(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ブレージングシート、ブレージングシートから形成された物品、及び物品を形成する方法
(51)【国際特許分類】
C22C 21/00 20060101AFI20240806BHJP
C22F 1/04 20060101ALI20240806BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
C22C21/00 E
C22C21/00 J
C22C21/00 D
C22F1/04 Z
C22F1/00 614
C22F1/00 622
C22F1/00 623
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 640A
C22F1/00 651A
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686Z
C22F1/00 691Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506524
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 US2022073150
(87)【国際公開番号】W WO2023015072
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520119242
【氏名又は名称】アーコニック テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ARCONIC TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾンカー,ハリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】クロビッツ,アンドレアス ケイ.
(57)【要約】
ブレージングシートと、ブレージングシートの全て又は一部分から形成されるか、又は含む物品と、物品を形成する方法と、が提供される。ブレージングシートは、コア層、ブレージング層、並びにコア層及びブレージング層の中間にあるインターライナ層を含む。コア層は、第1のアルミニウム合金を含み、コア層は、少なくとも部分的に再結晶化されている。ブレージング層は、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む。インターライナ層は、第2のアルミニウム合金を含み、インターライナ層は、再結晶化されていない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレージングシートであって、
第1のアルミニウム合金を含むコア層であって、少なくとも部分的に再結晶化されている、コア層と、
4XXXシリーズアルミニウム合金を含むブレージング層と、
前記コア層及び前記ブレージング層の中間にあり、かつ第2のアルミニウム合金を含む、インターライナ層であって、再結晶化されていない、インターライナ層と、を備える、ブレージングシート。
【請求項2】
前記第1のアルミニウム合金が、第1の再結晶化温度を有し、前記第2のアルミニウム合金が、第2の再結晶化温度を有し、前記第2の再結晶化温度が、前記第1の再結晶化温度よりも大きい、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項3】
前記コア層が、均質化される、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項4】
前記インターライナ層が、1cm
2当たり少なくとも100,000,000の転位密度を有する、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項5】
前記インターライナ層が、1cm
2当たり10,000,000以下の転位密度を有する再結晶化された粒子を含まない、請求項1に記載のブレージングシート
。
【請求項6】
前記コア層が、1cm
2当たり10,000,000以下の転位密度を有する、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項7】
前記コア層の粒子が、第1のアスペクト比を有し、前記インターライナ層の粒子が、第2のアスペクト比を有し、前記第2のアスペクト比が、前記第1のアスペクト比よりも大きく、各アスペクト比が、長短横断面に対する平均粒子長さと粒子高さとの間の比を指す、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項8】
前記インターライナ層が、均質化されない、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項9】
前記インターライナ層が、液体膜移行を阻害するように構成されている、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項10】
前記第2のアルミニウム合金が、前記第2のアルミニウム合金の総重量に基づいて、少なくとも0.01重量パーセントのジルコニウムを含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項11】
前記コア層、前記インターライナ層、及び前記ブレージング層が、一緒に接着されている、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項12】
前記第1のアルミニウム合金が、3XXXシリーズアルミニウム合金又は6XXXシリーズアルミニウム合金である、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項13】
前記第1のアルミニウム合金が、前記第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
0~1.2のシリコンと、
0~1.0の銅と、
0~0.25のジルコニウムと、
0~0.8の鉄と、
0~2.0のマンガンと、
0~3.0の亜鉛と、
0~1.5のマグネシウムと、
0~0.25のチタンと、
0~0.3のクロムと、
0~0.5のビスマスと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項14】
前記ブレージング層が、前記コア層の第1の側面上に配設された第1のブレージング層であり、
第2のブレージング層が、前記コア層の前記第1の側面の反対側の前記コア層の第2の側面上に配設され、前記第2のブレージング層が、1XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、4XXXシリーズアルミニウム合金、又は7XXXシリーズアルミニウム合金を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項15】
前記ブレージング層が、前記コア層の第1の側面上に配設された第1のブレージング層であり、
前記インターライナ層が、第1のインターライナ層であり、
第2のブレージング層が、前記コア層の前記第1の側面の反対側の前記コア層の第2の側面上に配設され、前記第2のブレージング層が、1XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、4XXXシリーズアルミニウム合金、又は7XXXシリーズアルミニウム合金を含み、
第2のインターライナ層が、前記コア層及び前記第2のブレージング層の中間に配設される、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項16】
前記ブレージングシートが、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方に好適である、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項17】
各ブレージング層の前記4XXXシリーズアルミニウム合金が、前記4XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
5~15のシリコンと、
0~2.0のマグネシウムと、
0~1.0の鉄と、
0~3.0の亜鉛と、
0~2.0の銅と、
0~1.0のマンガンと、
0~0.2のチタンと、
0~0.3のビスマスと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項18】
前記コア層が、前記ブレージングシートの総厚さの60%~90%の範囲の第1の厚さを含み、
前記インターライナ層が、前記ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第2の厚さを含み、
前記ブレージング層が、前記ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第3の厚さを含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項19】
請求項1のいずれかに記載のブレージングシートの全て又は一部分を含む構造要素を備える、熱交換器。
【請求項20】
物品を形成するための方法であって、前記方法が、
第1の材料を含む第1の部分を、請求項1に記載のブレージングシートの全て又は一部分を含む第2の部分と接触させることと、
制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方を含むプロセスによって、前記第1の部分を前記第2の部分にブレージングすることと、を含む、方法。
【請求項21】
前記第1の材料が、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記物品が、熱交換器である、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<相互参照>
本出願は、35U.S.C.§119(e)に基づき、2021年8月3日に出願された米国仮特許出願第63/228,740号、及び2022年1月4日に出願された米国仮特許出願第63/266,367号の利益を主張する。その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ブレージングシートと、ブレージングシートの全て又は一部分から形成された製造物品、若しくはブレージングシートの全て又は一部分を含む製造物品と、製造物品を形成する方法と、に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、熱交換器などの様々な装置は、積み重ねられた特別に設計された金属プレートから形成され得る。プレート型熱交換器は、プレートの両側で2つの流体(例えば、液体、冷媒、又はそれらの組み合わせ)を循環させることによって機能し、プレートにわたって流体間の熱交換を可能にする。プレート型熱交換器が許容可能な耐食性を有することを確実にするために、装置は、プレート間の接合部に沿った、かつプレートを形成するために使用されるシート材料の厚さを通した腐食攻撃に抵抗するように設計され得る。プレート型熱交換器における腐食攻撃に対する耐性を増加させることは、重大な課題を提示する可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示による1つの非限定的な態様は、コア層、ブレージング層、並びにコア層及びブレージング層の中間にあるインターライナ層を含むブレージングシートを対象とする。様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシートは、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方に好適である構造を有する。ブレージングシートのコア層は、例えば、コア層が1cm2当たり10,000,000以下の転位密度を含むように、少なくとも部分的に再結晶化されている。ブレージングシートのインターライナ層が再結晶化されず、その結果、例えば、インターライナ層が、1cm2当たり10,000,000以下の転位密度を有する再結晶化された粒子を含まない。ブレージングシートのコア層は、例えば、3XXXシリーズアルミニウム合金又は6XXXシリーズアルミニウム合金などの第1のアルミニウム合金を含む。例えば、特定の非限定的な実施形態では、第1のアルミニウム合金は、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0~1.2のシリコンと、0~1.0の銅と、0~0.25のジルコニウムと、0~0.8の鉄と、0~2.0のマンガンと、0~3.0の亜鉛と、0~1.5のマグネシウムと、0~0.25のチタンと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、アルミニウムと、不純物と、を含む。ブレージングシートのインターライナライナは、第2のアルミニウム合金を含む。様々な非限定的な実施形態では、第2のアルミニウム合金は、第2のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、少なくとも0.01のジルコニウムを含む。様々な非限定的な実施形態では、第1のアルミニウム合金は、第1の再結晶化温度を有し、第2のアルミニウム合金は、第2の再結晶化温度を有し、第2の再結晶化温度は、第1の再結晶化温度よりも大きい。ブレージングシートのブレージング層は、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む。様々な非限定的な実施形態では、ブレージング層は、4XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、5~15のシリコンと、0~2.0のマグネシウムと、0~1.0の鉄と、0~3.0の亜鉛と、0~2.0の銅と、0~1.0のマンガンと、0~0.2のチタンと、0~0.3のビスマスと、アルミニウムと、不純物と、を含む、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む。本明細書で使用される場合、材料の「再結晶化温度」は、材料がその温度で1時間以下の時間加熱されたときに、材料の少なくとも90%が完全に再結晶化する最低温度である。再結晶化温度は、シート材料の材料組成及びシート材料の粒子中の歪みの量に依存する可能性がある。
【0005】
本開示による、なお別の非限定的な態様は、本開示によるブレージングシートを形成するための方法を対象とする。方法は、コア層を均質化して均質化したコア層を形成することと、3XXXシリーズアルミニウム合金を含む被加工物を熱間加工して、少なくとも1つのインターライナ層を形成することと、を含む。方法は、少なくとも1つのブレージング層、少なくとも1つのインターライナ層、及び均質化したコア層を一緒に熱間圧延してブレージングシートを形成することを更に含む。
【0006】
本開示によるブレージングシートの特定の非限定的な実施形態では、ブレージングシートのコア層は、ブレージングシートの総厚さの60%~90%の範囲の第1の厚みを含み、ブレージングシートのインターライナ層は、ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第2の厚みを含み、ブレージングシートのブレージング層は、ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第3の厚みを含む。様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシートは、第2のブレージング層及び/又は第2のインターライナ層を更に含む。
【0007】
本開示による追加の非限定的な態様は、本開示によるブレージングシートの実施形態の全て又は一部分を含む熱交換器を対象とする。特定の非限定的な実施形態では、熱交換器は、オイル冷却器又は液体冷却凝縮器である。
【0008】
本開示による、なお別の非限定的な態様は、物品を形成するための方法を対象とする。方法は、第1の材料を含む第1の部分を、本開示によるブレージングシートの実施形態の全て又は一部分を含む第2の部分と接触させることを含む。第1の部分は、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方を含むプロセスによって第2の部分に結合されている。様々な非限定的な実施形態では、第1の材料はアルミニウム又はアルミニウム合金を含む。特定の非限定的な実施形態では、物品は、例えば、オイル冷却器又は液体冷却凝縮器などの熱交換器である。
【0009】
当然のことながら、本明細書に開示及び説明された発明は、本概要に要約される態様に限定されない。読者は、本明細書による様々な非限定的かつ非網羅的な態様の以下の詳細な説明を考慮すると、前述の詳細並びに他の詳細を理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書に説明される実施例の特徴及び利点、並びにそれらを達成する方法は、以下の説明を添付図面と共に参照することによって、より明らかになり、実施例はよりよく理解されよう。
【0011】
【
図1】本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態の概略側面図である。
【0012】
【
図2】本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態の概略側面図である。
【0013】
【
図3】本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態の概略側面図である。
【0014】
【
図4】本開示による材料層の実施形態を冷間圧延する非限定的な実施形態を例解する概略斜視図である。
【0015】
【
図5A】アルミニウム合金を含み、再結晶化されていない材料層の一部分の断面側面図を示す顕微鏡写真である。
【0016】
【
図5B】アルミニウム合金を含み、少なくとも部分的に再結晶化されている材料層の一部分の断面側面図を示す顕微鏡写真である。
【0017】
【
図5C】アルミニウム合金を含み、完全に再結晶化されている材料層の一部分の断面側面図を示す顕微鏡写真である。
【0018】
【
図6】ブレージングシートを含む材料から物品を形成するための本開示による方法の非限定的な実施形態のブロック図である。
【0019】
【
図7A】少なくとも部分的に再結晶化されているインターライナ層を含む比較用ブレージングシートの一部分の断面側面図を示す顕微鏡写真である。
【0020】
【
図7B】
図7Aの比較用ブレージングシートの一部分の断面側面図を示す顕微鏡写真を提供する。
【0021】
【
図8A】再結晶化されていないインターライナ層を含む、本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態の一部分の断面側面図を示す顕微鏡写真である。
【0022】
【
図8B】
図8Aのブレージングシートの一部分の断面側面図を示す顕微鏡写真を提供する。
【0023】
【
図9A】再結晶化されていない第1のサンプルの粒子配向マップである。
【0024】
【
図9B】
図9Aに示す第1のサンプルのカーネル平均配向差(KAM)マップである。
【0025】
【
図10A】再結晶化されていない第2のサンプルの粒子配向マップである。
【0026】
【0027】
【
図11A】少なくとも部分的に再結晶化されている第3のサンプルの粒子配向マップである。
【0028】
【0029】
【
図12A】著しく再結晶化されている第4のサンプルの粒子配向マップである。
【0030】
【0031】
【
図13】どのように走査型電子顕微鏡の電子ビームがサンプル層の表面を走査し、各離散サンプリングスポットからキクチパターンを得るかを例解するシステム図である。
【0032】
【
図14】サンプルの歪みを判定するために、データ点間の配向差に基づいてKAMマップを作成するためにEBSDをどのように使用することができるかを例解するシステム図である。
【0033】
【
図15A】本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態の粒子配向マップである。
【0034】
【0035】
【
図16A】本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態の粒子配向マップである。
【0036】
【0037】
【
図17】ブレージングシートを形成するための本開示による方法の非限定的な実施形態のブロック図である。
【0038】
【
図18A】少なくとも部分的に再結晶化されているOテンパインターライナ層を含む、製作された比較用ブレージングシートの粒子配向マップである。
【0039】
【
図18B】破線が接合幅を示すブレージングプロセス後の、
図18Aの2枚の比較用ブレージングシートの一部分の断面側面図を示す写真顕微鏡写真を提供する。
【0040】
【
図19A】再結晶化されていないHテンパインターライナ層を含む、製作されたブレージングシートの非限定的な実施形態の粒子配向マップである。
【0041】
【
図19B】破線が茶色の帯を示すブレージングプロセス後の、
図19Aの2枚のブレージングシートの一部分の断面側面図を示す顕微鏡写真である。
【0042】
本明細書に記載される例示は、特定の実施形態を1つ以上の形態で例解し、このような例示は、いかなる様態においても、添付の特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0043】
様々な実施形態が本明細書に説明及び例解されており、開示された物品及び方法の構造、機能、及び使用の全体的な理解を提供する。本明細書に説明及び例解された様々な実施形態は、非限定的かつ非網羅的である。それ故に、本発明は、本明細書に開示の様々な非限定的かつ非網羅的な実施形態の説明によって限定されない。むしろ、本発明は特許請求の範囲によってのみ定義される。様々な実施形態に関連して例解及び/又は説明された特徴及び特性は、他の実施形態の特徴及び特性と組み合わされ得る。そのような修正及び変形は、本明細書の範囲内に含まれることが意図されている。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に明示的若しくは本質的に記述される、あるいは別様に明示的若しくは本質的に支持される任意の特徴又は特性を列挙するように修正され得る。更に、出願人は、特許請求の範囲を補正して、先行技術に存在し得る特徴又は特性を肯定的に放棄する権利を留保する。本明細書に開示及び説明される様々な実施形態は、本明細書に様々に説明される特徴及び特性を含む、それらから成る、又はそれから本質的に成ることができる。
【0044】
本明細書における「様々な実施形態」、「一部の実施形態」、「1つの実施形態」、「実施形態」、「非限定的な実施形態」、又は同様の句への言及は、実施例に関連して説明された特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それ故に、本明細書中の「様々な実施形態では」、「一部の実施形態では」、「1つの実施形態では」、「実施形態では」、「非限定的な実施形態では」という句、又は同様の句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。更に、特定の説明された特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態で任意の好適な様態で組み合わされ得る。それ故に、1つの実施形態に関連して例解又は説明された特定の特徴、構造、又は特性は、全体的に又は部分的に、限定されることなく、1つ以上の他の実施形態の特徴、構造、又は特性と組み合わされ得る。そのような修正及び変形は、本実施形態の範囲内に含まれることが意図されている。
【0045】
ブレージングシート内のHテンパコア層は、通常、均質化されず、腐食に耐性がある可能性のある茶色の帯を発生させることができる。本明細書で使用される場合、Hテンパは、ANSI H35.1/H35.1(M)-2017で提供される意味を有する。茶色の帯は、シリコンがブレージング層からコア層に拡散し、ブレージングプロセス中に固体溶液中のマンガン及び鉄と共に沈殿するときに、コア層内に形成することができる。コア層の茶色の帯は、ブレージング層とコア層との間の界面の近くに帯を形成する、小規模なAlxMnySiz又はAlx(Mn、Fe)ySiz分散体を含むことができる。界面における分散体の形成は、マンガンを固体溶液から引き出し、ブレージングシートの中心に対して陽極であるブレージングシート内により電気化学的に負の領域を作り出し、それによってHテンパコア層の全体的な耐食性を増加させる。しかしながら、Hテンパコア層は、比較的不良な形成性特性を有する可能性があり、これは、ブレージングシートを製造された製品に組み込むときに課題を生じさせる可能性がある。
【0046】
ブレージングシート内のOテンパコア層は、ブレージングシートを組み込む製品の製造を容易にする、Hテンパコア層よりも形成しやすい(例えば、軟質)可能性がある。本明細書で使用される場合、Oテンパは、ANSI H35.1/H35.1(M)-2017で提供される意味を有する。Oテンパコア層を含むブレージングシートの一実施例は、米国特許第7,255,932号に説明されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。比較的好ましい形成性特性を有するが、Oテンパコア層は、Hテンパコア層よりも腐食の影響を受けやすい場合がある。
【0047】
本開示は、有利な形成性特性、耐食性、及び液体膜移行抵抗を有し得るブレージングシートを提供する。ブレージングシートは、コア層、ブレージング層、並びにコア層及びブレージング層の中間にあるインターライナ層を含むことができる。コア層は、第1のアルミニウム合金を含み、少なくとも部分的に再結晶化することができる。ブレージング層は、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む。インターライナ層は、第2のアルミニウム合金を含み、再結晶化しない可能性がある。
【0048】
本明細書で使用される「コア層」という用語は、ブレージングシートの基材層を指す。様々な非限定的な実施形態では、「コア層」は、実質的にブレージングシートの中心に配設することができる。しかしながら、本開示によるブレージングシート内のコア層の位置は、ブレージングシートの中心に限定されない。コア層は、その両方の面上でブレージングシートの別の層で覆われる場合又は覆われない場合があり、例えば、コア層は、ブレージングシートの一方の側面上に配設され、露出させることができる。したがって、本明細書のブレージングシートの様々な非限定的な実施形態では、コア層は、ブレージングシートの他の層によって囲まれることができ、少なくとも部分的に露出された少なくとも1つの側面を有することができ、又は完全に露出された少なくとも1つの側面を有することができる。
【0049】
図1を参照すると、ブレージングシート100が提供されている。ブレージングシート100は、コア層102と、ブレージング層104と、コア層102及びブレージング層104の中間に配設されたインターライナ層106と、を含む。様々な非限定的な実施形態では、コア層102、インターライナ層106、及びブレージング層104は、一緒に結合されて、ブレージングシート100を形成する。ブレージングシート100は、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方に好適な組成及び厚さを有することができる。
【0050】
ブレージングシート100のブレージング層104は、例えば、4XXXシリーズアルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。様々な非限定的な実施形態では、ブレージング層104は、アルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、5.0~15のシリコンと、0~2.0のマグネシウムと、0~1.0の鉄と、0~3.0の亜鉛と、0~2.0の銅と、0~1.0のマンガンと、0~0.2のチタンと、0~0.3のビスマスと、アルミニウムと、不純物と、を含む、アルミニウム合金を含む。
【0051】
ブレージングシート100のコア層102は、例えば、3XXXシリーズアルミニウム合金又は6XXXシリーズアルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。様々な非限定的な実施形態では、コア層102は、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0~1.2のシリコンと、0~1.0の銅と、0~0.25のジルコニウムと、0~0.8の鉄と、0~2.0のマンガンと、0~3.0の亜鉛と、0~1.5のマグネシウムと、0~0.25のチタンと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、アルミニウムと、不純物と、を含む、第1のアルミニウム合金を含む。
【0052】
アルミニウム合金中に存在するシリコンの濃度は、アルミニウム合金の再結晶化温度に影響を与える可能性がある。特定の非限定的な実施形態では、第1のアルミニウム合金は、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0~0.6のシリコン、0~0.2のシリコン、0.05~1.2のシリコン、0.05~0.6のシリコン、又は0.05~0.2のシリコンを含む。コア層102は、少なくとも部分的に再結晶化することができ、様々な非限定的な実施形態では、コア層102は、Oテンパコア層及び/又は均質化することができる。
【0053】
図1を参照すると、ブレージングシート100のインターライナ層106は、例えば、第2のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、少なくとも0.01のジルコニウムと、アルミニウムと、不純物と、を含む、第2のアルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。インターライナ層106のアルミニウム合金中のジルコニウムは、インターライナ層106中の再結晶化を阻害することができる。様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシート100のインターライナ層106は、アルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.05~1.5のシリコンと、0~2の銅と、0.01~0.5のジルコニウムと、0~0.8の鉄と、0~2.0のマンガンと、0~3.0の亜鉛と、0~2.0のマグネシウムと、0~0.3のチタンと、0~1.0のクロムと、0~0.5のビスマスと、アルミニウムと、不純物と、を含む、第2のアルミニウム合金を含む。インターライナ層106は、均質化又は不均質化することができる。特定の非限定的な実施形態では、インターライナ層106は、茶色の帯を形成するのに好適な組成を含む。インターライナ層106は、非結晶化及び/又はHテンパインターライナ層とすることができる。
【0054】
シリコンは、再結晶化に対するアルミニウム合金の耐性を低減することができる。本開示の発明者らは、アルミニウム合金の回復及び再結晶化動態、並びにそれによってアルミニウム合金の再結晶化温度に影響を与える可能性がある様々な要因があると判定した(例えば、回復及び再結晶化動態を低減すると、アルミニウム合金の再結晶化温度が増加する)。例えば、コア応力場の低減を通して転位コアを安定化させると、すべりプロセス、並びにその結果生じる回復及び再結晶化動態に影響を与えることができる。様々な非限定的な実施形態では、再結晶化を阻害することができる溶質は、例えば、マンガン(161pm)、クロム(166pm)、バナジウム(171pm)、及びジルコニウム(206pm)などの、アルミニウム(118ピコメートル(pm))よりも大きい原子半径を含むことができる。いかなる特定の理論にも束縛されることを意図するものではないが、原子半径の大きい溶質は転位コアを装飾し、それによって引張応力を低減させ、転位すべりの活性化障壁を増加させ、回復及び再結晶化動態を低減させることができると考えられている。様々な非限定的な実施形態では、シリコンの原子半径(111pm)はアルミニウムの原子半径(118pm)よりも実際に小さいため、マンガン、クロム、バナジウム、及びジルコニウムと比較して、シリコンはすべりプロセスを減少させる効果が低い可能性がある。本開示の発明者らは、シリコンよりもアルミニウム中での拡散速度が遅い溶質が、アルミニウム合金の再結晶化を阻害する可能性があると判定した。より遅い拡散溶質は、アルミニウム合金中の転位上昇プロセスを低減し、それによって回復及び再結晶化動態を低減することができる。コアの応力場が増加すると、転位すべりを更に不安定にさせる可能性がある。シリコンは、マンガン、クロム、バナジウム、及びジルコニウムと比較して高速のディフューザであることができ、それによってシリコンは、回復及び再結晶化動態を更に増加させる上昇プロセスを強化することができる。
【0055】
アルミニウム合金の回復には、すべり及び上昇プロセス動態を通した定義されたセル構造内への転位コアの再配置が必要となる可能性がある。定義されたセル構造は、アルミニウム合金の変形した親粒子内の新しい結晶配向の形成のための核形成部位として作用することができる。次いで、アルミニウム合金の回復は、アルミニウム合金の再結晶化につながる可能性がある。転位コアに存在する溶質の拡散速度が遅いほど、かつその原子半径が大きいほど、転位コアの安定化をより強化することができ、アルミニウム合金の回復が遅くなる。これにより、アルミニウム合金を非再結晶化形態に維持しながら、アルミニウム合金に対する熱処理の使用を可能にすることができる。
【0056】
高速拡散溶質原子(例えば、100分後にアルミニウム中、600℃で少なくとも60μmの拡散距離)、例えばマグネシウム及び亜鉛は、転位上昇動態の低減にあまり効果的ではない可能性がある。それ故、高速拡散溶質は、再結晶化の阻害に著しく寄与しない場合がある。例えば、マンガン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、及びチタンなどの低速拡散溶質原子(例えば、100分後にアルミニウム中、600℃で10μm以下の拡散距離)は、低速拡散溶質が可動性の低減によって転位コアに分離される場合、転位上昇動態を低減させることができる。
【0057】
様々な非限定的な実施形態では、ジルコニウムは、アルミニウム合金内の再結晶化を阻害することができるように、直線粒界セグメントの運動及びピン止めを防止するのに有効である可能性があるナノスケールのL12オーダの単純立方晶Al3Zr相を形成することができる。
【0058】
特定の非限定的な実施形態では、ブレージングシート100のインターライナ層106は、インターライナ層106の再結晶化を阻害するのに好適な組成を含むことができる3XXXシリーズアルミニウム合金を含む。例えば、3XXXシリーズアルミニウム合金は、3XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.01~0.2のシリコンと、0~0.6の銅と、0.8~1.9のマンガンと、0~0.2のクロムと、0~0.15のジルコニウムと、0~0.4の鉄と、0~3.0の亜鉛と、0~0.2のマグネシウムと、0~0.3のチタンと、0~0.1のバナジウムと、0~0.5のビスマスと、アルミニウムと、不純物と、を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、3XXXシリーズアルミニウム合金は、3XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.02~0.2のシリコンと、0.3~0.6の銅と、1.75~1.9のマンガンと、0.1~0.2のクロムと、0~0.15のジルコニウムと、0.05~0.4の鉄と、0~1.0の亜鉛と、0.01~0.1のマグネシウムと、0~0.3のチタンと、0~0.1のバナジウムと、0~0.5のビスマスと、アルミニウムと、不純物と、を含む。特定の非限定的な実施形態では、3XXXシリーズアルミニウム合金は、アルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、少なくとも0.8のマンガン、少なくとも1.0のマンガン、少なくとも1.2のマンガン、少なくとも1.4のマンガン、少なくとも1.55のマンガン、又は少なくとも1.75のマンガンを含むことができる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「少なくとも部分的に再結晶化されている」ブレージングシート層は、少なくとも1つの再結晶化された粒子を含有する(例えば、層は0%超再結晶化されている)。再結晶化された粒子は、実質的に変形せず、かつ歪みもない。
【0060】
本明細書で使用される場合、「再結晶化されていない」ブレージングシート層は、再結晶化した粒子を含有しない、すなわち、層は、1cm2当たり10,000,000以下の転位密度を有する粒子を含有しない。特定の非限定的な実施形態では、「結晶化されていない」層中の粒子の形態は、加工されたままであり得る。例えば、再結晶化されていない粒子は、冷間圧延されたままの状態でも細長く、圧延方向(長手方向、L)と同じ結晶配向を有し得る。また、例えば、結晶化されていない材料は、変形して歪んだ粒子のみを含み得る。
【0061】
ブレージングシートへの組み込みに好適な材料層(例えば、シート)は、典型的には、アニーリング前に、例えば、材料の厚さを少なくとも80%低減させるなど、材料の厚さを低減させるために、製造中に冷間加工される。例えば、
図4に例解されるように、材料層450は、ローラ452によって冷間圧延される。材料層450の厚さの低減に適応するために、材料層450の粒子は細長くなり、その結果、粒子の長手方向L(例えば、L短横断(ST)面内)に対するアスペクト比が増加する。冷間加工の結果として、粒子は、(例えば、L-ST平面内で)長手方向Lに対して結晶配向(例えば、結晶学的冷間圧延テクスチャの形成)を変化させ、粒子は、1cm
2当たり10,000,000個未満から1cm
2当たり10,000,000,000個超への転位密度の増加を経験する。
【0062】
変形は、典型的には、材料層450の準安定かつ高エネルギーの状態であるため、材料層450内の歪みは、最終的なアニールの間に低減することができる。歪みの低減は、回復のみの形態とすることができ、粒子形態(例えば、細長い粒子)と冷間圧延テクスチャは保持されるが、粒子内部の歪みは低減される。転位は、それ自体を再配置し、粒子内部にサブセル構造を形成する。全体的な転位密度を低減することができるが、新しい粒子配向の無欠陥体積は形成されない。
【0063】
長時間のアニール又は温度勾配を伴うアニールでは、材料層450が回復した後に再結晶化する可能性がある。再結晶化中、新しい結晶配向の実質的無欠陥体積が、回復された粒子の内部サブセルから、及び/又は移動可能になるか若しくは分散体を形成する高歪み濃度に隣接する高角度の粒界セグメントから、核生成される可能性がある。これらの核はその後成長し、欠陥濃度の高い粒子を消費して、実質的に無欠陥の、転位密度が低く(10,000,000/cm2未満)、新しい結晶配向を(例えば、結晶学的再結晶化テクスチャの形成)有する再結晶化された粒子を形成する。
【0064】
例えば、
図5Aは、冷間圧延後の再結晶化されていない粒子のみを含む材料層のL-ST平面の断面を例解する。
図5Bは、冷間圧延及びアニール後に少なくとも部分的に再結晶化した材料層のL-ST平面の断面を例解する。
図5Cは、冷間圧延及びアニール後に完全に再結晶化した材料のL-ST平面の断面を例解する。
【0065】
インターライナ層106の部分的な再結晶化は、制御が困難な可能性がある。界面は微細構造の不連続面を構成するため、典型的には高歪みの領域でもある。部分的な再結晶化が、ブレージング層104とインターライナ層106との間の界面において優先的に起こることが予想されるであろう。その後、形成歪みは、ブレージングサイクルの加熱中にインターライナ層106の再結晶化された粒子が再び再結晶化することを保証するには不十分な場合があり、それ故、加熱によって耐食性の低いインターライナ層106がもたらされる可能性がある。したがって、インターライナ層106は、結晶化されない。
【0066】
様々な非限定的な実施形態では、少なくとも部分的に再結晶化されているコア層102は、例えば、1cm2当たり5,000,000以下、又は1cm2当たり1,000,000以下など、1cm2当たり10,000,000以下の転位密度を含むことができる。例えば、少なくとも部分的に再結晶化されているコア層102は、例えば、100,000/cm2~10,000,000/cm2、又は100,000/cm2~1,000,000/cm2のような、10,000~10,000,000/cm2の範囲の転位密度を含むことができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「転位密度」は、材料の平均の平均転位密度を意味する。転位密度は、透過電子顕微鏡を使用し、Martinら,“The quantitative measurement of dislocation density in the transmission electron microscope”,Parkt.Metallogr.32(1995),p.467に説明されているラインインターセプト法、又はKrumlら,“Dislocation density in Ni3(Al,Hf)”,Intermetallics 8(2000),p.729に説明されるような線長測定方法を適用して測定することができ、それら両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0068】
様々な非限定的な実施形態では、再結晶化されていないインターライナ層106は、例えば、1cm2当たり1,000,000,000個超、1cm2当たり10,000,000,000個超、又は1cm2当たり100,000,000,000個超など、1cm2当たり100,000,000個超の平均転位密度を含むことができる。例えば、再結晶化されていないインターライナ層106は、例えば、1cm2当たり1,000,000,000~1cm2当たり1,000,000,000,000、又は1cm2当たり10,000,000,000~1cm2当たり1,000,000,000,000など1cm2当たり100,000,000~1cm2当たり1,000,000,000,000の範囲の転位密度を含むことができる。
【0069】
特定の非限定的な実施形態では、走査型電子顕微鏡(SEM)を利用する電子後方散乱回折(EBSD)を使用して、層が再結晶化されているか、又は少なくとも部分的に再結晶化されているかを判定することができる。EBSDでは、
図13のシステム図実施例に例解されるように、SEMの電子ビームがサンプル層の表面を走査し、各離散サンプリングスポットからキクチパターンを得る。サンプル層内で対称的に一意である結晶の各配向は、一意のキクチパターンを有することができ、各キクチパターンは、得られたキクチパターンをキクチパターンのデータベースと比較することによってインデックス付けすることができる。次いで、定義された配向の広がり内でキクチパターンに基づく同じ配向のエリアが、連続粒子として識別される。次いで、配向マップは、その配向に基づいて各粒子に色を割り当てることによって作り出される。
【0070】
サンプル層の歪みは、EBSDによって測定され得る格子回転を作り出すことができる。もしあれば、格子回転が最小である場合、サンプル層は、再結晶化される。様々な非限定的な実施形態では、
図14のシステム図実施例で例解されるように、EBSDを使用して、データ点間の配向差に基づいてカーネル平均配向差(KAM)マップを作成し、サンプル層の歪みを判定することができる。KAMマップについては、データ点間の配向差は、配向の広がり(OS)に基づいて定量化され、OSに基づいてマップ内で色分けされる。例えば、OSが2.5度以下の層は再結晶化されたとみなすことができ、OSが2.5度超の層は結晶化されていないとみなすことができる。様々な非限定的な実施形態では、OSが2.0度以下の層は再結晶化されたとみなすことができ、OSが2.0度超の層は結晶化されていないとみなすことができる。特定の非限定的な実施形態では、定量的配向差は、線トレース分析から得ることができる。
【0071】
【0072】
例えば、再結晶化されていない第1のサンプル(冷間圧延複合材)の粒子配向マップを
図9Aに示し、第1のサンプルのKAMマップを
図9Bに示す。
図9A及び
図9Bに例解されるように、第1のサンプル中の粒子は主に細長く、
図9Bに例解されるように、KAMマップは、圧倒的に高いOS(橙赤色)領域を示し、第1のサンプルが再結晶化されていないことを示す。
【0073】
再結晶化されていない(冷間圧延及びアニールされた)第2のサンプルの粒子配向マップを
図10Aに示し、第2のサンプルのKAMマップを
図10Bに示す。
図10A及び
図10Bに例解されるように、第2のサンプル中の粒子は主に細長く、
図10Bに例解されるように、KAMマップは、高いOS(橙色)領域を示すが、
図9BのOSよりも少ないOSを呈しており、第2のサンプルが再結晶化されておらず、回復されることを示す。
【0074】
少なくとも部分的に再結晶化されている第3のサンプルの粒子配向マップを
図11Aに示し、第3のサンプルのKAMマップを
図11Bに示す。
図11A及び
図11Bに例解されるように、粒子は、主に回復されるより小さな細長い粒子の混合物である。
図11Bでは、KAMマップは、いくつかのOS(橙色)を示し、いくつかの結晶は、本質的に歪みがなく、最小限のOS(黄色)で成長している。
【0075】
著しく再結晶化されている第4のサンプルの粒子配向マップを
図12Aに示し、第4のサンプルのKAMマップを
図12Bに示す。
図12A及び
図12Bに例解されるように、粒子は大きく、再成長した。
図12Bでは、KAMマップは、最小OS(黄色)を示し、第4のサンプルが著しく再結晶化していることを示す。
【0076】
本開示による第1のブレージングシート1500の非限定的な実施形態の粒子配向マップを
図15Aに示し、第1のブレージングシート1500のKAMマップを
図15Bに示す。
図15A及び
図15Bによって示すように、第1のブレージングシート1500のコア層1502は、少なくとも部分的に再結晶化されている。インターライナ層1506は、コア層1502とブレージング層1506の中間にある。インターライナ層1506は、再結晶化されていない。コア層1502は、第1のアルミニウム合金を含み、ブレージング層1504は、4XXXシリーズアルミニウム合金を含み、インターライナ層1506は、第2のアルミニウム合金を含む。
【0077】
本開示による第2のブレージングシート1600の非限定的な実施形態の粒子配向マップを
図16Aに示し、第2のブレージングシート1600のKAMマップを
図16Bに示す。
図16A及び
図16Bによって示すように、第1のブレージングシート1600のコア層1602は、少なくとも部分的に再結晶化されている。インターライナ層1606は、コア層1602とブレージング層1604の中間にある。インターライナ層1606は、少なくとも部分的に再結晶化されている。コア層1602は、第1のアルミニウム合金を含み、ブレージング層1604は、4XXXシリーズアルミニウム合金を含み、インターライナ層1606は、第2のアルミニウム合金を含む。
【0078】
図18Aを参照すると、少なくとも部分的に再結晶化されている第1のOテンパインターライナ層1806aと、少なくとも部分的に再結晶化されている第2のOテンパインターライナ層1806bと、Oテンパコア層1802と、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む第1のブレージング層1804aと、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む第2のブレージング層1804bと、を備える、製作された比較用ブレージングシート1800の粒子配向マップである。
図18Bを参照すると、ブレージングシート1800のうちの2枚が接触され、ブレージングプロセスに供され、ブレージング接合部1850がもたらされた。
【0079】
図19Aを参照すると、再結晶化されていない第1のHテンパインターライナ層1906aと、再結晶化されていない第2のHテンパインターライナ層1906bと、Oテンパコア層1902と、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む第1のブレージング層1904aと、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む第2のブレージング層1904bと、を備える、製作された本開示による比較用ブレージングシート1900の粒子配向マップである。
図19Bを参照すると、ブレージングシート1900のうちの2枚が接触され、ブレージングプロセスに供され、ブレージング接合部1950がもたらされた。インターライナ層1904aは、
図18Bの比較用ブレージングシート1800の残りの部分からインターライナ層1804aをもはや識別することができないブレージングプロセス後、
図19Bでは識別可能なままである。
図19Bのインターライナ層1904aが、微細な分散液と茶色のブランドを含有していることが観察された。
図19Bの接合幅は、
図19Aの接合幅よりも実質的に狭くなっており、
図19Aと比較して、
図19Bでは液体膜移行がより少ないことを示している。
【0080】
様々な非限定的な実施形態では、本開示によるブレージングシート(例えば、ブレージングシート100)のインターライナ層は、液体膜移行を阻害するように構成されている。例えば、インターライナ層(例えば、インターライナ層106)は、ブレージングサイクル中に液体膜移行(例えば、液化時のブレージング層内への溶解)を阻害することができる歪みを有する不均質化した材料である可能性がある。例えば、インターライナ層(例えば、インターライナ層106)の変形し、かつ歪んだ粒子は、ブレージングライナの溶融開始前のブレージングサイクルの加熱中に再結晶化し、それにより、コア層(例えば、コア層102)が完全に再結晶化しない場合でも、液体膜移行からコア層を保護することができる。様々な非限定的な実施形態では、インターライナ層が均質化されておらず、固溶体中に少なくとも0.01重量パーセントのマンガンを含む場合、AlxMnySiz分散体及び茶色の帯は、ブレージングサイクル中にインターライナ層内に形成され得る。それ故、ブレージングシート(例えば、ブレージングシート100)は、典型的にはブレージングシートの最も厚い部分である均質化したOテンパコア層(例えば、コア層102)のために、Oテンパ材料の形成性を含むことができ、またコア層の腐食を阻害することができるインターライナ層(例えば、インターライナ層106)のために、均質化されておらず再結晶化されていない材料の腐食保護の強化を含むことができる。
【0081】
本開示によるブレージングシート(例えば、ブレージングシート100)の特定の非限定的な実施形態では、コア層(例えば、コア層102)の粒子は、第1のアスペクト比を含み、インターライナ層(例えば、インターライナ層106)の粒子は、最終テンパに第2のアスペクト比を含む(例えば、最終熱処理後に製作が完了した後)。ブレージングシートの様々な非限定的な実施形態では、第2のアスペクト比は、第1のアスペクト比よりも大きい可能性があり、例えば、第1のアスペクト比よりも少なくとも0.1大きい、少なくとも0.5大きい、少なくとも1大きい、又は少なくとも2大きい可能性がある。本明細書で使用される場合、材料の「アスペクト比」は、長短横断面(L-ST)面で測定した平均長さと粒子高さの比を指す。様々な非限定的な実施形態では、本開示によるブレージングシートのコア層の粒子は、最終テンパでほぼ平衡化又は平衡化される。
【0082】
本開示によるブレージングシート(例えば、ブレージングシート100)の様々な非限定的な実施形態では、コア層(例えば、コア層102)は、第1の再結晶化温度を有するアルミニウム合金を含むことができ、ブレージングシートのインターライナ層(例えば、インターライナ層106)は、第2の再結晶化温度を有するアルミニウム合金を含むことができる。本開示によるブレージングシートの様々な実施形態では、第2の再結晶化温度は、例えば、第1の再結晶化温度よりも少なくとも摂氏5度高い、少なくとも摂氏10度高い、少なくとも摂氏25度高い、少なくとも摂氏50度高い、又は少なくとも摂氏100度高いなど、第1の再結晶化温度よりも高い可能性がある。アニール熱処理温度は、コア層が完全に再結晶化することができる一方で、インターライナ層が再結晶化しないこともある(例えば、再結晶化しないままである)が、アニール熱処理中に回復し得るように、本開示によるブレージングシートに適用することができる。
【0083】
本開示によるブレージングシート(例えば、ブレージングシート100)の様々な実施形態における各層の厚さは、ブレージングシートの全て又は一部分から作成される、又は組み込まれる製造物品の所望の構造特性に基づいて構成することができる。例えば、様々な非限定的な実施形態では、コア層(例えば、コア層102)は、ブレージングシートの総厚さ(すなわち、ttotal)の60%~90%の範囲内である可能性がある、第1の厚さt1を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、インターライナ層(例えば、インターライナ層106)は、ブレージングシートの総厚さ(ttotal)の3%~20%の範囲内である、第2の厚さt2を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、ブレージング層(例えば、ブレージング層104)は、ブレージングシートの総厚さ(ttotal)の3%~20%の範囲内である、第3の厚さt3を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、第1の厚さt1は、第2の厚さt2よりも大きく、また第3の厚さt3よりも大きい。特定の非限定的な実施形態では、本開示によるブレージングシート(例えば、ブレージングシート100)の総厚さ(ttotal)は、例えば200μm~1mmの範囲など、100μm~5mmの範囲内にある。
【0084】
様々な非限定的な実施形態では、本開示によるブレージングシートは、コア層に加えて、インターライナ層、及びブレージング層を備え得る。例えば、
図2に概略的に示された非限定的な実施形態を参照すると、ブレージングシート200は、コア層202、第1のインターライナ層206a、第1のブレージング層204a、第2のブレージング層204b、及び第2のインターライナ層206bを備える。様々な非限定的な実施形態では、コア層202、第1のインターライナ層206a、第2のインターライナ層206b、第1のブレージング層204a、及び第2のブレージング層204bは、一緒に結合されて、ブレージングシート200を形成する。ブレージングシート200は、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方に好適である可能性がある。例えば、ブレージングシート200は、ブレージングシートが、制御された雰囲気ブレージング及び/又は真空ブレージングに好適であるような組成を有する層を備えることができる。
【0085】
図2に示されるように、第2のブレージング層204bは、コア層202の第2の側面202b上に配設されていて、第1のブレージング層204aは、コア層202の第1の側面202a上に配設されている。コア層202の第2の側面202bは、コア層202の第1の側面202aの反対側に配設されている。様々な非限定的な実施形態では、第1のブレージング層204a及び/又は第2のブレージング層204bは、ブレージング層104に関して本明細書に説明されるような組成で構成することができる。様々な非限定的な実施形態では、第2のブレージング層204bの組成は、第1のブレージング層204aの組成と同じ又は異なっている可能性がある。例えば、第2のブレージング層204bは、1XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金(例えば、亜鉛を意図的に添加した3XXXシリーズアルミニウム合金(例えば、アルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで0.1~4)、亜鉛を意図的に添加しない3XXXシリーズアルミニウム合金)、4XXXシリーズアルミニウム合金、又は7XXXシリーズアルミニウム合金を含むことができる。同様に、第1のインターライナ層206a及び/又は第2のインターライナ層206bは、インターライナ層106に関して本明細書に説明されるような組成で構成することができる。様々な非限定的な実施形態では、第2のインターライナ層206bの組成は、第1のインターライナ層206aの組成と同じ又は異なっている可能性がある。
【0086】
第2のインターライナ層206bは、コア層202及び第2のブレージング層204bの中間に配設することができる。第2のインターライナ層206bは、再結晶化されていない可能性があり、様々な非限定的な実施形態では、第2のインターライナ層206bは均質化されていない可能性がある。
【0087】
ブレージングシート200内の各層の厚さは、ブレージングシート200の全て又は一部分から作成される、又は組み込む物品の所望の構造特性に基づいて構成することができる。例えば、様々な非限定的な実施形態では、コア層202は、ブレージングシート200の総厚さ(ttotal)の60%~90%の範囲内である可能性がある、第1の厚さt1を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、第1のインターライナ層206a及び第2のインターライナ層206bは、ブレージングシート200の総厚さ(ttotal)の3%~20%の範囲内である、組み合わせた厚さt2+t4を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、第1のブレージング層204a及び第2のブレージング層204bは、ブレージングシート200の総厚さ(ttotal)の3%~20%の範囲内である、組み合わせた厚さt3+t5を含むことができる。特定の非限定的な実施形態では、ブレージングシート200の総厚さ(ttotal)は、例えば200μm~1mmの範囲など、100μm~5mmの範囲内である。
【0088】
様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシートは、第2のインターライナ層を含まない場合があり、第2のブレージング層は、コア層と直接接触している場合がある。
図3に概略的に示された非限定的な実施形態を参照すると、ブレージングシート300は、コア層302、インターライナ層306、第1のブレージング層304a、第2のブレージング層304bを含む。様々な非限定的な実施形態では、コア層302、インターライナ層306、第1のブレージング層304a、及び第2のブレージング層304bは、一緒に結合され、ブレージングシート300を形成する。ブレージングシート300は、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方に好適である可能性がある。例えば、ブレージングシート300は、ブレージングシートが、制御された雰囲気ブレージング及び/又は真空ブレージングに好適であるような組成を有する層を備えることができる。
【0089】
図3に示されるように、第2のブレージング層304bは、コア層302の第2の側面302b上に配設されていて、第1のブレージング層304aは、コア層302の第1の側面302a上に配設されている。コア層302の第2の側面302bは、コア層302の第1の側面302aの反対側に配設されている。様々な非限定的な実施形態では、第1のブレージング層304a及び/又は第2のブレージング層304bは、ブレージング層104に関して本明細書に説明されるような組成で構成することができる。様々な非限定的な実施形態では、第2のブレージング層304bの組成は、第1のブレージング層304aの組成と同じ又は異なっている可能性がある。同様に、インターライナ層306は、インターライナ層106に関して本明細書に説明されるような組成で構成することができる。
【0090】
図17は、本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態を形成するための、本開示による方法の非限定的な実施形態のブロック図である。方法は、コア層を均質化して、均質化したコア層を形成することを含むことができる(ステップ1702)。3XXXシリーズアルミニウム合金を含む被加工物は、インターライナ層を形成するために熱間加工(例えば、中間ゲージシート材料内に熱間圧延)することができる(ステップ1704)。方法は、ステップ1702からの均質化したコア層、ステップ1704からの1つ以上のインターライナ層、及び1つ以上のブレージング層を含むスタック又はアセンブリを一緒に熱間圧延して、ブレージングシートを形成することを更に含むことができる(ステップ1706)。例えば、ステップ1702からの均質化したコア層、ステップ1704からの少なくとも1つのインターライナ層、及び少なくとも1つのブレージング層を含むスタックは、適切な順序で組み立てられ、加熱され、次いで熱間圧延されて層を一緒に接着して、ブレージングシートを形成する。プロセス中、従来のインターライナ層は、従来のコア層よりもブレージングシートの製作中に少なくとも部分的に再結晶化されている可能性が高い。このように処理された本開示によるインターライナ層の実施形態は、ブレージングシートの作成中に再結晶化されていないままであり得る。
【0091】
様々な非限定的な実施形態では、例えば熱交換器などの製造物品は、本開示によるブレージングシートの実施形態(例えば、ブレージングシート100、200、300のいずれか)の全て又は一部分を含む構造要素を含むことができる。様々な実施形態では、例えばオイル冷却器又は液体冷却凝縮器である熱交換器は、本開示によるブレージングシートの実施形態(例えば、ブレージングシート100、200、300のいずれか)の全て又は一部分を含む。
【0092】
図6は、例えば熱交換器などの製造物品を形成するための本開示による方法の非限定的な実施形態のブロック図である。方法の実施形態は、第1の材料を含む第1の部分を、本開示によるブレージングシートの実施形態の全て又は一部分を含む第2の部分と接触させることを含む。例えば、本開示による方法の非限定的な実施形態は、第1の材料を含む第1の部分を、ブレージングシート100、ブレージングシート200、ブレージングシート300、及び/又は本開示によるブレージングシートの異なる実施形態の全て又は一部分を含む第2の部分と接触させることを含み得る(
図6、ステップ602)。様々な非限定的な実施形態では、第1の部分を、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方を含むプロセスによって、第2の部分にブレージングすることができる(
図6、ステップ604)。様々な実施形態では、ステップ604は、制御された雰囲気ブレージングを含み、フラックスは使用されるか、又は使用されない。例えば、本開示によるブレージングシートのコア層及び1つ以上のインターライナ層が、マグネシウムを含む場合、制御された雰囲気ブレージングを実施するときにフラックスは必要とされない場合がある。しかしながら、本開示によるブレージングシートのコア層及び1つ以上のインターライナ層が、マグネシウムを含まない場合、制御された雰囲気ブレージングを実施するときにフラックスが必要とされる場合がある。
図6に例解されるように、方法の様々な非限定的な実施形態では、第1の材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む。
【実施例】
【0093】
比較用ブレージングシートと、本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態と、を準備した。両方のブレージングシートは、第1のブレージング層、第1のインターライナ層、コア層、第2のインターライナ層、及び第2のブレージング層を含む、一緒に接着された5つの層を含んでいた。第1のインターライナ層は、コア層及び第1のブレージング層の中間であり、第2のインターライナ層は、コア層及び第2のブレージング層の中間であった。両方のブレージングシートは、4XXXシリーズ合金を含む同一のブレージング層と、少なくとも部分的に再結晶化された3003シリーズアルミニウム合金を含む同一のコア層と、を含む。比較用ブレージングシート及び本開示によるブレージングシートの両方に含まれるインターライナ層は、重量パーセントで、最大0.25のシリコンと、最大0.6の鉄と、0.2~0.4の銅と、0.8~1.3のマンガンと、最大0.1のマグネシウムと、最大0.05の亜鉛と、最大0.35のチタンと、0.12のジルコニウムと、アルミニウムと、不純物と、を含んでいた。比較用ブレージングシートのインターライナ層を、少なくとも部分的に再結晶化され、Oテンパを有するように熱処理した。本開示によるブレージングシートのインターライナ層は、再結晶化されず、均質化されないように熱処理された。
【0094】
図7Aは、ブレージング前状態での本実施例の比較用ブレージングシートの微細構造の断面の顕微鏡写真である。
図7Bは、ブレージング後状態での本実施例の比較用ブレージングシートの微細構造の断面の顕微鏡写真である。
図8Aは、ブレージング前状態での本実施例の本開示によるブレージングシート実施形態の微細構造の断面の顕微鏡写真である。
図8Bは、ブレージング後状態での本実施例の本開示によるブレージングシート実施形態の微細構造の断面の顕微鏡写真である。
図7B及び
図8Bを参照すると、ブレージング後の本開示のブレージングシート実施形態のコア層及びインターライナ層の保持された結合された厚さは、ブレージング後の本実施例の比較用ブレージングシートのコア層及びインターライナ層の結合された厚さよりも30~50μm厚い。
図7B及び
図8Bに例解されるように、本開示によるブレージングシート実施形態における界面850と比較して、比較用ブレージングシートでのブレージング層とライナ層との間の界面750において、より多くの量の液体膜移行が発生している。加えて、本実施例の比較用ブレージングシートのインターライナ層は、液体膜移行を示す、共晶相の含有量がより大きくなることが観察された。また、ブレージング後のこの実施例の比較用ブレージングシート内のコア層の保持厚さは、ブレージング後のこの実施例の本開示によるブレージングシート内のコア層の保持厚さよりも20%低かった。
【0095】
更に、比較用ブレージングシート及び本実施例で評価された本開示によるブレージングシートを、ブレージング前状態での最終的な引張強さ、引張降伏強度、及び引張伸長について試験した。表1は、結果を提供する。
【表1】
【0096】
表1に示すように、本開示によるブレージングシートと本実施例で評価した比較用ブレージングシートの測定された機械的性質は、わずかに異なるだけであった。これは、本実施例の本開示によるブレージングシートが、完全なOテンパブレージングシートに匹敵する形成性を呈することを示す。
図8A及び
図8Bは、比較用ブレージングシートと比較して、本実施例の本開示によるブレージングシートで発生する液体膜移行の低減を例解する。これは、本実施例で評価された本開示によるブレージングシートが、比較用ブレージングシートと比較して耐食性が強化されたことを示す。
【0097】
以下の番号付きの項は、本開示による様々な非限定的な実施形態及び態様を対象としている。
項1.ブレージングシートであって、
第1のアルミニウム合金を含むコア層であって、少なくとも部分的に再結晶化されている、コア層と、
4XXXシリーズアルミニウム合金を含むブレージング層と、
コア層及びブレージング層の中間にあり、かつ第2のアルミニウム合金を含む、インターライナ層であって、再結晶化されていない、インターライナ層と、を備える、ブレージングシート。
項2.第1のアルミニウム合金が、第1の再結晶化温度を有し、第2のアルミニウム合金が、第2の再結晶化温度を有し、第2の再結晶化温度が、第1の再結晶化温度よりも大きい、項1のブレージングシート。
項3.コア層が、均質化される、項1又は2のブレージングシート。
項4.インターライナ層が、1cm2当たり少なくとも100,000,000の転位密度を有する、項1~3のいずれかのブレージングシート。
項5.インターライナ層が、1cm2当たり10,000,000以下の転位密度を有する再結晶化された粒子を含まない、項1~4のいずれかのブレージングシート。
項6.コア層が、1cm2当たり10,000,000以下の転位密度を有する、項1~5のいずれかのブレージングシート。
項7.コア層の粒子が、第1のアスペクト比を有し、インターライナ層の粒子が、第2のアスペクト比を有し、第2のアスペクト比が、第1のアスペクト比よりも大きく、各アスペクト比が、長短横断面に対する平均粒子長さと粒子高さとの間の比を指す、節1~6のいずれかのブレージングシート。
項8.インターライナ層が、均質化されない、項1~7のいずれかのブレージングシート。
項9.インターライナ層が、液体膜移行を阻害するように構成されている、項1~8のいずれかのブレージングシート。
項10.第2のアルミニウム合金が、第2のアルミニウム合金の総重量に基づいて、少なくとも0.01重量パーセントのジルコニウムを含む、項1~9のいずれかのブレージングシート。
項11.コア層、インターライナ層、及びブレージング層が、一緒に接着されている、項1~10のいずれかのブレージングシート。
項12.第1のアルミニウム合金が、3XXXシリーズアルミニウム合金又は6XXXシリーズアルミニウム合金である、項1~11のいずれかのブレージングシート。
項13.第1のアルミニウム合金が、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
0~1.2のシリコンと、
0~1.0の銅と、
0~0.25のジルコニウムと、
0~0.8の鉄と、
0~2.0のマンガンと、
0~3.0の亜鉛と、
0~1.5のマグネシウムと、
0~0.25のチタンと、
0~0.3のクロムと、
0~0.5のビスマスと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、項1~12のいずれかのブレージングシート。
【0098】
項14.
ブレージング層が、コア層の第1の側面上に配設された第1のブレージング層であり、
第2のブレージング層が、コア層の第1の側面の反対側のコア層の第2の側面上に配設され、第2のブレージング層が、1XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、4XXXシリーズアルミニウム合金、又は7XXXシリーズアルミニウム合金を含む、項1~13のいずれかのブレージングシート。
項15.
ブレージング層が、コア層の第1の側面上に配設された第1のブレージング層であり、
インターライナ層が、第1のインターライナ層であり、
第2のブレージング層が、コア層の第1の側面の反対側のコア層の第2の側面上に配設され、第2のブレージング層が、1XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、4XXXシリーズアルミニウム合金、又は7XXXシリーズアルミニウム合金を含み、
第2のインターライナ層が、コア層及び第2のブレージング層の中間に配設される、項1~14のいずれかのブレージングシート。
項16.ブレージングシートが、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方に好適である、項1~15のいずれかのブレージングシート。
項17.各ブレージング層の4XXXシリーズアルミニウム合金が、4XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
5~15のシリコンと、
0~2.0のマグネシウムと、
0~1.0の鉄と、
0~3.0の亜鉛と、
0~2.0の銅と、
0~1.0のマンガンと、
0~0.2のチタンと、
0~0.3のビスマスと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、項1~16のいずれかのブレージングシート。
項18.
コア層が、ブレージングシートの総厚さの60%~90%の範囲の第1の厚さを含み、
インターライナ層が、ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第2の厚さを含み、
ブレージング層が、ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第3の厚さを含む、項1~17のいずれかのブレージングシート。
項19.項1~18のいずれかのブレージングシートの全て又は一部分を含む構造要素を含む、熱交換器。
【0099】
項20.物品を形成するための方法であって、
第1の材料を含む第1の部分を、項1~18のいずれかのブレージングシートの全て又は一部分を含む第2の部分と接触させることと、
制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方を含むプロセスによって、第1の部分を第2の部分にブレージングすることと、を含む、方法。
項21.第1の材料が、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む、項20の方法。
項22.物品が、熱交換器である、項20又は21のいずれかの方法。
【0100】
項23.ブレージングシートであって、
第1の再結晶化温度を有する第1のアルミニウム合金を含むコア層
と、4XXXシリーズアルミニウム合金を含むブレージング層と、
コア層及びブレージング層の中間にあるインターライナ層であって、第2の再結晶化温度を有する3XXXシリーズアルミニウム合金を含み、3XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
0.01~0.2のシリコン、
0~0.6の銅、
0.8~1.9のマンガン、
0~0.2のクロム、
0~0.15のジルコニウム、
0~0.4の鉄、
0~3の亜鉛、
0~0.2のマグネシウム、
0~0.3のチタン、
0~0.1のバナジウム、
0~0.5のビスマス、
アルミニウム、及び
不純物を含む、インターライナ層と、を含み、
第2の再結晶化温度が、第1の再結晶化温度よりも大きい、ブレージングシート。
項24.3XXXシリーズアルミニウム合金中のマンガン、クロム、チタン、ジルコニウム、及びバナジウムの重量パーセントの合計が、少なくとも2.0である、項23のブレージングシート。
項25.3XXXシリーズアルミニウム合金中のマンガン、クロム、チタン、ジルコニウム、及びバナジウムの重量パーセントの合計が、少なくとも2.1である、項23又は24のいずれかのブレージングシート。
項26.インターライナ層の3XXXシリーズアルミニウム合金が、3XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
0.02~0.1のシリコンと、
0.3~0.6の銅と、
1.75~1.9のマンガンと、
0.1~0.2のクロムと、
0~0.15のジルコニウムと、
0.05~0.4の鉄と、
0~1の亜鉛と、
0.01~0.1のマグネシウムと、
0~0.3のチタンと、
0~0.1のバナジウムと、
0~0.5のビスマスと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、項23~25のいずれかのブレージングシート。
【0101】
項27.コア層が、少なくとも部分的に再結晶化され、インターライナ層が、再結晶化されていない、項23~26のいずれかのブレージングシート。
項28.インターライナ層中のマンガン、クロム、及びバナジウムの重量パーセントの第1の合計が、コア層中のマンガン、クロム、及びバナジウムの重量パーセントの第2の合計よりも大きい、項23~27のいずれかのブレージングシート。
項29.コア層、インターライナ層、及びブレージング層が、ブレージングシート内へ一緒に接着される、項23~28のいずれかのブレージングシート。
項30.第1のアルミニウム合金が、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
0~1.2のシリコンと、
0~1.0の銅と、
0~0.25のジルコニウムと、
0~0.8の鉄と、
0~2のマンガンと、
0~3の亜鉛と、
0~1.5のマグネシウムと、
0~0.25のチタンと、
0~0.3のクロムと、
0~0.5のビスマスと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、項23~29のいずれかのブレージングシート。
【0102】
項31.
インターライナ層が、コア層の第1の側面上に配設された第1のインターライナ層であり、
第2のブレージング層が、コア層の第1の側面の反対側のコア層の第2の側面上に配設され、第2のブレージング層が、1XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、4XXXシリーズアルミニウム合金、又は7XXXシリーズアルミニウム合金を含む、項23~30のいずれかのブレージングシート。
項32.
ブレージング層が、コア層の第1の側面上に配設された第1のブレージング層であり、
インターライナ層が、第1のインターライナ層であり、
第2のブレージング層が、コア層の第1の側面の反対側のコア層の第2の側面上に配設され、第2のブレージング層が、1XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、3XXXシリーズアルミニウム合金、4XXXシリーズアルミニウム合金、又は7XXXシリーズアルミニウム合金を含み、
第2のインターライナ層が、コア層及び第2のブレージング層の中間に配設される、項23~30のいずれかのブレージングシート。
項33.ブレージングシートが、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方に好適である、項23~32のいずれかのブレージングシート。
項34.各ブレージング層の4XXXシリーズアルミニウム合金が個別に、4XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
5~15のシリコンと、
0~2.0のマグネシウムと、
0~1.0の鉄と、
0~3.0の亜鉛と、
0~2.0の銅と、
0~1.0のマンガンと、
0~0.2のチタンと、
0~0.3のビスマスと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、項23~33のいずれかのブレージングシート。
項35.
コア層が、ブレージングシートの総厚さの60%~90%の範囲の第1の厚さを含み、
各インターライナ層が、ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第2の厚さを含み、
各ブレージング層が、ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第3の厚さを含む、項23~34のいずれかのブレージングシート。
項36.コア層が、均質化される、項23~35のいずれかのブレージングシート。
【0103】
項37.項1~36のいずれかのブレージングシートを形成するための方法であって、ブレージングシートが、コア層、少なくとも1つのブレージング層、及び少なくとも1つのインターライナ層を含み、方法が、
コア層を均質化して、均質化したコア層を形成することと、
前記3XXXシリーズアルミニウム合金を含む被加工物を熱間加工して、前記少なくとも1つのインターライナ層を形成することと、
少なくとも1つのブレージング層、少なくとも1つのインターライナ層、及び均質化したコア層を一緒に熱間圧延して、ブレージングシートを形成することと、を含む、方法。
項38.項37の方法によって形成される、ブレージングシート。
項39.項23~36及び38のいずれかのブレージングシートの全て又は一部分を含む構造要素を含む、熱交換器。
【0104】
項40.製造物品を形成するための方法であって、
第1の材料を含む第1の部分を、項23~36及び38のいずれかのブレージングシートの全て又は一部分を含む第2の部分と接触させることと、
制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方を含むプロセスによって、第1の部分を第2の部分にブレージングすることと、を含む、方法。
項41.第1の材料が、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む、項40の方法。
項42.物品が、熱交換器である、条項40又は41のいずれかの方法。
【0105】
本明細書では、別段の指示がない限り、全ての数値パラメータは、全ての場合において、「約」という用語で始まり、修飾されていると理解されるべきであり、これにおいて数値パラメータは、パラメータの数値を判定するために使用される基礎となる測定法の固有の変動特性を有する。少なくとも、及び均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、本明細書に説明される各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、及び通常の丸める方法を適用することによって解釈されるべきである。
【0106】
また、本明細書に列挙された任意の数値範囲は、列挙された範囲内に包含される全ての部分範囲を含む。例えば、「1~10」の範囲には、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間の(及びそれらを含む)全ての部分範囲が含まれ、つまり、1以上の最小値と10以下の最大値を有する。また、本明細書に列挙された全ての範囲は、列挙された範囲の端の数値を含む。例えば、「1~10」の範囲は、端の数値である1及び10を含む。本明細書に列挙された任意の最大の数値制限は、そこに包含された全てのより低い数値制限を含むことが意図されていて、本明細書に列挙された任意の最小の数値制限は、そこに包含された全てのより高い数値制限を含むことが意図されている。したがって、出願人は、明示的に列挙された範囲内に包含された部分範囲を明示的に列挙するために、特許請求の範囲を含む本明細書を修正する権利を留保する。こうした全ての範囲は、本明細書に本質的に記述されている。
【0107】
本明細書で使用される「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「その(the)」という文法冠詞は、場合によっては「少なくとも1つ」又は「1つ以上」が明確に使用される場合であっても、特に明記しない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を含むことを意図する。それ故に、前述の文法の冠詞は本明細書において、特定の識別された要素のうちの1つ又は複数(すなわち、「少なくとも1つ」)を指すために使用される。更に、単数名詞の使用には複数形が含まれ、複数名詞の使用には単数形が含まれるが、使用の文脈によって別段の解釈が要求される場合はこの限りではない。
【0108】
当業者は、本明細書に説明される物品及び方法、並びにそれらに付随する考察が、概念的明瞭性のために実施例として使用されていて、様々な構成修正が企図されていることを認識するであろう。その結果、本明細書で使用される際、記載される具体的な実施例/実施形態及び付随する考察は、そのより一般的なクラスを表すことが意図されている。一般的に、任意の具体的な実施例の使用は、そのクラスを表すことが意図されていて、具体的な構成要素、デバイス、操作/動作、及び対象を含まないことは、限定的であると捉えられるべきではない。本開示は、本開示の様々な態様及び/又はその潜在的な適用例を例解する目的で様々な具体的な態様の説明を提供する一方で、変形及び修正が生じることが、当業者には理解されよう。したがって、本明細書に説明される発明(1つ又は複数)は、それらが特許請求されるのと少なくとも同程度に広範であると理解されるべきであり、本明細書に提供された特定の例解的態様によってより狭義に定義されるものではないと理解されるべきである。
【国際調査報告】