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特表2024-529983非線形性を補償するための回路および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】非線形性を補償するための回路および方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240806BHJP
   H03F 1/32 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H03F1/32 141
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024505414
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2022058734
(87)【国際公開番号】W WO2023006259
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021208318.8
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・メンヒェン
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・フリッチュ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・フィードラー
【テーマコード(参考)】
5D220
5J500
【Fターム(参考)】
5D220AA41
5J500AA01
5J500AC21
5J500AF08
5J500AF17
5J500AH42
5J500AM13
5J500AT01
5J500AT07
(57)【要約】
特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく非線形性を補償するための回路(100)が説明され、回路(100)は、入力信号(20)を提供するための交流電圧信号源(10)と、入力信号(20)を受信し、入力信号(20)を少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータに応じてプリディストーションが行われた信号(40)に変換する制御ユニット(30)と、プリディストーションが行われた信号(40)を受信するためのシンク(50)とを備え、シンク(50)は、ある動作範囲またはある動作点においてシンク(50)を動作させるために調整信号をシンク(50)に提供するように構成された調整ユニット(60)に結合され、制御ユニット(30)は、フィードバック方式でシンク(50)の少なくとも1つのセンサ信号(70)を受信し、少なくとも1つのセンサ信号(70)に基づいて少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータを適応させるように構成され、制御ユニット(30)は、特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく、プリディストーションが行われた信号(40)をシンク(50)に提供するために、少なくとも1つの適応させられたプリディストーションパラメータによって入力信号(20)をプリディストーションが行われた信号(40)に変換する。加えて、特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく非線形性を補償するための方法が説明される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく非線形性を補償するための回路(100)であって、
入力信号(20)を提供するための交流電圧信号源(10)と、
前記入力信号(20)を受信し、少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータに応じて前記入力信号(20)をプリディストーションが行われた信号(40)に変換する、制御ユニット(30)と、
前記プリディストーションが行われた信号(40)を受信するためのシンク(50)であって、前記シンク(50)が、ある動作範囲またはある動作点において前記シンク(50)を動作させるために調整信号を前記シンク(50)に提供するように構成された調整ユニット(60)に結合される、シンク(50)と
を備え、
前記制御ユニット(30)が、フィードバック方式で前記シンク(50)の少なくとも1つのセンサ信号(70)を受信し、前記少なくとも1つのセンサ信号(70)に基づいて前記少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータを適応させるように構成され、
前記制御ユニット(30)が、前記特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく、前記プリディストーションが行われた信号(40)を前記シンク(50)に提供するために、前記少なくとも1つの適応させられたプリディストーションパラメータによって前記入力信号(20)をプリディストーションが行われた信号(40)に変換する、
回路(100)。
【請求項2】
前記プリディストーションが行われた信号(40)がDC部分を含む場合、前記制御ユニット(30)が、前記DC部分を適応させ、または取り除き、具体的には、取り除くときに、前記プリディストーションパラメータを使用して前記DC部分を計算し、続いて、計算された前記DC部分を前記プリディストーションが行われた信号(40)から差し引き、および/または、十分に低いカットオフ周波数をもつハイパスフィルタによって前記DC部分を前記プリディストーションが行われた信号(40)から取り除く、ように構成される、請求項1に記載の回路(100)。
【請求項3】
前記制御ユニット(30)が、前記制御ユニット(30)の出力における前記プリディストーションが行われた信号(40)を前記入力信号(20)の元の動作範囲に維持するために、前記プリディストーションが行われた信号(40)を正規化するように構成される、請求項1または2に記載の回路(100)。
【請求項4】
前記シンク(50)の前記少なくとも1つのセンサ信号(70)が、測定された出力電圧および/または出力電流強度および/または音圧および/または表面振動などを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の回路(100)。
【請求項5】
前記調整ユニット(60)が、直流電圧源であり、前記シンク(50)のための直流電圧として前記入力信号を提供する、請求項1から4のいずれか一項に記載の回路(100)。
【請求項6】
特に任意の選択された直流電圧である前記調整信号(20)によって、前記シンク(50)が所定の動作点もしくは動作範囲を有し、または、用途に応じてわずかにしか変化しない動作点もしくは動作範囲を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の回路(100)。
【請求項7】
前記制御ユニット(30)が、第1の目標関数(80)が最小になるように、具体的には、前記第1の目標関数(80)が前記少なくとも1つのセンサ信号(70)に基づいて、または前記少なくとも1つのセンサ信号(70)および前記入力信号(20)に基づいて計算されるように、前記少なくとも1つのセンサ信号(70)に基づいて前記少なくとも1つのプリディストーションパラメータを変更するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の回路(100)。
【請求項8】
前記第1の目標関数(80)が、システムの非線形性を特徴付けるための1つまたは複数の測定値を決定する1つまたは複数の関数を含み、測定値が、たとえば、ひずみ率または全高調波ひずみまたは全非コヒーレントひずみである、請求項7に記載の回路(100)。
【請求項9】
前記制御ユニット(30)が、前記第1の目標関数(80)が前記シンク(50)の出力におけるレベルの変化の尺度を含む場合、非線形ひずみおよび前記シンク(50)の前記出力におけるレベルの前記変化に関して前記第1の目標関数(80)を重み付けるように構成される、請求項7または8に記載の回路(100)。
【請求項10】
前記制御ユニット(30)が、異なる次数1<n≦Nの最大でN-1回のプリディストーション反復ステップの反復に基づいて、前記第1の目標関数(80)を最小にするように構成され、Nが1よりも大きい自然数である。請求項7から9のいずれか一項に記載の回路(100)。
【請求項11】
前記制御ユニット(30)が、数学的な最適化方法によって前記第1の目標関数(80)を最小にするように構成され、具体的には、前記入力信号(20)の性質に基づいて前記数学的な最適化方法を選択するように追加で構成され、または、任意の入力信号(20)に対する適切に調整された極値調節器によって前記第1の目標関数(80)を最小にするように構成される、請求項7から10のいずれか一項に記載の回路(100)。
【請求項12】
前記制御ユニット(30)が、前記反復を実行した後、プリディストーションが行われた信号(40)を出力して、前記プリディストーションが行われた信号(40)を前記シンク(50)に伝えるように構成され、前記シンク(50)が特に前記センサ信号(70)を前記制御ユニット(30)に伝える、請求項10または11に記載の回路(100)。
【請求項13】
前記制御ユニット(30)が、前記第1の目標関数(80)の1次元最適化によって昇順で時間的に連続的に、または、前記第1の目標関数(80)の多次元最適化によって時間的に並列にのいずれか一方で、プリディストーション反復ステップの各々の、特に最大でN-1個のプリディストーション反復ステップの各々の前記プリディストーションパラメータを前記シンク(50)の特性に適応させるように構成される、請求項10から12のいずれか一項に記載の回路(100)。
【請求項14】
前記制御ユニット(30)が、前記シンク(50)の出力における前記センサ信号(70)または前記センサ信号(70)から導出される量と、仮想センサ信号(70a)または前記仮想センサ信号(70a)から導出される量との偏差が最小になるように、非線形システムモデルの少なくとも1つのモデルパラメータを適応させることによって、第2の目標関数(85a)を最小にするように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の回路(100)。
【請求項15】
前記制御ユニット(30)が、前記第2の目標関数(85a)の最小化を実行した後、前記非線形システムモデルの出力における非線形ひずみを最小にするために、請求項7から13のいずれか一項に従って第1の目標関数(80a、80a)の最小化を実行するように構成される、請求項14に記載の回路(100)。
【請求項16】
前記制御ユニット(30)が、前記第2の目標関数(85a)および前記第1の目標関数(80、80a)の最小化を実行した後、プリディストーションが行われた信号(40、40a)を出力して、前記プリディストーションが行われた信号(40、40a)を前記シンク(50)に伝えるように構成される、請求項14または15に記載の回路(100)。
【請求項17】
特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく非線形性を補償するための方法(130)であって、
交流電圧信号源(10)によって入力信号(20)を提供するステップと、
制御ユニット(30)によって前記入力信号(20)を受信するステップと、
少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータによって前記入力信号(20)をプリディストーションが行われた信号(40)に変換するステップと、
続いて、前記プリディストーションが行われた信号(40)をシンク(50)によって受信するステップであって、前記シンク(50)が調整ユニット(60)に結合される、ステップと、
前記プリディストーションが行われた信号(40)を前記シンク(50)によって受信するのと同時に、ある動作範囲および/またはある動作点において前記シンク(50)を動作させるために、前記調整ユニット(60)によって調整信号を前記シンク(50)に提供するステップと、
続いて、前記少なくとも1つのセンサ信号(20)に基づいて前記少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータを適応させるための前記制御ユニット(30)によってフィードバック方式で前記シンク(50)において出力される少なくとも1つのセンサ信号(70)を受信するステップと、
前記特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく、前記プリディストーションが行われた信号(40)を前記シンク(50)に提供するために、前記少なくとも1つの適応させられたプリディストーションパラメータによって前記入力信号(20)をプリディストーションが行われた信号(40)に変換するステップと
を有する、方法(130)。
【請求項18】
前記調整ユニット(60)によって前記シンク(50)のための直流電圧の形態で前記調整信号(20)を提供するステップであって、具体的には、それにより、前記シンク(50)が、特に任意の選択された直流電圧である前記調整信号によって、固定されたあらかじめ決定された動作点もしくは動作範囲を有し、または、用途に応じてわずかにしか変化しない動作点もしくは動作範囲を有する、ステップを有する、請求項17に記載の方法(130)。
【請求項19】
第1の目標関数(80)が最小になるように、具体的には、前記第1の目標関数(80)が前記少なくとも1つのセンサ信号(70)に基づいて、または前記少なくとも1つのセンサ信号(70)および前記入力信号(20)に基づいて計算されるように、前記少なくとも1つのセンサ信号(70)に基づいて前記少なくとも1つのプリディストーションパラメータを変更するステップを有する、請求項17または18に記載の方法(130)。
【請求項20】
前記第1の目標関数(80)が、システムの非線形性を特徴付けるための1つまたは複数の測定値を決定する1つまたは複数の関数を含み、測定値が、たとえば、ひずみ率または全高調波ひずみまたは全非コヒーレントひずみである、請求項19に記載の方法(130)。
【請求項21】
前記第1の目標関数(80)が前記シンク(50)の出力におけるレベルの変化の尺度を含む場合、非線形ひずみおよび前記シンク(50)の前記出力におけるレベルの前記変化に関して前記第1の目標関数(80)を重み付けるステップを有する、請求項19または20に記載の方法(130)。
【請求項22】
特に前記入力信号(20)の性質に基づいて選択される、数学的な最適化方法によって前記第1の目標関数(80)を最小にするステップ、または、任意の入力信号(20)に対する適切に調整された極値調節器によって前記第1の目標関数(80)を最小にするステップを有する、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法(130)。
【請求項23】
前記第1の目標関数(80)を最小にするために、異なる次数1<n≦Nの最大でN-1回のプリディストーション反復ステップを実行するステップであって、Nが1よりも大きい自然数である、ステップを有する、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法(130)。
【請求項24】
前記反復を実行した後、プリディストーションが行われた信号(40)を前記制御ユニット(30)によって出力して、前記プリディストーションが行われた信号を前記シンク(50)に伝え、特に前記センサ信号(70)を前記制御ユニット(30)に伝える、ステップを有する、請求項23に記載の方法(130)。
【請求項25】
昇順で時間的に連続的に、または前記第1の目標関数(80)の多次元最適化によって時間的に並列にのいずれか一方で、前記最大でN-1回のプリディストーション反復ステップの各々の前記プリディストーションパラメータを前記シンク(50)の特性に適応させるステップを有する、請求項23または24に記載の方法(130)。
【請求項26】
前記入力信号(20)が十分に帯域制限されていない場合、前記入力信号(20)のサンプルレートの向上(34)によって時間的なエイリアシングを回避するステップを有する、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法(130)。
【請求項27】
y=(a+bx)nという形態の非線形性を補償するステップであって、aおよびbが実数の係数であり、出力信号yおよび入力信号xが実数であり、n≧2が非線形性の次数を記述する自然数である、ステップを有する、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法(130)。
【請求項28】
サンプルレートの向上(34)がn次の前記プリディストーション反復ステップの前に行われる場合、n次の前記プリディストーション反復ステップ(35)の後に、特に前記入力信号(20)を元のサンプルレートに戻すために、サンプルレートの低減(36)を実行するステップを有する、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法(130)。
【請求項29】
n次の前記プリディストーション反復ステップ(プリディストーション関数)によって引き起こされる、前記プリディストーションが行われた信号(40)におけるDC部分を検出するステップと、
続いて、十分に低いカットオフ周波数をもつハイパスフィルタによって、および/または、プリディストーションパラメータrを使用する平均値計算(37)と、後続の減算とによって、前記DC部分を変更または除去するステップと
を有する、請求項17から28のいずれか一項に記載の方法(130)。
【請求項30】
前記制御ユニット(30)の出力における前記プリディストーションが行われた信号(40)を前記入力信号の元の動作範囲に維持するために、前記プリディストーションが行われた信号(40)を正規化するステップ(38)を有する、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法(130)。
【請求項31】
前記シンクの出力における前記センサ信号(70)と仮想センサ信号(70a)との偏差、または前記センサ信号(70)から導出される量と前記仮想センサ信号(70a)から導出される量との偏差が最小になるように、非線形システムモデルの前記プリディストーションパラメータを適応させることによって、最初に第2の目標関数(85a)を最小にするステップを有する、請求項17または18に記載の方法(130)。
【請求項32】
前記第2の目標関数(85a)の最小化を実行した後、前記非線形システムモデルの出力における非線形ひずみを最小にするために、請求項18から30のいずれか一項に従って第1の目標関数(80、80a)の最小化を実行するステップを有する、請求項31に記載の方法(130)。
【請求項33】
前記第2の目標関数(85a)および前記第1の目標関数(80、80a)の最小化を実行した後、プリディストーションが行われた信号(40、40a)を出力して、前記プリディストーションが行われた信号(40、40a)を前記シンク(50)に伝えるステップを有する、請求項31または32に記載の方法(130)。
【請求項34】
前記システムモデルの前記少なくとも1つのパラメータおよび/または前記少なくとも1つのひずみパラメータを、一度、継続的に、ある時間間隔で、または前記第1の目標関数(80、80a)もしくは前記第2の目標関数(85a)の閾値を超えるときに、適応させるステップを有する、請求項17から33のいずれか一項に記載の方法(130)。
【請求項35】
前記入力信号(20)をある数の周波数帯域依存の入力信号に変換する前に、フィルタバンクによって前記入力信号を周波数帯域に分割するステップと、
前記周波数帯域依存の入力信号(20)にプリディストーションを行うステップと、
前記制御ユニット(30、30a)の出力における1つの全体のプリディストーションが行われた信号(40、40a)が前記シンク(50)に伝えられる前に、前記ある数の周波数帯域依存のひずませられた信号(40、40a)を統合して、前記全体のプリディストーションが行われた信号(40、40a)を形成するステップと
を有する、請求項17から33のいずれか一項に記載の方法(130)。
【請求項36】
命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令は、回路(100)に結合されたコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、前記回路100を用いて請求項17から35のいずれか一項に記載の方法(130)である第1または第2の方法(130)を実行させる、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく非線形性を補償するための回路、ならびに、特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく非線形性を補償するための回路に関する。
【背景技術】
【0002】
動作において、システムの非線形性は、入力信号とシステム応答との間の純粋に線形の関係からの、システムの挙動の望ましくない逸脱をもたらす。これらの非線形性は、とりわけ逆関数を使用して、たとえば特性曲線としてその非線形性を特定した後に補償され得る。しかしながら、システムが、変化することが意図されていないある動作点において動作している(たとえば、DCバイアスを使用する)場合、および/または、ある動作範囲において動作している(たとえば、最低または最高の入力電圧振幅を使用する)場合には、これは特に問題になる。システムの非線形性を補償するために逆関数を使用することはさらに、システム出力レベルの望ましくない変化をもたらし得る。
【0003】
TUMPOLD, David 他,Linearizing an electrostatically driven MEMS speaker by applying pre-distortion、Sensors and Actuators A: Physical,2015,236th edition,289-298頁の開示では、静電MEMSラウドスピーカーに対するプリディストーション関数が、ローカルモデルネットワークおよび直接逆制御を使用して発見されている。TUMPOLDにおいて説明される方法は、実装および必要とされるデータの収集の両方に関して、ここで説明される新規の方法より複雑である。MEMSラウドスピーカーの動作点および動作範囲は、このプリディストーション関数によって自動的に維持されない。
【0004】
MOORE, Steven Ian 他,Feedback-Controlled MEMS Force Sensor for Characterization of Microcantilevers,Journal of Microelectromechanical Systems,2015,24th edition,No. 4,1092-110頁の開示では、静電センサのプリディストーションが、平方根関数によりアナログ回路として実装される。動作範囲および動作点は特に考慮されず、このプリディストーション関数によって自動的に維持されない。2次ひずみしか補償することができない。
【0005】
MOSCA, Simona,Improving the virgo detector sensitivity: Effect of high power input beam and Electrostatic actuators for mirror control,Doktorarbeit,Universita degli Studi di Napoli Federico II,2009,78頁の開示では、静電アクチュエータの制御信号にプリディストーションを行う方法が説明される。ここでは、それに対応する高い変調周波数により、概ねDC部分と線形部分のみが残るように、平方根関数が振幅変調される。アクチュエータの動作点および動作範囲はこのプリディストーション関数によって自動的に維持されず、手動で入力されなければならないことがある。2次ひずみしか補償することができない。
【0006】
独国特許第382177C号明細書は、高周波技術において高調波を減らし、または望まれる高調波を生成するための逆関数を導出することを記述する。この逆関数は、たとえば、幾何学的作図によってシステム特性曲線から直接導出され、これは、既知でなければならず、または入力振幅と出力振幅との関係から導出される。システムの動作点と動作範囲の維持は、自動的には起こらない。
【0007】
独国特許第3307309C2号明細書は、電気信号を送信するための方法を記述し、送信されることになる信号は、送信要素に供給される前にプリディストーションが行われ、動作点と動作範囲はこの手順においてまったく考慮されない。システムの動作点と動作範囲の維持は自動的に起こらない。独国特許第3307309C2号明細書において記述されるシステムは、ここで説明される発明とはかなり異なる。たとえば、ある周波数成分がないことのような、入力信号に対する特別な要件があり、加えて、プリディストーションは多項式により実行される。
【0008】
米国特許第4618808A号明細書は、平方根関数を使用する2次ひずみの補償を開示する。動作範囲および動作点は特に考慮されず、プリディストーション関数によって自動的に維持されない。
【0009】
米国特許第6597650B2号明細書は、送信システム/データキャリア読み取りシステムにおいて特に2次ひずみを補償するためのパラメータ化された双曲線関数を開示する。システムの動作範囲は概略的に維持されるだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許第382177号明細書
【特許文献2】独国特許第3307309号明細書
【特許文献3】米国特許第4618808号明細書
【特許文献4】米国特許第6597650号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】TUMPOLD, David 他,Linearizing an electrostatically driven MEMS speaker by applying pre-distortion,Sensors and Actuators A: Physical,2015,236th edition,289-298頁
【非特許文献2】MOORE, Steven Ian 他,Feedback-Controlled MEMS Force Sensor for Characterization of Microcantilevers,Journal of Microelectromechanical Systems,2015,24th edition,No. 4,1092-1101頁
【非特許文献3】MOSCA, Simona,Improving the virgo detector sensitivity: Effect of high power input beam and Electrostatic actuators for mirror control,Doktorarbeit,Universita degli Studi di Napoli Federico II,2009,78頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
DC補正によって、いくつかの実装形態では、等化された信号は平均値から自由になる。非線形ひずみの尺度は、純音または正弦波音の2次ひずみにしか関係しない。
【0013】
本発明の背後にある目的は、それによって、動作点および/または動作範囲が自動的に維持されると同時に、回路の出力における非線形ひずみが信号にプリディストーションを行うことで低減され得るような、回路と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。
【0015】
本発明の背後にある中核となる考え方は、ある回路を提供することであり、その回路は、特に回路の動作の間に確立されるプリディストーションによって、シンクが提供される信号の非線形プリディストーションを減らすことができると同時に、動作点および/または動作範囲が自動的に維持されるような方法を、特に動作の間に実行することが可能である。言い換えると、提案される方法および/または提案される回路を使用すると、元の入力信号と比較して非線形である信号がシンクに転送され得る。ここではセンサ信号と呼ばれるシンクの出力における信号が、元の入力信号と比較して可能な限り線形になるように、最終的にシンクに転送される信号に対してプリディストーションが行われる。加えて、シンクは一定の動作点および/または動作範囲で動作させられ得る。プリディストーションは、動作点が変化しないように、すなわち、プリディストーションによるDC成分がないように、かつ、動作範囲が維持されるように、すなわち、元のAC入力電圧範囲を超えることなく、可能な限りわずかにそれを下回るだけであるように、行われる。具体的には、特別な入力信号、特に従来の入力信号から逸脱する入力信号は必要とされず、動作に持ち込まれる前にシステム特定が実行される必要はない。むしろ、従来の信号が使用され得る。
【0016】
「可能な限り線形」という用語は次のように理解されるべきである。
最初に、入力信号がある。入力信号は、自身と比較して線形、具体的には同一である。プリディストーションは様々な線形変換および非線形変換を実行し、プリディストーションが行われた信号は入力信号と比較していくらか非線形性が強くなる。プリディストーションが行われた信号は最終的にシンクに転送され、シンクは非線形システムである。センサ技術によって監視されるシンクの出力において、1つまたは複数のセンサ信号が生成され、これらはプリディストーションが行われた信号と比較して非線形である。プリディストーションが提案される回路および提案される方法によって最適に調整される場合、最良の場合のシンクの出力におけるセンサ信号は、入力信号と比較して線形である。しかしながら、使用されるプリディストーション関数およびシンクの特性によっては、最適条件は、入力信号に対して概ね線形であるにすぎないセンサ信号であり得る。
【0017】
特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく非線形性を補償するための提案される回路は、入力信号を提供するための交流電圧信号源と、入力信号を受信し、少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータに応じて入力信号をプリディストーションが行われた信号へと変換する、制御ユニットと、プリディストーションが行われた信号を受信するためのシンクとを備え、シンクは、ある動作範囲またはある動作点においてシンクを動作させるために調整信号をシンクに提供するように構成された調整ユニットに結合される。制御ユニットは、フィードバック方式でシンクの少なくとも1つのセンサ信号を受信し、シンク出力信号とも呼ばれ得る少なくとも1つのセンサ信号に基づいて、少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータを適応させるように構成される。あらかじめ設定されたパラメータは、最初はプリディストーションが信号に対してほとんど影響しないように調整され得る。模範的には、プリディストーションは、それが聞こえないように、または、振幅の大きくない干渉する動きを引き起こすように実施され得る。プリディストーションが行われた信号は、その信号に反応するシンクに伝えられ、ある種のシンクのシステム応答をもたらす。このシステム応答、すなわちシンク出力信号は次いで、シンクの出力において提供される。ここでのフィードバック方式は、この場合にはセンサ信号とも呼ばれるシンク出力信号、またはそれに基づく測定値が、制御ユニットにフィードバックされるようなものとして理解されるべきである。センサ信号は制御ユニットの入力に再び加えられ、センサ信号は元の入力信号とは異なる制御ユニットの入力に加えられる。これは制御のフィードバック経路である。この場合、制御ユニット、制御デバイス、制御手段、コントローラなどという用語は、同義語として使用される。
【0018】
このフィードバック経路における制御ユニットは次のように動作する。元のAC入力信号は、制御ユニットによってプリディストーションが行われる。プリディストーションは、1つまたは複数のパラメータを使用して調整される。これらのパラメータは初期値を有する(たとえば、最初はプリディストーションに最低限の効果しかないように)。プリディストーションが行われた信号は次いで、その信号に反応するシンクに伝えられ、この場合にはセンサ信号と呼ばれるシステム応答が測定される。センサ信号は、制御ユニットの別個の入力にフィードバックされる。センサ信号またはセンサ信号の非線形性の導出された測定値に基づいて、制御ユニットのプリディストーションパラメータは次いで、元の入力信号のプリディストーションが最終的にシンクの出力におけるプリディストーションの最小化をもたらすように適応させられる。パラメータの新しいセットによってプリディストーションが行われた信号は次いで、再びシンクなどに伝えられる。これは、フィードバック経路を備える制御ループを説明する。制御ユニットは、特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく、プリディストーションが行われた信号をシンクに提供するために、少なくとも1つの適応させられたプリディストーションパラメータによって、入力信号をプリディストーションが行われた信号に変換する。
【0019】
「特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく」は、それに従うと元の動作範囲の最大値を決して超えてはならないような重要な境界条件を伴って、動作点、特にDCオフセットが維持され、動作範囲が「可能な限り少なく」変化するようなものとしてここでは理解され得る。これは、元の動作範囲が維持され、その一部しか使用されないことを意味し、極値の1つは常に限界値に押し出され得る。この境界条件は、任意選択のレベル補償が使用される場合にはあいまいになる。この場合、元の動作範囲を一部超えることがある。代替として、プリディストーション関数によって生成されるDC部分が完全に除去されるのではなく相応に適応させられるときにも、動作範囲は維持され得る。したがって、それに対応して選択されるDC部分は、入力信号の動作範囲が維持されることを可能にし得る。したがって、追加のDC部分がもたらされ、これは次いでシンクの動作点を変える。加えて、動作点も動作範囲も不変に保たれるようなさらなる代替形態がある。代わりに、プリディストーションが行われた信号と入力信号との間で両方の量の逸脱のバランスをとることが実行され得る。この場合、動作点と動作範囲の両方が、入力信号から「少し」逸脱する。
【0020】
以下の例は、「特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく」という用語のさらなる説明となる。
【0021】
シンクy=(1+x)3は、動作点(DCオフセット=1)が維持されるように等化される。したがって、元の動作範囲[-1:1]のうち(すなわち、たとえば、x=sin(2*π*f*t)の場合)、範囲[-1:0.4]だけが最後に使用される。プリディストーションが行われた信号の動作範囲は、元の範囲内にあり、最大で極値(-1)である限界値まで信号を押し出す。この例における頂点から頂点の信号のストロークは、それでも元の信号の70%である。この例は、いわゆる負の極端事例を表す。普通は、プリディストーションが行われた信号の動作範囲は、たとえば[-1:0.95]のように、入力信号の動作範囲に近い。
【0022】
すぐ上で説明された制御ループにより、センサ信号のひずみを減らすことができる。プリディストーションパラメータは制御ループに従って変更され、プリディストーションが行われた信号は、その信号に反応するシンクに伝えられ、それにより、あるひずみを有する、したがって目標関数のある値を有するセンサ信号が生じる。プリディストーションパラメータは、センサ信号のひずみが時間とともにより小さくなるように適応させられる。目標関数は以下で論じられる。
【0023】
DC部分という用語およびDCオフセットという用語はここでは同義語として使用される。
【0024】
交流電圧信号源は、ここではデジタル信号またはアナログ信号を提供し得る。提案される回路を使用する信号処理は、デジタル信号またはアナログ信号を使用して行われ得る。具体的には、ここでの交流電圧信号は、定期的なサンプリング時間において離散的な振幅値であるものとして理解されるべきであり、これが制御ユニットに届く。しかしながら、制御ユニットが、制御ユニットによりデジタル信号に変換され得るアナログ信号を与えられることも可能である。信号がシンクに転送される前に、制御ユニットがデジタル信号をアナログ信号に戻せることも考えられる。説明される回路によってここで説明される方法を実現するアルゴリズムは、アナログ信号またはデジタル信号のために実装され得る。
【0025】
ここでのプリディストーションが行われた信号は、DC部分のある、DC部分のない、および/または既知の値の範囲をもつ信号であってもよく、値の範囲は、プリディストーションが行われた信号がとり得る最大値および最小値を有する。
【0026】
好ましくは、制御ユニットは、プリディストーションが行われた信号がDC部分を含む場合、DC部分を適応させ、または除去するように、具体的には、除去するときにプリディストーションパラメータを使用してDC部分を計算し、計算されたDC部分をプリディストーションが行われた信号から差し引くように、かつ/または、十分に低いカットオフ周波数をもつハイパスフィルタによって、DC部分をプリディストーションが行われた信号から除去するように構成される。ここで、計算されたDC部分は、最初はひずませられた信号から差し引かれ、次いで、計算されたDC部分がそれから差し引かれるプリディストーションが行われた信号が、「and」演算が実現される場合、ハイパスフィルタを通じて送信される。ここでは、「十分な」とは、「元の信号の帯域幅を維持する」ことを意味する。十分に低い基本周波数を有するハイパスフィルタは、フィルタリングの後に、元の信号の帯域幅を有するフィルタリングされた信号を提供するハイパスフィルタである。これらの実施形態では、動作点が維持され得る。しかしながら、動作点が維持されるようにDC部分が適応させられるような実施形態も考えられる。加えて、それらの極端な例の中間の進路も可能であり、それらもDC部分の適応をやはり必要とする。ここでは、シンクに直接加えられるプリディストーションが行われた信号は、プリディストーションが行われた信号に含まれ得るDC部分と混同されてはならない。プリディストーションが行われた信号のDC部分は別個の信号ではなく、プリディストーションが行われた信号の一部である。このDC部分は、プリディストーションの間に完全に除去されない場合にのみ、シンクに加えられる。具体的には、動作点が維持されるべきである場合、DC部分は除去される。しかしながら、動作範囲が維持されるべきである場合、シンクの入力におけるプリディストーションが行われた信号は、相応の適応させられるDC部分を含む。
【0027】
提案される回路を使用すると、センサ信号における非線形ひずみが時間とともに最小にされる。具体的には、ここで提案される回路は、特に回路の動作の間に、センサ信号における非線形ひずみが低減されるような、特にそれらが消滅するような、制御ループを備える。
【0028】
本発明のさらなる態様は、特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく非線形性を補償するための方法に関し、この方法は、交流電圧信号源によって入力信号を提供するステップと、制御ユニットによって入力信号を受信するステップと、少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータに応じて、入力信号をプリディストーションが行われた信号に変換するステップとを有する。続いて、方法は、プリディストーションが行われた信号をシンクによって受信するステップを有し、シンクは調整ユニットに結合される。プリディストーションが行われた信号をシンクによって受信するのと同時に、方法は、ある動作範囲および/またはある動作点においてシンクを動作させるために、調整ユニットによって調整信号をシンクに提供するステップを有する。続いて、提案される方法は、少なくとも1つのセンサ信号に基づいて少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータを適応させるための、フィードバック方式で制御ユニットによってシンクに出力される少なくとも1つのセンサ信号を受信するステップを有する。続いて、少なくとも1つの適応させられたプリディストーションパラメータによって入力信号をプリディストーションが行われた信号に変換することは、特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく、プリディストーションが行われた信号をシンクに提供するために実行される。シンクの出力、すなわちセンサ信号におけるひずみは、提案される方法によって低減される。プリディストーションが行われた信号は、センサ信号における非線形ひずみが最小にされるように、ステップごとの/連続的なパラメータ適応によって変更される。使用される用語の説明は、説明される方法においてこれらの用語を使用するときにも有効である。方法は提案される回路によって実行され得ること、または回路は方法を実現するように構成され得ることが理解されるべきである。
【0029】
本発明の有利な実装形態は、従属請求項の主題である。本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照してより詳しく以下で論じられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】提案される回路の全般的な信号フローチャートである。
図2】第1の変形による提案される回路の信号フローチャートである。
図3図2に従ったより詳細な信号フローチャートである。
図4】可読性を保つために第1の部分および第2の部分に分けられている、図2および図3に従ったより詳細な信号フローチャートである。
図5】方法の第1の変形に対するレベル補償のないシミュレーション結果を示す図である。
図6】方法の第1の変形に対するレベル補償を含むシミュレーション結果を示す図である。
図7】方法の第1の変形に対するレベル補償を含むシミュレーション結果を示す図である。
図8】方法の第1の変形に対するレベル補償を含むシミュレーション結果を示す図である。
図9a】第2の変形による提案される回路の信号フローチャートである。
図9b】第2の変形による提案される回路の信号フローチャートである。
図10a図9に従ったより詳細な信号フローチャートである。
図10b図9に従ったより詳細な信号フローチャートである。
図11a】方法の第2の変形に対するシミュレーション結果を示す図である。
図11b】方法の第2の変形に対するシミュレーション結果を示す図である。
図12】方法の第2の変形に対するシミュレーション結果を示す図である。
図13】動作点を変えるときの適応ひずみのシミュレーション結果を示す図である。
図14】提案される方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで説明される本発明の個々の態様は、図1から図14において以下で説明される。図1から図14は、本発明の原理を一緒に説明する。本出願では、等しい参照番号は等しい要素または等しい効果の要素に関し、繰り返されるとき、すべての参照番号がすべての図面において再び論じられることはない。
【0032】
本出願において提供される用語のすべての説明が、提案される回路および提案される方法の両方に適用され得る。可能な限り冗長さを避けるために、用語の説明は何度も繰り返されない。
【0033】
図1は、回路100の、したがって一般的な方法140の構成要素を示す。AC信号源10または交流電圧源10は、参照番号20によっても参照される入力信号xを出力する。入力信号xがとり得る絶対的な最小値および絶対的な最大値は知られている。入力信号が絶対的な最小値を下回ることまたは絶対的な最大値を上回ることは不可能である。これは、動作範囲を維持するための前提条件である。入力信号20は制御ユニット30によってプリディストーションが行われる。したがって、制御ユニット30は、出力においてプリディストーションが行われた信号40を出力する。制御ユニット30は、入力信号20にプリディストーションを実行するように構成される。結果として、制御ユニット30によって出力されるプリディストーションが行われた信号40は、プリディストーションの出力信号であるものとしても理解され得る。プリディストーションが行われた信号40は、プリディストーションが行われたAC信号
【数1】
だけを含むことがあり、これはシンク50に伝えられる。この場合、動作点は維持され得る。動作点を維持するとき、DC部分は可能な限り完全にプリディストーションが行われた信号40から取り除かれる。プリディストーションが行われた信号40は、プリディストーションが行われたAC信号
【数2】
およびあるDC部分を含むことも考えられる。この場合、動作範囲は維持される。シンク50は、固定的に定義された動作点、または本出願と比べて時間とともに緩やかにしか変化しない動作点を有する。動作点は、たとえばあらゆる選択されたDC電圧によって決定され、これは調整ユニット60によって提供される。ここで、調整ユニット60はシンク50に結合され、具体的には接続される。
【0034】
制御ユニット30は、アナログ電圧またはデジタル信号のための送信経路を必要とし、これは、プリディストーションが行われた信号をもたらし、シンクに伝えられる。アナログかデジタルかについての質問は、制御ユニット30およびシンク50の構成(アナログI/O、デジタルI/O)に依存する。信号の送信は基本的に、異なる方法で行われ得る。好ましくは電気信号が扱われ、これが、普通は送信経路がケーブルである理由である。光送信経路または当業者に知られている他の送信経路も考えられる。
【0035】
用途に応じて時間とともに緩やかにしか変化しない動作点は、動作点の変化が非常に遅く、正常な動作と並列に行われるプリディストーションパラメータの最適化が(少なくとも概ね)収束できるほどであることを意味する。収束の速さは主に、最適化のハイパーパラメータ、シンクの非線形特性曲線、および入力信号の統計的特性に依存する。変化する動作点がある場合、収束の速さは、動作点がどれだけ強く/どれだけの大きさ動かされたかにも依存する。あまりにも速く次々に起こる強すぎる変化は、結果として収束を妨げ、したがって適切なプリディストーションを妨げる。
【0036】
オーディオ用途の例を使用すると、特定の実装形態を使用して、変化率および変化の強さの粗い値を導出することができる。大半の事例に対して収束を保証するには、動作点の変化率は非常に高くなければならず、具体的には、入力信号の最低周波数未満で、少なくとも3桁の大きさでなければならない。動作点がより速く/より頻繁に変化するほど、動作点の変化の強さは小さくなければならず、具体的には、動作点は1分に3倍を超えて変化すべきではない。動作点の変化のよく適した例は、遅い継続的な材料の疲労/劣化またはデバイスの遅い加熱である。
【0037】
シンクのある出力信号70またはいくつかの出力信号70は、本明細書ではセンサ信号70と呼ばれる。センサ信号70は制御ユニット30にフィードバックされ、制御ユニットは、直接(第1の変形を示す、たとえば図3および図4において示されるように)または間接的に(第2の変形を示す、たとえば図9および図10において示されるように)、これらのデータを使用して、プリディストーションパラメータを適応させる。
【0038】
センサ信号70は、たとえば、測定された出力電圧、電流強度、音圧、または表面振動であり得る。センサ信号70は基本的に、測定技術によって検出可能な任意の物理的な量であり得る。それは、特に入力信号20に対して非線形の相関関係を有する、可能な限り静的な測定された温度でもあり得る。具体的には、センサ信号70は測定値を含み、それ自体は、シンクの出力におけるアナログ/デジタル電圧信号におけるいくつかの事例を除き、物理量ではなく、それは、これらが制御ユニットの入力と適合するからである。物理量としての表面振動自体は、制御ユニットに入力できず、対応するセンサによって検出される測定値、および適用可能な場合、それによって処理される測定値しか入力できない。この事実は、当業者に明らかであるはずであるので、さらに論じられない。シンクが純粋にデジタル/仮想的である場合、物理的に相当するものをもたない数値にすぎなくてもよい。
【0039】
特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えずに非線形性を補償するための提案される回路100は、入力信号20を提供するための交流電圧信号源10と、入力信号20を受信し、少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータrによって入力信号20をプリディストーションが行われた信号20に変換する制御ユニット30と、プリディストーションが行われた信号40を受信するためのシンク50とを備え、シンク50は、ある動作範囲またはある動作点においてシンク50を動作させるために調整信号をシンク50に提供するように構成される調整ユニット60に結合される。制御ユニット30は、フィードバック方式でシンク50の少なくとも1つのセンサ信号70を受信し、シンク出力信号70とも呼ばれ得る、少なくとも1つのセンサ信号70に基づいて少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータrを適応させるように構成される。少なくとも1つのプリディストーションパラメータrが実数値の変数であることが考えられる。しかしながら、いくつかのパラメータを有するプリディストーション関数も考えられる。この場合、rはベクトルrであってもよく、またはそうではなければ、パラメータはM個のパラメータに対してr1、r2、…、rMを読み取るためにインデクシングされなければならない。ベクトルrはrmと書かれてもよく、m=1,2,…,Mであり、Mは自然数である。
【0040】
制御手段30は、特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく、プリディストーションが行われた信号40をシンク50に提供するために、少なくとも1つの適応させられたプリディストーションパラメータによって入力信号20をプリディストーションが行われた信号40に変換する。説明される制御ループを用いると、交流電圧源10によって提供される入力信号20は、入力信号20が少なくとも1つの適応させられたディストーションパラメータを用いてプリディストーションが行われ得るように、制御ユニット30の入力に加えられる。ここで、プリディストーションパラメータが適応させられ得るように、センサ信号70は制御ループにおいてフィードバックされる。しかしながら、入力信号20は、常に制御ユニット30に入力される。少なくとも1つのディストーションパラメータrの調整は、特にシンクの正常な動作と並列に、ループにおいて繰り返される。
【0041】
プリディストーションが行われた信号40は、DC部分とともに、またはDC部分なしで、および/または既知の値の範囲に存在することができ、値の範囲は、プリディストーションが行われた信号がとり得る最大値および最小値を有する。プリディストーションが行われた信号が値の範囲内にある場合、動作範囲は維持され得る。入力信号の最小値および最大値は普通は知られているので、プリディストーションが行われた信号40がこの値の範囲に保たれ得ることが、絶対的に保証される。
【0042】
プリディストーションが行われた信号40がDCオフセットを含む場合、制御ユニット30は、DCオフセットを変更し、または取り除くように、特に、少なくとも1つのプリディストーションパラメータrを使用して、平均値によってDCオフセットを計算し、続いて、計算されたDCオフセットをプリディストーションが行われた信号40から差し引くように、および/または、十分に低いカットオフ周波数をもつハイパスフィルタによって、DCオフセットをプリディストーションが行われた信号から取り除くように構成される。ハイパスフィルタが十分に低いカットオフ周波数を有することは、ハイパスフィルタを通るときに入力信号20の帯域幅が維持されることを意味する。ハイパスフィルタの後のひずませられた信号の帯域幅は、元の信号の、すなわち入力信号20の帯域幅に対応する。
【0043】
プリディストーションが行われた信号40は、たとえば動作範囲が維持されるべきである場合、DCオフセット/DC部分を含み得る。しかしながら、動作点が不変に保たれるべきである場合、DCオフセットは、調整ユニット60のDC信号と合算し得るので、含まれなくてもよい。シンクがどのように実装されるかに応じて、プリディストーションおよび調整ユニットのDCオフセットの加算は必ずしも起こらないことが言及されるべきである。DCオフセットは普通はプリディストーション関数によって引き起こされる。目標(動作点または動作範囲が不変に維持される)に応じて、それは取り除かれ、または取り除かれない。DC部分の完全な除去を許容しないように、両方の目標(動作点および動作範囲が不変に維持される)を追求することも考えられる。
【0044】
図2は、提案された方法に従って、提案された回路を動作させるための第1の変形における制御ユニット30の機能のモードを開示する。第1の変動はフィードバックに基づく制御パラダイムに従う。プリディストーションパラメータr/rは、第1の目標関数80が最小になるように変更される。ここで、パラメータ変動90が行われる。第1の目標関数80は、1つまたは複数のセンサ信号70に少なくとも基づいて、または追加で既知の入力信号20を使用して計算される。具体的には、いくつかの方法では、誤差関数80は常に、入力信号20に対するセンサ信号70の非線形性をマッピングする。異なる測定値/目標関数がこのために選択され得る。2つの例が以下で説明される。
【0045】
第1の例。入力信号20が既知の周波数をもつ正弦波音のみからなる場合、全高調波ひずみ、ひずみ率、および相互変調ひずみが、センサ信号70だけに基づいて計算され得る。そうすると、これらのひずみ値は最小にされなければならない。
【0046】
第2の例。代替として、センサ信号70と入力信号20の両方を使用して、2つの信号の関係、特に(非)コヒーレントを考慮することができる。したがって、全非コヒーレントひずみ(TNCD:total non-coherent distortion)を複雑な入力およびセンサ信号に対して計算することができ、たとえば、次いでこれが最小にされなければならない。
【0047】
第1の目標関数80は、最小化がシンク50の出力における非線形ひずみ部分の低減をもたらすように定義される。目標関数80を最小にするとき、回路100、すなわちシンク50の出力における非線形プリディストーションは、信号のプリディストーションによって低減される。システムの非線形性を特徴付ける測定値を計算する関数は、第1の目標関数80として適切である。
【0048】
好ましくは、コントローラ30は、コントローラ30の出力におけるプリディストーションが行われた信号40を入力信号20の元の動作範囲に保つために、プリディストーションが行われた信号40を正規化するように構成され、具体的には、元の正規化された動作範囲は-1≦x≦1である。普通は動作範囲は知られており、それによりその正規化を可能にする。
【0049】
シンク50の少なくとも1つのセンサ信号70は、測定された出力電圧を含み、電流強度および/または音圧および/または表面振動などを出力し得る。
【0050】
好ましくは、たとえば図1および図2に示される調整ユニット60は、シンク50に対する直流電圧として調整信号を提供する直流電圧源である。動作点および/または動作範囲は、シンク50において提供される調整信号によってあらかじめ設定され、または調整される。一方、動作範囲という用語は、入力信号およびプリディストーションが行われた信号の交流電圧動作範囲を示し、これは、たとえば-1Vと1Vの間であり得る。交流電圧だけに関して、シンクにおけるこの動作範囲は維持されるが、調整信号から生じるDCオフセットの分だけ動かされる。この結果は、たとえば、10Vの調整信号において9Vと11Vの間の動作範囲であり得る。したがって、調整信号は、特性曲線上の動作範囲の「位置付け」、すなわち「ストローク」(たとえば、±1Vの)に影響するが、最初は入力信号20によって、および/または最終的にはプリディストーションが行われた信号40によってあらかじめ設定される。したがって、動作範囲は、信号ストロークまたは絶対値であると理解され得る。そのような区別は当業者には十分に知られている。
【0051】
具体的には任意に選択された直流電圧である調整信号によって、シンク50は、固定的にあらかじめ設定された、または用途に応じてわずかに変化するだけである、動作点もしくは動作範囲を有する。この事例では、「わずかに」という用語は「時間とともに緩やかに」を意味するものとして理解されるべきであり、「時間とともに緩やかに」は、動作点の変化が非常に遅く、正常な動作と並列に行われるプリディストーションパラメータの最適化が(少なくとも概ね)収束できるほどであることを意味する。収束の速さは主に、最適化のハイパーパラメータ、シンクの非線形特性曲線、および入力信号の統計的特性に依存する。動作点が変化する場合、収束の速さは、動作点がどれだけ強く/どれだけの大きさ動かされたかにも依存する。あまりにも速く連続的な強すぎる変化は収束を妨げ、したがって適切なプリディストーションを妨げる。しばしば、動作点の変化は速く、それと同時に強く起こる(上の説明を参照)。そして、これは、動作点の変化を継続的に追跡できず、したがって、プリディストーションパラメータの最適化またはパラメータ変動90が失敗することを意味する。
【0052】
好ましくは、コントローラ30は、第1の目標関数80が最小になるように、具体的には、第1の目標関数80が少なくとも1つのセンサ信号70に基づいて計算されるように、または少なくとも1つのセンサ信号70および入力信号20に基づいて計算されるように、少なくとも1つのセンサ信号70に基づいて少なくとも1つのプリディストーションパラメータを変更するように構成される。前に説明されたように、少なくとも1つのプリディストーションパラメータrは、実数であってもよく、またはベクトルもしくはMタプル(r1…rM)によって示されてもよい。
【0053】
加えて、第1の目標関数80は好ましくは、システムの非線形性を特徴付ける1つまたは複数の測定値を決定する、1つまたは複数の関数を含む。測定値は、たとえば、ひずみ率または全高調波ひずみ(THD)または全非コヒーレントひずみ(TNCD)である。さらなる測定値は、相互変調ひずみ、THD+N(THD+ノイズ)、一般に相互相関に基づく方法(とりわけ、TNCD)であり得る。
【0054】
第1の目標関数80は、たとえば、シンク50の出力におけるレベルの変化、特にレベルの低下またはレベルの増大の尺度によって拡張され得る。したがって、最適化するとき、非線形ひずみ40とレベル低下との間で重み付けが行われ得る。プリディストーションは、特にプリディストーション関数とシンクの特性曲線の具体的な組合せに応じて、上向きと下向きの両方のレベルのかなりの変化をもたらし得る。時間的に一定のレベルをもつ入力信号におけるレベルの変化を検出するために、プリディストーションのある出力レベルとプリディストーションのない出力レベルが、レベルの変化の尺度を得るために検出される。最適化は、ある周波数範囲のデータに基づいて行われ得る。この周波数範囲は、たとえば、有用な信号帯域幅内にあってもよいが、一部または全体が有用な信号帯域幅の外側にあってもよい。このことの例は、オーディオ用途において従来使用されている超音波範囲である。オーディオまたは可聴音の周波数範囲は、一般に20Hzから20kHzであると考えられている。少なくとも大部分が周波数依存である特性曲線を有する非線形システムでは、システムの非線形性を特徴付けるための信号が20kHzより上でもたらされることがあるが、もはや知覚可能ではない超音波範囲にある。これは、普通のオーディオ信号に追加するものとしても生じ得る。有用な周波数範囲は、用途に応じて異なるように定義されてもよく、たとえば0.1Hzから10Hzの間であってもよく、この場合、10Hzを超える周波数範囲が、たとえば非線形性を観察するために使用されてもよい。たとえば20Hz未満の超低周波のオーディオ用途では、そのような試験信号も、有用な周波数範囲未満の周波数範囲に対して考えられる。この方法は有利であることがあり、それは、有用な周波数範囲の負荷をより小さくしてもよい/まったくなくしてもよいからである。第1の目標関数80を最適化することは、異なる方法で実行され得る。選択された第1の目標関数80および入力信号20の実装形態に応じて、勾配法のような、パラメータ空間においておよび時間軸に沿って極小値を見つけるための古典的な最適化方法が使用されてもよく、またはそうでなければ、パラメータ空間においておよび時間軸に沿って最小値を見つけるためのより複雑な方法が必要とされ、これは、たとえば埋め込み最適化の領域からのものであってもよい。
【0055】
第1の目標関数80は、あらゆる入力信号に対して適切に調整された極値調節器によっても最小にされ得る。ここで「適切に」とは、極値調節器のハイパーパラメータが、任意の特徴(準静的である、インパルスのようである、発話または音楽のようである、確率的である)をもつ任意の用途関連信号に対する収束の確率が非常に高くなるように調整されることを意味する。
【0056】
第1の目標関数の最適化は、たとえば、一度、継続的に、ある時間間隔で、または第1の目標関数の閾値を超えるときに行われ得る。
【0057】
好ましくは、コントローラ30は、数学的な最適化方法によって第1の目標関数80を最小にするように構成され、具体的には、コントローラ30は追加で、入力信号の性質に基づいて数学的な最適化方法を選択し、または、適切に調整された極値調節器によって第1の目標関数を最小にするように構成される。極値調節器は、本発明が基づく本出願に適した最適化方法のサブグループであり、それは、それらが、オンラインで使用され得ると同時に、目標関数を最小にするときに知覚可能な悪影響がほとんどないからである。極値調節器は、それぞれの制御変数動作点における勾配を継続的に推定し、目標関数80が最小または最大になるように、それに対応して制御変数を変更する。極値調節器のハイパーパラメータが都合よく調整される場合、調整は大半の異なる変化する入力信号について収束し、これは正常な動作の間に使用するのにとても重要である。
【0058】
入力信号20が目標関数80において考慮され得る。その結果、目標関数80は入力信号20に対する依存性を示し得る。最適化方法のタイプは、入力信号20の特性に基づいて選択され得る。たとえば、最適化方法の選択は、少なくともある程度まで、自動的に行われ得る。たとえば、連続的な正弦波音のような静的な入力信号20がコントローラ30によって検出される場合、古典的な勾配方法が自動的に選択され得る。静的な入力信号20に対しては、古典的な勾配方法で十分である。たとえば、変化する/任意の入力信号20がコントローラ30によって検出される場合、たとえば埋め込み最適化、遺伝的アルゴリズム、極値調節器のような、グローバル最適化方法、特に時間依存の方法が自動的に選択される。具体的には、極値調節器は、時間に関してのみグローバルであり、目標関数に対してはローカルである。
【0059】
好ましくは、第1の目標関数80がシンク50の出力におけるレベルの変化の尺度を含む場合、コントローラ30は、非線形ひずみ、および特に任意選択で、シンク50の出力におけるレベルの変化に関して、第1の目標関数80を重み付けるように構成される。レベルの変化という用語は、レベルの低下とレベルの上昇の両方を含み、これらはともに望ましくない効果をもたらし得るので、目標関数の重み付けはこの点において注意を要し得る。レベル、特にレベルの向上39の任意選択の適応は動作範囲を変えることがあり、それは、プリディストーションが行われた信号40の最大値40と最小値40aが後で入力値の範囲を超えるまたは下回ることがあるが、動作点は維持されるからである。
【0060】
好ましくは、コントローラ30は、異なる次数の多くてもN-1回のプリディストーション反復ステップの繰り返しに基づいて、第1の目標関数80を最小にするように構成され、Nは1より大きい自然数である。好ましくは、プリディストーション反復ステップは次数の昇順で実行される。いくつかの次数を省略すること、またはn>2であるより高い次数でのみ開始することも考えられる。たとえば、2、3、4、5は省略のない次数の昇順であり、2、4、5は次数3を次数の昇順である。
【0061】
以下の例は、ある次数を省略すること、またはより高い次数で開始することによって意図されることをより詳しく説明する。たとえば、シンク50は、3次および6次のプリディストーション部分を主に示し得る。この結果は、直観的にはプリディストーションカスケードが次数3および6からなることであるが、それは次数3、4、5、6、7、8、…または3、4、6、8、9、12、…からなり得る。異なるカスケードは、効果の点で厳密に等価ではないが、第1の目標関数の最小値に収束するとき、異なるカスケードは同様の効果を有する。補償されるべき特性曲線に応じて、カスケードにおいて多くの異なる順序を考慮することが有利であり得る。より低次のプリディストーションが行われた信号40が、より高次のプリディストーションのための入力信号であることが重要である。ここで、カスケードは常に昇順である。異なる次数により意図されることもここで言及される。たとえば、2次高調波ひずみは基本周波数の2倍(1次高調波)を有し、3次高調波ひずみは基本周波数の3倍(2次高調波)を示す、などである。したがって、高調波ひずみにおいて、ひずみの次数nは、n-1次高調波が含まれることを示す。
【0062】
図3は、第1の変形の例を使用したプリディストーションブロック32のあり得る構成要素を含むコントローラ30を概略的に示す。プリディストーションブロック32は、N-1個のプリディストーション反復ステップを含み、パラメータ変動90が各プリディストーション反復ステップにおいて実行される。したがって、プリディストーションブロック32はプリディストーションカスケードを含み、これは、2次プリディストーション反復ステップからn次プリディストーション反復ステップを含み、Nは1より大きい自然数である。図3は、省略のない次数の昇順のカスケードを示す。
【0063】
言い換えると、図2のプリディストーションブロック32は、異なる次数のN-1個のプリディストーションのカスケードからなり、次数2で開始して次数Nで終了する。各プリディストーションは、反復の反復ステップであるものと理解されるべきである。異なる次数のこれらのプリディストーションまたは反復ステップは、関数v2からvNと呼ばれ得る。ある次数のプリディストーションが次に低い次数のプリディストーションが行われた信号を各々処理するように、プリディストーションは次数の昇順で直列に並べられる。数学的に表現されると、プリディストーションが行われた信号
【数3】
40は、
【数4】
という表現によって記述されてもよく、xは入力信号であり、
【数5】
は最終的なプリディストーションが行われた信号である。異なる次数nのプリディストーションのパラメータは、第1の目標関数80の多次元最適化によって、次々にまたは並列にのいずれかで、シンク50の特性に適応させられる。
【0064】
好ましくは、コントローラ30は、反復を実行した後、特にプリディストーションブロック32に示されるように、プリディストーションが行われた信号40を出力してそれをシンク50に転送するように構成され、シンク50は特にセンサ信号70をコントローラ30に転送する。それを使用するとこの方法がうまく機能するような考えられるシンクは、とりわけ、増幅器回路、トランジスタのような個別の電子デバイス、または誘電エラストマーアクチュエータおよび静電アクチュエータのような電子機械トランスデューサである。オーディオシステムの分野では、これらのすべてのタイプのシンクが適用され得る。しかしながら、方法を適用することは、オーディオの分野に明確に限定されない。
【0065】
図4は、n次のプリディストーションvnのあり得る構成要素を概略的に示す。あり得る構成要素は、コントローラ30によって実行され得る異なる関数を含む。たとえば、任意選択で、サンプルレートの向上34とサンプルレートの低減36が実行され得る。具体的には、サンプルレートの向上34はn次プリディストーション関数35の前に実行され、nは1より大きい自然数である。加えて、サンプルレートの低減36は特に、プリディストーション関数35が適用された後に行われる。n次プリディストーション関数35の後、図4に示されるように、平均値適応、具体的には平均値抑制37が、コントローラ30によって、またはコントローラ30において実行され、続いてプリディストーションが行われた信号40の正規化38が実行され、その後、プリディストーションが行われた信号40はシンク50に転送される。動作点が維持されるべきである場合、プリディストーションが行われた信号40のDC部分は除去/抑制されなければならず、これは、計算された平均値を差し引くことおよび/またはハイパスフィルタによって行われる(ここで、図4に示されるように、平均値抑制が行われる)。しかしながら、動作範囲が維持されるべきである場合、DC部分は完全に取り除かれなくてもよいが、ある方法で適応させられなければならない。したがって、この場合、プリディストーションが行われた信号のDC部分を適応させるための値が計算される(この場合、図10に示されるように、平均値適応が次いで行われる)。DC部分を除去/抑制するための平均値の計算、および、DC部分を適応させるための、したがって必要とされる平均値適応のための値の計算は、プリディストーションパラメータrを使用して計算され得る。言い換えると、平均値抑制と平均値適応の両方、およびそれぞれの(平均)値は、完全にプリディストーションパラメータrに基づいて計算され得る。動作点または動作範囲の維持は、DC部分を相応に適応させることによってそれらの間で移動が行われ得るような、極値を表現する。平均値適応37および正規化38は一緒に、DCオフセットの補償であるものとしても理解され得る。平均値適応は、プリディストーションが行われた信号40のDC部分に影響がある。正規化は、平均値適応の後にDC部分がまだ存在する場合のDC部分とAC振幅との両方に影響がある。DC部分がまだ存在する場合、AC振幅のように、それは正規化によって増幅される。これらの2つは一緒に、動作点もしくは動作範囲を維持すること、または動作点および動作範囲を概ね維持することをもたらす。動作点が維持されるべきである場合に起こる平均値抑制の場合、平均値適応だけで「DCオフセットの補償」という効果がある。DCオフセットは、プリディストーション関数35によってプリディストーションが行われた信号40へと導入される。任意選択で、プリディストーションが行われた信号40に伝わる前に、レベルの変更、具体的にはレベルの向上またはレベルの低減が実行され得る。たとえば、図4は任意選択でレベルの向上39を示す。レベルの向上39は、レベル適応39の例である。平均値抑制37は、平均値を計算し、計算された平均値をプリディストーションが行われた信号40から差し引くことを含む。加えて、平均値抑制は、相応に調整されたハイパスフィルタ、具体的には帯域幅の損失のないハイパスフィルタを使用し得る。しかしながら、平均値適応は、プリディストーションが行われた信号40のDC部分を適応させて、計算された値をプリディストーションが行われた信号40から差し引くための値を計算することを含む。
【0066】
図4において矢印によって示されるように、プリディストーション35、平均値抑制37、正規化38、および任意選択でレベルの向上39のステップは、パラメータ変動90をもたらす。ステップ35、37、および38において、パラメータの1つの同じセットが使用される。ステップ39、すなわちレベル補償は追加のパラメータgを使用する。しかしながら、パラメータgは、プリディストーションパラメータと見なされてもよく、rM個のパラメータの中のパラメータであると見なされてもよい。これは、ステップ34から39を伴うプリディストーションブロック全体が、特に最適化のために変化させられるパラメータの1つの同じセットを使用することを意味する。
【0067】
図4に示されるように、異なるステップ34から39は、図3のプリディストーションブロック32において示されるように、次数2からNの各プリディストーションとともに実行される。図3および図4は各々、コントローラ30がどのように動作するように構成されるかを、いくらか異なるように詳しく示す。具体的には、図3および図4は一緒に、コントローラ30がどのように動作するように構成されるかを示す。
【0068】
AC入力信号20が時間的なエイリアシングの大部分を抑制するには十分に帯域制限されていない場合、以下の非線形信号処理により起こり得るそのようなエイリアシングは、特にステップ35に従って、サンプルレートの任意選択の向上34によって回避され得る。そして、それに対応して帯域制限された信号は、n次プリディストーション関数35によって処理される。n次プリディストーション関数35は、それだけではないが、
y=(a+bx)n
という形式の上記のすべての非線形性が少なくとも概ね補償されるようなものである。したがって、係数aおよびb、出力信号yおよび入力信号xは実数であり、n≧2は非線形性の次数を記述する自然数である。この目的を満足させるあり得るプリディストーション関数は、以下の式によって記述され得る。
【0069】
【数6】
【0070】
したがって、パラメータr≠0および非線形に処理される信号
【数7】
は実数である。n次プリディストーション関数の前に任意選択のサンプルレートの向上34がある場合、たとえば信号を元のサンプルレートに戻すために、任意選択のサンプルレートの低減36がその後に行われ得る。これらの式について、境界条件が重要であり、それは、これにより記述されるプリディストーション関数は一般に値のこの範囲内の入力信号とのみ最適に動作し得るからである。その結果、入力信号20は、最初は値のこの範囲、具体的には値の正規化された範囲に持ってこられなければならず、後で、プリディストーションが行われた信号40の正規化によって元の動作範囲に戻されなければならない。プリディストーション関数35は、DCオフセットを信号
【数8】
に導入してもよく、これは後で、特に、動作点を維持するために取り除かれる。これは、たとえば、十分に低いカットオフ周波数のハイパスフィルタ(図示せず)によって、および/または、たとえば、プリディストーションパラメータrと後続の減算を使用した平均値の計算(図4に示されるような)によって実行され得る。n次プリディストーションの出力におけるn次のプリディストーションが行われた信号40
【数9】
を入力信号の元の動作範囲における保つために、続いて信号は正規化される(図4のステップ38参照)。適切な正規化係数は、たとえば、プリディストーションパラメータrを使用して計算され得る。シンク50の動作範囲が入力信号20の動作範囲[-1;1]を
【数10】
だけ超えることを許容する場合、n次プリディストーションの出力の前の任意選択のレベルの向上によって、シンクの出力におけるレベルの起こり得る低下を補償することができる。任意選択の実際のプリディストーションパラメータgは、任意選択のレベルの向上を制御する役割を果たす。したがって、n次プリディストーションは、パラメータrとgを考慮する間、一般に
【数11】
と記述され得る。
【0071】
この記述からすでに推測され得るように、少なくとも1つのプリディストーションパラメータはいくつかのプリディストーションパラメータrを含む。プリディストーションパラメータrは特に、ベクトル量であるものと理解され得る。n次プリディストーション関数は、1つまたは複数のパラメータを有し得る。上記の例のように、rによって表されるプリディストーションパラメータは、たとえば実数である。他の関数では、それはr1、r2、…でもあり得る。加えて、ベクトル量としてのひずみパラメータrは、レベル補償のための任意選択のgを含んでもよく、これはさらなるrk(1からKのk)であるとも考えられ得る。この場合、各々の異なる次数のプリディストーションはK個のパラメータを有する。そうすると、プリディストーションブロックは、各々K個のパラメータをもつL個(Lは少なくとも1に等しく、最大でN-1である)のプリディストーションを含む。この場合、プリディストーションパラメータの全体の数は、M=K*Lである。
【0072】
図3にも示されるように、コントローラ30は、1次元最適化によって次数の昇順で時間的に次々に、または第1の目標関数80の多次元最適化によって時間的に並列に、特にL個のプリディストーション反復ステップの各々のプリディストーションパラメータrをシンク50の特性に適応させるように構成され、1≦L<Nである。反復ステップの数は最大の次数Nに大きく依存し、それは、すべての次数n(すでに論じられたような)がカスケードに含まれなくてもよいからである。
【0073】
図5から図8は各々、図3および図4に示されるような方法に従って、提案される回路100を使用して得られるシミュレーション結果を示す。図5から図8は、プリディストーションの基本的な有効性を示す。シミュレーション結果を得るために図5から図8が根拠とする非線形性は、対応する図面において表現される。単位dBのシミュレートされた振幅は各々、Hz単位の周波数にわたってプロットされる。図5から図7は各々、シミュレーションを使用して、シミュレートされた非線形システムのシミュレートされたセンサ信号70に対する方法の影響を示し、この非線形システムは、特性曲線がy=(1+0.75x)2であり、ピーク値が1である1kHzの正弦波音を入力信号20としてもつ。図5から図8の説明における「DSPなし」は、シミュレートされた非線形システムに方法が適用されなかったことを意味する。
【0074】
したがって、図5は、この方法を使用した(DSPありの)シミュレートされたセンサ信号70と比較した、この方法の効果のない(DSPなしの)シミュレートされたセンサ信号70を表す。図5は、80dBを超える2次高調波86の振幅の顕著な低下を示すが、基本周波数88の振幅は約2.5dBだけ低下する。
【0075】
図6は、レベル補償を含む方法(DSPあり、レベル補償を含む)を使用したシミュレートされたセンサ信号70と比較した、その方法の効果のない(DSPなしの)シミュレートされたセンサ信号70を表す。図6はそれでも、およそ50dBの2次高調波86の顕著な低減を示すが、基本周波数88におけるレベルの低下は約1.5dBにすぎない。基本周波数88の振幅と比較して各々概ね振幅が-60dBである、追加の高次の高調波が生成されることを認識できる。これは、レベルの低下(基本周波数88における)とセンサ信号70における非線形ひずみとの間の重み付けを示す。
【0076】
図7は、方法の効果のない(DSPなしの)シミュレートされたセンサ信号70、任意選択のレベル補償のない(DSPありの)方法を使用したシミュレートされたセンサ信号70、およびレベル補償を含む(DSPあり、レベル補償を含む)方法を使用してシミュレートされたセンサ信号70における、基本周波数88の異なる振幅を示す。DSPなしのレベルの低下は、定義上は0dBであり、DSPありではおよそ2.5dBであり、レベル補償を含むDSPありではおよそ1.5dBである。
【0077】
図8は、シミュレーションを使用する、特性曲線がy=(0.5+0.375x)2+(0.25+0.5x)3であるシミュレートされた非線形システムのシミュレートされたセンサ信号70に対する方法の影響を示す。方法を使用すると(DSPあり)、およそ55dBの2次高調波86の顕著な低減およびおよそ25dBの3次高調波87の顕著な低減が認識され得る。基本周波数88のレベルは、およそ5dB低下する。加えて、プリディストーションはより高次の高調波を生成し、最高の振幅(4次高調波89)は、基本周波数88の振幅と比較しておよそ-45dBである。
【0078】
図5から図8を一緒に見ると、2つのシミュレートされたシステム(図5から図7および図8)は大きく異なる(図5から図7の特性曲線の2次対図8の特性曲線の3次、および異なる多項式係数を参照されたい)ことが指摘されるべきであり、大半の異なるグラフ結果すでに「DSPなし」。
【0079】
図5では、2次プリディストーションのみを伴う方法が適用されており、図8では、2次および3次のカスケードを伴う方法が適用されている。得られるプリディストーションパラメータrも、これらの事実により異なる。それぞれの非線形システムとそれぞれのプリディストーションとの間の相互の影響は、結果として大きく異なる。
【0080】
図9は、方法の第2の変形の制御ユニット30の構成要素を示す。第2の変形は、適応制御パラダイム(適応フィードフォワード制御)に従う。方法の第1の変形とは対照的に、第2の変形では、第1の変形にほぼ相当する方法100が、仮想的にコントローラ30において実行される。仮想の構成要素は各々、実際の構成要素と同じ参照番号を有し、文字「a」により補足される(図9および図10参照)。その結果、仮想の信号源は参照番号10aを有し、実際の信号源は参照番号10を有する、などである。さらなる違いは、実際のセンサ信号70と仮想センサ信号70aとの偏差が最小になるように、最初に、第2の目標関数85aが、非線形システムモデル50aのパラメータを適応させることによって仮想的に最適化されるということである。第2の目標関数85aの最適化は、入力信号20またはプリディストーションが行われた信号40とのシンク50の動作に干渉することなく、「片手間で」行われるので、第2の目標関数85aは仮想的に最適化される。この非線形システムの特定が終了すると、第1の変形と同様に、第1の目標関数80aは、非線形システムモデル50aの出力における非線形ひずみを最小にするために仮想的に最適化される。これは、レベルの低下を考慮しながら行われる。
【0081】
この手順の利点は、最適化プロセスのほぼ全体が仮想信号に基づいて行われ、その結果、実際の回路100とは大部分が無関係であるということである。最適化プロセスは、並行して継続し得る回路100の標準的な動作に対する影響がない。したがって、最適化プロセスの長さは重要ではない。第1の目標関数80aの最適化は、実際のセンサ信号70を待たなくてもよいので、第1の変形と比較して加速され得る。すべての最適化を終了した後、すなわち最適化30bが終了すると、プリディストーション30aは、制御ユニット30のプリディストーションパラメータに伝わることによって、実際のAC信号源10と実際のシンク50との間で切り替えられる。非線形システムモデル50aのパラメータとプリディストーション30、30aのパラメータの両方が、たとえば、一度、継続的に、ある時間間隔で、または第1の目標関数80aもしくは第2の目標関数85aの閾値を超えるときに、適応させられ得る。
【0082】
好ましくは、コントローラ30、30aは、シンク50の出力における実際のセンサ信号70と非線形システムモデル50aの出力における仮想センサ信号70aとの間の、または実際のセンサ信号70から導出される量と仮想センサ信号70aから導出される量との間の偏差が最小になるように、非線形システムモデル50aの少なくとも1つのモデルパラメータを適応させることによって、第2の目標関数85aを最小にするように構成される。一般に、「プリディストーションパラメータ」はプリディストーションのみを、具体的にはn次プリディストーションのみをパラメータ化することが指摘されるべきである。「モデルパラメータ」は、非線形システムモデル50aを実際のシンク50に適応させるモデルパラメータである。したがって、モデルパラメータは、第2の目標関数85aを最小にする役割も果たす。非線形システムモデルは、多くの異なる方法で実現され、したがってパラメータ化されてもよい。簡単な純粋に非線形のシステムモデルは、たとえば、y=ax2により与えられ、パラメータはaであり、入力信号はxであり、出力信号はyである。したがって、シンク50に対して考えられる非線形システムモデル50aは、物理誘導状態空間モデルを介した純粋な多項式またはFIR/IIRフィルタを使用して動作するブロックベースモデル(Hammersteinモデルのような)から、LSTM-NNのような(深層)ニューラルネットワークにまでわたる。モデルが現実をより正確にマッピングできるほど、非線形性を補償するときの性能がより良くロバストになる。しかしながら、一般的に表現すると、ここで開示されるアルゴリズムは、選択されたモデルとは無関係である。
【0083】
「それから導出される量」という用語は、必ずしも目標に対する指向性が等しくない場合でも、測定されたセンサ信号70(たとえば電流強度のような)と仮想センサ信号70a(たとえばモデルに基づく電流強度のような)との(時間平均された)偏差ではなく、周波数範囲における偏差または測定から導出される非線形性とモデル予測(THD、TNCD、…)から導出される非線形性とのそれぞれの尺度の偏差を最小にすることも考えられるものとして、理解されるべきである。
【0084】
好ましくは、コントローラ30、30aは、第2の目標関数85aの最小化を実行した後、第1の変形についてすでに説明されたような第1の目標関数80aの最小化を実行して、非線形システムモデル50aの出力における非線形ひずみを最小にするように構成される。第1の目標関数80aの最適化と第2の目標関数85aの最適化は各々仮想的に実行されることが、指摘されるべきである。
【0085】
好ましくは、コントローラは、特に第2の目標関数85aと第1の目標関数80aの仮想的な最小化を実行した後、特にシンク50に伝えられるべき実際のプリディストーションが行われた信号40を出力するように構成される。第1の目標関数80aと第2の目標関数85aの最小化を仮想的に実行できることによって、この最適化のプロセスは回路100の正常な動作に影響しない。
【0086】
図10は、図4に類推して、n次の仮想プリディストーションvnのあり得る構成要素を概略的に示す。あり得る構成要素は、仮想コントローラ30aによって実行され得る異なる機能を含む。たとえば、任意選択で、サンプルレートの仮想的な向上34aおよびサンプルレートの仮想的な低減36aが実行され得る。具体的には、サンプルレートの仮想的な向上34aは、仮想n次プリディストーション35aの前に行われ、nは1より大きい数である。加えて、具体的には、サンプルレートの仮想的な低減36aは仮想プリディストーション35aの後に行われる。仮想n次プリディストーション35aの後、仮想平均値適応37a、具体的には仮想平均値抑制37aが、仮想コントローラ30aによって、または仮想コントローラ30aにおいて実行され、続いて、仮想的なプリディストーションが行われた信号40の仮想正規化38a、および任意選択で仮想レベル適応39a、具体的には仮想的なレベルの向上39aが実行されるので、最適化が終了する場合30b、決定されたプリディストーションパラメータ30cはコントローラ30に伝えられ、コントローラ30は次いで、決定されたプリディストーションパラメータ30cとともに実際のプリディストーションが行われた信号40をシンク50に伝える。任意選択で、実際のプリディストーションが行われた信号40に伝える前に、レベルの変化39、特にレベルの向上またはレベルの低減が実行され得る。たとえば、図10は任意選択でレベルの向上を示す。平均値抑制37aは、平均値を計算することと、計算された平均値を仮想的なプリディストーションが行われた信号40aから差し引くこととを含む。平均値適応は、DC部分を完全になくすことなく、DC部分を適応させるための値を決定することと、この値を平均値から差し引くこととを含む。矢印によって図10に示されるように、パラメータ変動90aは、プリディストーション35a、平均値抑制/平均値適応37a、正規化36aのステップ、および任意選択のレベルの向上のステップ39aにおいて仮想的に行われる。
【0087】
図10において、それぞれの仮想パラメータ変動90a、90a'が行われる2つのループを確認することができる。第1のループは、仮想シンク50a(=非線形システムモデル50a)→仮想センサ信号70a→第2の目標関数85aの仮想最適化→仮想パラメータ変動90a'→仮想シンク50aという信号経路を備える。
【0088】
図10の第2のループは、仮想シンク50a(=非線形システムモデル50a)→仮想センサ信号70a→第1の目標関数の最適化80a→仮想パラメータ変動90a→仮想コントローラ30a→仮想的なプリディストーションが行われた信号40a→仮想シンク50aという信号経路を備える。
【0089】
第1の変形についてすでに行われた説明は、第2の変形に直接移行され得ることが指摘されるべきである。具体的には、回路100の実際の構成要素を用いて実行され得る実施形態は、回路の仮想の構成要素を用いても実行され得る。その結果は、たとえば、少なくとも1つの仮想プリディストーションパラメータrが実数またはベクトル量であり得ることなどである(第1の変形の説明を参照)。第1の変形の説明は、第2の変形について再び繰り返されない。むしろ、第2の変形のために、第1の変形の説明に対する参照がここで行われる。
【0090】
第1および第2の変形において、実際の入力信号20は、プリディストーションの前にフィルタバンクによって周波数帯域へと分割されてもよく、それらは次いで、異なるようにプリディストーションが行われてから再び加算され、全体の信号を形成してもよい。
【0091】
図11および図12は各々、回路100を使用して実行された、ここで提示される第2の方法に対するシミュレーション結果を示す。図11は、図11aおよび図11bにおいて、Hz単位の周波数に対するTHD予測およびTHD低減を示す。図11図11aおよび図11bへと再分割され、それは、1つの図面においてグラフを表すと、これらが互いに重複して区別できないからである。図11aは、方法の第2の変形(「DSP」)を適用しない場合とする場合の、元のシミュレートされた非線形システム(「原型」)のTHD値を示す。DSPなしの元のシミュレートされた非線形システムのTHD値は、概ね3%と35%の間であり、DSPありでは、概ね0.06%と0.7%の間である。これは、50倍または概ね34dBの低減を意味する。
【0092】
図11bは、方法の第2の変形(「DSP」)を適用しない場合とする場合の、仮想非線形システムモデル(「モデル」)のTHD値を示す。DSPなしのモデルは、元のシミュレートされた非線形システムのTHD値(図11a、グラフ「DSPなしの原型」を参照)をほとんど同じように予測する。この結果は、第2の目標関数85aを最適化した後に得られる。予想され得るように、モデルを用いると非線形ひずみの低減はよりうまくいき、それは、モデルは元のシステムからわずかにずれているが、プリディストーションパラメータがモデルを使用して最適化されたからである。DSPありのTHD値は、概ね0.04%と0.4%の間である。基本的に、図11は、図11aおよび図11bにおいて、すべての最適化を終えた後に方法の第2の変形を適用することが、この場合にはシミュレートされた実際のシンク50の非線形ひずみのかなりの低減をもたらすことを示す。
【0093】
図12は、原型とモデルに対する伝達関数を示す。伝達関数は、Hz単位の周波数に対するdB単位の振幅の依存性として表される。モデルと原型はほぼ上下に重なっていることがわかる。図12は、第2の目標関数85aを最適化した後の仮想非線形システムモデル(「モデル」)が、元のシミュレートされた非線形システム(「原型」)の、モデルの観点からは未知である伝達関数を、極めて正確に(最大偏差<0.5dB)で予測することを示す。これは、図11と組み合わせて、第2の目標関数85aを最適化した後の非線形システムモデル50aが、この場合はシミュレートされた実際のシンク50の線形および非線形の伝達特性をマッピングできることを示す。
【0094】
図11および図12は、システム特定(仮想システムモデルをシンクに適応させること)とプリディストーション(仮想的に最適化されたパラメータを実際のシンクのためのプリディストーションに適用すること)の両方に関して、第2の変形が機能することを示す。
【0095】
本開示では、プリディストーションが行われた信号40、40aが説明されることが、ここで指摘されるべきである。シンク50のセンサ信号70をコントローラ30にフィードバックして、ループの中でプリディストーションパラメータrを継続的に適応させることによって、プリディストーションを継続的に適応させることができるので、最良の場合には、第2の信号70は、最適化が終了した時間間隔の満了の後、もはやどのようなひずみも含まない。同時に、回路の動作点および/または動作範囲は、基本的に一定の動作点および/または一定の動作範囲において信号を調整することによって動作させられ得る。
【0096】
図13は、動作点を変えないときの適応プリディストーションのシミュレーション結果を示す。図13において、DC動作点71、プリディストーションパラメータ73の計算された値、および全非コヒーレントひずみ(TNCD)72が示される。プリディストーションパラメータ73が、その初期値から開始して、0sと140sの間のDC動作点71に適応し、一方で全非コヒーレントひずみ72が値0に減少することがわかる。140sと250sの間、動作点71、計算されたプリディストーションパラメータ73、および全非コヒーレントひずみ72は一定である。加えて、図13は、DC動作点71を動かすとき、およそ250sにおいて、全非コヒーレントひずみ72が鋭く増大することを示す。結果として、プリディストーションパラメータ32は、動かされたDC動作点71に設定され、これは、特に250sから300sにおいて、全非コヒーレントひずみ72(TNCD)の低減をもたらす。およそ300sおよびそれ以降に、DC動作点71、計算されたプリディストーションパラメータ73、および全非コヒーレントひずみ72は一定である。
【0097】
本開示の別の態様は、特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく、非線形性を補償するための方法に関する。図14は提案される方法130のフローチャートを示す。方法130は少なくともステップ131から136を有する。ステップ131において、方法130は交流電圧信号源によって入力信号を提供するステップを有する。
【0098】
具体的には、この場合に交流電圧信号源によって提供される交流電圧信号は、定期的なサンプリング時間における離散的な振幅値であるものと理解されるべきであり、これがコントローラに到達する。しかしながら、コントローラによってデジタル信号へと変換され得るアナログ信号をコントローラが提供されることも考えられる。コントローラ30のアナログの実装形態が基本的に可能であり、アナログ信号も使用され得る。しかしながら、好ましくは、デジタル信号またはデジタル化された信号が使用される。ここでは、コントローラ30の前にA/D変換が、コントローラ30の後にD/A変換が行われ得る。
【0099】
ステップ132において、方法130は、コントローラ30によって入力信号20を受信するステップと、少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータによって入力信号20をプリディストーションが行われた信号40に変換するステップとを有する。少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータは、コントローラ30がアクセスし得るデータベースに記憶され得る。したがって、ユーザによって要求される場合、または前の最適化を終えた後、少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータが保存されてもよく、具体的には、データベースに上書きおよび/または記憶されてもよい。プリディストーションが行われた信号40の議論は、回路を説明するときにすでに与えられた。冗長さを避けるために、この説明は繰り返されない。
【0100】
ステップ133において、方法130は、プリディストーションが行われた信号40をシンク50によって続いて受信するステップを有し、シンクは調整ユニット60に結合される。
【0101】
ステップ134において、方法130は、プリディストーションが行われた信号をシンクによって受信するのと同時に、ある動作範囲またはある動作点においてシンクを動作させるために、調整ユニットによって調整信号をシンクに提供するステップを有する。シンク50に調整信号を提供することによって、回路100の動作点および/または動作範囲が調整され得る。
【0102】
動作点(DCオフセット)は、調整信号20によってあらかじめ決定されている。動作点が意図的にまたは意図せずに変えられる場合、ここで開示される方法は、変化がわずかにすぎないとき、および/または比較的緩やかに起きるとき、(プリディストーションパラメータの最適化に関して)十分に速く変化を追跡することが可能である。これは、回路100に関して詳しく前に論じられており、それがここで再び参照される。
【0103】
ステップ135において、方法130は続いて、少なくとも1つのセンサ信号に基づいて少なくとも1つのあらかじめ設定されたプリディストーションパラメータを適応させるためのコントローラによって、フィードバック方式でシンクにおいて出力される少なくとも1つのセンサ信号を受信するステップを有する。
【0104】
少なくとも1つのプリディストーションパラメータは、センサ信号70のひずみが可能な限り最良の方法で補償されるまで頻繁に適応させられる。ここでは、入力信号は、具体的にはここで説明される制御ループに従って、それぞれの現在のパラメータについての各パラメータ変動を用いてプリディストーションが行われる。ひずみの補償は自動的に行われる。
【0105】
ステップ136において、方法130は、特性曲線の動作点および/または特性曲線の動作範囲を基本的に変えることなく、プリディストーションが行われた信号をシンクに提供するために、少なくとも1つの適応させられたプリディストーションパラメータによって入力信号をプリディストーションが行われた信号に変換するステップを有する。特性曲線の動作点または範囲を維持するために、入力信号20自体は変更されない。
【0106】
方法ステップ131から136は、好ましくはそれらの番号の昇順で次々に実行され、特に好ましくは、ステップ133と134は並列に実行され得る。ステップ131から136はすべて並列である。一見すると、これは矛盾しているように見えが、そうではない。その理由は、アナログの実装形態では、それが継続的に同時に起こるからである。しかしながら、好ましいデジタルの実装形態では、それはサンプルレートのような固定された時間的な切替点において同時に実行される、特にデジタルの実装形態では、一部のステップは、他のステップよりいくらか長くかかることがある。たとえば、入力信号が1つ1つのサンプリング時間において受信され、プリディストーションが行われた信号が1つ1つのサンプリング時間において出力されるが、第1の目標関数の最適化はP個のサンプル値からなる信号ブロックに基づいて実行され、パラメータ変動は各々のP回のサンプリング時間においてのみ行われることが考えられ、Pは自然数である。たとえば、信号ブロックはP=256個のサンプル値を含み得る。信号ブロックはまた、異なる数のサンプル値も含み得る。それでも、ステップは並列に実行される。
【0107】
好ましくは、方法130は、特にシンク50が、固定的にあらかじめ決定された、または用途に関連してわずかにしか変化しない動作点および/もしくは動作範囲を有するように、特に任意の選択された直流電圧である調整信号によって、調整ユニット60によりシンク50に直流電圧の形態で調整信号を提供するステップを有する。動作点および/または動作範囲のわずかな変化は、目標関数の最適化が収束するのに十分な時間を有する時間枠を含む。これは回路100に関して上でより詳しく論じられており、それがここで再び参照される。
【0108】
好ましくは、方法130は、第1の目標関数80が最小になるように、具体的には、第1の目標関数80が少なくとも1つのセンサ信号40に基づいて計算されるように、または少なくとも1つのセンサ信号40および入力信号20に基づいて計算されるように、少なくとも1つのセンサ信号40に基づいて少なくとも1つのプリディストーションパラメータrを変更するステップを有する。その結果、第1の目標関数80は、センサ信号40に対する、またはセンサ信号40および入力信号20に対する依存性を示し得る。少なくとも1つのディストーションパラメータの適応が両方の信号20、40を使用して行われるべきかどうかを、ユーザに決めさせることも考えられる。
【0109】
好ましくは、第1の目標関数80は、システムの非線形性を特徴付ける1つまたは複数の測定値を決定する1つまたは複数の関数を含み、測定値は、たとえば、ひずみ率または全高調波ひずみまたは全非コヒーレントひずみである。最適化のロバスト性に関して、第1の目標関数80において多数の測定値が考慮されることが有利であり得る。たとえば、いくつかのセンサ信号が利用可能である場合、これらが考慮され、測定値を使用して重み付けられ得る。いくつかの異なる測定されたひずみ値を使用して重み付けることが有利であり得る。
【0110】
好ましくは、方法130は、第1の目標関数80がシンク80の出力におけるレベルの変化の尺度を含む場合、シンク50の出力における非線形ひずみおよびレベルの変化に関して第1の目標関数80を重み付けるステップを有する。基本的に、プリディストーションなしの出力レベルが、プリディストーションを使用している間の出力レベルと比較されることになり、後者が前者に適応させられることになる。言い換えると、プリディストーションなしの出力レベルとプリディストーションありの出力レベルとの差が最小にされるべきであり、またはそうでなければ、その比が1に近くされるべきである。第1の選択肢によれば、差が計算されてもよく、第2の選択肢によれば、比が形成されてもよい。加えて、レベル(dB単位、すなわち対数)を使用することまたは振幅(ボルト単位、たとえば、すなわち線形)を出力することが考えられる。
【0111】
それぞれの出力レベル(プリディストーションあり/なし)は、プリディストーションをオン/オフすることによって、または影響のある/ないパラメータを決定することによって検出され得る。出力レベルは同等であるべきである。これは、たとえば、準静的な個々の信号またはマルチトーン信号の場合にそうであるように、たとえば、入力信号が時間的に一定の特徴を備える場合にあてはまる。第2の変形では、仮想入力信号は完全に制御可能であり、したがって再現可能であるので、より複雑な/動的な信号が使用され得る。
【0112】
第1の目標関数f1を重み付けることは、次のように式として表現され得る。
f1=A*(ひずみの尺度)+(1-A)*(レベルの変化)
ここで、実数Aは0≦A≦1である。ひずみの尺度およびレベルの変化は、パラメータAを用いてf1において重み付けられ得る。
【0113】
第1の目標関数と第2の目標関数の例は、たとえば以下の関数によって与えられる。
【0114】
1.目標関数f1
f1=A*THD(y)+(1-A)*ΔL
Aは上記の通りであり、THD(y)はある周波数のセンサ信号yにおける全高調波ひずみであり、ΔLはプリディストーションありのyとプリディストーションなしのyとの間の大きさのレベルの差である。
【0115】
2.目標関数f2
f2=(y-yvirtual)2
すなわち、測定されたセンサ信号70と仮想信号70aとの間の二乗偏差であり、これは特に、普通はある時間枠にわたって平均される。
【0116】
好ましくは、方法130は、特に入力信号20の性質に基づいて選択される、数学的な最適化方法によって第1の目標関数80を最小にするステップ、または、任意の入力信号20に対する適切に調整された極値調節器によって第1の目標関数80を最小にするステップを有する。最適化方法の選択は回路の文脈においてすでに説明されており、ここではそれが参照されるべきである。第1の目標関数の最適化は、時間的に連続して、または異なる次数のプリディストーションに対して並列に実行されるべきである。
【0117】
方法130は、第1の目標関数80を最小にするために、1<n≦Nである異なる次数nのN-1回のプリディストーション反復ステップを実行するステップを有し、Nは1よりも大きい自然数である。プリディストーションパラメータの最適化は、すべてのプリディストーションに対して並列に行われ得る。プリディストーションは、次数の昇順で次々に信号に適用されなければならない。次数の選択は、好ましくは反復の前に行われる。いくつかのひずみの次数が、手動または自動で特に重要であると特定され(たとえば、3次高調波および5次高調波が特にエネルギーが大きく、たとえば、それらは正弦波トーン入力信号において1%より大きい基本周波数のレベルを有する)、次いで、これらの次数(3および5など)がひずみカスケードに導入される。すべての他の次数はカスケードに含まれない。
【0118】
プリディストーションの使用される次数は、特に、
1.時間を節約する/計算の複雑さを下げるため
2.追加で、異なる次数の必要とされない可能性のあるプリディストーションが意図せずにシンクの出力においてさらなるひずみをもたらし得る
という2つの理由で、可能な限り最小の数の関連する次数に制限される。
【0119】
したがって、好ましくは、方法130は、nの昇順で時間的に連続して、または、第1の目標関数の多次元最適化によって時間的に並列に、最大でN-1個のプリディストーション反復ステップの各々のプリディストーションパラメータをシンクの特性に適応させるステップを有する。
【0120】
好ましくは、方法130は、反復を実行した後、プリディストーションが行われた信号40をシンク50に伝えるために、特にセンサ信号70をコントローラ30に伝えるために、プリディストーションが行われた信号40をコントローラ30によって出力するステップを有する。その結果、センサ信号70はコントローラ30にフィードバックされる。ここで、ひずみパラメータまたは少なくとも1つのひずみパラメータは、必要とされる場合に適応させられ得る。
【0121】
好ましくは、方法130は、入力信号20が十分に帯域制限されていない場合、入力信号20のサンプルレートの向上34によって時間的なエイリアシングを回避するステップを有する。図4および図10に示されるように、特に入力信号40をコントローラ30に伝えた後、サンプルレートの向上34がコントローラ30において行われる。センサ信号70を用いてサンプルレートを上げる前の入力信号20が第1の目標関数80に入ることが、図4から推測され得る。第1の目標関数80を計算するために、入力信号20とセンサ信号70は同一のサンプリングを必要とし、普通はそうなる。その結果、センサ信号70は決してオーバーサンプリングされる必要がない(図4参照)。サンプルレートを上げる代わりに、またはそれに加えて、入力信号20はこの時点で帯域制限されてもよい。
【0122】
好ましくは、方法130は、y=(a+bx)nという形態の非線形性を補償するステップを有し、aおよびbは実数の係数であり、出力信号yおよび入力信号xは実数であり、n≧2は非線形性の次数を記述する自然数である。値の範囲-1≦x≦1は、正規化されている入力信号40の動作範囲を示す。プリディストーションが行われた信号40の将来の正規化において動作範囲を維持するために、入力信号40の動作範囲、すなわち許容される最大値および最小値が知られていることが重要である。
【0123】
好ましい実施形態では、プリディストーション関数は、いくつかの次数のひずみを同時に補償するのではなく、単一の次数のひずみを特に補償するようなものである。言い換えると、n次プリディストーションは、n次プリディストーション関数を含み、非線形のn次ひずみを主に補償する。その結果、式y=(a+bx)nは、単一のn次プリディストーションによって特によく補償され得るタイプの非線形性を記述する。基本的に、任意の、すなわち、また任意の複雑なプリディストーション関数が、異なる次数の非線形性を少なくとも部分的に補償するように選択されてもよく、その非線形性は、たとえば多項式y=a0+a1*x+a2*x2+…により与えられてもよい。n次プリディストーションは、n次プリディストーション関数を含み、非線形のn次プリディストーションを主に補償する。非線形性の例はy=(a+bx)nによって与えられ、これはすでに前に説明されている。
【0124】
図3に従ったさらに好ましい実施形態は、たとえば、異なる次数のプリディストーションのカスケーディングまたは反復を説明する。次々に課されることによって、単一の次数のひずみを補償できるだけではなく、特に異なる次数のひずみを同時に補償することができる。したがって、y=a0+a1*x+a2*x2+…またはy=(a1+b1*x)2+(a2+b2*x)3のような、より複雑なシステムの非線形のひずみも補償することができる。
【0125】
第1の変形におけるプリディストーションが行われた信号40はシンク50に継続的に伝えられるので、第1の目標関数80が最小にされているかどうかにかかわらず、非線形性の補償は常に行われる。そのことの結果は、全般に非線形ひずみが最小にされ、どのような特別な形態の非線形性も補償されないということである。
【0126】
サンプルレートの向上34がn次のプリディストーション反復ステップ35の前に行われる場合、n次のプリディストーション反復ステップ35の後、特に入力信号20を元のサンプルレートに戻すために、サンプルレートの低減36が行われる。サンプルレートの向上34およびサンプルレートの低減36は、サンプルレートが変更される場合、両方とも次々に実行される。サンプルレートの向上34およびサンプルレートの低減36は任意選択である。
【0127】
好ましくは、方法130は、n次プリディストーション反復ステップ35(プリディストーション関数35、35a)によって引き起こされる、信号における、特にプリディストーションが行われた信号40、40aにおけるDCオフセットを検出するステップを有する。DCオフセットを検出した後、続いて、DCオフセットの変更または除去が行われる。DCオフセットの除去は特に、十分に低いカットオフ周波数をもつハイパスフィルタ、および/または、プリディストーションパラメータrを使用する平均値計算と、その後の減算とによって実行され得る。DCオフセットの変更は、DCオフセットを適応させることによって行われ得る。DCオフセットを除去するとき、動作点は維持される。適応させるとき、動作範囲は維持される。ここで「十分に」という用語は、入力信号20の帯域幅を維持することを意味する。次数に関して、最初に平均値計算が行われ、次いで減算が行われ、続いてハイパスフィルタが使用されることを、当業者は意図する。図4において、たとえば、平均値計算は、たとえば平均値抑制37によって、プリディストーションパラメータrおよび後続の減算を使用して説明される。図4において、平均値抑制は、平均値適応37の例として使用される。DCオフセット、すなわち直流電圧部分は、動作点が維持されるべきである場合、非線形ひずみの望まれない副産物である。DCオフセットは動作点を変えるので、望ましくない。したがって、説明されるように、DCオフセットを再び除去すること、特にDCオフセットを補償することが、ここで特に提案される。
【0128】
好ましくは、方法130は、コントローラ30の出力におけるプリディストーションが行われた信号40を入力信号の元の動作範囲に保つために、プリディストーションが行われた信号40を正規化するステップ38を有する。DCオフセットの補償により、動作点および/または動作範囲は基本的に一定に保たれ得る。入力信号20の動作範囲が知られている場合、動作範囲は正規化によって維持され得る。
【0129】
方法130の第2の変形によれば、最初に第2の目標関数85aを最小にすることは、シンク50の出力におけるセンサ信号70と仮想センサ信号70aとの偏差、またはセンサ信号70から導出された量と仮想センサ信号70aから導出された量との偏差が最小になるように、非線形システムモデル50aのプリディストーションパラメータを適応させることによって行われる。第2の目標関数85aの最小化は、第1の変形についてすでに説明されたように、回路100の動作が独立して継続され得るように、仮想的に行われる。方法の第2の変形は図9および図10に示される。この場合、仮想的とは、少なくとも一度、しかし具体的にはまたより頻繁に、実際のセンサ信号70が傍受され、非線形システムモデル50aの出力信号に相当する仮想センサ信号70aが、モデルパラメータを最適化することによって可能な限り実際のセンサ信号70と近くなるようにマッチングされることを意味する。第2の目標関数85aの最小化は「片手間で」行われる。具体的には、入力信号20またはプリディストーションが行われた信号40を用いたシンク50の動作はこれにより妨げられない。
【0130】
第2の目標関数85aの最小化を実行した後、非線形システムモデルの出力における非線形ひずみを最小にするために、方法の第1の変形の文脈で前にすでに説明されたように、第1の目標関数80、80aの最小化が実行される。その結果、方法の第2の変形は、最初は仮想的に実行される。仮想的な実行は、第2の目標関数85aを最小にすることを含み、第1の目標関数80、80aを最小にすることを含み得る。第1の目標関数80、80aは最適化され、具体的には、仮想的に最小化され(第2の変形)、または実際に最小化され得る(第1の変形)。第2の変形に従った「適応フィードフォワード」パラダイムでは、第1の目標関数80aは仮想的に、特に常に最適化される。たとえば、図9および図10では、実際のセンサ信号50は第2の目標関数85aの最適化においてのみ使用され、第1の目標関数80aの最適化においては使用されないことがわかる。第2の変形によれば、好ましくは、すべての目標関数が仮想的に最適化される。一方で仮想システムモデルを使用するが、第1の目標関数80aを最適化するために実際のセンサシステム50も使用し得る、ハイブリッドシステム(第1の変形と第2の変形の混合)も考えられる。
【0131】
加えて、第2の目標関数85aと第1の目標関数80、80aの最小化を実行した後、プリディストーションが行われた信号40、40aを出力して、プリディストーションが行われた信号40、40aをシンク50、50aに伝えることが行われる。これは、仮想的にまたは現実に行われ得る。しかしながら、この手順が最初は仮想的に実行され、その後で現実に実行されることも考えられる。
【0132】
第2の変形は、次のように3つのステップを形成するものとして要約され得る。
【0133】
1.初期状態:現実のプリディストーションと仮想的なプリディストーションは、センサ信号70、70aに対して目立つ影響がないように調整され、非線形システムモデル50aは依然として初期状態にある。
2.第2の目標関数85aの、そして続いて第1の目標関数80aの仮想的な最適化。
3.最適化の後、現実のプリディストーションは、仮想的なプリディストーションと同じパラメータをもつ。
【0134】
好ましくは、システムモデルの少なくとも1つのパラメータおよび/または少なくとも1つのひずみパラメータの適応は、一度、連続的に、ある時間間隔で、または第1の目標関数もしくは第2の目標関数の閾値を超えるときに実行される。適応させることは、方法130の閉ループ(フィードバック)変形を特に説明する第1の変形と、方法130の開ループ(フィードフォワード)変形を特に説明する第2の変形との両方に関係する。第2の変形では「仮想的な」処理だけが行われてもよく、それは、プリディストーションおよび実際のシンク50について閉ループがないからである。
【0135】
好ましくは、第1の変形または第2の変形に従った方法において、現実におよび/または仮想的に回路100に特に加えられる入力信号20、20aをフィルタバンクによって複数の周波数帯域へと分割し、その後、入力信号(20、20a)をある数の周波数帯域依存の入力信号(20、20a)に変換することが行われ、続いて、特に現実におよび/または仮想的に、周波数帯域依存の入力信号20、20aのプリディストーションを行う35、35a。そして、その数の周波数帯域依存のひずませられた信号40、40aを統合して全体のプリディストーションが行われた信号40、40aを形成し、その後、コントローラ30、30aの出力におけるその1つの全体のプリディストーションを行われた信号40、40aが、シンク50または非線形システムモデル50aに伝えられる。周波数帯域は、異なるようにプリディストーションが行われなければならないことがあり、この場合、結果として異なるプリディストーションを必要とする。それぞれの周波数帯域に特に最適化されたプリディストーションが行われる。すべての周波数帯域の非線形性が同一の挙動を示すことを除き、すべての周波数帯域が等しくひずませられるべきではない。
【0136】
本発明のさらなる態様は、回路100に結合されるコンピュータによって実行されると、回路100を用いてここで説明されるような第1または第2の方法をコンピュータに実行させる命令を記憶した、コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0137】
特に回路のアナログの実装形態では、デジタルシグナルプロセッサは関与しないことが指摘されるべきである。むしろ、アナログの受動および能動電子デバイス、具体的には、抵抗器R、インダクタンスL、静電容量C、演算増幅器、ダイオード、トランジスタ、ポテンショメータなどが使用される。処理される信号はデジタルではなくアナログである。回路のアナログの実装形態が考えられる。
【0138】
いくつかの態様がデバイスの文脈で説明されているが、これらの態様は対応する方法の説明も表すので、デバイス/回路のブロックまたは構造的な構成要素も、対応する方法ステップまたは方法ステップの特徴として理解されるべきであることが理解される。方法ステップの形態で本発明を示すことは、冗長であるため控えられる。方法ステップの一部またはすべてが、マイクロプロセッサ、プログラム可能コンピュータ、または電子回路などのハードウェア装置によって(またはハードウェア装置を使用して)実行され得る。いくつかの実施形態では、大半の重要な方法ステップの一部またはいくつかが、そのような装置によって実行され得る。
【0139】
上記の詳細な説明において、本開示を効率化するために、例において異なる特徴が部分的に一緒にグループ化された。この種の開示は、特許請求される例が、各請求項において明確に示されるものより多くの特徴を備えることを意図するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項によって表されるように、主題は個々の開示される例のすべての特徴より少なくてもよい。その結果、以下の請求項は発明を実施するための形態へと組み込まれ、各請求項はその固有の別個の例となってもよい。請求項のうちの従属請求項は1つまたは複数の他の請求項との特定の組合せを参照するが、他の例は、各々の他の従属請求項の主題との従属請求項の組合せ、または他の従属請求項もしくは独立請求項との各特徴の組合せも含むことが、言及されるべきである。そのような組合せは、特定の組合せが意図されることが明確に表現されない限り、含まれないものとする。加えて、1つ1つの他の独立請求項とのある請求項の特徴の組合せは、この請求項がその独立請求項に直接従属しない場合でも使用される。
【0140】
具体的な実装要件に応じて、本発明の意実施形態は、ハードウェアで、またはソフトウェアで、または少なくとも一部がハードウェアで、または少なくとも一部がソフトウェアで実装され得る。デジタル記憶媒体、たとえば、それぞれの方法が実行されるようにプログラム可能コンピュータシステムと協働し得るもしくは協働する電気的に読み取り可能な制御信号が記憶されている、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイディスク、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROMもしくはフラッシュメモリ、ハードディスク、または、任意の他の磁気もしくは光学メモリを使用する限り、実装形態は有効であり得る。これが、提案される教示を実行できるデジタル記憶媒体がコンピュータ可読であり得る理由である。
【0141】
したがって、本明細書で説明される発明に従った実施形態は、本明細書で説明される方法のいずれかが実行されるように、プログラム可能コンピュータシステムと協働することが可能な電気的に読み取り可能な制御信号を含んだ、データ担体を含む。
【0142】
一般に、本明細書で説明される教示の実施形態は、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として実装されてもよく、プログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるとき、方法のいずれかを実行するのに有効である。
【0143】
プログラムコードはまた、たとえば機械可読担体にも記憶され得る。
【0144】
他の実施形態は、方法として本明細書で説明される特徴のいずれかを実行するためのコンピュータプログラムを含み、コンピュータプログラムは機械可読担体に記憶される。言い換えると、本発明の方法の実施形態はしたがってコンピュータプログラムであり、これは、コンピュータ上で実行されると、本明細書で説明される方法のいずれかを実行するためのプログラムコードを有する。
【0145】
したがって、提案される方法のさらなる実施形態は、本明細書で説明される方法のいずれかを実行するためのコンピュータプログラムが記録されるデータ担体(またはデジタル記憶媒体またはコンピュータ可読媒体)である。データ担体またはデジタル記憶媒体またはコンピュータ可読媒体は、通常は有形であり不揮発性である。
【0146】
したがって、本発明の方法のさらなる実施形態は、本明細書で説明される方法のいずれかを実行するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号のシーケンスである。データストリームまたは信号のシーケンスは、たとえば、データ通信リンク、たとえばインターネットを介して転送されるように構成され得る。
【0147】
さらなる実施形態は、処理手段、たとえば、本明細書で説明されるシステムに方法のいずれかを実行するように構成または適合される、コンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含む。
【0148】
さらなる実施形態は、本明細書で説明される方法のいずれかを実行するためのコンピュータプログラムがインストールされるコンピュータを含む。
【0149】
本発明によるさらなる実施形態は、方法の形態で本明細書で説明される方法の少なくとも1つを実行するためのコンピュータプログラムを受信機に送信するように構成されるデバイスまたはシステムを含む。この送信は、たとえば電子的または光学的であり得る。受信機は、たとえば、コンピュータ、モバイルデバイス、メモリデバイス、または同様のデバイスであり得る。デバイスまたはシステムは、たとえば、コンピュータプログラムを受信機に送信するためのファイルサーバを含み得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される方法およびデバイスの機能の一部またはすべてを実行するための、プログラマブルロジックデバイス(たとえば、フィールドプログラマブルゲートアレイ、FPGA)が使用され得る。いくつかの実施形態では、フィールドプログラマブルゲートアレイは、本明細書で説明される方法を実行するためにマイクロプロセッサと協働し得る。一般に、方法は、いくつかの実施形態では、任意のハードウェアデバイスによって実行され、これは、コンピュータプロセッサ(CPU)などの任意の汎用的に適用可能なハードウェアであってもよく、またはASICなどの方法に固有のハードウェアであってもよい。
【0151】
上で説明された実施形態は、本発明の原理の例示を表すにすぎない。当業者は本明細書で説明される構成および詳細の修正と変形を理解するであろうことが理解される。これは、本発明が、実施形態の説明と議論によって本明細書に提示されている具体的な詳細ではなく、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される理由である。
【符号の説明】
【0152】
10 AC信号源
20 入力信号
30 制御ユニット
32 プリディストーションブロック
34 サンプルレートの向上
35 n次プリディストーション関数
36 サンプルレートの低減
37 平均値抑制
38 正規化
39 レベルの向上
40 プリディストーションが行われた信号
50 シンク
60 調整ユニット
70 センサ信号
71 DC動作点
72 全非コヒーレントひずみ
73 プリディストーションパラメータ
80 第1の目標関数
90 パラメータ変動
100 回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12
図13
図14
【国際調査報告】