(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】焼却主灰を使用可能な骨材に変換するためのスケーラブルで安定したプロセス
(51)【国際特許分類】
C04B 18/10 20060101AFI20240806BHJP
C04B 14/02 20060101ALI20240806BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20240806BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20240806BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240806BHJP
C04B 40/02 20060101ALI20240806BHJP
B28B 11/24 20060101ALI20240806BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20240806BHJP
B01J 2/12 20060101ALI20240806BHJP
C04B 20/10 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C04B18/10 Z
C04B14/02 Z
C04B18/14 A
C04B20/00 B
C04B28/02
C04B40/02
B28B11/24
B01J2/00 B
B01J2/12
B01J2/00 A
C04B20/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505531
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 SG2022050542
(87)【国際公開番号】W WO2023009074
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10202108358Q
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524038392
【氏名又は名称】エングロ・コーポレイション・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ENGRO CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴー,チー・コン
(72)【発明者】
【氏名】タン,ロク・ヒン
(72)【発明者】
【氏名】-,ソーリャ・プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロー,スイ・ション
(72)【発明者】
【氏名】タン,エイク・シュアン
【テーマコード(参考)】
4G004
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G004AA03
4G004BA00
4G004HA00
4G055BA04
4G112PA06
4G112PA20
4G112PA26
4G112PA27
4G112PA28
4G112PA29
4G112RA03
4G112RA06
(57)【要約】
普通ポルトランドセメントを含むセメントと、粉砕粒状高炉スラグと、主灰とを含む骨材であって、セメントが、粉砕粒状高炉スラグの存在下で水和されて、主灰をカプセル化するケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体が形成される、骨材が開示される。骨材を製造する方法も本明細書に開示され、この方法は、水の存在下でセメントおよび粉砕粒状高炉スラグを主灰と混合してプレコート主灰を形成することと、プレコート主灰を造粒することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材であって、
普通ポルトランドセメントを含むセメントと、
粉砕粒状高炉スラグと、
主灰とを含み、
前記セメントが、前記粉砕粒状高炉スラグの存在下で水和されて、前記主灰をカプセル化するケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体が形成される、骨材。
【請求項2】
前記普通ポルトランドセメントが、石灰(CaO)、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、酸化鉄(III)(Fe
2O
3)、および/またはマグネシア(MgO)を含む、請求項1に記載の骨材。
【請求項3】
前記普通ポルトランドセメントが、少なくとも50重量%の量で存在する石灰およびシリカを含む、請求項1または2に記載の骨材。
【請求項4】
前記粉砕粒状高炉スラグが、CaO、SiO
2、および/またはMgOを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の骨材。
【請求項5】
前記粉砕粒状高炉スラグが、
30~50重量%の範囲の量で存在するCaOと、
28~38重量%の範囲の量で存在するSiO
2と、
1~18重量%の量で存在するMgOと、
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の骨材。
【請求項6】
前記主灰が、任意の発電所および/または任意の焼却施設からの主灰を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の骨材。
【請求項7】
前記主灰が、重金属、ハロゲン化物、および/または揮発性有機化合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の骨材。
【請求項8】
前記普通ポルトランドセメントが、マイクロファイン普通ポルトランドセメントを含むか、もしくは前記粉砕粒状高炉スラグが、マイクロファイン粉砕粒状高炉スラグを含むか、または
前記普通ポルトランドセメントが、マイクロファイン普通ポルトランドセメントを含み、かつ前記粉砕粒状高炉スラグが、マイクロファイン粉砕粒状高炉スラグを含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の骨材。
【請求項9】
前記マイクロファイン普通ポルトランドセメントが、750m
2/kg以上の比表面積を有する、請求項8に記載の骨材。
【請求項10】
前記マイクロファイン粉砕粒状高炉スラグが、750m
2/kg以上の比表面積を有する、請求項8または9に記載の骨材。
【請求項11】
前記骨材が、少なくとも約40重量%の前記普通ポルトランドセメントを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の骨材。
【請求項12】
前記骨材が、少なくとも約10重量%の前記粉砕粒状高炉スラグを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の骨材。
【請求項13】
前記主灰をカプセル化する前記ケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体が、200μm~700μmの範囲の平均厚さを有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の骨材。
【請求項14】
前記骨材が、0.8mm以上の平均直径を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の骨材。
【請求項15】
前記骨材が、添加剤をさらに含み、前記添加剤が、ベントナイト、クレイ、カーボンナノファイバー、バイオ炭、フライアッシュおよび/またはシリカフュームを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の骨材。
【請求項16】
水の存在下で前記セメントおよび前記粉砕粒状高炉スラグを前記主灰と混合してプレコート主灰を形成することと、
前記プレコート主灰を造粒することと、
を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の骨材を製造する方法。
【請求項17】
前記セメントおよび前記粉砕粒状高炉スラグを主灰と混合する前に、前記主灰を水と接触させること、または
前記セメントおよび前記粉砕粒状高炉スラグを主灰と混合する前に前記主灰を水と接触させることであって、前記主灰を水と接触させることが、前記主灰に水を噴霧することを含む、前記セメントおよび前記粉砕粒状高炉スラグを主灰と混合する前に前記主灰を水と接触させること、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プレコート主灰を造粒することが、少なくとも3分間の持続時間にわたって実施されるか、または
前記プレコート主灰を造粒することが、少なくとも3分間の持続時間にわたって実施され、かつ前記プレコート主灰を造粒することが、少なくとも100rpmの速度で回転する造粒機ドラム内で前記プレコート主灰を造粒することを含む、
請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記セメントおよび前記粉砕粒状高炉スラグを前記主灰と混合する前に、前記セメントおよび前記粉砕粒状高炉スラグを水と混合してスラリーを形成することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記プレコート主灰を造粒することが、前記プレコート主灰にさらなるセメントを添加することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記プレコート主灰を造粒した後に、前記プレコート主灰をペレット化することをさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記骨材を硬化させることをさらに含み、前記骨材を硬化させることが、
湿度チャンバ内で前記骨材を熱処理することと、
前記骨材を水中でコンディショニングすることと、
を含む、請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記骨材を硬化させることが、前記骨材を前記湿度チャンバ内で蒸気処理することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月30日に出願されたシンガポール特許出願第10202108358Q号の優先権の利益を主張し、その内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、骨材に関する。本開示はまた、骨材を製造する方法および骨材の使用に関する。
【0003】
背景
都市廃棄物(MSW:municipal solid waste)の発生率は、おそらく人為的活動、都市化、経済発展、および工業化よる世界人口の増加に比例して増加している可能性がある。処分および焼却は、世界中で2つの主要なMSW処理/処分アプローチと見なされ得る。したがって、MSWの増加は、焼却残渣を処分するためのより多くの埋立て処分場を有する圧力を必然的に上昇させる可能性がある。一例としてシンガポールを参照すると、2019年だけで約720万トンのMSWが発生したと推定され、そのうち58%はリサイクルされたと推定され、39%は焼却されたと推定され、3%は埋立てられたと推定された。廃棄物の体積の90%が焼却によって削減され得るが、それは依然として焼却の最後の時点での廃棄物処理の最終段階ではない。これは、焼却主灰(IBA:incineration bottom ash)および焼却フライアッシュ(IFA:incineration fly ash)等の残留物は、依然として埋立てによる焼却後に処分する必要があり、シンガポールには唯一の埋立て処分場であるセマカウ埋立て処分場(SL:Semakau landfill)しかないからである。残念なことに、SLの寿命は20年未満で最長2035年までと予想される。したがって、シンガポール等の国では、焼却灰(IA:incineration ash)、特にMSW焼却後の灰の総重量の85%~95%を占める焼却主灰を十分に利用するために慎重な計画をしなければならない場合があり、これは、埋立て処分場の利用可能性が限られているためにSLの寿命を延長する唯一の方法のようである。
【0004】
埋立て処分のための焼却主灰を削減するために、焼却主灰の使用が検討された。しかしながら、焼却主灰中の有毒な重金属および塩化物含有量は、多くの用途におけるその利用を著しく妨げるようである。したがって、焼却主灰が利用され得る前であっても、処理されなければならない。金属回収のための分離プロセス、焼却主灰中の有害な含有量を固定するための固化/安定化、熱処理、およびアルカリ処理等の多くの既存の処理方法は、焼却主灰の品質を改善し、環境への影響を低減し得る。これにもかかわらず、そのような処理プロセスは、実際には時間がかかり、費用がかかり、または困難である傾向がある。例えば、化学物質を使用し、同じ水を再循環させてIBAを洗浄することは、多くの場合、水中に溶解する重金属の量を増加させ、流出物の規制限界を超える濃度に達する可能性がある。
【0005】
前述の処理を最小化または回避しながら焼却主灰を利用するために、再生不可能な天然骨材の供給源が世界的な需要の増加が続くにつれて急速に枯渇していることを考慮して、コンクリート中の粗骨材または細骨材の代替品としてMSW焼却主灰の使用を検討した。一般に、焼却主灰は、おそらく0.1mm~100mmの範囲の粒度分布を有する金属、セラミック、石、ガラス片および未燃焼有機物を含有し得る。焼却主灰で作られたストーンフラグメントは、最も求められている代替骨材材料の1つである。これは、焼却主灰ストーンフラグメントが骨材に類似している可能性があり、廃棄物のエネルギー利用(waste-to-energy)プラントによって生成される大きな焼却主灰量が、焼却主灰ストーンフラグメントを骨材需給ギャップを橋渡しするための便利な代替物にするためである可能性がある。とはいえ、焼却主灰ストーンフラグメントは、容易に浸出する可能性があり、処理済み焼却主灰と比較して未処理焼却主灰のような比較的弱い強度特性を有する可能性がある高濃度の有毒重金属を含む傾向がある。したがって、コンクリート中の骨材代替品として未処理のIBAを使用することは依然として課題である。
【0006】
したがって、生コンクリートの製造において、IBAを粗骨材または細骨材等の使用可能な材料に変換するためのスケーラブルで持続可能かつ費用効果の高い処理方法が必要とされている。
【0007】
概要
第1の態様において、骨材であって、
普通ポルトランドセメントを含むセメントと、
粉砕粒状高炉スラグと、
主灰とを含み、
前記セメントが、前記粉砕粒状高炉スラグの存在下で水和されて、前記主灰をカプセル化するケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体が形成される、骨材が提供される。
【0008】
別の態様において、第1の態様の様々な実施形態に記載される骨材を製造する方法が提供され、この方法は、
水の存在下でセメントおよび粉砕粒状高炉スラグを主灰と混合してプレコート主灰を形成することと、
プレコート主灰を造粒することと、
を含む。
【0009】
図面の簡単な説明
図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに一般に本開示の原理を説明することに重点が置かれている。以下の説明では、本開示の様々な実施形態が、以下の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、本開示のGGBS-OPC被覆IBA骨材(本明細書ではGGBS-被覆IBA骨材と示され得る)の1つの断面を示す(光学顕微鏡法によって得られた光学画像である左画像を参照されたい)。骨材をその中心で切断した。骨材の平均サイズは2418.78μmである。この骨材は、2:1のGGBS-OPC:IBA重量比に基づく。IBAコアを取り囲むカプセル化層の平均厚さは448.31μmであり、これは、表に示すようにカプセル化層に沿って測定した少なくとも18点(例えば18または20点)から導き出される(右の画像を参照)。骨材の平均サイズは、2000μm~4000μm、2418μm~2523μm等の範囲であり得る。IBAコアを取り囲むカプセル化層の平均厚さは、295μm~449μm、319μm~449μm等の範囲であり得る。
【
図1B】
図1Bは、本開示のGGBS-OPC被覆IBA骨材の別の1つの断面を示す(光学顕微鏡法によって得られた光学画像である左画像を参照)。骨材をその中心で切断した。骨材の平均サイズは2523.072μmである。この骨材は、1:1のGGBS-OPC:IBA重量比に基づく。IBAコアを取り囲むカプセル化層の平均厚さは319.118μmであり、これは、表に示すようにカプセル化層に沿って測定した20点に由来する(右の画像を参照)。骨材の平均サイズは、2000μm~4000μm、2418μm~2523μm等の範囲であり得る。IBAコアを取り囲むカプセル化層の平均厚さは、295μm~449μm、319μm~449μm等の範囲であり得る。
【
図2】
図2は、本開示の方法の概略図である。図示の方法では、IBA(これは、0.3mm~2mm、1.12mm~2mm等のサイズを有し得る)を最初にIBA粒子に水を噴霧することによって水で濡らした。次いで、粉砕粒状高炉スラグ(GGBS:ground granulated blast-furnace slag)および普通ポルトランドセメント(OPC:ordinary Portland cement)を含む粉末混合物を湿潤IBA粒子と混合し、次いでこれらを造粒してGGBS-OPC被覆IBA骨材を形成する。
図2に見られるように、GGBS-OPC被覆IBA骨材は、コア-シェル骨材の形態で示されている。シェルはGGBS-OPCを含み、これは完全にまたは実質的にケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)に変換され得る。コアは、内部に重金属および有毒物質が閉じ込められ、シェル層によって浸出が防止されたIBAを含む。
【
図3A】
図3Aは、CS0~CS15と示される試料についてのEN12457-1:2002(mg/kg)の規格に基づくバッチ浸出試験の結果を示す表である。バッチ浸出試験は、重金属ならびに化学的酸素要求量(COD:chemical oxygen demand)を含む特定の毒性元素および化合物を検出する。この試料中の骨材は、2:1のGGBS-OPC:IBA重量比に基づく。
【
図3B】
図3Bは、CS11-Rと示される試料についてのEN12457-1:2002(mg/kg)の規格に基づくバッチ浸出試験の結果を示す表である。バッチ浸出試験は、重金属ならびに化学的酸素要求量(COD:chemical oxygen demand)を含む特定の毒性元素および化合物を検出する。この試料中の骨材は、1:1のGGBS-OPC:IBA重量比に基づく。14Dおよび7Dは、試料が受けた硬化日数(それぞれ14日間および7日間)を示す。
【
図4】
図4は、試料CS0~CS15についての各種揮発性有機構成要素(mg/kg)の浸出試験の結果を示す表である。
【
図5】
図5は、本開示の方法の一実施形態のフローチャートを示す。特に、この実施形態において、原料IBAは、ふるい分けおよび/またはサイズ縮小工程を受けてもよい。次いで、GGBSおよびOPCと混合する前に、IBAを水で濡らして、GGBS-OPC被覆IBA骨材を形成してもよい。GGBS-OPC被覆IBA骨材は、硬化を受けてもよい。
【
図6】
図6は、本開示の方法の別の実施形態のフローチャートを示す。特に、この実施形態は、GGBSとOPCとを水と混合してセメントスラリーを形成した後、GGBSとOPCとを含むセメントスラリーをIBAと混合する点で、
図5に示すものと異なる。
【0011】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、本開示を実施し得る特定の詳細および実施形態を例示として示す添付の図面を参照する。
【0012】
一実施形態の文脈で説明される特徴は、他の実施形態の同じまたは類似の特徴に対応して適用可能であり得る。実施形態の文脈で説明される特徴は、これらの他の実施形態で明示的に説明されていなくても、他の実施形態に対応して適用可能であり得る。さらに、実施形態の文脈で特徴について説明した追加および/または組み合わせおよび/または代替は、他の実施形態の同じまたは類似の特徴に対応して適用可能であり得る。
【0013】
本開示は、骨材に関する。本開示の骨材は、本明細書では「製造された骨材」と呼ぶ場合があり、これはコンクリートで使用可能な骨材への言及を含み、骨材は粒状材料であり、粒状材料は複合材(すなわち、材料の混合物)であり得る。本発明の骨材は、建築および/または建設材料、沿岸用途、支持材料等としてこれらを含むがこれらに限定されない様々な用途に使用することができる。
【0014】
骨材は、従来の骨材の環境に優しい代替品としてコンクリートに組み込むことができる。本発明の骨材は、廃棄物に由来するという点で有利である。したがって、本発明の骨材は、費用効果が高いだけでなく、廃棄されるべき廃棄物の量も減少させる。例えば、本発明の骨材は、従来は埋立地に処分されている主灰、例えば焼却主灰(IBA:incineration bottom ash)から形成することができる。シンガポール等の土地が限られている国では、これは懸念事項である。したがって、焼却主灰を利用することにより、埋立て処分される量が減少し、それにより、埋立て処分の寿命が維持される。また、本発明の骨材は、鋼の製造からの望ましくない副生成物である粒状高炉スラグ(GBS:granulated blast-furnace slag)を使用して形成され得る。このように、本骨材は、IBA廃棄物処理の低減および不要なGBS副産物のリサイクルにおいて環境的に有利である。
【0015】
上述したように、本発明の骨材は、本発明の骨材がIBAを含む場合であっても、建築および/または建材、沿岸用途、支持材料等を含むがこれらに限定されない様々な用途に使用することができ、IBAは重金属および環境に有害な有害物質を含み得る。これは、本発明の骨材がコア-シェル構造を有し、シェルがIBAをコアにカプセル化し、シェルが重金属および毒性物質をコアに閉じ込め、それらが浸出するのを防ぐためである。
【0016】
本開示はまた、前述の骨材を製造する方法に関する。本発明の方法は、コンクリート骨材を製造する従来の方法と比較して簡単であり、IBAの事前の化学処理を必要としない。本発明の方法は、原料IBAを粉砕してその元のサイズを縮小し、粉砕粒状高炉スラグ(GGBS:ground granulated blast-furnace slag)および普通ポルトランドセメント(OPC:ordinary Portland cement)、すなわちGGBS-OPC(OPC-GGBSとも略記される)から形成される粉末バインダー(すなわち、粉末混合物)を用いてIBAを造粒することを含んでもよい。粉砕粒状高炉スラグは、粉砕された粒状高炉スラグを指す。
【0017】
本発明の骨材および方法の様々な実施形態、ならびに様々な実施形態に関連する利点の詳細を以下に説明する。実施形態および利点が以下の実施例のセクションでさらに説明されている場合、それらは簡潔にするために繰り返さないものとする。
【0018】
様々な実施形態において、骨材は、セメント、粉砕粒状高炉スラグ、および主灰を含むことができる。セメントは普通ポルトランドセメントを含むことができる。粉砕粒状高炉スラグは、マイクロファイン粉砕粒状高炉スラグを含むことができる。セメントおよび粉砕粒状高炉スラグは、主灰をカプセル化するケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体を含むことができる。言い換えれば、セメントは、粉砕粒状高炉スラグの存在下で水和されて、主灰をカプセル化するケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体が形成され得る。
【0019】
「セメント」という用語は、コンクリートの成分を指し、セメントは、バインダー、すなわち他の材料(砂、砂利等)を固化、硬化、および/または付着させてそれらを結合させる建設に使用される物質として作用することができる。本開示のセメントは、水硬性セメントを含むか、または水硬性セメントからなることができる。
【0020】
様々な実施形態において、本セメントは水硬性セメントであってもよい。水硬性セメントとは、(i)セメントおよび/またはコンクリートに使用される乾燥成分と(ii)水との化学反応により、接着剤となり固化するセメントを指す。化学反応は、水にかなり不溶な鉱物水和物をもたらし、これは、水における耐久性および化学的攻撃に対する耐性を付与する。また、水硬性セメントは、湿潤状態または水中で凝結することができ、硬化した材料を化学的攻撃からさらに保護する。水硬性セメントの非限定的な例は、ポルトランドセメントを含むか、またはポルトランドセメントであり得る。
【0021】
「ポルトランドセメント」および「普通ポルトランドセメント」という用語は、本明細書では互換的に使用される。普通ポルトランドセメントは、本開示ではOPCと略される。「ポルトランドセメント」という用語は、ブランド名ではなく、ちょうどステンレス鋼が鋼の一種であるように、セメントの種類の総称である。ポルトランドセメントは、限定されないが、ケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO2)、ケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO2)、アルミン酸三カルシウム(3CaO・Al2O3)、および/またはテトラカルシウムアルミノフェライト(4CaO・Al2O3Fe2O3)を含むことができる。
【0022】
様々な実施形態において、普通ポルトランドセメントは、マイクロファイン普通ポルトランドセメントを含んでもよい。様々な実施形態において、普通ポルトランドセメントは、石灰(CaO)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化鉄(III)(Fe2O3)、および/またはマグネシア(MgO)を含み得る。様々な実施形態において、マイクロファイン普通ポルトランドセメントは、石灰(CaO)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化鉄(III)(Fe2O3)、および/またはマグネシア(MgO)を含み得る。
【0023】
様々な実施形態において、普通ポルトランドセメントおよび/またはマイクロファイン普通ポルトランドセメントは、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%等の量で存在する石灰およびシリカを含んでもよい。
【0024】
様々な実施形態において、粉砕粒状高炉スラグは、CaO、SiO2、および/またはMgOを含み得る。様々な実施形態において、マイクロファイン粉砕粒状高炉スラグは、CaO、SiO2、および/またはMgOを含み得る。
【0025】
様々な実施形態において、粉砕粒状高炉スラグおよび/またはマイクロファイン粉砕粒状高炉スラグは、30~50重量%、30~40重量%、40~50重量%等の範囲の量で存在するCaOを含み得る。様々な実施形態において、粉砕粒状高炉スラグおよび/またはマイクロファイン粉砕粒状高炉スラグは、28~38重量%、28~35重量%、28~30重量%、30~38重量%、35~38重量%等の範囲の量で存在するSiO2を含み得る。様々な実施形態において、粉砕粒状高炉スラグおよび/またはマイクロファイン粉砕粒状高炉スラグは、1~18重量%、5~18重量%、10~18重量%、15~18重量%、1~5重量%、5~10重量%、10~15重量%等の量で存在するMgOを含み得る。
【0026】
様々な実施形態において、粉砕粒状高炉スラグおよび/またはマイクロファイン粉砕粒状高炉スラグは、Al2O3を含んでもよく、Al2O3は、8~24重量%、10~24重量%、15~24重量%、20~24重量%、8~10重量%、8~15重量%、8~20重量%、10~20重量%等の範囲の量で存在し得る。
【0027】
様々な実施形態において、主灰は、任意の発電所および/または任意の焼却施設からの主灰を含み得る。本明細書における主灰は、任意の発電所および/または任意の焼却施設から生成された灰(すなわち、不燃性残留物)の形態を指す。発電所は、都市廃棄物(MSW:Municipal Solid Waste)焼却発電所、発電所、石炭発電所、バイオマス発電所等を含み得る。焼却施設は、MSW焼却炉等を含み得る。様々な実施形態において、主灰は、焼却主灰であってもよい。
【0028】
様々な実施形態において、主灰は、重金属、ハロゲン化物、および/または揮発性有機化合物を含み得る。
【0029】
様々な実施形態において、普通ポルトランドセメントは、マイクロファイン普通ポルトランドセメントを含み得るか、もしくは粉砕粒状高炉スラグは、マイクロファイン粉砕粒状高炉スラグを含み得るか、または普通ポルトランドセメントは、マイクロファイン普通ポルトランドセメントを含み得、かつ粉砕粒状高炉スラグが、マイクロファイン粉砕粒状高炉スラグを含み得る。
【0030】
様々な実施形態において、マイクロファイン普通ポルトランドセメントは、750m2/kg以上、800m2/kg以上、850m2/kg以上、900m2/kg以上、950m2/kg以上等の比表面積を有する。様々な実施形態において、マイクロファイン粉砕粒状高炉スラグは、750m2/kg以上、800m2/kg以上、850m2/kg以上、900m2/kg以上、950m2/kg以上等の比表面積を有する。
【0031】
本開示の文脈における「マイクロファイン」という用語は、750m2/kg以上の比表面積を有する材料を指す。より高い比表面積は、当然のことながら、より微細な材料を指す。ウルトラファインおよびナノファイン材料は、1,000m2/kg以上の比表面積を有し得る。ウルトラファインおよびナノファイン材料は、より微細である(すなわち、マイクロファイン材料よりも高い比表面積を有する)。本開示の文脈における「ウルトラファイン」および「ナノファイン」という用語は、「ウルトラファイン」が0.5μmより大きいサイズを有し得る粒子を指し、「ナノファイン」が100nm未満のサイズを有し得る粒子を指すという点で異なる。言い換えれば、ウルトラファイン粒子は、0.5μmより大きいサイズおよび1,000m2/kg以上の比表面積を有し得、ナノファイン粒子は、100nm未満のサイズおよび1,000m2/kg以上の比表面積を有し得る。様々な事例では、普通ポルトランドセメント、マイクロファイン普通ポルトランドセメント、粉砕粒状高炉スラグ、およびマイクロファイン粉砕粒状高炉スラグは、それらのウルトラファインおよび/またはナノファインバージョンを含み得る。
【0032】
様々な実施形態において、普通ポルトランドセメントの比表面積は、例えば、315m2/kg~375m2/kg、315m2/kg~345m2/kg等の範囲であり得る。様々な実施形態において、粉砕粒状高炉スラグの比表面積は、420~460m2/kgの範囲であり得る。これに対して、上述したように、マイクロファイン普通ポルトランドセメントおよびマイクロファイン粉砕粒状高炉スラグの比表面積は、750m2/kg以上であってもよい。
【0033】
様々な実施形態において、骨材は、少なくとも約40重量%の普通ポルトランドセメント(および/またはマイクロファイン普通ポルトランドセメント)を含み得る。様々な実施形態において、骨材は、少なくとも約10重量%の粉砕粒状高炉スラグ(および/またはマイクロファイン粉砕粒状高炉スラグ)を含み得る。
【0034】
様々な実施形態において、主灰をカプセル化するケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体は、200μm~700μm、300μm~700μm、400μm~700μm、500μm~700μm、600μm~700等の範囲の平均厚さを有し得る。特定の非限定的な例では、ケイ酸カルシウム水和物は、約448μmまたは約319μmの平均厚さを有し得る。
【0035】
様々な実施形態において、骨材は、0.8mm以上、0.9mm以上、1mm以上の平均直径を有し得る。「直径」および「サイズ」という用語は、本明細書では互換的に使用される。直径は、骨材の周囲の一点から、骨材の中心を通る直線を介して周囲のもう1つの点まで測定される。
【0036】
様々な実施形態において、骨材は、添加剤をさらに含んでもよい。添加剤は、ベントナイト、クレイ、カーボンナノファイバー、バイオ炭、フライアッシュ、および/またはシリカフュームを含み得る。上述のように、本開示の骨材は、1つ以上の添加剤を含んでもよい。ベントナイトおよびシリカフューム以外に、他の添加剤が含まれていてもよい。他の添加剤のいくつかの例は、上に記載されている。一例では、2重量%~5重量%のベントナイトをマイクロファインGGBS-OPC混合物に添加すると、IBAのカプセル化の肯定的な結果が実証され、重量%はGGBSおよびOPCに基づく。約50~60%のGGBS含有量はまた、カプセル化のより良好な結果を示し得て、重量%はGGBSおよびOPCに基づく。
【0037】
より高い粘度を有するバインダー溶液は、IBAに対するバインダー溶液コートの改善された接着性のために、より良好なカプセル化を示した。しかしながら、バインダー溶液は粘度が高すぎると、GGBS-OPC混合物をIBA上に広げることが困難になる場合がある。
【0038】
上記のような骨材は、様々な実施形態においてコア-シェル骨材であり得る。シェルは、水硬性セメントおよび粉砕粒状高炉スラグを含み得る。シェルは、ケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体を含んでもよい。水硬性セメントおよび粉砕粒状高炉スラグは、ケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体を含み得る。セメントは、ケイ酸カルシウム水和物または誘導体が形成されるように、粉砕粒状高炉スラグの存在下で水和され得る。セメントは、粉砕粒状高炉スラグの存在下でケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体に完全にまたは実質的に変換され得る。言い換えれば、水硬性セメント、粉砕粒状高炉スラグ、および/またはケイ酸カルシウム水和物は、コアをカプセル化するシェルを形成し得る。コアは、主灰を含んでもよい。水硬性セメントおよび粉砕粒状高炉スラグは、主灰をカプセル化するケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体を含み得る。水硬性セメントは、マイクロファイン普通ポルトランドセメントであってもよく、またはマイクロファイン普通ポルトランドセメントを含んでもよい。粉砕粒状高炉スラグは、マイクロファイン粉砕粒状高炉スラグであってもよく、またはマイクロファイン粉砕粒状高炉スラグを含んでもよい。
【0039】
本開示はまた、骨材を製造する方法に関する。第1の態様の様々な実施形態における本発明の骨材について記載される実施形態および利点は、本明細書で後に記載される本発明の方法についても同様に有効であり得、逆もまた同様である。様々な実施形態および利点が既に上述されており、本明細書で例示されている場合、それらは簡潔にするために繰り返されるべきではない。
【0040】
骨材を製造する方法は、水の存在下でセメントおよび粉砕粒状高炉スラグを主灰と混合してプレコート主灰を形成することと、プレコート主灰を造粒することとを含み得る。本発明の方法の2つの非限定的な実施形態を
図5および
図6に示す。
【0041】
様々な実施形態において、セメントおよび粉砕粒状高炉スラグを主灰と混合する前に、主灰は、原料主灰の元のサイズを縮小するための粉砕等のサイズ縮小工程を受けてもよい。
【0042】
特定の非限定的な実施形態において、方法は、セメントおよび粉砕粒状高炉スラグを主灰と混合する前に、主灰を水と接触させることをさらに含み得る(そのような非限定的な実施形態は、
図5を通して示されている)。主灰を水と接触させることは、主灰に水を噴霧することを含んでもよい。
【0043】
特定の非限定的な実施形態において、プレコート主灰の造粒は、少なくとも3分間の持続時間にわたって行われてもよい。特定の非限定的な実施形態において、プレコート主灰を造粒することは、少なくとも3分間の持続時間にわたって実施されてもよく、プレコート主灰を造粒することは、少なくとも100回転/分(rpm)の速度で回転する造粒機ドラム内でプレコート主灰を造粒することを含んでもよい。
【0044】
特定の非限定的な実施形態において、方法は、セメントおよび粉砕粒状高炉スラグを主灰と混合する前に、セメントおよび粉砕粒状高炉スラグを水と混合してスラリーを形成することをさらに含んでもよい(そのような実施形態は、
図6を介して示されている)。このような非限定的な例では、プレコート主灰を造粒することは、プレコート主灰にさらなるセメントを添加することを含み得る。このような非限定的な例では、方法は、プレコート主灰を造粒した後に、プレコート主灰をペレット化することをさらに含んでもよい。プレコート主灰のペレット化は、ディスクペレタイザー内で行われてもよい。
【0045】
特定の非限定的な実施形態において、普通ポルトランドセメント(および/またはマイクロファイン普通ポルトランドセメント)および粉砕粒状高炉スラグ(および/またはマイクロファイン粉砕粒状高炉スラグ)は、以下の機構:(i)マイクロファインスラグの使用は、拡散バリアとして作用する低透過性のグラウトを硬化させることができる、(ii)マイクロファインスラグの使用は、C-S-Hがその結晶構造中へのイオンの吸着を可能にする高い表面積を有するので、C-S-H(ケイ酸カルシウム水和物)を増加させることができる、および(iii)スラグと比べてより早い硬化時間を介して重金属の固定化を補助するために、液体バインダー(例えば、混合の開始時または混合中に)の形態であり得る。
【0046】
様々な実施形態において、方法は、骨材を硬化させることをさらに含み得る。骨材を硬化させることは、骨材を湿度チャンバ内で熱処理すること、および骨材を水中でコンディショニングすることを含んでもよい。
【0047】
様々な実施形態において、骨材を硬化させることは、骨材を湿度チャンバ内で蒸気処理することをさらに含み得る。
【0048】
上述のように、方法は、骨材を硬化させることを含んでもよい。骨材を硬化させることは、湿度チャンバ内で骨材を熱処理すること、および骨材を蒸気硬化させることとを含んでもよい。チャンバ内の骨材の熱処理および蒸気硬化は、骨材中のバインダー(例えば、GGBSおよびOPC)を強化するのに役立ち、すなわち、骨材のシェルはより凝集性になる。シェルがより凝集性になると、より緊密に充填され、機械的強度を得て、主灰をシェル内に閉じ込める(浸出を防止する)ことができる。
【0049】
熱処理は、骨材を湿度チャンバ内で加熱することを含んでもよい。湿度チャンバ内の湿度は、少なくとも85%、90%等であってもよい。熱処理は、少なくとも12時間、24時間等にわたって実施することができる。熱処理はまた、水中で骨材を調整する持続時間を28日から14日以下に短縮するのに役立つ。
【0050】
蒸気硬化は、大気圧下で蒸気を蒸気硬化チャンバに通すことを含んでもよい。蒸気硬化は、少なくとも1時間実施することができる。蒸気硬化はまた、水中で骨材を調整する持続時間を28日間から7日間以下に短縮するのに役立つ。
【0051】
上記の工程に従って、処理された骨材は、硬化プロセスの最終工程として水を含む水浴に配置されてもよい。骨材を水中に少なくとも3日間置いてもよい。
【0052】
1日、3日間、7日間および28日間、バインダーコートが硬化するのに十分な時間を与えてもよい。加速硬化は、被覆IBAを40℃の温度の水浴に2日間置くことによって依拠することができる。
【0053】
要約すると、本発明の骨材および方法は、上記のようなカプセル化を含む。普通ポルトランドセメントおよび粉砕粒状高炉スラグが市販されている場合があるが、これは、マイクロファイン普通ポルトランドセメントおよびマイクロファイン粉砕粒状高炉スラグには当てはまらない。本開示の様々な非限定的な実施形態において、マイクロファインOPCおよびマイクロファインGGBSが使用される場合、本発明の骨材を形成するために、マイクロファイン粉砕粒状高炉スラグおよびマイクロファイン普通ポルトランドセメントが製造される。出発原材料の十分な利用可能性は、マイクロファイン普通ポルトランドセメントおよびマイクロファイン粉砕粒状高炉スラグ、したがって本発明の骨材および方法の生産を経済的に実行可能にする。本発明の粉末コーティング混合物(例えば、GGBS-OPC)および造粒プロセスと組み合わせて主灰をカプセル化すると、本発明の骨材および方法は、厳しい浸出要件を有利に満たす。ここで、主灰をカプセル化するための普通ポルトランドセメントと粉砕粒状高炉スラグとの組み合わせは、カプセル化されたIBAの望ましくない凝集をもたらしてコンクリートまたは骨材のないスラグを形成することはない。比較すると、従来のカプセル化方法は、従来の材料を使用して本明細書で達成されるサイズおよび利点の骨材を開発しない傾向がある。所望のカプセル化結果は、本発明の粉末コーティング混合物(例えば、GGBS-OPC)および造粒プロセス/方法論を利用することによって達成される。
【0054】
「実質的に」という用語は、複合材の少なくとも70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%、99.5重量%、99.9重量%等の量で存在する構成要素を指す場合がある。必要に応じて、「実質的に」という語は、本開示の定義から省略されてもよい。
【0055】
様々な実施形態の文脈において、特徴または要素に関して使用される冠詞「a」、「an」および「the」は、特徴または要素のうちの1つ以上への言及を含む。
【0056】
様々な実施形態の文脈において、数値に適用される「約」または「およそ」という用語は、正確な値および合理的な分散を包含する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0058】
別段の指定がない限り、「を含むこと」および「含む」という用語、およびそれらの文法的変形は、列挙された要素を含むが、追加の列挙されていない要素の包含も可能にするように、「開放」または「包括的」言語を表すことを意図している。
【実施例】
【0059】
実施例
本開示は、骨材、その製造方法および使用に関する。
【0060】
本発明の骨材は、焼却主灰(IBA)等の主灰を含む。主灰は、化学的に処理する場合があり、または化学的に処理しない場合もある。本発明の骨材を製造する方法は、骨材を形成するための主灰の直接的な処理を含み得、有利には、主灰は、主灰の使用前に化学的に処理される必要はない。
【0061】
本発明の方法は、英国廃棄物埋立て処分協会(British Standard Institute for disposal waste to landfill)、例えばBS EN12457-1:2002(廃棄物浸出の特性評価。粒状廃棄物材料およびスラッジの浸出のための適合性試験。固体含有率が高く、粒径が4mm未満の材料(サイズ縮小なしまたはサイズ縮小あり)については、2L/kgの液体対固体比での1段階バッチ試験、英国が採用した欧州規格による規格)の要件を満たすことができる。本発明の方法から形成された本発明の骨材は、本発明の方法がそのような基準を満たすならば、同じ要件を満たすことになる。
【0062】
さらに有利には、本発明の骨材および方法は、容易に入手可能な材料の使用に基づいているため、経済的に実行可能である。これは、本発明の骨材および方法の信頼性を複雑にする未試験材料を含むリスクを低減する。
【0063】
本発明の骨材、その製造方法および使用は、非限定的な例として、以下に記載されるように、さらに詳細に記載される。
【0064】
実施例1:骨材および方法の序論
【0065】
本開示の方法は、少なくとも骨材、例えばコンクリート骨材として使用することができる被覆焼却主灰を製造するために、粉砕粒状高炉スラグと普通ポルトランドセメント(本明細書では「粉砕粒状高炉スラグ-普通ポルトランドセメント(GGBS-OPC)」とも呼ばれる)の混合物を含む造粒プロセス(すなわち、造粒工程を含む)に基づいて開発された。本発明の方法は焼却主灰のコーティングを含むことから、本発明の方法は、本明細書では「コーティング方法」と呼ばれる。本発明の方法および骨材は、都市廃棄物(MWS:municipal solid waste)焼却発電所、石炭発電所、バイオマス発電所、および/または任意の他の発電所等の発電所によって生成された任意の主灰で実行可能である。
【0066】
少なくとも13の配合物を試験した。試験される配合物は、GGBS-OPC粉末(本明細書では粉末バインダーとも呼ばれる)を含み、これは、OPCおよびGGBSの混合物を含むことができ、OPCおよびGGBSは、それぞれ40重量パーセント~100重量パーセント(重量%)および10~50重量%(またはさらに10~60重量%)の範囲であり得る。すなわち、試験した試料の1つでは、GGBSを使用せず、すなわち粉末には100重量%のOPCのみを使用した(
図3Aおよび
図4のCS1を参照)。重量%は、GGBSとOPCの混合物に基づく。粉末は、焼却主灰をカプセル化するコーティングを形成し、IBA骨材を形成する。焼却主灰をカプセル化するコーティングは、カプセル化された焼却主灰からの重金属および毒性物質の浸出を防止する。
【0067】
OPCおよびGGBSは、それぞれマイクロファインOPC(MFOPC:microfine OPC)およびマイクロファインGGBSであり得るか、またはそれらを含み得る。すなわち、マイクロファインOPCおよびマイクロファインGGBSは、それぞれ40%~100重量%および10~50重量%(またはさらには10~60重量%)の範囲であり得、重量%はGGBSおよびOPC混合物に基づく。
【0068】
試験された配合物の中で、本明細書で「OPC:MFOPC:GGBS」(簡潔さのためにCS11と呼ばれる)と呼ばれる、普通ポルトランドセメント、マイクロファイン普通ポルトランドセメント、および粉砕粒状高炉を含む1つの配合物が(他の配合物も使用可能であるが)最も望ましいことが観察された。これは、CS11が最も少ない浸出、すなわち原料IBAと比較して検出された重金属および毒性物質の量が最も少ないことを示したためである。CS11配合物は、塩化物浸出を有意に低減する、すなわち原料IBAの9800mg/kgから27mg/kgにすることができることが発見された。この達成は、従来のコーティング方法では達成できないようである。試験した配合物から、粉末コーティング(マイクロファインOPCおよびGGBSを使用しても、OPCおよびGGBSを含む)は、IBA中に存在する有毒な重金属を効果的に閉じ込めて固定化することができる。より正確には、造粒を含む本発明の方法を使用してコア-シェル骨材が製造される。コア-シェル骨材、すなわち本発明の骨材の各々は、IBAをコアにカプセル化する粉末コーティング(OPC、GGBSおよび/またはそれらのマイクロファインバージョン)から形成されたシェルを有する。また、GGBS-OPC被覆IBA骨材は、生コンクリートを製造する際の細骨材の適切な代替品としても利用し得ることが観察された。試験された全ての配合物に基づいて、得られた骨材は全て、被覆IBAから首尾よく構成され、GGBS-OPCの配合物は、IBAをコーティングし、IBAからの毒性重金属の浸出を防止する粉末バインダーとして作用する。したがって、GGBS-OPC被覆IBA骨材は、環境上の懸念なしにコンクリートマトリックスに組み込むための代替骨材として使用することができる。
【0069】
本開示に記載の造粒工程を使用して、GGBS-OPC被覆IBAの製造をスケールアップし、商業化のための工業規模の操作に複製することができる。配合されたGGBS-OPC粉末バインダーは、堅牢であり(すなわち、シェル、したがって骨材に、より長い貯蔵寿命および耐久性を付与する)、方法が簡単であり、IBAの化学処理がない場合、得られた骨材製品および原材料の使用から最終製品までの製造プロセス全体のコスト削減を達成するようにさらに構成することができる。
【0070】
本開示の1つ以上の例は、造粒を伴う粉体塗装方法を示す。造粒の前に、約0.8mm~約4mm、約2mm~約4mm等の範囲のサイズのGGBS-OPC被覆IBA粒子(すなわち、本発明の骨材)の製造を助けるために粉砕能力も開発された。GGBS-OPC被覆IBA粒子は、生コンクリート中の細骨材代替品として使用することができる。造粒中、IBA粒子は、GGBS-OPC粉末(IBAのバインダーとして作用することができる)と共に濡らすことができる。
【0071】
より詳細には、造粒による粉体塗装法を開発した。造粒前に、約0.075mm~約6.3mmの範囲の平均粒径を有するIBAを製造するための粉砕能力(すなわち、粉砕工程)を開発した。一例では、本発明の方法で使用したIBAの平均サイズ分率は約1.12mm~2mmであった。造粒中、IBA粒子へのGGBS-OPC粉末バインダーのコーティングにより、IBA粒子の粒径が増加した。造粒後、OPC-GGBS被覆IBA骨材の平均粒径は、約0.8mm~約4mm、約2mm~約4mmである。この範囲のGGBS-OPC被覆IBAサイズの選択は、国際的な浸出試験要件(すなわち、EN12457-1:2002、粒状廃棄物およびスラッジのコンプライアンス試験浸出。高固形分および4mm未満の粒径を有する材料(サイズ縮小なしまたはサイズ縮小あり)についての2L/kgの液体対固体比での1段階バッチ試験)を満たすのに役立つ。このように、得られたGGBS-OPC被覆IBA粒子は、生コンクリート産業における細骨材代替品として使用される非常に大きな可能性を有する。得られた骨材は、25mm、20mm等の平均直径を有し得る。得られる骨材は、0.8mm以上の平均直径を有し得る。造粒は、IBA粒子上に(例えば、IBA粒子の各々において)コーティングの層を形成することを含む。コーティング層は、その中に重金属および任意の毒性物質を閉じ込める(すなわち、得られた骨材を過酷な環境で使用しても浸出が防止される)。コーティングの層は、1つ以上のIBA粒子をカプセル化するシェルと見なすことができる。造粒は、非限定的な例として、凝集、ペレット化、ブリケット化、噴霧乾燥凝集のいずれか1つを含み得る。噴霧乾燥凝集では、スラリーを、粒子を含むカラムに噴霧してもよい。スラリーは、コーティングの層を形成するための材料(例えば、OPC、GGBSおよび/またはそれらのマイクロファインバージョン)を含んでもよく、粒子は、IBA粒子を含んでもよい。造粒は、ドラム造粒機、転動(パン)造粒機、または混合造粒機を使用して行ってもよい。混合造粒機は、ドラムと転動造粒機との組み合わせを含む。
【0072】
骨材のコア内への重金属の閉じ込めおよび/または固定化は、以下のうちの1つ以上によって達成することができる:(1)重金属の浸出を完全にまたは実質的に低減する、高アルカリ度のバインダー混合物(すなわち、GGBS-OPC混合物)、(2)ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)ゲルは、重金属イオンの吸着を可能にする高い表面積を有する(スラグブレンドセメント混合物は、収着能力を増加させるより高い割合のC-S-Hを生成する)、および/または(3)硬化したシェルの低い透過性は、重金属浸出に対する拡散障壁として作用する。
【0073】
上述のC-S-Hゲルは、GGBS-OPCコーティングの形成中に、例えばスラグ(GGBS)をセメント(例えば、OPC)とブレンドした場合に生じ得る。セメント(例えば、OPC)をGGBSの存在下で水和させて、ケイ酸カルシウム水和物またはその誘導体をシェル(すなわち、カプセル化層)内に形成させる。カプセル化層を形成する初期段階で、ケイ酸カルシウム水和物(またはその誘導体)はゲル形態で存在し得る。言い換えれば、IBAの周囲にカプセル化層を形成する初期段階でシェル中にC-S-Hゲルが形成され得る。しかしながら、C-S-Hゲルは、C-S-Hゲルが硬化するにつれて固体へと硬化する。したがって、得られた骨材において、C-S-Hゲルは固体のケイ酸カルシウム水和物層を形成する。ケイ酸カルシウム水和物層は、シェル中に存在することができる。特定の非限定的な例では、ケイ酸カルシウム水和物層は、シェル周囲にIBAコアから離れて形成することができる。そのような非限定的な例では、C-S-Hは、IBAをコーティングするGGBS-OPCに加えて、カプセル化の追加のコーティングとして機能する。そのような非限定的な例では、C-S-H層は、GGBS-OPC層の周辺を形成し得る。また、GGBS-OPCは、特定の非限定的な例ではC-S-Hに完全に変換することができ、次いでC-S-HはIBAコアの唯一のカプセル化層として機能する。
【0074】
GGBS-OPCおよびC-S-Hに加えて、骨材がコンクリート骨材として利用されるときに骨材が組み込まれるコンクリートマトリックスは、コンクリート用途で使用するための重金属の浸出を妨げるおよび/または防止するための「二重防御」カプセル化をもたらす。言い換えると、GGBS-OPC被覆IBAが一般的なコンクリート製造において骨材代替品として使用される場合、コンクリートはC-S-Hおよび/またはGGBS-OPC被覆IBAの外部に別の保護層を形成することができ、これは本明細書では「二重防御」と呼ばれ、すなわち、第1の防御はIBA上に被覆されたC-S-Hおよび/またはGGBS-OPCのカプセル化層を指し、第2の防御は骨材が組み込まれたコンクリートマトリックスを指す。上記から理解され得るように、造粒は、IBAをGGBS-OPCにカプセル化するために容易であり、したがって、費用効率が高く商業的価値のある造粒に容易にスケールアップされる。
【0075】
実施例2:従来の方法に対する本発明の骨材および方法の利点
【0076】
本発明の方法は、本発明のIBA骨材のより高い比重およびより強い圧縮強度をもたらす。従来、液体バインダーとしてのアルカリ活性化材料は、IBA骨材の造粒プロセスに使用される場合がある。しかしながら、そのような従来の手法は、操作コストが高いこと、化学物質の使用、および重金属の固定化に効果がないこと等の特定の制限を被る傾向がある。対照的に、本発明の方法は、GGBSをOPCとブレンドして、前述の造粒によってIBA骨材を製造するためのGGBS-OPC粉末バインダーを得ることを含む。本発明の方法は、IBA等の廃棄物をコンクリート材料に有用な骨材等の資源に変換することから、本発明の骨材は、本明細書では「廃棄物資源」骨材と呼ばれることがある。GGBSは、廃棄物であるIBAの他に、廃棄物に由来するものでもあった。本発明の方法では、GGBSは、粒状高炉スラグ(高炉での製鋼所の銑鉄製造の工業副生成物であって、銑鉄は粗鉄を指す)を粉砕することによって社内で製造した。副生成物であるため、粒状の高炉スラグは望ましくない傾向があり、したがって容易に入手可能になる。このように、粒状化された高炉スラグは豊富であり、GGBSは豊富に入手可能であり、(OPCと比較して)費用対効果の高い材料であることが分かる。
【0077】
特定の非限定的な例では、高剪断造粒プロセスは、粘性液体の拡散、粘性材料の処理、および低剪断造粒プロセスよりもコンパクトで球状の顆粒の生成を可能にし得るので、好ましい場合がある。一般に、造粒は、例えば造粒ドラムへのプレコートIBAの添加によって開始することができる。造粒中、IBA粒子を水で湿らせ、GGBS-OPC粉末バインダーと混合し、続いて粒子拡大プロセスの一部として衝突させ、互いに粘着させる。また、GGBS-OPC粉末バインダーの水和は、IBA粒子の表面上にケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)ゲル(またはその誘導体)の形成をもたらす液体バインダーを生じる。C-S-Hゲルが硬くなる(硬化する)と、IBA粒子がC-S-Hマトリックスの結晶構造に組み込まれ、物理的および化学的特性が改善された剛性の塊が得られる。固体に硬化するGGBSおよび水の存在下でOPCの水和から開始して形成されたC-S-Hゲル層は、重金属の潜在的な浸出に対する保護の第1のまたは主要なカプセル化層として機能することができると予想される。そこから、得られた被覆IBAは、コンクリート中の骨材として使用され得る。言い換えれば、骨材としての被覆IBAはコンクリートのマトリックスにカプセル化され、コンクリートはIBAをカプセル化する第2の層として作用する。このように、カプセル化プロセス中に生成されたC-S-Hマトリックスを介して重金属を固定化する本発明の方法の独特の利点のために、およびカプセル化された骨材をコンクリートマトリックス内の骨材として最終的に使用するという利点を考慮すると、本発明の骨材および方法は、コンクリート中の不活性粗骨材または細骨材として固形廃棄物IBAを利用する機会を提供する。言い換えれば、コンクリートマトリックスは、毒性重金属の潜在的な浸出を緩和するための防御の二次カプセル化層として作用する。C-S-Hマトリックス(および/またはGGBS-OPCでさえも)から生じ、被覆IBA骨材を生コンクリート内に結合させるこの2倍カプセル化は、得られたIBA骨材に、コンクリートからの重金属および有毒な内容物の浸出を防止および/または緩和する「二重防御」を付与する。
【0078】
実施例3:本発明の骨材および方法の技術的考察
【0079】
本発明の骨材および方法の概要は、廃棄物資源IBA骨材が、GGBSをOPCとブレンドして、造粒によってIBAをカプセル化するためのGGBS-OPC粉末バインダーを形成することから製造されるということである。次いで、形成されたコアシェル顆粒を、GGBS-OPC被覆IBAグリーン骨材として使用するために調査した。
【0080】
特に、本発明の骨材および方法は、プロセス中にゲル相でケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)を形成し、次いで得られた骨材中で結晶相に変換するGGBS-OPCの水和を含み得る。さらに、GGBSは、OPCの細孔構造を減少させ(すなわち、多孔性を低下させる)、シェルからの有毒な金属拡散を減少させることができる。したがって、GGBS-OPC粉末バインダーは、造粒中にIBA粒子の表面上のC-S-Hゲル(したがって、固体C-S-Hカプセル化層)の形成を促進する。固定化はまた、C-S-Hを形成することによるイオンの収着、不溶性水酸化物の沈殿、およびGGBS-OPCマトリックス中の結晶構成要素への格子内挿入に起因し得る(例えば、
図1を参照されたい)。
【0081】
造粒は、(1)IBA粒子に水を噴霧する工程、(2)GGBS-OPC粉末バインダーの配合物でIBAをプレコーティングする工程、(3)プレコートIBAを造粒機ドラムに供給する工程、(4)造粒を通常の速度で一定分間(例えば、少なくとも100rpmの速度で造粒機回転ドラム内で少なくとも3分間の造粒)開始する工程、(5)IBAと融合された全ての加重GGBS-OPC粉末バインダーが存在するまで、顆粒化の間に水を噴霧し、GGBS-OPC粉末バインダーを顆粒IBAに添加する工程を繰り返す工程、(6)GGBS-OPC被覆IBAを、例えば少なくとも25℃で最低12時間(例えば24時間)少なくとも85%の湿度の環境を提供する湿度チャンバ内で乾燥させる工程、(7)GGBS-OPCコーティングされたIBAを14日間硬化させ続ける工程、(8)生成されたGGBS-OPC被覆IBA骨材をふるい分けし、等級分けする工程を用いて、行われ得る。
【0082】
次いで、生成された緑色IBA骨材を、10L/kgの液体対固体比での一段階バッチ試験であるBS EN12457-1に従って浸出試験に供した。得られた浸出液のpHを、pHメーターを用いて測定した。イオンクロマトグラフ(IC:ionic chromatography)を用いて浸出溶液中のアニオンを同定および決定し、誘導結合プラズマ(ICP:inductively coupled plasma)分光計によって浸出液中のカチオンを同定および決定した。全有機炭素(TOC:total organic carbon)分析器を使用して、浸出液の全有機炭素含有量を決定した。浸出液の全溶解固形分(TDS:total dissolved solids)および溶解有機炭素(DOC:dissolved organic carbon)も測定した。
【0083】
図3A、
図3Bおよび
図4は、バッチ浸出試験結果EN12457-1:2002、および様々な配合物(例えば、
図3Aおよび
図3Bを参照)を用いたGGBS-OPC被覆IBAの揮発性有機組成物浸出試験を示す。(Cr)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、臭化物、塩化物、硫酸塩(SO
4)、アンモニア、全窒素および全有機炭素(TOC:total organic carbon)として示されるクロム(VI)の浸出は、原料IBA試料(本明細書ではR1と示される)の限界値を大幅に超える。さらに、フェノールおよび鉱油(C10~C36)の浸出も検出された。重金属は、浸出および汚染の可能性が高いため、揮発性有機化合物よりも多くの懸念を引き起こす傾向がある。したがって、重金属(
図3)は、この研究においてさらに注目される。結果は、GGBS-OPC被覆IBA(CS0およびCS2~CS12)のCr、Mo、NiおよびZn等の重金属が、浸出液中で検出されないかまたは限界値未満であるため、GGBS-OPCのマトリックス中に首尾よく固定化されることを示した。さらに、Cuの重金属は、例えば、試料CS9、CS10、CS11およびCS14では、原料IBAと比較して浸出の限界値以下に大幅に低減された。Pbの浸出は、0.02mg/kgの限界値と比較して、それぞれ0.27mg/kg、0.36mg/kg、0.028mg/kgおよび0.034mg/kgである試料CS1、CS2、CS3およびS12を除いて、全てのGGBS-OPC被覆IBA試料について検出されない。これは、ケイ酸カルシウム水和物またはGGBS-OPCマトリックスに完全にカプセル化されていないPbに起因し得る。エトリンガイトは、GGBS-OPC中のCaを置き換えることによってケイ酸カルシウムマトリックス中に強くカプセル化されるPbのような重金属との強い固定を有することが見出されている。しかしながら、OPC(CS1)またはGGBS-OPC(CS2およびCS3)からのエトリンガイトは、Pbの浸出のために大幅には改善されない。Cr上の酸化還元電位、Cuの場合は有機配位子、ならびにPb上の鉱物沈殿および収着速度等の金属特異的因子は、それらの移動度に著しく影響を及ぼし得る。したがって、Cr、CuおよびPbの金属の1つ以上の浸出を検出し得る。GGBS-OPC被覆IBAは、浸出試験で検出されたAlを示した。しかしながら、Alの浸出は、原料IBA中にAlが検出されなかったことから、IBAからではない。したがって、検出されたAlの浸出は、本文脈における浸出の懸念でも関連指標でもない。むしろ、Alは、化学組成中にAl
2O
3を含有するGGBSおよびOPCからのものであってもよい。
【0084】
結果から、元の原料IBAと比較して、ナトリウム(Na)、塩化物、臭化物、硫酸塩、およびアンモニアの浸出は、それぞれ約20倍、250倍、300倍、70倍、および7倍以上減少した。さらに、全てのGGBS-OPC被覆IBA骨材試料について、Na、SO4およびアンモニアの浸出は許容レベルの限界値未満であった。GGBS-OPC粉末バインダーを使用してIBAをコーティングする可能性は、観察可能なほど有利である。GGBS-OPCマトリックスの効率は、IBAから浸出するNa、SO4およびアンモニアを固定化できることが実証されている。試料CS9、CS10、およびCS11は、検出された塩化物の限界値未満(40mg/kg未満)に基づいて、全てのGGBS-OPC被覆IBA骨材試料の中で最も望ましい結果を示した。この結果から、GGBS-OPCマトリックスは、IBAからの塩化物浸出の低減に顕著に成功したことが明らかである。バナジウムおよび臭化物はCS9およびCS11で検出されたが、それらは限界値および機器の検出限界に非常に近いため、値は無視できる。マイクロファイン普通ポルトランドセメント(MFOPC:microfine ordinary Portland Cement)は、普通ポルトランドセメント(OPC:Ordinary Portland Cement)、例えば約331m2/kg(±5%)と比較して、高い比表面積、例えば約800m2/kg(±5%)を有する。この知見は、高い比表面積が、毒性金属を固定化し、毒性金属がIBAから浸出するのを防止するその有効性のために捕捉有効性を高めた可能性が高いことを示した。これを実証するために、試料CS10およびCS11を配合したが、これは、世界的な課題である、コンクリートで使用するための細骨材の部分的な代替品として原材料としてのIBAを有益にする有望な機会に加えて、IBAを最大限に利用することができるという利点を示した。廃棄物から細骨材代替品に変換して製造コストの節約(例えば、従来の方法で必要とされる水の高使用および高エネルギーコストを回避する)を得ることにより、現在の骨材および方法を使用する国が大きな環境上の利益を得ることが可能になる。
【0085】
実施例4:商業的用途および潜在的用途
【0086】
本開示の骨材は、上述のような廃棄物、特にIBAに由来するため、本明細書では「グリーン」IBA骨材と呼ぶ場合がある。
【0087】
骨材は、配合されたGGBS-OPC粉末バインダーをIBA上に造粒によってカプセル化することによって製造される。本発明の骨材および方法は、スケールアップすることができ、商業化のために経済的に実行可能である。本発明の骨材および方法により、固形廃棄物IBAを、生コンクリートおよびプレキャストコンクリートに適用するためのグリーン骨材として展開することができる。建設用骨材の世界的な消費量は、2016年の433億メートルトンから2024年末までに629億メートルトンに達する可能性がある。したがって、建築用骨材の価値は、2016~2024年にかけて32~38億トンであると推定される。骨材に対する高い需要は、主に経済成長と建設活動の増加によるものである。本発明の骨材および方法は、年間約500,000トンから600,000トンのIBAであるシンガポールの年間廃棄物処理取扱量を大幅に削減するのに役立ち、セマカウ埋立て処分場の寿命を大幅に延ばす。
【0088】
本開示は、特定の実施形態を参照して特に示され説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更がなされ得ることが当業者によって理解されるべきである。したがって、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【国際調査報告】