(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】治療用タンパク質の単離
(51)【国際特許分類】
C07K 1/22 20060101AFI20240806BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240806BHJP
C07K 1/36 20060101ALI20240806BHJP
C07K 1/16 20060101ALI20240806BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07K1/22
C07K16/00 ZNA
C07K1/36
C07K1/16
C07K17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506496
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 US2022074612
(87)【国際公開番号】W WO2023015298
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,チンチュン
(72)【発明者】
【氏名】ヘー,リードン
(72)【発明者】
【氏名】クロエンケ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】エンジェル,ニコラス・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ハプアーラッチ,スミンダ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA50
4H045BA10
4H045BA60
4H045CA40
4H045DA76
4H045GA20
4H045GA26
(57)【要約】
治療用タンパク質を試料から単離する方法が本明細書に記載される。治療用タンパク質を試料から単離するためのキットが本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用タンパク質を試料から単離する方法であって、前記治療用タンパク質は、EUシステムに従って番号付けされた、以下のL242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される変異のうち1つ又は複数を含むIgG1定常領域を含み、前記方法は、
前記治療用タンパク質を含む前記試料を、基体に固定化された抗体とともにインキュベートするステップであって、前記抗体は、野生型IgG1と比較して、前記1つ又は複数の変異を含む前記IgG1定常領域に選択的に結合し、それにより、前記固定化抗体は、前記治療用タンパク質の前記IgG1定常領域に結合するステップ、
前記治療用タンパク質の前記IgG1定常領域に結合した前記固定化抗体を洗浄するステップ、及び
前記治療用タンパク質を溶出し、それにより、前記治療用タンパク質を単離するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記試料は、ヒトのエキソビボ試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料は、血清及び/又は血清タンパク質を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エキソビボ試料は、前記治療用タンパク質に結合したアルブミンを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エキソビボ試料は、免疫グロブリンを含み、前記免疫グロブリンは、前記治療用タンパク質とは異なる、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記インキュベートは、10分以下など、約15分以下の間なされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶出は、pH3~3.5でなされる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶出は、酢酸、任意選択により、0.02%~0.09%酢酸、0.02%~0.07%酢酸、0.02%~0.05%酢酸、0.05%~0.09%酢酸、又は約0.05%酢酸を含む溶液中でなされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記治療用タンパク質は、抗原結合タンパク質であり、前記試料においてその抗原に結合しており、前記治療用タンパク質は、前記溶出の後、その抗原に結合したままである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの分析技術を前記治療用タンパク質に適用することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶出された治療用タンパク質をクロマトグラフィーカラムに適用することをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記治療用タンパク質は、前記試料においてその抗原に結合している抗原結合タンパク質であり、前記治療用タンパク質は、前記溶出後、その抗原に結合したままであり、前記サイズ排除クロマトグラフィーは、その抗原に結合している前記治療用タンパク質の複合体を検出することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記単離された抗体に、LC-MS/MSなどの質量分析法を行うことをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体は、アミノ酸配列CEEQYGSTYRC(配列番号1)に特異的に結合するモノクローナル抗体である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体は、アミノ酸配列
【化1】
を含むタンパク質に対して生成されたモノクローナル抗体である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体は、マウスモノクローナル抗体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記基体は、ビーズを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ビーズは、非多孔性単分散超常磁性ビーズを含み、任意選択により、前記ビーズは、約2~4μM、約2~3μM、約2.5~3.5μM、約3μM又は2.8μMの平均直径を有する複数のビーズのものである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記治療用タンパク質の前記IgG1定常領域は、変異N297Gと、R292C及びV302Cのうち少なくとも1つとを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記治療用タンパク質の前記IgG1定常領域は、アミノ酸配列:CEEQYGSTYRC(配列番号1)又は
【化2】
を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記治療用タンパク質は、モノクローナル抗体などの抗体、抗原結合性抗体断片、抗体タンパク質生成物、任意選択により半減期延長部分を含む、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体、Fc融合タンパク質、組換えタンパク質、組換えウイルス、組換えT細胞、合成ペプチド、及び組換えタンパク質の活性断片からなる群から選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の、EUシステムに従って番号付けされた、L242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される1つ又は複数の変異を含むIgG1定常領域に選択的に結合する抗体、及び
基体であって、
(i)前記基体は、その上に前記抗体を固定化するように構成されているか、又は
(ii)前記抗体は、前記基体上に固定化されている
基体
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月6日に出願された米国仮特許出願第63/230,483号明細書の利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本出願は、電子フォーマットの配列表とともに出願されている。配列表は、2022年8月5日に作成されたA-2883-WO01-SEC.xmlという名称のファイルとして提供され、サイズは4000バイトである。本配列表の電子フォーマットにおける情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本明細書における実施形態は、エキソビボ試料などの試料からの治療用タンパク質の単離の方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0004】
治療用モノクローナル抗体は、細胞発現、製造、及び貯蔵に関連する多種多様な変形(特性とも呼ばれる)を有する。[1]医薬の安全性及び有効性を保証するために、重要品質特性(CQA)が治療用タンパク質の品質にいかに影響するかを理解することは、薬物設計の開始から生じる。[2、3]CQAは、一貫した製品品質のために、製造中に規定の間隔で制御され、モニターされる。[4]CQAの評価は、従来、インビトロ試験で実行された。しかしながら、比較可能な生理学的条件の欠如により、得られた特性の知識はインビボの場合を説明するものではない場合がある。その結果、前臨床試料及び臨床試料を用いて薬物代謝に対する特性の効果を理解することに、ますます関心が高まっている。[5]血清は、治療用タンパク質の精製及び下流分析を妨げる、様々なサイズ及び極めて動的な範囲の濃度のタンパク質を含有するため、特性のインビボ試験は、血清マトリックスから目標の治療用タンパク質を精製することを必要とする。
【0005】
イムノアフィニティー精製は、一般に、治療用抗体の精製に適用される。プロテインA系クロマトグラフィーは、1つの精製ユニット中の治療用物質の高純度及び高回収を実現するという利点を有し、大多数の精製プロセスにおいて利用されてきた。[6、7]
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一部の実施形態では、治療用タンパク質を試料から単離する方法が記載される。治療用タンパク質は、EUシステムに従って番号付けされた、以下のL242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される変異のうち1つ又は複数を含むIgG1定常領域を含み得る。本方法は、治療用タンパク質を含む試料を、基体に固定化された抗体とともにインキュベートするステップを含み得る。抗体は、野生型IgG1と比較して、1つ又は複数の変異を含むIgG1定常領域に選択的に結合し得る。したがって、固定化抗体は、治療用タンパク質のIgG1定常領域に結合し得る。本方法は、治療用タンパク質のIgG1定常領域に結合した固定化抗体を洗浄するステップをさらに含み得る。本方法は、治療用タンパク質を溶出し、このようにして治療用タンパク質を単離するステップをさらに含み得る。
【0007】
本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、試料は、ヒトのエキソビボ試料であり得る。本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、試料は、血清及び/又は血清タンパク質を含み得る。一部の方法において、エキソビボ試料は、治療用タンパク質に結合したアルブミンを含み得る。一部の方法において、エキソビボ試料は、治療用タンパク質とは異なる免疫グロブリンを含む。
【0008】
本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、インキュベートするステップは、10分以下など、約15分以下の間なされる。
【0009】
本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、溶出するステップは、pH3~3.5でなされ得る。一部の方法において、溶出は、酢酸、任意選択により、0.02%~0.09%酢酸、0.02%~0.07%酢酸、0.02%~0.05%酢酸、0.05%~0.09%酢酸、又は約0.05%酢酸を含む溶液中でなされる。
【0010】
本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、治療用タンパク質は、抗原結合タンパク質であり得、試料中でその抗原に結合しており、溶出した後、その抗原に結合したままである。
【0011】
本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、本方法は、少なくとも1つの分析技術を治療用タンパク質に適用するステップをさらに含み得る。
【0012】
本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、本方法は、溶出された治療用タンパク質をクロマトグラフィーカラムに適用するステップをさらに含み得る。一部の方法において、クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィーであり得る。一部の方法において、治療用タンパク質は、試料中でその抗原に結合している抗原結合タンパク質であり、溶出後、その抗原に結合したままであり、サイズ排除クロマトグラフィーは、その抗原に結合している治療用タンパク質の複合体を検出するステップを含む。例として、抗原結合タンパク質は、本明細書に記載されるモノクローナル抗体又は抗体タンパク質生成物であり得る。
【0013】
本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、本方法は、単離された抗体に、LC-MS/MSなどの質量分析法を実行するステップをさらに含み得る。
【0014】
本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、抗体(「捕捉抗体」とも呼ばれ得る)は、アミノ酸配列CEEQYGSTYRC(配列番号1)に特異的に結合するモノクローナル抗体であり得る。本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、抗体(「捕捉抗体」とも呼ばれ得る)は、アミノ酸配列
【化1】
を含むタンパク質に対して産生されたモノクローナル抗体であり得る。本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、抗体(「捕捉抗体」とも呼ばれ得る)は、マウスモノクローナル抗体であり得る。
【0015】
本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、基体はビーズを含み得る。一部の方法において、ビーズは、非多孔性単分散超常磁性ビーズを含み、任意選択により、ビーズは、約2~4μM、約2~3μM、約2.5~3.5μM、約3μM又は2.8μMの平均直径を有する複数のビーズのものである。
【0016】
本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、治療用タンパク質のIgG1定常領域は、変異N297Gと、R292C及びV302Cのうち少なくとも1つとを含む。本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、治療用タンパク質のIgG1定常領域は、アミノ酸配列:CEEQYGSTYRC(配列番号1)又は
【化2】
を含む。
【0017】
本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれかにおいて、治療用タンパク質は、モノクローナル抗体などの抗体、抗原結合性の抗体断片、抗体タンパク質生成物、任意選択により半減期延長部分を含む、二重特異性T細胞エンゲージャー(Bispecific T cell engager:BiTE(登録商標))分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体、Fc融合タンパク質、組換えタンパク質、組換えウイルス、組換えT細胞、合成ペプチド、及び組換えタンパク質の活性断片からなる群から選択される。
【0018】
一部の実施形態では、キットが記載される。本キットは、本明細書に記載される治療用タンパク質を単離する方法のいずれか1つに定義されている、EUシステムに従って番号付けされた、L242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される1つ又は複数の変異を含むIgG1定常領域に選択的に結合する抗体を含み得る。本キットは、基体をさらに含み得る。さらに、キットに関して、(i)基体は、その上に抗体を固定化するように構成されていてもよく、又は(ii)抗体は、基体に固定化されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一部の実施形態に従って治療用タンパク質を精製する方法を説明するフローチャートである。
【
図2】mAb1標準品、及びmAb1とDYNABEADビーズに固定化された捕捉抗体とのインキュベーションの上清のSECプロファイルである。
【
図3】DYNABEADビーズに固定化された捕捉抗体とともに10分間(破線)、1時間(太線)及び終夜(非太線)インキュベートした後のmAb1のSECプロファイルである。
【
図4】PBSに添加されたmAb1(非太線)、ヒト血清に添加されたmAb1(太線)、及び血清ブランク試料(平坦な線)を含む、SEFL2イムノアフィニティー精製された試料のSECプロファイルである。
【
図5】mAb1、mAb1と抗原1と抗原2との混合物(2:1:1、太線)、及びmAb1と抗原2との混合物(1:1、非太線)のSECプロファイルである。PBS緩衝液中での薬物-標的複合体モデル試験と一致して、わずかに過剰な抗原1及び抗原2は、約4.3分に溶出した幅広のピークをもたらし、mAb1と抗原1と抗原2との大複合体を示した。わずかに過剰な抗原2は、抗原2がmAb1に1:1、1:2及び1:3の比で結合したものを示すピークをもたらした。
【
図6】SEFL2イムノアフィニティー精製された、PBSに添加された抗原結合タンパク質1(太線)及びヒト血清に添加された抗原結合タンパク質1(非太線)のSEプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ヒトのエキソビボ試料などの試料から治療用タンパク質を単離するのに有用な方法が本明細書に記載される。治療用タンパク質は、1つ又は複数の変異(例えば、EUシステムに従って番号付けされたL242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及び/又はK334Cのうち1つ又は複数)を含むIgG1定常領域を含み得る。治療用タンパク質を含む試料は、ビーズなどの基体に固定化された抗体とともにインキュベートされ得る。抗体は、野生型IgG1と比較して、1つ又は複数の変異を含むIgG1定常領域に選択的に結合することができる。治療用タンパク質に結合した抗体は洗浄することができ、次いで、治療用タンパク質を溶出して、治療用タンパク質を単離することができる。そのような方法は、治療用タンパク質がインビボ環境に入った後のその分子特性を同定するために、治療用タンパク質をエキソビボ試料から単離するのに有用であり得ることに留意されたい。そのような方法は、治療用タンパク質を、他の種類の試料、例えばインビトロ試料又は製造の工程中の試料から単離するのにも有用であり得ることが考えられる。有利なことには、そのような方法は、列挙された1つ又は複数の変異を含むIgG1定常領域を含む治療用タンパク質(抗体など)を単離することができるが、治療用タンパク質の任意の結合標的については不確かである。したがって、重要試薬の生成及び分子特異的な親和性方法の開発は回避することができる。本明細書に記載される方法は、複数の様々な種類の治療用タンパク質、例えば、IgGモノクローナル抗体などのモノクローナル抗体、半減期延長(HLE)部分を含む二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))分子(本明細書においてHLE-BiTE(登録商標)分子と呼ばれ得る)、ヘテロIgG及びIgGsc-Fvに使用され得る。個々の分子の製品品質特性モニタリング並びにさらなる特性の理解及び特性評価は、分子特異的な親和性カラムの開発も使用もせずに、容易に実現することができる。これは、インビボでの(対象への投与後の)、及びエキソビボ試料から回収された、治療用タンパク質の分子特性のモニタリング、理解、及び/又は特性評価を含み得る。
【0021】
本明細書に記載される方法は、治療用タンパク質を血清マトリックスから分離することができ、治療用タンパク質の投与後の分子特性(重要品質特性など)を理解及びモニタリングするのに有用であり得る。従来、血清中に低濃度の治療用タンパク質を含み、高レベルの内在性タンパク質の干渉を受けながら、血清から目的の治療用タンパク質を単離しようとする分析的な取組みがあった。本明細書においてさらに詳細に論じられるように、従来の親和性ベースの方法、例えば治療用抗体のFc領域を標的とすることによるプロテインAクロマトグラフィーなどは、概して、選択性の欠如及び内在性抗体との同時単離が原因で、適用不可である。分子特異的な親和性クロマトグラフィー方法も報告されている。しかしながら、治療用タンパク質の相補性決定領域(CDR)に典型的に結合するタンパク質特異的な試薬又は抗体が、血清マトリックス中で所望の選択性を実現するために生成された。治療用タンパク質それぞれに対するそのような分子特異的な方法を開発することは、困難で且つ時間がかかるのみならず、分子特異的な試薬又は抗体の利用能によって大きく限定されもする。例として、本明細書に記載される方法は、抗体などの治療用タンパク質を、その可変領域に特異的な捕捉抗体を生成する必要なしに単離することができ、CDR中に分子特性を含む抗体を単離することができる。有効性及び/又は安定性に関連する可能性があると思われるCDR中の特性は、従来の分子特異的な方法による抗体の回収を妨げ得る。
【0022】
イムノアフィニティー精製は、従来から治療用抗体の精製に適用されてきた。プロテインA系クロマトグラフィーは、大部分の精製プロセスにおいて利用されてきたが、ヒト血清は、プロテインAカラムから治療用抗体によって捕捉もされ、治療用抗体と共溶出もされる極めて多量のポリクローナル抗体を含む。したがって、プロテインAクロマトグラフィーを使用して目的の治療用タンパク質(抗体など)を他の抗体から単離することは、他の抗体が目的の抗体と一緒に共精製され得るため、困難である可能性がある。さらに、CDR/可変領域中の特性をモニターするために酵素消化後にLC-MS/MSベースの手法を使用すると、これらの他の抗体の定常領域由来の多量の酵素のペプチドは、治療用モノクローナル抗体由来の、それより量が少ない可変領域のペプチドのシグナルを抑制する可能性がある。加えて、得られたペプチドの複合混合物は、プロテオーム解析を混乱させる可能性がある。例えば、同一の酵素のペプチドを産生する2つ以上のタンパク質が存在する場合、ペプチドの起源を特定することができない。[8]結果として、プロテインAイムノアフィニティー精製方法は、それ自体又はLC-MS/MSと組み合わせた場合、困難が伴い、通常、実行可能でない。
【0023】
プロテインAクロマトグラフィーの代替として、さらなる特性評価の前に、目標の治療用タンパク質のCDR領域に結合する標的リガンド又はカスタマイズした抗薬物抗体が、目標の治療用タンパク質を血清マトリックスから選択的に引き出すために利用され得る。[9~13]この方法は、概して、高感受性及び高特異性を特徴とするが、目標の治療用タンパク質それぞれについてカスタマイズした抗薬物抗体の生成及び使用を必要とし、広汎な開発研究を必要とする可能性がある。さらに、CDR領域中の目的の特性(治療用タンパク質の有効性に特に関連し得る)は、樹脂への結合親和性に影響を及ぼし、ある集団を偏って濃縮する可能性がある。さらに、標的リガンド又はカスタマイズした抗薬物抗体の手法は、血清中の遊離型の治療用タンパク質を精製するのみであり得る。[14]
【0024】
現在、多くの治療用タンパク質は、IgG定常領域に変異を伴う操作をされており、それは、不所望なエフェクター機能を排除することができる。したがって、治療用タンパク質の(本明細書に記載されているとおりの)変異を含むIgG1定常領域を標的とするイムノアフィニティー手法は、高選択性(プロテインAカラムと比較して)及び高多用性(これらの変異を含むIgG1定常領域を有する全ての治療用タンパク質に適用可能)という利点を提供する。本明細書に記載される方法は、ヘテロIgG治療用タンパク質、及び半減期延長部分を含む二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))分子を単離するために使用され、続いてSECによる特性評価が行われた。ある特定の実施形態では、モノクローナル抗体1A3が、変異R292C、N297G及びV302C(EUの番号付け)を含むIgG1を含む治療用タンパク質を捕捉するために使用される。ある特定の実施形態では、抗体は、本明細書に記載される非多孔性単分散超常磁性ビーズ、例えばDYNABEAD(登録商標)ビーズに固定化される。SEPHAROSE(登録商標)ビーズなどの他のビーズと比較して、DYNABEAD(登録商標)ビーズは、再現性がより高いことが認められている。DYNABEAD(登録商標)ビーズは、略均一で、内表面を有していないことに留意されたい[15]。理論に制限されるものではないが、DYNABEAD(登録商標)ビーズは、非特異的結合する傾向がより低いと考えられる。したがって、本明細書に記載される方法は、エキソビボ試料などの試料からの治療用タンパク質の高選択性及び高多用性の単離に有用であり、治療用タンパク質の分子特性の分析を促進することができると考えられる。
【0025】
試料
「試料」という用語及びこのルート用語の変形は、本開示に鑑みて当業者に理解されるであろうその通常の慣習的な意味を有する。それは、本明細書に記載される治療用タンパク質を含有し得る組成物、例えば治療用タンパク質が投与された対象由来のエキソビボ組成物を指す。例えば、試料は、全血、血漿、血清、組織生検材料、脳脊髄液、インビトロで刺激した末梢血液単核細胞、末梢血液単核細胞及びリンパ組織を含み得るか、実質的にそれらからなり得るか、又はそれらからなり得る。試料は、治療用タンパク質を含み得るか、又は治療用タンパク質を含むと予想され得る。「生体試料」は、本明細書においてある種の試料を指すものと理解される。インビトロ試料又は合成試料、例えば治療用タンパク質の製造の工程中の試料も、一部の実施形態に適切である。試料は、本明細書に記載される方法及び/又はキットに従って使用することができる。一部の実施形態では、試料は、ヒトのエキソビボ試料である。一部の実施形態では、試料は、血清及び/又はアルブミンなどの血清タンパク質を含む。種々の実施形態では、試料は、アルブミンを含む。試料(例えばヒトのエキソビボ試料)は、治療用タンパク質に結合したアルブミンを含み得る。一部の実施形態では、試料は、治療用タンパク質とは異なる免疫グロブリン、例えば、試料が得られた対象の免疫グロブリンを含む。本明細書に記載される方法及びキットは、治療用タンパク質をそのような治療用タンパク質とは異なる免疫グロブリンから単離するために使用され得る。
【0026】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、抗原結合タンパク質、抗体、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体又はFc融合タンパク質であり、試料は、治療用タンパク質に対する抗原をさらに含む。治療用タンパク質は、試料中でその抗原に結合し得る。
【0027】
一部の実施形態では、試料は、製剤中の治療用タンパク質を含むか、又はそれからなる。この製剤は、薬学的に許容される製剤であり得る。この製剤は、治療用タンパク質を、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及び/又は補助剤と一緒に含み得る。任意選択により、試料は、血清又は血清タンパク質をさらに含み得る。
【0028】
本明細書に記載される治療用タンパク質に許容される製剤材料は、好ましくは、使用される投与量及び濃度で受け手に無毒性である。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、重量オスモル濃度、粘度、透明度、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解又は放出の速度、吸着又は浸透を、変更、維持又は保存するための製剤材料を含有してもよい。そのような実施形態では、適切な製剤材料としては、以下に限定されないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシンなど);抗微生物剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝液(ホウ酸緩衝液、重炭酸緩衝液、トリス-HCl、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液又は他の有機酸緩衝液など);増量剤(マンニトール又はグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物(グルコース、スクロース、マンノース又はデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなど);着色剤、香味剤及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトール又はソルビトールなど);懸濁化剤;界面活性剤又は湿潤剤(Pluronic、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベートなどのポリソルベート類、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなど);安定性促進剤(スクロース又はソルビトールなど);等張化促進剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトール、ソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;添加剤及び/又は医薬補助剤が挙げられる。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990、Mack Publishing Companyを参照されたい。
【0029】
製剤に適したビヒクル又は担体は、注射用水、生理的食塩水又は人工脳脊髄液とすることができ、場合により、非経口投与用組成物において一般的な他の材料が補充される。中性緩衝生理食塩水、又は血清アルブミンと混合された生理食塩水は、さらなる例示的なビヒクルである。特定の実施形態では、医薬組成物は、pH約7.0~8.5のトリス緩衝液、又はpH約4.0~5.5の酢酸緩衝液を含み、ソルビトール又は適切なその代替物をさらに含み得る。
【0030】
製剤成分は、投与部位に許容できる濃度で存在することが好ましい。ある特定の実施形態では、緩衝液は、組成物を、生理的pHに、又はそれよりわずかに低いpHに、典型的には約5~約8のpH範囲内に維持するために使用される。例えば、製剤のpHは、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9又は約8.0であり得る。
【0031】
治療用タンパク質
本明細書で使用する場合、「治療用タンパク質」及びこのルート用語の変形は、本開示に鑑みて当業者に理解されるであろうその通常の慣習的な意味を有する。それは、対象、典型的にはヒト対象における医学的使用のためのポリペプチドを指す。
【0032】
治療用タンパク質は、EUシステムに従って番号付けされた、以下のL242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される変異のうち1つ又は複数を含むIgG1定常領域を含み得る。特に明記しない限り、定常領域中の位置(定常領域中の変異の位置を含む)は、本明細書においてEUの番号付けを使用して言及される。例として、変異は、N297Gと、R292C及び/又はV302Cのうち少なくとも1つとを含み得る。例として、変異は、R292C、N297G及びV302Cを含み得る。一部の実施形態では、治療用タンパク質のIgG1定常領域は、アミノ酸配列:CEEQYGSTYRC(配列番号1)又は
【化3】
を含む。
【0033】
本明細書に記載される方法において、治療用タンパク質は、抗体(モノクローナル抗体、例えばIgG1モノクローナル抗体など)、抗原結合タンパク質、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体、Fc融合タンパク質、組換えタンパク質、合成ペプチド及び組換えタンパク質の活性断片からなる群から選択され得る。
【0034】
「抗体」は、本開示に鑑みて当業者に理解されるその慣習的な通常の意味を有する。これは、標的抗原に特異的結合する免疫グロブリンを指し、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全ヒト抗体を含む。例として、抗体は、モノクローナル抗体であり得る。例として、ヒト抗体は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の各サブタイプを含む)、IgA(IgA1及びIgA2の各サブタイプを含む)、IgM及びIgEを含む、特定のアイソタイプのものとすることができる。ヒトIgG抗体は、一般に、2本の完全長重鎖及び2本の完全長軽鎖を含む。抗体は、単一の供給源のみに由来してもよく、「キメラ」であってもよく、即ち、その抗体の異なる部分が、同じ又は異なる種からの2種以上の異なる抗体に由来してもよい。当然のことながら、抗体が供給源から得られると、その抗体は、例えば安定性及びフォールディングを増強するためにさらなる操作を施され得る。したがって、当然のことながら、「ヒト」抗体は、ある供給源から得ることができ、例えばFc領域中にさらなる操作を施すことができる。操作された抗体は、依然としてヒト抗体の一種と呼ばれ得る。同様に、特に明記しない限り、ヒト抗体のバリアント、例えば親和性成熟したものなども、「ヒト抗体」であると理解されよう。一部の実施形態では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラモノクローナル抗体を含むか、それらから実質的になるか、又はそれらからなる。種々の実施形態では、治療用タンパク質は、EUシステムに従って番号付けされた、以下のL242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される変異のうち1つ又は複数を含むIgG1定常領域を含むキメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体を含むか、又はそれらからなる。種々の実施形態では、治療用タンパク質は、EUシステムに従って番号付けされた、以下のL242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される変異のうち1つ又は複数を含むIgG1定常領域を含むヒト抗体又はヒト化抗体である。種々の実施形態では、治療用タンパク質は、EUシステムに従って番号付けされた、以下のL242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される変異のうち1つ又は複数を含むIgG1定常領域を含むヒト抗体である。例として、変異は、EUの番号付けによるN297Gと、R292C及び/又はV302Cのうち少なくとも1つとを含み得る。例として、変異は、EUの番号付けによるN297G、R292C及びV302Cを含み得る。
【0035】
抗体、抗原結合タンパク質、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャー分子、二重特異性抗体又は三重特異性抗体の「重鎖」は、可変領域(「VH」)並びに3つの定常領域、即ちCH1、CH2及びCH3を含む。抗体、抗原結合タンパク質、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャー分子、二重特異性抗体又は三重特異性抗体の「軽鎖」は、可変領域(「VL」)並びに定常領域(「CL」)を含む。ヒト軽鎖は、カッパ鎖及びラムダ鎖を含む。抗原結合タンパク質に適する例示的な軽鎖定常領域としては、ヒトラムダ定常領域及びヒトカッパ定常領域が挙げられる。
【0036】
種々の態様において、治療用タンパク質は、抗体タンパク質生成物である。本明細書で使用する場合、「抗体タンパク質生成物」という用語は、様々な例において、抗体の構造に基づくが自然界には見られない幾つかの抗体代替物のいずれか1つを指す。一部の態様において、抗体タンパク質生成物は、少なくとも約12~150kDaの範囲内の分子量を有する。ある特定の態様において、抗体タンパク質生成物は、高次の価数でない場合、単量体(n=1)から二量体(n=2)まで、三量体(n=3)まで、四量体(n=4)までの価数(n)範囲を有する。一部の態様において、抗体タンパク質生成物は、完全な抗体構造をベースとするもの及び/又は完全な抗原結合能を保持する抗体断片、例えば、scFv、Fab及びVHH/VH(以下で説明する)を模倣するものである。完全な抗原結合部位を保持する最小の抗原結合抗体断片は、完全に可変(V)領域からなるFv断片である。可溶性で可動性のアミノ酸ペプチドリンカーを使用して、分子を安定化させるためにV領域をscFv(単鎖断片可変)断片に連結するか、又は定常(C)ドメインをV領域に付加してFab断片[抗原結合性の断片]を生成する。scFv断片及びFab断片は両方とも、宿主細胞、例えば原核生物宿主細胞の中で容易に産生させることができる。他の抗体タンパク質生成物としては、ジスルフィド結合安定化scFv(ds-scFv)、単鎖Fab(scFab)並びにオリゴマー化ドメインに連結されたscFvからなる異なる形式を含む、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディ又はミニボディ(ミニAb)のような二量体抗体及び多量体抗体形式が挙げられる。最小の断片は、ラクダ科の重鎖Ab及び単一ドメインAb(sdAb)のVHH/VHである。新規の抗体形式を作製するために最も頻繁に使用される構築ブロックは、約15個のアミノ酸残基のペプチドリンカーにより連結された重鎖及び軽鎖由来のVドメイン(VHドメイン及びVLドメイン)を含む、単鎖可変(V)ドメイン抗体断片(scFv)である。ペプチボディ又はペプチド-Fc融合体は、さらに別の抗体タンパク質生成物である。ペプチボディの構造は、Fcドメインにグラフト化された生物活性ペプチドからなる。ぺプチボディは、当技術分野で十分に説明されている。例えば、Shimamoto et al.,mAbs 4(5):586-591(2012)を参照されたい。二重特異性T細胞エンゲージャー分子、例えば半減期延長部分を含むものも、抗体タンパク質生成物の例である。
【0037】
本明細書に記載される方法に適した治療用タンパク質には、以下のCD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD22、CD30及びCD34などのCDタンパク質のうち1つ又は複数に結合するものを含むポリペプチド、受容体結合を妨げるものを含むポリペプチドを含めることができる。HER受容体ファミリータンパク質、例えば、HER2、HER3、HER4及びEGF受容体。細胞接着分子、例えば、LFA-I、MoI、pl50、95、VLA-4、ICAM-I、VCAM及びアルファv/ベータ3インテグリン。増殖因子、例えば、血管内皮増殖因子(「VEGF」)、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミュラー管阻害物質、ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1アルファ)、エリスロポエチン(EPO)、神経増殖因子、例えばNGF-ベータ、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子、例えば、aFGF及びbFGF、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、特に、TGF-α及びTGF-β、例えば、TGF-βl、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4又はTGF-β5、インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II)、des(l-3)-IGF-I(脳IGF-I)並びに骨誘導因子。インスリン及びインスリン関連タンパク質、例えば、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン及びインスリン様増殖因子結合タンパク質。凝固及び凝固関連タンパク質、例えば、特に、第VIII因子、組織因子、フォン・ヴィレブランド因子、プロテインC、アルファ-1-アンチトリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子(「t-PA」)、ボンバジン(bombazine)、トロンビン及びトロンボポエチン;(vii)アルブミン、IgE、及び血液型抗原を含むがこれらに限定されない他の血液タンパク質及び血清タンパク質。コロニー刺激因子及びその受容体、例えば、特に以下のM-CSF、GM-CSF及びG-CSF並びにこれらの受容体、例えばCSF-1受容体(c-fms)。受容体及び受容体関連タンパク質、例えば、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、LDL受容体、成長ホルモン受容体、トロンボポエチン受容体(「TPO-R」、「c-mpl」)、グルカゴン受容体、インターロイキン受容体、インターフェロン受容体、T細胞受容体、幹細胞因子受容体、例えばc-Kit及び他の受容体。受容体リガンド、例えばOX40受容体のリガンドであるOX40L。神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)及びニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5又はNT-6)。リラキシンA鎖、リラキシンB鎖及びプロリラキシン、インターフェロン及びインターフェロン受容体、例えば、インターフェロン-α、-β及び-γ並びにこれらの受容体。インターロイキン及びインターロイキン受容体、特に、IL-1からIL-33及びIL-1受容体からIL-33受容体(例えばIL-8受容体)。ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープウイルス抗原。リポタンパク質、カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺界面活性物質、腫瘍壊死因子アルファ及びベータ、エンケファリナーゼ、RANTES(活性化において調節され、通常T細胞が発現及び分泌する(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted))、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、DNAse、インヒビン及びアクチビン。インテグリン、プロテインA又はD、リウマチ因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドジスムターゼ、表面膜タンパク質、崩壊促進因子(DAF)、HIVエンベロープ、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質、イムノアドヘシン、抗体。ミオスタチン、TALLタンパク質、例えば、TALL-I、アミロイドタンパク質、例えば、以下に限定されないが、アミロイドベータタンパク質、胸腺間質性リンパ球新生因子(「TSLP」)、RANKリガンド(「RANKL」又は「OPGL」)、c-kit、TNF受容体、例えば、TNF受容体1型、TRAIL-R2、アンジオポエチン、及び前述の内のいずれかの生物活性断片又は類似体若しくはバリアント。
【0038】
本明細書に記載される方法に適した治療用タンパク質の例としては、EUシステムに従って番号付けされた、以下のL242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される変異のうち1つ又は複数を含むIgG1定常領域を含む、抗体又はそのバリアントが挙げられる。例えば、インフリキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ラニビズマブ、パリビズマブ、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アラシズマブペゴル、ald518、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトクス、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アルチヌマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、トシリズマブ、バピネウズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビバツズマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、cc49、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、クレネズマブ、cr6261、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダラツムマブ、デムシズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、ドゥリゴツマブ、デュピルマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エナバツズマブ、エンリモマブペゴル、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エレヌマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エボロクマブ、エキシビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、fbta05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、gs6624、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リゲリズマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブ-cd3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピジリズマブ、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、PRO140、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テフィバズマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、テゼペルマブ、TGN1412、トレメリムマブ、チシリムマブ、チルドラキズマブ、チガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマフォドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ又はゾリモマブアリトクスが挙げられる。
【0039】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、BiTE(登録商標)分子である。BiTE(登録商標)分子は、がん細胞に対してT細胞の細胞傷害活性を指示する操作された二重特異性抗原結合コンストラクトである。これは、約55キロダルトンの単一ペプチド鎖上に、相異なる抗体の2つの単鎖可変断片(scFv)又は4種の異なる遺伝子由来のアミノ酸配列が融合したものである。scFvの一方は、CD3受容体を介してT細胞に結合し、他方は、腫瘍特異的分子を介して腫瘍細胞に結合する。ブリナツモマブ(BLINCYTO(登録商標)製品)は、CD19に特異的なBiTE(登録商標)分子の一例である。修飾されているBiTE(登録商標)分子(半減期を延長するように修飾されているものなど)も、開示されている方法において使用することができる。種々の態様において、ポリペプチドは、抗原結合タンパク質、例えばBiTE(登録商標)分子である。一部の実施形態では、抗体タンパク質生成物は、BiTE(登録商標)分子を含む。
【0040】
変異を含むIgG1定常領域に結合する抗体
本明細書に記載される変異を含むIgG1定常領域に結合する抗体は、本明細書に記載される方法及びキットにおいて使用され得る。抗体は、EUシステムに従って番号付けされた、L242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される1つ又は複数の変異を含むIgG1に特異的に結合することができる。例えば、IgG1は、EUの番号付けによるN297Gと、R292C及び/又はV302Cのうち少なくとも1つとを含み得る。抗体は、モノクローナル抗体であり得る。例として、抗体は、マウス、ハムスター、ラット、ウサギ、ヤギ又はロバなどの哺乳動物の宿主生物に由来するものでもよい。例えば、抗体は、マウスモノクローナル抗体であり得る。抗体は、本明細書に記載される基体に固定化されて提供されてもよい。基体に固定化された抗体は、本明細書において「捕捉抗体」とも呼ばれ得る。一部の実施形態では、抗体は、アミノ酸配列CEEQYGSTYRC(配列番号1)に結合する。一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体1A3を含むか、それから実質的になるか、又はそれからなる。
【0041】
本明細書に記載される変異を含むIgG1定常領域に結合する適切な抗体は、当技術分野において確立されている技術によって調製され得る。例えば、抗体は、動物(例えば、マウス若しくはラット又はウサギなどの本明細書に記載される哺乳動物)を、変異を含むIgG1定常領域を含むか又はそれからなるタンパク質で免疫化し、次いで、免疫化スケジュールの完了後に動物から採取した脾臓細胞を不死化することによって調製され得る。脾臓細胞は、当技術分野において公知の任意の技術を使用して、例えば、脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを生成することによって、不死化することができる。例えば、Antibodies;Harlow and Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1
st Edition(例えば1988年から)、又は2
nd Edition(例えば2014年から)を参照されたい。例として、抗体は、アミノ酸配列
【化4】
を含むか又はそれからなるタンパク質に対して産生され得る。一部の実施形態では、本発明の方法は、アミノ酸配列
【化5】
を含むか又はそれからなるタンパク質に対する抗体を産生するステップを含む。本明細書に記載される方法において、抗体は、治療用タンパク質のIgG1領域に結合するために使用され得る。
【0042】
ある特定の実施形態では、所望の抗体を産生しているB細胞が選択され、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域が、確立された分子生物学技術(国際公開第92/02551号パンフレット、米国特許第5,627,052号明細書、Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843 48(1996))に従ってB細胞からクローニングされ、本明細書に記載される。所望の抗体を産生している細胞を選択することにより、免疫化した動物由来のB細胞が、脾臓、リンパ節又は末梢血液試料から単離され得る。B細胞は、ヒトからも、例えば末梢血試料から単離され得る。所望の特異性を有する抗体を産生している単一のB細胞を検出する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、プラーク形成、蛍光活性化細胞選別、インビトロ刺激後の特異的抗体の検出などによる。特異的抗体を産生するB細胞を選択する方法には、例えば、抗原を含有する軟寒天中でB細胞の単一の細胞懸濁液を調製することが含まれる。B細胞によって産生される特異的抗体が抗原に結合すると、複合体の形成が起こるが、この複合体は、免疫沈降物として可視であり得る。所望の抗体を産生するB細胞が選択された後、特定の抗体遺伝子が、当技術分野において公知の方法に従ってDNA又はmRNAを単離及び増幅することによってクローニングされ得る。
【0043】
本開示の抗体を得る追加の方法は、ファージディスプレイによるものである。例えば、Winter et al.,1994 Annu.Rev.Immunol.12:433 55;Burton et al.,1994 Adv.Immunol.57:191 280を参照されたい。ヒト又はマウスの免疫グロブリン可変領域遺伝子のコンビナトリアルライブラリーをファージベクター内で作製してもよく、これをスクリーニングして、PCSK9又はそのバリアント若しくは断片に特異的に結合するIg断片(Fab、Fv、sFv、又はそれらの多量体)を選択することができる。例えば、米国特許第5,223,409号明細書;Huse et al.,1989 Science 246:1275-81;Sastry et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5728-32(1989);Alting Mees et al.,Strategies in Molecular Biology 3:1-9(1990);Kang et al.,1991 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4363-66;Hoogenboom et al.,1992 J.Molec.Biol.227:381-388;Schlebusch et al.,1997 Hybridoma 16:47-52;及びこれらの中で引用されている文献を参照されたい。例えば、Ig可変領域断片をコードする複数のポリヌクレオチド配列を含有するライブラリーが、ファージコートタンパク質をコードする配列とインフレームでM13又はそのバリアントなどの糸状バクテリオファージのゲノムに挿入され得る。融合タンパク質は、コートタンパク質の、軽鎖可変領域ドメインとの及び/又は重鎖可変領域ドメインとの融合体であり得る。ある特定の実施形態によれば、免疫グロブリンFab断片は、ファージ粒子上にもディスプレイされ得る(例えば、米国特許第5,698,426号明細書を参照)。
【0044】
重鎖及び軽鎖免疫グロブリンcDNA発現ライブラリーは、ラムダファージ中に、例えばλImmunoZap(商標)(H)ベクター及びλImmunoZap(商標)(L)ベクター(Stratagene,La Jolla,California)を使用して調製することもできる。簡潔に述べると、mRNAをB細胞集団から単離し、これを使用して、λImmunoZap(H)ベクター及びλImmunoZap(L)ベクターの中に、重鎖及び軽鎖免疫グロブリンcDNA発現ライブラリーを作製する。これらのベクターを個別にスクリーニングするか又は同時発現させて、Fab断片又は抗体を形成することができる(Huse et al.,前掲を参照;Sastry et al.,前掲も参照)。その後、陽性プラークを非溶解性のプラスミドに変換させることができ、これにより、E.コリ(E.coli)などの微生物由来のモノクローナル抗体断片の高レベルでの発現が可能になる。
【0045】
上記の免疫化及び他の技術のいずれかを使用して、本開示による変異を含むIgG1に結合する抗体を産生する細胞が得られると、本明細書に記載される標準手順に従って、それからDNA又はmRNAを単離し、増幅することにより、特定の抗体遺伝子をクローニングし得る。そこから産生された抗体を配列決定し、CDRを同定してもよく、CDRをコードするDNAを前述のとおりに操作して、本開示による変異を含むIgG1に結合する他の適切な抗体を生成してもよい。
【0046】
抗体結合部位の中央にある相補性決定領域(CDR)の分子進化もまた、例えば、Schier et al.,1996,J.Mol.Biol.263:551によって記載されているとおりの親和性が増大した抗体を単離するために使用されてきた。したがって、そのような技術は、本開示の抗体を調製する際に有用である。
【0047】
基体
本明細書に記載される方法及びキットにおいて、本明細書に記載される変異を含むIgG1に結合する抗体は、ビーズなどの基体に固定化され得る。例えば、基体は、非多孔性単分散超常磁性ビーズ(例えばDYNABEADS(登録商標)ビーズとして市販)を含むか又はそれからなるビーズであり得る。ビーズは、約2~4μM、約2~3μM、約2.5~3.5μM、約3μM又は2.8μMの平均直径を有し得る。抗体は、例えば、p-トルエン-スルホニル(トシル活性化)化学作用、又はアビジン-ビオチン化学作用を介して、ビーズに共有結合的に固定化され得る。任意選択により、ビーズは、Sepahroseビーズを含み得るか、又はそれからなり得る。しかしながら、M-280 DYNABEADS(登録商標)ビーズなどの非多孔性単分散超常磁性ビーズは、SEPHAROSE(登録商標)ビーズより高い再現性をもたらすことが認められている。
【0048】
治療用タンパク質を単離する方法
本明細書に記載される種々の実施形態によって、治療用タンパク質を試料から単離する方法が記載される。治療用タンパク質は、本明細書に記載される1つ又は複数の変異を含むIgG1定常領域を含み得る。治療用タンパク質は、野生型IgG1と比較して、治療用タンパク質のIgG1定常領域に選択的に結合する抗体とともにインキュベートされ得る。抗体は、本明細書に記載される基体に固定化され得る。このようにして、固定化された抗体は、治療用タンパク質に結合し得る。治療用タンパク質のIgG1定常領域に結合した固定化抗体は洗浄され得る。治療用タンパク質は溶出され得、このようにして治療用タンパク質を単離し得る。任意選択により、少なくとも1つの分析技術が、溶出された(及び単離された)治療用タンパク質に適用され、例えば、インビボ環境に入った後の治療用タンパク質の1つ又は複数の分子特性の存在及び/又はレベルが検出される。例えば、分析技術は、クロマトグラフィー及び/又は質量分析法を含み得る。一部の実施形態では、治療用タンパク質のIgG1定常領域は、EUシステムに従って番号付けされた、以下のL242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される変異のうち1つ又は複数を含む。
【0049】
治療用タンパク質を試料から単離する例示的な方法は、
図1に説明されている。任意選択により、本方法は、(野生型IgG1と比較して)本明細書に記載される1つ又は複数の変異を含むIgG1定常領域に選択的に結合する抗体を、基体に固定化するステップを含むことができる110。本方法は、治療用タンパク質を、基体に固定化された抗体とともにインキュベートするステップをさらに含むことができる。抗体は、(野生型IgG1と比較して)1つ又は複数の変異を含むIgG1定常領域に選択的に結合することができ、それにより、固定化抗体は、治療用タンパク質のIgG1定常領域に結合する120。本明細書に記載されるとおり、治療用タンパク質は、EUシステムに従って番号付けされた、以下のL242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される変異のうち1つ又は複数を含むIgG1定常領域を含み得る。本方法は、治療用タンパク質のIgG1定常領域に結合した固定化抗体を洗浄するステップを含むことができる130。任意選択により、その洗浄は、1回又は複数回反復され得る。治療用タンパク質は、溶出することができる140。治療用タンパク質は、酸性溶出剤中で溶出され得る。酢酸などの酸性溶出剤は、本明細書においてさらに説明される。このようにして、治療剤が単離され得る。一部の実施形態では、1つ又は複数の分析技術が、溶出された治療用タンパク質に適用され得る150。
【0050】
一部の実施形態では、本方法は、治療用タンパク質のIgG1定常領域に結合する抗体を基体に固定化するステップをさらに含む。固定化するステップは、抗体を基体に結合させることを含み得る。例えば、非多孔性単分散超常磁性ビーズである基体の場合、本方法は、トシル活性化化学作用又はビオチン-アビジン化学作用を使用して、抗体を共有結合することを含むことができる。
【0051】
終夜、1時間及び10分のインキュベーション時間を比較し、終夜及び1時間の、より長いインキュベーション時間はより大きい凝集をもたらすことが観察された(実施例2)。したがって、約10分(又は10分以下)など、20分以下のインキュベーション時間にすると、凝集を最小限にしながら治療用タンパク質の優れた単離ができると考えられる。一部の実施形態の方法において、インキュベーションは、約20分以下の間、例えば、20分以下、15分以下、10分以下、8分以下、5分以下、又は3分以下の間なされる。例として、インキュベーションは、ローラー上で実行されてもよい。
【0052】
治療用タンパク質を抗体とともにインキュベートした後、治療用タンパク質のIgG1定常領域に結合した固定化抗体は洗浄され得る。洗浄は、PBSなどの緩衝液中で実行され得る。洗浄は、pH6~8又は7~8でなされ得る。任意選択により、2回以上の洗浄、例えば、少なくとも1回、2回、3回、4回又は5回の洗浄(列挙した回数の任意の2つの間の範囲を含み、例えば1~5回の洗浄)が実行され得る。
【0053】
次いで、インキュベートされた治療用タンパク質は溶出され得る。本明細書において、治療用タンパク質の様々な溶出条件が比較された。試験した溶出溶液及びpHは、100mM酢酸緩衝液(pH3.6、pH4.6及びpH5.6)、酢酸(0.005%、0.01%、0.05%及び0.1%)、100mMグリシン(pH3.0、pH3.5及びpH4.0)及びThermo Gentle Elution Bufferであった。0.05%酢酸では、他の溶出よりHMWピーク面積が小さいことが観察された(実施例2)。0.05%酢酸はpHが3.4であった(0.005%酢酸のpH3.9、0.01%酢酸のpH3.8、及び0.05%酢酸のpH3.3と比較して)ため、約3.4~約3.7の溶出pHは、HWM種を最小限にしながら優れた単離を提供すると考えられた。このため、溶出は酢酸などの酸性溶出剤中でなされ得ると理解されるであろう。一部の実施形態では、溶出は、3.4~3.7、3.4~3.6、3.4~3.5又は約3.4のpHでなされる。一部の実施形態では、溶出は、酢酸、例えば、0.02%~0.09%酢酸、0.02%~0.07%酢酸、0.02%~0.05%酢酸又は0.05%~0.09%酢酸を含む溶液中でなされる。酢酸中での溶出は、3.4~3.7、3.4~3.6、3.4~3.5又は約3.4のpHを有し得る。
【0054】
試料に由来する抗原に結合したままである治療用タンパク質を単離することは望ましいことであり得る。これは、抗原結合と相関する治療用タンパク質の分子特性の情報を提供する分析を可能にし得る。したがって、一部の実施形態では、治療用タンパク質は、抗原結合タンパク質(例えば、抗体、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))分子、二重特異性抗体又は三重特異性抗体)であり、試料中でその抗原に結合している。治療用タンパク質は、溶出後、その抗原に結合したままであり得る。
【0055】
治療用タンパク質の溶出後、本方法は、1つ又は複数の分析技術を治療用タンパク質に適用するステップをさらに含み得る。例えば、分子特性の存在及び/又はレベルが同定され得る。溶出された治療用タンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)などのクロマトグラフィーによって分析され得る。SECは、いずれの標的にも結合していない治療用タンパク質と、標的に結合した治療用タンパク質との相対量を同定し得る。例として、標的に結合した治療用タンパク質の画分が決定され得る。例として、標的に結合している(又は結合していない)治療用タンパク質と相関する分子特性が決定され得る(例えば、PCT公開番号、国際公開第2020/247790号パンフレットを参照されたい。これは、SECにより同定された治療用タンパク質複合体と分子特性との関係を記載しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。また、複合体中の治療用タンパク質及び/又は標的の化学量論数も決定され得る(例えば
図5を参照されたい)。したがって、一部の実施形態では、本方法は、溶出された治療用タンパク質をクロマトグラフィーカラム(例えばSECカラム)に適用するステップを含む。抗原結合タンパク質(本明細書に記載される抗体又は抗体タンパク質生成物など)である治療用タンパク質の場合、治療用タンパク質は、試料中でその抗原に結合し得、治療用タンパク質は、溶出後、その抗原に結合したままであり得、サイズ排除クロマトグラフィーは、抗原に結合した治療用タンパク質の複合体を検出することを含み得る。
【0056】
一部の実施形態では、少なくとも1つの分析技術が、溶出された治療用タンパク質に適用される。適切な分析技術の例としては、質量分析法、クロマトグラフィー、電気泳動法、分光法、光遮蔽法、粒子法(ナノ粒子/可視/ミクロンサイズの共振式質量又はブラウン運動など)、分析用遠心分離、画像法若しくは画像特性評価法、又は免疫測定法が挙げられる。一部の実施形態では、本方法は、単離された抗体に質量分析法を実行するステップを含む。質量分析法は、1つ又は複数の分子特性の存在及び/又はレベルを同定するためのペプチドマッピング分析の一部であり得る。例として、LC-MS/MSによるペプチドマッピングが、溶出された治療用タンパク質に対して実行され得る。
【0057】
分子特性の例としては、酸性種、塩基性種、高分子量種、肉眼で不可視の粒子数、低分子量、中分子量、グリコシル化(非グリコシル化重鎖又は高マンノースなど)、非重鎖及び軽鎖、脱アミド化、脱アミノ化、環化、酸化、異性化、断片化/クリッピング、N末端バリアント及びC末端バリアント、還元種及び部分種、折り畳み構造、表面疎水性、化学修飾、共有結合、C末端アミノ酸モチーフPARG、又はC末端アミノ酸モチーフPAR-アミドが挙げられる。
【0058】
治療用タンパク質は、単離すると、試料の他のタンパク質を含まないか、又は実質的に含まない。例えば、単離された治療用タンパク質は、少なくとも以下の1つであり得る:(1)通常治療用タンパク質がともに見出されることになる少なくとも一部の他のタンパク質を含まない、(2)試料が由来した対象の種に由来する他のタンパク質を実質的に含まない、及び/又は(3)試料のポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、又は他の材料の少なくとも約50パーセントから分離されている。例として、試料が由来した対象によって産生された血清タンパク質は、単離された治療用タンパク質の組成物中に存在するタンパク質の3%以下、2%以下、1%以下又は0.1%以下を占め得る。例として、試料が由来した対象によって産生された免疫グロブリンは、単離された治療用タンパク質の組成物中に存在するタンパク質の3%以下、2%以下、1%以下又は0.1%以下を占め得る。一部の実施形態では、単離された治療用タンパク質は、それが存在する組成物の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%又は少なくとも約50%を構成する。
【0059】
キット
本明細書に記載される種々の実施形態によれば、治療用タンパク質を試料から単離するためのキットが記載される。キットは、本明細書に記載される1つ又は複数の変異を含むIgG1定常領域に選択的に結合する抗体を含むことができる。例えば、IgG1定常領域は、L242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及びK334Cからなる群から選択される1つ又は複数の変異を含み得る。例えば、IgG1は、N297Gと、R292C及び/又はV302Cのうち少なくとも1つとを含み得る。一部の実施形態では、キットは、基体をさらに含む。基体は、抗体をその基体の上に固定化するように構成されていてもよく、又はキットの抗体は、基体に固定化されていてもよい。例えば、基体は、本明細書に記載される非多孔性単分散超常磁性ビーズを含み得る。
【0060】
任意選択により、キットは、1種又は複数種の洗浄緩衝液及び/又は溶出緩衝液をさらに含み得る。例えば、溶出緩衝液は、約3.4~約3.7、約3.4、3.4~3.7、3.4~3.6又は3.4~3.5のpHを有し得る。溶出緩衝液は、酢酸、例えば、0.02%~0.09%酢酸、0.02%~0.07%酢酸、0.02%~0.05%酢酸又は0.05%~0.09%酢酸を含み得る。
【実施例】
【0061】
実施例1:材料
ヒト血清は、EMD Millipore(Billerica、MA、USA)から購入した。全ての治療用タンパク質(mAb1及び抗原結合タンパク質1)及び抗原1は、Amgen Incから入手した。DYNABEADS(登録商標)M-280トシル活性化、PBS緩衝液、酢酸(≧99.99%)、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、トリス溶液及び組換え抗原2タンパク質は、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA、USA)から取得した。硫酸アンモニウム及びウシ血清アルブミン(BSA)は、Sigma Aldrich(St.Louis、MO、USA)から入手した。試験した治療用タンパク質は、Amgen Inc.から入手し、mAb1(抗原1及び抗原2に同時に結合するヘテロIgG二重特異性モノクローナル抗体)及び抗原結合タンパク質1(半減期延長(HLE)部分を含む二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))分子)を含んでいた。両方の治療用タンパク質は、変異R292C、N297G及びV302C(EUの番号付け)を含むIgG1定常領域を含み、特に、これらの変異を含むアミノ酸配列CEEQYGSTYRC(配列番号1)を含んでいた。
【0062】
実施例2:治療用タンパク質mAb1の単離
1A3 mAbに結合したDYNABEAD(登録商標)ビーズの調製
出願人が生成した抗SEFL2 mAb(1A3 mAb)を、製造元のプロトコルに従ってM-280トシル活性化DYNABEADS(登録商標)に結合させた。簡潔に述べると、50mgのビーズをPBS緩衝液(pH7.4)で洗浄し、3M硫酸アンモニウム中1mgの1A3 mAbを、洗浄したビーズに添加し、ローラー上で終夜インキュベートした。上清を除去した後、次いで0.5%(w/v)BSAを加えたPBS(pH7.4)をビーズに1時間適用して、非特異的結合を防止した。洗浄した後、ビーズをPBS緩衝液(約20mg/mL)中で再構成した(
図1)。
【0063】
治療用タンパク質の精製
100μLのビーズ(標的タンパク質に対する最大結合能20μg)を、治療用タンパク質を含有する溶液に添加し、インキュベーションをローラー上で実行した。次いでチューブを磁石デバイス上に約1分間置き、その後、上清を慎重に除去した。回収したビーズをPBSで3回洗浄し、その後、目標のタンパク質を溶出した(
図1)。
【0064】
サイズ排除クロマトグラフィー
Waters Acquity UPLC System(Milford、MA、USA)を、Acquity UPLC BEH SECカラム(200Å、1.7μm、4.6mm×300mm)とともに使用して、分離し、その後検出した。移動相A、B、C及びDは、それぞれ、500mM一塩基性リン酸ナトリウム、500mM二塩基性リン酸ナトリウム、1000mM塩化ナトリウム及び水からなるものとした。試料(6μg)を、流速0.4mL/分で移動相(7%A:13%B:25%C:55%D)とともにSECカラムに導入し、次いで同じ移動相組成及び流速で、12分にわたり定組成溶出を実行した。溶出液を、TUV検出器により、220nm及び280nmで、サンプリング速度20ポイント/秒にてモニターした。データは、Empower3ソフトウェア(Waters)を使用して、手作業で解釈した。
【0065】
イムノアフィニティー精製条件の考察
mAb1を、イムノアフィニティー精製条件の最適化のために使用した。mAb1を、1A3でカスタマイズしたDYNABEAD(登録商標)ビーズとともにインキュベートした後、SEC分析のために上清を回収した。
図2のSECプロファイルに示されているように、上清は、UVシグナルを生成しなかった。これは、全てのmAb1がDYNABEAD(登録商標)ビーズに結合したことを示す。
【0066】
次に、インキュベーション時間を、mAb1とDYNABEADS(登録商標)とを10分間、1時間及び終夜混合し、次いでDYNABEADS(登録商標)を洗浄し、溶出することによって最適化した。SECプロファイルにおいて、約5.8分で溶出した主ピーク(mAb1単量体に相当)の他に、約4.5分で溶出した高分子量(HMW)種に相当する追加のピークも観察された(
図3)。HMWピーク面積は10分のインキュベーション時間では5%であった。しかしながら、1時間及び終夜のインキュベーションでは、29%及び30%のHMWピーク面積が生成し、これは、インキュベーション時間を長くすると、タンパク質凝集の程度が高くなることを示す。したがって、インキュベーション時間を10分に最適化した。
【0067】
精製された治療用タンパク質に対する溶出溶液の影響も試験した。出願人は、100mM酢酸緩衝液(pH3.6、pH4.6及びpH5.6)、酢酸(0.005%、0.01%、0.05%及び0.1%)、100mMグリシン(pH3.0、pH3.5及びpH4.0)及びThermo Gentle Elution Bufferを含む、様々なpHの異なる溶出剤を調査した。0.05%酢酸が最小のHMWピーク面積をもたらし、これを溶出溶液として選択した。
【0068】
血清マトリックス中の治療用タンパク質の精製
最適化した治療用タンパク質精製手順を、ヒト血清に添加されたmAb1に適用した(
図4)。1A3 mAb(DYNABEADS(登録商標)に結合している)は、SEFL2変異を有する抗体に特異的に結合する。結果として、ブランク血清試料は、妨害ピークを生成しなかった。mAb1を、PBS及び血清から精製することに成功した(主ピークとして示されている)。加えて、かなり大きいHMW領域が、ヒト血清に添加されたmAb1の試料中に検出された。血清マトリックス中のHMWピーク面積パーセンテージは55%~36%の範囲であり(mAb1濃度0.015g/L~1.2g/Lに相当)、PBS緩衝液マトリックス中のHMWピーク面積パーセンテージと比較して非常に大きい。したがって、大きいHMWピーク面積は、mAb1に結合する血清タンパク質(又はmAb1のHMW種)を原因とする可能性があった。観察されたHMWは、さらに特性評価されることになる。
【0069】
血清マトリックス中の治療用タンパク質-標的複合体の精製
免疫複合体の精製に適用を広げるために、開発した治療用タンパク質の精製方法を、mAb1及びその抗原(結合標的とも呼ばれ得る)を添加したヒト血清に適用した(
図5)。mAb1は、三量体抗原2及び抗原1の両方を同時に標的とする二重特異性のヘテロIgGである。
【0070】
1:1の比で添加されたmAb1及び抗原2を含有するヒト血清の場合、HMW溶出域で2つのピーク(非太線)が分離した。これは、抗原2が、1つのmAb1及び2つ以上のmAb1に結合する可能性があることを示す。mAb1と抗原1と抗原2とを2:1:1の比で含有するヒト血清の場合、初期に幅広のHMWピークが溶出した。これは、mAB1とその標的との大複合体の形成を示す。ピーク同定は全て、単に保持時間に基づき、他の技術では確認されていない。
【0071】
実施例3:治療用タンパク質である「抗原結合タンパク質1」の単離
実施例2に記載された手法(及び実施例1に記載された材料を使用して)を、例として、半減期延長部分を有する二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))分子である抗原結合タンパク質1にも適用した。
図6に示されるように、抗原結合タンパク質1を、PBS又は血清マトリックスから精製することに成功した。HMWピークは、DYNABEADS(登録商標)上の高密度の捕捉抗体によって引き起こされる可能性があり、表面積がより大きいアガロースビーズに交換すると、HMW種の収量がより少なくなり得る。
【0072】
結論
治療用タンパク質を血清マトリックスから抽出するのに有用なイムノアフィニティープラットフォーム方法が開発された。その方法において、治療用タンパク質は、IgG1領域に特定の変異を含む。目的のタンパク質の単離及び濃縮のため、IgG1を標的とする抗体を、磁気ビーズに共有結合させた。このプラットフォーム手法を使用して、mAb1(及び血清由来のその複合体)及び抗原結合タンパク質1を単離することに成功した。開発された方法は、他のmAb及びIgG1に操作された変異を有する種類に拡大されることが期待される。この方法を使用して、インビボ曝露後に治療用タンパク質を精製して、CQA分析を支援し得る。
【0073】
参考文献
以下の文献の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
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15.Perform reproducible immunoprecipitation in less than 40 minutes.Accessible on the world wide web at assets.thermofisher.com/TFS-Assets/LSG/brochures/reproducible-immunoprecipitation-brochure.pdf.
【配列表】
【国際調査報告】