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特表2024-529978モリブデンおよび電子ビーム積層製造によるモリブデンベース構造、特に原子力コンポーネント用構造の製造方法
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  • 特表-モリブデンおよび電子ビーム積層製造によるモリブデンベース構造、特に原子力コンポーネント用構造の製造方法 図1
  • 特表-モリブデンおよび電子ビーム積層製造によるモリブデンベース構造、特に原子力コンポーネント用構造の製造方法 図2
  • 特表-モリブデンおよび電子ビーム積層製造によるモリブデンベース構造、特に原子力コンポーネント用構造の製造方法 図3
  • 特表-モリブデンおよび電子ビーム積層製造によるモリブデンベース構造、特に原子力コンポーネント用構造の製造方法 図4A
  • 特表-モリブデンおよび電子ビーム積層製造によるモリブデンベース構造、特に原子力コンポーネント用構造の製造方法 図4B
  • 特表-モリブデンおよび電子ビーム積層製造によるモリブデンベース構造、特に原子力コンポーネント用構造の製造方法 図5
  • 特表-モリブデンおよび電子ビーム積層製造によるモリブデンベース構造、特に原子力コンポーネント用構造の製造方法 図6A
  • 特表-モリブデンおよび電子ビーム積層製造によるモリブデンベース構造、特に原子力コンポーネント用構造の製造方法 図6B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】モリブデンおよび電子ビーム積層製造によるモリブデンベース構造、特に原子力コンポーネント用構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/25 20210101AFI20240806BHJP
   B22F 12/30 20210101ALI20240806BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240806BHJP
   B22F 10/362 20210101ALI20240806BHJP
   B22F 10/364 20210101ALI20240806BHJP
   B22F 12/41 20210101ALI20240806BHJP
   G21C 13/087 20060101ALI20240806BHJP
   C22C 27/04 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
B22F10/25
B22F12/30
B22F1/00 P
B22F10/362
B22F10/364
B22F12/41
G21C13/087
C22C27/04 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505331
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 US2022030999
(87)【国際公開番号】W WO2023022773
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/226,099
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/752,959
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524037144
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティー・ニュークリア・エナジー・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524036561
【氏名又は名称】エリザベス・エリス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス・エリス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ハリソン・チャーン
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス・ビー・フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ウォルター・ガリッキ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・スコット・キッチン
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス・アダム・マクフォールズ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA21
4K018BA09
4K018BB04
4K018CA44
4K018EA51
4K018KA28
(57)【要約】
電子ビーム溶融積層製造によりコンポーネント、より詳細にはモリブデンまたはモリブデンベース合金の、特に複雑な原子力コンポーネント幾何形状のコンポーネントを製造するための方法論および製造プロセス。入力パラメータは、電子ビーム溶融機などの電子ビーム溶融積層製造機器を制御するために提供される。入力パラメータは、ビルドセットアップ、初期熱処理、粉末の初期層化、固化前熱処理、固化、固化後熱処理、層のインデックス化、およびビルド後熱処理を含む様々なプロセスステップに関する。方法論および製造プロセスは、≧99.0%の純度および99.75%≧の密度を有するモリブデンのコンポーネントの製造を可能にする。製造されたモリブデンコンポーネントの金属組織解析断面は、間隙がなく亀裂がない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム溶融積層製造によりコンポーネントを製造するための方法であって、
電子ビーム溶融積層製造機の真空チャンバの反応ゾーン内で粉末層上に開始プレートを着座させることを含むビルドセットアップステップであって、前記粉末層が第1の粉末を含む、ステップと、
プレートオフセット距離で前記開始プレートを位置決めし、前記開始プレートを第1の温度に加熱し、前記開始プレートを前記第1の温度に保持し、前記開始プレートが上に着座される前記粉末層の一部を焼結することを含む初期熱処理ステップと、
前記第1の粉末の基層で前記開始プレートのビルド表面の少なくとも一部を覆うステップと、
前記基層が第1の予熱温度に加熱される第1の加熱ステップおよび前記基層が第2の予熱温度に加熱される第2の加熱ステップを含む固化前ステップであって、前記第2の予熱温度は前記第1の予熱温度より高く、前記第1の予熱温度は前記基層の前記第1の粉末を塊にし、前記第2の予熱温度は前記塊にされた第1の粉末の一部を高密度化する、ステップと、
前記塊にされた第1の粉末の前記高密度化された部分から前記コンポーネントの電流層を焼結することを含む固化ステップと、
冷却ステップを含むビルド後ステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記固化ステップの後および前記ビルド後ステップの前に、
前記粉末層を前記第2の予熱温度に戻すことを含む固化後ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固化後ステップの後および前記ビルド後ステップの前に、
その後の層の厚さに対応する距離だけ前記開始プレートの位置を移動させることを含むインデックス化ステップと、
前記コンポーネントの前記電流層が前記第1の粉末の層で覆われる補充ステップと、
前記固化前ステップおよび前記固化ステップを行うステップとをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記固化後ステップ、前記インデックス化ステップ、前記補充ステップ、前記固化前ステップ、および前記固化ステップは、前記コンポーネントが最終の形になるまで複数回繰り返される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記開始プレートは、99.0%以上の純度を有するモリブデンからなる組成を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の粉末は、99.0%以上の純度を有するモリブデンからなる組成を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の粉末は、99.0%以上の純度を有するモリブデンからなる組成を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の温度は、前記粉末層を焼結するのに十分である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プレートオフセット距離は、前記初期熱処理ステップ中の前記開始プレートの熱膨張に基づいている、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記開始プレートは、99.0%以上の純度を有するモリブデンからなる組成を有し、
前記第1の粉末は、99.0%以上の純度を有するモリブデンからなる組成を有し、
前記第1の温度は、前記粉末層を焼結するのに十分であり、
前記プレートオフセット距離は、前記初期熱処理ステップ中の前記開始プレートの熱膨張に基づいている、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記塊にされた第1の粉末の前記高密度化された部分の領域は、前記コンポーネントの前記層が形成される領域を囲む境界を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記固化ステップ中の焼結に使用されるラスタ化パターンは、素数に基づく、または素数の整数の倍数に基づく角回転を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コンポーネントは、99.0%と等しいまたはこれより大きい純度、および99.75%と等しいまたはこれより大きい密度を有するモリブデンからなる組成を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記コンポーネントは亀裂がない、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コンポーネントは間隙がない、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記コンポーネントは亀裂がなく間隙がない、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記開始プレートは、99.0%以上の純度を有するモリブデンからなる組成を有し、
前記第1の粉末は、99.0%以上の純度を有するモリブデンからなる組成を有し、
前記第1の温度は、前記粉末層を焼結するのに十分であり、
前記プレートオフセット距離は、前記初期熱処理ステップ中の前記開始プレートの熱膨張に基づき、
前記塊にされた第1の粉末の前記高密度化された部分の領域は、前記コンポーネントの前記層が形成される領域を囲む境界を有し、
前記固化ステップ中の焼結に使用されるラスタ化パターンは、素数に基づく、または素数の整数の倍数に基づく角回転を含み、
前記コンポーネントは、99.0%と等しいまたはこれより大きい純度、および99.75%と等しいまたはこれより大きい密度を有するモリブデンからなる組成を有し、
前記コンポーネントは亀裂がなく間隙がない、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記冷却ステップは、
前記コンポーネントに入力された熱を取り除くこと、および
(a)不活性ガスで前記真空チャンバを裏込めすることが続く、20±2分間前記真空チャンバ内の真空雰囲気を大気圧に維持すること、または(b)不活性ガス下で前記コンポーネントを100℃まで冷却することを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記不活性ガスはヘリウムである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
電子ビーム溶融積層製造機器のコントローラ内に前記コンポーネントの幾何形状を入力することを含む幾何形状入力ステップをさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記コンポーネントの前記幾何形状は、層ごとベースの幾何形状である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記コンポーネントの前記幾何形状は、コンピュータ支援設計(CAD)モデルまたは積層製造ファイル(AMF)ファイルまたは光造形輪郭(STL)ファイル内で具体化される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記冷却ステップは、
前記コンポーネントに入力された熱を取り除くこと、および
(a)不活性ガスで前記真空チャンバを裏込めすることが続く、20±2分間前記真空チャンバ内の真空雰囲気を大気圧に維持すること、または(b)不活性ガス下で前記コンポーネントを100℃まで冷却することを含み、
前記方法は、電子ビーム溶融積層製造機器のコントローラ内に前記コンポーネントの幾何形状を入力することを含む幾何形状入力ステップをさらに含み、
前記コンポーネントの前記幾何形状は、コンピュータ支援設計(CAD)モデルまたは積層製造ファイル(AMF)ファイルまたは光造形輪郭(STL)ファイル内で具体化される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記基層は40から70ミクロン、あるいは45から55ミクロンの厚さを有する、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記コンポーネントは原子力コンポーネントである、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項に記載の方法によって製造される原子炉用のコンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究または開発に関する陳述
本発明は、エネルギー省によって与えられたDOE Cooperative Agreement Number DE-NE0008744、および米国エネルギー省に対するOak Ridge National Laboratoryの管理および運営契約者である、BWXT Nuclear Energy, Inc.とUT-Battelle, LLCの間のCRADA No. NFE-19-07627による政府のサポートでなされた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0002】
本開示は概して、電子ビーム積層製造による製造方法に関する。より詳細には、電子ビーム積層製造により、純モリブデンおよび原子力コンポーネント用構造を含むモリブデンベース構造を製造する方法が開示されている。
【背景技術】
【0003】
以下の議論では、特定の構造および/または方法に言及する。しかし、以下の言及は、これらの構造および/または方法が従来技術を構成することの承認として解釈されるべきではない。出願人は、このような構造および/または方法が本発明に対する従来技術として資格を得ないことを示す権利を明示的に保持している。
【0004】
GEN IV超高温原子炉(VHTR)およびGEN IV極高温原子炉(UHTR)などの高度原子炉概念は、研究され続ける。高度製造プロセスは、このような高度原子炉概念を裏付けるために研究されている。例えば、関心のある1つの高度製造プロセスは、電子ビーム溶融技術を使用した積層製造である。複雑な原子力コンポーネント幾何形状に対する高度製造プロセスが、特に興味がある。
【0005】
加えて、原子力応用例では、モリブデンまたはモリブデンベース合金である組成物を有する原子力コンポーネントの製造は、モリブデンの高い融点により興味がある。例えば、モリブデンは、原子炉の安全性を改善することに貢献することができる燃料素子の構造的材料として使用することができる。
【0006】
しかし、電子ビーム溶融積層製造により、原子力コンポーネント、より詳細にはモリブデンまたはモリブデンベース合金の原子力コンポーネントを上手く製造するための方法および製造プロセスは開発されていない。したがって、特定の製造プロセスによる特定の材料の高度製造プロセスに関連する多くの態様およびパラメータが知られておらず、本技術領域において高度製造プロセスの実施に対する障壁として残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、電子ビーム溶融積層製造により原子力コンポーネントを、より詳細にはモリブデンまたはモリブデンベース合金の、特に複雑な原子力コンポーネント幾何形状の原子力コンポーネントを製造するための方法および製造プロセスを提供する。これは、電子ビーム溶融機などの電子ビーム溶融積層製造機器を制御するための入力パラメータを含むことができる。ビルドセットアップ、初期熱処理、粉末の初期層化、固化前熱処理、固化、固化後熱処理、層のインデックス化、およびビルド後熱処理を含む、様々なプロセスステップに関連する変数および入力が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
電子ビーム溶融積層製造によりコンポーネントを製造するための方法の一実施形態では、方法は、電子ビーム溶融積層製造機の真空チャンバの反応ゾーン内で粉末層上に開始プレートを着座させることを含むビルドセットアップステップであって、粉末層が第1の粉末を含む、ステップと、プレートオフセット距離で開始プレートを位置決めし、開始プレートを第1の温度に加熱し、開始プレートを第1の温度に保持し、開始プレートが上に着座される粉末層の一部を焼結することを含む初期熱処理ステップと、第1の粉末の基層で開始プレートのビルド表面の少なくとも一部を覆うステップと、基層が第1の予熱温度に加熱される第1の加熱ステップおよび基層が第2の予熱温度に加熱される第2の加熱ステップを含む固化前ステップであって、第2の予熱温度は第1の予熱温度より高く、第1の予熱温度は基層の第1の粉末を塊にし、第2の予熱温度は塊にされた第1の粉末の一部を高密度化する、ステップと、塊にされた第1の粉末の高密度化された部分からコンポーネントの電流層を焼結することを含む固化ステップと、冷却ステップを含むビルド後ステップとを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、(電子ビーム溶融積層製造プロセスで使用される)開始プレートおよび粉末の一方または両方は、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%純度などの99.0%以上、あるいは99.3%以上、または99.5%以上の純度を有するモリブデンからなる組成物を有する。積層製造粉末の組成物と位置合わせされた組成物を備えた開始プレートを使用することは、モリブデンベース積層製造粉末がステンレス鋼またはチタン開始プレートなどの非モリブデンベース開始プレートの上に堆積された場合に生じる金属間層を最小限に抑えるおよび/または避けるために遵守された。
【0010】
いくつかの実施形態では、方法は、モリブデン、または特に99.75%、99.76%、99.77%、99.78%、99.79%、99.80%、99.81%、99.82%、99.83%、99.84%、99.85%、99.86%、99.87%、99.88%、99.89%、99.90%、99.91%、99.92%、99.93%、99.94%、99.95%、99.96%、99.97%、99.98%、99.99%、または100%密度などの99.75%以上の密度を有するモリブデンベース合金の原子力コンポーネントを製造することができる。いくつかの実施形態では、原子力コンポーネントは、薄い(≦1mm厚さ、あるいは500ミクロンの薄さの)壁面を備えた燃料外装材コンポーネント、捩じり内部流路、および可変厚さを備えた壁面などの複雑な幾何形状を有する。
【0011】
前述の要約と、実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むとより良く理解することができる。図示した実施形態は、示した正確な配置および手段に限るものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】様々なコンポーネントの内部配置を示す電子ビーム溶融機の略図である。
図2】電子ビーム積層製造によりコンポーネントを製造する方法の一実施形態における基本的ステップを記載した流れ図である。
図3】粉末層、高密度化された粉末、および製造されているコンポーネントの層を略図的に示す、反応ゾーンの上面図である。
図4A】電子ビーム積層製造によって製造された例示的なモリブデン構造の画像である。
図4B】電子ビーム積層製造によって製造された例示的なモリブデン構造の画像である。
図5】電子ビーム積層製造プロセス中に撮られた、図4Aで示された例示的なモリブデン構造の近赤外線(NIR)画像である。
図6A】電子ビーム積層製造によって製造された例示的なモリブデン構造の第1の断面(X-Y平面)の金属組織解析画像である。
図6B】電子ビーム積層製造によって製造された例示的なモリブデン構造の第2の断面(Y-Z平面)の金属組織解析画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
いくつかの例では、それぞれの構成元素の寸法は、明確にするために適当に調節される。見るのを容易にするため、いくつかの例では、図の指名された機構のいくつかのみに参照番号が付されている。
【0014】
電子ビーム溶融(EBM)技術は、金属粉末を層ごとで選択的に焼結および溶融するために高粉末化電子ビームを利用して、最終的に完全な密度の3次元部品を作り出す粉末層溶融(PBF)積層製造(AM)技術である。図1は、様々なコンポーネントの内部配置を示す電子ビーム溶融機(EBM機)の略図である。EBM機100は、電子ビーム生成部105、電子ビームフォーカス部110、および堆積部115を含む。概して、電子ビーム生成部105、電子ビームフォーカス部110、および堆積部115は、電子ビーム生成部105からの電子ビーム120が堆積部115内の反応ゾーン125まで電子ビームフォーカス部110を通して伝搬するように互いに組み立てられる。
【0015】
電子ビーム生成部105は典型的には、粉末化される場合に、電子ビーム120を生成する電子ビーム源135(フィラメントなど)を含む電子ビームカラム130の形をしている。電子ビームカラムに関連付けられた他のサブアセンブリは、真空制御機器および表示システム(図示せず)を含む。
【0016】
電子ビームフォーカス部110は、非点収差レンズ140、フォーカスレンズ145、および偏向レンズ150を含む、電子ビーム120を焦点に合わせ、偏向し、導くための構造を含む。
【0017】
堆積部115は、ビルドタンク165に粉末を供給するために導管160によって接続された、リザーバまたはホッパなどの1つまたは複数の粉末源155を含む。ビルドタンク165内には、平行移動可能なビルドプラットフォーム170(典型的には、矢印Vで示されるように垂直方向に平行移動可能である)および粉末層175がある。開始プレート180は粉末層175内に置かれ、ビルドプラットフォーム170が平行移動し、より多くの粉末が粉末源155から粉末層175に加えられると、開始プレート180(および、開始プレート180上に蓄積されているコンポーネント)は粉末層175の粉末内に埋め込まれる。平行移動可能なアーム185、または(典型的には、矢印Hによって示されるように水平方向に平行移動可能な)レーキまたはドクターブレードなどの同様のデバイスは、ビルドタンクに粉末を供給し、その後の積層製造プロセス中に粉末の各追加層を分配および平らにするのを助ける。反応ゾーン125は典型的には、開始プレート180の上に蓄積されているコンポーネントの電流層を積層製造するように、入射電子ビーム120と相互作用する粉末層175の部分である。堆積部115は典型的には、反応ゾーン125で大気の制御を可能にするように、真空チャンバ190または他の構造内に含まれる。熱シールド195は、入射電子ビーム120の経路と粉末源155の間に位置決めされている。
【0018】
コントローラ(図示せず)は、デジタルモデルデータ、例えば、3Dモデルまたはコンピュータ支援設計(CAD)モデルまたは積層製造ファイル(AMF)ファイルまたは光造形輪郭(STL)ファイルなどの別の電子データ源を使用して、ほぼあらゆる形状または幾何形状の物体を製造するように、層ごとベースで開始プレート180上に金属などの材料を堆積させるために、EBM機の様々なコンポーネントへ作動通信および制御を行う。
【0019】
例示的なEBM機は、Arcam EBM、GE Additive Companyにより市販されている。
【0020】
EBM機は、コンポーネントを製造するために使用することができる。例示的実施形態では、製造方法は、原子力コンポーネントを積層製造するために、EBM機などの電子ビーム溶融積層製造機器を使用する。図2は、EBM機を使用して電子ビーム積層製造によってコンポーネントを製造する方法の一実施形態における基本的ステップを記載するフロー図である。図示した方法S200は、ビルドセットアップステップS210、初期熱処理ステップS220、初期粉末層を確立するステップS230、固化前熱処理ステップS240、固化ステップS250、固化後熱処理ステップS260、およびビルド後熱処理ステップS290を含む様々なプロセスステップを有する。
【0021】
図示した方法S200のプロセスステップはまた、コンポーネントを作り出すために積層製造を介して層のその後のビルドアップを行う一連のステップを含む。例えば、各層では、固化後熱処理ステップS260の後およびビルド後熱処理ステップS290の前に、方法S200に、次の層にインデックス化するステップS270、および粉末層を補充するステップS280が含まれ、その後に、固化前熱処理ステップS240、固化ステップS250、および固化後熱処理ステップS260のプロセスステップが起こる。インデックス化ステップS270、補充ステップS280、固化前熱処理ステップS240、固化ステップS250、および固化後熱処理ステップS260が、コンポーネントが最終の形になるまで複数回繰り返される。これらのステップが繰り返される回数は製造されているコンポーネントのサイズおよび各堆積層の厚さによるが、これらのステップが繰り返される例示的な回数は、2から10,000回を含み、各堆積層の厚さは最大80ミクロンまでの範囲である、あるいは40から70ミクロン、または45から55ミクロン、または約50ミクロン(すなわち、50±1.5ミクロン)の範囲である。層のその後のビルドアップでのプロセスでは、ビルド後熱処理ステップS290は、最終層に対して固化後熱処理ステップS260を完了させた後に起こる。
【0022】
ビルドセットアップステップS210は、EBM機を動作に備えさせる。例示的実施形態では、EBM機は、堆積される材料の組成に実質的に一致するまたは一致する開始プレート180を使用して、本明細書に開示される組成を有するコンポーネントを製造するようになっていた。例えば、モリブデンからなる組成を有する製造されたコンポーネントでは、開始プレート180の組成はまた、モリブデンからなり、基本的にモリブデンからなる組成を有する製造されたコンポーネントでは、開始プレート180の組成はまた、基本的に、モリブデンまたはモリブデンベース合金からなる。同様に、モリブデンベース合金からなる組成を有する製造されたコンポーネントでは、開始プレート180の組成はまた、モリブデンベース合金からなり、基本的にモリブデンベース合金からなる組成を有する製造されたコンポーネントでは、開始プレート180の組成はまた、基本的にモリブデンベース合金からなる。これらの各場合では、堆積される材料の組成、および開始プレートの組成の純度レベルは、これらの純度レベルが本明細書に開示された範囲内、例えば99.0%以上である限り異なっていてもよい。代替実施形態では、開始プレートの組成は、モリブデンタングステン合金またはモリブデンレニウム合金、例えば、MoWまたはMoReである。理論に縛られることなく、積層製造粉末の組成物と位置合わせされた組成物を備えた開始プレートを使用することは、モリブデン(または、モリブデンベース)積層製造粉末がステンレス鋼またはチタン開始プレートなどの非モリブデン(または、非モリブデンベース)開始プレートの上に堆積された場合に生じる金属間層を最小限に抑えるおよび/または避けるために遵守された。
【0023】
例示的実施形態では、EBM機は、開始プレート180から周囲環境への熱伝達が従来のEBM機と比較して減少されるように、開始プレート180の熱絶縁を増加することによって、本明細書に開示された組成を有するコンポーネントを製造するようになっていた。典型的には、EBM機は、開始プレートがビルドタンクの底部表面上または平行移動可能なビルドプラットフォームの内側表面上、すなわち、動作中に粉末層が生じる容量に面する平行移動可能なビルドプラットフォームの表面上に置かれたピンに着座させるように設計されている。これに対して、本明細書に開示された例示的実施形態では、開始プレート180は粉末の層上に直接着座される。典型的には、粉末はコンポーネントを製造するために使用される粉末と同じ組成を有する。この粉末の層は、開始プレート180と、例えば、平行移動可能なビルドプラットフォーム175の内側表面の間の空間を占めている。例示的実施形態では、この粉末の層は、5から20ミリメートル(mm)、あるいは7から15mm、または8から12mm、または10mmの厚さを有する。また、典型的には、粉末層の粉末は、100ミクロンより小さいまたはこれに等しい(d90≦100μm)、あるいは85から90ミクロンのd90粒径、40ミクロンに等しいまたはこれより大きい(d10≧40μm)、あるいは45から50ミクロンのd10粒径、および70ミクロン(d50=70μm)、あるいは65から75ミクロンまたは68から72ミクロンのd50粒径を有する。いくつかの実施形態では、粉末層の粉末は、同じ組成および同じ粒径、すなわち、同じd90粒径、d10粒径およびd50粒径を有する、積層製造プロセスで使用される原料内の粉末と同じである。
【0024】
開始プレート180を粉末層上に着座させる場合、開始プレート180はまた、反応ゾーン125内に置かれるように配置される。例示的実施形態では、開始プレート180は、製造される部分の寸法が電子ビームの動作範囲内に含まれるように、反応ゾーン内に配置される。
【0025】
初期熱処理ステップS220は、開始プレートをEBM機による初期層の堆積に備えさせる。例えば、初期熱処理ステップS220は、開始プレートを特定の温度に加熱すること、および、粉末層の上部に蓄積する場合に、開始プレートの下に固体塩基を形成するように、開始プレートの下で粉末を焼結する期間にわたってその温度を維持することを含むことができる。
【0026】
例示的実施形態では、初期熱処理ステップS220は、プレートオフセット距離に開始プレートを位置決めすることを含む。プレートオフセット距離は、開始プレート加熱中の開始プレートの熱膨張を相殺するための初期プレート高さ調節である。プレートオフセット距離は、開始プレートの材料および開始プレートが加熱される温度による。
【0027】
例示的実施形態では、初期熱処理ステップS220は、開始プレートを第1の温度に加熱することを含む。第1の温度に加熱することにより、層のその後の堆積がコンポーネントを形成するように、開始プレートを熱平衡させる。第1の温度は、堆積中の電子ビームの動作条件および予測温度によって、1030℃から1080℃の範囲である可能性がある。開始プレート180の温度は、開始プレート180と接触する熱電対によって監視される。例示的実施形態では、電子ビーム120は、開始プレート180に衝突して、開始プレート180を第1の温度に加熱する。
【0028】
例示的実施形態では、初期熱処理ステップS220は、開始プレートを第1の温度に保持し、開始プレートを上に着座させる粉末層の一部、すなわち開始プレート180と、例えば、平行移動可能なビルドプラットフォーム175の内側表面の間の空間を占める粉末の層を焼結することを含む。保持時間は、焼結された粉末が層のその後の堆積のために安定したベースを提供して、コンポーネントを形成するように、開始プレートを上に着座させる粉末層の一部を焼結するのに十分である。
【0029】
例えば、初期熱処理ステップS220は、開始プレートに取り付けられた熱電対が、30分の期間にわたり1040℃などの、20から40分の期間にわたり1000℃から1300℃の間の温度を示すまで、開始プレート180の表面にわたって電子ビーム120をラスタ化することを含むことができる。
【0030】
以下のTable 1(表1)は、110mmの直径および8から12mm、あるいは10mmの厚さを有する円板の形の≧99%純度モリブデンからなる組成を有する開始プレート180を使用する場合の、初期熱処理ステップS220の例示的実施形態に適用可能なパラメータに対する値を示している。
【0031】
【表1】
【0032】
初期粉末層を確立するステップS230は、粉末源155から供給される粉末をとり、開始プレート180の上に基層を確立する。供給された粉末は、開始プレート180のビルド表面の少なくとも一部を第1の粉末の基層で覆い、代替形態では、供給された粉末は、開始プレート180のビルド表面全体を第1の粉末の基層で覆う。ビルド表面は、コンポーネントを形成するための層の堆積が上で起こる開始プレート180の表面である。
【0033】
基層は適切な手段によって確立することができる。例示的な一実施形態では、粉末源155からの粉末は粉末層の近傍に位置決めされ、平行移動可能なアーム185、またはレーキまたはドクターブレードなどの同様のデバイスは、粉末層の表面にわたって(典型的には、水平方向に)平行移動して、粉末層の上部表面にわたって層内の供給された粉末を分配し、したがって、基層を作り出す。この基層は、既存の粉末層の上部層と平行移動可能なアーム185の下限表面の間の距離に対応する厚さを有する。例示的実施形態では、基層は、40から70ミクロン、または45から55ミクロン、または約50ミクロン(すなわち、50±1.5ミクロン)の範囲の厚さを有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、基層(と、その後のビルド層)内の粉末は、同じ組成および同じ粒径、すなわち、同じd90粒径、d10粒径およびd50粒径を有する、開始プレート180の下の粉末層内の粉末と同じである。
【0035】
固化前熱処理ステップS240は各層で起こり、静電荷のビルドアップ、および粉末層からの粒子の放出(「スモーキング」として知られる現象)を最小限に抑えるまたは防ぐために、固化前に、ビルドを特定の温度で維持し、各新しい粉末層を僅かに焼結することに貢献する。例示的実施形態では、固化前熱処理ステップS240は、2ステップ加熱プロセスである。第1の加熱ステップでは、粉末層(あるいは、その後のビルド層の基層)は、第1の予熱温度に加熱されて、粉末層の粉末を塊にする。第2の加熱ステップでは、基層または基層の一部は、塊にされた第1の粉末の一部を高密度化するために、第2の予熱温度(第2の予熱温度は第1の予熱温度より高い)に加熱される。塊にされた第1の粉末の高密度化された部分の領域は、コンポーネントの電流層が形成される領域を囲む境界を有する。いくつかの実施形態では、塊にされた第1の粉末の高密度化された部分の領域の境界は、形成されるコンポーネントの電流層の形状に一致する形状を有することができる。例えば、形成されるコンポーネントの電流層は円の形状を有し、その後、塊にされた第1の粉末の高密度化された部分の領域の境界はまた、形成されるコンポーネントの電流層の円の周からオフセットされるようにより大きな直径を有している円を形成する。例として、図3は、反応ゾーンの上面図であり、形成されているコンポーネントの電流層を300で、境界310および粉末層315を備えた高密度化および塊にされた第1の粉末の領域を305で略図的に示している。
【0036】
以下のTable 2(表2)は、110mmの直径および8から12mm、あるいは10mmの厚さを有する円板の形の≧99%純度モリブデン、および99.97wt%Mo、0.010wt%O、0.0030wt%C、0.015wt%W、0.0010wt%Si、および0.0005wt%等量S、NおよびFeの組成を有する粉末からなる組成を有する開始プレート180を使用する場合の、固化前熱処理プロセスの加熱ステップの例示的実施形態に適用可能なパラメータに対する値を示している。平均粒径は、D10、D50、およびD9がそれぞれ49.61μm、63.89μmおよび81.95μmと等しい粒径分布を備えた65.13±12.66μmである。固化前熱処理プロセスの加熱ステップは、2つの個別のステップ、すなわち、第1のステップ「予熱I」および第2のステップ「予熱II」で行うことができる。Table 2(表2)では、予熱I&II(共通)で挙げられたパラメータは、予熱Iおよび予熱IIステップの両方で共通であり、予熱Iおよび予熱IIで挙げられたパラメータは、特定されたステップ、すなわち、予熱Iステップまたは予熱IIステップのいずれかに固有である。図3を参照して、予熱Iは粉末層315の領域に適用可能であり、予熱IIは高密度化され塊にされた第1の粉末305の領域に適用可能である。
【0037】
【表2】
【0038】
Table 2(表2)の上記パラメータは、システムに熱入力を提供して、成功裏の溶融を行うために、ユーザによって調節することができる。
【0039】
固化ステップS250は、塊にされた第1の粉末の高密度化された部分からのコンポーネントの電流層を焼結することを含む。各層では、固化ステップは、電子ビーム溶融を通して前に形成された層に新しい粉末の層を固化する自立電子ビーム溶融動作である。固化ステップに関連付けられた様々なパラメータのうち、エネルギー密度、エネルギー入力、および幾何精度に関連付けられた溶融パラメータは、プロセスに最も大きな材料影響を有することが決定された。したがって、固化ステップS250の例示的実施形態は、フォーカスオフセット、ビーム電流、速度関数、電流補償、および転換点関数のパラメータを含む。
【0040】
mAで測定されたビームフォーカスオフセット(FO)は、焦点がビルド表面に、その上に、またはその下にあり、エネルギー入力に大きな影響を与えるように、電子ビームの焦点を制御する。0mAのフォーカスオフセット値がビルド表面で最もフォーカスされたビームを生じるビームカラム内のフォーカスコイルに加えられる電流を記載している。フォーカスオフセットパラメータの例示的な値は、20から30である。フォーカスオフセットパラメータの他の値は、このような値が溶融プール、したがって固体部を作り出すのに十分なエネルギーを提供する限り、使用されてもよい。
【0041】
ミリアンペア(mA)で測定されたビーム電流は、金属粉末を溶融するためのエネルギー源を提供する。ビーム電流パラメータの例示的な値は、2mAから30mAである。概して、この範囲の外側である電流は、少なすぎるエネルギーで部分を溶融したり、作り出されている幾何形状に対して大きすぎる溶融プールを作り出すことができない。
【0042】
速度関数は、ビーム速度とビーム電流の間の関係を制御する。一定の溶融プールを維持するように設計されている。概して、速度関数に対する値がより大きいほど、同様のビーム電流に対するビーム速度がより大きい。速度関数パラメータの例示的値は、2から10、あるいは2から8、または3から8である。99.0%以上の純度を有するモリブデンでは、例示的速度関数は5である。
【0043】
電流補償は、溶融されている長さ(線スキャン長さ)の関数としてハッチ溶融ビーム電流を変更する数学モデルである。この関数は、部分の同じ2Dスライス内の大きいおよび小さい領域を相殺するためにビーム電流を変更する。電流補償パラメータの例示的な値は、ビーム電流に対する参照スキャン線の比は1.35と同じ高さ、および0.5と同じ低さであるように設定される。概して、この範囲より低い電流補償パラメータの値は、より長いビルド時間および作り出されているエネルギーの量での問題を作り出し、この範囲を超える電流補償パラメータの値が隣接する溶融プールの可変線間隙での問題を作り出す。
【0044】
転換点関数は、方向を変え、部分の縁部から離れて移動するときに、ビームの移動速度を変更する数学モデルである。転換点関数は、ビルド品質に悪影響を与える可能性がある部分の縁部での過熱を防ぐために使用される。転換点関数のパラメータの例示的な値は、0.5から1.3の前指数因子および0.0002から0.001の指数因子Iで設定される。概して、多すぎるエネルギーがシステム内に行くことにつながる転換点関数の値は、コーナーが幾何的に正確ではない、または早期層上で膨張することにつながるが、少なすぎるエネルギーがシステム内に行くことにつながる転換点関数の値は、コーナーが下位層と接触しないことにつながる。
【0045】
以下のTable 3(表3)は、110mmの直径および8から12mm、あるいは10mmの厚さを有する円板の形の≧99%純度モリブデン、および99.97wt%Mo、0.010wt%O、0.0030wt%C、0.015wt%W、0.0010wt%Si、および0.0005wt%等量S、NおよびFeの組成を有する粉末からなる組成を有する開始プレート180を使用する場合の、固化ステップの例示的実施形態に適用可能なパラメータに対する値を示している。平均粒径は、D10、D50、およびD9がそれぞれ49.61μm、63.89μmおよび81.95μmと等しい粒径分布を備えた65.13±12.66μmである。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
Table 3(表3)およびTable 4(表4)の上記パラメータは、熱入力をシステムに提供して、成功裏の溶融を行うために、ユーザによって調節することができる。
【0049】
加えて、固化ステップ中のラスタ方向は、製造されているコンポーネントの局所領域内の繰り返される熱上昇により組合せ応力をなくすように設計された角回転を含むことができる。例えば、90度回転を使用する電子ビームラスタ化パターンの繰返し性は、特に直線応用例において、幾何学依存の膨張およびビルド障害を生じさせる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、繰返し性を減少させるための角回転を使用することができる。例えば、はるかに少ない頻度のベースで繰り返す非90度角回転を選択することができる。例えば、素数に基づく角回転の値は、360層ごとに1回だけ繰り返す。他の実施形態では、素数の整数の倍数に基づく角回転の値を使用することができる。例えば、66度角回転(素数11の6倍の倍数)が、60層ごとに繰り返す。
【0050】
薄い壁面の物体に関連する別の実施形態では、壁面方向に沿って、すなわち、(壁面方向、すなわち、厚さ方向に対して横で対向するような)壁面の長さに沿っている配向(10度内の配向)と一致する方向に薄い壁面に対して材料を堆積させるパターンを使用することができる。
【0051】
電流補償(iCC)関数に関する追加情報は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、Sames, William(2015年)、“Additive Manufacturing of Inconel 718 using Electron Beam Melting: Processing, Post-Processing, & Mechanical Properties.”、Doctoral dissertation, Texas A & M University. https://hdl.handle.net/1969.1/155230で見ることができる。転換点関数に関する追加の情報は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、Frederick、Curtis Lee、“Control Of Grain Structure In Selective-Electron Beam Melting Of Nickel-Based Superalloys.” PhD diss., University of Tennessee, 2018年、https://trace.tennessee.edu/utk_graddiss/4952で見ることができる。
【0052】
固化後熱処理ステップS260は、ビルドプロセス全体の間に特定の温度レベル、より詳細には、材料の連続層の堆積の間の一貫性のある熱環境を維持するために、熱管理を行う。各層内の様々な量の溶融により、固化後熱処理ステップS260は、熱バランス全体が維持されるように、加熱の期間、冷却の期間、または1つまたは複数の加熱の期間および1つまたは複数の冷却の期間の組合せを含んでいてもよい。固化後熱処理ステップS260は、粉末層を固化前ステップS240中に達成された温度に戻す。例えば、固化後熱処理ステップS260は、固化前ステップS240を行う結果として達成された粉末層の温度が固化後ステップS260の結果で達成されるように、固化前ステップS240における第2のステップ予熱IIによって利用されるのと同じパラメータを利用して、塊にされた粉末層および完全に固化された領域の両方を加熱することを含む。
【0053】
後熱ステップは、固化ステップの後に起こる。後熱ステップは、粉末層の同じ領域が予熱IIで使用される同じパラメータで加熱されるが、溶融の後に起こる予熱段階と同様に挙動する。後熱時間は、前の予熱および固化ステップから既に入力された熱に基づいて判断される。
【0054】
固化後熱処理ステップS260の後に、方法S200は、その後の材料の層を堆積させるプロセスを通してコンポーネントを増大させ続けることに進む、または冷却ステップを含む後ビルドステップに進むいずれかである。
【0055】
コンポーネントを増大させ続けることに進む場合、方法S200は、1つまたは複数の材料のその後の層を堆積させるプロセスを含む。例えば、固化後熱処理ステップS260の後に、方法S200は、インデックス化ステップS270および補充ステップS280を含み、その後、固化前熱処理ステップS240、固化ステップS250、および固化後熱処理ステップS260が起こる。インデックス化ステップS270、補充ステップS280、固化前熱処理ステップS240、固化ステップS250、および固化後熱処理ステップS260を、コンポーネントが最終の形になるまで複数回繰り返すことができる。
【0056】
インデックス化ステップS270では、開始プレート180の位置は、その後の層の厚さに対応する距離だけ移動される。例示的なインデックス化ステップでは、開始プレート180の位置は、40から70ミクロン、あるいは45から55ミクロン、または約50ミクロン(すなわち、50±1.5ミクロン)の距離だけ移動される。その後、補充ステップS280では、コンポーネントの電流層は、粉末をビルドタンクに供給し、被覆層を分配および平らにするのを助ける、平行移動可能なアーム185、または(典型的には、矢印Hによって示されるように水平方向に平行移動可能な)レーキまたはドクターブレードなどの同様のデバイスの動作などによって、原料粉末の層で覆われる。
【0057】
EBM機積層製造プロセスでのコンポーネントのビルドが完了すると、方法S200はビルド後熱処理ステップS290に進む。ビルド後熱処理ステップS290の前、またはその初期部としてのいずれかで、コンポーネントに入力された熱が取り除かれる。これは、例えば、電子ビーム120を止めることによって達成することができる。熱入力が取り除かれて、ビルド後熱処理ステップS290は、冷却ステップに進む。一実施形態では、冷却ステップは、不活性ガスで真空チャンバ190を裏込めすることが続く、20±2分間真空チャンバ190内の真空雰囲気を大気圧に維持し、その後、オープンエア、環境を常温に冷却することを含む。別の実施形態では、冷却ステップは、不活性ガス下でコンポーネントを<100℃の温度に冷却することを含み、その後、チャンバを開いて、オープンエア、環境を常温に冷却することが可能になる。いずれかの実施形態での使用に適切な例示的不活性ガスは、ヘリウムガスである。両方の実施形態では、冷却ステップの詳細は、熱クラッキングの影響を少なくするように、完成コンポーネントをゆっくりおよび均一に冷却するように設計されている。
【0058】
上の議論および表で開示されたパラメータの全ての値は、LaB水晶陰極を備えたArcam EBM Spectra Hに基づいている。
【0059】
上記パラメータの1つまたは複数または全ては、電子ビーム溶融積層製造機器を操作するための指示として使用することができるビルドパッケージ内に予めプログラミングすることができる。別の方法では、上記パラメータの1つまたは複数または全ては、「テーマエディタ」機能または等価物を通してなど、電子ビーム溶融積層製造機器のユーザインターフェースを通して直接編集することができる。
【0060】
さらに、コンポーネントの幾何的詳細は、入力ステップにおいてEBM機内に入力することができる。例示的な入力ステップは、電子ビーム溶融積層製造機器のコントローラ内にコンポーネントの幾何形状を入力することを含む。コンポーネントの幾何形状は、層ごとベース、またはコンポーネント全体ベースである可能性がある。例示的実施形態では、コンポーネントの幾何形状は、コンピュータ支援設計(CAD)モデルまたは積層製造ファイル(AMF)ファイルまたは光造形輪郭(STL)ファイル内で具体化される。
【0061】
図4Aおよび図4Bは、電子ビーム積層製造により製造された例示的なモリブデン構造の画像である。モリブデン構造は、矩形角柱形であり、純モリブデンプレート上に着座するように示されている。図示したモリブデン構造は、本明細書に開示した方法を使用してZ軸方向(すなわち、開始プレートの表面に垂直に)層ごとに蓄積される。図4Bは、図4Aからの4つのサンプルの拡大画像であり、4つのサンプルは4、5、7および8と記されている。サンプル4はまた、図4Aにも示されている。
【0062】
図5は、電子ビーム積層製造プロセス中に撮られた、図4Aで示された例示的なモリブデン構造の近赤外線(NIR)画像である。このNIR画像は、非破壊評価が、例えば、蓄積されているコンポーネント内の隙間などの構造的欠陥を監視するために、EBM機積層製造プロセス中に起こる可能性があることを示している。このような現場非崩壊評価を品質管理の目的で使用することができる。
【0063】
図6Aおよび図6Bは、電子ビーム積層製造によって製造された例示的なモリブデン構造の第1の断面(X-Y平面)(図6A)および第2の断面(Y-Z平面)(図6B)の金属組織解析画像である。例示的なモリブデン構造は、図4Aおよび図4Bのサンプル4に対応する。図6Aおよび図6Bの金属組織解析画像は、100Xの倍率である。図6Aおよび図6Bから分かるように、金属組織解析断面は亀裂がない。図6Bは亀裂を含んでいなく、図6Aは1.5mmの長さを有する単一の亀裂(図6Aの右縁部に沿って見られる)を含み、図6A内の合計亀裂長さは1.5mmであることを意味する。本明細書で使用されるように、亀裂がないことは、100X倍率で見たコンポーネントの金属組織解析断面が4mm未満または3mm未満または2mm未満の合計亀裂長さ(合計亀裂長さ=全ての見える亀裂の長さの合計である場合)を有する内部亀裂を含むことを意味する。いくつかの実施形態では、亀裂がないことは、100X倍率で見たコンポーネントの金属組織解析断面が内部亀裂を含んでいないことを意味する。この内容で、この評価に関連する亀裂は、冶金亀裂、すなわち粒界でのクラッキング、および融合不良溶融欠陥、すなわち、粉末が完全に溶融されないことにつながる局所化された不十分なエネルギー入力により生じる欠陥の1つまたは複数である可能性がある。
【0064】
また、図6Aおよび図6Bから分かるように、金属組織解析断面は間隙がなく亀裂がない。図6Aおよび図6Bは両方とも孔を含んでいない。本明細書で使用されるように、間隙がないことは、(i)100X倍率で見たコンポーネントの金属組織解析断面が見える孔を含んでいない、および(ii)サンプルは、密度測定がヘリウムピクノメータ測定法を使用して行われる場合にその材料に対する理論密度の0.10パーセント以内の密度を有することを意味する。例えば、99.84%の理論密度、99.75%以上の測定密度を有するモリブデンは、理論密度の0.10パーセント以内である。
【0065】
材料特徴テストをサンプル4で行った。サンプル4の組成は、Table 5(表5)に記載されている。
【0066】
【表5】
【0067】
いくつかの実施形態では、コンポーネントは、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.91%、99.92%、99.93%、99.94%、99.95%、99.96%、99.97%、または99.98%純度などの、99.0%以上、あるいは99.3%以上、または99.5%以上の(モリブデンまたはモリブデンベース合金の)純度レベルを有するモリブデンまたはモリブデンベース合金からなる組成を有する。いくつかの実施形態では、コンポーネントは、基本的にモリブデンまたはモリブデンベース合金からなる組成を有する。組成が基本的に99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.91%、99.92%、99.93%、99.94%、99.95%、99.96%、99.97%、または99.98%純度などの、99.0%以上、あるいは99.3%以上、または99.5%以上の(モリブデンまたはモリブデンベース合金の)純度レベルを有するモリブデンまたはモリブデンベース合金からなる実施形態では、他の材料(他の金属または金属合金を含む)は、コンポーネントが基本的にモリブデンまたはモリブデンベース合金からなる組成を有する限り、コンポーネント内に存在してもよい。いくつかの実施形態では、他の材料は純度レベルのみに限られ、意図的に、組成に加えられない。
【0068】
モリブデンまたはモリブデンベース合金からなる、または基本的にこれからなる組成を有する開示したEBM機積層製造プロセスによって製造されたコンポーネントのいくつかの実施形態では、コンポーネントは完全な密度である。本明細書で使用されるように、完全な密度は、ガスピクノメータおよびHeガスを使用したピクノメータ測定法によって、およびヘリウムまたは窒素ピクノメータ測定法による金属粉末骨格密度に対するASTM B923-21標準テスト法にしたがって判断された容量に基づいて計算されるように、金属粉末99.80%または99.85%または99.00%または99.95%または99.98%または99.99%または100%密度などの99.75%以上の密度を有する。
【0069】
例えば、サンプル4の密度は、ガスピクノメータおよびHeガスを使用したピクノメータ測定法によって、10.2045g/cm(0.0071g/cmの標準偏差を有する)であると判断された。ピクノメータは、3つの連続サイクルの容量に対する読み取りが0.0015cmの設定標準偏差内であるまで、サンプル上で繰り返しサイクルを行った。サンプルの重量は、0.0001gの測定誤差で目盛付き分析てんびんの使用により判断され、ピクノメータによって判断された容量で使用されて、密度を判断した。10.2045g/cmのサンプル4の判断された密度、および純モリブデンに対する10.22g/cmの理論密度に基づいて、サンプル4は99.84%の密度を有する。
【0070】
特定の実施形態に言及したが、他の実施形態および変更形態が、その精神および範囲から逸脱することなく当業者によって考えられることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、このような実施形態および等価の変更形態全てを含むように解釈されることを意図している。
【符号の説明】
【0071】
100 EBM機
105 電子ビーム生成部
110 電子ビームフォーカス部
115 堆積部
120 電子ビーム
125 反応ゾーン
130 電子ビームカラム
135 電子ビーム源
140 非点収差レンズ
145 フォーカスレンズ
150 偏向レンズ
155 粉末源
160 導管
165 ビルドタンク
170 ビルドプラットフォーム
175 粉末層
180 開始プレート
185 アーム
190 真空チャンバ
195 熱シールド
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】