(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】複数の積層造形装置に原料粉末を分配するシステムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
B22F 12/55 20210101AFI20240806BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240806BHJP
B22F 10/322 20210101ALI20240806BHJP
B22F 12/70 20210101ALI20240806BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240806BHJP
B29C 64/329 20170101ALI20240806BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240806BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240806BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20240806BHJP
【FI】
B22F12/55
B22F10/28
B22F10/322
B22F12/70
B29C64/153
B29C64/329
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505622
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2022065976
(87)【国際公開番号】W WO2023011784
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021208613.6
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523460981
【氏名又は名称】ニコン・エスエルエム・ソルーションズ・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Nikon SLM Solutions AG
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】コプチンスキー,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL32
4F213WL43
4F213WL52
4F213WL74
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
本開示は、原料粉末(6)のリザーバ(7)から、積層造形のための複数の少なくとも2つの積層造形装置(3)に、原料粉末を分配するシステム(5)に関し、本システム(5)は、少なくとも1つのガス流駆動装置(11)と、少なくとも1つのガス流駆動装置(11)によって駆動されるガス流によって原料粉末(6)を少なくとも2つの積層造形装置(3)に搬送するための少なくとも2つの搬送ライン(15)と、を備え、以下を特徴とする。本システムは、さらに、少なくとも2つの搬送ライン(15)に原料粉末(6)を供給するための供給マニホールド(30)を備え、該供給マニホールド(30)は、少なくとも2つの遮断弁(37)によって制御されて、原料粉末(6)を少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つに選択的に導くように構成および配置され、少なくとも2つの遮断弁(37)の各々が、該供給マニホールド(30)に配置され、少なくとも2つの搬送ライン(15)に原料粉末(6)を選択的に供給するために選択的に開閉するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉末(6)のリザーバ(7)から積層造形のための複数の少なくとも2つの積層造形装置(3)に原料粉末を分配するためのシステム(5)であって、少なくとも1つのガス流駆動装置(11)と、前記少なくとも1つのガス流駆動装置(11)によって駆動されるガス流によって前記少なくとも2つの積層造形装置(3)に前記原料粉末(6)を搬送するための少なくとも2つの搬送ライン(15)とを備え、
前記システムは、
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)に前記原料粉末(6)を供給するための供給マニホールド(30)をさらに備え、
前記供給マニホールド(30)は、
少なくとも2つの遮断弁(37)によって制御され、前記原料粉末(6)を、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つに選択的に導くように構成および配置され、
前記少なくとも2つの遮断弁(37)の各々は、
前記供給マニホールド(30)に配置され、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)に前記原料粉末(6)を選択的に供給するために選択的に開閉するように構成される、
ことを特徴とする、システム(5)。
【請求項2】
前記供給マニホールド(30)が、
前記リザーバ(7)から前記原料粉末(5)を受容するためのマニホールド入口(32)と、
少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)へ分岐するパイプ分岐部(33)と、
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つとそれぞれが接続する少なくとも2つのマニホールド出口(38)と、
を備え、
前記少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)の各々が、
前記マニホールド入口(32)を前記少なくとも2つのマニホールド出口(38)の1つに接続し、
前記少なくとも2つの遮断弁(37)の各々が、
前記少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)の1つに関連付けて配置され、関連付けられた前記マニホールド分岐部(35)を選択的に開閉するように構成されている、
請求項1に記載のシステム(5)。
【請求項3】
前記パイプ分岐部(33)が、前記少なくとも2つのマニホールド出口(38)よりも高い高所に位置するように構成されて、前記原料粉末(6)が、主に重力によって前記少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)を通って搬送される、請求項2に記載のシステム(5)。
【請求項4】
前記供給マニホールド(30)が、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)の各々の部分の上方に配置されるように構成され、各マニホールド出口(38)が、実質的に上方から前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つの前記部分に通じている、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項5】
前記供給マニホールド(30)が、前記原料粉末(6)を、前記搬送ライン(15)に沿った搬送方向(y)に平行な運動量成分を付けて、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)に排出するように形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項6】
前記供給マニホールド(30)は、少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)に分岐するパイプ分岐部(33)を備え、
前記少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)の各々は、マニホールド入口(32)の中心垂直軸に対して、好ましくは20~70度傾斜している、傾斜部(45)を備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項7】
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)の各々の部分が、前記供給マニホールド(30)の下方で実質的に平行に配置されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項8】
前記少なくとも2つの遮断弁(37)の各々がバタフライ弁である、請求項1から7のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項9】
前記少なくとも2つの遮断弁(37)の各々が、前記供給マニホールド(30)の少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)のうちの1つの傾斜部(45)に配置され、前記マニホールド分岐部(35)の前記傾斜部(45)の長手方向軸(D)に実質的に垂直なアクチュエータ軸(C)の周りで作動可能な弁本体(51)を備え、
前記アクチュエータ軸(C)、および、前記マニホールド分岐部(35)の前記傾斜部(45)の前記長手方向軸(D)は、仮想垂直面(zD)に対して傾斜している仮想平面(CD)に広がっている、
請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項10】
投与ユニット(28)をさらに備え、
前記投与ユニット(28)が、前記原料粉末(6)の制御された流れを、前記リザーバ(7)の出口からマニホールド入口(32)まで搬送するための、搬送機構を備える、
請求項1から9のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項11】
前記投与ユニット(28)が、スクリューコンベヤを備え、
前記スクリューコンベヤは、前記原料粉末(6)を前記リザーバ(7)の前記出口における第1の位置から前記マニホールド入口(32)における第2の位置まで搬送するように配置され構成されており、
前記第2の位置は前記第1の位置よりも高い高所にあり、および/または前記第2の位置は前記第1の位置から水平方向に離れている、
請求項13に記載のシステム(5)。
【請求項12】
前記少なくとも2つの遮断弁(37)が、一度に、前記少なくとも2つの遮断弁(37)のうちの1つだけを開くように構成されている、請求項1から11のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項13】
前記少なくとも2つの遮断弁(37)は、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)よりも前記供給マニホールド(30)のパイプ分岐部(33)に近い位置に配置されている、請求項1から12のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項14】
前記供給マニホールド(30)を通る前記原料粉末(6)の落下を促進するために、前記供給マニホールド(30)を揺らすおよび/または振動させるための加振ユニット(39)をさらに備える、請求項1から13のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項15】
前記供給マニホールド(30)が、前記供給マニホールド(30)から、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)へ、および/または前記リザーバ(7)へ向かう振動の伝播を減衰させるための少なくとも1つの振動減衰要素(49)を備えている、請求項1から14のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項16】
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)が、前記供給マニホールド(30)の下流であって、且つ、前記少なくとも2つの積層造形装置(3)の上流に、ガス流調節弁(21)を有さない、請求項1から15のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項17】
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)が、ガス流循環ループ(9)の一部であり、
前記ガス流駆動装置(11)が、前記ガス流循環ループ(9)内を循環するガス流を駆動するように構成されている、請求項1から16のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項18】
少なくとも2つのガス流調節弁(21)をさらに備え、
前記少なくとも2つのガス流調節弁(21)の各々が、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つと関連付けられ、関連付けられた前記搬送ライン(15)内のガス流を選択的に調節し、
前記少なくとも2つのガス流調節弁(21)が、前記少なくとも2つの積層造形装置(3)の下流であって、且つ、前記供給マニホールド(30)の上流に配置される、
請求項1から17のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項19】
三次元ワークピースの並列積層造形のための複数の少なくとも2つの積層造形装置(3)と、
原料粉末のリザーバ(7)から前記少なくとも2つの積層造形装置(3)に原料粉末を分配するための、請求項1から18のいずれか1項に記載のシステムと、
を備える積層造形設備(1)。
【請求項20】
三次元ワークピースの並列積層造形のために、原料粉末のリザーバ(7)から複数の少なくとも2つの積層造形装置(3)に原料粉末(6)を分配するための方法であって、
少なくとも2つの搬送ライン(15)内のガス流を選択的に調節し、
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)の各々を、前記少なくとも2つの積層造形装置(3)のうちの1つに関連付けて、前記ガス流によって、原料粉末(6)を関連付けられた前記積層造形装置(3)に搬送し、
供給マニホールド(30)の少なくとも2つの遮断弁(37)を選択的に開閉し、
各遮断弁(37)を、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つに関連付けて、関連付けられた前記搬送ライン(15)の前記ガス流中に原料粉末を選択的に落下させる、
ことを含む方法。
【請求項21】
前記少なくとも2つの遮断弁(37)のいずれか1つが開かれる前に、前記ガス流を選択的に調節する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ガス流を、少なくとも2つのガス流調節弁(21)によって選択的に調節し、
前記少なくとも2つのガス流調節弁(21)の各々を、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つに関連付けて、関連付けられた前記搬送ライン(15)内の前記ガス流を選択的に調節し、
前記少なくとも2つのガス流調節弁(21)を、前記少なくとも2つの積層造形装置(3)の下流であって、且つ、前記供給マニホールド(30)の上流に配置する、
請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
一度に、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つだけにガス流を流すことができるように、前記ガス流を選択的に調節する、請求項20から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
一度に、前記少なくとも2つの遮断弁(37)のうちの1つだけが開かれ、
この前記遮断弁(37)は、好ましくは、現在ガス流を有する前記搬送ライン(15)に関連付けられる前記遮断弁(37)である、
請求項20から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
関連付けられる前記搬送ライン(15)内の前記ガス流が、実質的に一定になるように調節される、請求項20から24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原料粉末のリザーバから複数の少なくとも2つの積層造形装置に原料粉末を分配するためのシステムおよび方法に関する。特に、本開示は、工業規模での連続生産のための積層造形設備に関し、積層造形設備は、三次元ワークピースの並列積層造形のための複数の積層造形装置を備える。より詳細には、積層造形装置は、金属ワークピースを製造するための積層造形技術として、レーザー粉末床溶融結合法(LPBF:laser powder bed fusion)を適用するように構成されていることが好ましい。
【背景技術】
【0002】
三次元ワークピースの積層造形は、しばしば3Dプリンティングと呼ばれる。積層造形の特定の形態は、レーザー粉末床溶融結合法(LPBF)であり、原料粉末の層を、例えばレーザービームまたは粒子ビームなどの電磁放射線高エネルギービームにさらし、原料粉末の粒子を選択的に焼結および/または溶融させる。三次元ワークピースは、原料粉末の層ごとに順次焼結および/または溶融して製造される。
【0003】
成型のような従来の製造技術に比べ、1つの三次元ワークピースの積層造形は、かなり多くの時間を消費する。そのため、3Dプリンティングの初期には、積層造形はプロトタイピングや少数の個別部品にのみ適用されていた。しかし、積層造形は、他の従来の製造技術では使用できないコンポーネントを設計・製造する可能性を提供するため、工業規模での連続生産に積層造形を使用することが求められている。過去数十年にわたる積層造形の発展により、例えば複数のレーザーを並行して使用することで、1層あたりの生産時間はある程度短縮された。しかし、1層あたりの生産時間の短縮には限界がある。したがって、工業規模での連続生産に積層造形を使用するには、いくつかのコンポーネントを並行して製造する必要がある。例えば、複数の数百または数千の小さなコンポーネントを高密度に配置し、利用可能な生産容積を最大限に活用した三次元ワークピースを形成することができる。しかし、利用可能な生産容積の最大量にも限りがある。積層造形をさらに並列処理に使用するために、積層造形設備は、複数の積層造形装置またはプロセスチャンバーを備えていてもよい。並行して稼働させる積層造形装置の台数は原理的に無制限である。
【0004】
積層造形プロセスごとに原料粉末の供給が必要になる場合があるため、原料粉末の供給に必要なインフラを積層造形装置ごとに個別に提供するのは非効率的である。複数の積層造形装置に原料粉末を供給するための共通のインフラを提供する方が効率的である。例えば、米国特許出願公開第2018/0021855(A1)号は、複数の装置を備える積層造形設備において粉末供給を管理する方法を開示している。米国特許第7,296,599(B2)(A1)号には、粉末供給容器から単一レーザー焼結システムへの空気圧による粉末移送のための方法と装置が記載されており、粉末供給容器は、粉末を供給ラインに圧入するために加圧されている。DE 20 2019 106 061 U1には、単一の積層造形装置用の別の粉末搬送システムが記載されている。
【0005】
既知の粉末搬送システムの課題は、確実なかたちで、規定された流量の原料粉末を積層造形装置に安定的に分配し、原料粉末の研磨性による詰まりや弁摩耗のリスクを低減することである。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本開示の目的は、詰まりや弁摩耗のリスクを低減した積層造形のために、原料粉末のリザーバから複数の少なくとも2つの積層造形装置に、規定された流量の原料粉末をより安定的に分配するためのシステムおよび方法を提供することである。
【0007】
この課題の解決策は、独立請求項の主題によって与えられる。好ましい実施形態は、従属請求項、説明および図から推測できる。
【0008】
本開示の第1の態様によれば、原料粉末のリザーバから、積層造形(additive manufacturing)のための複数の少なくとも2つの積層造形装置(additive manufacturing machines)に原料粉末を分配するためのシステムが提供される。このシステムは、少なくとも1つのガス流駆動装置(gas flow drive)と、少なくとも1つのガス流駆動装置によって駆動されるガス流(a gas flow driven)によって少なくとも2つの積層造形装置に原料粉末を搬送するための少なくとも2つの搬送ラインと、を備える。本システムは、さらに、少なくとも2つの搬送ラインに原料粉末を供給するための供給マニホールド(a feeding manifold)を備えることを特徴とする。ここにおいて、該供給マニホールドは、少なくとも2つの遮断弁によって制御され、原料粉末を少なくとも2つの搬送ラインのうちの1つに選択的に導くように構成および配置される。またここにおいて、少なくとも2つの遮断弁の各々は、該供給マニホールドに配置され、少なくとも2つの搬送ラインに原料粉末を選択的に供給するために選択的に開閉するように構成される。
【0009】
これは、供給マニホールドが搬送ラインの一部ではないことを意味する。これにより、積層造形装置に向かう経路、すなわち供給マニホールドの下流および積層造形装置の上流で、分岐や弁なしにガス流によって搬送ラインを通して原料粉末を搬送することができる。
【0010】
必要に応じて、供給マニホールドは、リザーバから原料粉末を受容するためのマニホールド入口と、少なくとも2つのマニホールド分岐部へと分岐するパイプ分岐部と、少なくとも2つの搬送ラインのうちの1つにそれぞれが接続する少なくとも2つのマニホールド出口とを備えていてもよい。ここにおいて、少なくとも2つのマニホールド分岐部の各々は、マニホールド入口を少なくとも2つのマニホールド出口の1つに接続し、少なくとも2つの遮断弁の各々は、少なくとも2つのマニホールド分岐部の1つに関連付けて(連携して/結合されて)配置され(associated with and arranged at)、関連付けられた(連携された/結合された)マニホールド分岐部を選択的に開閉するように構成される。
【0011】
必要に応じて、パイプ分岐部は、少なくとも2つのマニホールド出口よりも高い高所(a higher altitude)に位置するように構成してもよく、これにより原料粉末は、主に重力によって少なくとも2つのマニホールド分岐部を通って搬送される。したがって、原料粉末は、好ましくは、供給マニホールドを通って搬送ラインのガス流中に落下および/または摺動する。さらに、いずれかの搬送ラインにおけるガス流は、接続されたマニホールド出口から原料粉末を吸引するためのベンチュリ効果を与え得る。ベンチュリ効果を高めるため、接続されたマニホールド出口では、搬送ラインの断面を多少小さくすることができる。別例として、または加えて、少なくとも1つのガス流駆動装置によって駆動される(送られる)ガス流は、原料粉末を、供給マニホールドを通して搬送するためにマニホールド分岐部を通して、一部または全部が導かれていてもよい。
【0012】
必要に応じて、供給マニホールドは、少なくとも2つの搬送ラインの各々の一部分の上方に配置されるように構成されてもよく、各マニホールド出口は、実質的に上方から少なくとも2つの搬送ラインのうちの1つの部分に通じている。これにより、原料粉末は搬送ラインに沿ってガス流に落下することができる。少なくとも2つの搬送ラインの各々の部分は、好ましくは、供給マニホールドの下で実質的に水平に延びる。好ましくは、マニホールド分岐部の少なくとも一部分は、実質的に垂直に延びる。
【0013】
必要に応じて、供給マニホールドは、原料粉末を、搬送ラインに沿った搬送方向に平行な運動量成分を付けて(含んで)、少なくとも2つの搬送ラインに排出するように、形成される。搬送方向は、ここではガス流の方向である。そこで、原料粉末の平均運動量ベクトル(the average momentum vector)が、好ましくはガス流方向に対して垂直ではなく、ガス流に入る前に既にガス流に対して平行な運動量成分を含むように、マニホールド分岐部は、マニホールド出口の底部において曲げられおよび/または傾けられていてもよい。これにより、ガス流がマニホールド出口でマニホールド分岐部に入り込み、原料粉末を上方に押し戻す可能性が低くなる、というさらなる利点がある。
【0014】
必要に応じて、供給マニホールドは、n≧2個のマニホールド分岐部を備えていてもよく、n∈Nである。ここにおいて、該マニホールド分岐部は、マニホールド入口の中心垂直軸に対してn回回転対称(n-fold rotational symmetry)に分岐するパイプでマニホールド入口に接続する。これは非常にコンパクトで、マニホールド分岐部に原料粉末を均等に分配するのを容易にする好ましい設計である。マニホールド分岐部は、クモの足のようにパイプの分岐から横方向かつ下方向に延びていてもよい。
【0015】
必要に応じて、供給マニホールドは、少なくとも2つのマニホールド分岐部を備えていてもよい。ここにおいて、少なくとも2つのマニホールド分岐部の各々は、好ましくはマニホールド入口の中心垂直軸に対して20~70度傾斜した傾斜部を備える。したがって、原料粉末は、重力によって駆動される傾斜部に沿って摺動し得る。遮断弁は、好ましくは傾斜部に配置され得る。
【0016】
必要に応じて、供給マニホールドは、パイプ分岐部から少なくとも2つの搬送ラインに至るまで同じパイプ長を有する少なくとも2つのマニホールド分岐部を備えていてもよい。これは、原料粉末をマニホールド分岐部に均等に分配するのに有益である。
【0017】
必要に応じて、少なくとも2つの搬送ラインの各々の部分は、供給マニホールドの下方に並列に配置することができる。これは、コンパクトで整然としたシステム設計に有利である。
【0018】
必要に応じて、少なくとも2つの遮断弁の各々は、バタフライ弁であってもよい。別例として、または加えて、少なくとも2つの遮断弁のうちの1つまたは複数は、別の種類の弁、例えば電磁弁、ボール弁、ゲート弁、ピストン弁、ニードル弁、ピンチ弁、または別の種類の弁であってもよい。少なくとも2つの遮断弁の各々は、弁本体を作動させるための弁モータを備えていてもよい。
【0019】
必要に応じて、少なくとも2つの遮断弁の各々は、供給マニホールドの少なくとも2つのマニホールド分岐部のうちの1つの傾斜部に配置されていてもよく、マニホールド分岐部の傾斜部の長手方向軸に実質的に垂直なアクチュエータ軸の周りで作動可能な弁本体を備えている。ここにおいて、アクチュエータ軸とマニホールド分岐部の傾斜部の長手方向軸は、仮想垂直面に対して傾斜している仮想平面に広がる(わたる)。これは、遮断弁をコンパクトに配置するのに有利である。必要に応じて、アクチュエータ軸も仮想水平面に対して傾斜していてもよい。これは、原料粉末がマニホールド分岐部の傾斜部に沿って好ましく摺動するという事実による。
【0020】
必要に応じて、本システムは、投与ユニットをさらに備えていてもよい。ここにおいて、該投与ユニットは、原料粉末の制御された流れをリザーバの出口からマニホールド入口まで搬送するための、搬送機構を備える。好ましくは、投与ユニットは、スクリューコンベヤを備えていてもよい。ここにおいて、該スクリューコンベヤは、原料粉末をリザーバの出口における第1の位置からマニホールド入口における第2の位置まで搬送するように配置され構成される。またここにおいて、第2の位置は、第1の位置よりも高い高所にあり、および/または第2の位置は、第1の位置から水平方向に離れている。別例として、または加えて、投与ユニットは、別の種類のコンベヤ、例えばベルトコンベヤや振動シュートを備えていてもよい。
【0021】
必要に応じて、少なくとも2つの遮断弁を、一度に、少なくとも2つの遮断弁のうちの1つだけを開くように構成してもよい。これにより、安定した一定のガス流の制御が容易になり、原料粉末の流れをより安定させることができる。異なる積層造形装置の間で需要が競合する場合、資源管理システムは、一度に1つの積層造形装置のみに原料粉末を逐次分配するよう管理し得る。
【0022】
必要に応じて、少なくとも2つの遮断弁を、少なくとも2つの搬送ラインよりも供給マニホールドのパイプ分岐部に近い位置に配置してもよい。弁からパイプ分岐部までの距離が長いほど、遮断弁を閉じたときにパイプ分岐部により多くの原料粉末が蓄積する。マニホールド分岐部に蓄積する原料粉末の量を最小限に抑えるため、弁からパイプ分岐部までの距離は、好ましくはできるだけ短く、好ましくは2m未満、より好ましくは1m未満、最も好ましくは50cm未満になるように選ばれる。
【0023】
必要に応じて、少なくとも2つの遮断弁のすべてについて、供給マニホールドのパイプ分岐部までの距離を同じにしてもよい。これは、遮断弁を閉じたときにマニホールド分岐部に蓄積される原料粉末の量が、すべてのマニホールド分岐部で実質的に同じであることを確認するために有益である。必要に応じて、該距離は、閉じたときに少なくとも2つの遮断弁の各々の弁本体上に滞留している、規定量の原料粉末を収容するためのマニホールド容積を画定し得る。
【0024】
必要に応じて、本システムにはさらに、供給マニホールドを通る原料粉末の落下を促進するために、供給マニホールドを、例えば超音波振動および/または空気圧振動および/または電気振動によって、揺らすおよび/または振動させるための加振ユニットを備えていてもよい。これは、供給マニホールド内の残留原料粉末の詰まり、凝集、および/または蓄積を防ぐのに有利である。
【0025】
必要に応じて、本システムには、供給マニホールドを通る原料粉末の落下を促進する代替手段または追加手段、例えば、供給マニホールドに蓄積された粉末にガスを吹き込む1つもしくは複数のノズル、および/または1つもしくは複数の攪拌機を備えていてもよい。
【0026】
必要に応じて、供給マニホールドには、供給マニホールドから少なくとも2つの搬送ラインへ、および/またはリザーバへ向かう振動の伝播を減衰させるための少なくとも1つの振動減衰要素を備えていてもよい。好ましくは、少なくとも1つの振動減衰要素は、供給マニホールドを、加振ユニットによって発生する振動の伝播という点で、それに接続されたシステムの他の部分から「切り離し」、システムの他の部分へのそれらの振動の伝播を防止するか、少なくとも減少させる。
【0027】
必要に応じて、少なくとも2つの搬送ラインは、供給マニホールドの下流であって、且つ、少なくとも2つの積層造形装置の上流に、ガス流調節弁を有さなくてもよい。これは非常に有益である。なぜなら、少なくとも2つの搬送ラインは、原料粉末の大部分をこの経路で搬送し、この経路上のガス流調節弁の摩耗は、原料粉末の研磨性ために高くなるからである。
【0028】
必要に応じて、少なくとも2つの搬送ラインは、ガス流循環ループの一部であってもよい。ここにおいて、ガス流駆動装置は、ガス流循環ループ内を循環するガス流を駆動するように構成される。好ましくは、少なくとも2つの搬送ラインは、ガス流駆動装置に接続されたガス流循環ループの平行ラインである。
【0029】
必要に応じて、本システムはさらに、少なくとも2つのガス流調節弁を備えていてもよい。ここにおいて、少なくとも2つのガス流調節弁の各々は、少なくとも2つの搬送ラインのうちの1つに関連付けられ(associated with)、関連付けられた搬送ライン内のガス流を選択的に調節する。またここにおいて、少なくとも2つのガス流調節弁は、少なくとも2つの積層造形装置の下流であって且つ供給マニホールドの上流に配置される。したがって、好ましくは、少なくとも2つのガス流調節弁が、ガス流をガス流駆動装置に向かって戻す並列ガス戻りラインに配置される。好ましくは、各搬送ラインに対して、ガス流調節弁を備えた平行な1本のガス戻りラインがあってもよい。積層造形装置では、積層造形装置の原料粉末バッファに充填するために、原料粉末は、好ましくは、分離器、例えばサイクロン分離器または真空コンベヤによってガス流から分離される。したがって、ガス流をガス流駆動装置に向かって戻すよう導くガス戻りラインでは、原料粉末の量が大幅に減少する。そのため、ガス戻りラインのガス流調節弁は、原料粉末の研磨性摩耗にさらされることが少ない。追加の粒子フィルターは、ポンプの上流および/またはポンプの入口に配置することができる。
【0030】
少なくとも2つのガス流調節弁の下流で、並列ガス戻りラインは、ガス流駆動装置として機能するガスポンプの吸引側に接続されたポンプ入口ラインに合流し得る。ガスポンプの圧力側は、ポンプ出口ラインを介して平行な搬送ラインに接続されてもよく、これによりガス流循環ループが閉じられる。戻りガス流中における残留量の原料粉末からガスポンプを保護するために、ポンプ入口ラインに、戻りガス流から残留量の原料粉末を分離するための真空コンベヤまたは別の分離器デバイスを配置することができる。このような残留量の原料粉末は、ふるい分けしてリサイクルし、原料粉末のリザーバに補充することができる。原料粉末のリザーバには、未使用原料粉末および/または積層造形装置で焼結または溶融されなかったリサイクル原料粉末を追加補充し得る。
【0031】
本開示の第2の態様によれば、以下を備える積層造形設備(an additive manufacturing facility)が提供される。
すなわち、
三次元ワークピースの並行積層造形のための複数の少なくとも2つの積層造形装置と、
原料粉末のリザーバから少なくとも2つの積層造形装置へ原料粉末を分配するための上述のシステムと、である。
【0032】
必要に応じて、積層造形設備はガス流駆動装置を備えたガス流循環ループをさらに備える。ここにおいて、ガス流駆動装置は、ガス流循環ループ内を循環するガス流を駆動するように構成される。またここにおいて、本システムの少なくとも2つの搬送ラインは、ガス流循環ループの平行ラインである。
【0033】
本開示の第3の態様によれば、三次元ワークピースの並列積層造形のために、原料粉末のリザーバから複数の少なくとも2つの積層造形装置に原料粉末を分配するための方法が提供される。この方法は以下を含む。
少なくとも2つの搬送ライン内のガス流を選択的に調節する。
ここにおいて、少なくとも2つの搬送ラインの各々を、少なくとも2つの積層造形装置のうちの1つに関連付け、ガス流によって原料粉末を関連付けられた積層造形装置に搬送する。
供給マニホールドの少なくとも2つの遮断弁を選択的に開閉する。
ここにおいて、各遮断弁を、少なくとも2つの搬送ラインのうちの1つに関連付け、関連付けられた搬送ラインのガス流中に原料粉末を選択的に落下させる。
【0034】
本方法は、上述した、システムもしくは設備の一部としての制御デバイスとしてのハードウェアの形態、および/または、上述した、システムもしくは設備の一部としてのコンピュータデバイス上で実行可能なソフトウェアプログラムの形態、で実施し得る。
【0035】
必要に応じて、ガス流は、少なくとも2つの遮断弁のいずれか1つが開かれる前に、選択的に調節されてもよい。これにより、原料粉末はガスが流れないまま搬送ラインに入り、原料粉末が搬送ラインに蓄積して充満することになる可能性がある。その代わりに、原料粉末が確実に搬送ライン内に滞留しないよう、すぐに搬送される現在あるガス流に落下させることが望ましい。
【0036】
必要に応じて、ガス流は、少なくとも2つのガス流調節弁によって選択的に調節されてもよい。ここにおいて、少なくとも2つのガス流調節弁の各々は、少なくとも2つの搬送ラインのうちの1つに関連付けられ、関連付けられた搬送ライン内のガス流を選択的に調節する。またここにおいて、少なくとも2つのガス流調節弁は、少なくとも2つの積層造形装置の下流であって且つ供給マニホールドの上流に配置される。制御デバイスおよび/またはプログラミングされたコンピュータデバイスは、少なくとも2つのガス流調節弁の各々と無線または有線で信号接続され、それらを個別に制御し得る。
【0037】
必要に応じて、ガス流を選択的に調節して、一度に、少なくとも2つの搬送ラインのうち1つだけにガス流を流してもよい。そのため、ガス流駆動装置によって駆動されるガス流は、搬送ラインにおける並列ガス流に適合させる必要はない。これによって、搬送ラインを通して規定されたガス流を安定的に均等に分配することが容易になる。
【0038】
必要に応じて、一度に、少なくとも2つの遮断弁のうち1つだけが開かれる。それは好ましくは、現在ガス流を有する搬送ラインに関連付けられた2つの遮断弁である。制御デバイスおよび/またはプログラミングされたコンピュータデバイスは、少なくとも2つの遮断弁の各々と無線または有線で接続され、それらを個別に制御し得る。好ましくは、制御デバイスおよび/またはプログラミングされたコンピュータデバイスは、ガス流調節弁に信号接続されているものと同じである。同じ制御デバイスおよび/またはプログラミングされたコンピュータデバイスを、投与ユニットおよび/または加振ユニットの制御に使用してもよい。
【0039】
ガス流および/または他のシステムパラメータを制御するために、システム内で異なる種類のセンサを使用することができる。例えば、酸素センサ、圧力センサ、流量センサ、または任意の他の適切なセンサなどである。センサは制御装置に接続されていてもよい。圧力センサは、詰まりや漏れを検知するために使用できる。特にポンプの下流に配置された流量センサは、搬送される粉体の量と種類に関連してポンプ出力を調節するために使用できる。制御変数は、ポンプ速度、ポンプ流量、投与能力、および/またはポンプを横切る圧力差としてもよい。
【0040】
好ましい実施形態では、各搬送ラインは、酸素センサ、圧力センサまたは流量センサのうちの少なくとも1つを備えていてもよく、特に、各搬送ラインは、少なくとも圧力センサおよび/または流量センサを備えていてもよい。この配置により、システムの異常を容易に検知し得る。例えば、制御装置がセンサ値を監視し、期待値および/または閾値とセンサ値を比較してもよい。制御装置は、例えば、原料粉末を搬送ラインに供給するために関連付けられた遮断弁を開く前に、搬送ラインでガス流が測定されるかどうかを確認してもよい。制御装置は、オペレータに異常を知らせ、および/またはシステムの動作を禁止してもよい。
【0041】
次に、本開示のさらなる実施形態を、以下の図を参照して例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本開示による積層造形設備の一例を示す概略図である。
【
図2】本開示による原料粉末を分配するシステムの一例を示す斜視図である。
【
図4】平面A-Aに沿った
図3に示したシステムの切断図である。
【
図5a】平面B-Bに沿った
図3に示したシステムの切断図である。
【
図5b】平面B-Bに沿った
図3に示したシステムの切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、三次元ワークピースを並列積層造形するための6つの積層造形装置3を備えた積層造形設備1を示している。積層造形設備1はさらに、原料粉末6をリザーバ7から積層造形装置3に分配するシステム5を備える。積層造形設備1は、原料粉末6を積層造形装置3に空気搬送するためのガス流循環ループ9をさらに備える。ガス流循環ループ9内のガス流は、ガスポンプの形をしたガス流駆動装置11によって駆動される。ガス流循環ループ9のポンプ出口ライン13は、ガスポンプ11の圧力出口に接続され、6つの平行な搬送ライン15に分かれる。搬送ライン15の各々は、積層造形装置3の各々に関連付けて配置された分離器17に通じている。分離器17は、原料粉末6をガス流から抽出して関連付けられた積層造形装置3の原料バッファに充填するためのサイクロン式分離器であってもよい。
【0044】
分離器17の下流には、ガス戻りライン19、すなわち、6つの分離器17の各々に対して合計6つの平行なガス戻りライン19が、ガス流調節弁21に向かってガス流を戻し、ガス流調節弁21の各々は、ガス戻りライン19のうちの1つの端部に配置されている。ガス流調節弁21の下流で、ガス流はポンプ入口ライン23に合流する。ポンプ入口ライン23がガス流をガスポンプ11の吸引口に導く前に、ポンプ入口ライン23に真空コンベヤ25が配置され、ガス流における残留量の原料粉末を分離する。このように分離された残留量の原料粉末は、ふるい27でふるい分けられ、リサイクルされてリザーバ7に再充填される。
【0045】
リザーバ7はホッパー状の容器である。リザーバ7は、ふるい27を介して充填され、ならびに/または、未使用原料粉末供給部29から、および/もしくは、原料粉末リサイクルシステム31から、新たな原料粉末を受容することができる。原料粉末リサイクルシステム31は、積層造形装置3における積層造形プロセス中に焼結または溶融しなかった原料粉末を受容し、再利用するためにリサイクルすることができる(
図1において破線の二重線で示す)。
【0046】
原料粉末6を6つの搬送ライン15に分配するシステム5は、投与ユニット27と供給マニホールド30とを備える。投与ユニット27は、ここでは、リザーバ7の下方に配置されたスクリューコンベヤであり、リザーバ7の底部出口から落下する原料粉末6を受容し、原料粉末6を供給マニホールド30のマニホールド入口32に向かって定められた速度で上方および側方に搬送する。マニホールド入口32の下方において、供給マニホールド30は、6つのマニホールド分岐部35に分かれるパイプ分岐部33を備える。マニホールド分岐部35の各々は、原料粉末がマニホールド分岐部35を通ってさらに下方の搬送ライン15のガス流中に落下および/または摺動するのを選択的に許容するための遮断弁37を備えている。供給マニホールド30の底部において、各マニホールド分岐部35は、搬送ライン15の1つへのマニホールド出口38を備える。原料粉末は主に、供給マニホールド30の上部にあるマニホールド入口32から、供給マニホールド30の底部にあるマニホールド出口37まで、供給マニホールド30を通って、実質的に重力によって落下する。
【0047】
システム5は、供給マニホールド30を通る原料粉末の落下を促進するために、供給マニホールド30を揺らすおよび/または振動させるための加振ユニット39をさらに備える。
【0048】
システム5はさらに、ガス流調節弁21、遮断弁37、投与ユニット28および加振ユニット39の少なくとも1つ、一部または全部と信号接続(
図1の一点鎖線)されているハード・ワイヤードおよび/またはソフトウェアプログラミングされた制御装置を備える制御ユニット41を備える。制御ユニット41は、一度に、選択された1つの搬送ライン15のみにガス流を流すことができるように、ガス流調節弁21を制御するように構成されている。安定したガス流が選択された搬送ライン15で確立されると、制御ユニット41は、選択された搬送ライン15にそのマニホールド出口38で接続されているマニホールド分岐部35のその遮断弁37を開くように構成されているため、原料粉末6を関連付けられた積層造形装置3に供給するために選択された搬送ライン15のガス流に落下させることができる。
【0049】
図2~
図5aおよび
図5bに示す実施形態は、実際に実施するのが好ましいシステム5を示している。
図2~
図5aおよび
図5bでは、制御ユニット41と加振ユニット39は図示されていない。6つの搬送ライン15は、共通の実質的に水平なxy平面内でy方向に互いに平行に延び、ポンプ出口ライン13から分岐している。供給マニホールド30は、並列に配置された搬送ライン15の上方に垂直に配置されている。投与ユニット28は、垂直z軸に対して傾斜した軸Rに沿って延びるスクリューコンベヤを備える。スクリューコンベヤは、リザーバ7の底部出口(
図2には図示せず)から原料粉末6を受容し、原料粉末を軸Rに沿って斜め上方に、供給マニホールド30の上部にあるマニホールド入口32に搬送する(
図4参照)。原料粉末6は、定められた搬送速度で制御された方法で投与ユニット28を通って搬送される。制御ユニット41は、スクリューコンベヤを駆動する投与ユニットモータ43を制御する。
【0050】
原料粉末はマニホールド入口32に落下し、さらに下方の供給マニホールド30に落下し、パイプ分岐部33で6つのマニホールド分岐部35に分かれる。パイプ分岐部33は、
図3に見られるように、マニホールド入口32の垂直中心軸に対して6回回転対称(sixfold rotational symmetry)を成している。マニホールド分岐部35は、上部の傾斜部45でパイプ分岐部33から分岐し、関連付けられた搬送ライン15の垂直上方に配置された下部の垂直部47へ曲がる。マニホールド分岐部35は、そのマニホールド出口38において、上方から各々の搬送ラインに入るところで終わり、マニホールド分岐部35は、原料粉末6が搬送ライン15のガス流に落下する前に原料粉末6にガス流方向(y方向)の運動量成分を与えるために、ガス流方向、すなわちy方向に曲げられるかまたは傾斜させられる。
【0051】
各マニホールド分岐部35は、その上部の傾斜部45に遮断弁37を備える。遮断弁37は、好ましくは、アクチュエータ軸Cの周りで作動されるバタフライ弁である。弁本体51(
図5b参照)は、傾斜部45の長手方向軸Dに対して実質的に垂直に延びるアクチュエータ軸Cの周りで作動可能である。アクチュエータ軸Cと傾斜部45の長手方向軸Dは、仮想垂直面、例えばzxまたはxzに対して傾斜した仮想平面CDに広がっている(わたっている)。これにより、遮断弁37をよりコンパクトに配置することができる。さらに、アクチュエータ軸Cが軸Dを中心に幾分回転しているので、原料粉末が開けられた弁本体51の下を摺動できるという利点がある。そのため、開けられた弁本体51は障害となりにくい(
図5b参照)。この点で理想的なのは水平軸Cであるが、そうすると横方向のスペースが必要になり、遮断弁37のパイプ分岐部33までの距離が長くなる。したがって、アクチュエータ軸Cを軸Dに対して垂直zD平面に対して10度から80度回転させることは、有利な妥協点である。
【0052】
マニホールド入口32およびマニホールド分岐部35の垂直部47の各々において、供給マニホールド30は、投与ユニット28(
図2~
図5aおよび
図5bには図示せず)および接続された搬送ライン15からの振動の観点から供給マニホールド30を切り離すために、フレキシブルパイプ部の形をした振動減衰要素49を備える。これにより、加振ユニット39によって発生した振動が、供給マニホールド30から投与ユニット28および/または搬送ライン15に向かって減衰されずに伝達される、ということはない。
【0053】
図3からわかるように、マニホールド分岐部35の垂直部47は、仮想の水平六角形の角に配置されている。その仮想水平六角形は、およそ
【数1】
である角度γで回転しており、角度γは搬送ライン15のガス流方向yに対して約19.11度である。これにより、6つの搬送ライン15を、互いに同じ距離hを有する3つの搬送ライン15の2組に配置することができる。
【0054】
システム5を通る原料粉末6の搬送は、
図4および
図5aおよび
図5bの切断図に示されている。6つの遮断弁37がすべて閉じられた場合、供給マニホールド25は、投与ユニット28によって充填されると、マニホールド入口32まで原料で満たされる。
図5bに示すように、遮断弁37の1つを開くと、原料粉末がマニホールド分岐部35に沿って搬送ライン15のガス流中に落下および/または摺動し、ガス流が直ちに原料粉末を積層造形装置3に向けて搬送する。遮断弁37とパイプ分岐部33との距離は、マニホールド分岐部35における傾斜部45内の一定の容積を画定する。これは、関連付けられた遮断弁37が閉じている限り原料粉末が充填されたままである。この体積を最小限に抑えるため、遮断弁37はパイプ分岐部33のできるだけ近くに配置されている。
【符号の説明】
【0055】
1 積層造形設備
3 積層造形装置
5 原料粉末を分配するためのシステム
6 原料粉末
7 リザーバ
9 ガス循環ループ
11 ガス流駆動装置
13 ポンプ出口ライン
15 搬送ライン
17 分離器
19 ガス戻りライン
21 ガス流調節弁
23 ポンプ入口ライン
25 真空コンベア
27 ふるい
28 投与ユニット
29 未使用原料粉末供給部
30 供給マニホールド
31 原料粉末リサイクルシステム
32 マニホールド入口
33 パイプ分岐部
35 マニホールド分岐部
37 遮断弁
38 マニホールド出口
39 加振ユニット
41 制御ユニット
43 投与ユニットモータ
45 マニホールド分岐部の傾斜部
47 マニホールド分岐部の垂直部
49 振動減衰要素
51 弁本体
γ 角度
h 距離
【手続補正書】
【提出日】2024-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉末(6)のリザーバ(7)から積層造形のための複数の少なくとも2つの積層造形装置(3)に原料粉末を分配するためのシステム(5)であって、少なくとも1つのガス流駆動装置(11)と、前記少なくとも1つのガス流駆動装置(11)によって駆動されるガス流によって前記少なくとも2つの積層造形装置(3)に前記原料粉末(6)を搬送するための少なくとも2つの搬送ライン(15)とを備え、
前記システムは、
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)に前記原料粉末(6)を供給するための供給マニホールド(30)をさらに備え、
前記供給マニホールド(30)は、
少なくとも2つの遮断弁(37)によって制御され、前記原料粉末(6)を、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つに選択的に導くように構成および配置され、
前記少なくとも2つの遮断弁(37)の各々は、
前記供給マニホールド(30)に配置され、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)に前記原料粉末(6)を選択的に供給するために選択的に開閉するように構成される、
ことを特徴とする、システム(5)。
【請求項2】
前記供給マニホールド(30)が、
前記リザーバ(7)から前記原料粉末(
6)を受容するためのマニホールド入口(32)と、
少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)へ分岐するパイプ分岐部(33)と、
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つとそれぞれが接続する少なくとも2つのマニホールド出口(38)と、
を備え、
前記少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)の各々が、
前記マニホールド入口(32)を前記少なくとも2つのマニホールド出口(38)の1つに接続し、
前記少なくとも2つの遮断弁(37)の各々が、
前記少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)の1つに関連付けて配置され、関連付けられた前記マニホールド分岐部(35)を選択的に開閉するように構成されている、
請求項1に記載のシステム(5)。
【請求項3】
前記パイプ分岐部(33)が、前記少なくとも2つのマニホールド出口(38)よりも高い高所に位置するように構成されて、前記原料粉末(6)が、主に重力によって前記少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)を通って搬送される、請求項2に記載のシステム(5)。
【請求項4】
前記供給マニホールド(30)が、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)の各々の部分の上方に配置されるように構成され、各マニホールド出口(38)が、実質的に上方から前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つの前記部分に通じている、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム(5)。
【請求項5】
前記供給マニホールド(30)が、前記原料粉末(6)を、前記搬送ライン(15)に沿った搬送方向(y)に平行な運動量成分を付けて、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)に排出するように形成されている、請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項6】
前記供給マニホールド(30)は、少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)に分岐するパイプ分岐部(33)を備え、
前記少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)の各々は、マニホールド入口(32)の中心垂直軸に対して、好ましくは20~70度傾斜している、傾斜部(45)を備える、
請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項7】
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)の各々の部分が、前記供給マニホールド(30)の下方で実質的に平行に配置されている、請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項8】
前記少なくとも2つの遮断弁(37)の各々がバタフライ弁である、請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項9】
前記少なくとも2つの遮断弁(37)の各々が、前記供給マニホールド(30)の少なくとも2つのマニホールド分岐部(35)のうちの1つの傾斜部(45)に配置され、前記マニホールド分岐部(35)の前記傾斜部(45)の長手方向軸(D)に実質的に垂直なアクチュエータ軸(C)の周りで作動可能な弁本体(51)を備え、
前記アクチュエータ軸(C)、および、前記マニホールド分岐部(35)の前記傾斜部(45)の前記長手方向軸(D)は、仮想垂直面(zD)に対して傾斜している仮想平面(CD)に広がっている、
請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項10】
投与ユニット(28)をさらに備え、
前記投与ユニット(28)が、前記原料粉末(6)の制御された流れを、前記リザーバ(7)の出口からマニホールド入口(32)まで搬送するための、搬送機構を備える、
請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項11】
前記投与ユニット(28)が、スクリューコンベヤを備え、
前記スクリューコンベヤは、前記原料粉末(6)を前記リザーバ(7)の前記出口における第1の位置から前記マニホールド入口(32)における第2の位置まで搬送するように配置され構成されており、
前記第2の位置は前記第1の位置よりも高い高所にあり、および/または前記第2の位置は前記第1の位置から水平方向に離れている、
請求項
10に記載のシステム(5)。
【請求項12】
前記少なくとも2つの遮断弁(37)が、一度に、前記少なくとも2つの遮断弁(37)のうちの1つだけを開くように構成されている、請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項13】
前記少なくとも2つの遮断弁(37)は、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)よりも前記供給マニホールド(30)のパイプ分岐部(33)に近い位置に配置されている、請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項14】
前記供給マニホールド(30)を通る前記原料粉末(6)の落下を促進するために、前記供給マニホールド(30)を揺らすおよび/または振動させるための加振ユニット(39)をさらに備える、請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項15】
前記供給マニホールド(30)が、前記供給マニホールド(30)から、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)へ、および/または前記リザーバ(7)へ向かう振動の伝播を減衰させるための少なくとも1つの振動減衰要素(49)を備えている、請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項16】
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)が、前記供給マニホールド(30)の下流であって、且つ、前記少なくとも2つの積層造形装置(3)の上流に、ガス流調節弁(21)を有さない、請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項17】
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)が、ガス流循環ループ(9)の一部であり、
前記ガス流駆動装置(11)が、前記ガス流循環ループ(9)内を循環するガス流を駆動するように構成されている、請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項18】
少なくとも2つのガス流調節弁(21)をさらに備え、
前記少なくとも2つのガス流調節弁(21)の各々が、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つと関連付けられ、関連付けられた前記搬送ライン(15)内のガス流を選択的に調節し、
前記少なくとも2つのガス流調節弁(21)が、前記少なくとも2つの積層造形装置(3)の下流であって、且つ、前記供給マニホールド(30)の上流に配置される、
請求項
1に記載のシステム(5)。
【請求項19】
三次元ワークピースの並列積層造形のための複数の少なくとも2つの積層造形装置(3)と、
原料粉末のリザーバ(7)から前記少なくとも2つの積層造形装置(3)に原料粉末を分配するための、請求項
1に記載のシステムと、
を備える積層造形設備(1)。
【請求項20】
三次元ワークピースの並列積層造形のために、原料粉末のリザーバ(7)から複数の少なくとも2つの積層造形装置(3)に原料粉末(6)を分配するための方法であって、
少なくとも2つの搬送ライン(15)内のガス流を選択的に調節し、
前記少なくとも2つの搬送ライン(15)の各々を、前記少なくとも2つの積層造形装置(3)のうちの1つに関連付けて、前記ガス流によって、原料粉末(6)を関連付けられた前記積層造形装置(3)に搬送し、
供給マニホールド(30)の少なくとも2つの遮断弁(37)を選択的に開閉し、
各遮断弁(37)を、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つに関連付けて、関連付けられた前記搬送ライン(15)の前記ガス流中に原料粉末を選択的に落下させる、
ことを含む方法。
【請求項21】
前記少なくとも2つの遮断弁(37)のいずれか1つが開かれる前に、前記ガス流を選択的に調節する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ガス流を、少なくとも2つのガス流調節弁(21)によって選択的に調節し、
前記少なくとも2つのガス流調節弁(21)の各々を、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つに関連付けて、関連付けられた前記搬送ライン(15)内の前記ガス流を選択的に調節し、
前記少なくとも2つのガス流調節弁(21)を、前記少なくとも2つの積層造形装置(3)の下流であって、且つ、前記供給マニホールド(30)の上流に配置する、
請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
一度に、前記少なくとも2つの搬送ライン(15)のうちの1つだけにガス流を流すことができるように、前記ガス流を選択的に調節する、請求項
20に記載の方法。
【請求項24】
一度に、前記少なくとも2つの遮断弁(37)のうちの1つだけが開かれ、
この前記遮断弁(37)は、好ましくは、現在ガス流を有する前記搬送ライン(15)に関連付けられる前記遮断弁(37)である、
請求項
20に記載の方法。
【請求項25】
関連付けられる前記搬送ライン(15)内の前記ガス流が、実質的に一定になるように調節される、請求項
20に記載の方法。
【国際調査報告】