、腎細胞癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺癌、前立腺癌、胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、消化管神経内分泌腫瘍、子宮肉腫、消化管間質腫瘍、CNS癌、胸腺腫瘍、副腎皮質癌、虫垂癌、小腸癌、陰茎癌、骨癌、または血液癌である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
18.前記がんが、食道癌である、実施形態17に記載の方法。
19.前記がんが、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、陰茎癌、骨癌、腎細胞癌、前立腺癌、または血液癌である、実施形態18に記載の方法。
20.前記がんが、非小細胞肺癌である、実施形態19に記載の方法。
21.前記がんが、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、または血液癌である、実施形態19に記載の方法。
22.前記がんが、黒色腫である、実施形態21に記載の方法。
23.前記黒色腫が、ブドウ膜黒色腫、粘膜黒色腫、または皮膚黒色腫である、実施形態22に記載の方法。
24.前記黒色腫が、ブドウ膜黒色腫である、実施形態23に記載の方法。
25.前記がんが、前立腺癌である、実施形態21に記載の方法。
26.前記がんが、血液癌である、実施形態21に記載の方法。
27.前記血液癌が、多発性骨髄腫、大細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、免疫グロブリンAλ骨髄腫、びまん性混合組織球性リンパ腫及びリンパ球性リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である、実施形態26に記載の方法。
28.前記がんが、乳癌である、実施形態21に記載の方法。
29.前記乳癌が、ER陽性乳癌、ER陰性乳癌、トリプルポジティブ乳癌、またはトリプルネガティブ乳癌である、実施形態28に記載の方法。
30.前記がんが、骨癌である、実施形態21に記載の方法。
31.前記骨癌が、ユーイング肉腫である、実施形態30に記載の方法。
32.前記がんが、腎細胞癌腫である、実施形態21に記載の方法。
33.前記腎細胞癌が、小眼球腫転写因子ファミリー転座腎細胞癌である、実施形態32に記載の方法。
34.前記がんが、BRG1及び/またはBRMタンパク質を発現する、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
35.前記対象またはがんが、BRG1の機能喪失変異を有する、及び/またはそれを有すると同定されている、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
36.前記BRG1の機能喪失変異が、前記タンパク質のATPase触媒ドメインにある、実施形態35に記載の方法。
37.前記BRG1の機能喪失変異が、BRG1のC末端での欠失である、実施形態35に記載の方法。
38.前記がんが、上皮成長因子受容体変異及び/もしくは未分化リンパ腫キナーゼドライバー変異を有しないか、または有しないと判定されている、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
39.前記がんが、KRAS変異、GNAQ変異、GNA11変異、PLCB4変異、CYSLTR2変異、BAP1変異、SF3B1変異、EIF1AX変異、TFE3転位、TFEB転位、MITF転位、EZH2変異、SUZ12変異、及び/もしくはEED変異を有するか、または有すると判定されている、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
40.前記がんが、転移性である、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
41.前記がんが、抗がん療法に対して耐性であるか、または抗がん療法による以前の処置に応答しなかった、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
42.前記抗がん療法が、化学療法剤もしくは細胞傷害性剤、免疫療法、手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固、あるいはそれらの組み合わせである、実施形態41に記載の方法。
43.前記抗がん療法が、化学療法剤または細胞傷害性剤である、実施形態42に記載の方法。
44.前記化学療法剤または細胞傷害性剤が、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤である、実施形態43に記載の方法。
45.前記がんが、PKC阻害剤に対して耐性があるか、またはPKC阻害剤による以前の処置に応答しなかった、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法。
46.前記方法が、前記対象に投与すること、または前記細胞を抗がん療法と接触させることをさらに含む、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法。
47.前記抗がん療法が、化学療法剤もしくは細胞傷害性剤、免疫療法、手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固、あるいはそれらの組み合わせである、実施形態46に記載の方法。
48.前記抗がん療法が、手術、MEK阻害剤、及び/またはPKC阻害剤、あるいはそれらの組み合わせである、実施形態46または47に記載の方法。
49.前記MEK阻害剤が、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはタメチニブである、実施形態48に記載の方法。
50.前記PKC阻害剤が、ソトラスタウリンまたはIDE 196である、実施形態48に記載の方法。
51.がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療するための免疫療法と組み合わせて使用するための、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する、薬剤。
52.がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療するための免疫療法と組み合わせて使用するための、以下の構造を有する化合物:
【化29】
またはその薬学的に許容される塩。
53.がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療するための免疫療法と組み合わせて使用するための薬剤の製造における、BRM及び/またはBRG1のレベル及び/または活性を低減する薬剤の使用。
54.がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療するための免疫療法と組み合わせて使用するための薬剤の製造における、以下の構造を有する化合物:
【化30】
またはその薬学的に許容される塩の使用。
【0214】
この明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、その全体において参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、それらの全体において参照により本明細書に組み込まれる。本出願における用語が、参照により本明細書に組み込まれる文書において異なるように定義されることが判明する場合、本明細書に提供される定義が、その用語の定義としての役割を果たすものとする。
【0215】
本発明を、その特定の実施形態と関連付けて説明してきたが、本発明は、さらなる修正が可能であり、この出願は、概して本発明の原理に従い、かつ本発明が関連する技術分野内の既知または慣例的実践の範囲内に入る本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変形例、使用、または適合を網羅することを意図しており、本明細書の上に示される本質的な特徴に適用されてもよく、特許請求の範囲に倣うことが理解される。
【国際調査報告】